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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】アームレスト装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/75 20180101AFI20230705BHJP
   B60N 3/00 20060101ALN20230705BHJP
【FI】
B60N2/75
B60N3/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018224657
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020083237
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】田邉 仁一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 生佳
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴弘
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-171990(JP,A)
【文献】特開2016-038607(JP,A)
【文献】特開2011-037305(JP,A)
【文献】特開2017-132384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
A47C 7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の側壁の内側空間に配置された乗物用シートに着座する乗員の腕部を支持するアームレストと、
第1位置から前記第1位置よりも乗員にとって前方かつ上方の第2位置へ前記アームレストを移動可能に支持する支持機構と、
前記支持機構に設けられ、前記アームレストを前記第1位置から前記第2位置へ移動させるアクチュエータと、
前記アームレストを振動させる振動部と、
前記乗物の周辺情報である外部状況を検出する外部検出部と、
前記外部検出部により検出された外部状況に基づいて前記乗物の周囲の物体を検出し、前記乗物の前記側壁への前記物体の衝突確率を演算する衝突予測部と、
前記衝突予測部により演算された前記衝突確率が第1所定値以上になると前記振動部を制御して前記アームレストを振動させ、前記衝突確率が前記第1所定値よりも大きい第2所定値以上になると、前記アクチュエータを制御して前記アームレストを前記第1位置から前記第2位置に移動させる制御部と、を備えることを特徴とするアームレスト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアームレスト装置において、
乗員の腕部が前記アームレストに置かれていることを検出する腕位置検出部をさらに備え、
前記制御部は、乗員の腕部が前記アームレストに置かれていない場合には、前記アームレストを動作させないことを特徴とするアームレスト装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアームレスト装置において、
前記第2位置は、前記第1位置よりも乗員にとって前方かつ上方であり、さらに左右内側の位置であることを特徴とするアームレスト装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のアームレスト装置において、
前記アームレストは、前記側壁の内壁面または前記乗物用シートの前記側壁側の端部に設けられることを特徴とするアームレスト装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のアームレスト装置において、
前記アームレストは、前記側壁の内壁面または前記乗物用シートの前記側壁側の端部に設けられた第1アームレストと、前記乗物用シートの前記側壁の反対側の端部に設けられた第2アームレストとを有し、
前記第1アームレストおよび前記第2アームレストのそれぞれが、前記支持機構により前記第1位置から前記第2位置へ移動可能に支持されることを特徴とするアームレスト装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のアームレスト装置において、
前記乗物用シートは、乗員が前記乗物に対する第1方向を向く第1姿勢と前記第1方向の反対側の第2方向を向く第2姿勢とに姿勢変更可能に構成され、
前記支持機構は、前記アームレストを前記第1位置から前記第1方向かつ上方および前記第2方向かつ上方の複数の前記第2位置へ移動可能に支持することを特徴とするアームレスト装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のアームレスト装置において、
前記乗物は、自動運転機能を有する自動運転車両であることを特徴とするアームレスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物用の可動式のアームレストを有するアームレスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、従来、車両の後面衝突が予知されたときに、アームレストを駆動するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の装置では、後面衝突時の乗員の頚部に作用する荷重を軽減することを目的として、車両の後面衝突が予知されたときに、アームレストを回動させて乗員の腕を跳ね上げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-155540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、乗員保護の観点からは、衝突が予知されると、乗員に事前に身構えさせることが好ましい。しかしながら、特許文献1記載の装置は、衝突が予知されるとき、単にアームレストを回動させて腕を跳ね上げるように構成するだけであり、乗員に身構えさせるようにするものではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様であるアームレスト装置は、乗物の側壁の内側空間に配置された乗物用シートに着座する乗員の腕部を支持するアームレストと、第1位置から第1位置よりも乗員にとって前方かつ上方の第2位置へ前記アームレストを移動可能に支持する支持機構と、支持機構に設けられ、アームレストを第1位置から第2位置へ移動させるアクチュエータと、アームレストを振動させる振動部と、乗物の周辺情報である外部状況を検出する外部検出部と、外部検出部により検出された外部状況に基づいて乗物の周囲の物体を検出し、乗物の側壁への物体の衝突確率を演算する衝突予測部と、衝突予測部により演算された衝突確率が第1所定値以上になると振動部を制御してアームレストを振動させ、衝突確率が第1所定値よりも大きい第2所定値以上になると、アクチュエータを制御してアームレストを第1位置から第2位置に移動させる制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、衝撃が作用すると予測されると、アームレストを第1位置からその前方かつ上方の第2位置へとアクチュエータの駆動によって移動させるようにしたので、乗員を容易に身構えさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係るアームレスト装置が適用される車両用シートの車室内の配置を示す斜視図。
図2】本発明の第1実施形態に係るドアアームレストの支持機構の構成を示す斜視図。
図3図2の矢視III図。
図4】本発明の第1実施形態に係るアームレスト装置の制御構成を示すブロック図。
図5図4のコントローラで実行される処理の一例を示すフローチャート。
図6】本発明の第2実施形態に係るドアアームレストの支持機構の構成を示す側面図。
図7】本発明の第2実施形態に係るアームレスト装置の制御構成を示すブロック図。
図8図7のコントローラで実行される処理の一例を示すフローチャート。
図9】本発明の第3実施形態に係るシートアームレストの支持機構の構成を示す側面図。
図10】本発明の第3実施形態に係るアームレスト装置の制御構成を示すブロック図。
図11図10のコントローラで実行される処理の一例を示すフローチャート。
図12】アームレストの支持機構の変形例を示す側面図。
図13】アームレストの支持機構の他の変形例を示す平面図。
図14】アームレストの先端部にテーブルを設けた例を示すシートの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
-第1実施形態-
以下、図1図5を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態に係るアームレスト装置は、乗物の側壁の内側空間に配置された乗物用シートに対し適用することができるが、以下では、車両に設けられたシート、すなわち車両用シートに適用する例を説明する。本実施形態の車両は、自動運転機能を有する自動運転車両として構成される。なお、自動運転車両は、ドライバによる運転操作が不要な自動運転モードでの走行だけでなく、ドライバの運転操作による手動運転モードでの走行も可能である。
【0009】
自動運転車両は、車両制御システムにより走行動作が制御される。自動運転モードにおいて、車両制御システムは、自車両の現在位置と自車両の周囲の状況とに基づいて目的地に至るまでの走行ルートを決定する。そして、走行ルートに従って車両が走行するように車両の駆動用アクチュエータ(例えばスロットル用アクチュエータや変速機用アクチュエータ)、ブレーキ用アクチュエータ、操舵用アクチュエータなどの走行用アクチュエータを、ドライバの操作によらずに自動的に制御する。一方、手動運転モードにおいては、車両制御システムは、ドライバによるアクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール等の操作に応じて走行用アクチュエータを制御する。
【0010】
車両制御システムは、自動運転モード時の自動運転レベルを指令する運転レベル指令スイッチを有する。自動運転レベルとは、どの程度まで運転を自動化するかの指標である。自動運転レベルは、例えばSAEインターナショナルにより定められたSAEJ3016に基づきレベル0~レベル5に分類される。具体的には、レベル0は、自動化なしの運転レベルであり、レベル0では、全ての運転操作を人間(ドライバ)が行う。
【0011】
レベル1は、加速、操舵および制動のいずれかの操作をシステムが行う運転レベル(運転支援)である。すなわち、レベル1では、特定の条件下で、アクセル、ブレーキ、ハンドルのいずれかの操作を車両制御システムが周囲の状況に応じて制御し、それ以外の全ての運転操作を人間が行う。レベル2は、加速、操舵および制動のうち複数の操作を一度にシステムが行う運転レベル(部分運転自動化)である。レベル2までは、人間に周囲の監視義務がある。
【0012】
レベル3は、加速、操作および制動の全てを車両制御システムが行い、車両制御システムが要請したときのみドライバが対応する運転レベル(条件付き自動運転)である。レベル3以降では、車両制御システムが周囲を監視し、人間に周囲の監視義務はない。レベル4は、特定の状況で、車両制御システムが全ての運転操作を行い、車両制御システムが運転を継続できない場合でも人間は交代しなくてもよい運転レベル(高度自動運転)である。したがって、レベル4以降では、非常時であっても車両制御システムが対応する。レベル5は、全ての条件下で、車両制御システムが自律的に自動走行をする運転レベル(完全自動運転)である。
【0013】
ドライバは、運転レベル指令スイッチの操作に応じてレベル0~5のいずれかの自動運転レベルを指令する。車両制御システムが周囲の状況等により自度運転が可能な条件が満たされているか否かを判定し、判定結果に応じて運転レベル指令スイッチを自動で切り換え、レベル0~5のいずれかを指令するように構成することもできる。このような自動運転車両に用いて好適なアームレスト装置について、以下説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るアームレスト装置が適用される車両用シート100(以下単にシートと呼ぶ)の車室内の配置を示す斜視図である。以下では、便宜上、図示のようにシート100に着座する乗員を基準にして前後方向、左右方向および上下方向を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。図示のようにシート100が前方を向いているとき、前後方向は、車両200の長さ方向に相当し、上下方向は、車両200の高さ方向に相当し、左右方向は、車幅方向に相当する。図1では、車両右側の運転席用シート100を示し、運転席用シート100の構成を主に説明する。なお、図示は省略するが、車両左側の助手席用シートは運転席用シート100と左右対称に構成される。
【0015】
図1に示すように、シート100は、乗員の臀部を支持するシートクッション1と、乗員の背部を支持するシートバック2と、シートバック2の上部に設けられ、乗員の頭部を支持するヘッドレスト3とを備える。シートクッション1は、前後方向および左右方向に延在し、全体が平面視略矩形状を呈する。シートバック2は、上下方向および左右方向に延在し、全体が正面視略矩形状を呈する。シートバック2は、シートクッション1の後端部に前後方向に傾動可能に支持される。
【0016】
シートバック2の左側面2aには、シートアームレスト4が設けられる。シートアームレスト4は、全体が略直方体形状を呈し、その長手方向一端部(基端部)が、左右方向に延在する軸線CL1を中心にシートバック2の左側面2aに回動可能に支持される。すなわち、シートアームレスト4は、長手方向他端部(先端部)が前方を向いた使用位置(図1の実線)と、上方を向いた格納位置(図1の点線)との間で回動可能である。シートアームレスト4が使用位置にあるとき、シート100に着座している乗員は、左腕部をシートアームレスト4上に載置することができる。
【0017】
シートクッション1の下部には、上下方向に延在する軸線CL2を中心にシートクッション1を回転可能に支持する回転機構5が設けられる。ドライバが手動運転モードで車両200を運転操作しているとき、シート100は、シートバック2の座面2cが前方を向く運転姿勢(第1姿勢と呼ぶ)に固定される。一方、車両200が自動運転モードであり、ドライバの運転操作が不要であるとき、回転機構5を介してシート100を回転させることができる。これにより、例えば座面2cが後方を向く非運転姿勢(第2姿勢と呼ぶ)へ、シート100の姿勢を変更することができる。
【0018】
なお、シートバック2の右側面2bにも、左側面2aと同様、左右方向に延在する軸線を中心に回動可能に略直方体形状のシートアームレスト4が設けられる。図示のようにシート100が第1姿勢にあるとき、右側のシートアームレスト4は点線で示す格納位置に回動される。一方、図示は省略するが、シート100が第2姿勢にあるとき、右側のシートアームレスト4は使用位置に回動され、このとき、ドア110に面する左側のシートアームレスト4は格納位置に回動される。
【0019】
シート100の右側には、開閉可能なドア110が設けられる。ドア110の内壁10には、乗員が操作するドア開閉用のドアハンドル11と、ドアアームレスト20とが設けられる。ドアアームレスト20は、前後方向細長の平面視略矩形状で、かつ、上下方向所定厚さに形成され、内壁10から車室102内側に膨出された、内部が空洞であるベース部12の上端開口12aを塞ぐようにベース部12上に載置される。図示は省略するが、内壁10には、ウインドウ13の開閉指令やドア110のロック装置の作動指令等を入力する操作スイッチと、ドア110を把持するドア把持部と、ドリンクホルダ等も設けられる。
【0020】
ドアアームレスト20は、使用位置にある左側のシートアームレスト4に対し、シート100を中心にしてほぼ左右対称の位置に設けられる。すなわち、ドアアームレスト20は、使用位置にあるシートアームレスト4と同様、シートバック2の側面2bに沿って前後方向に延在し、かつ、シートクッション1よりも上方に位置する。これにより例えば自動運転モードにおいて、乗員の一方の腕部をシートアームレスト4上に、他方の腕部をドアアームレスト20上にそれぞれ載置することができ、乗員はリラックスした体勢で乗車できる。
【0021】
ドアアームレスト20は、本実施形態に係るアームレスト装置50を構成する。本実施形態の特徴的構成として、ドアアームレスト20は、ベース部12に対し、前方かつ上方に移動可能に構成される。図2は、第1実施形態におけるドアアームレスト20の支持機構30の構成を示す斜視図(左斜め後方から見た図)であり、図3は、側面図(図2の矢視III図)である。なお、ベース部12の図示は省略する。
【0022】
図2,3に示すように、支持機構30は、ベース部12の内部に配置されたリンク機構を有する。リンク機構は、左右一対の棒状の前ロッド31,32と、左右一対の棒状の後ロッド33,34とを有する。これらのロッド31~34の長さは互いに等しく、かつこれらのロッド31~34は、互いに平行に設けられる。図3に示すように、前ロッド31,32は側面視で互いに重なって位置し、後ロッド33,34も側面視で互いに重なって位置する。
【0023】
後ロッド33,34の下端部は、左右方向に延在する回転軸22にそれぞれ固定され、回転軸22は、ベース部12の底部に回転可能に支持される。回転軸22の端部には、電動モータなどのアクチュエータ35が設けられ、アクチュエータ35の駆動により回転軸22が回転し、回転軸22の回転に伴い後ロッド33,34が回転軸22を支点にして前後方向に回動する。
【0024】
前ロッド31,32の下端部は、左右方向に延在する回転軸21を介してベース部12の底部にそれぞれ回転可能に支持される。前ロッド31,32の上端部は、左右方向に延在する回転軸23を介してドアアームレスト20の底面に回転可能に支持される。後ロッド33,34の上端部は、左右方向に延在する回転軸24を介してドアアームレスト20の底面に回転可能に支持される。
【0025】
回転軸21から回転軸23までの距離および回転軸22から回転軸24までの距離は互いに等しい。また、回転軸21から回転軸22までの距離および回転軸23から回転軸24までの距離は互いに等しい。このため、支持機構30は、前ロッド31,32および後ロッド33,34を2辺とする側面視平行四辺形リンクを構成する。
【0026】
ドアアームレスト20が通常位置P1(図3の実線)に位置するときには、回転軸21よりも回転軸23の方が後方に位置し、回転軸22よりも回転軸24の方が後方に位置する。したがって、前ロッド31,32および後ロッド33,34は、それぞれ上方にかけて後方に傾斜して延在する。この状態からアクチュエータ35の駆動により、後ロッド33,34が例えば鉛直状態(図3の点線)になるまで矢印Aに示すように前方に回動すると、前ロッド31,32も同時に前方に回動する。その結果、ドアアームレスト20が通常位置P1よりも前方かつ上方の突出位置P2(図3の点線)に移動する。
【0027】
ドアアームレスト20を前方かつ上方の突出位置P2に移動させるだけでなく、さらに図2に示すように、突出位置P2よりも左側(乗員側)の突出位置P3に移動させるように支持機構30を構成することもできる。この場合、例えば前方かつ左方に回動するように回動方向がガイド等により規制された単一または複数のロッド、すなわちドアアームレスト20の底面を支持する単一または複数のロッドを設けるように支持機構30を構成し、アクチュエータ35の駆動によりそのロッドを前方かつ左方に回動させて突出位置P3に移動させればよい。あるいは、ドアアームレスト20を回転軸23,24に沿ってスライド可能に支持するとともに、ボールねじ等を用いて、ドアアームレスト20を回転軸23,24に沿って左方にスライドさせて突出位置P3に移動させるようにしてもよい。
【0028】
図示は省略するが、伸縮可能なロッドをベース部12によって支持するとともに、ロッドの先端部にドアアームレスト20を固定するようにしてもよい。この場合、ロッドが縮退状態においてドアアームレスト20を通常位置P1に位置させる一方、アクチュエータ(例えばエアシリンダ)の駆動によりロッドを前方または前方かつ左方に伸長させることで、ドアアームレスト20を突出位置P2または突出位置P3に移動させるようにしてもよい。
【0029】
本実施形態に係るアームレスト装置50は、以上のように移動可能に構成されたドアアームレスト20を有する。図4は、本発明の第1実施形態に係るアームレスト装置50の制御構成を示すブロック図である。図4に示すように、アームレスト装置50は、ドアアームレスト20の制御に係るコントローラ51と、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークを介してそれぞれコントローラ51に接続された、手動自動切換スイッチ55と、外部検出器56と、腕位置検出器57と、バイブレータ36と、アクチュエータ35とを有する。
【0030】
手動自動切換スイッチ55は、例えばドライバが手動操作可能なスイッチとして構成され、スイッチ操作に応じて、自動運転機能を有効化した自動運転モードまたは自動運転機能を無効化した手動運転モードへの切換指令を出力する。手動自動切換スイッチ55の操作によらず、所定の走行条件が成立したときに、手動運転モードから自動運転モードへの切換、あるいは自動運転モードから手動運転モードへの切換が指令されるようにしてもよい。すなわち、手動自動切換スイッチ55が自動的に切り換わることで、モード切換が手動ではなく自動で行われるようにしてもよい。
【0031】
外部検出器56は、車両200の周辺情報である外部状況を検出する検出器である。具体的には、車両200の全方位の照射光に対する散乱光を測定して車両200から周辺の障害物までの距離を測定するライダ、電磁波を照射し反射波を検出することで車両200の周辺の他車両や障害物等を検出するレーダ、車両200に搭載され、CCDやCMOS等の撮像素子を有して車両200の周辺(前方、後方および側方)を撮像するカメラなどにより、外部検出器56を構成することができる。
【0032】
腕位置検出器57は、シート100に着座している乗員の腕部がドアアームレスト20上に置かれているか否かを検出する検出器である。腕位置検出器57は、例えばドアアームレスト20に作用する腕の重さによる圧力を検出する圧力センサ、ドアアームレスト20の近傍を撮影する車載カメラなどにより構成することができる。
【0033】
バイブレータ36は、ドアアームレスト20を振動させる振動用のアクチュエータである。バイブレータ36は、例えばドアアームレスト20に内蔵され、あるいはドアアームレスト20の支持部に設けられる。バイブレータ36の作動による振動はドアアームレスト20を介して乗員の腕部に伝達され、これにより、車両200に物体(他車両等)が衝突するおそれがあることを、乗員に対し報知することができる。
【0034】
コントローラ51は電子制御回路(ECU)であり、動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶部および入出力インタフェース(I/Oインタフェース)、その他の周辺回路を備えたマイクロコンピュータを含んで構成される。コントローラ51は、記憶部に予め記憶されているプログラムを読み出して所定の処理を実行する。
【0035】
コントローラ51は、機能的構成として、衝突予測部52と、振動制御部53と、アームレスト制御部54とを有する。なお、図4では、便宜上、単一のコントローラ51(ECU)を示すが、単一のECUではなく、複数のECUで各部の機能を担わせるようにしてもよい。すなわち、コントローラ51を、CAN等の車載ネットワークを介して通信可能な複数のマイクロコンピュータで構成することもできる。
【0036】
衝突予測部52は、外部検出器56から入力された信号に基づいて車両(自車両)200の周囲の物体を検出するとともに、検出した物体の特徴からその物体の種類(歩行者、車両等)を判別する。衝突予測部52は、検出した物体を監視し、監視対象物体毎に車両200との衝突確率αを演算する。衝突確率αの演算は、監視対象物体の車両200への接近速度を考慮して行う。衝突予測部52は、車両200と衝突予測物体との衝突形態(前面衝突/左右側面衝突/後突)を判定し、特定の衝突(例えば左右側面衝突)の場合の衝突確率αを演算するようにしてもよい。
【0037】
衝突予測部52は、車両200との衝突確率αが予め定められた所定値α1以上の監視対象物体を検知すると、車両200と監視対象物体とが衝突する可能性が高いと判定し、第1衝突予測信号を出力する。衝突予測部52は、衝突確率αが第1所定値α1以上である限り、第1衝突予測信号を連続して出力し、衝突確率αが第1所定値α1未満になると、第1衝突予測信号の出力を停止する。
【0038】
さらに衝突予測部52は、衝突確率αが所定値α1よりも大きい所定値α2以上の監視対象物体を検知すると、車両200と監視対象物体とが衝突すると予測し、第2衝突予測信号を出力する。第1衝突予測信号および第2衝突予測信号には、車両200と衝突予測物体との衝突形態(前面衝突/左右側面衝突/後突)を表す情報も含まれる。
【0039】
振動制御部53は、衝突予測部52から第1衝突予測信号が出力されると、腕位置検出器57により検出された乗員の腕部の位置がドアアームレスト20上であるか否かを判定する。そして、ドアアームレスト20上であると判定すると、バイブレータ36に制御信号を出力し、バイブレータ36を作動させる。これによりドアアームレスト20が振動する。衝突予測部52からの第1衝突予測信号の出力が停止すると、振動制御部53は、バイブレータ36の作動を停止する。
【0040】
アームレスト制御部54は、衝突予測部52から第2衝突予測信号が出力されると、腕位置検出器57により検出された乗員の腕部の位置がドアアームレスト20上であるか否かを判定する。そして、ドアアームレスト20上であると判定すると、アクチュエータ35に制御信号を出力し、ドアアームレスト20を通常位置P1から図2の突出位置P2または突出位置P3に移動させる。
【0041】
図5は、予め記憶されたプログラムに従い図4のコントローラ51のCPUで実行されるアームレスト移動に係る処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば手動自動切換スイッチ55により自動運転モードが指令されると開始され、手動運転モードに切り換わるまで、所定周期で繰り返される。
【0042】
まず、ステップS1で、外部検出器56と腕位置検出器57とからの信号を読み込む。次いでステップS2で、外部検出器56から入力された信号に基づいて車両200の周囲の物体を検出するとともに、検出した物体が車両200(例えば車両右側面)へ衝突する衝突確率αを演算する。次いでステップS3で、衝突確率αが所定値α1以上であるか否かを判定する。ステップS3で肯定されると、ステップS4に進み、否定されると処理を終了する。
【0043】
ステップS4では、腕位置検出器57からの信号に基づいて、乗員の腕部がドアアームレスト20上に置かれているか否かを判定する。ステップS4で肯定されるとステップS5に進み、否定されると処理を終了する。ステップS5では、バイブレータ36に制御信号を出力し、バイブレータ36を作動させる。これにより乗員は、例えば車両200に他車両が接近して衝突の可能性があることを、腕部の振動を通じて認識することができる。
【0044】
次いで、ステップS6で、ステップS2で演算された衝突確率αが所定値α2以上であるか否かを判定する。ステップS6で肯定されるとステップS7に進み、否定されると処理を終了する。ステップS7では、アクチュエータ35に制御信号を出力し、ドアアームレスト20を通常位置P1からその前方かつ上方の突出位置P2に移動させる。これにより腕部が前方かつ上方に移動させられるため、乗員は例えば他車両の衝突に備えて容易に見構えることができる。
【0045】
第1実施形態に係るアームレスト装置50の動作をより具体的に説明する。自動運転モードにおいては、乗員は車両200を運転操作する必要がないため、例えば両腕をドアアームレスト20とシートアームレスト4の上にそれぞれ置いてリラックスした状態で乗車する場合がある。このとき、例えば車両200の右側方から車両200に他車両が接近して衝突確率αが所定値α1以上になると、バイブレータ36が作動する(ステップS5)。
【0046】
これにより乗員は、車両200に他車両が衝突する可能性があることを容易に認識することができる。すなわち、自動運転モードで、乗員が寝ているときや音楽を聴いているときなどには、音声によって車両200の所定の状況を報知しても乗員は気付かないことがあるが、バイブレータ36の振動によって報知することで、乗員は車両200の所定の状況を容易に気付くことができる。その結果、乗員は自ら身構え姿勢をとることができる。また、身構え姿勢をとるために移動させることが必要となる腕部に対して振動を与えるため、乗員は反射的に腕部を持ち上げるようになり、身構え姿勢をとりやすい。
【0047】
車両200は周囲の状況を監視して自動運転するため、他車両が接近したときに車両200が退避するスペースがあれば、そのスペースに車両200を移動して衝突を回避することができる。すなわち、自動運転による衝突回避の動作が実行される。衝突回避の動作を実行した後は、衝突確率αが所定値α1未満になるため、バイブレータ36の作動が停止する。
【0048】
一方、退避スペースがない、あるいは退避スペースがあっても退避が間に合わない等の理由により、車両200に他車両がさらに接近して衝突確率が所定値α2(>α1)以上になると、アクチュエータ35が駆動し、ドアアームレスト20が通常位置P1から前方かつ上方の突出位置P2に移動する(ステップS7)。これにより乗員の腕部が前方かつ上方に移動させられるため、乗員は容易に身構え姿勢をとることができる。すなわち、一般に人は危険な状況を察知すると腕部を前方に上げて身構えるが、本実施形態によれば、ドアアームレスト20の移動により乗員の腕部が前方に持ち上げられるため、身構え姿勢を容易にとることができる。特に、他車両が車両200の右側壁に接近したときに、右腕を持ち上げて見構え姿勢をとることで、乗員は障害物の衝突に対し適切に身構えることができる。
【0049】
乗員の腕部がドアアームレスト20に置かれていないときは(ステップS4)、衝突確率αが所定値α1以上になっても、バイブレータ36は作動せず、衝突確率αが所定値α2以上になってもドアアームレスト20は通常位置P1のままである。すなわち、この場合には、バイブレータ36の作動やドアアームレスト20の移動によって乗員に身構えさせることは困難であるため、不要な動作が省略される。なお、ステップS4の処理を省略し、乗員の腕部がドアアームレスト20に置かれているか否かに拘らず、衝突確率αに応じてバイブレータ36を作動およびアクチュエータ35を駆動するようにしてもよい。
【0050】
本発明の第1実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)アームレスト装置50は、車両200のドア110の内側空間に配置されたシート100に着座する乗員の腕部を支持するドアアームレスト20と、通常位置P1から通常位置P1よりも前方かつ上方の突出位置P2へドアアームレスト20を移動可能に支持する支持機構30と、支持機構30に設けられ、車両200に他車両の衝突等による衝撃が作用すると予測されると、ドアアームレスト20を通常位置P1から突出位置P2へ移動させるアクチュエータ35と、を備える(図3,4)。この構成により、乗員の腕部を前方かつ上方に移動させることができ、車両200に他車両が衝突する前に、乗員は容易に身構え姿勢をとることができる。
【0051】
(2)支持機構30は、通常位置P1よりも前方かつ上方であり、さらに左右方向内側(車幅方向内側)の突出位置P3に、ドアアームレスト20を移動可能に支持することもできる(図2)。これにより、例えば車両200のドア110に他車両が衝突しそうなときに、乗員の腕部は他車両から逃げる方向に移動するため、乗員を適切に保護することができる。
【0052】
(3)通常位置P1から突出位置P2へ移動可能なアームレストは、ドア110の内壁10に設けられるドアアームレスト20である(図1)。このため、例えば他車両がドア110に衝突する場合に、ドア110側の腕部が持ち上げられて乗員は最適な見構え姿勢をとることができる。
【0053】
(4)アームレスト装置50は、他車両の衝突等でドア110に衝撃が作用すると予測されると、ドアアームレスト20を通常位置P1から突出位置P2へと移動させるようにアクチュエータ35を制御するコントローラ51をさらに備える(図4)。このように側突に対応して車両側部のドアアームレスト20を移動させることで、乗員を適切に見構えさせることができる。また、コントローラ51からの指令により、アクチュエータ35を最適なタイミングで駆動することができる。
【0054】
(5)アームレスト装置50は、ドアアームレスト20を振動させるバイブレータ36をさらに備える(図4)。これによりドアアームレスト20上の腕部により見構え姿勢をとるべきことを、乗員に対し適切に報知することができる。
【0055】
(6)通常位置P1から突出位置P2へと移動可能なドアアームレスト20を有するアームレスト装置50は、自動運転機能を有する自動運転車両200に適用される。自動運転車両200においては、乗員はドアアームレスト20に腕部を置いてリラックスした姿勢で乗車することが多いため、本実施形態のように自動運転車両200に、可動式のドアアームレスト20を有するアームレスト装置50を適用することが特に効果的である。
【0056】
-第2実施形態-
図6図8を参照して本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態では、シート100が前方を向いている場合にドアアームレスト20を車両前方の突出位置P2に移動可能に構成したが、本実施形態では、シート100が後方を向くことも可能であり、この場合にドアアームレスト20を適切に移動させるようにしたのが第2実施形態である。なお、以下では、第1実施形態との相違点を主に説明する。
【0057】
図6は、第2実施形態に係るドアアームレスト20の支持機構40の構成を示す側面図である。なお、図3と同一の箇所には同一の符号を付す。図6に示すように、支持機構40は、側面視で重なって配置された伸縮可能な左右一対の前シリンダ41,42および左右一対の後シリンダ43,44を有する。前シリンダ41,42と後シリンダ43,44とは、それぞれシリンダチューブとシリンダチューブ内を伸縮可能に配置されたシリンダロッドとを有する。
【0058】
後シリンダ43,44のシリンダチューブの下端部は、回転軸22にそれぞれ固定される。回転軸の端部にはアクチュエータ35が設けられ、後シリンダ43,44は、アクチュエータ35の駆動により回転軸22を支点にして回転軸22と一体に回転する。前シリンダ41,42のシリンダロッドの上端部は、回転軸23を介してドアアームレスト20の底面に回転可能に支持される。後シリンダ43,44のシリンダロッドの上端部は、回転軸24を介してドアアームレスト20の底面に回転可能に支持される。前シリンダ41,42のシリンダチューブの下端部は、回転軸21を介してベース部12の底部に回転可能に支持される。
【0059】
図6の実線に示すように、ドアアームレスト20が通常位置P1にあるときは、シリンダ41~44は最大に縮退し、かつ、上下方向に延在する。この状態からアクチュエータ35の正転駆動によりシリンダ41~44が前方に回動し、かつ、シリンダ41~44が最大に伸長すると、ドアアームレスト20は通常位置P1よりも前方かつ上方の前側の突出位置P2に移動する。一方、アクチュエータ35の逆転駆動によりシリンダ41~44が後方に回動し、かつ、シリンダ41~44が最大に伸長すると、ドアアームレスト20は通常位置P1よりも後方かつ上方の後側の突出位置P4に移動する。
【0060】
なお、図6の構成で、ドアアームレスト20を通常位置P1よりも前方かつ上方でさらに車幅方向内側の突出位置(図2のP3)に移動させるようにしてもよい。また、ドアアームレスト20を通常位置P1よりも後方かつ上方でさらに車幅方向内側の突出位置に移動させるようにしてもよい。
【0061】
図7は、本発明の第2実施形態に係るアームレスト装置50の制御構成を示すブロック図である。なお、図4と同一の箇所には同一の符号を付す。図7に示すように、第2実施形態では、図4の構成に加え、さらに姿勢検出器58と制御弁37とがコントローラ51に接続される。
【0062】
姿勢検出器58は、例えば回転機構5(図1)に設けられたロータリーエンコーダなどの角度センサにより構成され、軸線CL2を中心としたシート100の回転角を検出することでシート100の姿勢(第1姿勢、第2姿勢)を検出することができる。なお、シート100を撮影する車載カメラにより姿勢検出器58を構成することもできる。
【0063】
制御弁37は、例えばエア源から前シリンダ41,42と後シリンダ43,44とに駆動エアを供給する管路に配置される。制御弁37は、例えばドアアームレスト20を突出位置P2,P4に移動するときに開放され、これによりシリンダ41~44にエアが供給されてシリンダ41~44が伸長する。なお、制御弁37の代わりに電動モータなどのアクチュエータを用いてシリンダ41~44を伸長させてもよい。
【0064】
図8は、予め記憶されたプログラムに従い図7のコントローラ51のCPUで実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば自動運転モードで車両200を運転中に開始され、所定周期で繰り返される。なお、図5と同一の箇所には同一の符号を付す。
【0065】
図8に示すように、ステップS6で衝突確率αが所定値α2以上と判定されると、ステップS11に進み、姿勢検出器58からの信号に基づいてシート100が第1姿勢であるか第2姿勢であるかを判定する。ステップS11で、シート100が第1姿勢であると判定されるとステップS12に進み、図5のステップS7と同様、アクチュエータ35に制御信号を出力し、アクチュエータ35を正方向に回転駆動(正転駆動)させる。これによりシリンダ41~44が前方に回動する。次いで、ステップS13で制御弁37に制御信号を出力し、シリンダ41~44を伸長させる。これによりドアアームレスト20が前方の突出位置P2に移動する。
【0066】
一方、ステップS11で、シート100が第2姿勢であると判定されるとステップS14に進み、アクチュエータ35に制御信号を出力し、アクチュエータ35を逆方向に回転駆動(逆転駆動)させる。これによりシリンダ41が後方に回動する。次いで、ステップS13で制御弁37に制御信号を出力し、シリンダ41~44を伸長させる。これによりドアアームレスト20が後方の突出位置P4に移動する。
【0067】
第2実施形態は、第1実施形態で述べた作用効果に加え、以下のような作用効果を奏する。すなわち、シート100は、乗員が車両200の前方(第1方向)を向く第1姿勢と車両200の後方(第2方向)を向く第2姿勢とに回転機構5を介して姿勢変更可能に構成される。支持機構40は、通常位置P1から車両前方かつ上方の突出位置P2と車両後方かつ上方の突出位置P4とにドアアームレスト20を移動可能に支持する(図6)。これにより、シート100が第1姿勢のときに他車両の衝突が予測されると、ドアアームレスト20を車両前方かつ上方の突出位置P2に移動し、その一方、シート100が第2姿勢のときに他車両の衝突が予測されると、ドアアームレスト20を車両後方かつ上方の突出位置P3に移動することができる。
【0068】
これにより乗員が車両前方および車両後方のいずれを向いて着座している場合であっても、乗員は腕部を前方かつ上方に移動させることができる。したがって、車両200への他車両の衝突が予測されるとき、シート100の姿勢によらずに乗員に良好に見構えさせることができる。すなわち、自動運転車両200においては、乗員の運転操作が不要な場合があるため、乗員はシート100を後方に向けて着座している場合があるが、この場合でもドアアームレスト20の移動により乗員に良好に見構えさせることができる。
【0069】
-第3実施形態-
図9図11を参照して本発明の第3実施形態について説明する。上記第1および第2実施形態では、ドアアームレスト20を前後方向かつ上方に移動可能に構成したが、第3実施形態では、さらにシートアームレスト4を前後方向かつ上方に移動可能に構成する。なお、以下では、第1実施形態との相違点を主に説明する。
【0070】
図9は、シート100を車両内側(例えば車両左方)から見た側面図である。図9に示すように、シートアームレスト4は、シート100の左側(ドア110の反対側)に配置された、内部が空洞である略直方体形状のベース部14の上端開口14aを塞ぐようにベース部14(便宜上、仮想線で示す)上に載置される。ベース部14は、略L字状の支持フレーム15を介してフロアから支持される。ベース部14内には、シートアームレスト4を移動可能に支持する支持機構60が配置される。
【0071】
支持機構60は、図3に示したドアアームレスト20の支持機構30と同様、平行四辺形リンクとして構成される。すなわち、支持機構60は、互いに同一長さに形成された左右一対の棒状の前ロッド61,62および左右一対の棒状の後ロッド63,64を有する。これらロッド61~64は互いに平行に配置される。後ロッド63,64の下端部は、左右方向に延在する回転軸66にそれぞれ固定され、回転軸66は、ベース部14の底部に回転可能に支持される。回転軸66の端部には、電動モータなどのアクチュエータ38が設けられ、アクチュエータ38の駆動により回転軸66が回転し、回転軸66の回転に伴い後ロッド63,64が回転軸66を支点にして前後方向に回動する。
【0072】
前ロッド61,62の下端部は、左右方向に延在する回転軸65を介してベース部14の底部にそれぞれ回転可能に支持される。前ロッド61,62の上端部は、左右方向に延在する回転軸67を介してシートアームレスト4の底面に回転可能に支持される。後ロッド63,64の上端部は、左右方向に延在する回転軸68を介してシートアームレスト4の底面に回転可能に支持される。
【0073】
シートアームレスト4が使用位置P5(図9の実線)に位置するときには、回転軸65よりも回転軸67の方が後方に位置し、回転軸66よりも回転軸68の方が後方に位置する。したがって、前ロッド61,62および後ロッド63,64は、それぞれ上方にかけて後方に傾斜して延在する。この状態からアクチュエータ38の駆動により、後ロッド63,64が例えば鉛直状態(図9の点線)になるまで矢印Bに示すように前方に回動すると、前ロッド61,62も同時に前方に回動する。その結果、シートアームレスト4が使用位置P5よりも前方かつ上方の突出位置P6(図9の点線)に移動する。
【0074】
シートアームレスト4を前方かつ上方の突出位置P6に移動させるだけでなく、さらに突出位置P6よりも右側(乗員側)の突出位置に移動させるように支持機構60を構成することもできる。例えば、ドアアームレスト20を乗員側の突出位置P3(図2)に移動するように構成した場合に、シートアームレスト4も乗員側に移動するように構成する。なお、シートアームレスト4を、前方かつ上方で、乗員の反対側(ドア110の反対側)に移動するように支持機構60を構成してもよい。
【0075】
図10は、本発明の第3実施形態に係るアームレスト装置50の制御構成を示すブロック図である。なお、図4と同一の箇所には同一の符号を付す。図10に示すように、第3実施形態では、図4の構成に加え、さらに腕位置検出器59とアクチュエータ38とバイブレータ39とを有する。
【0076】
腕位置検出器59は、シート100に着座している乗員の腕部がシートアームレスト4上に置かれているか否かを検出する検出器である。腕位置検出器59は、腕位置検出器57と同様、例えばシートアームレスト4に作用する腕の重さによる圧力を検出する圧力センサ、シートアームレスト4の近傍を撮影する車載カメラなどにより構成することができる。バイブレータ39は、バイブレータ36と同様、シートアームレスト4を振動させる振動用のアクチュエータである。
【0077】
図11は、予め記憶されたプログラムに従い図10のコントローラ51のCPUで実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば自動運転モードで車両200を運転中に開始され、所定周期で繰り返される。なお、図5と同一の箇所には同一の符号を付す。
【0078】
図11に示すように、ステップS3で衝突確率αが所定値α1以上と判定されると、ステップS21に進み、腕位置検出器57,59からの信号に基づいて、乗員の腕部がアームレスト上に置かれているか否か、すなわちドアアームレスト20上およびシートアームレスト4上に置かれているか否かを判定する。ステップS21で肯定されるとステップS22に進み、否定されると処理を終了する。ステップS21では、一対のバイブレータ36,39に制御信号を出力し、バイブレータ36,39を作動させる。なお、ステップS21で、乗員の右腕部のみがアームレスト(ドアアームレスト20)上に載置されていると判定すると、バイブレータ36のみを作動し、左腕部のみがアームレスト(シートアームレスト)4上に載置されていると判定すると、バイブレータ39のみを作動するようにしてもよい。
【0079】
次いで、ステップS6で、ステップS2で演算された衝突確率αが所定値α2以上であるか否かを判定する。ステップS6で肯定されるとステップS23に進み、一対のアクチュエータ35,38に制御信号を出力し、ドアアームレスト20を通常位置P1(図3)からその前方かつ上方の突出位置P2に移動させるとともに、シートアームレスト4を使用位置P5からその前方かつ上方の突出位置P6に移動させる。これにより乗員の両腕部が前方かつ上方に移動させられるため、乗員は例えば他車両の衝突に備えて容易に見構えることができる。
【0080】
第3実施形態は、第1実施形態で述べた作用効果に加え、以下のような作用効果を奏する。すなわち、通常位置P1,使用位置P5から前方かつ上方の突出位置P2,P6に移動可能なアームレストとして、ドア110の内壁面にドアアームレスト20(第1アームレスト)を設けるとともに、ドアアームレスト20の左右反対側のシート100の側方にシートアームレスト4(第2アームレスト)を設ける(図9)。これにより、左右のアームレスト4,20を同時に移動可能であるため、車両200への他車両の衝突が予測されたときに、乗員は良好に身構え姿勢をとることができる。
【0081】
-変形例-
上記実施形態は種々の形態に変形することができる。以下、変形例について説明する。上記実施形態では、ドアアームレスト20またはシートアームレスト4の全体を移動させるようにしたが、一部のみを移動させるようにしてもよい。例えば先端部のみが移動または中央部のみが移動するようにしてもよい。上記実施形態(例えば第1実施形態)では、他車両の衝突が予測されると、コントローラ51がドアアームレスト20を前方かつ上方に移動させるようにアクチュエータ35を制御したが、制御部の構成は上述したものに限らない。例えば振動部としてのバイブレータ36を省略するとともに、振動制御部53を省略してもよい。衝突予測部52が車両の側壁(ドア110)への衝突の有無を予測し、側壁への衝突が予測されるときに、側壁側のアームレストを駆動するようにアームレスト制御部54を構成してもよい。なお、側壁はドア以外であってもよく、したがって、ドアアームレストは、シートに着座した乗員の腕部の位置に対応してドア以外のフレームの側壁に設けられてもよい。
【0082】
上記実施形態では、少なくともドアアームレスト20を通常位置P1(第1位置)から乗員の前方かつ上方の突出位置P2,P3,P4(第2位置)に移動させるようにしたが、左右いずれか一方または左右両方のシートアームレスト4のみを前方かつ上方に移動させるようにしてもよい。すなわち、本発明は、車両等の乗物の側壁の内側空間に配置された乗物用シートに着座する乗員の腕部を支持する種々のアームレストに適用することができる。上記実施形態では、支持機構30,40,60によりアームレスト(ドアアームレスト20、シートアームレスト4)を通常位置P1または使用位置P5から突出位置P2,P3,P4,P6に移動可能に支持するようにしたが、支持機構の構成は上述したものに限らず、したがって、支持機構に設けられるアクチュエータの構成も上述したものに限らない。アームレストはシート以外および側壁以外(例えば車体フロア)に設けられてもよい。シート以外に設けられるアームレストで、ドアアームレスト以外のものも、便宜上、シートアームレストと呼ぶことがある。
【0083】
図12は、支持機構の他の例を示す側面図である。図12では、アームレストAR(ドアアームレストまたはシートアームレスト)が伸縮可能なシリンダ72を介して支持フレーム71から上下動可能に載置される。支持フレーム71の下端部は、車体フロア上に前後方向に延設されたレール73に沿って前後方向にスライド可能に支持される。この構成において、他車両等の衝突が予測されると、図示しないアクチュエータ(モータやシリンダ)の駆動により矢印Aに示すように支持フレーム71を前方に移動させるとともに、シリンダ72の伸長により矢印Bに示すようにアームレストARを上方に移動させる。これによりアームレストARは第1位置(図12の実線)から前方かつ上方の第2位置(図12の点線)に移動することができる。
【0084】
図13は、支持機構のさらに別の例を示す平面図である。図13では、アームレストAR(ドアアームレストまたはシートアームレスト)の後端部が支持ロッド74を介して支持部75を支点に回動可能に支持される。支持部75は、例えば車体フロア上またはシート100からシリンダ76を介して上方に立設される柱状部材である。この構成において、他車両等の衝突が予測されると、シリンダ76が伸長してアームレストARが上方に移動するとともに、支持部75に設けられたアクチュエータ(例えばモータ)の駆動により矢印Aに示すように支持ロッド74が前方に向けて回動される。アームレストARは、例えばリンク機構を介して先端部が常に前方を向くように支持ロッド74に支持されており、これによりアームレストARは第1位置(図13の実線)から前方かつ上方の第2位置(図13の点線)に移動することができる。
【0085】
本実施形態の車両用シート100は、車両200の運転モードに応じて、以下に示すような形態をとってもよい。すなわち、例えば、レベル4以上の自動運転モードが設定され、乗員によりシート100を後方にリクライニングする操作がなされたときに、ドア110側のシートアームレスト4を使用状態に位置させるように回動する電動モータを設けてもよい。さらに、乗員の腕部が載置可能な部分の面積が拡張するように、アームレスト4,20内にサブアームレストを前方にスライド移動させるように設けてもよい。
【0086】
レベル2やレベル3の自動運転モードでは、運転者はステアリングホイールから手を離してはいるものの、緊急時等に即座にステアリングホイールを操作可能なようにステアリングホイールの近傍に手を置いておく必要があり、このことが運転者にとって負担となりやすい。そこで、所定の自動運転モードが設定された場合に、シート100に着座する乗員の上腕(肩の関節と肘ひじの関節との間の部分)を下方から支持する補助アームレストを、シート100に設けるようにしてもよい。補助アームレストとしては、例えば、シート100の土手部(乗員をホールドするようにシートの左右両端部から前方に突出した部分)に回動自在に設けられる回動式補助アームレストを採用することができる。回動式補助アームレストは、手動運転モードが設定されている場合、運転者に触れない位置に格納される。車両の運転モードが手動運転モードから所定レベルの自動運転モードに切り替えられると、回動式補助アームレストは、回動して乗員の上腕を下方から支持する支持位置に配置される。この構成によれば、所定レベルの自動運転モードにおいて、補助アームレストによって上腕を支持することができるため、運転者の疲労を軽減することができる。また、運転者は、スマートフォン等の情報端末の操作を容易に行うことも可能であり、快適性を向上することができる。
【0087】
補助アームレストの構成は、上記回動式補助アームレストに限定されない。例えば、シート100の土手部の一部に膨張可能な膨張部を設け、この膨張部を補助アームレストとして用いてもよい。車両の運転モードが手動運転モードに設定されている場合、膨張部は収縮状態であり、所定レベルの自動運転モードに切り替えられると、膨張式補助アームレストが膨張し、膨張部により運転者の上腕を下方から支持する。この場合も、運転者の疲労を軽減することができる。
【0088】
アームレスト(例えばシートアームレスト4)を電動モータ等により回動可能に構成するとともに、アームレストの先端部に電動モータ等により回動可能に取り付けられる補助アームレストを設けてもよい。この補助アームレストは、車両200の運転モードが手動運転モードに設定されている場合、アームレストの先端部から前方に延在するように配置される。車両200の運転モードが例えばレベル3以上の自動運転モードに設定されると、電動モータ等によりアームレストが格納状態まで移動し、さらに、補助アームレストが電動モータ等により90度回転し、運転者の上腕を下方から支持する。この場合も、運転者の疲労を軽減することができる。
【0089】
自動運転モードが設定された場合に操作可能となる入出力装置をアームレスト(例えばシートアームレスト4)に設けてもよい。入出力装置は、例えば、方向指示灯、前照灯、ワイパー等を操作するためのスイッチ、自動運転に関する切替操作部、各種情報を表示するとともに乗員の手指等の接触を検知するタッチセンサを有する操作パネル、その他、各種操作入力を行うための操作部等を含む。入出力装置は、例えば、アームレストの先端部における上面または側面に設けられるトラックボール、タッチパネル等により構成することができる。入出力装置は、乗員を撮影するカメラによる撮像データを用いたジェスチャーコントロール機能を備えた装置を用いてもよく、乗員の音声を認識する音声認識機能を備えてもよい。
【0090】
アームレスト4,20に照明部を設けてもよい。照明部は、アームレストの動作、車両の運転モードに応じて点灯、消灯が制御される。例えば、照明部は、自動運転モードから手動運転モードに切り替えられるときに、点滅するように制御され、手動運転モードに切り替えられることを運転者に報知する。また、照明部は、アームレストが移動する際、移動中であることを認識させるために点滅したり、移動方向を認識させるように点灯部が移動したりするように構成してもよい。また、照明部は、例えばレベル3以上の自動運転モードが設定されている場合に、乗員の手元にある対象物を照らすように制御される。さらに、照明部は、例えば乗員が車両を乗り降りする際に点灯するように制御される。なお、照明部は、任意の場所を照らすことができるように、移動可能に設けられることが好ましい。
【0091】
アームレスト4,20は、手動運転モードのときと自動運転モードのときとで、乗員の腕部が載置される部位の幅を変更可能に構成することもできる。例えば、シートアームレスト4の使用状態において、所定レベル(例えばレベル4以上)の自動運転モードが設定され、乗員によりシート100をリクライニングさせる操作が行われると、アームレストの長手方向に沿って延びる軸を中心に90度程度アームレストを回動させる。これにより、手動運転モードのときに側面であった部位が、上面に位置し、乗員の腕部を載せることが可能になる。つまり、手動運転モードのときにおけるアームレスト4の側面の幅が、上面の幅よりも大きくなるように、アームレスト4を縦長の矩形断面形状に形成しておくことで、所定レベルの自動運転モードが設定されたときに、乗員の腕部を支持する部位の幅を拡張することができる。このように、自動運転レベル、および/またはリクライニングの操作に応じて、アームレストにおける乗員の腕部が載置される部位の幅を可変可能に構成することにより、車両内での快適性を向上することができる。自動運転モードから手動運転モードへの切換時に、アームレストを可動してステアリングホイールに運転者の腕部を誘導させるようにしてもよい。
【0092】
アームレスト4,20に液晶パネル等の表示装置を設けてもよい。さらに、シート100のリクライニングの角度に応じて、表示装置の表示画面の角度を変更するようにしてもよい。表示装置には、例えばアームレスト内に配策されるハーネスを介して車両後方を撮影する車載カメラからの情報が入力され、表示装置には、例えば車両の後方の映像を表示することができる。これにより、自動運転状態のときに、乗員はアームレストの表示装置の表示画面によって、車両の後方の様子を確認することができる。
【0093】
アームレストに車内カメラを取り付けるようにしてもよい。この場合、例えばアームレストに設けられた車内カメラにより撮影された運転者の画像情報が車内状況監視用のECUに出力され、運転者がモニタリングされる。アームレストにスマートフォン等の情報端末を保持するホルダや情報端末の充電が可能な充電器を設けてもよい。
【0094】
手動運転モードが設定されている場合のアームレスト4,20の可動範囲に比べて、自動運転モードが設定されている場合のアームレストの可動範囲が大きくなるように、可動範囲を調整可能な装置を設けてもよい。これにより、手動運転状態のときに、アームレストが意図せずに動くなどして、運転の妨げになるようなことが防止され、自動運転状態のときに、アームレストを任意の位置に移動させ、快適性を向上することができる。
【0095】
上記実施形態のように、シート100の左右にシートアームレスト4が設けられる形態では、ドア110側のシートアームレスト4が乗員の乗り降りの際に妨げとなる場合がある。このため、ドア110の開閉スイッチの操作に連動して、ドア側のシートアームレスト4の先端部が車外に位置するようにシートアームレスト4を回動させ、乗員の乗り降りの経路を確保するようにしてもよい。この場合、シートアームレスト4の先端部に設けられた照明部を点滅、あるいは点灯させ、後方の他車両の運転者に対し、ドア110が開閉され、シートアームレスト4が車外に突出している状態であることを報知することが好ましい。シートアームレスト4が車内から車外に向かって側方に延在して配置されるので、乗員が乗り降りする際につかまることができる。つまり、乗員が乗り降りする際のサポート部材として、シートアームレスト4を用いることができる。
【0096】
車両の運転モードに応じて、左右のアームレスト(例えばドアアームレスト20とシートアームレスト4)の間隔を変更するように構成してもよい。例えば、自動運転モードが設定されている場合の左右のアームレストの間隔を手動運転モードが設定されている場合に比べて大きくする。これにより、自動運転モードでの快適性を向上できる。この場合、自動運転モードから手動運転モードに切り替えられる際、左右のアームレストが運転者の胴体に近づくように移動し、左右のアームレストの間隔が小さくなる。運転者の腕部は、左右のアームレストの移動により、内側に移動させられるため、手動運転モードに切り替えられることを直感的に認識することができる。
【0097】
アームレストに種々の付属品を取り付けることもできる。例えばアームレストの先端部にテーブルを設けることもできる。図14はその一例を示すシート100の側面図である。図14では、左側のシートアームレスト4の先端部にテーブル77が設けられる。なお、テーブル77は、左右のアームレスト(ドアアームレスト20、シートアームレスト4)のいずれか一方に設けることができ、両方に設けることもできる。
【0098】
図14に示すように、テーブル77は、シートアームレスト4の前端部に連結される。シートアームレスト4の前端部には、左右一対の保持板78が設けられる。左右一対の保持板78間には、回動部材79が配置される。左右一対の保持板78および回動部材79には貫通孔が設けられ、この貫通孔に左右方向に延在するピン80が挿着される。このため、テーブル77は、ピン80を中心に、先端部がシートアームレスト4の下方に配置される位置(二点鎖線)と、先端部がシートアームレスト4の上方に配置される位置(実線)との間で回動可能である。
【0099】
回動部材79の端部には、前後方向に延在するピン81が設けられる。テーブル77は、基端部がピン81に回動可能に取り付けられる。つまり、テーブル77は、ピン81を中心に、図示の垂直方向に沿う位置と不図示の水平方向に沿う位置との間で回動可能である。なお、右側のドアアームレスト20には、テーブル77の右端部が載置される載置部が設けられる。載置部は、ドアアームレスト20の内側に収納可能である。
【0100】
テーブル77は、ステアリングホイールに沿って湾曲する湾曲部77aを有する。湾曲部77aは、テーブル77を水平方向に沿う位置に回動させた際にステアリングホイールに干渉しないように形成される逃げ部である。テーブル77を使用する際には、図14の二点鎖線で示される非使用状態のテーブル77を、矢印Aに示すようにピン80を中心に回動させて垂直に立ち上げた後、矢印Bに示すようにピン81を中心に回動させ、テーブル77の先端部をドアアームレスト20の載置部に載置させる。なお、テーブル77を載置部で固定するロック機構を設けてもよい。
【0101】
なお、テーブル77の右端部を固定する載置部を所定の回動角度で回動可能な構成としてもよい。例えば載置部は、左右方向に延在する回動軸を介してドアアームレスト20に連結され、回動軸を中心に、所定の回動範囲で回動可能に設けられる。これにより、テーブル77を所定の角度に傾斜させることができるので、シート100をリクライニングさせた状態のときに、テーブル77の角度を調整し、本やスマートフォン等の情報端末を乗員の見やすい位置に設定することができる。このため、自動運転状態における車両の快適性を向上することができる。
【0102】
上記実施形態では、回転機構5を介してシート100を回転可能に構成したが、回転機構5を省略し、シート100が常に前方を向くようにしてもよい。この場合、右側のシートアームレスト4を省略してもよい。上記実施形態では、手動自動切換スイッチ55により自動運転モードが指令されることを条件として、アームレスト移動に係る制御を行うようにしたが、手動運転モードが指令された場合であっても、同様にアームレスト移動に係る制御を行うようにしてもよい。この場合、運転席シートのアームレストを除き、他のアームレストを移動させるようにしてもよい。上記実施形態では、自動運転機能を有する自動運転車両に、アームレスト装置を適用したが、本発明のアームレスト装置は、自動運転機能を有しない車両にも適用することができる。上記実施形態では、車両用シートを乗物用シートの一例として説明したが、本発明は、種々の乗物における乗物用シートに適用可能である。
【0103】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0104】
4 シートアームレスト、20 ドアアームレスト、30,40,60 支持機構、35,38 アクチュエータ、36,39 バイブレータ、37 制御弁、50 アームレスト装置、51 コントローラ、100 シート、110 ドア、200 車両
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