(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/04 20060101AFI20230705BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20230705BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20230705BHJP
C08G 63/06 20060101ALI20230705BHJP
C08G 63/60 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
C08L67/04
C08K5/13
C08K5/49
C08G63/06
C08G63/60
(21)【出願番号】P 2020512232
(86)(22)【出願日】2019-04-01
(86)【国際出願番号】 JP2019014437
(87)【国際公開番号】W WO2019194117
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2018072574
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】平川 学
(72)【発明者】
【氏名】吉村 康明
(72)【発明者】
【氏名】本多 栄一
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/190317(WO,A1)
【文献】特開2008-189902(JP,A)
【文献】国際公開第2012/035874(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L67
C08K5
C08G63
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される単位(A)を含有するポリエステル樹脂と、酸化防止剤と、を含み、
前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤
及びリン系酸化防止剤を含む、ポリエステル樹脂組成物。
【化1】
(前記一般式(1)において、R
1は水素原子、CH
3又はC
2H
5であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又はCH
3であり、nは0又は1である。)
【請求項2】
ポリエステル樹脂が、前記単位(A)、ジオール単位(B)、及びジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体単位(C)を有する共重合ポリエステル樹脂であり、
前記共重合ポリエステル樹脂の全単位中の前記単位(A)の含有量が10~95mol%である、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記フェノール系酸化防止剤が、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、4,4’,4’’-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、n-オクタデシル-3-(3、5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、及び3,9-ビス(2-(3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記リン系酸化防止剤がトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、及び3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記フェノール系酸化防止剤として、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン及び/又はペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]を含み、
前記リン系酸化防止剤として、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン及び/又はトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記フェノール系酸化防止剤が1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンである、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記リン系酸化防止剤が、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンである、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
前記フェノール系酸化防止剤の含有量が、前記ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.005~1質量部である、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
前記リン系酸化防止剤の含有量が、前記ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.005~1質量部である、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
透明樹脂は、近年では自動車の車内等、非常に高温となる環境下で用いられることもあり、その場合には樹脂の透明性に加え、熱による樹脂の黄変が起きにくいことが求められる。
【0003】
特許文献1に記載のシクロオレフィンポリマー(以下「COP」ということがある。)は、高い透明性と耐熱性を有する樹脂であり、透明性と耐熱性が要求される用途での利用が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のCOPは耐熱黄変性においてある程度は改善されている。しかしながら、自動車の車内等の高温となる環境下で当該COPを使用すると、黄着色がみられ、透明性や外観が損なわれるという問題がある。
【0006】
上記のとおり、高温となる環境下での使用により生じ得る黄着色を十分に防止でき、透明性も維持できる材料として、特許文献1の技術には未だ改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、ノルボルナン環骨格を有するポリエステル樹脂と酸化防止剤とを含むポリエステル樹脂組成物により、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
下記一般式(1)で表される単位(A)を含有するポリエステル樹脂と、酸化防止剤と、を含む、ポリエステル樹脂組成物。
【化1】
(前記一般式(1)において、R
1は水素原子、CH
3又はC
2H
5であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又はCH
3であり、nは0又は1である。)
[2]
ポリエステル樹脂が、前記単位(A)、ジオール単位(B)、及びジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体単位(C)を有する共重合ポリエステル樹脂であり、
前記共重合ポリエステル樹脂の全単位中の前記単位(A)の含有量が10~95mol%である、[1]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[3]
前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤を含む、[1]又は[2]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[4]
前記フェノール系酸化防止剤が、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、4,4’,4’’-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、n-オクタデシル-3-(3、5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、及び3,9-ビス(2-(3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、[3]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[5]
前記リン系酸化防止剤がトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、及び3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、[3]又は[4]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[6]
前記フェノール系酸化防止剤として、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン及び/又はペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]を含み、
前記リン系酸化防止剤として、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン及び/又はトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトを含む、[3]~[5]のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
[7]
前記フェノール系酸化防止剤が1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンである、[3]~[6]のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
[8]
前記リン系酸化防止剤が、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンである、[3]~[7]のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
[9]
前記フェノール系酸化防止剤の含有量が、前記ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.005~1質量部である、[3]~[8]のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
[10]
前記リン系酸化防止剤の含有量が前記ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.005~1質量部である、[3]~[9]のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、高温環境下における使用においても、透明性を維持できると共に黄着色による外観の悪化を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0011】
[樹脂組成物]
本実施形態のポリエステル樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される単位(A)を含有するポリエステル樹脂と、酸化防止剤と、を含む。このように構成されているため、本実施形態の樹脂組成物は、高温環境下における使用においても、透明性を維持できると共に黄着色による外観の悪化を防止できる。
本実施形態におけるポリエステル樹脂は、ノルボルナン環骨格に由来して、耐熱性や透明性等の各種物性に優れる傾向にあるが、かかる物性と、酸化防止剤が有する黄着色防止効果とが相俟って、本実施形態の所望とする効果を得ることができる。すなわち、本実施形態の樹脂組成物は、COP等の公知のポリマーと酸化防止剤とを組み合わせる場合に比べ、高温環境下での使用における黄着色防止効果を顕著に高めることができ、透明性も維持できる。
【化2】
(前記一般式(1)において、R
1は水素原子、CH
3又はC
2H
5であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又はCH
3であり、nは0又は1である。)
【0012】
(ポリエステル樹脂)
本実施形態におけるポリエステル樹脂は、上記一般式(1)で表される単位(A)(以下、「単位(A)」ともいう。)を有する限り特に限定されないが、当該ポリエステル樹脂は、単位(A)、ジオール単位(B)(以下、「単位(B)」ともいう。)、及びジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体単位(C)(以下、「単位(C)」ともいう。)を有する共重合ポリエステル樹脂(以下、単に「共重合ポリエステル樹脂」ともいう。)であって、前記共重合ポリエステル樹脂が有する全単位中、前記単位(A)の含有量が10~95mol%であることが好ましい。
【0013】
本実施形態において、共重合ポリエステル樹脂が有する全単位に対する単位(A)の含有量が10~95mol%である場合、耐熱性及び光学特性のバランスがより良好となる傾向にある。すなわち、上記含有量が10mol%以上である場合、十分な耐熱性及び光学特性が確保される傾向にあり、また、上記含有量が95mol%以下であると、良好な耐熱性及び光学特性を確保しつつも成形性が向上する傾向にある。上記と同様の観点から、単位(A)の含有量は、15~95mol%であることが好ましく、より好ましくは20~95mol%である。
【0014】
単位(A)において、一般式(1)中のR1は、好ましくは水素原子又はCH3であり、R2及びR3は、好ましくは水素原子である。本実施形態において、耐熱性の観点から、一般式(1)におけるR1、R2、及びR3が水素原子であることがより好ましい。
また、上記一般式(1)中のnは、耐熱性をより向上させる観点から、1であることが好ましい。
【0015】
構成単位(B)としては、ジオールに由来する単位であれば特に限定されず、その具体例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6-デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7-デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、ノルボルナンジオール、シクロヘキサンジオール、2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、アダマンタンジオール、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン、9,9-ビス(2-ヒドロキシエチル)フルオレン、キシリレングリコール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等のジオールに由来する単位が挙げられる。
構成単位(B)は、良好な透明性が得られることから、脂肪族ジオール又はカルド構造を有するジオールに由来する単位であることが好ましい。このような脂肪族ジオールに由来する単位としては、1,4-シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、トリシクロデカンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールに由来する単位がより好ましい。また、カルド構造を有するジオールに由来する単位としては、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンに由来する単位がより好ましい。
なお、これらの光学異性体は、シス体、トランス体、これらの混合物のいずれであってもよく、特に限定されない。
共重合ポリエステル樹脂が有する全単位に対する単位(B)の含有量は、2.5~45mol%であることが好ましく、より好ましくは2.5~40mol%である。
上記した単位は、1種を単独で含まれていてもよく、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0016】
構成単位(C)としては、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体に由来する単位であれば特に限定されず、その具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2-メチルテレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及び/又はその誘導体に由来する構成単位;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-カルボキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、5-カルボキシ-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-カルボキシエチル)-1,3-ジオキサン、1,4:5,8-ジメタノデカヒドロナフタレンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸及び/又はその誘導体に由来する単位;9,9-ビス(カルボキシメチル)フルオレン、9,9-ビス(1-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(1-カルボキシプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシブチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルブチル)フルオレン、9,9-ビス(5-カルボキシペンチル)フルオレン、9,9-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン等のカルド構造を有するジカルボン酸及び/又はその誘導体に由来する単位が挙げられる。
構成単位(C)は、良好な透明性が得られることから、脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、若しくはカルド構造を有するジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体に由来する単位であることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体に由来する単位としては、透明性及び耐熱性の物性バランスの観点から、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルに由来する単位がより好ましい。また、カルド構造を有するジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体に由来する単位としては、透明性及び耐熱性の物性バランスの観点から、9,9-ビス(メトキシカルボニルメチル)フルオレン、9,9-ビス(メトキシカルボニルエチル)フルオレン、9,9-ビス(メトキシカルボニルプロピル)フルオレンに由来する単位がより好ましい。
なお、これらの光学異性体は、シス体、トランス体、これらの混合物のいずれであってもよく、特に限定されない。
共重合ポリエステル樹脂が有する全単位に対する単位(C)の含有量は、2.5~45mol%であることが好ましく、より好ましくは2.5~40mol%である。
上記した単位は、1種を単独で含まれていてもよく、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0017】
本実施形態において、共重合ポリエステル樹脂は、単位(A)~(C)以外に、ヒドロキシル基及びカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体単位(A1)等の他の単位を含んでもよい。単位(A1)としては、特に限定はされないが、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシカプロン酸、4-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸等のオキシ酸及び/又はその誘導体に由来する単位等が挙げられる。
【0018】
本実施形態において、共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、十分な耐熱性を確保する観点から、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは105℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上であり、よりさらに好ましくは115℃以上であり、一層好ましくは120℃以上であり、より一層好ましくは130℃以上である。上記Tgは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。また、上記Tgは、例えば、共重合ポリエステル樹脂の原料モノマーの共重合比率を適宜調整すること等により上記範囲に調整することができる。
【0019】
本実施形態において、共重合ポリエステル樹脂の分子量は、所望する性能や取扱性などを考慮して適宜設定することができ、特に限定されないが、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が5000~200,000であることが好ましく、より好ましくは10,000~100,000である。Mwが5,000以上である場合、耐熱性を好ましく確保できる傾向にあり、Mwが200,000以下である場合、溶融粘度がより良好となり、製造後の樹脂の抜き取りがしやすく、更には流動性の観点から溶融状態で射出成形がしやすくなる傾向にある。
【0020】
(共重合ポリエステル樹脂の製造方法)
本実施形態における共重合ポリエステル樹脂は、単位(A)~(C)に対応する各単量体を共重合することにより、得ることができる。以下、単位(A)に対応する単量体の製造方法について説明する。かかる単量体は、例えば、下記一般式(2)で表される。
【0021】
【0022】
上記一般式(2)において、R1は、水素原子、CH3又はC2H5であり、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子又はCH3であり、Xは、水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシル基を含有してもよい炭化水素基である。
式(2)において、R1は、好ましくは水素原子又はCH3である。R2及びR3は、好ましくは水素原子である。上記炭化水素基としては、以下に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、2-ヒドロキシエチル基、4-ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
【0023】
本実施形態における一般式(2)で表される化合物は、ジシクロペンタジエン又はシクロペンタジエンと官能基を有するオレフィンを原料として、例えば、下記式(I)に示すルートで合成することが可能である。
【0024】
【化4】
(式(I)中、R
1は水素原子、CH
3又はC
2H
5であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又はCH
3であり、Xは水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシル基を含有してもよい炭化水素基である。)
【0025】
〔式(I)中の一般式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンの製造〕
前記一般式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンは、例えば、官能基を有するオレフィンとジシクロペンタジエンのディールスアルダー反応を行うこと等で製造することが可能である。
【0026】
前記ディールスアルダー反応に用いる官能基を有するオレフィンの具体例としては、以下に限定されないが、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-4-ヒドロキシブチル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ビニル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-4-ヒドロキシブチル、クロトン酸、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、3-メチルクロトン酸、3-メチルクロトン酸メチル、3-メチルクロトン酸エチル等が挙げられ、好ましいオレフィンとして、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチルが挙げられ、より好ましいオレフィンとしてメタクリル酸メチル、アクリル酸メチルが挙げられる。
【0027】
さらに、前記ディールスアルダー反応に用いる官能基を有するオレフィンの例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクロレイン、メタクロレインを挙げられる。これらのオレフィンを原料とする場合、例えば、下記式(II)、式(III)に示すルート等を経て一般式(4’)で表されるモノオレフィンを製造することができる。
【0028】
【化5】
(式(II)中、R
1は水素原子又はCH
3である)
【0029】
【化6】
(式(III)中、R
1は水素原子又はCH
3である)
【0030】
前記ディールスアルダー反応に用いるジシクロペンタジエンは高純度のものが好ましく、ブタジエン、イソプレン等の含有量を低減することが好ましい。ジシクロペンタジエンの純度は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。また、ジシクロペンタジエンは加熱条件下で解重合しシクロペンタジエン(所謂モノシクロペンタジエン)になる傾向にあるため、ジシクロペンタジエンの代わりにシクロペンタジエンを使用することも可能である。尚、一般式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンは、実質的に下記一般式(7)で表される炭素数8~16のモノオレフィン(1段目ディールスアルダー反応生成物)を経由して生成していると考えられ、生成した一般式(7)のモノオレフィンが新たな親ジエン化合物(Dienophile)として反応系内に存在するシクロペンタジエン(Diene)とディールスアルダー反応(2段目ディールスアルダー反応)に預かり、一般式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンが生成するものと考えられる。
以上の観点から、例えば、上記式(I)に示す反応ルートにおいて、1段目ディールスアルダー反応の反応条件を適宜制御することにより、式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンあるいは式(7)で表される炭素数8~16のモノオレフィンを選択的に得ることができる。
【0031】
【化7】
(式(7)中、R
1は水素原子、CH
3又はC
2H
5を示し、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又はCH
3を示し、Xは水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシル基を含有してもよい炭化水素基を示す。)
【0032】
前記2段階のディールスアルダー反応を効率的に進行させる、すなわち、式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンを選択的に得る観点からは、反応系内にシクロペンタジエンが存在することが重要であるため、反応温度として100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。一方で、式(7)で表される炭素数8~16のモノオレフィンを選択的に得るためには、反応温度として180℃未満が好ましい。なお、いずれの場合においても、高沸物質の副生を抑えるためには250℃以下の温度で反応を行うことが好ましい。
上記のようにして得られた式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンを、後述するヒドロホルミル化反応及び還元反応に供することで、式(1)においてn=1である場合に対応する単量体(すなわち、式(2)で表される化合物)を得ることができる。また、上記のようにして得られた式(7)で表される炭素数8~16のモノオレフィンを、同様のヒドロホルミル化反応及び還元反応に供することで、式(1)においてn=0である場合に対応する単量体(すなわち、式(8)で表される化合物)を得ることができる。
なお、反応溶媒として炭化水素類やアルコール類、エステル類等を使用することも可能であり、炭素数6以上の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、プロパノール、ブタノール等が好ましい。また、必要に応じて、AlCl
3等公知の触媒を添加してもよい。
【化8】
(上記式(8)において、R
1は、水素原子、CH
3又はC
2H
5であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又はCH
3であり、Xは、水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシル基を含有してもよい炭化水素基である。)
【0033】
前記ディールスアルダー反応の反応方式としては、槽型反応器等による回分式、反応条件下の槽型反応器に基質や基質溶液を供給する半回分式、管型反応器に反応条件下で基質類を流通させる連続流通式等、多様な反応方式を採ることが可能である。
【0034】
前記ディールスアルダー反応で得られた反応生成物は、そのまま次のヒドロホルミル化反応の原料として用いることもできるが、蒸留、抽出、晶析などの方法によって精製した後、次工程に供してもよい。
【0035】
〔式(I)中の(3)で表される炭素数14~22の二官能性化合物の製造〕
前記式(I)中の一般式(3)で表される炭素数14~22の二官能性化合物は、例えば、一般式(4)で表される炭素数13~21モノオレフィンと一酸化炭素及び水素ガスをロジウム化合物、有機リン化合物の存在下でヒドロホルミル化反応させること等で製造することができる。
【0036】
前記ヒドロホルミル化反応で使用されるロジウム化合物は、有機リン化合物と錯体を形成し、一酸化炭素と水素の存在下でヒドロホルミル化活性を示す化合物であればよく、その前駆体の形態は特に限定されない。例えば、ロジウムアセチルアセトナートジカルボニル(以下、Rh(acac)(CO)2と記す)、Rh2O3、Rh4(CO)12、Rh6(CO)16、Rh(NO3)3等の触媒前駆物質を有機リン化合物と共に反応混合物中に導入し、反応容器内で触媒活性を持つロジウム金属ヒドリドカルボニルリン錯体を形成させてもよいし、予めロジウム金属ヒドリドカルボニルリン錯体を調製してそれを反応器内に導入してもよい。好ましい具体例としてはRh(acac)(CO)2を溶媒の存在下で有機リン化合物と反応させた後、過剰の有機リン化合物と共に反応器に導入し、触媒活性を有するロジウム-有機リン錯体とする方法が挙げられる。
【0037】
本発明者らの検討により、一般式(4)で表されるような比較的分子量の大きな内部オレフィンを有する2段階ディールスアルダー反応生成物が極めて少量のロジウム触媒でヒドロホルミル化されることがわかっている。本ヒドロホルミル化反応におけるロジウム化合物の使用量は、ヒドロホルミル化反応の基質である一般式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィン1モルに対して0.1~60マイクロモルが好ましく、0.1~30マイクロモルがより好ましく、0.2~20マイクロモルが更に好ましく、0.5~10マイクロモルが特に好ましい。ロジウム化合物の使用量が炭素数13~21のモノオレフィン1モルに対して60マイクロモルより少ない場合、実用上、ロジウム錯体の回収リサイクル設備を設けなくてもよい水準と評価できる。このように、本実施形態によれば、回収リサイクル設備に関わる経済的負担を減らすことができ、ロジウム触媒にかかるコストを低減することが可能である。
【0038】
本実施形態におけるヒドロホルミル化反応において、ロジウム化合物とヒドロホルミル化反応の触媒を形成する有機リン化合物としては、特に限定されないが、例えば、一般式P(-Ra)(-Rb)(-Rc)で表されるホスフィン又はP(-ORa)(-ORb)(-ORc)で表されるホスファイトが挙げられる。Ra、Rb、Rcの具体例としては、以下に限定されないが、炭素数1~4のアルキル基又はアルコキシ基で置換され得るアリール基や、炭素数1~4のアルキル基又はアルコキシ基で置換され得る脂環式アルキル基等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイトが好適に用いられる。有機リン化合物の使用量はロジウム化合物中のロジウム原子に対して300倍モル~10000倍モルが好ましく、500倍モル~10000倍モルがより好ましく、更に好ましくは700倍モル~5000倍モル、特に好ましくは900倍モル~2000倍モルである。有機リン化合物の使用量がロジウム原子の300倍モル以上である場合、触媒活物質であるロジウム金属ヒドリドカルボニルリン錯体の安定性が十分に確保できる傾向にあり、結果として良好な反応性が確保される傾向にある。また、有機リン化合物の使用量がロジウム原子の10000倍モル以下である場合、有機リン化合物に掛かるコストを十分に低減する観点から好ましい。
【0039】
前記ヒドロホルミル化反応は溶媒を使用せずに行うことも可能であるが、反応に不活性な溶媒を使用することにより、より好適に実施することができる。ヒドロホルミル化反応に使用できる溶媒としては、一般式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィン、ジシクロペンタジエン又はシクロペンタジエン、前記ロジウム化合物、及び前記有機リン化合物を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、以下に限定されないが、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素類;脂肪族エステル、脂環式エステル、芳香族エステル等のエステル類;脂肪族アルコール、脂環式アルコール等のアルコール類;芳香族ハロゲン化物等の溶媒が挙げられる。これらのうち炭化水素類が好適に用いられ、中でも脂環式炭化水素、芳香族炭化水素がより好適に用いられる。
【0040】
前記ヒドロホルミル化反応を行う場合の温度としては40℃~160℃が好ましく、80℃~140℃がより好ましい。反応温度が40℃以上の場合には十分な反応速度が得られる傾向にある、原料であるモノオレフィンの残留がより抑えられる傾向にある。また、反応温度が160℃以下にすることで原料モノオレフィンや反応生成物由来の副生物の生成を抑え、反応成績の低下を効果的に防止できる傾向にある。
【0041】
本実施形態におけるヒドロホルミル化反応を行う場合、一酸化炭素(以下「CO」と記載することもある)及び水素(以下「H2」と記載することもある)ガスによる加圧下で反応を行うことが好ましい。その際、CO及びH2ガスは各々独立に反応系内に導入することも、また、予め調製された混合ガスとして反応系内に導入することも可能である。反応系内に導入されるCO及びH2ガスのモル比(=CO/H2)は0.2~5が好ましく、0.5~2がより好ましく、0.8~1.2が更に好ましい。CO及びH2ガスのモル比が上記範囲に調整する場合、ヒドロホルミル化反応の反応活性や目的とするアルデヒドの選択率が良好となる傾向にある。反応系内に導入したCO及びH2ガスは反応の進行に伴い減少していくため、予め調製されたCOとH2の混合ガスを利用すると反応制御が簡便な場合がある。
【0042】
前記ヒドロホルミル化反応の反応圧力としては、1~12MPaが好ましく、1.2~9MPaがより好ましく、1.5~5MPaが更に好ましい。反応圧力が1MPa以上とすることで十分な反応速度が得られる傾向にあり、原料であるモノオレフィンの残留を十分に抑制できる傾向にある。また、反応圧力が12MPa以下にすることで、耐圧性能に優れる高価な設備を必要としなくなるため経済的に有利である。特に、回分式や半回分式で反応を行う場合、反応終了後にCO及びH2ガスを排出・落圧する必要があり、低圧になるほどCO及びH2ガスの損失が少なくなるため経済的に有利である。
【0043】
前記ヒドロホルミル化反応を行う場合の反応方式としては、回分式反応や半回分式反応が好適である。半回分式反応はロジウム化合物、有機リン化合物、前記溶媒を反応器に加え、CO/H2ガスによる加圧や加温等を行い、既述の反応条件とした後に原料であるモノオレフィン又はその溶液を反応器に供給することにより行うことが可能である。
【0044】
前記ヒドロホルミル化反応で得られた反応生成物は、そのまま次の還元反応の原料として用いることも出来るが、例えば蒸留や抽出、晶析等により精製した後、次工程に供してもよい。
【0045】
〔式(2)で表される炭素数14~22の化合物の製造〕
前記式(I)中の一般式(2)で表される炭素数14~22の化合物は、一般式(3)で表される炭素数14~22の化合物を、水素化能を有する触媒及び水素の存在下で還元することにより製造することが出来る。
【0046】
前記還元反応では、水素化能を有する触媒として、銅、クロム、鉄、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、コバルト、及びパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む触媒を用いることが好ましい。より好ましい触媒としては、Cu-Cr触媒、Cu-Zn触媒、Cu-Zn-Al触媒等の他、Raney-Ni触媒、Raney-Co触媒等が挙げられ、さらに好ましい触媒はCu-Cr触媒、Raney-Co触媒である。
【0047】
前記水素化触媒の使用量は、基質である一般式(3)で表される炭素数14~22の化合物に対して1~100質量%、好ましくは2~50質量%、より好ましくは5~30質量%である。触媒使用量をこれらの範囲とすることで好適に水素化反応を実施することが出来る。触媒使用量が1質量%以上である場合、十分に反応が進行し、結果として目的物の収率を十分に確保できる傾向にある。また、触媒使用量が100質量%以下である場合、反応に供した触媒量と反応速度の向上効果とのバランスが良好となる傾向にある。
【0048】
前記還元反応の反応温度は60~200℃が好ましく、80℃~150℃がより好ましい。反応温度を200℃以下にすることで、副反応や分解反応の発生を抑制し高い収率で目的物が得られる傾向にある。また、反応温度を60℃以上にすることで、適度な時間で反応を完結させることができ、生産性の低下や目的物収率の低下を回避できる傾向にある。
【0049】
前記還元反応の反応圧力は、水素分圧として0.5~10MPaが好ましく、1~5MPaがより好ましい。水素分圧を10MPa以下にすることで、副反応や分解反応の発生を抑制し高い収率で目的物が得られる傾向にある。また、水素分圧を0.5MPa以上にすることで、適度な時間で反応を完結させることができ、生産性の低下や目的物収率の低下を回避できる傾向にある。尚、還元反応に不活性なガス(例えば窒素又はアルゴン)を共存させることも可能である。
【0050】
前記還元反応においては溶媒を使用することが可能である。還元反応に用いられる溶媒としては、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類等が挙げられ、中でも脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類が好ましい。その具体例としてはシクロヘキサン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、1-プロパノール等が挙げられる。
【0051】
前記還元反応の反応方式としては槽型反応器等による回分式、反応条件下の槽型反応器に基質や基質溶液を供給する半回分式、成型触媒を充填した管型反応器に反応条件下で基質や基質溶液を流通させる連続流通式等、多様な反応方式を採ることが可能である。
【0052】
前記還元反応で得られた反応生成物は、例えば蒸留や抽出、晶析等により精製することができる。
【0053】
本実施形態における一般式(2)で表される化合物又は式(8)で表される化合物を単位(A)に対応する単量体とし、単位(B)~(C)に対応する各単量体と共重合させる方法としては、特に限定されず、従来公知のポリエステルの製造方法を適用することができる。例えば、エステル交換法、直接エステル化法等の溶融重合法、又は溶液重合法等を挙げることができる。
【0054】
本実施形態の共重合ポリエステル樹脂の製造時には、通常のポリエステル樹脂の製造時に用いるエステル交換触媒、エステル化触媒、重縮合触媒等を使用することができる。これらの触媒としては特に限定されないが、例えば、亜鉛、鉛、セリウム、カドミウム、マンガン、コバルト、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ニッケル、マグネシウム、バナジウム、アルミニウム、チタン、アンチモン、ゲルマニウム、スズ等の金属の化合物(例えば、脂肪酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、塩化物、酸化物、アルコキシド)や金属マグネシウム等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。触媒としては、上記した中でマンガン、コバルト、亜鉛、チタン、カルシウム、アンチモン、ゲルマニウム、スズの化合物が好ましく、マンガン、チタン、アンチモン、ゲルマニウム、スズの化合物がより好ましい。これらの触媒の使用量は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂の原料に対して金属成分としての量が、好ましくは1~1000ppm、より好ましくは3~750ppm、更に好ましくは5~500ppmである。
【0055】
前記重合反応における反応温度は触媒の種類、その使用量などによるが、通常150℃から300℃の範囲で選ばれ、反応速度及び樹脂の着色を考慮すると180℃~280℃が好ましい。反応層内の圧力は、大気雰囲気下から最終的には1kPa以下に調節することが好ましく、最終的には0.5kPa以下とするのがより好ましい。
【0056】
前記重合反応を行う際には、所望によりリン化合物を添加してもよい。リン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、リン酸、亜リン酸、リン酸エステル、亜リン酸エステル等を挙げることができる。リン酸エステルとしては、以下に限定されないが、例えば、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸ブチル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジブチル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル等を挙げることができる。亜リン酸エステルとしては、以下に限定されないが、例えば、亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸ブチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリフェニル等を挙げることができる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態の共重合ポリエステル樹脂中のリン原子の濃度は1~500ppmが好ましく、5~400ppmがより好ましく、10~200ppmがさらに好ましい。
【0057】
また、本実施形態における共重合ポリエステル樹脂の製造時には、エーテル化防止剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤、重合調整剤等を使用することができる。
【0058】
本実施形態のポリエステル樹脂組成物には、酸化防止剤が含まれる。酸化防止剤とは、熱による酸化劣化や黄着色を防止する目的で樹脂に配合される添加剤を意味し、好ましい例としては、フェノール系酸化防止剤やリン系酸化防止剤が挙げられる。
【0059】
フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤はそれぞれ単独でも好ましく用いられるが、併用することで、フェノール系酸化防止剤が機能することにより生じる過酸化物をリン系酸化防止剤が補足するため、より黄着色を防止できる傾向にある。したがって、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とを併用することがより好ましい。すなわち、本実施形態における酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤を含むことが好ましい。
【0060】
フェノール系酸化防止剤は、特に限定されるものではないが、例えば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2-tert-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシメチルフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)スルフィド、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ブタン、ビス(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)スルフィド、ビス(3-tert-ブチル-5-エチル-2-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)スルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、エチレンビス[3,3-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブチラート]、ビス[2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)-4-メチル-6-tert-ブチルフェニル]テレフタレート、1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-メチルプロパン、4-メトキシフェノール、シクロヘキシルフェノール、p-フェニルフェノール、カテコール、ハイドロキノン、4-tert-ブチルピロカテコール、エチルガレート、プロピルガレート、オクチルガレート、ラウリルガレート、セチルガレート、β-ナフトール、2,4,5-トリヒドロキシブチロフェノン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)イソシアヌレート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,6-ビス[2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]ヘキサン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メタン、ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]スルフィド、n-オクタデシル-3-(3、5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、ビス[3-(3、5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルアミノ]ヘキサン、2,6-ビス(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-4-メチルフェノール、ビス[S-(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジ-メチルベンジル)]チオテレフタレート、トリス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、4,4’,4’’-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、1,1,3-トリス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)ブタン、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、ヒドロキシメチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、2,5-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-o-クレゾール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸のジエチルエステル、2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジ(α-メチルシクロヘキシル)-5,5’-ジメチル-ジフェニルメタン、6-(ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチル-チオ-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレン-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ桂皮酸アミド)、2,2-チオ[ジエチル-ビス-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゼンホスホン酸のジオクタデシルエステル、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、トリス[β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4ヒドロキシフェニル)プロピオニル-オキシエチル]イソシアヌレート、1,1-ビス(5-tert-ブチル-2-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-チオ-ジエチレンビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、3,9-ビス(2-(3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン、トリエチレングリコール-ビス(3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、N,N’-ビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスフォネート-ジエチルエステル、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,4―ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、ビス(3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、2,2-ビス〔4-(2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシハイドロシンナモイルオキシ))エトキシフェニル〕プロパン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、ジステアリル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0061】
上述したフェノール系酸化防止剤の中で、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、4,4’,4’’-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、n-オクタデシル-3-(3、5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、3,9-ビス(2-(3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンが好ましく、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンが特に好ましい。
【0062】
上述したフェノール系酸化防止剤は、各々単独で用いてもよく、2種類以上のフェノール系酸化防止剤を併用してもよい。
【0063】
リン系酸化防止剤は、特に限定されるものではないが、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(メチルフェニル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、2-エチルヘキシルジフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、トリス[デシルポリ(オキシエチレン)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリ(デシル)チオホスファイト、トリイソデシルチオホスファイト、フェニル・ビス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、フェニル・ジイソデシルホスファイト、テトラデシルポリ(オキシエチレン)・ビス(エチルフェニル)ホスファイト、フェニル・ジシクロヘキシルホスファイト、フェニル・ジイソオクチルホスファイト、フェニル・ジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニル・シクロヘキシルホスファイト、ジフェニル・イソオクチルホスファイト、ジフェニル・2-エチルヘキシルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、ジフェニル・シクロヘキシルフェニルホスファイト、ジフェニル・(トリデシル)チオホスファイト、ノニルフェニル・ジトリデシルホスファイト、フェニル・p-tert-ブチルフェニル・ドデシルホスファイト、ジイソプロピルホスファイト、ビス[オクタデシルポリ(オキシエチレン)]ホスファイト,オクチルポリ(オキシプロピレン)・トリデシルポリ(オキシプロピレン)ホスファイト、モノイソプロピルホスファイト、ジイソデシルホスファイト、ジイソオクチルホスファイト、モノイソオクチルホスファイト、ジドデシルホスファイト、モノドデシルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、モノシクロヘキシルホスファイト、モノドデシルポリ(オキシエチレン)ホスファイト、ビス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、モノシクロヘキシル・フェニルホスファイト、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラトリデシル・4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、テトラトリデシル・4,4’-ブチリデンビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェニル)ジホスファイト、テトライソオクチル・4,4’-チオビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェニル)ジホスファイト、テトラキス(ノニルフェニル)・ポリ(プロピレンオキシ)イソプロピルジホスファイト、テトラトリデシル・プロピレンオキシプロピルジホスファイト、テトラトリデシル・4,4’-イソプロピリデンジシクロヘキシルジホスファイト、ペンタキス(ノニルフェニル)・ビス[ポリ(プロピレンオキシ)イソプロピル]トリホスファイト、3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、ヘプタキス(ノニルフェニル)・テトラキス[ポリ(プロピレンオキシ)イソプロピル]ペンタホスファイト、ヘプタキス(ノニルフェニル)・テトラキス(4,4’-イソプロピリデンジフェニル)ペンタホスファイト、デカキス(ノニルフェニル)・ヘプタキス(プロピレンオキシイソプロピル)オクタホスファイト、デカフェニル・ヘプタキス(プロピレンオキシイソプロピル)オクタホスファイト、ビス(ブトキシカルボエチル)・2,2-ジメチレン-トリメチレンジチオホスファイト、ビス(イソオクトキシカルボメチル)・2,2-ジメチレントリメチレンジチオホスファイト、テトラドデシル・エチレンジチオホスファイト、テトラドデシル・ヘキサメチレンジチオホスファイト、テトラドデシル・2,2’-オキシジエチレンジチオホスファイト、ペンタドデシル・ジ(ヘキサメチレン)トリチオホスファイト、ジフェニルホスファイト、4,4’-イソプロピリデン-ジシクロヘキシルホスファイト、4,4’-イソプロピリデンジフェニル・アルキル(C12~C15)ホスファイト、2-tert-ブチル-4-[1-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]フェニルジ(p-ノニルフェニル)ホスファイト、ジトリデシル・4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジオクタデシル・2,2-ジメチレントリメチレンジホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、ヘキサトリデシル・4,4’,4’’-1,1,3-ブタントリイル-トリス(2-tert-ブチル-5-メチルフェニル)トリホスファイト、トリドデシルチオホスファイト、デカフェニル・ヘプタキス(プロピレンオキシイソプロピル)オクタホスファイト、ジブチル・ペンタキス(2,2-ジメチレントリメチレン)ジホスファイト、ジオクチル・ペンタキス(2,2-ジメチレントリメチレン)ジホスファイト、ジデシル・2,2-ジメチレントリメチレンジホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェイニル)フォスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニレンホスフォナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン-6-イル]オキシ]-N,N-ビス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン-6-イル]オキシ]-エチル]エタナミン、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、エチルジエチルホスホノアセテート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジラウリルホスフェート、ジステアリルホスフェート、ジフェニルホスフェート、ビスノニルフェニルホスフェート、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、トリラウリルフォスファイト、トリイソデシルホスファイト、フェニルイソデシルホスファイトなどの次亜リン酸、亜リン酸およびそのエステル類並びにこれらのリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛及びアルミニウム金属塩化合物;トリイソデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、ジヘキシル・オクタデシルホスフェート、デシル・ドデシル・トリデシルホスフェート、ジノニル・1-メチルペンチルホスフェート、ビス(2-メチルヘキサデシル)ペンタデシルホスフェート、エイコシル・ビス(12-トリデセニル)ホスフェート、トリス(シス-9-オクタデセニル)ホスフェート、シス-9-オクタデセニル・ジオクタデシルホスフェート、ジテトラデシルホスフェート、ジヘプチルホスフェート、ジオクタデシルホスフェート、ジドデシルホスフェート、ノニル・テトラデシルホスフェート、シス-9-オクタデセニル・オクタデシルホスフェート、ヘキサデシル・デシルホスフェート、ジエイコシルホスフェート、ビス(シス-9-オクタデセニル)ホスフェート、ドデシルホスフェート、オクタデシルホスフェート、エイコシルホスフェート及びオクチルホスフェート、トリス[メチルジ(オキシエチレン)]ホスフェート、トリス[ブチルジ(オキシエチレン)]ホスフェート、トリス(2-メトキシプロピル)ホスフェート、トリス(ヘキソキシエチル)ホスフェート、トリス[エチルジ(オキシプロピレン)]ホスフェート、トリス[ブチルポリ(オキシプロピレン)]ホスフェート、トリス[オクチルポリ(オキシプロピレン)]ホスフェート、トリス[フェニルポリ(オキシプロピレン)]ホスフェート、トリス[ドデシルポリ(オキシエチレン)]ホスフェート、トリス[プロピルポリ(オキシエチレン)]ホスフェート、トリス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]ホスフェート、ビス[エチルジ(オキシエチレン)]・2-(2-ヒドロキシプロポキシ)プロピルホスフェート、ビス[メチルジ(オキシエチレン)]・ブチルポリ(オキシプロピレン)ホスフェート、ジドデシル・エチルジ(オキシプロピレン)ホスフェート、トリデシル・2-メトキシプロピル・2-ヒドロキシエチルジ(オキシエチレン)ホスフェート、ビス[メチルジ(オキシエチレン)]・トリルホスフェート、オクチル・エチルジ(オキシエチレン)・ノニルフェニルホスフェート、テトラキス(2-メトキシエチル)・2,2’-オキシジエチルジホスフェート、テトラキス[エチルジ(オキシエチレン)]・2,2’-オキシビス(1-メチルエチル))ジホスフェート、テトラキス[アセチルジ(オキシエチレン)]・5,5’-オキシビス(3-オキサペンタメチレン)ジホスフェート、ビス[メチルトリ(オキシエチレン)]・ビス(2-メトキシエチル)・O,O’-プロピレンジ(オキシプロピレン)ジホスフェート、メチルジ(オキシエチレン)・エチルトリ(オキシプロピレン)・2,2’-ジメチレントリメチレン)ジホスフェート、トリ(オクタデシル)・2-オクトキシエチル・トリメチレンジホスフェート、ビス[メチルジ(オキシプロピレン)・ビス[エチルトリ(オキシエチレン)]・4,4’-メチレンジフェニルジホスフェート、ビス[テトラデシルポリ(オキシエチレン)]ホスフェート、ビス[メチルジ(オキシエチレン)]ホスフェートビス(フェノキシエチル)ホスフェート、ビス[2-ヒドロキシプロピルポリ(オキシプロピレン)]ホスフェート、ヘキサデシル・2-ヒドロキシエトキシエチルホスフェート、シクロヘキシルフェニル・プロピルジ(オキシエチレン)ホスフェート、ビス[ヘキシルポリ(オキシエチレン)]・エチレンポリ(オキシエチレン)ジホスフェート、プロピルジ(オキシプロピレン)・2-ヒドロキシプロピルジ(オキシプロピレン)ホスフェート、ビス[2-ヒドロキシプロピルポリ(オキシプロピレン)]ホスフェート、ドデシル・2-ヒドロキシエチルポリ(オキシエチレン)・4,4’-チオジフェニルジホスフェート、メチルジ(オキシエチレン
)ホスフェート、2-ヒドロキシプロピルジ(オキシプロピレン)ホスフェート、2-ヒドロキシプロピルポリ(オキシプロピレン)ホスフェート及びオクタデシルポリ(オキシエチレン)ホスフェート、ジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ジベンジルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリ-n-ブチルホスフェートなどのリン酸およびそのエステル類並びにこれらのリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛及びアルミニウム金属塩化合物;次亜リン酸、ポリリン酸等が挙げられる。
【0064】
上述したリン系酸化防止剤の中で、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが特に好ましい。
【0065】
上述したリン系酸化防止剤は、各々単独で用いてもよく、2種類以上のリン系酸化防止剤を併用してもよい。
【0066】
本実施形態において、高温環境下における黄着色をより効果的に防止する観点から、フェノール系酸化防止剤として、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン及び/又はペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]を含み、かつ、リン系酸化防止剤として、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン及び/又はトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトを含むことが好ましい。
【0067】
本実施形態における酸化防止剤として、上述したもの以外にも、ラクトン系酸化防止剤やイオウ系酸化防止剤、その他公知の酸化防止剤を使用することもできる。
【0068】
ラクトン系酸化防止剤としては、特に限定されないが、5,7-ジ-tert-ブチル-3-(3,4-ジ-メチルフェニル)-3H-ベゾフラン-2-オンが好ましい。
【0069】
イオウ系酸化防止剤としては、特に限定されないが、2,2-ビス{[3-(ドデシルチオ)-1-オキシプロポキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイルビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネート]、ジ(トリデシル)3,3’-チオジプロピオネートが好ましい。
【0070】
本実施形態に用いる酸化防止剤の含有量は、本実施形態に用いるポリエステル樹脂に対して0.005~1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.007~0.8質量部であり、さらに好ましくは0.01~0.7質量部である。含有量が0.005質量部以上である場合、重合時や成形時の加熱加工時においてポリエステル樹脂の劣化(黄着色、ゲル成分の発生、および分子量低下等)を好ましく防止できる傾向にあり、また十分な耐熱黄変性も確保できる傾向にある。また、1質量部以下である場合、成形時の金型へのブリードアウト等の問題を好ましく防止できる傾向にある。
上記同様の観点から、フェノール系酸化防止剤の含有量は、ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.005~1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.007~0.8質量部であり、さらに好ましくは0.01~0.7質量部である。同様に、リン系酸化防止剤の含有量は、ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.005~1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.007~0.8質量部であり、さらに好ましくは0.01~0.7質量部である。
【0071】
本実施形態のポリエステル樹脂組成物には、1種以上の紫外線吸収剤を含むものであってもよい。
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機系紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、オギザニリド系化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物などの有機系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの中で、有機系紫外線吸収剤であることが好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物又はベンゾオキサジノン系化合物であることがより好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物(ベンゾトリアゾール構造を有する化合物)であることが特に好ましい。
【0072】
ベンゾトリアゾール系化合物の具体例としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]等が挙げられ、中でも2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]が好ましい。
【0073】
ベンゾフェノン系化合物の具体例としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-n-ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0074】
サリシレート系化合物の具体例としては、以下に限定されないが、フェニルサリシレート、4-tert-ブチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0075】
シアノアクリレート系化合物の具体例としては、以下に限定されないが、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0076】
オギザニリド系化合物の具体例としては、以下に限定されないが、2-エトキシ-2’-エチルオキザリニックアシッドビスアリニド等が挙げられる。
【0077】
マロン酸エステル化合物としては、特に限定されないが、2-(アルキリデン)マロン酸エステル類が好ましく、2-(1-アリールアルキリデン)マロン酸エステル類がより好ましい。
【0078】
トリアジン系化合物の具体例としては、以下に限定されないが、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]-フェノール、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0079】
本実施形態において、使用しうる紫外線吸収剤成分の含有量は、本実施形態におけるポリエステル樹脂に対して0.005~1質量部とすることができ、好ましくは0.007~0.8質量部であり、より好ましくは0.01~0.7質量部である。含有量が0.005質量部以上である場合、十分な耐候性が確保される傾向にあり、1質量部以下である場合、成形時の金型へのブリードアウト等の問題を好ましく防止できる傾向にある。また、本実施形態の効果を損なわない範囲で、上述した他、種々公知の紫外線吸収剤を併用してもよい。
【0080】
本実施形態のポリエステル樹脂組成物には、上記の他、本実施形態の目的を損なわない範囲で、光安定剤、可塑剤、増量剤、艶消し剤、乾燥調節剤、帯電防止剤、沈降防止剤、界面活性剤、流れ改良剤、乾燥油、ワックス類、着色剤、分散剤、補強剤、表面平滑剤、レベリング剤、硬化反応促進剤、増粘剤等の各種添加剤、成形助剤を添加することができる。これらは種々公知のものを用いることができ、1種を単独で又は2種以上を併用して樹脂組成物に加えることができる。
【0081】
本実施形態において用いうる酸化防止剤、紫外線吸収剤、その他上述した種々の成分(以下、これらを総称して「添加剤」ともいう。)の添加方法としては、特に限定されないが、ポリエステル樹脂の重合反応を添加剤の存在下で行い含有させる方法、または重合工程において重合釜から抜き出しを行う前の溶融状態のポリエステル樹脂に添加剤を添加する方法、ポリエステル樹脂をペレット化した後に添加剤をドライブレンドする方法、押出機等を用いて溶融したポリエステル樹脂に添加剤を添加する方法が採用される。
【0082】
ポリエステル樹脂と添加剤成分との混合、混練には公知の装置を用いることができ、例えばタンブラー、高速ミキサー、ナウターミキサー、リボン型ブレンダー、ミキシングロール、ニーダー、インテンシブミキサー、単軸押出機、二軸押出機などの混合、混練装置を挙げることができる。また、ゲートミキサー、バタフライミキサー、万能ミキサー、ディゾルバー、スタティックミキサーなどの液体混合装置を用いることもできる。また、高濃度の添加剤成分を含む樹脂とポリエステル樹脂とを上記の方法、装置にて混合することもできる。
【0083】
本実施形態のポリエステル樹脂組成物は、本実施形態の所望とする効果を損なわない範囲で、本実施形態におけるポリエステル樹脂以外の樹脂を含むものとすることができる。そのような樹脂としては、特に限定されないが、例えば、本実施形態におけるポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアセタール樹脂及びメチルメタクリレート-スチレン共重合樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの樹脂をさらに含むことができる。これらは種々公知のものを用いることができ、1種を単独で又は2種以上を併用して樹脂組成物に加えることができる。これらの含有量としては、樹脂組成物中に10質量%以下とすることが好ましい。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。なお、評価方法は次の通りである。
【0085】
<ポリエステル樹脂の評価方法>
【0086】
(1)樹脂組成
ポリエステル樹脂中のジオール構成単位及びジカルボン酸構成単位の割合は、1H-NMR測定にて算出した。測定装置は、核磁気共鳴装置(日本電子(株)製、商品名:JNM-AL400)を用い、400MHzで測定した。溶媒には重クロロホルムを用いた。
【0087】
(2)重量平均分子量(Mw)
ポリエステル樹脂濃度が0.2質量%になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで検量した。GPCは東ソー株式会社製カラムTSKgel SuperHM-Mを用い、カラム温度40℃で測定した。溶離液はテトラヒドロフランを0.6ml/minの流速で流し、RI検出器で測定した。
【0088】
(3)ガラス転移温度(Tg)
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、次のように測定した。示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC/TA-60WS)を使用し、共重合ポリエステル樹脂約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30mL/分)気流中、昇温速度20℃/分で280℃まで加熱、溶融したものを急冷して測定用試料とした。該試料を同条件で測定し、DSC曲線の転移前後における基線の差の1/2だけ変化した温度をガラス転移温度とした。
【0089】
(4)耐熱黄変性
耐熱黄変性は厚さ3mm、直径50mmの円盤型の試験片を125℃の熱風乾燥機中にて1000時間保存後、試験前後の厚み方向(光路長3mm)の黄色度YIの差(ΔYI)にて評価した。なお、黄色度の測定はJIS K7103に準じ、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で日本電色工業株式会社製の曇価測定装置(型式:COH-400)にて行った。
【0090】
(5)全光線透過率
全光線透過率は厚さ3mm、直径50mmの円盤型の試験片を125℃の熱風乾燥機中にて1000時間保存後、試験前後の厚み方向(光路長3mm)の全光線透過率を日本電色工業株式会社製の曇価測定装置(型式:COH-400)にて測定した。
【0091】
<実施例1~9>
〔ポリエステル樹脂の製造〕
分縮器、全縮器、コールドトラップ、撹拌機、加熱装置、窒素導入管を備えた10Lのポリエステル製造装置に、原料モノマーであるデカヒドロ-1、4:5、8-ジメタノナフタレン-2-メトキシカルボニル-6(7)-メタノール4011.93g、エチレングリコール811.47g、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(シス/トランス=7/3)506.68g、及びエステル交換触媒として酢酸マンガン四水和物を1.24g仕込み、250℃まで昇温してエステル交換反応を行った。ジカルボン酸成分の反応転化率を90%以上とした後、酸化ゲルマニウム2.88g、及びリン酸1.65gを加え、昇温と減圧を徐々に行い、最終的に280℃、0.1kPa以下で重縮合を行った。適度な溶融粘度になった時点で反応を終了し、重量平均分子量48000、ガラス転移温度144℃のポリエステル樹脂をそれぞれ製造した。製造したポリエステル樹脂中のジオール構成単位及びジカルボン酸構成単位の割合は、デカヒドロ-1、4:5、8-ジメタノナフタレン-2-メトキシカルボニル-6(7)-メタノール、エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(シス/トランス=7/3)それぞれ、76mol%、12mol%、12mol%となった。
【0092】
〔ポリエステル樹脂組成物の製造〕
ポリエステル樹脂100質量部に対し、表1に記載の量(単位は質量部)の酸化防止剤、及び離型剤としてステアリン酸カルシウム0.1質量部をタンブラーを用いて乾式混合し、東洋精機製作所(株)製ラボプラストミルを用い、シリンダー温度260℃にて混練した。
尚、表中の添加剤として次のものを用いた。
酸化防止剤1:1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン;アデカ社製「アデカスタブAO-20」
酸化防止剤2:4,4’,4’’-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-tert-ブチル-m-クレゾール);アデカ社製「アデカスタブAO-30」、
酸化防止剤3:n-オクタデシル-3-(3、5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート;アデカ社製「アデカスタブAO-50」、
酸化防止剤4:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート];アデカ社製「アデカスタブAO-60」、
酸化防止剤5:3,9-ビス(2-(3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン;アデカ社製「アデカスタブAO-80」、
酸化防止剤6:3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン;アデカ社製「アデカスタブPEP-36」、
酸化防止剤7:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト;アデカ社製「アデカスタブ2112」
【0093】
〔試験片の作製〕
実施例1~9で調製したポリエステル樹脂組成物をスクリュー式射出成型機(JSW社製J55AD)を用い、シリンダー温度270℃、金型温度130℃の条件で3mm厚、直径50mmの円盤に成形し、各例の測定試料とした。
【0094】
<比較例1>
表1に示すとおり、酸化防止剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物の製造、試験片の作製を行い、比較例1の測定試料とした。
【0095】
<参考例>
実施例1のポリエステル樹脂の代わりに、日本ゼオン社製COP、ZEONEX F52Rを準備し、酸化防止剤を添加せず、スクリュー式射出成型機(JSW社製J55AD)を用い、シリンダー温度270℃、金型温度130℃の条件で3mm厚、直径50mmの円盤に成形し、参考例の測定試料とした。
【0096】
【0097】
本出願は、2018年4月4日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2018-072574)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、透明性、耐熱黄変性に優れている。本発明のポリエステル樹脂組成物を用いることで、透明性、耐熱黄変性に優れた成形体を製造することができ、スマートフォン用カメラレンズ、車載用カメラレンズ、LEDランプレンズ、ピックアップレンズ、f-θレンズ、LED照明用レンズ、眼鏡レンズ等のレンズ部材、導光板、光ファイバーなどの光学部材、位相差フィルム等の光学フィルム材料等に好適に用いることができ、本発明の工業的意義は大きい。