(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
B60L 53/124 20190101AFI20230705BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20230705BHJP
B60L 53/66 20190101ALI20230705BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230705BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20230705BHJP
H02J 50/60 20160101ALI20230705BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20230705BHJP
【FI】
B60L53/124
B60L3/00 N
B60L53/66
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/12
H02J50/60
H02J50/80
(21)【出願番号】P 2019128049
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】守屋 史之
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 裕太
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-123162(JP,A)
【文献】特開2016-201894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 53/124
B60L 3/00
B60L 53/66
H02J 7/00
H02J 50/12
H02J 50/60
H02J 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の電力を蓄積する主バッテリと、
車両外の送電設備から非接触に電力を受ける受電部と、
前記送電設備と通信が可能な通信部と、
前記送電設備と通信を行って前記受電部を介した受電の制御を行う制御部と、
異常の発生に基づき故障診断に寄与する異常履歴情報を記録する記録処理部と、
を備え、
前記受電部への電力伝送に異常が生じかつ前記制御部が前記送電設備から異物検知の通知を受けた場合に前記記録処理部が記録した異常履歴情報の方が、前記受電部への電力伝送に異常が生じかつ前記制御部が前記異物検知の通知を受けなかった場合に前記記録処理部が記録した異常履歴情報よりも、特定の読出機能により読み出したときにデータ量が少ないことを特徴とする電動車両。
【請求項2】
前記記録処理部は、前記受電部への電力伝送に異常が生じた場合でも、前記異物検知の通知に基づき、前記異常の発生に基づく異常履歴情報の一部又は全部の記録を非実行とすることを特徴とする請求項1記載の電動車両。
【請求項3】
前記記録処理部は、前記受電部への電力伝送の異常の発生に基づき異常履歴情報を記録した後、前記異物検知の通知に基づき、前記記録した異常履歴情報の一部又は全部を消去することを特徴とする請求項1記載の電動車両。
【請求項4】
前記記録処理部は、前記受電部への電力伝送の異常の発生に基づき異常履歴情報を記録した後、前記異物検知の通知に基づき、前記記録した異常履歴情報の一部又は全部を、前記特定の読出し機能を用いて読み出せないように設定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項5】
前記異常履歴情報には、異常内容を示すコードと、異常の際の車両状態を示すログデータとが含まれ、
前記記録処理部は、前記記録した異常履歴情報のうち少なくとも前記ログデータを、消去するか読み出せないように設定することを特徴とする請求項3又は請求項4記載の電動車両。
【請求項6】
携帯端末に情報を出力可能な情報出力部を更に備え、
前記記録処理部は、前記情報出力部から前記携帯端末へ非接触の電力伝送に異常が生じたことが通知された後に、前記記録した異常履歴情報を消去することを特徴とする請求項3記載の電動車両。
【請求項7】
前記記録処理部は、前記受電部への電力伝送に異常が発生した後、前記制御部が前記異物検知の通知を受けるか所定時間待機し、前記異物検知の通知がなかった場合に、前記異常履歴情報の記録を実行する一方、
前記所定時間の待機中、前記制御部が異物検知以外の異常を示す通知を受けた場合には、前記所定時間の経過
前に前記異常履歴情報の記録を実行することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触に電力を受ける受電部を有する電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地上設備から電動車両へ非接触に電力を伝送し、電動車両の主バッテリを充電する技術がある。このような技術を非接触充電と呼ぶ。非接触充電の際、送電部の近傍に異物があると、異物が発熱することがある。このため、異物が検知された場合には、非接触充電を停止する制御が行われる。
【0003】
特許文献1には、非接触充電中に車両が異物を検知した場合に、車両から送電装置へ送電停止を通知する技術が開示されている。さらに、特許文献1には、送電装置が異物を検知した場合に、その検知結果を電動車両へ通知することが示されている。
【0004】
従来、ECU(Electronic Control Unit)を備える自動車において、なんらかの異常が生じた場合に、異常履歴情報を記録し、メンテナンス時に異常履歴情報を読み出して故障診断に役立てる技術がある。記録される異常履歴情報には、異常内容を示すコード(DTC:Diagnostic Trouble Code)と、異常が生じたときの車両の各部の状態を示すログデータ(FFD: Freeze Flame Data)とが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
なんらかの故障で非接触充電が停止した場合、後の故障診断を容易にするため、非接触充電の異常に関する異常履歴情報が記録されると望ましい。一方、異物の検知で非接触充電が停止した場合、故障の場合と同様に異常履歴情報が記録されると、電動車両のメンテナンスの際、整備員は、故障箇所が存在しないのに、異常履歴情報から故障箇所を探す作業を行うこととなり、故障診断の効率が低下する。さらに、異常履歴情報の記憶部は容量が有限であるのに対し、記録期間の長さによっては異常履歴情報は膨大なデータ量となるため、無分別に異常履歴情報を記録したのでは、記憶部の容量が不足するという課題が生じる。
【0007】
本発明は、非接触充電に関する異常に対して、適切な異常履歴情報の記録を行うことのできる電動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、
走行用の電力を蓄積する主バッテリと、
車両外の送電設備から非接触に電力を受ける受電部と、
前記送電設備と通信が可能な通信部と、
前記送電設備と通信を行って前記受電部を介した受電の制御を行う制御部と、
異常の発生に基づき故障診断に寄与する異常履歴情報を記録する記録処理部と、
を備え、
前記受電部への電力伝送に異常が生じかつ前記制御部が前記送電設備から異物検知の通知を受けた場合に前記記録処理部が記録した異常履歴情報の方が、前記受電部への電力伝送に異常が生じかつ前記制御部が前記異物検知の通知を受けなかった場合に前記記録処理部が記録した異常履歴情報よりも、特定の読出機能により読み出したときにデータ量が少ないことを特徴とする電動車両である。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電動車両において、
前記記録処理部は、前記受電部への電力伝送に異常が生じた場合でも、前記異物検知の通知に基づき、前記異常の発生に基づく異常履歴情報の一部又は全部の記録を非実行とすることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の電動車両において、
前記記録処理部は、前記受電部への電力伝送の異常の発生に基づき異常履歴情報を記録した後、前記異物検知の通知に基づき、前記記録した異常履歴情報の一部又は全部を消去することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電動車両において、
前記記録処理部は、前記受電部への電力伝送の異常の発生に基づき異常履歴情報を記録した後、前記異物検知の通知に基づき、前記記録した異常履歴情報の一部又は全部を、前記特定の読出し機能を用いて読み出せないように設定することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載の電動車両において、
前記異常履歴情報には、異常内容を示すコードと、異常の際の車両状態を示すログデータとが含まれ、
前記記録処理部は、前記記録した異常履歴情報のうち少なくとも前記ログデータを、消去するか読み出せないように設定することを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項3記載の電動車両において、
携帯端末に情報を出力可能な情報出力部を更に備え、
前記記録処理部は、前記情報出力部から前記携帯端末へ非接触の電力伝送に異常が生じたことが通知された後に、前記記録した異常履歴情報を消去することを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電動車両において、
前記記録処理部は、前記受電部への電力伝送に異常が発生した後、前記制御部が前記異物検知の通知を受けるか所定時間待機し、前記異物検知の通知がなかった場合に、前記異常履歴情報の記録を実行する一方、
前記所定時間の待機中、前記制御部が異物検知以外の異常を示す通知を受けた場合には、前記所定時間の経過前に前記異常履歴情報の記録を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、受電部への電力伝送に異常が生じかつ異物検知の通知があった場合に記録される異常履歴情報の方が、異物検知の通知がない場合に記録される異常履歴情報よりも、特定の読取機能により読み出したときにデータ量が少ない。したがって、故障に基づく電力伝送の異常の場合には、故障診断に有益な異常履歴情報が多く読み出される一方、異物検知に基づく電力伝送の異常の場合には、故障診断に無益な異常履歴情報が多く読み出されてしまうことが抑制される。これらによって、非接触充電に関する異常に対して、適切な異常履歴情報の記録を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る電動車両を示すブロック図である。
【
図2】故障により非接触充電が停止された場合の処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図3】異物検知により非接触充電が停止された場合の第1例の処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図4】異物検知により非接触充電が停止された場合の第2例の処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図5】異物検知により非接触充電が停止された場合の変形例1の処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図6】異物検知により非接触充電が停止された場合の変形例2の処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る電動車両を示すブロック図である。本実施形態の電動車両1は、非接触充電機能を備えたEV(Electric Vehicle)又はHEV(Hybrid Electric Vehicle)である。電動車両1は、駆動輪2と、駆動輪2の動力を発生する走行モータ3と、走行用の電力を蓄積する主バッテリ11と、主バッテリ11の電力を変換して走行モータ3を駆動するインバータ12と、電磁作用により非接触に電力を受ける受電部31と、受電部31が受けた電力を整流する整流器32とを備える。さらに、電動車両1は、走行制御、ユーザインタフェースの制御及び非接触充電の制御等を行う制御部41と、非接触充電の際に地上設備100と通信を行う通信部33と、テレマティクスサービスを介してユーザの携帯端末と通信可能なテレマティクスサービス通信部39とを備える。テレマティクスサービス通信部39は、本発明に係る情報出力部の一例に相当する。
【0019】
主バッテリ11は、例えばリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池などであり、走行モータ3を駆動する電力を蓄積する。主バッテリ11は、走行モータ3を駆動する高電圧を出力し、高電圧バッテリと呼んでもよい。
【0020】
受電部31は、例えば電磁誘導方式あるいは磁気共鳴方式により非接触に伝送された電力を受ける受電コイルである。受電部31が地上設備100の送電部103に位置合せされた状態で、送電部103に交流電流が流されることで、受電部31に交流の起電力が生じる。
【0021】
制御部41は、搭乗者による運転操作の操作信号を入力し、操作信号に応じてインバータ12等を駆動して電動車両1の走行制御を行う。さらに、制御部41は、主バッテリ11の状態情報を管理するバッテリ管理部を含む。バッテリ管理部は、主バッテリ11の状態信号(放電電流、充電電流、電圧、温度等)を受け、主バッテリ11の充電率等を管理する。制御部41は、さらに、操作パネルを介した搭乗者の操作指令を入力し、電動車両1の各部の動作を制御する。操作パネルには、非接触充電の開始ボタンが含まれる。制御部41は、さらに、テレマティクスサービス通信部39を介してユーザの携帯端末に情報を出力する制御を行う。
【0022】
制御部41は、さらに、通信部33を介して地上設備100と通信しながら、非接触充電の制御を行う。非接触充電の際、制御部41は、主バッテリ11の管理情報(充電率(SOC:State Of Charge)、温度、入力制限電力など)に基づいて、主バッテリ11へ送る充電電流を計算し、この充電電流が得られるように地上設備100へ電力の伝送を要求する。
【0023】
制御部41は、さらに、電動車両1のいずかの箇所で異常が生じた場合に、故障診断に寄与する異常履歴情報を記録する記録処理部41aと、異常履歴情報が格納される異常履歴記憶部41bとを含む。異常履歴記憶部41bは、例えば不揮発性の記憶媒体から構成される。記録処理部41aは、制御部41のCPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することで実現されるソフトウェア機能モジュールであってもよいし、専用のハードウェアにより構成される機能モジュールであってもよい。
【0024】
制御部41は、1つのECU(Electronic Control Unit)から構成されてもよいし、互いに通信を行って連携して動作する複数のECUから構成されてもよい。
【0025】
通常、記録処理部41aは、電動車両1のいずれかの箇所で異常が生じた場合に、異常内容を示すコード(DTC)と、タイムスタンプと、異常が生じたときの車両の各部の状態を示すログデータ(FFD)とを、異常履歴記憶部41bに記録する。コード分けされた異常内容には、例えば、各ECUの異常、エンジンストール、非接触充電異常、等々が含まれる。タイムスタンプは、例えば、イグニションONの回数(通し数)とイグニションONを始端とした時間データにより記録される。ログデータは、種々のセンサから各ECUへ取り込まれた検出値、各ECUが計算した各種のパラメータ及び各種の制御データが含まれ、これらは異常箇所と直接に関係ないものが含まれてもよい。
【0026】
異常履歴記憶部41bに記録された異常履歴情報は、例えば電動車両1とは別に用意される診断ツールを用いて読み出される。診断ツールは、コンピュータであり、異常履歴情報の読出機能を有する。読出機能は、コンピュータのCPUが機能プログラムを実行することで実現されるソフトウェアである。診断ツールが制御部41にケーブル接続され、読出機能が実行されると、読出機能が制御部41と通信を行って、異常履歴情報を読み出し、診断ツールの表示部に異常履歴情報を一覧表示する。診断ツールは、例えば整備員又はメーカの開発者により使用される。読出機能には、整備員が使用する通常モードの読出機能と、開発者が使用可能な開発者モードの読出機能と、複数種類の読出機能が含まれていてもよく、この場合、本発明に係る特定の読出機能は、複数種類の読出機能のうちの任意の一つであってよい。例えば、整備員が使用する通常モードの読出機能が、本発明に係る特定の読出機能の一例に相当する。
【0027】
地上設備100は、電動車両1へ非接触で電力を伝送する送電設備である。地上設備100は、電磁作用により非接触で電動車両1の受電部31へ電力を伝送する送電部103と、商用電源等から電力を受けて送電部103へ交流電流を流すインバータ102と、非接触充電の際に電動車両1と通信を行う通信部106と、インバータ102を駆動して送電部103からの電力伝送を制御する送電制御部105とを備える。
【0028】
送電制御部105は、コンピュータであり、送電部103の近傍に異物がある場合に異物を検知する異物検知処理部105aを有する。異物検知処理部105aは、例えばCPUがプログラムを実行することで実現されるソフトウェア機能モジュールである。異物検知処理部105aは、電力伝送中、通信部106を介した通信により電動車両1から受電量を情報を受け取り、送電部103の送電量と電動車両1の受電量との差に基づいて、送電部103の近傍に異物が有るか無いかを判別する。異物が有ると、非接触伝送された電力の一部を異物が吸収し、その分、受電部31の受電量が低下するので、上記の方法で異物の検知が可能となる。なお、地上設備100は、別の異物検知部を用いて異物の検知を行ってもよい。異物検知部としては、例えば、異物による磁界の変化の検知、撮影画像を用いた異物の画像認識、超音波レーダ又は光学的なレーダ等を用いた検知など、様々な方法で異物を検知する構成が適用されてもよい。
【0029】
<非接触充電時の異常履歴記録処理:故障の場合>
図2は、故障により非接触充電が停止された場合の処理の流れを示すシーケンス図である。ユーザの開始ボタンの操作に基づき、制御部41が非接触充電の開始指令を受けると、制御部41と地上設備100の送電制御部105との連携により非接触充電の制御が開始される。開始期間T1において、先ず、制御部41は、電動車両1の位置合せ処理J11を実行する。位置合せ処理J11では、送電部103が弱励磁され、制御部41が、受電部31の起電力を計測しながら電動車両1の移動支援を行う。ユーザは、移動支援に従って電動車両1を移動させることで、受電部31と送電部103との位置を合わせることができる。位置合せによって、弱励磁された送電部103の電磁作用により、受電部31に所定量以上の起電力が生じ、制御部41は、この起電力に基づいて位置合せの完了を判別できる。
【0030】
開始期間T1において、位置合せ処理J11が完了すると、制御部41は、送電制御部105へ通信部33、106の無線通信を介して送電要求を行い、電力伝送が可能であれば送電制御部105は肯定の応答を戻す。そして、実際に電力伝送が実行される定期処理J12へ処理が移される。
【0031】
定期処理J12では、制御部41が、主バッテリ11の状態情報から適切な充電電力を計算し、送電制御部105へ要求電力を通知する。送電制御部105は、要求された電力が伝送されるようにインバータ102を駆動し、送電部103から受電部31へ非接触に電力を伝送する。伝送された電力は、整流器32で整流されて主バッテリ11へ送られ、主バッテリ11が充電される。定期処理J12において、送電制御部105は、異物検知処理部105aを動作させて、異物検知処理J13を実行する。
【0032】
何らかの故障又は異物の検知がなければ、上述の定期処理J12が繰り返されて、主バッテリ11の非接触充電が進行する。
【0033】
一方、
図2の期間T2に示すように、なんらかの故障があって、送電制御部105が設備異常を検出したとする(処理J16)。この場合、送電制御部105は、送電部103からの送電を停止する制御を行い、送電部103からの送電電力が減少(又は停止)し、電動車両1の制御部41が受電電力の異常としてこれを検出する(処理J31)。
【0034】
制御部41が、受電電力の異常を検出すると(処理J31)、制御部41の記録処理部41aは、所定時間を待機し(処理J32)、その間に、送電制御部105からなんらの通知がなけれぱ、異常履歴記憶部41bに上記異常に関する異常履歴情報を記録する(処理J33)。ここで記録される異常履歴情報は、非接触充電時の受電電力の異常を示すコード(例えばDTC)と、異常検出時から所定時間の電動車両1の各部の状態を示すログデータ(例えばFFD)とを含む。そして、非接触充電の処理が異常により終了する。
【0035】
電動車両1のメンテナンス時、整備員は、異常履歴情報を読み出して解析することで、非接触充電の異常停止があったことを識別でき、さらに、異常履歴情報に基づいて電動車両1又は地上設備100の故障診断を行うことができる。そして、故障診断の結果から故障箇所を特定し、部品交換等により、不具合を解消することができる。
【0036】
<非接触充電時の異常履歴記録処理:異物検知の場合>
図3は、異物検知により非接触充電が停止された場合の第1例の処理の流れを示すシーケンス図である。開始期間T1の処理の後、定期処理J12が繰り返されて、主バッテリ11の非接触充電が進行している際、送電部103の近傍に異物が進入する場合がある。この場合、期間T2Aに示すように、送電制御部105は、異物を検知し(処理J21)、異物の検知に基づいて送電を停止する制御を行い、送電部103から受電部31へ伝送される電力が減少(又は停止)する。
【0037】
電動車両1の制御部41は、受電部31が受電した電力の低下により、受電電力の異常を検出すると(処理J31)、制御部41の記録処理部41aは、
図2の場合と同様に、所定時間の待機処理J32を実行する。そして、その間に、送電制御部105から異物有り通知がなされると、記録処理部41aは、
図2の場合とは異なり、異常履歴情報の記録処理を非実行とする(処理J33b)。これにより、異物の検知に起因して非接触充電が停止された場合には、異常履歴情報の記録が行われない。したがって、
図2の故障の場合と比較して、異常履歴記憶部41bに記録される非接触充電に関する異常履歴情報のデータ量が少なくなる。データ量が少なくなるので、読出機能を用いて異常履歴情報を読み出した場合に、読み出された非接触充電に関する異常履歴情報のデータ量は、
図2の処理を経たものよりも、
図3の記録なしの方が小さくなる(例えばデータ量がゼロ)。
【0038】
<非接触充電時の異常履歴記録処理:異物検知の場合>
図4は、異物検知により非接触充電が停止された場合の第2例の処理の流れを示すシーケンス図である。
図3の場合と同様に、定期処理J12の繰り返しにより、主バッテリ11の非接触充電が進行している際、送電部103の近傍に異物が進入すると、期間T2Bに示すように、送電制御部105が異物を検知して(処理J21)、送電を停止する制御を行う。送電停止の制御に基づき、受電部31へ伝送される電力が減少(又は停止)すると、電動車両1の制御部41が、これを受電電力の異常として検出する(処理J31)。
【0039】
異常の検出に基づき、制御部41の記録処理部41aは、
図2及び
図3の場合と同様に、所定時間の待機処理J32を実行する。そして、その間に、送電制御部105から異常有り通知がないと、記録処理部41aは、異常履歴情報の記録処理J33を実行する。ここで記録される異常履歴情報には、非接触充電時の受電電力の異常を示すコードと、異常検出時から所定時間の電動車両1の各部の状態を示すログデータとが含まれる。さらに、記録処理部41aは、その後の所定時間の間に、送電制御部105から異物有りの通知がないか受信処理を継続し、異物有りの通知がなされた場合に、処理J33で記録した異常履歴情報を消去する処理J34を実行する。「異物有りの通知」は、本発明に係る「異物検知の通知」の一例に相当する。
【0040】
消去処理J34において、記録処理部41aは、異常内容を示すコードを残したまま、電動車両1の各部の状態を示すログデータのみを削除してもよいし、コードとログデータとの両方を削除してもよい。また、ログデータを削除する構成においても、ログデータを全部削除してもよいし、ログデータの一部を削除してもよい。消去処理J34により、
図2の故障の場合と比較して、異常履歴記憶部41bに記録される非接触充電に関する異常履歴情報のデータ量が少なくなる。データ量が少なくなるので、読出機能を用いて異常履歴情報を読み出した場合、読み出された非接触充電に関する異常履歴情報のデータ量は、
図2の処理を経たものよりも、
図4の処理を経たものの方が小さくなる。
【0041】
以上のように、本実施形態の電動車両1によれば、受電部31への電力伝送に異常が生じた後、異物有りの通知が行われた場合と、異物有りの通知が行われていない場合とで、前者の方が、異常履歴記憶部41bに記録される上記異常に関する異常履歴情報のデータ量が少なくなる。具体的には、異物有りの通知により、記録処理部41aによる異常履歴情報の記録が非実行にされるか(
図3)、記録処理部41aに一旦記録された異常履歴情報の一部又は全部が削除される(
図4)。したがって、なんらかの故障により電力伝送に異常が生じた場合には、故障診断に有益な異常履歴情報を多く残すことができる一方、異物検知に基づく異常の場合には異常履歴情報が少なくされて、故障診断に無益な異常履歴情報が多く残されてしまうことが防止される。よって、故障でない異常履歴情報に基づき無駄な故障診断が行われることを抑制できる。したがって、非接触充電に関する異常に対して、適切な異常履歴情報の記録を実現できる。
【0042】
さらに、本実施形態の電動車両1によれば、記録処理部41aが異常履歴情報を削除する際には、少なくともログデータが削除される。したがって、データ量の膨大な無益なデータが削除され、無益な情報によって異常履歴記憶部41bの容量が多く消費され、別の故障等が生じたときに異常履歴情報の記録が滞ってしまうといった事態を抑制できる。
【0043】
(変形例1)
変形例1の電動車両1は、非接触充電時の異常に基づく異常履歴情報の記録方法が異なるだけで、他の処理及び他の構成要素は実施形態1の電動車両1と同様である。
【0044】
図5は、異物検知により非接触充電が停止された場合の変形例1の処理の流れを示すシーケンス図である。実施形態1と同様に、定期処理J12の繰り返しにより、主バッテリ11の非接触充電が進行している際、送電部103の近傍に異物が進入すると、期間T2Cに示すように、送電制御部105が異物を検知して(処理J21)、送電を停止する制御を行う。送電停止の制御に基づき、受電部31へ充電される電力が減少(又は停止)すると、電動車両1の制御部41が、これを受電電力の異常として検出する(処理J31)。異常が検出されると、制御部41の記録処理部41aは、異常履歴情報の記録処理J36を実行する。異常履歴情報には、受電電力の異常を示すコードと、異常検出時から所定時間の電動車両1の各部の状態を示すログデータとが含まれる。記録処理部41aは、その後、所定の待機時間、地上設備100の送電制御部105から異物有りの通知があるか待機し、異物有りの通知がなければ、記録処理部41aの記録処理が終了する。
【0045】
一方、
図5の期間T2Cに示すように、異物検知に基づき送電制御部105から異物有りの通知C1があると、制御部41は、先ず、テレマティクスサービス通信部39を介してユーザの携帯端末へ非接触充電の異常停止(予期せぬ停止)があったことを通知する(処理J37)。そして、処理J37の通知が完了したら、制御部41の記録処理部41aが異常履歴情報を消去する(処理J38)。情報の消去は、ログデータのみの消去であってもよいし、コードとログデータの両方の消去であってもよい。変形例1では、ユーザの携帯端末に、非接触充電の異常停止があった記録が残るので、処理J38では、コードとログデータの全てが消去されてもよい。
【0046】
他方、処理J37において、通信不能等で時間切れとなり、携帯端末への通知が完了しなかった場合には、記録処理部41aは、処理J36の異常履歴情報の消去を行わないか、あるいは、通知完了した場合よりも少ないデータ削除に留める。そして、記録処理部41aは異常履歴情報の記録に関する処理を終了する。
【0047】
以上のように、変形例1の電動車両1によれば、異物検知に基づき受電電力異常が検出され、異常履歴情報が記録された後、ユーザの携帯端末への通知が行われ、かつ、携帯端末への通知が完了された場合に記録処理部41aが上記の異常履歴情報を削除する。したがって、携帯端末への通知により、異常履歴記憶部41bの容量を使用せずに、異常(非接触充電の異常停止の通知)の履歴を残すことができる。さらに、携帯端末に履歴を残せた場合に、異常履歴記憶部41bから上記異常に関する異常履歴情報が削除されるので、故障診断に無益な異常履歴情報で異常履歴記憶部41bの限られた容量が多く消費されることを抑制できる。
【0048】
(変形例2)
変形例2の電動車両1は、非接触充電時の異常に基づく異常履歴情報の記録方法の一部が異なるだけで、他の処理及び他の構成要素は実施形態1又は変形例1の電動車両1と同様である。
【0049】
図6は、異物検知により非接触充電が停止された場合の変形例2の処理の流れを示すシーケンス図である。実施形態1と同様に、定期処理J12の繰り返しにより、主バッテリ11の非接触充電が進行している際、電動車両1の制御部41が受電電力の異常を検出すると(処理J31)、異物有り通知がなされる可能性があるため記録処理部41aは、所定時間の待機処理J32を実行する。
【0050】
そして、故障等による異常で異物有りの通知が無い場合、変形例2においても、所定時間の経過後に、記録処理部41aによる異常履歴情報の記録処理J33(
図2を参照)が実行される。
【0051】
一方、変形例2においては、
図6に示すように、異物検知以外に起因して送電停止の制御が行われた場合に、地上設備100の送電制御部105から電動車両1の制御部41へその通知(例えば設備異常通知)C2がなされる。この通知があると、制御部41の記録処理部41aは、所定時間の待機処理J32の途中であっても、待機処理を途中終了する。そして、記録処理部41aは、待機処理J32が完了となる場合よりも早く、コード及びログデータを含む異常履歴情報の記録処理J33を実行する。
【0052】
以上のように、変形例2の電動車両1によれば、異物有り通知の待機処理J32の期間に、設備異常の通知C2がなされた場合、待機処理J32を途中終了し、上記異常に関する異常履歴情報を記録する(処理J33)。異常の検出後、異常の内容を示すコードが確定しないと、異常検出のタイミングからどの期間のログデータを異常履歴情報に含めるか確定しない。このため、コードが確定するまで、電動車両1の各部の状況を示すログデータを取り続ける必要が生じる。そして、異常の内容を示すコードが確定したときに、コードに応じた期間分のログデータが抽出され異常履歴情報に含められる。したがって、異常の検出からコードが不確定の期間が長いと、その間のログデータの一時保存が膨大になる。そこで、変形例2の電動車両1によれば、設備異常の通知C2があった場合に、待機処理J32を途中終了して設備異常に関する異常履歴情報の記録処理J33を行う。これにより、ログデータの一時保存量が膨大になることを抑制できる。ログデータの一時保存にも記憶部の有限な容量が使用されるため、一時保存されるデータ量の削減により、容量不足により異常履歴情報の記録が失敗するといった事態を抑制できる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、非接触充電の異常の際、異物有り通知がなされない場合に記録処理部41aが記録する異常履歴情報よりも、異物有り通知がなされた場合に記録処理部41aが記録する異常履歴情報の方が、データ量が少なくなる例を示した。しかし、記録されるデータ量は同一又は大小逆であってもよい。その代わりに、特定の読出機能を用いて異常履歴情報(非接触充電の異常についての異常履歴情報)を読み出したときに、読み出されたデータ量が異物有り通知がなされた場合の方が、異物有り通知がなされなかった場合よりも小さければよい。例えば、いずれの場合にも、コードとログデータとの両方が記録される一方、読み出したときには、異物有り通知がなされた方はログデータが省略されて読み出され、異物有り通知がなされなかった方はログデータを含めて読み出されるように、異常履歴情報が記録される構成としてもよい。より詳細には、診断ツールの読出機能を用いて異常履歴情報を読み出すと、それまでに記録された全ての異常履歴情報が読み出され、一覧表示される。そして、一覧表示の中で、1つの非接触充電異常のデータに注目し、異物有り通知がなされた場合と、異物有り通知がなされなかった場合とで、比較したときに、前者の場合の方がデータ量が小さければよい。このような構成によれば、整備員が異常履歴情報を読み出して、複数の異常履歴情報の中に、非接触充電に関する異常履歴情報があった場合、故障により非接触充電が停止した異常履歴情報であれば、読み出されたデータ量に多くの情報が含まれ、故障個所を探す際に役立つ。一方、異物検知に基づき非接触充電が停止した異常履歴情報であれば、読み出されたデータ量に多くの情報が含まれない。したがって、故障箇所が存在しないのに、異常履歴情報から様々な可能性を考慮して故障箇所を探すといった非効率な作業の発生を抑制できる。
【0054】
さらに、異常履歴情報を読み出すのに複数の読出機能が存在する場合、全ての読出機能で非接触充電に関する異常履歴情報を読み出したときに、上記のデータ量についての条件が満たされている必要はない。すなわち、複数の読出機能のうちの、特定の一つの読出機能を用いて非接触充電に関する異常履歴情報を読み出した場合に、そのデータ量が上記の条件を満たしていればよい。一例としては、診断ツールには、整備員が使用する通常モードの読出機能と、メーカの開発者が使用する開発者モードの読出機能とが含まれることが想定される。この想定においては、例えば開発者モードの読出機能を使用して異常履歴情報を読み出し、その中に非接触充電に関する異常履歴情報が存在するとき、異物有り通知がなされた場合となされなかった場合との両方で、記録されている全情報が読み出されて、同一データ量又は後者の場合の方がデータ量が多くなってもよい。一方、通常モードの読出し機能を使用して異常履歴情報を読み出し、その中に非接触充電に関する異常履歴情報が存在する場合には、異物有り通知がなされた場合となされなかった場合とで、前者の方が読み出されたデータ量が小さくなればよい。
【0055】
特定の読出機能(例えば通常モード)を用いて異常履歴情報(非接触充電の異常についての異常履歴情報)を読み出したときに、異物有り通知がなされた場合の方が、異物有り通知がなされなかった場合よりも、読み出されるデータ量を小さくする手段としては、記録処理部41aが、記録した異常履歴情報の一部又は全部を、特定の読出し機能を用いて読み出せないように、後から設定すればよい。このような設定は、例えば、記録処理部41aが、該当の異常履歴情報の属性情報を「通常モード読出し不可(開発者モードのみ読出し可)」に変更したり、該当の異常履歴情報を通常モードでアクセスできない領域(開発者モードのみアクセス可の領域)に移動させるなど、様々な手段を用いて実現できる。
【0056】
また、異常が生じたときに、例えば、異常履歴情報を記録するためのデータフォーマットのヘッダ情報が作成され、その後、ヘッダ情報に続いて異常履歴情報の本体データが記録される構成が採用される場合がある。あるいは、異常が生じたとき、例えば、個々の異常履歴情報を管理する管理データが作成され、管理データに対応づけて異物履歴情報の本体データが記録される構成が採用される場合がある。このような場合、異物有り通知に基づき、異常履歴情報の記録が省略されたり、削除が行われると、異常履歴情報の本体データが付随されずに、ヘッダ情報又は管理データだけが残ってしまう場合がある。そして、診断ツールの読出機能が、このようなデータパターンに対応していないと、異常履歴情報を読み出す際に、読出しエラーが生じてしまう。しかし、このような場合でも、記録処理部41aが、記録の省略又は削除された異常履歴情報の領域(或いはそのヘッダ情報又は管理データ)に対して、「通常モード読出し不可」の属性情報を付加したり、通常モードがアクセス不可の領域に移動させるなど、読出し不可にする処理を行うことで、上記のような読出しエラーの発生を回避することが可能となる。
【0057】
また、上記実施形態では、制御部41に記録処理部41aが含まれる構成を一例として説明したが、制御部41と記録処理部41aとは別体であり、互いに通信を介して連携して動作する構成としてもよい。その他、非接触充電の定期処理J12の手順、ユーザの携帯端末への通知の方法など、実施施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 電動車両
3 走行モータ
11 主バッテリ
31 受電部
33 通信部
39 テレマティクスサービス通信部
41 制御部
41a 記録処理部
41b 異常履歴記憶部
100 地上設備
103 送電部
105 送電制御部
105a 異物検知処理部
106 通信部