(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
F01P 1/02 20060101AFI20230705BHJP
F02M 35/108 20060101ALI20230705BHJP
F01P 11/14 20060101ALI20230705BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20230705BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
F01P1/02 A
F02M35/10 301A
F01P11/14 A
B60K11/06
B60K11/04 E
(21)【出願番号】P 2019154746
(22)【出願日】2019-08-27
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】及川 武志
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-003546(JP,U)
【文献】特開2018-135857(JP,A)
【文献】特開2017-013638(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006009600(DE,A1)
【文献】実開昭60-165216(JP,U)
【文献】実開昭58-024456(JP,U)
【文献】特開平11-141415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0139525(US,A1)
【文献】特開昭59-115457(JP,A)
【文献】特開2014-088799(JP,A)
【文献】実開昭63-014426(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102014220119(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 1/02
F02M 35/108
F01P 11/14
B60K 11/06
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを囲繞する囲繞部と、
前記囲繞部に形成された空気吸入口と、
前記囲繞部に形成されるとともに前記エンジンの吸気管に接続された空気排出口と、
前記エンジン、または、前記囲繞部内が所定温度以上であ
り、かつ、前記エンジンの出力が所定値未満である場合、前記空気吸入口から前記空気排出口に外気を流通させる流路を形成する流路形成機構と、
を備え
、
前記流路形成機構は、前記吸気管において前記空気排出口の接続箇所よりも上流側に配置されたバルブを含み、
前記空気吸入口の内径および前記空気排出口の内径の少なくとも一方は、前記吸気管の内径よりも小さい冷却装置。
【請求項2】
前記空気排出口は、前記吸気管におけるエアクリーナの上流側に接続される請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
エンジンを囲繞する囲繞部と、
前記囲繞部に形成され
、前記エンジンの吸気管におけるエアクリーナとスロットルバルブとの間に接続された空気吸入口と、
前記囲繞部に形成され
、前
記吸気管に
おける前記エアクリーナと前記スロットルバルブとの間に接続された空気排出口と、
前記エンジン、または、前記囲繞部内が所定温度以上である場合、前記空気吸入口から前記空気排出口に外気を流通させる流路を形成する流路形成機構と、
を備え
、
前記流路形成機構は、
前記吸気管と前記空気吸入口との間に設けられた第1弁体と、
前記吸気管と前記空気排出口との間に設けられた第2弁体と、
前記エンジン、または、前記囲繞部内が所定温度未満である場合、前記第1弁体を制御して前記空気吸入口を閉鎖するとともに、前記第2弁体を制御して前記空気排出口を閉鎖し、前記エンジン、または、前記囲繞部内が所定温度以上である場合、前記第1弁体を制御して前記吸気管と前記空気吸入口とを連通させるとともに、前記第2弁体を制御して前記吸気管と前記空気排出口とを連通させる制御部と、
を含む冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンから生じる騒音を低減するために、吸音材で構成されたカプセルでエンジンを囲繞する技術が開発されている(例えば、特許文献1)。しかし、カプセルでエンジンを囲繞すると、エンジンの熱が放出され難くなる。
【0003】
そこで、特許文献1の技術では、カプセルの前面に設けられた外気の流入口と、流入口を開閉するアクティブエアフラップとが設けられている。そして、アクティブエアフラップを制御し、初期始動やキーオフ時には流入口を閉鎖状態とし、車両の走行中には流入口を開放状態として、車両の走行中において、外気でカプセルの内部(エンジン)を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の技術では、車両が走行していなければカプセルの内部に外気が導入されない。したがって、車両が走行していないアイドリング状態ではカプセルの内部に外気が導入されず、エンジンが冷却できないという課題がある。
【0006】
このため、アイドリング状態であっても、エンジンを冷却できる技術の開発が希求されている。
【0007】
本発明は、アイドリング状態であっても、エンジンを冷却することが可能な冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の冷却装置は、エンジンを囲繞する囲繞部と、囲繞部に形成された空気吸入口と、囲繞部に形成されるとともにエンジンの吸気管に接続された空気排出口と、エンジン、または、囲繞部内が所定温度以上であり、かつ、エンジンの出力が所定値未満である場合、空気吸入口から空気排出口に外気を流通させる流路を形成する流路形成機構と、を備え、流路形成機構は、吸気管において空気排出口の接続箇所よりも上流側に配置されたバルブを含み、空気吸入口の内径および空気排出口の内径の少なくとも一方は、吸気管の内径よりも小さい。
【0009】
また、空気排出口は、吸気管におけるエアクリーナの上流側に接続されてもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の他の冷却装置は、エンジンを囲繞する囲繞部と、囲繞部に形成され、エンジンの吸気管におけるエアクリーナとスロットルバルブとの間に接続された空気吸入口と、囲繞部に形成され、吸気管におけるエアクリーナとスロットルバルブとの間に接続された空気排出口と、エンジン、または、囲繞部内が所定温度以上である場合、空気吸入口から空気排出口に外気を流通させる流路を形成する流路形成機構と、を備え、流路形成機構は、吸気管と空気吸入口との間に設けられた第1弁体と、吸気管と空気排出口との間に設けられた第2弁体と、エンジン、または、囲繞部内が所定温度未満である場合、第1弁体を制御して空気吸入口を閉鎖するとともに、第2弁体を制御して空気排出口を閉鎖し、エンジン、または、囲繞部内が所定温度以上である場合、第1弁体を制御して吸気管と空気吸入口とを連通させるとともに、第2弁体を制御して吸気管と空気排出口とを連通させる制御部と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アイドリング状態であっても、エンジンを冷却することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態にかかるエンジンシステムを説明する図である。
【
図2】切換制御部によるバルブの切換制御の処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図3】バルブが閉状態である場合の外気の流れを説明する図である。
【
図4】バルブが開状態である場合の外気の流れを説明する図である。
【
図6】第1バイパス状態および第2バイパス状態に切り換えた場合の外気の流れを説明する図である。
【
図7】第1直通状態および第2直通状態に切り換えた場合の外気の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
[エンジンシステム100]
図1は、本実施形態にかかるエンジンシステム100を説明する図である。なお、
図1中、信号の流れを一点鎖線の矢印で示す。
図1に示すように、エンジンシステム100は、車両10に搭載される。エンジンシステム100は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含むマイクロコンピュータでなるECU(Engine Control Unit)110が設けられる。ECU110によりエンジンE全体が統括制御される。ただし、以下では、本実施形態に関係する構成や処理について詳細に説明し、本実施形態と無関係の構成や処理については説明を省略する。
【0018】
エンジンシステム100を構成するエンジンEは、燃焼室に連通する吸気ポートに接続された吸気マニホールド120を備える。吸気マニホールド120は、吸気管130に連通される。吸気管130の外気取込口130aは、車両10の前面に開口する。
【0019】
吸気管130内には、スロットルバルブ132、および、スロットルバルブ132より上流側にエアクリーナ134が設けられる。スロットルバルブ132は、アクセル(図示せず)の開度に応じてアクチュエータにより開閉駆動される。エアクリーナ134にて浄化された空気は、吸気管130、吸気マニホールド120を通じて燃焼室に吸入される。
【0020】
また、エンジンEは、燃焼室に燃料を供給する燃料ポンプ140を備える。燃料ホース142は、燃料ポンプ140と燃料タンクとを接続する。
【0021】
エンジンEから生じる騒音や振動を防止するため、エンジンEは、囲繞部150(カプセル)によって囲繞される。囲繞部150内には、エンジンEに加えて、ECU110、燃料ポンプ140、および、燃料ホース142の一部が収容される。囲繞部150は、吸音材で構成される。吸音材は、断熱機能を有する。囲繞部150を備える構成により、エンジンシステム100は、早期暖機を行うことができる。
【0022】
しかし、エンジンEの駆動時間が長くなるに従って、囲繞部150内に熱が籠もり、エンジンEが高温になりすぎてしまう場合がある。そうすると、エンジンEを構成する部品が劣化したり、破損したりするおそれがある。
【0023】
また、囲繞部150内が高温になると、囲繞部150内に収容される燃料ホース142の一部および燃料ポンプ140において、燃料が気化する。燃料中に気泡が多く含まれると、燃料ポンプ140において気泡が優先して圧縮されてしまい、液体の燃料が昇圧されない。そうすると、燃料ポンプ140に接続されたインジェクタは、燃料の噴射ができなくなるおそれがある。特にアイドリング状態では、燃料ホース142を通過する燃料の流速が低くなるため、気泡の生成量が増加してしまう。
【0024】
そこで、本実施形態のエンジンシステム100は、囲繞部150内(エンジンE)を冷却する冷却装置200を備える。以下、冷却装置200について詳述する。
【0025】
[冷却装置200]
図1に示すように、冷却装置200は、囲繞部150と、空気吸入口210と、空気排出口220と、吸入管230と、接続管240と、流路形成機構250とを含む。
【0026】
空気吸入口210および空気排出口220は、囲繞部150に形成される。空気吸入口210は、空気排出口220よりも鉛直下方に形成される。また、空気吸入口210と空気排出口220とは、概ね対角線上に位置するように囲繞部150に形成される。
【0027】
吸入管230は、一端に開口232が形成され、他端に空気吸入口210が接続される。開口232は、車両10の前面に臨む。吸入管230の内径(管径)は、吸気管130の内径よりも小さい。
【0028】
接続管240は、吸気管130と、空気排出口220とを接続する。本実施形態において、接続管240は、吸気管130における外気取込口130aとエアクリーナ134との間に接続される。換言すれば、接続管240は、吸気管130におけるエアクリーナ134の上流側に接続される。接続管240の内径(管径)は、吸気管130の内径よりも小さい。
【0029】
流路形成機構250は、囲繞部150内が所定温度以上である場合、空気吸入口210から空気排出口220に外気を流通させる流路を形成する。本実施形態において、流路形成機構250は、バルブ252と、制御部254とを含む。バルブ252は、吸気管130における接続管240の接続箇所と外気取込口130aとの間に設けられる。換言すれば、バルブ252は、吸気管130において接続管240の接続箇所(空気排出口220の接続箇所)よりも上流側に配置される。バルブ252は、吸気管130における接続管240の上流側の流路を開閉する。
【0030】
ECU110は、バルブ252を開閉制御する際、制御部254として機能する。制御部254は、囲繞部150内の温度に応じて、バルブ252を、吸気管130を開放する開状態と、吸気管130を閉鎖する閉状態とに切換制御する。囲繞部150内の温度は、ECU110に設けられた温度センサによって測定される。以下、制御部254によるバルブ252の切換制御について説明する。
【0031】
図2は、制御部254によるバルブ252の切換制御の処理の流れを説明するフローチャートである。
図2に示すように、切換制御は、温度判定処理S110、条件判定処理S120と、閉状態切換処理S130と、開状態切換処理S140とを含む。なお、本実施形態において、所定の時間間隔毎に生じる割込によって切換制御が繰り返し遂行される。
【0032】
[温度判定処理S110]
制御部254は、囲繞部150内の温度が所定温度以上であるか否かを判定する。所定温度は、エンジンEを構成する部品の耐熱温度、および、燃料ポンプ140によって液体の燃料を昇圧可能な温度の上限値のいずれか一方または両方に基づいて決定され、例えば、95℃である。所定温度以上であると判定した場合(S110におけるYES)、制御部254は、条件判定処理S120に処理を移す。一方、所定温度未満であると判定した場合(S110におけるNO)、制御部254は、開状態切換処理S140に処理を移す。
【0033】
[条件判定処理S120]
制御部254は、所定条件が成立しているか否かを判定する。所定条件は、所定の出力以上の運転領域(例えば、登坂時の運転領域)でエンジンEを駆動していることである。所定条件が成立していないと判定した場合(S120におけるNO)、制御部254は、閉状態切換処理S130に処理を移す。一方、所定条件が成立していると判定した場合(S120におけるYES)、制御部254は、開状態切換処理S140に処理を移す。
【0034】
[閉状態切換処理S130]
制御部254は、バルブ252が開状態であれば、閉状態に切り換えて、当該切換制御を終了する。また、制御部254は、バルブ252が閉状態であれば、閉状態を維持して、当該切換制御を終了する。
【0035】
図3は、バルブ252が閉状態である場合の外気の流れを説明する図である。
図3中、矢印は、外気の流れを示す。
図3に示すように、閉状態は、吸気管130内に形成される流路をバルブ252が閉鎖する状態である。
【0036】
制御部254によってバルブ252が閉状態に切り換えられると、エンジンEによる吸気負圧により、開口232から外気が取り込まれる。取り込まれた外気は、吸入管230、空気吸入口210を通じて、囲繞部150内に導かれる。そして、外気は、囲繞部150内を通過し、空気排出口220、接続管240を通じて吸気管130におけるバルブ252の下流側に導かれる。外気の通過過程で、囲繞部150内に収容されたエンジンEと外気との間で熱交換が為され、エンジンEが冷却されるとともに、外気が加熱される。そして、吸気管130に導かれた外気は、エアクリーナ134を通過した後、スロットルバルブ132、吸気マニホールド120を通じてエンジンEの燃焼室に導かれる。
【0037】
[開状態切換処理S140]
図2に戻って説明すると、制御部254は、バルブ252が閉状態であれば、開状態に切り換えて、当該切換制御を終了する。また、制御部254は、バルブ252が開状態であれば、開状態を維持して、当該切換制御を終了する。
【0038】
図4は、バルブ252が開状態である場合の外気の流れを説明する図である。
図4中、矢印は、外気の流れを示す。
図4に示すように、開状態は、吸気管130内に形成される流路をバルブ252が開放する状態である。制御部254によってバルブ252が開状態に切り換えられると、エンジンEによる吸気負圧により、外気取込口130aから吸気管130内に外気が取り込まれる。取り込まれた外気は、エアクリーナ134を通過した後、スロットルバルブ132、吸気マニホールド120を通じてエンジンEの燃焼室に導かれる。
【0039】
なお、開状態において、空気吸入口210(開口232)と吸気管130とは連通しているため、開口232を通じて囲繞部150内に外気が導かれる。但し、囲繞部150内の圧力損失は、吸気管130の圧力損失よりも大きいため、外気は主に外気取込口130aから吸気管130へ導かれる。換言すれば、囲繞部150内には、外気はほとんど導かれない。
【0040】
以上説明したように、本実施形態にかかる冷却装置200は、囲繞部150に形成された空気排出口220と、バルブ252とを備える。これにより、冷却装置200は、囲繞部150内が所定温度以上であり、バルブ252を閉状態とした際に、エンジンEによる吸気負圧によって、空気吸入口210から空気排出口220に外気を流通させることができる。したがって、冷却装置200は、エンジンEが駆動されている限り、アイドリング状態であっても、囲繞部150内に収容されたエンジンEを外気で冷却することが可能となる。
【0041】
これにより、冷却装置200は、エンジンEを構成する部品が熱によって劣化したり、破損したりする事態を回避することができる。また、冷却装置200は、囲繞部150内における燃料の気化を抑制することができる。したがって、冷却装置200は、燃料ポンプ140によって液体の燃料を昇圧させることができ、インジェクタによって燃料の噴射ができなくなる事態を回避することが可能となる。
【0042】
また、エンジンEによる吸気負圧によって外気を流通させることができるため、冷却装置200は、囲繞部150に外気を流通させるための専用の装置(ファン、ブロワ)を省略することができる。これにより、冷却装置200は、部品点数、設備費、および、ランニングコストを低減することが可能となる。
【0043】
また、冷却装置200は、バルブ252を開状態と閉状態とに移動させるだけといった簡易な構成で、囲繞部150に外気を流通させたり、囲繞部150への外気の流通を抑制したりすることが可能となる。
【0044】
また、冷却装置200は、バルブ252の開閉状態に拘わらず、エアクリーナ134を通過させた後、外気を燃焼室に導くことができる。これにより、ダストが燃焼室に導かれてしまう事態を回避することが可能となる。
【0045】
また、上記したように、冷却装置200の空気吸入口210は、空気排出口220よりも鉛直下方に形成される。高温の気体は、低温の気体と比較して密度が小さいため上昇する。したがって、冷却装置200は、高温となった外気を空気吸入口210にスムーズに導くことができる。これにより、冷却装置200は、効率よくエンジンEを冷却することが可能となる。
【0046】
また、上記したように、冷却装置200の空気吸入口210と空気排出口220とは、概ね対角線上に位置するように囲繞部150に形成される。これにより、冷却装置200は、外気が囲繞部150を流通する経路を長くすることができ、効率よくエンジンEを冷却することが可能となる。
【0047】
また、冷却装置200は、囲繞部150が所定温度以上であっても、エンジンEを所定の出力以上で駆動する際、バルブ252を開状態とする。これにより、冷却装置200は、囲繞部150を流通することで加熱された外気の、吸気マニホールド120への導入を抑制することができる。換言すれば、冷却装置200は、熱交換が為されず、概ね外気温の外気を効率よく吸気マニホールド120に導くことが可能となる。したがって、閉状態と比較して、冷却装置200は、吸気マニホールド120(燃焼室)に導かれる単位流量当たりの酸素量を増加させることができ、エンジンEの出力を所定値以上に維持することが可能となる。
【0048】
[変形例]
図5は、変形例に係る冷却装置300を説明する図である。
図5に示すように、冷却装置300は、囲繞部150と、空気吸入口210と、空気排出口220と、接続管330、340と、流路形成機構350とを含む。なお、上記冷却装置200と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
接続管330は、吸気管130と、空気排出口220とを接続する。変形例において、接続管330は、吸気管130におけるエアクリーナ134とスロットルバルブ132との間に接続される。換言すれば、接続管330は、吸気管130におけるエアクリーナ134の下流側に接続される。接続管330の内径(管径)は、吸気管130の内径よりも小さい。
【0050】
接続管340は、空気吸入口210と、吸気管130とを接続する。接続管340は、吸気管130におけるエアクリーナ134と、接続管330の接続箇所との間に接続される。
【0051】
流路形成機構350は、囲繞部150内が所定温度以上である場合、空気吸入口210から空気排出口220に外気を流通させる流路を形成する。変形例において、流路形成機構350は、第1バルブ352と、第2バルブ354と、制御部356とを含む。
【0052】
第1バルブ352は、第1弁体352aを含む。第1弁体352aは、吸気管130と空気吸入口210との間に設けられる。変形例において、第1弁体352aは、吸気管130における接続管330の接続箇所と接続管340の接続箇所との間に設けられる。第1弁体352aは、後述する制御部356によって第1直通状態と、第1バイパス状態とに切り換わる。第1直通状態は、吸気管130を開放して空気吸入口210(接続管340)を閉鎖する状態である。第1バイパス状態は、吸気管130における接続管340との接続箇所の下流側を閉鎖して空気吸入口210(接続管340)を開放する状態である。つまり、第1バイパス状態は、吸気管130と空気吸入口210とを連通させる状態である。第1弁体352aは、接続管340の流路断面積以上の大きさである。
【0053】
第2バルブ354は、第2弁体354aを含む。第2弁体354aは、吸気管130と空気排出口220との間に設けられる。変形例において、第2弁体354aは、吸気管130における接続管330の接続箇所と接続管340の接続箇所との間であって、第1弁体352aよりも接続管330側に設けられる。第2弁体354aは、制御部356によって第2直通状態と、第2バイパス状態とに切り換わる。第2直通状態は、吸気管130を開放して空気排出口220(接続管330)を閉鎖する状態である。第2バイパス状態は、吸気管130における接続管330との接続箇所の上流側を閉鎖して空気排出口220(接続管330)を開放する状態である。つまり、第2バイパス状態は、吸気管130と空気排出口220とを連通させる状態である。第2弁体354aは、接続管330の流路断面積以上の大きさである。
【0054】
ECU110は、第1バルブ352および第2バルブ354を制御する場合、制御部356として機能する。制御部356は、囲繞部150内の温度に応じて、第1バルブ352および第2バルブ354を切換制御する。
【0055】
具体的に説明すると、制御部356は、囲繞部150内の温度が所定温度以上であり、所定条件が成立していない場合、第1弁体352aを第1バイパス状態に切り換え、第2弁体354aを第2バイパス状態に切り換える。
【0056】
図6は、第1バイパス状態および第2バイパス状態に切り換えた場合の外気の流れを説明する図である。
図6中、矢印は、外気の流れを示す。制御部356によって、第1弁体352aが第1バイパス状態に切り換えられ、第2弁体354aが第2バイパス状態に切り換えられると、エンジンEによる吸気負圧により、外気取込口130aから外気が取り込まれる。取り込まれた外気は、吸気管130、接続管340、空気吸入口210を通じて、囲繞部150内に導かれる。そして、外気は、囲繞部150内を通過し、空気排出口220、接続管330を通じて吸気管130に再度導かれる。外気の通過過程で、囲繞部150内に収容されたエンジンEと外気との間で熱交換が為され、エンジンEが冷却されるとともに、外気が加熱される。そして、吸気管130に導かれた外気は、スロットルバルブ132、吸気マニホールド120を通じてエンジンEの燃焼室に導かれる。
【0057】
一方、制御部356は、囲繞部150内が所定温度未満である場合、もしくは、所定温度以上であっても所定条件が成立している場合、第1弁体352aを第1直通状態に切り換え、第2弁体354aを第2直通状態に切り換える。
【0058】
図7は、第1直通状態および第2直通状態に切り換えた場合の外気の流れを説明する図である。
図7中、矢印は、外気の流れを示す。制御部356によって第1弁体352aが第1直通状態に切り換えられ、第2弁体354aが第2直通状態に切り換えられると、エンジンEによる吸気負圧により、外気取込口130aから吸気管130内に外気が取り込まれる。取り込まれた外気は、エアクリーナ134を通過した後、スロットルバルブ132、吸気マニホールド120を通じてエンジンEの燃焼室に導かれる。
【0059】
以上説明したように、変形例に係る冷却装置300は、第1弁体352aを第1バイパス状態とし、第2弁体354aを第2バイパス状態とした際に、エンジンEによる吸気負圧によって、空気吸入口210から空気排出口220に外気を流通させることができる。したがって、冷却装置300は、エンジンEが駆動されている限り、アイドリング状態であっても、囲繞部150内に収容されたエンジンEを外気で冷却することが可能となる。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
なお、上記実施形態および変形例において、冷却装置200、300は、囲繞部150内の温度に基づいて、流路形成機構250、350に対して切換制御する構成を例に挙げた。しかし、冷却装置200、300は、エンジンEの温度に基づいて、流路形成機構250、350に対して切換制御してもよい。
【0062】
また、上記実施形態および変形例において、冷却装置200、300は、ECU110に設けられた温度センサによって、囲繞部150内の温度を測定する構成を例に挙げた。しかし、囲繞部150内の温度、または、エンジンEの温度が測定または推定できれば、測定装置に限定はない。例えば、冷却装置200、300は、吸気管130におけるエアクリーナ134とスロットルバルブ132との間に設けられたエアフローセンサの検出値に基づいて、囲繞部150内の温度、または、エンジンEの温度を推定してもよい。また、冷却装置200、300は、アイドリング状態となっている時間、冷却水の温度、または、潤滑油の温度に基づいて、囲繞部150内の温度、または、エンジンEの温度を推定してもよい。
【0063】
また、上記実施形態において、冷却装置200が吸入管230を備える構成を例に挙げた。しかし、吸入管230は必須の構成ではない。
【0064】
また、冷却装置200は、空気吸入口210(または、吸入管230に形成される流路)を開閉するバルブをさらに備えてもよい。このバルブは、バルブ252が閉状態である場合に、空気吸入口210を開放し、バルブ252が開状態である場合に、空気吸入口210を閉鎖する。
【0065】
また、上記実施形態において、冷却装置200の空気吸入口210が、空気排出口220よりも鉛直下方に形成される場合を例に挙げた。しかし、空気吸入口210の鉛直方向の位置は、空気排出口220と同じであってもよいし、空気吸入口210が空気排出口220よりも鉛直上方に形成されてもよい。
【0066】
また、上記実施形態において、冷却装置200の空気吸入口210および空気排出口220が概ね対角線上に位置するように囲繞部150に形成される場合を例に挙げた。しかし、空気吸入口210および空気排出口220は、対角線上に位置せずともよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、エンジンを冷却する冷却装置に利用できる。
【符号の説明】
【0068】
200、300 冷却装置
150 囲繞部
210 空気吸入口
220 空気排出口
250、350 流路形成機構
252 バルブ
254、356 制御部
352a 第1弁体
354a 第2弁体