(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】熱硬化性組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20230706BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20230706BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20230706BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20230706BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
C08G59/40
C08J5/24 CFC
B32B27/38
B32B27/42 101
B32B15/08 J
(21)【出願番号】P 2020514430
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2019016554
(87)【国際公開番号】W WO2019203292
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2018081073
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 翔平
(72)【発明者】
【氏名】田所 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】富澤 克哉
(72)【発明者】
【氏名】志田 典浩
(72)【発明者】
【氏名】河合 英利
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-104731(JP,A)
【文献】特開2009-256612(JP,A)
【文献】特開2009-124126(JP,A)
【文献】特開2014-129464(JP,A)
【文献】特開2012-241115(JP,A)
【文献】特開2017-145270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00 - 59/72
C08J 5/24
B32B 27/00 - 27/42
B32B 15/00 - 15/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール化合物とエポキシ化合物とを含有する熱硬化性化合物を含み、
前記フェノール化合物が、下記式(1)で表される構造又は下記式(2)で表される構造を有するヒンダードフェノール化合物
、及び前記ヒンダードフェノール化合物を除く、その他のフェノール化合物を含み、
前記フェノール化合物中の前記ヒンダードフェノール化合物の含有量が35質量%以上であ
り、
前記ヒンダードフェノール化合物の含有量が、熱硬化性組成物固形分100質量部に対して、10質量部以上40質量部以下である、熱硬化性組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1及びR
2は、炭素数1~12の1価の炭化水素基であり、R
1及びR
2は、互いが同一であってもよく、異なっていてもよく、*は、結合手を表す。)
【化2】
(式(2)中、R
3は、炭素数1~12の1価又は2価の炭化水素基であり、2つのR
3は、互いが同一であってもよく、異なっていてもよく、R
4は、炭素数1~12の2価の炭化水素基であり、R
5は、炭素数1~12の1価若しくは2価の炭化水素基又は水素原子であり、2つのR
5は、互いが同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記ヒンダードフェノール化合物の含有量が、エポキシ化合物100質量部に対して、20質量部超60質量部以下である、請求項
1に記載の熱硬化性組成物。
【請求項3】
前記ヒンダードフェノール化合物が、下記式(3)で表される構造又は前記式(2)で表される構造を有する、請求項1
又は2に記載の熱硬化性組成物。
【化3】
(式(3)中、Lは、連結基を表し、nは2以上の整数を表し、R
1及びR
2は、それぞれ、式(1)のR
1及びR
2と同義である。)
【請求項4】
前記ヒンダードフェノール化合物のフェノール当量が140g/eq.以上である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項5】
前記式(1)におけるR
1及びR
2が、各々、メチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基からなる群より選択される1種の基である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項6】
前記フェノール化合物の含有量が、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、30~40質量部である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項7】
前記熱硬化性化合物が、2官能性の2官能熱硬化性化合物と、3官能以上の多官能熱硬化性化合物とを含有し、
前記2官能熱硬化性化合物の含有量が、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、40~90質量部であり、
前記多官能熱硬化性化合物の含有量が、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、10~60質量部である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項8】
前記エポキシ化合物が、2官能エポキシ化合物と、3官能以上の多官能エポキシ化合物とを含有し、
前記2官能エポキシ化合物の含有量が、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、20~70質量部であり、
前記多官能エポキシ化合物の含有量が、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、10~50質量部である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項9】
前記フェノール化合物が、2官能フェノール化合物を含み、
前記2官能フェノール化合物の含有量が、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、20~60質量部である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項10】
充填材をさらに含有し、
前記充填材の含有量が、熱硬化性組成物固形分100質量部に対して、40質量部以上700質量部以下である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項11】
前記充填材が、シリカ、ベーマイト、及びアルミナからなる群より選択される1種類以上の無機充填材を含む、請求項
10に記載の熱硬化性組成物。
【請求項12】
金属箔張積層板用である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項13】
プリント配線板用である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項14】
多層プリント配線板用である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項15】
基材と、該基材に含浸又は塗布された請求項1~
14のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物とを含む、プリプレグ。
【請求項16】
前記基材が、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、Lガラス、NEガラス、及びHMEガラスからなる群より選択される1種以上のガラスの繊維で構成されている、請求項
15に記載のプリプレグ。
【請求項17】
請求項
15又は
16に記載のプリプレグを有する、積層板。
【請求項18】
請求項
15又は
16に記載のプリプレグと、
該プリプレグの片面又は両面に配置した金属箔と、を有する金属箔張積層板。
【請求項19】
請求項
15又は
16に記載のプリプレグで形成された絶縁層と、該絶縁層の表面に形成された導体層と、を有するプリント配線板。
【請求項20】
第1の絶縁層と、第1の絶縁層の片面側に積層された1つ又は複数の第2の絶縁層とからなる複数の絶縁層と、
前記複数の絶縁層の各々の間に配置された第1の導体層と、前記複数の絶縁層の最外層の表面に配置された第2の導体層とからなる複数の導体層とを有し、
前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層が、それぞれ、請求項
15又は
16に記載のプリプレグの硬化物を有する、多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や通信機、パーソナルコンピューター等に広く用いられている半導体パッケージの高機能化、小型化が進むに伴い、半導体パッケージ用の各部品の高集積化や高密度実装化が近年益々加速している。これに伴い、半導体パッケージ用のプリント配線板に求められる諸特性はますます厳しいものとなっている。このようなプリント配線板に求められる特性としては、例えば、低吸水性、吸湿耐熱性、難燃性、低誘電率、低誘電正接、低熱膨張率、耐熱性、耐薬品性、高めっきピール強度等が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、印刷配線板の材料に適用した場合に優れた電気絶縁特性を付与することを目的として、エポキシ樹脂、多官能性フェノール樹脂、硬化促進剤、及び還元剤を組み合わせたエポキシ樹脂組成物が開示されている。この文献には、還元剤としてフェノール系還元剤を用いると、ドリル加工性等の他の物性を低下させることなく、電気絶縁特性を向上できることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、印刷配線板とする際、優れた低吸湿性、耐熱性、高温特性、耐電食性、及び耐加熱変色性を有し、高いガラス転移温度を有し、金属マイグレーションの発生を抑え、高い電気絶縁性を付与できることを目的として、特定のエポキシ樹脂、ビスフェノールAとホルムアルデヒドの縮合物、難燃剤、硬化促進剤、及びフェノール系酸化防止剤を組み合わせた印刷配線板用エポキシ樹脂組成物が開示されている。この文献にもまた、フェノール系酸化防止剤を用いると、ドリル加工性等の他の特性を低下させることなく電気絶縁特性を向上させることができることが開示されている。
【0005】
特許文献3には、低温硬化した際においても、低熱膨張性、高いガラス転移温度、難燃性、及び高い硬化度を同時に満たすことを目的として、特定の構造を有するイミダゾール化合物、エポキシ化合物、フェノール化合物及びマレイミド化合物を含有する樹脂組成物が開示されている。この文献の実施例では、Eガラス織布に、上記の樹脂組成物を含浸塗工して得られたプリプレグを用いて形成した銅箔積層板が、優れた低熱膨張率、高いガラス転移温度、難燃性、高い硬化度、高い吸湿耐熱性、及び高いピール強度を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平3-43413号公報
【文献】特開平10-279779号公報
【文献】特開2014-37485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、プリント配線板(特に多層コアレス基板)を用いて電子部品(パッケージ)を製造する際の反り(パッケージ反り)を低減することが重要な課題となっている。これに対し、特許文献1及び2については、パッケージ反りを抑制することについて検討されていない。一方、上記課題を解決するために、通常、特許文献3のように、プリント配線板の面方向の熱膨張率を低減させることにより、プリント配線板と、プリント配線板に搭載する半導体素子との熱膨張率差を小さくすることが考えられる。しかしながら、上記のような方法をもってしても、パッケージ反りを一層低減させることが求められている。
【0008】
そこで、本発明者らは、上記のパッケージ反りを抑制するために、鋭意検討を重ねたところ、常態での弾性率が高く、加熱工程で粘性挙動を強くとる(すなわち、塑性変形し易い)材料は、実装工程において残留応力が低減できることに起因して、パッケージ反りを抑制することに有効であることを見出した。しかしながら、このような材料は、通常、高い溶融粘度を有していることに起因して、例えば、プリプレグを積層成形する工程等において成形不良が生じる。このような問題は、薄型のプリント配線板において顕著な問題である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、成形性に優れると共に、電子部品(パッケージ)を製造する際の反り(パッケージ反り)を低減可能な熱硬化性組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、フェノール化合物とエポキシ化合物とを含有する熱硬化性組成物において、特定構造を有するヒンダードフェノール化合物を所定量含めると、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、本発明は次のとおりである。
[1]
フェノール化合物とエポキシ化合物とを含有する熱硬化性化合物を含み、
前記フェノール化合物が、下記式(1)で表される構造又は下記式(2)で表される構造を有するヒンダードフェノール化合物を含み、
前記フェノール化合物中の前記ヒンダードフェノール化合物の含有量が35質量%以上である、熱硬化性組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1及びR
2は、炭素数1~12の1価の炭化水素基であり、R
1及びR
2は、互いが同一であってもよく、異なっていてもよく、*は、結合手を表す。)
【化2】
(式(2)中、R
3は、炭素数1~12の1価又は2価の炭化水素基であり、2つのR
3は、互いが同一であってもよく、異なっていてもよく、R
4は、炭素数1~12の2価の炭化水素基であり、R
5は、炭素数1~12の1価若しくは2価の炭化水素基又は水素原子であり、2つのR
5は、互いが同一であってもよく、異なっていてもよい。)
[2]
前記ヒンダードフェノール化合物の含有量が、熱硬化性組成物固形分100質量部に対して、10質量部以上40質量部以下である、[1]の熱硬化性組成物。
[3]
前記ヒンダードフェノール化合物の含有量が、エポキシ化合物100質量部に対して、20質量部超60質量部以下である、上記[1]又は[2]に記載の熱硬化性組成物。
[4]
前記ヒンダードフェノール化合物が、下記式(3)で表される構造又は前記式(2)で表される構造を有する、[1]~[3]のいずれかの熱硬化性組成物。
【化3】
(式(3)中、Lは、連結基を表し、nは2以上の整数を表し、R
1及びR
2は、それぞれ、式(1)のR
1及びR
2と同義である。)
[5]
前記ヒンダードフェノール化合物のフェノール当量が140g/eq.以上である、[1]~[4]のいずれかの熱硬化性組成物。
[6]
前記式(1)におけるR
1及びR
2が、各々、メチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基からなる群より選択される1種の基である、[1]~[5]のいずれかの熱硬化性組成物。
[7]
前記フェノール化合物の含有量が、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、30~40質量部である、[1]~[6]のいずれかの熱硬化性組成物。
[8]
前記熱硬化性化合物が、2官能性の2官能熱硬化性化合物と、3官能以上の多官能熱硬化性化合物とを含有し、
前記2官能熱硬化性化合物の含有量が、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、40~90質量部であり、
前記多官能熱硬化性化合物の含有量が、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、10~60質量部である、[1]~[7]のいずれかの熱硬化性組成物。
[9]
前記エポキシ化合物が、2官能エポキシ化合物と、3官能以上の多官能エポキシ化合物とを含有し、
前記2官能エポキシ化合物の含有量が、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、20~70質量部であり、
前記多官能エポキシ化合物の含有量が、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、10~50質量部である、[1]~[8]のいずれかの熱硬化性組成物。
[10]
前記フェノール化合物が、2官能フェノール化合物を含み、
前記2官能フェノール化合物の含有量が、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、20~60質量部である、[1]~[9]のいずれかの熱硬化性組成物。
[11]
充填材をさらに含有し、
前記充填材の含有量が、熱硬化性組成物固形分100質量部に対して、40質量部以上700質量部以下である、[1]~[10]のいずれかの熱硬化性組成物。
[12]
前記充填材が、シリカ、ベーマイト、及びアルミナからなる群より選択される1種類以上の無機充填材を含む、[11]の熱硬化性組成物。
[13]
金属箔張積層板用である、[1]~[12]のいずれかの熱硬化性組成物。
[14]
プリント配線板用である、[1]~[12]のいずれかの熱硬化性組成物。
[15]
多層プリント配線板用である、[1]~[12]のいずれかの熱硬化性組成物。
[16]
基材と、該基材に含浸又は塗布された[1]~[15]のいずれかの熱硬化性組成物とを含む、プリプレグ。
[17]
前記基材が、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、Lガラス、NEガラス、及びHMEガラスからなる群より選択される1種以上のガラスの繊維で構成されている、[16]のプリプレグ。
[18]
[16]又は[17]のプリプレグを有する、積層板。
[19]
[16]又は[17]のプリプレグと、
該プリプレグの片面又は両面に配置した金属箔と、
を有する金属箔張積層板。
[20]
[16]又は[17]のプリプレグで形成された絶縁層と、該絶縁層の表面に形成された導体層と、を有するプリント配線板。
[21]
第1の絶縁層と、第1の絶縁層の片面側に積層された1つ又は複数の第2の絶縁層とからなる複数の絶縁層と、
前記複数の絶縁層の各々の間に配置された第1の導体層と、前記複数の絶縁層の最外層の表面に配置された第2の導体層とからなる複数の導体層とを有し、
前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層が、それぞれ、[16]又は[17]のプリプレグの硬化物を有する、多層プリント配線板。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成形性に優れると共に、電子部品(パッケージ)を製造する際の反り(パッケージ反り)を低減可能な熱硬化性組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】多層コアレス基板のパネルを作製する手順の一例を示すプロセスフロー図である(但し、多層コアレス基板の製造方法はこれに限定されない。以下の
図2~
図8において同様である。)。
【
図2】多層コアレス基板のパネルを作製する手順の一例を示すプロセスフロー図である。
【
図3】多層コアレス基板のパネルを作製する手順の一例を示すプロセスフロー図である。
【
図4】多層コアレス基板のパネルを作製する手順の一例を示すプロセスフロー図である。
【
図5】多層コアレス基板のパネルを作製する手順の一例を示すプロセスフロー図である。
【
図6】多層コアレス基板のパネルを作製する手順の一例を示すプロセスフロー図である。
【
図7】多層コアレス基板のパネルを作製する手順の一例を示すプロセスフロー図である。
【
図8】多層コアレス基板のパネルを作製する手順の一例を示すプロセスフロー図である。
【
図9】多層コアレス基板のパネルの一例の構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0015】
本明細書にいう「熱硬化性組成物固形分」とは、特段の記載がない限り、本実施形態の熱硬化性組成物における、溶剤及び充填材を除いた成分をいい、熱硬化性組成物固形分100質量部とは、熱硬化性組成物における溶剤及び充填材を除いた成分の合計が100質量部であることをいう。
【0016】
[熱硬化性組成物]
本実施形態の熱硬化性組成物は、フェノール化合物とエポキシ化合物とを含有する熱硬化性化合物を含み、フェノール化合物が、下記式(1)で表される構造又は下記式(2)で表される構造を有するヒンダードフェノール化合物(以下、「特定のヒンダードフェノール化合物」ともいう。)を含み、フェノール化合物中のヒンダードフェノール化合物の含有量が35質量%以上である。
【化4】
(式(1)中、R
1及びR
2は、炭素数1~12の1価の炭化水素基であり、R
1及びR
2は、互いが同一であってもよく、異なっていてもよく、*は、結合手を表す。)
【化5】
(式(2)中、R
3は、炭素数1~12の1価又は2価の炭化水素基であり、2つのR
3は、互いが同一であってもよく、異なっていてもよく、R
4は、炭素数1~12の2価の炭化水素基であり、R
5は、炭素数1~12の1価若しくは2価の炭化水素基又は水素原子であり、2つのR
5は、互いが同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【0017】
本実施形態の熱硬化性組成物は、上記の構成を備えることにより、成形性に優れると共に、電子部品(パッケージ)を製造する際の反り(パッケージ反り)を低減可能である。この要因は、以下のように考えられる。尚、以下の記述に考察が含まれるが、この考察により本発明は何ら限定されない。
本実施形態の熱硬化性組成物は、まず、フェノール化合物とエポキシ化合物とを組み合わせることに主に起因して、硬化物のTgを低くでき、かつ高温時の粘性挙動を強く発現できる。その結果、本実施形態の熱硬化性組成物は、プリント配線板(特に多層コアレス基板)に半導体チップを実装するための実装工程時の応力緩和性に優れ、電子部品(パッケージ)を製造する際の反り(パッケージ反り)を低減できる。一方、フェノール化合物及びエポキシ化合物の各硬化温度は、一般的に低温である傾向にあることに主に起因して、フェノール化合物とエポキシ化合物とを組み合わせた組成物を溶融すると、溶融粘度が高くなり、その結果、成形性に問題がある。これに対し、本実施形態の熱硬化性組成物は、特定の構造を有するヒンダードフェノール化合物を所定量含むことにより、パッケージ反りの低減効果を過度に阻害することなく、溶融粘度を低減でき、成形性に優れる。特定の構造を有するヒンダードフェノール化合物の硬化温度は、フェノール性水酸基に対する芳香環の2つのオルト位に所定の置換基が結合した構造を有することに起因して、前記構造を有しないフェノール化合物の硬化温度と比べて、高くなる傾向にある。これにより、フェノール化合物とエポキシ化合物とを組み合わせた組成物の硬化反応が遅延化し、その結果、溶融粘度を低減できると考えられる。
【0018】
[熱硬化性化合物]
本実施形態の熱硬化性組成物は、熱硬化性化合物を含む。本明細書にいう「熱硬化性化合物」とは、加熱により硬化可能な化合物をいう。熱硬化性化合物としては、加熱により、同一の官能基同士又は異なる官能基との間で重合反応又は架橋反応を進行可能な官能基(「熱硬化性官能基」ともいう。)を分子中に少なくとも1つ以上有する化合物が挙げられる。熱硬化性官能基としては、特に限定されないが、例えば、フェノール性水酸基、エポキシ基、シアナト基(-O-C≡N)、アリル基、マレイミド基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、その他重合可能な不飽和基等が挙げられる。
【0019】
本実施形態の熱硬化性化合物は、フェノール化合物とエポキシ化合物とを含有する。熱硬化性化合物は、フェノール化合物とエポキシ化合物とを含有することにより、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを低減でき、更には電子部品(パッケージ)を製造する際の反り(パッケージ反り)を低減できる。
【0020】
[フェノール化合物]
本実施形態において、フェノール化合物は、特定のヒンダードフェノール化合物を少なくとも含み、その他のフェノール化合物(特定のヒンダードフェノール化合物を除くフェノール化合物)を含んでもよい。
【0021】
(特定のヒンダードフェノール化合物)
フェノール化合物は、特定のヒンダードフェノール化合物を含むことにより、反り(特にパッケージ反り)の低減効果を過度に阻害することなく、溶融粘度を低減でき、成形性に優れる。
【0022】
フェノール化合物中の特定のヒンダードフェノール化合物の含有量は、35質量%以上(例えば、35質量%以上100質量%以下)である。含有量が35質量%以上であることにより、溶融粘度を低減でき、成形性に優れる。同様の観点から、含有量は37.5質量%以上であることが好ましい。一方、フェノール化合物中の特定のヒンダードフェノール化合物の含有量は、反り(特にパッケージ反り)の低減効果を一層高める観点から、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましい。
【0023】
特定のヒンダードフェノール化合物は、前述の通り、下記式(1)で表される構造(「構造(1)ともいう。)又は下記式(2)で表される構造(「構造(2)」ともいう。)を有する。
【0024】
【0025】
式(1)中、R1及びR2は、炭素数1~12の1価の炭化水素基であり、R1及びR2は、互いが同一であってもよく、異なっていてもよく、*は、結合手を表す。
【0026】
式(1)中、R1及びR2は、各々独立して、炭素数1~12の1価の炭化水素基である。1価の炭化水素基としては、直鎖状又は分岐状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、置換基を有してもよいアリール基(例えば、フェニル基;メチルフェニル(トリル)基、ジメチルフェニル(キシリル)基等のアルキルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)が挙げられる。これらの中でも、反り(特にパッケージ反り)の低減効果を過度に阻害することなく、溶融粘度を一層低減できる観点から、R1及びR2は、各々独立して、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状アルキル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基からなる群より選択される1種の基であることが好ましく、メチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基からなる群より選択される1種の基であることがより好ましい。
【0027】
特定のヒンダードフェノール化合物が構造(1)を有する場合、式(1)中のベンゼン環には、本発明の作用効果を阻害しない範囲で、さらに置換基が結合していてもよい。置換基としては、特に限定されず、例えば、上記の炭化水素基が挙げられる。
【0028】
特定のヒンダードフェノール化合物が構造(1)を1つ有する(構造(1)の数が1つである)場合、特定のヒンダードフェノール化合物は、下記式(1a)で表される構造を有する。
【0029】
【0030】
式(1a)中、Mは、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基を表し、R1及びR2は、それぞれ、式(1)中のR1及びR2と同義である。
【0031】
1価の有機基としては、特に限定されず、例えば、炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等)、置換アミノ基(例えば、上記の炭化水素基で置換されたN-モノ又はN,N-ジ置換アミノ基等)等)、芳香環含有基(例えば、ベンゼン環含有基、メシチレン環含有基等)、複素環含有基(例えば、イソシアヌレート環含有基、スピロジオキサン環含有基等)等が挙げられる。1価の有機基は、上記の例示した1価の基に対応するn価の基(すなわち、n個の水素原子が脱離した基)同士を、又は上記の例示した1価の基と、上記の例示した1価の基に対応するn価の基とを連結基を介して結合された構造を1つ以上有してもよい。連結基としては、例えば、エーテル結合(-O-)、チオエーテル結合(-S-)、カルボニル結合(-C(=O)-)、エステル結合(-C(=O)-O-)、シリル結合(-Si-)、カーボネート結合(-O-C(=O)-O-)、アミド結合(-C(=O)-NH-)、尿素結合(-NH-C(=O)-NH-)、ウレタン結合(-NH-C(=O)-O-)等が挙げられる。
【0032】
式(1)で表される構造を1つ有する(1分子中、式(1)で表される構造の数が1つである)特定のヒンダードフェノール化合物の具体例としては、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、2,6-ジ-tertブチル-4-ジメチルアミノメチルフェノール、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル等が挙げられる。
【0033】
【0034】
式(2)中、R3は、炭素数1~12の1価又は2価の炭化水素基であり、2つのR3は、互いが同一であってもよく、異なっていてもよく、R4は、炭素数1~12の2価の炭化水素基であり、R5は、炭素数1~12の1価若しくは2価の炭化水素基又は水素原子であり、2つのR5は、互いが同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0035】
特定のヒンダードフェノール化合物が構造(2)を有する場合、式(2)中のベンゼン環には、本発明の作用効果を阻害しない範囲で、さらに置換基が結合していてもよい。置換基としては、特に限定されず、例えば、上記の炭化水素基が挙げられる。
【0036】
式(2)中、R3は、各々独立して、炭素数1~12の1価又は2価の炭化水素基であり、R5は、各々独立して、炭素数1~12の1価若しくは2価の炭化水素基又は水素原子である。1価の炭化水素基としては、式(1)におけるR1及びR2として例示した炭化水素基が挙げられ、2価の炭化水素基としては、上記炭化水素基から1つの水素原子が脱離した2価の基が挙げられる。これらの中でも、反り(特にパッケージ反り)の低減効果を過度に阻害することなく、溶融粘度を一層低減できる観点から、R3は、各々独立して、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状アルキル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基からなる群より選択される1種の基であることが好ましく、メチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基からなる群より選択される1種の基であることがより好ましい。また、上記した中でも、反り(特にパッケージ反り)の低減効果を過度に阻害することなく、溶融粘度を一層低減できる観点から、R5は、各々独立して、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基及び水素原子からなる群より選択される1種の基であることが好ましく、メチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基及び水素原子からなる群より選択される1種の基であることがより好ましい。
【0037】
式(2)中、R4は、炭素数1~12の2価の炭化水素基である。2価の炭化水素基としては、直鎖状又は分岐状アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等)が挙げられる。これらの中でも、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、R4は、炭素数1~12の直鎖状又は分岐状アルキレン基であることが好ましく、炭素数1~6の直鎖状又は分岐状アルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~3の直鎖状又は分岐状アルキレン基であることが更に好ましい。
【0038】
式(2)中のR3、R4及びR5の組み合わせとしては、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、R3が、各々独立して、メチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基からなる群より選択される1種の基であり、R4が、炭素数1~3の直鎖状又は分岐状アルキレン基であり、R5が、各々独立して、メチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基及び水素原子からなる群より選択される1種の基であることが好ましい。
【0039】
式(2)で表される構造を有するヒンダードフェノール化合物の具体例としては、2,2’-メチレンビス[6-(1メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tertブチルフェノール)、2,2’-ブチリデンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-エチルフェノール)が挙げられる。
【0040】
特定のヒンダードフェノール化合物は、下記式(3)で表される構造又は上記式(2)で表される構造を有することが好ましい。
【0041】
【0042】
式(3)中、Lは、連結基を表し、nは2以上の整数を表し、R1及びR2は、それぞれ、式(1)のR1及びR2と同義である。
【0043】
式(3)中、nは2以上の整数を表し、例えば、2~10であり、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、2~6であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。
【0044】
式(3)中、Lは、n価の連結基を表す。連結基としては、n価の有機基が挙げられ、有機基としては、上記の1価の有機基として例示した基の水素原子をn-1個脱離した基が挙げられる。
【0045】
式(3)において、nが1である場合の特定のヒンダードフェノール化合物の具体例としては、上記式(1)で表される構造を1つ有する特定のヒンダードフェノール化合物の具体例と同様のものが挙げられる。
【0046】
式(3)中、nが2である特定のヒンダードフェノール化合物の具体例としては、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tertt-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピロネート、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プリピオネート]、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-O-クレゾール)、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピナート]、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、ビスキシレノールP等が挙げられる。
【0047】
式(3)中、nが3である特定のヒンダードフェノール化合物の具体例としては、1,3,5-トリス[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[2-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノイルオキシ]エチル]ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン2,4,6-トリオン、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン、1,3,5-トリス[2-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノイルオキシ]エチル]ヘキサヒドロ-1,3-5-トリアジン-2,4,6-トリオン等が挙げられる。
【0048】
式(3)中、nが4である特定のヒンダードフェノール化合物の具体例としては、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
【0049】
特定のヒンダードフェノール化合物は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。市販品としては、ADEKA株式会社製品の「アデカスタブAO-20」、「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-50F」、「アデカスタブAO-60」、「アデカスタブAO-60G」「アデカスタブAO-80」、「アデカスタブAO-330」、住友化学株式会社製品の「Sumilizer MDP-S」、「Sumilizer AG 80」、BASF社製品の「IRGANOX 1010」、「IRGANOX 1010FF」、「IRGANOX 1035」、「IRGANOX 1035FF」、「IRGANOX 1076」、「IRGANOX 1076FD」、「IRGANOX 1098」、「IRGANOX 1135」、「IRGANOX 1330」、「IRGANOX 1425WL」、「IRGANOX 245」、「IRGANOX 245FF」、「IRGANOX 259」、「IRGANOX 3114」、中京油脂株式会社製品の「L-828」、「セロゾール L-306-40」、ケミプロ化成株式会社製品の「KEMISORB112」、「KEMISORB113」、「KEMISORB114」、「KEMINOX101」、「KEMINOX179」、「KEMINOX76」、「KEMINOX9425」、三井化学ファイン株式会社製品の「ビスキシレノールP」等が挙げられる。
【0050】
特定のヒンダードフェノール化合物のフェノール当量は、140g/eq.以上(例えば、140g/eq.以上500g/eq.以下)であることが好ましい。フェノール当量が140g/eq.以上であることにより、加熱硬化時の揮発性を一層低減でき、硬化剤として十分に作用できるとともに、溶融粘度を一層低減でき、成形性に一層優れる傾向にある。同様の観点から、フェノール当量は、150g/eq.以上であることが好ましく、170g/eq.以上であることがより好ましい。
【0051】
特定のヒンダードフェノール化合物の分子量は、特に限定されず、例えば、500以下であり、溶融粘度を一層低減でき、成形性に一層優れる観点から、450以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましい。
【0052】
熱硬化性組成物中における特定のヒンダードフェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分100質量部に対して、10~40質量部であることが好ましい。含有量が上記範囲内にあることにより、反り(特にパッケージ反り)の低減効果を過度に阻害することなく、溶融粘度を一層低減でき、その結果、成形性に一層優れる傾向にある。含有量の下限値は、溶融粘度を一層低減する観点から、10質量部以上であることが好ましく、12質量部以上であることがより好ましく、13質量部以上であることが更に好ましく、含有量の上限値は、パッケージ反りの低減効果を向上する観点から、40質量部以下であることが好ましく、38質量部以下であることがより好ましく、35質量部以下であることが更に好ましい。
【0053】
また、熱硬化性組成物中における特定のヒンダードフェノール化合物の含有量は、エポキシ化合物100質量部に対して、20質量部以上60質量部以下であることが好ましい。含有量が上記範囲内にあることにより、反り(特にパッケージ反り)の低減効果を過度に阻害することなく、溶融粘度を一層低減でき、その結果、成形性に一層優れる傾向にある。含有量の下限値は、溶融粘度の観点から20質量部以上であることが好ましく、20質量部超であることがより好ましく、23質量部以上であることが更に好ましく、含有量の上限値は、パッケージ反りの低減効果を向上するの観点から、60質量部以下であることが好ましく、57質量部以下であることがより好ましく、55質量部以下であることが更に好ましい。
【0054】
(その他のフェノール化合物)
その他のフェノール化合物は、上述した特定のヒンダードフェノール化合物以外のフェノール化合物であれば特に限定されないが、好ましくは、1分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物であり、樹脂の形態であってもよい。その他のフェノール化合物としては、例えば、1分子中にフェノール性水酸基を2つ以上有するフェノール類、ビスフェノール型フェノール樹脂(例えば、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールM型樹脂、ビスフェノールE型樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノールS型樹脂等)、フェノール類ノボラック樹脂(例えば、フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等)、ナフタレン型フェノール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、フェノール変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。これらのフェノール化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0055】
これらの中でも、その他のフェノール化合物は、溶融粘度及びパッケージ反りの低減効果を一層バランスよく向上させる観点から、2官能フェノール化合物であることが好ましい。本明細書にいう「2官能フェノール化合物」とは、1分子中にフェノール性水酸基を2つ有する(1分子中のフェノール性水酸基の数が2である)化合物をいう。
【0056】
2官能フェノール化合物の含有量は、溶融粘度及びパッケージ反りの低減効果を一層バランスよく向上させる観点から、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、20~60質量部であることが好ましく、20~50質量部であることがより好ましく、20~40質量部であることが更に好ましい。
【0057】
2官能フェノール化合物としては、ビスフェノール、ビスクレゾール、フルオレン骨格を有するビスフェノール類(例えば、フルオレン骨格を有するビスフェノール、フルオレン骨格を有するビスクレゾール等)、ジアリルビスフェノール(例えば、ジアリルビスフェノールA等)、ビフェノール(例えば、p、p’-ビフェノール等)、ジヒドロキシジフェニルエーテル(例えば、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル等)、ジヒドロキシジフェニルケトン(例えば、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル等)、ジヒドロキシジフェニルスルフィド(例えば、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド等)、ジヒドロキシアレーン(例えば、ハイドロキノン等)が挙げられる。これらの2官能フェノール化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、2官能フェノール化合物は、溶融粘度及びパッケージ反りの低減効果を一層バランスよく向上させる観点から、ビスフェノール、ビスクレゾール、フルオレン骨格を有するビスフェノール類であることが好ましい。
【0058】
ビスフェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールM、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスノーフェノールB、ビスフェノールAP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、ビスフェノールTMC等が挙げられる。これらのビスフェノールは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、溶融粘度及びパッケージ反りの低減効果を一層バランスよく向上させる観点から、ビスフェノールは、ビスフェノールA、ビスフェノールMであることが好ましい。
【0059】
その他のフェノール化合物のフェノール当量は、耐熱性、吸湿耐熱性、耐薬品性、溶融粘度及びパッケージ反りの低減効果を一層バランスよく向上させる観点から、400g/eq.以下であることが好ましく、380g/eq.以下であることがより好ましく、350g/eq.以下であることが更に好ましい。
【0060】
熱硬化性組成物中のフェノール化合物の含有量は、溶融粘度及びパッケージ反りの低減効果を一層バランスよく向上させる観点から、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、30~40質量部であることが好ましい。同様の観点から、含有量の下限値は、30質量部以上であることが好ましく、32質量部以上であることがより好ましく、含有量の上限値は、40質量部以下であることが好ましく、38質量部以下であることがより好ましい。
【0061】
[エポキシ化合物]
本実施形態において、エポキシ化合物は、特に限定されないが、好ましくは1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物であり、樹脂の形態であってもよい。エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂)、フェノール類ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を含有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を含有するナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン骨格を含有するアントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型構造単位と炭化水素系構造単位からなるエポキシ樹脂、これらのハロゲン化合物が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、耐熱性、吸湿耐熱性、線熱膨張率、耐薬品性、反り(特にパッケージ反り)の抑制をより一層低減できる観点から、アラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及びビスフェノールA型構造単位と炭化水素系構造単位からなるエポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂であることが更に好ましい。
【0062】
(アラルキル型エポキシ樹脂)
アラルキル型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(3a)で表される化合物が挙げられる。
【0063】
【0064】
式(3a)中、Ar3は、各々独立して、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、Ar4は、ベンゼン環、ナフタレン環、又はビフェニル環を表し、R3aは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、kは1~50の整数を表し、各環は、グリシジルオキシ基以外の置換基(例えば、炭素数1~5のアルキル基又はフェニル基)を有してもよい。
【0065】
式(3a)中、kは、1~50の整数を表し、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1~10の整数を表すことが好ましく、1~6の整数を表すことが好ましく、1~3の整数を表すことがより好ましい。
【0066】
なお、アラルキル型エポキシ樹脂は、式(3a)で表される化合物を含む場合、kが同一である複数種類の化合物を含んでもよく、kが異なる複数種類の化合物を含んでもよい。アラルキル型エポキシ樹脂は、kが異なる複数種類の化合物を含む場合、式(3a)中、kが1~3である化合物を含むことが好ましい。
【0067】
式(3a)で表される化合物は、反り(特にパッケージ反り)をより一層低減できる観点から、式(3a)中、Ar3は、ナフタレン環であり、Ar4は、ベンゼン環である化合物(「ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂」ともいう。)、及びAr3は、ベンゼン環であり、Ar4は、ビフェニル環である化合物(「ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂」ともいう。)であることが好ましく、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0068】
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂は、得られる硬化物の耐熱性及び低吸水性、並びに反り(特にパッケージ反り)の低減効果に一層優れる観点から、下記式(3b)で表される化合物であることが好ましい。
【0069】
【0070】
式(3b)中、kaは、1以上の整数を表し、1~6の整数を表すことが好ましく、1~3の整数を表すことがより好ましい。
【0071】
また、アラルキル型エポキシ樹脂は、下記式(3-a)又は下記式(3-b)で表される化合物であってもよい。
【0072】
【0073】
式(3-a)中、kyは、1~10の整数を表す。
【0074】
【0075】
式(3-b)中、kzは、1~10の整数を表す。
【0076】
アラルキル型エポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鉄住金化学株式会社製品の「エポトート(登録商標)ESN-155」、「エポトート(登録商標)ESN-355」、「エポトート(登録商標)ESN-375」、「エポトート(登録商標)ESN-475V」、「エポトート(登録商標)ESN-485」、「エポトート(登録商標)ESN-175」、日本化薬株式会社製品の「NC-7000」、「NC-7300」、「NC-7300L」、DIC株式会社製品の、「HP-9900」、「HP-9540」、「HP-9500」等が挙げられる。ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、日本化薬株式会社製品の「NC-3000」、「NC-3000L」、「NC-3000FH」等が挙げられる。
【0077】
(ナフタレン型エポキシ樹脂)
ナフタレン型エポキシ樹脂としては特に限定されないが、例えば、上記のナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂を除くエポキシ樹脂であって、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂が挙げられる。ナフタレン型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、下記式(3c-1)で表されるエポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられ、得られる硬化物の耐熱性、低吸水性及び低熱膨張性、並びに反り(特にパッケージ反り)の低減効果に一層優れる観点から、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0078】
【0079】
上記式(3c-1)で表されるエポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。市販品としては、DIC株式会社製品の「HP-4710」等が挙げられる。
【0080】
(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)
ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(3c)で表される化合物が挙げられる。
【0081】
【0082】
式(3c)中、R3bは、各々独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アラルキル基、ナフチル基又はグリシジルオキシ基を含有するナフチル基を表し、k1は、0~10の整数を表す。
【0083】
式(3c)で表される化合物としては、例えば、式(3c-2)で表される化合物が挙げられる。
【0084】
【0085】
ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、DIC株式会社製品の「HP-4032」、「HP-6000」、「EXA-7300」、「EXA-7310」、「EXA-7311」、「EXA-7311L」、「EXA7311-G3」等が挙げられる。
【0086】
式(3c)中、k1は、0~10の整数を表し、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、0~6の整数を表すことが好ましく、0~4の整数を表すことがより好ましく、2~3であることが更に好ましい。
【0087】
式(3c)中、R3bは、各々独立して、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アラルキル基、又はナフチル基を表すことが好ましい。
【0088】
式(3c)で表される化合物において、分子中のエポキシ基を含有するグリシジルオキシ基の数は、2~6であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。
【0089】
なお、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、式(3c)で表される化合物を含む場合、k1が同一である複数種類の化合物を含んでもよく、k1が異なる複数種類の化合物を含んでもよい。ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、k1が異なる複数種類の化合物を含む場合、式(3c)中、k1が0~4である化合物を含むことが好ましく、2~3である化合物を含むことがより好ましい。
【0090】
(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(3d)で表される化合物が挙げられる。
【0091】
【0092】
式(3d)中、R3cは、各々独立し、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表し、k2は、0~10の整数を表す。
【0093】
式(3d)中、k2は、0~10の整数を表し、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、0~6の整数を表すことが好ましく、0~2の整数(好ましくは0又は1)を表すことが好ましい。
【0094】
なお、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、式(3d)で表される化合物を含む場合、k2が同一である複数種類の化合物を含んでもよく、k2が異なる複数種類の化合物を含んでもよい。ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、k2が異なる複数種類の化合物を含む場合、式(3d)中、k2が0~2である化合物を含むことが好ましい。
【0095】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、DIC株式会社製品の「EPICLON HP-7200L」、「EPICLON HP-7200」、「EPICLON HP-7200H」、「EPICLON HP-7000HH」等が挙げられる。
【0096】
(ビスフェノールA型構造単位と炭化水素系構造単位からなるエポキシ樹脂)
ビスフェノールA型構造単位と炭化水素系構造単位からなるエポキシ樹脂(「特定のエポキシ樹脂」ともいう。)は、分子中に、1つ以上のビスフェノールA型構造単位と、1つ以上の炭化水素系構造単位を有する。上記の特定のエポキシ樹脂としては、例えば、下記式(3e)で表される化合物が挙げられる。
【0097】
【0098】
式(3e)中、R1x及びR2xは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、R3x~R6xは、各々独立して、水素原子、メチル基、塩素原子、又は臭素原子を示し、Xは、エチレンオキシエチル基、ジ(エチレンオキシ)エチル基、トリ(エチレンオキシ)エチル基、プロピレンオキシプロピル基、ジ(プロピレンオキシ)プロピル基、トリ(プロピレンオキシ)プロピル基、又は炭素数2~15のアルキレン基を示し、k3は、整数を表す。
【0099】
式(3e)中、k3は、整数を表し、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1~10の整数であることが好ましく、1~6の整数であることがより好ましく、1~2の整数であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。
【0100】
式(3e)中、Xは、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、エチレン基であることが好ましい。
【0101】
特定のエポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。特定のエポキシ樹脂の市販品としては、DIC株式会社製品の「EPICLON EXA-4850-150」、「EPICLON EXA-4816」等が挙げられる。
【0102】
エポキシ化合物のエポキシ当量は、溶融粘度及び反り(特にパッケージ反り)の低減効果を一層バランスよく向上させる観点から、100~500g/eq.以下であることが好ましく、450g/eq.以下であることがより好ましく、350g/eq.以下であることが更に好ましい。
【0103】
熱硬化性組成物中のエポキシ化合物の含有量は、溶融粘度及び反り(特にパッケージ反り)の低減効果を一層バランスよく向上させる観点から、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、50~70質量部であることが好ましい。同様の観点から、含有量の下限値は、50質量部以上であることが好ましく、55質量部以上であることがより好ましく、含有量の上限値は、70質量部以下であることが好ましく、65質量部以下であることがより好ましい。
【0104】
エポキシ化合物は、反り(特にパッケージ反り)の低減効果を向上させる観点から、2官能エポキシ化合物及び多官能エポキシ化合物を含むことが好ましい。本明細書にいう「2官能エポキシ化合物」とは、1分子中にエポキシ基を2つ有する(1分子中のエポキシ基の数が2である)化合物をいい、「多官能エポキシ化合物」とは、1分子中にエポキシ基を3つ以上有する(1分子中のエポキシ基の数が3以上である)化合物をいう。
【0105】
2官能エポキシ化合物及び多官能エポキシ化合物としてのエポキシ化合物としては、上述したエポキシ化合物中、2官能エポキシ化合物、多官能エポキシ化合物に該当するものが挙げられる。エポキシ化合物は、1種を単独で用いる場合でも、2種以上を組み合せて用いる場合でも、2官能エポキシ化合物及び多官能エポキシ化合物を含むことが、本発明の作用効果を有効かつ確実に奏する観点から好ましい。
【0106】
これらの中でも、2官能エポキシ化合物は、得られる硬化物の耐熱性に一層優れる観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂であることが好ましい。これらの中でも、多官能エポキシ化合物は、得られる硬化物の耐熱性に一層優れる観点から、アラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及びビスフェノールA型構造単位と炭化水素系構造単位からなるエポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂であることがより好ましい。また、エポキシ化合物は、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、多官能エポキシ化合物として、1分子中に3以上のエポキシ基を含むナフタレン骨格を含有するナフタレン型エポキシ樹脂(好ましくは1分子中に3以上のエポキシ基を含むナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)及び/又は1分子中に3以上のエポキシ基と、ナフタレン環とを有するナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂と、2官能エポキシ化合物(好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂)とを含むことが好ましい。
【0107】
2官能エポキシ化合物の含有量は、反り(特にパッケージ反り)の低減効果を向上させる観点から、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、20~70質量部であることが好ましく、20~60質量部であることがより好ましく、20~50質量部であることが更に好ましく、20~40質量部が特に好ましい。同様の観点から、多官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、10~50質量部であることが好ましく、20~40質量部であることがより好ましい。
【0108】
熱硬化性組成物中のフェノール化合物及びエポキシ化合物の総含有量は、溶融粘度及び反り(特にパッケージ反り)の低減効果を一層バランスよく向上させる観点から、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、60質量部以上100質量部以下であることが好ましい。同様の観点から、総含有量の下限値は、60質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、80質量部以上であることが更に好ましく、総含有量の上限値は、100質量部以下であることが好ましく、95質量部以下であることがより好ましい。
【0109】
熱硬化性組成物において、エポキシ化合物のエポキシ当量に対する、フェノール化合物のフェノール当量の割合は、溶融粘度及び反り(特にパッケージ反り)の低減効果を一層バランスよく向上させる観点から、0.5以上1.5以下であることが好ましい。同様の観点から、割合の下限値は、0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.7以上であることが更に好ましく、割合の上限値は、1.5以下であることが好ましく、1.4以下であることがより好ましく、1.3以下であることが更に好ましい。
【0110】
熱硬化性組成物が、フェノール化合物及び/又はシアン酸エステル化合物と、エポキシ化合物とを含有する場合、熱硬化性組成物中のエポキシ基量(含有質量部/エポキシ当量)に対する熱硬化性組成物中のフェノール基量(含有質量部/フェノール当量)及び/又はシアン酸エステル基量(含有質量部/シアン酸エステル当量)の割合は、0.5~1.5であることが好ましい。なお、熱硬化性組成物が、フェノール化合物及びシアン酸エステル化合物の双方を含有する場合には、上記の割合は、上記エポキシ基量に対する上記フェノール基量及び上記シアネート基量の合計量の割合となる。割合が上記範囲内にあることにより、加熱時の貯蔵弾性率が反りの抑制に好適な値となる傾向にある。同様の観点から、割合の下限値は、0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.7以上であることが更に好ましく、0.9以上であることが特に好ましく、割合の上限値は、1.5以下であることが好ましく、1.4以下であることがより好ましく、1.3以下であることが更に好ましく、1.2以下であることが特に好ましい。なお、フェノール化合物の種類が複数の場合には、上記のフェノール基量とは、各フェノール化合物のフェノール基量の合計値をいい、シアン酸エステル化合物の種類が複数の場合には、上記のシアネート基量とは、各シアン酸エステル化合物のシアネート基量の合計値をいい、エポキシ化合物の種類が複数の場合には、上記のエポキシ基量とは、各エポキシ化合物のエポキシ基量の合計値をいう。
【0111】
(シアン酸エステル化合物)
本実施形態の熱硬化性化合物は、シアン酸エステル化合物を更に含有してもよい。本明細書において、「シアン酸エステル化合物」とは、1分子中に1つ以上のシアナト基(シアン酸エステル基)を有する化合物をいい、樹脂の形態であってもよい。シアン酸エステル化合物としては、例えば、1分子中に2つ以上のシアナト基を含有する芳香族炭化水素化合物、2つ以上のシアナト基を含有する2つの芳香環が連結基により結合した化合物、ノボラック型シアン酸エステル、ビスフェノール型シアン酸エステル、ジアリルビスフェノール型シアン酸エステル(例えば、ジアリルビスフェノールA型シアン酸エステル、ジアリルビスフェノールE型シアン酸エステル、ジアリルビスフェノールF型シアン酸エステル、ジアリルビスフェノールS型シアン酸エステル等)、アラルキル型シアン酸エステル、これらのシアン酸エステルのプレポリマーが挙げられる。シアン酸エステル化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0112】
1分子中に2つ以上のシアナト基を有する芳香族炭化水素化合物としては、例えば、式(I):Ar-(OCN)p(式中、Arは、ベンゼン環、ナフタレン環及びビフェニル環のいずれかを表し、pは、2以上の整数を表す。)で表される化合物が挙げられる。式(I)中、pは、2~6の整数であることが好ましく、2~3の整数であることがより好ましく、2の整数であることが更に好ましい。式(I)中、pが2である化合物としては特に限定されないが、例えば、1,3-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-ジシアナトナフタレン、1,4-ジシアナトナフタレン、1,6-ジシアナトナフタレン、1,8-ジシアナトナフタレン、2,6-ジシアナトナフタレン、2,7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシナトナフタレン、4,4’-ジシアナトビフェニル等が挙げられる。
【0113】
2つ以上のシアナト基を含有する2つの芳香環が連結基により結合した化合物としては特に限定されないが、例えば、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン等が挙げられる。
【0114】
ノボラック型シアン酸エステルとしては、例えば、下記式(1x)で表される化合物が挙げられる。
【0115】
【0116】
式(1x)中、R1aは、各々独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基を表し、R1bは、各々独立して、水素原子又はメチル基(好ましくは水素原子)を表し、nは、1~10の整数を表す。
【0117】
式(1x)中、nは、1~10の整数であり、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1~6の整数であることが好ましい。
【0118】
なお、ノボラック型シアン酸エステルは、式(1x)で表される化合物を含む場合、nが同一である複数種類の化合物を含んでもよく、nが異なる複数種類の化合物を含んでもよい。
【0119】
式(1x)で表される化合物としては特に限定されないが、例えば、ビス(3,5-ジメチル4-シアナトフェニル)メタン、ビス(4-シナアトフェニル)メタン、2、2’-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0120】
(ビスフェノール型シアン酸エステル)
ビスフェノール型シアン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、フェノール化合物の項で例示したビスフェノールのフェノール性水酸基の水素原子が、シアン基(-C≡N)で置換した化合物が挙げられる。具体的には、ビスフェノールA型シアン酸エステル、ビスフェノールE型シアン酸エステル、ビスフェノールF型シアン酸エステル、ビスフェノールAD型シアン酸エステル、ビスノーフェノールB型シアン酸エステル、ビスフェノールAP型シアン酸エステル、ビスフェノールS型シアン酸エステル、ビスフェノールZ型シアン酸エステル、ビスフェノールTMC型シアン酸エステル等が挙げられる。
【0121】
ビスフェノール型シアン酸エステルは、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。ビスフェノール型シアン酸エステルの市販品としては、例えば、三菱ガス化学株式会社製品の「CA210」等が挙げられる。
【0122】
(アラルキル型シアン酸エステル)
アラルキル型シアン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル等が挙げられる。
【0123】
ナフトールアラルキル型シアン酸エステルとしては、例えば、下記式(1a)で表される化合物が挙げられる。
【0124】
【0125】
式(1a)中、R1dは、各々独立に、水素原子又はメチル基(好ましくは水素原子)を表し、n1は、1~10の整数を表す。
【0126】
式(1a)中、n1は、1~10の整数であり、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1~6の整数であることが好ましい。
【0127】
なお、アラルキル型シアン酸エステルは、式(1a)で表される化合物を含む場合、n1が同一である複数種類の化合物を含んでもよく、n1が異なる複数種類の化合物を含んでもよい。
【0128】
ビフェニルアラルキル型シアン酸エステルとしては、例えば、下記式(1b)で表される化合物が挙げられる。
【0129】
【0130】
式(1b)中、R1eは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表し、R1fは、各々独立に、水素原子又はメチル基(好ましくは水素原子)を表し、n2は、1~10の整数を表す。
【0131】
式(1b)中、n2は、1~10の整数を表し、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1~6の整数を表すことが好ましい。
【0132】
なお、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステルは、式(1b)で表される化合物を含む場合、n2が同一である複数種類の化合物を含んでもよく、n2が異なる複数種類の化合物を含んでもよい。
【0133】
アラルキル型シアン酸エステルは、市販品を用いてもよく、公知の方法により合成した製品を用いてもよい。アラルキル型シアン酸エステルの合成方法としては、例えば、目的とするアラルキル型シアン酸エステルに対応するフェノール樹脂(以下、「対応するフェノール樹脂」ともいう。)と、ハロゲン化シアンと、塩基性化合物とを不活性有機溶媒中で反応させる方法、対応するフェノール樹脂と塩基性化合物とを水溶液中で反応させることにより形成した塩と、ハロゲン化シアンとを2相系界面反応さえる方法等が挙げられる。いずれの方法においても、対応するフェノール樹脂のフェノール性水酸基の水素原子をシアネート化させることによりアラルキル型シアン酸エステルを得ることができる。より詳細には、例えば、実施例に記載の方法等が用いられる。
【0134】
シアン酸エステル化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分100質量部に対して、例えば、0~45質量部であってもよく、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、35質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であること更に好ましく、5質量部以下であることが特に好ましい。
【0135】
(マレイミド化合物)
本実施形態の熱硬化性化合物は、マレイミド化合物を更に含有してもよい。本明細書において、「マレイミド化合物」とは、1分子中に1つ以上のマレイミド基を有する化合物をいい、樹脂の形態であってもよい。マレイミド化合物としては、1分子中に1つ以上のマレイミド基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、1分子中にマレイミド基を1つ有するモノマレイミド化合物(例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド等)、1分子中にマレイミド基を2つ以上有するポリマレイミド化合物(例えば、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン)、これらのマレイミド化合物とアミン化合物とのプレポリマー等が挙げられる。これらのマレイミド化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0136】
ポリマレイミド化合物としては、例えば、ベンゼン環にマレイミド基が複数結合した化合物(例えば、m-フェニレンビスマレイミド等のフェニレンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド等)、直鎖状又は分岐状アルキル鎖の両末端にマレイミド基が結合した化合物(例えば、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン等)、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、下記式(4a)で表される化合物が挙げられる。
【0137】
【化22】
式中、R
4a及びR
5aは、各々独立して、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表し、好ましくは水素原子を表す。R
4bは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、好ましくは水素原子を表す。sは、1以上の整数を表す。
【0138】
式(4a)中、sは、1以上の整数を表し、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1~6の整数を表すことが好ましく、1~3の整数を表すことがより好ましく、1~2の整数を表すことが更に好ましく、1であることが特に好ましい。
【0139】
式(4a)で表される化合物の具体例としては、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタンが挙げられる。ポリマレイミド化合物が、式(4a)で表されるマレイミド化合物を含むことにより、得られる硬化物の熱膨張率がより低下し、耐熱性、ガラス転移温度(Tg)がより向上する傾向にある。マレイミド化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0140】
マレイミド化合物は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。マレイミド化合物の市販品としては、ケイ・アイ化成株式会社製品の、「BMI-70」、「BMI-80」、大和化成工業株式会社製品の「BMI-2300」、「BMI-1000P」、「BMI-3000」、「BMI-4000」、「BMI-5100」、「BMI-7000」等が挙げられる。
【0141】
マレイミド化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分100質量部に対して、例えば、0~45質量部であってもよく、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、35質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であること更に好ましく、5質量部以下であることが特に好ましい。
【0142】
(アルケニル置換ナジイミド化合物)
本実施形態の熱硬化性化合物は、アルケニル置換ナジイミド化合物を更に含有してもよい。本明細書において、「アルケニル置換ナジイミド化合物」とは、分子中に1個以上のアルケニル置換ナジイミド基を有する化合物をいう。アルケニル置換ナジイミド化合物は、例えば、下記式(5a)で表される化合物が挙げられる。
【0143】
【0144】
式(5a)中、R6aは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~6のアルキル基を示し、R6bは、炭素数1~6のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は下記式(5b)又は(5c)で表される基を示す。
【0145】
【0146】
式(5b)中、R6cは、メチレン基、イソプロピリデン基、又は、CO、O、S、又はSO2で表される置換基を示す。
【0147】
【0148】
式(5c)中、R6dは、各々独立して、炭素数1~4のアルキレン基、又は炭素数5~8のシクロアルキレン基を示す。
【0149】
また、アルケニル置換ナジイミド化合物は、下記式(12)及び/又は(13)で表される化合物も挙げられる。
【0150】
【0151】
【0152】
アルケニル置換ナジイミド化合物は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物の市販品としては、特に限定されないが、例えば、丸善石油化学株式会社製品の「BANI-M」「BANI-X」等が挙げられる。
【0153】
アルケニル置換ナジイミド化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分100質量部に対して、例えば、0~45質量部であってもよく、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、35質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であること更に好ましく、5質量部以下であることが特に好ましい。
【0154】
本実施形態の熱硬化性化合物は、2官能熱硬化性化合物と多官能熱硬化性化合物を含むことが好ましい。本明細書にいう「2官能熱硬化性化合物」とは、1分子中に熱硬化性官能基を2つ有する(1分子中の熱硬化性官能基の数が2つである)化合物をいい、「多官能熱硬化性化合物」とは、1分子中に熱硬化性官能基を3つ以上有する(1分子中の熱硬化性官能基の数が3つ以上である)化合物をいう。熱硬化性組成物において、2官能熱硬化性化合物の含有量は、溶融粘度及び反り(特にパッケージ反り)の低減効果を一層バランスよく向上させる観点から、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、40~90質量部であることが好ましい。同様の観点から、含有量の下限値は、40質量部以上であることが好ましく、44質量部以上であることがより好ましく、含有量の上限値は、90質量部以下であることが好ましく、85質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることが更に好ましく、70質量部以下であることが更に好ましい。多官能熱硬化性化合物の含有量は、溶融粘度及び反り(特にパッケージ反り)の低減効果を一層バランスよく向上させる観点から、熱硬化性組成物固形分100質量部に対し、10質量部以上60質量部以下であることが好ましい。同様の観点から、含有量の下限値は、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることが更に好ましい。同様の観点から、含有量の上限値は、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。
【0155】
本実施形態の熱硬化性組成物は、本発明の作用効果を阻害しない限り、以下に示すその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては、重合可能な不飽和基を有する化合物、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物等が挙げられる。重合可能な不飽和基を有する化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価又は多価アルコールの(メタ)アクリレート類;ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類;ベンゾシクロブテン樹脂等が挙げられる。オキセタン樹脂としては、例えば、オキセタン、2-メチルオキセタン、2,2-ジメチルオキセタン、3-メチルオキセタン、3,3-ジメチルオキセタン等のアルキルオキセタン、3-メチル-3-メトキシメチルオキセタン、3,3’-ジ(トリフルオロメチル)パーフルオキセタン、2-クロロメチルオキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、ビフェニル型オキセタン、東亜合成株式会社製品の「OXT-101」、「OXT-121」等が挙げられる。ベンゾオキサジン化合物としては、1分子中に2個以上のジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物であればよく、例えば、小西化学株式会社製品の「ビスフェノールF型ベンゾオキサジンBF-BXZ」「ビスフェノールS型ベンゾオキサジンBS-BXZ」等が挙げられる。
【0156】
[充填材]
本実施形態の熱硬化性組成物は、充填材を更に含有してもよい。充填材としては、無機充填材及び/又は有機充填材が挙げられる。
【0157】
無機充填材としては、特に限定されず、例えば、シリカ類、ケイ素化合物(例えば、ホワイトカーボン等)、金属酸化物(例えば、アルミナ、チタンホワイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等)、金属窒化物(例えば、窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等)、金属硫酸化物(例えば、硫酸バリウム等)、金属水酸化物(例えば、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(例えば、水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマイト、水酸化マグネシウム等)、モリブデン化合物(例えば、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛等)、亜鉛化合物(例えば、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛等)、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、E-ガラス、A-ガラス、NE-ガラス、C-ガラス、L-ガラス、D-ガラス、S-ガラス、M-ガラスG20、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等のガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラス等が挙げられる。これらの無機充填材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、充填材は、低熱膨張性、寸法安定性、難燃性、剛性、及び反り(特にパッケージ反り)の低減に一層優れる観点から、シリカ、金属水酸化物、及び金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、シリカ、ベーマイト、及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、シリカであることが更に好ましい。
【0158】
シリカ類としては、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、中空シリカ等が挙げられる。これらの中でも、低熱膨張性、剛性、及び反り(特にパッケージ反り)の低減に一層優れる観点から、溶融シリカであることが好ましい。
【0159】
有機充填材としては、特に限定されず、例えば、スチレン型パウダー、ブタジエン型パウダー、アクリル型パウダー等のゴムパウダー;コアシェル型ゴムパウダー;シリコーン型パウダー等が挙げられる。これらの有機充填材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、低熱膨張性、柔軟性、反り(特にパッケージ反り)の低減に一層優れる観点から、シリコーン型パウダーであることが好ましい。
【0160】
シリコーン型パウダーとしては、例えば、シリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダー、シリコーン複合パウダー等が挙げられる。これらの中でも、低熱膨張性、柔軟性、及び反り(特にパッケージ反り)の低減に一層優れる観点から、シリコーン複合パウダーであることが好ましい。
【0161】
本実施形態の充填材は、低熱膨張性、寸法安定性、柔軟性、剛性、及び反り(特にパッケージ反り)の低減に一層優れる観点から、無機充填材と有機充填材とを含むことが好ましい。
【0162】
無機充填材の含有量は、熱硬化性組成物固形分100質量部に対して、30質量部以上700質量部以下であることが好ましい。含有量が30質量部以上であることにより、得られる硬化物の低熱膨張性が一層向上し、含有量が700質量部以下であることにより、得られる硬化物の穴開け加工性が一層向上する傾向にある。同様の観点から、含有量の下限値は30質量部以上であることが好ましく、35質量部以上であることがより好ましく、40質量部以上であることが更に好ましく、50質量部以上であってもよく、100質量部以上であってもよい。同様の観点から、含有量の上限値は700質量部以下であることが好ましく、600質量部以下であることがより好ましく、500質量部以下であることが更に好ましく、250質量部以下であることが特に好ましく、200質量部以下であってもよい。
【0163】
熱硬化性組成物が有機充填材を含む場合、有機充填材の含有量は、熱硬化性組成物固形分100質量部に対して、低熱膨張性、柔軟性、及び反り(特にパッケージ反り)の低減に一層優れる観点から、1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。同様の観点から、含有量の下限値は1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であってもよく、含有量の上限値は50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることが更に好ましい。
【0164】
充填材の含有量は、熱硬化性組成物固形分100質量部に対して、低熱膨張性、寸法安定性、柔軟性、剛性、及び反り(特にパッケージ反り)に一層優れる観点から、40質量部以上700質量部以下であることが好ましい。含有量が上記範囲内にあることにより、得られる硬化物の剛性が一層向上したり、反り(特にパッケージ反り)が一層低減する傾向にある。同様の観点から、含有量の下限値は40質量部以上であることが好ましく、45質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であってもよく、含有量の上限値は700質量部以下であることが好ましく、600質量部以下であることがより好ましく、500質量部以下であることが更に好ましく、250質量部以下であることが特に好ましい。
【0165】
[シランカップリング剤]
本実施形態の熱硬化性組成物は、シランカップリング剤を更に含有してもよい。本実施形態の熱硬化性組成物は、シランカップリング剤を含有することにより、充填材の分散性が一層向上したり、本実施形態の熱硬化性組成物の成分と、後述する基材との接着強度が一層向上する傾向にある。
【0166】
シランカップリング剤としては特に限定されず、一般に無機物の表面処理に使用されるシランカップリング剤が挙げられ、アミノシラン系化合物(例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシシラン系化合物(例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、アクリルシラン系化合物(例えば、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、カチオニックシラン系化合物(例えば、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等)、フェニルシラン系化合物等が挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、シランカップリング剤は、エポキシシラン系化合物であることが好ましい。エポキシシラン系化合物としては、例えば、信越化学工業株式会社製品の「KBM-403」、「KBM-303」、「KBM-402」、「KBE-403」等が挙げられる。
【0167】
シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性組成物固形分100質量部に対して、0.1~10.0質量部であってよい。
【0168】
[湿潤分散剤]
本実施形態の熱硬化性組成物は、湿潤分散剤を更に含有してもよい。本実施形態の熱硬化性組成物は、湿潤分散剤を含有することにより、充填材の分散性が一層向上できる傾向にある。
【0169】
湿潤分散剤としては、充填材を分散させるために用いられる公知の分散剤(分散安定剤)であればよく、例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製のDISPER BYK-110、111、118、180、161、BYK-W996、W9010、W903等が挙げられる。
【0170】
湿潤分散剤の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性組成物固形分100質量部に対して、0.5質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。含有量が上記範囲内にあることにより、充填材の分散性が一層向上できる傾向にある。同様の観点から、含有量の下限値は、0.5質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることが更に好ましい。
【0171】
[硬化促進剤]
本実施形態の熱硬化性組成物は、硬化促進剤を更に含有してもよい。硬化促進剤としては、特に限定されず、例えば、イミダゾール類(例えば、トリフェニルイミダゾール等)、有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチル-ジ-パーフタレート等)、アゾ化合物(例えば、アゾビスニトリル等)、第3級アミン類(例えば、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、N,N-ジメチルピリジン、2-N-エチルアニリノエタノール、トリ-n-ブチルアミン、ピリジン、キノリン、N-メチルモルホリン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミン、N-メチルピペリジン等)、有機金属塩(例えば、ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オレイン酸錫、ジブチル錫マレート、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸コバルト、アセチルアセトン鉄等)、これら有機金属塩をフェノール、ビスフェノール等の水酸基含有化合物に溶解してなるもの、無機金属塩(例えば、塩化錫、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等)有機錫化合物(例えば、ジオクチル錫オキサイド、その他のアルキル錫、アルキル錫オキサイド等)が挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、硬化促進剤は、硬化反応を促進し、得られる硬化物のガラス転移温度(Tg)が一層向上する観点から、トリフェニルイミダゾールであることが好ましい。
【0172】
[溶剤]
本実施形態の熱硬化性組成物は、溶剤を更に含有してもよい。本実施形態の熱硬化性組成物は、溶剤を含むことにより、熱硬化性組成物の調製時における粘度が下がり、ハンドリング性(取り扱い性)が一層向上したり、基材への含浸性が一層向上したりする傾向にある。
【0173】
溶剤としては、熱硬化性組成物中の有機樹脂の一部又は全部を溶解可能であれば、特に限定されないが、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、等)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアルデヒド等)、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びそのアセテート等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0174】
本実施形態の熱硬化性組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、各成分を一括的に又は逐次的に溶剤に配合し、撹拌する方法が挙げられる。この際、各成分を均一に溶解又は分散せるために、撹拌、混合、混練処理等の公知の処理を用いることができる。
【0175】
[熱硬化性組成物の物性]
本実施形態の熱硬化性組成物は、基材に含浸又は塗布して得られるプリプレグを硬化させた硬化物(以下、単に「硬化物」又は「プリプレグの硬化物」ともいう。)において、下記(i)及び(ii)の条件を満たすことが好ましい。
【0176】
0.80≦b/a≦0.98…(i)
0.05≦c/a≦0.30…(ii)
【0177】
式中、a、b、及びcは、それぞれ、硬化物の30℃、100℃、及び260℃における貯蔵弾性率(単位:GPa)を示す。
【0178】
上記プリプレグは、公知の方法によって得られるプリプレグであってもよい。具体的には、上記プリプレグは、本実施形態の熱硬化性組成物を基材に含浸又は塗布させた後、100~200℃の条件にて加熱乾燥して半硬化(Bステージ化)させることにより得られる。ここでいう基材は、特に限定されず、例えば、各種プリント配線板の材料に用いられる公知の基材であればよい。また、含浸又は塗布方法も特に限定されるものではなく公知の方法を用いればよい。
【0179】
上記硬化物は、上記プリプレグを200~230℃の加熱温度及び60~180分の加熱時間の条件にて熱硬化させて得られる硬化物をいう。なお、硬化するための圧力条件は、本発明の作用効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、通常プリプレグを硬化するための好適な条件を用いることができプリプレグを硬化させるための加熱手段もまた本発明の作用効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、通常の加熱手段(例えば、乾燥機等)を用いればよい。
【0180】
式(i)において、b/a(30℃での貯蔵弾性率に対する100℃での貯蔵弾性率の割合)が0.80以上である場合、プリプレグのガラス転移温度を十分に向上できる。その結果、温度を高くしても剛性を十分に確保できるため、プリント配線板(特に多層コアレス基板等の薄型基板)の製造工程におけるハンドリング性(取り扱い性)を向上できる傾向にある。同様の観点から、b/aは、0.85以上であることが好ましく、0.90以上であることがより好ましく、0.94以上であることが更に好ましい。
【0181】
式(ii)において、c/a(30℃での貯蔵弾性率に対する260℃での貯蔵弾性率の割合)が上記範囲内である場合、例えば、プリント配線板(特に多層コアレス基板)に半導体チップを実装するためのリフロー処理工程時に粘性挙動を発現でき、その結果、電子部品(パッケージ)を製造する際の反り(パッケージ反り)を低減できる傾向にある。同様の観点から、c/aの下限値は、0.08以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましい。c/aの上限値は、0.25以下であることが好ましく、0.23以下であることがより好ましく、0.21以下であることが更に好ましい。
【0182】
本実施形態の熱硬化性組成物は、下記式(iii)で表される関係を更に満たすことが好ましい。
15<a≦30…(iii)
【0183】
式(iii)において、a(40℃での貯蔵弾性率)が15GPa超である場合、剛性を十分に確保できる傾向にある。同様の観点から、aは、16GPa以上であることがより好ましく、18GPa以上であることが更に好ましい。一方、aが30GPa以下である場合、電子部品(パッケージ)を製造する際の反り(パッケージ反り)を一層低減できるとともに、金属箔張積層板、プリント配線板(及び多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを一層低減できる傾向にある。同様の観点から、aは、25GPa以下であることが好ましく、23GPa以下であることがより好ましい。
【0184】
本実施形態の熱硬化性組成物は、下記式(iv)及び/又は下記式(v)で表される関係を更に満たすことが好ましい。
0.10≦d/a≦0.65…(iv)
0.05≦e/a≦0.25…(v)
【0185】
各式中、d及びeは、それぞれ、基材に本実施形態の熱硬化性組成物を含浸又は塗布して得られるプリプレグを硬化させた硬化物の200℃及び330℃における貯蔵弾性率(単位:GPa)を示す。
【0186】
式(iv)において、d/a(30℃での貯蔵弾性率に対する200℃での貯蔵弾性率の割合)が上記範囲内である場合、加熱処理を含む工程(例えば、プレス成形工程、アニール工程等)時に粘性挙動を発現でき、その結果、電子部品(パッケージ)を製造する際の反り(パッケージ反り)を一層低減できる傾向にある。同様の観点から、d/aの下限値は、0.14以上であることがより好ましく、0.16以上であることが更に好ましく、d/aの上限値は、0.40以下であることがより好ましく、0.30以下であることが更に好ましい。
【0187】
式(v)において、e/a(30℃での貯蔵弾性率に対する330℃での貯蔵弾性率の割合)が上記範囲内である場合、プリント配線板(特に多層コアレス基板)に半導体チップを実装するための実装工程時に粘性挙動を発現でき、その結果、電子部品(パッケージ)を製造する際の反り(パッケージ反り)を低減できる傾向にある。同様の観点から、e/aの下限値は、0.08以上であることがより好ましく、0.10以上であることが更に好ましく、e/aの上限値は、0.22以下であることがより好ましく、0.20以下であることが更に好ましい。
【0188】
本実施形態の熱硬化性組成物は、下記式(x)で表される関係を更に満たすことが好ましい。
100≦Tg≦220…(x)
【0189】
式中、Tgは、基材に本実施形態の熱硬化性組成物を含浸又は塗布して得られるプリプレグを硬化させた硬化物のガラス転移温度(単位:℃)を示す。
【0190】
本実施形態の熱硬化性組成物が、式(x)で表される関係を満たすことにより、温度を高くしても剛性を十分に確保できるため、プリント配線板(特に多層コアレス基板等の薄型基板)の製造工程におけるハンドリング性(取り扱い性)を一層向上できる傾向にある。同様の観点から、硬化物のガラス転移温度の下限値は、120℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることが更に好ましく、硬化物のガラス転移温度の上限値は、215℃以下であることがより好ましく、210℃以下であることが更に好ましい。
【0191】
本実施形態の熱硬化性組成物は、下記式(y)で表される関係を更に満たすことが好ましい。
D≧0.1…(y)
【0192】
式中、Dは、基材に本実施形態の熱硬化性組成物を含浸又は塗布して得られるプリプレグを硬化させた硬化物のガラス転移温度における弾性率の損失正接を示す。
【0193】
式(y)において、Dが特定値以上であることにより、電子部品(パッケージ)を製造する際の反り(パッケージ反り)を一層低減できるとともに、金属箔張積層板、プリント配線板(及び多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを一層低減できる傾向にある。同様の観点から、Dは、0.11以上(例えば、0.11~0.30)であることがより好ましく、0.13以上であることが更に好ましい。
【0194】
硬化物の貯蔵弾性率、ガラス転移温度及び損失正接は、JIS C6481に準拠してDMA法(Dynamic Mechanical Analysis法)により測定することができる。より詳細な測定方法としては、まず、プリプレグ1枚の上下両面に、銅箔(3EC-VLP、三井金属鉱業株式会社製品、厚み12μm)を配置し、圧力30kgf/cm2、温度220℃で100分間の積層成形(熱硬化)を行い、所定の厚さを有する銅箔張積層板を得る。次いで、得られた銅箔張積層板をダイシングソーでサイズ5.0mm×20mmに切断後、表面の銅箔をエッチングにより除去し、測定用サンプルを得る。得られた測定用サンプルの貯蔵弾性率、ガラス転移温度及び損失正接を、動的粘弾性分析装置(TAインスツルメント製品)を用いて測定する。測定値は、例えば、3回の測定値の相加平均値で求められる。
【0195】
[用途]
本実施形態の熱硬化性組成物は、上記の通り、金属箔張積層板、プリント配線板、多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを十分に低減可能できるとともに、パッケージ反りを十分に低減可能であり、成形性に優れる。このため、本実施形態の熱硬化性組成物は、金属箔張積層板、プリント配線板、多層プリント配線板に用いられる。特に多層コアレス基板においては反りの問題は顕著であることから、本実施形態の熱硬化性組成物は、多層コアレス基板に好適に用いられる。なお、本実施形態の熱硬化性組成物は、プリプレグ、絶縁層、積層板としても好適に用いられる。
【0196】
[プリプレグ]
本実施形態のプリプレグは、基材と、基材に含浸又は塗布された本実施形態の熱硬化性組成物とを含む。プリプレグは、前述の通り、公知の方法によって得られるプリプレグであってもよく、具体的には、本実施形態の熱硬化性組成物を基材に含浸又は塗布させた後、100~200℃の条件にて加熱乾燥させることにより半硬化(Bステージ化)させることにより得られる。
【0197】
本実施形態のプリプレグは、半硬化状態のプリプレグを200~230℃の加熱温度及び60~180分の加熱時間の条件で熱硬化させて得られる硬化物の形態も包含する。
【0198】
前記プリプレグにおける熱硬化性組成物の含有量は、プリプレグの総量に対して、固形分換算で、好ましくは30~90体積%であり、より好ましくは35~85体積%であり、更に好ましくは40~80体積%である。熱硬化性組成物の含有量が上記範囲内であることにより、成形性がより向上する傾向にある。なお、プリプレグの固形分は、プリプレグ中から溶剤を取り除いた成分をいい、例えば、充填材は、プリプレグの固形分に含まれる。
【0199】
(基材)
基材としては、特に限定されず、例えば、各種プリント配線板の材料に用いられている公知の基材が挙げられる。基材の具体例としては、ガラス基材、ガラス以外の無機基材(例えば、クォーツ等のガラス以外の無機繊維で構成された無機基材)、有機基材(例えば、全芳香族ポリアミド、ポリエステル、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリイミド等の有機繊維で構成された有機基材)等が挙げられる。これらの基材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、剛性を一層向上させたり、加熱寸法安定性に一層優れたりする観点から、ガラス基材が好ましい。
【0200】
(ガラス基材)
ガラス基材を構成する繊維としては、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、Lガラス、NEガラス、HMEガラス等が挙げられる。これらの中でも、ガラス基材を構成する繊維は、強度と低吸水性に一層優れる観点から、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、Lガラス、NEガラス、及びHMEガラスからなる群より選択される1種以上の繊維であることが好ましい。
【0201】
基材の形態としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形態が挙げられる。織布の織り方としては、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、これらを開繊処理したものやシランカップリング剤等で表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さや質量は、特に限定されないが、通常は0.01~0.1mm程度のものが好適に用いられる。
【0202】
[積層板]
本実施形態の積層板は、本実施形態のプリプレグを有する。本実施形態の積層板は、プリプレグを1つ又は複数含み、複数含む場合には、プリプレグが積層された形態を有する。本実施形態の積層板は、本実施形態のプリプレグを有することにより、金属箔張積層板、プリント配線板、多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを十分に低減可能できるとともに、パッケージ反りを十分に低減可能であり、成形性に優れる。
【0203】
[金属箔張積層板]
本実施形態の金属箔張積層板は、本実施形態のプリプレグと、プリプレグの片面又は両面に配置された金属箔とを有する。本実施形態の金属箔張積層板は、プリプレグを1つ又は複数含む。プリプレグの数が1つである場合には、金属箔張積層板は、プリプレグの片面又は両面に金属箔が配置された形態を有する。プリプレグの数が複数である場合には、金属箔張積層板は、積層したプリプレグ(プリプレグの積層体)の片面又は両面に金属箔が配置された形態を有する。本実施形態の金属箔張積層板は、本実施形態のプリプレグを有することにより、金属箔張積層板、プリント配線板、多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを十分に低減可能できるとともに、パッケージ反りを十分に低減可能であり、成形性に優れる。
【0204】
金属箔(導体層)としては、各種プリント配線板材料に用いられる金属箔であればよく、例えば、銅、アルミニウム等の金属箔が挙げられ、銅の金属箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等の銅箔が挙げられる。導体層の厚みは、例えば、1~70μmであり、好ましくは1.5~35μmである。
【0205】
積層板及び金属箔張積層板の成形方法及びその成形条件は、特に限定されず、一般的なプリント配線板用積層板及び多層板の手法及び条件を適用することができる。例えば、積層板又は金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機等を用いることができる。また、積層板又は金属箔張積層板の成形(積層成形)において、温度は100~300℃、圧力は面圧2~100kgf/cm2、加熱時間は0.05~5時間の範囲が一般的である。さらに、必要に応じて、150~300℃の温度で後硬化を行うこともできる。特に多段プレス機を用いた場合は、プリプレグの硬化を十分に促進させる観点から、温度200℃~250℃、圧力10~40kgf/cm2、加熱時間80分~130分が好ましく、温度215℃~235℃、圧力25~35kgf/cm2、加熱時間90分~120分がより好ましい。また、上述のプリプレグと、別途作成した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることも可能である。
【0206】
[プリント配線板]
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態のプリプレグで形成された絶縁層と、該絶縁層の表面に形成された導体層と、を有する。本実施形態のプリント配線板は、例えば、本実施形態の金属箔張積層板の金属箔を所定の配線パターンにエッチングして導体層とすることにより形成できる。本実施形態のプリント配線板は、本実施形態のプリプレグを有することにより、金属箔張積層板、プリント配線板、多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを十分に低減可能できるとともに、パッケージ反りを十分に低減可能であり、成形性に優れる。
【0207】
本実施形態のプリント配線板は、具体的には、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、本実施形態の金属箔張積層板を用意する。金属箔張積層板の金属箔を所定の配線パターンにエッチングして導体層(内層回路)を有する内層基板を作成する。次に、内層基板の導体層(内装回路)表面に、所定数のプリプレグと、外層回路用の金属箔とをこの順序で積層し、加熱加圧して一体成形(積層成形)することにより、積層体を得る。尚、積層成形の方法及びその成形条件は、上記の積層板及び金属箔張積層板における積層成形の方法及びその成形条件と同様である。次に、積層体にスルーホール、バイアホール用の穴あけ加工を施し、これにより形成された穴の壁面に導体層(内装回路)と、外層回路用の金属箔とを導通させるためのめっき金属皮膜を形成する。次に、外層回路用の金属箔を所定の配線パターンにエッチングして導体層(外層回路)を有する外層基板を作成する。このようにしてプリント配線板が製造される。
【0208】
また、金属箔張積層板を用いない場合には、上記プリプレグに、回路となる導体層を形成しプリント配線板を作製してもよい。この際、導体層の形成に無電解めっきの手法を用いることもできる。
【0209】
[多層プリント配線板(多層コアレス基板)]
本実施形態の多層プリント配線板は、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層の片面側に積層された1つ又は複数の第2の絶縁層とからなる複数の絶縁層と、前記複数の絶縁層の各々の間に配置された第1の導体層と、前記複数の絶縁層の最外層の表面に配置された第2の導体層とからなる複数の導体層とを有し、前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層が、それぞれ、本実施形態のプリプレグの硬化物を有する。本実施形態の多層プリント配線板の具体例を
図9に示す。
図9に示す多層プリント配線板は、第1の絶縁層(1)と、第1の絶縁層(1)の片面方向(図示下面方向)に積層された2つの第2の絶縁層(2)を含み、第1の絶縁層(1)及び2つの第2の絶縁層(2)は、それぞれ1つの本実施形態のプリプレグで形成されている。また、
図9に示す多層プリント配線板は、複数の絶縁層(1,2)の各々の間に配置された第1の導体層(3)、及び、それらの複数の絶縁層(1,2)の最外層に配置された第2の導体層(3)からなる複数の導体層を有している。
【0210】
本実施形態の多層プリント配線板は、例えば、第1の絶縁層の片面方向にのみ、第2の絶縁層を積層させる、いわゆるコアレスタイプの多層プリント配線板(多層コアレス基板)である。多層コアレス基板では、通常、プリプレグで形成された絶縁層の片面方向にのみ、別のプリプレグで形成された別の絶縁層を積層させるため、基板の反りの問題が顕著である。これに対し、本実施形態の多層プリント配線板は、本実施形態のプリプレグを有することにより、金属箔張積層板、プリント配線板、多層プリント配線板(特に多層コアレス基板)の反りを十分に低減可能できるとともに、パッケージ反りを十分に低減可能であり、成形性に優れる。このため、本実施形態の熱硬化性組成物は、多層コアレス基板において、反りを十分に低減(低反りを達成)できることから、半導体パッケージ用多層コアレス基板として、有効に用いることができる。
【0211】
本実施形態の多層プリント配線板の製造方法は、例えば、本願実施例に記載の方法を参照できる。
【実施例】
【0212】
以下に実施例及び比較例を用いて本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。
【0213】
[実施例1]
ビスフェノールA(東京化成工業株式会社製」)25質量部、ヒンダードフェノール構造を有するフェノール化合物(ADEKA株式会社製品の「アデカスタブAO-20」)15質量部、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物(DIC株式会社製品の「EPICLON HP-6000」)50質量部、ナフタレン型エポキシ化合物(DIC株式会社製品の「EPICLON HP-4710」)10質量部、スラリーシリカX(SC2050-MB、平均粒径0.7μm、アドマテックス(株)製)140質量部、スラリーシリカY(SC5050-MOB、平均粒径1.5μm、アドマテックス(株)製)60質量部、湿潤分散剤X(DISPERBYK-161、ビックケミージャパン(株)製)1質量部、湿潤分散剤Y(DISPERBYK-111、ビックケミージャパン(株)製)1質量部、シランカップリング剤(KBM-403、信越化学(株)製)5質量部、2,4,5-トリフェニルイミダゾール(東京化成工業(株)製)0.5質量部を配合(混合)し、その後メチルエチルケトンで希釈してワニス(熱硬化性組成物)を得た。この例では、2官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、22.8質量部であり、多官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、33.0質量部であり、2官能フェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、23.3質量部であり、多官能フェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、14.0質量部であり、2官能熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、46.0質量部であり、多官能熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、47.0質量部であった。このワニス(熱硬化性組成物)をEガラス織布(IPC#1280)に含浸塗工し、150℃で4分間加熱乾燥して、約80μmの厚みを有するプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0214】
なお、各化合物の2官能熱硬化性化合物と多官能熱硬化性化合物の割合は、下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。すなわち、島津製作所社製LC-20ADポンプにRID-10A検出器を接続し、カラムは昭和電工社製Shodex GPC KF-801、KF-802、KF-803、KF-804を連結し、カラム温度40℃で用いた。移動相はテトラヒドロフランを流速1.0mL/minで用いた。各化合物をテトラヒドロフラン溶液5%に調整し、そのうちの20μLを測定機に付してそのピーク面積からそれぞれの化合物に含有される2官能性化合物と多官能性化合物の割合を求めた。
【0215】
[実施例2]
ビスフェノールAの配合量を25質量部に代えて、22質量部としたこと、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物の配合量を50質量部に代えて、53質量部としたこと、ヒンダードフェノール構造を有するフェノール化合物(「アデカスタブAO-20」)15質量部に代えて、ヒンダードフェノール構造を有するフェノール化合物(ADEKA株式会社製品の「アデカスタブAO-80」)15質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、約80μmの厚みを有するプリプレグを得た。この例では、2官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、24.2質量部であり、多官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、34.4質量部であり、2官能フェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、20.5質量部であり、多官能フェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、14.0質量部であり、2官能熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、44.6質量部であり、多官能熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、48.4質量部であった。得られたプリプレグ中の組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0216】
[実施例3]
ビスフェノールAの配合量を25質量部に代えて、20質量部としたこと、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物の配合量を50質量部に代えて、55質量部としたこと、ヒンダードフェノール構造を有するフェノール化合物(「アデカスタブAO-20」)15質量部に代えて、ヒンダードフェノール構造を有するフェノール化合物(住友化学株式会社製品の「MDP-S」)15質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、約80μmの厚みを有するプリプレグを得た。この例では、2官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、25.1質量部であり、多官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、35.4質量部であり、2官能フェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、32.6質量部であり、多官能フェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、0質量部であり、2官能熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、57.6質量部であり、多官能熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、35.4質量部であった。得られたプリプレグ中の組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0217】
[実施例4]
ヒンダードフェノール構造を有するフェノール化合物(「アデカスタブAO-20」)15質量部に代えて、ヒンダードフェノール構造を有するフェノール化合物(ADEKA株式会社製品の「アデカスタブAO-60」)15質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、約80μmの厚みを有するプリプレグを得た。この例では、2官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、22.8質量部であり、多官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、33.0質量部であり、2官能フェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、37.2質量部であり、多官能フェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、0質量部であり、2官能熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、60.0質量部であり、多官能熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、33.0質量部であった。得られたプリプレグ中の組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0218】
[実施例5]
ヒンダードフェノール構造を有するフェノール化合物(「アデカスタブAO-20」)15質量部に代えて、ヒンダードフェノール構造を有するフェノール化合物(2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、東京化成工業株式会社製)15質量部を配合した以外は、実施例3と同様にして、約80μmの厚みを有するプリプレグを得た。この例では、2官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、25.1質量部であり、多官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、35.4質量部であり、2官能フェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、32.6質量部であり、多官能フェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、0質量部であり、2官能熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、57.6質量部であり、多官能熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、35.4質量部であった。得られたプリプレグ中の組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0219】
[実施例6]
ヒンダードフェノール構造を有するフェノール化合物(2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、東京化成工業株式会社製)35質量部、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物(DIC株式会社製品の「EPICLON HP-6000」)55質量部、ナフタレン型エポキシ化合物(DIC株式会社製品の「EPICLON HP-4710」)10質量部、スラリーシリカX(SC2050-MB、平均粒径0.7μm、アドマテックス(株)製)140質量部、スラリーシリカY(SC5050-MOB、平均粒径1.5μm、アドマテックス(株)製)60質量部、湿潤分散剤X(DISPERBYK-161、ビックケミージャパン(株)製)1質量部、湿潤分散剤Y(DISPERBYK-111、ビックケミージャパン(株)製)1質量部、シランカップリング剤(KBM-403、信越化学(株)製)5質量部、2,4,5-トリフェニルイミダゾール(東京化成工業(株)製)0.5質量部を配合(混合)し、その後メチルエチルケトンで希釈してワニス(熱硬化性組成物)を得た。この例では、2官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、25.1質量部であり、多官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、35.4質量部であり、2官能フェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、32.6質量部であり、多官能フェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、0質量部であり、2官能熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、57.6質量部であり、多官能熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、35.4質量部であった。このワニス(熱硬化性組成物)をEガラス織布(IPC#1280)に含浸塗工し、150℃で6分間加熱乾燥して、約80μmの厚みを有するプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0220】
[比較例1]
ビスフェノールA(東京化成工業株式会社製)33質量部、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物(DIC株式会社製品の「EPICLON HP-6000」)57質量部、ナフタレン型エポキシ化合物(DIC株式会社製品の「EPICLON HP-4710」)10質量部、スラリーシリカX(SC2050-MB、平均粒径0.7μm、アドマテックス(株)製)140質量部、スラリーシリカY(SC5050-MOB、平均粒径1.5μm、アドマテックス(株)製)60質量部、湿潤分散剤X(DISPERBYK-161、ビックケミージャパン(株)製)1質量部、湿潤分散剤Y(DISPERBYK-111、ビックケミージャパン(株)製)1質量部、シランカップリング剤(KBM-403、信越化学(株)製)5質量部、2,4,5-トリフェニルイミダゾール(東京化成工業(株)製)0.5質量部を配合(混合)し、その後メチルエチルケトンで希釈してワニス(組成物)を得た。この例では、2官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、26.0質量部であり、多官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、36.3質量部であり、2官能フェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、30.7質量部であり、多官能フェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、0質量部であり、2官能熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、56.7質量部であり、多官能熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、36.3質量部であった。このワニス(熱硬化性組成物)をEガラス織布(IPC#1280)に含浸塗工し、150℃で4分間加熱乾燥して、約80μmの厚みを有するプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0221】
[比較例2]
ビスフェノールA(東京化成工業株式会社製)25質量部、ヒンダードフェノール構造を有するフェノール化合物(ADEKA株式会社製品の「アデカスタブAO-40」)15質量部、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物(DIC株式会社製品の「EPICLON HP-6000」)50質量部、ナフタレン型エポキシ化合物(DIC株式会社製品の「EPICLON HP-4710」)10質量部、スラリーシリカX(SC2050-MB、平均粒径0.7μm、アドマテックス(株)製)140質量部、スラリーシリカY(SC5050-MOB、平均粒径1.5μm、アドマテックス(株)製)60質量部、湿潤分散剤X(DISPERBYK-161、ビックケミージャパン(株)製)1質量部、湿潤分散剤Y(DISPERBYK-111、ビックケミージャパン(株)製)1質量部、シランカップリング剤(KBM-403、信越化学(株)製)5質量部、2,4,5-トリフェニルイミダゾール(東京化成工業(株)製)0.5質量部を配合(混合)し、その後メチルエチルケトンで希釈してワニス(熱硬化性組成物)を得た。この例では、2官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、22.8質量部であり、多官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、33.0質量部であり、2官能フェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、37.2質量部であり、多官能フェノール化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、0質量部であり、2官能熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、60.0質量部であり、多官能熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物固形分量100質量部に対し、33.0質量部であった。このワニス(熱硬化性組成物)をEガラス織布(IPC#1280)に含浸塗工し、150℃で4分間加熱乾燥して、約80μmの厚みを有するプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の組成物(固形分量)の含有量は、73体積%であった。
【0222】
[物性測定評価]
実施例1~6及び比較例1~2で得られたプリプレグを用い、以下の各項目に示す手順により物性測定評価用のサンプルを作製し、各種測定評価した。実施例及び比較例の結果をまとめて表1に示す。なお、表中E’(30)は、a(30℃における貯蔵弾性率)を表し、E’(100)は、b(100℃における貯蔵弾性率)を表し、E’(200)は、d(200℃における貯蔵弾性率)を表し、E’(260)は、c(260℃における貯蔵弾性率)を表し、E’(330)は、e(330℃における貯蔵弾性率)を表す。また、表中の損失係数tanΔは、D(プリプレグを硬化させた硬化物のガラス転移温度における弾性率の損失正接)を表す。
【0223】
[機械特性]
実施例1~6及び比較例1~2で得られたプリプレグ1枚の上下両面に、銅箔(3EC-VLP、三井金属鉱業(株)製、厚み12μm)を配置し、圧力30kgf/cm2、温度220℃で100分間の積層成形(熱硬化)を行い、プリプレグで形成された絶縁層と、銅箔とを有する銅箔張積層板を得た。この銅箔張積層板の絶縁層の厚さは、80μm程度であった。得られた銅箔張積層板をダイシングソーでサイズ5.0mm×20mmに切断後、表面の銅箔をエッチングにより除去し、測定用サンプルを得た。この測定用サンプルを用い、JIS C6481に準拠して動的粘弾性分析装置(TAインスツルメント製)でDMA法により、機械特性(30℃、100℃、200℃、260℃及び330℃における貯蔵弾性率E’及び損失弾性率E’’の最大値、ガラス転移温度(Tg)、及びガラス転移温度における損失正接(tanΔ)を測定した(n=3の平均値)。
【0224】
[フローテスター粘度]
得られたプリプレグを揉みほぐして熱硬化性組成物の粉を落とし、その粉を所定の金型に入れて直圧成形し、樹脂棒とした。次に、高化式フローテスターの加熱部に樹脂棒を投入し、120±0.2℃の時の溶融粘度(単位:Pa・s)を測定した。
【0225】
[レオメーター最低溶融粘度]
得られたプリプレグの最低溶融粘度(単位:Pa・s)を、レオメーター(型式:ARES-G2、TAインスツルメント株式会社製品)を用いて、3℃/分の昇温速度により測定した。
【0226】
[成形性]
実施例1~6及び比較例1~2で得られたプリプレグ1枚の上下両面に、銅箔(3EC-VLP、厚み12μm)を配置し、圧力30kgf/cm2、温度220℃で100分間の積層成形(熱硬化)を行い、プリプレグで形成された絶縁層と、銅箔とを有する銅箔張積層板を得た。この銅箔張り積層板の絶縁層の厚さは、80μm程度であった。得られた銅箔張積層板の銅箔をエッチングにより除去した後に、表面を観察し、ボイドの有無を評価した。ボイドが無かったものを「A」、ボイドがあったものを「B」とした。
【0227】
[パッケージ反り:多層コアレス基板]
まず、
図1に示すとおり、支持体(a)となるプリプレグの両面に、キャリア付極薄銅箔(b1)(MT18Ex、三井金属鉱業(株)製、厚み5μm)のキャリア銅箔面をプリプレグ側に向けて配置し、その上に実施例1~6及び比較例1~2で得られたプリプレグ(c1)を更に配置し、その上に銅箔(d)(3EC-VLP、厚み12μm)を更に配置し、圧力30kgf/cm
2、温度220℃で120分間の積層成形を行って
図2に示す銅箔張積層板を得た。
次いで、得られた
図2に示す銅箔張積層板の上記銅箔(d)を、エッチングにより除去し、
図3に示す積層板を得た。次に、
図3に示す積層板の両面に、
図4に示すとおり、実施例1~6及び比較例1~2で得られたプリプレグ(c2)を配置し、さらに、キャリア付極薄銅箔(b2)(MT18Ex、厚み5μm)を配置し、圧力30kgf/cm
2、温度220℃で100分間の積層成形を行って
図5に示す銅箔張積層板を得た。
【0228】
次いで、
図5に示す銅箔張積層板において、支持体(a)(硬化した支持体用プリプレグ)に配置したキャリア付極薄銅箔(b1)のキャリア銅箔と極薄銅箔を剥離することにより、
図6に示すとおり、支持体(a)から2枚の積層板を剥離し、さらに、それらの各積層板における上部のキャリア付極薄銅箔(b2)からキャリア銅箔を剥離し多層コアレス基板のパネル(サイズ:500mm×400mm)を得た。
【0229】
さらに、得られた多層コアレス基板のパネル(
図7の銅箔張積層板)から上記銅箔をエッチングにより、除去し、積層板を得た。そして、得られた積層板から20mm×200mmの短冊状板を切りだした。続いて、液状アンダーフィル(株式会社スリーボンド製2274E)を塗布し、半導体素子(サイズ10mm×10mm、厚み100μm)を接着搭載し、まず、温度50℃、30分、次に温度120℃、30分、更に150℃、30分の条件でアンダーフィルを硬化させた。続いて14mm×14mmサイズに切断し、パッケージ反り評価用のサンプルを得た。パッケージの反り量は、AKROMETRIX社製サーモレイPS200Lシャドーモアレ分析を用いて、パッケージサンプルを室温から260℃まで加熱し、その後室温まで冷却したときの最大反り値と最小反り値の差を反り量とした(n=3の平均値)。表1に、比較例1における測定値を1とした場合における各実施例及び比較例の相対値(vs比較例1)を示す。
【0230】
【0231】
ヒンダードフェノール化合物を用いなかった比較例1では、最低溶融粘度が高く、成形性に難があることがわかった。これに対し、本願実施例では、例えば、本願実施例1と比較例1の比較から明らかなように、特定のヒンダードフェノール化合物を用いることにより、パッケージ反りの低減効果を過度に阻害することなく最低溶融粘度を大きく低減し、成形性を改善できることがわかった。さらには、実施例1と比較例2と比較した場合、熱硬化性樹脂組成物中に特定のヒンダードフェノール化合物を含むことにより溶融粘度が大きく低減する効果が得られることがわかった。また、実施例5と実施例6を比較した場合、特定のヒンダードフェノール化合物の含有量が大きくなると、物性パラメーターが所定範囲内を満たしつつ、より一層最低溶融粘度が低減する結果が得られることがわかった。
【0232】
本出願は、2018年4月20日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2018-081073)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。