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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物及び感光性樹脂積層体
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/033 20060101AFI20230706BHJP
   C08F 2/40 20060101ALI20230706BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230706BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20230706BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230706BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20230706BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20230706BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20230706BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20230706BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
G03F7/033
C08F2/40
C08F2/44 C
C08F2/50
G03F7/004 501
G03F7/027 502
G03F7/029
G03F7/40 521
H05K3/06 J
H05K3/18 D
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2018012025
(22)【出願日】2018-01-26
(65)【公開番号】P2018136531
(43)【公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-10-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2017032102
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】西本 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】藤原 晶
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】井口 猶二
【審判官】清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-58636(JP,A)
【文献】特開2011-65171(JP,A)
【文献】特開2018-124436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/06
G03F 7/075-7/115
G03F 7/16 -7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性高分子;
(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物;
(C)光重合開始剤;
(D)禁止剤;
染料及び着色物質から成る群より選ばれる少なくとも1種;並びに
ベンゾトリアゾール類;
を含む感光性樹脂組成物であって、
前記(A)アルカリ可溶性高分子は、
所定のアルカリ可溶性高分子1種単独である場合、I/O値が0.200~0.504である(A-1)アルカリ可溶性高分子であり、
異なる合成で得られたアルカリ可溶性高分子2種以上の混合物である場合、I/O値が0.200~0.504である(A-1)アルカリ可溶性高分子の前記感光性樹脂組成物中の全固形分質量に対する混合比が5質量%以上となる、該(A-1)アルカリ可溶性高分子を含む前記混合物であり、かつ
前記(D)禁止剤はフェノール誘導体を含み、
前記感光性樹脂組成物の固形分中に含まれる前記(A)アルカリ可溶性高分子及び前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物以外の物質を(A)及び(B)以外の成分としたときに、
前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量に対する、前記(A)及び(B)以外の成分の質量の比の値が0.190以下であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量に対する前記(A-1)アルカリ可溶性高分子の質量の比が0.500以上である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A-1)アルカリ可溶性高分子は、該(A-1)アルカリ可溶性高分子を構成する全単量体成分の合計質量を基準として、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を21質量%~29質量%含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A-1)アルカリ可溶性高分子のガラス転移温度Tgが128℃以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量に対する前記(A)アルカリ可溶性高分子の質量の比が5.0以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(A)アルカリ可溶性高分子;
(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物;
(C)光重合開始剤;
(D)禁止剤;
染料及び着色物質から成る群より選ばれる少なくとも1種;並びに
ベンゾトリアゾール類;
を含む感光性樹脂組成物であって、
前記(A)アルカリ可溶性高分子は、
所定のアルカリ可溶性高分子1種単独である場合、I/O値が0.200~0.504である(A-1)アルカリ可溶性高分子であり、
異なる合成で得られたアルカリ可溶性高分子2種以上の混合物である場合、I/O値が0.200~0.504である(A-1)アルカリ可溶性高分子の前記感光性樹脂組成物中の全固形分質量に対する混合比が5質量%以上となる、該(A-1)アルカリ可溶性高分子を含む前記混合物であり、
前記(A―1)アルカリ可溶性高分子は、該(A-1)アルカリ可溶性高分子を構成する全単量体成分の合計質量を基準として、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を21質量%~29質量%含み、
前記(A-1)アルカリ可溶性高分子は、ガラス転移温度Tgが128℃以下であり、
前記(D)禁止剤はフェノール誘導体を含み、
前記感光性樹脂組成物の固形分中に含まれる前記(A)アルカリ可溶性高分子及び前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物以外の物質を(A)及び(B)以外の成分としたときに、
前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量に対する、前記(A)及び(B)以外の成分の質量の比の値が0.190以下であり、
前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量に対する前記(A-1)アルカリ可溶性高分子の質量の比が0.500以上であり、かつ
前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量に対する前記(A)アルカリ可溶性高分子の質量の比が5.0以下であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(C)光重合開始剤が、ヘキサアリールビイミダゾールを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(C)光重合開始剤が、ピラゾリン化合物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(C)光重合開始剤が、アントラセン化合物を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記(C)光重合開始剤が、芳香族ケトン類を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記(C)光重合開始剤が、アクリジン類、N-アリールアミノ酸又はそのエステル化合物、ハロゲン化合物、クマリン化合物から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記(A)アルカリ可溶性高分子の含有量は、前記感光性樹脂組成物の全固形分質量に対して30質量%以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
前記(D)禁止剤が、ヒンダードフェノールを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
前記(D)禁止剤が、p-メトキシフェノールを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項15】
前記(D)禁止剤が、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項16】
前記(D)禁止剤が、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項17】
前記(D)禁止剤が、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項18】
前記(D)禁止剤が、カテコールを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項19】
前記(D)禁止剤が、tert-ブチルカテコールを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項20】
前記(D)禁止剤が、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項21】
前記(D)禁止剤が、ビフェノールを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項22】
前記(D)禁止剤が、フェノール核を2核以上有している、請求項1~21のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項23】
前記(A-1)アルカリ可溶性高分子は、該(A-1)アルカリ可溶性高分子を構成する全単量体成分の合計質量を基準として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキルの炭素数が4以上)由来の構成単位を1質量%~20質量%含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項24】
前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物は、エチレン性不飽和結合を6個以上有する(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項25】
支持層上に請求項1~24のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物から構成される感光性樹脂層が積層されてなる、感光性樹脂積層体。
【請求項26】
以下の工程:
請求項25に記載の感光性樹脂積層体を基板に積層する積層工程;
前記感光性樹脂積層体中の前記感光性樹脂層を露光する露光工程;及び
前記感光性樹脂層の未露光部を現像除去する現像工程;
を含む、レジストパターンの形成方法。
【請求項27】
以下の工程:
請求項25に記載の感光性樹脂積層体を基板に積層する積層工程;
前記感光性樹脂積層体中の前記感光性樹脂層を露光する露光工程;
露光後の前記感光性樹脂層を現像して、レジストパターンが形成された基板を得る現像
工程;
前記レジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきする導体パターン形成
工程;及び
前記レジストパターンを剥離する剥離工程;
を含む配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性樹脂組成物、等に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、携帯電話等の電子機器には、部品、半導体等を実装するためにプリント配線板等が用いられる。プリント配線板等の製造用レジストとしては、従来、支持フィルム上に感光性樹脂層を積層し、更に該感光性樹脂層上に必要に応じて保護フィルムを積層して成る感光性樹脂積層体、いわゆるドライフィルムフォトレジスト(以下、DFと呼ぶこともある)が用いられている。感光性樹脂層としては、現在、現像液として弱アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型のものが一般的である。DFを用いてプリント配線板等を作製するには、例えば、以下の工程を経由する。DFが保護フィルムを有する場合には、まず保護フィルムを剥離する。その後、銅張積層板又はフレキシブル基板等の永久回路作製用基板上にラミネーター等を用いてDFをラミネートし、配線パターンマスクフィルム等を通して露光を行う。次に、必要に応じて支持フィルムを剥離し、現像液により未硬化部分(例えばネガ型では未露光部分)の感光性樹脂層を溶解又は分散除去し、基板上に硬化レジストパターン(以下、単にレジストパターンと呼ぶこともある)を形成させる。
レジストパターン形成後、回路を形成させるプロセスは、大きく2つの方法に分かれる。第一の方法は、レジストパターンによって覆われていない基板面(例えば銅張積層板の銅面)をエッチング除去した後、レジストパターン部分を現像液よりも強いアルカリ水溶液で除去する方法(エッチング法)である。第二の方法は、上記基板面に、銅、半田、ニッケル、スズ等のメッキ処理を行った後、第一の方法と同様にしてレジストパターン部分を除去し、更に、現れた基板面(例えば銅張積層板の銅面)をエッチングする方法(メッキ法)である。エッチングには塩化第二銅、塩化第二鉄、銅アンモニア錯体溶液等が用いられる。近年では、電子機器の小型化及び軽量化に伴い、プリント配線板の微細化及び高密度化が進んでおり、上記のような製造工程において高密着性、高解像性、良好な線幅再現性等を与える高性能DFが求められている。このような高解像性を実現させるものとして、特許文献1には、特定の熱可塑性樹脂、モノマー、及び光重合性開始剤により解像性を高めた感光性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-249884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、携帯電話、タブレット等の電子機器の小型軽量化に伴い、プリント配線板における配線間隔の微細化の要求は益々高まっている。こうした微細化の要求へ応えるため、DFへの高密着性、高解像性、良好な線幅再現性等の要求も益々厳しくなっている。更に、高解像性を実現するために、基板表面のレジスト残渣を無くす目的から現像条件を過酷にするケースが増えており、DFの高密着性の実現が非常に難しくなってきている。上記特許文献1に記載された技術は、この観点から、なお改良の余地があった。
従って、本発明は、過現像、過水洗、現像液が高温といった過酷な現像条件においても密着性や解像性に優れる感光性樹脂組成物、並びにそれを用いるレジストパターンの形成方法及び配線板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた。その結果、以下の技術的手段により、係る課題を解決することができることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
[1]
(A)アルカリ可溶性高分子;
(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物;
(C)光重合開始剤;及び
(D)禁止剤;
を含む感光性樹脂組成物であって、
前記(A)アルカリ可溶性高分子は、I/O値が0.200~0.560である(A-1)アルカリ可溶性高分子を前記感光性樹脂組成物中の全固形分質量に対して5質量%以上含み、かつ
前記(D)禁止剤はフェノール誘導体を含み、
前記感光性樹脂組成物の固形分中に含まれる前記(A)アルカリ可溶性高分子及び前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物以外の物質を(A)及び(B)以外の成分としたときに、
前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量に対する、前記(A)及び(B)以外の成分の質量の比が0.190以下であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
[2]前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量に対する(A-1)アルカリ可溶性高分子の質量の比が0.500以上である、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記(A-1)アルカリ可溶性高分子は、該(A-1)アルカリ可溶性高分子を構成する全単量体成分の合計質量を基準として、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を21質量%~29質量%含む、[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記(A-1)アルカリ可溶性高分子のガラス転移温度Tgが128℃以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量に対する(A)アルカリ可溶性高分子の質量の比が5.0以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6]
(A)アルカリ可溶性高分子;
(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物;及び
(C)光重合開始剤;
(D)禁止剤;
を含む感光性樹脂組成物であって、
前記(A)アルカリ可溶性高分子は、I/O値が0.200~0.560である(A-1)アルカリ可溶性高分子を前記感光性樹脂組成物中の全固形分質量に対して5質量%以上含み、
前記(A-1)アルカリ可溶性高分子は、該(A-1)アルカリ可溶性高分子を構成する全単量体成分の合計質量を基準として、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を21質量%~29質量%含み、
前記(A-1)アルカリ可溶性高分子は、ガラス転移温度Tgが128℃以下であり、かつ
前記(D)禁止剤はフェノール誘導体を含み、
前記感光性樹脂組成物の固形分中に含まれる前記(A)アルカリ可溶性高分子及び前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物以外の物質を(A)及び(B)以外の成分としたときに、
前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量に対する、前記(A)及び(B)以外の成分の質量の比が0.190以下であり、
前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量に対する前記(A-1)アルカリ可溶性高分子の質量の比が0.500以上であり、かつ
前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量に対する前記(A)アルカリ可溶性高分子の質量の比が5.0以下であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
[7]前記(C)光重合開始剤が、ヘキサアリールビイミダゾールを含む、[1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[8]前記(C)光重合開始剤が、ピラゾリン化合物を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[9]前記(C)光重合開始剤が、アントラセン化合物を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[10]前記(C)光重合開始剤が、芳香族ケトン類を含む、[1]~[9]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[11]前記(C)光重合開始剤が、アクリジン類、N-アリールアミノ酸又はそのエステル化合物、ハロゲン化合物、クマリン化合物から選択される少なくとも1つを含む、[1]~[10]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[12]ロイコ染料を更に含む、[1]~[11]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[13]前記ロイコ染料の含有量は、前記感光性樹脂組成物中の全固形分質量に対して0.05質量%~10質量%である、[12]に記載の感光性樹脂組成物。
[14]前記(A)アルカリ可溶性高分子の含有量は、前記感光性樹脂組成物の全固形分質量に対して30質量%以上である、[1]~[13]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[15]前記(A)アルカリ可溶性高分子の含有量は、前記感光性樹脂組成物中の全固形分質量に対して40質量%以上である、[14]に記載の感光性樹脂組成物。
[16]前記(D)禁止剤が、ヒンダードフェノールを含む、[1]~[15]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[17]前記(D)禁止剤が、p-メトキシフェノールを含む、[1]~[16]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[18]前記(D)禁止剤が、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを含む、[1]~[17]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[19]前記(D)禁止剤が、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを含む、[1]~[18]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[20]前記(D)禁止剤が、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)を含む、[1]~[19]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[21]前記(D)禁止剤が、カテコールを含む、[1]~[20]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[22]前記(D)禁止剤が、tert-ブチルカテコールを含む、[1]~[21]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[23]前記(D)禁止剤が、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンを含む、[1]~[22]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[24]前記(D)禁止剤が、ビフェノールを含む、[1]~[23]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[25]前記(D)禁止剤がフェノール核を2核以上有している、[1]~[24]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[26]前記(A-1)アルカリ可溶性高分子は、該(A-1)アルカリ可溶性高分子を構成する全単量体成分の合計質量を基準として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキルの炭素数が4以上)由来の構成単位を1質量%~20質量%含む、[1]~[25]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[27]前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物は、エチレン性不飽和結合を6個以上有する(メタ)アクリレート化合物を含む、[1]~[26]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[28]支持層上に[1]~[27]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物から構成される感光性樹脂層が積層されてなる、感光性樹脂積層体。
[29]
以下の工程:
[28]に記載の感光性樹脂積層体を基板に積層する積層工程;
前記感光性樹脂積層体中の前記感光性樹脂層を露光する露光工程;及び
前記感光性樹脂層の未露光部を現像除去する現像工程;
を含む、レジストパターンの形成方法。
[30]
以下の工程:
[28]に記載の感光性樹脂積層体を基板に積層する積層工程;
前記感光性樹脂積層体中の前記感光性樹脂層を露光する露光工程;
露光後の前記感光性樹脂層を現像して、レジストパターンが形成された基板を得る現像工程;
前記レジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきする導体パターン形成工程;及び
前記レジストパターンを剥離する剥離工程;
を含む配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、過現像、過水洗、現像液が高温といった過酷な現像条件においても密着性や解像性が良好である感光性樹脂組成物及び感光性樹脂積層体を提供すること、並びに該感光性樹脂積層体を用いたレジストパターンの形成方法及び導体パターンの形成方法を提供することができる。その結果、配線の高密度化が益々進む中においても、エッチング法またはめっき法によりパターンを形成する際に、マスク線幅再現性が良好で、ショート不良や欠け、断線、メッキ不良等の問題のない高精細の回路を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための例示の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、本明細書における各種測定値については、特に断りのない限りにおいて、本開示の[実施例]の項に記載される方法又はこれと同等であることが当業者に理解される方法に準じて測定される。
【0008】
[感光性樹脂組成物]
本実施の形態では、感光性組成物は、(A)アルカリ可溶性高分子;(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物;(C)光重合開始剤;及び(D)禁止剤を含む感光性樹脂組成物であって、アルカリ可溶性高分子(A)は、I/O値が0.200~0.560である(A-1)アルカリ可溶性高分子を感光性樹脂組成物中の固形分を基準として5質量%以上含み、かつ(D)禁止剤はフェノール誘導体を含み、固形分中に含まれる(A)アルカリ可溶性高分子及び(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物以外の物質を(A)及び(B)以外の成分としたときに、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量に対する、(A)及び(B)以外の成分の質量の比([(A)及び(B)以外の成分の質量]/[(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量]とも表記する)が0.190以下である。(A)及び(B)以外の成分とは、即ち、固形分中から(A)アルカリ可溶性高分子と(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物を除いた物質を指す。
以下、各成分を順に説明する。
【0009】
<(A)アルカリ可溶性高分子>
本開示で、(A)アルカリ可溶性高分子として、I/O値が0.200~0.560である(A-1)アルカリ可溶性高分子を固形分全体の5質量%以上含む。
前記I/O値は、(無機性値)/(有機性値)とも呼ばれる各種有機化合物の極性を有機概念的に取り扱った値であり、各官能基にパラメータを設定する官能基寄与法の一つである。前記I/O値としては、詳しくは、非特許文献(有機概念図(甲田善生著、三共出版(1984));KUMAMOTO PHARMACEUTICAL BULLETIN,第1号、第1~16項(1954年);化学の領域、第11巻、第10号、719~725項(1957年);フレグランスジャーナル、第34号、第97~111項(1979年);フレグランスジャーナル、第50号、第79~82項(1981年));等の文献に詳細に説明されている。
前記I/O 値の概念は、化合物の性質を、共有結合性を表わす有機性基と、イオン結合性を表わす無機性基とに分け、すべての有機化合物を有機軸と無機軸と名付けた直行座標上の1点ずつに位置づけて示すものである。前記I/O値は、0に近いほど非極性(疎水性、有機性の大きな)の有機化合物であることを示し、大きいほど極性(親水性、無機性の大きな)の有機化合物であることを示す。
【0010】
(A-1)アルカリ可溶性高分子のI/O値は0.200~0.560である。I/O値が0.200~0.560であると、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる。同様の観点で、I/O値としては、0.550以下が好ましく、0.520以下がより好ましく、0.510以下がより好ましく、0.500以下が更に好ましく、0.490以下がより好ましく、0.480以下が特に好ましく、0.470以下が最も好ましい。同様の観点で、I/O値としては、0.250以上が好ましく、0.300以上が好ましく、0.350以上が好ましく、0.400以上がより好ましく、0.410以上が好ましく、0.420以上が更に好ましく、0.430以上がもっと好ましく、0.440以上が特に好ましく、0.450以上が最も好ましい。I/O値を低くして疎水性とすることにより過酷な現像条件においても高密着性と高解像性を実現でき、一方でI/O値が低過ぎると最小現像時間が長過ぎてしまい、結果的に現像条件がより過酷になるために、I/O値は一定以上高い必要があると考えられる。
【0011】
過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる観点から、(A-1)アルカリ可溶性高分子を固形分全体の5質量%以上含み、好ましくは8質量%以上含み、より好ましくは10質量%以上含み、より好ましくは15質量%以上含み、更に好ましくは20質量%以上含み、もっと好ましくは25質量%以上含み、特に好ましくは30質量%以上含み、特に好ましくは35質量%以上含み、最も好ましくは40質量%以上含む。
【0012】
(A-1)アルカリ可溶性高分子のガラス転移温度Tgは128℃以下であることが好ましい。Tgは、後述される実施例に記載の方法により算出される。感光性樹脂組成物において、128℃以下のTgを有する(A-1)アルカリ可溶性高分子を使用することによって、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる。この観点から、(A-1)アルカリ可溶性高分子のTgは125℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、115℃以下であることが更に好ましく、110℃以下であることがもっと好ましく、105℃以下であることが特に好ましく、100℃以下であることが最も好ましい。また、(A-1)アルカリ可溶性高分子のTgは30℃以上であると、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。この観点から、(A-1)アルカリ可溶性高分子のTgは、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、60℃以上であることが特に好ましい。
【0013】
通常の現像で密着性や解像性に優れる感光性樹脂組成物が、必ずしも過酷な現像条件においても密着性や解像性に優れる感光性樹脂組成物ではない。本実施形態では、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる観点から、(A-1)アルカリ可溶性高分子として、芳香族炭化水素基を有する単量体成分の構成単位を52質量%以上含むことが好ましい。このような芳香族炭化水素基としては、例えば、置換又は非置換のフェニル基や、置換又は非置換のアラルキル基が挙げられ、同様の観点から、芳香族炭化水素基を有する単量体成分としては、置換又は非置換のベンジル基を有する単量体(例えば、ベンジル(メタ)アクリレート)、スチレン誘導体(例えば、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、スチレンダイマー、及びスチレントリマー等)であることが好ましく、スチレン誘導体がより好ましく、スチレンが特に好ましい。(A-1)アルカリ可溶性高分子における芳香族炭化水素基を有する単量体成分の含有割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、52質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、57質量%以上であることが更に好ましく、58質量%以上であることが特に好ましく、60質量%以上であることが最も好ましい。上限としては特に限定されないが、好ましくは95質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。(A-1)アルカリ可溶性高分子におけるスチレン誘導体の含有割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、52質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、57質量%以上であることが更に好ましく、58質量%以上であることが特に好ましく、60質量%以上であることが最も好ましい。上限としては特に限定されないが、好ましくは95質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含有する(A-1)アルカリ可溶性高分子は、芳香族炭化水素基を有する単量体と、後述する第一の単量体の少なくとも1種及び/又は後述する第二の単量体の少なくとも1種とを重合することにより得られることが好ましい。
【0014】
芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含有しない(A)アルカリ可溶性高分子は、後述する第一の単量体の少なくとも1種を重合することにより得られることが好ましく、第一の単量体の少なくとも1種と後述する第二の単量体の少なくとも1種とを共重合することにより得られることがより好ましい。
第一の単量体は、分子中にカルボキシル基を有する単量体である。第一の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、4-ビニル安息香酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステル等が挙げられる。これらの中でも、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる観点から、(メタ)アクリル酸が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味し、かつ「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。
【0015】
第一の単量体の共重合割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、10~50質量%であることが好ましい。該共重合割合を10質量%以上にすることは、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる観点から好ましく、15質量%以上がより好ましく、18質量%以上が更に好ましく、21質量%以上がもっと好ましく、23質量%以上が特に好ましく、24質量%以上が特に好ましい。該共重合割合を50質量%以下にすることは、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる観点から好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、29質量%以下がもっと好ましく、27質量%以下が特に好ましく、26質量%以下が最も好ましい。
第二の単量体は、非酸性であり、かつ分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体である。第二の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類;並びに(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。中でも、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びn-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0016】
第二の単量体としては、(A-1)アルカリ可溶性高分子が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキルの炭素数が4以上)由来の構成単位を1~20質量%含むことが、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる観点から好ましい。この観点から、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましく、また、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、8質量%以下であることが特に好ましく、6質量%以下であることが最も好ましい。
【0017】
(A-1)アルカリ可溶性高分子の酸当量は、前記のI/O値や第一の単量体の共重合割合が前記数値範囲内である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、好ましくは100~600、より好ましくは250~450である。酸当量とは、その分子中に1当量のカルボキシル基を有する重合体の質量(単位:グラム)を言う。過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる観点から、酸当量を100以上にすることが好ましく、250以上にすることがより好ましい。同様の観点から、酸当量を600以下にすることが好ましく、450以下にすることがより好ましい。本開示で、酸当量は、電位差滴定装置を用い、0.1mol/LのNaOH水溶液で滴定する電位差滴定法により測定される値である。
【0018】
(A-1)アルカリ可溶性高分子の重量平均分子量は、5,000~500,000であることが好ましい。重量平均分子量を500,000以下にすることは、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる観点から好ましく、同様の観点から100,000以下にすることがより好ましく、60,000以下にすることが更に好ましく、50,000以下にすることがもっと好ましく、40,000以下にすることが特に好ましく、30,000以下にすることが最も好ましい。同様の観点から、重量平均分子量を5,000以上にすることが好ましく、10,000以上にすることがより好ましく、15,000以上にすることが更に好ましく、17,000以上にすることが特に好ましい。(A-1)アルカリ可溶性高分子の分散度は、1.0~6.0であることが好ましく、1.0~5.0であることがより好ましく、1.0~4.0であることが更に好ましく、1.0~3.0であることが特に好ましい

(A)アルカリ可溶性高分子は、1種単独で使用することができ、或いは2種以上を混合して使用してもよい。
【0019】
(A)アルカリ可溶性高分子の合成は、上記で説明された単数又は複数の単量体を、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール等の溶剤で希釈した溶液に、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を適量添加し、加熱攪拌することにより行われることが好ましい。混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行う場合もある。反応終了後、さらに溶剤を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。合成手段としては、溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合、又は乳化重合を用いてもよい。
(A)アルカリ可溶性高分子の、感光性樹脂組成物の全固形分質量に対する割合は、10質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、25質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、35質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよく、45質量%以上であってもよく、50質量%以上であってもよく、55質量%以上であってもよく、60質量%以上であってもよい。また、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
感光性樹脂組成物に対する(A)アルカリ可溶性高分子の割合を90質量%以下にすることは、現像時間を制御する観点から好ましい。一方で、感光性樹脂組成物に対する(A)アルカリ可溶性高分子の割合を10質量%以上にすることは、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。
【0020】
<(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物>
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、硬化性及び(A)アルカリ可溶性高分子との相溶性の観点から、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含むことが好ましい。(B)化合物中のエチレン性不飽和結合の数は、1個以上であればよい。
エチレン性不飽和結合を1個有する(B)化合物としては、例えば、ポリアルキレンオキシドの片方の末端に(メタ)アクリル酸を付加した化合物、又は、ポリアルキレンオキシドの片方の末端に(メタ)アクリル酸を付加し、他方の末端をアルキルエーテル化若しくはアリルエーテル化した化合物、フタル酸系化合物等を挙げることができ、剥離性や硬化膜柔軟性の観点で好ましい。また、エチレン性不飽和結合を1個有する(B)化合物がメタアクリレート化合物であると、上記観点に加えて、感度、解像性、密着性の観点でも好ましい。
このような化合物としては、例えば、
ポリエチレングリコールをフェニル基に付加した化合物の(メタ)アクリレートであるフェノキシヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、
平均2モルのプロピレンオキサイドを付加したポリプロピレングリコールと、平均7モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールと、をノニルフェノールに付加した化合物の(メタ)アクリレートである4-ノルマルノニルフェノキシヘプタエチレングリコールジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、
平均1モルのプロピレンオキサイドを付加したポリプロピレングリコールと、平均5モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールと、をノニルフェノールに付加した化合物の(メタ)アクリレートである4-ノルマルノニルフェノキシペンタエチレングリコールモノプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及び
平均8モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールをノニルフェノールに付加した化合物のアクリレートである4-ノルマルノニルフェノキシオクタエチレングリコール(メタ)アクリレート(例えば東亞合成(株)製、M-114)等が挙げられる。
また、フタル酸系化合物、例えば、γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β'-メタクリロイルオキシエチル-о-フタレートを含むと、上記観点に加えて、感度、解像性、密着性の観点で特に好ましい。
【0021】
分子内にエチレン性不飽和結合を2個有する化合物としては、例えば、アルキレンオキシド鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物、又はエチレンオキシド鎖とプロピレンオキシド鎖とがランダム若しくはブロックで結合したアルキレンオキシド鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物等を挙げることができる。
このような化合物としては、例えば、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘプタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、12モルのエチレンオキシド鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物等のポリエチレングリコ-ル(メタ)アクリレ-ト等の他、
ポリプロピレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、ポリブチレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト等を挙げることができる。化合物中にエチレンオキシド基とプロピレンオキシド基とを含むポリアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、平均12モルのプロピレンオキシドを付加したポリプロピレングリコールの両末端にそれぞれ平均3モルのエチレンオキシドを更に付加したグリコールのジメタクリレート、平均18モルのプロピレンオキシドを付加したポリプロピレングリコールの両末端にそれぞれ平均15モルのエチレンオキシドを更に付加したグリコールのジメタクリレート、FA-023M、及びFA-024M、FA-027M(製品名、日立化成工業製)等が挙げられる。これらは柔軟性、解像性、密着性等の観点で好ましい。
分子内にエチレン性不飽和結合を2個有する化合物の別の例として、ビスフェノールAをアルキレンオキシド変性することにより両末端に(メタ)アクリロイル基を有している化合物が、解像性及び密着性の観点では好ましい。
【0022】
具体的には下記一般式(I):
【化1】
{式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、AはCであり、BはCであり、n1及びn3は各々独立に1~39の整数であり、かつn1+n3は2~40の整数であり、n2及びn4は各々独立に0~29の整数であり、かつn2+n4は0~30の整数であり、-(A-O)-及び-(B-O)-の繰り返し単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよい。そして、ブロックの場合、-(A-O)-と-(B-O)-とのいずれがビスフェニル基側でもよい。}
で表される化合物を使用することができる。
【0023】
例えば、ビスフェノ-ルAの両端にそれぞれ平均5モルずつのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコ-ルのジメタクリレ-ト、ビスフェノ-ルAの両端にそれぞれ平均2モルずつのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコ-ルのジメタクリレ-ト、ビスフェノ-ルAの両端にそれぞれ平均1モルずつのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコ-ルのジメタクリレ-トが、解像性、密着性の点で好ましい。
また、上記一般式(I)中の芳香環が、ヘテロ原子及び/又は置換基を有する化合物を用いてもよい。
【0024】
ヘテロ原子としては、例えば、ハロゲン原子等が挙げられ、そして置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~18のアリール基、フェナシル基、アミノ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基、メルカプト基、炭素数1~10のアルキルメルカプト基、アリール基、水酸基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルキル基の炭素数が1~10のカルボキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1~10のアシル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルコキシカルボニル基、炭素数2~10のアルキルカルボニル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のN-アルキルカルバモイル基若しくは複素環を含む基、又はこれらの置換基で置換されたアリール基等が挙げられる。これらの置換基は縮合環を形成しているか、又はこれらの置換基中の水素原子がハロゲン原子等のヘテロ原子に置換されていてもよい。一般式(I)中の芳香環が複数の置換基を有する場合には、複数の置換基は同一であるか、又は異なっていてよい。
【0025】
分子内にエチレン性不飽和結合を3個以上有する化合物としては、中心骨格として分子内にアルキレンオキシド基を付加させることができる基を3モル以上有し、これにエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基等のアルキレンオキシ基を付加させて得られたアルコールを(メタ)アクリレートとすることにより得られる。この場合、中心骨格になることができる化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びイソシアヌレート環等を挙げることができる。これら化合物としては、トリ(メタ)アクリレート、例えば、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(例えばトリメチロールプロパンに平均21モルのエチレンオキサイドを付加したトリメタクリレート、及びトリメチロールプロパンに平均30モルのエチレンオキサイドを付加したトリメタクリレートが、柔軟性、密着性、ブリードアウト抑制の観点で好ましい)等;テトラ(メタ)アクリレート、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等;ペンタ(メタ)アクリレート、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等;ヘキサ(メタ)アクリレート、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
テトラ(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートは、ペンタエリスリトールの4つの末端に合計1~40モルのアルキレンオキサイドが付加されているテトラ(メタ)アクリレート等でよい。
ヘキサ(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールの6つの末端に合計1~40モルのエチレンオキサイドが付加されているヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールの6つの末端に合計1~20モルのε-カプロラクトンが付加されているヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0026】
上記で説明された(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ独立に、又は組み合わせて使用されることができる。感光性樹脂組成物は、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物として、その他の化合物も含んでよい。その他の化合物としては、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート、多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、及び1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレート化合物を(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物中に75質量%以上含むことが好ましい。75質量%以上含むことは、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる観点から好ましく、同様の観点から、78質量%以上含むことがより好ましく、81質量%以上含むことが更に好ましく、85質量%以上含むことがもっと好ましく、90質量%以上含むことが特に好ましく、93質量%以上含むことが最も好ましい。
前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、メタアクリレート化合物を(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物中に75質量%以上含むことが好ましい。75質量%以上含むことは、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる観点から好ましく、同様の観点から、78質量%以上含むことがより好ましく、81質量%以上含むことが更に好ましく、85質量%以上含むことがもっと好ましく、90質量%以上含むことが特に好ましく、93質量%以上含むことが最も好ましい。
【0028】
前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合を3個以上有する(メタ)アクリレート化合物を含むことが、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる観点から好ましい。同様の観点から、エチレン性不飽和結合を3個以上有する(メタ)アクリレート化合物としては、エチレン性不飽和結合を3個有する(メタ)アクリレート化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合を4個有する(メタ)アクリレート化合物がより好ましく、エチレン性不飽和結合を5個有する(メタ)アクリレート化合物が更に好ましく、エチレン性不飽和結合を6個以上有する(メタ)アクリレート化合物が特に好ましい。
エチレン性不飽和結合を3個以上有する(メタ)アクリレート化合物としては、同様の観点から、エチレン性不飽和結合を3個以上有するメタアクリレート化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合を4個有するメタアクリレート化合物がより好ましく、エチレン性不飽和結合を5個有するメタアクリレート化合物が更に好ましく、エチレン性不飽和結合を6個以上有するメタアクリレート化合物が特に好ましい。
エチレン性不飽和結合を3個以上有する(メタ)アクリレート化合物の含有量としては、同様の観点から、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物中に5質量%以上含むことが好ましく、10質量%以上含むことがより好ましく、15質量%以上含むことが更に好ましく、20質量%以上含むことがもっと好ましく、30質量%以上含むことが特に好ましく、40質量%以上含むことが最も好ましい。
【0029】
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の感光性樹脂組成物の全固形分質量に対する割合は、5質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、25質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、35質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよく、45質量%以上であってもよく、50質量%以上であってもよい。また、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
この割合を5質量%以上にすることは、感度、解像性及び密着性の観点から好ましい。この割合を20質量%以上にすることがより好ましく、30質量%以上にすることが更に好ましい。一方で、この割合を70質量%以下にすることは、エッジフューズ及び硬化レジストの剥離遅延を抑えるという観点から好ましい。この割合を50質量%以下にすることがより好ましい。
【0030】
<(C)光重合開始剤>
(C)光重合開始剤は、光によりモノマーを重合させる化合物である。感光性樹脂組成物は、(C)光重合開始剤として本技術分野において一般に知られている化合物を含む。
感光性樹脂組成物中の(C)光重合開始剤の総含有量は、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.05質量%~10質量%、さらに好ましくは0.1質量%~7質量%、特に好ましくは0.1質量%~6質量%の範囲内である。(C)光重合開始剤の総含有量は、十分な感度を得るという観点から0.01質量%以上であることが好ましく、レジスト底面まで光を充分に透過させて、良好な高解像性を得るという観点から20質量%以下であることが好ましい。
(C)光重合開始剤としては、キノン類、芳香族ケトン類、アセトフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾイン又はベンゾインエーテル類、ジアルキルケタール類、チオキサントン類、ジアルキルアミノ安息香酸エステル類、オキシムエステル類、アクリジン類(例えば9-フェニルアクリジン、ビスアクリジニルヘプタン、9-(p-メチルフェニル)アクリジン、及び9-(m-メチルフェニル)アクリジンが感度、解像性、密着性の点で好ましい)が挙げられ、更にヘキサアリールビイミダゾール、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物(例えば9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、及び9,10-ジフェニルアントラセンが感度、解像性、密着性の点で好ましい)、クマリン化合物(例えば7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリンが感度、解像性、密着性の点で好ましい)、N-アリールアミノ酸又はそのエステル化合物(例えばN-フェニルグリシンが感度、解像性、密着性の点で好ましい)、及びハロゲン化合物(例えばトリブロモメチルフェニルスルホン)などが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。その他、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルージフェニルーホスフィンオキサイド、及びトリフェニルホスフィンオキシドを用いてもよい。
【0031】
芳香族ケトン類としては、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン[4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、及び4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノンを挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。これらの中でも、密着性の観点から、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが特に好ましい。さらに、透過率の観点から、感光性樹脂組成物中の芳香族ケトン類の含有量は、好ましくは0.01質量%~0.5質量%、さらに好ましくは0.02質量%~0.3質量%の範囲内である。
ヘキサアリールビイミダゾールの例としては、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2,2’,5-トリス-(o-クロロフェニル)-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-4’,5’-ジフェニルビイミダゾール、2,4-ビス-(o-クロロフェニル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ジフェニルビイミダゾール、2,4,5-トリス-(o-クロロフェニル)-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-ビス-4,5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2-フルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3-ジフルオロメチルフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,4-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,5-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,6-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3,4-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3,5-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3,6-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,4,5-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,4,6-トリフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、及び2,2’-ビス-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール等が挙げられ、これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。高感度、解像性及び密着性の観点から、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体が好ましい。
【0032】
本実施形態では、感光性樹脂組成物中にヘキサアリールビスイミダゾール化合物を添加することができるが、その含有量は、感光性樹脂層の剥離特性及び/又は感度を向上させるという観点から、好ましくは0.05質量%~7質量%、より好ましくは0.1質量%~6質量%、さらに好ましくは1質量%~5質量%の範囲内である。
【0033】
感光性樹脂層の剥離特性又は感度、解像性、密着性の観点から、感光性樹脂組成物は、光増感剤としてピラゾリン化合物も含むことが好ましい。
ピラゾリン化合物としては、例えば、1-フェニル-3-(4-tert-ブチル-スチリル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリン、1-(4-(ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル)-3-(4-tert-ブチル-スチリル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-ビフェニル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-ビフェニル)-5-(4-tert-オクチル-フェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-イソプロピルスチリル)-5-(4-イソプロピルフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-メトキシスチリル)-5-(4-メトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(3,5-ジメトキシスチリル)-5-(3,5-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(3,4-ジメトキシスチリル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(2,6-ジメトキシスチリル)-5-(2,6-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(2,5-ジメトキシスチリル)-5-(2,5-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(2,3-ジメトキシスチリル)-5-(2,3-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、及び1-フェニル-3-(2,4-ジメトキシスチリル)-5-(2,4-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン等が上記の観点から好ましく挙げられる。これらの中でも、1-フェニル-3-(4-ビフェニル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリンがより好ましい。
本実施形態では、感光性樹脂組成物中の光増感剤の含有量は、感光性樹脂層の剥離特性及び/又は感度を向上させるという観点から、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~3質量%の範囲内である。
【0034】
<(D)フェノール誘導体>
本実施の形態では、感光性樹脂組成物は(D)禁止剤を含み、(D)禁止剤はフェノール誘導体を含むが好ましい。
(D)禁止剤がフェノール誘導体を含むことにより、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が非常に優れる。
フェノール誘導体としては、p-メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-エチルフェニル)メタン、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、スチレン化フェノール(例えば川口化学工業(株)製、アンテージSP)、トリベンジルフェノール(例えば川口化学工業(株)製、TBP、ベンジル基を1~3個有するフェノール)、及びビフェノール等が好ましい。(D)禁止剤はフェノール誘導体であることにより、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が非常に優れる観点から好ましく、同様の観点からp-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、カテコール、tert-ブチルカテコール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、ビフェノールがより好ましい。同様の観点からフェノール誘導体としてはヒンダードフェノールが好ましい。また、同様の観点から(D)禁止剤がフェノール核を2核以上有していることが好ましい。
【0035】
(D)禁止剤の、感光性樹脂組成物の全固形分質量に対する割合は、0.001質量%~10質量%であることが好ましい。この割合は、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が非常に優れる観点で0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることが更に好ましく、0.05質量%以上であることがもっと好ましく、0.1質量%以上であることが特に好ましい。一方で、この割合は、感度低下が少ない点及び解像性の向上の点で、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましく、2質量%以下であることが特に好ましく、1.5質量%以下であることが最も好ましい。
【0036】
本実施形態では、感光性樹脂組成物としてより好ましい形態は、(A-1)アルカリ可溶性高分子のI/O値が0.200~0.500であり、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を21~29質量%含み、前記(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物として、エチレン性不飽和結合を3個以上有する(メタ)アクリレート化合物を含むことが、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が非常に優れる観点から好ましい。
【0037】
本実施形態では、感光性樹脂組成物として特に好ましい形態は、(A-1)アルカリ可溶性高分子のI/O値が0.200~0.500であり、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を21~29質量%含み、(D)禁止剤を更に含み、(D)禁止剤がフェノール誘導体であることであり、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が非常に優れる観点から好ましい。
【0038】
<添加剤>
感光性樹脂組成物は、所望により、染料、可塑剤、酸化防止剤、安定化剤等の添加剤を含んでよい。例えば、特開2013-156369号公報に列挙されている添加剤を使用してよい。
(染料及び着色物質)
本実施の形態では、感光性樹脂組成物は、所望により、染料(例えばロイコ染料、フルオラン染料等)及び着色物質から成る群より選ばれる少なくとも1種を更に含有してもよい。
着色物質としては、例えば、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、パラマジエンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン(例えば、保土ヶ谷化学(株)製 アイゼン(登録商標) MALACHITE GREEN)、ベイシックブルー20、及びダイアモンドグリーン(例えば保土ヶ谷化学(株)製 アイゼン(登録商標) DIAMOND GREEN GH)が挙げられる。感光性樹脂組成物中の着色物質の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分質量を100質量%としたとき、0.001質量%~1質量%であることが好ましい。該含有量を0.001質量%以上にすることは、感光性樹脂組成物の取扱い性を向上させるという観点から好ましい。一方で、該含有量を1質量%以下にすることは、感光性樹脂組成物の保存安定性を維持するという観点から好ましい。
感光性樹脂組成物は、染料を含有することにより露光部分が発色するので視認性の点で好ましく、また、検査機等が露光のための位置合わせマーカーを読み取る場合、露光部と未露光部とのコントラストが大きい方が認識し易く有利である。この観点で好ましい染料としては、ロイコ染料及びフルオラン染料が挙げられる。
【0039】
ロイコ染料としては、トリス(4-ジメチルアミノフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)フェニルメタン[ロイコマラカイトグリーン]等が挙げられる。とりわけ、コントラストが良好となる観点から、ロイコ染料としては、ロイコクリスタルバイオレットを用いることが好ましい。感光性樹脂組成物中のロイコ染料の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分質量に対して0.05質量%~10質量%であることが好ましい。この含有量を0.05質量%以上にすることは、露光部分と未露光部分とのコントラストを良好にする観点から好ましい。この含有量は、0.1質量%以上にすることがより好ましく、0.15質量%以上にすることが更に好ましく、0.2質量%以上にすることが特に好ましい。一方で、この含有量を10質量%以下にすることが過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる観点から好ましい。この観点から、この含有量は、2質量%以下にすることがより好ましく、1質量%以下にすることが更に好ましく、0.6質量%以下にすることがもっと好ましく、0.5質量%以下にすることが尚更好ましく、0.4質量%以下にすることが特に好ましく、0.35質量%以下にすることが最も好ましい。
また、感光性樹脂組成物中に、ロイコ染料と、(C)光重合開始剤において前述したハロゲン化合物とを組み合わせて用いることは、密着性及びコントラストを最適化する観点から好ましい。ロイコ染料を該ハロゲン化合物と併用する場合には、感光性樹脂組成物中の該ハロゲン化合物の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分質量を100質量%としたとき、0.01質量%~3質量%であることが、感光層における色相の保存安定性を維持するという観点から好ましい。
【0040】
(その他の添加剤)
感光性樹脂組成物は、熱安定性及び保存安定性を向上させるために、ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、及びカルボキシベンゾトリアゾール類から成る群より選ばれる少なくとも1種の化合物を更に含有してもよい。
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、ナフチルアミン、塩化第一銅、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、及びジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。感光性樹脂組成物の感度を損なわないために、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩が好ましい。
ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-クロロ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-トリルトリアゾール、及びビス(N-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、及びN-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0041】
ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾ-ル類、及びカルボキシベンゾトリアゾ-ル類の合計含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分質量を100質量%としたとき、好ましくは0.01質量%~3質量%であり、より好ましくは0.05質量%~1質量%である。該含有量を0.01質量%以上にすることは、感光性樹脂組成物に保存安定性を付与するという観点から好ましい。一方で、該含有量を3質量%以下にすることは、感度を維持し、染料の脱色を抑える観点から好ましい。
【0042】
本実施の形態では、感光性樹脂組成物は、ビスフェノールAのエポキシ化合物類を更に含有してもよい。ビスフェノールAのエポキシ化合物類としては、例えば、ビスフェノールAをポリプロピレングリコールで修飾し末端をエポキシ化した化合物等が挙げられる。
本実施の形態では、感光性樹脂組成物は、可塑剤を更に含有してもよい。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル類(例えば、ジエチルフレート等)、o-トルエンスルホン酸アミド、p-トルエンスルホン酸アミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリ-n-プロピル、アセチルクエン酸トリ-n-ブチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエ-テル、ポリプロプレンレングリコールアルキルエーテル等が挙げられる。また、アデカノールSDX-1569、アデカノールSDX-1570、アデカノールSDX-1571、アデカノールSDX-479(以上旭電化(株)製)、ニューポールBP-23P、ニューポールBP-3P、ニューポールBP-5P、ニューポールBPE-20T、ニューポールBPE-60、ニューポールBPE-100、ニューポールBPE-180(以上三洋化成(株)製)、ユニオールDB-400、ユニオールDAB-800、ユニオールDA-350F、ユニオールDA-400、ユニオールDA-700 (以上日本油脂(株)製)、BA-P4Uグリコール、及びBA-P8グリコール(以上日本乳化剤(株)製)等のビスフェノール骨格を有する化合物も挙げられる。
感光性樹脂組成物が可塑剤を含有する場合、感光性樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分質量に対して、好ましくは1質量%~50質量%であり、より好ましくは1質量%~30質量%である。該含有量を1質量%以上にすることは、現像時間の遅延を抑え、かつ硬化膜に柔軟性を付与するという観点から好ましい。一方で、該含有量を50質量%以下にすることは、硬化不足及びコールドフローを抑えるという観点から好ましい。
【0043】
ただし、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる観点からは、感光性樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が特に好ましく、0質量%が最も好ましい。
【0044】
本実施の形態では、感光性樹脂組成物中の固形分中に含まれる(A)アルカリ可溶性高分子及び(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物以外の物質を(A)及び(B)以外の成分としたときに、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量に対する、(A)及び(B)以外の成分の質量の比([(A)及び(B)以外の成分の質量]/[(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量]とも表記する]の値が0.190以下であることが好ましい。この値が0.190以下であると、架橋構造を形成する(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の含有量に対して、架橋構造に組み込まれない成分の含有量を少なくすることができるため、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる観点から好ましい。同様の観点から、0.185以下であることがより好ましく、0.180以下であることが更に好ましく、0.175以下であることが特に好ましく、0.170以下であることが最も好ましい。0.165以下であってもよく、0.160以下であってもよい。
また、下限値には限定は無いが、この値は0.005以上であってもよく、0.010以上であってもよく、0.030以上であってもよく、0.050以上であってもよい。
【0045】
本実施の形態では、感光性樹脂組成物中の固形分中に含まれる(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量に対する(A-1)アルカリ可溶性高分子の質量の比([(A-1)アルカリ可溶性高分子の質量]/[(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の質量]とも表記する)の値が0.500以上であることが好ましい。0.500以上であると、I/O値が0.200~0.560である(A-1)アルカリ可溶性高分子の含有量が多いことを表し、感光性樹脂組成物の疎水性を高めることができ、(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の含有量が相対的に少ないことにより感光性樹脂組成物を硬化させたときの硬化収縮を抑えることができ、その結果、過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いといった極めて過酷な現像条件においても密着性や解像性が優れる観点から好ましい。同様の観点から、0.550以上であることがより好ましく、0.580以上であることがより好ましく、0.600以上であることが更に好ましく、0.620以上であることが更に好ましく、0.650以上であることが特に好ましく、0.680以上であることが特に好ましく、0.700以上であることが最も好ましい。上限は特に限定は無いが、この値は3.0以下であってもよく、2.5以下であってもよく、2.0以下であってもよく、1.5以下であってもよい。
【0046】
本実施の形態では、感光性樹脂組成物中の固形分中に含まれる(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の含有量に対する(A)アルカリ可溶性高分子の含有量との比([(A)アルカリ可溶性高分子の含有量]/[(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物の含有量]とも表記する)の値が5.00以下であることが好ましい。5.00以下であると硬化膜柔軟性の観点から好ましく、同様の観点から4.00以下であることがより好ましく、3.00以下であることがより好ましく、2.00以下であることが更に好ましく、1.800以下であることが特に好ましく、1.600以下であることが最も好ましい。下限は特に限定は無いが、この値は0.200以上であってもよく、0.300以上であってもよく、0.500以上であってもよい。
【0047】
[溶剤]
感光性樹脂組成物は、溶剤に溶解させて感光性樹脂組成物調合液の形態で、感光性樹脂積層体の製造に使用できる。溶剤としては、ケトン類、アルコール類等が挙げられる。前記ケトン類は、メチルエチルケトン(MEK)、アセトンに代表される。前記アルコール類は、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールに代表される。溶剤は、感光性樹脂積層体の製造に際して、支持層上に塗布する感光性樹脂組成物調合液の25℃における粘度が、500mPa・s~4,000mPa・sとなるような量で、感光性樹脂組成物に添加されることが好ましい。
【0048】
<感光性樹脂積層体>
本実施形態では、支持体と、支持体上に積層された、上記感光性樹脂組成物から成る感光性樹脂層とを有する感光性樹脂積層体が提供されることができる。感光性樹脂積層体は、所望により、感光性樹脂層の支持体側と反対側に保護層を有していてもよい。
支持体としては、特に限定されるものではないが、露光光源から放射される光を透過する透明なものが好ましい。このような支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、及びセルロース誘導体フィルムが挙げられる。これらのフィルムは、必要に応じて延伸されていてもよい。
支持フィルムとしては、露光時の光散乱を抑制する観点からヘイズ5%以下のものであることが好ましく、2%以下がより好ましく、1.5%以下が更に好ましく、1.0%以下が特に好ましい。同様の観点から、感光層と接する面の表面粗さRaは30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、10nm以下が特に好ましい。フィルムの厚みは、薄いほど画像形成性及び経済性を向上させるため有利であるが、感光性樹脂積層体の強度を維持するために、10μm~30μmのものが好ましく用いられる。
【0049】
また、支持フィルムは単層構造であってもよく、複数の組成からなる形成される樹脂層を積層した多層構造であってもよい。多層構造の場合、帯電防止層があってもよい。2層構造や3層構造のような多層構造の場合、例えば、一方の面Aに微粒子を含有する樹脂層を形成し、もう一方の面Bには、(1)面Aと同じように微粒子を含有、(2)面Aより少量の微粒子を含有、(3)面Aより細かい微粒子を含有、(4)微粒子を含有しない、といった構造をとることができる。(2)、(3)、(4)の構造の場合は、面B側に感光性樹脂層を形成することが好ましい。このとき、面A側に微粒子を含有する樹脂層があると、フィルムの滑り性等の観点から好ましい。なお、微粒子としては例えば無機微粒子又は有機微粒子であり、滑剤や滑剤、添加剤の凝集物、原料に混入している異物、製造工程上混入する異物等がある。このときの微粒子の大きさとしては、解像性及びレジストパターン精度を向上できる観点から、5μm未満が好ましく、3μm未満がより好ましく、2μm未満が更に好ましく、1.5μm未満が特に好ましい。支持フィルムは、ポリエチレンテレフタラートフィルムとしては解像性及びレジストパターン精度を向上できる観点からFB-40(東レ(株)製)、QS65(東レ(株)製)、QS66(東レ(株)製)、QS67(東レ(株)製)、QS68(東レ(株)製)が好ましく、FB-40、QS68がより好ましく、QS68が更に好ましい。
【0050】
また、感光性樹脂積層体に用いられる保護層の重要な特性は、感光性樹脂層との密着力について、支持体よりも保護層の方が小さく、容易に剥離できることである。保護層としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が好ましい。例えば、特開昭59-202457号公報に記載された剥離性の優れたフィルムを用いることができる。保護層の膜厚は、10μm~100μmが好ましく、10μm~50μmがより好ましい。
ポリエチレンフィルム表面には、フィッシュアイと呼ばれるゲルが存在する場合がある。フィッシュアイを有するポリエチレンフィルムを保護層として用いた場合には、該フィッシュアイが感光性樹脂層に転写されることがある。フィッシュアイが感光性樹脂層に転写されると、ラミネート時に空気を巻き込んで空隙になることがあり、レジストパターンの欠損につながる。フィッシュアイを防ぐ観点からは、保護層の材質としては、延伸ポリプロピレンが好ましい。具体例としては王子製紙(株)製 アルファンE-200Aを挙げることができる。
【0051】
本実施形態では、感光性樹脂積層体における感光性樹脂層の厚みは、好ましくは5μm~100μm、より好ましくは7μm~60μmである。感光性樹脂層の厚みは、小さいほどレジストパターンの解像性が向上し、一方で、大きいほど硬化膜の強度が向上するので、用途に応じて選択されることができる。
支持体、感光性樹脂層、及び所望により、保護層を順次積層して、感光性樹脂積層体を作製する方法としては、既知の方法を使用してよい。
例えば、上記感光性樹脂組成物調合液を調製し、次に支持体上にバーコーター又はロールコーターを用いて塗布して乾燥させ、支持体上に感光性樹脂組成物調合液から成る感光性樹脂層を積層する。さらに、所望により、感光性樹脂層上に保護層を積層することにより感光性樹脂積層体を作製することができる。
【0052】
<レジストパターンの形成方法>
次に、本実施の形態の感光性樹脂積層体を用いてレジストパターンを製造する方法の一例を説明する。該方法は、感光性樹脂積層体を基板に積層するラミネート工程、該感光性樹脂積層体の感光性樹脂層を露光する露光工程、及び該感光性樹脂層の未露光部を現像除去する現像工程を含むことができる。レジストパターンとしては、例えば、プリント配線板、半導体素子、印刷版、液晶ディスプレイパネル、フレキシブル基板、リードフレーム基板、COF(チップオンフィルム)用基板、半導体パッケージ用基板、液晶用透明電極、液晶用TFT用配線、タッチパネル用配線、及びPDP(プラズマディスプレイパネル)用電極等のパターンが挙げられる。一例として、プリント配線板の製造方法を、下記の通り説明する。
【0053】
プリント配線板は、以下の各工程を経て製造される。
(1)ラミネート工程
先ず、ラミネート工程において、ラミネーターを用いて基板上に感光性樹脂層を形成する。具体的には、感光性樹脂積層体が保護層を有する場合には保護層を剥離した後、ラミネーターで感光性樹脂層を基板表面に加熱圧着しラミネートする。基板の材料としては、例えば、銅、ステンレス鋼(SUS)、ガラス、酸化インジウムスズ(ITO)等が挙げられる。
本実施形態では、感光性樹脂層は基板表面の片面だけにラミネートするか、又は必要に応じて両面にラミネートしてもよい。ラミネート時の加熱温度は一般的に40℃~160℃である。また、ラミネート時の加熱圧着を2回以上行うことにより、得られるレジストパターンの基板に対する密着性を向上させることができる。加熱圧着時には、二連のロールを備えた二段式ラミネーターを使用するか、又は基板と感光性樹脂層との積層物を数回繰り返してロールに通すことにより圧着してもよい。また、真空ラミネーターを用いて圧着してもよい。
(2)露光工程
本工程では、所望の配線パターンを有するマスクフィルムを支持層上に密着させて活性光源を用いて行う露光方法、所望の配線パターンである描画パターンの直接描画による露光方法、又はフォトマスクの像を、レンズを通して投影させることによる露光方法によって、感光性樹脂層を露光する。
(3)現像工程
本工程では、露光後、感光性樹脂層上の支持層を剥離し、続いてアルカリ水溶液の現像液を用いて未露光部を現像除去することにより、レジストパターンを基板上に形成する。
アルカリ水溶液としては、Na2CO3又はK2CO3の水溶液を用いる。アルカリ水溶液は、感光性樹脂層の特性に合わせて適宜選択されるが、約0.2質量%~約2質量%の濃度、かつ約20℃~約40℃のNa2CO3水溶液が好ましい。
【0054】
上記の(1)~(3)の各工程を経てレジストパターンを得ることができる。これらの工程の後、場合により、さらに約100℃~約300℃の加熱工程を行うこともできる。この加熱工程を実施することにより、耐薬品性の更なる向上が可能となる。加熱には、熱風、赤外線、又は遠赤外線の方式の加熱炉を用いることができる。また、この加熱工程は露光工程後に実施しても良い。
【0055】
(4)エッチング工程又はめっき工程
現像により露出した基板表面(例えば銅張積層板の銅面)をエッチング又はめっきし、導体パターンを製造する。
(5)剥離工程
その後、レジストパターンを、現像液よりも強いアルカリ性を有する水溶液により基板から剥離する。剥離用のアルカリ水溶液については、特に制限はないが、約2質量%~約5質量%の濃度、かつ約40~約70℃の温度のNaOH又はKOHの水溶液が好ましい。剥離液に、少量の水溶性溶媒を加えることもできる。
本実施の形態の感光性樹脂積層体は、プリント配線板、フレキシブル基板、リードフレーム基板、COF用基板、半導体パッケージ用基板、液晶用透明電極、液晶用TFT用配線、タッチパネル用配線、PDP用電極等の導体パターンの製造に適した感光性樹脂積層体である。
なお、上述した各種パラメータについては、特に断りのない限り、後述の実施例における測定方法又はこれと同等であることが当業者に理解される方法に準じて測定される。
【実施例
【0056】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明する。しかしながら、本実施の形態は、その要旨から逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例中の物性は以下の方法により測定した。
高分子の物性値の測定、高分子のガラス転移温度の計算、並びに実施例及び比較例の評価用サンプルの作製方法を説明する。また、得られたサンプルについての評価方法及びその評価結果を示す。
【0057】
(1)物性値の測定又は計算
<高分子の重量平均分子量又は数平均分子量の測定>
高分子の重量平均分子量又は数平均分子量は、日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(ポンプ:Gulliver、PU-1580型、カラム:昭和電工(株)製Shodex(登録商標)(KF-807、KF-806M、KF-806M、KF-802.5)4本直列、移動層溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン標準サンプル(昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM-105)による検量線使用)によりポリスチレン換算として求めた。
さらに、高分子の分散度は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)として算出された。
<酸当量>
本明細書において、酸当量とは、分子中に1当量のカルボキシル基を有する重合体の質量(グラム)を意味する。平沼産業(株)製平沼自動滴定装置(COM-555)を使用し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定法により酸当量を測定した。
<ガラス転移温度Tg>
アルカリ可溶性高分子のガラス転移温度TgはFox式で求められる値である。ガラス転移温度Tgを求める際には、対応するアルカリ可溶性高分子を形成するコモノマーから成るホモポリマーのガラス転移温度として、非特許文献(Brandrup,J.Immergut,E.H.編集「Polymer handbook,Third edition,John wiley&sons,1989,p.209 Chapter VI 『Glass transition temperatures of polymers』」)に示される値を使用するものとする。なお、実施例において計算に用いた各コモノマーから成るホモポリマーのガラス転移温度を表1に示す。
アルカリ可溶性高分子が2種以上ポリマーから構成される場合は、以下の下記式によって求められる値が、アルカリ可溶性高分子のガラス転移温度となる。
【数1】
{式中、Wは、各々のアルカリ可溶性高分子の固形重量であり、Tgは、各々のアルカリ可溶性高分子のFox式で求められるガラス転移温度であり、Wtotalは、各々のアルカリ可溶性高分子の合計固形重量であり、かつnは、感光性樹脂組成物に含まれるアルカリ可溶性高分子の種類の数である}
【0058】
(2)評価用サンプルの作製方法
評価用サンプルは以下のように作製した。
<感光性樹脂積層体の作製>
後掲する表1に示す成分(但し、各成分の数字は固形分としての配合量(質量部)を示す。)及び溶媒を十分に攪拌、混合して、感光性樹脂組成物調合液を得た。表1中に略号で表した成分の名称を、下記表2に示す。支持フィルムとして16μm厚のポリエチレンテレフタラートフィルム(東レ(株)製、FB-40)を用い、その表面にバーコーターを用いて、この調合液を均一に塗布し、95℃の乾燥機中で4分間乾燥して、感光性樹脂組成物層を形成した。感光性樹脂組成物層の乾燥厚みは20μmであった。
次いで、感光性樹脂組成物層のポリエチレンテレフタラートフィルムを積層していない側の表面上に、保護層として19μm厚のポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製、GF-818)を貼り合わせて感光性樹脂積層体を得た。
<基板整面>
画像性の評価基板として、35μm圧延銅箔を積層した0.4mm厚の銅張積層板を、スプレー圧0.2MPaで研削剤(宇治電化学工業(株)製、#400)を用いてジェットスクラブ研磨した後、10質量%HSO水溶液で基板表面を洗浄した。
<ラミネート>
感光性樹脂積層体のポリエチレンフィルム(保護層)を剥がしながら、50℃に予熱した銅張積層板に、ホットロールラミネーター(旭化成(株)社製、AL-700)により、感光性樹脂積層体をロール温度105℃でラミネートした。エアー圧は0.35MPaとし、ラミネート速度は1.5m/minとした。
<露光>
ラミネート後1時間経過した評価用基板に、ガラスマスクを通して、プロジェクション露光機((株)ウシオ電機製UX2003 SM-MS04、i線バンドパスフィルタ使用)によりi線単色光で露光した。露光量は100mJ/cmから350mJ/cmまで10mJ/cm刻みで複数の露光量で露光した。
<現像>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持層)を剥離した後、アルカリ現像機(フジ機工製、ドライフィルム用現像機)を用い、32℃の1質量%Na2CO3水溶液を所定時間に亘ってスプレーして現像を行った。現像スプレーの時間は最短現像時間の3倍の時間とし、現像後の水洗スプレーの時間は最短現像時間の8倍の時間とした。この際、未露光部分の感光性樹脂層が完全に溶解するのに要する最も短い時間を最短現像時間とした。なお、一般的な現像条件は、30℃の1質量%Na2CO3水溶液、現像スプレーの時間は最短現像時間の2倍の時間、現像後の水洗スプレーの時間は最短現像時間の2倍の時間であるため、本実施例の現像条件は極めて過酷な条件である。
【0059】
<画像性評価-1>
マスクパターンL/S=4μm/12μmのパターンを正常に形成可能な最小露光量のときのマスクパターンL/S=6μm/10μmのパターンのレジストライン幅を光学顕微鏡により測定した。この測定を5本ラインについて行い、その5つの線幅の平均値を求めた。本パターンはレジストライン幅がスペース幅よりも狭いため、硬化レジストの密着性により厳しい評価である。
<画像性評価-2>
マスクパターンL/S=5μm/11μmのパターンを正常に形成可能な最小露光量のときのマスクパターンL/S=6μm/10μmのパターンのレジストライン幅を光学顕微鏡により測定した。この測定を5本ラインについて行い、その5つの線幅の平均値を求めた。本パターンはレジストライン幅がスペース幅よりも狭いため、硬化レジストの密着性により厳しい評価である。
<画像性評価-3>
マスクパターンL/S=6μm/10μmのパターンを正常に形成可能な最小露光量のときのマスクパターンL/S=6μm/10μmのパターンのレジストライン幅を光学顕微鏡により測定した。この測定を5本ラインについて行い、その5つの線幅の平均値を求めた。本パターンはレジストライン幅がスペース幅よりも狭いため、硬化レジストの密着性により厳しい評価である。
なお、画像性評価-1~3の中では、画像性評価-1が硬化レジストの密着性には最も厳しい評価である。
<画像性評価-4>
露光部と未露光部の幅が1:1の比率のマスクパターン(L:S=1:1)において、硬化レジストラインが正常に形成されている最小マスクライン幅を解像度の値として求めた。本パターンは、硬化レジストの密着性とスペース部の解像抜け性の両方の特性が必要である。
なお、硬化レジストパターンにおいて、未露光部分の基板表面に残留レジストがなく基板表面が表出しており、硬化レジストが蛇行することがなく硬化レジストからレジスト成分の突起もなく、正常に形成されている硬化レジストパターンを評価した。
【0060】
【表1-1】
【0061】
【表1-2】
【0062】
【表1-3】
【0063】
【表1-4】
【0064】
【表2】
【0065】
表1及び2の結果から、本発明の構成要件の範囲に入っている実施例においては、本発明の範囲外である比較例におけるよりも、画像性評価結果が優れていることが確認された。
なお、本実施例の現像条件は極めて過酷な条件である。例えば、前述の一般的な現像条件においては、実施例4及び実施例5の組成はいずれもマスクパターンL/S=3μm/13μmのパターン、マスクパターンL/S=4μm/12μmのパターンを形成することができた。一方で、本実施例の極めて過酷な現像条件においては、実施例4及び実施例5の組成はいずれもマスクパターンL/S=3μm/13μmのパターンを正常に形成することができず、マスクパターンL/S=4μm/12μmのパターンについては表1から分かるように、実施例4では正常に形成できていないが、実施例5では正常に形成できていることが分かる。また、<画像性評価-4>のL:S=1:1のマスクパターンにおいては、前述の一般的な現像条件では、実施例4及び実施例5の組成はいずれも最小解像度が6μmであったが、本実施例の極めて過酷な現像条件では表1から分かるように、実施例4は7μm、実施例5は6.5μmであった。
同様に、前述の一般的な現像条件においては、実施例6及び比較例3の組成はいずれもマスクパターンL/S=3μm/13μmのパターン、マスクパターンL/S=4μm/12μmのパターンを形成することができた。一方で、本実施例の極めて過酷な現像条件においては、実施例6及び比較例3の組成はいずれもマスクパターンL/S=3μm/13μmのパターンを正常に形成することができず、マスクパターンL/S=4μm/12μmのパターンについては表1から分かるように、比較例3では正常に形成できていないが、実施例6では正常に形成できていることが分かる。また、<画像性評価-4>のL:S=1:1のマスクパターンにおいては、前述の一般的な現像条件では実施例6及び比較例3の組成はいずれも最小解像度が5μmであったが、本実施例の極めて過酷な現像条件では表1から分かるように、実施例6は5.5μm、比較例3は8μmであった。
つまり、一般的な現像時間や水洗時間の現像条件においては密着性や解像性が良好な場合あっても、本発明の過現像かつ過水洗で現像液の温度も高いという極めて過酷な現像条件においては密着性や解像性が良くなるという訳ではないところ、本発明により初めてこの過酷な現像条件においても密着性や解像性を良くすることができる。
【0066】
本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、エッチング法またはめっき法によりパターンを形成する際に、マスク線幅再現性が良好で、ショート不良や欠け、断線、メッキ不良等の問題のない高精細の回路を形成することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の感光性樹脂組成物は、過現像、過水洗、現像液が高温といった過酷な現像条件においても密着性や解像性が良好であることから、配線の高密度化が益々進む中においても、エッチング法またはめっき法によりパターンを形成する際に、マスク線幅再現性が良好で、ショート不良や欠け、断線、メッキ不良等の問題のない高精細の回路を形成することができる。そのため、該感光性樹脂組成物は、プリント配線板、フレキシブル基板、リードフレーム基板、COF(チップオンフィルム)用基板、半導体パッケージ用基板、液晶用透明電極、液晶用TFT用配線、タッチパネル用配線、及びPDP(プラズマディスプレイパネル)用電極等の導体パターンの製造に、好適に利用されることができる。