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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/05 20140101AFI20230707BHJP
   H01L 31/042 20140101ALI20230707BHJP
【FI】
H01L31/04 570
H01L31/04 500
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019084391
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020181904
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 守孝
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-235113(JP,A)
【文献】特開2010-141206(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109244147(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106252446(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0200045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の太陽電池セルがそれぞれ直列に接続されて複数のセル群が構成され、該複数のセル群がそれぞれ接続されて2つのストリングが構成され、該2つのストリングがそれぞれ並列に接続されたストリング群が複数直列に接続された太陽電池モジュールであって、
前記2つのストリングのうち、一方の第1ストリングにおける前記セル群が第1電極配線で接続されており、他方の第2ストリングにおける前記セル群が第2電極配線で接続されており、
前記複数のストリング群が第3電極配線で直列に接続されており、
前記第1ストリングに流れる電流と、前記第2ストリングに流れる電流とが前記ストリング群の合流部で合流し、合流した電流が前記第3電極配線に流れ、
前記第1ストリングにおける前記セル群を接続する前記第1電極配線、前記第2ストリングにおける前記セル群を接続する前記第2電極配線及び前記複数のストリング群を直列に接続する前記第3電極配線の幅及び厚みは、該第3電極配線の抵抗値が該第1電極配線及び該第2電極配線のそれぞれの抵抗値よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池モジュールであって、
前記複数の太陽電池セルのうち少なくとも1つが分割セルで構成されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の太陽電池モジュールであって、
前記第1ストリングは、第1セル群と第2セル群とが前記第1電極配線で接続されたものであり、前記第2ストリングは、第3セル群と第4セル群とが前記第2電極配線で接続されたものであることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1つに記載の太陽電池モジュールであって、
前記第3電極配線の断面積が前記第1電極配線の断面積及び前記第2電極配線のそれぞれの断面積よりも大きいことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか1つに記載の太陽電池モジュールであって、
前記第3電極配線の幅が前記第1電極配線及び前記第2電極配線のそれぞれの幅よりも大きいことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項6】
請求項1から請求項5までの何れか1つに記載の太陽電池モジュールであって、
前記第1電極配線の幅、前記第2電極配線の幅及び前記第3電極配線の幅を合計した合計幅は、所定の設定値内に設定されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項7】
請求項1から請求項6までの何れか1つに記載の太陽電池モジュールであって、
前記第1電極配線及び前記第2電極配線のそれぞれの厚みが前記第3電極配線の厚みよりも大きいことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項8】
請求項1から請求項7までの何れか1つに記載の太陽電池モジュールであって、
前記第1ストリング及び前記第2ストリングにおいて前記太陽電池セルが所定の列設方向に列設され、前記複数のストリング群が前記列設方向に直交する直交方向に並設され、
前記複数のストリング群のうち前記直交方向における両端に位置するストリング群の外側の端子は、太陽電池モジュール本体の前記直交方向における両端部に設けられた一対の端子ボックスにそれぞれ接続されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項9】
請求項1から請求項7までの何れか1つに記載の太陽電池モジュールであって、
前記第1ストリング及び前記第2ストリングにおいて前記太陽電池セルが所定の列設方向に列設され、前記複数のストリング群が前記列設方向に直交する直交方向に並設され、
前記複数のストリング群のうち前記直交方向における両端に位置するストリング群の外側の端子は、太陽電池モジュール本体の前記直交方向における両端部より前記直交方向における中央側に設けられた一対の端子ボックスにそれぞれ接続されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
1又は複数の太陽電池セルがそれぞれ直列に接続されて複数のセル群が構成され、該複数のセル群がそれぞれ接続されて2つのストリングが構成され、該2つのストリングがそれぞれ並列に接続されたストリング群が複数直列に接続された太陽電池モジュールは、従来から知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-256728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図14は、分割セルを用いた太陽電池モジュールMxにおける第1電極配線Lxa、第2電極配線Lxb及び第3電極配線Lxcを説明するための背面図である。図15は、太陽電池モジュールMxにおける電流Ia,Ib,Icの流れを示す斜視図である。
【0005】
太陽電池モジュールMxは、図14に示すように、ストリング群SG(1)~SG(n)(nは2以上の整数、n=3)が第3電極配線Lxc(第3バスバー)で複数直列に接続されている。複数のストリング群SG(1)~SG(n)は、それぞれ、第1ストリングS(1)及び第2ストリングS(2)を備えている。第1ストリングS(1)及び第2ストリングS(2)は並列に接続されている。
【0006】
第1ストリングS(1)は、第1セル群CG(1)と第2セル群CG(2)とを備えている。第1セル群CG(1)は、1又は複数の第1太陽電池セルC(1,1)~C(1,m)(mは1以上の整数、m=8)が直列に接続されたものである。第2セル群CG(2)は、1又は複数の第2太陽電池セルC(2,1)~C(2,m)が直列に接続されたものである。第1セル群CG(1)の一端部と第2セル群CG(2)の一端部とは、第1電極配線Lxa(第1バスバー)で接続されている。
【0007】
第2ストリングS(2)は、第3セル群CG(3)と第4セル群CG(4)とを備えている。第3セル群CG(3)は、1又は複数の第3太陽電池セルC(3,1)~C(3,m)が直列に接続されたものである。第4セル群CG(4)は、1又は複数の第4太陽電池セルC(4,1)~C(4,m)が直列に接続されたものである。第3セル群CG(3)の一端部と第4セル群CG(4)の一端部とは、第2電極配線Lxb(第2バスバー)で接続されている。
【0008】
そして、第1セル群CG(1)の他端部と第3セル群CG(3)の他端部とは、一の第3電極配線Lxcに接続されている。また、第2セル群CG(2)の他端部と第4セル群CG(4)の他端部とは、他の第3電極配線Lxcに接続されている。
【0009】
第1ストリングS(1)における第1電極配線Lxa、第2ストリングS(2)における第2電極配線Lxb及び隣り合うストリング群SG(1),SG(2)間~SG(n-1),SG(n)間の第3電極配線Lxcは、同じ配線材が用いられている。
【0010】
このような太陽電池モジュールMxの構成は、図14に示すように、個々の太陽電池セルC(1,1)~C(4,m)を複数に分割した分割セル(例えばハーフセル、1/4セル)を用いた場合(例えば特許文献1参照)に特に有利である。
【0011】
ところで、太陽電池モジュールMxにおいて、一の第3電極配線Lxcに流れる電流Icは、図15に示すように、ストリング群SG(1)の分流部(α部参照)でストリング群SG(1)における第1ストリングS(1)に流れる電流Iaと、ストリング群SG(1)における第2ストリングS(2)に流れる電流Ibとに分かれる(Ic=Ia+Ib、Ia=Ib=Ic/2)。第1ストリングS(1)における電流Iaは、第1電極配線Lxaに流れ、第2ストリングS(2)における電流Iaは、第2電極配線Lxbに流れる。
【0012】
また、第1ストリングS(1)に流れていた電流Iaと、第2ストリングS(2)に流れていた電流Ibとがストリング群SG(1)の合流部(β部参照)で合流し、合流した電流Icは、他の第3電極配線Lxcに流れる。以上のことがストリング群SG(2)~SG(n)でも行われ、最終的に合流した電流Icが太陽電池モジュールMxから出力される。
【0013】
ところが、太陽電池モジュールMxでは、フルセルや分割セル等のセルの形態に関わらず、次のような不都合がある。すなわち、第3電極配線Lxcには第1電極配線Lxa及び第2電極配線Lxbと同じ配線材が用いられているにもかかわらず、第3電極配線Lxcに流れる電流Icの電流値は、第1電極配線Lxa及び第2電極配線Lxbに流れる電流Ia,Ibの電流値よりも大きくなる(2倍になる)。従って、第3電極配線Lxcでの配線損失(配線ロス)を最小限に抑えることが望まれる。
【0014】
この点に関し、特許文献1には、配線損失を最小限に抑えることについて何ら示されていない。
【0015】
そこで、本発明は、配線損失を最小限に抑えることができる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために、本発明に係る太陽電池モジュールは、1又は複数の太陽電池セルがそれぞれ直列に接続されて複数のセル群が構成され、該複数のセル群がそれぞれ接続されて2つのストリングが構成され、該2つのストリングがそれぞれ並列に接続されたストリング群が複数直列に接続された太陽電池モジュールであって、前記2つのストリングのうち、一方の第1ストリングにおける前記セル群が第1電極配線で接続されており、他方の第2ストリングにおける前記セル群が第2電極配線で接続されており、前記複数のストリング群が第3電極配線で直列に接続されており、前記第1ストリングに流れる電流と、前記第2ストリングに流れる電流とが前記ストリング群の合流部で合流し、合流した電流が前記第3電極配線に流れ、前記第1ストリングにおける前記セル群を接続する前記第1電極配線、前記第2ストリングにおける前記セル群を接続する前記第2電極配線及び前記複数のストリング群を直列に接続する前記第3電極配線の幅及び厚みは、該第3電極配線の抵抗値が該第1電極配線及び該第2電極配線のそれぞれの抵抗値よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、配線損失を最小限に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る太陽電池モジュールにおける内部構造を示す背面図である。
図2】第1実施形態に係る太陽電池モジュールにおける内部構造を示す縦断面図である。
図3】第1実施形態に係る太陽電池モジュールの背面図である。
図4】第1実施形態に係る太陽電池モジュールにおける第1電極配線、第2電極配線及び第3電極配線を説明するための背面図である。
図5】第1実施形態に係る太陽電池モジュールについて、出力例を設定し各電極配線の幅を変更して配線損失が最小限になる値を求めた図表である。
図6】第1実施形態に係る太陽電池モジュールにおける図5の出力例に基づき第3電極配線の幅に対する全体配線損失の関係を示すグラフである。
図7】第1実施形態に係る太陽電池モジュールにおける図5の出力例に基づき第3電極配線断面積比に対する配線損失改善率の関係を示すグラフである。
図8】第2実施形態に係る太陽電池モジュールにおける内部構造を示す背面図である。
図9】第2実施形態に係る太陽電池モジュールの背面図である。
図10】第2実施形態に係る太陽電池モジュールにおける第1電極配線、第2電極配線及び第3電極配線を説明するための背面図である。
図11】第2実施形態に係る太陽電池モジュールについて、出力例を設定し各電極配線の幅を変更して配線損失が最小限になる値を求めた図表である。
図12】第2実施形態に係る太陽電池モジュールにおける図11の出力例に基づき第3電極配線の幅に対する全体配線損失の関係を示すグラフである。
図13】第2実施形態に係る太陽電池モジュールにおける図11の出力例に基づき第3電極配線断面積比に対する配線損失改善率の関係を示すグラフである。
図14】分割セルを用いた太陽電池モジュールにおける第1電極配線、第2電極配線及び第3電極配線を説明するための背面図である。
図15】分割セルを用いた太陽電池モジュールにおける電流の流れを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。従って、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1における内部構造を示す背面図である。図2は、第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1における内部構造を示す縦断面図である。図3は、第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1の背面図である。なお、図3において、図示を省略したが、一対の端子ボックスBX1,BX2の間には、通常は、バイパスダイオードが入ったボックス(バイパスダイオード入ボックス)が設けられている。このことは、後述する図9についても同様である。
【0021】
太陽電池モジュールM1の基本構成は、第1電極配線Lxa、第2電極配線Lxb及び第3電極配線Lxcに代えて第1電極配線La、第2電極配線Lb及び第3電極配線Lcを設けたことを除いて図14に示す太陽電池モジュールMxと同様であり、詳しい説明を省略する。
【0022】
本実施の形態では、太陽電池モジュールM1における太陽電池セルC(1,1)~C(4,m)(m=8)は、160mm角程度の大きさの太陽電池セル基板を2分割したものを例示している。
【0023】
すなわち、分割後の太陽電池セルC(1,1)~C(4,m)は、所定の列設方向X(上下方向)における一方側の2つの角部がカット(面取り)されており、全体として160mm×80mm角程度の大きさに形成されている。
【0024】
太陽電池セルC(1,1)~C(4,m)は、以下の図2の説明において、単に太陽電池セルCという。太陽電池セルCは、図2に示すように、表面電極31と裏面電極32とを備えている。表面電極31は、バスバー電極31aと、図示を省略したフィンガー電極とから構成されている。バスバー電極31aは、帯状のものであり、太陽電池セルCの表面において列設方向Xに直線的に形成されている。フィンガー電極は、バスバー電極31aの両側縁から直交方向Yに櫛歯状に延びて多数に形成されている。フィンガー電極は、互いに一定の間隔をあけて、太陽電池セルCの受光面全体を網羅するようにパターン形成されている。また、裏面電極32は、太陽電池セルCの裏面において列設方向Xに直線的に帯状となるように形成されており、バスバー電極31aと表裏対向するように設けられている。ここで、バスバー電極31a及び裏面電極32の幅は、本実施形態では、3mmに形成されている。
【0025】
太陽電池モジュールM1は、太陽電池セルCと、配線材33(インターコネクタ)と、透光性基板34と、保護部材35とを備えている。太陽電池セルCは、表面電極31と裏面電極32とを備えている。配線材33は、一の太陽電池セルCの表面電極31のバスバー電極31aと他の太陽電池セルCの裏面電極32とに接続されて隣り合う太陽電池セルC,C同士を直列に接続する配線材である。透光性基板34は、太陽電池セルCの表面側(図2では上側)に対向するように設けられている。保護部材35は、太陽電池セルCの裏面側(図2では下側)に対向するように設けられている。
【0026】
太陽電池モジュールM1は、太陽電池セルCと配線材33とが透光性の封止材36によって透光性基板34と保護部材35との間に封止された構造となっている。配線材33は、細長い短冊状に形成された基材の外表面に半田がコーティング(半田メッキ処理)された構成となっている。基材の材質としては特に限定されないが、例えば銅等の金属を用いることができる。また、配線材33の幅は、本実施形態では、2mmに形成されている。また、厚みは0.2mmとなっている。
【0027】
そして、配線材33の一方側(図2では左側)が太陽電池セルCの表面のバスバー電極31aに半田接続されている。配線材33の他方側(図2では右側)が隣接する太陽電池セルC裏面の裏面電極32に半田接続されている。なお、本実施の形態では、太陽電池セルCにバスバー電極31aを2本形成しているが、1本又は平行に3本以上形成される場合もある。この場合には、裏面電極32も1本又は平行に3本以上形成され、配線材33~33も、1本又は3本以上使用される。
【0028】
図1に示すように、太陽電池モジュールM1において、1又は複数の太陽電池セル〔第1太陽電池セルC(1,1)~C(1,m)、第2太陽電池セルC(2,1)~C(2,m)、第3太陽電池セルC(3,1)~C(3,m)、第4太陽電池セルC(4,1)~C(4,m)〕は、それぞれ直列に接続されて複数のセル群CG(1)~CG(n)が構成されている。複数のセル群CG(1)~CG(n)は、それぞれ接続されて2つのストリングS(1),S(2)が構成されている。2つのストリングS(1),S(2)がそれぞれ並列に接続されたストリング群SG(1)~SG(n)が複数直列に接続されている。
【0029】
2つのストリングS(1),S(2)のうち、一方の第1ストリングS(1)におけるセル群〔第1セル群CG(1)、第2セル群CG(2)〕が第1電極配線L1で接続され、他方の第2ストリングS(2)におけるセル群〔第3セル群CG(3)、第4セル群CG(4)〕が第2電極配線L2で接続されている。ストリング群SG(1),SG(2)は、第1ストリングS(1)と、第2ストリングS(2)とがそれぞれ並列に接続されている。複数のストリング群SG(1),SG(2)は、第3電極配線Lcで直列に接続されている。
【0030】
詳しくは、太陽電池モジュールM1では、第1ストリングS(1)は、第1セル群CG(1)と第2セル群CG(2)とが第1電極配線Laで接続されている。第2ストリングS(2)は、第3セル群CG(3)と第4セル群CG(1)とが第2電極配線Lbで接続されている。第1セル群CG(1)は、1又は複数の第1太陽電池セルC(1,1)~C(1,m)が直列に接続されている。第2セル群CG(2)は、1又は複数の第2太陽電池セルC(2,1)~C(2,m)が直列に接続されている。第3セル群CG(3)は、1又は複数の第3太陽電池セルC(3,1)~C(3,m)が直列に接続されている。第4セル群CG(4)は、1又は複数の第4太陽電池セルC(4,1)~C(4,m)が直列に接続されている。
【0031】
第1ストリングS(1)及び第2ストリングS(2)において太陽電池セルC(1,1)~C(2,m),C(3,1)~C(4,m)は、列設方向Xに列設されている。複数のストリング群SG(1)~SG(n)(n=3)は、列設方向Xに直交する直交方向Yに並設されている。
【0032】
図3に示すように、太陽電池モジュールM1は、一対の端子ボックスBX1,BX2を備えている。一対の端子ボックスBX1,BX2は、太陽電池モジュール本体30の直交方向Yにおける両端部に設けられている。複数のストリング群SG(1)~SG(n)のうち直交方向Yにおける両端に位置するストリング群SG(1),SG(n)の外側の端子T1,T2(直交方向Yにおける両端部の第3電極配線Lc,Lc)は、一対の端子ボックスBX1,BX2にそれぞれ接続されている。
【0033】
図4は、第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1における第1電極配線La、第2電極配線Lb及び第3電極配線Lcを説明するための背面図である。
【0034】
第1電極配線La、第2電極配線Lb及び第3電極配線Lcの幅及び厚みは、第3電極配線Lcの抵抗値が第1電極配線La及び第2電極配線Lbのそれぞれの抵抗値よりも小さくなるように設定されている。この例では、図4に示すように、第3電極配線Lcの幅は、第1電極配線La及び第2電極配線Lbの幅よりも大きく設定されている。
【0035】
こうすることで、第3電極配線Lcの抵抗値を第1電極配線La及び第2電極配線Lbのそれぞれの抵抗値よりも小さくすることができ、第3電極配線Lcの配線損失が最小又は略最小になるように設定することができる。第3電極配線Lcに流れる電流値がたとえ第1電極配線La及び第2電極配線Lbに流れる電流値よりも大きく(2倍に)なったとしても、第3電極配線Lcに電流を流し易くすることができる。これにより、配線損失を最小限に抑えることができる。
【0036】
本実施の形態において、太陽電池セル〔第1から第4太陽電池セルC(1,1)~C(4,m)〕のうち少なくとも1つが分割セルで構成されている。ここで、分割セルとは、標準サイズのセル(太陽電池用ウェハ1枚分のセル、フルセルともいう。)を分割した小型のセルをいう。分割セルとしては、標準サイズのセルを半分に分割したもの(ハーフセル)、1/4に分割したものを例示できる。従って、セル1枚当たりの電流の電流値を減少(ハーフセルの場合、半減)させることができ、電流値の減少に伴い第1電極配線La、第2電極配線Lb及び第3電極配線Lcでの電力損失を低下させることができ、それだけ、太陽電池モジュールM1の電力損失を減少させることができる。
【0037】
本実施の形態において、第1ストリングS(1)は、第1セル群CG(1)と第2セル群CG(2)とが第1電極配線L1で接続されている。第2ストリングS(2)は、第3セル群CG(3)と第4セル群CG(4)とが第2電極配線L2で接続されている。こうることで、第3電極配線Lcに流れる電流値が第1電極配線La及び第2電極配線Lbに流れる電流値の2倍程度にする構成を容易に実現させることができる。
【0038】
本実施の形態において、第1太陽電池セルC(1,1)~C(1,m)のセル数と、第2太陽電池セルC(2,1)~C(2,m)のセル数と、第3太陽電池セルC(3,1)~C(3,m)のセル数と、第4太陽電池セルC(4,1)~C(4,m)のセル数とが同数である。こうすることで、たとえ第3電極配線Lcに流れる電流値が第1電極配線La及び第2電極配線Lbに流れる電流値の2倍程度になっても、配線損失を最小限に抑えることができる。
【0039】
本実施の形態において、第1電極配線La、第2電極配線Lb及び第3電極配線Lcの体積抵抗率が等しい又は略等しい。こうすることで、第1電極配線La、第2電極配線Lb及び第3電極配線Lcの材料として同じ材料を用いることができる。これにより、製造コストを抑えつつ配線損失を最小限に抑えることができる。
【0040】
第3電極配線Lcの断面積が第1電極配線Laの断面積及び第2電極配線Lbのそれぞれの断面積よりも大きい。こうすることで、第3電極配線Lcの抵抗値を第1電極配線La及び第2電極配線Lbのそれぞれの抵抗値よりも容易に小さくすることができる。
【0041】
第3電極配線Lcの幅hc(例えば11.4mm)が第1電極配線La及び第2電極配線Lbのそれぞれの幅ha(例えば6.3mm),hb(例えば6.3mm)よりも大きい。こうすることで、第3電極配線Lcの抵抗値を第1電極配線La及び第2電極配線Lbのそれぞれの抵抗値よりも容易に小さくすることができる。
【0042】
本実施の形態において、第1電極配線La及び第2電極配線Lbの幅ha,hbが等しい又は略等しい。こうすることで、第3電極配線Lcの抵抗値を第1電極配線La及び第2電極配線Lbのそれぞれの抵抗値よりも小さくなるように、第1電極配線La、第2電極配線Lb及び第3電極配線Lcの幅ha,hb,hc及び厚みを容易に設定することができる。
【0043】
本実施の形態において、第1電極配線Laの幅ha、第2電極配線Lbの幅hb及び第3電極配線Lcの幅hcを合計した合計幅(ha+hb+hc)は、所定の設定値(例えば24mm)内に設定されている。こうすることで、太陽電池モジュール本体30の限られたスペース内で第1電極配線Laの幅ha、第2電極配線Lbの幅hb及び第3電極配線Lcの幅hcを設定することができる。
【0044】
本実施の形態において、複数のストリング群SG(1)~SG(n)のうち直交方向Yにおける両端に位置するストリング群SG(1),SG(n)の外側の端子T1,T2は、太陽電池モジュール本体30の直交方向Yにおける両端部に設けられた一対の端子ボックスBX1,BX2にそれぞれ接続されている。こうすることで、一対の端子ボックスBX1,BX2を太陽電池モジュール本体30の直交方向Yにおける両端部に設けた太陽電池モジュールM1において、配線損失を最小限に抑えることができる。
【0045】
<第1実施形態の具体例>
次に、第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1について、第1電極配線Laの幅ha、第2電極配線Lbの幅hb及び第3電極配線Lcの幅hcを変更して配線損失が最小限になる値を求めたので、それについて以下に説明する。
【0046】
図5は、第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1について、各電極配線La~Lcの幅ha~hcを変更して配線損失が最小限になる値を求めた図表である。
【0047】
図5に示す例では、第1電極配線Laの幅ha、第2電極配線Lbの幅hb及び第3電極配線Lcの幅hcが何れも8mmと均等にした太陽電池モジュールM1を基準にしている。第1電極配線La、第2電極配線Lb及び第3電極配線Lcの厚みdは何れも0.25mmとした。第1電極配線La、第2電極配線Lb及び第3電極配線Lcに用いた材料は何れも銅(体積抵抗率ρ=1.7×10-8Ωm)とした。また、太陽電池モジュールM1の最大出力動作電流(Ipm)を9Aとした。すなわち、第3電極配線Lcに流れる最大出力動作電流Icpmは、9Aとなり、第1ストリングS(1)における第1電極配線La及び第2ストリングS(2)における第2電極配線Lbに流れる最大出力動作電流Iapm,Ibpmは何れも4.5Aとなる。
【0048】
各ストリング群SG(1)~SG(3)に設けられた3つの第1電極配線La及び3つの第2電極配線Lbの長さを何れも318mmとした。従って、第1電極配線La~Laの長さを合計した合計長さTLaは、何れも318mm×3=954mmとなり、3つの第2電極配線Lb~Lbの長さを合計した合計長さTLbは、何れも318mm×3=954mmとなる。
【0049】
隣り合うストリング群SG(1),SG(2)間、隣り合うストリング群SG(2),G(3)間に設けられた2つ第電極配線Lの長さを何れも318mmとし、直交方向Yにおける両端に位置するストリング群SG(1),SG(n)の外側端部に設けられた2つの第電極配線Lを79.5mmとした。従って、第3電極配線Lcの長さを合計した合計長さTLcは318mm×2+79.5mm×2=795mmとなる。
【0050】
第1電極配線Laの抵抗値Raは、ρ×(TLa/1000)/〔(d/1000)×(ha/1000)〕の計算式で算出した。第2電極配線Lbの抵抗値Rbは、ρ×(TLb/1000)/〔(d/1000)×(hb/1000)〕の計算式で算出した。また、第3電極配線Lcの抵抗値Rcは、ρ×(TLc/1000)/〔(d/1000)×(hc/1000)〕の計算式で算出した。
【0051】
第1電極配線Laの配線損失Qaは、Ra×(Iapm/2)の計算式で算出した。第2電極配線Lbの配線損失Qbは、Rb×(Ibpm/2)の計算式で算出した。また、第3電極配線Lcの配線損失Qcは、Rc×(Icpm/2)の計算式で算出した。第1電極配線Laの配線損失Qa、第2電極配線Lbの配線損失Qb及び第3電極配線Lcの配線損失Qcを合計した全体配線損失Qtは、Qa+Qb+Qcの計算式で算出した。第1電極配線La(第2電極配線Lb)の断面積に対する第3電極配線Lcの断面積の比である第3電極配線断面積比[%]は、(hc×d)/ha×d)×100の計算式で算出した。また、第1電極配線La(第2電極配線Lb)を基準にした第3電極配線Lcの配線損失改善率[%]は、(1-基準の全体配線損失Qt/全体配線損失Qt)×100の計算式で算出した。
【0052】
図6は、第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1における第3電極配線Lcの幅hcに対する全体配線損失Qtの関係を示すグラフである。図7は、第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1における第3電極配線断面積比に対する配線損失改善率の関係を示すグラフである。
【0053】
図5から図7に示すように、第3電極配線Lcの幅hcが11.4mmで、第3電極配線断面積比が181%のときに、配線損失を最小限に抑えることができた。
【0054】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2における内部構造を示す背面図である。図9は、第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2の背面図である。また、図10は、第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2における第1電極配線La、第2電極配線Lb及び第3電極配線Lcを説明するための背面図である。
【0055】
太陽電池モジュールM2の基本構成は、端子ボックスBX1,BX2を直交方向Yにおける中央部に設けたことを除いて第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1と同様であり、詳しい説明を省略する。
【0056】
本実施の形態では、一対の端子ボックスBX1,BX2を太陽電池モジュール本体30の直交方向Yにおける両端縁よりも中央寄りに設けるにあたり、第3電極配線Lcを太陽電池モジュール本体30の直交方向Yにおける両端部からそれぞれ折り返して絶縁層(図示せず)を介して重ねる2重構造にしている。
【0057】
本実施の形態において、一対の端子ボックスBX1,BX2は、太陽電池モジュール本体30の直交方向Yにおける両端部より直交方向Yにおける中央側(中央部)に設けられている。複数のストリング群SG(1)~SG(n)のうち直交方向Yにおける両端に位置するストリング群SG(1),SG(n)の外側の端子T1,T2(直交方向Yにおける両端部の第3電極配線Lc,Lc)は、一対の端子ボックスBX1,BX2にそれぞれ接続されている。こうすることで、一対の端子ボックスBX1,BX2を太陽電池モジュール本体30の直交方向Yにおける両端部より直交方向Yにおける中央側(中央部)に設けた太陽電池モジュールM2において、配線損失を最小限に抑えることができる。
【0058】
<第2実施形態の具体例>
次に、第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2について、第1電極配線Laの幅ha、第2電極配線Lbの幅hb及び第3電極配線Lcの幅hcを変更して配線損失が最小限になる値を求めたので、それについて以下に説明する。
【0059】
図11は、第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2について、各電極配線La~Lcの幅ha~hcを変更して配線損失が最小限になる値を求めた図表である。
【0060】
図11に示す例では、第3電極配線Lcの長さを合計した合計長さTLcを除いて図5に示す例と同様であり、詳しい説明を省略する。
【0061】
隣り合うストリング群SG(1),SG(2)間、隣り合うストリング群SG(2),SG(3)間に設けられた2つ第電極配線Lの長さを何れも318mmとし、直交方向Yにおける両端に位置するストリング群SG(1),SG(n)の外側端部に設けられた2つの第電極配線Lを318mm+79.5mmとした。従って、第3電極配線Lcの長さを合計した合計長さTLcは318mm×2+(318mm+79.5mm)×2=1431mmとなる。
【0062】
図12は、第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2における第3電極配線Lcの幅hcに対する全体配線損失Qtの関係を示すグラフである。図13は、第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2における第3電極配線断面積比に対する配線損失改善率の関係を示すグラフである。
【0063】
図11から図13に示すように、第3電極配線Lcの幅hcが13.2mmで、第3電極配線断面積比が244%のときに、配線損失を最小限に抑えることができた。
【0064】
(第3実施形態)
ところで、一対の端子ボックスBX1,BX2を太陽電池モジュール本体30の直交方向Yにおける両端縁よりも中央寄りに設ける場合、第3電極配線Lcを太陽電池モジュール本体30の直交方向Yにおける両端部からそれぞれ折り返して絶縁層を介して重ねる2重構造にする必要がある。このため、第3電極配線Lcの厚みhcをある程度抑えることが望まれる。
【0065】
この点、第3実施形態に係る太陽電池モジュール(図示を省略)は、第1電極配線La及び第2電極配線Lbのそれぞれの厚みが第3電極配線Lcの厚みよりも大きい。こうすることで、一対の端子ボックスBX1,BX2を第3電極配線Lcに接続するにあたり、たとえ一対の端子ボックスBX1,BX2を第3電極配線Lcの太陽電池モジュール本体30の直交方向Yにおける両端縁よりも中央寄りに設けて、第3電極配線Lcを2重構造にしたとしても、第3電極配線Lcの厚みをある程度抑えつつ配線損失を最小限に抑えることができる。また、第1電極配線La及び第2電極配線Lbの厚みを大きくすると、それだけ第1電極配線La及び第2電極配線Lbの幅ha,hbを小さくすることができる。そうすると、第3電極配線Lcの幅hcを大きくすることができ、それだけ第3電極配線Lcの厚みを抑えることができる。
【0066】
(その他の実施形態)
第1実施形態から第3実施形態では、太陽電池セルとして、標準サイズのセル(フルセル)を半分に分割したものを用いたが、1/4に分割したものであってもよいし、フルセルのものであってもよい。
【0067】
また、第1実施形態から第3実施形態では、受光面及び受光面の反対側の裏面の双方に電極が形成された単結晶型太陽電池モジュールに適用したが、受光面の反対側の裏面にp型電極及びn型電極が形成された裏面電極型太陽電池モジュール(いわゆるバックコンタクト型太陽電池モジュール)に適用してもよい。
【0068】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、係る実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0069】
30 太陽電池モジュール本体
BX1 端子ボックス
BX2 端子ボックス
C 太陽電池セル
CG(1) 第1セル群
CG(2) 第2セル群
CG(3) 第3セル群
CG(4) 第4セル群
La 第1電極配線(第1バスバー)
Lb 第2電極配線(第2バスバー)
Lc 第3電極配線(第3バスバー)
M1 太陽電池モジュール
M2 太陽電池モジュール
S(1) 第1ストリング
S(2) 第2ストリング
SG ストリング群
T1 端子
T2 端子
ha 幅
hb 幅
hc 幅
X 列設方向
Y 直交方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15