(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】食器洗浄機
(51)【国際特許分類】
A47L 15/46 20060101AFI20230707BHJP
A47L 15/48 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
A47L15/46 Z
A47L15/46 J
A47L15/48
(21)【出願番号】P 2019128064
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】近藤 駿介
(72)【発明者】
【氏名】大平 隼大
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-023895(JP,A)
【文献】特開2008-006138(JP,A)
【文献】特開2013-085592(JP,A)
【文献】特開2007-054506(JP,A)
【文献】特開2002-315990(JP,A)
【文献】特開平05-211976(JP,A)
【文献】特開平10-235067(JP,A)
【文献】特開2008-6138(JP,A)
【文献】特開2011-72770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0236622(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0229901(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L15/00-15/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器が収容される洗浄槽と、
前記洗浄槽内に洗浄水を噴射するノズルと、
前記ノズルに前記洗浄水を供給するポンプと、
前記ポンプを制御し、前記洗浄槽に収容された前記食器を洗浄する洗浄運転を実行する制御部と、を備え、
前記洗浄運転は、洗浄工程及びすすぎ工程を含む複数の工程を有する食器洗浄機であって、
前記洗浄運転の運転時間を設定する運転時間設定手段をさらに備え、
前記運転時間設定手段は、ユーザが前記運転時間に対応する数値を増減させて決定した入力値を前記運転時間として設定し、
前記制御部は、
前記運転時間設定手段によって設定された前記運転時間を所定の割合で各前記工程に分配し、各前記工程のそれぞれの処理時間を決定する分配処理を実行し、
各前記処理時間に基づいて各前記工程を実行することを特徴とする食器洗浄機。
【請求項2】
食器が収容される洗浄槽と、
前記洗浄槽内に洗浄水を噴射するノズルと、
前記ノズルに前記洗浄水を供給するポンプと、
前記ポンプを制御し、前記洗浄槽に収容された前記食器を洗浄する洗浄運転を実行する制御部と、を備え、
前記洗浄運転は、洗浄工程及びすすぎ工程を含む複数の工程を有する食器洗浄機であって、
前記洗浄運転の運転時間を設定する運転時間設定手段と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記運転時間設定手段によって設定された前記運転時間を所定の割合で各前記工程に分配し、各前記工程のそれぞれの処理時間を決定する分配処理を実行し、
各前記処理時間に基づいて各前記工程を実行し、
前記洗浄槽に収容された前記食器の食器量を検知する食器量検知手段、及び前記洗浄槽に収容された前記食器の汚れ量を検知する汚れ量検知手段の少なくとも一方を備え、
前記制御部は、
前記食器量検知手段によって検知された前記食器量、及び前記汚れ量検知手段によって検知された前記汚れ量の少なくとも一方を検知結果として取得する検知結果取得処理と、
前記検知結果に基づいて前記運転時間が適正か否かを判定する運転時間適正判定処理と、を実行する
ことを特徴とする食器洗浄機。
【請求項3】
前記制御部に制御され、前記洗浄水を加熱するヒータを備え、
前記制御部は、前記運転時間適正判定処理において前記運転時間が適正でないと判定した場合に、各前記工程の少なくとも1つにおいて前記ポンプ及び前記ヒータの少なくとも一方の出力を高くするように設定を変更する請求項2記載の食器洗浄機。
【請求項4】
前記制御部は、前記運転時間適正判定処理において前記運転時間が適正でないと判定した場合に、各前記工程のうちの優先度の低い前記工程の前記処理時間を減らし、その減らした分だけ優先度の高い前記工程の前記処理時間を増やすように再分配する請求項2又は3記載の食器洗浄機。
【請求項5】
報知を行う報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記運転時間適正判定処理において前記運転時間が適正でないと判定した場合に、前記報知部を制御して前記運転時間が適正でないことを報知する報知処理を行う請求項2乃至4のいずれか1項記載の食器洗浄機。
【請求項6】
食器が収容される洗浄槽と、
前記洗浄槽内に洗浄水を噴射するノズルと、
前記ノズルに前記洗浄水を供給するポンプと、
前記ポンプを制御し、前記洗浄槽に収容された前記食器を洗浄する洗浄運転を実行する制御部と、を備え、
前記洗浄運転は、洗浄工程及びすすぎ工程を含む複数の工程を有する食器洗浄機であって、
前記洗浄運転の運転時間を設定する運転時間設定手段と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記運転時間設定手段によって設定された前記運転時間を所定の割合で各前記工程に分配し、各前記工程のそれぞれの処理時間を決定する分配処理を実行し、
各前記処理時間に基づいて各前記工程を実行し、
前記制御部に制御され、前記洗浄槽内に空気を送り込む乾燥ファンと、
前記制御部に制御され、前記洗浄水及び前記空気を加熱するヒータと、
各前記工程に乾燥工程を含めるか否かを選択する乾燥工程選択手段と、を備え、
前記制御部は、前記乾燥工程選択手段によって各前記工程に前記乾燥工程を含める選択がなされた場合、前記乾燥工程を含む各前記工程に対応する乾燥対応割合を前記所定の割合として前記分配処理を実行する
ことを特徴とする食器洗浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食器洗浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の食器洗浄機の一例が開示されている。この食器洗浄機は、食器が収容される洗浄槽と、洗浄槽内に洗浄水を噴射するノズルと、ノズルに洗浄水を供給するポンプと、ポンプを制御する制御部と、を備えている。制御部は、洗浄槽に収容された食器を洗浄する洗浄運転を実行する。洗浄運転は、洗浄工程及びすすぎ工程を含む複数の工程を有している。
【0003】
この食器洗浄機では、洗浄運転について、各工程のそれぞれの処理時間が異なる複数のコースが予め設定されている。そして、ユーザが複数のコースから所望するコースを選択すると、制御部は、その選択されたコースに基づいて洗浄運転の各工程を実行することで、ユーザニーズに対応するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の食器洗浄機では、突然の来客や洗い忘れ等により、食器を限られた時間内で洗浄しなければならない場合がある。この場合において、複数のコースから所望の運転時間に近いコースを選択しようとすれば、各コースの運転時間を把握しておく必要があり、ユーザの手間がかかる。また、各コースの運転時間のいずれか1つと、所望の運転時間とが一致しない場合が多いので、狙いのタイミングで洗浄運転を完了させることが難しい。さらに、コースの選択を誤ると、そのコースの運転時間が短すぎて食器の洗浄の仕上がり具合が不充分になったり、そのコースの運転時間が長すぎて時間がかかり過ぎてしまったりするおそれがある。
【0006】
その結果、この食器洗浄機では、ユーザの利便性を向上させることが難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、利便性の向上を実現できる食器洗浄機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の食器洗浄機は、食器が収容される洗浄槽と、
前記洗浄槽内に洗浄水を噴射するノズルと、
前記ノズルに前記洗浄水を供給するポンプと、
前記ポンプを制御し、前記洗浄槽に収容された前記食器を洗浄する洗浄運転を実行する制御部と、を備え、
前記洗浄運転は、洗浄工程及びすすぎ工程を含む複数の工程を有する食器洗浄機であって、
前記洗浄運転の運転時間を設定する運転時間設定手段をさらに備え、
前記運転時間設定手段は、ユーザが前記運転時間に対応する数値を増減させて決定した入力値を前記運転時間として設定し、
前記制御部は、
前記運転時間設定手段によって設定された前記運転時間を所定の割合で各前記工程に分配し、各前記工程のそれぞれの処理時間を決定する分配処理を実行し、
各前記処理時間に基づいて各前記工程を実行することを特徴とする。
【0009】
本発明の食器洗浄機では、突然の来客や洗い忘れ等により、食器を限られた時間内で洗浄しなければならない場合において、ユーザが運転時間設定手段を用いて洗浄運転の運転時間を所望した通りに設定することができる。これにより、制御部は、上記のように分配処理を実行し、洗浄運転において、その分配処理で決定した各工程のそれぞれの処理時間に基づいて各工程を実行する。その結果、この食器洗浄機では、複数のコースの運転時間を把握しておく必要がなく、ユーザの手間を省くことができる。また、ユーザが洗浄運転の運転時間を所望した通りに設定できるので、狙いのタイミングで洗浄運転を完了させることを容易に実現できる。この際、ユーザは、設定する洗浄運転の運転時間が短すぎないように容易に調整できるので、食器の洗浄の仕上がり具合が不充分となることを抑制できる。
【0010】
したがって、本発明の食器洗浄機では、利便性の向上を実現できる。
【0011】
本発明の食器洗浄機は、食器が収容される洗浄槽と、
前記洗浄槽内に洗浄水を噴射するノズルと、
前記ノズルに前記洗浄水を供給するポンプと、
前記ポンプを制御し、前記洗浄槽に収容された前記食器を洗浄する洗浄運転を実行する制御部と、を備え、
前記洗浄運転は、洗浄工程及びすすぎ工程を含む複数の工程を有する食器洗浄機であって、
前記洗浄運転の運転時間を設定する運転時間設定手段と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記運転時間設定手段によって設定された前記運転時間を所定の割合で各前記工程に分配し、各前記工程のそれぞれの処理時間を決定する分配処理を実行し、
各前記処理時間に基づいて各前記工程を実行し、
洗浄槽に収容された食器の食器量を検知する食器量検知手段、及び洗浄槽に収容された食器の汚れ量を検知する汚れ量検知手段の少なくとも一方を備え、
制御部は、食器量検知手段によって検知された食器量、及び汚れ量検知手段によって検知された汚れ量の少なくとも一方を検知結果として取得する検知結果取得処理と、検知結果に基づいて運転時間が適正か否かを判定する運転時間適正判定処理と、を実行する。
【0012】
本発明の食器洗浄機において、制御部は、運転時間適正判定処理において、検知結果に基づいて運転時間が適正でないと判定した場合に、その状態を改善するための対応を適宜実施できる。その結果、食器の洗浄の仕上がり具合が不充分になることを一層抑制できる。
【0013】
本発明の食器洗浄機は、制御部に制御され、洗浄水を加熱するヒータを備えていることが望ましい。そして、制御部は、運転時間適正判定処理において運転時間が適正でないと判定した場合に、各工程の少なくとも1つにおいてポンプ及びヒータの少なくとも一方の出力を高くするように設定を変更することが望ましい。
【0014】
この場合、ユーザが設定した運転時間が適正となるように制御部が洗浄性能を自動的に調整してユーザの再設定の手間を省くので、利便性の向上を一層実現できる。
【0015】
制御部は、運転時間適正判定処理において運転時間が適正でないと判定した場合に、各工程のうちの優先度の低い工程の処理時間を減らし、その減らした分だけ優先度の高い工程の処理時間を増やすように再分配することが望ましい。
【0016】
この場合、ユーザが設定した運転時間が適正となるように制御部が自動的に再分配してユーザの再設定の手間を省くので、利便性の向上を一層実現できる。
【0017】
本発明の食器洗浄機は、報知を行う報知部をさらに備えていることが望ましい。そして、制御部は、運転時間適正判定処理において運転時間が適正でないと判定した場合に、報知部を制御して運転時間が適正でないことを報知する報知処理を行うことが望ましい。
【0018】
この場合、報知処理によってユーザに運転時間が適正とないことを認識させて、運転時間の再設定を促すことができるので、食器の洗浄の仕上がり具合が不充分になることを一層抑制できる。
【0019】
本発明の食器洗浄機は、食器が収容される洗浄槽と、
前記洗浄槽内に洗浄水を噴射するノズルと、
前記ノズルに前記洗浄水を供給するポンプと、
前記ポンプを制御し、前記洗浄槽に収容された前記食器を洗浄する洗浄運転を実行する制御部と、を備え、
前記洗浄運転は、洗浄工程及びすすぎ工程を含む複数の工程を有する食器洗浄機であって、
前記洗浄運転の運転時間を設定する運転時間設定手段と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記運転時間設定手段によって設定された前記運転時間を所定の割合で各前記工程に分配し、各前記工程のそれぞれの処理時間を決定する分配処理を実行し、
各前記処理時間に基づいて各前記工程を実行し、
制御部に制御され、洗浄槽内に空気を送り込む乾燥ファンと、制御部に制御され、洗浄水及び空気を加熱するヒータと、各工程に乾燥工程を含めるか否かを選択する乾燥工程選択手段と、を備え、
制御部は、乾燥工程選択手段によって各工程に乾燥工程を含める選択がなされた場合、乾燥工程を含む各工程に対応する乾燥対応割合を所定の割合として分配処理を実行する。
【0020】
本発明の食器洗浄機において、ユーザが乾燥工程を含める選択をしたときに、制御部が乾燥対応割合で分配処理を実行することにより、乾燥工程の処理時間について、他の工程の処理時間とのバランスを取りながら、食器の乾燥不足を抑制するために必要な時間を確保し易くなる。また、ユーザが運転時間を短くしたいときに、処理時間が比較的長い乾燥工程を含めない選択をすることで、狙いのタイミングで洗浄運転を完了させることを容易に実現できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の食器洗浄機によれば、利便性の向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施例の食器洗浄機の模式断面図である。
【
図2】
図2は、実施例の食器洗浄機のブロック図である。
【
図3】
図3は、実施例の食器洗浄機に係り、操作部及び表示部を示す正面図である。
【
図4】
図4は、実施例の食器洗浄機に係り、洗浄運転のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(実施例)
図1に示すように、実施例の食器洗浄機1は、本発明の食器洗浄機の具体的態様の一例である。食器洗浄機1は、システムキッチンの天板CT1の下側に設置された前面引き出し式のものである。
【0025】
<筐体、洗浄槽及び蓋体>
食器洗浄機1は、筐体9、洗浄槽7及び蓋体8を備えている。本実施例では、略箱状体である筐体9におけるシステムキッチンを利用するユーザと対向する側面側、すなわち
図1の紙面左側を筐体9の前面側と規定し、
図1の紙面右側を筐体9の奥側と規定する。
【0026】
筐体9の上面側は、天板CT1に覆われている。筐体9は、筐体開口部9Hを有している。筐体開口部9Hは、筐体9の前面側の上端部から下端部までの広い範囲を開放しており、筐体9内と外部とを連通させている。
【0027】
図1に示すように、洗浄槽7は、筐体9内に収容されている。
図1に示す洗浄槽7の位置を収容位置とする。略箱状体である洗浄槽7の底部と、筐体9の底壁との間には、図示しないスライドレール機構が配置されている。図示は省略するが、洗浄槽7は、そのスライドレール機構によって、筐体9に対してスライド可能となっている。
【0028】
洗浄槽7は、開口7Hを有している。開口7Hは、洗浄槽7の上面側を開放している。洗浄槽7の前面側の上端部には、取っ手部7Gが設けられている。
【0029】
ユーザが取っ手部7Gを把持して手動操作で洗浄槽7を収容位置から筐体9の前面側にスライドさせることにより、図示は省略するが、洗浄槽7が筐体9から前方に引き出された状態となる。また、引き出された状態の洗浄槽7をユーザが手動操作で筐体9の奥側にスライドさせることにより、洗浄槽7が収容位置に復帰する。
【0030】
蓋体8は、筐体9内の上側に配置されており、洗浄槽7の開口7Hを閉塞及び開放可能である。蓋体8は、図示しない連動機構によって、洗浄槽7のスライドに連動して、
図1に示す位置と、図示は省略するが
図1に示す位置から上昇して洗浄槽7のスライドを許容する位置との間で上下動するようになっている。
【0031】
洗浄槽7は、収容位置にある状態で、筐体開口部9Hを閉塞するとともに、開口7Hが蓋体8によって閉塞される。
【0032】
図示は省略するが、洗浄槽7は、筐体9から引き出された状態で、筐体9内に残る蓋体8によって、筐体9の外部に露出する開口7Hが開放される。これにより、ユーザは、開口7Hを介して、食器DB1を洗浄槽7に収容したり、食器DB1を洗浄槽7から取り出したりすることができる。
【0033】
筐体9内には、給水管P1、給水電磁弁69及び排水管P2が設けられている。給水管P1は、食器洗浄機1の外部に設けられた図示しない給水源から洗浄槽7に水を供給する。給水電磁弁69は、給水管P1を開閉して洗浄槽7への水の供給と停止とを切り替える。排水管P2は、洗浄槽7内の洗浄水を食器洗浄機1の外部に排水する。
【0034】
洗浄槽7内の底部には、洗浄水を貯める貯水部71が設けられている。また、洗浄槽7内には、食器かご70が配置されている。食器かご70には、食器DB1が載置される。食器DB1は、例えば、茶碗、皿、グラス等の飲食用器や、箸、スプーン、フォーク等の飲食用具等である。
【0035】
<ノズル及びポンプ>
食器洗浄機1は、ノズル61及びポンプ62をさらに備えている。ノズル61は、洗浄槽7内に配置されている。ポンプ62は、洗浄槽7の貯水部71の下側に組み付けられている。ノズル61及びポンプ62は、洗浄槽7が出し入れされる際に洗浄槽7と共に移動する。
【0036】
ノズル61は、複数の吐出孔から洗浄槽7内に洗浄水を噴射する。ノズル61の噴射方向は、洗浄槽7内で重ねられた複数の食器DB1を確実に洗浄したり、洗浄槽7の内壁面や食器かご70を洗浄したりするために、様々な方向に変化するようになっている。
【0037】
ポンプ62は、正転作動時、洗浄槽7の貯水部71に貯められた洗浄水をノズル61に供給して噴射させる。その噴射された洗浄水は貯水部71に貯められるので、ポンプ62によって繰り返しノズル61に供給される。また、ポンプ62は、逆転作動時、洗浄槽7内の洗浄水を残菜フィルタ67及び排水管P2を介して食器洗浄機1の外部に排出する。
【0038】
<ヒータ、温度センサ、乾燥ファン及び水位センサ>
食器洗浄機1は、ヒータ63、温度センサ33、乾燥ファン68及び水位センサ34をさらに備えている。ヒータ63、温度センサ33、乾燥ファン68及び水位センサ34も洗浄槽7に組み付けられており、洗浄槽7が出し入れされる際に洗浄槽7と共に移動する。
【0039】
ヒータ63は、洗浄槽7の貯水部71に貯められた洗浄水、又は洗浄槽7内の空気を加熱する。温度センサ33は、洗浄槽7の温度を検知する。
【0040】
乾燥ファン68は、ヒータ63を作動させた状態で回転作動することにより、加熱された空気を洗浄槽7内に送り込んで食器DB1を乾燥させる。乾燥ファン68により洗浄槽7内に送り込まれた空気は、洗浄槽7の前面に形成された通気口7Eから食器洗浄機1の外部に排気される。
【0041】
水位センサ34は、洗浄槽7の貯水部71の隣に配置された水位検知槽34A内に設けられたフロート式センサである。水位検知槽34Aは、連通管P3を介して洗浄槽7の貯水部71と接続されている。水位センサ34は、洗浄槽7内の洗浄水の水位を検知する。
【0042】
<食器量検知手段及び汚れ量検知手段>
食器洗浄機1は、食器量検知手段31及び汚れ量検知手段32をさらに備えている。
【0043】
食器量検知手段31は、食器かご70を支持するために洗浄槽7の内壁面に形成された支持部に複数個配置された加重変換器(ロードセル)を含んでいる。食器量検知手段31は、加重変換器によって検知される荷重の変化に基づいて、洗浄槽7に収容された食器DB1の食器量を検知する。
【0044】
汚れ量検知手段32は、蓋体8の下面に設けられた照明手段及び撮影手段を含んでいる。汚れ量検知手段32は、照明手段によって洗浄槽7内を明るくした状態で、撮影手段によって洗浄槽7に収容された食器DB1の画像を撮影し、その画像を解析して汚れ部分の面積等を抽出することによって、洗浄槽7に収容された食器DB1の汚れ量を検知する。
【0045】
<制御部、操作部、表示部及び報知部>
図1~
図3に示すように、食器洗浄機1は、制御部C1、操作部40、表示部47及び報知部49をさらに備えている。
【0046】
図1に示すように、制御部C1は、洗浄槽7の前面側における取っ手部7Gによりも後方に配置されている。操作部40及び表示部47はそれぞれ、洗浄槽7の前面側の上端部に配置されている。
【0047】
制御部C1は、図示しないCPU、メモリ、インターフェース回路等により構成された電子回路ユニットである。
図2に示すように、制御部C1は、記憶部C12を含んでいる。記憶部C12は、制御部C1を構成するメモリであり、ROM及びRAM等の記憶素子によって構成されている。
【0048】
記憶部C12は、食器洗浄機1を動作させるために制御部C1が実行する各種プログラム、例えば、
図4に示す洗浄運転プログラム等を記憶している。また、記憶部C12は、食器洗浄機1の設定情報等の各種情報、例えば、
図4に示す洗浄運転プログラムを実行するための初期設定情報等を随時記憶するようになっている。
【0049】
図2に示すように、制御部C1には、温度センサ33、水位センサ34、食器量検知手段31及び汚れ量検知手段32のそれぞれの検知信号が入力される。そして、制御部C1は、駆動回路60を介して制御信号を出力することにより、ヒータ63、ポンプ62、給水電磁弁69及び乾燥ファン68の作動を制御して、洗浄槽7に収容された食器DB1を洗浄する洗浄運転を実行する。
【0050】
図3に示すように、操作部40は、電源ボタン46、スタートボタン45、コース選択ボタン44、乾燥工程選択ボタン42、運転時間設定ボタン41、加算ボタン43A及び減算ボタン43Bを有し、それらが洗浄槽7の前面から露出して、ユーザの操作を受けるようになっている。
【0051】
表示部47は、数字や文字等を表示可能な表示素子やランプ等を有し、それらが洗浄槽7の前面から露出して、ユーザに視認させるようになっている。
【0052】
図2に示すように、制御部C1は、ユーザが操作部40に対して行う各種の操作入力の情報を取得する。また、制御部C1は、洗浄運転の設定等に関する情報、洗浄運転の進行状況等の各種情報を表示部47に伝達して表示させる。
【0053】
図1に示すように、報知部49は、洗浄槽7の前面側における操作部40によりも下方に配置されている。報知部49は、例えば、警告音を発生するブザー、警告メッセージを発生するスピーカ、又は警告発光を行うランプ等である。
図2に示すように、報知部49は、制御部C1に接続されている。制御部C1は、各種の不具合が発生した場合等において、報知部49を制御して、ユーザに警告等の報知を行う。
【0054】
<洗浄運転の複数の工程>
制御部C1が実行する洗浄運転は、多種多様な工程を含み得るが、本実施例では、洗浄工程、加熱無しすすぎ工程、加熱有りすすぎ工程及び乾燥工程を有している。加熱無しすすぎ工程及び加熱有りすすぎ工程は、本発明の「すすぎ工程」の一例である。
【0055】
洗浄工程では、予め洗浄槽7の所定位置に投入された洗剤が洗浄槽7に供給される洗浄水に溶解する。そして、洗浄槽7の貯水部71に貯められた洗浄水をヒータ63によって加熱しながらポンプ62を作動させ、ノズル61から洗浄槽7内に加熱された洗浄水を噴射する。これにより、洗浄水に含まれる洗剤によって洗浄槽7に収容された食器DB1の汚れの分解が促進され、汚れ成分が食器DB1から洗浄水に移行する。少なくとも洗浄工程の終了時には、ポンプ62の逆転により、洗剤及び汚れ成分を含んだ洗浄水を排水管P2を介して食器洗浄機1の外部に排出する。
【0056】
加熱無しすすぎ工程では、新たに洗浄槽7に供給される清浄な洗浄水を用いる。そして、ヒータ63による加熱無しで洗浄水をノズル61から洗浄槽7内に噴射して、洗剤及び汚れ成分を含んだ洗浄水を食器DB1から除去する。少なくとも加熱無しすすぎ工程の終了時には、ポンプ62の逆転により、すすぎによって汚れた洗浄水を排水管P2を介して食器洗浄機1の外部に排出する。
【0057】
加熱有りすすぎ工程では、加熱無しすすぎ工程と同様に、新たに洗浄槽7に供給される清浄な洗浄水を用いる。そして、洗浄水をヒータ63によって加熱しながら、ノズル61から洗浄槽7内に噴射して、洗剤及び汚れ成分を含んだ洗浄水を食器DB1から完全に除去する。少なくとも加熱有りすすぎ工程の終了時には、ポンプ62の逆転により、すすぎによって汚れた洗浄水を排水管P2を介して食器洗浄機1の外部に排出する。なお、加熱有りすすぎ工程において高温になった食器DB1は、次の乾燥工程において、又は乾燥工程無しの放置状態において、短時間で乾燥し易くなっている。
【0058】
乾燥工程では、ヒータ63を作動させた状態で、乾燥ファン68によって加熱された空気を洗浄槽7内に送り込んで食器DB1を乾燥させる。
【0059】
なお、本実施例では、ユーザが
図3に示す乾燥工程選択ボタン42を操作することにより、洗浄運転の複数の工程に乾燥工程を含めるか否かを選択することが可能となっている。乾燥工程選択ボタン42は、本発明の「乾燥工程選択手段」の一例である。
【0060】
また、本実施例では、洗浄運転の複数の工程のそれぞれの処理時間が異なる複数のコースが予め設定されており、ユーザが
図3に示すコース選択ボタン44を操作することにより、所望のコースを選択可能となっている。複数のコースの設定や、所望のコースを選択して行う洗浄運転は周知であるので、本実施例では説明を省略する。
【0061】
<運転時間を設定して行う洗浄運転>
本実施例では、突然の来客や洗い忘れ等により、食器DB1を限られた時間内で洗浄しなければならない場合において、
図4に示す洗浄運転プログラムを実行することにより、ユーザが洗浄運転の運転時間TT1を所望した通りに設定でき、運転時間TT1を所定の割合で各工程に分配した上で、洗浄運転を実行するようになっている。
【0062】
図4に示す洗浄運転プログラムは、以下に説明する手順により実行される。すなわち、ユーザが
図3に示す運転時間設定ボタン41を押すと、運転時間TT1に対応する数値が表示部47に表示される。そして、ユーザが
図3に示す加算ボタン43A及び減算ボタン43Bを操作して、表示部47に表示された数値を増減させ、運転時間TT1の入力値を決定する。
【0063】
運転時間設定ボタン41、加算ボタン43A及び減算ボタン43Bは、本発明の「運転時間設定手段」の一例である。
【0064】
次に、ユーザが
図3に示す乾燥工程選択ボタン42を押すと、表示部47に表示された数値が運転時間TT1の入力値として記憶部C12に記憶された後、「乾燥工程有」又は「乾燥工程無」が表示部47に表示される。そして、ユーザが乾燥工程選択ボタン42を押す毎に、「乾燥工程有」と「乾燥工程無」とが交互に表示される。ユーザは、「乾燥工程有」及び「乾燥工程無」のうちの所望する選択肢を表示させることにより、乾燥工程を含めるか否かを選択する。
【0065】
次に、ユーザが
図3に示すスタートボタン45を押すと、表示部47に表示された「乾燥工程有」又は「乾燥工程無」が乾燥工程を含めるか否かの選択結果として記憶部C12に記憶された後、
図4に示す洗浄運転プログラムが実行される。
【0066】
すると、制御部C1は、
図4に示すステップS101において、初期設定を行う。具体的には、運転時間TT1を各工程に分配するための所定の割合を記憶部C12から読み出す。所定の割合は、実験等を実施することによって予め設定された割合である。なお、ユーザが変更を希望する場合には、操作部40に対する変更操作等によって所定の割合が適宜変更されて記憶部C12に上書きされる。
【0067】
乾燥工程を含まない各工程に対応する所定の割合の一例を示すと、(洗浄工程:加熱無しすすぎ工程:加熱有りすすぎ工程=X:Y:Z)である。
【0068】
乾燥工程を含む各工程に対応する所定の割合、すなわち乾燥対応割合の一例を示すと、(洗浄工程:加熱無しすすぎ工程:加熱有りすすぎ工程:乾燥工程=A:B:C:D)である。
【0069】
ステップS101では、乾燥工程を含まない各工程に対応する所定の割合を初期設定とし、乾燥対応割合を予備設定とする。
【0070】
また、ステップS101では、標準洗浄性能及び高洗浄性能の設定を読み出す。標準洗浄性能は、消費電力及び騒音の低減を優先して、ヒータ63、ポンプ62及び乾燥ファン68のそれぞれの限界出力に対してある程度低く設定される。その一方、高洗浄性能は、消費電力及び騒音の低減よりも時間短縮を優先して、ヒータ63、ポンプ62及び乾燥ファン68のそれぞれの限界出力に近くなるように設定される。
【0071】
ステップS101では、標準洗浄性能を初期設定とし、高洗浄性能を予備設定とする。
【0072】
次に、制御部C1は、ステップS102に移行して、運転時間TT1の入力値を記憶部C12から読み出して、ユーザが入力した通りに運転時間TT1を設定する。
【0073】
次に、制御部C1は、ステップS103に移行して、乾燥工程を含めるか否かの選択結果を記憶部C12から読み出して、ユーザが選択した通りに乾燥工程の有無を設定する。
【0074】
次に、制御部C1は、ステップS104に移行する。そして、ステップS103において乾燥工程を含めない選択がなされた場合には、ステップS104において「No」となって、乾燥工程を含まない各工程に対応する所定の割合(洗浄工程:加熱無しすすぎ工程:加熱有りすすぎ工程=X:Y:Z)を変更しないまま、ステップS106に移行する。その一方、ステップS103において乾燥工程を含める選択がなされた場合には、ステップS104において「Yes」となって、ステップS105に移行する。
【0075】
制御部C1は、ステップS104からステップS105に移行すると、乾燥対応割合(洗浄工程:加熱無しすすぎ工程:加熱有りすすぎ工程:乾燥工程=A:B:C:D)を所定の割合として設定する。そして、ステップS106に移行する。
【0076】
制御部C1は、ステップS104又はステップS105からステップS106に移行すると、運転時間TT1を所定の割合で各工程に分配し、各工程のそれぞれの処理時間を決定する。ステップS106は、本発明の「分配処理」の一例である。
【0077】
より詳しくは、洗浄工程の処理時間をTW1とし、加熱無しすすぎ工程の処理時間をTR1とし、加熱有りすすぎ工程の処理時間をTR2とし、乾燥工程の処理時間をTD1とする。
【0078】
ステップS103において乾燥工程を含めない選択がなされた場合、ステップS106において、運転時間TT1を所定の割合(TW1:TR1:TR2=X:Y:Z)で、洗浄工程、加熱無しすすぎ工程及び加熱有りすすぎ工程に分配し、(TT1=TW1+TR1+TR2)とする。
【0079】
その一方、ステップS103において乾燥工程を含める選択がなされた場合、ステップS106において、運転時間TT1を所定の割合(TW1:TR1:TR2:TD1=A:B:C:D)で、洗浄工程、加熱無しすすぎ工程、加熱有りすすぎ工程及び乾燥工程に分配し、(TT1=TW1+TR1+TR2+TD1)とする。
【0080】
次に、制御部C1は、ステップS107に移行し、食器量検知手段31を制御して、洗浄槽7に収容された食器DB1の食器量を検知させる。
【0081】
次に、制御部C1は、ステップS108に移行し、汚れ量検知手段32を制御して、洗浄槽7に収容された食器DB1の汚れ量を検知させる。
【0082】
次に、制御部C1は、ステップS109に移行して、食器量検知手段31によって検知された食器量、及び汚れ量検知手段32によって検知された汚れ量を検知結果として取得する。ステップS109は、本発明の「検知結果取得処理」の一例である。
【0083】
次に、制御部C1は、ステップS111に移行して、食器量及び汚れ量の検知結果に基づいて、標準洗浄性能で洗浄運転を実施した場合に運転時間TT1が適正か否かを判断する。ステップS111は、本発明の「運転時間適正判定処理」の一例である。
【0084】
ここで、運転時間TT1が適正であるとは、洗浄槽7に収容された食器DB1の洗浄の仕上がり具合が所定の洗浄率に到達するまでに必要と推測される時間よりも運転時間TT1が長いことを意味する。
【0085】
より詳しくは、洗浄工程、加熱無しすすぎ工程及び加熱有りすすぎ工程のそれぞれについて、食器量及び汚れ量の検知結果と、検知結果の変化に応じて細かく定められた最低限必要な処理時間とからなる判断テーブルが予め設定されている。例えば、食器量及び汚れ量がかなり多いという検知結果であれば、洗浄工程、加熱無しすすぎ工程及び加熱有りすすぎ工程のそれぞれについて、最低限必要な処理時間が長くなる。
【0086】
また、乾燥工程について、食器量の検知結果と、検知結果の変化に応じて細かく定められた最低限必要な処理時間とからなる判断テーブルが予め設定されている。例えば、食器量がかなり多いという検知結果であれば、乾燥工程について、最低限必要な処理時間が長くなる。
【0087】
そして、制御部C1は、洗浄工程の処理時間TW1、加熱無しすすぎ工程の処理時間TR1及び加熱有りすすぎ工程の処理時間TR2のそれぞれについて、標準洗浄性能で最低限必要な処理時間以上であるか否かを判断する。乾燥工程を含める選択がなされた場合、乾燥工程の処理時間TD1についても、その判断に含まれる。
【0088】
制御部C1は、標準洗浄性能で各工程の処理時間の全てが最低限必要な処理時間以上であれば、「標準洗浄性能で洗浄運転を実施した場合に運転時間TT1が適正である」と判断する。この場合、ステップS111において「Yes」となり、ステップS114に移行する。
【0089】
その一方、制御部C1は、標準洗浄性能で各工程の処理時間の少なくとも1つが最低限必要な処理時間以上でなければ、「標準洗浄性能で洗浄運転を実施した場合に運転時間TT1が適正でない」と判断する。この場合、ステップS111において「No」となり、ステップS112に移行する。
【0090】
制御部C1は、ステップS111からステップS112に移行すると、ヒータ63、ポンプ62及び乾燥ファン68について標準洗浄性能から高洗浄性能に設定を変更した上で、ステップS113に移行する。
【0091】
制御部C1は、ステップS113に移行すると、食器量及び汚れ量の検知結果に基づいて、高洗浄性能で洗浄運転を実施した場合に運転時間TT1が適正か否かを判断する。ステップS113も、本発明の「運転時間適正判定処理」の一例である。
【0092】
より詳しくは、制御部C1は、ヒータ63、ポンプ62及び乾燥ファン68について標準洗浄性能から高洗浄性能に設定が変更された状態で、ステップS111と同様に、各工程のそれぞれについて、最低限必要な処理時間以上であるか否かを判断する。
【0093】
制御部C1は、高洗浄性能で各工程の処理時間の全てが最低限必要な処理時間以上であれば、「高洗浄性能で洗浄運転を実施した場合に運転時間TT1が適正である」と判断する。この場合、ステップS113において「Yes」となり、ステップS114に移行する。
【0094】
その一方、制御部C1は、高洗浄性能で各工程の処理時間の少なくとも1つが最低限必要な処理時間以上でなければ、「高洗浄性能で洗浄運転を実施した場合に運転時間TT1が適正でない」と判断する。この場合、ステップS113において「No」となり、ステップS121に移行する。
【0095】
制御部C1は、ステップS111又はステップS113からステップS114に移行すると、洗浄運転を実行する。より詳しくは、洗浄工程を処理時間TW1に基づいて実行し、加熱無しすすぎ工程を処理時間TR1に基づいて実行し、加熱有りすすぎ工程を処理時間TR2に基づいて実行する。乾燥工程を含める選択がなされた場合、乾燥工程を処理時間TD1に基づいて実行する。
【0096】
この際、標準洗浄性能が設定されていれば、消費電力及び騒音の低減を優先して、ヒータ63、ポンプ62及び乾燥ファン68のそれぞれについて限界出力に対してある程度低い設定で作動させる。
【0097】
その一方、高洗浄性能が設定されていれば、消費電力及び騒音の低減よりも時間短縮を優先して、ヒータ63、ポンプ62及び乾燥ファン68のそれぞれの限界出力に近い設定で作動させる。
【0098】
次に、制御部C1は、ステップS115に移行して、運転時間TT1を経過するまでステップS115を繰り返す。そして、運転時間TT1を経過すると、洗浄運転を終了し、洗浄槽7内の綺麗に洗浄された食器DB1を取り出し可能な状態とした上で、この洗浄運転プログラムを終了する。
【0099】
遡って、制御部C1は、ステップS113からステップS121に移行すると、報知部49を制御して、例えば、警告音、警告メッセージ、又は警告発光等によって、運転時間TT1が適正でないことを報知する。ステップS121は、本発明の「報知処理」の一例である。なお、表示部47にも警告メッセージ等を表示してもよい。その結果、ユーザに運転時間TT1が適正とないことを認識させて、運転時間TT1の再設定を促すことができる。
【0100】
次に、制御部C1は、ステップS122に移行し、食器量及び汚れ量の検知結果に基づいて、運転時間TT1よりも長い運転時間であって、適正な運転時間を推定する。そして、制御部C1は、報知部49を制御して、推定した適正な運転時間を報知する。なお、表示部47にも推定した適正な運転時間を表示してもよい。その結果、ユーザが適正な運転時間を再設定し易くなる。そして、制御部C1は、この洗浄運転プログラムを終了する。
【0101】
<作用効果>
実施例の食器洗浄機1では、突然の来客や洗い忘れ等により、食器DB1を限られた時間内で洗浄しなければならない場合において、ユーザが
図4に示す洗浄運転プログラムを実行することにより、ステップS102において、ユーザが運転時間設定ボタン41、加算ボタン43A及び減算ボタン43Bを用いて洗浄運転の運転時間TT1を所望した通りに設定することができる。
【0102】
これにより、制御部C1は、ステップS106の分配処理を実行し、洗浄工程、加熱無しすすぎ工程及び加熱有りすすぎ工程のそれぞれの処理時間TW1、TR1、TR2を決定する。ステップS103において乾燥工程を含める選択がなされた場合、ステップS106において、乾燥工程の処理時間TD1も決定する。
【0103】
そして、制御部C1は、ステップS106で決定した各工程のそれぞれの処理時間に基づいて、ステップS114において、洗浄運転の各工程を実行する。
【0104】
その結果、この食器洗浄機1では、複数のコースの運転時間を把握しておく必要がなく、各工程の処理時間TW1、TR1、TR2、TD1を個別に設定する必要もないので、ユーザの手間を省くことができる。また、ユーザが洗浄運転の運転時間TT1を所望した通りに設定できるので、狙いのタイミングで洗浄運転を完了させることを容易に実現できる。この際、ユーザは、設定する洗浄運転の運転時間TT1が短すぎないように容易に調整できるので、食器DB1の洗浄の仕上がり具合が不充分となることを抑制できる。また、ステップS106の分配処理において、実験等を実施することによって予め設定された所定の割合で各工程の処理時間TW1、TR1、TR2、TD1を適切に決定することによっても、食器DB1の洗浄の仕上がり具合が不充分になることを抑制できる。
【0105】
したがって、実施例の食器洗浄機1では、利便性の向上を実現できる。
【0106】
また、この食器洗浄機1では、制御部C1は、ステップS109で取得した検知結果に基づいて、ステップS111の運転時間適正判定処理で運転時間TT1が適正でないと判定した場合に、その状態を改善するための対応、例えば、ステップS112、S113又はステップS121、S122を適宜実施できる。その結果、食器DB1の洗浄の仕上がり具合が不充分になることを一層抑制できる。
【0107】
さらに、この食器洗浄機1では、制御部C1は、ステップS111の運転時間適正判定処理で運転時間TT1が適正でないと判定した場合に、ステップS112において、標準洗浄性能から高洗浄性能に設定を変更した上で、ステップS113の運転時間適正判定処理を実行し、運転時間TT1が適正であると判定した場合には、ステップS114において、洗浄運転の各工程を実行する。こうして、この食器洗浄機1では、ユーザが設定した運転時間TT1が適正となるように制御部C1が洗浄性能を自動的に調整してユーザの再設定の手間を省くので、利便性の向上を一層実現できる。
【0108】
また、この食器洗浄機1では、制御部C1は、ステップS111、S113の運転時間適正判定処理において運転時間TT1が適正でないと判定した場合に、ステップS121の報知処理において、報知部49を制御して運転時間TT1が適正でないことを報知する。これにより、ユーザに運転時間TT1が適正とないことを認識させて、運転時間TT1の再設定を促すことができるので、食器DB1の洗浄の仕上がり具合が不充分になることを一層抑制できる。
【0109】
さらに、この食器洗浄機1では、制御部C1は、ステップS103において、乾燥工程選択ボタン42によって各工程に乾燥工程を含める選択がなされた場合、ステップS104において、乾燥工程を含む各工程に対応する乾燥対応割合を所定の割合とした上で、ステップS106の分配処理を実行する。これにより、ユーザが乾燥工程を含める選択をしたときに、乾燥工程の処理時間TD1について、他の工程の処理時間TW1、TR1、TR2とのバランスを取りながら、食器DB1の乾燥不足を抑制するために必要な時間を確保し易くなる。また、ユーザが運転時間TT1を短くしたいときに、処理時間TD1が比較的長い乾燥工程を含めない選択をすることで、狙いのタイミングで洗浄運転を完了させることを容易に実現できる。
【0110】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0111】
(変形例)
変形例の食器洗浄機では、
図4に示す洗浄運転プログラムのステップS112、S113の処理内容について、図示は省略するが、以下のように変更している。
【0112】
すなわち、制御部C1は、ステップS111の運転時間適正判定処理において、検知結果に基づいて運転時間TT1が適正でないと判定した場合に、変更したステップS112に移行して、各工程のうちの優先度の低い工程の処理時間を減らし、その減らした分だけ優先度の高い工程の処理時間を増やすように再分配する。例えば、優先度の低い加熱無しすすぎ工程に分配された処理時間TR1から時間TM1を減算し、優先度の高い洗浄工程に分配された処理時間TW1に時間TM1を加算する。
【0113】
次に、制御部C1は、変更したステップS113に移行して、処理時間を再分配した場合に運転時間TT1が適正か否かを判断する。
【0114】
このような変形例の食器洗浄機でも、ユーザが設定した運転時間TT1が適正となるように制御部C1が自動的に再分配してユーザの再設定の手間を省くので、利便性の向上を一層実現できる。
【0115】
実施例では、ステップS109の検知結果取得処理において、食器量検知手段31によって検知された食器量、及び汚れ量検知手段32によって検知された汚れ量の両方を検知結果として取得するが、本発明は、この構成に限定されず、食器量及び汚れ量の一方を検知結果として取得してもよい。
【0116】
実施例では、洗浄工程において最初から最後まで洗浄水を加熱するが、本発明は、この構成に限定されない。例えば、洗浄工程が加熱無し洗浄工程と、加熱有り洗浄工程とからなっていてもよい。
【0117】
実施例では、すすぎ工程が加熱無しすすぎ工程と、加熱有りすすぎ工程とからなるが、本発明は、この構成に限定されない。例えば、すすぎ工程は、加熱有りすすぎ工程のみであってもよいし、加熱無しすすぎ工程のみであってもよい。
【0118】
実施例では、食器量検知手段31は、荷重変換器によって検知される荷重の変化に基づいて食器量を検知するが、本発明は、この構成に限定されない。例えば、食器量検知手段は、洗浄水をノズルから噴射したときの壁の振動に基づいて食器量を検知してもよいし、ヒータで加熱した洗浄水をノズルから洗浄槽に収容された食器に向けて噴射したときの洗浄水の温度上昇に基づいて食器量を検知してもよい。
【0119】
実施例では、汚れ量検知手段32は、洗浄槽7に収容された食器DB1の画像を撮影し、その画像を解析して汚れ部分の面積等を抽出することによって汚れ量を検知するが、本発明は、この構成に限定されない。例えば、汚れ量検知手段は、発光部及び受光部を含み、洗浄運転が開始されて洗浄槽内に洗浄水が噴射され始めてから所定時間経過後、発光部から洗浄槽の貯水部に貯められた洗浄水に向けて光を照射し、洗浄水の濁度に応じて変化する光の減衰等を受光部によって検知することにより、洗浄槽に収容された食器の汚れ量を検知してもよい。
【0120】
実施例では、制御部C1は、運転時間TT1が適正でない場合のみ、ステップS121において報知処理を行うが、本発明は、この構成に限定されない。例えば、制御部C1は、運転時間TT1が適正である場合に、報知部49又は表示部47に制御して、その旨をユーザに報知してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、例えば、食器洗浄機又は厨房設備等に利用可能である。
【符号の説明】
【0122】
1…食器洗浄機
TW1…食器
7…洗浄槽
61…ノズル
62…ポンプ
63…ヒータ
68…乾燥ファン
C1…制御部
49…報知部
TT1…洗浄運転の運転時間
TW1、TR1、TR2、TD1…各工程のそれぞれの処理時間(TW1…洗浄工程の処理時間、TR1…加熱無しすすぎ工程の処理時間、TR2…加熱有りすすぎ工程の処理時間、TD1…乾燥工程の処理時間)
41、43A、43B…運転時間設定手段(41…運転時間設定ボタン、43A…加算ボタン、43B…減算ボタン)
42…乾燥工程選択手段(乾燥工程選択ボタン)
31…食器量検知手段
32…汚れ量検知手段
S106…分配処理
S109…検知結果取得処理
S111、S113…運転時間適正判定処理
S121…報知処理