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特許7309297給液装置、塗布装置、エージング装置、給液方法、およびエージング方法
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  • 特許-給液装置、塗布装置、エージング装置、給液方法、およびエージング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】給液装置、塗布装置、エージング装置、給液方法、およびエージング方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20230710BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20230710BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230710BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230710BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20230710BHJP
   B01D 24/00 20060101ALI20230710BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20230710BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20230710BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20230710BHJP
   B05C 5/02 20060101ALN20230710BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C11/00
B05D7/24 301K
B05D3/00 B
B05D3/00 D
B01D29/10 530A
B01D29/10 510E
B01D29/00 D
B01D19/00 H
B01D19/00 101
B01D61/00
B05C5/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021033351
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134302
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】芳川 典生
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆介
(72)【発明者】
【氏名】前向 正剛
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-209024(JP,A)
【文献】特開平11-316185(JP,A)
【文献】特開2004-327747(JP,A)
【文献】特開2020-044464(JP,A)
【文献】特開2014-094375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00- 5/04
B05C 7/00-21/00
B05D 1/00- 7/26
B01D18/00-19/04
23/00-35/04
35/08-37/08
61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を供給する給液装置であって、
粘度が1000cP以上である高粘度の処理液を貯留可能なタンクと、
前記処理液を供給する給液口と、
前記タンクと前記給液口とを接続する送液配管と、
前記送液配管を介して、前記タンクから前記給液口に向けて前記処理液を送る送液部と、
前記送液配管に配置され、前記処理液を濾過するフィルタと、
前記フィルタよりも下流側の位置で、前記フィルタを通過した処理液中のパーティクル量を測定する測定部、
を備え
前記測定部は、前記フィルタから離脱した粉塵である10μm以下のパーティクルについて、複数の大きさ毎に、数をカウントする、給液装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給液装置であって、
前記送液配管における前記フィルタよりも下流側の位置で、前記送液配管に接続されている測定配管、
をさらに備え、
前記測定部は、前記測定配管内の前記処理液中のパーティクル量を測定する、給液装置。
【請求項3】
請求項2に記載の給液装置であって、
前記送液配管から測定配管への前記処理液の流れをオンオフする開閉弁、
をさらに備える、給液装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の給液装置であって、
前記測定配管の内側面積が、前記送液配管の内側面積よりも小さい、給液装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の給液装置であって、
前記送液配管に配置され、処理液を圧送する送液ポンプ、
をさらに備える、給液装置。
【請求項6】
請求項5に記載の給液装置であって、
前記測定配管は、送液配管における前記送液ポンプよりも下流側の位置で前記送液配管に接続されている、給液装置。
【請求項7】
請求項5に記載の給液装置であって、
前記測定配管は、前記送液配管における前記送液ポンプよりも上流側の位置で前記送液配管に接続されている、給液装置。
【請求項8】
請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の給液装置であって、
前記測定部よりも上流側に配置され、前記処理液を脱気する脱気モジュール、
をさらに備える、給液装置。
【請求項9】
請求項8に記載の給液装置であって、
前記脱気モジュールが前記測定配管に配置されている、給液装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の給液装置であって、
前記測定部が測定したパーティクル量に基づいて、前記フィルタの状態を判定する判定部と、
前記判定部が出力する判定結果を外部に出力する出力部と、
をさらに備える、給液装置。
【請求項11】
対象に処理液を塗布する塗布装置であって、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の供給装置と、
前記供給装置の前記給液口から供給される前記処理液を吐出するノズルと、
を備える、塗布装置。
【請求項12】
フィルタを粘度が1000cP以上である高粘度の処理液で処理するエージング装置であって、
前記処理液を貯留可能な第1タンクと、
前記処理液を貯留可能な第2タンクと、
前記第1タンクと第2タンクとを並列に接続する第1送液配管および第2送液配管と、
前記第1送液配管を介して、前記第1タンクから前記第2タンクへ送液する第1送液部と、
前記第2送液配管を介して、前記第2タンクから前記第1タンクへ送液する第2送液部と、
前記第1送液部と前記第2送液部とを交互に動作させる制御部と、
前記第1送液配管を流れる処理液を濾過するようにフィルタを装着させるフィルタ装着部と、
前記フィルタを通過した前記処理液中のパーティクル量を測定する測定部と、
を備え
前記測定部は、前記フィルタから離脱した粉塵である10μm以下のパーティクルについて、複数の大きさ毎に、数をカウントする、エージング装置。
【請求項13】
粘度が1000cP以上である高粘度の処理液を供給先に供給する給液方法であって、
a) タンクの前記処理液を供給先に送る工程と、
b) 前記工程a)によって前記タンクから供給先に送られる前記処理液をフィルタで濾過する工程と、
c) 前記工程b)によって前記フィルタを通過した前記処理液中のパーティクル量を測定する工程と、
を含み、
前記工程c)において、前記フィルタから離脱した粉塵である10μm以下のパーティクルについて、複数の大きさ毎に、数をカウントする、給液方法。
【請求項14】
フィルタを粘度が1000cP以上である高粘度の処理液で処理するエージング方法であって、
A) 第1タンクから第2タンクへの前記処理液の送液と、前記第2タンクから前記第1タンクへの前記処理液の送液と、を交互に実行する工程と、
B) 前記工程A)によって、前記第1タンクから前記第2タンクへ送られる前記処理液をフィルタで濾過する工程と、
C) 前記工程B)によって、前記フィルタを通過した前記処理液中のパーティクル量を測定する工程と、
を含み、
前記工程C)において、前記フィルタから離脱した粉塵である10μm以下のパーティクルについて、複数の大きさ毎に、数をカウントする、エージング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給液装置、塗布装置、エージング装置、および給液方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置用ガラス基板、半導体基板、PDP用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、カラーフィルタ用基板、記録ディスク用基板、太陽電池用基板、電子ペーパー用基板等の精密電子装置用基板、矩形ガラス基板、フィルム液晶用フレキシブル基板、有機EL用基板(以下、単に「基板」と称する)の製造工程では、基板の表面にフォトレジスト等の液体を塗布する塗布装置が使用されている。従来の塗布装置については、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1の塗布装置は、水平方向に移動自在なステージに吸着保持された基板に対して、スリット状の吐出口を有するスリットダイから塗布液を吐出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-23990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の塗布装置では、処理液を吐出および塗布する前に、塗布液中に含まれる異物を除去するためのフィルタが用いられる場合がある。高粘度の処理液を濾過するフィルタは、適切な交換時期を特定することが困難であったため、例えば、使用時間、あるいは、総流量が一定の値に達した時点で、フィルタの交換がなされている。このため、フィルタの使用期間が、本来の寿命よりも短い場合には、フィルタのコストが相対的に高くなってしまう。また、フィルタの使用時間が、本来の寿命よりも長い場合には、処理液を充分に浄化できないことによって、塗布不良が発生してしまう可能性があった。したがって、フィルタの寿命を容易に把握できる技術が求められている。
【0005】
また、新品のフィルタは、一般的には、予め洗浄液で洗浄されている。しかしながら、洗浄済のフィルタに洗浄液よりも高粘度の処理液を通すと、フィルタから粉塵(パーティクル)が離脱する場合がある。このため、フィルタに高粘度の処理液を流す、いわゆるエージングが行われる場合があった。ところが、フィルタが高粘度の処理液の濾過に適した状態となったかを把握することは容易ではないため、エージングが一定時間行われた段階で、エージングを完了するようにされている。したがって、エージングの時間が充分でない場合には、フィルタが塗布装置に適用されることによって、フィルタから離脱した粉塵が処理液に混入し、塗布不良が発生してしまう可能性があった。したがって、フィルタのエージングの程度を容易に把握できる技術が求められている。
【0006】
本発明の目的は、高粘度の処理液の濾過に適用されるフィルタの寿命またはエージングの程度を適切に把握できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1態様は、処理液を供給する給液装置であって、粘度が1000cP以上である高粘度の処理液を貯留可能なタンクと、前記処理液を供給する給液口と、前記タンクと前記給液口とを接続する送液配管と、前記送液配管を介して、前記タンクから前記給液口に向けて前記処理液を送る送液部と、前記送液配管に配置され、前記処理液を濾過するフィルタと、前記フィルタよりも下流側の位置で、前記フィルタを通過した処理液中のパーティクル量を測定する測定部を備え、前記測定部は、前記フィルタから離脱した粉塵である10μm以下のパーティクルを、複数の大きさ毎に、数をカウントする。
【0008】
第2態様は、第1態様の給液装置であって、前記送液配管における前記フィルタよりも下流側の位置で、前記送液配管に接続されている測定配管、をさらに備え、前記測定部は、前記測定配管内の前記処理液中のパーティクル量を測定する。
【0009】
第3態様は、第2態様の給液装置であって、前記送液配管から測定配管への前記処理液の流れをオンオフする開閉弁をさらに備える。
【0010】
第4態様は、第2態様または第3態様の給液装置であって、前記測定配管の内側面積が、前記送液配管の内側面積よりも小さい。
【0011】
第5態様は、第2態様から第4態様のいずれか1つの給液装置であって、前記送液配管に配置され、処理液を圧送する送液ポンプをさらに備える。
【0012】
第6態様は、第5態様の給液装置であって、前記測定配管は、送液配管における前記送液ポンプよりも下流側の位置で前記送液配管に接続されている。
【0013】
第7態様は、第5態様の給液装置であって、前記測定配管は、前記送液配管における前記送液ポンプよりも上流側の位置で前記送液配管に接続されている。
【0014】
第8態様は、第2態様から第7態様のいずれか1つの給液装置であって、前記測定部よりも上流側に配置され、前記処理液を脱気する脱気モジュールをさらに備える。
【0015】
第9態様は、第8態様の給液装置であって、前記脱気モジュールが前記測定配管に配置されている。
【0016】
第10態様は、第1態様から第9態様のいずれか1つの給液装置であって、前記測定部が測定したパーティクル量に基づいて、前記フィルタの状態を判定する判定部と、前記判定部が出力する判定結果を外部に出力する出力部とをさらに備える。
【0017】
第11態様は、対象に処理液を塗布する塗布装置であって、第1態様から第10態様のいずれか1つの供給装置と、前記供給装置の前記給液口から供給される前記処理液を吐出するノズルとを備える。
【0018】
第12態様は、フィルタを粘度が1000cP以上である高粘度の処理液で処理するエージング装置であって、前記処理液を貯留可能な第1タンクと、前記処理液を貯留可能な第2タンクと、前記第1タンクと第2タンクとを並列に接続する第1送液配管および第2送液配管と、前記第1送液配管を介して、前記第1タンクから前記第2タンクへ送液する第1送液部と、前記第2送液配管を介して、前記第2タンクから前記第1タンクへ送液する第2送液部と、前記第1送液部と前記第2送液部とを交互に動作させる制御部と、前記第1送液配管を流れる処理液を濾過するようにフィルタを装着させるフィルタ装着部と、前記フィルタを通過した前記処理液中のパーティクル量を測定する測定部とを備え、前記測定部は、前記フィルタから離脱した粉塵である10μm以下のパーティクルについて、複数の大きさ毎に、数をカウントする。
【0019】
第13態様は、粘度が1000cP以上である高粘度の処理液を供給先に供給する給液方法であって、a)タンクの前記処理液を供給先に送る工程と、b)前記工程a)によって前記タンクから供給先に送られる前記処理液をフィルタで濾過する工程と、c)前記工程b)によって前記フィルタを通過した前記処理液中のパーティクル量を測定する工程とを含み、前記工程c)において、前記フィルタから離脱した粉塵である10μm以下のパーティクルについて、複数の大きさ毎に、数をカウントする
第14態様は、フィルタを粘度が1000cP以上である高粘度の処理液で処理するエージング方法であって、A)第1タンクから第2タンクへの前記処理液の送液と、前記第2タンクから前記第1タンクへの前記処理液の送液と、を交互に実行する工程と、B)前記工程A)によって、前記第1タンクから前記第2タンクへ送られる前記処理液をフィルタで濾過する工程と、C)前記工程B)によって、前記フィルタを通過した前記処理液中のパーティクル量を測定する工程と、を含み、前記工程C)において、前記フィルタから離脱した粉塵である10μm以下のパーティクルについて、複数の大きさ毎に、数をカウントする。
【発明の効果】
【0020】
第1態様の給液装置によると、フィルタを通過した処理液に含まれるパーティクル量に基づいて、フィルタの寿命、または、フィルタのエージングの程度を容易に把握できる。
【0021】
第2態様の給液装置によると、分岐配管に設けられるため、供給配管に影響することを抑制できる。
【0022】
第3態様の給液装置によると、送液配管から測定配管への送液をオンオフできる。
【0023】
第4態様の給液装置によると、少量の処理液でパーティクル量を測定できる。
【0024】
第5態様の給液装置によると、送液ポンプで処理液を給液口に送ることができる。
【0025】
第6態様の給液装置によると、送液ポンプによって測定配管へ供給できる。
【0026】
第7態様の給液装置によると、供給先へ送る処理液の、測定配管にも処理液を送ることができる。
【0027】
第8態様の給液装置によると、気泡によってパーティクル量の測定が阻害されることを抑制できる。
【0028】
第9態様の給液装置によると、測定部に対して、送液配管よりも近い測定配管で脱気が行われる。このため、送液配管で脱気する場合よりも気泡が少ない状態で、パーティクル量を測定できる。
【0029】
第10態様の給液装置によると、処理液中のパーティクル量に基づくフィルタの状態の判定結果が外部に出力される。このため、オペレータがフィルタの状態を容易に把握できる。
【0030】
第11態様の塗布装置によると、給液装置のフィルタで濾過された高粘度の処理液を対象物に塗布できる。
【0031】
第12態様のエージング装置によると、パーティクル量の測定結果に基づいて、フィルタのエージングを容易に判断できるようになる。
【0032】
第13態様の給液方法によると、フィルタを通過した処理液に含まれるパーティクル量に基づいて、フィルタの寿命、または、フィルタのエージングの程度を容易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1実施形態に係る塗布装置の構成を示す図である。
図2図1に示す脱気モジュールの構造を示す断面図である。
図3図1に示す塗布ユニットの斜視図である。
図4】第1制御部と、塗布装置内の各部との接続を示したブロック図である。
図5】第2実施形態に係る塗布装置の構成を示す図である。
図6】第3実施形態に係るエージング装置の構成を示す図である。
図7図6に示す第1装着部と、第1装着部に装着された第1フィルタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0035】
<1. 第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る塗布装置1の構成を示す図である。塗布装置1は、例えば、フレキシブルディスプレイの基材となるポリイミドフィルムの製造工程に適用される。ポリイミドフィルムの製造工程では、塗布装置1において、ガラス製のキャリア基板Cの上面に、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を含む高粘度の処理液であるワニスが塗布される。その後、他の装置において、ワニスの加熱、減圧、焼成等の処理が行われる。
【0036】
図1に示すように、本実施形態の塗布装置1は、給液ユニット10(給液装置)と、塗布ユニット20と、第1制御部30とを有する。以下、塗布装置1の各構成について説明する。
【0037】
給液ユニット10は、高粘度の処理液を、供給先である塗布ユニット20に供給する装置である。給液ユニット10は、供給タンク11、第1給液配管12、脱気タンク13、第2給液配管14、加圧機構15、減圧機構16、および測定機構17を有する。
【0038】
供給タンク11は、供給前のワニスを貯留する容器である。供給タンク11に貯留されるワニスは、未使用のものであってもよく、一旦使用された後に再生処理されたものであってもよい。上述の通り、ワニスは、高粘度の処理液である。ワニスの粘度は、例えば、1000~10000cP(1~10Pa・s)程度である。以下の説明において「高粘度」とは、1000cP(1Pa・s)以上の粘度であることを表す。なお、給液ユニット10が供給する高粘度の処理液は、ポリイミド前駆体を含むワニスに限定されるものではなく、ワニス以外の高粘度の処理液であってもよい。以下の説明では、供給タンク11に近い側を上流側と称し、供給タンク11とは反対側を下流側と称する。
【0039】
給液ユニット10は、1つの供給タンク11を有しているが、複数の供給タンク11を有していてもよい。その場合、複数の供給タンク11は、第1給液配管12に対して、切り替え可能に接続されていてもよい。
【0040】
第1給液配管12は、供給タンク11と脱気タンク13とを繋ぐ配管である。第1給液配管12の上流側の端部は、供給タンク11に接続されている。第1給液配管12の下流側の端部は、脱気タンク13に接続されている。また、第1給液配管12の経路上には、第1給液弁V11と、第1フィルタF1とが、設けられている。第1給液弁V11および後述する第1加圧弁V21を開放すると、加圧機構15から供給される気体の圧力により、供給タンク11内のワニスが、第1給液配管12を通って、脱気タンク13へ送られる。その際、ワニスは、第1フィルタF1により濾過される。これにより、ワニスに含まれる微細な粉塵が、第1フィルタF1に捕集されて除去される。
【0041】
なお、図1の例では、給液ユニット10は、1つの第1フィルタF1を有している。しかしながら、給液ユニット10は、複数の第1フィルタF1を有していてもよい。その場合、第1給液配管12の経路上に、複数の第1フィルタF1が、並列に接続されていればよい。
【0042】
脱気タンク13は、ワニス中の気体の溶存量を低減させるための容器である。脱気タンク13には、後述する減圧機構16が接続されている。減圧機構16の減圧弁V23を開放して減圧ポンプ162を動作させると、脱気タンク13の内部空間が減圧され、脱気タンク13内の気圧が、大気圧よりも低い負圧となる。これにより、脱気タンク13内のワニスに含まれる溶存気体が気泡となる。また、脱気タンク13内には、攪拌機構131が設けられている。攪拌機構131を回転させると、脱気タンク13内のワニスが攪拌され、ワニス中の気泡が、ワニスの液面へ向けて浮上する。浮上後の気泡は、脱気タンク13から減圧機構16へ吸引されることにより、除去される。これにより、ワニス中の気体の溶存量が低減される。
【0043】
このように、本実施形態の塗布装置1では、塗布前のワニスに含まれる溶存気体を、予め除去しておく。これにより、キャリア基板Cに塗布されたワニスを、後工程において加熱・焼成する際に、ワニス中に気泡が発生することを、防止できる。
【0044】
なお、図1の例では、給液ユニット10は、1つの脱気タンク13を有している。しかしながら、給液ユニット10は、複数の脱気タンク13を有していてもよい。その場合、第1給液配管12と第2給液配管14との間に、複数の脱気タンク13が、切り替え可能に接続されていてもよい。
【0045】
第2給液配管14は、脱気タンク13と塗布ユニット20とを繋ぐ配管である。第2給液配管14の上流側の端部は、脱気タンク13の下部に接続されている。第2給液配管14の下流側の端部は、塗布ユニット20の第3給液配管23に接続されている。また、第2給液配管14には、第2給液弁V12と、第2フィルタF2と、アシストポンプP1とが配置されている。
【0046】
減圧弁V23を閉鎖し、第2給液弁V12および後述する第2加圧弁V22を開放すると、加圧機構15から供給される気体の圧力により、脱気タンク13内のワニスが、第2給液配管14を通って、塗布ユニット20のスリットノズル22へ送られる。加圧機構15は、供給タンク11から給液口19へ向けて高粘度の処理液を送る送液部の一例である。また、アシストポンプP1を駆動させることで、ワニスの送液力が補助される。アシストポンプP1は、送液ポンプの一例である。
【0047】
アシストポンプP1は、例えば、1回あたり定量の液体を吐出する、定量吐出ポンプとしてもよい。この場合、アシストポンプP1が1回当たり送るワニスの量は、例えば、スリットノズル22が1枚のキャリア基板Cに塗布するワニスの量と同じとしてもよい。また、アシストポンプP1は、収縮可能なチューブの外周面に対して流体の圧力がかかることによってチューブ内の処理液を吐出する、いわゆるチューブフラムポンプであることが好ましい。チューブフラムポンプを採用することによって、ワニスを吐出することにより、アシストポンプP1内でパーティクルが発生することを抑制できる。
【0048】
第2フィルタF2は、第1フィルタF1よりも孔径が小さい(目が細かい)フィルタである。第2給液配管14を流れるワニスは、第2フィルタF2により濾過される。これにより、ワニスに含まれる微細な粉塵が、第2フィルタF2に捕集されて除去される。
【0049】
給液ユニット10は、1つの第2フィルタF2を有しているが、複数の第2フィルタF2を有していてもよい。この場合、第2給液配管14の経路上に、複数の第2フィルタF2が、並列に接続されていてもよい。
【0050】
加圧機構15は、供給タンク11および脱気タンク13へ、送液のための圧力を供給する機構である。図1に示すように、加圧機構15は、高圧気体供給源151、加圧配管152、レギュレータ153、第1加圧弁V21、および第2加圧弁V22を有する。高圧気体供給源151には、高圧の気体(例えば窒素)が充填されている。加圧配管152の上流側の端部は、高圧気体供給源151に接続されている。レギュレータ153は、加圧配管152の経路上に設けられている。加圧配管152の下流側の端部は、2本に分岐して、それぞれ、供給タンク11と脱気タンク13とに接続されている。第1加圧弁V21および第2加圧弁V22は、分岐後の2本の加圧配管152に、それぞれ設けられている。
【0051】
高圧気体供給源151から供給される気体は、レギュレータ153により、大気圧よりも高い所定の圧力に降圧調整される。第2加圧弁V22を閉鎖して、第1加圧弁V21を開放すると、当該所定の圧力の気体が、加圧配管152から供給タンク11へ供給される。これにより、供給タンク11から第1給液配管12へ、ワニスが押し出される。また、第1加圧弁V21を閉鎖して、第2加圧弁V22を開放すると、当該所定の圧力の気体が、加圧配管152から脱気タンク13へ供給される。これにより、脱気タンク13から第2給液配管14へ、ワニスが押し出される。
【0052】
減圧機構16は、脱気タンク13の内部を減圧するための機構である。図1に示すように、減圧機構16は、減圧配管161、減圧ポンプ162、および減圧弁V23を有する。減圧配管161の一端は、脱気タンク13に接続されている。減圧配管161の他端は、工場内の排気ラインに接続されている。減圧弁V23および減圧ポンプ162は、減圧配管161の経路上に設けられている。減圧弁V23を開放して、減圧ポンプ162を動作させると、脱気タンク13内の気体が、減圧配管161を通って排気ラインへ吸引される。これにより、脱気タンク13内の気圧が低下する。
【0053】
<測定機構>
測定機構17は、ワニス中のパーティクル量を測定するための機構である。図1に示すように、測定機構17は、測定配管171、開閉弁172、脱気モジュール173、および測定モジュール174を備える。
【0054】
測定配管171は、第2給液配管14のうち、アシストポンプP1よりも下流側の位置に接続されている。開閉弁172は、測定配管171に設けられている。開閉弁172は、測定配管171を開閉することによって、第2給液配管14から測定モジュール174へのワニスの送液をオンオフする。第2給液配管14には、切替弁18が設けられている。切替弁18は、第2給液配管14における測定配管171が接続される位置よりも下流側に位置する。切替弁18は、給液口19へ向けた送液をオンオフする。開閉弁172および切替弁18は、第1制御部30の制御信号に基づいて、開状態と閉状態との間で切り替えられる。
【0055】
脱気モジュール173は、測定配管171を流れるワニス中に存在する気泡(マイクロバブル)を除去する装置である。脱気モジュール173は、測定配管171に設けられており、開閉弁172と測定モジュール174との間に位置する。
【0056】
測定モジュール174は、脱気モジュール173よりも下流側に配置されている。測定モジュール174は、ワニス中に含まれる微小なパーティクル量を測定する。測定モジュール174は、パーティクルの大きさおよび数を測定するパーティクルカウンタである。測定モジュール174は、ワニスに光を照射し、パーティクルで散乱した光をセンサで検出することによって、パーティクル量を測定するように構成される。また、測定モジュール174は、ワニスに光を照射し、パーティクルによる遮光をセンサで検出することによって、パーティクルの大きさおよび数を測定するように構成されていてもよい。
【0057】
測定モジュール174が測定するパーティクルの大きさは、例えば、10μm以下であり、より好ましくは、5μm以下である。いくつかの大きさのパーティクル毎に、数をカウントできるように構成される。
【0058】
測定モジュール174でパーティクル量を測定する場合、開閉弁172が開状態とされるとともに、切替弁18が閉状態とされる。その後、アシストポンプP1の駆動により、ワニスが第2給液配管14から測定配管171へ流れ込み、脱気モジュール173へ送られる。そして、脱気モジュール173によって脱気されたワニスが測定モジュール174へと送られる。
【0059】
図1に示すように、測定配管171の端部は、排液ラインに接続されている。測定モジュール174を通過したワニスは、排液ラインへ送られ、廃棄される。なお、測定モジュール174を通過したワニスを、再び第2給液配管14等に戻すための配管が設けられていてもよい。
【0060】
測定配管171の内側面積は、第2給液配管14の内側面積よりも小さい。このため、測定配管171に送られるワニスの量を少くすることができる。これにより、少量のワニスでパーティクル量を測定できるため、ワニスの消費量を少なくできる。また、測定モジュール174が少量のワニスを用いてパーティクル量を測定するように構成されている場合には、測定配管の内側面積を小さくすることによって、測定モジュール174によってパーティクル量を適切に測定できる。
【0061】
図2は、図1に示す脱気モジュール173の構造を示す断面図である。脱気モジュール173は、いわゆる中空糸膜脱気モジュールである。図2に示すように、脱気モジュール173は、筒状のケーシング41と、複数の中空糸膜42と、減圧機構43とを有する。
【0062】
ケーシング41は、流入口411、流出口412、および2つの排気口413を有する。流入口411は、ケーシング41の一端に設けられ、流出口412は、ケーシング41の他端に設けられる。脱気モジュール173は、流入口411および流出口412を介して、測定配管171に接続される。排気口413は、ケーシング41の側部に設けられ、減圧機構43と接続されている。
【0063】
中空糸膜42は、細い筒状の膜である。全ての中空糸膜42の一端は、それぞれ流入口411に流路接続される。また、全ての中空糸膜42の他端は、それぞれ流出口412に流路接続される。これにより、測定配管171内にワニスの流れが生じると、流入口411から中空糸膜42にワニスが供給され、流出口412から当該ワニスが排出される。
【0064】
この中空糸膜42は、脱気処理に用いられるため、液体を通過させず、かつ、気体を透過可能な気体透過膜により形成される。脱気モジュール173で用いられる中空糸膜42の内径は、0.5mm~3mmである。また、脱気モジュール173に用いられる中空糸膜42の数は、100本~1000本程度である。なお、脱気モジュール173に用いられる中空糸膜42の内径および数は、ワニスの種類や流量によって適宜変更され得る。
【0065】
減圧機構43は、減圧配管431および減圧ポンプ432を含む。減圧配管431の一端は、2つに分岐し、ケーシング41の排気口413に接続される。また、減圧配管431の他端は、減圧ポンプ432に接続される。減圧ポンプ432が駆動すると、減圧配管431および2つの排気口413を介して、ケーシング41内の空間から気体が吸引される。これにより、ケーシング41内の空間の気圧が低下する。すなわち、中空糸膜42の外部の空間の気圧が低下する。なお、図2の例では、排気口413が2つであったが、排気口413は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0066】
このように、中空糸膜42の外部の空間を中空糸膜42の内部よりも低い圧力とすることにより、中空糸膜42の内部を通過する液体中の気泡や、当該液体に溶解している気体を、中空糸膜42の外部の空間に排出することができる。これにより、中空糸膜42内の液体を脱気できる。
【0067】
図1に示すように、第2給液配管14の下流側の端部は、給液口19となっている。給液口19は、塗布ユニット20の第3給液配管23に接続されている。給液口19は、供給先である塗布ユニット20にワニスを供給する。
【0068】
図3は、図1に示す塗布ユニット20の斜視図である。図1および図3に示すように、塗布ユニット20は、ステージ21、スリットノズル22、第3給液配管23、ノズル保持部24、および走行機構25を有する。なお、以下では、説明の便宜上、塗布ユニット20におけるスリットノズル22の移動方向を「前後方向」と称し、前後方向に直交する水平方向を「左右方向」と称する。
【0069】
ステージ21は、キャリア基板Cを載置して保持する略直方体状の保持台である。ステージ21は、例えば一体の石材により形成される。ステージ21の上面は、平坦な基板保持面211となっている。基板保持面211には、多数の真空吸着孔(図示省略)が設けられている。基板保持面211にキャリア基板Cが載置されると、真空吸着孔の吸引力によって、キャリア基板Cの下面が基板保持面211に吸着する。これにより、ステージ21上にキャリア基板Cが水平姿勢で固定される。また、ステージ21の内部には、複数のリフトピン(図示省略)が設けられている。ステージ21からキャリア基板Cを搬出するときには、基板保持面211上に複数のリフトピンが突出する。これにより、基板保持面211からキャリア基板Cが引き離される。
【0070】
スリットノズル22は、ワニスを吐出するノズルである。スリットノズル22は、左右方向に延びるノズルボディ221を有する。ノズルボディ221の下端部には、左右方向に延びるスリット状の吐出口223が、設けられている。吐出口223は、ステージ21上に載置されたキャリア基板Cの上面に対向する。
【0071】
第3給液配管23は、スリットノズル22へワニスを供給するための配管である。第3給液配管23の上流側の端部は、上述した給液口19に接続されている。第3給液配管23の下流側の端部は、スリットノズル22に接続されている。また、第3給液配管23の経路上には、メインポンプP2が設けられている。メインポンプP2を動作させると、第2給液配管14から供給されるワニスが、スリットノズル22の内部へ導入される。そして、スリットノズル22の吐出口223からキャリア基板Cの上面へ向けて、ワニスが吐出される。
【0072】
ノズル保持部24は、スリットノズル22を基板保持面211の上方に保持するための機構である。ノズル保持部24は、ステージ21の上方において左右方向に延びる架橋部241と、架橋部241の両端を支持する一対の支持部242とを有する。また、ノズル保持部24は、昇降機構243を有する。昇降機構243を動作させると、架橋部241の高さが変化する。これにより、スリットノズル22の高さを調節することができる。
【0073】
走行機構25は、スリットノズル22を前後方向に移動させるための機構である。走行機構25は、一対のレール251と、一対のリニアモータ252とを有する。一対のレール251は、ステージ21の左右の側部付近において前後方向に延びる。一対のレール251は、一対の支持部242の移動方向を前後方向に規制するリニアガイドとして機能する。一対のリニアモータ252は、磁気的な動力により、一対の支持部242を、レール251に沿って前後方向に移動させる。これにより、ノズル保持部24とともにスリットノズル22が、前後方向に移動する。
【0074】
塗布処理を行うときには、塗布ユニット20は、キャリア基板Cの上方において、スリットノズル22を前後方向に移動させながら、吐出口223からワニスを吐出する。これにより、キャリア基板Cの上面にワニスが塗布される。
【0075】
図4は、第1制御部30と、塗布装置1内の各部との接続を示したブロック図である。第1制御部30は、CPU等のプロセッサ31、RAM等のメモリ32、およびハードディスクドライブ等の記憶部33を有する。第1制御部30は、リフトピン、走行機構25、メインポンプP2等の塗布ユニット20と、それぞれ電気的に接続されている。また、第1制御部30は、給液ユニット10に設けられた弁、アシストポンプP1、減圧ポンプ162、および移動機構244と、電気的に接続されている。第1制御部30は、記憶部33に記憶されたコンピュータプログラムやデータを、メモリ32に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムおよびデータに基づいて、プロセッサ31が演算処理を行うことにより、塗布装置1内の各部を動作制御する。これにより、キャリア基板Cに対する塗布処理が進行する。第1制御部30は、画像を表示するディスプレイ311、および、入力デバイス312と電気的に接続されている。入力デバイス312は、マウス、キーボードまたはタッチパネルである。
【0076】
第1制御部30は、上述した攪拌機構131、レギュレータ153、減圧ポンプ162、第1給液弁V11、第2給液弁V12、第1加圧弁V21、第2加圧弁V22、アシストポンプP1、測定モジュール174など、給液ユニット10内の各部と、電気的に接続されている。また、第1制御部30は、上述したリフトピン、メインポンプP2、昇降機構243、リニアモータ252等の、塗布ユニット20内の各部とも、電気的に接続されている。
【0077】
第1制御部30は、記憶部33に記憶されたコンピュータプログラムやデータを、メモリ32に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムおよびデータに基づいて、プロセッサ31が演算処理を行うことにより、塗布装置1内の各部を動作制御する。これにより、キャリア基板Cに対する塗布処理が進行する。
【0078】
例えば、第1制御部30は、測定モジュール174が測定したパーティクル量に基づいて、第2フィルタF2の寿命を判定する寿命判定処理を行う。具体的には、第1制御部30は、パーティクル量が、予め設定された閾値を越えるかを判定する。そして、第1制御部30は、寿命判定処理によって、パーティクル量が閾値を越えたと判定した場合、第2フィルタF2が寿命に達したと判定する。第1制御部30は、判定部の一例である。
【0079】
第1制御部30は、寿命判定処理によって、第2フィルタF2が寿命に達したと判定した場合、ディスプレイ311に画像を表示させてもよい。第1制御部30がディスプレイ311に表示させる画像は、例えば、第2フィルタF2が寿命を迎えたことを示す画像であってもよいし、第2フィルタF2の交換を促す画像であってもよい。このような表示が行われることによって、オペレータは、第2フィルタF2が交換すべき状態であることを把握できる。ディスプレイ311は、第1制御部30の判定結果を出力する出力部として機能する。なお、出力部は、ディスプレイ311に限定されるものではなく、例えば、警告表示を行うランプ、警告音を発するスピーカ、印刷物を出力するプリンタなどであってもよい。
【0080】
測定モジュール174が、パーティクルの大きさ毎に数を測定できる場合、パーティクルの大きさ毎に閾値が予め設定されてもよい。この場合、第1制御部30は、すべてのパーティクルの大きさのうち一部の全部について、パーティクル量が閾値を越えたと判定した場合に、第2フィルタF2が寿命に達したと判定するようにしてもよい。
【0081】
<エージング>
新品の第2フィルタF2は、高粘度のワニスが通されることによって、異物が第2フィルタF2から離脱するおそれがある。このため、給液ユニット10において、新品の第2フィルタF2にワニスを通過させることによって、第2フィルタF2をエージングしてもよい。第2フィルタF2をエージングする場合、給液口19を排液ラインに接続することによって、ワニスを廃棄してもよい。また、給液口19から排出されるワニスを、第2フィルタF2よりも上流側に戻すことによって、再び第2フィルタF2に通すようにしてもよい。
【0082】
第2フィルタF2をエージングする間、第1制御部30は、測定モジュール174にワニス中のパーティクル量を測定させる。そして、第1制御部30は、測定モジュール174が測定したパーティクル量に基づいて、エージング判定処理を行う。具体的には、第1制御部30は、測定モジュール174が測定したパーティクル量が、所定の閾値を下回ったか否かを判定する。第1制御部30は、パーティクル量が所定の閾値を下回った場合、エージングが完了したと判定する。第1制御部30は、エージングが完了したと判定した場合、ディスプレイ311に第2フィルタF2のエージングが完了したことを示す画像を表示させる。このような表示が行われることによって、オペレータは、第2フィルタF2のエージングが完了したことを把握できる。
【0083】
<効果>
以上のように、給液ユニット10においては、パーティクル量の測定結果に基づいて、第2フィルタF2が寿命を迎えたかどうかを、適切に判断できる。したがって、寿命を越えた第2フィルタF2の使用により、製品に不良が発生することを抑制できる。
【0084】
また、給液ユニット10において、第2フィルタF2のエージングを行う場合には、エージングを完了すべきかどうかを、パーティクル量に基づいて、適切に判断できる。したがって、第2フィルタF2が過度にエージングされたり、あるいは、第2フィルタF2のエージングが不足したりすることを抑制できる。
【0085】
また、給液ユニット10では、パーティクル量の測定が、測定配管171上に配置された測定モジュール174によって行われる。このため、ワニスを外部に取り出してパーティクル量を測定する場合と比べて、パーティクル量の測定に係る作業負担を少なくすることができる。また、装置からワニスを外部に取り出す場合、取出し時や測定の際に、外部からのパーティクル混入によるワニス自体が汚染される可能性があり、測定精度が低下してしまうリスクがあるが、インライン化することによって、そのリスクを低減することができる。
【0086】
<2. 第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、以降の説明において、既に説明した要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号又はアルファベット文字を追加した符号を付して、詳細な説明を省略する場合がある。
【0087】
図5は、第2実施形態に係る塗布装置1Aの構成を示す図である。塗布装置1Aは、図1に示す塗布装置1とほぼ同様の構成を備える。ただし、塗布装置1Aでは、測定機構17の測定配管171の上流側の端部が、第2給液配管14における、第2フィルタF2とアシストポンプP1との間の位置に接続されている。塗布装置1Aでは、パーティクル量を測定する場合、加圧機構15が供給タンク11を加圧することにより、第2給液配管14のワニスが測定配管171へ送られる。この場合、パーティクル量の測定に必要なワニスを測定配管171に送りつつ、キャリア基板Cに塗布するために必要な量のワニスをアシストポンプP1で送ることができる。したがって、塗布処理を中断せずに、パーティクル量を測定できる。なお、パーティクル量を測定する場合には、開閉弁172および切替弁18を制御することによって、スリットノズル22へのワニスの供給が停止されてもよい。
【0088】
<3. 第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係るエージング装置2の構成を示す図である。エージング装置2は、塗布装置1の給液ユニット10に装着される第2フィルタF2をエージングするための装置である。図6に示すように、エージング装置2は、第1タンク51、第2タンク52、配管部60、加圧機構70、および第2制御部80を備えている。
【0089】
第1タンク51および第2タンク52は、第1フィルタF1および第2フィルタF2をエージングするための高粘度のワニスを貯留する容器である。第1タンク51と第2タンク52とは、互いに別体のタンクである。また、第1タンク51および第2タンク52は、後述する加圧機構70による加圧に耐え得る、耐圧性の密閉容器である。第1タンク51は、供給配管53を介して、ワニス供給源54と接続されている。供給配管53の経路上に設けられた供給弁V30を開放すると、ワニス供給源54から供給配管53を通って第1タンク51へ、ワニスが供給される。
【0090】
ワニス供給源54から供給されるワニスは、塗布装置1,1Aで使用されるワニスと同一の処理液である。したがって、ワニス供給源54から供給されるワニスの粘度は、塗布装置1において使用されるワニスの粘度と、同一である。なお、ワニスとは異なる種類の、高粘度の処理液を用いて、エージングが行われてもよい。
【0091】
配管部60は、第1主配管61、第2主配管62、第1分岐配管63、および第2分岐配管64を有する。第1主配管61の一端は、第1タンク51の下部に接続されている。第1分岐配管63の一端および第2分岐配管64の一端は、第1主配管61の他端にそれぞれ接続されている。第1分岐配管63の他端および第2分岐配管64の他端は、第2主配管62の一端にそれぞれ接続されている。第2主配管62の他端は、第2タンク52の下部に接続されている。すなわち、第1分岐配管63および第2分岐配管64は、第1タンク51と第2タンク52との間において、並列に延びている。第1分岐配管63は、本発明における第1送液配管の一例である。第2分岐配管64は、本発明における第2送液配管の一例である。
【0092】
第1分岐配管63には、切替弁V31および切替弁V32が設けられている。第1分岐配管63は、切替弁V31と切替弁V32との間に、第1フィルタF1を装着可能な第1装着部65を有する。第2分岐配管64には、切替弁V33および切替弁V34が、設けられている。第2分岐配管64は、切替弁V33と切替弁V34との間に、第2フィルタF2を装着可能な第2装着部66を有する。
【0093】
加圧機構70は、第1タンク51および第2タンク52へ、送液のための圧力を供給する機構である。図6に示すように、加圧機構70は、高圧気体供給源71、加圧配管72、レギュレータ73、切替弁V35、および切替弁V36を有する。高圧気体供給源71には、高圧の気体(例えば窒素)が充填されている。加圧配管72の上流側の端部は、高圧気体供給源71に接続されている。レギュレータ73は、加圧配管72の経路上に設けられている。加圧配管72の下流側の端部は、2本に分岐して、それぞれ、第1タンク51と第2タンク52とに接続されている。切替弁V35および切替弁V36は、分岐後の2本の加圧配管72に、それぞれ設けられている。
【0094】
高圧気体供給源71から供給される気体は、レギュレータ73により、大気圧よりも高い所定の圧力に降圧調整される。切替弁V36を閉鎖して、切替弁V35を開放すると、当該所定の圧力の気体が、加圧配管72から第1タンク51へ供給される。これにより、第1タンク51から第1主配管61へ、ワニスが押し出される。また、切替弁V35を閉鎖して、切替弁V36を開放すると、当該所定の圧力の気体が、加圧配管72から第2タンク52へ供給される。これにより、第2タンク52から第2主配管62へ、ワニスが押し出される。加圧機構70は、第1タンク51から第2タンク52へワニスを送る第1送液部の機能と、第2タンク52から第1タンク51へワニスを送る第2送液部の機能と、を兼ね備えている。
【0095】
図7は、図6に示す第1装着部65と、第1装着部65に装着された第1フィルタF1の断面図である。なお、第1フィルタF1および第1装着部65の構造は、図7に示すものに限定されるものではなく、図7とは異なる構造を有していてもよい。図7に示すように、第1装着部65は、第1フィルタF1を接続可能なホルダ650を有する。
【0096】
第1フィルタF1は、ハウジング91と、フィルタカートリッジ92と、カバー93とを有する。ハウジング91は、上下方向に延びる円筒形状の筐体である。フィルタカートリッジ92は、ハウジング91の内部に収容される。カバー93は、ハウジング91の外表面を覆う。カバー93は、例えば金属などの、ハウジング91よりも剛性の高い材料により形成される。これにより、ハウジング91の変形が抑制される。
【0097】
フィルタカートリッジ92は、フィルタ本体921と上蓋922とを有する。フィルタ本体921は、上下方向に延びる円筒状の外形を有する。フィルタ本体921は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂繊維により形成される。ただし、フィルタ本体921は、樹脂以外の材料により形成されるものであってもよい。上蓋922は、フィルタ本体921の上部を覆う。
【0098】
ハウジング91の底部には、流入口911と流出口912とが設けられている。流入口911は、ハウジング91の内部空間のうち、フィルタカートリッジ92の外部の空間と連通する。流出口912は、ハウジング91の内部空間のうち、フィルタカートリッジ92の内部の空間と連通する。
【0099】
ホルダ650は、流入接続孔651と流出接続孔652とを有する。流入接続孔651および流出接続孔652は、それぞれ、ホルダ650を上下方向に貫通する貫通孔である。流入接続孔651は、上流側の第1分岐配管63に接続される。流出接続孔652は、下流側の第1分岐配管63に接続される。また、第1装着部65に第1フィルタF1が装着されると、上述した流入口911が、流入接続孔651に接続され、上述した流出口912が、流出接続孔652に接続される。
【0100】
したがって、第1分岐配管63にワニスが流れると、流入接続孔651から流入口911を介してハウジング91の内部へワニスが導入される。そして、当該ワニスが、図7中の破線矢印のように、フィルタ本体921を通過する。また、フィルタ本体921を通過したワニスは、フィルタ本体921の内側から、流出口912および流出接続孔652を通って、下流側の第1分岐配管63へ流出する。
【0101】
また、図7に示すように、ハウジング91の上部には、第1排気配管94が接続される。ハウジング91の上部に溜まった気泡は、第1排気配管94を通って、工場内の排気ラインへ排出される。また、フィルタカートリッジ92の上部には、第2排気配管95が接続される。フィルタカートリッジ92の上部に溜まった気泡は、第2排気配管95を通って、工場内の排気ラインへ排出される。
【0102】
第2装着部66および第2フィルタF2の構造については、第1装着部65および第1フィルタF1の構造と同等であるため、重複説明を省略する。
【0103】
図6に示すように、エージング装置2は、測定機構17を有する。測定機構17は、図1に示す測定機構17と同じように、測定配管171、開閉弁172、脱気モジュール173、測定モジュール174を備えている。測定配管171は、第1分岐配管63における、切替弁V31と第1装着部65との間の位置に接続されている。測定モジュール174は、測定配管171内にあるワニス中のパーティクル量を測定する。測定モジュール174は、第2制御部80と電気的に接続されており、パーティクル量の測定結果を第2制御部80に送信する。
【0104】
なお、測定配管171が接続される位置は、第1分岐配管63における、第1装着部65と切替弁V32の間であってもよい。また、測定配管171が接続される位置は、第2分岐配管64における、切替弁V33と第2装着部66との間、または、第2装着部66と切替弁V34との間であってもよい。さらに、測定配管171は、第1主配管61または第2主配管62であってもよい。
【0105】
第2制御部80は、エージング装置2内の各部を動作制御するための手段である。第2制御部80は、CPU等のプロセッサ、RAM等のメモリ、およびハードディスクドライブ等の記憶部を有する。また、第2制御部80は、上述した供給弁V30、切替弁V31~V36、開閉弁172、レギュレータ73等の、エージング装置2内の各部と、電気的に接続されている。
【0106】
第2制御部80は、記憶部に記憶されたコンピュータプログラムやデータを、メモリに一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムおよびデータに基づいて、プロセッサが演算処理を行うことにより、エージング装置2内の各部を動作制御する。これにより、第1フィルタF1および第2フィルタF2のエージング(洗浄処理)が進行する。
【0107】
<エージング装置の動作>
エージング装置2において第1フィルタF1および第2フィルタF2のエージングを行う場合、オペレータが、第1装着部65に新品の第1フィルタF1を装着するとともに、第2装着部66に、新品の第2フィルタF2を装着する。
【0108】
第1フィルタF1および第2フィルタF2が装着された状態で、第2制御部80は、供給弁V30を開放することによって、ワニス供給源54から第1タンク51へ、洗浄用のワニスを供給させる。第1タンク51に、所定量のワニスが貯留されると、第2制御部80は、供給弁V30を閉鎖する。
【0109】
次に、第2制御部80が切替弁V31,V32,切替弁V35を開放することによって、加圧配管72から第1タンク51へ高圧の気体が供給される。これにより、第1タンク51内のワニスが、第1主配管61へ押し出される。そして、図6中の破線矢印A1のように、第1主配管61から、第1分岐配管63および第2主配管62を通って第2タンク52へ、ワニスが送られる。ワニスは、第1フィルタF1を通過する。このため、第1フィルタF1の下流側の面に初期粉塵が存在する場合、その初期粉塵は、第1フィルタF1の下流側の面から離脱して、ワニスとともに第2タンク52へ流れる。
【0110】
続いて、第2制御部80は、切替弁V31,V32,V35を閉鎖し、切替弁V33,V34,V36を開放する。そうすると、加圧配管72から第2タンク52へ、高圧の気体が供給される。これにより、第2タンク52内のワニスが、第2主配管62へ押し出される。そして、図6中の破線矢印A2のように、第2主配管62から、第2分岐配管64および第1主配管61を通って第1タンク51へ、ワニスが送られる。ワニスは、第2フィルタF2を通過する。このため、第1フィルタF1から離脱した粉塵は、第2フィルタF2の上流側の面に受けられる。第2フィルタF2の孔径は、第1フィルタF1から離脱した粉塵の粒径よりも十分に小さいので、粉塵が第2フィルタF2を通過しにくい。また、第2フィルタF2の下流側の面に、初期粉塵が付着している場合、その初期粉塵は、第2フィルタF2の下流側の面から離脱して、ワニスとともに第1タンク51へ流れる。
【0111】
第2制御部80は、第2タンク52から第1タンク51へのワニスの送液を完了すると、再び、第1タンク51から第2タンク52へのワニスの送液を開始する。このように、第2制御部80は、第1タンク51から第2タンク52への送液と、第2タンク52から第1タンク51への送液とを交互に繰り返し実行する。
【0112】
第2フィルタF2から離脱する粉塵は、第1フィルタF1の上流側の面に受けられる。第1フィルタF1の孔径は、第2フィルタF2から離脱する粉塵の粒径よりも十分に小さいので、粉塵が第1フィルタF1を通過しにくい。
【0113】
第2制御部80は、エージングを行っている最中、定期的に、測定機構17の測定モジュール174にパーティクル量を測定させる。詳細には、第2制御部80は、第1分岐配管63にワニスが流れている最中に、開閉弁172を開放することによって、第1分岐配管63を流れるワニスの一部を、測定配管171の測定モジュール174へ送る。そうすると、測定モジュール174がワニス中のパーティクル量を測定し、測定されたパーティクル量を第2制御部80へ送信する。
【0114】
第2制御部80は、測定モジュール174が送信したパーティクル量に基づいて、エージング判定処理を行う。具体的には、第2制御部80は、測定モジュール174が測定したパーティクル量が、エージングが完了したことを示す閾値を下回ったかを判定する。第2制御部80は、パーティクル量が所定の閾値を下回ったと判定した場合、第1フィルタF1および第2フィルタF2についてのエージングが完了したと判定する。
【0115】
第2制御部80は、エージングが完了したと判定した場合、エージング装置2の動作を停止する。これにより、オペレータは、第1装着部65からエージング済みの第1フィルタF1を取り外すとともに、第2装着部66からエージング済みの第2フィルタF2を取り外すことできる。なお、第2制御部80は、エージングが完了したと判定した場合、ディスプレイにエージングが完了したことを示す画像を表示させてもよい。
【0116】
<4. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0117】
上記第1~第3実施形態において、脱気モジュール173が脱気を行わない状態(すなわち、減圧ポンプ432がオフの状態)で運用されてもよい。このようにすることによって、例えば突発的なバブルの発生を測定モジュール174によって検出できる。また、上記第1~第3実施形態において、測定機構17が脱気モジュール173を備えることは必須ではなく、脱気モジュール173は省略されていてもよい。
【0118】
第1および第2実施形態に係る塗布装置1,1Aでは、第2フィルタF2について寿命判定またはエージング判定が行われているが、第1フィルタF1についても寿命判定またはエージング判定が行われるようにしてもよい。この場合、第1フィルタF1の下流側に、測定機構17がさらに設けられてもよい。具体的には、第1給液配管12における第1フィルタF1と脱気タンク13との間の位置に、測定機構17の測定配管171が接続されてもよい。これにより、第1フィルタF1を通過した第1給液配管12のワニスを、測定配管171を通じて測定モジュール174に送ることができる。したがって、第1フィルタF1を通過したワニス中のパーティクル量を測定できる。このようにして測定されるパーティクル量に基づいて、第1制御部30が、第1フィルタF1の寿命判定またはエージング判定を行うようにしてもよい。
【0119】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0120】
1,1A 塗布装置
10 給液ユニット
11 供給タンク
12 第1給液配管
13 脱気タンク
14 第2給液配管
15 加圧機構
17 測定機構
171 測定配管
172 開閉弁
173 脱気モジュール
174 測定モジュール
19 給液口
2 エージング装置
20 塗布ユニット
22 スリットノズル
223 吐出口
30 第1制御部
311 ディスプレイ
51 第1タンク
52 第2タンク
54 ワニス供給源
61 第1主配管
62 第2主配管
63 第1分岐配管
65 第1装着部
70 加圧機構
F1 第1フィルタ
F2 第2フィルタ
P1 アシストポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7