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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20230710BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230710BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/38 130
H02J3/38 110
H02J3/32
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018179158
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020054050
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山田 和夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆人
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-143838(JP,A)
【文献】特開2014-023382(JP,A)
【文献】特開2004-072900(JP,A)
【文献】特開2010-124605(JP,A)
【文献】特開2012-120419(JP,A)
【文献】特開2013-219941(JP,A)
【文献】特開2017-163769(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/149724(JP,A1)
【文献】特開昭57-122631(JP,A)
【文献】特開2016-067195(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0256952(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/38
H02J 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC母線に接続された太陽光発電装置及び蓄電装置を備え、
電力系統からのAC電力の受電端に接続されるとともに負荷が接続された需要者側のAC母線に、前記DC母線のDC電力をAC電力に変換して出力する発電システムであって、
前記発電システムの出力電力は、前記AC母線に出力される電力であって、前記負荷で消費され、前記電力系統に逆潮流される電力であり、
前記太陽光発電装置の予測太陽光発電出力を算出し、
前記予測太陽光発電出力と前記蓄電装置が蓄えている電力量とに基づいて、1日を分割した所定の期間中の前記発電システムの出力電力の予測値である予測出力電力を算出し、
算出された前記予測出力電力を、管理者に事前に通知することを特徴とする発電システム。
【請求項2】
DC母線に接続された太陽光発電装置及び蓄電装置を備え、
電力系統からのAC電力の受電端に接続されるとともに負荷が接続された需要者側のAC母線に、前記DC母線のDC電力をAC電力に変換して出力する発電システムであって、
前記発電システムの出力電力は、前記AC母線に出力される電力であって、前記負荷で消費され、前記電力系統に逆潮流される電力であり
前記太陽光発電装置の予測太陽光発電出力を算出し、
前記予測太陽光発電出力と前記蓄電装置が蓄えている電力量とに基づいて、1日を分割した所定の期間中に前記発電システムが出力する、一定値である予測出力電力を算出し、
算出された前記予測出力電力を、管理者に事前に通知し、
前記所定の期間中、前記管理者に事前に通知した前記予測出力電力を、前記発電システムの出力電力として出力するように、前記蓄電装置の充放電を制御することを特徴とする発電システム。
【請求項3】
前記発電システムが出力した出力電力を、前記管理者に通知することを特徴とする請求項1または2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記発電システムが前記電力系統から受電した供給電力を、前記管理者に通知することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の発電システム。
【請求項5】
前記発電システムの出力電力は、前記蓄電装置が放電する電力を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の発電システム。
【請求項6】
将来の前記所定の期間経過後に、前記蓄電装置が蓄えている電力量が、所定の範囲内になるように、前記予測出力電力を決定することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の発電システム。
【請求項7】
各々の前記期間の終了時における前記蓄電装置の目標蓄電量が定められており、
前記予測出力電力が算出された前記期間である第1期間の開始前に、前記第1期間の次の前記期間である第2期間の前記予測出力電力を、前記蓄電装置が蓄えている電力量と、前記第1期間の前記予測出力電力と、前記第2期間終了時の前記目標蓄電量とに基づいて算出し、
前記目標蓄電量が、複数の前記期間にわたって一定であるように定められていることを特徴とする請求項5に記載の発電システム。
【請求項8】
各々の前記期間の終了時における前記蓄電装置の目標蓄電量が定められており、
前記予測出力電力が算出された前記期間である第1期間の開始前に、前記第1期間の次の前記期間である第2期間の前記予測出力電力を、前記蓄電装置が蓄えている電力量と、前記第1期間の前記予測出力電力と、前記第2期間終了時の前記目標蓄電量とに基づいて算出し、
前記目標蓄電量が、夕方から夜間にかけて徐々に小さくなるように定められていることを特徴とする請求項5に記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽光発電装置を備えた発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電モジュール(太陽光発電装置)に並列接続された蓄電池モジュールを備える太陽光発電システムが従来技術として知られている。このように、蓄電池モジュールを備えることで、急激な変動の起こりやすい太陽光発電出力を平滑化することができ、また、昼間に発電した電力を夜間に消費するなどの、タイムシフトを実現することが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5401003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術において、電力事業者等の管理者からは、どの程度の電力が発電システムから得られるのかが事前に不明であり、電力系統全体を計画的に運用していく上で、課題があった。
【0005】
本発明の一態様は、管理者が事前に計画電力を把握することができるようになるとともに、計画どおりに変動の無い出力ができる発電システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る発電システムは、DC母線に接続された太陽光発電装置及び蓄電装置を備え、電力系統からのAC電力の受電端に接続されたAC母線に、前記DC母線のDC電力をAC電力に変換して出力する発電システムであって、前記太陽光発電装置の予測太陽光発電出力を算出し、前記予測太陽光発電出力と前記蓄電装置が蓄えている電力量とに基づいて、1日を分割した所定の期間中に前記発電システムが出力する予測出力電力を算出し、算出された前記予測出力電力を、管理者に事前に通知する構成を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、電力系統の管理者が事前に出力電力を把握することができるようになるとともに、計画どおりに変動の無い出力ができる発電システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係る発電システムの構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態1に係る発電システムの動作を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態1に係る発電システムの動作を説明するための、電力および蓄電量を示す図である。
図4】本発明の実施形態1に係る発電システムの電力および蓄電量の推移を示す図である。
図5】本発明の実施形態2に係る発電システムの電力および蓄電量の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1について、詳細に説明する。
【0010】
(発電システムの構成)
図1は、実施形態1の発電システム10を示す模式図である。図において、電力メータ22が、商用電力系統20の需要者の受電端21に設けられている。発電システム10は、AC母線30を介して電力メータ22に接続されている。需要者の負荷31もまた、AC母線30を介して電力メータ22に接続されている。図示されるように、受電端21における、需要者が商用電力系統20から受電する電力が受電電力Pu、逆潮流している場合の電力が逆潮流電力Prである。これらの電力量は電力メータ22で検出が可能である。また、負荷31が消費する電力は負荷消費電力Peである。
【0011】
発電システム10は、計測装置11、AC-DC変換装置12、DC母線13、太陽光発電装置14(太陽光発電モジュール)、蓄電装置15、制御装置16、通信装置17を備えている。太陽光発電装置14は、DC母線13に接続され、AC-DC変換装置12を介してAC母線30に対し、AC電力に変換した電力を供給する。太陽光発電装置14が発電する電力は、太陽光発電出力Pgである。DC母線13には、蓄電装置15も接続される。蓄電装置15はDC母線13から電力を受け取って充電し、貯蔵し、DC母線13に対して貯蔵した電力を出力(放電)できる装置である。蓄電装置15は、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、NaS電池、レドックスフロー電池等の、2次電池を備えた装置であり得る。
【0012】
AC-DC変換装置12は、商用電力系統20側のAC母線30と、太陽光発電装置14側のDC母線13との間に配置され、双方向にAC-DC変換が可能な装置である。
【0013】
計測装置11は、発電システム10に出入りする電力を計測できる装置である。図1では、計測装置11が、AC母線30に配置されるように示されるが、発電システム10に出入りする電力が計測できれば、この位置に限られない。計測装置11は、発電システム10がAC母線30側に出力する出力電力Po及び、発電システム10がAC母線30側から受け入れる供給電力Psを計測する。計測装置は、電力管理者が別途設置し、システムの出力を監視する電力メータであってもよい。出力電力Poは、負荷31で消費され、またあるいは商用電力系統20に逆潮流する。供給電力Psは、発電システム10が商用電力系統20から受け取る電力でもある。
【0014】
制御装置16は、発電システム10を構成する各装置と情報のやり取りを行い、AC-DC変換装置12の動作の制御を行う装置である。さらに、制御装置16は電力メータ22から電力に関する情報を取得できてもよい。また、制御装置16は蓄電装置15を監視・制御する。蓄電装置15は、制御装置16の指示により、所要の充放電を実施する。また、制御装置16は通信装置17を制御する。計測装置11、AC-DC変換装置12、制御装置16とが、まとめてパワーコンディショニングサブシステム(PCS)と呼称されるものであってもよい。
【0015】
通信装置17は、制御装置16の指示により、管理者40に対して、発電システム10の出力電力Poの計画等についての通知を含めた、情報の伝達を行う。管理者40は、発電システム10の上位システムである商用電力系統20の電力の少なくとも一部についての何らかの管理を行うものである。管理者40は、商用電力系統20の管理を行う系統運用者であり得、また、商用電力系統20への電力の小売り量を把握し、管理する電力小売事業者、リソースアグリゲータであり得る。また、通信装置17は、制御装置16の指示により、日照量情報提供者50からの日照量予測の受信を含めた、情報のやり取りを行う。日照量情報提供者50は、天候の予報に基づいた将来の日照量の予測から、発電システム10に日照量予測情報の提供を行うものである。
【0016】
(発電システムの動作のフロー)
図2は、実施形態1の発電システム10の動作を示すフローチャートである。図3は、発電システム10における、太陽光発電装置14の発電する太陽光発電出力Pg、発電システム10の出力電力Po、発電システム10の計画出力(予測出力電力)、蓄電装置15の蓄電量Sその他を示すグラフである。図3(a)に各電力が示され、図3(b)に蓄電量が示される。これらに基づいて、発電システム10の操作を説明する。
【0017】
一日を分割したN番目の期間を期間T(N)とし、図3では、期間T(N-1)から期間T(N+1)までが示されている。図3には、期間T(N-1)終了直前時点の状況が示されており、期間T(N-1)終了直前までの太陽光発電出力Pg、蓄電量Sが示されている。期間T(N)、期間T(N+1)中の各線は、計画値もしくは予測値である。各期間の長さToは、30分から2時間程度であり、典型的には1時間とすることができる。すなわち、一日の分割数は、12以上程度とすることが好ましい。
【0018】
期間の長さToは、電力管理者が保有する他の電源の起動時間や発電効率のよい運転時間周期、または電力取引市場における電力調達取引が終了(ゲートクローズ)し、系統運用者に需給バランス調整の権限が移ってから実際の電力消費までの時間(日本において、2018年現在では1時間前にゲートクローズし、系統運用者に需給調整の責が移る、電力小売事業者は計画値同時同量を達成できない場合、インバランス清算を行う)等に依存し適宜、設定することができる。
【0019】
この期間は、電力管理者が有効な期間で、できる限り短くすることが重要である。この期間は必要な電池容量と大きく関連し、期間が短いほど、蓄電池容量を小さくすることが可能となる。また発電量の予測も電池容量の決定に重要な要素であり、予測精度が向上するほど、電池容量を少なくすることが可能となる。これら構成により、安定した出力を行う太陽光発電システムの運用コストを下げることが可能となる。
【0020】
発電システム10において、制御装置16は、期間T(N)の開始前に、期間T(N+1)における発電システム10の計画出力Pop(N+1)を通信装置17を通じて管理者40に通知する。この時点で既に、期間T(N)中の太陽光発電装置14による予測太陽光発電量Wpv(N)は算出され、これに基いた、発電システム10の計画出力Pop(N)が、管理者40に通知されている。予測太陽光発電量Wpv(N)は、図3(a)において、期間T(N)中の、ハッチングを行った領域の面積として示されている。
【0021】
期間T(N-1)の終了直前に、制御装置16は、その時点で蓄電装置15に蓄えられている電力量である蓄電量S(N-1)を蓄電装置15から取得する(ステップS1)。
【0022】
次に、制御装置16は、既決値である、期間T(N)中の予測太陽光発電量Wpv(N)、計画出力Pop(N)とを用いて、蓄電量S(N-1)に基づき、期間期間T(N)の終了時の蓄電装置15の推定蓄電量S(N)を算出する(ステップS2)。
【0023】
続いて、制御装置16は、通信装置17に指示して、日照量情報提供者50から、期間T(N+1)の日照量予測の情報を取得する(ステップS3)。そうして、取得した日照量の予測に基づいて、太陽光発電装置14の期間T(N+1)における各時刻の太陽光発電出力Pgの予測値(予測太陽光発電出力)を算出し、その積分である予測太陽光発電量Wpv(N+1)を算出する(ステップS4)。太陽光発電出力Pgの予測値は、図3(a)において、破線で示されている。予測太陽光発電量Wpv(N+1)は、図3(a)において、期間T(N+1)中の、ハッチングを行った領域の面積として示されている。
【0024】
更に、制御装置16は、予測太陽光発電量Wpv(N+1)、推定蓄電量S(N)に基づき、期間T(N+1)終了時点の蓄電装置15の蓄電量が、目標蓄電量Sp(N+1)となるように、期間T(N+1)の計画出力Pop(N+1)を決定する(ステップS5)。
【0025】
続いて、制御装置16は通信装置17を通じて、期間T(N)の開始前に、期間T(N+1)の発電システム10の計画出力Pop(N+1)を管理者40に通知する(ステップS6)。
【0026】
期間T(N)中、制御装置16は、変動する太陽光発電出力Pgに対し、蓄電装置15の充放電動作を制御することで、発電システム10の出力電力Poが、一定値である計画出力Pop(N)となるように動作させる(ステップS7)。
【0027】
こうして、図2に示された一期間分の一連のフローが終了する。発電システム10は、このフローを繰り返し実行する。
【0028】
(算出方法の具体的な例示)
上述の各ステップにおける数値の算出方法を、より具体的に例示する。蓄電装置15の充電時、放電時、貯蔵中の損失、AC-DC変換装置12の変換損失、その他の発電システム10内の損失が無視できる場合には以下の様に算出できる。これらの損失が無視できない場合には、適宜に各部の効率を掛け合わせて算出すればよい。
【0029】
ステップS2における、蓄電装置15の推定蓄電量S(N)については、次の通りである。
【0030】
予測太陽光発電量Wpv(N)と、計画出力Pop(N)に期間T(N)の長さToを乗じた値である電力量Pop(N)・Toとの差分Wpv(N)-Pop(N)・Toを求める。この差分を、蓄電量S(N-1)からの増減として、推定蓄電量S(N)を求める。推定蓄電量S(N)は、当該差分が正のときは、蓄電量S(N-1)から増加し、負のときは減少する。期間T(N)終了時における目標蓄電量との差異は、期間T(N-1)終了時における目標蓄電量と現実の蓄電量S(N-1)との差異に由来する。
【0031】
ステップS5における、計画出力Pop(N+1)については、以下の通りである。
【0032】
予測太陽光発電量Wpv(N+1)と、計画出力Pop(N+1)に期間T(N+1)の長さToを乗じた値である電力量Pop(N+1)・Toとの差分Wpv(N+1)-Pop(N)・Toを考える。この差分が、推定蓄電量S(N)から目標蓄電量Sp(N+1)への増減分と等しくなるように、期間T(N+1)中の計画出力Pop(N+1)を定める。
【0033】
この際に、計画出力Pop(N+1)が負の値となる場合には、発電システム10は、期間T(N+1)中に、その大きさの供給電力Psを商用電力系統20から受け入れ、蓄電装置15に貯蔵するように動作する。この場合、制御装置16は、期間T(N+1)の発電システム10の計画出力Pop(N+1)をマイナス値として管理者40に通知する。
【0034】
(選択的な動作)
上述の通り、発電システム10において、期間T(N)の開始までに、発電システム10の期間T(N+1)の計画出力Pop(N+1)が算出され、管理者40に通知される。
【0035】
更に発電システム10の選択的な動作として、制御装置16が通信装置17を通じて、期間T(N+1)中の実際の出力電力Poを管理者40へ通知するものとしてもよい。これにより管理者40が、発電システム10の実際の出力電力Poが、計画出力(予測出力電力)の通りであったか否かを把握することができるようになる。この場合、期間T(N+1)の終了後に、当該通知が完了するものとすればよい。実際の出力電力Poの計画出力Pop(N+1)からの変動が大きい場合に、管理者40が需要者に対して、電力の買い取り費用のカットなどの、ペナルティを科すことができるようにするためである。あるいは、期間中の実際の総出力電力量の、計画出力電力量Pop(N+1)・Tからの相違が大きい場合等も同様である。
【0036】
また、発電システム10の選択的な動作として、制御装置16が通信装置17を通じて、所定の期間における発電システム10が受け入れた供給電力Ps若しくは、その電力量を管理者40へ通知するものとしてもよい。発電システム10が出力した電力量のうち、発電システム10が商用電力系統20から受け入れた電力量は、太陽光発電装置14が発電した分ではない。一定期間における出力電力Poの総和(積分)から、供給電力Psの総和(積分)を差し引いたものが、太陽光発電装置14が発電した電力量となる。そこで、本通知を行うことで、管理者40は、再生可能エネルギー発電量(太陽光発電装置14の発電量)を正確に知ることができるようになる。
【0037】
従って、同様の目的で、制御装置16が通信装置17を通じて、こうして算出された一定期間における太陽光発電装置14が発電した電力量を管理者40へ通知するものとしてもよい。一定期間とは、例えば、一月とすることができるが、これに限られるものではない。
【0038】
(発電システムの動作の結果例)
実施形態1においては、各期間T(i)終了時点の目標蓄電量Sp(i)は、蓄電装置15が太陽光発電出力Pgの変動を抑えるために運用される日照時間中において、一定である。目標蓄電量Sp(i)の一定値としては、例えば、蓄電装置15のステートオブチャージ(SOC)の50%に相当する値、すなわち満充電量の半分とすることができる。目標蓄電量Sp(i)が、SOCが0%に近い小さい値に設定されると、蓄電装置15は、放電できる電力量がわずかとなり、太陽光発電出力Pgの急激な減少に追随できなくなる。逆に目標蓄電量Sp(i)が、SOCが100%に近い、大きい値に設定されると、蓄電装置15は、太陽光発電出力Pgの急激な増加に追随できなくなる。従って、目標蓄電量Sp(i)の一定値は、SOCの50%に相当する値には限られないが、これらを考慮して適切な値に設定されることが望ましい。以下の説明では、目標蓄電量Sp(i)をある一定の値として具体的に説明するが、ある程度の変動を許容した、所定の幅を持った目標蓄電量としてもよい。
【0039】
上記のように規定される発電システム10の動作によって、実際に運用を行った結果の例を図4に示す。図4では、期間T(N-1)から期間T(N+1)までが示されている。この期間は、日照量が時間を追うにつれて大きくなる午前の時間帯にある。よって、図4(a)に破線で示される太陽光発電出力Pgの予測値も、時間とともに大きくなっている。
【0040】
また、図4(a)には、各期間の発電システム10の計画出力Pop(N-1)、Pop(N)、Pop(N+1)も示されている。実際に発電システム10が出力した出力電力Poは、計画通りであり、図4(a)に示される各期間の計画出力Pop(i)と一致した。
【0041】
期間T(N-1)は、晴れ時々曇りの天候であり、日照量が一定しない状況であった。よって、太陽光発電出力Pgも期間内において大きく変動した。従って、計画出力Pop(N-1)と等しい計画通りの出力電力Poを期間中に亘って出力するために、蓄電装置15の充放電が繰り返された。その結果、図4(b)に示されるように、期間中の蓄電量Sも上下動を繰り返した。しかし、期間T(N-1)中の総発電量は、ほぼ予測太陽光発電量Wpv(N-1)どおりであったため、期間T(N-1)終了時の蓄電量Sは、ほぼ目標蓄電量Sp(N-1)に等しかった。各期間終了時点での目標蓄電量Sp(i)は、図4(b)にドットで示されている。
【0042】
期間T(N)は、雲によって太陽光発電装置14のソーラーパネルが陰ることが無く、徐々に強まる日照量予測どおりの日照状況であった。その結果、太陽光発電出力Pgは予測通りに推移した。期間T(N)中の総発電量も、ほぼ予測太陽光発電量Wpv(N)どおりであったため、期間T(N)終了時の蓄電量Sは、ほぼ目標蓄電量S(N)に等しかった。晴天日の午前中のように、日照量が徐々に強まる期間において、一定の計画出力どおりの出力電力Poを得るため、蓄電装置15は、その期間の前半では放電を行い、後半では充電を行う。従って、その期間中の蓄電量Sは、前半に減少し、後半に増加するように推移した。
【0043】
なお、期間が午後の時間帯にあって、日照量が時間を追うにつれて小さくなる場合は逆に、蓄電装置15は、その期間の前半では充電を行い、後半では放電を行う。従って、その期間中の蓄電量Sは、前半に増加し、後半に減少するように推移する。
【0044】
期間T(N+1)では、後半に日照予測が外れ、太陽光発電出力Pgが予測より小さく推移した。しかし、蓄電装置15が放電を行うことで、期間T(N+1)中、Pop(N+1)に等しい一定の出力電力Poが維持された。その結果、期間T(N+1)終了時の蓄電量Dは、目標蓄電量Sp(N+1)を下回ることとなった。
【0045】
このような期間終了時の目標蓄電量からの乖離は、図2の動作フローにおける、ステップS1の制御装置16による蓄電量の取得によって検出される。そうして、ステップS5における先の計画出力の算出に反映されて乖離が修正されることとなる。具体的には、期間T(N+2)については、計画出力Pop(N+2)が管理者40に既に通知されており、出力電力Poをその通りに制御し、計画を守る必要がある。しかし、期間T(N+3)について、計画出力Pop(N+3)の算出に反映されて、乖離が修正されることになる。
【0046】
なお、目標蓄電量Sp(N)、Sp(N+1)が同じであって、蓄電装置15への充放電は行わない予定であったため、計画出力Pop(N+1)は、太陽光発電出力Pgの予測値の平均値であった。しかし、仮に図3の期間T(N+1)に示されるように、期間T(N+1)終了時の目標蓄電量Sp(N+1)を下げて、放電させる計画である場合には、計画出力Pop(N+1)は、太陽光発電出力Pgの予測値の平均値よりも大きくなる。
【0047】
以上のように、長さToの一定の期間内において、太陽光発電出力Pgが急変する場合、徐々に増加する場合、徐々に減少する場合、予測と外れた場合のいずれの場合においても、発電システム10は、計画出力どおりの、一定の出力を維持できる。
【0048】
更には、発電システム10の出力は、計画出力(予測出力電力)として、所定の時間前に事前に管理者40に通知されている。しかも、発電システム10は、管理者40に通知された計画出力通りの出力を、確実に出力できる。
【0049】
よって、このような発電システム10によれば、管理者40が系統運用者の場合は、電力系統全体を計画的に運用する上で極めて有用な状況を提供することができるようになる。また、管理者40が電力小売事業者の場合は、計画値同時同量を達成するために有効に活用可能である。従って、上述の機能を備えた発電システム10の運用者に対しては、このような機能を備えない発電システムと比較して、より大きなインセンティブを管理者40から与えることが可能となる。
【0050】
このように、電池の蓄電量をできる限り一定に保つ制御を行うということは、太陽光発電の発電電力をできる限り蓄電せずに出力することと同義である。蓄電装置15へ電力の充放電を行うと、現実には一定の電力ロスが存在するため、このような制御をおこなうことによって、発電電力をより効率的に使うことが可能となる。
【0051】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0052】
実施形態2に係る発電システムの構成は、図1に示される実施形態1と同様である。また、実施形態2に係る発電システムの動作も図2のフローチャートに示される実施形態1の場合と同様である。ただし、図2のフローチャートのステップS5における具体的な数値の算出方法が異なる。以下にその点について説明する。
【0053】
(算出方法の具体的な例示)
計画出力Pop(N+1)の計算方法は、実施形態1の場合と同じである。ただし、計画出力Pop(N+1)が負の値となった場合には、以下の通りとする。
【0054】
制御装置16は、期間T(N+1)の発電システム10の計画出力Pop(N+1)を0として管理者40に通知する。
【0055】
発電システム10は、推定蓄電量S(N)が、所定の閾値以上であるときには、期間T(N+1)中に、供給電力Psを商用電力系統20から受け入れることはしない。太陽光発電出力Pgにより、蓄電装置15への充電を行わせるためである。この点、目標蓄電量Sp(i)を一定に保つことを重要視した実施形態1と異なる。
【0056】
発電システム10は、推定蓄電量S(N)が、所定の閾値未満であるときに限り、期間T(N+1)中に、その大きさの供給電力Psを商用電力系統20から受け入れ、蓄電装置15に貯蔵するように動作する。蓄電装置15の蓄電量Sが所定の閾値未満に低下すると、一時的な太陽光発電出力Pgの減少を放電により吸収して、出力電力Poを平滑化できる機能が確保できなくなるため、商用電力系統20からの電力の受け入れにより、蓄電量Sを回復させるためである。
【0057】
(発電システムの動作の結果例)
本発明の実施形態2は、逆潮流電力Prの発生を極力避けて、蓄電装置15を用いたいわゆるタイムシフトにより需要者において太陽光発電装置14の発電分を消費するケースを想定する。このようなケースは、逆潮流電力Prの管理者40による買い取り価格(需要者の売電価格)が、受電電力Puの電力価格(需要者の買電価格)よりも小さい場合に、需要者にとって経済的となるために発生する。
【0058】
図5は、このような想定に対応した、発電システム10による一日の動作を示した図である。図5(a)には、太陽光発電出力Pg、負荷消費電力Peが示されている。負荷消費電力Peは、朝方と夕方から夜にピークを持ち、昼間の消費が少ない。このような電力需要のパターンは、一般家庭における典型的な消費パターンである。昼間に太陽光発電出力Pgの出力が負荷消費電力Peを上回っており、蓄電装置15が無ければ、売電(逆潮流)となる状況にある。
【0059】
逆潮流をなるべく回避するように、各期間終了時の目標蓄電量Sp(i)を図5(b)に示されるように設定する。図5(b)には、運用上の蓄電量Sの上限値及び下限値が合わせて示されている。蓄電量の上限値は、SOCの100%としてよいが、これとは異なる値とすることも可能である。蓄電量の下限値は、SOCの0%としてよいが、これとは異なる値とすることも可能である。これらは、蓄電装置15の特性に応じて、適宜に設定すればよい。
【0060】
目標蓄電量Sp(i)は以下のように設定する。目標蓄電量Sp(i)は図5(b)にドットとして示されている。
【0061】
充電開始前の期間に、目標蓄電量Sp(i)は下限値よりもやや高い値(閾値)に設定される。下限値よりもやや高い値であるのは、一時的な太陽光発電出力Pgの減少を放電により吸収して、出力電力Poを平滑化できるようにするためである。このように設定値を低い値とするのは、その後、充電できる余地を十分確保するためである。
【0062】
昼間の積極的に充電を行いたい期間に、目標蓄電量Sp(i)を上限値よりもやや低い値(高い所定値)に設定する。上限値よりもやや低い値であるのは、一時的な太陽光発電出力Pgの増加を充電により吸収して、出力電力Poを平滑化できるようにするためである。
【0063】
また、夕方から夜間の放電を行う期間には、そのために、目標蓄電量Sp(i)を期間の経過に従って、徐々に小さく設定する。
【0064】
次に、発電システム10の動作について、時間を追って説明する。
【0065】
深夜から早朝、目標蓄電量Sp(i)が閾値に設定され、蓄電量Sもその値で推移する。閾値は、例えばSOC20%に相当する値であり得るが、これに限られない。
【0066】
日照が生じると、太陽光発電装置14が発電を開始する。従って、実施形態1において説明された通り、事前に、発電システム10の計画出力Pop(i)が算出され、管理者40に通知される。計画出力Pop(i)は、図5(a)に示されている。
【0067】
次に、充電に適した時間帯には、目標蓄電量Sp(i)が高い所定値に設定される。実際の蓄電量Sが低い状態で、目標蓄電量Sp(i)が高い所定値となったため、発電システム10は充電動作を行う必要がある。このとき、ステップS5で算出される計画出力Pop(N+1)は、マイナスとなる。よって、管理者40には、計画出力が0であるように通知され、その期間に発電システム10の出力は行われない。太陽光発電出力Pgは、全て、蓄電装置15の充電に充当される。太陽光発電出力Pgだけで、短期間に目標蓄電量Sp(i)に達することはないため、複数の期間に亘り、充電が継続する。
【0068】
充電が進み、ステップS2における蓄電装置15の推定蓄電量S(N)が高い所定値である目標蓄電量Sp(i)に近づくと、ステップS5で算出される計画出力Pop(N+1)がプラスとなる。よって、管理者40には、プラスの計画出力が通知され、その期間に発電システム10の出力が再開される。
【0069】
続いて、夕方以降の放電に適した時間帯には、目標蓄電量Sp(i)が期間ごとに、徐々に高い所定値から、閾値に下がっていくように設定される。すると、太陽光発電出力Pgはほぼ0であるので、各期間において蓄電装置15が放電する電力が、ステップS5で算出される計画出力Pop(N+1)として、管理者40に通知されることとなる。また、その期間において、計画通りに発電システム10の出力がなされるように動作する。
最終的に、蓄電量Sが閾値まで低減した段階で、放電が終了する。
【0070】
以上のように、実施形態2においては、各期間蓄T(i)の目標蓄電量Sp(i)を上述の通り適切に設定することで、発電システム10において、タイムシフト動作が可能となる。
【0071】
また、実施形態1に記載された本発明の効果は、実施形態2においても同様である。
【0072】
〔ソフトウェアによる実現例〕
発電システム10の制御装置16は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0073】
後者の場合、制御装置16は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば少なくとも1つのプロセッサ(制御装置)を備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な少なくとも1つの記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0074】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る発電システムは、DC母線に接続された太陽光発電装置及び蓄電装置を備え、電力系統からのAC電力の受電端に接続されたAC母線に、前記DC母線のDC電力をAC電力に変換して出力する発電システムであって、前記太陽光発電装置の予測太陽光発電出力を算出し、前記予測太陽光発電出力と前記蓄電装置が蓄えている電力量とに基づいて、1日を分割した所定の期間中に前記発電システムが出力する予測出力電力を算出し、算出された前記予測出力電力を、管理者に事前に通知する構成を備えている。
【0075】
上記の構成によれば、電力系統の管理者が事前に出力電力を把握することができるようになるとともに、計画どおりに変動の無い出力ができる発電システムを実現することを目的とする。
【0076】
本発明の態様2に係る発電システムは、上記態様1において、前記発電システムが出力した出力電力を、前記管理者に通知する構成を備えていてもよい。
【0077】
上記の構成によれば、電力系統の管理者が、発電システムの実際の出力電力が、予測出力電力から乖離したか否かを把握することができるようになる。
【0078】
本発明の態様3に係る発電システムは、上記態様1または2において、前記発電システムが前記電力系統から受電した供給電力を、前記管理者に通知する構成を備えていてもよい。
【0079】
上記の構成によれば、電力系統の管理者が、発電システムの実際の出力電力のうちの、太陽光発電装置が発電した正味の電力を把握することができるようになる。
【0080】
本発明の態様4に係る発電システムは、上記態様1から3のいずれかにおいて、将来の前記所定の期間経過後に、蓄電装置が蓄えている電力量が、所定の範囲内になるように、前記予測出力電力を決定する構成を備えていてもよい。
【0081】
上記の構成によれば、蓄電装置の充放電を最小限とすることができるようになる。
【0082】
本発明の態様5に係る発電システムは、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記電力系統に逆潮流する電力量が小さくなるように前記予測出力電力を決定する構成を備えていてもよい。
【0083】
上記の構成によれば、発電システムの運用者が、電力系統から購入する電力量を小さくすることができるようになる。
【0084】
本発明の各態様に係る制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記制御装置をコンピュータにて実現させる制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0085】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0086】
10 発電システム
11 計測装置
12 AC-DC変換装置
13 DC母線
14 太陽光発電装置
15 蓄電装置
16 制御装置
17 通信装置
20 商用電力系統
21 受電端
22 電力メータ
30 AC母線
31 負荷
40 管理者
50 日照量情報提供者
図1
図2
図3
図4
図5