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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
A47J27/00 103N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019177959
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021052973
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】宇野 正行
(72)【発明者】
【氏名】中村 達彦
(72)【発明者】
【氏名】村井 隆男
(72)【発明者】
【氏名】平川 功
(72)【発明者】
【氏名】上田 真也
(72)【発明者】
【氏名】源 忠孝
(72)【発明者】
【氏名】松林 一之
(72)【発明者】
【氏名】東 幸靖
【審査官】宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-119419(JP,A)
【文献】中国実用新案第208709339(CN,U)
【文献】特開平11-244159(JP,A)
【文献】特開2018-198868(JP,A)
【文献】実開昭63-199714(JP,U)
【文献】実開昭58-058437(JP,U)
【文献】特開2018-117989(JP,A)
【文献】特開平11-239538(JP,A)
【文献】特開2013-223705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-36/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内鍋と、
前記内鍋に蓋をする蓋体と、
前記蓋体が前記内鍋に蓋をしたときに、当該内鍋内を回転して内容物を撹拌する回転体と、
を備え、
前記回転体は、前記蓋体に着脱自在に設けられ、当該回転体の回転中心は、前記内鍋の底面における中心からずれており、
前記回転体には、前記蓋体への取付け位置を示す目印が設けられ
前記蓋体は、前記回転体を回転させるためのモータの駆動軸を有し、前記回転体は、前記駆動軸が挿入される取付け部を有し、
前記回転体は、前記蓋体に沿うように取り付けられ、側面に撹拌アームを備える筐体部を有し、前記筐体部の前記蓋体側の面における前記筐体部の中心からずれた位置に前記取付け部が位置し、前記筐体部における、前記蓋体が前記内鍋に蓋をしたときに前記内鍋の前記底面に対向する面に前記目印が設けられ、前記目印は前記取付け部の位置を示していることを特徴とする調理器。
【請求項2】
記取付け部には、前記駆動軸の挿入方向に切り欠いた溝が形成され、
前記駆動軸には、前記取付け部に挿入したときに、前記溝に嵌合する突起部が形成され、
前記目印は、前記取付け部の溝の位置を示す位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記取付け部には、前記駆動軸の突起部が前記溝に嵌合したときに、当該駆動軸が当該取付け部に対する挿入方向とは逆方向に移動しないように係止する係止部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の調理器。
【請求項4】
前記係止部は、前記取付け部に形成された溝の一部を覆うように設けられ、当該取付け部に対する駆動軸の挿入方向に直交する方向に付勢力を有するバネであり、
前記取付け部には、前記バネが当該取付け部の周囲を回転しないように回転止めが形成されていることを特徴とする請求項3に記載の調理器。
【請求項5】
内鍋と、
前記内鍋に蓋をする蓋体と、
前記蓋体が前記内鍋に蓋をしたときに、当該内鍋内を回転して内容物を撹拌する回転体と、
を備え、
前記回転体は、前記蓋体に着脱自在に設けられ、当該回転体の回転中心は、前記内鍋の底面における中心からずれており、
前記回転体には、前記蓋体への取付け位置を示す目印が設けられ
前記蓋体は、前記内鍋に直接蓋をする内蓋を備え、
前記回転体は、前記内蓋に取付けられる筐体部を備え、
前記筐体部における中心と、前記内蓋の中心とが一致する位置に、当該筐体部が当該内蓋に取付けられていることを特徴とする調理器。
【請求項6】
前記回転体は、当該回転体に対して自重により回動する撹拌アームを有していることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の調理器。
【請求項7】
前記撹拌アームは、前記蓋体の前記内鍋に対向する面に沿った第1位置から、垂直な第2位置まで回動するように、回動範囲が設定されていることを特徴とする請求項6に記載の調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を撹拌しながら調理する調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、内鍋の内部に収容した食材を例えばヒータにて加熱して調理する加熱調理器が提案されている。この種の加熱調理器は、調理器本体と蓋体とを備え、調理器本体が内鍋を有し、蓋体が内蓋および外蓋を有している。内鍋は、調理器本体に対して蓋体を閉じることにより、内蓋によって蓋をされる。
【0003】
特許文献1に記載の加熱調理器は、内鍋の内部の食材を撹拌しながら加熱することができる加熱調理器である。撹拌に用いられる撹拌装置は、例えば内蓋の表面側(蓋を閉じたときに内鍋に対向する面)に設けられ、回転体および2本の撹拌アームを有する。この2本の撹拌アームが回転体から下方へ延びた状態となり、撹拌装置自体を回転させることによって、当該2本の撹拌アームが回転して内鍋の内部の食材を撹拌するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-223705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような従来技術では、撹拌アームを2本備えているが、内鍋内を撹拌するという目的であれば、撹拌アームは1本であってよい。このように、撹拌アームが1本であれば、撹拌装置自体を小型にできるため、調理器全体の小型化を図ることができるというメリットがある。
【0006】
しかしながら、従来の撹拌装置は、2本の撹拌アームが回転体の回転中心に対して対角上に設けられている。さらに、回転体の回転中心は、内鍋の底面の中心に一致している。このため、内鍋の水平断面形状が円形であれば、2本の撹拌アームが内鍋内で回転する位置は、常に内鍋の側面から同じ距離に位置することになる。つまり、2本の撹拌アームは、内鍋の側面から同じ距離の位置を回転することになる。このため、2本の撹拌アームは常に内鍋内の同じ位置を回転し、撹拌することになる。撹拌アーム1本の場合も2本の場合と同様に、常に内鍋内の同じ位置を回転し、撹拌することになる。
【0007】
従って、従来の撹拌装置では、内鍋内の食材を十分に撹拌するには、時間を要する。つまり、効率良く内鍋内の食材を撹拌することができないという問題が生じる。
【0008】
そこで、回転体の回転中心を、内鍋の底面における中心からずらすことで、内鍋内の食材を効率良く撹拌することが考えられる。しかしながら、回転体の回転中心が、内鍋の底面における中心からずれている、所謂、偏心した回転体の場合、回転体の蓋体への取付け位置は、蓋体の中心からずれた位置となる。このため、偏心した回転体の蓋体への取付けは簡単に行えないという問題が生じる。
【0009】
本発明の一態様は、偏心した回転体であっても、蓋体への取付けを容易に行える調理器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る調理器は、内鍋と、前記内鍋に蓋をする蓋体と、前記蓋体が前記内鍋に蓋をしたときに、当該内鍋内を回転して内容物を撹拌する回転体と、を備え、前記回転体は、前記蓋体に着脱自在に設けられ、当該回転体の回転中心は、前記内鍋の底面における中心からずれており、前記回転体には、前記蓋体への取付け位置を示す目印が設けられ、前記蓋体は、前記回転体を回転させるためのモータの駆動軸を有し、前記回転体は、前記駆動軸が挿入される取付け部を有し、前記回転体は、前記蓋体に沿うように取り付けられ、側面に撹拌アームを備える筐体部を有し、前記筐体部の前記蓋体側の面における前記筐体部の中心からずれた位置に前記取付け部が位置し、前記筐体部における、前記蓋体が前記内鍋に蓋をしたときに前記内鍋の前記底面に対向する面に前記目印が設けられ、前記目印は前記取付け部の位置を示している
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る調理器は、内鍋と、前記内鍋に蓋をする蓋体と、前記蓋体が前記内鍋に蓋をしたときに、当該内鍋内を回転して内容物を撹拌する回転体と、を備え、前記回転体は、前記蓋体に着脱自在に設けられ、当該回転体の回転中心は、前記内鍋の底面における中心からずれており、前記回転体には、前記蓋体への取付け位置を示す目印が設けられ、前記蓋体は、前記内鍋に直接蓋をする内蓋を備え、前記回転体は、前記内蓋に取付けられる筐体部を備え、前記筐体部における中心と、前記内蓋の中心とが一致する位置に、当該筐体部が当該内蓋に取付けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、偏心した回転体であっても、蓋体への取付けを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係る加熱調理器の斜視図である。
図2図1に示す加熱調理器の蓋体と撹拌装置との取付け関係を示す斜視図である。
図3図1に示す加熱調理器が備える撹拌装置の斜視図である。
図4図3に示す撹拌装置の別の角度から見たときの斜視図である。
図5図3に示す撹拌装置の別の角度から見たときの斜視図である。
図6図3に示す撹拌装置の接続部に駆動軸が挿入された状態を示す概略断面図である。
図7図1に示す加熱調理器において蓋が閉じた状態を真上から見た平面図である。
図8図7に示す加熱調理器のAA線矢視断面図である。
図9図1に示す加熱調理器において蓋が開いた状態を真上から見た平面図である。
図10図9に示す加熱調理器のBB線矢視断面図である。
図11図1に示す加熱調理器の内鍋の中心と、図9に示す撹拌装置の回転中心との関係を説明するための図である。
図12図11に示す内鍋のCC線矢視断面図である。
図13図3に示す撹拌装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態を図面に基づいて以下に説明する。なお、本実施形態では、本発明の調理器の例として加熱調理器について説明する。図1は、本実施形態の加熱調理器を示す斜視図である。
【0014】
(加熱調理器101の構造)
図1に示すように、加熱調理器101は、調理器本体部(筐体)11と蓋体12とを備えている。調理器本体部11と蓋体12とは後部の回転支持部13によって連結されている。したがって、蓋体12は回転支持部13を中心として回転し、調理器本体部11に対して開閉自在となっている。
【0015】
調理器本体部11は内鍋(食材収容部)14を有し、内鍋14は、調理器本体部11の内部の凹部に出し入れ自在に収納されている。
【0016】
蓋体12は、外蓋15と内蓋16とを有する。外蓋15は、蓋体12の筐体部となっており、主として樹脂にて形成されている。内蓋16は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属材料により円板状に形成され、蓋体12を閉じたときに、内鍋14の蓋となり、内鍋14の上面を塞ぐようになっている。内蓋16は、外蓋15の内面に設けられ、例えば外周部分を外蓋15に嵌合させることにより、外蓋15に対して着脱自在となっている。内蓋16の表面(内鍋14を内蓋16で蓋をしたときに当該内鍋14に対向する面)16aには、内鍋14に収容された食材を撹拌するための1本の撹拌アーム22を有する撹拌装置(回転体)21が設けられている。撹拌装置21の詳細について以下に説明する。
【0017】
(撹拌装置21の構成)
図2は、撹拌装置21を蓋体12から取り外した状態を示す斜視図である。図3は、撹拌装置21の表面21aから見た斜視図、図4は、撹拌装置21の裏面21bから見た斜視図である。
【0018】
撹拌装置21は、図2に示すように、裏面21bに後述する駆動モータ31の駆動軸32が接続される接続部24が設けられている。接続部24は、撹拌装置21の裏面21bの一端部に設けられており、先端部に切込み(溝)24aが形成され、駆動軸32の突起部32aと係合するようになっている。これにより、駆動モータ31の駆動力が駆動軸32を伝わり、当該駆動軸32に係合状態で接続している接続部24に伝わり、当該接続部24を中心に撹拌装置21自体が回転する。
【0019】
また、撹拌装置21が備える撹拌アーム22は、一端部が接続部24の形成位置から離れた側面21cで軸支され、回動自在となっている。なお、撹拌アーム22は、自重により回動するようになっている。つまり、撹拌アーム22は、図3に示すように、撹拌装置21の表面21aが上を向いている間は回動せず、図4に示すように、撹拌装置21の裏面21bが上を向いている間は下側に回動する。このように、撹拌アーム22が自重により回動する構成となっているため、撹拌装置21内には、撹拌アーム22を駆動するためのモータやモータの駆動力を伝達するためのギヤ等は設けられていない。
【0020】
従って、撹拌装置21の軽量化、且つ小型化を実現することができるため、撹拌装置21を備えた加熱調理器101の小型化を図ることができる。
【0021】
ここで、撹拌装置21の表面21aには、図2および図3に示すように、蓋体12への取付け位置を示す目印25が設けられている。この目印25は、撹拌装置21の表面21aよりも窪んだ凹部形状であり、撹拌装置21の裏面21bに形成された接続部(取付け部)24の形成位置に対向する位置に形成されている。つまり、目印25は、撹拌装置21の裏面21bに形成された接続部24の位置を示している。この目印25を駆動軸32に向かうように撹拌装置21を移動させれば、当該撹拌装置21の裏面21bの接続部24を見なくても、駆動軸32を当該接続部24に容易に挿入させることが可能となる。
【0022】
なお、本実施形態では、目印25を撹拌装置21の表面21aよりも窪んだ凹部形状としている。しかしながら、目印25は、表面21aよりも突出した凸部形状、表面21aよりも表面を粗くした形状でもよく、ユーザが目印25として認識できる形状であればどのような形状であってもよい。
【0023】
また、目印25は、撹拌装置21の接続部24に形成された切込み24aの位置を示す位置に設けられていることが好ましい。この場合、ユーザは、この目印25によって撹拌装置21の取付け部である接続部24の切込み24aを駆動軸32の突起部32aに容易に合わせることができる。従って、撹拌装置21を蓋体12に容易に取付けることができる。
【0024】
また、撹拌装置21は、調理が終了すると、所定の位置で止まるように回転制御されている。つまり、駆動軸32の突起部32aの位置が常に同じ位置になる。これにより、撹拌装置21を着脱した後、当該撹拌装置21を再度装着する際に、目印25を頼りにすれば、容易に接続部24の切込み24aに駆動軸32の突起部32aを挿入させることができる。
【0025】
(撹拌装置21の着脱機構)
撹拌装置21の蓋体12への着脱機構について、図4図6を参照しながら以下に説明する。図4は、撹拌装置21の裏面21bから見た斜視図である。図5は、撹拌装置21の接続部24と駆動軸32との関係を示す斜視図である。図6は、撹拌装置21の接続部24に駆動軸32を挿入した状態を示す断面図である。
【0026】
撹拌装置21の接続部24は、図4に示すように、略円筒状であり、先端部に一巻きのバネ26と、バネ26の回転を止める回転止め27とが設けられている。バネ26は、切込み24aの一部を覆うようになっている。また、バネ26は、接続部24に対する駆動軸32の挿入方向に直交 する方向に付勢力を有する。従って、図5に示すように、撹拌装置21の接続部24に駆動軸32を挿入する際、駆動軸32の突起部32aが切込み24aに嵌合しながら、バネ26の付勢力に抗して当該駆動軸32が所定位置に到達すると、バネ26の付勢力がなくなるようになっている。そして、図6に示すように、駆動軸32が所定位置に到達すると、今度は、バネ26によって、駆動軸32の突起部32aが係止され、当該駆動軸32が接続部24から外れないようになっている。つまり、接続部24に設けられたバネ26は、駆動軸32の突起部32aが切込み24aに嵌合したときに、当該駆動軸32が当該接続部24に対する挿入方向とは逆方向に移動しないように係止する係止部として機能する。
【0027】
回転止め27は、接続部24における切込み24aの形成位置とは反対側に設けられている。これにより、バネ26が、接続部24における切込み24aに挿入される駆動軸32の突起部32aによって押し上げられた場合、切込み24aを中心とした両側の付勢力がほぼ同じになる。このため、駆動軸32の突起部32aに対する付勢力が、切込み24aの両側で同じになるため、駆動軸32の接続部24への挿入および取り出しを容易に行うことが可能となる。
【0028】
また、バネ26の巻きは、1巻きに限定されるものではなく、1.5巻き、2巻き等であってもよい。バネ26の付勢力が駆動軸32の突起部32aに対して適切に作用すれば、バネ26の巻き数は限定されない。
【0029】
(撹拌アーム22の動作)
図7は、加熱調理器101の蓋体12を閉めた状態を示す平面図であり、図8は、図7に示す加熱調理器101のAA線矢視断面図である。図9は、加熱調理器101の蓋体12を開いた状態を示す平面図であり、図10は、図9に示す加熱調理器101のBB線矢視断面図である。
【0030】
撹拌アーム22は、自重によって、図9および図10に示すように、蓋体12が開いている場合には、内蓋16の表面16a側に回動し、また、図7および図8に示すように、蓋体12が閉じている場合には、内鍋14側に回動する。但し、撹拌アーム22は、内鍋14側の回動は規制されている。ここでは、撹拌アーム22は、内鍋14の中心X線上に位置するまで回動すると、その先に回動しないように規制されている。規制手段としては、支持軸23に突起(図示せず)を設けて、撹拌アーム22が所定の位置まで回動したときに、当該支持軸23の突起が撹拌装置21内に設けられた係合部(図示せず)に係合することで、当該撹拌アーム22の回転を規制する。すなわち、撹拌アーム22は、蓋体12の内蓋16の表面16aに沿った第1位置から、当該第1位置とは異なる第2位置まで回動するように、回動範囲が設定されている。第1位置から、当該第1位置とは異なる第2位置までの回動範囲とは、例えば図8に示すように、矢印で示した範囲となる。すなわち、撹拌アーム22の長手方向が、内蓋16の表面16aに沿った位置(第1位置)から内鍋14の底面14aに対してほぼ垂直な位置(第2位置)になるまでの範囲が当該撹拌アーム22の回動範囲となる。
【0031】
従って、撹拌装置21の撹拌アーム22は、自重によって、蓋体12が内鍋14に蓋をしたときに当該内鍋14の内容物を撹拌可能な状態となり、蓋体12が内鍋14を開放したときに当該内鍋14から完全に離脱した状態となる。これにより、撹拌アーム22は、撹拌時には確実に内鍋14内の内容物を撹拌し、内鍋14の開放時には、当該内鍋14から内容物を取り出す際の邪魔にならないようにできる。
【0032】
(撹拌装置21の回転)
撹拌装置21は、図8に示すように、蓋体12が閉じた状態のとき、接続部24に接続された駆動軸32の中心を通る線Yを回転中心として回転する。撹拌装置21は、内鍋14内の撹拌位置にある撹拌アーム22が内蓋16側に回動しない方向に回転するようになっている。これにより、撹拌アーム22によって内鍋14内の食材を撹拌することができる。
【0033】
また、撹拌装置21による内鍋14内の撹拌後の、当該撹拌装置21の回転停止位置は、蓋体12を開けたときに、図10に示すように、内蓋16の表面16aに撹拌アーム22が自重により回動できる位置に設定されている。具体的には、加熱調理器101は、蓋体12が内鍋14を開放する際に、撹拌アーム22が撹拌装置21の回転面(表面21a)側に回動するように、当該撹拌装置21を所定の位置で停止させる停止部材を有している。つまり、撹拌装置21は、予め設定された位置で停止するように停止部材によって駆動制御されている。このように、撹拌装置21を所定の位置で停止させるには、例えばステッピングモータ等の回転角を特定できるモータで撹拌装置21を回転させることで実現できる。ここでは、撹拌装置21に設けられた接続部24の予め設定された位置に形成された切り欠き24aに、挿入された駆動軸32に形成された突起部(図示せず)が係合することで、常に撹拌装置21の取付け位置を同じに位置にすることが可能となる。また、他の方法としては、撹拌装置21の接続部24の断面形状をD型にして、駆動モータ31の軸32の断面形状をD型にすることで、当該撹拌装置21を内蓋16に装着する際に常に同じ位置に装着できるようにすることでも実現できる。
【0034】
なお、撹拌アーム22の長さは、撹拌装置21が所定の位置に停止した状態で、蓋体12を開放させて、撹拌アーム22を回動させた場合に、当該撹拌アーム22が内鍋14に接触しない長さに設定されている。
【0035】
(撹拌装置21の回転中心)
図11は、内鍋14の中心Xと撹拌装置21の回転中心Yとの関係を示す図である。図12は、図12に示す内鍋14のCC線矢視断面図である。
【0036】
図11および図12に示すように、撹拌装置21の回転中心Yは、内鍋14の中心Xからずれた位置に設定されている。これにより、撹拌装置21が回転すると、撹拌アーム22と内鍋14との距離が均等でなくなるので、撹拌される食材は狭い領域から広い領域、広い領域から狭い領域に移動することになる。このように、撹拌装置21の回転中心Yを内鍋14の中心Xからずらすことで、内鍋14内の撹拌物に対して抵抗を生じさせ、抵抗を無くすということを繰り返し行うことができる。従って、内鍋14内の撹拌物を適切に、且つ効率よく撹拌することができる。
【0037】
通常、駆動軸32は、内蓋16の中心から突出しているため、このように偏心した撹拌装置21をそのまま内蓋16に取付ければ、撹拌装置21における筐体部の中心が、内蓋16の中心からずれてしまう。なお、筐体部は、内蓋16に対して接続部24を介して取付けられる部分であって、撹拌アーム22は含まない部分を示す。従って、このような場合、ユーザは、撹拌装置21が内蓋16の適切な位置に取付けられていないではないかと感じてしまう。そこで、撹拌装置21を、当該撹拌装置21の筐体部における中心と、前記内蓋16の中心とが一致するように、当該内蓋16に取付けるように、当該撹拌装置21の取付け位置を設定すればよい。この場合、ユーザに対して、撹拌装置21が内蓋16の適切な位置に取付けられていると感じさせることができる。
【0038】
(撹拌装置21の隙間)
ところで、撹拌装置21は、図13に示すように、筐体内が空洞になっている。このため、撹拌装置21を液体が満たされた内鍋14内に落とした場合、筐体内の空洞に円筒状の接続部24から液体が浸入する恐れがある。そこで、撹拌装置21の筐体内において、接続部24に対向する表面21a側の全周に、筐体内に浸入した液体を排出するための隙間21dが形成されている。従って、撹拌装置21内に浸入した液体を、接続部24だけでなく、隙間21dからも排出することができる。これにより、撹拌装置21の清掃時に、当該撹拌装置21内に水が浸入しても、隙間21dから容易に排出させることができる。
【0039】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る調理器は、内鍋14と、前記内鍋14に蓋をする蓋体12と、前記蓋体12が前記内鍋14に蓋をしたときに、当該内鍋14内を回転して内容物を撹拌する回転体(撹拌装置21)と、を備え、前記回転体(撹拌装置21)は、前記蓋体12に着脱自在に設けられ、当該回転体(撹拌装置21)の回転中心Yは、前記内鍋14の底面14aにおける中心Zからずれており、前記回転体(撹拌装置21)には、前記蓋体12への取付け位置を示す目印25が設けられている。
【0040】
通常、回転体の回転中心が、内鍋の底面における中心からずれている、所謂偏心した回転体の場合、蓋体への取付け位置は、蓋体の中心からずれた位置となる。このため、偏心した回転体の蓋体への取付けは簡単に行えなかった。
【0041】
しかしながら、上記構成によれば、回転体には、蓋体への取付け位置を示す目印が設けられているため、偏心した回転体のように、蓋体への取付け位置が当該蓋体の中心からずれた位置にあっても、回転体を蓋体に容易に取付けることが可能となる。この目印としては、窪み部、突起部等、回転体を取付けるユーザが目印として認識できるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0042】
本発明の態様2に係る調理器は、上記態様1において、前記蓋体12は、前記回転体(撹拌装置21)を回転させるためのモータ(駆動モータ31)の回転軸に連結された駆動軸32を有し、前記回転体(撹拌装置21)は、前記駆動軸32が挿入される取付け部(接続部24)を有し、前記取付け部(接続部24)には、前記駆動軸32の挿入方向に切り欠いた溝24aが形成され、前記駆動軸32には、前記取付け部(接続部24)に挿入したときに、前記溝24aに嵌合する突起部32aが形成され、前記目印25は、前記取付け部(接続部24)の溝24aの位置を示す位置に設けられていてもよい。
【0043】
上記の構成によれば、目印が取付け部の溝の位置を示す位置に設けられていることで、ユーザは、この目印によって取付け部の溝を駆動軸の突起部に容易に合わせることができる。従って、回転体を蓋体に容易に取付けることができる。
【0044】
本発明の態様3に係る調理器は、上記態様2において、前記取付け部(接続部24)には、前記駆動軸32の突起部32aが前記溝24aに嵌合したときに、当該駆動軸32が当該取付け部(接続部24)に対する挿入方向とは逆方向に移動しないように係止する係止部(バネ26)が設けられていてもよい。
【0045】
上記構成によれば、取付け部に、駆動軸の突起部が前記溝に嵌合したときに、当該駆動軸が当該取付け卯部に対する挿入方向とは逆方向に移動しないように係止する係止部が設けられていることで、回転体が蓋体から容易に外れないようにできる。
【0046】
本発明の態様4に係る調理器は、上記態様3において、前記係止部(バネ26)は、前記取付け部(接続部24)に形成された溝24aの一部を覆うように設けられ、当該取付け部(接続部24)に対する駆動軸32の挿入方向に直交する方向に付勢力を有するバネであり、前記取付け部(接続部24)には、前記バネ26が当該取付け部(接続部24)の周囲を回転しないように回転止め27が形成されていてもよい。
【0047】
上記構成によれば、取付け部に挿入される駆動軸は、当該駆動軸の突起部が前記溝に嵌合する際に、当該溝の一部を覆うバネの付勢力に抗して移動し、当該バネにより係止される。また、駆動軸を取付け部から取り外すときには、当該駆動軸の突起部が係止部であるバネの付勢力を抗して移動することになる。しかも、バネは取付け部の回転止めにより当該取付け部の周囲を回転しないので、バネの付勢力は当該取付け部の周囲で変更されないため、回転体の蓋体への着脱の力を安定させることが可能となる。
【0048】
本発明の態様5に係る調理器は、上記態様1~4の何れか1態様において、前記蓋体12は、前記内鍋14に直接蓋をする内蓋16を備え、前記回転体(撹拌装置21)は、当該回転体(撹拌装置21)の中心と、前記内蓋16の中心とが一致する位置に取付けられていてもよい。
【0049】
一般に、偏心した回転体を蓋体にそのまま取付けると、蓋体の内蓋の中心からずれる。このような場合、ユーザは、蓋体を開けたときに回転体が内蓋の中心にないため、違和感を憶える。つまり、回転体が蓋体にきちんと取付けられてないのではないかとユーザは感じてしまう。
【0050】
しかしながら、上記構成によれば、蓋体を開けたときに、回転体が内蓋の中心に設けられていることになるため、ユーザにとって回転体の取付け位置に違和感を憶えることがない。つまり、ユーザが、回転体が蓋体にきちんと取付けられていると感じ、安心する。
【0051】
本発明の態様6に係る調理器は、上記態様1~5の何れか1態様において、前記回転体(撹拌装置21)は、当該回転体(撹拌装置21)に対して自重により回動する撹拌アーム22を有していてもよい。
【0052】
上記構成によれば、撹拌アームを回動させるための機構を設ける必要がないので、回転体の構成を軽量、且つ小型にできる。これにより、撹拌装置を備えた調理器の小型化を図ることができる。
【0053】
本発明の態様7に係る調理器は、上記態様6において、前記撹拌アーム22は、前記蓋体12の前記内鍋14に対向する面に沿った第1位置から、垂直な第2位置まで回動するように、回動範囲が設定されていてもよい。
【0054】
上記構成によれば、撹拌アームは、自重によって、蓋体が内鍋に蓋をしたときに当該内鍋の内容物を撹拌可能な状態(第2位置)となり、蓋体が内鍋を開放したときに当該内鍋から完全に離脱した状態(第1位置)となる。つまり、撹拌アームは、撹拌時には蓋体の内鍋に対向する面に垂直な第2位置にあるので、確実に内鍋内の内容物を撹拌し、内鍋の開放時には、蓋体の内鍋に対向する面に沿った第1位置にあるので、当該内鍋から内容物を取り出す際の邪魔にならないようにできる。
【0055】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0056】
11 調理器本体部
12 蓋体
13 回転支持部
14 内鍋
14a 底面
15 外蓋
16 内蓋
16a 表面
21 撹拌装置(回転体)
21a 表面
21b 裏面
21c 側面
21d 隙間
22 撹拌アーム
23 支持軸
24 接続部(取付け部)
25 目印
26 バネ(係止部)
31 駆動モータ
32 駆動軸
32a 突起部
101 加熱調理器
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