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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】二軸配向ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20230711BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230711BHJP
   C08J 7/044 20200101ALI20230711BHJP
【FI】
B32B27/36
C08J5/18 CFD
C08J7/044
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018176917
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2019065271
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2017188106
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横山 希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 維允
(72)【発明者】
【氏名】東大路 卓司
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-002303(JP,A)
【文献】特開平11-262989(JP,A)
【文献】特開2001-341265(JP,A)
【文献】特開2002-155152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22、
7/04-7/06
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層以上の層構成を有する二軸配向ポリエステルフィルムであって、ポリエステルを主成分とするA層、中間層、B層とがこの順で積層される構成を有し、(1)~(5)の関係を満足する二軸配向ポリエステルフィルム。
(1)前記A層は、粒径が10nm以上250nm以下の粒子が0.58wt%以下添加された層であり、
(2)前記B層は、(i)粒径が300nm以上1000nm以下であり、粒径の異なる2種類の粒子B1のみを0.001wt%以上1wt%以下添加されたか、又は(ii)粒径が300nm以上1000nm以下のB1が0.001wt%以上1wt%以下と、粒径が10nm以上250nm以下の粒子B2が0.01wt%以上0.3wt%以下添加された層である。
(3)前記B層が、帯電防止剤をB層に対し0.5wt%以上2.0wt%未満含有する。
(4)前記B層の表面が、3μm以上4μm未満の波長のスペクトル密度(PSD3)と30μm以上40μm未満の波長のスペクトル密度(PSD30)とが次の関係式を満たす。
5≦(PSD3/PSD30)×100≦15
(5)前記ポリエステルフィルムのフィルムヘイズが1.0%以下である。
【請求項2】
PSD3とPSD30とが以下の関係を満足する、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
5≦(PSD3/PSD30)×100≦10
【請求項3】
少なくとも片面の算術平均表面粗さSRaが4nm以上10nm以下である、請求項1または2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
一方の最外層の表面と、もう一方の最外層の表面との静摩擦係数が0.1以上0.5以下である、請求項1~3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
少なくとも片面の表面比抵抗値が1.0×1012Ω/□以下である、請求項1~4のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記A層の表面上にレジスト層を積層して用いる、請求項1~5のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項7】
共押出し法により溶融製膜して得ることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、滑り性、加工性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレート(以下PETと略すことがある)や、ポリエチレン2,6-ナフタレンジカルボキシレート(以下PENを略すことがある)などは機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。そのポリエステルをフィルム化したポリエステルフィルム、中でも二軸配向ポリエステルフィルムは、その優れた機械的特性、電気的特性などから、太陽電池バックシート、ハイブリッド車などに使用されるカーエアコン用モーターや駆動モーター用などの電気絶縁材料、他素材と積層して工程中に用いる基材や離型用フィルムなどの工程用紙の用途や、磁気記録材料、コンデンサ用材料、包装材料、建築材料などの各種工業材料、また優れた透明性を活かし、フレキシブルディスプレイや有機ELなどの透明電極基板といった光学材料として使用されている。
【0003】
近年、プリント配線基板、半導体パッケージ、フレキシブル基板などの製造に、ポリエステルフィルムを基材として用いるドライフィルムレジスト(DFR)が多く用いられている。DFRで用いられるポリエステルフィルムにはレジスト層との加工のしやすさ、例えばポリエステルフィルムの巻だしやすさや滑りのよさ、フィルムの削れ物などの付着異物や転写痕の低減、また形成する回路に欠点を生じさせないために、フィルム表面の平滑性や露光時に光線を邪魔無く透過できる高い光線透過性などが要求される。
【0004】
とくに、近年、OA機器、IT機器など小型化、軽量化などに伴い高解像度化の要求が高まっており、易滑性や帯電防止性などの加工特性に優れ、ヘイズが低く、高解像度を達成できるドライフィルムレジスト支持体用ポリエステルフィルが要求されている。
【0005】
特許文献1では、磁気記録媒体の高密度化、高容量化のため表面の平坦性と易滑性の両立が検討されている。また特許文献2では、表面の平滑性と巻き取り性を両立させる検討がされている。さらにフィルム表面のうねりを制御することで表面の微少な欠点を軽減する検討がこれまでなされている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第392008号公報
【文献】特開2004-299057号公報
【文献】特開2012-153099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これら前記の提案では透過性やヘイズの要求を満足することは難しく、易滑性や加工工程で生じる付着異物、転写痕やすり傷などに関しても高解像度化に伴う品質の要求には満足していない。そのため現像後のレジストのパターニングにゆがみや、抜け、レジストパターン壁面の状態が悪いなどの欠点が十分に解消できず、依然として、高解像度化への品質向上という課題があった。本発明は、掛かる問題を解決し、高解像度化の要求に合致する透明性と易滑性を両立し、転写痕の少ない加工性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題は、以下の二軸配向ポリエステルフィルムによって達成可能である。
3層以上の層構成を有する二軸配向ポリエステルフィルムであって、ポリエステルを主成分とするA層、中間層、B層とがこの順で積層される構成を有し、(1)~(5)の関係を満足する二軸配向ポリエステルフィルム。
(1)前記A層は、粒径が10nm以上250nm以下の粒子が0.58wt%以下添加された層であり、
(2)前記B層は、(i)粒径が300nm以上1000nm以下であり、粒径の異なる2種類の粒子B1のみを0.001wt%以上1wt%以下添加されたか、又は(ii)粒径が300nm以上1000nm以下のB1が0.001wt%以上1wt%以下と、粒径が10nm以上250nm以下の粒子B2が0.01wt%以上0.3wt%以下添加された層である。
(3)前記B層が、帯電防止剤をB層に対し0.5wt%以上2.0wt%未満含有する。
【0009】
(4)前記B層の表面が、3μm以上4μm未満の波長のスペクトル密度(PSD3)と30μm以上40μm未満の波長のスペクトル密度(PSD30)とが次の関係式を満たす。
5≦(PSD3/PSD30)×100≦15
(5)前記ポリエステルフィルムのフィルムヘイズが1.0%以下である
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、高い透明性と易滑性を両立し、転写痕やすり傷の少ない加工性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に具体例を挙げつつ、本発明について詳細に説明する。
【0012】
発明にかかる二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂を主成分とする。3層以上の層構成を有していることが好ましいが、詳細については後述する。
【0013】
本発明において、ポリエステル樹脂を主成分とするとは、少なくとも70モル%以上が、ジカルボン酸とジオール、およびそれらのエステル形成性誘導体を構成成分とする単量体または低重合体からの重合により得られるポリエステルである。本発明では、ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸を用いることが好ましい。
【0014】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、などが好ましく、特にテレフタル酸が好ましい。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、イソフタル酸など他の芳香族ジカルボン酸、あるいは脂肪酸を一部共重合してもよい。
【0015】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、などを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0016】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルとして、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体等を挙げることができ、とくに、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0017】
本発明に使用するポリエステルは、従来から知られている方法で製造することができる。例えば、酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させた後、この反応の生成物を減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去しつつ重縮合させることによって製造する方法や、酸成分としてジアルキルエステルを用い、これとジオール成分とでエステル交換反応させた後、上記と同様に重縮合させることによって製造する方法などが採用できる。この際、必要に応じて、反応触媒として従来公知のアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物などを用いることもできる。
【0018】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくとも片面の、3μm以上4μm未満の波長のスペクトル密度(PSD3)と30μm以上40μm未満の波長のスペクトル密度(PSD30)との割合(PSD3/PSD30)×100の値が5以上15以下であることを特徴としている。スペクトル密度(Power Spectral Density)とは、表面粗さのプロファイルデータをフーリエ変換処理し周波数分析を行い、各波長での強度を表すものである。本願におけるPSDとは、二軸配向ポリエステルフィルム表面のうねりを判断する指標となり、上記式の値を5以上15以下に制御することによりヘイズと滑り性を両立する高品位な二軸配向ポリエステルフィルムとなる。
【0019】
本発明におけるPSD3は、原子力顕微鏡(以下AFM)を用いてフィルム表面の3μm以上4μm未満の波長の強度の平均値を求める。また本発明でいうPSD30とは前述した測定により算出したフィルム表面の30μm以上40μm未満の波長の強度の平均値のことである。(PSD3/PSD30)×100の値は例えばフィルムの最外層の少なくとも片面に添加する粒子を後述する範囲とすることで制御することができる。
【0020】
(PSD3/PSD30)×100の値が小さい場合、波長の大きなうねりがフィルム表面に多く存在しており、(PSD3/PSD30)×100の値が大きい場合、波長の小さなうねりがフィルム表面に多く存在していることを表している。ポリエステルフィルムに粒子を添加する場合、粒子の周囲をポリエステルが被覆することから、PSD3は、ポリエステルフィルムの表層付近に存在する、後述する粒子(B2)の粒子径や添加濃度による寄与が大きく、PSD30は、後述する粒子(B1)の粒子径や添加濃度に影響をうけると考えられるため、B1とB2の添加量で制御することができる。
【0021】
また、後述する帯電防止剤やワックスを添加することで制御することも好ましい実施形態である。
【0022】
(PSD3/PSD30)×100の値が15を超える場合、フィルム表面に細かい突起が多く、光を散乱させる結果、ヘイズの悪化やそれに伴うレジスト阻害によりパターニングでの不具合(ゆがみ、欠け、抜け)が生じやすくなり、またフィルム表面に小さなうねりばかり存在することになり、フィルム同士の密着性が上がり滑り性悪化を起こす可能性がある。また(PSD3/PSD30)×100の値が5を下回る場合、大きなうねりが存在するため、フィルム同士のブロッキングが発生し滑り性が悪化したり、ロール状に巻き取る際に他の層への転写痕が生じやすく、その結果レジスト阻害によりパターニングでの不具合(ゆがみ、欠け、抜け)を引き起こす場合がある。より好ましくは(PSD3/PSD30)×100の値は5以上10以下である。
【0023】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面が上記(PSD3/PSD30)×100の値を満たしている場合、もう片方の最外層も(PSD3/PSD30)×100の値を満たしてもよいが、その場合、その面については(PSD3/PSD30)×100の値が15を超えると、ヘイズの悪化や、露光時の粒子に起因する不具合(ゆがみ、欠け、抜け)が生じる場合がある。
【0024】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは3層以上の層構成を有していることが好ましい。このうち3層の層構成を有するフィルムとしては、A層/C(中間層)/B層からなるものが特に好ましい。4層以上の積層構造を有するフィルムとしては、中間層がさらに2層以上の層構成を有するものが挙げられる。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、上記の層構成を実現する手段として、共押出し法により溶融製膜する方法が好ましい。また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは前述した3層以上や4層以上の層構成とは別にA層表面、B層表面のいずれか片面もしくは両面に塗布層(D層)を有していてもよい。
【0025】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくとも片面にレジスト層を積層すると、ドライフィルムレジストの基材用フィルムとして好適に使用できる。片方の層(A層)にレジスト層を設ける場合、少なくとも片方の面の(PSD3/PSD30)×100の値を上述の範囲とすることが好ましく、高精細なレジストパターンを形成するためには、もう片方の面(B層)も(PSD3/PSD30)×100の値を上記範囲とすることがより好ましい。B層の(PSD3/PSD30)×100の値が上記範囲を満たす場合、レジスト層を設けるA層は、露光時の粒子に起因する不具合(ゆがみ、欠け、抜け)を低減するために、無粒子でも良く、また耐傷つき性を向上させるため、少量の粒子を添加してもよい。A層に添加する粒子は、ヘイズ低減の観点から10nm~250nm粒径の粒子が好ましい。
【0026】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの表面を構成する層に含有する粒子としては、有機、無機の粒子を用いることができるが、有機粒子であれば、有機化合物であるポリエステルと親和性が高く、添加した場合に粒子周囲に空隙ができにくいため好ましく、無機粒子であればポリエステルよりも硬度が高く、フィルム搬送中に金属ロールなどでフィルム表面にキズが入るのを防げるため好ましい。有機系としては、例えば、ポリイミド系樹脂、オレフィンあるいは変性オレフィン系樹脂、架橋ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂などを、無機系としては、例えば、酸化珪素、炭酸カルシウム、凝集アルミナ、珪酸アルミニウム、マイカ、クレー、タルク、硫酸バリウムなどを挙げることができる。
【0027】
また、粒子形状が球状に近く、さらに、ポリエステルとの屈折率の差が少ない方が、フィルム層内を紫外線が通過する際の散乱光を抑制することができ好ましい。具体的な種類としては、例えば無機粒子ではコロイダルシリカ、有機粒子ではアクリル酸類、スチレン系樹脂の粒子が好適である。
【0028】
本発明の粒子の粒径とは、当該粒子の体積基準粒度分布測定を行い、横軸を個々の粒径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたときに得られる粒子の存在比率のチャートの極大値となる粒径のことをいう。
【0029】
本発明において、(PSD3/PSD30)×100の値を上述の範囲とする層に添加する粒子としては、粒径の異なる2種類以上を添加することが好ましい。50nm~1000nm粒径の粒子(B1)はB層を構成する樹脂に対して粒子の固形分濃度として0.001~1wt%添加することが好ましい。より好ましくは50nm~500nm粒径の粒子を0.001~0.1wt%添加することである。また、10nm~250nm粒径の粒子(B2)はB層を構成する樹脂に対して0.01~10wt%添加することが好ましい。より好ましくは50nm~150nmの粒径の粒子を0.1~1wt%添加することである。粒子(B1)、粒子(B2)の粒径や添加濃度が前述した範囲を外れると、(PSD3/30)×100の値を上述の範囲とすることが困難となる場合がある。
【0030】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、前記した粒子とともに、凝集アルミナ粒子を併用することも望ましい形態のひとつである。ここで、凝集アルミナ粒子は、平均一次粒子径が5nm以上30nm未満の粒子が数個から数百個凝集したものを表す。凝集アルミナ粒子の平均一次粒子径は、8nm以上15nm未満であることがより好ましい。当該凝集アルミナ粒子は、無水塩化アルミニウムを原料として火焔加水分解法、あるいはアルコキシドアルミナの加水分解などによって製造されたものが採用できる。凝集アルミナは、結晶型としてδ型、θ型、γ型などが知られているが、とくにδ型アルミナが好適に使用できる。凝集アルミナ粒子を含有せしめることにより、フィルム表面の地肌補強効果が大きく得られ、耐摩耗性が向上し、延伸時のロールとの接触時に発生する凹み欠点を抑制するという効果が得られる。フィルム表面を構成する層の凝集アルミナ粒子の含有量は0.1wt%以上5wt%未満が好ましい。
【0031】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、耐候剤や酸化防止剤、熱安定剤、中和剤、帯電防止剤、ワックスなどの滑剤、さらにはブロッキング防止剤や充填剤、非相溶性ポリマーなどの各種添加剤を含有させることが好ましい実施形態である。特に本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのB層に帯電防止剤やワックスを含有したり、A層表面やB層表面に塗布することが好ましい。
【0032】
帯電防止剤は、例えば、酸化ケイ素膜、導電性の金属化合物、アニリンあるいはその誘導体を構成単位として含むアニリン系高分子、ピロールあるいはその誘導体を構成単位として含むピロール系高分子、アセチレンあるいはその誘導体を構成単位として含むアセチレン系高分子、チオフェンあるいはその誘導体を構成単位として含むチオフェン系高分子等のπ電子共役系導電性高分子や第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1~3級アミノ基のカチオン性官能基を有するカチオン性帯電防止剤、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性官能基を有するアニオン系帯電防止剤、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性帯電防止剤、ポリオール系、ポリグリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性官能基を有する帯電防止剤等の各種高分子型帯電防止剤が挙げられる。
【0033】
さらにアニオン系帯電防止剤は、スルホン酸塩基を有する不飽和単量体(例えば、ビニルスルホン酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウムなど)の1種以上の重合体からなる高分子型帯電防止剤や、アルキルスルホン酸塩(例えば、ペンタンスルホン酸ナトリウム、オクタンスルホン酸ナトリウムなど)、アリールスルホン酸塩(例えば、ベンジルスルホン酸ナトリウム、トルイルスルホン酸ナトリウムなど)、アルキル基を有する芳香族スルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど)の低分子型帯電防止剤などが挙げられる。
【0034】
ワックスは天然ワックス、合成ワックス、それらの配合したワックスの中から選ばれたワックスである。天然ワックスとは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックスである。植物系ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油が挙げられる。動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ロウが挙げられる。鉱物系ワックスとしてはモンタンワックス、オゾケライト、セレシンが挙げられる。石油ワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムが挙げられる。合成ワックスとしては、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、アミン、イミド、エステル、ケトンが挙げられる。合成炭化水素としては、フィッシャー・トロプシュワックス(別名サゾワールワックス)、ポリエチレンワックスが有名であるが、このほかに低分子量の高分子(具体的には粘度数平均分子量500から20,000の高分子)である以下のポリマーも含まれる。すなわち、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックまたはグラフト結合体がある。変性ワックスとしてはモンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体が挙げられる。ここでの誘導体とは、精製、酸化、エステル化、ケン化のいずれかの処理、またはそれらの組み合わせによって得られる化合物である。水素化ワックスとしては硬化ひまし油、および硬化ひまし油誘導体が挙げられる。耐熱性の観点から合成ワックス、特に脂肪酸系ワックスが好ましい。
【0035】
これらの成分は、低分子量体であり、ポリエステルと非相溶であることから、ポリエステルフィルムの表層を構成する層に練り込んだ場合、フィルムの最表層に存在することになる。そのため、フィルムの最表層に存在する該成分が、フィルム表面やフィルム表面の粒子の凹凸を被覆するため、(PSD3/PSD30)×100の値を制御することができる。
【0036】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムをDFR基材などの高精細な用途に使用する場合、(PSD3/PSD30)×100の値を制御することに加え、フィルムへの埃などの付着を抑制することもできるため、耐電防止剤を含有させることが特に好ましい。
【0037】
上記帯電防止剤やワックスは、押出機中でポリエステル層に練り込まれても、A層表面やB層表面へバインダー樹脂とともに塗布によりD層を設けてもよい。塗布手法としては、種々の方法を適用することができ、例えば、ロールコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法およびグラビアロールコーティング法等や、これらを組み合わせた方法を利用することができる。中でも塗剤の選択幅が広い観点からはバーコーティング法が好ましく、一方で塗布厚みを大きくしたい場合は厚膜塗布性の観点からダイコーティング法およびグラビアロールコーティング法が好ましく選択できる。
【0038】
塗布方式で帯電防止剤を積層させた場合、塗布層の工程内でのロールなどでの削れによる性能の消失や、裏面(レジスト面)への添加剤成分裏移りによるレジストのパターニングでの不具合(ゆがみ、欠け、抜け)が発生することがあるため、押出機中でポリエステル層に練り込まれるほうが好ましい。なお、塗布方式で帯電防止剤やワックスを積層させた場合、削れ物の堆積による工程汚染、搬送ロールの白化等を招くことがある。
【0039】
B層表面にD層を形成する塗剤の帯電防止剤の含有量は、塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、5~90質量部であることが好ましく、より好ましくは10~85質量部の範囲であり、帯電防止剤がイオン性官能基を有する化合物の重合体である場合は、15~80質量部の範囲とすることが好ましい。帯電防止剤の含有量が上記範囲であることで、十分な帯電防止性を達成することができる。90質量部を超えるとヘイズが高くなることや、ブロッキングなどにより滑り性が著しく悪化し、取り扱い性が低下することがある。
【0040】
本発明において、D層を形成する塗剤の固形分濃度は特に制約はないが、通常1wt%~30wt%以下であり、好ましくは1~20wt%、さらに好ましくは1wt%~15wt%、特に好ましくは1wt%~10wt%の範囲である。D層を形成する塗剤の固形分濃度を上記範囲に調整することで、塗剤がはじきにくく、塗布面を均一にし易くなる。また、塗剤の高粘度化を抑制し、塗布外観の悪化を防止することができる。
【0041】
B層に含有させる上記帯電防止剤やワックスの含有量の合計量は、B層のポリエステルに対し、0.5wt%以上2.0wt%未満であることが好ましく、より好ましくは、0.7wt%以上1.5wt%未満である。帯電防止剤やワックスの含有量の合計量が2.0wt%以上だと、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおけるヘイズが高くなることや、ブロッキングなどによりすべり性が著しく悪化し、取り扱い性が低下することがある。一方、帯電防止剤やワックスの含有量の合計量が0.5wt%未満だと、帯電防止性が不十分となる。
【0042】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムが3層以上の層構成を有する場合に、高い透明性を付与するためには、中間層(表裏の最外層以外の層)は実質的に粒子を含まない構成にすることが好ましい。
【0043】
上記構成において、フィルムの表面を構成する層(最外層)のそれぞれの積層厚さは0.1μm以上2μm未満が好ましく、更に好ましくは0.4μm以上1.8μm未満である。0.1μm未満の場合にはポリエステル層に添加した粒子の脱落が大きくなり、2μm以上になるとヘイズを達成するために添加している粒子の平均径および添加量を更に減少することが必要になり、加工特性との両立が難しくなる場合がある。
【0044】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムの全厚みが10μm~100μmであることが好ましく、10μm~50μmであることがより好ましい。とくに好ましくは10μm~20μmである。全厚みが10μm未満では強度が不足し加工工程での取り扱いが難しくなることがあり、100μmを超えると、光線透過率およびヘイズを適切な範囲に保つことが困難となる場合がある。
【0045】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面の算術平均粗さSRaは4nm~10nmであることが好ましい。さらに好ましくは4nm~8nmである。SRaが4nm未満であるとフィルム巻き取り時にフィルム間に噛み込んだ空気が抜けにくくなることで巻きズレを起こすことがある。また、SRaが10nmより大きい場合、レジストパターン形成時に表面に形成された凹凸により露光工程での光の入射角が不均一になるにことで光の反射や散乱の影響により、微細なレジストパターン形成でのノイズとなる傾向がある。少なくとも片面算術平均粗さSRaは当該フィルム表面の(PSD3/PSD30)×100の値を前述した範囲に調整することで制御できる。
【0046】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのヘイズは1.5%以下であることが好ましい。1.5%を超えると、二軸配向ポリエステルフィルムにレジスト層を積層した後、紫外線を照射して露光するとき、二軸配向ポリエステルフィルムによる紫外光線の散乱が大きくなるため、レジストのパターニングにゆがみや、抜け、レジストパターン壁面の欠けが生じ欠点となる場合がある。ヘイズは少なくとも片面の(PSD3/PSD30)×100の値を前述した範囲に調整することで制御できる。
【0047】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの一方のA層の表面Aと、もう一方のB層の表面Bとの静摩擦係数(μs)は、0.1以上0.5以下であることが好ましい。より好ましくは0.1以上0.3以下である。静摩擦係数μsが0.1未満であると製造工程で巻ずれなどを起こしやすく生産性が悪化する場合がある。静摩擦係数μsが0.5よりも大きいと滑り性が十分でないため、搬送時にシワや巻き付きがおこり、生産性が悪化する場合がある。静摩擦係数μsはB層の(PSD3/PSD30)×100の値を前述した範囲に調整することで制御できる。
【0048】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくとも片面の表面比抵抗値が1.0×1012Ω/□以下である。さらに好ましくは1.0×1010Ω/□以下である。1.0×1012Ω/□を超えるとフィルム表面の帯電が多くなり、二軸配向ポリエステルフィルムを製造する際の取り扱い性悪化やゴミや異物の付着が増大する傾向がある。また該フィルムへレジスト層を設けるときにゴミや異物の付着が増大しパターン形成時の抜けや欠点となる場合がある。表面比抵抗値はレジスト層を積層しない表面が1.0×1012Ω/□以下となることが好ましい。表面比抵抗を好ましい範囲とするには、例えば帯電防止剤を練り込ませたり、塗布することによって達成できる。
【0049】
次に、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法について説明する。これは一例であり、本発明はかかる例によって得られる物のみに限定して解釈されるものではない。
【0050】
ポリエステル樹脂原料を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)を使用することができる。このとき、ポリマー中の未溶融物を除去するために、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過してもよい。さらに、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤などが添加されてもよい。
【0051】
その他の方法として、原料を溶媒に溶解させ、その溶液を口金からキャストドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して膜状とし、次いでかかる膜層から溶媒を乾燥除去させてシート状に加工する方法(溶液キャスト法)等も使用することができる。
【0052】
また積層フィルムの基材が積層構造の場合の製造方法は、積層する各層の材料が熱可塑性樹脂を主たる構成とする場合、二つの異なる熱可塑性樹脂を二台の押出機に投入し溶融してから合流させて、口金から冷却したキャストドラム上に共押出してシート状に加工する方法(共押出し法により溶融製膜する方法)を好ましく用いることができる。以下、本方法について詳細に説明する。
【0053】
まず押出機に原料を投入し、加熱溶融する。複数の押出機、複数層のマニホールドまたは合流ブロック(例えば矩形合流部を有する合流ブロック)を用いて積層し、口金からシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。この時、押出機で溶融したポリマーは、フィルターにより濾過する。ごく小さな異物もフィルム中に入ると粗大突起欠陥となるため、フィルターには例えば5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることが有効である。その後、冷却した表面温度10~60℃に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸シートを作製する。次に、この未延伸シートを70~140℃の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)に3~4倍延伸し、20~50℃の温度のロール群で冷却する。続いて、シートの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、80~240℃の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向(幅方向)に3~5倍に延伸する。延伸倍率は、長手方向と幅方向それぞれ3~5倍とするが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は9~17倍であることが好ましい。面積倍率が9倍未満であると、得られる二軸延伸シートの耐久性が不十分となり、逆に面積倍率が17倍を超えると延伸時に破れを生じ易くなる傾向がある。また延伸後に、長手及び/又は幅方向に0.1%以上5.0%未満の弛緩処理を施してもよい。尚、二軸延伸する方法としては、上述の様に長手方向と幅方向の延伸とを分離して行う逐次二軸延伸方法の他に、長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸方法のどちらであっても構わない。
【0054】
[特性の測定方法・評価方法]
(1)二軸配向ポリエステルフィルムの全厚み(μm)
フィルムの全厚みは、ダイヤルゲージを用い、JIS K7130(1992年)A-2法に準じて、フィルムを10枚重ねた状態で任意の5ヶ所について厚さを測定した。その平均値を10で除してフィルムの全厚みとした。
(2)二軸配向ポリエステルフィルムの各層の厚み(μm)
積層フィルムの各層の厚みは、フィルム幅方向に平行な方向にミクロトームを用いてフィルム断面を切り出し、該断面を走査型電子顕微鏡で5,000倍の倍率で観察し、積層各層の厚み比率を求め、これと上記したフィルム厚みから、各層の厚みを算出する。
(3)透明性(ヘイズ(%))
日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて、JIS K 7136(2000年)に準じて3回測定し、その平均値をヘイズの値とした。へイズを透明性の指標として下記基準に従って評価した。
◎:0.5%以下
○:0.5%を超えて1%以下
△:1%を超えて1.5%以下
×:1.5%を超える
(4)搬送性(摩擦係数μs)
東洋精機(株)製スリップテスターを用いて、JIS K 7125(1999年)に準じて、2枚の積層フィルムのA層表面AとB層表面Bを重ねて摩擦させた時の値を3回測定し、その平均値から長手方向の摩擦係数μsを求めた。摩擦係数μsを搬送性の指標として下記基準に従い評価した。
◎:0.1を超えて0.3以下
○:0.3を超えて0.35以下
△:0.35を超えて0.5以下
×:0.5を超える
(5)帯電防止性(表面比抵抗 Ω/□)
試料を温度23℃、相対湿度65%で24時間放置して調湿した後、同条件下でデジタル超高抵抗/微小電流計(アドバンテスト製R8340A)を用い、印加電圧100Vで3回測定し、その平均値を求めた、下記基準に従い評価した。単位はΩ/□であり、この値が小さいものほど、帯電防止性能が良好である。
◎:1.0×1010以下
○:1.0×1010を超えて1.0×1012以下
×:1.0×1012超える
(6)レジスト解像度(目視検査)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおけるレジストの解像度の目視評価方法は、以下のような手順で行った。
(i)片面鏡面研磨した6インチSiウエハー上に、東京応化(株)製のネガレジスト“PMER N-HC600”を塗布し、大型スピナーで回転させることによって厚み7μmのレジスト層を作製した。次いで、窒素循環の通風オーブンを用いて70℃の温度条件で、約20分間の前熱処理を行った。
(ii)ポリエステルフィルムをレジスト層と接触するように重ね、ゴム製のローラーを用いて、レジスト層上にポリエステルフィルムをラミネートし、その上に、クロム金属でパターニングされたフォトマスクを配置し、そのフォトマスク上からI線ステッパーを用いて露光を行った。
(iii)レジスト層からポリエステルフィルムを剥離した後、現像液N-A5が入った容器にレジスト層を入れ約1分間の現像を行った。その後、現像液から取り出し、水で約1分間の洗浄を行った。
(iv)現像後に作成されたレジストパターンのL/S(μm)(Line and Space)の状態を走査型電子顕微鏡SEMを用いて約800~3000倍率で観察した。レジストの解像度の評価は、以下の基準に従った。
◎:L/S=8/8μmが明確に確認できる。
○:L/S=8/8μmは明確に確認できないが、L/S=10/10μmは明確に確認できる。
△:L/S=10/10μmは明確に確認できないが、L/S=15/15μmは明確に確認できる。
×:L/S=15/15μmが明確に確認できない。(生産適用不可)。
(7)PSD3/PSD30
原子力顕微鏡(AFM)を用いて、場所を変えて10視野測定を行った。サンプルセットは、カンチレバーの走査方向に対して垂直方向(Y軸方向)がサンプルフィルムの長手方向(長手方向とは、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向)となるようにサンプルをピエゾにセットして測定する。得られた画像について、Off-Line機能のPower Spectral DensityにてY軸方向(フィルムの長手方向)の2Diso PSDを求め、3μm以上4μm未満の波長の平均値をPSD3、30μm以上40μm未満の波長のPSDの平均値をPSD30とし、(PSD3/PSD30)×100の値を求めた。
【0055】
測定装置 :NanoScope(R)III verion5.31R1
(Digital Instruments社製)
カンチレバー :シリコン単結晶
走査モード :タッピングモード
走査範囲 :125μm□
走査速度 :0.5Hz
Samples line :256
Flatten Auto :オーダー3
(8)B層表面の算術平均粗さSRa(nm)
上記(7)に記載の装置を用いて、場所を変えて10視野測定した。サンプルセットは、カンチレバーの走査方向に対して垂直方向(Y軸方向)がサンプルフィルムの長手方向(長手方向とは、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向)となるようにサンプルをピエゾにセットして測定する。得られた画像について、Off-Line機能のRoughness Analysisにて算出し、平均値をRaとした。
【0056】
測定装置 :NanoScope(R)III verion5.31R1
(Digital Instruments社製)
カンチレバー :シリコン単結晶
走査モード :タッピングモード
走査範囲 :30μm□
走査速度 :0.79Hz
Samples line :256
Flatten Auto :オーダー3
【実施例
【0057】
以下実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。
【0058】
[PET-Aの製造]テレフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、常法により重合を行い、溶融重合PETを得た。得られた溶融重合PETのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.62であった。
【0059】
[PET-Bの製造]PET-Aの重合に際して、PETの総質量に対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0wt%となるように添加してPET-Bを得た。ガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.62であった。
【0060】
[PET-Cの製造]PET-Aの重合に際して、PETの総質量に対して脂肪酸系ワックス(大日化学工業(株)製 EPL-8)が1.0wt%となるように添加してPET-Cを得た。ガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.62であった。
【0061】
[MB-Aの作製]PET-A80質量部と粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子(スチレン・アクリレート共重合体、屈折率1.60)の10wt%水スラリーを10質量部(架橋ポリスチレン粒子として1質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を1wt%含有するMBを得た。ガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.62であった。
【0062】
[MB-Bの作製]PET-A80質量部と粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子(スチレン・アクリレート共重合体、屈折率1.60)の10wt%水スラリーを10質量部(架橋ポリスチレン粒子として1質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を1wt%含有するMBを得た。ガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.60であった。
【0063】
[MB-Cの作製]PET-A80質量部と粒径0.20μmのコロイダルシリカ粒子(屈折率1.44)の10wt%水スラリーを10質量部(コロイダルシリカ粒子として1質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を1wt%含有するMBを得た。ガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.60であった。
【0064】
[MB-Dの作製]PET-A98質量部と粒径0.10μmのアルミナ粒子(屈折率1.76)の10wt%水スラリーを10質量部(アルミナ粒子として1質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持しながらアルミナ粒子を1wt%含有するMBを得た。ガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.60であった。
【0065】
[MB-Eの作製]PET-A80質量部と粒径0.06μmのコロイダルシリカ粒子(屈折率1.44)の10wt%水スラリーを10質量部(コロイダルシリカ粒子として1質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を1wt%含有するMBを得た。ガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.62であった。
[塗剤Aの調整]
アクリル樹脂水分散体50質量部と帯電防止剤ジメチルアクリルアミドを25質量部、架橋剤ヘキサメトキシメチロールメラミン25質量部を固形分濃度10wt%になるように水で混合撹拌し塗剤Aとした。
[塗剤Bの調整]
アクリル樹脂水分散体35質量部と帯電防止剤ジメチルアクリルアミドを40質量部、架橋剤ヘキサメトキシメチロールメラミン25質量部を固形分濃度10wt%になるように水で混合撹拌し塗剤Bとした。
【0066】
(実施例1)
A層を構成する樹脂としてPET-Aを42質量部、MB-Dを10質量部、MB-Eを48質量部となるようにブレンドし160℃で2時間減圧乾燥した後、A層用の押出機に投入した。またB層を構成する樹脂としてPET-Bを94質量部、MB-Aを1.2質量部、MB-Bを4.8質量部となるようにブレンドし、160℃で2時間減圧乾燥した後、B層用の押出機に投入した。また、中間層(C層)を構成する樹脂としてPET-A100質量部を160℃で2時間減圧乾燥した後、C層用の押出機に投入した。押出機内でそれぞれの原料を280℃で溶融させ、層用合流ブロックで合流積層し、A層、B層、C層からなる3層積層とした。その後、表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、3層構造をもつ積層シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(MD方向)に3.5倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間の熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、厚さ16μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。また、A層にレジスト層を積層してレジスト性評価を行った。フィルムの各特性を表に示す。透明性、滑り性を両立させ、DFRの基材として用いた場合にレジスト性良好で充分に使用できるものであった。
【0067】
(実施例2、4、7、8)
B層組成を表1に示す組成に変更した以外は実施例1と同様にして厚さ16μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは実施例1同様、透明性、搬送性、レジスト解像度に優れるものであった。
【0068】
(実施例3、6)
B層を構成する樹脂としてPET-Aを用い、B層組成を表1に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして16μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは実施例1同様、透明性、搬送性、レジスト解像度に優れるものであった。
【0069】
(実施例5)
B層を構成する樹脂原料としてPET-Cを用いB層組成を表1に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして16μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは実施例1同様、透明性、搬送性、レジスト解像度に優れるものであった。
(実施例9~12)
B層組成を表2に示す組成に変更した以外は実施例1と同様にして厚さ16μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは実施例1同様、透明性、搬送性、レジスト解像度に優れるものであった。
【0070】
(実施例13)
A層組成、B層組成を表2に示す組成に変更した以外は実施例1と同様にして厚さ16μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは実施例1同様、透明性、搬送性、レジスト解像度に優れるものであった。
【0071】
(実施例14)
B層組成を表2に示す組成にし、B層の積層厚みを2μmに変更した以外は実施例1と同様にして厚さ16μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは搬送性、帯電防止性に優れるものであった。
【0072】
(実施例15)
B層組成を表2に示す組成にし、B層を構成する樹脂としてPET-A、B層へ塗剤Aをバーコーティング法により塗布しD層を形成したこと以外は実施例1と同様にして厚さ16μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは透明性、帯電防止性に優れるものであった。
【0073】
(実施例16)
B層組成を表2に示す組成にし、B層を構成する樹脂としてPET-A、B層へ塗剤Bをバーコーティング法により塗布しD層を形成したこと以外は実施例1と同様にして厚さ16μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは透明性、帯電防止性に優れるものであった。
【0074】
(比較例1、6~8)
B層を構成する樹脂としてPET-Aを用い、B層組成を表3に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして16μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムはそれぞれ透明性、搬送性、レジスト解像度に劣り、全てを満足するフィルムは得られなかった。
【0075】
(比較例2~5)
B層組成を表3に示す組成に変更した以外は実施例1と同様にして厚さ16μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムはそれぞれ透明性、搬送性、レジスト解像度に劣り、全てを満足するフィルムは得られなかった。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、透明性、光透過性に優れる。また、フィルム表面が平滑でありながら、優れたハンドリング性を兼ね備える。そのため、光学用フィルム、離型用の工程紙、また、特にドライフィルムレジスト(DFR)基材用フィルムとして、好適に用いることができる。