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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】制動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/00 20060101AFI20230711BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B60T8/00 Z
B60T13/74 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019096816
(22)【出願日】2019-05-23
(65)【公開番号】P2020189593
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 芙見
(72)【発明者】
【氏名】半澤 雅敏
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0215355(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0347299(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 13/00-13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪と一体に回転する被制動部材に向けて制動部材を押圧することで制動を行い、前記被制動部材から前記制動部材を離間させることで前記制動の解除を行う制動用電動アクチュエータと、前記制動用電動アクチュエータを制御する制動制御装置と、を含む電動駐車ブレーキにおける前記制動制御装置であって、
前記電動駐車ブレーキに関係する情報として、前記制動用電動アクチュエータの使用履歴情報を含む電動制動関係情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記使用履歴情報に基づいて、前記制動用電動アクチュエータに入力する電流の大きさを調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶された前記電動制動関係情報を、前記車両に設置されている他の制御装置に記憶させ、
第1の所定タイミングで、前記他の制御装置に記憶された前記電動制動関係情報に基づいて、前記記憶部に記憶された前記使用履歴情報を更新する、制動制御装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記電動制動関係情報として、前記制動用電動アクチュエータの異常履歴を記憶しており、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶された前記制動用電動アクチュエータの異常履歴を、前記他の制御装置に記憶させ、
前記第1の所定タイミングで、前記他の制御装置に記憶された前記制動用電動アクチュエータの異常履歴を参照し、異常履歴ありのときは、前記記憶部に記憶された前記使用履歴情報を0にリセットする、請求項1に記載の制動制御装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記電動制動関係情報として、前記制動制御装置の異常履歴を記憶しており、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶された前記制動制御装置の異常履歴を、前記他の制御装置に記憶させ、
前記第1の所定タイミングで、前記他の制御装置に記憶された前記電動制動関係情報を参照し、前記制動制御装置の異常履歴ありで、かつ、前記制動用電動アクチュエータの異常履歴なしの場合に、
前記記憶部に記憶された前記使用履歴情報の値が前記他の制御装置に記憶された前記使用履歴情報の値未満であるときは、前記記憶部に記憶された前記使用履歴情報を、前記他の制御装置に記憶された前記使用履歴情報で更新する、請求項2に記載の制動制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
第2の所定タイミングで、前記記憶部に記憶された前記電動制動関係情報を、前記他の制御装置に記憶させる、請求項1に記載の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、EPB(Electric Parking Brake:電動駐車ブレーキ)を搭載した車両(乗用車等)が増加している。EPBは、車両の車輪と一体に回転する被制動部材(例えばブレーキディスク)に対応して設けられている制動部材(例えばブレーキパッド)を移動させる制動用電動アクチュエータや、制動用電動アクチュエータを制御する制動制御装置(EPB-ECU(Electronic Control Unit))を含む。
【0003】
また、一般に、制動用電動アクチュエータは使用履歴情報(例えば使用回数、電流通電時間、作動負荷量、通電総量等)の値が増えると性能が変化するので、制動制御装置は、その使用履歴情報の値に応じて制動用電動アクチュエータに入力する電流の大きさを調整する必要がある。
【0004】
また、従来技術では、制動用電動アクチュエータや制動制御装置に異常が発生したことを認識できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-131500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、制動用電動アクチュエータや制動制御装置が交換されたことは認識できない。したがって、異常等を理由にそれらの交換があった場合、制動制御装置が記憶している制動用電動アクチュエータの使用履歴情報の値が適正であるとは限らず、そうなると、制動用電動アクチュエータに入力する電流の大きさを正しく調整できない事態が発生しうる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、EPBを構成する制動用電動アクチュエータや制動制御装置が交換された場合でも、制動用電動アクチュエータの適正な使用履歴情報の値を認識し、制動用電動アクチュエータに入力する電流の大きさを正しく調整することができる制動制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、例えば、車両の車輪と一体に回転する被制動部材に向けて制動部材を押圧することで制動を行い、前記被制動部材から前記制動部材を離間させることで前記制動の解除を行う制動用電動アクチュエータと、前記制動用電動アクチュエータを制御する制動制御装置と、を含む電動駐車ブレーキにおける前記制動制御装置である。前記制動制御装置は、前記電動駐車ブレーキに関係する情報として、前記制動用電動アクチュエータの使用履歴情報を含む電動制動関係情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記使用履歴情報に基づいて、前記制動用電動アクチュエータに入力する電流の大きさを調整する制御部と、を備える。前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記電動制動関係情報を、前記車両に設置されている他の制御装置に記憶させ、第1の所定タイミングで、前記他の制御装置に記憶された前記電動制動関係情報に基づいて、前記記憶部に記憶された前記使用履歴情報を更新する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の車両用ブレーキ装置の全体概要を示す模式図である。
図2図2は、実施形態の車両用ブレーキ装置におけるEPB-ECUとENG-ECUの機能ブロック図である。
図3図3は、実施形態のケースA~Hにおける各事項をまとめた表である。
図4図4は、実施形態のケースCにおけるタイムチャート例である。
図5図5は、実施形態のケースDにおけるタイムチャート例である。
図6図6は、実施形態のケースEにおけるタイムチャート例である。
図7図7は、実施形態のケースFにおけるタイムチャート例である。
図8図8は、実施形態のケースGにおけるタイムチャート例である。
図9図9は、実施形態のケースHにおけるタイムチャート例である。
図10図10は、実施形態のEPB-ECUによる第1の処理を示すフローチャートである。
図11図11は、実施形態のEPB-ECUによる第2の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、以下の構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0011】
実施形態では、後輪系にディスクブレーキタイプのEPB(Electric Parking Brake)を適用している車両用ブレーキ装置を例に挙げて説明する。まず、図1を参照して、実施形態の車両用ブレーキ装置の全体概要について説明する。図1は、実施形態の車両用ブレーキ装置の全体概要を示す模式図である。
【0012】
図1に示すように、実施形態の車両用ブレーキ装置は、サービスブレーキ1(液圧ブレーキ装置)と、EPB2(電動駐車ブレーキ)と、を備えている。
【0013】
サービスブレーキ1は、運転者によるブレーキペダル3の踏み込みに基づいて、車両の車輪と一体に回転するブレーキディスク12(被制動部材)に向けて、液圧によってブレーキパッド11(制動部材)を押圧することで制動を行う(つまり、サービスブレーキ力(液圧制動力)を発生させる)。また、サービスブレーキ1は、ブレーキディスク12からブレーキパッド11を離間させることで制動の解除を行う。
【0014】
具体的には、サービスブレーキ1は、運転者によるブレーキペダル3の踏み込みに応じた踏力を倍力装置4にて倍力したのち、この倍力された踏力に応じたブレーキ液圧をマスタシリンダ(以下、M/Cという。)5内に発生させる。そして、このブレーキ液圧を各車輪の車輪ブレーキ機構に備えられたホイールシリンダ(以下、W/Cという。)6に伝えることでサービスブレーキ力を発生させる。また、M/C5とW/C6との間にブレーキ液圧制御用のアクチュエータであるESC(Electronic Stability Control)-ACT7が備えられている。ESC-ACT7は、サービスブレーキ1により発生するサービスブレーキ力を調整し、車両の安全性を向上させるための各種制御(例えば、アンチスキッド制御等)を行う。
【0015】
ESC-ACT7を用いた各種制御は、サービスブレーキ力を制御するEPB-ECU8(制動制御装置)にて実行される。なお、EPB-ECU8は、ESC-ACT7を用いた各種制御とEPB-ACT20(制動用電動アクチュエータ)を用いた各種制御の両方を行う。つまり、EPB-ECU8は、ESC-ECUの機能も兼備する。
【0016】
例えば、ESC-ACT7に備えられる図示しない各種制御弁やポンプ駆動用のモータを制御するための制御電流をEPB-ECU8が出力することにより、ESC-ACT7に備えられる液圧回路を制御し、W/C6に伝えられるW/C圧を制御する。これにより、車輪スリップの回避などを行い、車両の安全性を向上させる。
【0017】
また、例えば、ESC-ACT7は、各車輪ごとに、W/C6に対してM/C5内に発生させられたブレーキ液圧やポンプ駆動により発生させられたブレーキ液圧が加えられることを制御する増圧制御弁や、各W/C6内のブレーキ液をリザーバに供給することでW/C圧を減少させる減圧制御弁等を備えており、W/C圧を増圧・保持・減圧制御できる構成となっている。また、ESC-ACT7は、サービスブレーキ1の自動加圧機能を実現可能にしており、ポンプ駆動および各種制御弁の制御に基づいて、ブレーキ操作がない状態であっても自動的にW/C6を加圧できる。
【0018】
一方、EPB2は、EPB-ECU8のほかに、車輪ブレーキ機構を駆動させることで電動制動力を発生させるモータ10を含む電動ブレーキの動作機構であるEPB-ACT20を備える。例えば、EPB2は、駐車時に車両が意図しない移動をしないように、ブレーキディスク12に向けて、モータ10を駆動することによってブレーキパッド11を押圧して、電動制動力を発生させる。
【0019】
ENG-ECU9(他の制御装置)は、車両の車輪に駆動力を発生させる駆動装置であるENG900を制御する。また、ENG-ECU9とEPB-ECU8は、例えばCAN(Controller Area Network)通信によって情報の送受信を行う。
【0020】
制動の説明に戻って、車輪ブレーキ機構は、実施形態の車両用ブレーキ装置においてブレーキ力を発生させる機械的構造であり、まず、前輪系の車輪ブレーキ機構はサービスブレーキ1の操作によってサービスブレーキ力を発生させる構造となっている。一方、後輪系の車輪ブレーキ機構は、サービスブレーキ1の操作とEPB2の操作の双方に対してブレーキ力を発生させる共用の構造となっている。前輪系の車輪ブレーキ機構は、後輪系の車輪ブレーキ機構に対して、EPB2の操作に基づいて電動制動力を発生させる機構をなくした従来から一般的に用いられている車輪ブレーキ機構である。そのため、ここでは前輪系の車輪ブレーキ機構の説明を省略し、以下では後輪系の車輪ブレーキ機構について説明する。
【0021】
後輪系の車輪ブレーキ機構では、サービスブレーキ1を作動させたときだけでなくEPB2を作動させたときにも、摩擦材であるブレーキパッド11を押圧し、ブレーキパッド11によって被摩擦材であるブレーキディスク12を挟み込むことにより、ブレーキパッド11とブレーキディスク12との間に摩擦力を発生させ、ブレーキ力を発生させる。
【0022】
なお、実施形態の車両用ブレーキ装置では、モータ10の電流を検出する電流センサ27による電流検出値を確認することにより、EPB2による電動制動力の発生状態を確認したり、その電流検出値を認識したりすることができるようになっている。
【0023】
また、前後Gセンサ25は、車両の前後方向(進行方向)のG(加速度)を検出し、検出信号をEPB-ECU8に送信する。
【0024】
M/C圧センサ26は、M/C5におけるM/C圧を検出して、検出信号をEPB-ECU8に送信する。
【0025】
温度センサ28は、車輪ブレーキ機構(例えばブレーキディスク)の温度を検出して、検出信号をEPB-ECU8に送信する。
【0026】
車輪速センサ29は、各車輪の回転速度を検出し、検出信号をEPB-ECU8に送信する。なお、車輪速センサ29は、実際には各車輪に対応して1つずつ設けられるが、ここでは、詳細な図示や説明を省略する。
【0027】
EPB-ECU8は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムにしたがってモータ10を含むEPB-ACT20を制御することによりブレーキ制御を行うものである。以下、EPB-ACT20の制御について、主にモータ10の制御を例にとって説明する。
【0028】
EPB-ECU8は、例えば車室内のインストルメントパネル(図示せず)に備えられた操作SW(スイッチ)23の操作状態に応じた信号等を入力し、操作SW23の操作状態に応じてモータ10を駆動する。さらに、EPB-ECU8は、モータ10の電流検出値に基づいてロック制御やリリース制御などを実行するものであり、その制御状態に基づいてロック制御中であることやロック制御によって車輪がロック状態であること、および、リリース制御中であることやリリース制御によって車輪がリリース状態(EPB解除状態)であることを認識する。そして、EPB-ECU8は、インストルメントパネルに備えられた表示ランプ24に対し、各種表示を行わせるための信号を出力する。
【0029】
以上のように構成された車両用ブレーキ装置では、基本的には、車両走行時にサービスブレーキ1によってサービスブレーキ力を発生させることで車両に制動力を発生させるという動作を行う。また、サービスブレーキ1によって車両が停車した際に、運転者が操作SW23を押下してEPB2を作動させて電動制動力を発生させることで停車状態を維持したり、その後に電動制動力を解除したりするという動作を行う。すなわち、サービスブレーキ1の動作としては、車両走行時に運転者によるブレーキペダル3の操作が行われると、M/C5に発生したブレーキ液圧がW/C6に伝えられることでサービスブレーキ力を発生させる。また、EPB2の動作としては、モータ10を駆動することでピストンを移動させ、ブレーキパッド11をブレーキディスク12に押し付けることで電動制動力を発生させて車輪をロック状態にしたり、ブレーキパッド11をブレーキディスク12から離すことで電動制動力を解除して車輪をリリース状態にしたりする。
【0030】
つまり、ロック制御によって電動制動力を発生させ、リリース制御によって電動制動力を解除する。ロック制御では、モータ10を正回転させることによりEPB2を作動させ、EPB2にて所望の電動制動力を発生させられる位置でモータ10の回転を停止し、この状態を維持する。これにより、所望の電動制動力を発生させる。リリース制御では、モータ10を逆回転させることによりEPB2を作動させ、EPB2にて発生させられている電動制動力を解除する。
【0031】
また、車両の走行時であっても、例えば、緊急時、自動運転時、サービスブレーキ1の故障時等、EPB2を使用することが有効な場面もあるので、それらの場面ではEPB2を使用してもよい。また、例えば、自動運転において、制動力を発生させる手段としてEPB2を使用してもよい。
【0032】
なお、EPB-ACT20(モータ10)は使用履歴情報(例えば使用回数、電流通電時間、作動負荷量、通電総量等)の値が増えると摩耗等により性能が変化(例えば劣化)する。以下、使用履歴情報について使用回数を例にとる。EPB-ECU8は、使用回数に応じてEPB-ACT20に入力する電流の大きさを調整する。つまり、使用回数に応じてモータ10の目標電流値を変化させることで、EPB-ACT20の経年変化の影響を減少させる。
【0033】
また、従来技術においても、EPB-ACT20やEPB-ECU8に異常が発生したことは認識できる。しかしながら、従来技術では、EPB-ACT20やEPB-ECU8が交換されたことは認識できない。例えば、EPB2の異常発生後にEPB2がディーラーに持ち込まれて処置された後は、どの部品が交換されたのかわからない。
【0034】
したがって、EPB2の部品の交換があった場合、EPB-ECU8が記憶しているEPB-ACT20の使用回数が適正であるとは限らず、そうなると、EPB-ACT20(モータ10)に入力する電流の大きさを正しく調整できない事態が発生しうる。例えば、EPB-ACT20が交換されずに、EPB-ECU8が交換された場合、その交換されたEPB-ECU8においてEPB-ACT20の使用回数が0にセットされていると(実際の使用回数は例えば10万回)、目標電流値が適正値よりも小さくなってしまうことがある。
【0035】
また、もし、EPB-ACT20が交換され、EPB-ECU8が交換されていない場合、EPB-ECU8がEPB-ACT20の使用回数として交換前の値(例えば10万回)を保持していると、目標電流値が適正値よりも大きくなってしまうことがある。
【0036】
そこで、本実施形態では、EPB2を構成するEPB-ACT20やEPB-ECU8が交換された場合でも、EPB-ACT20(モータ10)の適正な使用回数を認識し、EPB-ACT20に入力する電流の大きさを正しく調整することができるEPB-ECU8について説明する。
【0037】
図2は、実施形態の車両用ブレーキ装置におけるEPB-ECU8とENG-ECU9の機能ブロック図である。EPB-ECU8は、EPB制御部81と、EPB記憶部82と、を備える。
【0038】
EPB制御部81は、EPB-ACT20の制御等を実行する。EPB記憶部82は、EPB2に関係する情報として、回数(EPB)、EPB-ECU異常履歴フラグ(EPB)(制動制御装置の異常履歴)、EPB-ACT異常履歴フラグ(EPB)(制動用電動アクチュエータの異常履歴)(以下、これらの3つを総称するときは「電動制動関係情報」という。)を記憶する。
【0039】
回数(EPB)は、EPB-ACT20の使用回数である。EPB-ACT20が作動するたびに、EPB制御部81は、EPB記憶部82に記憶されている回数(EPB)をカウントアップする。また、EPB制御部81は、EPB記憶部82に記憶されている回数(EPB)に基づいて、EPB-ACT20(モータ10)に入力する電流の大きさを調整する。
【0040】
EPB-ECU異常履歴フラグ(EPB)は、EPB-ECU8の異常履歴を管理するためのフラグであり、デフォルト(初期値)はオフ(異常発生無し)である。EPB-ECU8は、自己の異常を検出すると、このEPB-ECU異常履歴フラグ(EPB)をオンにする。なお、EPB-ECU8は、例えば、マイコンとIC(Integrated Circuit)によって相互監視することで、自己の異常を検出する。また、EPB-ECU8に異常が発生した場合、対応法は交換と修理の二通りある。例えば、EPB-ECU8からモータ10までの配線のどこかに異常があることが原因ですぐに修理できる場合は、交換でなくても修理で対応できる場合がある。
【0041】
EPB-ACT異常履歴フラグ(EPB)は、EPB-ACT20の異常履歴を管理するためのフラグであり、デフォルト(初期値)はオフ(異常発生無し)である。EPB-ECU8は、EPB-ACT20の異常を検出すると、このEPB-ACT異常履歴フラグ(EPB)をオンにする。なお、EPB-ECU8は、例えば、EPB-ACT20の電流値等に基づいて、EPB-ACT20の異常を検出できる。また、以下の例では、EPB-ACT20に異常が発生した場合、車両を早く復旧させることを想定して、対応法は交換の1通りであるものとする。
【0042】
ENG-ECU9は、ENG制御部91と、ENG記憶部92と、を備える。ENG制御部91は、ENG900(図1)の制御等を実行する。ENG記憶部92は、回数(ENG)、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)(以下、これら3つを総称するときは「電動制動関係情報」という。)を記憶する。
【0043】
回数(ENG)は、EPB記憶部82に記憶されている回数(EPB)に対応する内容である。具体的には、EPB制御部81は、第2の所定タイミングで、EPB記憶部82に記憶されている回数(EPB)を用いて、ENG記憶部92に記憶されている回数(ENG)を更新する。第2の所定タイミングは、例えば、IG-OFF(車両のイグニッションスイッチをオフにすること)である。また、その場合、さらに、増加回数が所定回数(例えば100回)に到達しているときのみ、当該更新を行うようにしてもよい。そうすれば、通信や記憶動作の回数を低減できる。
【0044】
また、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)は、EPB記憶部82に記憶されているEPB-ECU異常履歴フラグ(EPB)対応する内容である。また、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)は、EPB記憶部82に記憶されているEPB-ACT異常履歴フラグ(EPB)に対応する内容である。これらの各フラグも、回数(ENG)と同様、第2の所定タイミングでEPB制御部81によって更新される(詳細は後述)。
【0045】
また、EPB制御部81は、第1の所定タイミングで、ENG-ECU9のENG記憶部92に記憶された電動制動関係情報に基づいて、EPB記憶部82に記憶された電動制動関係情報を更新する。第1の所定タイミングは、例えば、IG-ON(車両のイグニッションスイッチをオンにすること)である。
【0046】
例えば、EPB制御部81は、第1の所定タイミングで、ENG-ECU9のENG記憶部92に記憶されたEPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)を参照し、異常履歴あり(フラグ「オン」)で、かつ、現在ダイアグ正常のときは、EPB記憶部82に記憶された回数(EPB)を0にリセットする。これは、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)がオンになっているということは、EPB-ACT20が交換されたと推定できるので、回数(EPB)を0にリセットするのが妥当であるという思想に基づく。
【0047】
また、EPB制御部81は、第1の所定タイミングで、ENG-ECU9のENG記憶部92に記憶された電動制動関係情報を参照し、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)がオンで、かつ、現在ダイアグ正常で、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)がオフの場合に、さらに、回数(EPB)が回数(ENG)未満であるときは、回数(EPB)を回数(ENG)で更新する。これは、上述の条件が満たされているということは、EPB-ACT20は交換されていないのに、EPB-ECU8が交換されたことで回数(EPB)が不適切に小さな値(例えば0回)になっていると推定できるので、回数(EPB)を回数(ENG)で更新するのが妥当であるという思想に基づく。
【0048】
次に、図3を参照して、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)のオン/オフの2通り、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)のオン/オフの2通り、回数(EPB)≧回数(ENG)か否かの2通りを掛け合わせた合計8通りのすべてのケース(ケースA~H)に関して、推定内容と処置内容について説明する。図3は、実施形態のケースA~Hにおける各事項をまとめた表である。
【0049】
図3の表は、左から順に、ケース、EPB-ECU8におけるEPB-ECU8とEPB-ACT20の現在ダイアグ、状況(EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)、回数(EPB)と回数(ENG)の関係)、推定内容、処置内容を表す。
【0050】
EPB-ECU8におけるEPB-ECU8とEPB-ACT20の現在ダイアグは、EPB-ECU8のEPB記憶部82(図2)に記憶されているEPB-ECU異常履歴フラグ(EPB)とEPB-ACT異常履歴フラグ(EPB)の状態を示す。ここでは、全ケースにおいて、EPB-ECU異常履歴フラグ(EPB)とEPB-ACT異常履歴フラグ(EPB)ともにオフであるものとする。
【0051】
推定内容は、EPB-ECU8の交換の有無、EPB-ACT20の交換の有無、その他についての推定の内容である。
【0052】
処置内容は、回数(EPB)、回数(ENG)、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)についての処置(維持、更新(リセット等)、クリア等)の内容である。
【0053】
以下において、状況(…、…、…)は、状況(EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)の状態、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)の状態、回数(EPB)と回数(ENG)の関係)を示す。
【0054】
ケースAは、状況(オフ、オフ、回数(EPB)≧回数(ENG))である。この場合、EPB-ECU8とEPB-ACT20の両方とも、過去および現在に異常はないので、その両方の交換は無いと推定できる(推定内容欄参照)。また、回数(EPB)≧回数(ENG)は正常であるので、その他に推定すべき事項はない。したがって、処置内容は無しである。
【0055】
ケースBは、状況(オフ、オフ、回数(EPB)<回数(ENG))である。この場合、EPB-ECU8とEPB-ACT20の両方とも、過去および現在に異常はないので、その両方の交換は無いと推定できる。ただし、回数(EPB)<回数(ENG)は正常ではないので、その他として、回数(EPB)を減らすか回数(ENG)を増やすかの強制的操作(例えば、車両テスターによる使用回数や記憶の書き換え)があったと推定できる。この場合、何らかの処置をする可能性が考えられるが、EPB-ECU8やEPB-ACT20の交換の可能性を原因とするものではなく、本実施形態の技術的特徴と直接的な関係は無いので、便宜的に、処置内容は無しとする。
【0056】
ケースCは、状況(オン、オフ、回数(EPB)≧回数(ENG))である。この場合、EPB-ECU8について、過去に異常があって現在が正常なので、交換の可能性が考えられる。しかし、EPB-ECU8の交換があれば、回数(EPB)が0にセットされており、回数(EPB)<回数(ENG)となるはずであるが、実際には回数(EPB)≧回数(ENG)なので、EPB-ECU8の交換は無く、修理によって正常化したと推定できる。
【0057】
また、EPB-ACT20については、過去および現在に異常はないので、交換は無いと推定できる。したがって、処置として、回数(EPB)、回数(ENG)ともに、更新する必要は無く、維持でよい。また、EPB-ECU8が正常化しているので、処置として、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)をクリア(オフ化)する。
【0058】
ケースDは、状況(オン、オフ、回数(EPB)<回数(ENG))である。この場合、EPB-ECU8について、過去に異常があって現在が正常なので、交換の可能性が考えられる。そして、回数(EPB)<回数(ENG)となっているので、EPB-ECU8の交換があったと推定できる。
【0059】
一方、EPB-ACT20については、過去および現在に異常はないので、交換は無いと推定できる。したがって、処置として、回数(EPB)を回数(ENG)で更新する。また、回数(ENG)は維持でよい。また、EPB-ECU8が正常化しているので、処置として、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)をクリアする。
【0060】
ケースEは、状況(オフ、オン、回数(EPB)≧回数(ENG))である。この場合、EPB-ACT20について、過去に異常があって現在が正常なので、交換があったと推定できる。また、回数(EPB)≧回数(ENG)は正常であるので、その他に推定すべき事項はない。したがって、処置としては、EPB-ACT20が交換されているので、回数(EPB)と回数(ENG)を0にリセットする。また、EPB-ACT20が交換されているので、処置として、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)をクリアする。
【0061】
ケースFは、状況(オフ、オン、回数(EPB)<回数(ENG))である。この場合、EPB-ACT20について、過去に異常があって現在が正常なので、交換があったと推定できる。したがって、処置としては、EPB-ACT20が交換されているので、回数(EPB)と回数(ENG)を0にリセットする。なお、回数(EPB)<回数(ENG)は正常ではないので、ケースBと同様に強制的操作があったと推定できるが、回数(EPB)と回数(ENG)を0にリセットするので、問題は無い。また、EPB-ACT20が交換されているので、処置として、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)をクリアする。
【0062】
ケースGは、状況(オン、オン、回数(EPB)≧回数(ENG))である。この場合、EPB-ACT20について、過去に異常があって現在が正常なので、交換があったと推定できる。また、EPB-ECU8について、過去に異常があって現在が正常なので、交換の可能性が考えられる。しかし、回数(EPB)≧回数(ENG)なので、EPB-ECU8の交換は無く、修理によって正常化したと推定できる。
【0063】
したがって、処置としては、EPB-ACT20が交換されているので、回数(EPB)と回数(ENG)を0にリセットする。また、EPB-ECU8が正常化していて、かつ、EPB-ACT20が交換されているので、処置として、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)ともにクリアする。
【0064】
ケースHは、状況(オン、オン、回数(EPB)<回数(ENG))である。この場合、EPB-ACT20について、過去に異常があって現在が正常なので、交換があったと推定できる。また、EPB-ECU8について、過去に異常があって現在が正常なので、交換の可能性が考えられる。そして、回数(EPB)<回数(ENG)となっているので、EPB-ECU8の交換があったと推定できる。
【0065】
したがって、処置として、回数(EPB)は、EPB-ECU8が交換されて0にセットされているので0を維持し、回数(ENG)を0にリセットする。また、EPB-ECU8とEPB-ACT20が交換されているので、処置として、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)ともにクリアする。
【0066】
次に、図4図9を参照して、ケースC~Hにおけるタイムチャート例について説明する(適宜他図参照)。図4は、実施形態のケースCにおけるタイムチャート例である。図4において、横軸は時間であり、また、上の段から順に、EPBダイアグ(EPB-ECU異常履歴フラグ(EPB)とEPB-ACT異常履歴フラグ(EPB))、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)、回数(EPB)、回数(ENG)を示す。
【0067】
なお、IG-ON状態における時刻t1の後、EPB-ECU8からENG-ECU9に電動制動関係情報が送られるタイミングは、IG-OFFとなる時刻t2とする。また、処置が行われるタイミングは、IG-ONとなる時刻t3の直後の時刻t4とする。
【0068】
時刻t1において、各状態(またはデータ内容)は、上の段から順に、ECU(EPB-ECU8)、ACT(EPB-ACT20)異常無し、オフ、オフ、10万回、10万回である。そして、時刻t1から時刻t2までの間にEPB-ECU8に異常が起きたものとする。その場合、時刻t2において、EPB-ECU8からENG-ECU9にその旨の通知が送られ、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)がオンとなる。また、時刻t1と時刻t2の間に、回数(EPB)が2回増えて10万2回になったものとする。その場合、時刻t2において、回数(ENG)は10万2回に更新される。
【0069】
その後、時刻t3までの間に、EPB-ECU8が修理により正常化したものとする。そうすると、時刻t3において、EPBダイアグはECU、ACT異常無しとなる。また、回数(EPB)(10万2回)=回数(ENG)(10万2回)なので、EPB-ECU8の交換は無く、修理によって正常化したと推定できる。
【0070】
また、EPB-ACT20については、過去および現在に異常はないので、交換は無いと推定できる。したがって、時刻t4において、処置として、回数(EPB)、回数(ENG)ともに、更新する必要は無く、10万2回を維持する。また、EPB-ECU8が正常化しているので、処置として、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)をクリア(オフ化)する。
【0071】
図5は、実施形態のケースDにおけるタイムチャート例である。図4と同様の事項については、説明を省略する(図6図9の説明でも同様)。図5では、図4の場合と比較し、時刻t2から時刻t3までの間に、EPB-ECU8が修理ではなく交換により正常化している点で相違する。
【0072】
その場合、時刻t3において、EPBダイアグはECU、ACT異常無しとなる。なお、EPB-ECU8の交換により、回数(EPB)は0となる。そして、回数(EPB)(0万回)<回数(ENG)(10万回)なので、EPB-ECU8の交換があったと推定できる。したがって、時刻t4において、処置として、回数(EPB)を回数(ENG)で更新して10万2回とする。
【0073】
図6は、実施形態のケースEにおけるタイムチャート例である。図6では、図4の場合と比較し、時刻t1から時刻t2までの間に、EPB-ECU8ではなくEPB-ACT20に異常が発生している点で相違する。
【0074】
したがって、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)は、時刻t2でオフからオンに更新される。また、時刻t3までの間にEPB-ACT20が交換されると、時刻t3において、EPBダイアグはECU、ACT異常無しとなる。
【0075】
また、時刻t3において、回数(EPB)(10万2回)=回数(ENG)(10万2回)は正常である。また、処置としては、EPB-ACT20が交換されているので、回数(EPB)と回数(ENG)を0にリセットする。また、EPB-ACT20が交換されているので、処置として、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)をクリアする。
【0076】
図7は、実施形態のケースFにおけるタイムチャート例である。図7では、図6の場合と比較し、時刻t2の少し前に、回数(EPB)が強制的操作で5万回に更新されている点で相違する。なお、回数(EPB)(5万回)<回数(ENG)(10万2回)は正常ではないので、強制的操作があったと推定できるが、回数(EPB)と回数(ENG)を0にリセットするので、問題は無い。
【0077】
図8は、実施形態のケースGにおけるタイムチャート例である。時刻t1から時刻t2までの間に、EPB-ECU8とEPB-ACT20の両方に異常が起きたものとする。その場合、時刻t2において、EPB-ECU8からENG-ECU9にその旨の通知が送られ、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)とEPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)がオンとなる。また、時刻t3までの間に、EPB-ECU8が修理により正常化し、かつ、EPB-ACT20が交換されたものとする。
【0078】
そうすると、時刻t3において、EPBダイアグはECU、ACT異常無しとなる。また、回数(EPB)(10万2回)=回数(ENG)(10万2回)なので、EPB-ECU8の交換は無く、修理によって正常化したと推定できる。
【0079】
そして、時刻t4において、処置として、EPB-ACT20が交換されているので、回数(EPB)と回数(ENG)を0にリセットする。また、EPB-ECU8、EPB-ACT20ともに正常化しているので、処置として、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)ともにクリアする。
【0080】
図9は、実施形態のケースHにおけるタイムチャート例である。図9では、図8の場合と比較し、時刻t2から時刻t3までの間に、EPB-ECU8が修理ではなく交換により正常化している点で相違する。
【0081】
その場合、時刻t3において、EPBダイアグはECU、ACT異常無しとなる。なお、EPB-ECU8の交換により、回数(EPB)は0となる。そして、回数(EPB)(0万回)<回数(ENG)(10万回)なので、EPB-ECU8の交換があったと推定できる。また、EPB-ACT20の交換もあったので、時刻t4において、処置として、回数(EPB)を0のまま維持し、回数(ENG)を0にリセットする。
【0082】
次に、図10を参照して、実施形態のEPB-ECU8による第1の処理について説明する(適宜他図参照)。図10は、実施形態のEPB-ECU8による第1の処理を示すフローチャートである。なお、ここでは、第1の処理の開始時に車両がIG-ON状態であることを前提とする。
【0083】
ステップS1において、EPB-ECU8のEPB制御部81は、EPB-ACT20が作動したか否かを判定し、Yesの場合はステップS2に進み、Noの場合はステップS3に進む。
【0084】
ステップS2において、EPB制御部81は、EPB記憶部82における回数(EPB)をカウントアップする。
【0085】
次に、ステップS3において、EPB制御部81は、EPB-ECU8に異常が発生したか否かを判定し、Yesの場合はステップS4に進み、Noの場合はステップS5に進む。
【0086】
ステップS4において、EPB-ECU8は、EPB記憶部82のEPB-ECU異常履歴フラグ(EPB)をオンにする。
【0087】
次に、ステップS5において、EPB制御部81は、EPB-ACT20に異常が発生したか否かを判定し、Yesの場合はステップS6に進み、Noの場合はステップS7に進む。
【0088】
ステップS6において、EPB制御部81は、EPB記憶部82のEPB-ACT異常履歴フラグ(EPB)をオンにする。
【0089】
次に、ステップS7において、EPB制御部81は、IG-OFFになったか否かを判定し、Yesの場合はステップS8に進み、Noの場合はステップS1に戻る。
【0090】
ステップS8において、EPB制御部81は、EPB記憶部82に記憶されている回数(EPB)、EPB-ECU異常履歴フラグ(EPB)、EPB-ACT異常履歴フラグ(EPB)を用いて、それぞれ、ENG-ECU9のENG記憶部92に記憶されている回数(ENG)、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)を更新する。
【0091】
このようにして、車両がIG-ON状態の間は、必要に応じて、回数(EPB)をカウントアップしたり、EPB-ECU異常履歴フラグ(EPB)、EPB-ACT異常履歴フラグ(EPB)をオンにしたりすることができる。また、車両がIG-OFF状態に移行した場合に、EPB-ECU8のEPB記憶部82に記憶されている電動制動関係情報を用いて、ENG-ECU9のENG記憶部92に記憶されている電動制動関係情報を更新することができる。
【0092】
次に、図11を参照して、実施形態のEPB-ECU8による第2の処理について説明する(適宜他図参照)。図11は、実施形態のEPB-ECU8による第2の処理を示すフローチャートである。なお、ここでは、第2の処理の開始時に車両がIG-OFF状態であることを前提とする。
【0093】
ステップS11において、EPB-ECU8のEPB制御部81は、IG-ONになったか否かを判定し、Yesの場合はステップS12に進み、Noの場合はステップS11に戻る。
【0094】
ステップS12において、EPB制御部81は、ENG-ECU9のENG記憶部92に記憶されている回数(ENG)、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)を読み出す。
【0095】
次に、ステップS13において、EPB制御部81は、回数(EPB)≧回数(ENG)か否かを判定し、Yesの場合はステップS14に進み、Noの場合はステップS15に進む。
【0096】
ステップS14において、EPB制御部81は、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)がオンか否かを判定し、Yesの場合はステップS16に進み、Noの場合はステップS17に進む。
【0097】
ステップS16において、EPB制御部81は、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)がオンか否かを判定し、Yesの場合はステップS20に進み、Noの場合はステップS21に進む。
【0098】
ステップS20において、EPB制御部81は、ケースGの処置(図3参照)を実行する。ステップS21において、EPB制御部81は、ケースCの処置(図3参照)を実行する。
【0099】
ステップS17において、EPB制御部81は、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)がオンか否かを判定し、Yesの場合はステップS22に進み、Noの場合(ケースA)は処理を終了する。
【0100】
ステップS22において、EPB制御部81は、ケースEの処置(図3参照)を実行する。
【0101】
ステップS18において、EPB制御部81は、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)がオンか否かを判定し、Yesの場合はステップS23に進み、Noの場合はステップS24に進む。
【0102】
ステップS23において、EPB制御部81は、ケースHの処置(図3参照)を実行する。ステップS24において、EPB制御部81は、ケースDの処置(図3参照)を実行する。
【0103】
ステップS19において、EPB制御部81は、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)がオンか否かを判定し、Yesの場合はステップS25に進み、Noの場合(ケースB)は処理を終了する。
【0104】
ステップS25において、EPB制御部81は、ケースFの処置(図3参照)を実行する。
【0105】
このように、本実施形態のEPB-ECU8によれば、EPB記憶部82において電動制動関係情報を随時更新するとともに、ENG-ECU9のENG記憶部92の電動制動関係情報を適宜更新することで、ENG-ECU9やEPB-ECU8が交換された場合でも、ENG-ECU9の適正な使用回数を認識し、ENG-ECU9に入力する電流の大きさを正しく調整することができる。つまり、EPB-ECU8やEPB-ACT20の交換の有無等を的確に認識(推定)し、ENG-ECU9に入力する電流の大きさを正しく調整することができるので、発生させる制動力の過不足を回避することができる。
【0106】
また、例えば、EPB-ECU8のEPB制御部81は、IG-ON等の第1の所定タイミングで、ENG-ECU9のENG記憶部92を参照し、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)がオンのとき(ケースE~H)は、EPB記憶部82に記憶された回数(EPB)を0にリセットすることで、ENG-ECU9に入力する電流の大きさを正しく調整することができる。
【0107】
また、例えば、EPB制御部81は、IG-ON等の第1の所定タイミングで、ENG-ECU9のENG記憶部92を参照し、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)がオンで、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)がオフで、かつ、回数(EPB)<回数(ENG)の場合(ケースD)は、回数(EPB)を回数(ENG)で更新することで、ENG-ECU9に入力する電流の大きさを正しく調整することができる。
【0108】
また、例えば、EPB制御部81は、車両がIG-OFF状態になった等の第2の所定タイミングで、EPB記憶部82に記憶されている回数(EPB)、EPB-ECU異常履歴フラグ(EPB)、EPB-ACT異常履歴フラグ(EPB)を用いて、それぞれ、ENG-ECU9のENG記憶部92に記憶されている回数(ENG)、EPB-ECU異常履歴フラグ(ENG)、EPB-ACT異常履歴フラグ(ENG)を更新する。これにより、そのような更新を随時行う場合に比べて、EPB-ECU8とENG-ECU9の間での通信の回数やENG-ECU9における記憶動作の回数を低減できる。ただし、随時の更新を制限するものではない。
【0109】
また、図3の表からわかるように、EPB-ECU8の交換の有無と、EPB-ACT20の交換の有無と、回数(EPB)と回数(ENG)の関係の全パターンで必要に応じた適切な処置が可能となる。
【0110】
また、EPB-ACT20の使用回数を的確に認識できることにより、次のような効果がある。まず、EPB-ACT20に不要な電流を流さなくて済む。また、EPB-ACT20によって不要な軸力を発生させないので、キャリパ13に過剰な負荷をかけずに済み、長寿命化させることができる。また、EPB-ACT20の作動時間を適正化できるので、不要な作動音の発生を回避できる。また、EPB-ACT20でのリリース作動時間を短縮でき、応答性を向上できる。
【0111】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態はあくまで例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、数等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0112】
例えば、実施形態では、使用履歴情報として使用回数を例にとって説明したが、これに限定されず、電流通電時間、作動負荷量、通電総量等についても同様である。
【0113】
また、EPB2による制動の対象となる車輪は、後輪に限定されず、前輪であってもよい。また、本発明の対象となる車両の車輪数は、四輪に限定されず、六輪以上であってもよい。
【0114】
また、1台の車両の複数のEPBがある場合は、EPBごとに本発明を適用してもよい。また、他のECUを複数にすれば、信頼性をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0115】
1…サービスブレーキ、2…EPB、5…M/C、6…W/C、7…ESC-ACT、8…EPB-ECU、9…ENG-ECU、10…モータ、11…ブレーキパッド、12…ブレーキディスク、13…キャリパ、23…操作SW、24…表示ランプ、25…前後Gセンサ、26…M/C圧センサ、28…温度センサ、29…車輪速センサ、81…EPB制御部、82…EPB記憶部、91…ENG制御部、92…ENG記憶部、900…ENG。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11