(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20230711BHJP
C08F 299/06 20060101ALI20230711BHJP
C08F 8/00 20060101ALN20230711BHJP
C08G 18/67 20060101ALN20230711BHJP
【FI】
C08J5/18 CEY
C08F299/06
C08F8/00
C08G18/67 050
(21)【出願番号】P 2019170237
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2019110101
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】八尋 謙介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑矢
(72)【発明者】
【氏名】石田 康之
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-260905(JP,A)
【文献】特開2013-221034(JP,A)
【文献】国際公開第2015/041175(WO,A1)
【文献】特開2003-073429(JP,A)
【文献】特開2017-048345(JP,A)
【文献】国際公開第2013/115250(WO,A1)
【文献】特開2017-057349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00- 5/02
5/12- 5/22
C08G 18/00- 18/87
C08F 6/00-246/00
299/00-299/08
301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1のセグメントを含む、樹脂フィルムであって、前記樹脂フィルムは、エラストマーフィルムであり、条件1
~4を満たすことを特徴とする、樹脂フィルム。
条件1: 樹脂フィルムのブチルカルビトールアセテートによる膨潤率が、200%以下。
条件2: 樹脂フィルムの表面自由エネルギーが、25mN/m以上。
条件3: 樹脂フィルムのJIS Z0208-1976の、条件Bによる透湿度が、100g/m
2
・24h以下。
条件4:樹脂フィルムの膨潤率から求めた、ハンセンの溶解度パラメーターの距離(D)、分散項(δ
D
)、極性項(δ
P
)、及び水素結合項(δ
H
)が、式1及び式2を満たす。
式1 : D <20(Jcm
3
)
0.5
式2 : (δ
P
+δ
H
)/D <0.5
【化1】
R
1は、水素またはメチル基を指す。
R
2は、以下のいずれかを指す。
置換または無置換のアルキレン基
置換または無置換のアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
【請求項2】
前記樹脂フィルムは、化学式2のセグメント、化学式3のセグメント、化学式4のセグメント、化学式5のセグメント、及びそれらの水添体のセグメントからなる群より選ばれる少なくとも1つのセグメントを含む樹脂前駆体を、架橋させてなる硬化物であることを特徴とする、請求項
1に記載の樹脂フィルム。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【請求項3】
前記樹脂フィルムは、化学式6のセグメントを含む樹脂前駆体を、架橋させてなる硬化物であることを特徴とする、請求項1
または2に記載の樹脂フィルム。
【化6】
R
3は、水素またはメチル基を指す。
R
4、R
5は、以下のいずれかを指す。
置換または無置換のアルキレン基
置換または無置換のアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
R
6は、以下のいずれかを指す。
置換または無置換のアルキレン基
【請求項4】
前記樹脂フィルムは、化学式7のセグメントを含む樹脂前駆体を、架橋させてなる硬化物であり、前記樹脂前駆体は、条件5を満たすことを特徴とする、請求項1から
3のいずれかに記載の樹脂フィルム。
条件5:樹脂前駆体の平均(メタ)アクリロイル基当量が、4,000g/eq以上、12,000g/eq以下。
【化7】
R
7は、水素またはメチル基を指す。
R
8、R
9は、以下のいずれかを指す。
置換または無置換のアルキレン基
置換または無置換のアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
R
10は、以下のいずれかを指す。
置換または無置換のアルキレン基
置換または無置換のアルケニレン基
【請求項5】
前記請求項1から
4のいずれかに記載の樹脂フィルムと、前記樹脂フィルム上に形成された電気回路とを備える電気回路体
。
【請求項6】
前記請求項1から
4のいずれかに記載の樹脂フィルムを含む、ヘルスケアセンサー。
【請求項7】
前記請求項1から
4のいずれかに記載の樹脂フィルムを含む、ウエアラブルセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟で復元性が高く、かつ加工適性に優れる樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
IoT(Internet of things)社会の進展に伴い、微小な圧力変化や、温度、歪みなどを検出するセンサーが、日常生活の様々なものに取り付けられるようになり、そのデータを活用することで、生活の質の向上に役立っている。
【0003】
さらに、このようなセンサーを、人の体に違和感なく、長時間取り付けられるデバイスが実用化されると、これまでは特殊な設備を用いても、短時間しか得られなかった人体のデータが、容易に長時間得られるようになり、これまでは検出が難しかった病気の予防や、スポーツや音楽などの技能の向上など、私たちの生活を大きく変えることができるようになると考えられる。
【0004】
センサーなどを実装した小型デバイスは、これまでもあり、その基材には樹脂フィルムが用いられているが、ポリイミドなどの剛直な化学結合を有するフィルムでは、材料を自由に曲げることはできても、容易に変形させたり、素早く復元させたりすることは難しい。そのため、自由に曲げ伸ばしができる樹脂フィルムが求められている。また、これらのフィルムには、既存のフィルム材料と同等にセンサーや配線を使用条件下で劣化させないことも求められる。
【0005】
自由に曲げ伸ばしができる既存の樹脂フィルムの例として、特許文献1には「カーボネート結合を有するポリエーテルポリオール(a)とイソシアネート化合物(b)を反応させて製造されるポリウレタンであって、ポリエーテルポリオール(a)の水酸基価が55以下であるポリウレタン。」が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には「少なくとも(a-1)ポリイソシアネート、(a-2)脂環式構造を有する数平均分子量500以下の低分子量ポリオール及び(a-3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、該組成物における計算網目架橋点間分子量が1000以上、6000以下であることを特徴とする、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。」が提案されている。さらに、非特許文献1に、架橋性の工業用シリコーンエラストマーフィルムについて、が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-189886号公報
【文献】特開2010-222568号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】旭化成ワッカーホームページ ELASTSILR FILM2030 http://www.aws-silicone.com/dcms_media/other/EL%20FILM.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のようなセンサー、いわゆるウエアラブルセンサーや、ヘルスケアセンサーなどのデバイスにて、回路材料に用いる樹脂フィルムは、人体に貼り付けたときに自由な曲げ伸ばしができる高い柔軟性と復元性に加えて、その表面に回路形成ができることが求められる。これらの回路形成では、銅箔を樹脂フィルムの表面にラミネートする従来のFPC作成技術による方法の他に、樹脂フィルムの伸縮に追随可能な金属ペーストを用いた、プリンタブルエレクトロニクスの手法により形成することがある。この場合、金属ペーストに含まれる溶媒に対する耐性や、金属ペーストの乾燥に耐える耐熱性、さらに形成された回路パターンの高い密着性が必要になる。
【0010】
以上のような要望に対し、本発明者らが前述の観点で、従来技術について確認したところ、特許文献1に提案されている樹脂で作成された樹脂フィルムは、復元性と後工程に耐える耐熱性や、回路印刷時の耐溶媒性や、回路印刷部の高湿環境下での耐久性が不十分であった。また、特許文献2に記載の樹脂で作成された樹脂フィルムは、復元性と、耐溶媒性、回路印刷部の高湿環境下での耐久性が不十分であった。さらに、非特許文献1に記載されているようなシリコーンエラストマーフィルムは、回路パターンの密着性と回路印刷部の高湿環境下での耐久性が不十分であった。以上の点から、本発明の課題は、柔軟性と復元性のような機械特性に加え、金属ペースト印刷に耐える耐溶媒性や耐熱性、金属ペーストにより形成された回路パターンの密着性や高湿環境下での耐久性を有する樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0012】
1) 化学式1のセグメントを含む、樹脂フィルムであって、前記樹脂フィルムは、エラストマーフィルムであり、条件1及び条件2を満たすことを特徴とする、樹脂フィルム。
【0013】
条件1: 樹脂フィルムのブチルカルビトールアセテートによる膨潤率が、200%以下。
【0014】
条件2: 樹脂フィルムの表面自由エネルギーが、25mN/m以上。
【0015】
【0016】
R1は、水素またはメチル基を指す。
【0017】
R2は、以下のいずれかを指す。
置換または無置換のアルキレン基
置換または無置換のアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
2) 前記樹脂フィルムは、条件3を満たすことを特徴とする、1)に記載の樹脂フィルム。
【0018】
条件3: 樹脂フィルムのJIS Z0208-1976の、条件Bによる透湿度が、100g/m2・24h以下。
【0019】
3) 前記樹脂フィルムが、条件4を満たすことを特徴とする、1)または2に記載の樹脂フィルム。
【0020】
条件4:樹脂フィルムの膨潤率から求めた、ハンセンの溶解度パラメーターの距離(D)、分散項(δD)、極性項(δP)、及び水素結合項(δH)が、式1及び式2を満たす。
【0021】
式1 : D <20(Jcm3)0.5
式2 : (δP+δH)/D <0.5
4)前記樹脂フィルムは、化学式2のセグメント、化学式3のセグメント、化学式4のセグメント、化学式5のセグメント、及びそれらの水添体のセグメントからなる群より選ばれる少なくとも1つのセグメントを含む樹脂前駆体を、架橋させてなる硬化物であることを特徴とする、1)から3)のいずれかに記載の樹脂フィルム。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
5)前記樹脂フィルムは、化学式6のセグメントを含む樹脂前駆体を、架橋させてなる硬化物であることを特徴とする、1)から4)のいずれかに記載の樹脂フィルム。
【0027】
【0028】
R3は、水素またはメチル基を指す。
【0029】
R4、R5は、以下のいずれかを指す。
置換または無置換のアルキレン基
置換または無置換のアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
R6は、以下のいずれかを指す。
置換または無置換のアルキレン基
置換または無置換のアルケニレン基
6)前記樹脂フィルムは、化学式7のセグメントを含む樹脂前駆体を、架橋させてなる硬化物であり、
前記樹脂前駆体は、条件5を満たすことを特徴とする、1)~5)のいずれかに記載の樹脂フィルム。
【0030】
条件5:樹脂前駆体の平均(メタ)アクリロイル基当量が、4,000g/eq以上、12,000g/eq以下。
【0031】
【0032】
R7は、水素またはメチル基を指す。
【0033】
R8、R9は、以下のいずれかを指す。
置換または無置換のアルキレン基
置換または無置換のアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
R10は、以下のいずれかを指す。
置換または無置換のアルキレン基
置換または無置換のアルケニレン基
7)前記1)から6)のいずれかに記載の樹脂フィルムと、前記樹脂フィルム上に形成された電気回路とを備える電気回路体
8)前記1)から6)のいずれかに記載の樹脂フィルムを含む、ヘルスケアセンサー。
【0034】
9)前記1)から6)のいずれかに記載の樹脂フィルムを含む、ウエアラブルセンサー。
【発明の効果】
【0035】
柔軟性と復元性と、耐溶媒性、耐熱性、密着性を両立した樹脂フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明を実施するための形態を述べる前に、本発明者らは、従来技術にて本発明の課題を解決できない理由について、以下のように考えた。
【0038】
特許文献1に記載のポリウレタンが、エラストマーとして機能する理由は、ポリマーが柔軟性のあるソフトセグメントと凝集力の高いハードセグメントを有し、それらがミクロ相分離構造を形成していることにある。そして、柔軟なソフトセグメントの変形により伸長性が、ハードセグメント間の凝集力による物理架橋により復元性を発現する。本発明の課題のような、高いレベルの復元性や工程に耐える耐熱性を発現するには、架橋の強化が必要で、その実現には、より強い凝集力をもったハードセグメントを必要とする。そのためにはハードセグメントの体積を大きくする必要が有るが、反面、弾性率が高くなってしまう。この結果、高いレベルの柔軟性、高いレベルの復元性、耐熱性は、トレードオフの関係になり、結果として、復元性と、耐熱性が不十分になっている。
【0039】
特許文献2に記載のウレタンアクリレートの硬化物は、ハードセグメント間の凝集力による物理架橋に加えて、アクリレートの架橋による化学架橋を有するが、当該材料は、数平均分子量500以下の低分子量ポリオールを用いることを必須としている。これは鎖延長剤として機能するため、ハードセグメントの体積が大きくなり、ミクロ相分離構造を作るため、長周期構造が出現して、復元性が不十分になっている。
【0040】
また、特許文献1、2の樹脂は、柔軟性を発現するのに必要なソフトセグメントが、比較的極性の高いセグメントで形成されている。 そのため、金属ペーストに含まれるバインダー成分との親和性は強いため、回路パターンの密着性は良好だが、金属ペーストに含まれる極性溶媒との親和性が高く、印刷時に極性溶媒が浸透し、膨潤するため、耐溶媒性が不十分になっている。さらに、高湿条件下では、フィルムの含水率が上昇し、さらに透湿性も高いため、回路印刷部の耐久性が不十分となったと考えている。
【0041】
特許文献3に記載のシリコーンエラストマーフィルムは、自由度が高く、かつ疎水性の高いジメチルシロキサン骨格からなることから、金属ペーストに含まれる極性溶媒との親和性は低いため、耐溶媒性は良好だが、金属ペーストに含まれるバインダー成分との親和性が弱く、回路パターンの密着性が不十分になっている。
【0042】
また、シリコーンエラストマーは、隙間の多い分子構造のため、透湿度が高く、回路印刷部の耐久性が不十分となったと考えている。
【0043】
これに対し、本発明者らは、前述の課題を解決する方法として、復元性の発現と耐熱性の付与に必要な架橋構造を、従来技術のように、ハードセグメント間の凝集による物理架橋に頼らず、小さく強固な化学架橋を、フィルム内で低密度に形成することを見出し、これにより高いレベルの柔軟性と耐熱性を両立することを考案した。また、金属ペーストに含まれる極性溶媒に対する耐溶媒性と、回路パターンの密着性、および高湿環境下での耐久性については、樹脂フィルムのポリマー骨格を、機能分離させることにより、達成している。以下、本発明の詳細について述べる。
【0044】
本発明の樹脂フィルムは、化学式1のセグメントを含む樹脂フィルムであって、本発明の樹脂フィルムは、エラストマーフィルムであって、以下の条件1及び条件2を満たすことが重要である。
【0045】
条件1: 樹脂フィルムのブチルカルビトールアセテートによる膨潤率が、200%以下。
【0046】
条件2: 樹脂フィルムの表面自由エネルギーが、25mN/m以上。
【0047】
ここで、化学式1のセグメントは、(メタ)アクリル基が架橋して得られた(メタ)アクリル残基を指す。本発明の樹脂フィルムは、(メタ)アクリル基が架橋して得られた(メタ)アクリル残基を有することにより、特許文献1に見られる柔軟性、復元性、耐熱性のトレードオフの関係を避けることができる。
【0048】
【0049】
R1は、水素またはメチル基を指す。
【0050】
R2は、以下のいずれかを指す。
置換または無置換のアルキレン基
置換または無置換のアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアリーレン基。
【0051】
ここで、エラストマーフィルムとは、柔軟性と復元性をもった高分子を含むフィルムを指す。本発明においては、エラストマーフィルムとは5%歪み応力が、10MPa以下で、20%伸長時の弾性復元率が80%以上の材料を指し、5%歪み応力が、5MPa以下で100%伸長時の弾性復元率が80%以上の材料が、柔軟性と復元性の観点でより好ましい。5%歪み応力と、20%伸長時と100%伸長時の弾性復元率の評価方法は後述する。
【0052】
条件1の樹脂フィルムのブチルカルビトールアセテートによる膨潤率は、25℃の環境にて、フィルムをブチルカルビトールアセテートに30分浸漬前後の、質量変化率を指し、200%以下が好ましく、150%以下がより好ましい。測定方法については、実施例の項に示す。樹脂フィルムのブチルカルビトールアセテートによる膨潤率が200%よりも大きいと、樹脂フィルム表面に金属ペーストを用いて回路印刷をしたとき、にじみが出たり、印刷再現性が低下したり、寸法精度が低下したりする場合がある。
【0053】
条件2の樹脂フィルムの表面自由エネルギーは、樹脂フィルムの表面に対して、水、エチレングリコール、ホルムアミド、ジヨードメタンによる25℃での静的接触角を求め、各液体での静的接触角と、以下の非特許文献3に記載の、各液体の表面自由エネルギーの分散項、極性項、水素結合項を、以下の非特許文献2に記載の「畑、北崎の拡張ホークスの式」に導入し、連立方程式を解くことにより求めた値を指す。測定方法の詳細は後述する。
非特許文献2:北崎寧昭、畑 敏雄:日本接着協会紙,8,(3) 131(1972).
非特許文献3:J.Panzer :J.Colloid Interface Sci.,44,142 (1973).。
【0054】
樹脂フィルムの表面自由エネルギーは、25mN/m以上が好ましく、35mN/m以上がより好ましい。表面自由エネルギーが25mN/mよりも低いと、回路の樹脂フィルム表面への密着性が不十分で、樹脂フィルム状に回路パターンを形成したとき、繰り返し伸縮をおこなったときに、センサーから得られる信号のS/N比が低下したり、さらには回路パターンの破断による導通不良が発生したりする場合がある。
【0055】
さらに、本発明の樹脂フィルムは、以下の条件3を満たすことが好ましい。
【0056】
条件3: 樹脂フィルムのJIS Z0208-1976の、条件Bによる透湿度が、100g/m2・24h以下。
【0057】
樹脂フィルムの、JIS Z0208-1976の、条件Bによる透湿度は、50g/m2・24h以下がより好ましく、25m2・24h以下が特に好ましい。フィルムの透湿度を下げることにより、配線材料やセンサーの劣化を防ぐことができる。
【0058】
さらに、本発明の樹脂フィルムは、以下の条件4を満たすことが好ましい。
【0059】
条件4:樹脂フィルムの膨潤率から求めた、ハンセンの溶解度パラメーターの距離(D)、分散項(δD)、極性項(δP)、及び水素結合項(δH)が、式1及び式2を満たす。
【0060】
式1 : D <20(Jcm3)0.5
式2 : (δP+δH)/D <0.5。
【0061】
溶解度パラメーター(以下、SP値)とは、ヒルデブランドにより提案された凝集エネルギー密度の平方根で定義される物性値であり、溶媒の溶解挙動を示す数値である。これに対し、ハンセンの溶解度パラメーター(以下、HSP値)は、このSP値を、分散項(δD)、極性項(δP)、水素結合項(δH)の3成分に分割することで、SP値の極性/非極性を考慮したものであり、物質の溶解性を評価するだけでなく、高分子材料の耐溶剤性・耐水性評価、医薬品の溶解性評価、溶媒中の微粒子の凝集・分解性評価などで用いられているパラメーターのひとつである。本発明の樹脂フィルムの分散力項(δD)、極性項(δP)、水素結合項(δH)は、HSP値が既知の溶媒に対する膨潤挙動から求めたもので、測定方法の詳細については後述する。
【0062】
ハンセンの溶解度パラメーターの距離(D)は、式3より求められ、ハンセンの溶解度パラメーターの分散項(δD)、極性項(δP)、水素結合項(δH)を、それぞれの軸に取った3次元空間を作成したときに、原点からの距離に相当する。また、ヒルデブランド溶解度パラメーターに相当する値であり、分子間力の大きさを示す尺度である。
【0063】
式3 : D=(δD
2+δP
2+δH
2)1/2。
【0064】
また、式2の左辺は、ハンセンの溶解度パラメーターの非分散項の割合を示すものであり、極性の大きさを表す指標で、小さいほど、極性が小さいことを示す。
【0065】
式1のDは、20 (Jcm3)0.5よりも小さいことが好ましく、19(Jcm3)0.5よりも小さいことがより好ましく、式2の(δP+δH)/Dは、0.5よりも小さいことが好ましく、0.4よりも小さいことがより好ましい。
【0066】
式1のDが、20(Jcm3)0.5以上、または式2の(δP+δH)/Dが0.5以上になると、金属ペーストの金属ペーストを用いて回路印刷をする際に、にじみが出たり、印刷再現性が低下したり、寸法精度が低下したりする場合がある。
【0067】
さらに、本発明の樹脂フィルムは、前述の条件1、条件2、条件3を満たすために、特定のセグメントを含む樹脂前駆体を、架橋させてなる硬化物であることが好ましい。
【0068】
具体的には、ポリジエン系のセグメントを含む樹脂前駆体が好ましく、より具体的には化学式2、化学式3、化学式4、化学式5、及びそれらの水添体のセグメントからなる群より選ばれる少なくとも1つのセグメントを含む樹脂前駆体が好ましく、化学式2、化学式3、化学式4、及び化学式5の水添体のセグメントからなる群より選ばれる少なくとも1つのセグメントがより好ましく、化学式2または化学式3の水添体のセグメントが特に好ましい。樹脂前駆体中の化学式2から5のセグメントの重合度は、5以上が好ましく、7以上がより好ましい。樹脂前駆体については後述する。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
化学式2から5、およびそれらの水添体のセグメントを含む樹脂前駆体を用いることで、樹脂フィルムは低極性でかつ高い柔軟性を示す。これにより、耐溶媒性と柔軟性を付与することができる。
【0074】
さらに、本発明の樹脂フィルムは、化学式6のセグメントを含む樹脂前駆体を、架橋させてなる硬化物であることが好ましい。樹脂前駆体とは、架橋させることができる部位を有する化合物を指す。
【0075】
【0076】
R3は、水素またはメチル基を指す。
【0077】
R4、R5は、以下のいずれかを指す。
置換または無置換のアルキレン基
置換または無置換のアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
R6は、以下のいずれかを指す。
置換または無置換のアルキレン基。
【0078】
化学式6のセグメントは、Xで示される(メタ)アクリル基が末端にあり、Yで示されるポリイソシアネート残基がそれに隣接していることを示している。さらに、Yで示されるポリイソシアネート残基のもう一端が、Zで示されるとおりポリオール残基になっていることを示している。
【0079】
樹脂前駆体が、(メタ)アクリル基を有することで、樹脂フィルムに(メタ)アクリル基が架橋して得られた(メタ)アクリル残基を導入することができ、特許文献1に見られる柔軟性、復元性、耐熱性のトレードオフの関係を避けることができる。また、樹脂前駆体が、ポリイソシアネート残基を有することで、(メタ)アクリル基の架橋反応を促進して、少ない架橋点を高い反応性で反応させることが可能になる。また、極性の高いポリイソシアネート残基を有することで、金属ペーストに含まれるバインダー成分との親和性を付与することができる。さらに、樹脂前駆体が、ポリオール残基になっていることで、樹脂フィルムに柔軟性を付与することができる。
【0080】
さらに、本発明の樹脂フィルムは、化学式7のセグメントを含む樹脂前駆体を、架橋させてなる硬化物であり、前記樹脂前駆体は、以下の条件4を満たすことが好ましい。
条件4:樹脂前駆体の平均(メタ)アクリロイル基当量が、4,000g/eq以上、12,000g/eq以下
【0081】
【0082】
R7は、水素またはメチル基を指す。
【0083】
R8、R9は、以下のいずれかを指す。
置換または無置換のアルキレン基
置換または無置換のアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアリーレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
R10は、以下のいずれかを指す。
置換または無置換のアルキレン基
置換または無置換のアルケニレン基。
【0084】
ここで、化学式7のセグメントの構成は、化学式6と同じである。
【0085】
また、樹脂前駆体の平均(メタ)アクリロイル基当量とは、樹脂前駆体の重量平均分子量を、樹脂前駆体の設計上の(メタ)アクリロイル基の数で割った値を指す。樹脂前駆体の平均(メタ)アクリロイル基当量は4,000g/eq以上、12,000g/eq以下が好ましく、5,000g/eq以上、10,000g/eq以下がより好ましい。樹脂前駆体の平均(メタ)アクリロイル基当量が、4,000g/eqよりも小さいと耐溶媒性が不十分になる場合があり、12,000g/eqより大きいと、復元性が不十分になる場合がある。
【0086】
さらに、本発明は、前記樹脂フィルムを含むヘルスケアセンサー、またはウエアラブルセンサーであってもよい。ここで、ヘルスケアセンサーとは、健康維持や、医療の質の向上を目的とし、呼吸数や心拍数、体温、血圧から、心電図、脳波などの生体情報を、生体に直接取り付けることで連続的に記録するセンサー、およびそれらを用いたデバイスを指す。
【0087】
また、ウエアラブルセンサーとは、前述のヘルスケアセンサーなどの医療、健康の他に、大気圧センサー、温度センサー、加速度センサーや、歪みセンサーなどを用いフィットネスや、スポーツなどの分野における各種データを、連続的に記録するセンサー、およびそれらを用いたデバイスを指す。
【0088】
[本発明の形態]
以下、本発明の実施の形態について具体的に述べる。
【0089】
[樹脂フィルム]
本発明の樹脂フィルムは、単体で膜状の構造を成り立たせているものであれば、その層数に特に限定はなく、1層から形成されていてもよいし、2層以上の層から形成されていてもよい。ここで層とは、厚み方向に向かって、隣接する部位と区別可能な境界面を有し、かつ有限の厚みを有する部位を指す。より具体的には、前記樹脂フィルムの断面を電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、不連続な境界面の有無により区別されるものを指す。樹脂フィルムの厚み方向に組成が変わっていても、その間に前述の境界面がない場合には、1つの層として取り扱う。
【0090】
本発明の樹脂フィルムは、その課題であった、柔軟性、復元性、耐溶媒性、耐熱性、回路パターン密着性の他に、耐指紋性、成型性、意匠性、耐傷性、防汚性、反射防止、帯電防止、導電性、熱線反射、近赤外線吸収、電磁波遮蔽等の他の機能を有してもよく、その場合にはさらに1つ以上の層を形成してもよい。例えば前述の機能を有する機能層、粘着層、電子回路層、印刷層、光学調整層等や他の機能層を設けてもよい。
【0091】
本発明の樹脂フィルムの厚みには特に限定はなく、その用途によって適宜選択される。樹脂フィルムの厚みの下限は、樹脂フィルム自身の弾性率、破断伸度、積層体からの剥離力や剥離角度などの影響を受けるため、一概には定まらないが、後述する積層体の製造方法を用いて、一般的な柔軟材料同等の物性を実現する場合には、数10μm程度が下限である。
【0092】
[樹脂前駆体]
樹脂前駆体は、架橋させることができる部位を有する化合物であれば、特に限定されないが、化学式化学式2から5と6または、化学式7のセグメントを含む樹脂前駆体が好ましい。
【0093】
化学式6または7のセグメントは、前述のように、図中のXで示される(メタ)アクリル基が末端にあり、この末端にある(メタ)アクリル基(X)が、架橋させることができる部位に相当する。さらに、(メタ)アクリル基(X)は、図中のYで示されるポリイソシアネート残基と隣接している。さらにYで示されるポリイソシアネート残基ウレタン結合のもう一端と、Zで示されるポリオール残基(Z)が隣接していることを意味している。
【0094】
化学式6または7のポリイソシアネート残基(Y)は、好ましくは、TDI、MDI、NDI、TODI、XDI、PPDI、TMXDI、HMDI、IPDI、H6XDI、H12MDI等のポリイソシアネートの残基である。化学式7のポリオール残基は、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールであり、より好ましくは、前述の化学式2から5のセグメントのセグメントを含むポリオールであることが、耐溶媒性と柔軟性を両立する観点から好ましい。
【0095】
[積層体]
本発明の樹脂フィルムは、その一方の面に支持基材を有する積層体を形成してもよい。積層体は、前記支持基材と前記樹脂フィルムとの間の剥離力が、1N/50mm以下であることを特徴とする積層体であることが好ましい。なお、樹脂フィルムとの剥離力が1N/50mm以下である支持基材のことを、以下においては剥離可能な支持基材と記す。
【0096】
積層体の構成について、図を用いて説明する。積層体1は、
図1に示すように、樹脂フィルム2の少なくとも一方の面に、剥離可能な支持基材3(樹脂フィルムとの剥離力が1N/50mm以下の支持基材)を有する積層体であることが好ましい。
【0097】
ここで、支持基材とは、本発明の積層体を形成する際に、その一方の面に樹脂フィルムを設けるにあたり、後述する積層体の製造方法にて、樹脂フィルム形成用塗料組成物をその表面に展開することが可能な、面内方向に平坦な物品である。
【0098】
積層体において支持基材を設ける理由は、後述する樹脂フィルムの製造方法において、支持基材上に液体の塗料組成物を塗布して、架橋させることで樹脂フィルムを形成するためと、樹脂フィルムが加工される後工程内での加工性や搬送性を確保するためである。そのため、樹脂フィルムから剥離可能(樹脂フィルムとの剥離力が1N/50mm以下)で、樹脂フィルムの後加工性を含めた機能に影響を及ぼさなければ、特に限定されないが、
図2のように積層体4が樹脂フィルム5との間に離型層6を含む支持基材7を有することが好ましい。
【0099】
また、積層体をロール状に巻き取って中間製品とする場合、ロールの巻き姿を安定化させるため、
図3のように積層体8が、樹脂フィルム9とは反対側に離型層10を含む支持基材11を有してもよい。無論、
図4のように積層体12が、樹脂フィルム13との間に離型層14を、反対側に離型層15を含む支持基材16を有してもよい。この場合、離型層14と離型層15は同一でもよいが、ロールから積層体を巻き出す時の樹脂フィルム9と、離型層15間での剥離力と、後工程で樹脂フィルムと13と離型層14の間の剥離力を調整する必要があるため、異なる方が好ましい。
【0100】
また、樹脂フィルムの工程内での搬送性向上や傷つき防止のため、
図5にように積層体17が、樹脂フィルム18の一方の面に剥離可能な支持基材19を、もう一方の面に剥離可能な保護材料20を有してもよい。この保護材料と支持基材は同一であってもよいが、
図6のように積層体21が、樹脂フィルム22との間に離型層23を含む支持基材24と、保護材料25とを有してもよく、
図7のように積層体26が、樹脂フィルム27との間に離型層28を含む支持基材29と、離型層30を含む保護材料31とを有してもよく、
図8のように積層体32が、樹脂フィルム33との間に離型層34を含む支持基材35と、粘着層36を含む保護材料37とを有してもよい。積層体が、粘着層を有する保護材料を有するか、離型層を用いる保護材料を有するかは、後工程の適性や樹脂フィルムの物性から適宜選択される。
【0101】
前述のとおり、本発明の積層体において、支持基材と樹脂フィルム間の剥離力は、1N/50mm以下であることが好ましく、800mN/50mm以下であることがより好ましい。支持基材と樹脂フィルム間の剥離力について、下限は特に限定されないが、10mN/50mm未満になると、製造工程で、支持基材と樹脂フィルムが剥がれたり、浮いたりすることがあるので、支持基材と樹脂フィルム間の剥離力は10mN/50mm以上であることが好ましい。
【0102】
[電気回路体]
本発明の電気回路体は、前述の樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、電気回路が形成されているものであれば、特に限定はない。電気回路体の構成の一例について、図を用いて説明する。電気回路体38は、樹脂フィルム40の上に、電気回路39を形成している。電気回路の形成方法については、特に限定はなく、一般的なFPCの形成方法や、スクリーン印刷による方法を用いてもよい。
【0103】
[支持基材]
前述の積層体に用いられる支持基材は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれを用いてもよく、ホモ樹脂であってもよく、共重合または2種類以上のブレンドであってもよい。支持基材を構成する樹脂は、成形性が良好であれば好ましく、その点から熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0104】
支持基材に好適に用いられる熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6・ナイロン66などのポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、4フッ化エチレン樹脂・3フッ化エチレン樹脂・3フッ化塩化エチレン樹脂・4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体・フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ乳酸樹脂などを用いることができる。
【0105】
支持基材に好適に用いられる熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。熱可塑性樹脂は、十分な延伸性と追従性を備える樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、強度・耐熱性・透明性の観点から、特に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、もしくはメタクリル樹脂であることがより好ましい。
【0106】
支持基材に好適に用いられるポリエステル樹脂とは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、酸成分およびそのエステルとジオール成分の重縮合によって得られる。具体例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを挙げることができる。またこれらに酸成分やジオール成分として他のジカルボン酸およびそのエステルやジオール成分を共重合したものであってもよい。これらの中で透明性、寸法安定性、耐熱性などの点でポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートが特に好ましい。
【0107】
また支持基材には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。
【0108】
さらに支持基材は、単層構成、積層構成のいずれであってもよい。
【0109】
また、支持基材の表面には、本発明の樹脂フィルムとは別に易接着層、帯電防止層、アンダーコート層、紫外線吸収層、離型層などの機能性層をあらかじめ設けることも可能であり、本発明の樹脂フィルムは、支持基材と樹脂フィルム間の剥離力を低下させるため、離型層を有することが好ましい。離型層の詳細については後述する。
【0110】
離型層が設けられた支持基材の例として、東レフィルム加工株式会社製の“セラピール”(登録商標)、ユニチカ株式会社製の“ユニピール”(登録商標)、パナック株式会社製の“パナピール”(登録商標)、東洋紡株式会社製の“東洋紡エステル”(登録商標)、帝人株式会社製の“ピューレックス”(登録商標)などを挙げることができ、これらの製品を利用することもできる。
【0111】
支持基材の表面には、前記樹脂フィルムを形成する前に各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例としては、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が挙げられる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
【0112】
[離型層]
前述の積層体に用いられる支持基材は、離型層を有することが好ましい。離型層を有する支持基材は、離型フィルムとも呼ばれる。離型層は、密着性や帯電防止性、耐溶剤性等を付与する観点から複数の層から構成されていてもよく、支持基材の両面にあってもよい。
【0113】
離型層の組成や厚みは、樹脂フィルムからの剥離力を、前述の好ましい範囲にすることができれば特に限定されないが、離型層の面内均一性、品位、剥離力の面から10~500nmであることが好ましく、20~300nmであることがより好ましい。
【0114】
[保護材料]
前述の積層体は,前述の
図5のように樹脂フィルムの支持基材とは反対側の面に保護材料を有していてもよい。保護材料と支持基材の区別は、積層体の製造方法において、塗料組成物を塗工するものを支持基材とし、樹脂フィルム形成後に貼合されたものを保護材料とする。保護材料は、前述の支持基材と同じものでも、異なるものでもよいが、後工程の使用において、前述の支持基材と、剥離力に差を有することが好ましい。保護材料と支持基材の樹脂フィルムからの剥離力の大小関係は、後工程での使用方法に応じて適宜選択される。そのため、保護材料は、前述の
図7のように離型層を有してもよく、
図8のように粘着層を有してもよく、
図6のように層を有さなくてもよい。
【0115】
[樹脂フィルムの製造方法]
本発明の樹脂フィルムの製造方法は、特に限定されないが、好ましくは支持基材上に、化学式6または7のセグメントを含む樹脂前駆体を含む塗料組成物を塗布して、塗布層を形成し(工程1)、次いで塗布層から溶媒を除去して乾燥し(工程2)、活性エネルギー線を照射して、樹脂前駆体を架橋させ(工程3)、積層体から、離型フィルムを剥離する(工程4)を含むことが好ましい。
【0116】
工程1の支持基材上への塗料組成物の塗布方法は、支持基材上に塗料組成物を塗布し、面内均一な塗布層を形成できれば、特に限定されない。フィルム上への塗布方法としては、ディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などから適宜、選択できる。ここで塗布層とは、塗布工程により形成された「液体の層」を指す。
【0117】
工程2の溶媒を除去する方法、つまり乾燥方法は、支持基材上に形成された塗布層から、溶媒を除去することができれば、特に限定されない。乾燥方法としては、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)によりなどが挙げられるが、この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向でも乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。
【0118】
工程3の架橋方法は、乾燥後、溶媒を除去した塗布層に対して活性エネルギー線を照射することにより、反応させ、塗膜を架橋させるものである。
【0119】
活性エネルギー線による架橋は、汎用性の点から電子線(EB)および/または紫外線(UV)であることが好ましい。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100~3,000(mW/cm2)が好ましく、より好ましくは200~2,000(mW/cm2)、さらに好ましくは300~1,500(mW/cm2)、となる条件で紫外線照射を行うことがよく、紫外線の積算光量が、100~3,000(mJ/cm2)が好ましく、より好ましくは200~2,000(mJ/cm2)、さらに好ましくは300~1,500(mJ/cm2)となる条件で紫外線照射を行うことがよい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
【0120】
[塗料組成物]
前述の樹脂フィルムの製造方法にて用いられる「塗料組成物」は、支持基材上に面内均一に塗布でき、本発明の特性を示す樹脂フィルムを形成することができれば特に限定されないが、前述の積層体の製造方法に適した塗料組成物であることが好ましい。具体的には、前述の樹脂前駆体と、後述する溶媒やその他の成分を加えて、塗料組成物とすることが好ましい。
【0121】
[溶媒]
前述の樹脂フィルムの製造方法にて用いられる塗料組成物は、溶媒を含んでもよく、塗布層を面内に均一に形成するためには、溶媒を含む方が好ましい。溶媒の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上10種類以下、さらに好ましくは1種類以上6種類以下、特に好ましくは1種類以上4種類以下である。ここで「溶媒」とは、前述の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な、常温、常圧で液体である物質を指す。
【0122】
ここで、溶媒の種類とは溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2-プロパノールと、n-プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。さらに、溶媒を含む場合には以下の特性を示す溶媒であることが好ましい。
【0123】
[塗料組成物中のその他の成分]
前述の樹脂フィルムの製造方法にて用いられる塗料組成物は,酸化防止剤、重合開始剤、硬化剤や触媒を含むことが好ましい。重合開始剤および触媒は、樹脂フィルムの架橋を促進するために用いられる。重合開始剤としては、塗料組成物に含まれる成分をアニオン、カチオン、ラジカル重合反応等による重合、縮合または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
【0124】
酸化防止剤は、その作用機構から、ラジカル連鎖開始防止剤、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤に大別され、本発明の課題である、高温条件下での劣化抑制に対してこれらのいずれでも本発明の効果は得られるが、ラジカル捕捉剤、または過酸化物分解剤がより好ましく ヒンダードフェノール系、セミヒンダードフェノール系のラジカル捕捉剤、またはホスファイト系、チオエーテル系の過酸化物分解剤が特に好ましい。
【0125】
重合開始剤、硬化剤および触媒は種々のものを使用できる。また、重合開始剤、硬化剤および触媒はそれぞれ単独で用いてもよく、複数の重合開始剤、硬化剤および触媒を同時に用いてもよい。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤を併用してもよい。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。また、ウレタン結合の形成反応を促進させる架橋触媒の例としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどが挙げられる。
【0126】
光重合開始剤としては、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましい。アルキルフェノン形化合物の具体例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタン、1-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-エトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ビス(2-フェニル-2-オキソ酢酸)オキシビスエチレン、およびこれらの材料を高分子量化したものなどが挙げられる。
【0127】
また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、樹脂フィルムを形成するために用いる塗料組成物にレベリング剤、滑剤、帯電防止剤等を加えてもよい。これにより、樹脂フィルムはレベリング剤、滑剤、帯電防止剤等を含有することができる。
【0128】
レベリング剤の例としては、アクリル共重合体またはシリコーン系、フッ素系のレベリング剤が挙げられる。帯電防止剤の例としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩が挙げられる。
【0129】
[用途例]
本発明の樹脂フィルムは、高い柔軟性と復元性を有し、かつ後工程で様々な加工を必要とする用途に好適に用いることができる。例えば本発明の樹脂フィルムを用いたヘルスケアセンサーやウエアラブルセンサーである。さらに一例を挙げると、ウエアラブルデバイスや、ヘルスケアデバイス用の伸縮性、伸縮性センサー、伸縮性アクチュエーター用に好適に用いることができる。
【0130】
またこの他にも、高い柔軟性と復元性の観点から、復元性を必要とする粘着テープの基材、ディスプレイ用衝撃吸収材料、医療用フィルム基材、自動車用表面保護フィルム基材、圧力センサー芯材など、それぞれの表面材料や内部材料や構成材料や製造工程用材料に好適に用いることができる。
【実施例】
【0131】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。以下では実施例9を参考実施例9と読み替えるものとする。実施例および比較例において使用した各成分と略号は以下のとおりである。
【0132】
[樹脂前駆体の合成]
[ハーフアダクト体H1Aの合成]
攪拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えた、1Lの4口フラスコに、イソホロンジイソシアネート2モル、重合禁止剤(BHT)を仕込み、60℃に保ちながら、滴下漏斗より、ヒドロキシエチルアクリレート2モルを添加し、ハーフアダクト体H1Aを得た。
【0133】
[ハーフアダクト体T1Aの合成]
攪拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えた、4口フラスコに、トルエンジイソシアネート2モルと、重合禁止剤(BHT)を仕込み、60℃に保ちながら、滴下漏斗より、ヒドロキシエチルアクリレート2モルを添加し、ハーフアダクト体T1Aを得た。
【0134】
[ハーフアダクト体T1Mの合成]
攪拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えた、4口フラスコに、トルエンジイソシアネート2モルと、重合禁止剤(BHT)を仕込み、60℃に保ちながら、滴下漏斗より、ヒドロキシエチルメタクリレート2モルを添加し、ハーフアダクト体T1Mを得た。
【0135】
[ハーフアダクト体H3Aの合成]
攪拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えた、4口フラスコに、イソホロンジイソシアネート2モル、重合禁止剤(BHT)を仕込み、60℃に保ちながら、滴下漏斗より、ペンタエリスリトートトリアクリレート2モルを添加し、ハーフアダクト体H3Aを得た。
【0136】
[樹脂前駆体Aの合成]
攪拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えた、4口フラスコに、末端に水酸基を有する数平均分子量約3,100の水添ポリブタジエン(日本曹達株式会社製 GI-3000)、0.2モル、イソホロンジイソシアネートを0.15モルを仕込み、80℃4時間反応させて、GI-3000の平均4量体を得た。次いで、前記ハーフアダクト体H3A、0.1モルを仕込み、80℃6時間反応させ、2官能のウレタンアクリレートを得て、これを樹脂前駆体Aとした。樹脂前駆体Aについて、GPCで分子量を確認したところ、その重量平均分子量は、ポリスチレン換算で約14,000であった。
【0137】
[樹脂前駆体Bの合成]
攪拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えた、4口フラスコに、末端に水酸基を有する数平均分子量約3,100の水添ポリブタジエン(日本曹達株式会社製 GI-3000)、0.2モル、イソホロンジイソシアネートを0.16モルを仕込み、80℃4時間反応させて、GI-3000の平均5量体を得た。
次いで、前記ハーフアダクト体H3A0.04モルを仕込み、80℃6時間反応させ、さらに、前記ハーフアダクト体H1A0.04モルを仕込み、80℃6時間反応させ、4官能のウレタンアクリレートを得て、これを樹脂前駆体Bとした。この樹脂前駆体Bについて、GPCで分子量を確認したところ、その重量平均分子量は、ポリスチレン換算で約17,400であった。
【0138】
[樹脂前駆体Cの合成]
攪拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えた、4口フラスコに、末端に水酸基を有する数平均分子量約3,100の水添ポリブタジエン(日本曹達株式会社製 GI-3000)、0.2モル、イソホロンジイソシアネートを 0.13モルを仕込み、80℃4時間反応させて、GI-3000の3量体を得た。
次いで、前記ハーフアダクト体H3Aを0.067モルを仕込み、80℃6時間反応させ、さらに、前記ハーフアダクト体H1Aを0.067モルを仕込み、80℃6時間反応させ、4官能のウレタンアクリレートを得て、これを樹脂前駆体Cとした。この樹脂前駆体Cについて、GPCで分子量を確認したところ、その重量平均分子量は、ポリスチレン換算で約10,000であった。
【0139】
[樹脂前駆体Dの合成]
攪拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えた、4口フラスコに、末端に水酸基を有する数平均分子量約1,500の水添ポリブタジエン(日本曹達株式会社製 GI-1000)、0.2モル、前記ハーフアダクト体T1A0.4モルを仕込み、80℃6時間反応させ、2官能のウレタンアクリレートを得て、これを樹脂前駆体Dとした。樹脂前駆体Dについて、GPCで分子量を確認したところ、その重量平均分子量は、ポリスチレン換算で約2,000であった。
【0140】
[樹脂前駆体Eの合成]
攪拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えた、4口フラスコに、末端に水酸基を有する数平均分子量約3100のポリブタジエン(日本曹達株式会社製 G-3000)、0.2モル、前記ハーフアダクト体T1M、0.4モルを仕込み、80℃6時間反応させ、2官能のウレタンメタアクリレートを得て、これを樹脂前駆体Eとした。樹脂前駆体Eについて、GPCで分子量を確認したところ、その重量平均分子量は、ポリスチレン換算で約3,500であった。
【0141】
[樹脂前駆体Fの合成]
攪拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えた、4口フラスコに、末端に水酸基を有する数平均分子量約1,900の水添ポリブタジエン(日本曹達株式会社製 GI-2000)、0.2モル、ピロメリット酸0.1モル、ベンジルジメチルアミン0.001モルを仕込み、80℃で12時間反応させ、GI-2000の酸2量体を得た。
【0142】
次いで、重合禁止剤(BHT)、及び触媒(テトラブトキシチタン)を仕込み、攪拌しながら、メチルアクリレート 0.2モルを添加して反応を行い、2官能のポリエステルアクリレートを得て、これを樹脂前駆体Fとした。樹脂前駆体Fについて、GPCで分子量を確認したところ、その重量平均分子量は、ポリスチレン換算で約5,000であった。
【0143】
[樹脂前駆体Gの合成]
攪拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えた、4口フラスコに、末端に水酸基を有する数平均分子量約3,000のポリブタジエン(日本曹達株式会社製 G-3000)、0.2モル、重合禁止剤(BHT)、及び触媒(テトラブトキシチタン)を仕込み、攪拌しながら、メチルアクリレート0.2モルを添加して反応を行い、2官能のポリエステルアクリレートを得て、これを樹脂前駆体Gとした、樹脂前駆体Gについて、GPCで分子量を確認したところ、その重量平均分子量は、ポリスチレン換算で約3,200であった。
【0144】
[樹脂前駆体H]
樹脂前駆体Hとして、側鎖にメタクリル基がついた、2官能メタクリル変性ポリイソプレン(株式会社クラレ社製 クラプレンUC-102AM 重量平均分子量17,000)を用いた。
【0145】
[樹脂前駆体Jの合成]
攪拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えた、4口フラスコに、末端に水酸基を有する数平均分子量約3,000のポリブタジエン(日本曹達株式会社製 G-3000)、0.3モル、ピロメリット酸0.2モル、ベンジルジメチルアミン0.001モルを仕込み、80℃で12時間反応させ、G-3000の酸3量体を得た。
【0146】
次いで、重合禁止剤(BHT)、及び触媒(テトラブトキシチタン)を仕込み、攪拌しながら、メチルアクリレート0.2モルを添加して反応を行い、2官能のポリエステルアクリレートを得て、これを樹脂前駆体Jとした。樹脂前駆体Jについて、GPCで分子量を確認したところ、その重量平均分子量は、ポリスチレン換算で約10,000であった。
【0147】
[樹脂前駆体Kの合成]
攪拌機、冷却管、温度計、滴下ロートを備えた、4口フラスコに、ジイソシアネート(IPDI)0.43モル%、ポリテトラメチレングリコール(三菱ケミカル株式会社製 PTMG2000)0.29モル%を、固形分濃度60質量%になるようにトルエンで希釈して仕込み、90℃で反応させ、残存イソシアネート基が初期添加量の1.4質量%となった時点で温度を70℃に下げ、ヒドロキシアクリレート(HEA)0.29モルを加え反応させ、残存イソシアネート基が初期添加量0.3質量%となった時点で反応を終了し、トルエンを追加して固形分濃度を60質量%に調整して、樹脂前駆体Kのトルエン溶液を得た。この樹脂前駆体Kについて、GPCで分子量を確認したところ、その重量平均分子量は、ポリスチレン換算で約29,000であった。
【0148】
[塗料組成物の調合]
[塗料組成物1]
以下の材料とメチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度40質量%の樹脂フィルム形成用塗料組成物1を得た。
【0149】
・樹脂前駆体A : 100質量部
・光重合開始剤“IRGACURE”184 (BASFジャパン株式会社製) : 3質量部。
【0150】
[塗料組成物2~10の調合]
前記塗料組成物1の調合に対し、樹脂前駆体Aを表1に記載の樹脂前駆体の組み合わせに変えた以外は同様にして、塗料組成物2~10を調合した。
【0151】
[塗料組成物の11の調合]
水添スチレン系熱可塑性エラストマー(S.O.E.R S1606 旭化成株式会社製)を、トルエンで溶解し、固形分濃度40質量%の塗料組成物11を得た。
【0152】
[塗料組成物の12の調合]
熱可塑性ウレタン(ミラクトランXN-2001)を、トルエンで溶解し、固形分濃度40質量%の塗料組成物12を得た。
【0153】
[離型層用塗料組成物]
下記材料を混合し、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール混合溶媒(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度5質量%の離型層用塗料組成物を得た。
・側鎖型カルビノール変性反応型シリコーンオイル
(X-22-4015信越化学工業(株) 固形分濃度:100質量%):5質量部
・両末端型ポリエーテル変性反応型シリコーンオイル
(X-22-4952信越化学工業(株) 固形分濃度:100質量%):5質量部
・アクリル変性アルキド樹脂溶液
(ハリフタール KV-905 ハリマ化成株式会社 固形分濃度 53質量%):100質量部
・イソブチルアルコール変性メラミン樹脂溶液
(メラン2650L 日立化成株式会社 固形分濃度 60質量%):20質量部
・パラトルエンスルホン酸:5質量部。
【0154】
[積層体、樹脂フィルムの製造方法]
[離型層付き支持基材の製造方法]
小径グラビアコーターを有する塗布装置を用い、厚み50μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製商品名“ルミラー”(登録商標)R75X)に、離型層用塗料組成物を離型層厚みが、約200nmになるように、グラビアロールの線数、グラビアロールの周速、離型層用塗料組成物固形分濃度を調整して塗布し、次いで熱風温度140℃にて30秒保持することで、乾燥と架橋を行い、離型層付き支持基材を得た。
【0155】
[積層体、樹脂フィルム1~10の製造方法]
スロットダイコーターによる連続塗布装置を用い、前述の塗料組成物1~10を、前述の離型層付き支持基材の離型層上に、架橋後の樹脂フィルムの厚みが指定の膜厚になるように、吐出流量を調整して塗布し、塗布層を形成した。次いで、塗布層を、下記の条件で乾燥させて、溶媒を除去した
送風温度 : 温度:80℃
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間 : 2分間
さらに、溶媒を除去して得られた塗布層(未架橋の樹脂フィルム)に、下記の条件で活性エネルギー線を照射して架橋させ、積層体1~10を得た。積層体を得た。
【0156】
照射光源 : 高圧水銀灯
照射出力 : 400W/cm2
積算光量 : 120mJ/cm2
酸素濃度 : 0.1体積%
最後に積層体から、支持基材を剥離し、樹脂フィルム1~10を得た。
【0157】
[樹脂フィルム11~12の製造方法]
スロットダイコーターによる連続塗布装置を用い、前述の塗料組成物11~12を、前述の離型層付き支持基材の離型層上に、架橋後の樹脂フィルムの厚みが指定の膜厚になるように、吐出流量を調整して塗布し、塗布層を形成した。 次いで、塗布層を、下記の条件で乾燥させて、溶媒を除去した次いで、塗布層を、下記の条件で乾燥させて、溶媒を除去し、積層体11~12を得た。
【0158】
送風温度 : 温度:80℃、
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間 : 5分間
最後に積層体から、支持基材を剥離し、樹脂フィルム11~12を得た。
【0159】
[樹脂フィルム13の製造方法]
樹脂フィルム13として、シリコーンエラストマーフィルム(ELASTOSILR FILM2030 旭化成ワッカーシリコーン株式会社製)を用いた。
【0160】
以上の方法により実施例1~9、比較例1~4の樹脂フィルムを作成した。各実施例、比較例に対応する樹脂フィルムの樹脂前駆体、塗料組成物、およびそれぞれの樹脂フィルムの厚みは、表1に記載した。また、樹脂フィルムへの化学式1から7の各セグメントの含有/非含有を、表2に記載した。
【0161】
表2において、化学式1の欄の「含む」の意味は、各々の実施例等が化学式1のセグメントを含むことを意味し、「含まない」の意味は、各々の実施例等が化学式1のセグメントを含まないことを意味する。化学式2~5についても、化学式1と同様である。また化学式6の欄の「含む」の意味は、各々の実施例等が、化学式6のセグメントを含む樹脂前駆体を架橋させた硬化物であることを意味し、「含まない」の意味は、各々の実施例等が、化学式6のセグメントを含む樹脂前駆体を架橋させた硬化物ではないことを意味する。化学式7についても、化学式6と同様である。
【0162】
【0163】
【0164】
[樹脂フィルムの評価]
樹脂フィルムについて、次に示す性能評価を実施した。特に断らない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
【0165】
[樹脂フィルムのブチルカルビトールアセテートによる膨潤率]
樹脂フィルムを1.5cm角に裁断し、電子天秤にて溶媒浸漬前の質量(A)を測定した。次いで、ガラス容器にブチルカルビトールアセテート10mlと、裁断したフィルムを1枚入れ、栓をして25℃の環境下で30分間放置した。次いで、ガラス容器から樹脂フィルムを取り出し、ガーゼで表面の液滴を拭き取り後、電子天秤にて溶媒浸漬後の質量(B)を測定した。前記AとBを式4に代入し、樹脂フィルムのブチルカルビトールアセテートの膨潤率を求めた。
【0166】
式4 : 膨潤率=B/A×100(%)。
【0167】
[樹脂フィルムの表面自由エネルギー]
樹脂フィルムの表面自由エネルギーは、樹脂フィルムの両面について、それぞれ、水、エチレングリコール、ホルムアミド、ジヨードメタンによる25℃での静的接触角を測定し、各液体の両面の平均値を求めた。静的接触角の測定は、下記の手順で行った。
【0168】
まず、樹脂フィルム作成時の支持基材側を向けて、ガラス板上に樹脂フィルムを固定し、25℃の環境下で、12時間放置した。接触角の測定は、協和界面科学性Drop Master DM-501を使用し、ニードルを這い上がらない範囲で、できるだけ小さい液滴を作成できる条件を用いた。そして、伸縮層表面に着滴してから5秒後に撮影した画像を使用し、θ/2法を用いて算出した値を、その液体の静的接触角とした。
【0169】
各液体での静的接触角と、非特許文献3に記載の、各液体の表面自由エネルギーの分散項、極性項、水素結合項を、非特許文献2に記載の「畑、北崎の拡張ホークスの式」に導入し、連立方程式を解くことにより求めた。
【0170】
[樹脂フィルムのJIS Z0208-1976の、条件Bによる透湿度]
樹脂フィルムのJIS Z0208-1976の、条件Bによる透湿度は、JIS Z0208-1976のカップ法に基づき、温度40℃相対湿度90%の環境下で24時間の間に樹脂フィルムを透過した水蒸気の質量と面積から算出した。
【0171】
[樹脂フィルムのハンセンの溶解度パラメーター]
前述の樹脂フィルムのブチルカルビトールアセテートによる膨潤率と同様にして、下記の14種類の溶媒ついて膨潤率を求め、下記の5段階に分類した。そして、各溶媒に対する膨潤率の点数を、Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP)ver.3.1.17(http://www.hansen-solubility.com/index.php?id)の、scoreに入力し、Advanced Sphere Fittingにて、Classic GAモード, Insideを2、Fitting AccuracyをHigherで計算させることで、各樹脂フィルムのハンセンの溶解度パラメーターの分散項(δD)、極性項(δP)、水素結合項(δH)を求めた。さらに、得られたδD、δP、δHを前述の式3に代入することで、ハンセンの溶解度パラメーターの距離(D)と、前述の式2に記載のハンセンの溶解度パラメーターの非分散項の割合を求めた。
【0172】
<使用した溶媒種>:アセトン、1-ブタノール、MEK、THF、トルエン、酢酸エチル、1,4-ジオキサン、NMP、シクロヘキサノン、DMF、DMSO、アセトニトリル、シクロヘキサン、ブチルカルビトールアセテートの合計14種。
【0173】
<膨潤率の分類>
変化率 100%以上120%未満:5点
変化率 120%以上150%未満:4点
変化率 150%以上200%未満:3点
変化率 200%以上250%未満:2点
変化率 250%以上 :1点。
【0174】
[樹脂前駆体の平均(メタ)アクリロイル基当量]
樹脂前駆体のポリスチレン換算重量平均分子量を、樹脂前駆体の設計上の官能基数で除した値を、樹脂前駆体の平均(メタ)アクリロイル基当量とした。なお、樹脂フィルムが樹脂前駆体を架橋させてなる硬化物ではない場合、または樹脂前駆体が(メタ)アクリロイル基を含まない場合には、「含まず」とした。
【0175】
[樹脂フィルムの柔軟性の評価]
積層体を10mm幅×150mm長の矩形に切り出した後、支持基材から樹脂フィルムを剥離し、試験片とした。
【0176】
引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT-100)を用いて、初期引張チャック間距離50mmとし、引張速度300mm/minに設定し、測定温度23℃で引張試験を行った。
【0177】
チャック間距離が、a(mm)のときのサンプルにかかる荷重b(N)を読み取り、以下の式から、ひずみ量x(%)と応力y(N/mm2)を算出した。ただし、試験前のサンプル厚みをk(mm)とする。
ひずみ量:x=((a-50)/50)×100
応力:y=b/(k×10)
上記で得られたデータのうち、歪み量5%での応力を5%歪み応力とした。
【0178】
[樹脂フィルムの復元性の評価]
樹脂フィルムを10mm幅×150mm長の矩形に切り出し試験片とした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT-100)を用いて、測定温度23℃において、復元性の優劣を見るため、変形速度の異なる2条件で評価を行った。
【0179】
条件A(20%伸長時の弾性復元率):初期チャック間距離50mm、引張速度50mm/minで歪み量20%までサンプルを伸長後、サンプルへの引っ張り荷重解放し、測定前に初期試長として印をつけていた距離を測定してLmmとして、以下の式から弾性復元率z1(%)を算出した。
【0180】
弾性復元率z1=(1-(L-50)/100)×100 (%)。
【0181】
条件B(100%伸長時の弾性復元率):初期チャック間距離50mm、引張速度300mm/minで歪み量100%までサンプルを伸長後、サンプルへの引っ張り荷重を解放し、測定前に初期試長として印をつけていた距離を測定してLmmとして、以下の式から、弾性復元率z2%を算出した。
【0182】
弾性復元率z2=(1-(L-50)/100)×100 (%)
なお、評価時に破断したものについては、「破断」と記載した。
【0183】
[樹脂フィルムの耐熱性の評価]
樹脂フィルムを10mm幅の矩形に切り出し、試験片とした。JIS K7244(1998)の引張振動-非共振法に基づき(これを動的粘弾性法とする)、セイコーインスツルメンツ株式会社製の動的粘弾性測定装置“DMS6100”を用いて樹脂フィルムの貯蔵弾性率と損失弾性率を求めた。
【0184】
測定モード:引張
チャック間距離:20mm
試験片の幅:10mm
周波数:1Hz
歪振幅:10μm
最小張力:20mN
力振幅初期値:40mN
測定温度:-100℃から200℃まで
昇温速度:5℃/分
この時、貯蔵弾性率や損失弾性率の測定と同時にdL値(LVDT(Linear Variable Differential Transformer)の出力値)が得られ、これが測定時の試験片の寸法に対応する値を表す。30℃におけるdL値をa30(μm)とし、150℃におけるdL値をa150(μm)として、以下の式にて寸法変化率を求めた。
【0185】
寸法変化率=((a150-a30)/20,000)×100(%)
さらに、上記式で得られた30℃における寸法を基準とした150℃の寸法変化率の絶対値を算出し、2.5%以下を、耐熱性合格とした。
【0186】
[樹脂フィルムの耐溶媒性の評価]
ガラス板上に樹脂フィルムを固定し、その上に銀ペースト剤(LS-453-6B 株式会社アサヒ化学研究所製)を、アプリケーターを用い、乾燥後の塗布厚みが約5μm、塗布幅が約15mmになるように塗布した。 80℃-30分間乾燥後、フィルムを観察し、下記の観点で点数をつけ、3点以上を合格とした。
【0187】
5点: 塗布部と未塗布部の境界面に、波打などの形状の変化無し
3点: 塗布部と未塗布部の境界面に、形状に波打ち等の変型を伴う膨潤痕あり
1点: 塗布部と未塗布部の境界面が著しい変型を起こし、部分的に塗膜の剥離が観察される。
【0188】
[樹脂フィルムの金属ペースト密着性の評価]
ガラス板上に樹脂フィルムを固定し、その上にペースト剤(LS-453-6B 株式会社アサヒ化学研究所製)を、アプリケーターを用いて、乾燥後の塗布厚み5μmになるように塗布し、80℃-30分間乾燥後、JISK5600-5-6(1999)に記載の付着性(クロスカット法)に従い、付着性評価を行い、JISK5600-5-6(1999)の、分類0から2までを合格、分類3~5までを不合格とした。
【0189】
[樹脂フィルムの加湿条件下での耐久性評価]
樹脂フィルムの上にペースト剤(LS-453-6B 株式会社アサヒ化学研究所製)を、スクリーン印刷機を用いて、乾燥後の塗布厚みが約5μmになるように塗布し、80℃-30分間乾燥し、
図9に示す電気回路(塗布幅/スペース幅:0.1mm/0.1mm)を得た。次いで、厚み50μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製商品名“ルミラー”(登録商標)R75X)に、両面粘着テープ(MCS70 株式会社美舘イメージング製)を貼り合わせ、カバーフィルムを得た。電気回路のペースト塗布側の面にカバーフィルムを貼り合わせ、温度85℃相対湿度85%の環境下に静置し、電極間に5Vの電圧を168時間印加した。その後、電気回路を顕微鏡で観察し、下記の観点で点数をつけ、3点以上を合格とした。
【0190】
5点: 電極の溶解またはデンドライトの形成が観察されない
3点: 電極の溶解またはデンドライトの形成が一部で観察されるが、電極間の短絡は観察されない
1点: 電極の溶解またはデンドライトの形成が観察され、さらに電極間の短絡が観察される。
【0191】
表3に各実施例、比較例に記載の樹脂フィルムの条件1から条件4の値を、表4に各実施例、比較例の樹脂フィルムの柔軟性、復元性、耐熱性、耐溶媒性、金属ペースト密着性の評価結果をまとめた。
【0192】
【0193】
【符号の説明】
【0194】
1、4、8、12、17、21、26、32:積層体
2、5、9、13、18、22、27、33、40:樹脂フィルム
6、10、14、15、23、28、30、34:離型層
3、7、11、16、19、24、29、35:支持基材
20、25、31、37:保護材料
36:粘着層
38:電気回路体
39:回路パターン
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明の樹脂フィルムは、高い柔軟性と復元性を有し、かつ後工程で様々な加工を必要とする用途に好適に用いることができる。一例を挙げると、ウエアラブルデバイスや、ヘルスケアデバイス用の伸縮性、伸縮性センサー、伸縮性アクチュエーター用に好適に用いることができる。
【0196】
またこの他にも、高い柔軟性と復元性の観点から、復元性を必要とする粘着テープの基材、ディスプレイ用衝撃吸収材料、医療用フィルム基材、自動車用表面保護フィルム基材、圧力センサー芯材など、それぞれの表面材料や内部材料や構成材料や製造工程用材料に好適に用いることができる。