(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物及び成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 77/06 20060101AFI20230711BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230711BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20230711BHJP
C08K 3/16 20060101ALI20230711BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20230711BHJP
C08K 5/092 20060101ALI20230711BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230711BHJP
C08L 77/02 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K3/013
C08K3/08
C08K3/16
C08K3/26
C08K5/092
C08L23/08
C08L77/02
(21)【出願番号】P 2019129491
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2022-01-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】山田 飛将
(72)【発明者】
【氏名】網谷 健
(72)【発明者】
【氏名】小山田 洋
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-521171(JP,A)
【文献】特表2002-513434(JP,A)
【文献】特表2005-527682(JP,A)
【文献】特開昭58-201845(JP,A)
【文献】特開昭51-143061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/06
C08K 3/013
C08K 3/08
C08K 3/16
C08K 3/26
C08K 5/092
C08L 23/08
C08L 77/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A-1)ポリアミド66と、
(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂と、
(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体及びE/X/Yターポリマー(式中、Eはエチレン、Xは酢酸ビニル、並びに(メタ)アクリル酸及びその誘導体からなる群より選ばれる1種以上の単量体(モノマー)、Yは無水マレイン酸誘導体である)からなる群より選ばれる1種以上の共重合体
(ただし、イオノマーを除く)と、を含む、ポリアミド樹脂組成物であって、
前記共重合体を構成する全構成単位の総質量に対する、エチレン単位の含有量が85質量%以上97質量%以下であり、
前記共重合体を構成する全構成単位の総質量に対する、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸モノエステル、及びフマル酸ジエステルからなる群より選ばれる1種以上のマレイン酸誘導体単位の含有量が3質量%以上15質量%以下であり、
前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の融点が210℃以上340℃以下であり、
前記(A-1)ポリアミド66に対する前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の質量比(A-2)/(A-1)が5/95以上95/5以下であり、
前記共重合体の含有量が、前記(A-1)ポリアミド66及び前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の合計質量100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下であ
り、
前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂がポリアミド6又はポリアミド612である、ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A-1)ポリアミド66及び前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂のうち、最も高い融点を有するポリアミド樹脂の融点+10℃における回転式レオメーターで測定したtanδが下記式を満たす、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【数1】
(式中、tanδ(1)は角速度1rad/secで測定した時のtanδ、tanδ(100)は角速度100rad/secで測定した時のtanδを表す。)
【請求項3】
前記共重合体の含有量が、前記(A-1)ポリアミド66及び前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の合計質量100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下である、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
(C)無機フィラーを更に含有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
(D)アルカリ金属塩を更に含有し、
前記(D)アルカリ金属塩の含有量が、前記(A-1)ポリアミド66及び前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の合計質量100質量部に対して、0.01質量部以上2質量部以下である、請求項1~
4のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
前記(D)アルカリ金属塩が、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムである、請求項
5に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
(E)中和剤を更に含有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項8】
(F)元素鉄を更に含有し、
前記(F)元素鉄の含有量が、前記(A-1)ポリアミド66及び前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の合計質量100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下である、請求項1~
7のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】
(G)ハロゲン化銅、並びに(H)アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選ばれる1種以上のハロゲン化物を更に含有する、請求項1~
8のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物をブロー成形により成形する、成形品の製造方法。
【請求項11】
前記成形品が中空形状である、請求項
10に記載の成形品の製造方法。
【請求項12】
前記成形品が自動車用材料部品である、請求項
10又は
11に記載の成形品の製造方法。
【請求項13】
前記成形品がターボダクトである、請求項
12に記載の成形品の製造方法。
【請求項14】
前記成形品がバッテリー冷却用パイプである、請求項
12に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物及び成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年自動車の軽量化を求める中で、樹脂部品が多用されている。中でもエンジン周辺部品として耐熱性、耐薬品性、成形性に優れるポリアミド樹脂の使用が増えている。従来、エンジンの吸排気系に接続するダクト部品としては、射出成形により得られるポリアミド66を用いた一次成形体を相互に溶着し、一部品として用いている。しかし、一次成形体の溶着を考慮した形状の設計は、単純な形状であれば十分対応可能であるが、一方で形状の複雑化には十分に対応しきれず設計の自由度が制限されている。
【0003】
このような背景の中、ブロー成形による各種部品の成形が検討されている。ブロー成形は通常、筒状の、例えばパリソンを成形し、続けてエアを吹き込むことで金型形状に応じた成形体を得ることが可能になる。また、複数の一次成形体を使う必要性がなく、溶着という工程も不要になるため、部品の接合を行うことなく最終成形品を得ることができる。
【0004】
ブロー成形用材料に求められる性能として、パリソンの耐ドローダウン性や延伸性が挙げられる。延伸性は押し出したパリソンを金型に挟み込んで所望の形状に成形する際に重要であるが、延伸性を左右する要素としてパリソンの固化速度が挙げられる。固化が早い材料であると、パリソンが所望の形状に延伸される前に冷却固化され完全な成形ができない。したがって吹き込み完了まで溶融状態を保つ必要がある。
【0005】
従来、ブロー成形用ポリアミド樹脂として、ポリアミド6、ポリアミド66等を主体としたアロイ樹脂が使われている(特許文献1)。中でもポリアミド6はポリアミド66や結晶性半芳香族ポリアミドに比べて結晶性が低いためにパリソンが固化し難く、ブロー成形に特に適している。
【0006】
一方で、ポリアミド66のような結晶性の高いポリアミド樹脂であっても、非晶性ポリアミドと混合して用いることで、結晶性を制御しブロー成形性を向上させる試みが行われている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-204675号公報
【文献】特開2009-132908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1~2に記載の技術においては、ブロー成形可能なポリアミド樹脂組成物であっても、ブロー成形性、例えば、肉厚均一性や表面外観、並びに、成形品としたときの耐熱エージング性及び耐薬品性まで十分に向上させることは難しい。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ブロー成形性、並びに、成形品としたときの耐熱エージング性及び耐薬品性に優れるポリアミド樹脂組成物、並びに前記ポリアミド樹脂組成物を用いた成形品の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係るポリアミド樹脂組成物は、(A-1)ポリアミド66と、(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂と、(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体及びE/X/Yターポリマー(式中、Eはエチレン、Xは酢酸ビニル、並びに(メタ)アクリル酸及びその誘導体からなる群より選ばれる1種以上の単量体(モノマー)、Yは無水マレイン酸誘導体である)からなる群より選ばれる1種以上の共重合体と、を含む、ポリアミド樹脂組成物であって、前記共重合体を構成する全構成単位の総質量に対する、エチレン単位の含有量が85質量%以上97質量%以下であり、前記共重合体を構成する全構成単位の総質量に対する、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸モノエステル、及びフマル酸ジエステルからなる群より選ばれる1種以上のマレイン酸誘導体単位の含有量が3質量%以上15質量%以下であり、前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の融点が210℃以上340℃以下であり、前記(A-1)ポリアミド66に対する前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の質量比(A-2)/(A-1)が5/95以上95/5以下であり、前記共重合体の含有量が、前記(A-1)ポリアミド66及び前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の合計質量100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下である。
【0011】
前記(A-1)ポリアミド66及び前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂のうち、最も高い融点を有するポリアミド樹脂の融点+10℃における回転式レオメーターで測定したtanδが下記式を満たしてもよい。
【0012】
【0013】
(式中、tanδ(1)は角速度1rad/secで測定した時のtanδ、tanδ(100)は角速度100rad/secで測定した時のtanδを表す。)
【0014】
前記(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体の含有量が、前記(A-1)ポリアミド66及び前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の合計質量100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下であってもよい。
【0015】
前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂が、ポリアミド6、ポリアミド610、及びポリアミド612からなる群より選ばれる1種以上であってもよい。
【0016】
前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂がポリアミド6又はポリアミド612であってもよい。
【0017】
上記第1態様に係るポリアミド樹脂組成物は、(C)無機フィラーを更に含有してもよい。
【0018】
上記第1態様に係るポリアミド樹脂組成物は、(D)アルカリ金属塩を更に含有し、前記(D)アルカリ金属塩の含有量が、前記(A-1)ポリアミド66及び前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の合計質量100質量部に対して、0.01質量部以上2質量部以下であってもよい。
【0019】
上記第1態様に係るポリアミド樹脂組成物は、前記(D)アルカリ金属塩が、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムであってもよい。
【0020】
上記第1態様に係るポリアミド樹脂組成物は、(E)中和剤を更に含有してもよい。
【0021】
上記第1態様に係るポリアミド樹脂組成物は、(F)元素鉄を更に含有し、前記(F)元素鉄の含有量が、前記(A-1)ポリアミド66及び前記(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の合計質量100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下であってもよい。
【0022】
上記第1態様に係るポリアミド樹脂組成物は、(G)ハロゲン化銅、並びに(H)アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選ばれる1種以上のハロゲン化物を更に含有してもよい。
【0023】
本発明の第2態様に係る成形品の製造方法は、上記第1態様に係るポリアミド樹脂組成物をブロー成形により成形する方法である。
前記成形品が中空形状であってもよい。
前記成形品が自動車用材料部品であってもよい。
前記成形品がターボダクトであってもよい。
前記成形品がバッテリー冷却用パイプであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
上記態様のポリアミド樹脂組成物によれば、ブロー成形性、並びに、成形品としたときの耐熱エージング性及び耐薬品性に優れるポリアミド樹脂組成物を提供することができる。上記態様の成形品の製造方法は、前記ポリアミド樹脂組成物を用いた方法であり、耐熱エージング性及び耐薬品性に優れる成形品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。
【0026】
なお、本明細書において、「ポリアミド」とは主鎖中にアミド(-NHCO-)基を有する重合体を意味する。
【0027】
≪ポリアミド樹脂組成物≫
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(A-1)ポリアミド66(以下、「(A-1)成分」と称する場合がある)、及び、(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂(以下、「(A-2)成分」と称する場合がある)からなる(A)ポリアミド樹脂(以下、「(A)成分」と称する場合がある)と、(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体(以下、「(B)成分」と称する場合がある)と、を含む。
【0028】
(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体を構成する全構成単位の総質量に対する、エチレン単位の含有量が85質量%以上97質量%以下であり、88質量%以上95質量%以下が好ましく、90質量%以上94質量%以下がより好ましい。
【0029】
(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体を構成する全構成単位の総質量に対する、マレイン酸誘導体単位の含有量が3質量%以上15質量%以下であり、5質量%以上12質量%以下が好ましく、6質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0030】
マレイン酸誘導体としては、例えば、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、メチル無水マレイン酸等が挙げられる。これらマレイン酸誘導体を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0031】
なお、本明細書において、「構成単位」とは、ポリアミド樹脂やエチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体を構成する構造において、一分子の単量体に起因する構造を意味する。例えば、マレイン酸誘導体単位とは、エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体中の一分子のマレイン酸誘導体に起因する構造を示す。また、エチレン単位とは、エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体中の一分子のエチレンに起因する構造を示す。構成単位は、単量体の(共)重合反応によって直接形成された単位であってもよく、(共)重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
【0032】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上記構成を有することで、(A)成分((A-1)成分及び(A-2)成分)と(B)成分とが適度に架橋することができ、ブロー成形性、並びに、成形品としたときの耐熱エージング性及び耐薬品性に優れるポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
以下、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の各構成成分について、詳細を説明する。
【0033】
<(A)ポリアミド樹脂>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂として、(A-1)ポリアミド66と、(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂とを含有する。
【0034】
[(A-1)ポリアミド66]
「ポリアミド66」とは、ジアミンとしてヘキサメチレンジアミンと、ジカルボン酸としてアジピン酸とを重合単量体として重合させてなり、ヘキサメチレンジアミンからなる単位とアジピン酸からなる単位とを有するポリアミド樹脂である。
【0035】
(A-1)ポリアミド66の末端アミノ基濃度は、特に限定されないが、(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体との反応が容易であることから、10μmol/g以上が好ましい。(A-1)ポリアミド66の末端アミノ基濃度の上限値は特に限定されないが、例えば100μmol/gとすることができる。
【0036】
(A-1)ポリアミド66の末端カルボキシ基濃度は、特に限定されないが、耐熱エージング性及び耐加水分解性に優れることから、100μmol/g以下が好ましい。(A-1)ポリアミド66の末端カルボキシ基濃度の下限値は特に限定されないが、例えば10μmol/gとすることができる。
【0037】
なお、(A-1)ポリアミド66の末端基濃度は、中和滴定により測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0038】
(A-1)ポリアミド66の硫酸相対粘度は、1.8以上4.5以下が好ましく、2.1以上4.0以下がより好ましい。硫酸相対粘度が上記下限値以上であることで、ブロー成形性及び成形品としたときの機械物性により優れたポリアミド樹脂組成物が得られる傾向にある。一方、硫酸相対粘度が上記上限値以下であることで、成形品の外観、生産性により優れたポリアミド樹脂組成物が得られる傾向にある。
なお、硫酸相対粘度は、JIS K 6920に準拠した方法により測定することができる。
硫酸相対粘度は、(A-1)ポリアミド66の重合時の圧力を調整することにより制御することができる。
【0039】
(A-1)ポリアミド66の融点は250℃以上270℃以下が好ましい。融点が上記下限値以上であることで、成形品としたときの耐熱性がより向上し、一方、上記上限値以下であることで、ポリアミド樹脂組成物の溶融加工中の熱分解や劣化をより効果的に抑制できる傾向にある。
融点は、JIS-K7121に準拠した方法で、測定することができる。測定装置としては、例えば、PERKIN-ELMER社製、Diamond DSC等を用いることができる。
融点は、(A-1)ポリアミド66を構成するモノマーを調整することにより制御することができる。
【0040】
(A-1)ポリアミド66は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、ヘキサメチレンジアミン以外のジアミンや、アジピン酸以外のジカルボン酸等を重合単量体として用いてもよい。このような重合単量体としては、例えば、アミノ酸、ラクタム、ジアミン、ジカルボン酸等が挙げられる。これら重合単量体を1種単独で重合させてなるポリアミドホモポリマーを用いてもよく、2種以上組み合わせて重合させてなるコポリマーを用いてもよい。
【0041】
アミノ酸としては、例えば、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられる。
【0042】
ラクタムとしては、例えば、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタム等が挙げられる。
【0043】
ジアミンは、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン及び脂環族ジアミンに分類することができる。
【0044】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-又は2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン等が挙げられる。
【0045】
芳香族ジアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0046】
脂環族ジアミンとしては、例えば、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン等が挙げられる。
【0047】
ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸に分類することができる。
【0048】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。
【0049】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等が挙げられる。
【0050】
脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0051】
(A-1)ポリアミド66の製造方法としては、特に限定されず、公知の製造方法で製造することができる。例えば、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸、必要に応じて、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸以外の重合単量体、溶媒又は水、触媒、並びに、重合調整成分等を溶融加熱して重合させる方法、途中まで熱重合させたプレポリマーを融点以下の過熱で固体状態のまま重合度を上げる固相重合法、プレポリマーを押出機を通して溶融させて重合度を上げる押出重合法等が挙げられる。これらの重合方法は、バッチ生産方式でも連続生産方式でもよい。
【0052】
[(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂]
(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジアミン及びジカルボン酸の縮合重合で得られるポリアミド樹脂、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド樹脂、アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド樹脂、及びこれらのポリアミド樹脂を構成する2種類以上の単量体の共重合で得られる共重合物等が挙げられる。これら(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0053】
(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の原料となる重合単量体について、以下に詳細を説明する。
【0054】
(ジアミン)
ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0055】
脂肪族ジアミンとしては、直鎖飽和脂肪族ジアミンであってもよく、分岐鎖状飽和脂肪族ジアミンであってもよい。分岐鎖状飽和脂肪族ジアミンとしては、例えば、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンが挙げられる。
【0056】
直鎖飽和脂肪族ジアミンは炭素数2以上20以下であるものが好ましく、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン等が挙げられる。
【0057】
分岐鎖状飽和脂肪族ジアミンは炭素数3以上20以下であるものが好ましく、2-メチルペンタメチレンジアミン(「2-メチル-1,5-ジアミノペンタン」とも記される)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルオクタメチレンジアミン、2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン等が挙げられる。
【0058】
脂環族ジアミン(脂環式ジアミンとも記される)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロペンタンジアミン等が挙げられる。
【0059】
芳香族ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、オルトフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0060】
これらジアミンは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0061】
(ジカルボン酸)
ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0062】
脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸であってもよく、分岐鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸であってもよく、炭素数3以上20以下のものが好ましい。このような脂肪族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルグルタル酸、2,2-ジエチルコハク酸、2,3-ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、ジグリコール酸等が挙げられる。
【0063】
脂環族ジカルボン酸(脂環式ジカルボン酸とも記される)の脂環構造の炭素数は、特に限定されないが、得られる(A-2)成分の吸水性と結晶化度のバランスの観点から、3以上10以下が好ましく、5以上10以下がより好ましい。
【0064】
脂環族ジカルボン酸は、無置換でもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1以上4以下のアルキル基が好ましい。置換基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
【0065】
このような脂環族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸等が挙げられる。
【0066】
芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無置換又は置換基で置換された炭素数8以上20以下の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。置換基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、炭素数7以上20以下のアリールアルキル基、ハロゲン基、炭素数3以上10以下のアルキルシリル基、スルホン酸基、スルホン酸塩を有する基等が挙げられる。ハロゲン基としては、例えば、クロロ基、ブロモ基等が挙げられる。スルホン酸塩を有する基を構成する塩としては、例えば、ナトリウム塩等が挙げられる。
【0067】
このような芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。
【0068】
これらジカルボン酸は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0069】
また、これらジカルボン酸に加えて、本実施形態の効果を損なわない範囲で、3価以上の多価カルボン酸をさらに用いてもよい。3価以上の多価カルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0070】
(ラクタム)
ラクタムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε-カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ラウロラクタム(ドデカノラクタム)等が挙げられる。中でも、靭性の観点から、ε-カプロラクタム又はラウロラクタムが好ましく、ε-カプロラクタムがより好ましい。
これらラクタムは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0071】
(アミノカルボン酸)
アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、上述したラクタムが開環した化合物、より具体的には、ω-アミノカルボン酸、α,ω-アミノカルボン酸等が挙げられる。
【0072】
アミノカルボン酸としては、脂肪族アミノカルボン酸であってもよく、芳香族アミノカルボン酸であってもよい。芳香族アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられる。
【0073】
アミノカルボン酸としては、結晶化度を高める観点から、ω位がアミノ基で置換された、炭素数4以上14以下の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アミノカルボン酸であることが好ましい。好ましいアミノカルボン酸として具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等が挙げられる。
【0074】
これらアミノカルボン酸は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0075】
(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4(ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド56(ポリペンタメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド116(ポリウンデカメチレンアジパミド)、ポリアミドTMHT(トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド2Me-5T(ポリ2-メチルペンタメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナメチレンテレフタルアミド)、2Me-8T(ポリ2-メチルオクタメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリアミド6C(ポリヘキサメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド2Me-5C(ポリ2-メチルペンタメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド9C(ポリノナメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、2Me-8C(ポリ2-メチルオクタメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミドPACM12(ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド)、ポリアミドジメチルPACM12(ポリビス(3-メチル-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、ポリアミド10T(ポリデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド11T(ポリウンデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド12T(ポリドデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド10C(ポリデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド11C(ポリウンデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド12C(ポリドデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)等が挙げられる。
なお、「Me」はメチル基を示す。
【0076】
中でも、(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂としては、成形品としたときの耐熱エージング性、機械物性、及び耐薬品性の観点から、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)からなる群より選ばれる1種以上のポリアミド樹脂が好ましい。上記の内、2種以上のポリアミド樹脂を用いる場合に、それらの重合体を混合して用いてもよく、それら重合体を構成単位として含む共重合体を用いてもよい。
【0077】
(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂としては、耐熱エージング性向上の観点からは、ポリアミド6(ポリカプロアミド)が最も好ましく、耐薬品性向上の観点からは、ポリアミド610又はポリアミド612が特に好ましく、ポリアミド612が最も好ましい。
【0078】
(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の融点の下限値は、特に限定されないが、200℃が好ましく、210℃がより好ましく、220℃がさらに好ましい。一方、融点の上限値は、340℃が好ましい。すなわち、(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の融点は、200℃以上340℃以下が好ましく、210℃以上340℃以下がより好ましく、220℃以上340℃以下がさらに好ましい。融点が上記下限値以上であることで、成形品としたときの耐熱エージング性がより向上する傾向がある。一方、融点が上記上限値以下であることで、ポリアミド樹脂組成物の溶融加工中の熱分解や劣化をより効果的に抑制できる傾向にある。
融点は、JIS-K7121に準じて測定することができる。測定装置としては、例えば、PERKIN-ELMER社製、Diamond DSC等を用いることができる。
融点は、(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂を構成するモノマーを調整することにより制御することができる。
【0079】
(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の硫酸相対粘度は、1.8以上4.5以下が好ましく、2.1以上4.0以下がより好ましい。硫酸相対粘度が上記下限値以上であることで、ブロー成形性及び成形品としたときの機械物性により優れたポリアミド樹脂組成物が得られる傾向にある。一方、硫酸相対粘度が上記上限値以下であることで、成形品の外観、生産性により優れたポリアミド樹脂組成物が得られる傾向にある。
なお、硫酸相対粘度は、JIS K 6920に準拠した方法により測定することができる。
硫酸相対粘度は、(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の重合時の圧力を調整することにより制御することができる。
【0080】
[(A-2)/(A-1)]
(A-1)ポリアミド66に対する(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の質量比(A-2)/(A-1)は、5/95以上95/5以下が好ましく、5/95以上80/20がより好ましく、15/85以上70/30以下がさらに好ましい。(A-2)/(A-1)が上記範囲であることで、ブロー成形性により優れる傾向がある。
【0081】
[末端封止剤]
(A-1)ポリアミド66及び(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の製造時において、重合単量体を重合させる際に、分子量調節のために末端封止剤をさらに添加することができる。この末端封止剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0082】
末端封止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類等が挙げられる。中でも、熱安定性の観点から、モノカルボン酸又はモノアミンが好ましい。これら末端封止剤を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0083】
モノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであればよく、例えば、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸等が挙げられる。
脂環族モノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
芳香族モノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等が挙げられる。
これらモノカルボン酸を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0084】
モノアミンとしては、カルボキシ基との反応性を有するものであればよく、脂肪族モノアミン、脂環族モノアミン、芳香族モノアミン等が挙げられる。
脂肪族モノアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等が挙げられる。
脂環族モノアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
芳香族モノアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等が挙げられる。
これらモノアミンを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0085】
酸無水物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水酢酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
これら酸無水物を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0086】
モノイソシアネートとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられる。
これらモノイソシアネートを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0087】
モノ酸ハロゲン化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、安息香酸、ジフェニルメタンカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、ジフェニルスルホキシドカルボン酸、ジフェニルスルフィドカルボン酸、ジフェニルエーテルカルボン酸、ベンゾフェノンカルボン酸、ビフェニルカルボン酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸等のモノカルボン酸のハロゲン置換モノカルボン酸が挙げられる。
これらモノ酸ハロゲン化物を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0088】
モノエステル類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノモンタネート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノベヘネート、ペンタエリスリトールモノモンタネート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンモノモンタネート、ソルビタンジモンタネート、ソルビタントリモンタネート、ソルビトールモノパルミテート、ソルビトールモノステアレート、ソルビトールモノベヘネート、ソルビトールトリベヘネート、ソルビトールモノモンタネート、ソルビトールジモンタネート等が挙げられる。
これらモノエステル類を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0089】
モノアルコール類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノール(以上のモルアルコール類は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい)、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、フェノール、クレゾール(o-、m-、又はp-体)、ビフェノール(o-、m-、又はp-体)、1-ナフトール、2-ナフトール等が挙げられる。
これらモノアルコール類を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0090】
[(A)ポリアミド樹脂の含有量]
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(A-1)ポリアミド66及び(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の合計含有量、すなわち、(A)ポリアミド樹脂の含有量は、ポリアミド樹脂組成物の総質量に対して、50質量%以上95質量%以下が好ましく、60質量%以上95質量%以下がより好ましい。(A)ポリアミド樹脂の含有量が上記範囲内であることで、ブロー成形性、並びに、成形品としたときの強度、耐熱エージング性、耐薬品性及び比重等に優れる傾向がある。
【0091】
<(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体>
(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体としては、以下に限定されるものではないが、エチレン及び無水マレイン酸の共重合体(コポリマー)であるマレイン酸化ポリオレフィン、及びその機能的等価物が含まれる。このような機能的等価物の原料となる無水マレイン酸誘導体には、マレイン酸及びその塩、マレイン酸ジエステル、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステルが含まれる。これら無水マレイン酸誘導体を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0092】
マレイン酸化ポリオレフィンには、E/X/Yターポリマー(式中、Eはエチレン、Xは酢酸ビニル、並びに(メタ)アクリル酸及びその誘導体からなる群より選ばれる1種以上の単量体(モノマー)、Yは無水マレイン酸誘導体である)も含まれる。
構成単位Xとしては、(メタ)アクリル酸誘導体が好ましい。(メタ)アクリル酸誘導体には、酸、塩、エステル、無水物、又は化学技術の当業者に公知の他の酸誘導体が含まれる。構成単位Xとしては、アクリル酸メチル又はアクリル酸ブチルも好ましい。
構成単位Yとしては、マレイン酸ジエステル又はマレイン酸モノエステル(マレイン酸半エステル)が好ましい。マレイン酸ジエステル又はマレイン酸モノエステル(マレイン酸半エステル)には、マレイン酸と炭素数1以上4以下のアルキル基を有するアルコールとのエステルが含まれる。炭素数1以上4以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
マレイン酸化ポリオレフィンの原料となる無水マレイン酸誘導体としては、無水マレイン酸、マレイン酸ジエステル、又はマレイン酸半エステルが好ましく、無水マレイン酸又はマレイン酸半エステルが好ましい。
【0093】
マレイン酸化ポリオレフィンは、高圧ラジカル法により製造することができる。高圧ラジカル法としては、例えば、米国特許第4,351,931号明細書(参考文献1)に記載された方法を用いることができる。
【0094】
[(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体の含有量]
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体の含有量は、(A-1)ポリアミド66及び(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の合計質量100質量部、すなわち(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下が好ましく、5質量部以上20質量部以下がより好ましい。(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体の含有量が上記範囲内であることで、ブロー成形時の厚み斑、ドローダウン性、及び外観により優れる傾向がある。
【0095】
<(C)無機フィラー>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上記(A-1)成分、上記(A-2)成分、及び上記(B)成分に加えて、(C)無機フィラーを更に含有することができる。
【0096】
(C)無機フィラーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ワラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、アパタイト等が挙げられる。中でも、得られる成形品の強度及び剛性を増大させる観点から、円形及び非円形断面を有するガラス繊維、フレーク状ガラス、タルク(珪酸マグネシウム)、マイカ、カオリン、ワラストナイト、酸化チタン、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、又はフッ化カルシウムが好ましい。また、ガラス繊維、ワラストナイト、タルク、マイカ、又はカオリンがより好ましく、ガラス繊維がさらに好ましい。
これら(C)無機フィラーを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0097】
ガラス繊維及び炭素繊維としては、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が3μm以上30μm以下であり、重量平均繊維長が100μm以上750μm以下であり、かつ数平均繊維径に対する重量平均繊維長のアスペクト比(重量平均繊維長を数平均繊維径で除した値)が10以上100以下であるものが好ましい。
【0098】
ワラストナイトとしては、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が3μm以上30μm以下であり、重量平均繊維長が10μm以上500μm以下であり、かつアスペクト比が3以上100以下であるものが好ましい。
【0099】
タルク、マイカ及びカオリンとしては、優れた機械的特性を本実施形態のポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が0.1μm以上3μm以下であるものが好ましい。
【0100】
ここで本明細書における数平均繊維径及び重量平均繊維長は、以下のようにして求めることができる。
すなわち、ポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば100本以上の(C)無機フィラーを任意に選択し、SEMで観察して、これらの繊維径を測定し、平均値を算出することにより数平均繊維径を求めることができる。
また、倍率1000倍のSEM写真を用いて繊維長を計測し、所定の計算式(n本の繊維長を測定した場合、重量平均繊維長=Σ(I=1→n)(n番目の繊維の繊維長)2/Σ(I=1→n)(n番目の繊維の繊維長))により重量平均繊維長を求めることができる。
【0101】
[シランカップリング剤]
(C)無機フィラーは、シランカップリング剤等により表面処理を行ってもよい。
【0102】
シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アミノシラン類、メルカプトシラン類、エポキシシラン類、ビニルシラン類等が挙げられる。
【0103】
アミノシラン類としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0104】
メルカプトシラン類としては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0105】
中でも、シランカップリング剤としては、樹脂との親和性の観点から、アミノシラン類が好ましい。
これらシランカップリング剤を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0106】
[集束剤]
また、(C)無機フィラーとしてガラス繊維を用いる場合には、ガラス繊維は、集束剤を含むことが好ましい。集束剤とは、ガラス繊維の表面に塗布する成分である。
集束剤としては、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩等が挙げられる。
これらの集束剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、成形品としたときの機械的強度の観点から、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物及びポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる1種以上の集束剤が好ましく、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体がより好ましい。
【0107】
(カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体)
カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体の原料である、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸や無水シトラコン酸が挙げられる。中でも、無水マレイン酸が好ましい。
一方、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とは、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とは異なる不飽和ビニル単量体をいう。
前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3-ジクロロブタジエン、1,3-ペンタジエン、シクロオクタジエン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート等が挙げられる。中でも、スチレン又はブタジエンが好ましい。
これらの組み合わせの中でも、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体、及び無水マレイン酸とスチレンとの共重合体からなる群より選ばれる1種以上の集束剤が好ましい。
【0108】
また、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体において、ポリアミド樹脂組成物の流動性向上の観点から、重量平均分子量は2,000以上が好ましく、2,000以上1,000,000以下がより好ましい。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定することができる。
【0109】
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物、テルペン系エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等が挙げられる。
【0110】
脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘキセンオキサイド、ヘプテンオキサイド、オクテンオキサイド、ノネンオキサイド、デセンオキサイド、ウンデセンオキサイド、ドデセンオキサイド、ペンタデセンオキサイド、エイコセンオキサイド等が挙げられる。
【0111】
脂環族エポキシ化合物としては、例えば、グリシドール、エポキシペンタノール、1-クロロ-3,4-エポキシブタン、1-クロロ-2-メチル-3,4-エポキシブタン、1,4-ジクロロ-2,3-エポキシブタン、シクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロヘプテンオキサイド、シクロオクテンオキサイド、メチルシクロヘキセンオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキサイド、エポキシ化シクロヘキセンメチルアルコール等が挙げられる。
【0112】
テルペン系エポキシ化合物としては、例えば、ピネンオキサイド等が挙げられる。
【0113】
芳香族エポキシ化合物としては、例えば、スチレンオキサイド、p-クロロスチレンオキサイド、m-クロロスチレンオキサイド等が挙げられる。
【0114】
(ポリカルボジイミド化合物)
ポリカルボジイミド化合物とは、一以上のカルボジイミド基(-N=C=N-)を含有する化合物、すなわちカルボジイミド化合物を縮合することにより得られる化合物である。
【0115】
ポリカルボジイミド化合物は、縮合度が1以上20以下であることが好ましく、1以上10以下であることがより好ましい。縮合度が1以上20以下の範囲内にある場合、より良好な水溶液又は水分散液が得られる。さらに、縮合度が1以上10以下の範囲内にある場合、より一層良好な水溶液又は水分散液が得られる。
【0116】
ポリカルボジイミド化合物は、部分的にポリオールセグメントを持つポリカルボジイミド化合物であることが好ましい。部分的にポリオールセグメントを持つことにより、ポリカルボジイミド化合物は水溶化し易くなり、ガラス繊維や炭素繊維の集束剤としてより一層好適に使用可能となる。
【0117】
カルボジイミド化合物、すなわち上記各種カルボジイミド基(-N=C=N-)を含有する化合物は、ジイソシアネート化合物を3-メチル-1-フェニル-3-ホスホレン-1-オキシド等の公知のカルボジイミド化触媒の存在下で脱炭酸反応させることによって得られる。
【0118】
ジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート等を用いることができる。これらジイソシアネート化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0119】
ジイソシアネート化合物として具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6-ジイソプロピルフェニルジイソシアネート、1,3,5-トリイソプロピルベンゼン-2,4-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0120】
これらのジイソシアネート化合物をカルボジイミド化することによって、末端に2つのイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物が得られる。
【0121】
中でも、カルボジイミド化合物としては、反応性向上の観点から、ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドが好ましい。
【0122】
また、モノイソシアネート化合物を等モル量カルボジイミド化させる方法、又はポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルと等モル量反応させてウレタン結合を生成する方法等によって、末端にイソシアネート基を1つ有するポリカルボジイミド化合物が得られる。
【0123】
モノイソシアネート化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート等が挙げられる。
【0124】
ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0125】
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂としては、集束剤として一般的に用いられるものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、イソシアネート化合物と、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるものが挙げられる。イソシアネート化合物としては、例えば、m-キシリレンジイソシアネート(XDI)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。
【0126】
(アクリル酸のホモポリマー)
アクリル酸のホモポリマー(ポリアクリル酸)としては、樹脂との親和性の観点から、重量平均分子量は1,000以上90,000以下が好ましく、1,000以上25,000以下がより好ましい。
【0127】
(アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマー)
アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマーを形成する、「その他の共重合性モノマー」としては、水酸基及びカルボキシ基のうち少なくともいずれか一方の官能基を有するモノマーが好ましい。その他の共重合性モノマーとして具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く)。これらモノマーを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
なお、アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマーは、構成単位として、上記したモノマーのうちエステル系モノマー単位を1種以上有することが好ましい。
【0128】
(アクリル酸のポリマーの塩)
アクリル酸のポリマー(ホモポリマー及びコポリマーを共に含む)は塩の形態であってもよい。
【0129】
アクリル酸のポリマーの塩としては、以下に限定されるものではないが、アクリル酸のポリマーと第一級、第二級又は第三級のアミンとの塩が挙げられる。アミンとして具体的には、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、グリシン等が挙げられる。
【0130】
アクリル酸のポリマーの塩における中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤等)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20%以上90%以下が好ましく、40%以上60%以下がより好ましい。
【0131】
塩を形成するアクリル酸のポリマーの重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、3,000以上50,000以下の範囲が好ましい。重量平均分子量が上記下限値以上であることで、ガラス繊維や炭素繊維の集束性をより向上することができ、一方、上記上限値以下であることで、成形品としたときの機械的特性をより向上させることができる。
【0132】
(集束剤による処理方法)
各種集束剤により、ガラス繊維や炭素繊維を処理する方法としては、例えば、上述した集束剤を、公知のガラス繊維や炭素繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、ガラス繊維や炭素繊維に付与し、製造した繊維ストランドを乾燥することによって連続的に反応させる方法等が挙げられる。
【0133】
繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。
【0134】
集束剤は、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上3質量%以下相当を付与(添加)することが好ましく、0.3質量%以上2質量%以下相当を付与(添加)することがより好ましい。集束剤の付与(添加)量が上記下限値以上であることで、ガラス繊維や炭素繊維の集束をより良好に維持することができる。一方、集束剤の付与(添加)量が上記上限値以下であることで、成形品としたときの熱安定性をより向上させることができる。
【0135】
ストランドの乾燥は、切断工程後に行ってもよく、又はストランドを乾燥した後に切断工程を実施してもよい。
【0136】
[(C)無機フィラーの含有量]
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(C)無機フィラーの含有量は、ポリアミド樹脂組成物の総質量に対して、0質量%以上50質量%以下が好ましく、0質量%以上40質量%以下がより好ましく、0質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。
(C)無機フィラーの含有量が上記範囲内であることで、ポリアミド樹脂組成物のブロー成形性がより優れたものとなる傾向にある。
【0137】
<(D)アルカリ金属塩>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上記(A-1)成分、上記(A-2)成分、及び上記(B)成分に加えて、(D)アルカリ金属塩を更に含有することができる。本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(D)アルカリ金属塩を含有することで、ポリアミド樹脂組成物からなる成形品の表面にアルカリ金属塩が緻密な構造を形成することができ、耐熱エージング性及び耐酸性により優れる成形品を得ることができる。
【0138】
アルカリ金属塩としては、例えば、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、アルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。
【0139】
アルカリ金属の炭酸塩として具体的には、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、等が挙げられる。これら炭酸塩は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0140】
アルカリ金属の炭酸水素塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。これら炭酸水素塩は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0141】
アルカリの水酸化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0142】
中でも、(D)アルカリ金属塩としては、耐熱エージング性の観点から、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムが好ましく、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムがより好ましい。
【0143】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(D)アルカリ金属塩は、当該(D)アルカリ金属塩中、粒子径が1μm以上である(D)アルカリ金属塩の粒子の含有量は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。粒子径が1μm以上の(D)アルカリ金属塩の粒子の含有量が、(D)アルカリ金属塩中、上記上限値以下であることで、得られる成形品の耐熱エージング性がより優れる傾向がある。
【0144】
ここで、(D)アルカリ金属塩の粒子径とは、本実施形態のポリアミド樹脂組成物中に存在する(D)アルカリ金属塩の粒子径である。ポリアミド樹脂組成物中での(D)アルカリ金属塩の粒子径は、例えば、ポリアミド樹脂組成物をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解させ、レーザー回折式粒度分布装置を用いることにより測定することができる。
【0145】
上記のように、(D)アルカリ金属塩中、粒子径が1μm以上である(D)アルカリ金属塩の粒子の含有量を上記上限値以下に抑制するためには、水分の少ない状態で(D)アルカリ金属塩と、(A)ポリアミド樹脂((A-1)ポリアミド66及び(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂)とを混合することが有効である。例えば、押出機を用いて(D)アルカリ金属塩を、(A)ポリアミド樹脂に溶融混練する方法が挙げられる。
【0146】
一方、(A)ポリアミド樹脂の縮重合工程で(D)アルカリ金属塩を含有させると、(D)アルカリ金属塩が大径化する虞がある。すなわち(A)ポリアミド樹脂の重合工程が完了し、(A)ポリアミド樹脂を取り出し、ポリアミド樹脂組成物の製造工程である溶融混練の段階で(A)ポリアミド樹脂と(D)アルカリ金属塩とを混合することが好ましい。
【0147】
(D)アルカリ金属塩は、(A)ポリアミドに対して、重合時添加、溶融混練時の添加のいずれのタイミングで添加してもよい。
【0148】
(D)アルカリ金属塩の分散性の観点、及び上記のように、粒子径が1μm以上である(D)アルカリ金属塩の粒子の含有量を上記上限値以下に抑制する観点から、溶融混練時の添加が好ましい。
【0149】
[(D)アルカリ金属塩の含有量]
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(D)アルカリ金属塩の含有量は、(A-1)ポリアミド66及び(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の合計質量100質量部、すなわち(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上2質量部以下が好ましく、0.2質量部以上0.6質量部以下がより好ましい。
(D)アルカリ金属塩の含有量が上記範囲内であることで、成形品としたときの耐熱エージング性及び外観がより良好になる。
【0150】
<(E)中和剤>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上記(A-1)成分、上記(A-2)成分、及び上記(B)成分に加えて、(E)中和剤を更に含有することができる。本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、上記(D)アルカリ金属塩を含む場合には、ポリアミド樹脂組成物がアルカリ性となることからpHを中和するために、(E)中和剤を更に含むことが好ましい。
【0151】
(E)中和剤としては、酸性化合物であればよく、特別な限定はないが、例えば、有機酸が挙げられる。有機酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基、チオール基、エノール基を有する化合物等が挙げられる。これら有機酸は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0152】
[カルボキシ基を有する化合物]
カルボキシ基を有する化合物は、以下に限定されるものではないが、例えば、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、安息香酸、シュウ酸、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1、3、5-テトラベンゼンテトラカルボン酸、アジピン酸、ドデカン二酸、クエン酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸-2ナトリウム塩、グルコン酸等が挙げられる。中でも、カルボキシ基を有する化合物としては、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1、3、5-テトラベンゼンテトラカルボン酸、アジピン酸、ドデカン二酸、クエン酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸-2ナトリウム塩等の、一分子の中に2以上のカルボキシ基を有する化合物が好ましい。これらカルボキシ基を有する化合物は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0153】
[スルホ基を有する化合物]
スルホ基を有する化合物は、以下に限定されるものではないが、例えば、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、フルオロスルホン酸、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらスルホ基を有する化合物は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0154】
[ヒドロキシ基を有する化合物]
ヒドロキシ基を有する化合物は、以下に限定されるものではないが、例えば、シクロヘキサノール、デカノール、デカンジオール、ドデカノール、ドデカンジオール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、ジ-トリメチロールプロパン、D-マンニトール、D-ソルビトール、キシリトール、フェノール、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらヒドロキシ基を有する化合物は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0155】
中でも、(E)中和剤としては、カルボキシ基を有する化合物が好ましい。
【0156】
[アルカリ価/酸化価]
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(A)ポリアミド樹脂100質量部に含まれる前記(E)中和剤の酸価に対する、前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に含まれる前記(D)アルカリ金属塩のアルカリ価の比(X)が、下記式を満たすことが好ましい。
【0157】
0<X≦5
【0158】
上記式において、0<X≦3がより好ましく、0<X≦2がさらに好ましく、0<X≦1が特に好ましい。
【0159】
前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に含まれる前記(E)中和剤の酸価は、JIS K0070に基づき定義される。すなわち、「酸価」とは、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸等を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数である。
【0160】
前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に含まれる前記(D)アルカリ金属塩のアルカリ価は、JIS K0070に基づき定義される。すなわち、「アルカリ価」とは、試料1gをアセチル化させたとき,水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数である。
【0161】
また、上記において「(A)ポリアミド樹脂100質量部に含まれる」とは、本実施形態のポリアミド樹脂組成物中の(A)ポリアミド樹脂を100質量部としたとき、の意味であり、かかる場合の(D)アルカリ金属塩の含有量と(E)中和剤の含有量とを考慮して、上記式を算出する。
【0162】
さらに、本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に含まれる前記(E)中和剤の酸価、及び、(A)ポリアミド樹脂のカルボキシ基末端の酸価の和に対する、前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に含まれる前記(D)アルカリ金属塩のアルカリ価の比(Y)が、下記式を満たすことが好ましい
【0163】
0<Y≦3
【0164】
上記式において、0<Y≦2がより好ましく、0<Y≦1.5がさらに好ましく、0<Y≦1.2が特に好ましい。
【0165】
上記式において「(A)ポリアミド樹脂100質量部に含まれる」とは、本実施形態のポリアミド樹脂組成物中の(A)ポリアミド樹脂を100質量部としたとき、の意味であり、かかる場合の(A)ポリアミド樹脂のカルボキシ基末端濃度と(D)アルカリ金属塩の含有量と(E)中和剤の含有量とを考慮して、上記式を算出する。
【0166】
(E)中和剤と、(A)ポリアミド樹脂中のカルボン酸について中和剤及び末端封止剤の関連について以下に補足する。
(A)ポリアミド樹脂の原料モノマー又は末端封止剤として用いられるカルボン酸は、その目的からポリマー中に取り込まれている。具体的には、ポリマー鎖中で共有結合している。
一方で、本明細書中では、その目的からポリマーと共有結合していないカルボン酸官能基を有する有機酸成分を、(E)中和剤とする。(A)ポリアミドの原料モノマー又は末端封止剤として用いられるカルボン酸と、(E)中和剤として用いられるカルボン酸とが同一成分である場合、(A)ポリアミドの原料モノマー又は末端封止剤として用いられるカルボン酸は、ポリマー鎖中で共有結合しているカルボン酸を指し、(E)中和剤として用いられたカルボン酸はポリマーと共有結合していないカルボン酸を指す。
【0167】
(A)ポリアミド樹脂の原料モノマー又は末端封止剤としてカルボン酸を用いた場合、そのカルボン酸がポリマー鎖中で共有結合しているというのは当業者の一般認識である。カルボン酸をポリマー鎖中で共有結合していない状態で、不純物としての微量含有量以上にポリアミド中に含有させることは意図的な操作であり、その目的をもって組成、製法を工夫する必要があることは、当業者の一般認識である。すなわち、通常のポリアミド樹脂組成物において、原料としてカルボン酸を使用していても、本実施形態において意図している(E)中和剤としてのカルボン酸が意図せず含有されている、ということはないと考える。
【0168】
上記の記載は、(A)ポリアミド樹脂中の中和剤又は末端封止剤として使用されうる有機酸、具体的には一分子中に1以上3以下のカルボン酸官能基を有する有機酸に関する。一方、一分子中に4以上のカルボン酸官能基を有する有機酸分子は、その一部のカルボン酸官能基がポリアミドと共有結合していても、本実施形態における効果を奏する。すなわち、一分子中に1以上3以下のカルボン酸官能基を有する有機酸は、その一部のカルボン酸官能基がポリアミドと共有結合すると本実施形態における効果を十分に奏することができないが、一分子中に4以上のカルボン酸官能基を有する有機酸は、その一部のカルボン酸官能基がポリアミドと共有結合しても、本実施形態における効果を奏する。上記の理由として、本発明者らは、一分子中に4以上のカルボン酸官能基を有することにより、その一部がポリアミドと共有結合しても、残りの共有結合していないカルボン酸官能基が本実施形態における効果に寄与するためと推測している。
【0169】
上述した有機酸と(A)ポリアミド樹脂のポリマーとの共有結合の確認は、以下に限定するものではないが、例えば、ソックスレー抽出、核磁気共鳴(NMR)、IR等の公知の方法を用いて行うことができる。
【0170】
(E)中和剤は、(A)ポリアミド樹脂に対して、重合時添加、溶融混練時の添加のいずれのタイミングで添加してもよいが、(E)中和剤は、溶融混練時に添加することが好ましい。
【0171】
[(E)中和剤の含有量]
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(E)中和剤の含有量は、(D)アルカリ金属塩を十分に中和できる量であればよく、(D)アルカリ金属塩の含有量に応じて適宜調整することができる。例えば、(D)アルカリ金属塩の含有量が上記範囲である場合に、(A-1)ポリアミド66及び(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の合計質量100質量部、すなわち(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上2質量部以下が好ましく、0.3質量部以上1質量部以下がより好ましい。
(E)中和剤の含有量が上記範囲内であることで、ポリアミド樹脂組成物に含まれる(D)アルカリ金属塩をより充分に中和することができる。
【0172】
<(F)元素鉄>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上記(A-1)成分、上記(A-2)成分、及び上記(B)成分に加えて、(F)元素鉄を含有することができる。本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(F)元素鉄を含有することで、得られる成形品の特に表面に存在するポリアミドと、元素鉄とが緻密な架橋構造を形成することができ、耐熱エージング性及び耐酸性により優れる成形品を得ることができる。
【0173】
(F)元素鉄としては、重量平均粒度が450μm以下の小粒子の元素鉄であることが好ましい。
(F)元素鉄の重量平均粒度の上限値は、450μmが好ましく、250μmがより好ましく、200μmがさらに好ましく、100μmが特に好ましく、50μmが最も好ましい。一方、(F)元素鉄の重量平均粒度の下限値は、特別な限定はないが、1μmとすることができ、5μmとすることができ、10μmとすることができる。すなわち、(F)元素鉄の重量平均粒度は、1μm以上450μm以下が好ましく、1μm以上250μm以下がより好ましく、5μm以上200μm以下がさらに好ましく、5μm以上100μm以下が特に好ましく、10μm以上50μm以下が最も好ましい。
重量平均粒度は、ASTM規格D1921-89、方法Aに従って、Dmとして求められる。
【0174】
最大寸法と理解される元素鉄粒子の少なくとも50質量%の粒径の上限は450μmが好ましく、250μmがより好ましく、200μmがさらに好ましく、100μmが特に好ましく、50μmが最も好ましい。また、より好ましくは元素鉄粒子の少なくとも75質量%、さらに好ましくは90質量%の粒径が上記上限値以下であることが好ましい。
【0175】
(F)元素鉄はマスターバッチに添加してもよい。マスターバッチに用いられるポリマーとしては、(A)ポリアミド樹脂に限らず他のポリマーであってもよく、融点が(A)ポリアミド樹脂よりも低いものが好ましい。
【0176】
[(F)元素鉄の含有量]
(F)元素鉄の含有量は、(A-1)ポリアミド66及び(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の合計質量100質量部、すなわち(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部以下が好ましく、0.1質量部以上5質量部以下がより好ましい。
(F)元素鉄の含有量が上記下限値以上であることで、耐熱エージング性がより良好になる。
【0177】
<(G)ハロゲン化銅>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上記(A-1)成分、上記(A-2)成分、及び上記(B)成分に加えて、(G)ハロゲン化銅を含有することができる。本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(G)ハロゲン化銅を含有することで、耐熱エージング性がより向上する傾向にある。
【0178】
(G)ハロゲン化銅としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅等が挙げられる。これら(G)ハロゲン化銅は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0179】
[(G)ハロゲン化銅の含有量]
(G)ハロゲン化銅の含有量は、(G)ハロゲン化銅が含有成分として選択される場合には、(A-1)ポリアミド66及び(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の合計質量100質量部、すなわち(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(G)ハロゲン化銅のうちの金属元素換算の含有量が、0.001質量部以上0.05質量部以下が好ましく、0.003質量部以上0.05質量部以下がより好ましく、0.005質量部以上0.03質量部以下がさらに好ましい。(G)ハロゲン化銅の含有量が上記範囲内であることで、耐熱エージング性をより一層向上させるとともに、銅の析出や金属腐食をより効果的に抑制することができる。
【0180】
<(H)アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選ばれる1種以上のハロゲン化物>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上記(A-1)成分、上記(A-2)成分、及び上記(B)成分に加えて、(H)アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選ばれる1種以上のハロゲン化物(以下、単に「ハロゲン化物」と称する場合がある)を含有することができる。本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(H)ハロゲン化物を含有することで、耐熱エージング性がより向上する傾向にある。
【0181】
(H)ハロゲン化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。中でも、耐熱性の向上及び金属腐食の抑制という観点から、ヨウ化カリウム及又は臭化カリウムが好ましく、ヨウ化カリウムがより好ましい。これら(H)ハロゲン化物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0182】
上記(G)ハロゲン化銅と(H)ハロゲン化物とは、それぞれにおいて、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、耐熱性を一層向上させる観点から、(G)ハロゲン化銅と(H)ハロゲン化物とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0183】
(G)ハロゲン化銅及び(H)ハロゲン化物の混合物における金属元素に対するハロゲン元素のモル比(ハロゲン元素/金属元素)は、2以上50以下が好ましく、2以上40以下がより好ましく、5以上30以下がさらに好ましい。ハロゲン元素/金属元素が上記範囲内であることで、耐熱エージング性をより一層向上させることができる。
【0184】
[(H)ハロゲン化物の含有量]
(H)ハロゲン化物の含有量は、(A-1)ポリアミド66及び(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂の合計質量100質量部、すなわち(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部以下が好ましく、0.2質量部以上2質量部以下がより好ましい。(H)ハロゲン化物の含有量が上記範囲内であることで、耐熱エージング性がより一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食をより効果的に抑制することができる。
【0185】
<(I)その他成分>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上記(A-1)成分、上記(A-2)成分、及び上記(B)成分に加えて、本実施形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、(I)その他成分を更に含有することができる。
【0186】
(I)その他成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、紫外線吸収剤、光劣化防止剤、可塑剤、滑剤、離型剤、核剤、難燃剤、着色剤、染色剤、顔料、他の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0187】
上記その他の成分は、それぞれ性質が大きく異なるため、各成分についての、本実施形態の効果をほとんど損なわない好適な含有量は様々である。そして、当業者であれば、上記したその他の成分ごとの好適な含有量を容易に設定可能である。
【0188】
<ポリアミド樹脂組成物の製造方法>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂((A-1)ポリアミド66及び(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂)と、(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体と、必要応じて、上記(C)~(I)成分と、を混合することにより製造することができる。
【0189】
上記(A)~(B)の各成分、並びに、必要に応じて、上記(C)~(I)の各成分と、の混合方法としては、例えば、以下の(1)又は(2)の方法等が挙げられる。
(1)上記(A)~(B)の各成分、並びに、必要に応じて、上記(C)~(I)の各成分を、ヘンシェルミキサー等を用いて混合し溶融混練機に供給し混練する方法。
(2)単軸又は2軸押出機で、上記(A)~(C)の各成分、並びに、必要に応じて、上記(D)~(I)成分を、予めヘンシェルミキサー等を用いて混合して(A)~(B)の各成分、並びに、必要に応じて、上記(D)~(I)成分を含む混合物を調製し、当該混合物を溶融混練機に供給し混練した後に、任意に、サイドフィダーから(C)成分を配合する方法。
【0190】
ポリアミド樹脂組成物を構成する成分を溶融混練機に供給する方法は、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給してもよく、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。
【0191】
溶融混練の温度は、(A-1)ポリアミド66の融点より1℃以上100℃以下程度高い温度が好ましく、(A-1)ポリアミド66の融点より10℃以上50℃以下程度高い温度がより好ましい。
【0192】
混練機での剪断速度は100sec-1以上程度が好ましい。また、混練時の平均滞留時間は0.5分間以上5分間以下程度が好ましい。
【0193】
溶融混練を行う装置としては、公知の装置であればよく、例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、溶融混練機(ミキシングロール等)等が好ましく用いられる。
【0194】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を製造する際の各成分の配合量は、上述したポリアミド樹脂組成物における各成分の含有量と同様である。
【0195】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、上記(D)~(F)成分を含有する場合には、単軸又は多軸の押出機によって(A)ポリアミド樹脂及び(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体を溶融させた状態で、(D)アルカリ金属塩、(E)中和剤及び(F)元素鉄を混練する方法、すなわち(D)アルカリ金属塩、(E)中和剤及び(F)元素鉄を、(A)ポリアミド樹脂及び(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体に対して溶融混練により添加する方法を好ましく用いることができる。
【0196】
また、予め(D)アルカリ金属塩及び(F)元素鉄の水溶液と、(A)ポリアミド樹脂のペレットと(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体とをよく撹拌して混合して混合物を得た後に、前記混合物の水分を乾燥させることにより得られたポリアミド樹脂のペレットと、(E)中和剤とを、押出機の供給口から供給して溶融混練する方法を好適に用いることができる。
【0197】
さらに、(D)アルカリ金属塩、(E)中和剤及び(F)元素鉄をマスターバッチ化して添加する工程を有することが好ましい。
すなわち、最終的に目的とするポリアミド組成物中に添加する(D)アルカリ金属塩、(E)中和剤及び(F)元素鉄よりも高濃度の(D)アルカリ金属塩、(E)中和剤及び(F)元素鉄を(A)ポリアミド樹脂及び(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体に溶融混練してペレット化した後に、当該ペレットと、必要応じて、上記(C)及び(G)~(I)成分とを溶融混練して最終的に目的とするポリアミド樹脂組成物を製造することが、耐熱エージング性の観点から好ましい。
【0198】
<ポリアミド樹脂組成物の特性>
[tanδ(1)/tanδ(100)]
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(A-1)ポリアミド66及び(A-2)ポリアミド66以外のポリアミド樹脂のうち、最も高い融点を有するポリアミド樹脂の融点+10℃における回転式レオメーターで測定したtanδが下記式を満たすことが好ましい。
【0199】
【0200】
(式中、tanδ(1)は角速度1rad/secで測定した時のtanδ、tanδ(100)は角速度100rad/secで測定した時のtanδを表す。)
【0201】
上記式において、tanδ(1)/tanδ(100)は0.75未満が好ましく、0.70以下がより好ましく、0.65以下がさらに好ましい。tanδ(1)/tanδ(100)が上記範囲内であることで、ブロー成形性をより一層構造させることができる。
【0202】
回転式レオメーターでのtanδ測定は、例えば、TA-インスツルメント(ARES)社製の変形-制御レオメーター(deformation-controlled rheometer)(回転式レオメーター)によって測定することができる。具体的には、以下の方法を用いて測定することができる。
まず、測定前に、本実施形態のポリアミド樹脂組成物を成形してなる測定試料を80℃の条件下で8時間真空乾燥する。次いで、試料をレオメーターの、予め加熱された下部プレートに配置し、その加熱炉を閉じる。その後、上部プレートを、0.5mmの測定ギャップに到達するまで下方に動かす。ここから2分間の予熱を行い、2つのプレート間における上澄みサンプルを、スパチュラで取り除いた後、測定を開始する。測定条件は例えば、以下に示す条件とすることができる。
【0203】
(測定条件)
測定試料 :コーンプレートφ25mm
測定ギャップ:0.5mm
溶融時間 :2分
歪み :10%
温度 :(A)ポリアミド樹脂のうち最も高い融点のポリアミド樹脂の融点+10℃
角速度 :200rad/s~0.5rad/s
【0204】
上記測定結果から、角速度が1rad/sの時のtanδをtanδ(1)、角速度が100rad/sの時のtanδをtanδ(100)として、tan(100)に対するtan(1)の比率tan(1)/tan(100)を算出することができる。
【0205】
[数平均分子量(Mn)]
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の数平均分子量(Mn)は、機械物性、耐熱性の観点から、10000以上が好ましく、12000以上がより好ましく、15000以上がさらに好ましい。
なお、数平均分子量は、GPCを用い、ポリアミド樹脂組成物を溶媒であるHFIPに溶解した試料を用いて求めることができ、実質的には、ポリアミド樹脂組成物中の(A)ポリアミド樹脂、又は(A)ポリアミド樹脂に共有結合している成分を含めた(A)ポリアミド樹脂の数平均分子量に相当する。
【0206】
≪成形品の製造方法≫
本実施形態の成形品の製造方法(以下、単に「本実施形態の製造方法」と称する場合がある)は、上記ポリアミド樹脂組成物をブロー成形により成形する、方法である。
【0207】
本実施形態の製造方法では、ブロー成形により成形しているため、複雑な形状の成形品であっても、一度の成形で部品の接合を行うことなく最終成形品を得ることができる。また、上記ポリアミド樹脂組成物を用いることで、製造時のブロー成形性、具体的には肉厚均一性及び表面外観が良好であり、耐熱エージング性及び耐薬品性に優れる成形品が得られる。
【0208】
本実施形態の製造方法として具体的には、例えば、押し出し機を搭載したブロー成形機を用いて、押し出し機で筒状のパリソンと呼ばれる容器を作製した後、当該パリソンを金型に挿入して膨らませることで、成形品を得られる。
【0209】
射出成形の場合はプラスチックを溶かして押し込む際に非常に高い圧力が金型と型締め部分にかかるが、ブロー成形の場合は膨らますだけであるため、金型にかかる圧力も数気圧と非常に小さくなる。
【0210】
成型品の製造に用いられるブロー成形機としては、特別な限定はないが、例えば、S.T.SOFFIAGGIO TECNICA S.r.l(ASPI150.3)社製の3Dサクションブロー成形機等が挙げられる。
【0211】
本実施形態の製造方法により得られる成形品は、中空形状を有するものであることが好ましく、以下に限定されるものではないが、例えば、自動車用、機械工業用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、日用及び家庭品用等の各種用途の材料部品として好適に用いることができる。特に、自動車用材料部品として好適に用いられる。さらに、本実施形態の製造方法により得られる成形品は、耐熱エージング性及び耐薬品性に優れることから、自動車用材料部品の中でも、ターボダクトやバッテリー冷却用パイプに好適に用いられる。
【実施例】
【0212】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0213】
以下、本実施例及び比較例に用いたポリアミド組成物の各構成成分について説明する。
【0214】
<構成成分>
[(A)ポリアミド樹脂]
A-1:ポリアミド66(PA66)(旭化成社製、型番:レオナ1300、融点262℃、硫酸相対粘度2.6、アミノ基末端濃度46μmol/g、カルボキシ基末端濃度78μmol/g)
A-2-1:ポリアミド6(PA6)(宇部興産社製、型番:SF1013A、融点220℃、硫酸相対粘度2.4、アミノ基末端濃度41μmol/g、カルボキシ基末端濃度78μmol/g)
A-2-2:ポリアミド612(PA612)(旭化成社製、型番:レオナ4100、融点215℃、硫酸相対粘度2.2、アミノ基末端濃度72μmol/g、カルボキシ基末端濃度62μmol/g)
【0215】
各ポリアミド樹脂の融点は、JIS-K7121に準じて、PERKIN-ELMER社製のDiamond DSCを用いて測定した。
【0216】
各ポリアミド樹脂の98%硫酸相対粘度は、JIS-K6920に従って測定した。
【0217】
各ポリアミド樹脂のアミノ基末端濃度は、中和滴定により以下のとおり測定した。
まず、得られたポリアミド3.0gを90質量%フェノール水溶液100mLに溶解した。次いで、得られた溶液を用い、0.025Nの塩酸で滴定を行い、アミノ基末端濃度(μmol/g)を求めた。終点はpH計の指示値から決定した。
【0218】
各ポリアミド樹脂のカルボキシ基末端濃度は、中和滴定により以下のとおり測定した。
まず、得られたポリアミド4.0gをベンジルアルコール50mLに溶解した。次いで、得られた溶液を用い、0.1NのNaOHで滴定を行い、カルボキシ基末端濃度(μmol/g)を求めた。終点はフェノールフタレイン指示薬の変色から決定した。
【0219】
[(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体]
B-1:エチレン-マレイン酸水素エチルランダム共重合体(共重合体の全構成単位の質量に対するマレイン酸水素エチル単位の含有量8質量%)
【0220】
[(B’)その他共重合体]
B’-1:スチレン-無水マレイン酸共重合体(川原油化(株)社製、商品名「SMA3000」)
B’-2:エチレン-無水マレイン酸共重合体(Verellus社製、商品名「ZeMacE400」)
B’-3:無水マレイン酸グラフトエチレン-オクテン共重合体(DUPONT社製、商品名「FusabondN493D」)
【0221】
[(C)充填材]
C-1:ガラス繊維(GF)(日本電気硝子製、商品名「ECS03T275H」平均繊維径10μmφ、カット長3mm)
【0222】
[(D)アルカリ金属化合物]
D-1:炭酸ナトリウム(トクヤマ(株)社製、商品名「ソーダ灰ライト」)
【0223】
[(E)中和剤]
E-1:1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)(新日本理化(株)社製、商品名「リカシッドCHDA」)
【0224】
[(F)元素鉄]
F-1:元素鉄粒子含有マスターバッチ(ALBIS社製、商品名「SHELEFPLUS2 3302DP」)
【0225】
[(G)ハロゲン化銅化合物]
G-1:ヨウ化銅(和光純薬工業社製)
【0226】
[(H)アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる愚により選ばれる1種以上のハロゲン化物]
H-1:ヨウ化カリウム(和光純薬工業社製)
【0227】
[合成例]エチレン-マレイン酸水素エチルランダム共重合体の合成
調製するベンゼン溶液の総質量に対して、1.6質量%のマレイン酸水素エチル、3×10-4質量%のt-ブチルペルアセテートとなるように各成分をベンゼンに溶解し、ベンゼン溶液を調製した。調製したベンゼン溶液とエチレンを1:1の質量比で、300rpmで撹拌する撹拌装置を有する2Lのオートクレーブ中に連続的に供給し、1200気圧となるまで供給を続けた。その後、ジャケットヒーターでオートクレーブを230℃まで加熱した。得られたポリマー溶液は減圧弁を介して、分離容器に移動され、ポリマー以外の全ての試薬を急速蒸発させた。下部ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷及びカッティングを行い、エチレン-マレイン酸水素エチルランダム共重合体のペレットを得た。得られたエチレン-マレイン酸水素エチルランダム共重合体の全構成単位の質量に対するマレイン酸水素エチルの含有量は8質量%であった。なお、エチレン-マレイン酸水素エチルランダム共重合体の全構成単位の質量に対するマレイン酸水素エチルの含有量は、H-NMRにより測定した。また、210℃、2.16kg荷重下でのメルトインデックスは25g/10minであった。
【0228】
<成形品の物性及び評価方法>
[成形品の製造]
実施例及び比較例で得られたポリアミド組成物のペレットを、窒素気流中で乾燥し、ポリアミド組成物中の水分量を500ppm以下にした。次いで、水分量を調整した各ポリアミド組成物のペレットを、射出成形機(PS-40E、日精樹脂株式会社製)を用いて、ISO3167に準拠して、多目的試験片(A型、ダンベル形引張試験片)を成形品として成形した。なお、多目的試験片の寸法は、全長≧170mm、タブ部間距離109.3±3.2mm、平行部の長さ80±2mm、肩部の半径24±1mm、端部の幅20±0.2mm、中央の平行部の幅10±0.2mm、厚さ4±0.2mmである。具体的な射出成形時の条件としては、射出及び保圧の時間:25秒、冷却時間:15秒、金型温度:80℃、シリンダー温度:290℃に設定した。
【0229】
[物性1]tanδ(1)/tanδ(100)
多目的試験片から切り出された、25mm×25mm×2mmの円形の平板を用いて、下記条件でtanδの測定を行った。
【0230】
(測定条件)
試験片 :コーンプレートφ25mm
測定ギャップ:0.5mm
溶融時間 :2分
歪み :10%
温度 :ポリアミド66の融点262℃+10℃
角速度 :200rad/s~0.5rad/s
【0231】
角速度が1rad/sの時のtanδをtanδ(1)、角速度が100rad/sの時のtanδをtanδ(100)とし、{tan(1)/tan(100)}を算出した。
【0232】
[評価1]ブロー成形性
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物を80℃で8時間乾燥させ、800mm×60mm×60mmのパイプ形状の金型、及びブロー成形機(S.T.SOFFIAGGIO TECNICA S.r.l社製、ASPI150.3)を用いて、ブロー成形性を以下の評価項目について、評価した。
【0233】
1.パリソンの垂れ(パイプの全体長さにわたった肉厚における軸方向の差分)
成形品の端部から長手方向に100mmの位置での成形品の肉厚と成形品の端部から長手方向に700mmの位置での成形品の肉厚との差を測定し、以下の評価基準に従い、評価した。
【0234】
(評価基準)
4:肉厚の差が0.5mm以下
3:肉厚の差が0.5mm超2.0mm以下
2:肉厚の差が2.0mm超
【0235】
2.ダイ出口でのスウェリング挙動
ダイ出口から押し出し方向に30mmの位置でのパリソン径(単位:mm)を測定し、当該位置でのダイ径に対するパリソン径径の比(パリソン径/ダイ径)を算出して、以下の評価基準に従い、評価した。
【0236】
(評価基準)
◎:パリソン径/ダイ径が1.1以上
○:パリソン径/ダイ径が1.0以上1.1未満
×:パリソン径/ダイ径が1.0未満
【0237】
3.成形品(パイプ)の内側と外側の表面平滑性
成形品(パイプ)の表面平滑性の評価は、成形品の表面を表面粗さ計(ミツトヨ(株)社製、サーフテスト 形式SJ-400)を用いて、測定長1cmで、異なる5点を対象とし、そのうちの最大表面粗さ(Rmax)を測定し、以下の評価基準に従い評価した。
【0238】
(評価基準)
◎:Rmaxが500以下
○:Rmaxが500超750以下
×:Rmaxが750超
【0239】
[評価3]耐熱エージング性
各多目的試験片(A型)を用いて、ISO527に準拠して引張速度5mm/分で引張試験を行い、初期引張強度(MPa)を測定した(S0)。次いで、各多目的試験片(A型)をISO188に準拠したオーブンに入れて、150℃及び180℃の2条件でそれぞれ2000時間加熱して、耐熱老化試験を行った。2000時間後にオーブンから各多目的試験片(A型)を取り出し、23℃で24時間冷却させた。次いで、耐熱老化試験後の各多目的試験片(A型)をISO527に準拠して引張速度5mm/分で引張試験(耐熱老化試験前の引張試験と同様の条件)を行い、耐熱老化試験後の引張強度(MPa)を測定した(S1)。次いで、下記に示す式を用いて、引張強度保持率(%)を算出した。
【0240】
引張強度保持率(%) = S1/S0×100
【0241】
[評価4]耐薬品性
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成形機(PS-40E、日精樹脂株式会社製)を用いて、射出+保圧時間10秒、冷却時間15秒、金型温度80℃、溶融樹脂温度290℃の条件下で、60mm×60mm×3mmの平板型成形片に成形した。次に、平板から流動直角方向(成形品のゲートから流動末端方向の軸に対して直角の方向)に、ISO8256に準拠した小引張試験片タイプ4型の形状になるように切削して試験片を得た。得られた試験片を用いて、チャック間距離30mm、引張速度1mm/minで引張試験を行い、初期引張強度(MPa)を測定した。次いで、試験片をオートクレーブを用いて、薬剤[純水/ロングライフクーラント液(LLC液、BASF社製G48)=50/50(容量比)]に、130℃で1000時間浸漬した。薬剤浸漬後の試験片を、薬剤浸漬前の引張試験と同様の条件で引張試験を行い、薬剤浸漬後の引張強度(MPa)を測定した。下記に示す式により、1000時間浸漬後の引張強度保持率を算出した。
【0242】
1000時間薬剤浸漬後の引張強度保持率 = 薬剤浸漬後引張強度/初期引張強度×100
【0243】
<ポリアミド樹脂組成物の製造>
[実施例1]
(ポリアミド樹脂組成物P-a1の製造)
東芝機械社製、TEM35mm2軸押出機(設定温度:280℃、スクリュー回転数300rpm)を用いて、押出機最上流部に設けられたトップフィード口より、(A)ポリアミド樹脂(A-1:PA66及びA-2-1:PA6)と、(B)エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体B-1、(G)ハロゲン化銅G-1、(H)アルカリ金属のハロゲン化物H-1を予めブレンドしたものと、を供給した。また、押出機下流側(トップフィード口より供給された樹脂が充分溶融している状態)のサイドフィード口より(C)充填材C-1を供給した。次いで、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズして、ポリアミド樹脂組成物P-a1のペレットを得た。各構成成分の種類及び含有量は表1に記載のとおりとした。
【0244】
[実施例2~13及び比較例1~8]
(ポリアミド樹脂組成物P-a2~P-a13及びP-b1~P-b8の製造)
各構成成分の種類及び含有量を表1~4に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、ポリアミド樹脂組成物P-a2~P-a13及びP-b1~P-b8のペレットを得た。
【0245】
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを用いて、上記方法により成形品を製造し、各種物性及び評価を行った。評価結果を下記表1~4に示す。
【0246】
【0247】
【0248】
【0249】
【0250】
表1~4から、ポリアミド樹脂組成物P-a1~P-a13(実施例1~13)は、ブロー成形性、並びに、成形品としたときの耐熱性及び耐薬品性に優れることがわかった。
ポリアミド樹脂組成物P-a1(実施例1)、ポリアミド樹脂組成物P-a2(実施例2)及びポリアミド樹脂組成物P-a3(実施例3)、ポリアミド樹脂組成物P-a4(実施例4)及びポリアミド樹脂組成物P-a5(実施例5)、並びに、ポリアミド樹脂組成物P-a11(実施例11)、ポリアミド樹脂組成物P-a12(実施例12)及びポリアミド樹脂組成物P-a13(実施例13)の比較により、エチレン-マレイン酸誘導体ランダム共重合体B-1の含有量の増加に伴い、ブロー成形性(特に、パリソンの垂れ及びスウェリング挙動)がより良好なる傾向がみられた。
ポリアミド樹脂組成物P-a1(実施例1)、ポリアミド樹脂組成物P-a4(実施例4)及びポリアミド樹脂組成物P-a6(実施例6)において、ポリアミド樹脂A-2の含有量の増加に伴い、ブロー成形性(特に、表面平滑性)がより良好なる傾向がみられた。
ポリアミド樹脂組成物P-a1~P-a6及びP-a9~P-a13(実施例1~6及び9~13)において、ポリアミド66とポリアミド6を組み合わせて用いたポリアミド樹脂組成物P-a1~P-a6(実施例1~6)では、耐熱エージング性がより向上する傾向がみられ、一方、ポリアミド66とポリアミド612を組み合わせて用いたポリアミド樹脂組成物P-a9~P-a13(実施例9~13)では、耐薬品性が向上する傾向がみられた。
【0251】
一方、ポリアミド樹脂組成物P-b1~P-b8(比較例1~8)は、ブロー成形性、並びに、成形品としたときの耐熱エージング性及び耐薬品性について全て優れるものは得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0252】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物によれば、ブロー成形性、並びに、成形品としたときの耐熱エージング性及び耐薬品性に優れるポリアミド樹脂組成物を提供することができる。本実施形態の成形品の製造方法は、前記ポリイソシアネート組成物を用いる方法であり、得られる成形品は、自動車用、機械工業用、電気・電子用、産業資材用、工業材料用、日用及び家庭品用等の各種部品の材料として利用することができる。