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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】車載機器ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20230712BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20230712BHJP
   H05K 7/20 20060101ALN20230712BHJP
【FI】
B60R16/02 610A
H05K9/00 U
H05K7/20 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019051898
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020152215
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三松 隼太
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-192893(JP,A)
【文献】特開2017-218030(JP,A)
【文献】特開平04-006893(JP,A)
【文献】特開平11-112177(JP,A)
【文献】特開2011-073635(JP,A)
【文献】特開2014-082167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00-16/02
H05K 9/00
H05K 7/20
H02M 7/42- 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体に搭載され、電子部品を有する車載機器と、
前記車載機器を冷却するための冷却ファンと、
前記車載機器が発した電磁波を反射する反射部材と、
を備え、
前記反射部材は、前記車載機器の上面に対向する上面部と、前記上面部の左右方向に一対設けられ、前記上面部から前記車載機器の下面側へと近接するに連れて、前記車載機器から離隔するように延伸する廂部とを有し、
前記冷却ファンは、前記反射部材によって覆われる位置に配置され、
前記廂部の一方および前記車体によって吸気口が形成され、
前記廂部の他方および前記車体によって排気口が形成される車載機器ユニット。
【請求項2】
前記反射部材は、前記車載機器の前記下面と対向する下面部と、前記下面部から前記車載機器の上面側へと近接するに連れて、前記車載機器から離隔するように延伸する返し部とをさらに有する請求項1に記載の車載機器ユニット。
【請求項3】
前記廂部の下端は、前記返し部の上端よりも低い位置に設けられる請求項2に記載の車載機器ユニット。
【請求項4】
前記吸気口および前記排気口の断面積が前記冷却ファンの断面積と同等以上である請求項1から3のいずれか一項に記載の車載機器ユニット。
【請求項5】
前記車載機器は、インバータである請求項1から4のいずれか一項に記載の車載機器ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載する車載機器ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
直流電力を交流電力に変換するインバータからは、他の電気部品に影響をおよぼす電磁ノイズが周囲に放出される可能性があり、周囲に放出される電磁ノイズの低減が望まれている。従来、このような電磁ノイズを発する車載機器の全面を電磁遮蔽部材で密閉するような方策がとられていた。
【0003】
また、特許文献1には、主回路部および制御回路部をそれぞれ格納する第1および第2の筐体を備え、主回路部と制御回路部の間に電磁遮蔽材を配し、第1および第2の筐体と電磁遮蔽材との接合部をラビリンス構造とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4383981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電磁ノイズを発する車載機器の全面を電磁遮蔽部材で密閉すると、車載機器の冷却効果が低減してしまうという問題が生じてしまう。また、複雑なラビリンス構造を設ける場合、構成部品の形状が複雑になるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な構成で車載機器から生じる電磁ノイズの遮蔽性を向上するとともに、車載機器の空冷効率の低下を抑制することが可能な車載機器ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車載機器ユニットは、車両の車体に搭載され、電子部品を有する車載機器と、前記車載機器を冷却するための冷却ファンと、前記車載機器が発した電磁波を反射する反射部材と、を備え、前記反射部材は、前記車載機器の上面に対向する上面部と、前記上面部の左右方向に一対設けられ、前記上面部から前記車載機器の下面側へと近接するに連れて、前記車載機器から離隔するように延伸する廂部とを有し、前記冷却ファンは、前記反射部材によって覆われる位置に配置され、前記廂部の一方および前記車体によって吸気口が形成され、前記廂部の他方および前記車体によって排気口が形成される。
【0008】
また、前記反射部材は、前記車載機器の前記下面と対向する下面部と、前記下面部から前記車載機器の上面側へと近接するに連れて、前記車載機器から離隔するように延伸する返し部とをさらに有してもよい。
また、前記廂部の下端は、前記返し部の上端よりも低い位置に設けられてもよい。
また、前記吸気口および前記排気口の断面積が前記冷却ファンの断面積と同等以上であってもよい。
【0009】
また、前記車載機器は、インバータであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構成で車載機器から生じる電磁ノイズの遮蔽性を向上するとともに、車載機器の冷却効率の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車両の側面図である。
図2】車両(車体)の後部側の斜視図である。
図3】車載機器ユニットを説明するための説明図である。
図4】変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、車両100の側面図である。ここでは、車両100として、エンジン102とモータ104を駆動源とするハイブリッド車を例に挙げて説明する。図1に示すように、車両100には、エンジン102、モータ104、および、バッテリ106が搭載される。エンジン102は、車体100aの前後方向(図1中、左右方向)の前方側に配され、エンジン102の後方にモータ104が配置される。バッテリ106は、車体100aの後方側に配される。
【0014】
車両100は、要求トルクなどの走行状態に応じ、モータ104に優先してエンジン102で走行したり、エンジン102に優先してモータ104で走行したり、モータ104とエンジン102とを併用して走行したりする。
【0015】
また、車両100には、電子部品を有する車載機器108が設けられている。車載機器108は、例えば、バッテリ106から出力される直流電力を商用周波数の交流電力(電圧100V)に変換して配線用差込接続器(コンセント)に供給する商用電源用のインバータである。
【0016】
また、車体100aには、所謂スマートキー110の検出を行うスマートキーセンサ110a、110b、110cが設けられている。スマートキーセンサ110aは車体100aの前方に設けられ、スマートキーセンサ110bは車体100aの後方に設けられ、スマートキーセンサ110cは車室100b内に設けられている。
【0017】
スマートキーセンサ110a、110bは、スマートキー110に設けられた開錠ボタンおよび施錠ボタンの操作を検出している。また、スマートキーセンサ110cは、スマートキー110が車室内に存在しているか否かを検出し、スマートキー110が車室内に存在する場合にのみ、エンジン等の走行用動力源の始動を許可可能としている。
【0018】
図2は、車両100(車体100a)の後部側の斜視図である。図2に示すように、車両100は、所謂ハッチバック車であって、車室100bの後部座席100cの背面側にラゲージスペース(収容部)112が設けられている。ラゲージスペース112の上方から後方に亘って、ラゲージスペース112を開口する開口部114が形成されている。跳ね上げ式のリアゲート(開閉ドア、リアハッチドア)116は、不図示のヒンジ機構によって図2中、両矢印の方向に回転し、開口部114を開閉可能となっている。
【0019】
また、ラゲージスペース112への荷物の出し入れがしやすいように、ラゲージスペース112には、床面を覆う板状のラゲージボード112aが配置されている。そして、このラゲージボード112aの下には、車載機器108が収納されている車載機器ユニット108aが配置される。
【0020】
図3は、車載機器ユニット108aを説明するための説明図である。図3(a)は、車載機器ユニット108aの左右方向の概略断面図を示す。図3(a)に示すように、車載機器108は、ブラケット118b上に固定配置される。ブラケット118bは、車載機器108の左右方向に一対配置される。そして、ブラケット118bは、ボルト118aによって車体100aに締結される。
【0021】
また、車載機器108は、電磁波を反射する部材からなる反射部材120によって形成される収容空間122に収容される。本実施形態において、車載機器ユニット108aは、ラゲージスペース112に設けられるため、反射部材120自体を強度の高い部材によって構成することが好ましい。これにより、車載機器ユニット108aの上部に荷重がかかったとしても、車載機器ユニット108aが損傷することを抑制することができる。例えば、反射部材120の材質として、鉄を用いることができる。
【0022】
また、図3(b)に示すように、反射部材120の前面側および後面側に2つずつ設けられた足部120dがそれぞれボルト118cによってブラケット118bに締結される。ブラケット118bは、例えば、鉄によって形成される。
【0023】
反射部材120は、上面部120a、廂部120b、側面部120cとを有している。反射部材120の上面部120aは、車載機器108の上面と対向するように設けられている。また、廂部120bは、上面部120aの左右方向に一対設けられている。そして廂部120bは、反射部材120の上面部120aから車載機器108の下面側へと近接するに連れて、車載機器108から離隔するように延伸する。
【0024】
また、側面部120cは、上面部120aの前後方向に一対設けられている。側面部120cは、反射部材120の上面部120aから鉛直下方へ延伸する。そして、上面部120aの前方向に設けられた側面部120cは、車載機器108の前側面に対向し、上面部120aの後方向に設けられた側面部120cは、車載機器108の後側面に対向するように設けられている。
【0025】
また、廂部120bの下部には、廂部120b、側面部120c、および、車体100aで囲われる吸気口124aおよび排気口124bが形成される。吸気口124aは、車載機器ユニット108aの左側に設けられ、排気口124bは、車載機器ユニット108aの右側に設けられている。そして、車体100aに形成されたケーブル孔126および吸気口124aを介して、ケーブル128a、128bが収容空間122に導入される。そして、ケーブル128a、128bは、接続部130を介して車載機器108に接続される。ケーブル128aは、バッテリ106から出力された直流電力を車載機器108に供給する。また、ケーブル128bは、車載機器108で変換された交流電力を出力する。ケーブル128bから出力された交流電力は、車室100b内に設けられた不図示の配線用差込接続器に供給される。
【0026】
上記のようにして電力の変換が行われる際には、車載機器108が発熱するため、車載機器ユニット108aには、車載機器108を冷却するためのファン132が設けられている。具体的には、ファン132よって吸気口124aから吸気された空気は、車載機器108へと誘導される。このようにして、空気を誘導して、車載機器108が冷却される。そして、車載機器108を冷却した後の空気は、ファン132によって、排気口124bから排気される。また、電力の変換が行われる際には、車載機器108からは、電磁ノイズが生じる。
【0027】
電磁ノイズは、反射において生じる反射損失によって、反射のたびにそのエネルギー強度が減衰する。一方、車載機器108から発せられた電磁ノイズが反射を介さずに車室100b内へ直接到達すると、他の電気部品に影響をおよぼすおそれがある。例えば、電磁ノイズの影響で、車室100bに設けられているスマートキーセンサ110cによって、スマートキー110を検出することができず、エンジン等の走行用動力源の始動が実行できない場合や、キー閉じ込みが起きる場合がある。
【0028】
本実施形態では、反射部材120を設けることによって、電磁ノイズが車室内に到達するような場合であっても、電磁ノイズが少なくとも1回以上反射した後に車室100b内へ到達することとなる。これにより、電磁ノイズのエネルギー強度の減衰を促進し、車載機器108から発せられた電磁ノイズによって他の電気部品に影響がおよぶことを抑制している。
【0029】
例えば、車載機器108から上方向に発せられた電磁ノイズは、上面部120aによって下方向へ向かって反射される。また、車載機器108から右方向または左方向に発せられた電磁ノイズは、廂部120bによって下方向へ向かって反射される。
【0030】
このように、上面部120aおよび廂部120bによって電磁ノイズの進行方向が下向きに反射されることとなる。また、車載機器108から発せられた電磁ノイズが反射部材120のいずれにも反射されずに吸気口124aまたは排気口124bに到達したとしても電磁ノイズは車体100aによって反射される。以上のように、上記のような反射部材120を有する車載機器ユニット108aでは、車載機器108から発せられた電磁ノイズが反射を介さずに車室100b内へ直接到達することがない。
【0031】
また、電磁ノイズの伝搬する距離が長くなるにつれて、電磁ノイズのエネルギー強度は減衰する性質を持つ。上記したように、廂部120bは、反射部材120の上面部120aから車載機器108の下面側へと近接するに連れて、車載機器108から離隔するように延伸するため、廂部120bによって、吸気口124aおよび排気口124bは車載機器108から離れた位置に配置される。これにより、電磁ノイズが吸気口124aおよび排気口124bに到達するまでの間の距離を長くすることができるので、車載機器ユニット108aは、電磁ノイズが吸気口124aおよび排気口124bに到達した際の電磁ノイズの強度を低下させることも可能となる。
【0032】
さらに、吸気口124aおよび排気口124bを備えることにより、車載機器108を効果的に冷却することも可能となる。なお、空気が効率よく流通するために、吸気口124aおよび排気口124bの断面積は、少なくともファン132の断面積と同等程度であることが好ましい。
【0033】
図4は、変形例を説明するための説明図である。変形例における車載機器ユニット208aは、反射部材120として、ブラケット118bに返し部220が設けられていること以外、上記実施形態の車載機器ユニット108aの構成と同じである。返し部220はブラケット118bと同じ材質で形成され、例えば、鉄で形成される。
【0034】
返し部220は、車載機器108の下面と対向するブラケット118b(下面部)から車載機器108の上面側へと近接するに連れて、車載機器108から離隔するように延伸する。車載機器108から吸気口124aまたは排気口124bの方向へ向かって発せられた電磁ノイズは、返し部220によって反射される。そのため、変形例においては、電磁ノイズが少なくとも2回以上反射した後に車室100b内へ到達することとなる。これにより、電磁ノイズのエネルギー強度の減衰を大きく促進し、車載機器108から発せられた電磁ノイズによって他の電気部品に影響がおよぶことを抑制することができる。なお、空気が効率よく流通するために、返し部220と廂部120bとの間の断面積は、少なくともファン132の断面積と同等程度であることが好ましい。
【0035】
また、車載機器ユニット208aの外から、金属棒や指等によって高電圧部である接続部130へ直接接触することを防止するように、返し部220を設ければ、安全性を高めることが可能となる。例えば、廂部120bの下端が、返し部220の上端よりも低い位置となるように、廂部120bおよび返し部220の長さや角度を設定することが好ましい。
【0036】
上記のような実施形態および変形例によれば、反射部材120を用いることによって、簡易な構成で車載機器108から生じる電磁ノイズの遮蔽性を向上するとともに、車載機器108の空冷効率の低下を抑制することが可能となる。
【0037】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態および変形例について説明したが、本発明は上述した実施形態および変形例に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例又は修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0038】
また、上記実施形態および変形例では、車載機器108として、インバータを用いる場合を示したが、車載機器108は電子部品を有する機器であればよい。例えば、車載機器108として、交流電力を直流電力に変換するコンバータを用いてもよい。
【0039】
また、上記実施形態および変形例では、車載機器ユニット108a、208aがラゲージスペース112に設けられる場合を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、車載機器ユニット108a、208aは、車両100に搭載されればよく、例えば、座席の下部に車載機器ユニット108a、208aを設けてもよい。
【0040】
また、上記実施形態および変形例では、反射部材120として鉄を用いる場合を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、反射部材120は、少なくとも電磁波を反射可能であればよく、例えばアルミ等の鉄以外の金属部材を用いてもよい。
【0041】
また、上記実施形態および変形例では、左右対称に形成された反射部材120を用いる場合を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ケーブル128a、128bの配線に干渉しないように、反射部材120の形状を変更してもよい。
【0042】
また、上記実施形態および変形例では、ケーブル128aおよびケーブル128bを車載機器108の左側に接続する場合を示したが、ケーブル128aおよびケーブル128bを車載機器108の左右それぞれに接続してもよい。また、ケーブル孔126が収容空間122内に配されるように、車載機器ユニット108a、208aを配置してもよい。
【0043】
また、上記実施例では、反射部材120が上面部120a、廂部120b、側面部120cを有する場合を示し、変形例では反射部材120が更に返し部220を有する場合を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、反射部材120は、電磁ノイズを反射させる部材を更に有してもよい。
【0044】
また、上記変形例では、返し部220がブラケット118bから延伸するように設けられる場合を示したが、返し部220をブラケット118bと別部材としてもよい。この場合、返し部220は、少なくとも、車載機器の下面側に固定配置され、車載機器の上面側へと近接するに連れて、車載機器から離隔するように延伸する形状を有すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、車両に搭載する車載機器に利用できる。
【符号の説明】
【0046】
100 車両
100a 車体
100b 車室
108 車載機器
108a 車載機器ユニット
118b ブラケット(下面部)
120 反射部材
120a 上面部
120b 廂部
120c 側面部
220 返し部
図1
図2
図3
図4