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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】乗降制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/16 20060101AFI20230712BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20230712BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20230712BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20230712BHJP
   B60J 7/08 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
B60N2/16
B60N2/06
B60N2/22
B60N2/90
B60J7/08 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019207062
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021079750
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鳥飼 大敬
(72)【発明者】
【氏名】加藤 淳貴
(72)【発明者】
【氏名】金子 晃
(72)【発明者】
【氏名】正村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】早稲田 修史
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-070429(JP,U)
【文献】実開平01-131616(JP,U)
【文献】特開平04-189634(JP,A)
【文献】特開昭62-094418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/00-7/22
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートと、前記シートが配置された乗員室と、前記乗員室を覆う閉位置と前記閉位置よりも上方の開位置とに移動するキャノピとを備える乗物用の乗降制御装置であって、
前記シートは、
シート本体と、
前記シート本体を上下方向に移動させるシートリフタ装置と、
を有し、
前記シート本体は、シートクッションとシートバックとを有し、
前記シートは、前記シートバックを前記シートクッションに対しシート前後方向に揺動させるリクライニング装置を有し、
前記キャノピの前記閉位置から前記開位置への開移動、又は前記開位置から前記閉位置への閉移動と並行して、前記シートの姿勢又は位置を変化させ、前記シートリフタ装置により前記シート本体を昇降させ、前記リクライニング装置により前記シートバックを揺動させるように構成され、
前記キャノピの前記開移動中において、前記シート本体が上昇するように前記シートリフタ装置を駆動させると同時に、前記シートバックがシート後方に揺動するように前記リクライニング装置を駆動させるように構成される、乗降制御装置。
【請求項2】
請求項に記載の乗降制御装置であって、
前記キャノピの前記開移動中において、前記キャノピが予め定めた開度に到達した時点で、前記シート本体が上昇するように前記シートリフタ装置を駆動させるように構成される、乗降制御装置。
【請求項3】
請求項又は請求項に記載の乗降制御装置であって、
前記シート本体が下降するように前記シートリフタ装置を駆動させ、前記シート本体が予め定めた高さに到達した時点で、前記キャノピの前記閉移動を指示するように構成される、乗降制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の乗降制御装置であって、
前記シートは、前記シート本体をシート前後方向にスライドさせるスライド装置を更に有し、
前記キャノピの前記開移動又は前記閉移動と並行して、前記スライド装置により前記シート本体をスライドさせるように構成される、乗降制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗降制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の乗物において、乗員室に配置されたシートの上方で開閉するキャノピが知られている(特許文献1参照)。キャノピが設けられた乗物では、キャノピが開いた状態で乗物の側壁を乗り越えるようにしてユーザが乗降を行う場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-163112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようにユーザが乗物の側壁を乗り越えるように乗降する場合、シートの位置によっては乗降が困難となる。そこで、ユーザの乗降に合わせてシートの位置を調整する必要がある。
【0005】
ユーザが乗物から降りる場合、ユーザは、キャノピを開ける操作と、キャノピの開閉後にシートを乗物から降りやすい位置に移動させる操作とを行う必要がある。また、ユーザが乗物に乗る場合、シートに着席後にシートを運転位置に移動させる操作と、キャノピを閉める操作とを行う必要がある。そのため、乗物の乗降時に手間と時間とを要する。
【0006】
本開示の一局面は、キャノピの開閉によって乗降する乗物において、乗降時の手間と時間とを低減できる乗降制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、シート(20)と、シート(20)が配置された乗員室(30)と、乗員室(30)を覆う閉位置と閉位置よりも上方の開位置とに移動するキャノピ(40)とを備える乗物(10)用の乗降制御装置(1)である。乗降制御装置(1)は、キャノピ(40)の閉位置から開位置への開移動、又は開位置から閉位置への閉移動と並行して、シート(20)の姿勢又は位置を変化させるように構成される。
【0008】
このような構成によれば、ユーザが乗物(10)から降りる場合、又はユーザが乗物(10)に乗る場合において、一度の操作でキャノピ(40)及びシート(20)を乗降しやすい位置に変えることができる。また、キャノピ(40)の移動とシート(20)の姿勢又は位置の変化とが並行して行われるため、乗降時間を短縮することができる。
【0009】
本開示の一態様では、シート(20)は、シート本体(21)と、シート本体(21)を上下方向に移動させるシートリフタ装置(26)と、を有してもよい。乗降制御装置(1)は、キャノピ(40)の開移動又は閉移動と並行して、シートリフタ装置(26)によりシート本体(21)を昇降させるように構成されてもよい。このような構成によれば、ユーザが乗降しやすい高さにシート本体(21)を持ち上げることができる。
【0010】
本開示の一態様は、キャノピ(40)の開移動中において、キャノピ(40)が予め定めた開度に到達した時点で、シート本体(21)が上昇するようにシートリフタ装置(26)を駆動させるように構成されてもよい。このような構成によれば、キャノピ(40)とシート(20)との干渉及びキャノピ(40)とユーザとの衝突を防止しつつ、キャノピ(40)の開移動とシート本体(21)の上昇とを並行して行うことができる。
【0011】
本開示の一態様は、シート本体(21)が下降するようにシートリフタ装置(26)を駆動させ、シート本体(21)が予め定めた高さに到達した時点で、キャノピ(40)の閉移動を指示するように構成されてもよい。このような構成によれば、キャノピ(40)とシート(20)との干渉及びキャノピ(40)とユーザとの衝突を防止しつつ、キャノピ(40)の閉移動とシート本体(21)の下降とを並行して行うことができる。
【0012】
本開示の一態様では、シート本体(21)は、シートクッション(21A)とシートバック(21B)とを有してもよい。シート(20)は、シートバック(21B)をシートクッション(21A)に対しシート前後方向に揺動させるリクライニング装置(24)を有してもよい。乗降制御装置(1)は、キャノピ(40)の開移動又は閉移動と並行して、リクライニング装置(24)によりシートバック(21B)を揺動させるように構成されてもよい。このような構成によれば、シート(20)の高さを変えつつシートバック(21B)の傾きを変えることによって、シート(20)に着席しているユーザの姿勢が窮屈になることを抑制できる。
【0013】
本開示の一態様は、キャノピ(40)の開移動中において、シート本体(21)が上昇するようにシートリフタ装置(26)を駆動させると同時に、シートバック(21B)がシート後方に揺動するようにリクライニング装置(24)を駆動させるように構成されてもよい。このような構成によれば、シート(20)に着席しているユーザの頭部とキャノピ(40)との距離を保つことができる。その結果、ユーザに与えられる圧迫感を低減できる。
【0014】
本開示の一態様では、シート(20)は、シート本体(21)と、シート本体(21)をシート前後方向にスライドさせるスライド装置(25)と、を有してもよい。乗降制御装置(1)は、キャノピ(40)の開移動又は閉移動と並行して、スライド装置(25)によりシート本体(21)をスライドさせるように構成されてもよい。このような構成によれば、ユーザが乗降しやすい位置にシート本体(21)を移動させることができる。
【0015】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1Aは、実施形態における乗物の模式図であり、図1Bは、図1Aの乗物においてキャノピが開位置にある状態を示す模式図である。
図2図2は、図1Aの乗物におけるシートの模式図である。
図3図3Aは、図2のシートにおける駆動リンクがロックされた状態を示す模式図であり、図3Bは、図2のシートにおける駆動リンクがロックされていない状態を示す模式図であり、図3Cは、図2のシートにおけるシート本体が上昇した状態を示す模式図である。
図4図4は、図1Aの乗降制御装置による第1処理の制御を示すタイムチャートである。
図5図5は、図1Aの乗降制御装置による第2処理の制御を示すタイムチャートである。
図6図6は、図1Aの乗降制御装置による第3処理の制御を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1A,1Bに示す乗物10は、ボディ11と、シート20と、乗員室30と、キャノピ40と、ステアリングコラム50と、乗降制御装置1とを備える。本実施形態では、乗物10は地上を走行する自動車である。
【0018】
<乗員室>
乗員室30は、ボディ11の内部に設けられたユーザ(つまり運転者又は搭乗者)が滞在する空間である。乗員室30には、シート20と、ステアリングコラム50とが配置されている。また、乗員室30は、上方が開放されている。
【0019】
<キャノピ>
キャノピ40は、乗員室30を覆う閉位置(図1A参照)と、閉位置よりも上方の開位置(図1B)とに移動する。
【0020】
キャノピ40の前部は、ボディ11に揺動可能に取り付けられている。キャノピ40は、乗物10の左右方向と平行な軸を中心に上下方向に揺動する。キャノピ40は、電動式、空気式、油圧式等のアクチュエータによって移動する。
【0021】
閉位置は、キャノピ40が乗物10の乗員室30をボディ11と共に密閉する位置である。閉位置にあるキャノピ40は、乗員室30の開口を塞いでいる。開位置は、ユーザの乗員室30への出入り(つまり乗降)をキャノピ40が規制しない位置である。
【0022】
<ステアリングコラム>
ステアリングコラム50には、ステアリング等の操作機器が取り付けられている。ステアリングコラム50は、シート20が運転位置にあるときに、シートクッション21Aの上方に位置する。
【0023】
ステアリングコラム50の前端部は、ボディ11に揺動可能に取り付けられている。ステアリングコラム50は、乗物10の左右方向と平行な軸を中心に上下方向に揺動する。ステアリングコラム50は、電動式、空気式、油圧式等のアクチュエータを有するコラムライザによって上下方向に移動する。
【0024】
<シート>
シート20は、図2に示すように、シート本体21と、クッションフレーム22と、バックフレーム23と、リクライニング装置24と、スライド装置25と、シートリフタ装置26とを備える。
【0025】
シート本体21は、シートクッション21Aと、シートバック21Bとを有する。シート本体21のシート幅方向は、乗物10の左右方向に一致し、シート前方は、乗物10の前方に一致する。
【0026】
シートクッション21Aは、着席者の臀部等を支持する。シートバック21Bは、着席者の背部を支持する。クッションフレーム22は、シートクッション21Aを支持する部材である。バックフレーム23は、シートバック21Bを支持する部材である。
【0027】
リクライニング装置24は、シートバック21Bをシートクッション21Aに対しシート前後方向に揺動させる。リクライニング装置24は、電動式、空気式、油圧式等のアクチュエータによってバックフレーム23及びシートバック21Bを揺動させる。
【0028】
スライド装置25は、シート本体21をシート前後方向にスライドさせる。スライド装置25は、シートリフタ装置26を介してクッションフレーム22に連結された可動レールと、ボディ11に固定された固定レールとを備える。スライド装置25は、電動式、空気式、油圧式等のアクチュエータによって可動レールを固定レールに対しシート前後方向にスライドさせる。
【0029】
シートリフタ装置26は、シート本体21を上下方向に移動させる。シートリフタ装置26は、クッションフレーム22とスライド装置25との間に配置されている。シートリフタ装置26は、図3A,3B,3Cに示すように、駆動リンク26Aと、ピン26Bと、ロック部材26Cと、軸部26Dとを有する。
【0030】
駆動リンク26Aは、クッションフレーム22及びスライド装置25のそれぞれに対し、回転可能に取り付けられている。シートクッション21Aは、駆動リンク26Aの回転により昇降する。ピン26Bは、駆動リンク26Aに固定され、シート幅方向に延伸している。
【0031】
ロック部材26Cは、図3Aに示す第1位置と、図3Bに示す第1位置よりも前方に揺動した第2位置とに移動する。ロック部材26Cは、クッションフレーム22に取り付けられた軸部26Dを中心にシート前後方向に揺動する。また、ロック部材26Cは、例えばバネ等の弾性体によって、第1位置から第2位置に向けて付勢されている。
【0032】
第1位置にあるロック部材26Cは、ピン26Bに係合しない。第2位置にあるロック部材26Cは、図3Bに示すように、クッションフレーム22がロック可能高さにあるときは、ピン26Bに係合する。一方、図3Cに示すように、駆動リンク26Aの回転によってクッションフレーム22がロック可能高さよりも上方へ移動した場合は、ピン26Bがロック部材26Cよりも下方に位置するため、第2位置にあるロック部材26Cはピン26Bに係合しない。
【0033】
シートリフタ装置26は、電動式、空気式、油圧式等のロック用アクチュエータによってロック部材26Cを第1位置と第2位置との間で移動させる。また、シートリフタ装置26は、電動式、空気式、油圧式等の駆動用アクチュエータによって、駆動リンク26Aを回転させる。
【0034】
<乗降制御装置>
乗降制御装置1は、キャノピ40の移動とシート20の姿勢又は位置の変化とを制御するように構成されている。
【0035】
乗降制御装置1は、例えば、マイクロプロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備えるマイクロコンピュータにより構成される。乗降制御装置1は、予め記憶されたプログラムを実行することで、キャノピ40及びシート20を制御する。なお、乗降制御装置1は、乗物10に搭載されるエレクトロニックコントロールユニット(ECU)に組み込まれてもよい。
【0036】
乗降制御装置1は、乗物10からユーザが降りる際の第1処理と、乗物10にユーザが乗る際の第2処理と、乗物10にユーザが乗らずにキャノピ40を閉じる際の第3処理とを実行する。
【0037】
(第1処理)
第1処理は、キャノピ40が閉位置にある乗物10に対し、キャノピ40を開位置へ移動させると共に、ユーザが着座しているシート20を運転位置から乗降位置に移動させる。つまり、第1処理は、乗員室30内のユーザが乗物10から降りられる状態に乗物10を移行させるための処理である。
【0038】
乗降制御装置1は、乗物10のキー又は乗員室30に設けられた入力部へのユーザの入力により、第1処理を実行する。第1処理では、乗降制御装置1は、キャノピ40の閉位置から開位置への開移動と並行してシート20の姿勢又は位置を変化させる。
【0039】
図4に示すように、乗降制御装置1は、時刻T1においてユーザからの入力を受けると、キャノピ40を開位置へ向けて移動させる。また、時刻T1において、運転位置にあるシート本体21を後方にスライドさせると同時に、シートバック21Bを後方に倒す。
【0040】
つまり、乗降制御装置1は、キャノピ40の開移動と並行して、リクライニング装置24によりシートバック21Bを揺動させると共に、スライド装置25によりシート本体21をスライドさせる。リクライニングは、時刻T2で完了する。また、スライドは、時刻T4で完了する。
【0041】
乗降制御装置1は、キャノピ40が予め定めた第1開度に到達した時点(つまり時刻T3)で、ステアリングコラム50を上昇させる。ステアリングコラム50を動かすコラムライザは時刻T9で停止する。
【0042】
乗降制御装置1は、キャノピ40が予め定めた第2開度に到達した時点(つまり時刻T5)で、シート本体21が上昇するようにシートリフタ装置26を駆動させる。つまり、乗降制御装置1は、キャノピ40の開移動と並行して、シートリフタ装置26によりシート本体21を上昇させる。なお、第2開度は、第1開度よりもキャノピ40が開位置に近い(つまり第1開度の位置よりも上方にある)状態である。
【0043】
具体的には、乗降制御装置1は、時刻T5においてシートリフタ装置26のロック部材26Cをロック用アクチュエータによって第2位置から第1位置に向けて移動させる。時刻T6において、ロック部材26Cの解除(つまり第1位置への移動)が検知されると、乗降制御装置1は、駆動リンク26Aを回転させ、シート本体21を上昇させる。
【0044】
ロック部材26Cの解除は、例えばリミットスイッチによって検知される。また、ロック部材26Cを動かすロック用アクチュエータは、検知後の時刻T7まで駆動する。ロック部材26Cは、ロック用アクチュエータが停止した時刻T8において、付勢によって第1位置から第2位置に移動するが、ピン26Bには係合しない。
【0045】
時刻T6において、乗降制御装置1は、再びリクライニング装置24によりシートバック21Bを後方に揺動させる。つまり、乗降制御装置1は、キャノピ40の開移動中において、シート本体21が上昇するようにシートリフタ装置26を駆動させると同時に、シートバック21Bがシート後方に揺動するようにリクライニング装置24を駆動させる。
【0046】
乗降制御装置1は、時刻T10においてシート本体21が乗降位置まで上昇すると同時に、再びスライド装置25によりシート本体21を後方にスライドさせる。
【0047】
時刻T11で、キャノピ40が開位置へ到達して開移動を完了すると共に、2回目のリクライニングが完了する。さらに、時刻T12で2回目のスライドが完了する。これにより、キャノピ40が開位置に移動する共に、シート20が乗降位置に移動し、第1処理が終了する。
【0048】
(第2処理)
第2処理は、キャノピ40が開位置にある乗物10に対し、キャノピ40を閉位置へ移動させると共に、ユーザが着座しているシート20を乗降位置から運転位置に移動させる。つまり、第2処理は、乗員室30内に乗り込んだユーザが運転可能な状態に乗物10を移行させるための処理である。
【0049】
乗降制御装置1は、乗物10のキー又は乗員室30に設けられた入力部へのユーザの入力により、第2処理を実行する。第2処理では、乗降制御装置1は、キャノピ40の開位置から閉位置への閉移動と並行してシート20の姿勢又は位置を変化させる。
【0050】
図5に示すように、乗降制御装置1は、時刻T1においてユーザからの入力を受けると、乗降位置にあるシート本体21を前方にスライドさせる。続いて、乗降制御装置1は、時刻T2においてスライドを停止すると同時に、シートバック21Bを前方に起こす。
【0051】
シート本体21の位置及びシートバック21Bの傾きが予め定めた範囲(つまり、シート本体21のリクライニングと下降とが同時に可能な状態)となった時刻T3において、乗降制御装置1は、シートリフタ装置26によりシート本体21を下降させると同時に、ステアリングコラム50を乗降位置P1から運転位置P2に向けて下降させる。ステアリングコラム50は、時刻T4で運転位置P2に到達する。コラムライザは時刻T6で停止する。
【0052】
シートリフタ装置26が駆動開始してから一定時間経過した時刻T5において、乗降制御装置1は、キャノピ40を閉位置へ向けて移動させる。つまり、乗降制御装置1は、シート本体21が下降するようにシートリフタ装置26を駆動させ、シート本体21が予め定めた高さに到達した時点で、キャノピ40の閉移動を指示する。シート本体21の高さは、例えば、リミットスイッチ又はシートリフタ装置26のアクチュエータの回転数によって検知することができる。
【0053】
乗降制御装置1は、キャノピ40の移動開始後もシートリフタ装置26を駆動させ続ける。つまり、乗降制御装置1は、キャノピ40の閉移動と並行して、シートリフタ装置26によりシート本体21を下降させる。乗降制御装置1は、時刻T7で、シートリフタ装置26のロック部材26Cをロック用アクチュエータによって第1位置に移動させ、時刻T9まで第1位置に保持する。
【0054】
乗降制御装置1は、シート本体21が運転位置の高さ(つまりロック可能高さ)に到達した時点(つまり時刻T8)で、シートリフタ装置26を停止させると同時に、シート本体21を前方にスライドさせる。また、乗降制御装置1は、時刻T9において、ロック部材26Cの第1位置の保持を解除し、ロック部材26Cを第2位置に移動させる。これにより、シートリフタ装置26がロックされる。
【0055】
シートリフタ装置26のロック後、時刻T2から行われているリクライニングが時刻T10で完了する。その後、時刻T11において、キャノピ40が閉位置へ到達して閉移動を完了すると共に、2回目のスライドが完了する。
【0056】
つまり、乗降制御装置1は、キャノピ40の閉移動と並行して、リクライニング装置24によりシートバック21Bを揺動させると共に、スライド装置25によりシート本体21をスライドさせる。
【0057】
以上の手順により、キャノピ40が閉位置に移動する共に、シート20が運転位置に移動し、第2処理が終了する。なお、シート20が移動する運転位置は、第1処理を実行した際の運転位置である。つまり、第2処理によって、ユーザが乗物10から降りる前の運転位置が復元される。そのため、ユーザが運転位置へシート20を戻す手間が省かれる。
【0058】
(第3処理)
第3処理は、キャノピ40が開位置にある乗物10に対し、キャノピ40を閉位置へ移動させると共に、ユーザが着座していないシート20を乗降位置から格納位置に移動させる。つまり、第3処理は、第1処理によって乗降位置に移動したシート20を介してユーザが乗物10から降りた後に、キャノピ40を閉じるための処理である。
【0059】
乗降制御装置1は、乗物10のキー、乗員室30に設けられた入力部、又はボディ11の外面に設けられた入力部へのユーザの入力により、第3処理を実行する。第3処理では、乗降制御装置1は、キャノピ40の開位置から閉位置への閉移動と並行してシート20の姿勢又は位置を変化させる。
【0060】
乗降制御装置1は、キャノピ40の閉移動が入力された際に、ユーザのシート20への着席の有無を検知して、第2処理及び第3処理のどちらを行うか判断する。ユーザのシート20への着席の有無は、例えば荷重センサによって検知できる。
【0061】
図6に示すように、乗降制御装置1は、時刻T1においてユーザからの入力を受けると、シートバック21Bを前方に起こす。乗降制御装置1はシート本体21の位置及びシートバック21Bの傾きが予め定めた範囲(つまり、シート本体21のリクライニングと下降とが同時に可能な状態)となった時刻T2において、シート本体21を下降させると同時に、ステアリングコラム50を乗降位置P1から格納位置P3に向けて下降させる。
【0062】
時刻T3においてステアリングコラム50が格納位置P3に到達した後、時刻T4において、乗降制御装置1は、キャノピ40を閉位置へ向けて移動させる。コラムライザは時刻T5で停止する。
【0063】
乗降制御装置1は、シート本体21が運転位置の高さに到達した時点(つまり時刻T6)で、シートリフタ装置26及びリクライニング装置24を同時に停止させる。その後、時刻T7において、キャノピ40が閉位置へ到達して閉移動を完了する。
【0064】
第3処理では、シート本体21のスライドは行われず、また、シート20は運転位置に復元されない。そのため、第2処理よりも処理時間が短縮される。乗降制御装置1は、第3処理の後、第1処理を実行する際には、第1処理におけるスライドと、図4の時刻T1で開始される1回目のリクライニングとが省略される。
【0065】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)ユーザが乗物10から降りる場合、又はユーザが乗物10に乗る場合において、一度の操作でキャノピ40及びシート20を乗降しやすい位置に変えることができる。また、キャノピ40の移動とシート20の姿勢又は位置の変化とが並行して行われるため、乗降時間を短縮することができる。
【0066】
(1b)キャノピ40の移動と並行してシートリフタ装置26によりシート本体21を昇降させることで、ユーザが乗降しやすい高さにシート本体21を持ち上げることができる。
【0067】
(1c)キャノピ40の開移動中において、キャノピ40が予め定めた開度に到達した時点でシート本体21が上昇することで、キャノピ40とシート20との干渉及びキャノピ40とユーザとの衝突を防止しつつ、キャノピ40の開移動とシート本体21の上昇とを並行して行うことができる。
【0068】
(1d)下降中のシート本体21が予め定めた高さに到達した時点で、キャノピ40の閉移動を指示することで、キャノピ40とシート20との干渉及びキャノピ40とユーザとの衝突を防止しつつ、キャノピ40の閉移動とシート本体21の下降とを並行して行うことができる。
【0069】
(1e)キャノピ40の移動と並行してリクライニング装置24によりシートバック21Bを揺動させることで、シート20の高さを変えつつシートバック21Bの傾きを変えることができる。そのため、シート20に着席しているユーザの姿勢が窮屈になることを抑制できる。
【0070】
(1f)キャノピ40の開移動中において、シート本体21が上昇すると同時にシートバック21Bがシート後方に揺動することで、シート20に着席しているユーザの頭部とキャノピ40との距離を保つことができる。その結果、ユーザに与えられる圧迫感を低減できる。
【0071】
(1g)キャノピ40の移動と並行してスライド装置25によりシート本体21をスライドさせることによって、ユーザが乗降しやすい位置にシート本体21を移動させることができる。
【0072】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0073】
(2a)上記実施形態の乗降制御装置1は、必ずしもキャノピ40の開移動又は閉移動と並行して、リクライニング装置24、スライド装置25、及びシートリフタ装置26を駆動させなくてもよい。例えば、乗降制御装置1は、開移動又は閉移動と並行して、シートリフタ装置26のみを駆動させてもよい。
【0074】
(2b)上記実施形態の乗降制御装置1は、第1処理及び第2処理の少なくとも一方を実行できればよい。例えば、乗降制御装置1は、第2処理の代わりに、シート20の姿勢又は位置を変化させた後に、キャノピ40を移動させる処理を実行してもよい。
【0075】
(2c)上記実施形態の乗降制御装置1は、自動車以外の例えば鉄道車両、船舶、航空機等の乗物にも適用することができる。
【0076】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0077】
1…乗降制御装置、10…乗物、11…ボディ、20…シート、21…シート本体、
21A…シートクッション、21B…シートバック、22…クッションフレーム、
23…バックフレーム、24…リクライニング装置、25…スライド装置、
26…シートリフタ装置、26A…駆動リンク、26B…ピン、26C…ロック部材、
26D…軸部、30…乗員室、40…キャノピ、50…ステアリングコラム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6