(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 1/00 20180101AFI20230713BHJP
A41H 43/00 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
A41D1/00 A
A41H43/00 A
(21)【出願番号】P 2019188253
(22)【出願日】2019-10-12
【審査請求日】2022-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】518457956
【氏名又は名称】戸田 依子
(74)【代理人】
【識別番号】100186864
【氏名又は名称】尾関 眞里子
(72)【発明者】
【氏名】戸田 依子
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-041648(JP,A)
【文献】実開昭51-060304(JP,U)
【文献】特開2001-040573(JP,A)
【文献】特開2009-240733(JP,A)
【文献】実公昭08-000120(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B1/00-11/14
A41C1/00-5/00
A41D1/00-31/32
A42B1/00-7/00
A42C1/00-5/04
A41H43/00
A63H33/16
A63H3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服であって、
正方形の服地の表面の2本の対角線の交点である中心点と、
中心点から四隅に延びる対角線上の線A、線B、線C、線Dと、
線Aと線Bの間に中心点から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、
線Bと線Cの間に中心点から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、
線Cと線Dの間に中心点から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、
線Dと線Aの間に中心点から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、
線A、線B、線C、線Dは谷折り線であり、
線Bと線Cの間の中央の線は山折り線であり、
線Dと線Aの間の中央の線は山折り線であり、
線Aと線Bの間の中央の線を挟む両隣の線は山折り線であり、
線Cと線Dの間の中央の線を挟む両隣の線は山折り線であり、
線Aと線Bの間の中央の線を挟む両隣の山折り線に囲まれた前身頃と、
線Cと線Dの間の中央の線を挟む両隣の山折り線に囲まれた後身頃と、
線Bと線Cの間の中央の線の山折り線からなる左肩線と、
線Dと線Aの間の中央の線の山折り線からなる右肩線と、
中心点の周囲に設けた切欠き、
からなることを特徴とする衣服。
【請求項2】
線Aと線Bの間の中央の線を挟む両隣の山折り線と、線Cと線Dの間の中央の線を挟む両隣の山折り線は、ステッチをかけられたものである請求項1記載の衣服。
【請求項3】
線A、線B、線C、線Dの谷折り線は、服地の裏面からステッチをかけられたものである請求項1又は請求項2記載の衣服。
【請求項4】
衣服であって、
正方形の服地の表面の2本の対角線の交点である中心点と、
中心点から四隅に延びる対角線上の線A、線B、線C、線Dと、
線Aと線Bの間に中心点から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、
線Bと線Cの間に中心点から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、
線Cと線Dの間に中心点から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、
線Dと線Aの間に中心点から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、
線A、線Cは山折り線であり、
線Bを挟む両隣の線は山折り線であり、
線Dを挟む両隣の線は山折り線であり、
線Aと線Bの間の中央の線は谷折り線であり、
線Bと線Cの間の中央の線は谷折り線であり、
線Cと線Dの間の中央の線は谷折り線であり、
線Dと線Aの間の中央の線は谷折り線であり、
線Bを挟む両隣の山折り線に囲まれた前身頃と、
線Dを挟む両隣の山折り線に囲まれた後身頃と、
線Aの山折り線からなる右肩線と、
線Cの山折り線からなる左肩線と、
中心点の周囲に設けた切欠き、
からなることを特徴とする衣服。
【請求項5】
線Bを挟む両隣の山折り線と、線Dを挟む両隣の山折り線は、ステッチをかけられたものである請求項4記載の衣服。
【請求項6】
線Aと線Bの間の中央の線、線Bと線Cの間の中央の線、線Cと線Dの間の中央の線、線Dと線Aの間の中央の線である谷折り線は、服地の裏面からステッチをかけられたものである請求項4又は請求項5記載の衣服。
【請求項7】
正方形Aの服地の表面の1本の対角線を山折りしてなる直角二等辺三角形Aの、
長辺の真ん中の点と直角の角を結んだ線で山折りしてなる2つの直角二等辺三角形Bの、
上面及び下面の直角二等辺三角形Bの長辺の真ん中の点から直角の角を結んだ線で山折りしてなる上面及び下面の正方形Bの縦の対角線の上部から8分の1の水平線で上面および下面の正方形Bから切り、
上面及び下面の正方形Bの折り輪を有する2辺をそれぞれ正方形Bの対角線に重なるように山折りした後、該山折りを開いて上部を切り落とした正方形Bとし、その後折り輪を有する右辺を開いてなる
衣服の製作方法。
【請求項8】
正方形Aの服地の表面の1本の対角線を山折りしてなる直角二等辺三角形Aの、
長辺の真ん中の点と直角の角を結んだ線で山折りしてなる2つの直角二等辺三角形Bの、
上面及び下面の直角二等辺三角形Bの長辺の真ん中の点から直角の角を結んだ線で山折りしてなる上面及び下面の正方形Bの縦の対角線の上部から8分の1の水平線で上面および下面の正方形Bから切り、
上面及び下面の正方形Bの折り輪を有する2辺をそれぞれ正方形Bの対角線に重なるように山折りした後、該山折りを開いて上部を切り落とした正方形Bとし、その後折り輪を有する右辺を開き、
上面の正方形Bと下面の正方形Bの間の2辺の山折り線を谷折りし、
対角線上の前後一対の垂直の谷折り線を平面に伸ばした後に、正方形の角を該対角線上に折り上げた後に再び谷折りとし、
もう一方の対角線上の前後一対の垂直の谷折り線を平面に伸ばし、
正方形の角を該対角線上に折り上げた谷折りを山折りとした後、
該正方形の角を該対角線上に折り上げた対角線の両隣の折り線の下部に切込みを入れた、
衣服の製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服に及びその製作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現代の課題の一つは、資源の有効活用により自然環境を維持向上することであり、それと共に人々の生活の基本である衣食住を充実することが重要である。
【0003】
ここで「衣」に注目すると、現代の衣(服)には、大きく分けて洋服、和服がある。洋服は、立体的な人の体型に合わせた型紙を作り、型紙に沿って素材の布を裁断した後に縫い合わせて立体的な形状の服に仕立てるため、工夫して裁断しても裁ち落としの布が出来てしまう。一方、和服は、着る者の体の採寸をした上で、反物を直線的に裁断した布を縫い合わせて、直線的な形状の服に仕立て、体型に合うように紐や帯で立体的に着付ける服である。
【0004】
ここで、特許文献1には、正方形の布を用い、ホッチキスで縫合して仕立てるようにした、型紙を使用せず、裁断も極めて簡単で、仮縫いも必要としない洋服の製作方法が開示されている。
【0005】
具体的には、
図21から
図23に示すように、正方形の布101のほぼ中央部に衿ぐり106を設け、正方形の布101を対角線Lで二つ折りにして直角二等辺三角形とし、直角二等辺三角形における等辺縁部102、102をそれぞれの中央部を適宜長さにわたりホッチキス120で縫合する。閉じ合わされない部分に、十分な寸法の袖口のあき104及び胴のあき105が形成されるように縫合部103を設ける。布101を裏返して表を向けた後、衿ぐり106を設ける。衿ぐりを切り取った布を用いてポケット107をホッチキス123を使用して縫合する洋服の製作方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開S64-68505号公報(ホッチキスを用いた洋服の製作方法)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の発明は、型紙を使用せず、裁ち落としも出ない、布という資源を有効活用した洋服の製作方法であるが、この方法で製作された洋服は2つの直角二等辺三角形からなる大まかな構造であり、立体的な人の体にフィットしづらいという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、製作の簡便性、着心地が良くシンプルであり、あわせて素材の布である服地を有効活用した衣服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、衣服であって、正方形の服地の表面の2本の対角線の交点である中心点と、中心点から四隅に延びる対角線上の線A、線B、線C、線Dと、線Aと線Bの間に中心点から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、線Bと線Cの間に中心点から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、線Cと線Dの間に中心点から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、線Dと線Aの間に中心点から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、線A、線B、線C、線Dは谷折り線であり、線Bと線Cの間の中央の線は山折り線であり、線Dと線Aの間の中央の線は山折り線であり、線Aと線Bの間の中央の線を挟む両隣の線は山折り線であり、線Cと線Dの間の中央の線を挟む両隣の線は山折り線であり、線Aと線Bの間の中央の線を挟む両隣の山折り線に囲まれた前身頃と、線Cと線Dの間の中央の線を挟む両隣の山折り線に囲まれた後身頃と、線Bと線Cの間の中央の線の山折り線からなる左肩線と、線Dと線Aの間の中央の線の山折り線からなる右肩線と、中心点の周囲に設けた切欠き、からなることを要旨とするものである。
【0010】
請求項1の本発明によれば、一枚の正方形の服地を山折り、谷折りを所定の位置に設けることで立体的な形状を構成し、型紙を使用せずとも、体にフィットする衣服を制作でき、シンプルで着心地が良く、素材の布である服地を有効活用した衣服を提供できる。
【0011】
請求項2記載の本発明は、線Aと線Bの間の中央の線を挟む両隣の山折り線と、線Cと線Dの間の中央の線を挟む両隣の山折り線は、ステッチをかけられたものであることを要旨とするものである。
【0012】
請求項2の本発明によれば、山折り線にステッチをかけることにより前身頃を構成する線Aと線Bの間の中央の線を挟む両隣の山折り線と、後身頃を構成する線Cと線Dの間の中央の線を挟む両隣の山折り線の折目を落着かせて、安定させ、体にフィットする衣服として着心地をよくすることができる。
【0013】
請求項3記載の本発明は、線A、線B、線C、線Dの谷折り線は、服地の裏面からステッチをかけられたものであることを要旨とするものである。
【0014】
請求項3の本発明によれば、線A、線B、線C、線Dの谷折り線は、服地の裏面から見れば山折りであり、その折り線に沿ってステッチをかけることで、折目を落着かせて、安定させ、体にフィットする衣服としての着心地をさらに向上できる。
【0015】
請求項4記載の本発明は、衣服であって、正方形の服地の表面の2本の対角線の交点である中心点と、中心点から四隅に延びる対角線上の線A、線B、線C、線Dと、線Aと線Bの間に中心点から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、線Bと線Cの間に中心点から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、線Cと線Dの間に中心点から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、線Dと線Aの間に中心点から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、線A、線Cは山折り線であり、線Bを挟む両隣の線は山折り線であり、線Dを挟む両隣の線は山折り線であり、線Aと線Bの間の中央の線は谷折り線であり、線Bと線Cの間の中央の線は谷折り線であり、線Cと線Dの間の中央の線は谷折り線であり、線Dと線Aの間の中央の線は谷折り線であり、線Bを挟む両隣の山折り線に囲まれた前身頃と、線Dを挟む両隣の山折り線に囲まれた後身頃と、線Aの山折り線からなる右肩線と、線Cの山折り線からなる左肩線と、中心点の周囲に設けた切欠き、からなることを要旨とするものである。
【0016】
請求項4の本発明によれば、一枚の正方形の服地を山折り、谷折りを所定の位置に設けることで立体的な形状を構成し、型紙を使用せずとも、体にフィットする衣服を制作でき、シンプルで着心地が良く、素材の布である服地を有効活用した衣服を提供できる。
【0017】
請求項5記載の本発明は、線Bを挟む両隣の山折り線と、線Dを挟む両隣の山折り線は、ステッチをかけられたものであることを要旨とするものである。
【0018】
請求項5の本発明によれば、山折り線にステッチをかけることにより前身頃を構成する線Bを挟む両隣の山折り線と、後身頃を構成する線Dを挟む両隣の山折り線の折目を落着かせて、安定させ、体にフィットする衣服としての着心地をよくすることができる。
【0019】
請求項6記載の本発明は、線Aと線Bの間の中央の線、線Bと線Cの間の中央の線、線Cと線Dの間の中央の線、線Dと線Aの間の中央の線である谷折り線は、服地の裏面からステッチをかけられたものであることを要旨とするものである。
【0020】
請求項6の本発明によれば、線Aと線Bの間の中央の線、線Bと線Cの間の中央の線、線Cと線Dの間の中央の線、線Dと線Aの間の中央の線である谷折り線は、服地の裏面から見れば山折りであり、その折り線に沿ってステッチをかけることで、折目を落着かせて、安定させ、体にフィットする衣服としての着心地をさらに向上できる。
【0021】
請求項7記載の本発明は、正方形Aの服地の表面の1本の対角線を山折りしてなる直角二等辺三角形Aの、長辺の真ん中の点と直角の角を結んだ線で山折りしてなる2つの直角二等辺三角形Bの、上面及び下面の直角二等辺三角形Bの長辺の真ん中の点から直角の角を結んだ線で山折りしてなる上面及び下面の正方形Bの縦の対角線の上部から8分の1の水平線で上面および下面の正方形Bから切り、上面及び下面の正方形Bの折り輪を有する2辺をそれぞれ正方形Bの対角線に重なるように山折りした後、該山折りを開いて上部を切り落とした正方形Bとし、その後折り輪を有する右辺を開いてなる衣服の製作方法を要旨とするものである。
【0022】
請求項7の本発明によれば、折り紙の手法により一枚の正方形の服地を山折り、谷折りの位置を道具なく正確に設けて、立体的な形状を構成し、型紙を使用せずとも、体にフィットする衣服を制作でき、シンプルで着心地が良く、素材の布である服地を有効活用した衣服を提供できる。
【0023】
請求項8記載の本発明は、正方形Aの服地の表面の1本の対角線を山折りしてなる直角二等辺三角形Aの、長辺の真ん中の点と直角の角を結んだ線で山折りしてなる2つの直角二等辺三角形Bの、上面及び下面の直角二等辺三角形Bの長辺の真ん中の点から直角の角を結んだ線で山折りしてなる上面及び下面の正方形Bの縦の対角線の上部から8分の1の水平線で上面および下面の正方形Bから切り、上面及び下面の正方形Bの折り輪を有する2辺をそれぞれ正方形Bの対角線に重なるように山折りした後、該山折りを開いて上部を切り落とした正方形Bとし、その後折り輪を有する右辺を開き、上面の正方形Bと下面の正方形Bの間の2辺の山折り線を谷折りし、対角線上の前後一対の垂直の谷折り線を平面に伸ばした後に、正方形の角を該対角線上に折り上げた後に再び谷折りとし、もう一方の対角線上の前後一対の垂直の谷折り線を平面に伸ばし、正方形の角を該対角線上に折り上げた谷折りを山折りとした後、該正方形の角を該対角線上に折り上げた対角線の両隣の折り線の下部に切込みを入れた、衣服の製作方法を要旨とするものである。
【0024】
請求項8の本発明によれば、折り紙の手法により一枚の正方形の服地を山折り、谷折りの位置を道具なく正確に設けて、立体的な形状を構成し、型紙を使用せずとも、体にフィットする衣服を制作でき、シンプルで着心地が良く、素材の布である服地を有効活用した衣服を提供できる。
【0025】
更に正方形の角を該対角線上に折り上げた対角線の両隣の折り線の下部に切込みを入れたことにより衣服から袖の一部が分離して動き、本発明の衣服を着用した際、腕が動かしやすくなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれは、正方形の服地を折り紙のように折ることにより、衣服に必要な構成要素を体にフィットさせて組み立てることができ、服地の形状をそのまま活かして衣服とした、型紙を使用せず、資源をあますところなく使いきり製作可能な衣服を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の衣服の第1の実施形態を構成する服地の表面の線の折り方を示す説明図である。
【
図2】本発明の衣服の第1の実施形態を構成する服地を折り、衣服の形状にした状態を示す正面図である。
【
図3】本発明の衣服の第1の実施形態を構成する服地を折り紙の折り方で衣服の形状を製作する工程を示す説明図である。
【
図4】本発明の衣服の第1の実施形態を示す正面図である。
【
図5】本発明の衣服の第1の実施形態に切欠き服地を前当てとした状態を示す正面図である。
【
図6】本発明の衣服の第1の実施形態を構成する服地にステッチを施し、係止具を配置した状態を示す正面図である。
【
図7】本発明の衣服の第1の実施形態を構成する服地にステッチを施し、係止具を配置した状態を示す背面図である。
【
図8】本発明の衣服の第2の実施形態を構成する服地の表面の線の折り方を示す説明図である。
【
図9】本発明の衣服の第2の実施形態を構成する服地を折り、衣服の形状にした状態を示す正面図である。
【
図10】本発明の衣服の第2の実施形態を構成する服地を折り、衣服の形状にした後、袖部分を折り返した状態を示す正面図である。
【
図11】本発明の衣服の第2の実施形態を構成する服地を折り紙の折り方で衣服の形状を製作する工程を示す説明図である。
【
図12】本発明の衣服の第2の実施形態を示す正面図である。
【
図13】本発明の衣服の第2の実施形態の袖部分を折り返した状態を示す正面図である。
【
図14】本発明の衣服の第2の実施形態を構成する服地にステッチを施し、係止具を配置した状態を示す正面図である。
【
図15】本発明の衣服の第2の実施形態を構成する服地にステッチを施し、係止具を配置した状態を示す背面図である。
【
図16】本発明の衣服の第3の実施形態を構成する服地を折り、衣服の形状にした状態を示す正面図である。
【
図17】本発明の衣服の第3の実施形態を構成する服地を折り紙の折り方で衣服の形状を製作する工程を示す説明図である。
【
図18】本発明の衣服の第3の実施形態を示す正面図である。
【
図19】服地の表面の山折り線にステッチをかけた状態の1例示す説明図である。
【
図20】服地の表面の谷折り線である裏面から見た山折り線にステッチをかけた状態の例を示す説明図である。
【
図21】従来例の衣服の製作方法の手順を示す説明図である。
【
図22】従来例の製作方法により製作された衣服の実施例を示す正面図である。
【
図23】従来例の製作方法により製作された衣服の着用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれに限定されたものでないことは、言うまでもない。
【0029】
本発明において「ステッチをかける」とは、山折り線に平行に縫うことを言う。ステッチの位置は、山折り線から服地に垂直に任意の深さの位置でよく、折目を落着かせて安定させることができる。本発明において「表面ステッチ」とは服地表面の山折り線にかけたステッチを意味し、「裏面ステッチ」とは服地裏面の山折り線であって服地の表側から見た谷折り線にかけたステッチを意味する。
【0030】
本発明において、「服地」とは、綿、麻、羊毛、化学繊維、皮革等の素材からなるシート状の衣服に使用できる物を言う。
【0031】
以下図面を用いて本発明の衣服の実施の形態を詳細に説明する。
【0032】
〔構成・構造〕
本発明の第1の実施形態を、
図1から
図7に示す。
図1は服地表2から見た線の折り方を示した。図中、一点鎖線は山折り、破線は谷折り、実線は位置決めのための目安線を表す。
図1、
図6は服地表2から見た図であり、
図7は服地裏3から見た図である。
【0033】
本発明の第1の実施形態の衣服1aは、正方形の服地の表面2の2本の対角線の交点である中心点10と、中心点10から四隅に延びる対角線上の線A11、線B12、線C13、線D14と、線A11と線B12の間に中心点10から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、線B12と線C13の間に中心点10から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、線C13と線D14の間に中心点10から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、線D14と線A11の間に中心点10から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、線A11、線B12、線C13、線D14は谷折り線であり、線B12と線C13の間の中央の線BC22は山折り線であり、線D14と線A11の間の中央の線DA24は山折り線であり、線A11と線B12の間の中央の線AB21を挟む両隣の線ABa31と線ABb32は山折り線であり、線C13と線D14の間の中央の線CD23を挟む両隣の線CDc35と線CDd36は山折り線であり、線A11と線B12の間の中央の線AB21を挟む両隣の山折り線に囲まれた前身頃4と、線C13と線D14の間の中央の線CD23を挟む両隣の山折り線に囲まれた後身頃5と、線B12と線C13の間の中央の線BC22の山折り線からなる左肩7線と、線D14と線A11の間の中央の線DA24の山折り線からなる右肩6線と、中心点10の周囲に設けた切欠き51、を設けたものである。
【0034】
図2は、服地2を折り、衣服1aの形状にした状態を示した正面図である。前記の折り方で服地2を所定の線を山折り、谷折りをすることで、1aの形状とした。衣服1aの正面と背面の形状は同一に表れる。衣服1aの正面の中央部に前身頃4、背面の中央部に後身頃5が構成される。
【0035】
図4は、第1の実施形態を示す正面図であり、人が上着として着付けた状態を示す。上部の中心点10の周囲に設けた切欠き51部分が襟ぐり9となり、線A11と線B12の間の中央線AB21を挟む両隣の山折り線の線ABa31と線ABb32に囲まれた前身頃4と、線C13と線D14の間の中央線CD23を挟む両隣の山折り線の線CDc35と線CDd36に囲まれた後身頃5、中央線BC22の山折り線からなる左肩7線、中央線DA24の山折り線からなる右肩6線となる。
【0036】
図5は、第1の実施形態に切欠き服地52を前当てに付した状態を示す正面図である。切欠き服地52の周囲数か所にループ45を設けて前身頃4に設けたボタン44を留めかけて、前当てとした。
【0037】
図6は、服地表2に表面ステッチ41、裏面ステッチ42を施し、係止具43のボタン44とループ45を配置した状態を示す正面図である。
図2に示す服地を山折り、谷折りして立体的に構成した服地に表面ステッチ41、裏面ステッチ42をかけ、ボタン44とループ45を任意の位置に配した。
【0038】
図7は、服地3に表面ステッチ41、裏面ステッチ42を施し、係止具43のボタン44とループ45を配置した状態を示す背面図である。
図19、
図20は表面ステッチ41、裏面ステッチ42をかけた状態の一例を示した。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態を、
図8から
図15に示す。
図8は服地表2から見た線の折り方を示した。図中、一点鎖線は山折り、破線は谷折り、実線は位置決めのための目安線を表す。
図8、
図14は服地表2から見た図であり、
図15は服地裏3から見た図である。
【0040】
本発明の第2の実施形態の衣服1bは、正方形の服地の表面2の2本の対角線の交点である中心点10と、中心点10から四隅に延びる対角線上の線A11、線B12、線C13、線D14と、線A11と線B12の間に中心点10から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、線B12と線C13の間に中心点10から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、線C13と線D14の間に中心点10から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、線D14と線A11の間に中心点10から22.5度の角度に設けた3本の線を有し、線A11、線C13は山折り線であり、線B12を挟む両隣の線ABb32と線BCb33は山折り線であり、線D14を挟む両隣の線CDd36と線DAd37は山折り線であり、線A11と線B12の間の中央の線AB21は谷折り線であり、線B12と線C13の間の中央の線BC22は谷折り線であり、線C13と線D14の間の中央の線CD23は谷折り線であり、線D14と線A11の間の中央の線DA24は谷折り線であり、線B12を挟む両隣の山折り線ABb32線BCb33に囲まれた前身頃4と、線D14を挟む両隣の山折り線線CDd36と線DAd37に囲まれた後身頃5と、線A11の山折り線からなる右肩6線と、線C13の山折り線からなる左肩7線と、中心点10の周囲に設けた切欠き51、を設けたものである。
【0041】
図9は、第2の実施形態を構成する服地2を折り、衣服1bの形状にした状態を示す正面図であり、
図10は、衣服1bの形状にした後、袖部分を折り返した状態を示す正面図である。衣服1bの正面と背面の形状は同一に表れる。衣服1bの正面の中央部に前身頃4、背面の中央部に後身頃5が構成される。
【0042】
図11は、第2の実施形態を構成する服地2を折り紙の折り方で衣服1bの形状を製作する工程を示す説明図である。
図11(14)の鋏は、切込み61を構成することを示す。
図11から
図15に示す通り、切込み61は、右肩6線、左肩7線のそれぞれを挟んで対称に設けられており、切込み61に沿って設けられた係止具43で袖を構成する。
【0043】
図12は、第2の実施形態を示す正面図であり、人が上着として着付けた状態を示す。上部の中心点10の周囲に設けた切欠き51部分が襟ぐり9となり、線ABb32と線BCb33に囲まれた前身頃4と、線CDd36と線DAd37に囲まれた後身頃5、線C13からなる左肩7線、線A11からなる右肩6線となる。
【0044】
図13は、第2の実施形態の袖部分を折り返した状態を示す正面図である。右肩6線、左肩7線の前後の服地で構成された袖は、
図12のように伸ばしたままでもよいし、
図13のように先端部を折り返してもよい。
【0045】
図14は、第2の実施形態を構成する服地2に表面ステッチ41、裏面ステッチ42を施し、係止具43のボタン44とループ45を配置した状態を示す正面図である。
【0046】
図15は、第2の実施形態を構成する服地3に表面ステッチ41、裏面ステッチ42を施し、係止具43のボタン44とループ45を配置した状態を示す背面図である。
【0047】
次に、本発明の第3の実施形態を、
図16から
図18に示す。服地2の正方形の4隅を落として衣服1cの裾8を円形としたものである。山折り、谷折りによる構成は、裾8の形状が異なる以外は、第1の実施例と同様となる。衣服1cの正面と背面の形状は同一に表れる。衣服1cの正面の中央部に前身頃4、背面の中央部に後身頃5が構成される。
【0048】
図19は服地表2の山折り線に、
図20は服地表2の谷折り線である服地裏3から見た山折り線に、表面ステッチ41、裏面ステッチ42をかけた状態の例を示す説明図である。ステッチは山折り線で服地を折り、服地が2重になった状態で山折り線から任意の距離で平行なラインを描くように服地上に縫い目を設ける。任意の距離は、服地の厚みや素材にもより任意であるが、コバステッチは1mmから2mmの距離に縫い目を設けることをいう。
図20のように服地の端までステッチをかけないようにしてもよい。
【0049】
〔製作方法〕
【0050】
図3は、本発明の衣服1aの第1の実施形態を構成する服地を折り紙の折り方で、衣服1aの形状を製作する工程を示す説明図である。本発明の第1の実施形態の衣服1aは、正方形Aの服地の表面の1本の対角線を山折りしてなる直角二等辺三角形Aの(1)、長辺の真ん中の点と直角の角を結んだ線で山折りしてなる2つの直角二等辺三角形Bの(2)、上面及び下面の直角二等辺三角形Bの長辺の真ん中の点から直角の角を結んだ線で山折りしてなる上面及び下面の正方形Bの(3)縦の対角線の上部から8分の1の水平線で上面および下面の正方形Bから切り(4)、上面及び下面の正方形Bの折り輪を有する2辺をそれぞれ正方形Bの対角線に重なるように山折りした後(5)、該山折りを開いて上部を切り落とした正方形Bとし(6)、その後折り輪を有する右辺を開いて(7)製作される(8)。
【0051】
図11は、本発明の衣服1bの第2の実施形態を構成する服地を折り紙の折り方で、衣服1bの形状を製作する工程を示す説明図である。本発明の第2の実施形態の衣服1bは、正方形Aの服地の表面の1本の対角線を山折りしてなる直角二等辺三角形Aの(1)、長辺の真ん中の点と直角の角を結んだ線で山折りしてなる2つの直角二等辺三角形Bの(2)、上面及び下面の直角二等辺三角形Bの(3)長辺の真ん中の点から直角の角を結んだ線で山折りしてなる上面及び下面の正方形Bの縦の対角線の上部から8分の1の水平線で上面および下面の正方形Bから切り(4)、上面及び下面の正方形Bの折り輪を有する2辺をそれぞれ正方形Bの対角線に重なるように山折りした後(5)、該山折りを開いて上部を切り落とした正方形Bとし(6)、その後折り輪を有する右辺を開き(7)(8)、上面の正方形Bと下面の正方形Bの間の2辺の山折り線を谷折りし(9)、対角線上の前後一対の垂直の谷折り線を平面に伸ばした後に(10)、正方形の角を該対角線上に折り上げた後に再び谷折りとし(11)、もう一方の対角線上の前後一対の垂直の谷折り線を平面に伸ばし(12)、正方形の角を該対角線上に折り上げた谷折りを山折りとした後(13)、該正方形の角を該対角線上に折り上げた対角線の両隣の折り線の下部に切込みを入れて(14)製作される。
【0052】
前身頃4と後身頃5の両脇の山折りと谷折りの部分にステッチをかけ、また、任意の箇所にループ45とボタン44を配置することもできる。特に
図11の(14)で切り離した部分には
図12から
図15に示すようにボタン44とループ45を設けて袖の一部を分離して設けてもよい。
【0053】
衣服1のサイズは、正方形の服地の1辺の長さや、係止具43の配置により調整する。
【0054】
〔材質〕
服地は綿、麻、羊毛、化学繊維、皮革等の素材からなるシート状の衣服1に使用できる物であればよく、特に限定はない。また、各素材の製造方法は、織物、編み物、鞣し物等あり、厚みは薄手から厚手のものまで様々であり、使用にあたり特に限定はない。
【0055】
係止具43としては、ボタン44とループ45、フック、紐など、服地と服地を係止できるものであればよく、特に限定はない。
【0056】
〔効果〕
正方形の服地を折り紙のように折ることにより、衣服1に必要な構成要素を体にフィットさせて組み立てることができ、服地の形状をそのまま活かして衣服1とした、型紙を使用せず、資源をあますところなく使いきり製作可能な衣服1を提供できる。
【0057】
一枚の正方形の服地に折り目をつけて山折り、谷折りをすることで衣服1を製作することができるため、製図や、製図の際に使用する道具が不要となる。この折り目をつけるにあたり、折り紙の折り方の手法を用いることができるため、老若男女問わず衣服1を製作して、着用することができる。
【0058】
シンプルな構成としているため、表面・裏面共に使用できる両面仕立て(リバーシブル)とできる。
【0059】
正方形の服地の角を落として円形の服地で同様に製作することもできる。
【0060】
服地は、様々な素材を使用することができる。厚手素材を使用すれば外套として使用できる。薄手素材を使用することでドレープ感が増し、ドレッシーな衣服1ができる。
【0061】
服地の正方形の1辺の長さは任意であり、長ければワンピースやロングスカート、短ければ上着やスカートとして使用できる。
【0062】
切欠き51の形状は任意であるため、用途に合わせて略矩形、略八角形、略円、略楕円等が採用できる。
【0063】
切欠き51部分のサイズを大きくして、切欠き51をウエストに位置することによりスカートとして着用できる。
【0064】
切欠き51部分は襟ぐり9に又はウエストに位置することで、上着、スカート、着物の半コートや災害時の防寒着等、様々な利活用が可能である。
【0065】
中心点10の周囲の切欠いた服地52を、切欠き51部分に嵌めボタン44等で留めると、服地の元の形状である正方形になり、災害時などの膝掛けや、敷き布、掛け布にも使用できる。
【0066】
ステッチをかけることにより前身頃4を構成する線の折目を落着かせて、安定させ、体にフィットする衣服1として着心地をよくすることができる。この際、服地の端までステッチをかけずに服地に消し込むようにすることで、着用の際に服地がゴロゴロしたり、もたつくことがなくなり、すっきりとした形状の衣服1とすることができる。
【0067】
衣服1の任意の箇所にボタン44とループ45、フック、紐等の係止具43を設けることで、衣服1をさらに体にフィットさせ、着心地を向上させ、外観に変化を与えることができる。
【0068】
更に正方形の角を該対角線上に折り上げた、対角線の両隣の折り線の下部に袂を構成するための切込み61を入れたことにより衣服1から袖の一部が分離して動き、本発明の衣服1を着用した際、腕が動かしやすくなる。切込み61のラインに沿って係止具43を取付けることにより筒袖の形状とすることができ、腕を服地でカバーできる。右肩6線、左肩7線の前後の服地で構成された袖は、
図12のように伸ばしたままでもよいし、
図13のように先端部を折り返してもよく、袖の長さを調整することができる。
【0069】
衣服1は、服地の素材や正方形の1辺の長さ、切欠き51の形状・大きさ、係止具43の位置、切込み61の深さ等、着用する者の体型に合わせて任意に選択、調整、製作することができる。
【0070】
衣服1は、折り目と、係止具43の組み合わせ方で、正方形の平面状にも、体にフィットする立体形状にも自由に変化させることができ、使用者、着用者の要求に応じて任意の形状に変化させることができる。正方形の平面状の場合には膝掛けや上掛けに、立体形状の場合は、和服、洋服問わず羽織れ、災害時の防寒にも活躍するものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、正方形の服地を折り紙のように折ることにより、衣服に必要な構成要素を体にフィットさせて組み立てることができ、服地の形状をそのまま活かして衣服とした、型紙を使用せず、資源をあますところなく使いきり製作可能な衣服を提供できる。あわせて、衣服としての着用以外の活用方法がある衣服を提供することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 衣服
1a 衣服
1b 衣服
1c 衣服
2 服地表
3 服地裏
4 前身頃
5 後身頃
6 右肩
7 左肩
8 裾
9 襟ぐり
10 中心点
11 線A
12 線B
13 線C
14 線D
21 中央線AB
22 中央線BC
23 中央線CD
24 中央線DA
31 線ABa
32 線ABb
33 線BCb
34 線BCc
35 線CDc
36 線CDd
37 線DAd
38 線DAa
41 表面ステッチ
42 裏面ステッチ
43 係止具
44 ボタン
45 ループ
51 切欠き
52 切欠き服地
61 切込み
101 布
102 等辺縁部
103 縫合部
104 袖口のあき
105 胴のあき
106 衿ぐり
107 ポケット
110 袖口
114 房飾り
120 ホッチキス
121 ホッチキス
122 ホッチキス
123 ホッチキス
130 洋服
A 直角二等辺三角形の頂点
B 直角二等辺三角形の頂点
C 直角二等辺三角形の頂点
L 対角線
P 縫合部の両端の点
Q 縫合部の両端の点
R 縫合部の両端の点
S 縫合部の両端の点