IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・ボーイング・カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】複合構造体のスプライス及びその方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/16 20060101AFI20230713BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20230713BHJP
   B32B 3/04 20060101ALI20230713BHJP
   B32B 3/28 20060101ALI20230713BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20230713BHJP
   B64C 1/06 20060101ALI20230713BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20230713BHJP
   B29L 31/30 20060101ALN20230713BHJP
【FI】
B29C70/16
B29C70/42
B32B3/04
B32B3/28 Z
B64C1/00 B
B64C1/06
B29K105:08
B29L31:30
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019032705
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2019194002
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】15/918,508
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ アール.ケンドール
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィエンドラ シダース スーリヤアラチチ
(72)【発明者】
【氏名】ポール ディー.ショー
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3024107(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0257427(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0030380(US,A1)
【文献】特開2017-052183(JP,A)
【文献】特開2012-176514(JP,A)
【文献】特開2003-211416(JP,A)
【文献】特開2002-200606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
B29C 43/00-43/58
B29C 65/00-65/82
B32B 1/00-43/00
B27M 1/00- 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合構造体の階段状ラップスプライスを形成する方法であって、
第1セクションの各レイヤにシェブロン形状を形成して、前記第1セクションに形成された複数のシェブロン部位から成る第1階段状ラップパターンを前記第1セクションに構成し、
第2セクションの各レイヤに相手側形状を形成して、前記第2セクションに形成された複数の相手側部位から成る第2階段状ラップパターンを前記第2セクションに構成し、
前記シェブロン形状を有する各レイヤを、前記第2セクションにおける相手側形状とそれぞれ重ね合わせて、階段状ラップスプライスを形成する、方法。
【請求項2】
前記複合構造体の前記階段状ラップスプライスに含まれる重なり及び隙間の位置は、前記複合構造体における望ましくない皺の発生を低減させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記階段状ラップスプライスは、前記複合構造体における所定数の位置に配置され、前記所定数の位置は、前記複合構造体における望ましくない皺の発生を低減するように選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
エンドエフェクタシステムを用いて前記第1セクション及び前記第2セクションのうちの少なくとも1つの配向を操作して、前記シェブロン形状を有する各レイヤを前記第2セクションにおける相手側形状とそれぞれ重ね合わせて、前記階段状ラップスプライスを形成する、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記複数のシェブロン部位、及び、前記複数の相手側部位は、前記複合構造体又は前記階段状ラップスプライスの少なくとも1つにおける亀裂の進展を抑制する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記複合構造体に座屈を生じさせる圧縮応力を低減するように、前記複合構造体における前記階段状ラップスプライスを設けるスプライス位置を選択することをさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
複合構造体であって、
前記複合構造体の第1セクションと、前記複合構造体の第2セクションと、を含み、
前記第1セクションは、シェブロン形状の第1端部を有し、前記第1セクションに含まれる第1複合レイヤは、前記第1端部に第1階段状パターンを有し、
前記第2セクションは、前記シェブロン形状の相手側形状の第2端部を有し、前記第2セクションに含まれる第2複合レイヤは、前記第2端部に第2階段状パターンを有し、前記第1端部及び前記第2端部は、前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤと、スプライス位置で重なり合うように配置されており
前記複合構造体は、ストリンガであり、前記第1セクション及び前記第2セクションは、所望の断面形状を有する、複合構造体。
【請求項8】
前記スプライス位置で、前記複合構造体における望ましくない皺の発生が低減されている、請求項7に記載の複合構造体。
【請求項9】
前記スプライス位置のスプライスと、前記スプライス位置以外の前記複合構造体における位置と、の少なくとも1つで、望ましくない皺の発生が低減されている、請求項7に記載の複合構造体。
【請求項10】
前記複合構造体は、その長手方向に湾曲又は屈曲している、請求項7~9のいずれかに記載の複合構造体。
【請求項11】
前記所望の断面形状は、ハット型、U字型、及び、C字型を含む群から選択される、請求項10に記載の複合構造体。
【請求項12】
複合構造体であって、
前記複合構造体の第1セクションと、前記複合構造体の第2セクションと、を含み、
前記第1セクションは、シェブロン形状の第1端部を有し、前記第1セクションに含まれる第1複合レイヤは、前記第1端部に第1階段状パターンを有し、
前記第2セクションは、前記シェブロン形状の相手側形状の第2端部を有し、前記第2セクションに含まれる第2複合レイヤは、前記第2端部に第2階段状パターンを有し、前記第1端部及び前記第2端部は、前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤと、スプライス位置で重なり合うように配置されており、
前記第1セクション及び前記第2セクションは、ツール上で硬化されて前記複合構造体を形成する、複合構造体。
【請求項13】
前記シェブロン形状は、一組のシェブロン部位から成る、請求項7~12のいずかに記載の複合構造体。
【請求項14】
前記第1端部及び前記第2端部は、前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤと、前記スプライス位置において重なり合うように配置されており、前記第1複合レイヤと前記第2複合レイヤの間には、隙間又は重なりの少なくとも1つがあり、これにより、前記スプライス位置で応力が低減される、請求項7~13のいずかに記載の複合構造体。
【請求項15】
前記第1端部及び前記第2端部は、前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤと重なり合って、前記スプライス位置にラップスプライス継手を構成するように配置されている、請求項7~14のいずかに記載の複合構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して複合構造体の作製に関し、具体的には、スプライス(splice)を有する複合構造体の作製に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材胴体部は、複雑な幾何形状を有する。胴体部の一部は直径が一定であるが、胴体部のノーズ部分及びテール部分では、直径が先細りになっている。また、胴体部内部に曲げ、捩じり、段付き部(joggle)を有するスティフナも複雑な幾何形状を有する。このようなスティフナを、自動機器を用いて作製するには、皺、プライのブリッジング、あるいは、その他の望ましくない不具合の削減など、対応すべき課題がいくつかある。
【0003】
例えば、高度な輪郭形状であっても、レイヤを一層ずつ手作業でツールにドレーピングすれば作製可能であるが、そのようなプロセスは、多くの労力とスペースとを要する。
【0004】
したがって、上述の事項の少なくともいくつかと、その他の潜在的な事項を考慮した方法及び装置の提供が望まれる。例えば、複雑な幾何形状の複合構造体の作製に際して、望ましくない不具合の発生を低減するという技術的課題を克服した方法及び装置の提供が望まれる。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一実施形態は、複合構造体の階段状ラップスプライスを形成する方法を提供する。第1セクションの各レイヤにシェブロン形状を形成して、前記第1セクションに形成された複数のシェブロン部位から成る第1階段状ラップパターンを前記第1セクションに構成する。第2セクションの各レイヤに相手側形状を形成して、前記第2セクションに形成された複数の相手側部位から成る第2階段状ラップパターンを前記第2セクションに構成する。前記シェブロン形状を有する各レイヤを、前記第2セクションにおける相手側形状とそれぞれ重ね合わせて、階段状ラップスプライスを形成する。
【0006】
本開示の別の実施形態は、複合構造体における亀裂の進展を抑制するための方法を提供する。前記複合構造体において、前記複合構造体に作用する応力を低減するスプライス位置を特定する。前記スプライス位置に階段状ラップスプライスを形成し、この際に、前記階段状ラップスプライスが、第1セクションの各レイヤにシェブロン形状を有するとともに、前記第1セクションにおける複数のシェブロン部位から成る第1階段状ラップパターンが前記第1セクションに構成されるようにする。また、前記階段状ラップスプライスが、第2セクションの各レイヤに相手側形状を有するとともに、前記第2セクションにおける複数の相手側部位からなる第2階段状ラップパターンが前記第2セクションに構成されるようにする。前記シェブロン形状を有する各レイヤを前記第2セクションにおける別のレイヤの相手側形状とそれぞれ重ね合わせて、前記階段状ラップスプライスを形成する。
【0007】
本開示のさらに別の実施形態は、第1階段状ラップパターンと第2階段状ラップパターンを含む複合構造体を提供する。前記第1階段状ラップパターンは、複合構造体の第1セクションが有する複数のシェブロン部位から成る。前記第2階段状ラップパターンは、前記複合構造体の第2セクションが有する複数の相手側部位から成る。前記第1階段状ラップパターンと前記第2階段状ラップパターンが互いに重なり合って、階段状ラップスプライスを構成する。
【0008】
本開示のさらに別の実施形態は、複合構造体を作製するための方法を提供する。前記複合構造体の第1セクションを形成し、この際に、前記第1セクションの第1端部がシェブロン形状を有するとともに、前記第1セクションに含まれる第1複合レイヤが前記第1端部に第1階段状パターンを構成するようにする。また、前記複合構造体の第2セクションを形成し、この際に、前記第2セクションの第2端部が、前記シェブロン形状の相手側形状を有するとともに、前記第2セクションに含まれる第2複合レイヤが前記第2端部に第2階段状パターンを構成するようにする。前記第1複合レイヤのうちの特定の第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤのうちの特定の第2複合レイヤとスプライス位置において重なり合うように、前記第1端部及び前記第2端部を配置する。
【0009】
本開示のさらに別の実施形態は、第1セクションと第2セクションとを含む複合構造体を提供する。前記第1セクションはシェブロン形状の第1端部を有し、前記第1セクションに含まれる第1複合レイヤは、前記第1端部に第1階段状パターンを有する。前記第2セクションは、前記シェブロン形状の相手側形状の第2端部を有する。前記第2セクションに含まれる第2複合レイヤは、前記第2端部に第2階段状パターンを有する。前記第1端部及び前記第2端部は、前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤと、スプライス位置で重なり合うように配置されている。
【0010】
本開示のさらに別の実施形態は、複合構造体を作製するための方法を提供する。前記複合構造体の第1セクションを形成し、この際に、前記第1セクションの第1端部がシェブロン形状を有し、前記第1セクションに含まれる第1複合レイヤが、前記第1端部に第1階段状パターンを構成するようにする。前記シェブロン形状は、一組のシェブロン部位から成る。また、前記複合構造体の第2セクションを形成し、この際に、前記第2セクションの第2端部が、前記シェブロン形状の相手側形状を有し、前記第2セクションに含まれる第2複合レイヤが、前記第2端部に第2階段状パターンを構成するようにする。前記第1セクション及び前記第2セクションは、実質的に平面状である。前記第1セクション及び前記第2セクションを所望の断面形状に成形する。前記第1端部及び前記第2端部をツールに配置し、この際に、前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤと、スプライス位置で重なり合ってラップスプライス継手を構成するようにし、前記第1複合レイヤと前記第2複合レイヤの間に隙間又は重なりの少なくとも1つが形成されるようにし、これにより、前記ラップスプライス継手における応力を低減させるとともに、前記複合構造体における望ましくない皺の発生を前記スプライス位置で低減させるようにする。前記第1セクション及び前記第2セクションを硬化させて、前記複合構造体を形成する。
【0011】
本開示のさらに別の実施形態は、第1セクションと第2セクションと、を含む複合構造体を提供する。前記第1セクションは、一組のシェブロン部位から成るシェブロン形状の第1端部を有し、前記第1セクションに含まれる第1複合レイヤは、前記第1端部に第1階段状パターンを有する。前記第2セクションは、前記シェブロン形状の相手側形状の第2端部を有し、前記第1セクション及び前記第2セクションは、所望の断面形状を有し、前記第2セクションに含まれる第2複合レイヤは、前記第2端部に第2階段状パターンを有する。前記第1端部及び前記第2端部は、前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤと、スプライス位置で重なり合うように配置されており、ラップスプライス継手を形成する前記第1複合レイヤと前記第2複合レイヤの間には、隙間又は重なりの少なくとも1つがあり、これにより、前記スプライス位置で応力が低減されているとともに、前記複合構造体における望ましくない皺の発生が前記スプライス位置で低減されている。
【0012】
本開示のさらに別の実施形態は、複合構造体にスプライスを配置するための方法を提供する。前記複合構造体に設けるスプライス位置の数を選択する。前記複合構造体を形成するためのセクションを階段状パターンに配置して、前記選択された数のスプライス位置に所定数のスプライスを形成し、これにより、前記選択された数のスプライス位置のうちの特定のスプライス位置と、前記スプライス位置以外の前記複合構造体における位置と、の少なくとも1つにおいて、望ましくない皺の発生を低減させる。
【0013】
これらの特徴及び機能は、本開示の様々な実施形態において個別に達成することもできるし、さらに他の実施形態と組み合わせることも可能である。その詳細は、以下の記載、及び、添付図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
例示的な実施形態に特有であると考えられる新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。ただし、例示的な実施形態、並びに、好ましい使用形態、さらに、その目的及び利点は、以下に示す本開示の例示的な実施形態の詳細な説明を、添付の図面と併せて参照することで最もよく理解されるであろう。
【0015】
図1】例示的な実施形態による複合材の製造環境を示すブロック図である。
図2】例示的な実施形態による複合構造体であるスティフナを示す図である。
図3】例示的な実施形態によるスティフナのセクションを構成するレイヤを示す図である。
図4】例示的な実施形態によるスティフナのセクションを示す分解側面図である。
図5】例示的な実施形態によるスティフナのセクションを示す分解断面図である。
図6】例示的な実施形態によるスティフナのセクションの階段状パターンを示す図である。
図7】例示的な実施形態によるスティフナを形成するように配置された第1セクション及び第2セクションを示す図である。
図8】例示的な実施形態によるスティフナのセクションを所望の形状に成形するためのツールを示す図である。
図9】例示的な実施形態によるスティフナのセクション及びツールを示す断面図である。
図10】例示的な実施形態によるスティフナのセクションをツールで所望の断面形状に成形した状態を示す断面図である。
図11】例示的な実施形態によるセクションのハット型の断面形状を示す図である。
図12】例示的な実施形態によるスティフナの2つのセクションをツールに配置した状態を示す図である。
図13】例示的な実施形態によるスティフナを示す図である。
図14】例示的な実施形態によるスティフナのセクションの処理において用いられる離型層を示す図である。
図15】例示的な実施形態による複合構造体における弧長の違いを示す図である。
図16】例示的な実施形態による複合構造体の複数のセクションを示す図である。
図17】例示的な実施形態による複数のセクションから成るスティフナを示す図である。
図18】例示的な実施形態による複合構造体を作製するプロセスを示すフローチャートである。
図19】例示的な実施形態による複合構造体におけるスプライスの設計プロセスを示すフローチャートである。
図20】例示的な実施形態による複合構造体の階段状ラップスプライスを形成するプロセスを示すフローチャートである。
図21】例示的な実施形態による複合構造体における亀裂の進展を抑制するプロセスを示すフローチャートである。
図22】例示的な実施形態による複合構造体にスプライスを配置するプロセスを示すフローチャートである。
図23】例示的な実施形態による航空機の製造及び使用方法を示すブロック図である。
図24】例示的な実施形態による航空機を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
例示的な実施形態では、1つ以上の異なる事項が認識及び考慮されている。例えば、例示的な実施形態では、複合材料を三次元形状に積層して複合構造体を形成するプロセスは、必要以上に煩雑で時間を要することが認識及び考慮されている。例示的な実施形態では、曲線形状又は捩りのうちの少なくとも1つを含むストリンガなどの複合構造体を、半自動で作製可能であることが認識及び考慮されている。ただし、所望の幾何形状に適合させた独自の形状の成形型を備える機器を使用する必要がある。
【0017】
さらに、例示的な実施形態では、垂直切込みを設ける接合技術(splicing technique)をスティフナに利用可能であることが認識及び考慮されている。例示的な実施形態では、このような接合よれば、皺の発生を幾分か低減することができるものの、皺などの望ましくない不具合の発生に完全には対処できていないことが認識及び考慮されている。したがって、例示的な実施形態では、望ましくない不具合の発生を低減するように接合可能な、チャージ材などの形材を用いた複合構造体の作製方法、装置、及び、システムが提供される。
【0018】
例示的な実施例では、このような種類の複合構造体は、二次元形状のセクション(section)を用いて作製可能である。このような二次元形状のセクションは、三次元形状に接合する際に、望ましくない不具合の発生を低減するように接合可能な構成を有する。例えば、望ましくない皺を発生させることなく二次元形状のセクションを接合して、曲面及び捩じりを含むような複雑な輪郭形状のストリンガを形成することができる。
【0019】
例えば、シェブロン式(chevron approach)接合を利用すれば、複合構造体を所望の領域に分割することが可能になる。この結果、過剰な圧縮荷重は低減されるが、弧長(arc length)やその違いが生じる場合がある。弧長の違いは、構造体が曲面形状に成形されて、円弧形状の部位を有する場合に生じる。構造体の両側に形成される円弧は、互いに長さが異なる。2つの円弧の差が大きくなると、構造体の小さい方の円弧の側に中間剪断荷重によって圧縮座屈(皺)が生じる。
【0020】
例示的な実施例で利用可能なセクションの両端には、複合材料が保証された状態(insured state)で、平行繊維がより大きく分離されるよう設計されたスプライスを構成するパターンが形成されている。このように大きな分離は、複雑な輪郭形状を有する領域を介して発生しうる。このようなスプライス領域は、繊維の角度と数を選択することでカスタマイズすることが可能である。さらに、両端に形成するパターンは、角度のついたスプライス領域において、交差する繊維を取り除くことで、平行繊維が互いに切断されるように構成することができる。
【0021】
以下、添付図面を、具体的には、図1を参照すると、例示的な実施形態による複合材の製造環境のブロック図が示されている。複合材製造環境100は、三次元の複合部材102を作製することができる環境の一例である。
【0022】
複合部材102は、例えば、長尺状の複合構造体104である。この実施例では、複合構造体106は、複合部材102に含まれる。複合構造体106は、航空機の複合構造体、スティフナ、ストリンガ、ロンジロン、ビーム、あるいは、その他の適当な種類の複合構造体のうちの少なくとも1つからから選択することができる。本明細書において、「少なくとも1つ」という語句がアイテムの列挙とともに用いられている場合、列挙されたアイテムの1つ以上を様々に組み合わせて使用できることを意味し、また、列挙された各アイテムの1つだけを必要とする場合もあることを意味する。すなわち、「少なくとも1つ」は、列挙されたアイテムから任意の数のアイテムを任意の組み合わせで使用することができるが、列挙されたアイテムのすべてを必要とするわけではないということを意味する。また、アイテムとは、例えば、ある特定の対象、物、又はカテゴリである。
【0023】
例を挙げると、「アイテムA、アイテムB、又は、アイテムCのうちの少なくとも1つ」は、限定するものではないが、アイテムAを含む場合、あるいは、アイテムAとアイテムBを含む場合、あるいは、アイテムBを含む場合がありうる。また、この例は、アイテムAとアイテムBとアイテムCを含む場合、あるいは、アイテムBとアイテムCを含む場合がありうる。当然ながら、これらのアイテムのあらゆる組み合わせが可能である。他の例を挙げると、「少なくとも1つ」は、例えば、限定するものではないが、2個のアイテムAであってもよいし、1個のアイテムBであってもよいし、10個のアイテムCであってもよいし、4個のアイテムBと7個のアイテムCであってもよい。あるいは、他の適当な組み合わせも可能である。
【0024】
複合構造体106がストリンガである場合、このストリンガは、航空機111の胴体部109における複合材筒状セクション107に取り付けられるよう構成される。この場合、複合構造体106は、複雑な輪郭形状144の三次元形状を有する。複雑な輪郭形状144は、複合材筒状セクション107に適合する形状でもよい。
【0025】
この例示的な実施例では、第1セクション108及び第2セクション110を用いて、複合構造体106を構成することができる。図示の通り、複合構造体106の第1セクション108は、シェブロン形状(chevron shape)114の第1端部112を有する。
【0026】
図示したこの実施例では、シェブロン形状114は、第1端部112に形成された一組のシェブロン部位(chevron)をから成る。本明細書において、「一組の」という語句がアイテムとともに用いられている場合、1つ又は複数のアイテムを意味する。例えば、「一組のシェブロン部位」とは、1つ又は複数のシェブロン部位を意味する。シェブロン部位とは、第1端部112に向かって幅が小さくなっている長尺状部位である。
【0027】
シェブロン形状114は、1つ以上のパラメータに基づいて選択される。パラメータには、例えば、限定するものではないが、該当するパーツを完成させるのに必要な材料の総量、スプライスに許容されるスペース及び厚さ(gage)、製造能力、重なり要件、及び、その他の適当なパラメータが含まれる。
【0028】
例えば、ストリンガの一方の側が、パッドアップ(padup)により増厚した外皮を跨いで延びている場合、その一方の側が延びる距離は、ストリンガの他方よりも長くなる。このため、そのパーツを完成させるために必要な材料の量が多くなる。例えば、シェブロン部材が接合部におす側部分とめす側部分を備える設計の場合、パッドアップにより増厚された外皮上に延びるめす側部分の重なり長さは、ストリンガの長い方の側の距離が長くなっている分だけ長くなる。
【0029】
他の例を挙げると、スプライスにおける重なりは、軸方向及び横方向の値が同じでなくてはならないとしてよい。この例では、スプライスの角度が45度であると、重なり及び隙間の公称値が両方向(縦方向及び横方向)で同じになるので好ましい。
【0030】
さらに他の例を挙げると、スプライス全体のサイズが制限されている。このため、厚さ及び重なり量の設計要件を考慮して形状が設計される。この例では、スプライスの角度を小さくして90度に近づけると、得られる効果は小さくなるが、長さ制限を満たすような形状にすることができる。例示的な実施例では、スプライスは、スカーフ継手(scarf splice)の構成を有する。この実施例では、スカーフ継手では、厚さが同じ2つの階段状パターンが形成されており、両者を合わせると、互いの相補形状を有するレイヤが重なり合う。ここで、重なりと隙間の領域においては、全体の厚さが一レイヤ分だけ厚くなる場合がある。
【0031】
さらに他の例を挙げると、長さの制限がない場合には、スプライスのサイズが大きいほうが、複合材料のレイヤを積層する製造能力において有利である。この例では、スプライスの角度を大きくすることができ、レイヤドロップ間隔(layer drop spacing)を全体として大きくすることができるので、製造性を高めることができる。
【0032】
さらに他の例では、製造機器における制約を考慮する場合がある。レイヤ切断装置によって切断可能な角度が1つのみであれば、45度、あるいは、他の所望の1つの角度で横方向の分離を行う。
【0033】
さらに、第1セクション108に含まれる第1複合レイヤ116は、第1階段状パターン118を第1端部112に有する。この実施例では、複合構造体106の第2セクション110は、シェブロン形状114の相手側形状(counterpart shape)122を第2端部120に有する。この例示的な実施例では、相手側形状122は、シェブロン形状114に対して相補的な幾何形状であって、組み立て後のスプライスの断面形状が、所望の部品の断面形状を画成する。
【0034】
第2セクション110に含まれる第2複合レイヤ124は、第2端部120に第2階段状パターン126を有する。この例示的な実施例では、第1複合レイヤ116は、第1プリプレグであり、第2複合レイヤ124は、第2プリプレグである。図示の通り、第1セクション108に含まれる第1複合レイヤ116は、第1プリプレグであり、第2セクション110に含まれる第2複合レイヤ124は、第2プリプレグである。
【0035】
図示の通り、第1端部112及び第2端部120は互いに相対的に配置され、これにより、第1階段状パターン118を構成する複数の第1複合レイヤ116のうちの特定の第1複合レイヤ128が、第2階段状パターン126を構成する複数の第2複合レイヤ124のうちの特定の第2複合レイヤ130とスプライス位置132において重なり合って、スプライス134が形成される。この例示的な実施例では、第1階段状パターン118の段部と第2階段状パターン126の段部が、スプライス134において互い違いに重なり合っている。このように、第1端部112に第1階段状パターン118を有する第1複合レイヤ116と、第2端部120に第2階段状パターン126を有すると第2複合レイヤ124と、が交互に重ね合わされることで、ラップスプライス継手146が形成される。このスプライスは、くさび型スプライス(wedge splice)147とも呼ばれる。
【0036】
この実施例では、スプライス位置132において、屈曲部、角度、捩じり、あるいは、その他の特異部の少なくとも1つを有する複雑な輪郭形状144であっても、複合構造体106における望ましくない皺136の発生がスプライス位置132で低減される。
【0037】
図示の通り、第1端部112及び第2端部120の配置は、第1階段状パターン118を構成する第1複合レイヤ116のうち、シェブロン形状114を有する第1複合レイヤ128が、第2階段状パターン126を構成する第2複合レイヤ124のうち、相手側形状122を有する第2複合レイヤ130と重なり合うような配置になっている。これにより、スプライス位置132に、ラップスプライス継手146であるスプライス134が形成される。
【0038】
複合構造体106を作製する際は、複合構造体106の第1セクション108及び第2セクション110が形成される。この際に、第1セクション108は、第1複合レイヤ116を積層して形成され、第2セクション110は、第2複合レイヤ124を積層して形成され、いずれのセクションも実質的平面138である。
【0039】
例示的な実施例では、第1セクション108の第1複合レイヤ116、及び、第2複合レイヤ124はプリプレグであり、強化繊維などの材料のレイヤに樹脂系が予備含浸されて構成される。
【0040】
例示的な実施例では、第1セクション108及び第2セクション110は、実質的平面138の形状を成形して、所望の断面形状140を有する複雑な輪郭形状144を構成することができる。この例示的な実施例では、所望の断面形状140は、ハット型、U字型、C字型、あるいは、その他の適当な断面形状を含む群から、複雑な輪郭形状144として選択される。
【0041】
図示の通り、第1セクション108及び第2セクション110は、複合構造体106用のツール142に配置される。第1セクション108及び第2セクション110は、ツール142に配置されることによって、複合構造体106の複雑な輪郭形状144である三次元形状に成形される。第1セクション108及び第2セクション110は、ツール142上で硬化されて、複雑な輪郭形状144を有する複合構造体106を形成する。
【0042】
他の例示的な実施例では、複合構造体106は、第1階段状ラップパターン181及び第2階段状ラップパターン187から成る階段状ラップスプライス171を有する。第1階段状ラップパターン181は、複合構造体106の第1セクション108が有する複数のシェブロン部位183で構成されており、複合構造体106の第2セクション110が有する複数の相手側部位185で構成された第2階段状ラップパターン187と重なり合っている。
【0043】
さらに、第1複合レイヤ116と第2複合レイヤ124の間には、スプライス134において隙間193及び重なり195が形成されている。隙間193及び重なり195は、複合構造体106における望ましくない皺136の発生を低減するように構成することができる。
【0044】
さらに他の例示的な実施例では、スプライス134は、複合材製造環境100で製造される複合構造体106の階段状ラップスプライス171の形態をとることができる。スプライス134に関し、複合構造体106に階段状ラップスプライス171を設けるためのスプライス位置132は、複合構造体106における応力149を低減するように選択される。
【0045】
この実施例では、階段状ラップスプライス171では、第1セクション108の各レイヤがシェブロン形状114を有しており、第1セクション108に第1階段状ラップパターン181が構成されている。第1セクション108のスプライス位置132には、複数のシェブロン部位183が形成される。
【0046】
加えて、階段状ラップスプライス171では、第2セクション110の各レイヤが相手側形状122を有しており、第2セクション110に第2階段状ラップパターン187が構成されている。第2セクション110のスプライス位置132には、複数の相手側部位185が形成されている。第1セクション108及び第2セクション110に含まれるレイヤは、複合材のレイヤであり、硬化することができる。これらのレイヤは、プライの形態をとることができる。各レイヤは、1つ以上のプライから構成することができる。
【0047】
例示的な実施例では、複数のシェブロン部位183及び複数の相手側部位185により、複合構造体106又は階段状ラップスプライス171の少なくとも1つにおける亀裂の進展を抑制することができる。例えば、亀裂の進展を抑制するには、複合構造体106に隣接する他の複合構造体(図示せず)との間のスプライスが、その横断面全体に連続するような重なり部分を含む状態を排除すればよい。互いに隣接する異なるスティフナ(図示せず)の間に、このような種類のスプライスを配置しないようにすれば、1つのスティフナの亀裂がスプライスを介して別のスティフナに進展する可能性を低減することができる。例えば、あるストリンガにおけるシェブロン部位の重なりを、隣接するストリンガにおけるシェブロン部位の重なりに対して角度をつけて配置することができる。これにより、スティフナに対して垂直なフレームベイ(図示せず)を介して進行してくる亀裂は、重なり部分に対して正面からの侵入に近い角度で侵入しようとすることになるので阻止される。
【0048】
本プロセスでは、シェブロン形状114を有する各レイヤを、第2セクション110における対応する相手側形状141にそれぞれ重ね合わせて、階段状ラップスプライス171を形成する。階段状ラップスプライス171は、重なり195及び隙間193を有する。重なり195及び隙間193は、複合構造体106における望ましくない皺136の発生を低減するように、階段状ラップスプライス171における複数の位置に設けられている。
【0049】
複合構造体106の作製の一工程において、エンドエフェクタシステム191を用いて、第1セクション108及び第2セクション110のうちの少なくとも1つの配向を操作して、シェブロン形状114を有する各レイヤを第2セクション110における対応する相手側形状141に重ね合わせ、これにより階段状ラップスプライス171を形成する。エンドエフェクタシステム191は、1つ以上のエンドエフェクタを含む物理的なシステムである。エンドエフェクタは、ロボットアーム又はその他の機械によって移動させて、第1セクション108及び第2セクション110などのアイテムの移動及び配置を行うことができる。
【0050】
図示の通り、階段状ラップスプライス171は、スプライス位置132に加えて、あるいは、替えて、複合構造体106における所定数の位置177に配置することができる。所定数の位置177は、複合構造体106における望ましくない皺136の発生を低減するように選択される。例えば、階段状ラップスプライス171に設けるスプライス位置132については、階段状ラップスプライス171と、階段状ラップスプライス171以外の位置177と、の少なくとも1つにおいて、望ましくない皺136の発生が少なくなるような位置が選択される。
【0051】
例示的な一実施例では、複雑な幾何形状を有する複合構造体を作製するに際し、望ましくない不具合の発生を低減するという技術的課題を克服する1つ以上の技術的解決が提示される。この結果、1つ以上の技術的解決において、スプライスの形状又は階段状パターンの少なくとも1つが、皺などの望ましくない不具合の発生を低減するよう構成されたスプライスを利用できるという技術的効果が得られる。
【0052】
図1に示した複合材製造環境は、例示的な実施形態を実施可能な態様に、物理的な限定や構成上の限定を加えることを意図したものではない。例示した部材に対して、追加の部材あるいは代替の部材を使用することも可能である。また、いくつかの部材が不要な場合もある。また、ブロックは、いくつかの機能的なコンポーネントを説明するために示している。例示的な実施形態を実現するに際し、これらのブロックを分割したり、組み合わせたり、組み合わせてから異なるブロックに分割したりすることができる。
【0053】
例えば、第1セクション108及び第2セクション110に追加して、あるいは、替えて、1つ以上のセクションが存在してもよい。例えば、追加のセクションが1つあれば、スプライス134に加えて、もう1つスプライスを形成することができる。図示の通り、第1複合レイヤ116と第2複合レイヤ124は、同じ数のレイヤを含むこともできるし、互いに異なる数のレイヤを含むこともできる。他の例示的な実施例では、所望の断面形状140は、第1セクション108及び第2セクション110をツール142に配置する際に形成される。
【0054】
図2図10は、例示的な実施形態による複合材スティフナを形成するプロセスを示す図である。先ず、図2を参照すると、例示的な実施形態による複合構造体であるスティフナが示されており、未硬化のスティフナ200の上面視が示されている。スティフナ200は、図1のブロック図に示した複合構造体106の実施態様の例である。この実施例では、スティフナ200は、未硬化であって、屈曲部201を有する。
【0055】
図示の実施例では、スティフナ200は、第1セクション202及び第2セクション204を用いて構成されている。図示の通り、これら2つのセクションは未硬化の多層体であって、スプライス中心線208で示すスプライス位置206に相対的に配置されてスプライス210を形成している。
【0056】
次に図3を参照すると、例示的な実施形態によるスティフナのセクションを構成するレイヤが示されている。例示的な実施例では、複数の図面において、同一の参照符号が用いられている。異なる図面においても同じ参照符号が用いられているが、これらは、異なる図面における同一の要素を表している。構造体を構成するレイヤは、互いにレイヤ境界をずらして積層されている。
【0057】
この図では、図2のスティフナ200を構成する第1セクション202及び第2セクション204を構成する複数のレイヤ300は、未硬化の状態である。図示の通り、レイヤ300は、複合材のレイヤであって、多くの異なる形態が可能である。例えば、レイヤ300は、樹脂を含浸させた織物である。他の例示的な実施例では、レイヤ300は、一方向材料を用いて形成される。他の例示的な実施例では、レイヤ300は、プリプレグである。図示の通り、レイヤ300は、スティフナ200の第1セクション202を構成するレイヤ302、レイヤ304、及び、レイヤ306を含む。加えて、レイヤ300は、スティフナ200の第2セクション204を構成するレイヤ308、レイヤ310、及び、レイヤ312を含む。
【0058】
同図には、これらのレイヤ300のパターンが示されている。第1セクション202は、レイヤ302の第1端部316にシェブロン形状314を有し、レイヤ304の第1端部320にシェブロン形状318を有し、レイヤ306の第1端部324にシェブロン形状322を有する。第2セクション204を構成するレイヤ300では、レイヤ308の第2端328に相手側形状326を有し、レイヤ310の第2端332に相手側形状330を有し、レイヤ312の第2端336に相手側形状334を有する。
【0059】
この例示的な実施例では、シェブロン形状314、シェブロン形状318、及び、シェブロン形状322は、それぞれ1つのシェブロン部位を有する。他の例示的な実施例では、具体的な態様に合わせて、複数のシェブロン部位を有する形状も可能である。
【0060】
また、2つのセクションの各々について3つのレイヤのみを示したが、これは例示的な実施形態における異なる特徴を説明するためである。実際の態様では、もっと多くのレイヤが用いられるが、例示的な実施形態の異なる特徴を示す妨げにならないように図示を省略している。
【0061】
次に、図4を参照すると、例示的な実施形態によるスティフナを構成するセクションの分解側面図が示されている。この図は、スティフナ200の第1セクション202及び第2セクション204を、図2の線4-4の方向から見た側面を分解して示している。
【0062】
この図では、レイヤ300間の隙間と重なりが示されている。例えば、第2セクション204のレイヤ308と第1セクション202のレイヤ302の間には、隙間400がある。また、第1セクション202のレイヤ304と第2セクション204のレイヤ312の間には、隙間402がある。
【0063】
図示の通り、第2セクション204のレイヤ308と第1セクション202のレイヤ302の間には、重なり404がある。加えて、第2セクション204のレイヤ310と第1セクション202のレイヤ304の間には、重なり406がある。また、第2セクション204のレイヤ312と第1セクション202のレイヤ306の間には、重なり408がある。
【0064】
この実施例では、図に示す重なり長さ411は、スプライスに掛かる荷重を伝達するように選択することができる。また、隙間400及び隙間402は、不要な重なり(図示せず)を少なくするために設計されたものである。隙間400及び隙間402は、圧力が低い領域を発生させる。隙間400及び隙間402に、皺が発生しうる。このように、隙間400及び隙間402で皺が寄っても、重なり404、重なり406、及び、重なり408の長さ411で調整されるので、皺を小さくすることができる。例えば、1つの大きな皺に代わって、複数の小さい皺にすることができる。このような小さな皺は、分散させることができるので、この実施例によれば、望ましい構造体強度を維持することができる。皺を記述する場合、皺の(谷から頂部までの)高さを該当セクションの厚さに対する比率(d/t)で、また、皺の長さを、当該高さに対する比率(L/D)で表すことができる。例えば、ある皺のD/tが0.5(該当セクションの厚さに対する振幅比が50%)であり、L/Dが10であれば、その皺は、例えば、d/tが0.1で、L/Dが50の場合よりも片寄り(deviation)が大きいことになる。
【0065】
このように、重なりと隙間の選択は、スプライスが所望の強度特性を有し、且つ、スプライスにおける望ましくない皺の発生を低減させるように決定することができる。記載した程度の小さな皺であれば、レイヤの厚さがそれほど大きくなることはない。
【0066】
次に、図5を参照すると、例示的な実施形態によるスティフナのセクションの分解断面図が示されている。この図では、スティフナ200の第1セクション202及び第2セクション204を、図2の線5-5の方向から見た断面を分解して示している。この断面図には、第1セクション202のレイヤ302、レイヤ304、及び、レイヤ306、並びに、第2セクション204のレイヤ308、レイヤ310、及び、レイヤ312が示されている。
【0067】
この断面図には、レイヤ302の第1端部316のシェブロン形状314と、レイヤ304の第1端部320のシェブロン形状318と、レイヤ306の第1端部324のシェブロン形状322の中心が現れている。また、レイヤ308の第2端328の相手側形状326と、レイヤ310の第2端332の相手側形状330と、レイヤ312の第2端336の相手側形状334の中心が現れている。
【0068】
この図では、第1セクション202のレイヤ302と第2セクション204のレイヤ308との間に重なり500がある。また、第1セクション202のレイヤ304と第2セクション204のレイヤ310の間に重なり502がある。さらに、第1セクション202のレイヤ306と第2セクション204のレイヤ312の間に重なり504がある。
【0069】
さらに、第1セクション202のレイヤ302と第2セクション204のレイヤ310の間に隙間506がある。加えて、第1セクション202のレイヤ304と第2セクション204のレイヤ312の間に隙間508がある。
【0070】
次に図6を参照すると、例示的な実施形態によるスティフナのセクションが有する階段状パターンが示されている。この図では、第1階段状パターン600は、第1セクション202の第1端部602にシェブロン形状を有する。第1階段状パターン600は、レイヤ302、レイヤ304、及び、レイヤ306で構成されている。図示のとおり、第2階段状パターン604は、第2セクション204の第2端部606においてレイヤ308、レイヤ310、及び、レイヤ312が有する相手側形状で構成されている。
【0071】
次に、図7を参照すると、例示的な実施形態によるスティフナを構成するように配置された第1セクション及び第2セクションが示されている。この実施例では、第2セクション204が第1セクション202の上に配置されており、スティフナ200の形状700が形成されている。この例示的な実施例では、一方の側面における外側半径を他方の側面よりも大きくすることで、屈曲部201が形成されている。例えば、第2セクション204の側面701が、側面703よりも大きな半径を有するように配置することができる。
【0072】
図8を参照すると、例示的な実施形態によるスティフナのセクションを所望の形状に成形するためのツールが示されている。この例示的な実施例では、ツール800に配置された第1セクション202の透視図が示されている。この例示的な実施例では、ツール800は、上側ダイ802と下側ダイ804を含む。第1セクション202は、ツール800の上側ダイ802と下側ダイ804の間に配置されている。この位置で、第1セクション202は、ツール800で圧縮及び固化される。
【0073】
図9には、例示的な実施形態によるスティフナのセクション及びツールの断面が示されている。この図では、ツール800に配置された第1セクション202を、図8の線9-9に沿った断面で示している。同図に示すように、第1セクション202は、ツール800の上側ダイ802と下側ダイ804の間に配置されている。
【0074】
次に、図10を参照すると、例示的な実施例によるスティフナのセクションを、ツールで成形した所望の断面形状が示されている。同図では、図8の線9-9に沿った断面が示されており、上側ダイ802を矢印1000の方向に移動させて下側ダイ804に接近させた状態である。
【0075】
図示の通り、第1セクション202は、ハット型1001の断面形状を有する。ハット型1001は、フランジ1002、フランジ1004、ウェブ1003、及び、キャップ1006から成る。
【0076】
図8図10では、スティフナ200のレイヤ300が、レイヤ300間で滑らないように制御されている場合の成形方法を示している。例えば、レイヤ302、レイヤ304、及び、レイヤ306は、これらの図に示すように、レイヤ同士が滑らないように処理することが可能である。
【0077】
スプライスに段付き部を設けると、セクションを長さ方向に段階的に接合することができる。第1端部602にシェブロン形状を有する第1セクション202を下側ダイ804に配置し、下側ダイ804に配置する第2の部材として、第2端部606に相手側形状を有する第2セクション204を配置する。第2セクション203(図示せず)も、同様に、ハット型1001の断面形状を有するように成形することができる。
【0078】
次に図11を参照すると、例示的な実施形態による、ハット型の断面形状を有するセクションが示されている。同図では、セクション1100が透視図で示されている。図示の第1セクション202は、フランジ1002、フランジ1004、ウェブ1003、及び、キャップ1006を有するハット型1001に成形された後の状態である。また、第2セクション204は、フランジ1101、フランジ1103、ウェブ1107、及び、キャップ1105を有するハット型1102に成形された後の状態である。
【0079】
図示の通り、第1セクション202における第1階段状パターン600は、複数の段差1123を有する。この実施例では、第1セクション202の第1端部602には、レイヤ302、レイヤ304、及び、レイヤ306をずらして配置することで、複数の段差1123が形成されている。
【0080】
第2セクション204の透視図も、ハット型1102に成形された後の状態を示す。図示の通り、第2セクション204の第2端部606に、第2階段状パターン604が見えている。複数の段差1104は、レイヤ308、レイヤ310、及び、レイヤ312をずらして配置することで形成されている。この実施例では、複数の段差1123は、複数の段差1104に対応しており、複数の段差1123を複数の段差1104に重ね合わせることができる。他の例示的な実施例では、複数の段差1123と複数の段差1104は、段差1123が段差1104の間に交互に差し込まれるように構成することができる。
【0081】
次に、図12を参照すると、例示的な実施形態によるスティフナの2つのセクションをツールに配置した状態が示されている。図示の通り、第1セクション202及び第2セクション204が、ツール1200に配置されている。この実施例では、ツール1200は、めす型ツールであり、スティフナ200の外表面に接触する。
【0082】
この図では、第1セクション202がツール1200に配置されている。この実施例では、ツール1200は、めす型ツールであるが、他の例示的な実施例では、めす型ツールの代わりにおす型ツールを使用することも可能である。
【0083】
次に、第2セクション204をツール1200に配置して、第2階段状パターン604(図示せず)及び第2セクション204を、第1セクション202の第1階段状パターン600(図示せず)に重ね合わせる。本実施例のスプライス1202を構成するこの重ね合わせは、スカーフ接合、又は、段付きラップ接合(stepped lap)であってもよい。第1セクション202及び第2セクション204は、ツール1200上で硬化させて、スティフナ200を形成することができる。
【0084】
次に図13を参照すると、例示的な実施形態によるスティフナのセクションが示されている。この実施例では、スティフナ200は、硬化された状態であり、三次元形状を有する。このスティフナ200の構成によれば、ハット型ストリンガに屈曲部を形成しても皺が発生しないか、あるいは、皺の発生を制御することが可能であり、よって、所望の性能を有するハット型スティフナを得ることができる。
【0085】
例示的な実施形態により図1の複合構造体106を作成する一態様を示すことを目的として、図2図13の2つのセクションを用いてスティフナを作成する処理について記載する。この説明は、他の例示的な実施例の実施態様に限定を課すものではない。
【0086】
例えば、他の例示的な実施例では、複数のスプライスを含みうる。スプライスが複数ある場合、各スプライスには、シェブロン形状の段差に接合可能な領域と、相手側形状の段差に接合可能な領域と、の別個の領域を有する。例えば、複合構造体に3つのセクションを用いれば、2つのスプライスを形成することができる。さらに、異なる数のレイヤを用いることができる。例えば、10レイヤ、17レイヤ、19レイヤ、33レイヤ、あるいは、その他の数のレイヤを、異なるセクションに用いることができる。さらに、別の例示的な実施例では、第1セクション202は、第2セクション204とは異なる数のレイヤを含んでいてもよい。さらに別の例示的な実施例では、フッ化エチレンプロピレン(FEP)系のフィルムを、パーツ同士を分離する離型層として用いることができる。
【0087】
次に、図14を参照すると、例示的な実施形態によるセクションの処理において用いられる離型層が示されている。図示の通り、セクション1400の側面が示されている。セクション1400は、複数のレイヤ1401を有する。図示の通り、複数のレイヤ1401は、レイヤ1402、レイヤ1404、及び、レイヤ1406を含む。複数のレイヤ1401は、シェブロン形状1421の端部1423を有する。図示の例では、セクション1400の複数のレイヤ1401を積層する際に、シム1408を用いて端部1423をアライメントしている。シム1408は、レイヤ1410、レイヤ1412、レイヤ1414を有する。シム1408は、セクション1400のシェブロン形状に対応する相手側形状を有する。シム1408は、セクション1400と同じプリプレグ材で形成することができる。この材料は、セクション1400の階段状パターン1416に類似する階段状パターン1415をシム1408に形成できるように、スムーズに厚みを変化させることが可能なものが選択される。
【0088】
この例示的な実施例で図示するように、FEPフィルム層1418及びFEPフィルム層1420が、シム1408の階段状パターン1415とセクション1400の階段状パターン1416との間に配置されている。FEPフィルム層1418及びFEPフィルム層1420は、離型層として機能するので、成形したレイヤを歪ませることなく、セクション1400からシム1408を取り外すことができる。例えば、FEPフィルム層1418及びFEPフィルム層1420を用いることにより、セクション1400をハット型、又は、その他の形状に成形した後に、シム1408をより容易に取り外すことができる。当然ながら、他の例示的な実施例では、記載とは異なる数のFEPフィルム層を用いることができる。例えば、他の例示的な実施例では、2層、4層、あるいは、その他の数の層を用いることができる。
【0089】
シム1408を用いる代わりに、第2セクション(図示せず)をシム1408の代わりに利用することができる。例えば、レイヤ1401がシェブロン形状(図示せず)を有する場合には、そのシェブロン形状の相手側形状を有する第2セクション(図示せず)をシム1408の代わりに利用して端部1423をアライメントすることができる。
【0090】
次に、図15を参照すると、例示的な実施形態の複合構造体における弧長の違いが示されている。この例示的な実施例におけるハット型のスティフナ1500は、図1に示した複合構造体106の実施態様の例である。この実施例では、ハット型のスティフナ1500は、フランジ1502、フランジ1504、及び、ウェブ1506を有する。
【0091】
例示的な実施例では、ハット型のスティフナ1500は、円弧1501及び円弧1503を有する。ハット型スティフナ1500は湾曲1521を有するので、円弧1501の長さは、円弧1503の長さよりも長い。
【0092】
図示の通り、セクション1507とセクション1509の接続箇所であるスプライス1505は、円弧1501と円弧1503の長さが異なることにより生じうる問題を低減するように選択されている。さらに、レイヤの設計(図示せず)、及び、レイヤの形状(図示せず)は、皺に関する問題を低減し、ハット型スティフナ1500が所望の特性を備えるように選択されている。必要に応じて、異なる複数の箇所に複数のストリンガを設けて、湾曲や段付き部における比率を低減することができる。スプライスを追加すれば、弧長の不均衡を分散させることができる。半径が一定の大きさを超える場合は、長さの不一致を解消する必要があるが、この解消をスプライスにおいて生じさせることができる。
【0093】
例示的な実施例では、材料を切断する機器をプログラミングする際に、接合するレイヤ同士の一方又は両方を非対称なパターンに形成するようなプロセスを盛り込むことができる。これにより、弧長の違いを吸収し、また、重なり誤差を必要な範囲に維持するようにできる。例えば、航空宇宙産業で一般的に用いられるモデリングソフトウェアにおいて、フラット・パターニング法を利用可能である。さらに、レイヤの切断パターンも、曲率を考慮して作製することができる。
【0094】
さらにスプライスを追加することもできる。例えば、ストリンガが長尺で、掃引曲線も長い場合、多くのスプライスが必要となりうる。これらのスプライスは、例えば、段付き部、ひねり、曲率が高くなっている部位(additional curvature)、内部層の落ち込み部(internal layer drop)、あるいは、座屈を助長するようなその他の特異部などの特異部と係合(interact)する曲線に配置することができる。
【0095】
曲率半径が大きくなると、皺の発生頻度や大きさが許容可能なレベルまで低減されるので、ハット型スティフナ1500の性能が望ましくないレベルや仕様に不適合なレベルに低下すること回避できる。例えば、繊維長が長ければ、限られた場所ではなく、より多くの場所で座屈を発生させることができる。また、レイヤを所定のパターンに切断する機器のコンピュータ数値制御に、補正係数を採用することができる。補正係数を用いることにより、座屈が生じる材料の長さを延ばしても、所望の重なり公差を維持することができる適切な材料を得ることができる。図示のとおり、XY平面1508は、面内曲率(in-plane curvature)を示し、XZ平面1510は、面外曲率(out-of-plane curvature)を示す。
【0096】
この例示的な実施例では、ハット型のスティフナ1500は、XZ平面1510内の屈曲に対しては、扁平に変形するのが自然な反応である。ハット型スティフナ1500の元の断面形状が維持されて扁平変形が抑制されると、ウェブ1506、フランジ1502、又は、フランジ1504のいずれかに皺が発生しうる。XY平面1508内の屈曲に対しても、同様の反応が生じる。
【0097】
このような皺が発生するのは、ハット型スティフナ1500の幾何形状が、XZ平面1510におけるウェブ1506及びフランジ1504と、XY平面1508におけるフランジ1502と、の2つの主平面を含むからである。ウェブ1506、フランジ1502、及び、フランジ1504は、断面が拘束された状態で、2つの異なる円弧に押込まれる。
【0098】
このような状況が生じるのは、スティフナの幾何形状が2つの主平面を含み、これら主平面が、断面が拘束された状態で2つの異なる円弧に押込まれるからである。これらの平面とは、XZ平面1510におけるウェブ1506及びフランジ1504の平面と、XY平面1508におけるフランジ1502からフランジ1504までの平面と、の2つである。
【0099】
例示的な実施例では、曲率の外側半径は長くなっていない。したがって、弧長におけるデルタ全体が内側半径に押込まれるので、材料に掛かる圧縮荷重は、外側半径から内側半径に向かって増加して、最終的には、圧縮荷重が積層体の座屈閾値を超える。この実施例では、内側半径(XY平面の曲率については、内側のフランジ、XZ平面の曲率については、屈曲の方向に依存して、キャップ、あるいは、フランジのいずれか)における圧縮荷重が最も高い。場合によっては、ウェブにも、XY平面とXZ平面との両方の座屈が発生しうる。例示的な実施例では、座屈は、皺の発生を意味する。
【0100】
断面形状が拘束されるのは、表面1520と表面1522との2つの表面の間の積層厚さによるものであり、各レイヤ間の接着特性、個々のレイヤの剛性、あるいは、積層体全体を合わせた剛性のうちの少なくとも1つの関数として示される。表面1520は、ハット型スティフナ1500の2つのフランジ、即ち、フランジ1502及びフランジ1504によって画成され、表面1522は、ウェブ1506によって画成される。
【0101】
この拘束により、長い方の円弧に張力が生じ、短い方の円弧に圧縮が生じる。図示の通り、ハット型スティフナ1500の断面は、拘束されている。スプライスの位置及び数は、そのパーツの仕様に従って決定することができる。例えば、留め具、フレーム、及び、位置スプライスには、スプライスを配置できない位置を定めるルールがある。
【0102】
ハット型スティフナ1500などのスティフナの長さ方向におけるスプライスの数及び位置は、多くの異なる要因に関連する。例えば、2つのセクションを組み立ててスティフナを構成する場合、これらのセクションは、組み立てなしにスティフナを構成する単一のセクションよりも基本的に堅いので、スプライスの数は最小限に抑えることが望ましい。加えて、航空機の分析は、スティフナ及びフレームをグリッドとして行われるので、隣接する、あるいは、連続するグリッドセルにスプライスを設けることは望ましくない。
【0103】
要因の他の例としては、スプライスは、1つのフレームベイ(フレーム間のスティフナ)について1つのスプライスを設けるように設計されていることがある。他の例としては、スプライスのサイズが、段付き部のサイズと同じであってもよいし、それより大きくてもよい。湾曲したストリンガにスプライスを設ける位置としては、可能であれば、両側に直線状部分を有する屈曲部の鋭角な頂部に設けることが望ましい。ストリンガの湾曲が緩やか(more general)であれば、湾曲部に沿ってより多くのスプライスを設けることが望ましい。
【0104】
仕様に従ってスプライスの位置及び数を制限することを前提とするが、スプライス無しでは皺が発生すると予測される位置にはスプライスを設ければよい。例えば、スプライスは、段付き部の領域に設けてもよいし、曲率の高い領域の頂部に設けてもよい。あるいは、湾曲した領域に複数のスプライスを用いるのであれば、頂部の両側における直近領域(おそらくは、前後方向に隣接するフレームベイ)にスプライスを設けることができる。
【0105】
図16を参照すると、例示的な実施形態による複合構造体の複数のセクションが示されている。図示の通り、セクション1600、セクション1602、及び、セクション1604は、接合されてストリンガなどの複合構造体を構成する。
【0106】
この例示的な実施例では、セクション1600の端部1608は、シェブロン形状1606を有する。セクション1602の端部1612は、シェブロン形状1606の相手側形状1610を有する。また、セクション1602の端部1616は、シェブロン形状1614を有する。セクション1604の端部1620は、シェブロン形状1614の相手側形状1618を有する。この実施例では、セクション1600が、最初にツール(図示せず)に配置される。続いて、セクション1602がツール(図示せず)に配置されて、相手側形状1610の段差1622が、シェブロン形状1606の段差1624に重ね合わされる。次に、セクション1604がツールに配置されて、相手側形状1618の段差1626が、セクション1602のシェブロン形状1614の段差1628に重ね合わされる。
【0107】
次に図17を参照すると、例示的な実施形態によるスティフナの複数のセクションが示されている。この例示的な実施例では、スティフナ1700は、セクション1702、セクション1704、及び、セクション1706を含む。
【0108】
セクションをレイアップしスティフナ1700を形成する場合、セクション1702をツールに配置し、続いて、セクション1704及びセクション1706をレイアップする。図示の通り、スティフナ1700は、段付き部1708及び段付き部1710を含む。
【0109】
セクション1702のレイヤ1712、レイヤ1714、及び、レイヤ1716は、シェブロン形状(図示せず)を有する。セクション1704のレイヤ1718、レイヤ1720、及び、レイヤ1722は、端部1724に相手側形状(図示せず)を有する。セクション1706のレイヤ1730、レイヤ1732、及び、レイヤ1734は、端部1726に相手側形状(図示せず)を有する。
【0110】
次に、図18を参照すると、例示的な実施形態による複合構造体の作製プロセスのフローチャートが示されている。図1に示したプロセスを実行すれば、複合材製造環境100において複合構造体106を作成することができる。
【0111】
本プロセスでは、先ず、複合構造体106の第1セクション108を形成する(処理1800)。第1セクション108は、第1端部112にシェブロン形状114を有する。第1セクション108における第1複合レイヤ116は、第1端部112に第1階段状パターン118を有する。
【0112】
本プロセスでは、複合構造体106の第2セクション110を形成する(処理1802)。第2セクション110は、シェブロン形状114に対する相手側形状122を第2端部120に有する。第2セクション110における第2複合レイヤ124は、第2端部120に第2階段状パターン126を有する。
【0113】
本プロセスでは、第1セクション108及び第2セクション110を所望の断面形状140に成形する(処理1804)。次いで、第1階段状パターン118を有する複数の第1複合レイヤ116のうちの特定の第1複合レイヤ128が、第2階段状パターン126を有する複数の第2複合レイヤ124のうちの特定の第2複合レイヤ130と、スプライス134において重なり合うように、第1端部112及び第2端部120を配置する(処理1806)。
【0114】
上記の処理1806における配置は、第1セクション108及び第2セクション110をツールに配置することで実施される。処理1806において、スプライス134は、くさび型スプライス147であってもよく、この場合、第1階段状パターン118がシェブロン形状114を有し、第2階段状パターン126が相手側形状122を有する。本プロセスでは、第1セクション108及び第2セクション110を硬化させる(処理1808)。その後、本プロセスを終了する。
【0115】
次に、図19を参照すると、例示的な実施形態による複合構造体のスプライスの設計プロセスのフローチャートが示されている。本フローチャートに示すプロセスは、図1に示すスプライス134を有する複合構造体106の設計に用いられる。本プロセスは、ハードウェア又はソフトウェアの少なくとも1つにおいて実現することができる。ソフトウェアを用いる場合、ソフトウェアはプログラムコードの形態であってもよく、コンピュータシステムの処理部によって実行される。
【0116】
本プロセスを実行するコンピュータシステムは、1つ以上のデータ処理システムを含む物理的なハードウェアシステムで実現することができる。1つ以上のデータ処理システムが含まれる場合、これらのデータ処理システムは、通信媒体を用いて互いに通信可能である。この通信媒体は、ネットワークでもよい。データ処理システムは、コンピュータ、サーバコンピュータ、ワークステーション、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、電子フライトバッグ、携帯電話、あるいは、その他の適当なデータ処理システムのうちから選択される少なくとも1つである。
【0117】
本プロセスでは、先ず、スプライスのシェブロン形状に含めるシェブロン部位の数を特定する(処理1900)。シェブロン部位の数は、所定数の検討事項に基づいて選択される。例えば、シェブロン形状のシェブロン部位の数は、曲率あるいは捩じりの量のうちの少なくとも1つを考慮して選択することができる。複合構造体が有する曲率あるいは捩じりのうちの少なくとも一方が大きいほど、シェブロン部位の数を多くしてもよい。シェブロン形状に含まれる各シェブロン部位を構成するレイヤは、同じシェブロン形状における他のシェブロン部位を構成するレイヤとは相互作用(interact)しない。この結果、湾曲部分の断面領域における相互作用は、シェブロン部位の数が増えるほど少なくなる。
【0118】
本プロセスでは、スプライスについて選択されたシェブロン形状に対応する相手側形状を選択する(処理1902)。本プロセスにおいて、シェブロン形状と相手側形状とにおけるレイヤ間の重なりの数を決定する(処理1904)。これらを重ね合わせることによって、スプライスの強度を高めて、スプライスがない場合と同等の強度を保証することができる。
【0119】
このような重ね合わせを利用することにより、複雑さを低減することができる。重ね合わせの数、及び、重ね合わせの長さは、応力又は歪などの性能低下を生じさせないように選択することができる。
【0120】
本プロセスにおいて、各重ね合わせについて重なり量を決定する(処理1906)。重なり量によっても、スプライスの強度を高めることができる。加えて、重なり量を大きくすることによって、スプライスを形成するためのセクションの製造、及び、セクションの積層をより容易に実行することができる。換言すると、重なり量を増加させることにより、スプライスを有する複合パーツの製造性を高めることができる。
【0121】
例えば、スプライスの設計において、最小限の重なり量である約0.75インチに、±0.25インチの誤差を見込んだ値を設定する。重なり量を増やしてスプライスの面積を大きくする場合は、スプライスの許容誤差をより大きく設定してもよい。例えば、重なり量が1.75インチであれば、誤差は±1.0インチとする。この結果、誤差を見込んで重なり量を大きくすることで、スプライスの強度を高めることができ、また、レイヤを適切に積層する能力も高めることができる。
【0122】
本処理では、次いで、スプライスに設ける隙間の数を決定する(処理1908)。シェブロン形状を有するセクションにおけるレイヤと、相手側形状を有するセクションにおけるレイヤとの間に隙間を設けると、支持構造体などの複合パーツにおける望ましくない皺の発生を低減することができる。例えば、図4に示す隙間400及び隙間402などの隙間を利用すると、望ましくない皺の発生を低減することができる。隙間を設けた位置では、皺が発生するとしても、望ましくない特性を生じさせることのない小さな皺に限定される。
【0123】
本プロセスでは、次いで、選択した数の隙間を設ける位置を選択する(処理1910)。隙間の位置は、隙間を設ける位置におけるレイヤの総数が所望の数を超えないように選択される。レイヤの数が所望の数より位置では、レイヤの機械的特性が望ましい剛性よりも大きいので、必要なレベルの負荷を担うことができない。例えば、隙間は、複合パーツが有する曲率又は捩じりのうちの少なくとも1つにおける弧長に差があることによって生じる圧縮負荷を低減させる位置に設けることができる。
【0124】
さらに、圧縮負荷が低減されている場合には、スプライス内に隙間を設けることができる。例えば、レイヤ間の重なりとレイヤ間の隙間とが、断面において交互に位置するような構成でもよい。このようにすると、レイヤの重なりと隙間を選択することで、所望の性能特性を有する複合パーツを得ることができる。ここでいう性能特性は、例えば、スプライスにおける複合パーツの圧縮荷重、剛性、強度、あるいは、その他の特性を含む。本処理では、次いで、各隙間の幅を選択する(処理1912)。その後、本プロセスを終了する。
【0125】
一実施例では、重なりと隙間の数は、レイヤの数と同じである。隙間の幅は、様々な要因に基づいて選択することができ、例えば、レイヤのレイアップにおいて形成可能な隙間のサイズ、レイヤの厚さの比率、発生する皺を局所的な小さな皺に留めるための隙間の幅、及び、その他の適当な要因に基づいて選択することができる。
【0126】
次に、図20を参照すると、例示的な実施形態による複合構造体における階段状ラップスプライスを形成するプロセスのフローチャートが示されている。図20に示したプロセスを実行すれば、図1に示す複合材製造環境100において複合構造体106の階段状ラップスプライス171であるスプライス134を形成することができる。
【0127】
本プロセスでは、先ず、複合構造体106における応力149を低減すべく、複合構造体106に設ける階段状ラップスプライス171のスプライス位置132を選択する(処理2000)。本プロセスでは、第1セクション108に含まれる各レイヤにシェブロン形状114を形成して、第1セクション108に第1階段状ラップパターン181を作製し、この際に、第1セクション108のスプライス位置132に、複数のシェブロン部位183が形成される(処理2002)。
【0128】
本プロセスでは、次いで、第2セクション110に含まれる各レイヤに相手側形状122を形成して、第2セクション110に第2階段状ラップパターン187を作製し、この際に、第2セクション110のスプライス位置132に、複数の相手側部位185が形成される(処理2004)。第1セクション108及び第2セクション110に含まれるレイヤは、複合材のレイヤであり、硬化することができる。これらのレイヤは、レイヤの形態をとることができる。
【0129】
例示的な実施例では、複数のシェブロン部位183及び複数の相手側部位185によって、複合構造体106における亀裂の進展が抑制される。
【0130】
本プロセスでは、シェブロン形状114を有する各レイヤを、第2セクション110における対応する相手側形状141とそれぞれ重ね合わせて、階段状ラップスプライス171を形成する(処理2006)。その後、本プロセスを終了する。階段状ラップスプライス171には、重なり195及び隙間193が含まれる。重なり195及び隙間193は、複合構造体106における望ましくない皺136の発生を低減するように、階段状ラップスプライス171の複数の位置に設けられている。エンドエフェクタシステム191を用いて、第1セクション108及び第2セクション110のうちの少なくとも1つの配向を制御して、シェブロン形状114を有する各レイヤを第2セクション110における対応する相手側形状141それぞれ重ね合わせる。これにより階段状ラップスプライス171が形成される。エンドエフェクタシステム191は、1つ以上のエンドエフェクタを含む物理的なシステムである。ロボットアーム又はその他の機械によってエンドエフェクタを移動させて、第1セクション108及び第2セクション110などのアイテムの移動及び配置を行うことができる。
【0131】
次に、図21を参照すると、例示的な実施形態による複合構造体における亀裂の進展を抑制するプロセスのフローチャートが示されている。図21に示したプロセスを実行すれば、図1に示す複合材製造環境100において、複合構造体106のスプライス134を形成することができる。また、図21に示したプロセスを実行すれば、複合材製造環境100において、複合構造体106の階段状ラップスプライス171であるスプライス134を形成し、これを、図1に示す複合構造体106における亀裂の進展を抑制するよう構成することができる。
【0132】
本プロセスでは、先ず、複合構造体106における応力149を低減すべく、複合構造体106に設けるスプライス位置132を特定する(処理2100)。処理2100における応力149は、座屈を発生させる圧縮応力である。本プロセスでは、スプライス位置132に階段状ラップスプライス171を形成する(処理2102)。その後、本プロセスを終了する。
【0133】
処理2102で形成される階段状ラップスプライス171において、第1セクション108の各レイヤがシェブロン形状114を有し、これにより、第1セクション108に第1階段状ラップパターン181が形成されている。第1セクション108は、複数のシェブロン部位183を有する。加えて、階段状ラップスプライス171において、第2セクション110の各レイヤが相手側形状を有し、これにより、複数の相手側部位185を有する第2階段状ラップパターン187が第2セクション110に形成されている。シェブロン形状を有する各レイヤが、第2セクション110における対応するレイヤの相手側形状と重なり合って、階段状ラップスプライス171を形成している。処理2102において、スプライス位置132は、複合構造体106における望ましくない皺136の発生又は応力149の少なくとも一方を低減する位置に設定される。
【0134】
次に、図22を参照すると、例示的な実施形態による複合構造体にスプライスを配置するプロセスのフローチャートが示されている。図22に示したプロセスを実行すると、例えば、図1に示す複合材製造環境100において作製される複合構造体106のスプライス134のような1つ以上のスプライスを作製することができる。
【0135】
本プロセスでは、先ず、複合構造体(106)に設けるスプライス位置の数を選択する(処理2200)。本プロセスでは、次いで、複合構造体(106)を構成すべく、階段状パターンを有するセクションを配置して、所定数のスプライス(134)を所定数のスプライス位置に形成する(処理2202)。その後、本プロセスを終了する。本プロセスによれば、複合構造体(106)における望ましくない皺の発生(136)を、所定数のスプライス位置のうちの少なくとも1つのスプライス位置(132)において、又は、スプライス位置(132)以外のその他の位置(177)において、低減することができる。
【0136】
異なる実施形態において示したフローチャート及びブロック図は、例示的な実施形態における装置及び方法を実施可能ないくつかの態様における構造、機能、及び、処理を示している。この点に関し、フローチャートやブロック図における各ブロックは、モジュール、セグメント、機能、及び、処理や工程の一部を表す場合もある。例えば、1つ以上のブロックを、プログラムコード、ハードウェア、又は、プログラムコードとハードウェアの組み合わせとして実現することができる。ハードウェアで実現する場合、そのハードウェアは、例えば、フローチャートやブロック図に記載の1つ以上の処理を実行するように製造あるいは構成された集積回路であってもよい。プログラムコードとハードウェアの組み合わせとして実現する場合、ファームウェアの形態で実現することができる。フローチャートやブロック図における各ブロックは、異なる処理を実行する特定用途向けハードウェアシステムを用いて実現してもよいし、あるいは、特定用途向けハードウェアと、その特定用途向けハードウェアで実行されるプログラムコードとの組み合わせを用いて実現してもよい。
【0137】
例示的な実施形態のいくつかの代替的な実施態様では、ブロックに示した機能を、図に示した順とは異なる順序で実施可能である。例えば、いくつかの場合には、連続するものとして示されている2つのブロックを、関連する機能によっては、実質的に同時に実行してもよいし、これらのブロックを逆の順序で実行してもよい。また、フローチャートやブロック図に示したブロックに、さらに別のブロックを追加してもよい。
【0138】
例えば、FEPフィルムなどの離型フィルムの設置及び除去のステップを追加することができる。他の例示的な実施例では、セクションを袋に入れて真空にした後に硬化を行って複合構造体を形成することができる。
【0139】
本開示の例示的な実施形態を、図23に示す航空機の製造及び使用方法2300、及び、図24に示す航空機2400に関連させて説明する。先ず、図23を参照すると、例示的な実施形態による航空機の製造及び使用方法のブロック図が示されている。生産開始前において、例示的な航空機の製造及び使用方法2300は、図24の航空機2400の仕様決定及び設計2302、及び、材料調達2304を含む。
【0140】
製造中には、図24に示す航空機2400の部品及び小組立品の製造2306、及び、システム統合2308が行われる。その後、航空機2400は、認可及び納品2310の工程を経て、使用2312に入る。顧客による使用2312の間、航空機2400は、定期的な整備及び保守2314のスケジュールに組み込まれる。この整備及び保守には、改良、再構成、改修、及び、その他の適当な保守が含まれうる。
【0141】
航空機の製造及び使用方法2300の各工程は、システムインテグレータ、第三者、及び/又は、オペレータによって実行又は実施することができる。これらの実施例において、オペレータは、例えば顧客である。なお、システムインテグレータは、限定するものではないが、航空機メーカ又は主要システム下請業者をいくつ含んでいてもよい。第三者は、限定するものではないが、売主、下請業者、供給業者をいくつ含んでいてもよい。オペレータは、例えば、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織、及び、その他の適当なオペレータを含む。
【0142】
次に図24を参照すると、例示的な実施形態による航空機のブロック図が示されている。この実施例では、航空機2400は、図23に示す航空機の製造及び使用方法2300によって製造されており、複数のシステム2404及び内装2406を備えた機体2402を含みうる。複数のシステム2404の例としては、駆動系2408、電気系2410、油圧系2412、及び、環境系2414のうちの1つ以上が挙げられる。
【0143】
図1の複合構造体106をはじめとする複合部材102は、機体2402及び内装2406の内の少なくとも1つとして製造及び実装することができる。また、その他のシステムをいくつ含んでもよい。なお、航空宇宙産業に用いた場合を例として説明したが、本開示の原理は、例えば自動車産業などの他の産業に適用可能である。本明細書において具体化する装置及び方法は、図23の航空機の製造及び使用方法2300における1つ以上のどの段階において採用してもよい。
【0144】
例示的な一実施例では、図23に示す部品及び小組立品の製造2306における部品及び小組立品の作製や製造は、航空機2400が図23に示す使用2312の段階にある間に製造される部品及び小組立品と同様の方法で作製あるいは製造することができる。さらに別の実施例では、装置の実施形態、方法の実施形態、あるいは、その組み合わせの実施形態の1つ以上を、例えば、図23に示す部品及び小組立品の製造2306、及び、システム統合2308の段階で用いることができる。装置の実施形態、方法の実施形態、あるいは、その組み合わせの実施形態の1つ以上を、図23に示す、航空機2400の使用2312において、整備及び保守2314において、あるいは、その両方において採用することができる。
【0145】
例示的な実施例による複合部材102は、航空機の製造及び使用方法2300における1つ以上のどの段階において採用してもよい。例えば、図1の複合構造体106をはじめとする複合部材102は、部品及び小組立品の製造2306やシステム統合2308において作製することもできるし、また、整備及び保守2314において作製することもできる。複合構造体106をはじめとする複合部材102は、整備及び保守2314において、航空機2400の改良、再構成、又は、改修を含む定期的な整備において使用することを目的として作製される場合もある。
【0146】
所定数の異なる実施形態を用いることで、例えば、航空機2400の組み立てを大幅に迅速化したり、航空機2400のコストを低減したり、あるいは、航空機2400の組み立て速度の迅速化と、航空機2400の低コスト化との両方を実現することができる。
【0147】
よって、例示的な実施形態によれば、皺などの望ましくない不具合の発生を抑制するように設計されたスプライスを有する複合構造体を作製するための方法、装置、及び、システムが提供される。例示的な一実施例における複合構造体の作製方法は、複合構造体の第1セクションを形成することを含み、この際に、第1セクションの第1端部にシェブロン形状に形成する。第1セクションを構成する第1複合レイヤは、第1端部に第1階段状パターンを有する。また、複合構造体の第2セクションを形成することを含み、この際に、第2セクションの第2端部を、シェブロン形状の相手側形状に形成する。第2セクションを構成する第2複合レイヤは、第2端部に第2階段状パターンを有する。第1端部及び第2端部は、複数の第1複合レイヤのうちのある第1複合レイヤが有する第1階段状パターンが、複数の第2複合レイヤのうちのある第2複合レイヤが有する第2階段状パターンと、スプライス位置において重なり合うように配置される。
【0148】
1つ以上の例示的な実施例において、複合構造体の作製に要する労力及び時間が低減される。例示的な実施例において、くさび形の段差パターンと、その相手側形状の段差パターンとを用いて2つのセクションを1つに継ぎ合わせることにより、複合構造体を複数の領域に分離して設計することが可能になる。
【0149】
例示的な実施例では、複合構造体の厚さが大きい場合、重なりと隙間の誤差を許容するべく、スプライスの全体長が、弧長の違いを伴う特異部に対して長くなる。図示の実施例の通り、シェブロン形状のスプライス継手を用いることにより、スプライス継手において領域における弧長の違いを緩和することができる。
【0150】
異なる例示的な実施形態について記載したが、これは、あくまでも、例示及び説明を目的としており、本開示を網羅するものでも、開示した特定の形態に限定するものでもない。異なる例示的な実施例において、動作や処理を実行する部材について記載した。例示的な実施形態における部材は、記載した動作や処理を実行するように構成されている。例えば、ある部材は、例示的な実施例においてその部材が実行するとして記載され動作又は処理を実行する機能を当該部材に提供するような構造物の構成、又は、設計を有する。
【0151】
本開示の装置及び方法は、以下の付記においても言及されている。なお、以下の付記は、請求の範囲と混同すべきものではない。
【0152】
A1.複合構造体の階段状ラップスプライスを形成する方法であって、
第1セクションの各レイヤにシェブロン形状を形成して、前記第1セクションに形成された複数のシェブロン部位から成る第1階段状ラップパターンを前記第1セクションに構成し、
第2セクションの各レイヤに相手側形状を形成して、前記第2セクションに形成された複数の相手側部位から成る第2階段状ラップパターンを前記第2セクションに構成し、
前記シェブロン形状を有する各レイヤを、前記第2セクションにおける相手側形状とそれぞれ重ね合わせて、階段状ラップスプライスを形成する、方法。
【0153】
A2.前記複合構造体の前記階段状ラップスプライスに含まれる重なり及び隙間の位置は、前記複合構造体における望ましくない皺の発生を低減させる、付記A1に記載の方法。
【0154】
A3.前記階段状ラップスプライスは、前記複合構造体における所定数の位置に配置され、前記所定数の位置は、前記複合構造体における望ましくない皺の発生を低減するように選択される、付記A1に記載の方法。
【0155】
A4.エンドエフェクタシステムを用いて前記第1セクション及び前記第2セクションのうちの少なくとも1つの配向を操作して、前記シェブロン形状を有する各レイヤを前記第2セクションにおける相手側形状とそれぞれ重ね合わせて、前記階段状ラップスプライスを形成する、付記A1に記載の方法。
【0156】
A5.前記複数のシェブロン部位、及び、前記複数の相手側部位は、前記複合構造体又は前記階段状ラップスプライスの少なくとも1つにおける亀裂の進展を抑制する、付記A1に記載の方法。
【0157】
A6.前記複合構造体に座屈を生じさせる圧縮応力を低減するように、前記複合構造体における前記階段状ラップスプライスを設けるスプライス位置を選択することをさらに含む、付記A1に記載の方法。
【0158】
A7.付記A1に記載の方法によって組み立てられた航空機の部材。
【0159】
B1.複合構造体における亀裂の進展を抑制するための方法であって、
前記複合構造体において、前記複合構造体に作用する応力を低減するスプライス位置を特定し、
前記スプライス位置に階段状ラップスプライスを形成し、この際に、前記階段状ラップスプライスが第1セクションの各レイヤにシェブロン形状を有するとともに、前記第1セクションにおける複数のシェブロン部位から成る第1階段状ラップパターンが前記第1セクションに構成されるようにし、前記階段状ラップスプライスが第2セクションの各レイヤに相手側形状を有するとともに、前記第2セクションにおける複数の相手側部位からなる第2階段状ラップパターンが前記第2セクションに構成されるようにし、前記シェブロン形状を有する各レイヤを前記第2セクションにおける別のレイヤの相手側形状とそれぞれ重ね合わせて、前記階段状ラップスプライスを形成する、方法。
【0160】
B2.前記スプライス位置に前記階段状ラップスプライスを形成することにより、前記複合構造体における望ましくない皺の発生、又は、応力のうちの少なくとも1つを前記スプライス位置において低減させる、付記B1に記載の方法。
【0161】
B3.付記B1に記載の方法によって組み立てられた航空機の部材。
【0162】
C1.複合構造体の第1セクションが有する複数のシェブロン部位から成る第1階段状ラップパターンと、
前記複合構造体の第2セクションが有する複数のシェブロン部位から成る第2階段状ラップパターンと、を含み、前記第1階段状ラップパターンと前記第2階段状ラップパターンが互いに重なり合って、階段状ラップスプライスを構成する、
複合構造体。
【0163】
C2.前記階段状ラップスプライスは、前記複合構造体に作用する応力を低減する、付記C1に記載の複合構造体。
【0164】
C3.前記階段状ラップスプライスは、前記階段状ラップスプライス内と、前記階段状ラップスプライスの外部の位置と、の少なくとも1つにおいて、望ましくない皺の発生が低減されている、付記C1に記載の複合構造体。
【0165】
C4.前記複合構造体の前記階段状ラップスプライスには重なり及び隙間があり、これにより、前記複合構造体における望ましくない皺の発生が低減されている、付記C1に記載の複合構造体。
【0166】
C5.付記C1に記載の複合構造体を用いた航空機。
【0167】
D1.複合構造体を作製するための方法であって、
前記複合構造体の第1セクションを形成し、この際に、前記第1セクションの第1端部がシェブロン形状を有するとともに、前記第1セクションに含まれる第1複合レイヤが前記第1端部に第1階段状パターンを構成するようにし、
前記複合構造体の第2セクションを形成し、この際に、前記第2セクションの第2端部が、前記シェブロン形状の相手側形状を有するとともに、前記第2セクションに含まれる第2複合レイヤが前記第2端部に第2階段状パターンを構成するようにし、
前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤのうちの特定の第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤのうちの特定の第2複合レイヤとスプライス位置において重なり合うように、前記第1端部及び前記第2端部を配置する、方法。
【0168】
D2.前記スプライス位置及びその周辺で、前記複合構造体における望ましくない皺の発生を低減させる、付記D1に記載の方法。
【0169】
D3.前記複合構造体は、ストリンガであり、前記第1セクション及び前記第2セクションは、実質的に平面状であり、さらに、
前記第1セクション及び前記第2セクションを所望の断面形状に成形することを含む、付記D1に記載の方法。
【0170】
D4.前記所望の断面形状は、ハット型、U字型、及び、C字型である、
付記D3に記載の方法。
【0171】
D5.さらに、前記第1セクション及び前記第2セクションを、前記複合構造体用のツールに配置することと、
前記第1セクション及び前記第2セクションを硬化させて、前記複合構造体を形成することと、を含む、
付記D1に記載の方法。
【0172】
D6.前記シェブロン形状は、一組のシェブロン部位から成る、付記D1に記載の方法。
【0173】
D7.前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤと、前記スプライス位置で重なり合うように前記第1端部及び前記第2端部を配置するに際し、
前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤと、前記スプライス位置において重なり合うように前記第1端部及び前記第2端部を配置し、この際に、前記第1複合レイヤと前記第2複合レイヤの間に、重なり又は隙間の少なくとも1つが形成されるようにし、これにより、前記スプライス位置で応力を低減させる、
付記D1に記載の方法。
【0174】
D8.前記複合構造体は、ストリンガであり、さらに、
前記ストリンガを航空機の胴体部における複合材筒状セクションに取り付けることを含む、付記D1に記載の方法。
【0175】
D9.前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤと、前記スプライス位置において重なり合うように前記第1端部及び前記第2端部を配置するに際し
前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤが前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤと重なり合って、前記スプライス位置でくさび型スプライスを形成するように、前記第1端部及び前記第2端部を配置する、付記D1に記載の方法。
【0176】
D10.前記第1複合レイヤは、第1プリプレグであり、前記第2複合レイヤは、第2プリプレグである、付記D1に記載の方法。
【0177】
D11.前記複合構造体は、スティフナ、ストリンガ、ロンジロン、及び、ビームから選択される1つである、付記D1に記載の方法。
【0178】
D12.付記D1に記載の方法によって組み立てられた航空機の部材。
【0179】
E1.複合構造体であって、
前記複合構造体の第1セクションと、前記複合構造体の第2セクションと、を含み、
前記第1セクションはシェブロン形状の第1端部を有し、前記第1セクションに含まれる第1複合レイヤは、前記第1端部に第1階段状パターンを有し、
前記第2セクションは、前記シェブロン形状の相手側形状の第2端部を有し、前記第2セクションに含まれる第2複合レイヤは、前記第2端部に第2階段状パターンを有し、前記第1端部及び前記第2端部は、前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤと、スプライス位置で重なり合うように配置されている、複合構造体。
【0180】
E2.前記スプライス位置で、前記複合構造体における望ましくない皺の発生が低減されている、付記E1に記載の複合構造体。
【0181】
E3.前記スプライス位置のスプライスと、前記スプライス位置以外の前記複合構造体における位置と、の少なくとも1つにおいて、望ましくない皺の発生が低減されている、付記E1に記載の複合構造体。
【0182】
E4.前記複合構造体は、ストリンガであり、前記第1セクション及び前記第2セクションは、所望の断面形状を有する、付記E1に記載の複合構造体。
【0183】
E5.前記所望の断面形状は、ハット型、U字型、及び、C字型を含む群から選択される、付記E4に記載の複合構造体。
【0184】
E6.前記第1セクション及び前記第2セクションは、ツール上で硬化されて前記複合構造体を形成する、付記E1に記載の複合構造体。
【0185】
E7.前記シェブロン形状は、一組のシェブロン部位から成る、付記E1に記載の複合構造体。
【0186】
E8.前記複合構造体は、航空機の胴体部における複合材筒状セクションに取り付けられるよう構成されたストリンガである、付記E1に記載の複合構造体。
【0187】
E9.前記第1端部及び前記第2端部は、前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤと、前記スプライス位置において重なり合うように配置されており、前記第1複合レイヤと前記第2複合レイヤの間には、隙間又は重なりの少なくとも1つがあり、これにより、前記スプライス位置で応力が低減される、付記E1に記載の複合構造体。
【0188】
E10.前記第1端部及び前記第2端部は、前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤと重なり合って、前記スプライス位置にラップスプライス継手を構成するように配置されている、付記E1に記載の複合構造体。
【0189】
E11.前記第1複合レイヤは、第1プリプレグであり、前記第2複合レイヤは、第2プリプレグである、付記E1に記載の複合構造体。
【0190】
E12.前記複合構造体は、スティフナ、ストリンガ、及び、ロンジロンから選択される1つである、付記E1に記載の複合構造体。
【0191】
E13.付記E1に記載の複合構造体を用いて航空機の部材を作製するための方法。
【0192】
F1.複合構造体を作製するための方法であって、
前記複合構造体の第1セクションを形成し、この際に、前記第1セクションの第1端部がシェブロン形状を有し、前記第1セクションに含まれる第1複合レイヤが、前記第1端部に第1階段状パターンを構成し、前記シェブロン形状は、一組のシェブロン部位から成るものとし、
前記複合構造体の第2セクションを形成し、この際に、前記第2セクションの第2端部が、前記シェブロン形状の相手側形状を有し、前記第2セクションに含まれる第2複合レイヤが、前記第2端部に第2階段状パターンを構成するようにし、前記第1セクション及び前記第2セクションは、実質的に平面状であるものとし、
前記第1セクション及び前記第2セクションを所望の断面形状に成形し、
前記第1端部及び前記第2端部をツールに配置し、この際に、前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤと、スプライス位置で重なり合ってラップスプライス継手を構成するようにし、前記第1複合レイヤと前記第2複合レイヤの間に隙間又は重なりの少なくとも1つが形成されるようにし、これにより、前記ラップスプライス継手で応力が低減されるとともに、前記複合構造体における望ましくない皺の発生を前記スプライス位置で低減させるようにし、
前記第1セクション及び前記第2セクションを硬化させて、前記複合構造体を形成する、方法。
【0193】
F2.付記F1に記載の方法によって組み立てられた航空機の部材。
【0194】
G1.複合構造体であって、
前記複合構造体の第1セクションと、前記複合構造体の第2セクションと、を含み、
前記第1セクションは、一組のシェブロン部位から成るシェブロン形状の第1端部を有し、前記第1セクションに含まれる第1複合レイヤは、前記第1端部に第1階段状パターンを有し、
前記第2セクションは、前記シェブロン形状の相手側形状の第2端部を有し、前記第1セクション及び前記第2セクションは、所望の断面形状を有し、前記第2セクションに含まれる第2複合レイヤは、前記第2端部に第2階段状パターンを有し、前記第1端部及び前記第2端部は、前記第1階段状パターンに含まれる前記第1複合レイヤが、前記第2階段状パターンに含まれる前記第2複合レイヤと、スプライス位置で重なり合うように配置されており、ラップスプライス継手を形成する前記第1複合レイヤと前記第2複合レイヤの間には、隙間又は重なりの少なくとも1つがあり、これにより、前記スプライス位置で応力が低減されているとともに、前記複合構造体における望ましくない皺の発生が前記スプライス位置で低減されている、複合構造体。
【0195】
G2.付記G1に記載の複合構造体を用いた航空機。
【0196】
H1.複合構造体にスプライスを配置するための方法であって、
前記複合構造体に設けるスプライス位置の数を選択し、
前記複合構造体を形成するためのセクションを階段状パターンに配置して、前記選択された数のスプライス位置に所定数のスプライスを形成し、これにより、前記選択された数のスプライス位置のうちの特定のスプライス位置と、前記スプライス位置以外の前記複合構造体における位置と、の少なくとも1つは、望ましくない皺の発生を低減させる、方法。
【0197】
H2.前記セクションのうち、第1スプライスに対応する第1セクションは、前記選択された数のスプライス位置のうちの特定のスプライス位置に、複数のシェブロン形状で構成される第1階段状パターンを有し、前記セクションのうち、前記第1スプライスに対応する第2セクションは、前記選択された数のスプライス位置における前記特定のスプライス位置に相手側形状で構成される第2階段状パターンを有する、付記H1に記載の方法。
【0198】
H3.前記複合構造体は、ストリンガであり、前記第1セクション及び前記第2セクションは、実質的に平面状であり、さらに、
前記第1セクション及び前記第2セクションを所望の断面形状に成形することを含む、付記H2に記載の方法。
【0199】
H4.前記所望の断面形状は、ハット型、U字型、及び、C字型を含む群から選択される、付記H3に記載の方法。
【0200】
H5.さらに、前記選択された数のスプライスを形成するように配置された前記セクションを硬化させて、前記複合構造体を形成することを含む、付記H1に記載の方法。
【0201】
H6.前記複合構造体は、スティフナ、ストリンガ、及び、ロンジロンから選択される1つである、付記H1に記載の方法。
【0202】
多くの改変や変形が、当業者には明らかであろう。さらに、例示的な実施形態によっては、他の好適な実施形態とは異なる特徴をもたらす場合がある。選択した実施形態は、実施形態の原理及び実際の用途を最も的確に説明するために、且つ、当業者が、想定した特定の用途に適した種々の改変を加えた様々な実施形態のための開示を理解できるようにするために、選択且つ記載したものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24