(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/102 20210101AFI20230713BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20230713BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20230713BHJP
【FI】
H01M50/102
H01M50/107
H01M50/184 D
(21)【出願番号】P 2020512295
(86)(22)【出願日】2019-04-03
(86)【国際出願番号】 JP2019014857
(87)【国際公開番号】W WO2019194239
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018074195
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 仰
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-005092(JP,A)
【文献】特開昭63-207048(JP,A)
【文献】特開2002-141100(JP,A)
【文献】特開2006-092761(JP,A)
【文献】実開昭57-152763(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第107658393(CN,A)
【文献】実開昭58-131557(JP,U)
【文献】特開平07-014601(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0132636(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の電極体と、
前記電極体を収容する電池缶と、を備える電池であって、
前記電池缶は、筒部、前記筒部の一方の端部を閉じる底壁、および、前記筒部の他方の端部に連続する開口縁を有し、
前記筒部の内周形状が角部分を有
し、
前記開口縁と前記筒部の間に、前記開口縁の内径および前記筒部の最少内径よりも内径の小さな縮径部を有さない、電池。
【請求項2】
前記筒部の内周形状が多角形状であり、
前記多角形状を構成する多角形の内接円の径は、前記電極体の外径と実質的に同一である、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記筒部の内周形状が多角形状であり、
前記多角形状は、辺の数が24以下の正多角形である、請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記筒部の内周形状が多角形状であり、
前記多角形状は、辺の数が12以上の正多角形である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記開口縁の内周形状が円形である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
前記開口縁の開口を封口するように前記開口縁に固定された封口体をさらに備え、
前記封口体は、封口板と、前記封口板の周縁部に配されたガスケットと、を有し、
前記ガスケットは、前記周縁部の端面と前記開口縁との間で前記開口の径方向に圧縮されている、請求項1~
5のいずれか1項に記載の電池。
【請求項7】
前記ガスケットは、少なくとも前記周縁部の前記電極体側に配された内側リング部と、前記周縁部の端面を覆う側壁部と、を有し、前記側壁部が圧縮されている、請求項
6に記載の電池。
【請求項8】
前記開口縁が、前記径方向の内側に突出する突起部を有し、前記突起部により前記ガスケットが前記径方向に圧縮されている、請求項
6または
7に記載の電池。
【請求項9】
前記開口縁の外径は、前記筒部の外径よりも小さい、請求項
6~8のいずれか1項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極体と、電極体を収容する電池缶と、を備える電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池缶(外装ケース)の形状として、特許文献1に示すように、放熱効率を高める点から外装ケース外側の断面形状を6角形とする一方、内部圧力の上昇による電池ユニットの変形を抑制し、電極群を外装ケースと面接触させる点から、外装ケース内側の断面形状を円形とするものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池の高エネルギー密度化のため、電池缶内において、電極体の占めるスペースを大きくとることが行われる。しかしながら、単に電極体の占めるスペースを大きくしただけでは、正負極活物質量に対して十分な電解液を確保できず、高エネルギー密度化を実現できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一局面は、円筒形状の電極体と、前記電極体を収容する電池缶と、を備える電池であって、前記電池缶は、筒部、前記筒部の一方の端部を閉じる底壁、および、前記筒部の他方の端部に連続する開口縁を有し、前記筒部の内周形状が角部分を有する、電池に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電池の高エネルギー密度化が容易となる。
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電池の要部の縦断面模式図である。
【
図2】同電池において、電池缶の外観を示す斜視図である。
【
図3】同電池において、電池缶の筒部の軸に垂直な面の断面形状を示す断面図である。
【
図4A】キャップを具備する同電池の要部の縦断面模式図である。
【
図4B】キャップの斜視図(a)およびその裏面図(b)である。
【
図5】同電池の製造方法の一例の説明図であり、準備工程(A)、封口工程(B)および封止工程(C)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態に係る電池は、円筒形状の電極体と、電極体を収容する電池缶と、を備える電池であって、電池缶は、筒部、筒部の一方の端部を閉じる底壁、および、筒部の他方の端部に連続する開口縁を有する。筒部の内周形状が角部分を有する。
【0009】
ここで、角部分とは、筒部の軸に垂直な面における筒部内側壁の断面形状(内周形状)において、少なくとも2つの隣接する直線状の辺により、2つの辺の交差位置(頂点)近傍に形成される空間を意味する。各辺は、数学的に厳密な直線である必要はなく、若干の曲率を有していてもよい。内周形状が実質的に直線の辺のみで構成される場合、内周形状は多角形状となり、多角形の各頂点近傍の領域が角部分を構成する。しかしながら、内周形状に曲線部分(例えば、円弧)が含まれていてもよく、内周形状が曲線部分と直線部分の組み合わせであってもよい。
【0010】
角部分には、筒部に円筒形状の電極体を収容しても、電極体で占められることがない空間が存在する。本実施形態の電池では、この空間に電解液を確保でき、電解液の枯渇を抑制できる。これにより、電極体を電池缶内で高密度に配した場合においても、電極体の容積増加と、電解液の確保とを両立させることができ、液不足に伴う寿命耐性に優れた電池を実現できる。
【0011】
内周形状が多角形状である場合、多角形状は、正多角形に限られるものではない。しかしながら、内周方向において電解液の供給ムラをなくす観点からは、電解液を保持できる角部分が内周方向に均等に配置されていることが好ましい。したがって、筒部の内周形状は、正多角形であることが好ましい。
【0012】
内周形状が多角形状である筒部に円筒状の電極体を収容する場合、収容が可能な電極体の最大外径は、多角形状を構成する多角形の内接円の径の長さに一致するか、それ以上である。したがって、電極体の外径を、内接円の径の長さと実質的に同一とすることで、電池のエネルギー密度を最大に高めることができる。一方、多角形から内接円を除いた部分(角部分)において、電解液を保持できる。
なお、電極体の外径が内接円の径の長さと実質的に同一であるとは、電池製造上の公差等を考慮し、電極体の外径が内接円の径の長さと±100μmの範囲で等しいことを意味する。
【0013】
電池缶の筒部の高さ方向(軸方向)(以下、Z方向とも称する。)において、内周形状に角部分を有する位置は、筒部の任意の高さの範囲であってよいが、筒部の高さ方向の全てにおいて、内周形状に角部分を有することが好ましい。また、内周方向において角部分が設けられる位置は、筒部の高さ方向で異ならせてもよいが、筒部の高さ方向によらず同一であることが好ましい。
【0014】
また、内周形状と同様、筒部の外側壁の断面形状(外周形状)に角部分を有している場合、表面積が増えることにより放熱性がよくなる。また、筒部の一定の高さ範囲において、角部分が外周方向において同じ位置に設けられている場合、電池の位置決めなどに使用することが可能になる。
【0015】
内周形状が正多角形の形状を有している場合、正多角形を構成する辺の数が小さいほど、より多くの電解液を角部分に保持できる。十分な電解液を角部分に確保する観点からは、内周形状は、例えば、辺の数が24以下の正多角形であってよく、20以下、16以下であってもよい。
【0016】
しかしながら、一方で、正多角形を構成する辺の数が小さいほど、電池缶の開口縁を封口するための電池缶の加工が難しくなる。電池缶の加工を容易とする観点からは、内周形状は、辺の数が12以上の正多角形とするとよい。
【0017】
電池缶は、筒部の内周形状が角部を有している一方、開口縁の内側壁の断面形状(内周形状)は、封口の容易さの点から、円形であることが好ましい。
【0018】
従来より、電池缶の開口縁を封口する方法として、開口縁と筒部との間に、開口縁の筒の内径および筒部の内径(最少内径)よりも内径の小さな縮径部を設けた後、縮径部上に封口板をガスケットを介して配置し、ガスケットおよび封口板を挟み込むように金属缶の開口縁をZ方向から押圧し、かしめ加工することが行われている。この場合、縮径部は、Z方向において封口板より内側に存在する。しかしながら、この方法では、縮径部の内側の空間が電極体を配置できないデッドスペースとなっており、高エネルギー密度の電池を得ることが困難であった。
一方で、このデッドスペース内には、電解液を保持することができるため、電解液の枯渇の問題は顕在化していなかった。
【0019】
これに対し、電池缶の封口方法を工夫し、縮径部を設けない封口方法を採用することにより、円筒形状の電極体の高さを高めることができ、エネルギー密度を高めることができる。しかしながら、電池缶内の電極体の占めるスペースを大きくするに伴い、正負極活物質量に対して電解液を保持するスペースが足りなくなり、電解液の枯渇の問題が顕在化するに至った。
【0020】
一方で、縮径部を設ける場合、角部分を有する多角形状の電池缶を縮径加工することは容易ではない。また、縮径加工時において角部分に歪み応力が蓄積しやすく、角部分において電池缶の強度が低下し易い。この点で、縮径加工によって封口を行う際に、より多くの電解液を保持するために、角部分を有する内周形状の電池缶は(特に、内周形状が、辺の数が12より少ない多角形である場合には)採用し難い。
【0021】
しかしながら、縮径部を設けない封口方法を採用する場合には、上記の電池缶の強度低下の問題の発生は抑制される。本発明の一実施形態では、従来の縮径部を設けない封口方法と、電解液を保持するための角部分を設けた電池缶とを組み合わせることで、高エネルギー密度で、液不足による寿命耐性に優れた電池を実現できる。
【0022】
具体的には、限定的でない一実施形態において、電池は、開口縁の開口を封口するように開口縁に固定された封口体を備える。
封口体は、封口板と、封口板の周縁部に配されたガスケットとを有する。ガスケットは、封口板の周縁部の端面と開口縁との間で開口の径方向に圧縮されている。具体的には、開口縁は、ガスケットを封口板の周縁部の端面に対して押圧する押圧部を有する。押圧部によりガスケットは開口の径方向に圧縮され、ガスケットの反発力により封口体と開口縁との間の密閉性が確保される。
【0023】
すなわち電池缶の開口縁は、ガスケットを電池缶の軸方向(Z方向)ではなく、Z方向と垂直な方向(以下、XY方向とも称する。)に押圧している。この場合、開口縁がガスケットを押圧する力は、Z方向よりも、XY方向に大きなスカラー成分を有している。
【0024】
電池缶の開口縁は、押圧部の少なくとも一部として、径方向の内側に突出する突起部を有してもよい。この場合、少なくとも突起部によりガスケットが径方向に圧縮される。このような突起部は、開口縁を内側に縮径することで形成し得る。突起部は、開口の周方向に沿って間欠的に複数形成してもよく、開口の周方向に沿って連続的に形成してもよい。連続的に形成された突起部は、開口の周方向に沿った環状の溝部を形成し得る。突起部は、ガスケットもしくはその側壁部を、封口板の周縁部の端面に向けてより強く押圧し得る。よって、封口体と開口縁との間の密閉性がより確実に確保される。
【0025】
ガスケットの形状は限定されないが、例えば、封口板の周縁部の電極体側(内側)に配された内側リング部と、封口板の周縁部の端面を覆う側壁部とを有する。この場合、側壁部が径方向に圧縮される。ガスケットは、更に、封口板の周縁部の外側に配された外側リング部を有することが好ましい。より具体的には、ガスケットは、封口板の周縁部を挟み込む外側リング部および内側リングと、外側リング部と内側リング部とを繋ぐように封口板の周縁部の端面を覆う側壁部とを有することが好ましい。
【0026】
突起部を間欠的に複数形成する場合、開口の中心に対して角度的に等価な位置に複数(少なくとも2箇所、好ましくは4箇所以上)の突起部を設けることが好ましい。
【0027】
電池缶の高さ方向において、突起部の位置と封口板の周縁部の端面の中心位置とは、実質的に同一であることが望ましい。突起部の位置と端面の中心位置とを面一に揃えることで、電池缶の開口縁に突起部を形成する際に封口板の変形が抑制される。また、ガスケットもしくはその側壁部に印加される圧力も偏りにくくなる。よって、ガスケットの変形が抑制されやすく、かつガスケットの圧縮率を高めることができ、缶内部の密閉性を高めることができる。
【0028】
ここで、突起部の位置と封口板の周縁部の端面の中心位置とが実質的に同一であるとは、電池缶の高さ方向において、突起部の位置と封口板の周縁部の端面の中心位置とのずれ量が、電池缶の高さLの2%以下であることを意味する。
【0029】
封口板の周縁部の端面の中心位置には、電池缶の開口縁が有する突起部に対応するように凹溝を形成してもよい。凹溝を設けることで電池缶の開口縁に突起部を形成する際に、封口板の変形がより顕著に抑制され、ガスケットもしくはその側壁部に印加される圧力の偏りも低減されやすくなる。電池缶の高さ方向において、凹溝の中心位置と突起部の位置とのずれ量は、電池缶の高さLの2%以下であればよい。
【0030】
電池缶の高さ方向において、ガスケットもしくはその内側リング部と接触する最低位置(最もZ方向に内側の位置)における開口縁の外径は、筒部の外径よりも小さくしてもよい。この場合、ガスケットもしくはその外側リング部をZ方向から覆うとともに、電池缶の開口縁の外周面をXY方向から覆う環状のキャップを設けることが好ましい。キャップを用いることで封口板の周縁部と電池缶の開口縁を保護することができる。このときキャップを開口縁に接合すれば、封口体をより強固に電池缶に固定し得る。キャップの厚さは、キャップの外径と筒部の外径とが概ね同一になるように設計すればよい。
【0031】
封口板とガスケットとは、インサート成型などにより、一体成型されていることが望ましい。一体成型によれば、封口板とガスケットとが相互に溶着した状態が容易に達成される。封口板とガスケットとが一体成型されることで、封口体を一部品として取り扱うことができ、電池の製造が容易になる。
【0032】
上記構成によれば、電池缶内を密閉するためにガスケットをZ方向に押圧する必要がないため、電池缶に、ガスケットもしくはその内側リング部と電極体との間に介入する縮径部を設ける必要がない。よって、封口体と電極体との最短距離を短くして、缶内部のエネルギー密度を高めやすくなる。具体的には、封口体と電極体との最短距離を、例えば2mm以下、好ましくは1.5mm以下とすることが可能である。
【0033】
以下、本発明の実施形態に係る電池について、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0034】
図1は、本実施形態に係る電池10の要部の縦断面模式図である。
電池10は、筒型を有し、筒型の有底の電池缶100と、缶内に収容された円筒型の電極体200と、電池缶100の開口を封口する封口体300とを具備する。
【0035】
電池缶100は、電極体200を収容する筒部120と、筒部120の一方の端部を閉じる底壁130と、筒部120の他方の端部に連続する開口縁110とを有する。開口縁110の開口は、封口体300により閉じられている。
【0036】
図2は、電池10における電池缶100の外観を示す斜視図である。電池缶100において、筒部120の内周形状は多角形(正16角形)であり、同様に、筒部120の外周形状も、内周形状に対応する多角形(正16角形)である。一方で、開口縁110の内周形状および外周形状は円形に加工されている。
【0037】
図3は、電池10の筒部120の軸に垂直な面における断面図である。
図3に示すように、電極体200(斜線部分)の容積を最大にする場合、電極体200の外径は、筒部120の内周形状を構成する正16角形の内接円の径と略等しくなる。この場合であっても、正16角形の各頂点近傍(角部)には、電極体200で占めることができない領域Sが存在する。この領域Sに電解液を保持することができる。
【0038】
図1に戻って、封口体300は、封口板310と、封口板310の周縁部311に配されたガスケット320とを有する。封口板310は、円盤状であり、防爆機能を有する。具体的には、封口板310は、構造的強度を確保するための厚肉の周縁部311および中央領域312と、防爆機能を発揮する薄肉部313とを具備する。薄肉部313は、周縁部311と中央領域312との間の領域に設けられる。中央領域312の内側面には、電極体200を構成する正極または負極から導出されたリード線210の端部が接続されている。よって、封口板310は一方の端子機能を有する。
【0039】
電池缶100の内圧が上昇すると、封口板310が外方に向けて盛り上がり、例えば周縁部311と薄肉部313との境界部に張力による応力が集中し、その境界部から破断が生じる。その結果、電池缶100の内圧が開放され、電池10の安全性が確保される。
【0040】
封口板310の形状は、特に限定されないが、図示例では、周縁部311の厚さが中央領域312よりも大きくなっている。厚い周縁部311は、電池缶100の開口縁110から開口の径方向に印加される圧力を、より大きな面積で受けることができ、応力の分散が容易になる。
【0041】
周縁部311の端面311Tの中心位置には、開口縁110が有する突起部111に対応するように凹溝3111が形成されている。
【0042】
ガスケット320は、外側リング部321および内側リング部322と、外側リング部321と内側リング部322とを繋ぐ側壁部323とを有する。封口板310の周縁部311の端面311Tは、側壁部323で覆われている。外側リング部321と内側リング部322とが、封口板310の周縁部311を挟み込むことで、ガスケット320が封口板310に固定されている。
【0043】
外側リング部321、内側リング部322および側壁部323は一体化された成型体である。ガスケット320は、例えばインサート成型により封口板310と一体成型され得る。
【0044】
電池缶100の開口縁110と封口体300との間の密閉性を確保するには、開口縁110の少なくとも一部が、ガスケット320の側壁部323を封口板310の周縁部311の端面311Tに対して押圧し、側壁部323を開口の径方向に圧縮する必要がある。ここでは、開口縁110には、内側に縮径された突起部111が開口の周方向に沿って形成されており、突起部111が側壁部323を端面311Tに対して押圧している。電池缶100の開口縁110は、端面110Tを有する。
【0045】
ガスケット320の側壁部323には、突起部111に対応する位置に、予め凹部3231を設けておいてもよい。ガスケット320に凹部3231を設けることで、側壁部323が圧縮されたときのガスケット320の過度な変形を抑制し得る。
【0046】
電池缶100の高さ方向において、突起部111の位置と封口板310の周縁部311の端面311Tの中心位置とは実質的に同一である。これにより、封口板310とガスケット320の変形が抑制され、かつ側壁部323の圧縮率を高めやすくなり、封口体300と開口縁110との間の密閉性がより顕著に確保され得る。
【0047】
電池缶100の開口縁110において、端面110Tを有する最端部は、電池缶100の軸方向(Z方向)と5°未満の角度を成す方向を向いていてもよい。これにより、ガスケット320に過度な応力が印加されず、ガスケット320による密閉性の確保が更に容易になる。
【0048】
電池10の電池缶100の高さ方向において、ガスケット320の内側リング部322と接触する最低位置における電池缶100の開口縁110の外径は、筒部120の外径よりも小さくなっている。また、外側リング部321は、開口縁110の端面110Tよりも電池缶100の軸方向(Z方向)に突出している。このような場合、電池缶100の開口縁110とガスケット320の外側リング部321とを覆うように保護部材を設けることが好ましい。
【0049】
図4Aは、保護部材としてキャップ400を具備する電池10の要部の縦断面模式図であり、
図4Bはキャップ400の斜視図(a)およびその裏面図(b)である。
環状のキャップ400は、ガスケット320の外側リング部321をZ方向から覆い、かつ電池缶100の開口縁110の外周面をXY方向から覆っている。キャップ400の厚さは、特に限定されないが、例えばキャップ400の外径と筒部120の外径とが、例えば実質的に同一になるように設計してもよい。キャップ400と開口縁110の外周面との間には、接合材410を介在させてもよい。キャップ400の外径もしくは最大外径と筒部120の外径もしくは最大外径との差は、例えば筒部120の外径Dの20%以下であればよく、差は10%以下でもよく、5%以下もしくは2%以下でもよい。
【0050】
キャップ400が導電性を有する場合、キャップ400に封口板310とは極性が異なる他方の端子機能を持たせることができる。キャップ400に端子機能を持たせる場合、キャップ400と開口縁110とを溶接により接合することが好ましい。なお、キャップ400は、付属部品であり、形状の自由度が大きく、様々な用途に応じて形状を設計し得る。
【0051】
図1および
図4に示す電池10において、電池缶100は、ガスケット320もしくは内側リング部322と電極体200との間に介入する縮径部を有さない。よって、封口体300と電極体200との最短距離は、例えば1mm以下に低減され得る。
【0052】
次に、
図5を参照しながら電池10の製造方法の一例について説明する。
(1)準備工程
図5(A)に示すように、まず、電極体200を筒部120に収容した電池缶100と、封口体300とを準備する。電池缶100は、
図2に示すように、筒部の内周形状が多角形状のものを用いる。但し、電極体200を缶内に挿入する前では、電池缶100の開口縁110は、
図2と異なり、電極体200の直径よりも十分に大きく形成されている。また、突起部111は形成されていない。電極体200を缶内に収容した後、開口縁110が縮径され、開口縁110の外径は筒部120よりも小さくされる。
【0053】
封口体300は、ガスケット320を封口板310とともにインサート成型することで準備し得る。封口板310の周縁部311の厚さは中央領域312よりも大きく、かつ周縁部311の端面311Tの中心位置には、凹溝3111が形成されている。同様にガスケット320の凹溝3111に対応する位置には凹部3231が設けられている。
【0054】
ガスケット320の材質は限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA)などを用いることができる。
【0055】
(2)封口工程
次に、
図5(B)に示すように、封口体300を電池缶100の開口縁110の内側に配置する。封口体300の位置決めの方法は特に限定されないが、例えば
図4に示すようにガスケット320の上端部に、開口の径方向の外側に向いて突出する凸部を設ければよい。凸部はフランジ状に設けてもよく、開口の周方向に沿って間欠的に突起状に設けてもよい。あるいは、電池缶100の開口縁110の内側に段部を設け、封口体300を段部で位置決めしてもよい。
【0056】
(3)封止工程
次に、
図5(C)に示すように、電池缶100の開口縁110の凹溝3111および凹部3231に対応する位置を内側に押し込むように溝入れを行う。これにより、開口縁110に内側に縮径された突起部111が形成され、突起部111がガスケット320の側壁部323を封口板310の周縁部311の端面311Tに対して押圧する。その結果、ガスケット320の側壁部323は開口の径方向に圧縮され、ガスケット320の反発力により封口体300と開口縁110との間の密閉性が達成される。
【0057】
次に、リチウムイオン二次電池を例に、電極体200の構成について例示的に説明する。
円筒型の電極体200は、捲回型であり、正極と負極とをセパレータを介して渦巻状に捲回して構成されている。正極および負極の一方にはリード線210が接続されている。リード線210は、封口板310の中央領域312の内側面に溶接等により接続される。正極および負極の他方には、別のリード線が接続され、別のリード線は電池缶100の内面に溶接等により接続される。
【0058】
(負極)
負極は、帯状の負極集電体と、負極集電体の両面に形成された負極活物質層とを有する。負極集電体には、金属フィルム、金属箔などが用いられる。負極集電体の材料は、銅、ニッケル、チタンおよびこれらの合金ならびにステンレス鋼からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。負極集電体の厚みは、例えば5~30μmであることが好ましい。
【0059】
負極活物質層は、負極活物質を含み、必要に応じて結着剤と導電剤を含む。負極活物質層は、気相法(例えば蒸着)で形成される堆積膜でもよい。負極活物質としては、Li金属、Liと電気化学的に反応する金属もしくは合金、炭素材料(例えば黒鉛)、ケイ素合金、ケイ素酸化物、金属酸化物(例えばチタン酸リチウム)などが挙げられる。負極活物質層の厚みは、例えば1~300μmであることが好ましい。
【0060】
(正極)
正極は、帯状の正極集電体と、正極集電体の両面に形成された正極活物質層とを有する。正極集電体には、金属フィルム、金属箔(ステンレス鋼箔、アルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔)などが用いられる。
【0061】
正極活物質層は、正極活物質および結着剤を含み、必要に応じて導電剤を含む。正極活物質は、特に限定されないが、LiCoO2、LiNiO2のようなリチウム含有複合酸化物を用いることができる。正極活物質層の厚みは、例えば1~300μmであることが好ましい。
【0062】
各活物質層に含ませる導電剤には、グラファイト、カーボンブラックなどが用いられる。導電剤の量は、活物質100質量部あたり、例えば0~20質量部である。活物質層に含ませる結着剤には、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ゴム粒子などが用いられる。結着剤の量は、活物質100質量部あたり、例えば0.5~15質量部である。
【0063】
(セパレータ)
セパレータとしては、樹脂製の微多孔膜や不織布が好ましく用いられる。セパレータの材料(樹脂)としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアミドイミドなどが好ましい。セパレータの厚さは、例えば8~30μmである。
【0064】
(電解質)
電解質にはリチウム塩を溶解させた非水溶媒を用い得る。リチウム塩としては、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、イミド塩類などが挙げられる。非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートなどの鎖状炭酸エステル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0065】
上記では、リチウムイオン二次電池を例として説明したが、本発明は、一次電池か二次電池かを問わず、任意の液状の電解質を用いる電池において、高エネルギー密度を実現しながら、角部分において十分な電解液を確保し、電解液の枯渇を抑制することが可能になる。
【0066】
(電池缶の形状と電解液保持量との関係)
電池缶の筒部120の内周形状を正n多角形とする。本実施形態で記載の縮径部を設けない封口方法を用いることにより、例えば直径21mm、高さ70mmのリチウムイオン電池において、帯状の正極および負極の幅を、縮径部を設ける場合よりも0.5mm以上長くすることによって、電極体200の幅(円筒の高さ)を、縮径部を設ける場合よりも0.5mm以上長くすることができる。あるいは、帯状の正極および負極の幅を、縮径部を設ける場合よりも0.9mm以上長くすることによって、電極体200の幅(円筒の高さ)を、縮径部を設ける場合よりも0.9mm以上長くすることも可能である。しかしながら、電極体200の容積を大きくしたことにより、電池缶内で電解液を保持できるスペースが減少する。
【0067】
電池缶の筒部120の最少内径を2rとする。rは、筒部120の内周形状を構成する正n多角形の内接円の半径に相当する。
電極体200の幅(円筒の高さ)を、Δhだけ大きくし、高エネルギー密度化を実現する場合、これにより減少する電解液の保持スペースC1は、πr2・Δhで表される。
【0068】
一方で、筒部120の内周形状を正n多角形としたことにより増加する電解液の保持スペースを考える。電極体200の幅(円筒の高さ)をHとする。正n多角形の面積Snは、Sn=nr2tan(π/n)で表される。したがって、増加する電解液の保持スペースC2は、最大で、
C2={nr2tan(π/n)-πr2}・H
で表される。
【0069】
C2≧C1であれば、電極体200の幅(円筒の高さ)の増加量Δhに対して、従前と同じかそれ以上の電解液を確保できる。上記式を変形すると、十分な電解液を確保するための条件は、下記式で与えられる。
[数式1]
(n/π)tan(π/n)-1≧Δh/H
【0070】
上記例のリチウムイオン電池において、H=66mmとした場合、Δh=0.5mmとするには、上記数式1に代入して、n≦20、すなわち筒部120の内周形状を正20角形にすればよい。同様に、例えば、Δh=0.9mmの場合、上記数式1より、筒部120の内周形状が正16角形(n≦16)であれば、従前の電解液量を概ね維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る電池は、高エネルギー密度が要求される用途、例えば携帯機器、ハイブリッド自動車、電気自動車等の電源として使用するのに適している。
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【符号の説明】
【0072】
10:電池、100:電池缶、110:開口縁、110T:端面、111:突起部、120:筒部、130:底壁、200:電極体、210:リード線、300:封口体、310:封口板、311:周縁部、311T:端面、3111:凹溝、312:中央領域、313:薄肉部、320:ガスケット、321:外側リング部、322:内側リング部、323:側壁部、3231:凹部、400:キャップ、410:接合材