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特許7313070堆肥中間体の製造方法、及び空気供給システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】堆肥中間体の製造方法、及び空気供給システム
(51)【国際特許分類】
   C05F 17/70 20200101AFI20230714BHJP
   B09B 3/60 20220101ALI20230714BHJP
   C05F 17/90 20200101ALI20230714BHJP
   B09B 101/70 20220101ALN20230714BHJP
   B09B 101/00 20220101ALN20230714BHJP
【FI】
C05F17/70 ZAB
B09B3/60
C05F17/90
B09B101:70
B09B101:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021025063
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022127110
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591196625
【氏名又は名称】株式会社晃伸製機
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 博規
(72)【発明者】
【氏名】角谷 一範
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-335630(JP,A)
【文献】特開2001-354487(JP,A)
【文献】特開2003-112149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05F 17/00
B09B 3/60
C02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次醗酵槽に堆積した状態の有機性廃棄物の内部に空気を供給するON状態と、前記有機性廃棄物に空気を供給しないOFF状態とが交互に繰り返されるように、前記有機性廃棄物に空気を間欠的に供給して前記有機性廃棄物を攪拌せずに醗酵させる堆肥中間体の製造方法であって、
製造開始時から、前記有機性廃棄物の温度が目標温度α(℃)(ただし、65≦α(℃)≦80)以上となるまでの推定時間tを、予め行った複数回の一次醗酵試験により得られた、前記有機性廃棄物の温度と前記有機性廃棄物への空気供給量との関係に基づいて設定する時間設定工程と、
前記推定時間tの間、前記有機性廃棄物の温度が前記目標温度α(℃)以上となるように、前記関係に基づいて、前記有機性廃棄物に空気を間欠的に供給する昇温工程と、
前記推定時間tの経過後、前記有機性廃棄物の温度が、予め定められた許容温度β(℃)(ただし、α-20≦β(℃)≦α+20)で維持されるように、前記関係に基づいて、前記有機性廃棄物に空気を間欠的に供給することで、前記有機性廃棄物を醗酵させて堆肥中間体を得る維持工程とを備え、
前記維持工程の、前記有機性廃棄物1mにおける単位時間当たりの平均空気供給量(L/分/m)が、前記昇温工程の、前記有機性廃棄物1mにおける単位時間当たりの平均空気供給量(L/分/m)よりも少なく、
前記昇温工程における前記平均空気供給量(L/分/m )が、81~250L/分/m であり、
前記維持工程における前記平均空気供給量(L/分/m )が、10~80L/分/m であり、
前記昇温工程は、1回当たりの前記ON状態の時間が2分~30分であり、かつ1回当たりの前記OFF状態の時間が5分~60分であり、
前記維持工程は、1回当たりの前記ON状態の時間が30秒~15分であり、かつ1回当たりの前記OFF状態の時間が5分~2時間である堆肥中間体の製造方法。
【請求項2】
前記時間設定工程において、前記推定時間tは、10時間以上30時間以下に設定される請求項1に記載の堆肥中間体の製造方法。
【請求項3】
前記維持工程は、少なくとも16時間以上144時間以下の間、行われる請求項1又は請求項2に記載の堆肥中間体の製造方法。
【請求項4】
前記維持工程の後、前記堆肥中間体の含水率が65質量%以下である請求項1~請求項3の何れか一項に記載の堆肥中間体の製造方法。
【請求項5】
一次醗酵槽に堆積した状態の有機性廃棄物を攪拌せずに醗酵させるために、前記有機性廃棄物の内部に空気を供給する空気供給手段と、
前記空気供給手段の状態を、前記有機性廃棄物に空気を供給するON状態と、前記有機性廃棄物に空気を供給しないOFF状態とに切り替える切替手段と、
製造開始時から、前記有機性廃棄物の温度が目標温度α(℃)(ただし、65≦α(℃)≦80)以上となるまでの推定時間tを、予め行った複数回の一次醗酵試験により得られた、前記有機性廃棄物の温度と前記有機性廃棄物への空気供給量との関係に基づいて設定する時間設定手段と、
前記推定時間tの間、前記有機性廃棄物の温度が前記目標温度α(℃)以上となるように、前記有機性廃棄物に空気を間欠的に供給するための前記関係に基づく第1条件に基づいて、前記切替手段を作動させる第1処理、製造開始時から前記推定時間tの経過を判定する判定処理、及び前記推定時間tの経過後、前記有機性廃棄物の温度が予め定められた許容温度β℃(ただし、α-20≦β(℃)≦α+20)で維持されるように、前記有機性廃棄物に空気を間欠的に供給するための前記関係に基づく第2条件に基づいて、前記切替手段を作動させる第2処理を実行する制御手段とを備え、
前記制御手段による前記第2処理の実行時の方が、前記第1処理の実行時よりも、前記空気供給手段の前記平均空気供給量(L/分/m )が少なくなるように、前記第1条件及び前記第2条件が設定され、
前記第1処理において、
前記第1条件は、前記空気供給手段の前記平均空気供給量(L/分/m )が、81~250L/分/m となるように設定され、
前記第2条件は、前記空気供給手段の前記平均空気供給量(L/分/m )が、10~80L/分/m となるように設定され、
前記第2処理において、
前記第1条件は、1回当たりの前記ON状態の時間が2分~30分であり、かつ1回当たりの前記OFF状態の時間が5分~60分となるように設定され、
前記第2条件は、1回当たりの前記ON状態の時間が30秒~15分であり、かつ1回当たりの前記OFF状態の時間が5分~2時間となるように設定される空気供給システム。
【請求項6】
前記時間設定手段は、前記推定時間tとして、10時間以上30時間以下の時間を設定する請求項5に記載の空気供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆肥中間体の製造方法、及び空気供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
畜糞や生ゴミ等の有機性廃棄物を、醗酵処理プラントで好気性微生物により醗酵分解させて、堆肥(有機肥料)を製造することが行われている。この種の醗酵処理プラントでは、有機性廃棄物の醗酵を促進させる等の目的で、攪拌装置による攪拌が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、このような攪拌を伴った醗酵処理の前に、予め醗酵効率を高めるべく含水率をある程度、低下させるために、有機性廃棄物を堆積した状態で約一週間程度、醗酵処理を行うことが主流となっている。このように堆積した状態で事前に行う比較的、短期間での有機性廃棄物の醗酵は、その後に続く攪拌を伴った本格的な醗酵と区別するために、一次醗酵(又は事前醗酵)と称される場合がある。一次醗酵は、例えば、水分を多く含んだ状態の有機性廃棄物(例えば、生糞)を、醗酵処理プラント又はその付近に用意された一次堆積場に約一週間放置して、堆積醗酵させることにより行われる。有機性廃棄物は、醗酵に伴って発熱するため、有機性廃棄物の温度が上昇し、有機性廃棄物中に含まれている水分がある程度、蒸発する。
【0004】
なお、特許文献1には、攪拌を伴った有機性廃棄物の醗酵の際に、ブロアを用いて圧送した空気を、有機性廃棄物の下側に配設された送気管の空気噴出孔から噴出させて、有機性廃棄物に空気を強制的に供給することが示されている。このように、有機性廃棄物に空気が供給されると、有機性廃棄物における醗酵が促進される。
【0005】
また、特許文献2には、醗酵槽に収容した堆肥材料(有機性廃棄物)に対して、空気を間欠的に供給し、かつ堆肥材料の温度に応じて、空気の供給量を制御する装置が示されている。更に、特許文献2には、堆肥材料の温度が、堆肥材料内の好気性微生物の活性状況を示し、堆肥材料の温度が比較的低いとき(例えば、25~30℃)に、好気性微生物は酸素をそれほど必要とせず、堆肥材料の温度が比較的高いとき(例えば、60℃)に、好気性微生物は酸素を多く必要としていることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-47394号公報
【文献】国際公開第2017/170581号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の有機性廃棄物の一次醗酵処理は、有機性廃棄物の温度等を厳密に管理することなく、堆積物に対して空気を連続的に供給しながら堆積醗酵させているのが実情であった。
【0008】
しかしながら、有機性廃棄物の温度がある程度、高温(例えば、70℃)となった状態で、有機性廃棄物に空気が多く供給されると、有機性廃棄物中の好気性微生物の活動がかえって低下し、有機性廃棄物の温度を高温で維持することができず、問題となっていた。
【0009】
なお、特許文献2に示されるように、従来、有機性廃棄物の醗酵の際に、有機性廃棄物の温度を管理しつつ、有機性廃棄物に対して間欠的に空気を供給する技術が知られているものの、そのような場合でも、有機性廃棄物の温度が高温となったときには、有機性廃棄物中の好気性微生物の活動を活性化させるべく、有機性廃棄物に対して多くの空気を供給する必要があると考えられていた。
【0010】
本発明の目的は、有機性廃棄物を効率的に一次醗酵させて堆肥中間体を得る堆肥中間体の製造方法、及び前記製造方法に使用される空気供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、畜糞や生ゴミ等からなる有機性廃棄物を、好気性微生物を利用して堆積醗酵(一次醗酵)させる堆肥中間体の製造方法において、醗酵に伴った発熱により、有機性廃棄物の温度が、好気性微生物の活動が活発化する所定の温度(例えば、70℃)となった場合に、好気性微生物の活発な活動を維持するべく有機性廃棄物の内部に空気を多く供給すると、有機性廃棄物の温度が低下し、好気性微生物の活動がかえって阻害されることをつきとめた。
【0012】
有機性廃棄物の醗酵が進むと、有機性廃棄物の温度が上昇して、有機性廃棄物中の水分がある程度、蒸発して減少する。水分の減少した有機性廃棄物の内部は、空気が移動し易い状態となっており、そのような有機性廃棄物に空気が供給されると、空気が有機性廃棄物を通り抜けて外部へ放出され易くなる。つまり、有機性廃棄物内に蓄積されていた熱が空気の流れに乗って空気と共に外部へ放出され易くなる。そのため、上述したように、有機性廃棄物の温度が、上述した所定の温度となった後、有機性廃棄物の内部に空気が多く供給されると、有機性廃棄物の温度が低下するものと推測される。
【0013】
そして、本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、有機性廃棄物に空気を供給しつつ、有機性廃棄物を堆積醗酵(一次醗酵)させる場合において、有機性廃棄物の温度を、好気性微生物の活動が活発化等する所定の温度(高温)に到達させた後、有機性廃棄物1mにおける単位時間当たりの平均空気供給量(L/分/m)を、到達前よりも少なくすると、有機性廃棄物の温度低下が抑制されることを見出し、本願発明の完成に至った。
【0014】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 有機性廃棄物の内部に空気を供給するON状態と、前記有機性廃棄物に空気を供給しないOFF状態とが交互に繰り返されるように、前記有機性廃棄物に空気を間欠的に供給して前記有機性廃棄物を醗酵させる堆肥中間体の製造方法であって、製造開始時から、前記有機性廃棄物の温度が目標温度α(℃)(ただし、65≦α(℃)≦80)以上となるまでの推定時間tを設定する時間設定工程と、前記推定時間tの間、前記有機性廃棄物の温度が前記目標温度α(℃)以上となるように、前記有機性廃棄物に空気を間欠的に供給する昇温工程と、前記推定時間tの経過後、前記有機性廃棄物の温度が、予め定められた許容温度β(℃)(ただし、α-20≦β(℃)≦α+20)で維持されるように、前記有機性廃棄物に空気を間欠的に供給することで、前記有機性廃棄物を醗酵させて堆肥中間体を得る維持工程とを備え、前記維持工程の、前記有機性廃棄物1mにおける単位時間当たりの平均空気供給量(L/分/m)が、前記昇温工程の、前記有機性廃棄物1mにおける単位時間当たりの平均空気供給量(L/分/m)よりも少ない堆肥中間体の製造方法。
【0015】
<2> 前記昇温工程における前記平均空気供給量(L/分/m)が、81~250L/分/mであり、前記維持工程における前記平均空気供給量(L/分間/m)が、10~80L/分/mである前記<1>に記載の堆肥中間体の製造方法。
【0016】
<3> 前記昇温工程は、1回当たりの前記ON状態の時間が2分~30分であり、かつ1回当たりの前記OFF状態の時間が5分~60分であり、前記維持工程は、1回当たりの前記ON状態の時間が30秒~15分であり、かつ1回当たりの前記OFF状態の時間が5分~2時間である前記<1>又は<2>に記載の堆肥中間体の製造方法。
【0017】
<4> 前記時間設定工程において、前記推定時間tは、10時間以上30時間以下に設定される前記<1>~<3>の何れか1つに記載の堆肥中間体の製造方法。
【0018】
<5> 前記維持工程は、少なくとも16時間以上144時間以下の間、行われる前記<1>~<4>の何れか1つに記載の堆肥中間体の製造方法。
【0019】
<6> 前記維持工程の後、前記堆肥中間体の含水率が65質量%以下である前記<1>~<5>の何れか1つに記載の堆肥中間体の製造方法。
【0020】
<7> 有機性廃棄物の内部に空気を供給する空気供給手段と、前記空気供給手段の状態を、前記有機性廃棄物に空気を供給するON状態と、前記有機性廃棄物に空気を供給しないOFF状態とに切り替える切替手段と、製造開始時から、前記有機性廃棄物の温度が目標温度α(℃)(ただし、65≦α(℃)≦80)以上となるまでの推定時間tを設定する時間設定手段と、前記推定時間tの間、前記有機性廃棄物の温度が前記目標温度α(℃)以上となるように、前記有機性廃棄物に空気を間欠的に供給するための第1条件に基づいて、前記切替手段を作動させる第1処理、製造開始時から前記推定時間tの経過を判定する判定処理、及び前記推定時間tの経過後、前記有機性廃棄物の温度が予め定められた許容温度β℃(ただし、α-20≦β(℃)≦α+20)で維持されるように、前記有機性廃棄物に空気を間欠的に供給するための第2条件に基づいて、前記切替手段を作動させる第2処理を実行する制御手段とを備え、前記制御手段による前記第2処理の実行時の方が、前記第1処理の実行時よりも、前記空気供給手段の前記平均空気供給量(L/分/m)が少なくなるように、前記第1条件及び前記第2条件が設定される空気供給システム。
【0021】
<8> 前記第1条件は、前記空気供給手段の前記平均空気供給量(L/分/m)が、81~250L/分/mとなるように設定され、前記第2条件は、前記空気供給手段の前記平均空気供給量(L/分/m)が、10~80L/分/mとなるように設定される前記<7>に記載の空気供給システム。
【0022】
<9> 前記第1条件は、1回当たりの前記ON状態の時間が2分~30分であり、かつ1回当たりの前記OFF状態の時間が5分~60分となるように設定され、前記第2条件は、1回当たりの前記ON状態の時間が30秒~15分であり、かつ1回当たりの前記OFF状態の時間が5分~2時間となるように設定される前記<7>又は<8>に記載の空気供給システム。
【0023】
<10> 前記時間設定手段は、前記推定時間tとして、10時間以上30時間以下の時間を設定する前記<7>~<9>の何れか1つに記載の空気供給システム。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、有機性廃棄物を効率的に一次醗酵させて堆肥中間体を得る堆肥中間体の製造方法、及び前記製造方法に使用される空気供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態1の空気供給システムのブロック図
図2】一次醗酵槽を模式的に表した上面図
図3】第1条件におけるON状態及びOFF状態のタイミングと、第2条件におけるON状態及びOFF状態のタイミングとを示す説明図
図4】空気供給システムにより実行される堆肥中間体製造処理の流れを示すフローチャート
図5】制御部の機能ブロックを示す図
図6】有機性廃棄物の温度と時間との関係を表したグラフを示す図
図7】試験1の結果を示すグラフ
図8】試験2の結果を示すグラフ
図9】試験3の結果を示すグラフ
図10】試験4の結果を示すグラフ
図11】試験5の結果を示すグラフ
図12】試験6の結果を示すグラフ
図13】試験7の結果を示すグラフ
図14】試験8の結果を示すグラフ
図15】試験9の結果を示すグラフ
図16】管理システムのブロック図
【発明を実施するための形態】
【0026】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1に係る堆肥中間体の製造方法、及び空気供給システム1を、図1図6を参照しつつ説明する。図1は、実施形態1の空気供給システム1のブロック図である。空気供給システム1は、有機性廃棄物Wを一次醗酵させて堆肥中間体を製造する際に利用されるシステムであり、堆積された状態の有機性廃棄物Wの内部(堆積物の内部)に空気を間欠的に供給する。有機性廃棄物Wは、畜糞(例えば、鶏糞、牛糞、豚糞、馬糞等)や生ゴミ等からなる。
【0027】
有機性廃棄物Wの一次醗酵は、醗酵処理プラントで行う醗酵処理(二次醗酵)の前に、予め有機性廃棄物Wの水分量(含水率)を少なくするために行われる。本実施形態の一次醗酵は、醗酵処理プラントの付近に設置された一次発酵槽2に、有機性廃棄物Wを堆積した状態で、約一週間行われる。本明細書において、有機性廃棄物Wを一次醗酵したものを、「堆肥中間体」と称する。
【0028】
ここで、先ず、「堆肥中間体の製造方法」について簡単に説明する。堆肥中間体の製造方法は、堆積された有機性廃棄物Wの内部に空気を供給するON状態と、有機性廃棄物Wに空気を供給しないOFF状態とが交互に繰り返されるように、有機性廃棄物Wに空気を間欠的に供給して有機性廃棄物Wを醗酵させることにより、堆肥中間体を製造するものである。堆肥中間体の製造方法は、時間設定工程、昇温工程、及び維持工程を備えている。
【0029】
時間設定工程は、製造開始時から、有機性廃棄物Wの温度が目標温度α℃(ただし、65≦α(℃)≦80)以上となるまでの推定時間tを設定する工程である。
【0030】
堆肥中間体の製造開始時は、空気供給システム1を用いて有機性廃棄物Wの堆積醗酵(一次醗酵)を開始した時間であり、具体的には、後述する空気供給手段4により有機性廃棄物Wの内部に空気の供給を開始した時間(昇温工程を開始した時間)として定められる。
【0031】
目標温度α℃は、有機性廃棄物W中の好気性微生物(醗酵に関与する高温菌)の活動が活性化する温度や、雑菌(例えば、アンモニア臭、硫黄臭等の悪臭の原因菌、サルモネラ菌、大腸菌等の病原菌等)が死滅する温度等を考慮して予め定められる値であり、例えば、α=70(℃)に設定される。目標温度αは、65≦α(℃)≦80の値に設定される。
【0032】
推定時間tは、例えば、予め行った複数回の一次醗酵試験により得られた、「有機性廃棄物Wの温度と有機性廃棄物Wへの空気供給量との関係」に基づいて、目標温度α℃となる時間を推測することにより、定められる。「有機性廃棄物Wの温度と有機性廃棄物への空気供給量との関係」等の詳細は、後述する。なお、推定時間tは、昇温工程を、維持工程に切り替える条件として利用される。
【0033】
堆肥中間体の製造方法において、有機性廃棄物Wの醗酵(一次醗酵)は、空気を間欠的に供給するパターンの違いにより、昇温工程と維持工程との2つの段階に分けられる。
【0034】
昇温工程は、推定時間tの間、有機性廃棄物Wの温度が目標温度α(℃)以上となるように、有機性廃棄物に空気を間欠的に供給する工程である。昇温工程において、前記ON状態及び前記OFF状態が交互に繰り返されるパターンは、後述する第1条件によって定めらる。
【0035】
維持工程は、推定時間tの経過後、有機性廃棄物Wの温度が、予め定められた許容温度β(℃)(ただし、α-20≦β(℃)≦α+20)で維持されるように、有機性廃棄物Wに空気を間欠的に供給することで、有機性廃棄物Wを醗酵させて堆肥中間体を得る工程である。許容温度β(℃)は、最終的に得られる堆肥中間体の水分量(含水率)等を考慮して、予め定められる。また、維持工程において、前記ON状態及び前記OFF状態が交互に繰り返されるパターンは、後述する第2条件によって定められる。
【0036】
このような堆肥中間体の製造方法では、維持工程の、有機性廃棄物(W)1mにおける単位時間当たりの平均空気供給量(L/分/m)が、昇温工程の、有機性廃棄物(W)1mにおける単位時間当たりの平均空気供給量(L/分/m)よりも少なくなるように行われる。つまり、本実施形態の堆肥中間体の製造方法では、有機性廃棄物Wの温度が目標温度α℃以上に昇温した後は、それまでよりも、有機性廃棄物Wへの空気供給量を少なくすることで、有機性廃棄物Wの温度が許容温度β(℃)で保たれる。このような堆肥中間体の製造方法は、空気供給システム1を用いて実施される。
【0037】
空気供給システム1は、図1に示されるように、主として、制御盤3と、空気供給手段4とを備えている。
【0038】
制御盤3は、一次醗酵槽2の付近等に設置され、主として、制御部5、記憶部6、計時部7、通信部8、推定時間入力部9、第1条件入力部10、第2条件入力部11、表示部12、スイッチ(切替手段)13を備えている。また、空気供給手段4は、堆積された有機性廃棄物Wの内部に空気を供給する手段であり、ブロア4aと、送気管4bを備えている。
【0039】
ブロア4aは、モータで駆動する回転翼を備えており、吸引口から回転翼の動作で空気(外気)を吸引すると共に、吸引した空気に所定の圧力を付して送気口から送気管4bに向けて空気を供給する装置である。ブロア4aは、外部に設置された電源15(例えば、電圧200V)に、電線13を介して電気的に接続されている。なお、電線13の途中には、ブロア4aをオンオフ制御するためのスイッチ13が設けられている。
【0040】
図2は、一次醗酵槽2を模式的に表した上面図である。ここで、有機性廃棄物Wが堆積される一次醗酵槽2等について、図2を参照しつつ説明する。一次醗酵槽2は、有機性廃棄物Wが載せられる床面2aを備えている。本実施形態の床面2aは、上面視で横長の矩形状をなしており、図2の下側に示される床面2aの長辺側の部分が、一次醗酵槽2の出入口2cとなっている。この出入口2cから一次醗酵槽2に、一次醗酵前の有機性廃棄物Wが搬入されると共に、一次醗酵後の有機性廃棄物W(堆肥中間体)が搬出される。そして、出入口2cが設けられた箇所以外の床面2aの周縁には、壁部2dが立設されている。壁部2dは、所定の高さを備えており、床面2aに堆積された有機性廃棄物Wが外部に広がらないように、有機性廃棄物Wを周囲から支える機能等を備えている。なお、一次醗酵槽2には、必要に応じて、床面2aを上方から覆う屋根部(雨除け)が設けられてもよい。
【0041】
一次醗酵槽2の床面2aの下側には、分岐した複数の送気管4b(分岐部4b1)が配設されている。送気管4bは、塩化ビニル等の合成樹脂からなる円筒状のパイプであり、主として、ブロア4aと接続する本体部4b2と、本体部4b2から分岐した複数の分岐部4b1とを備えている。分岐部4b1の末端には、エンドキャップ4b3が嵌められており、分岐部4b1の末端が塞がれている。
【0042】
本実施形態の場合、送気管4bの本体部4b2は、一次醗酵槽2の奥側にある床面2aに形成された溝部内に埋設されており、そのような本体部4b2から、複数の分岐部4b1が、互いに間隔を保ちつつ平行に並ぶように配設されている。また、各分岐部4b1も、床面2aに設けられた溝部内に埋設されている。各分岐部4b1には、空気の噴出口として利用される複数の孔部4b4が設けられている。各孔部4b4から空気が上方に向かって吹き出すように、各孔部4b4の位置が設定されている。また、各孔部4b4は、長手状をなした分岐部4b1の長手方向において、等間隔で並ぶように、各位置が設定されている。このような送気管4b及びブロア4aを備えた空気供給手段4を利用して、床面2a上に堆積された有機性廃棄物Wに対して、下側から内部に空気を万遍なく供給することができる。
【0043】
なお、一次醗酵槽2に有機性廃棄物Wを収容する場合、有機性廃棄物Wは、床面2aを全面的に覆うように床面2a上に堆積される。また、有機性廃棄物Wは、床面2aからの高さが略均等になるように、床面2a上に堆積されることが好ましい。このような一次発酵槽2内の有機性廃棄物Wの体積は、例えば、床面2aの面積と、床面2a上に積み上げられた堆積物の高さから、概算することができる。場合によっては、床面2aから立ち上がる壁部2dに、高さ方向の基準(高さを示す目盛り)を設け、その基準から、床面2a上に積み上げられた有機性廃棄物W(堆積物)の高さを見積もってもよい。なお、有機性廃棄物Wの体積は、他の方法で測定してもよい。
【0044】
次いで、制御盤3を構成する各部について説明する。制御部(制御手段)5は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成される。制御部5のCPUは、記憶部6に記憶されているプログラムを読み出して、RAMのワークエリアに展開し、展開したプログラムにしたがって、後述する各種処理を実行する。
【0045】
記憶部6は、制御部5が適宜、実行するプログラムや、各種処理に必要なデータ等を記憶する。記憶部6は、メモリやハードディスクドライブ等の物理ドライブによって構成される。
【0046】
計時部7は、例えばタイマIC、水晶振動子又はクロックモジュール等を含んで構成されるものであり、現在時刻を計時する機能を備えている。制御部5は、計時部7から現在時刻を適宜、取得する。
【0047】
通信部8は、通信インターフェースであり、他の装置に情報を送信する機能、及び他の装置から情報を受信する機能を備えている。通信部8は、無線通信機能を有していてもよいし、有線通信機能を有していてもよい。通信部8は、無線通信又は有線通信を利用することで、通信経路を介して他の装置と通信してもよい(例えば、WiFi(登録商標)等)。通信経路は、例えば、LAN(Local Area Network)等のネットワークやインターネット等である。通信部8は、近距離無線通信等を利用することで、通信経路を介さずに他の装置と通信してもよい。近距離無線通信は、例えば、Bluetooth(登録商標)、RFID(Radio Frequency Identifier)、NFC等である。
【0048】
スイッチ(切替手段)13は、空気供給手段4(具体的には、ブロア4a)の状態を、有機性廃棄物Wに空気を供給するON状態と、有機性廃棄物Wに空気を供給しないOFF状態とに切り替える手段である。
【0049】
なお、ここでは、空気供給手段4の状態について、有機性廃棄物Wに空気を供給する状態を「ON状態」と表し、有機性廃棄物Wに空気を供給しない状態を「OFF状態」と表したが、本明細書では、説明の便宜上、上述したように、有機性廃棄物Wの内部に空気を供給する状態そのものを「ON状態」、有機性廃棄物Wに空気を供給しない状態そのものを「OFF状態」と表す場合がある。
【0050】
スイッチ13は、例えば、マグネットスイッチにより構成される。マグネットスイッチは、回路を開閉する電磁接触器を備えている。スイッチ(マグネットスイッチ)13の電磁接触器は、制御部5からの指示に基づいて、空気供給手段4(ブロア4a)の状態を、ON状態とOFF状態に切り替えるために、駆動回路を開閉する。電磁接触器は、制御部5から電流が供給されず、電磁石のコイルを励磁していない状態では、固定設定と可動接点とが離れており、駆動回路を開放している。これに対して、制御部5から電流が供給され、電磁石のコイルを励磁している状態では、固定接点と可動接点とが接触し、駆動回路を閉じている。このように、スイッチ13は、制御部5からの指示に基づいて、空気供給手段4(ブロア4a)の状態を、ON状態とOFF状態とに切り替えることができる。
【0051】
推定時間入力部9は、堆肥中間体の製造開始時から、有機性廃棄物Wの温度が目標温度α℃以上となるまでの時間(推定時間t)を、入力する手段である。推定時間入力部9は、ダイヤル式、ボタン式、タッチパネル式等の公知の入力手段により構成される。
【0052】
第1条件入力部10は、堆肥中間体の製造方法における昇温工程において(つまり、推定時間tの間)、有機性廃棄物Wの温度が目標温度α(℃)以上となるように、空気供給手段4が有機性廃棄物Wに空気を間欠的に供給するための第1条件を入力する手段である。第1条件入力部10は、例えば、推定時間入力部9と同様、公知の入力手段により構成される。第1条件入力部10により、第1条件として、例えば、空気供給手段4をON状態にする時間(1回当たりのON状態の時間(ON時間)t11)、及びOFF状態にする時間(1回当たりのOFF状態の時間(OFF時間)t12)がそれぞれ入力される。
【0053】
第1条件におけるON状態の時間(ON時間)、及びOFF状態の時間(OFF時間)は、例えば、昇温工程(推定時間t)における平均空気供給量(L/分/m)が、81~250L/分/mとなるようにそれぞれ設定される。なお、平均空気供給量(L/分/m)は、有機性廃棄物(W)1mにおける単位時間当たりの平均空気供給量のことである。
【0054】
第1条件におけるON状態の時間、及びOFF状態の時間は、より具体的には、1回当たりのON状態の時間(ON時間)が2分~30分であり、かつ1回当たりのOFF状態の時間(OFF時間)が5分~60分となるようにそれぞれ設定される。
【0055】
本実施形態では、昇温工程において、複数回繰り返される各ON状態について、1回当たりのON状態の時間(ON時間)がすべて同じに設定され、また、複数回繰り返される各OFF状態について、1回当たりのOFF状態の時間(OFF時間)がすべて同じに設定される。また、昇温工程では、「ON状態、OFF状態」の順に、ON状態とOFF状態とが繰り返される。なお、他の実施形態においては、各ON状態のON時間を互いに異なる値に設定してもよいし、各OFF状態のOFF時間を互いに異なる値に設定してもよい。
【0056】
図3は、第1条件におけるON状態及びOFF状態のタイミングと、第2条件におけるON状態及びOFF状態のタイミングとを示す説明図である。図3に示されるように、第1条件は、所定の時間(ON時間)t11のON状態と、所定の時間(OFF時間)t12のOFF状態とが交互に繰り返されるように設定される。なお、第1条件では、1回当たりのOFF状態の時間が、1回当たりのON状態の時間よりも長く設定されてもよい。
【0057】
第2条件入力部11は、堆肥中間体の製造方法における維持工程にいてい(つまり、推定時間tの経過後)、有機性廃棄物Wの温度が許容温度β(℃)で維持されるように、空気供給手段4が有機性廃棄物Wに空気を間欠的に供給するための第2条件を入力する手段である。第2条件入力部11は、第1条件入力部10と同様、公知の入力手段により構成される。第2条件入力部11により、第2条件として、例えば、空気供給手段4をON状態にする時間(1回当たりのON状態の時間(ON時間)t21)、及びOFF状態にする時間(1回当たりのOFF状態の時間(OFF時間)t22)がそれぞれ入力される。
【0058】
第2条件におけるON状態の時間(ON時間)、及びOFF状態の時間(OFF時間)は、例えば、維持工程における平均空気供給量(L/分/m)が、10~80L/分/mとなるようにそれぞれ設定される。
【0059】
第2条件におけるON状態の時間、及びOFF状態の時間は、より具体的には、1回当たりの前記ON状態の時間(ON時間)が30秒~15分であり、かつ1回当たりの前記OFF状態の時間(OFF時間)が5分~2時間となるようにそれぞれ設定される。
【0060】
本実施形態では、維持工程において、複数回繰り返される各ON状態について、1回当たりのON状態の時間(ON時間)がすべて同じに設定され、また、複数回繰り返される各OFF状態について、1回当たりのOFF状態の時間(OFF時間)がすべて同じに設定される。維持工程では、「ON状態、OFF状態」の順に、ON状態とOFF状態とが繰り返される。なお、他の実施形態においては、各ON状態のON時間を互いに異なる値に設定してもよいし、各OFF状態のOFF時間を互いに異なる値に設定してもよい。
【0061】
図3に示されるように、第2条件は、所定の時間(ON時間)t21のON状態と、所定の時間(OFF時間)t22のOFF状態とが交互に繰り返されるように設定される。第2条件では、1回当たりのOFF状態の時間が、1回当たりのON状態の時間よりも長く設定されるのが好ましい。また、第2条件における1回当たりのON状態の時間t21は、第1条件における1回当たりのON状態の時間t11よりも、短く設定されるのが好ましい。
【0062】
推定時間入力部9、第1条件入力部10及び第2条件入力部11により、入力された各情報(推定時間t、第1条件、第2条件)は、記憶部6に記憶される。
【0063】
また、他の実施形態においては、推定時間入力部9、第1条件入力部10及び第2条件入力部11が、表示部と入力部とを兼ね備えたタッチパネル等により、1つにまとめて構成されてもよい。
【0064】
表示部12は、例えば液晶パネル等により構成される。表示部12には、種々の画面が表示され、これにより作業者に対して種々の情報を提供する。
【0065】
本実施形態の空気供給システム1は、更に、温度測定手段16、及び風速計17を備えている。
【0066】
温度測定手段16は、温度を測定する温度センサ16aと、測定された温度データを送信する送信部16bとを備える。温度センサ16aは、有機性廃棄物Wの内部(中心部)に到達し得る程度の長尺な支持部材(不図示)の先端部に取り付けられる。温度センサ16aは、例えば熱電対を含んで構成される。温度センサ16aは、送信部16bに対して電線を利用して電気的に接続されている。送信部16bは、温度センサ16aにより測定された温度データを、無線通信により通信部8を介して制御部5に送信する。なお、制御部5に送信された温度データは、適宜、記憶部6に記憶されると共に、必要に応じて、表示部12に表示される。
【0067】
風速計17は、ブロア4aの付近に設置され、ブロア4aの風速(風量)を計測する。風速計17としては、例えば、熱式風速計、超音波式風速計、翼車式風速計、ピトー管式風速計、オリフィス板を用いた風速計及びベンチュリ管を用いた風速計等が挙げられる。風速計17が計測したブロア4aの風速(風量)データは、制御部5に送られる。風速計17は、ブロア4aから供給される空気の供給量を確認等するために利用される。
【0068】
次いで、空気供給システム1を利用して堆肥中間体を製造する方法を説明する。図4は、空気供給システム1により実行される堆肥中間体製造処理の流れを示すフローチャートであり、図5は、制御部5の機能ブロックを示す図である。
【0069】
空気供給システム1を作動させる前に、先ず、有機性廃棄物Wを一次醗酵させるための準備が行われる。具体的には、一次醗酵槽2に、所定量の有機性廃棄物Wが収容される。作業者は、必要に応じて、このタイミングに、一次発酵槽2に収容された有機性廃棄物Wの水分量(含水率)を、公知の計測器を利用して計測してもよい。また、有機性廃棄物W中の温度を計測する場合は、有機性廃棄物Wの内部(中心部)に、温度測定手段16が適宜、挿入される。
【0070】
以上のような準備を終えた後、図4のS1に示されるように、推定時間入力部9を利用して、推定時間tが入力される(例えば、24時間)。推定時間入力部9により入力された情報(入力情報:推定時間t)は、図5に示されるように、推定時間受付部50へ送信される。推定時間受付部50が入力情報を受信すると、更にその入力情報を記憶部6へ送信する。入力情報を受信した記憶部6は、入力情報(推定時間t)を記憶する。このようにして、推定時間tを設定する処理(時間設定工程)が実行される。
【0071】
次いで、図4のS2に示されるように、第1条件入力部10を利用して、第1条件としてのON時間(t11)及びOFF時間(t12)が入力される。ここで、「ON時間」は、1回当たりのON状態の時間(t11)であり、「OFF時間」は、1回当たりのOFF時間の時間(t12)である。第1条件入力部10により入力された情報(入力情報:第1条件)は、図5に示されるように、第1条件受付部51へ送信される。第1条件受付部51が入力情報を受信すると、更にその入力情報を記憶部6へ送信する。入力情報を受信した記憶部6は、入力情報(第1条件:ON時間及びOFF時間)を記憶する。このようにして、第1条件(ON時間(t11)及びOFF時間(t12))を設定する処理が実行される。
【0072】
続いて、図4のS3に示されるように、第2条件入力部11を利用して、第2条件としてのON時間(t21)及びOFF時間(t22)が入力される。ここで、「ON時間」は、1回当たりのON状態の時間(t21)であり、「OFF時間」は、1回当たりのOFF時間の時間(t22)である。第2条件入力部11により入力された情報(入力情報:第2条件)は、図5に示されるように、第2条件受付部52へ送信される。第2条件受付部52が入力情報を受信すると、更にその入力情報を記憶部6へ送信する。入力情報を受信した記憶部6は、入力情報(第2条件:ON時間及びOFF時間)を記憶する。このようにして、第2条件(ON時間(t21)及びOFF時間(t22))を設定する処理が実行される。
【0073】
次いで、図4のS4に示されるように、第1条件に基づく第1処理が実行される。第1処理は、堆肥中間体の製造方法における昇温工程を行うものであり、第1条件に基づいて、空気供給手段4(ブロア4a)の状態が、ON状態とOFF状態とに交互に繰り返し切り替わるように、スイッチ(切替手段)13を作動させる処理である。なお、第1処理は、製造開始時から推定時間tの間、行われる。
【0074】
第1条件は、有機性廃棄物Wの温度が予め定められた目標温度α(℃)以上となるように、有機性廃棄物Wに空気を間欠的に供給するための条件であり、上述したように、第1条件入力部10により入力されたON時間(t11)及びOFF時間(t12)からなる。なお、第1条件のON時間(t11)及びOFF時間(t12)は、後述するように、例えば、予め行った複数回の一次醗酵試験により得られた、「有機性廃棄物Wの温度と有機性廃棄物への空気供給量との関係」に基づいて定めることができる。
【0075】
第1処理は、図5に示されるように、先ず、条件取得部54が、記憶部6に記憶されている第1条件の情報を読み出し、その情報をオンオフ指示部55へ供給する。オンオフ指示部55は、第1条件に基づいて、スイッチ13をオンオフ制御する。例えば、オンオフ指示部55は、計時部7で計時される時刻が第1条件のON時間の間、スイッチ13の固定接点と可動接点とが接触して閉状態となるように、スイッチ13に対して指示を出す(電流を供給する)。また、オンオフ指示部55は、計時部7の時刻が第1条件のOFF時間の間、スイッチ13の固定接点と可動接点とが離れて開状態となるように、スイッチ13に対して指示を出す(電流を供給しない)。このように、第1処理が実行されると、スイッチ13が、第1条件に基づいて作動する。
【0076】
図6は、有機性廃棄物Wの温度と時間との関係を表したグラフを示す図である。図6の縦軸は、有機性廃棄物Wの温度(℃)を表し、横軸は時間を表す。なお、グラフの下側には、各条件(第1条件、第2条件)におけるON状態及びOFF状態のタイミング図が示されている。
【0077】
第1処理が実行されると、昇温工程が開始され、図6のグラフに示されるように、時間の経過と共に、有機性廃棄物Wの温度が上昇する。例えば、目標温度α(℃)を70℃に設定した場合、第1条件に基づいて有機性廃棄物Wに供給される空気量等と共に、後述する、予め行った複数回の一次醗酵試験により得られた、「有機性廃棄物Wの温度と有機性廃棄物への空気供給量との関係」等を考慮して、推定時間tが、例えば、24時間に設定される。製造開始から有機性廃棄物Wの温度が目標温度α(℃)(例えば、70℃)となった時までの時間が、推定時間t(例えば、24時間)と一致するのが理想的であるが、本実施形態では、それらが一致することまでは要求されない。なお、推定時間tとしては、例えば、10時間以上30時間以下の範囲に設定される。
【0078】
上記のように第1処理が実行された後、図4のS5に示されるように、推定時間tの経過の判定処理が行われる。この処理は、図5に示されるように、条件切替判定部53が、記憶部6に記憶されている推定時間tの情報を読み出し、その情報と、計時部7で計時される時刻とに基づいて、試験開始時からの経過時間が推定時間tを経過するのを判定する。条件切替判定部53が推定時間tを経過したと判定した場合、条件切替判定部53は、条件取得部54に対して、第2条件を取得するように指示する。条件取得部54は、条件切替判定部53から指示を受けると、記憶部6に記憶されている第2条件の情報を読み出し、更に、その情報をオンオフ指示部55へ供給する。
【0079】
オンオフ指示部55が第2条件の情報を受け取ると、図4のS6に示されるように、第2条件に基づく第2処理が実行される。第2処理は、堆肥中間体の製造方法における維持工程を行うものであり、第2条件に基づいて、空気供給手段4(ブロア4a)の状態が、ON状態とOFF状態とに交互に繰り返し切り替わるように、スイッチ(切替手段)13を作動させる処理である。なお、第2処理は、推定時間tの経過後、行われる。
【0080】
第2条件は、有機性廃棄物Wの温度が予め定められた許容温度β℃で維持されるように、有機性廃棄物Wに空気を間欠的に供給するための条件であり、上述したように、第2条件入力部11により入力されたON時間(t21)及びOFF時間(t22)からなる。なお、第2条件のON時間(t21)及びOFF時間(t22)は、後述するように、例えば、予め行った複数回の一次醗酵試験により得られた、「有機性廃棄物Wの温度と有機性廃棄物への空気供給量との関係」に基づいて定めることができる。
【0081】
第2処理は、オンオフ指示部55が、第1条件に代えて、第2条件に基づいてスイッチ13をオンオフ制御する。例えば、オンオフ指示部55は、計時部7で計時される時刻が第2条件のON時間の間、スイッチ13の固定接点と可動接点とが接触して閉状態となるように、スイッチ13に対して指示を出す(電流を供給する)。また、オンオフ指示部55は、計時部7の時刻が第2条件のOFF時間の間、スイッチ13の固定接点と可動接点とが離れて開状態となるように、スイッチ13に対して指示を出す(電流を供給しない)。このように、第2処理が実行されると、スイッチ13が、第2条件に基づいて作動する。
【0082】
第2処理が実行されると、維持工程が開始され、図6のグラフに示されるように、時間が経過しても、有機性廃棄物Wの温度が、所定の許容温度β(℃)(例えば、65≦β(℃)≦90)で維持される。第2処理(維持工程)を行う時間は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、目標とする堆肥中間体の含水率や、堆肥中間体の生産効率等を考慮して、例えば、少なくとも16時間以上144時間以下の間に設定されることが好ましい。第2処理の終了時、作業者は、必要に応じて、有機性廃棄物Wの水分量(含水率)を計測してもよい。なお、第2処理の終了時(維持工程の後)、堆肥中間体の含水率は、65質量%以下であることが好ましい。
【0083】
なお、図5に示される、推定時間受付部50、第1条件受付部51、第2条件受付部52、条件切替判定部53、条件取得部54、オンオフ指示部55等は、制御部5と、制御部5が備えるCPUで動作するプログラムとの協調動作により実現される。
【0084】
以上のように、空気供給システム1を作動させると、堆肥中間体の製造方法における昇温工程、及び維持工程が行われ、最終的に、堆肥中間体が得られる。得られた堆肥中間体は、一次発酵槽2から適宜、搬出され、二次発酵を行う醗酵処理プラントへ運ばれる。堆肥中間体は、一次醗酵前の有機性廃棄物Wと比べて、水分量(含水率)が低下しており、二次発酵させ易い状態となっている。このように、本実施形態の堆肥中間体の製造方法によれば、有機性廃棄物Wを効率的に堆積醗酵(一次醗酵)させて堆肥中間体を得ることができる。
【0085】
また、本実施形態の空気供給システム1は、インバータ等の高価な装置を利用して、ブロアの風量を制御する必要がなく、単に、ブロアをオンオフ制御するだけでよいため、装置のコスト等が抑えられる。また、本実施形態の空気供給システム1は、有機性廃棄物W内の温度を、実際に測定し、その測定結果に基づいて、昇温工程と維持工程との切り替えを行うものではないため、この点からも、装置が簡便化されており好ましい。
【0086】
<一次醗酵試験>
次いで、本発明を完成させる前に、本発明者らが行った一次醗酵試験について説明する。ここでは、条件の異なる9つの試験(試験1~試験9)について説明する。一次醗酵試験は、上述した実施形態1と同様又一部改良した設備を用意し、その設備を使用して、有機性廃棄物(鶏糞)に空気を供給しつつ一次醗酵(堆積醗酵)を行ったものである。
【0087】
(試験1)
試験1は、インバータ付きのブロアを用意し、ブロアから供給される風量を変化させて一次醗酵を行った場合である。試験1では、ブロアが備えるモータ(三相交流)に供給する電力の周波数を15Hzに設定した。また、試験1では、試験開始時から終了時までブロアを連続運転させた。試験1では、有機性廃棄物1mにおける単位時間当たりの平均空気供給量(L/分/m)は、21L/分/mであった。
【0088】
(試験2)
試験2は、試験1と同様、インバータ付きのブロアを用いて一次醗酵を行った場合である。試験2では、ブロアに供給する電力の周波数を20Hzに設定した。また、試験2では、試験1と同様、試験開始時から終了時までブロアを連続運転させた。試験2では、平均空気供給量(L/分/m)は、25L/分/mであった。
【0089】
(試験3)
試験3は、試験1と同様、インバータ付きのブロアを用いて一次醗酵を行った場合である。試験3では、ブロアに供給する電力の周波数を30Hzに設定した。なお、試験3では、ブロアのON状態(ON時間)を5分、及びOFF状態(OFF時間)を50分に設定し、そのようなオンオフ条件を繰り返しつつ、試験開始時から終了時までブロアを運転させた。試験3では、平均空気供給量(L/分/m)は、8~12L/分/mであった。
【0090】
(試験4)
試験4は、実施形態1と同様の設備を用いて一次醗酵を行った場合であり、ブロアのON状態(ON時間)を1分、及びOFF状態(OFF時間)を60分に設定し、そのようなオンオフ条件を繰り返しつつ、試験開始時から終了時までブロアを運転させた。なお、ブロアに供給する電力の周波数は、60Hzである(以降の各試験についても同様)。試験4では、平均空気供給量(L/分/m)は、4~5L/分/mであった。
【0091】
(試験5)
試験5は、試験4のオンオフ条件を変更した場合であり、具体的には、ブロアのON状態(ON時間)を15分、及びOFF状態(OFF時間)を60分に設定した場合である。それ以外の条件は、試験4と同じである。試験5では、平均空気供給量(L/分/m)は、39~41L/分/mであった。
【0092】
(試験6)
試験6は、試験4のオンオフ条件を変更した場合であり、具体的には、ブロアのON状態(ON時間)を30分、及びOFF状態(OFF時間)を60分に設定した場合である。それ以外の条件は、試験4と同じである。試験6では、平均空気供給量(L/分/m)は、110L/分/mであった。
【0093】
(試験7)
試験7は、実施形態1と同様の設備を用いて一次醗酵を行った場合であり、2パターンのオンオフ条件に基づいて、ブロアを運転したものである。試験7は、試験開始から24時間の間、ON状態(ON時間)が30分、及びOFF状態(OFF時間)が10分のオンオフ条件1に基づいて、ブロアを運転し、24時間以降は、ON状態(ON時間)が5分、及びOFF状態(OFF時間)が20分のオンオフ条件2に基づいて、ブロアを運転した。試験7では、オンオフ条件1の場合の、平均空気供給量(L/分/m)は、245L/分/mであった。また、オンオフ条件2の場合の、平均空気供給量(L/分/m)は、62~67L/分/mであった。
【0094】
(試験8)
試験8は、実施形態1と同様の設備を用いて一次醗酵を行った場合であり、3パターンのオンオフ条件に基づいて、ブロアを運転したものである。試験8は、試験開始から24時間の間、ON状態(ON時間)が15分、及びOFF状態(OFF時間)が10分のオンオフ条件1に基づいて、ブロアを運転した。また、24時間~48時間の間は、ON状態(ON時間)が3分、及びOFF状態(OFF時間)が20分のオンオフ条件2に基づいて、ブロアを運転した。また、48時間以降については、ON状態(ON時間)が3分、及びOFF状態(OFF時間)が30分のオンオフ条件3に基づいて、ブロアを運転した。試験8では、オンオフ条件1の場合の、平均空気供給量(L/分/m)は、186L/分/mであり、オンオフ条件2の場合の、平均空気供給量(L/分/m)は、28L/分/mであり、オンオフ条件3の場合の、平均空気供給量(L/分/m)は、29~34L/分/mであった。
【0095】
(試験9)
試験9も、試験8と同様、実施形態1と同様の設備を用いつつ、3パターンのオンオフ条件に基づいて、ブロアを運転したものである。試験9は、試験開始から24時間の間、ON状態(ON時間)が15分、及びOFF状態(OFF時間)が10分のオンオフ条件1に基づいて、ブロアを運転した。また、24時間~48時間の間は、ON状態(ON時間)が2分、及びOFF状態(OFF時間)が20分のオンオフ条件2に基づいて、ブロアを運転した。また、48時間以降については、ON状態(ON時間)が2分、及びOFF状態(OFF時間)が30分のオンオフ条件3に基づいて、ブロアを運転した。試験9では、オンオフ条件1の場合の、平均空気供給量(L/分/m)は、245(L/分/m)であり、オンオフ条件2の場合の、平均空気供給量(L/分/m)は、28(L/分/m)であり、オンオフ条件3の場合の、平均空気供給量(L/分/m)は、29~39L/分/mであった。
【0096】
試験1~9の一次醗酵における有機性廃棄物の温度と時間との関係を示すグラフを、図7図15に示した。なお、各図には、有機性廃棄物中の酸素濃度と時間との関係を示すグラフも併せて記載した。各図の縦軸は、温度(℃)及び酸素濃度(%)を表し、横軸は時間(日)を表す。
【0097】
(試験結果)
図7は、試験1の結果を示すグラフである。図7に示されるように、試験1では、有機性廃棄物の温度が、試験開始から24時間後に70℃に到達した。なお、試験1における有機性廃棄物の最高温度は、71℃であった。ただし、試験1では、最高温度に到達した後、有機性廃棄物の温度は下降を続け、最終的な温度は、38.6℃となった。試験1は、一次醗酵を10日間行った。
【0098】
図8は、試験2の結果を示すグラフである。図8に示されるように、試験2では、有機性廃棄物の温度が、試験開始から略24時間後に70℃に到達した。なお、試験2における有機性廃棄物の最高温度は、72℃であった。24時間後から略48時間の間、70℃の温度で維持された。ただし、それ以降は、温度が下降する結果となった。最終的な温度は、56℃であった。試験2は、一次醗酵を10日間行った。
【0099】
図9は、試験3の結果を示すグラフである。図9に示されるように、試験3では、有機性廃棄物の温度は、試験開始から緩やかに上昇したものの、試験開始から10日経過しても、70℃には到達しなかった。なお、試験3における有機性廃棄物の最高温度は、50℃であった。また、試験終了時の温度は、65℃であった。試験3は、一次醗酵を10日間行った。
【0100】
図10は、試験4の結果を示すグラフである。図10に示されるように、試験4では、有機性廃棄物の温度が70℃に到達するまでに3日を要したが、それ以降は、温度が70~74℃の範囲で維持された。なお、試験4における有機性廃棄物の最高温度は、54℃であった。また、試験終了時の温度は、72℃であった。試験4は、一次醗酵を10日間行った。
【0101】
図11は、試験5の結果を示すグラフである。図11に示されるように、試験5では、有機性廃棄物の温度が、試験開始から3日後に50℃に到達し、それ以降は50℃前後の温度で推移した。なお、試験5における有機性廃棄物の最高温度は、44℃であった。また、試験終了時の温度は、48.8℃であった。試験5は、一次醗酵を10日間行った。
【0102】
図12は、試験6の結果を示すグラフである。図12に示されるように、試験6では、有機性廃棄物の温度が、試験開始から24時間後に66℃となったものの、それ以降は温度が下降する結果となった。試験6における有機性廃棄物の最高温度は、66℃であった。また、試験終了時の温度は、37.9℃であった。試験6は、一次醗酵を10日間行った。
【0103】
図13は、試験7の結果を示すグラフである。図13に示されるように、試験7では、試験開始から24時間で75℃まで上昇し、また試験開始から48時間の間、略75℃の温度で維持された。ただし、それ以降は、温度が下がり続ける結果となった。試験7における有機性廃棄物の最高温度は、75℃であった。また、試験終了時の温度は、42.3℃であった。試験7は、一次醗酵を12日間行った。
【0104】
図14は、試験8の結果を示すグラフである。図14に示されるように、試験8では、試験開始から24時間で有機性廃棄物の温度が76℃に到達した。また、24時間後から48時間の間は、79℃の温度を示し、更に、それ以降の7日間の間、75℃の温度で維持された。試験8における有機性廃棄物の最高温度は、76℃であった。試験8は、一次醗酵を12日間行った。試験終了時の温度は、60℃であった。
【0105】
図15は、試験9の結果を示すグラフである。図15に示されるように、試験9では、試験開始から24時間で有機性廃棄物の温度が78℃に到達した。また、24時間後から48時間の間は、79℃の温度を示し、更に、それ以降の3日間の間、70℃を維持した。なお、それ以降については、徐々に温度が下降した。試験9における有機性廃棄物の最高温度は、79℃であった。試験9は、一次醗酵を12日間行った。試験終了時の温度は、47.7℃であった。
【0106】
本発明者らは、このような一次醗酵試験(試験1~9)の結果等に基づいて、「有機性廃棄物の温度と有機性廃棄物への空気供給量との関係」を把握した。
【0107】
具体的には、一次醗酵の工程を、有機性廃棄物W内の温度を、所定の温度(例えば、70℃)に到達させるまでの工程(以下、第1工程)と、到達後の工程(以下、第2工程)とに分けた場合、到達させるまでの工程よりも、到達後の工程の方が、有機性廃棄物1mにおける単位時間当たりの平均空気供給量(L/分/m)を少なくすると、有機性廃棄物Wの温度を所定の温度範囲で維持できることが確認された。
【0108】
また、前記第1工程における前記平均空気供給量(L/分/m)は、81~250L/分/mであることが好ましく、前記第2工程における前記平均空気供給量(L/分/m)は、10~80L/分/mであることが好ましいことが確認された。
【0109】
また、前記第1工程における前記平均空気供給量(L/分/m)が上記範囲であると、試験開始時から有機性廃棄物Wの温度が、目標温度α(℃)(例えば、65≦α(℃)≦80)に、10時間以上30時間以下で、到達することが確認された。
【0110】
また、前記第1工程では、1回当たりの前記ON状態の時間が2分~30分であり、かつ1回当たりの前記OFF状態の時間が5分~60分であることが好ましく、前記第2工程では、1回当たりの前記ON状態の時間が30秒~15分であり、かつ1回当たりの前記OFF状態の時間が5分~2時間であることが好ましいことが確認された。
【0111】
また、前記第1工程は、試験開始から、10時間以上30時間以下に、有機性廃棄物Wの温度が、目標温度αに到達させることが好ましいことが確認された。
【0112】
また、前記第2工程は、少なくとも16時間以上144時間以下の間、行われることが好ましいことが確認された。
【0113】
<管理システム>
ここで、上記空気供給システム1に関連して使用される管理システム100について、図16を参照しつつ説明する。図16は、管理システム100のブロック図である。管理システム100は、上述した空気供給システム1により一次醗酵される有機性廃棄物Wの状態を、作業者が把握するためのシステムであり、管理システム100は、風速計101、第1温度測定手段102、第2温度測定手段103、NHセンサ(NH4濃度取得手段)104、Oセンサ(酸素濃度取得手段)105、管理装置200を備えている。
【0114】
風速計101は、空気供給システム1のブロア4aの風速(風量)を計測するものであり、空気供給システム1が備える風速計17と同様、公知のものからなる。第1温度測定手段102は、有機性廃棄物Wの内部の温度を測定するための手段であり、上述した温度測定手段16と同様のものが利用される。第2温度測定手段103は、気温(外気温)を測定するための手段であり、公知のものが利用される。NHセンサ(NH濃度取得手段)104は、有機性廃棄物Wから発生するアンモニアの濃度を検出する手段であり、Oセンサ(酸素濃度取得手段)105は、有機性廃棄物W中に存在する空気中の酸素濃度を測定する手段である。風速計101、第1温度測定手段102、第2温度測定手段103、NHセンサ(NH濃度取得手段)104、及びOセンサ(酸素濃度取得手段)105の各出力は、管理装置200に対して、公知の無線通信方式又は有線通信方式により、供給される。
【0115】
管理装置200は、主として、制御部201、通信部202、表示部203、記憶部204を備えている。制御部201は、CPU、RAM等を備えて構成される。記憶部204は、制御部201が適宜、実行するプログラムや、各種処理に必要なデータ、第1温度測定手段102等からの出力(測定結果)等を記憶する。通信部202は、通信インターフェースであり、他の装置に情報を送信する機能、及び他の装置から情報を受信する機能を備えている。表示部203は、液晶パネル等により構成される。表示部203は、制御部201からの指示に従って、種々の画面を表示し、作業者に対して種々の情報(有機性廃棄物の温度情報等)を提供する。なお、表示部203としては、入力部としての機能も兼ね備えたタッチパネル等により構成されてもよい。このような管理装置200は、風速計101により取得されたブロアの風量の情報、第1温度測定手段102により取得された有機性廃棄物Wの内部の温度情報、第2温度測定手段103により取得された気温(外気温)の情報、NHセンサ104により取得されたアンモニア濃度の情報、Oセンサ105により取得された酸素濃度の情報等の各種情報を、記憶部204に記憶すると共に、必要に応じて表示部203に表示する。
【0116】
また、管理装置200は、ネットワーク300を介して、遠隔地にある端末(例えば、タブレット型携帯端末、パソコン等)400に、各種情報を供給することができる。作業者は、作業端末400から、管理装置200に対して、各種情報を取得するための指示を行うと、管理装置200の制御部201がその指示を受け付け、作業端末400に対して、各種情報を送信する。
【0117】
以上のような管理システム100を、空気供給システム1と共に利用してもよい。
【0118】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0119】
(1)上記実施形態1の空気供給システムは、1つの一次発酵槽における有機性廃棄物に空気を間欠的に供給するものであったが、本発明はこれに限られず、例えば、複数(2つ以上)の一次発酵槽を用意し、各一次発酵槽にそれぞれ空気供給手段を設けて、複数の一次醗酵槽における有機性廃棄物に、それぞれ空気を間欠的に供給できるように、空気供給システムを構成してもよい。
【0120】
(2)上記実施形態1では、空気供給システムとは別に、管理システムが用意されていたが、本発明はこれに限られず、他の実施形態においては、管理システムの機能が、空気供給システムに一体化されていてもよい。
【0121】
(3)推定時間tを設定する場合、有機性廃棄物の一次醗酵を行う季節や地域等の環境要因(例えば、外気温、湿度、気象条件)等が考慮されてもよい。例えば、外気温が低い冬期に一次醗酵を行う場合は、外気温が高い夏期に一次醗酵を行う場合と比べて、目標温度α以上に到達させるまでの時間が長くなるため、推定時間tを長く設定してもよい。
【符号の説明】
【0122】
1…空気供給システム、2…一次醗酵槽、3…制御盤、4…空気供給手段、4a…ブロア、4b…送気管、5…制御部、6…記憶部、7…計時部、8…通信部、9…推定時間入力部、10…第1条件入力部、11…第2条件入力部、12…表示部、13…スイッチ、14…電線、15…電源、16…温度測定手段、17…風速計、t11…第1条件(昇温工程)のON時間、t12…第1条件(昇温工程)のOFF時間、t21…第2条件(維持工程)のON時間、t22…第2条件(維持工程)のOFF時間、W…有機性廃棄物
図1
図2
図3
図4
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図15
図16