IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライオン株式会社の特許一覧

特許7313243靴用粉末消臭剤組成物、容器入り粉末消臭剤組成物、及び消臭方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】靴用粉末消臭剤組成物、容器入り粉末消臭剤組成物、及び消臭方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/00 20060101AFI20230714BHJP
   A43B 7/00 20060101ALN20230714BHJP
【FI】
A61L9/00 Z
A43B7/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019169445
(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公開番号】P2021045333
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】森田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】坪井 靖之
(72)【発明者】
【氏名】井上 亮
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-215201(JP,A)
【文献】特開2018-175101(JP,A)
【文献】特開2007-217201(JP,A)
【文献】特開2004-147730(JP,A)
【文献】特開2004-067623(JP,A)
【文献】特開平03-193137(JP,A)
【文献】特開平02-224761(JP,A)
【文献】特開2010-254621(JP,A)
【文献】特開2009-280533(JP,A)
【文献】特開2020-180086(JP,A)
【文献】米国特許第07790202(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00 - 9/22
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
A43B 1/00 - 23/30
A43C 1/00 - 19/00
A43D 1/00 - 999/00
B29D 35/00 - 35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分及び(B)成分、並びに下記(C1)成分及び(C2)成分から選択される(C)成分を含む靴用粉末消臭剤組成物であって、
粒径が50μm以下の粒子の質量が、前記靴用粉末消臭剤組成物の総質量に対して30質量%以上であり、前記(C)成分の含有量が、前記靴用粉末消臭剤組成物の総質量に対して50~90質量%である、靴の中に散布して使用することを特徴とする靴用粉末消臭剤組成物。
(A)成分:消臭成分
(B)成分:皮膚に接触したときに冷感又は温感を付与する物質
(C1)成分:アルミニウム末、カーボンブラック、カルミン、グンジョウ、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、鉛白、リトポン、二酸化チタン、硫酸バリウム、ポリエチレン、及びセラミックパウダーからなる群から選択される1以上の化粧品顔料
(C2)成分:タルク、カオリン、雲母、セリサイト、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、バーミキュライト、シリカ((A)成分に該当する多孔質シリカを除く)、焼セッコウ、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、酸化鉄、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、及び水酸化クロムからなる群から選択される1以上の無機顔料
【請求項2】
前記(C)成分がタルクである、請求項1に記載の靴用粉末消臭剤組成物。
【請求項3】
粒径が50μm以下の粒子の質量が、前記靴用粉末消臭剤組成物の総質量に対して30~90質量%である、請求項1又は2に記載の靴用粉末消臭剤組成物。
【請求項4】
前記(C)成分からなる粒子又は前記(C)成分にその他の成分が付着した粒子の体積平均粒子径が、10~50μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の靴用粉末消臭剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の靴用粉末消臭剤組成物と、前記靴用粉末消臭剤組成物を収容した容器とを有する、容器入り粉末消臭剤組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の靴用粉末消臭剤組成物を、靴内に散布する、消臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴用粉末消臭剤組成物、容器入り粉末消臭剤組成物、及び消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臭気に対する意識の高まりから、消臭を目的としたケア用品が使用されている。ケア用品としては、例えば、液体の消臭剤組成物をトリガースプレー容器又はエアゾール容器に封入した製品が汎用されている。
しかし、液体の消臭剤組成物は、靴や靴下の臭気に対する消臭効果が低かった。
こうした問題に対して、靴等の消臭を目的とした粉末消臭剤組成物が提案されている(特許文献1~4)。
このうち特許文献4では、消臭成分と共にメントールを配合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-276560号公報
【文献】特開昭62-101201号公報
【文献】特開平3-57455号公報
【文献】特開2018-175101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献4において、メントールは、その昇華作用により消臭成分の拡散を助けると共に、昇華する際に足に清涼感を与え、消臭成分等の存在を体感させる効果を奏する。
しかしメントールのような冷感付与物質は、皮膚に直接触れた際には充分な冷感付与効果を奏するが、靴下をはいている場合は、靴下ごしに冷感を感じられない場合がある。また、冷感を感じるまでに長時間を要する場合がある。
そこで、本発明は、冷感又は温感を付与する物質を含み、使用者が靴下をはいたときであっても、冷感や温感を迅速に感じさせることが可能な、靴用粉末消臭剤組成物、容器入り粉末消臭剤組成物、及び消臭方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]下記(A)成分及び(B)成分を含む靴用粉末消臭剤組成物であって、
粒径が50μm以下の粒子の質量が、前記靴用粉末消臭剤組成物の総質量に対して30質量%以上であることを特徴とする靴用粉末消臭剤組成物。
(A)成分:消臭成分
(B)成分:皮膚に接触したときに冷感又は温感を付与する物質
[2]前記(B)成分からなる粒子又は前記(B)成分を含む粒子の体積平均粒子径が50μm以下である、[1]に記載の靴用粉末消臭剤組成物。
[3]前記(B)成分が、メントール、メントン、カンファー、プレゴール、イソプレゴール、シネオール、ハッカオイル、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル、ユーカリプタスオイル、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、N-アルキル-p-メンタン-3-カルボキサミド、3-l-メントキシ-2-メチルプロパン-1,2-ジオール、p-メンタン-3,8-ジオール、2-l-メントキシエタン-1-オール、3-l-メントキシプロパン-1-オール、4-l-メントキシブタン-1-オール(3-ヒドロキシブタン酸メンチル)、乳酸メンチル、メントールグリセリンケタール、N-メチル-2,2-イソプロピルメチル-3-メチルブタンアミド、グリオキシル酸メンチル、及びこれらの化合物を含有する植物抽出物からなる群から選択される1以上の冷感付与物質である、[1]又は[2]に記載の靴用粉末消臭剤組成物。
[4]前記(B)成分が、カプサイシン、バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ギンゲロール、バニリルブチルエーテル、4-(l-メントキシメチル)-2-(3'-メトキシ-4'-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキソラン、トウガラシ油、トウガラシオレオレジン、ジンジャーオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキス、サンショール-I、サンショール-II、サンショウアミド、黒胡椒エキス、カビシン、ピペリン、及びスピラントールからなる群から選択される1以上の温感付与物質である、[1]又は[2]に記載の靴用粉末消臭剤組成物。
[5][1]~[4]のいずれか一項に記載の靴用粉末消臭剤組成物と、前記靴用粉末消臭剤組成物を収容した容器とを有する、容器入り粉末消臭剤組成物。
[6][1]~[4]のいずれか一項に記載の靴用粉末消臭剤組成物を、靴内に散布する、消臭方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の靴用粉末消臭剤組成物、容器入り粉末消臭剤組成物、及び消臭方法は、使用者が靴下をはいたときであっても、冷感や温感を迅速に感じさせることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
≪靴用粉末消臭剤組成物≫
本発明の靴用粉末消臭剤組成物は、下記(A)成分及び(B)成分を含み、粒径が50μm以下の粒子の質量が、靴用粉末消臭剤組成物の総質量に対して30質量%以上である。
(A)成分:消臭成分
(B)成分:皮膚に接触したときに冷感又は温感を付与する物質
本発明の靴用粉末消臭剤組成物は、前記(A)成分及び(B)成分に加えて、バランス剤((C)成分)、香料、その他の任意成分を含んでいてもよい。
【0008】
<粒度分布>
本発明において、粒径が50μm以下の粒子の質量の靴用粉末消臭剤組成物の総質量に対する割合は、JIS K3362:2008に準拠して、ふるい分け法によって目開き50μmのふるいを用いて測定できる。
体積平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(BECKMAN COULTER社製 LS 13 320)を用いて測定したD50である。
【0009】
本発明の靴用粉末消臭剤組成物に含まれる(A)成分、(B)成分及びその他の任意成分は、それぞれ単独で粒子を形成していてもよいし、ある粒子に含まれていてもよい。
ある成分がある粒子に含まれる態様としては、他の成分の粒子の表面に付着した態様、他の成分の粒子の内部に含まれる態様が挙げられる。この態様の具体例としては、当該成分が液体で、他成分の粒子の表面や内部に付着している態様が挙げられる。この場合の粒径は、液体成分が付着した粒子の径である。
【0010】
ある成分がある粒子に含まれる態様としては、当該成分の粒子と他の成分の粒子が造粒体を形成している態様も挙げられる。この場合の粒径は、造粒体の粒径である。
また、液体成分が付着した粒子が他の成分の粒子と共に造粒体を形成している態様が挙げられる。この場合の粒径も、造粒体の粒径である。
【0011】
粒径が50μm以下の粒子の質量の靴用粉末消臭剤組成物の総質量に対する割合は30質量%以上であり、30質量%以上100質量%未満であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましく、70~90質量%であることがさらに好ましい。
【0012】
本発明の靴用粉末消臭剤組成物は、前記割合が30質量%以上であることにより、使用者が靴下をはいたときであっても、冷感や温感を迅速に感じさせることが可能である。
これは、小さい粒子が多く存在することにより、(B)成分を含む組成物が、迅速に靴下を透過し、皮膚に到達できるからであると考えられる。
また、本発明の靴用粉末消臭剤組成物は、前記割合が好ましい上限値以下であることにより、靴全体に行き渡る良好な流動性を確保しやすい。そのため、冷感や温感を均一に感じやすくなる。
【0013】
<(A)成分>
(A)成分は消臭成分、すなわち、本発明の靴用粉末消臭剤組成物中で消臭効果を発揮する成分である。
(A)成分としては、(A1)多孔質基剤、(A2)包接基剤、(A3)アルカリ基剤、(A4)抗菌剤が挙げられる。
(A)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0014】
(A1)成分である多孔質基剤は、無機鉱物であり、構造内に悪臭物質を吸着可能な空孔を有する多孔質の化合物である。
(A1)成分としては、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト焼成物、活性炭、ゼオライト、多孔質シリカ等、及び、これらに金属を担持したものが挙げられる。
【0015】
ハイドロタルサイトとは、例えば下記式(1)で表される層状複水酸化物である。
[M2+ 1-x3+ (OH)x+[(An- x/n)・mHO]x- ・・・(1)
【0016】
式(1)中、M2+はMg2+、Ca2+、Zn2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Fe2+、Cr2+、Cd2+、Mn2+等の2価金属イオンであり、M3+はAl3+、Fe3+、Ni3+、Co3+、Mn3+、Cr3+等の3価金属イオンであり、An-はOH、Cl、CO 2-、SO 2-等のn価のアニオンである。xは、0より大きい数であり、0.10~0.50が好ましく、0.20~0.33がより好ましい。mは、0又は0より大きい数であり、0~10が好ましく、0~4がより好ましい。
【0017】
ハイドロタルサイト焼成物は、例えば下記一般式(2)で表すことができる複酸化物である。
2+ 1-x3+xO1+x/2 ・・・(2)
【0018】
式(2)中、M2+、xは上記式(1)と同じである。
【0019】
また、ハイドロタルサイトとしては、MgZnAl(OH)12CO・wHO、MgZnAl(OH)12CO等の亜鉛変性ハイドロタルサイト系化合物を用いることもできる(wは実数である)。
ハイドロタルサイト焼成物は酸性基及び塩基性基を有する金属塩に担持して金属複合体を形成していてもよい。
ハイドロタルサイト及びその焼成物は、天然ハイドロタルサイトでもよいし、合成ハイドロタルサイトでもよい。
ハイドロタルサイト及びその焼成物におけるMgO/Alで表されるモル比は、2.5~6が好ましく、4~6がより好ましい。
【0020】
(A2)成分である包接基剤は、悪臭物質を吸着するサイト、乃至は包接可能な部位を持つ有機化合物である。
(A2)成分としては、シクロデキストリン、高度分岐環状デキストリン等が挙げられる。
高度分岐環状デキストリンとしては、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50~10000の範囲にあるグルカンが挙げられる。内分岐環状構造部分は、例えばα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状のグルカン鎖であり、外分岐構造部分は例えば内分岐環状構造部分に結合した非環状のグルカン鎖である。
高度分岐環状デキストリンの市販品としては、クラスターデキストリン(グリコ栄養食品株式会社製)等が挙げられる。
【0021】
(A3)成分であるアルカリ基剤は、20℃の水に対する溶解度が1g/Lを超え、その飽和水溶液のpHが7を超え12以下である無機粉体である。
アルカリ基剤は、その飽和水溶液のpHが7.5~11であることが好ましい。飽和水溶液のpHが7を超えるアルカリ性であれば、酸性の悪臭物質を中和して消臭する作用を奏する。pHは、測定対象を25℃とし、pHメーター(製品名:HM-30G、東亜ディーケーケー株式会社製)により測定される値である。
(A3)成分としては、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。
【0022】
(A4)成分である抗菌剤は、抗菌作用を有する固体又は液体の化合物である。
(A4)成分としては、銀担持ゼオライト、四級アンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド)、4,4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル(慣用名:ダイクロサン)、5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール(慣用名:トリクロサン)、ビス-(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩、8-オキシキノリン、ポリリジン、塩酸クロロヘキシジン、1,3,5-トリアジン-1,3,5-トリエタノール、1,3,5-トリメチルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0023】
(A)成分は、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト焼成物、活性炭、ゼオライト、多孔質シリカ、炭酸水素ナトリウム、及び銀担持ゼオライトから選択される1以上であることが好ましい。
【0024】
(A)成分は、液体でも、粒子であってもよい。固体状の(A)成分を適当な溶媒に溶解した溶液でもよい。
(A)成分の一部又は全部が液体又は溶液である場合、液体又は溶液の(A)成分を他の粒子、好ましくは(B)成分やバランス剤等の粒子に噴霧することで、(A)成分を粉末消臭剤組成物に配合できる。(A)成分の総てが液体又は溶液の場合、(B)成分が粉体であるか、(C)成分のバランス剤を配合することが必要である。
【0025】
(A)成分からなる粒子又は(A)成分を含む粒子の体積平均粒子径は、0.1~250μmであることが好ましく、1~150μmであることがより好ましく、3~100μmであることがさらに好ましい。
(A)成分からなる粒子又は(A)成分を含む粒子の体積平均粒子径が好ましい上限値以下であれば、消臭効果を発揮しやすい。
(A)成分からなる粒子又は(A)成分を含む粒子の体積平均粒子径が好ましい下限値以上であれば、使用時の粉の舞い上がりを抑制できる。
【0026】
靴用粉末消臭剤組成物中の(A)成分の含有量は靴用粉末消臭剤組成物の総質量に対して、0.001~90質量%が好ましく、0.01~50質量%がより好ましく、0.01~30質量%がさらに好ましい。
上記下限値以上であれば、靴用粉末消臭剤組成物の消臭効果をさらに高められ、上記上限値以下であれば、吸湿を抑え、固化を抑制しやすい。
【0027】
<(B)成分>
(B)成分は皮膚に接触したときに冷感又は温感を付与する物質である。
(B)成分としては、皮膚に接触したときに冷感を付与する(B1)冷感付与物質、皮膚に接触したときに温感を付与する(B2)温感付与物質が挙げられる。
【0028】
(B1)成分としては、メントール、メントン、カンファー、プレゴール、イソプレゴール、シネオール、ハッカオイル、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル、ユーカリプタスオイル、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、N-アルキル-p-メンタン-3-カルボキサミド、3-l-メントキシ-2-メチルプロパン-1,2-ジオール、p-メンタン-3,8-ジオール、2-l-メントキシエタン-1-オール、3-l-メントキシプロパン-1-オール、4-l-メントキシブタン-1-オール(3-ヒドロキシブタン酸メンチル)、乳酸メンチル、メントールグリセリンケタール、N-メチル-2,2-イソプロピルメチル-3-メチルブタンアミド、グリオキシル酸メンチル、及びこれらの化合物を含有する植物抽出物からなる群から選択される1以上の冷感付与物質が挙げられる。
【0029】
中でも、メントール、メントン、カンファー、乳酸メンチル、グリオキシル酸メンチルが好ましく、メントール、メントン、カンファー、乳酸メンチルがより好ましい。
(B1)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0030】
(B2)成分としては、カプサイシン、バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ギンゲロール、バニリルブチルエーテル、4-(l-メントキシメチル)-2-(3'-メトキシ-4'-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキソラン、トウガラシ油、トウガラシオレオレジン、ジンジャーオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキス、サンショール-I、サンショール-II、サンショウアミド、黒胡椒エキス、カビシン、ピペリン、及びスピラントールからなる群から選択される1以上の温感付与物質が挙げられる。
【0031】
中でも、カプサイシン、バニリルエチルエーテル、トウガラシ油が好ましく、カプサイシン、トウガラシ油がより好ましい。
(B2)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0032】
(B)成分は、液体でも、粒子であってもよい。固体状の(B)成分を適当な溶媒に溶解した溶液でもよい。
(B)成分の一部又は全部が液体又は溶液である場合、液体又は溶液の(B)成分を他の粒子、好ましくは(A)成分やバランス剤等の粒子に噴霧することで、(B)成分を粉末消臭剤組成物に配合できる。(B)成分の総てが液体又は溶液の場合、(A)成分が粉体であるか、(C)成分のバランス剤を配合することが必要である。
【0033】
(B)成分からなる粒子又は(B)成分を含む粒子の体積平均粒子径は、250μm以下であることが好ましく、1~150μmであることがより好ましく、1~50μmであることがさらに好ましい。
(B)成分からなる粒子又は(B)成分を含む粒子の体積平均粒子径が好ましい上限値以下であれば、(B)成分が皮膚により迅速に到達するので、使用者が靴下をはいたときであっても、冷感や温感をより迅速に感じさせることができる。
(B)成分からなる粒子又は(B)成分を含む粒子の体積平均粒子径が好ましい下限値以上であれば、保存時の固化を抑制できる。
【0034】
靴用粉末消臭剤組成物中の(B)成分の含有量は靴用粉末消臭剤組成物の総質量に対して、0.001~20質量%が好ましく、0.001~10質量%がより好ましく、0.01~10質量%がさらに好ましい。
上記下限値以上であれば、冷感又は温感の付与効果をさらに高められ、上記上限値以下であれば、吸湿を抑え、固化を抑制しやすい。
【0035】
<(C)成分>
(C)成分であるバランス剤は、(A)成分、(B)成分に該当しない無機顔料である。
(C)成分としては、(C1)に規定される化粧品顔料、(C2)その他の無機顔料(但し(A)成分、(B)成分、(C1)成分を除く)が挙げられる。
(C)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0036】
(C1)成分としては、アルミニウム末、カーボンブラック、カルミン、グンジョウ、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、鉛白、リトポン、二酸化チタン、硫酸バリウム、ポリエチレン、及びセラミックパウダーからなる群から選択される1以上の化粧品顔料が挙げられる。
【0037】
(C2)成分としては、タルク、カオリン、雲母、セリサイト、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、バーミキュライト、シリカ((A1)成分の多孔質シリカを除く)、焼セッコウ、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、酸化鉄、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、及び水酸化クロムからなる群から選択される1以上の無機顔料が挙げられる。
【0038】
中でも、タルク、炭酸カルシウム、シリカが好ましく、タルクがより好ましい。
【0039】
(C)成分からなる粒子又は(C)成分にその他の成分が付着した粒子の体積平均粒子径は、0.1~500μmであることが好ましく、1~250μmであることがより好ましく、10~150μmであることがさらに好ましく、10~75μmであることがとりわけ好ましく、10~50μmであることが特に好ましい。
【0040】
上記下限値以上であれば、吸湿を抑え、固化を抑制しやすく、流動性を高めやすい。上記上限値以下であれば、靴用粉末消臭剤組成物の総質量に対する粒径が50μm以下の粒子の質量の割合を30質量%以上としやすい。
【0041】
靴用粉末消臭剤組成物中の(C)成分の含有量は靴用粉末消臭剤組成物の総質量に対して、30~95質量%が好ましく、50~90質量%がより好ましい。
上記下限値以上であれば、吸湿を抑え、固化を抑制しやすく、流動性を高めやすい。上記上限値以下であれば、(A)成分と(B)成分とを充分な量配合しやすい。
【0042】
<その他の任意成分>
靴用粉末消臭剤組成物は、さらに、バランス剤以外の任意成分を含んでいてもよい。
その他の任意成分としては、香料((B)成分を除く。)、吸熱基剤、高分子ポリマー、染料が挙げられる。
【0043】
靴用粉末消臭剤組成物において、香料は、他の成分に付着した液体であってもよいし、粉末香料として存在していてもよい。
香料が粉末香料の場合、靴用粉末消臭剤組成物は、任意成分として香料を粉末状とするための賦形剤を含んでいてもよい。香料の賦形剤としては、デキストリン、トレハロース、シクロデキストリン、オクテニルコハク酸でんぷんナトリウム、でんぷん、でんぷん誘導体等が挙げられる。
【0044】
香料の組成は、所望する香気を勘案して適宜決定される。
香料が液体香料の場合、靴用粉末消臭剤組成物の総質量に対する液体香料の含有量は、0.01~5質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましい。
香料が粉末香料の場合、粉末消臭剤組成物の総質量に対する粉末香料の含有量(賦形剤を除く)は、0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、1~5質量%がさらに好ましい。
【0045】
吸熱基剤は、水と反応して吸熱反応を起こす粉体である。吸熱基剤としては糖類、アミノ酸、尿素、プラスチックビーズ、プラスチックパウダー、コーンスターチを初めとする食用粉末等が挙げられる。
【0046】
≪靴用粉末消臭剤組成物の製造方法≫
各成分がいずれも粒子である場合、靴用粉末消臭剤組成物は、(A)成分、(B)成分及び必要に応じて任意成分を粉体混合により混合する方法により製造できる。
また、(A)成分、(B)成分及び必要に応じて任意成分の一部又は全部を造粒してもよい。造粒方法としては、特に限定されず、従来公知の流動層造粒法、乾式造粒法、湿式造粒法等が挙げられる。
また、一部の成分が液体又は溶液状である場合、液体又は溶液状の成分は、粉体混合前、若しくは粉体混合後、又は造粒後の他の成分に噴霧することにより配合できる。
なお、(B)成分の一部又は全部は、予め香料組成物に配合しておいてもよい。
【0047】
≪容器入り粉末消臭剤組成物≫
本発明の靴用粉末消臭剤組成物は、容器に収容されて、容器入り粉末消臭剤組成物(容器入り製品)となる。
容器としては、例えば、スタンディングパウチ、注出孔を有するボトル、広口瓶、缶等、粉体を収容する公知の容器が挙げられる。中でも、注出孔を有するボトルが好ましい。
容器は、容器本体と蓋体に加えて、注出孔を適切な大きさに調整する中栓を有することが好ましい。
【0048】
≪消臭方法≫
本発明の消臭方法は、本発明の靴用粉末消臭剤組成物を、靴内に散布する方法である。
靴内への散布は、容器入り粉末消臭剤組成物の容器を振り動かして靴内に靴用粉末消臭剤組成物を振り出すことや、容器から靴用粉末消臭剤組成物をスプーンに取り出し、スプーンで靴内に散布することなどにより行うことができる。
靴内に散布した後には、靴に振動を与えて、粉末消臭剤組成物を靴の内部全体に広げることが好ましい。
【0049】
靴用粉末消臭剤組成物の散布量は、片方の靴1つ当たり、0.1~2.0gが好ましく、0.3~1.5gがより好ましい。
使用量が上記下限値以上であることにより、充分な消臭効果を得やすい。
使用量が上記上限値以下であることにより、靴に過剰量が残留しにくく、良好な履き心地を得やすい。
【実施例
【0050】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0051】
≪使用成分≫
<(A1)成分>
・ハイドロタルサイト焼成物(酸化マグネシウムと酸化アルミニウム質量比の固溶体、KW-2000、協和化学工業株式会社、化学組成:Mg0.7Al0.31.15、平均粒子径:40μm)。
・Aゼオライト(タイシリケート、平均粒子径:5μm)。
【0052】
<(A2)成分>
・クラスターデキストリン、高度分岐環状デキストリン(グリコ栄養食品株式会社製、平均粒子径:100μm)。
<(A3)成分>
・炭酸水素ナトリウム(東ソー株式会社、平均粒子径:250μm)。
<(A4)成分>
・銀担持ゼオライト(ゼオミックAJ10N、シナネンゼオミック株式会社製、平均粒子径:4μm)。
【0053】
<(B)成分>
・l-メントール(クラリアントジャパン、平均粒子径:30μm(粉砕後))。
<(C)成分>
・タルク(MS-KY、日本タルク株式会社製、平均粒子径25μm)。
・クラウンタルクRD(松村産業株式会社、平均粒子径50μm)。
<香料>
・粉末香料(シトラスパウダーLA-7810、長谷川香料株式会社、平均粒子径40μm)。
【0054】
≪測定方法、評価方法≫
<50μm以下の粒子量>
測定対象の靴用粉末消臭剤組成物の100gを直径20cmのJISZ8801の篩(目開き50μm)上にのせ、JIS K3362:2008に準拠して、ふるい分け、前記篩を通過した靴用粉末消臭剤組成物の質量X(g)を測定し、下記式(3)により求めた。
Y(質量%)=X/100×100 ・・・(3)
【0055】
<体積平均粒子径>
レーザ回折式粒度分布測定装置(BECKMAN COULTER社製 LS 13 320)を用いて測定されるD50を体積平均粒子径とした。
【0056】
<消臭効果>
イソ吉草酸(疑似悪臭)0.01質量%エタノール溶液500μLを6cm×6cmの綿布に滴下し、一晩ドラフト内で放置したものを消臭対象品とした。各例の粉末消臭剤組成物0.5gを消臭対象品に散布し、直後の臭気強度の官能評価を行った。官能評価は、5名のパネラが下記の判断基準に基づき行い、その判断結果の平均値を求めた。
【0057】
(判断基準)
0点:消臭効果が非常に高い。悪臭を全く感じない。
1点:消臭効果が高い。悪臭をほとんど感じない。
2点:消臭効果がやや高い。悪臭をやや感じる。
3点:消臭効果が低い。悪臭がほとんど低減しない。
4点:消臭効果が全くない。悪臭が低減しない。
【0058】
<冷感効果>
各例の粉末消臭剤組成物1gを靴(26cm、右足)のかかと部分に乗せた。靴のつま先部分を下方45°に向け、靴のかかと部分を3回叩くことで全体に広げた。
その後、2名のバネラが、各々靴下(ユニクロ製スーピマコットンカノコソックス)を着用した右足で靴を履き、冷感を感じるまでの時間を計測した。その時間の平均値(冷感効果発揮時間)に基づき、以下の判断基準で評価した。
【0059】
(判断基準)
◎10分以内に冷感を感じる。
〇30分以内に冷感を感じる。
△1時間以内に冷感を感じる。
×冷感を感じるまで1時間以上かかるか、または冷感を感じない。
【0060】
≪各例の組成物の調製≫
表1の配合で各成分を混合し、各例の靴用粉末消臭剤組成物を調製した。なお、混合は、密閉したビニール袋内で30回ほど振ることにより行った。
各例の50μm以下の粒子量、消臭効果、冷感効果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1の結果に示されるように、実施例の靴用粉末消臭剤組成物は、消臭効果、冷感効果のいずれにおいても良好な評価が得られた。
これに対して、50μm以下の粒子量が少ない比較例1、2は、冷感効果に劣っていた。また、(A)成分を配合していない比較例3は、消臭効果に劣っていた。
また、実施例1、7と比較例1との対比から、50μm以下の粒子量を充分な量とすることにより、冷感効果だけでなく消臭効果も向上することがわかった。