IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本液炭株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】キセノンウルトラファインバブル発生剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/00 20060101AFI20230718BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
A61K33/00
A61K49/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019061576
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020158461
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591107034
【氏名又は名称】日本液炭株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】村上 裕之
(72)【発明者】
【氏名】杉原 圭彦
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-501977(JP,A)
【文献】特開2003-267711(JP,A)
【文献】特開2007-283187(JP,A)
【文献】特開2007-289256(JP,A)
【文献】日本エネルギー学会大会講演要旨集,2016年,No. 2-4-1,pp.44-45
【文献】Fluid Phase Equilibria,2013年,Vol.358,pp.114-120
【文献】日本雪氷学会誌 雪氷,2009年,Vol.71, No.5,pp.353-360
【文献】The Journal of Physical Chemistry C,2010年,Vol.114,pp.5555-5564
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 33/00-33/44
A61K 49/00-49/22
A61P 23/00
A61P 39/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キセノン含有率が3重量%以上のキセノンハイドレートを融解させる工程を含む、キセノンウルトラファインバブル含有液体組成物の製造方法であって、
前記キセノンハイドレートが、以下の測定法X1で測定した場合のキセノンウルトラファインバブルの濃度が1億個/mL以上となるように、キセノンウルトラファインバブルを水の中に発生させることができ、かつ、
レーザー回折・散乱法又はナノトラッキング法で測定した場合の、前記キセノンウルトラファインバブル含有液体組成物のキセノンウルトラファインバブルの濃度が、1億個/mL以上であり、かつ、
前記キセノンウルトラファインバブル含有液体組成物が造影用である、前記製造方法。
(測定法X1)
水に、キセノン含有率が3重量%以上であるキセノンハイドレートを300mg/mL添加して調製した溶液中のキセノンウルトラファインバブルの濃度(個/mL)を、レーザー回折・散乱法又はナノトラッキング法で測定する;
【請求項2】
キセノン含有率が3重量%以上のキセノンハイドレートを融解させる工程が、キセノン含有率が3重量%以上のキセノンハイドレートを他の液体に接触させることによって融解させる工程、又は、キセノン含有率が3重量%以上のキセノンハイドレートを他の液体に接触させずに融解させる工程である、請求項に記載のキセノンウルトラファインバブル含有液体組成物の製造方法。
【請求項3】
レーザー回折・散乱法又はナノトラッキング法で測定した場合のキセノンウルトラファインバブルの濃度が1億個/mL以上である、キセノンウルトラファインバブルを含有する、造影用の液体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中にキセノンウルトラファインバブル(Xenon Ultra Fine Bubble)(以下、「キセノンUFB」とも表示する。)を発生させるためのキセノンUFB発生剤であって、キセノン(Xe)含有率が3重量%以上の氷を含有することを特徴とする、前記キセノンUFB発生剤や、該発生剤を用いたキセノンUFB含有液体組成物の製造方法や、該キセノンUFB含有液体組成物などに関する。
【背景技術】
【0002】
常圧下の水などの溶媒中での直径が1000nm以下の微細気泡は、「ウルトラファインバブル」とも称される。かかるウルトラファインバブルは、直径が1mm以上である通常の気泡と比較して、(1)気泡界面表面積が著しく大きいこと、(2)気泡泡内圧力が大きいこと、(3)気体溶解効率が高いこと、(4)気泡上昇速度が遅いこと、などの優れた特質を有することから、例えば半導体の洗浄処理、水浄化処理や殺菌処理、牡蠣や貝の養殖等で有用であると考えられている。このようなウルトラファインバブルの生成方法としては、これまでに種々の方法が提案されていると共に実施もされている(特許文献1、2、3)。しかし、これらの生成方法は、ウルトラファインバブル発生装置が必須であるため、ウルトラファインバブルの使用環境が制限され、消費者が手軽に取り扱えない等の問題を有していた。
【0003】
ところで、キセノンは、管球やストロボ封入用のガスとして、医療用途では、X線検査用の造影剤(特許文献4)や、麻酔剤(特許文献5)などとして利用されている。また、キセノンは、臓器や細胞等の生体材料に対して保存作用を有すること(特許文献6)や、脳保護作用を有すること(特許文献7)も知られている。キセノンを造影剤や麻酔剤として用いる場合、キセノンを吸入投与する方法のほか、静脈内投与する方法(例えば点滴)などが用いられている。例えば、特許文献4には、内部にキセノンの気体を含有し、金属酸化物微粒子を内包乃至吸着させたリポソームを含む注射剤を造影剤として用いることが記載されている。
【0004】
キセノン含有率の高い氷の一種として、キセノンハイドレート(すなわち、キセノンガスハイドレート)という物質が知られている。キセノンハイドレートとは、水分子の結晶体の空寸にキセノン分子を閉じ込めた包接化合物をいう。結晶体を形成する水分子は「ホスト分子」、水分子の結晶体の空寸に閉じ込められている分子は「ゲスト分子」または「ゲスト物質」と呼ばれる。キセノンハイドレートは、融解するとキセノンと水に分解するため、融解時にキセノン(キセノンガス)を発生させる。キセノンハイドレートのキセノン含有率は、キセノンハイドレートの製法にもよるが、約3~53.5重量%程度とすることができ、キセノン溶解水(20℃)のキセノン含有率(約0.6重量%程度)と比較して顕著に高い。
【0005】
キセノンハイドレート等の希ガスハイドレート自体は公知である。希ガスハイドレートの用途としては、複数種の希ガスを含んだ混合ガスと水とを、低温かつ高圧力下で接触させて希ガスハイドレートを作製することで、前述の混合ガスから希ガスを分離することが知られている(特許文献8)。
【0006】
メタンハイドレートなどのガスハイドレートを水に添加して融解させると、ガスハイドレートからゲスト分子の気泡が発生することは知られていたが、キセノンハイドレートを水に添加して融解させると、キセノンハイドレートからキセノンウルトラファインバブルが高濃度で発生することは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-149209号公報
【文献】特開2004-330050号公報
【文献】特開2007-275893号公報
【文献】特開2011-057592号公報
【文献】特開2001-252358号公報
【文献】特開2015-174823号公報
【文献】特表2005-533062号公報
【文献】特開2000-107549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ウルトラファインバブル発生装置を必要とせずに、手軽にキセノンウルトラファインバブルを液体中に発生させることができるキセノンウルトラファインバブル発生剤や、キセノンウルトラファインバブル含有液体組成物の製造方法や、かかる製造方法により製造されるキセノンウルトラファインバブル含有液体組成物等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討する中で、キセノン含有率が3重量%以上の氷(好ましくはキセノンハイドレート)を融解させると、ウルトラファインバブル発生装置を必要とせずに、キセノンウルトラファインバブルを高濃度で含有する液体組成物を作製することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。また、前述のキセノンウルトラファインバブル含有液体組成物のCT値(X線吸収値)を測定したところ、水のCT値や、COウルトラファインバブル含有液体組成物のCT値よりも高く、キセノンウルトラファインバブル含有液体組成物は造影剤として使用できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)液体中にキセノンウルトラファインバブルを発生させるためのキセノンウルトラファインバブル発生剤であって、キセノン含有率が3重量%以上の氷を含有することを特徴とする、前記キセノンウルトラファインバブル発生剤;
(2)キセノン含有率が3重量%以上の氷が、キセノンハイドレートである上記(1)に記載のキセノンウルトラファインバブル発生剤;
(3)キセノン含有率が3重量%以上の氷が、以下の測定法X1で測定した場合のキセノンウルトラファインバブルの濃度が5百万個/mL以上となるように、キセノンウルトラファインバブルを水の中に発生させることができる氷であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載のキセノンウルトラファインバブル発生剤;
(測定法X1)
水に、キセノン含有率が3重量%以上である氷を300mg/mL添加して調製した溶液中のキセノンウルトラファインバブルの濃度(個/mL)を、レーザー回折・散乱法又はナノトラッキング法で測定する;
(4)キセノン含有率が3重量%以上の氷を融解させる工程を含む、キセノンウルトラファインバブル含有液体組成物の製造方法;
(5)キセノン含有率が3重量%以上の氷を融解させる工程が、キセノン含有率が3重量%以上の氷を他の液体に接触させることによって融解させる工程、又は、キセノン含有率が3重量%以上の氷を他の液体に接触させずに融解させる工程である、上記(4)に記載のキセノンウルトラファインバブル含有液体組成物の製造方法;
(6)5百万個/mL以上のキセノンウルトラファインバブルを含有する液体組成物;
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウルトラファインバブル発生装置を必要とせずに、手軽にキセノンウルトラファインバブルを液体中に発生させることができるキセノンウルトラファインバブル発生剤や、キセノンウルトラファインバブル含有液体組成物の製造方法や、かかる製造方法により製造されるキセノンウルトラファインバブル含有液体組成物等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、
[1]液体中にキセノンウルトラファインバブルを発生させるためのキセノンウルトラファインバブル発生剤であって、キセノン含有率が3重量%以上の氷を含有することを特徴とする、前記キセノンウルトラファインバブル発生剤(以下、「本発明のキセノンUFB発生剤」とも表示する。);や、
[2]キセノン含有率が3重量%以上の氷を融解させる工程を含む、キセノンウルトラファインバブル含有液体組成物の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。);
[3]5百万個/mL以上のキセノンウルトラファインバブルを含有する液体組成物(以下、「本発明のキセノンUFB含有液体組成物」とも表示する。);
などの実施態様を含んでいる。
なお、本明細書において、本発明のキセノンUFB発生剤は、本発明のキセノンUFB発生用の物質又は固体組成物と言い換えることもできる。
【0013】
(キセノン含有率が3重量%以上の氷)
本発明におけるキセノン含有率が3重量%以上の氷(キセノン高含有氷)は、キセノンハイドレートではないキセノン高含有氷であってもよいが、キセノンが有する効果をより多く得る観点から、キセノンハイドレートであることが好ましい。キセノンハイドレートは、水分子の結晶体の空寸にキセノン分子を閉じ込めた固体の包接化合物である。キセノンハイドレートは、通常、氷状の結晶体であり、例えば標準気圧条件下で、かつ、氷が融解するような温度条件下に置くと、融解しながらキセノンを放出する。また、本発明におけるキセノン高含有氷として、キセノンハイドレートを用いずに、キセノンハイドレートではないキセノン高含有氷を用いてもよいし、キセノンハイドレートではないキセノン高含有氷を用いずに、キセノンハイドレートを用いてもよいし、キセノンハイドレートではないキセノン高含有氷と、キセノンハイドレートを併用してもよい。
【0014】
本発明におけるキセノン高含有氷としては、以下の測定法X1で測定した場合のキセノンUFBの濃度(個/mL)で、好ましくは5百万個/mL以上、より好ましくは1千万個/mL以上、さらに好ましくは2千万個/mL以上、より好ましくは5千万個/mL以上、さらに好ましくは1億個/mL以上、より好ましくは2億個/mL以上、さらに好ましくは3億個/mL以上、より好ましくは4億個/mL以上のキセノンUFBを水の中に発生させることができるキセノン高含有氷を好適に挙げることができる。
(測定法X1)
水に、キセノン含有率が3重量%以上である氷を300mg/mL添加して調製した溶液中のキセノンUFBの濃度(個/mL)を、レーザー回折・散乱法(好ましくは定量レーザー回折・散乱法)又はナノトラッキング法で測定する。
【0015】
上記測定法X1における溶液の温度としては特に制限されないが、例えば1~60℃、10~50℃、15~45℃、20~40℃、20℃などが挙げられる。
【0016】
本明細書において、キセノンUFBの濃度をレーザー回折・散乱法で測定することとしては、キセノンUFBの濃度を島津製作所社製SALD-7500 ウルトラファインバブル計測システムで測定することが好ましく挙げられる。なお、SALD-7500 ウルトラファインバブル計測システムは、定量レーザー回折・散乱法による測定装置である。また、本明細書において、キセノンUFBの濃度をナノトラッキング法で測定することとしては、キセノンUFBの濃度をMalvern社製 ナノサイト NS300で測定することが好ましく挙げられる。
【0017】
本発明におけるキセノン高含有氷が、水の中に発生させることができるキセノンUFBの濃度の上限としては、特に制限されないが、前述の測定法X1で測定した場合のキセノンUFBの濃度が、例えば100億個/mL以下、50億個/mL以下、10億個/mL以下であることが挙げられる。
【0018】
本発明におけるキセノン高含有氷が、水の中に発生させることができるキセノンUFBのより具体的な濃度としては、測定法X1で測定した場合の濃度で、5百万~100億個/mL、5百万~50億個/mL、5百万~10億個/mL、1千万~100億個/mL、1千万~50億個/mL、1千万~10億個/mL、2千万~100億個/mL、2千万~50億個/mL、2千万~10億個/mL、5千万~100億個/mL、5千万~50億個/mL、5千万~10億個/mL、1億~100億個/mL、1億~50億個/mL、1億~10億個/mL、2億~100億個/mL、2億~50億個/mL、2億~10億個/mL、3億~100億個/mL、3億~50億個/mL、3億~10億個/mL、4億~100億個/mL、4億~50億個/mL、4億~10億個/mL等が挙げられる。
【0019】
本発明におけるキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)のキセノン含有率としては、3重量%以上である限り特に制限されないが、キセノンが有する効果をより多く得る観点から、好ましくは5重量%以上、より好ましくは7重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、より好ましくは13重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上、より好ましくは17重量%以上であることが挙げられる。また、上限値としては特に制限されないが、55重量%や、40重量%や、25重量%が挙げられる。キセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)のより具体的なキセノン含有率としては、5~55重量%、7~55重量%、10~55重量%、13~55重量%、15~55重量%、17~55重量%、5~40重量%、7~40重量%、10~40重量%、13~40重量%、15~40重量%、17~40重量%、5~25重量%、7~25重量%、10~25重量%、13~25重量%、15~25重量%、17~25重量%等が挙げられる。
【0020】
本発明におけるキセノン高含有氷のキセノン含有率は、本発明におけるキセノン高含有氷を製造する際の「キセノン分圧の高低」などにより調整することができ、例えばキセノン分圧を高くすると、キセノン高含有氷のキセノン含有率を高くすることができる。また、キセノン高含有氷がキセノンハイドレートである場合は、キセノンハイドレートを製造する際の「キセノン分圧の高低」、「脱水処理の程度」、「圧縮処理を行うか否か」、「圧縮処理する場合の圧縮の圧力の高低」などにより、キセノンハイドレートのキセノン含有率を調整することができる。例えば、キセノンハイドレートを製造する際の「キセノン分圧を高くし」、「脱水処理の程度を上げ」、「圧縮処理を行い」、「圧縮処理する場合の圧密の圧力を高くする」と、キセノンハイドレートのキセノン含有率を高くすることができる。なお、キセノンハイドレート等のキセノン高含有氷が融解すると、該キセノンハイドレート等のキセノン高含有氷に含まれていたキセノンが放出され、その分の重量が減少するので、キセノンハイドレート等のキセノン高含有氷のキセノン含有率は、例えば、キセノンハイドレート等のキセノン高含有氷を常温で融解させた際の重量変化から、下記式(1)を用いて算出する事ができる。
式(1)
(キセノン含有率)=(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)/融解前のサンプル重量
【0021】
また、本発明のキセノンUFB発生剤が含有するキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)は、そのすべてが、3重量%以上のキセノン含有率であることが好ましいが、本発明の効果が得られる範囲において、キセノン含有率が3重量%未満の氷やキセノンハイドレートも含有していてもよい。本発明のキセノンUFB発生剤が含有するキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)に対する、キセノン含有率が3重量%未満の氷やキセノンハイドレートの割合(重量%)としては、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下が挙げられる。
【0022】
本発明におけるキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)の形状としては、適宜設定することができ、例えば、略球状;略楕円体状;略直方体形状等の略多面体形状;あるいは、これらの形状にさらに凹凸を備えた形状;などが挙げられる。また、本発明におけるキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)は、キセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)の塊を適宜破砕して得られる様々な形状の破砕片(塊)であってもよい。
【0023】
本発明におけるキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)の大きさとしては、特に制限されず、適宜設定することができる。本発明におけるキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)の最大長の下限として、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは7mm以上、より好ましくは10mm以上が挙げられ、最大長の上限として150mm以下、100mm以下、80mm以下、60mm以下が挙げられ、より具体的には3mm以上150mm以下、3mm以上100mm以下、3mm以上80mm以下、3mm以上60mm以下や、5mm以上150mm以下、5mm以上100mm以下、5mm以上80mm以下、5mm以上60mm以下、10mm以上150mm以下、10mm以上100mm以下、10mm以上80mm以下、10mm以上60mm以下などが挙げられる。
【0024】
本明細書において「キセノン高含有氷の最大長」とは、キセノン高含有氷のその塊の表面の2点を結び、かつ、その塊の重心を通る線分のうち、最も長い線分の長さを意味する。なお、キセノン高含有氷が例えば略楕円体状である場合は、前記最大長は長径(最も長い直径)を表し、略球状である場合は、前記最大長は直径を表し、略直方体形状である場合は、対角線の中で最も長い対角線の長さを表す。また、本明細書において「キセノン高含有氷の最小長」とは、キセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)のその塊の表面の2点を結び、かつ、その塊の重心を通る線分のうち、最も短い線分の長さを意味する。かかる最大長や最小長は、市販の画像解析式粒度分布測定装置などを用いて測定することもできるし、キセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)の塊に定規をあてて測定することもできる。
【0025】
本発明におけるキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)の好適な態様として、アスペクト比(最大長/最小長)が好ましくは1~5、より好ましくは1~4、さらに好ましくは1~3であるキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)が挙げられる。
【0026】
キセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)の大きさは以下の方法で調整することができる。例えば、キセノンハイドレートではないキセノン高含有氷の最大長は、かかるキセノン高含有氷を製造する際の型の最大長を調整したり、製造後のキセノン高含有氷を破砕する際の破砕の程度を調整したりすることによって調整することができる。また、キセノンハイドレートの最大長は、キセノンハイドレートを圧縮成形する際に用いる型の最大長を調整したり、圧縮成形した後のキセノンハイドレートを破砕する際の破砕の程度を調整したりすることによって、調整することができる。また、最小長については、型の最小長を調整したり、製造後のキセノン高含有氷を破砕する際の程度を調整したりすることによって調整することができる。
【0027】
本発明におけるキセノン高含有氷の製造方法としては、キセノン高含有氷を製造できる限り特に制限されない。キセノンハイドレートではないキセノン高含有氷の製造方法としては、キセノンハイドレート生成条件を充たさない条件下で原料水中にキセノンを吹き込みながら原料水を冷凍する方法が挙げられる。また、キセノンハイドレートの製造方法としては、キセノンハイドレート生成条件を充たす条件下で原料水中にキセノンを吹き込みながら原料水を攪拌する気液攪拌方式や、キセノンハイドレート生成条件を充たす条件下でキセノン中に原料水をスプレーする水スプレー方式等の常法を用いることができる。これらの方式で生成されるキセノンハイドレートは、通常、キセノンハイドレートの微粒子が、未反応の水と混合しているスラリー状であるため、キセノンハイドレートの濃度を高めるために、脱水処理を行うことが好ましい。脱水処理によって含水率が比較的低くなったキセノンハイドレート(すなわち、比較的高濃度のキセノンハイドレート)は、ペレット成形機で一定の形状(例えば球状や直方体状)に圧縮成形することが好ましい。圧縮成形したキセノンハイドレートは、そのまま本発明に用いてもよいし、必要に応じてさらに破砕等したものを用いてもよい。なお、キセノンハイドレートの製造方法としては、前述のように、原料水を用いる方法が比較的広く用いられているが、水(原料水)の代わりに微細な氷(原料氷)をキセノンと、低温、かつ、低圧のキセノン分圧という条件下で反応させてキセノンハイドレートを製造する方法を用いることもできる。
【0028】
キセノンハイドレートは、キセノンと水を、低温、かつ、高圧のキセノン分圧という条件にすることにより製造することができ、例えば、ある温度であること、及び、その温度におけるキセノンハイドレートの平衡圧力よりもキセノン分圧(キセノン圧力)が高いことを含む条件(すなわち、「キセノンハイドレート生成条件」)において製造することができる。上記の「キセノンハイドレートの平衡圧力よりもキセノン分圧が高い条件」は、高圧力の科学と技術Vol. 12, No. 1 (2002), 34-39に開示されているキセノンハイドレートの平衡圧力曲線(例えば縦軸がキセノン圧力、横軸が温度を表す)において、かかる曲線の高圧側(キセノンハイドレートの平衡圧力曲線において、例えば縦軸がキセノン圧力、横軸が温度を表す場合は、該曲線の上方)の領域内のキセノン圧力と温度の組合せの条件として表される。また、Theoretic Physicochemical Problems of Clathrate Compounds, Advances in Chemical Physics, Volume 81,261-359、特開2000-107549でも生成条件が開示されている。キセノンハイドレート生成条件の具体例として、「0~30℃の範囲内」と「キセノン圧力0.148~15MPaの範囲内」の組合せの条件が挙げられる。
【0029】
キセノンハイドレート率とは、キセノンハイドレートの塊の重量に対するキセノンハイドレートの重量の割合(%)を意味する。かかるキセノンハイドレート率は、以下の式(2)により算出することができる。
式(2)
キセノンハイドレート率(%)={(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)+(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)÷131.293×5.75×18}×100÷融解前のサンプル重量

式(2)を以下に説明する。(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)は、包蔵されるキセノンガス重量となる。キセノンガスをハイドレートとして包接するために必要な水量は、理論水和数5.75、キセノンの分子量131.293、水の分子量18を用いて算出し、それ以外の水は、ハイドレートを構成しない付着水とみなしている。
【0030】
本発明におけるキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)のキセノンハイドレート率としては特に制限されないが、10~90%、20~90%、30~90%、10~80%、20~80%、30~80%などが挙げられる。
【0031】
本発明におけるキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)は、キセノンと氷のみからなるキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)(以下、「任意成分を含有しないキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)」とも表示する。)であってもよいが、本発明のキセノンUFB発生剤の用途に応じた任意成分をさらに含有するキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)であってもよい。なお、キセノン高含有氷における任意成分としては、後述の、本発明のキセノンUFB発生剤において例示している任意成分の他、後述の溶媒のうち、水以外の溶媒などが挙げられる。
【0032】
1.<本発明のキセノンUFB発生剤>
本発明のキセノンUFB発生剤は、キセノン含有率が3重量%以上の氷(キセノン高含有氷)を含有する限り特に制限されない。本発明のキセノンUFB発生剤は、「任意成分を含有しないキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)」、又は、「任意成分を含有するキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)」のみからなるキセノンUFB発生剤であってもよいし、これらキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)以外に、任意成分をさらに含有していてもよい。
【0033】
本発明のキセノンUFB発生剤におけるキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)の含有量としては、特に制限されないが、キセノンUFB発生剤の総重量に対して、例えば5~100重量%、5~90重量%、5~80重量%、5~70重量%、30~100重量%、30~90重量%、30~80重量%、30~70重量%、40~100重量%、40~90重量%、40~80重量%、40~70重量%、50~100重量%、50~90重量%、50~80重量%、50~70重量%、60~100重量%、60~90重量%、60~80重量%、60~70重量%を挙げることができる。
【0034】
(本発明のキセノンUFB発生剤の任意成分)
任意成分を用いるかどうか、及び、任意成分を用いる場合にどのような任意成分を用いるかは、本発明のキセノンUFB発生剤の使用目的、使用態様に応じて当業者は適宜設定することができる。任意成分としては、「薬学的に許容される担体」、「造影効果を有する、キセノン以外の成分」、「麻酔効果を有する、キセノン以外の成分」、「鎮痛効果を有する、キセノン以外の成分」、「脳保護作用を有する、キセノン以外の成分」、「臓器や細胞等の生体材料に対して保存作用を有する、キセノン以外の成分」などが挙げられる。
【0035】
上記の薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機又は無機担体物質が挙げられ、例えば、等張化剤や緩衝剤が挙げられる。上記の等張化剤としては、例えばブドウ糖、D-ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール等が挙げられ、上記の緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。
【0036】
本発明のキセノンUFB発生剤は、少なくともキセノン高含有氷を用いて調製することができる。本発明のキセノンUFB発生剤が任意成分を有する場合は、キセノン高含有氷と任意成分を適宜混合するなどして調製することができる。また、本発明のキセノンUFB発生剤は、その用途に応じて適当な剤型等とすることができる。
【0037】
(容器)
本発明のキセノンUFB発生剤は、容器に収容されていなくてもよいが、容器に収容されていることが好ましい。容器の形状や材質は特に制限されないが、容器の形状としては、略直方体状、略立方体状、略円柱形状、袋状などが挙げられ、容器の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ガラス;アルミニウム等の金属;などが好ましく挙げられる。
【0038】
(本発明のキセノンUFB発生剤のウルトラファインバブル濃度)
本発明のキセノンUFB発生剤としては、以下の測定法X2で測定した場合のキセノンUFBの濃度(個/mL)で、好ましくは5百万個/mL以上、より好ましくは1千万個/mL以上、さらに好ましくは2千万個/mL以上、より好ましくは5千万個/mL以上、さらに好ましくは1億個/mL以上、より好ましくは2億個/mL以上、さらに好ましくは3億個/mL以上、より好ましくは4億個/mL以上のキセノンUFBを水の中に発生させることができるキセノンUFB発生剤を好適に挙げることができる。
(測定法X2)
水に、キセノンUFB発生剤を、キセノン含有率が3重量%以上の氷に換算して300mg/mL添加して調製した溶液中のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)を、レーザー回折・散乱法(好ましくは定量レーザー回折・散乱法)又はナノトラッキング法で測定する。
【0039】
上記測定法X2における溶液の温度としては特に制限されないが、例えば1~60℃、10~50℃、15~45℃、20~40℃、20℃などが挙げられる。
【0040】
本発明のキセノンUFB発生剤が、液体(好ましくは水)の中に発生させることができるキセノンUFBのより具体的な濃度としては、測定法X2で測定した場合の濃度で、5百万~100億個/mL、5百万~50億個/mL、5百万~10億個/mL、1千万~100億個/mL、1千万~50億個/mL、1千万~10億個/mL、2千万~100億個/mL、2千万~50億個/mL、2千万~10億個/mL、5千万~100億個/mL、5千万~50億個/mL、5千万~10億個/mL、1億~100億個/mL、1億~50億個/mL、1億~10億個/mL、2億~100億個/mL、2億~50億個/mL、2億~10億個/mL、3億~100億個/mL、3億~50億個/mL、3億~10億個/mL、4億~100億個/mL、4億~50億個/mL、4億~10億個/mL等が挙げられる。
【0041】
(本発明のキセノンUFB発生剤の用途)
本発明のキセノンUFB発生剤の用途としては、本発明のキセノンUFB発生剤を使用できる用途である限り特に制限されず、キセノンの用途が挙げられ、例えば、造影剤、麻酔剤、鎮痛剤、脳保護剤、生体材料(細胞、組織、臓器等)の保存剤などの用途が好ましく挙げられる。
【0042】
(本発明のキセノンUFB発生剤の使用方法)
本発明のキセノンUFB発生剤は、かかるキセノンUFB発生剤におけるキセノン高含有氷を融解させて用いる。本発明のキセノンUFB発生剤は、キセノン含有氷が融解する際に発生するキセノンガスを利用してもよいし、本発明のキセノンUFB発生剤を本発明のキセノンUFB含有液体組成物にしてそれを利用してもよいが、呼吸が安定しない動物に対しても使用できるなどの点で、キセノンUFB含有液体組成物を利用することが好ましい。キセノンガスを利用する方法としては、吸入装置等を使用してキセノンガスを動物(好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト)に吸入させる方法が挙げられる。また、キセノンUFB含有液体組成物を利用する方法は、後述の「キセノンUFB含有液体組成物」の項目で説明する。
【0043】
本発明のキセノンUFB発生剤を本発明のキセノンUFB含有液体組成物にする方法は、後述の「本発明のキセノンUFB含有液体組成物の製造方法」の項目において詳細に説明するが、本発明のキセノンUFB発生剤中のキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)を融解させる工程を含んでいる限り特に制限されない。当業者であれば、本願明細書を参照することにより、本発明のキセノンUFB発生剤におけるキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)の含有量や、該キセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)のキセノン含有率や、どの程度の濃度のキセノンUFBを必要とするか等に応じて、本発明のキセノンUFB発生剤の使用量を調整することができる。
【0044】
(本発明のキセノンUFB発生剤の流通、保管の際の条件)
本発明のキセノンUFB発生剤の流通や保管の際の条件は以下のとおりである。
本発明のキセノンUFB発生剤がキセノンハイドレート以外のキセノン高含有氷を含有する場合、かかる本発明のキセノンUFB発生剤は、流通や保管の際に、氷が融解しない温度及び圧力で保持することが好ましい。かかる温度及び圧力として、例えば常圧(例えば1気圧)で0℃以下の条件が挙げられる。一方、キセノンハイドレートの製法等によっては、その保存性や安定性に優れているものもある。したがって、本発明のキセノンUFB発生剤がキセノン高含有氷としてキセノンハイドレートを含有する場合、かかる本発明のキセノンUFB発生剤は、流通や保管の際に、常温(5~35℃)、常圧(例えば1気圧)で保持してもよいが、本発明のキセノンUFB発生剤をより長期間、より安定的に保つ観点から、本発明のキセノンUFB発生剤は、流通や保管等の際に、「低温条件下」、又は「高圧条件下」、又は「低温条件下かつ高圧条件下」で保持することが好ましい。保持の簡便性の観点から、これらの中でも、「低温条件下」で保持することが好ましく、常圧(例えば1気圧)で「低温条件下」で保持することがより好ましい。
【0045】
上記の「低温条件下」における上限温度としては、10℃以下、好ましくは5℃以下、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは-5℃以下、より好ましくは-10℃以下、さらに好ましくは-15℃以下、より好ましくは-20℃、さらに好ましくは-25℃が挙げられ、上記の「低温条件下」における下限温度としては、-273℃以上、-80℃以上、-50℃以上、-40℃以上、-30℃以上などが挙げられる。
【0046】
上記の「高圧条件下」における下限圧力としては、1.036気圧以上、好ましくは1.135気圧以上、より好ましくは1.283気圧以上、さらに好ましくは1.480気圧以上が挙げられ、上記の「高圧条件下」における上限圧力としては、14.80気圧以下、11.84気圧以下、9.869気圧以下、7.895気圧以下、4.935気圧以下などが挙げられる。
【0047】
2.<本発明のキセノンUFB含有液体組成物>
本発明のキセノンUFB含有液体組成物としては、5百万個/mL以上のキセノンウルトラファインバブルを含有する液体組成物である限り特に制限されない。
【0048】
本明細書における「キセノンUFB含有液体組成物」は、必ずしもすべてが液体状である場合に限られず、固体状のキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)(又は固体状の本発明のキセノンUFB発生剤)等と液体の混合物である場合も含まれる。
【0049】
(本発明のキセノンUFB含有液体組成物のキセノンUFB濃度)
本発明のキセノンUFB含有液体組成物におけるキセノンUFBの濃度は、5百万個/mL以上である限り特に制限されないが、好ましくは5百万個/mL以上、より好ましくは1千万個/mL以上、さらに好ましくは2千万個/mL以上、より好ましくは5千万個/mL以上、さらに好ましくは1億個/mL以上、より好ましくは2億個/mL以上、さらに好ましくは3億個/mL以上、より好ましくは4億個/mL以上であることが挙げられる。また、本発明のキセノンUFB含有液体組成物におけるキセノンUFBの濃度の上限としては、特に制限されないが、例えば100億個/mL以下、50億個/mL以下、10億個/mL以下であることが挙げられる。本発明のキセノンUFB含有液体組成物におけるウルトラファインバブルのより具体的な濃度としては、5百万~100億個/mL、5百万~50億個/mL、5百万~10億個/mL、1千万~100億個/mL、1千万~50億個/mL、1千万~10億個/mL、2千万~100億個/mL、2千万~50億個/mL、2千万~10億個/mL、5千万~100億個/mL、5千万~50億個/mL、5千万~10億個/mL、1億~100億個/mL、1億~50億個/mL、1億~10億個/mL、2億~100億個/mL、2億~50億個/mL、2億~10億個/mL、3億~100億個/mL、3億~50億個/mL、3億~10億個/mL、4億~100億個/mL、4億~50億個/mL、4億~10億個/mLが挙げられる。
【0050】
本発明のキセノンUFB含有液体組成物におけるキセノンUFBの濃度の値は、キセノンUFBの濃度を測定することができる、いかなる測定法の測定値であってもよいが、以下の測定法X3での測定値であることが好ましい。
(測定法X3)
キセノンUFB含有液体組成物中のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)を、レーザー回折・散乱法(好ましくは定量レーザー回折・散乱法)又はナノトラッキング法で測定する。
【0051】
上記の測定法X3におけるキセノンUFB含有液体組成物としては、20℃のキセノンUFB含有液体組成物が好ましく挙げられる。
【0052】
(本発明のキセノンUFB含有液体組成物のCT値)
本発明のキセノンUFB含有液体組成物のCT値としては、例えば10HU(ハンスフィールド単位)以上、好ましくは20HU以上、より好ましくは30HU以上が挙げられる。かかるCT値の上限は特に制限されないが、例えば100HU以下、70HU以下、50HU以下が挙げられる。本発明のキセノンUFB含有液体組成物のCT値として具体的には、10~100HU、20~100HU、30~100HU、10~70HU、20~70HU、30~70HU、10~50HU、20~50HU、30~50HUなどが挙げられる。
【0053】
上記のCT値(HU)の測定法としては、例えばX線CT装置にキセノンUFB含有液体組成物をセットして、そのキセノンUFB含有液体組成物のCT値を測定する方法が挙げられ、中でも、「小型実験動物用 3DマイクロX線CT」(リガク社製)を用いて、以下の撮影条件で測定したCT値を好ましく挙げることができる。
R_mCT2(Ver.2.3.1), 90kV, 200uA, FOV60(Vox size 120um), 2min
【0054】
(本発明のキセノンUFB含有液体組成物の任意成分)
本発明のキセノンUFB含有液体組成物は、溶媒とキセノンのみからなる組成物であってもよいが、さらに、本発明のキセノンUFB含有液体組成物の使用目的、使用態様に応じて当業者は適宜設定することができる。任意成分としては、「薬学的に許容される担体」、「造影効果を有する、キセノン以外の成分」、「麻酔効果を有する、キセノン以外の成分」、「鎮痛効果を有する、キセノン以外の成分」、「脳保護作用を有する、キセノン以外の成分」、「臓器や細胞等の生体材料に対して保存作用を有する、キセノン以外の成分」などが挙げられる。
【0055】
本発明のキセノンUFB含有液体組成物において、キセノンUFBを含んでいる溶媒としては、キセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)をその溶媒中に含有させたときに、キセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)がウルトラファインバブルを発生させることができる溶媒が挙げられ、具体的には、(i)「親水性溶媒」、(ii)「疎水性溶媒」、(iii)「親水性溶媒と疎水性溶媒の混合溶媒」、「(i)~(iii)のいずれかの溶媒に任意の溶質を含んだ液体」等が挙げられる。本発明における「キセノンUFB含有液体組成物」が液体状である温度条件及び圧力条件は、溶媒の種類、キセノンUFB含有液体組成物の用途、キセノンUFB含有液体組成物の使用条件等によっても左右されるため一概に特定することはできないが、20℃、1気圧の条件下で液体状であるキセノンUFB含有液体組成物が好ましく挙げられる。
【0056】
本発明に用いられる「親水性溶媒」としては、溶解度パラメーター(SP値)が20以上のものが好ましく、29.9以上がさらに好ましい。具体的には、水(47.9)、多価アルコール、低級アルコールからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。多価アルコールとして、エチレングリコール(29.9)、ジエチレングリコール(24.8)、トリエチレングリコール(21.9)、テトラエチレングリコール(20.3)、プロピレングリコール(25.8)等の2価アルコール、グリセリン(33.8)、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の4価以上のアルコール、ソルビトール等のヘキシトール、グルコース等のアルドース、ショ糖等の糖骨格を有する化合物、その他ペンタエリスリトール等が挙げられる。低級アルコールとしてはイソプロパノール(23.5)、ブチルアルコール(23.3)、エチルアルコール(26.9)が挙げられる。これらの親水性溶媒は2種以上を併用してもよい。なお括弧内は、溶解度パラメーターのδ値を示す。本発明における好ましい親水性溶媒としては、少なくとも水を含むことが好ましく、水であることがより好ましい。
【0057】
本発明に用いられる「疎水性溶媒」としては、好ましくは溶解度パラメーター(SP値)が、20.0未満の有機溶媒であり、具体的には、好ましくは炭化水素系溶剤もしくはシリコーン系溶剤またはそれらの混合物である。炭化水素系溶剤として、例えば、ヘキサン(14.9)、ヘプタン(14.3)、ドデカン(16.2)、シクロヘキサン(16.8)、メチルシクロヘキサン(16.1)、オクタン(16.0)、水添トリイソブチレン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン(18.8)、トルエン(18.2)、エチルベンゼン(18.0)、キシレン(18.0)等の芳香族炭化水素、クロロホルム(19.3)、1,2ジクロロエタン(19.9)、トリクロロエチレン(19.1)等のハロゲン系炭化水素等を例示することができ、シリコーン系溶剤として、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等が例示される。これらの中でヘキサン(14.9)、シクロヘキサン(16.8)が特に好ましい。これらの疎水性溶媒は、2種以上を併用してもよい。
【0058】
上記の「(i)~(iii)のいずれかの溶媒に任意の溶質を含んだ液体」における「溶質」としては、かかる液体中にキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)を含有させたときに、キセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)がウルトラファインバブルを発生させることができるものが挙げられる。「(i)~(iii)のいずれかの溶媒に任意の溶質を含んだ液体」として、具体的には、生理食塩水が挙げられる。
【0059】
上記の薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機又は無機担体物質が挙げられ、例えば、等張化剤、緩衝剤、溶媒などが挙げられる。
【0060】
上記の等張化剤としては、例えばブドウ糖、D-ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール等が挙げられ、上記の緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。
【0061】
(容器)
本発明のキセノンUFB含有液体組成物は、容器に収容されていなくてもよいが、容器に収容されていることが好ましい。容器の形状や材質は特に制限されないが、容器の形状としては、略直方体状、略立方体状、略円柱形状、袋状などが挙げられ、容器の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ガラス;アルミニウム等の金属;などが好ましく挙げられる。
【0062】
(本発明のキセノンUFB含有液体組成物の用途)
本発明のキセノンUFB含有液体組成物の用途としては、本発明のキセノンUFB含有液体組成物を使用できる用途である限り特に制限されず、キセノンの用途が挙げられ、例えば、造影剤、麻酔剤、鎮痛剤、脳保護剤、生体材料(細胞、組織、臓器等)の保存剤などの用途が好ましく挙げられる。すなわち、本発明のキセノンUFB含有液体組成物は、造影用組成物、麻酔用組成物、鎮痛用組成物、脳保護用組成物、生体材料保存用組成物などとして用いることができる。
【0063】
(本発明のキセノンUFB含有液体組成物の使用方法)
本発明のキセノンUFB含有液体組成物の使用方法は、特に制限されず、目的とする用途に用いられる既知の組成物(例えば、造影用組成物、麻酔用組成物、鎮痛用組成物、脳保護用組成物、生体材料保存用組成物)の使用方法と同様の使用方法を用いることができる。
【0064】
本発明のキセノンUFB含有液体組成物を、造影、麻酔、鎮痛及び脳保護から選ばれる1種又は2種以上の用途に用いる場合の具体的な使用方法としては、かかるキセノンUFB含有液体組成物を動物の静脈内に投与する方法が好ましく挙げられ、本発明のキセノンUFB含有液体組成物を、生体材料保存の用途に用いる場合の具体的な使用方法としては、生体材料にキセノンUFB含有液体組成物を噴霧、浸漬又は塗布する方法が好ましく挙げられる。
【0065】
本発明のキセノンUFB含有液体組成物を動物の静脈内に投与する際の投与量としては、目的とする効果が得られる限り特に制限されず、例えば、0.0001~1mL/kg(体重)、0.001~0.5mL/kg(体重)、0.001~0.1mL/kg(体重)などが挙げられる。また、本発明のキセノンUFB含有液体組成物を生体材料に噴霧又は塗布する際の噴霧量又は塗布量しては、生体材料の面積(表面積)1cmあたり0.01~1mL、0.05~0.5mLなどが挙げられる。
【0066】
本発明のキセノンUFB含有液体組成物の動物への投与回数としては、目的とする効果が得られる限り特に制限されず、また、本発明のキセノンUFB含有液体組成物内の用途にも応じるため一概に述べることはできないが、例えば、1日あたり1回又は2回以上(好ましくは3回)が挙げられる。
【0067】
(本発明のキセノンUFB含有液体組成物の流通、保管の際の条件)
本発明のキセノンUFB含有液体組成物の流通や保管の際の条件としては、例えば、1~50℃、5~45℃、7~40℃などが挙げられる。
【0068】
3.<本発明のキセノンUFB含有液体組成物の製造方法>
本発明のキセノンUFB含有液体組成物の製造方法(本発明の製造方法)としては、キセノン含有率が3重量%以上の氷(好ましくはキセノンハイドレート)を融解させる工程を含んでいる限り特に制限されない。キセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)を融解させることにより、キセノンUFB含有液体組成物を製造することができる。かかる本発明のキセノンUFB含有液体組成物は、キセノンUFBと溶媒を含んでいる。なお、本発明のキセノンUFB含有液体組成物には、例えば以下の(A)~(C)の液体が包含される。また、本発明のキセノンUFB発生剤は、前述したように、液体中にキセノンウルトラファインバブルを発生させるためのものであり、かかる「液体」には以下の(A)~(C)の液体が包含される。(A)~(C)の液体における溶媒としては、前述した溶媒が挙げられる。
(A)キセノン含有率が3重量%以上の氷(又は、本発明のキセノンUFB発生剤におけるキセノン高含有氷)自体が融解した液体(以下、単に「融解液」とも表示する。);
(B)融解液以外の他の液体(以下、単に「他の液体」とも表示する。);
(C)融解液と他の液体の混合液;
【0069】
本明細書において「キセノン含有率が3重量%以上の氷を融解させる工程」としては、「キセノン含有率が3重量%以上の氷を他の液体に接触させることによって融解させる工程」、及び、「キセノン含有率が3重量%以上の氷を他の液体に接触させずに融解させる工程」などが好ましく挙げられ、キセノンが有する効果をより多く得る観点から、「キセノン含有率が3重量%以上の氷を他の液体に接触させずに融解させる工程」がより好ましく挙げられる。
【0070】
本明細書において「キセノン含有率が3重量%以上の氷を他の液体に接触させることによって融解させる」方法としては、キセノン高含有氷が融解するような条件となるように、キセノン高含有氷を他の液体に接触させる方法である限り特に制限されず、キセノン高含有氷を他の液体に含有させる方法が好ましく挙げられ、中でも、キセノン高含有氷を他の液体に添加又は投入する方法や、キセノン高含有氷に他の液体を添加又は投入する方法がより好ましく挙げられ、中でも、キセノン高含有氷を他の液体に添加又は投入する方法がさらに好ましく挙げられる。
【0071】
本明細書において「キセノン含有率が3重量%以上の氷を他の液体に接触させずに融解させる」方法としては、キセノン高含有氷を他の液体に接触させることなく、キセノン高含有氷が融解するような条件にキセノン高含有氷をさらす方法である限り特に制限されず、キセノン高含有氷が融解するような条件下にキセノン高含有氷を置く方法が好ましく挙げられ、中でも、容器に入れたキセノン高含有氷を、キセノン高含有氷が融解するような条件下で静置する方法や、キセノン高含有氷が融解するような条件下で、キセノン高含有氷を生体材料等に接触させる方法がより好ましく挙げられる。
【0072】
上記の「キセノン高含有氷が融解するような条件」としては、キセノン高含有氷が融解するような条件である限り特に制限されないが、0℃以上、好ましくは0~70℃、より好ましくは5~60℃、さらに好ましくは10~50℃という温度条件であって、かつ、常圧であるという条件が挙げられる。
【0073】
本発明の製造方法におけるキセノン高含有氷として、本発明のキセノンUFB発生剤を用いてもよい。
【0074】
本発明の製造方法におけるキセノン高含有氷の使用量は、キセノン高含有氷を他の液体に接触させることによって融解させるか、キセノン高含有氷を他の液体に接触させずに融解させるか、キセノン高含有氷がキセノンハイドレートであるか否か、キセノン高含有氷のキセノン含有率、あるいは、どの程度の濃度のキセノンUFBを必要とするか等に応じて、当業者は適宜設定することができる。キセノン高含有氷を他の液体に接触させることによって融解させる場合のキセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)の使用量(好ましくは添加量)(mg/mL)の下限として、例えば、10mg/mL以上が挙げられ、キセノンが有する効果をより多く得る観点から、好ましくは20mg/mL以上、より好ましくは50mg/mL以上、さらに好ましくは100mg/mL以上、より好ましくは150mg/mL以上、さらに好ましくは200mg/mL以上が挙げられる。また、キセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)の使用量(好ましくは添加量)(mg/mL)の上限としては特に制限されないが、例えば、5000mg/mL以下、3000mg/mL以下、2000mg/mL以下、1000mg/mL以下が挙げられる。キセノンが有する効果をより多く得るための好適な態様として、キセノンハイドレートを50~5000mg/mL、50~3000mg/mL、50~2000mg/mL、50~1000mg/mL、75~5000mg/mL、75~3000mg/mL、75~2000mg/mL、75~1000mg/mL、100~5000mg/mL、100~3000mg/mL、100~2000mg/mL、又は100~1000mg/mL使用することが挙げられる。なお、キセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)の使用量(mg/mL)とは、液体1mLあたりに使用する(好ましくは添加する)、キセノン高含有氷(好ましくはキセノンハイドレート)の重量(mg)を意味する。
【0075】
キセノン高含有氷を他の液体に接触させる際の液体の温度としてはキセノンUFBが発生する限り特に制限されず、例えば1~37℃の範囲内を挙げることができる。
【0076】
以下に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0077】
試験1.[キセノンハイドレート等の調製]
(1)キセノンハイドレートの調製
20mLの水にキセノンガスを0.6MPaとなるように吹き込み、撹拌をしながら5℃でキセノンハイドレート生成反応を進行させて、キセノンハイドレート粒子が水中に懸濁しているキセノンハイドレートスラリーを得た。その後、かかるキセノンハイドレートスラリーを-20℃まで冷却して、最大長が3mm以上60mm以下の多面体形状で氷状のキセノンハイドレートを回収し、以降の実験で「キセノンハイドレート」として用いた。なお、かかるキセノンハイドレートのキセノン含有率は19.3%であり、キセノンハイドレート率は約34.6%であった。
【0078】
(2)圧密化COハイドレートの調製
4Lの水にCOガスを3MPaとなるように吹き込み、撹拌をしながら1℃でCOハイドレート生成反応を進行させて、COハイドレート粒子が水中に懸濁しているCOハイドレートスラリーを得た。かかるCOハイドレートスラリーをシリンダー式の圧密成形機へ流し込み、圧密成形機内と脱水ドレンとの差圧(約1MPa)により脱水してCOハイドレート粒子の結晶を濃縮した。これらのCOハイドレート粒子の結晶を10MPaの圧搾圧で圧縮した後、-20℃まで冷却して、圧密成形機からCOハイドレートの円筒状の塊を回収した後、かかる円筒状の塊を破砕した。最大長が3mm以上60mm以下の多面体形状のCOハイドレートを選択して回収し、以降の実験で「圧密化COハイドレート」として用いた。かかる圧密化COハイドレートのCO含有率は24重量%であり、COハイドレート率は約60%であった。
【0079】
試験2.[ウルトラファインバブルの生成の確認]
キセノンハイドレートを水に添加して融解させたキセノンハイドレート水溶液における気泡がウルトラファインバブルであるか等を調べるために、以下の実験を行った。
【0080】
(1)キセノンハイドレート水溶液の調製
前述の試験1の(1)で作製したキセノンハイドレートを、水1mLに対して300mgの割合で水に添加し、20℃で静置して、キセノンハイドレート水溶液を調製した。キセノンハイドレート水溶液の気泡の測定は、24時間静置した後に行った。
【0081】
(2)COハイドレート水溶液の調製
前述の試験1の(2)で作製した圧密化COハイドレートを、水1mLに対して300mgの割合で水に添加し、20℃で静置して、COハイドレート水溶液を調製した。COハイドレート水溶液の気泡の測定は、24時間静置した後に行った。
【0082】
(3)気泡の濃度及び粒径の測定
上記(1)のキセノンハイドレート水溶液と、上記(2)のCOハイドレート水溶液における気泡の濃度(個数)及び粒径(μm)を、Malvern社製 「ナノサイト NS300」を使用してそれぞれ測定した。
【0083】
(4)結果
キセノンハイドレート水溶液と、上記(2)のCOハイドレート水溶液におけるウルトラファインバブル(UFB)の濃度(億個/mL)を、以下の表1にそれぞれ示す。
【0084】
【表1】
【0085】
キセノンハイドレート水溶液における気泡は、100~200nmの粒径を中央値とするUFBであった。また、表1に示すように、キセノンハイドレートを用いた場合は、35億個/mLの濃度で水中にUFBを発生させることができた。また、表1から分かるように、キセノンハイドレートは、圧密化COハイドレートと比較して、顕著に高い濃度のUFBを発生させることができた。圧密化COハイドレートは、圧密化していないCOハイドレートと比較して、高い濃度のUFBを発生させることができる。本実施例のキセノンハイドレートは圧密化されていないにもかかわらず、圧密化COハイドレートよりも高い濃度のUFBを発生させることができたことから、キセノンハイドレートのUFB生成能は、COハイドレートのUFB生成能と比較して顕著に優れていることが示された。
【0086】
試験3.[キセノンハイドレートによるウルトラファインバブルの安定性の確認]
キセノンハイドレートを用いて得られたUFBの安定性を確認するために、以下の実験を行った。
【0087】
(1)キセノンハイドレート水溶液の調製
前述の試験1の(1)で作製したキセノンハイドレートを、水1mLに対して300mgの割合で水に添加し、20℃で静置して、キセノンハイドレート水溶液を調製した。かかるキセノンハイドレート水溶液を6か月間20℃で静置して保存を行った。キセノンハイドレート水溶液の静置(保存)を開始してから1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、および6ヶ月後に、キセノンハイドレート水溶液中のUFB濃度及びUFBの粒径をそれぞれ測定した。測定は、Malvern社製 「ナノサイト NS300」を使用して行った。
【0088】
(2)結果
これらの測定結果を以下の表2にそれぞれ示す。なお、初発とは、キセノンハイドレートを水に添加し、20℃での静置を開始してから約24時間経過後のキセノンハイドレート水溶液のUFB濃度の結果を表す。
【0089】
【表2】
【0090】
表2から分かるように、キセノンハイドレートを用いて発生させたUFBは、安定性がきわめて高いことが示された。
【0091】
試験4.[キセノンハイドレート水溶液の造影効果の確認]
キセノン(キセノンガス)が造影効果を有していることはすでに知られている。キセノンハイドレートを水に添加して融解させたキセノンハイドレート水溶液が造影効果を有しているかを調べるために、以下の実験を行った。
【0092】
(1)キセノンハイドレート水溶液の調製
前述の試験1の(1)で作製したキセノンハイドレートを、水1mLに対して300mgの割合で水に添加し、20℃で24時間静置して、キセノンハイドレート水溶液を調製した。
【0093】
(2)他のハイドレート水溶液の調製
二酸化炭素ハイドレート(COハイドレート)、窒素ハイドレート、酸素ハイドレート、空気ハイドレートをそれぞれ調製した。各ハイドレートを水1mLに対して300mgの割合で水に添加し、20℃で24時間静置して、各ハイドレート水溶液を調製した。
【0094】
(3)各種ハイドレート水溶液のCT値の測定
前述の試験1の(1)で作製したキセノンハイドレート水溶液をガラス瓶に封入した。このガラス瓶を「小型実験動物用 3DマイクロX線CT」(リガク社製)にセットし、このガラス瓶についてX線によるコンピューター断層撮影(CT)を行って、キセノンハイドレート水溶液のCT値を測定した。なお、撮影条件は以下のとおりである。
R_mCT2(Ver.2.3.1), 90kV, 200uA, FOV60(Vox size 120um), 2min
【0095】
キセノンハイドレート水溶液以外の各ハイドレート水溶液についても同じ方法でX線によるCTを行って、各ハイドレート水溶液のCT値を測定した。
【0096】
(4)結果
各種ハイドレート水溶液のCT値を以下の表3にそれぞれ示す。なお、CT値の単位は、ハンスフィールド単位(Hounsfield Unit;HU)であり、CT値が高いほどX線吸収値が高いことを示す。
【0097】
【表3】
【0098】
表3から分かるように、キセノンハイドレート水溶液のCT値は38.7であり、造影剤として使用できることが示された。一方、キセノンハイドレート水溶液以外のハイドレート水溶液のCT値はいずれも水と同じかそれよりも少し低く、造影剤としては使用できないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明によれば、ウルトラファインバブル発生装置を必要とせずに、手軽にキセノンウルトラファインバブルを液体中に発生させることができるキセノンウルトラファインバブル発生剤や、キセノンウルトラファインバブル含有液体組成物の製造方法や、かかる製造方法により製造されるキセノンウルトラファインバブル含有液体組成物等を提供することができる。