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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 29/00 20060101AFI20230718BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20230718BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20230718BHJP
   H01C 7/12 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
F25D29/00 Z
F25D11/00 101A
F25D23/00 305K
F25D23/00 307
H01C7/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020553900
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2019042207
(87)【国際公開番号】W WO2020090752
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018204330
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】堂田 英則
【審査官】嶋田 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-048964(JP,A)
【文献】特開2018-071538(JP,A)
【文献】米国特許第5129234(US,A)
【文献】特開2015-111999(JP,A)
【文献】実開昭60-005039(JP,U)
【文献】特開2005-098559(JP,A)
【文献】特開昭52-043980(JP,A)
【文献】米国特許第5532435(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 29/00
F25D 11/00
F25D 23/00
H01C 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、前記圧縮機を制御するインバータ制御回路と、貯蔵室と、前記貯蔵室に設けられたサーモスタットと、前記サーモスタットへの外部電源電圧の供給線と、アース端子とを備え、
前記サーモスタットは、導通状態において前記外部電源電圧を前記インバータ制御回路に出力し、遮断状態において前記外部電源電圧を前記インバータ制御回路に出力せず、
前記サーモスタットへの外部電源電圧の供給線と、前記アース端子との間に、サージ対策部品が接続されていることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記インバータ制御回路への外部電源電圧の供給線を備え、
前記サーモスタットへの外部電源電圧の供給線と、前記インバータ制御回路への外部電源電圧の供給線との分岐点より上流側に、前記サージ対策部品が接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記外部電源電圧を導入する電源コードを備え、
前記電源コードの冷蔵庫筐体への導入部近傍に、前記サージ対策部品が配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記サージ対策部品が前記インバータ制御回路と同一の基板または同一の筐体内に配置されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記サーモスタットは導電性の外殻を備え、前記アース端子に接続された配線が、前記外殻に接続されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記サージ対策部品は、バリスタ、サージアブソーバ、またはアレスタのいずれかを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
貯蔵室の温度を保つための圧縮器の動作について、サーモスタットによるオンオフ制御を行う固定速度圧縮機を備えた冷蔵庫(固定速度圧縮機式冷蔵庫)が、シンプルな構成の冷蔵庫として知られている。また、インバータ制御による可変速度圧縮機を備えた冷蔵庫(可変速度圧縮機式冷蔵庫)が、より省電力の冷蔵庫として知られている。
【0003】
更に、特許文献1に開示されるように、上記の固定速度圧縮機を備えた冷蔵庫に用いられるサーモスタットを利用してインバータ制御を行い、低コスト化を図った可変速度圧縮機式冷蔵庫が検討されている。本技術において、インバータ制御回路は、貯蔵室の温度情報をサーモスタットから取得し、可変速度圧縮機の制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第6134901号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、サーモスタットの出力は、外部からの商用交流電源が導通または遮断した信号である。よって、上記低コスト化を図った可変速度圧縮機式冷蔵庫では、外部からの商用交流電源の電圧が制御信号として直接インバータ制御回路に入力されることとなる。
【0006】
固定速度圧縮機式冷蔵庫においてサーモスタットの出力は、固定速度圧縮機の電動機に直接入力されるか、若しくは固定速度圧縮機の電動機のAC入力のリレーを制御するのに用いられる。これらは、サージへの耐性が強い電装部品であるため、商用交流電源系統からサーモスタットの出力に混入するサージが特に問題となることはなかった。しかし、サーモスタットの出力が、直接インバータ制御回路に入力されると、このようなサージが印加されてインバータ制御回路の故障の原因となる可能性があることが判明した。
【0007】
本発明の一態様は、サーモスタットを温度検出に用いる可変速度圧縮機式冷蔵庫において、サージによるインバータ制御回路の故障の発生が抑制された冷蔵庫を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る冷蔵庫は、圧縮機と、前記圧縮機を制御するインバータ制御回路と、貯蔵室と、前記貯蔵室に設けられたサーモスタットと、前記サーモスタットへの外部電源電圧の供給線と、アース端子とを備え、前記サーモスタットは、導通状態において前記外部電源電圧を前記インバータ制御回路に出力し、遮断状態において前記外部電源電圧を前記インバータ制御回路に出力せず、前記サーモスタットへの外部電源電圧の供給線と、前記アース端子との間に、サージ対策部品が接続されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、サーモスタットを温度検出に用いる可変速度圧縮機式冷蔵庫において、サージによるインバータ制御回路の故障の発生が抑制された冷蔵庫が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係る冷蔵庫の正面図である。
図2】実施形態1に係る冷蔵庫の、扉を開いた状態の正面図である。
図3】実施形態1に係る冷蔵庫の、背面斜め方向からの鳥瞰図である。
図4】実施形態1に係る冷蔵庫の、概略回路図である。
図5】実施形態1に係る冷蔵庫の、サーモスタットの外形を示す概略図である。
図6】実施形態1に係る冷蔵庫の、サージ吸収回路の具体例を示す回路図である。
図7】実施形態2に係る冷蔵庫の、概略回路図である。
図8】実施形態1に係る冷蔵庫と断熱箱体を共通とした、固定速度圧縮機式冷蔵庫の概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図1~6を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る冷蔵庫10の正面図である。冷蔵庫10の正面は、扉11がほぼ全面を覆っている。図2は、扉11を開けた状態の正面図である。冷蔵庫10の内部は貯蔵室であり、上部の冷凍室13と、冷蔵室14とから構成されている。扉11の内側には、収納ポケット12が設けられている。冷蔵室14には、棚板15、トレイ16が設けられ冷蔵室14が適宜区分されている。冷凍室13の横の位置には、ダイヤル141が配置されている。ダイヤル141は、外部からは直接見えないところに設置されているサーモスタット140の、設定温度の調整のためのダイヤルである。このように冷蔵庫10において、サーモスタット140が、貯蔵室の温度設定を行うために用いられている。図示されないが、冷凍室13の壁面はエバポレータを兼ねており、エバポレータが冷却されることで貯蔵室全体の低温の維持が行われる。冷凍室13と、冷蔵室14とから構成される貯蔵室の全体は、断熱材を充填した断熱箱体として構成される。
【0013】
図3は、冷蔵庫10の背面斜め方向からの鳥瞰図である。冷蔵庫10の底部には、背面に向けて開口している底部空間17が設けられている。底部空間17は、圧縮機等が配置し得る空間である。冷蔵庫10に外部からの商用交流電源を導入するための電源コード110は、底部空間17から外部に引き出されている。また、底部空間17のシャーシ部分に、アース端子120(E)が設けられている。図3には示されないが、後述のインバータ制御回路INV、サージ吸収回路SAも底部空間17内に設置される。
【0014】
図4は、冷蔵庫10の回路構成の概要を示す回路図である。図において点線で囲った領域は底部空間17の範囲を示す。図4で底部空間17外に配された回路部分は、断熱箱体内に配置される電装部である。断熱箱体から底部空間17に配線が引き出された箇所には、各端子R1、R2、Et、T1、A2、A1が設けられている。
【0015】
断熱箱体内の電気回路の構成は以下の通りである。
【0016】
端子R1は、扉スイッチSWを介して庫内灯Lに接続され、そのリターンが端子R2に接続される。また、端子R1から分岐した配線が、端子A1及びサーモスタットTM(140)の一端に接続される。サーモスタットTMの他端が端子T1に接続される。サーモスタットTM(140)の導電性の外殻142に設けられたアース用端子が、端子Etに接続される。端子A2が端子R2に接続される。
【0017】
端子R1及び端子R2は、断熱箱体内に外部電源電圧を供給するための端子対である。端子A1及び端子A2は、底部空間17内に設置される圧縮機に対して外部電源電圧を供給するためのサービス端子対である。端子T1は、サーモスタット信号を取り出すための端子である。
【0018】
図5には、サーモスタット140の外観を示す。サーモスタット140は、導電性の外殻142を備える。また、サーモスタット140は、一対の外部端子144と、導電性の外殻142に設けられたアース用端子143とを備える。一対の外部端子144は、端子T1及び端子R1に配線にて接続される。更に、サーモスタット140は、温度設定用のダイヤル141と、キャピラリー146とを備える。キャピラリー146は、先端の温度感知部を備え、貯蔵室の所要の位置に固定される。例示として、冷凍室13の壁面にキャピラリー146の温度感知部が固定される。
【0019】
底部空間17内の回路の構成は以下の通りである。
【0020】
外部の商用電源から電源電圧を導入するための一対の電源コード110が、冷蔵庫10の筐体への導入部付近にて、サージ吸収回路SAのAC入力端子対に接続される。サージ吸収回路SAの一方のAC出力端子Lが、端子R1に接続され、もう一方のAC出力端子Nが、端子R2に接続される。サージ吸収回路SAのアース用端子Esが、アース端子E(120)に接続される。端子Etが、アース端子E(120)に接続される。なお、アース端子Eが外部の商用電源のアースに接続されていることが好ましい。
【0021】
端子A1及び端子A2が、インバータ制御基板INVのAC入力端子対に接続される。端子T1が、インバータ制御回路INVの温度信号入力端子に接続される。インバータ制御回路INVの圧縮機制御出力(三線)が、可変速度圧縮機130の電動機Mに入力される。インバータ制御回路INV及び電動機Mのアース用端子がそれぞれ、アース端子E(120)に接続される。
【0022】
以上の回路構成により、庫内灯Lは、扉11の開閉に伴う扉スイッチSWのオン/オフにより、扉11が開けられている際に点灯する。サーモスタットTMは、検知する冷凍室13の壁面の温度が、設定値である上限温度よりも上昇した際に導通状態となり、端子T1に導通信号(外部電源電圧)を出力する。また、サーモスタットTMは、検知する冷凍室13の壁面の温度が、設定値である下限温度よりも低下した際に遮断状態となり、端子T1に外部電源電圧を出力しない。言い換えれば、このときサーモスタットTMは、端子T1に遮断信号(無電圧)を出力する。インバータ制御回路INVは、AC入力により起動し、サーモスタットTMから端子T1を通じて温度信号入力端子に入力される上記信号に基づいて、インバータの点弧制御を行う。そして、可変速度圧縮機の電動機Mの作動及び回転数を制御して、貯蔵室の温度を調整する。このような制御方法については、特許文献1やその他の公知技術を適用できる。
【0023】
図6に、サージ吸収回路SAの具体例を示す。サージ吸収回路SAは、AC入力端子対、AC出力端子対、アース用端子Esを備える。本具体例において、AC入力端子対とAC出力端子対は、それぞれの線路が直接接続されている。AC入力端子対間(AC出力端子対間)には、サージ対策部品Snが接続されている。サージ対策部品Snによりノーマルモードノイズを除去するためである。サーモスタットTMに接続されている端子R1に接続される側のAC出力端子Lとアース用端子Esとの間には、サージ対策部品Scが接続されている。サージ対策部品Scによりコモンモードノイズを除去するためである。
【0024】
ここで、サージ対策部品とは、過電圧が両端子間に印加されたときに、サージ対策部品を通じて電流が流れる(サージ電流を逃がす)機能を有した電子部品である。サージ対策部品は、サージ吸収部品またはサージ吸収素子とも称され得る。サージ対策部品は、バリスタ、アレスタ、サージアブソーバ等の部品が使用できる。
【0025】
更に、それぞれのサージ対策部品Sn、ScよりもAC出力端子対側であって一対のAC出力端子対間に2つのコンデンサCが直列接続され、各コンデンサC間の接続点が、アース用端子Esに接続されている。これにより、いわゆるYコンデンサが構成されている。インバータ制御回路INVの発するスイッチングノイズが、商用電力系統に漏洩しないようにするためである。
【0026】
上記の構成により、実施形態1に係る冷蔵庫10においては、以下の利点を有する。
【0027】
冷蔵庫10は、インバータ制御回路INVと、可変速度圧縮機130とを備えた、可変速度圧縮機式冷蔵庫である。よって、固定速度圧縮機式冷蔵庫と比較して、低消費電力化が実現される。
【0028】
更に、上記特定の回路構成としているため、冷蔵庫10の筐体部分である断熱箱体は、固定速度圧縮機式冷蔵庫90との共用が可能である。次に図8を参照して、この点について説明する。
【0029】
図8は、実施形態1に係る冷蔵庫10と断熱箱体を共用した、固定速度圧縮機式冷蔵庫90の回路構成の概要を示す図である。図において、点線で囲い示された底部空間17の外の領域である断熱箱体内に配置される回路の部分構成は、図4の冷蔵庫10と同じである。また、断熱箱体から底部空間17に配線が引き出された箇所に設けられた各端子R1、R2、Et、T1、A2、A1も、図4の冷蔵庫10と同じである。
【0030】
底部空間17内の回路の構成は以下の通りである。
【0031】
外部の商用電源を導入するための一対の電源コード110が、端子R1及び端子R2に接続される。この点、可変速度圧縮機式冷蔵庫である冷蔵庫10からは、サージ吸収回路SAが省略されていることとなる。端子Etが、アース端子E(120)に接続される。なお、アース端子Eが、外部の商用電源のアースに接続されていることが好ましい。
【0032】
端子A1及び端子A2が、リレーRLを介して固定速度圧縮機930の電動機mのAC入力対に接続される。リレーRLのオンオフ制御は、端子T1のサーモスタットTMからの出力で行われる。なお、リレーRLを用いず、サーモスタットTMからの出力で直接電動機mを駆動してもよい。この場合、図8において電動機mのAC入力対のうちの端子A1に接続されている側の端子は、端子T1に接続される。リレーRLを用いた場合、直接入力の場合のいずれにおいても、サーモスタットTMの導通/遮断により、電動機mがオン/オフされ、貯蔵庫の温度制御がなされることが理解される。なお、電動機起動用のPTC(Positive Temperature Coefficient)リレーが、電動機mの入力に適宜接続されていてもよい。
【0033】
図4図8とを比較して理解されるように、可変速度圧縮機式冷蔵庫である冷蔵庫10と、固定速度圧縮機式冷蔵庫90とで、内部の電気回路をも含めて断熱箱体を互換性のあるものとすることができる。このように内部の電気回路までも含めて断熱箱体の構成が共通化されていないと、互換性を確保することは困難である。なぜなら、断熱箱体の壁内部には、断熱材が充填されており、断熱箱体形成後に配線の変更を行うことができないからである。この点、本願発明では、断熱箱体から底部空間17に配線が引き出された箇所に設けられた各端子までが一致するようにされている。よって製造者は、準備した断熱箱体に対して、開口している底部空間17に圧縮機や周辺回路としてそれぞれの形式のものを設置し、各端子に対してコネクタ等で配線を接続することで、可変速度圧縮機式冷蔵庫も固定速度圧縮機式冷蔵庫も作り分けることができる。そのため、温度センサとして単に安価なサーモスタット方式を用いたということに限らず、断熱箱体の多量生産と、需要に応じた作り分けができるようになり、より低コストで可変速度圧縮機式冷蔵庫が実現できるようになる。
【0034】
固定速度圧縮機式冷蔵庫では、サーモスタットTMの出力(端子T1)に対し、特にサージ対策はなされない。なぜなら、リレーRLや電動機mはサージへの耐性が強い電装部品であるため、商用交流電源系統からサーモスタットTMの出力に混入するサージが特に問題となることはなかったためである。しかしながら、サーモスタットTMの出力がインバータ制御回路INVに入力される冷蔵庫10においては、このようなサージがインバータ制御回路INVを故障させる原因となり問題となった。本発明者らが種々対策を検討した結果によると、サーモスタットTMの出力から混入し、インバータ制御回路INVを故障させるサージは、アースとサーモスタットTMの端子間のコモンモードノイズ(サージ)が主原因であった。
【0035】
冷蔵庫10においては、図4及び図6に示されたように、外部の商用電源からサーモスタットTMへの外部電源電圧の供給線(端子R1に接続されるLライン)の側に、当該配線とアース端子Eとを接続するサージ対策部品Scが配置されている。これにより、サーモスタットTMを介して端子T1からインバータ制御回路INVに導入されるコモンモードのサージが有効に防止される。
【0036】
また、サージ対策部品Scは、サーモスタットへの外部電源電圧の供給線と、インバータ制御回路への外部電源電圧の供給線とが断熱箱体内で分岐する前の、端子R1よりも底部空間17側(外部の商用電源側)に設けられている。よって、端子R1を介して端子A1からインバータ制御回路INVのAC入力に導入され得るサージも同時に防止される。このように、サージ吸収回路SAは、インバータ制御回路INVに対して、AC入力端子対(圧縮機用サービス端子A1、A2)と温度信号入力端子(端子T1)を通じて導入され得るサージを、一回路で防止している。そのため、別々にサージ吸収回路を設ける場合と比較して、低コストでインバータ制御回路INVを万全に保護することができる。
【0037】
また、実施形態1では、サーモスタットTMの外殻142がアース端子Eに接続されていることで、外部ノイズによるサーモスタットTMの誤動作が防止されるが、一方で、外殻142を介してサーモスタットTMからインバータ制御回路INVの温度信号入力端子にコモンモードノイズが重畳しやすくなる。そこで、サーモスタットTMに接続されるライン(端子R1のライン)とアースとの間にサージ対策部品Scを接続することで、サーモスタットTMの端子とアースとの間のコモンモードノイズを除去できるので、特にサーモスタットTMが遮断したとき、すなわち端子T1が開放状態となっているときに、アース端子Eからのサージノイズがインバータ制御回路INVの温度信号入力端子に混入して、誤動作を起こしたり、インバータ制御回路INVを故障させたりするおそれを排除できる。
【0038】
更に、サージ吸収回路SAは、冷蔵庫10において、電源コード110の冷蔵庫筐体への導入部近傍に設けられる。そのため、冷蔵庫10内部へのサージの導入自体が未然に防止される。例えば、サージ吸収回路SAを、インバータ制御回路INVの直前に設けたとすると、インバータ制御回路INVに導入され得るサージ自体は防止し得るが、冷蔵庫内の配線をサージが通過することとなる。すると、冷蔵庫内に誘導ノイズを発生させ得るため、冷蔵庫内に他の電子機器が配置されている場合に問題を生じる可能性がある。しかし、冷蔵庫10では、そのような虞も未然に防止される。ここで、冷蔵庫筐体への導入部近傍とは、図3において、電源コード110が冷蔵庫筐体から引き出されている部分の直ぐ内側をいう。また、図4の回路図において、電源コード110が固定された端子から、直ぐ近くをいう。あるいは、図4の回路図において、電源コード110が固定された端子から、他の回路基板または断熱箱体内の配線を経ずに直接サージ吸収基板SAが接続されていることをいう。
【0039】
また、サージ吸収回路SAにおいて、インバータ制御基板INVが発生するスイッチングノイズが外部電源側に漏洩することを防止するためのYコンデンサは耐圧に限度があり、外部の商用電源からのサージにより故障する虞がある。しかし、冷蔵庫10では、サージ吸収回路SAにおいて、Yコンデンサよりも上流側(外部の商用電源側)にサージ対策部品Sc及びサージ対策部品Snが設けられているため、Yコンデンサを損傷させるようなサージが効果的に除去される。
【0040】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。以下の実施形態についても同様である。
【0041】
実施形態2に係る冷蔵庫20は、図1~6に示された冷蔵庫10と同様の構造を有する。ただし、底部空間17内の回路の構成が、冷蔵庫10とは異なる。図7は、冷蔵庫20の電気回路の概要を示す回路図である。図において点線で囲った領域は底部空間17の範囲を示す。
【0042】
断熱箱体から底部空間17に配線が引き出された箇所に設けられる各端子R1、R2、Et、T1、A2、A1は、冷蔵庫10と同じである。底部空間17内の回路の構成は以下の通りである。
【0043】
冷蔵庫20においては、可変速度圧縮機130の近傍に、インバータ制御回路INV及びサージ吸収回路SAが構成された回路基板150が設けられている。
【0044】
外部の商用電源を導入するための一対の電源コード110に接続された配線が、サージ吸収回路SAのAC入力端子対に接続される。サージ吸収回路SAのAC出力端子対は、回路基板150内にてインバータ制御回路INVのAC入力端子対に入力される。また、サージ吸収回路SAの一方のAC出力端子Lは分岐されて端子R1に接続され、もう一方のAC出力端子Nは分岐されて端子R2に接続される。インバータ制御回路INVのアース端子及びサージ吸収回路SAのアース用端子Esが、アース端子E(120)に接続される。なお、インバータ制御回路INVのアース用端子とサージ吸収回路SAのアース用端子Esとは、回路基板150内で接続して共通の端子としてもよい。また、アース端子Eが外部の商用電源のアースに接続されていることが好ましい。インバータ制御回路INVの圧縮機制御出力(三線)が、可変速度圧縮機130の電動機Mに入力される。端子Et及び電動機Mのアース用端子が、アース端子E(120)に接続される。
【0045】
インバータ制御回路INVへのAC入力が、回路基板150内でサージ吸収回路SAから行われているため、端子A1及び端子A2の底部空間17側には配線が接続されていない。しかし、冷蔵庫20においても、サージ吸収回路SAの位置が異なる他は、冷蔵庫10と電気的には同様の回路構成である。よって、実施形態2においても、サージ吸収回路SAが設置される物理的位置が異なることによる効果の相違を除いて、実施形態1と同様の効果が得られる。
【0046】
また、冷蔵庫20においては、サージ吸収回路SAと、インバータ制御回路INVとを、同一の回路基板150上に形成することができる。あるいは、別々の回路基板上であったとしても、同一の筐体内に形成することができる。よって、実施形態1のように回路基板及び筐体を別々に形成する場合と比較して、更にコスト低減が可能である。
【0047】
更に、実施形態2では、サージ吸収回路SAとインバータ制御回路INVとを、可変速度圧縮機130に取り付けるなど、可変速度圧縮機130と一緒にパッケージ化することが可能となる。これにより、従来型の固定速度圧縮機を可変速度圧縮機に置き換えて配線処理をするだけで、容易に可変速度圧縮機式冷蔵庫とすることができ、より低コストかつ少ない工程で可変速度圧縮機式冷蔵庫が実現できるようになる。
【0048】
〔付記事項〕
以上各実施形態において、サージ吸収回路SAがそれぞれ特定の例である場合について説明された。しかし、サージ吸収回路SAの具体的構成は上記に限られるものではない。例えば、図6の回路図において、AC入力端子対間のサージ対策部品Snまたは、Yコンデンサ、あるいはその双方を省略することが可能である。あるいは、図6の回路図において、アースに接続されるサージ対策部品Scが設けられていないAC入力端子の側にも、アースに接続されるサージ対策部品を加えることも可能である。また、インバータ制御回路INVからのスイッチングノイズの漏洩をより効果的に防止するため、Xコンデンサを回路内に設けてもよい。また、AC入力端子対とAC出力端子対は、それぞれの線路が直接接続されているが、これに限らず、AC入力端子対とAC出力端子対との間にコイル等のフィルタ素子を介在させてもよい。
【0049】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る冷蔵庫は、圧縮機と、前記圧縮機を制御するインバータ制御回路と、貯蔵室(冷凍室13及び冷蔵室14)と、前記貯蔵室に設けられたサーモスタットと、前記サーモスタットへの外部電源電圧の供給線と、アース端子とを備え、前記サーモスタットは、導通状態において前記外部電源電圧を前記インバータ制御回路に出力し、遮断状態において前記外部電源電圧を前記インバータ制御回路に出力せず、前記サーモスタットへの外部電源電圧の供給線と、前記アース端子との間に、サージ対策部品が接続されている構成を備えている。
【0050】
上記の構成によれば、サーモスタットを温度検出に用いる可変速度圧縮機式冷蔵庫において、サージによるインバータ制御回路の故障の発生が抑制された冷蔵庫を実現することが可能になる。
【0051】
本発明の態様2に係る冷蔵庫は、上記態様1において、前記インバータ制御回路への外部電源電圧の供給線を備え、前記サーモスタットへの外部電源電圧の供給線と、前記インバータ制御回路への外部電源電圧の供給線との分岐点より上流側に、前記サージ対策部品が接続されていてもよい。
【0052】
上記の構成によれば、インバータ制御回路に対して、サーモスタットへの電源電圧の供給線から混入するサージに留まらず、電源電圧の供給線から混入するサージをも、前記サージ対策部品で合わせて抑制することができる。
【0053】
本発明の態様3に係る冷蔵庫は、上記態様1または2において、前記外部電源電圧を導入する電源コードを備え、前記電源コードの冷蔵庫筐体への導入部近傍に、前記サージ対策部品が配置され構成を備えていてもよい。
【0054】
上記の構成によれば、インバータ制御回路に対して、サーモスタットへの電源電圧の供給線から混入するサージに留まらず、冷蔵庫内に混入するサージを合わせて抑制できる。
【0055】
本発明の態様4に係る冷蔵庫は、上記態様1~3において、前記サージ対策部品が前記インバータ制御回路と同一の基板または同一の筐体内に配置されていてもよい。
【0056】
上記の構成によれば、サージ対策部品とインバータ制御回路を別部品として取り扱わなくてもよくなり、より低コストかつ少ない工程で可変速度圧縮機式冷蔵庫が実現できるようになる。
【0057】
本発明の態様5に係る冷蔵庫は、上記態様1~4において、前記サーモスタットが導電性の外殻を備え、前記アース端子に接続された配線が、前記外殻に接続されていてもよい。
【0058】
上記の構成によれば、インバータ制御回路に対して、サーモスタットへの電源電圧の供給線から混入するサージを効果的に抑制できる。
【0059】
本発明の態様6に係る冷蔵庫は、上記態様1~5において、前記サージ対策部品が、バリスタ、サージアブソーバ、またはアレスタのいずれかを含む構成を備えていてもよい。
【0060】
上記の構成によれば、上記サージ対策部品を具体的に構成できる。
【0061】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。更に、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0062】
10、20 冷蔵庫
11 扉
12 収納ポケット
13 冷凍室
14 冷蔵室
15 棚板
16 トレイ
17 底部空間
110 電源コード
120 アース端子(E)
130 可変速度圧縮機
140 サーモスタット(TM)
141 ダイヤル
142 外殻
143 アース用端子
144 外部端子
146 キャピラリー
150 回路基板
INV インバータ制御回路
SA サージ吸収回路
Sc、Sn サージ対策部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8