(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 11/14 20060101AFI20230719BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230719BHJP
B41J 13/02 20060101ALI20230719BHJP
B41J 11/06 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
B41J11/14
B41J2/01 305
B41J13/02
B41J11/06
(21)【出願番号】P 2019164639
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏明
(72)【発明者】
【氏名】荒川 悠太
(72)【発明者】
【氏名】野田 憲吾
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-016598(JP,A)
【文献】特開2013-111837(JP,A)
【文献】特開2016-064891(JP,A)
【文献】特開2006-315272(JP,A)
【文献】特開2005-324451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00- 11/70
B41J 2/01
B41J 2/165- 2/20
B41J 2/21- 2/215
B41J 29/00- 29/70
B41J 13/00- 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を通じて外部に開放された内部空間を有する筐体と、
上記筐体の内部における上記内部空間に対して上記開口の反対の位置に形成されたシートの搬送路と、
上記搬送路に位置しており、シートを挟持して上記内部空間へ向かう搬送向きに搬送するローラ対と、
上記搬送路における上記ローラ対より上記搬送向きの上流に位置しており、シートを支持する支持面を有するプラテンと、
上記プラテンの上方に位置しており、上記プラテンに支持されたシートに画像を記録する記録部と、
上記プラテンを、上記記録部によるシートへの画像記録時の位置である印刷位置と、上記支持面の上記搬送向きの端部が上記印刷位置より下方に位置して、上記プラテン及び上記記録部の間の空間が上記端部及び上記ローラ対の隙間を通じて上記内部空間と連通する開放位置とに回動させる回動機構と、
上記筐体の下部を構成しており、樹脂材料で一体成型されているベース部材と、を備え、
上記ベース部材は、上方へ突出しており且つ上記搬送向き及び上下方向と交差する方向へ延びた壁を備え、
上記プラテンが上記開放位置に位置するときに、上記端部は上記壁より上記搬送向きの上流に位置しており且つ上記壁の上端より下方において上記ベース部材に支持されている画像記録装置。
【請求項2】
上記壁の上面を含む仮想面は、上記搬送向きの上流に向かうにしたがって上方へ向かうように傾斜しており、
上記プラテンが上記開放位置に位置するときに、上記仮想面は、上記プラテンを上方から覆っている請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記プラテンは、リブを備え、
上記リブは、
上記支持面上を上記端部まで上記搬送向きに沿って延びた第1部分と、
上記端部において上記第1部分と連続しており下方へ延びた第2部分と、を備え、
上記ローラ対を構成するローラのうち下方に位置する下ローラは、上記搬送向き及び上下方向と直交する方向に延びたシャフトと、上記シャフトを覆うローラ部と、を備え、
上記プラテンが上記印刷位置のときに、上記第2部分の下端は上記シャフトの下端より上方に位置する請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記プラテンが上記開放位置のときに、上記ローラ対を構成するローラは互いに当接している請求項1から3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記開口を通じて上記内部空間へ第1向きに挿入されて上記筐体に装着され、上記第1向きと逆向きの第2向きに上記筐体から抜去され、シートが支持されるトレイを備え、
上記搬送路は、上記トレイから上記第1向き且つ上方へ延びつつ上記第2向きへUターンする第1経路、及び上記第1経路と連続しており上記第2向きへ延びて上記内部空間へ至る第2経路よりなり、
上記ローラ対、上記プラテン、及び上記記録部は、上記第2経路に位置している請求項1から4のいずれかに記載の画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録装置において、筐体内にシートが詰まったとき、ユーザが筐体の外部から当該シートにアクセスすることによって当該シートは筐体内から取り除かれる。
【0003】
例えば、特許文献1には、シートに画像を記録する記録部と対向しておりシートを支持するプラテンが回動可能なプリンタが開示されている。当該プリンタでは、記録部とプラテンの間でシートが詰まったときに、プラテンが基準位置から開放位置へ回動されることによって、シートの搬送路が大きく開いた状態となってシートの取り出しが容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プラテンが開放位置へ回動された状態でシートの取り出しが行われるとき、ユーザの手がプラテンに触れてプラテンが破損するおそれがある。特に、プラテンの回動先端部は破損し易いため、ユーザの手が触れないことが望ましい。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラテンが回動可能な構成において、プラテンの破損の可能性を低くすることができる画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像記録装置は、開口を通じて外部に開放された内部空間を有する筐体と、上記筐体の内部における上記内部空間に対して上記開口の反対の位置に形成されたシートの搬送路と、上記搬送路に位置しており、シートを挟持して上記内部空間へ向かう搬送向きに搬送するローラ対と、上記搬送路における上記ローラ対より上記搬送向きの上流に位置しており、シートを支持する支持面を有するプラテンと、上記プラテンの上方に位置しており、上記プラテンに支持されたシートに画像を記録する記録部と、上記プラテンを、上記記録部によるシートへの画像記録時の位置である印刷位置と、上記支持面の上記搬送向きの端部が上記印刷位置より下方に位置して、上記プラテン及び上記記録部の間の空間が上記端部及び上記ローラ対の隙間を通じて上記内部空間と連通する開放位置とに回動させる回動機構と、上記筐体の下部を構成しており、樹脂材料で一体成型されているベース部材と、を備える。上記ベース部材は、上方へ突出しており且つ上記搬送向き及び上下方向と交差する方向へ延びた壁を備える。上記プラテンが上記開放位置に位置するときに、上記端部は上記壁より上記搬送向きの上流に位置しおり且つ上記壁の上端より下方において上記ベース部材に支持されている。
【0008】
プラテンが開放位置に回動された状態において開口から内部空間が視認されたときに、プラテンの搬送向きの端部の手前に壁がある。そのため、プラテンが開放位置に回動されたときに、プラテンの搬送向きの端部にユーザの手が触れる可能性を低くすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る画像記録装置によれば、回動可能なプラテンの破損の可能性を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像記録装置としてのプリンタ部11を含む複合機10の斜視図である。
【
図2】
図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、プリンタ部11の下部の斜視図である。
【
図4】
図4は、給送トレイ20及び排出トレイ21の斜視図である。
【
図5】
図5は、搬送ローラ60と排出ローラ62とローラホルダ85とサイドフレーム55とスライド部材74とその周辺の斜視図である。
【
図6】
図6は、プラテン42を上方から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、当接部材41とプラテン42と用紙12との模式断面図である。
【
図8】
図8は、プラテン42を下方から見た斜視図である。
【
図9】
図9は、ベース部材90の左部92周辺の斜視図である。
【
図10】
図10(A)は、レバー75の軸76とベース部材90及びサイドフレームとの接続を示すためにレバー75及びその周辺を上方から見た図であり、
図10(B)は、サイドフレーム55とベース部材90の固着を示すためにサイドフレーム55を上方から見た図である。
【
図11】
図11は、給送トレイ20が装着されている状態におけるプリンタ部11の左右方向9の中央での縦断面図である。
【
図12】
図12は、給送トレイ20が装着されている状態における右側のレバー75が右方から見える位置でのプリンタ部11の縦断面図である。
【
図13】
図13は、給送トレイ20が装着されている状態におけるプラテン42の右側面が見える位置でのプリンタ部11の縦断面図である。
【
図14】
図14は、給送トレイ20が後方からレバー75に当接したときのプリンタ部11の左右方向9の中央での縦断面図である。
【
図15】
図15は、給送トレイ20が後方からレバー75に当接したときの右側のレバー75が右方から見える位置でのプリンタ部11の縦断面図である。
【
図16】
図16は、給送トレイ20が後方からレバー75に当接したときのプラテン42の右側面が見える位置でのプリンタ部11の縦断面図である。
【
図17】
図17は、搬送ローラ対59が離間状態に変化した状態におけるプリンタ部11の左右方向9の中央での縦断面図である。
【
図18】
図18は、搬送ローラ対59が離間状態に変化した状態における右側のレバー75が右方から見える位置でのプリンタ部11の縦断面図である。
【
図19】
図19は、搬送ローラ対59が離間状態に変化した状態におけるプラテン42の右側面が見える位置でのプリンタ部11の縦断面図である。
【
図20】
図20は、スライド部材74が前位置のときのプリンタ部11の左右方向9の中央での縦断面図である。
【
図21】
図21は、スライド部材74が前位置のときの右側のレバー75が右方から見える位置でのプリンタ部11の縦断面図である。
【
図22】
図22は、スライド部材74が前位置のときのプラテン42の右側面が見える位置でのプリンタ部11の縦断面図である。
【
図23】
図23は、給送トレイ20が前方からスライド部材74に当接したときのプリンタ部11の左右方向9の中央での縦断面図である。
【
図24】
図24は、給送トレイ20が前方からスライド部材74に当接したときの右側のレバー75が右方から見える位置でのプリンタ部11の縦断面図である。
【
図25】
図25は、給送トレイ20が前方からスライド部材74に当接したときのプラテン42の右側面が見える位置でのプリンタ部11の縦断面図である。
【
図26】
図26は、変形例におけるプリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図28】
図28は、変形例におけるプリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図29】
図29は、変形例におけるプリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、開口13が設けられている面を手前(前面17)として前後方向8が定義され、複合機10を手前側(前面17側)から見て左右方向9が定義される。上下方向7、前後方向8、及び左右方向9は、互いに直交している。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。換言すれば、向きは方向の一成分である。
【0012】
[複合機10の全体構造]
図1に示されるように、複合機10は、薄型の直方体に概ね形成された筐体14を備える。複合機10は、プリント機能、スキャン機能などの各種の機能を有している。複合機10は、プリント機能として、インクジェット方式で用紙12(
図2参照、シートの一例)の片面に画像を記録する機能を有している。複合機10は、用紙12の両面に画像を記録するものであってもよい。プリント機能を実現するためのプリンタ部11(画像記録装置の一例)が、筐体14の下部に設けられている。スキャン機能を実現するためのスキャナ部35が、筐体14の上部に設けられている。
【0013】
筐体14は、プリンタ部11及びスキャナ部35の各構成要素を、その内部に収容する外装カバーである。筐体14は、後述するベース部材90(
図3参照)に上方から覆い被せられる。
【0014】
図2及び
図3に示されるように、プリンタ部11は、構成要素として、給送トレイ20(トレイの一例)と、排出トレイ21と、給送部16と、搬送路65と、ベース部材90と、一対のサイドフレーム55(フレームの一例)と、記録部24と、ガイドレール56と、搬送ローラ対59と、排出ローラ対44(ローラ対の一例)と、当接部材41と、プラテン42と、連動機構とを備える。連動機構は、
図11に示されるように、スライド部材74(回動機構の一例)と、レバー75と、コイルバネ115とを備える。
図2、
図3、及び
図11に示されるように、給送部16、搬送路65、一対のサイドフレーム55、記録部24、ガイドレール56、搬送ローラ対59、排出ローラ対44、当接部材41、プラテン42、及び連動機構は、筐体14の内部に位置する。
【0015】
[給送トレイ20]
図1に示されるように、開口13が、筐体14の前面17に形成されている。
図3に示されるように、筐体14は、内部空間23を有している。内部空間23は、開口13を通じて外部(筐体14の前方)に開放されている。
【0016】
給送トレイ20は、後方へ(後向きに)移動することによって開口13を通じて筐体14に挿入されて筐体14に装着される。
図1は、給送トレイ20が筐体14に装着された状態が示されている。筐体14に装着されている給送トレイ20は、前方へ(前向きに)移動することによって開口13を通じて筐体14から抜去される(
図4参照)。後向きは第1向きの一例である。前向き(後向きと逆向き)は第2向きの一例である。
【0017】
図4に示されるように、給送トレイ20は、上部が開放された箱形状の部材である。給送トレイ20は、底壁22と、一対の側壁30とを備えている。
【0018】
図2に示されるように、用紙12が、底壁22に積層した状態で支持される。なお、
図2以外の各図において、用紙12の図示は省略されている。
【0019】
図4に示されるように、底壁22は、左右方向9に移動可能な一対のサイドガイド98を支持している。なお、
図4には、一対のサイドガイド98のうち右側のサイドガイド98のみが表示されており、一対のサイドガイド98のうち左側のサイドガイド98は排出トレイ21によって見えない位置にある。右側のサイドガイド98の左面には、底壁22に支持された用紙12の右端が当接する。左側のサイドガイド98の右面には、底壁22に支持された用紙12の左端が当接する。一対のサイドガイド98は互いに連動可能に連結されている。一対のサイドガイド98のうちの一方が右方または左方へ移動すると、他方が連動して左方または右方へ移動する。
【0020】
図4に示されるように、一対の側壁30は、底壁22の右端及び左端から上方へ立設されている。一対の側壁30は、前後方向8へ延びている。給送トレイ20における後述するレバー75に当接される部分である一対の側壁30は、開口13の上端13A(
図11参照)より下方に位置している。
【0021】
一対の側壁30は、その後端部に上面97から下方へ凹んだ凹部99を有する。凹部99の前端を区画する傾斜面99Aは、前方へ向かうにしたがって上方へ向けて傾斜している。
【0022】
一対の側壁30は、左右方向9における外側に、切り欠き96を有する。つまり、一対の側壁30の左右方向9における内側は、切り欠かれていない。一対の側壁30は、この切り欠かれていない位置に、上方へ突出した突部125を備えている。突部125は、排出トレイ21を支持している。
【0023】
切り欠き96は、一対の側壁30の上面97から下方へ凹んでいる。切り欠き96は、前後方向8において一対の側壁30の概ね中央部に形成されている。切り欠き96の後端は、後面96Aによって区画されている。後面96Aの上端部は、傾斜面96Bである。傾斜面96Bは、後方へ向かうにしたがって上方へ向かって傾斜している。切り欠き96の前端は、前面96Cによって区画されている。
【0024】
突部125は、給送トレイ20が筐体14へ挿入される過程において、スライド部材74の凸部124に前方から当接する。突部125の上端部に、左右方向9に貫通した孔126が形成されている。排出トレイ21の突起127が孔126に挿入されている(
図4参照)。
【0025】
切り欠き96の上方には、後述するレバー75が配置される。そのため、突部125は、側壁30の左右方向9の内側へオフセットして配置されるともに、高くされることとなった。これにより、突部125に支持される排出トレイ21の位置が上方へオフセットされたため、排出トレイ21の下方に位置するサイドガイド98の高さを高くすることができた。
【0026】
上面97は、切り欠き96の前面96Cの上端から前方へ向けて延びる水平面97Aを有する。
【0027】
[排出トレイ21]
図4に示されるように、排出トレイ21は、給送トレイ20により回動可能に支持されており、給送トレイ20と一体に前後方向8に移動する。排出トレイ21は、その後端部の左右両端から左右方向9へ突出した突起127を備えている。突起127は、給送トレイ20の突部125に形成された孔126へ挿入されている。これにより、排出トレイ21は、突起127の中心を通り且つ左右方向9に延びた軸を中心として、給送トレイ20に対して矢印131の方向に回動可能である。排出トレイ21が回動することによって、給送トレイ20の前部の上方は開閉される。
図4には、給送トレイ20が排出トレイ21によって閉じられた状態が示されている。排出トレイ21が当該状態から上方へ回動されて給送トレイ20が開かれることによって、給送トレイ20に対する用紙12の出し入れが可能となる。
【0028】
図2及び
図11に示されるように、給送トレイ20が筐体14に装着されているとき、排出トレイ21の上面31は内部空間23を区画する底面を構成する。上面31は、記録部24によって画像が記録されて内部空間23へ排出された用紙12を支持する。上面31に支持された用紙12は、ユーザによって開口13を通じて筐体14の外部に取り出される。
【0029】
図4に示されるように、上面31は、前部上面31Aと後部上面31Bと傾斜面31Cとを有する。前部上面31Aは、上面31の前端から後方へ延びている。前部上面31Aは、前後方向8において給送トレイ20の側壁30の水平面97Aの前方近傍まで延びている。後部上面31Bは、上面31の後端から前方へ延びている。後部上面31Bは、前部上面31Aより下方に位置する。後部上面31Bは、傾斜面31Cを介して前部上面31Aと繋がっている。
【0030】
[給送部16]
図2及び
図11に示されるように、給送部16は、プリンタ部11に装着された状態の給送トレイ20の底壁22の上方且つ記録部24の下方に位置している。給送部16は、給送ローラ25、給送アーム26、及び駆動伝達機構27を備えている。給送ローラ25は、給送アーム26の先端部において軸支されている。給送アーム26は、基端部に設けられた支軸28を中心として、矢印29の方向に回動する。これにより、給送ローラ25は、給送トレイ20または給送トレイ20に支持された用紙12に対して、当接及び離間が可能である。
【0031】
給送ローラ25は、複数のギヤを含む駆動伝達機構27によって、搬送用モータ73(
図3参照)の駆動力が伝達されて回転する。これにより、給送トレイ20の底壁22により支持された用紙12のうち、給送ローラ25と当接している最も上側の用紙12が、搬送路65へ給送される。なお、給送ローラ25は、搬送用モータ73とは別に設けられたモータから駆動力を付与されて回転してもよい。また、駆動伝達機構27は、複数のギヤを含む形態に限らず、例えば支軸28と給送ローラ25の軸とに架け渡されたベルトを含むものであってもよい。
【0032】
[搬送路65]
図2に示されるように、給送トレイ20の後端部から搬送路65が延出されている。搬送路65は、内部空間23より後方に形成されている。つまり、搬送路65は、内部空間23に対して、筐体14の前端に位置する開口13の反対に形成されている。搬送路65は、湾曲部33(第1経路の一例)と直線部34(第2経路の一例)とを備える。湾曲部33は、後側を湾曲外側とし、前側を湾曲内側として湾曲しつつ延びている。直線部34は、前後方向8に延びている。
【0033】
湾曲部33は、給送トレイ20の後端部から上方へ延びつつ後向きから前向きへUターンしている。湾曲部33は、所定間隔を隔てて互いに対向する第1ガイド部材18と第2ガイド部材19とによって形成されている。第1ガイド部材18は、湾曲部33の湾曲外側を区画している。第2ガイド部材19は、湾曲部33の湾曲内側を区画している。
【0034】
直線部34は、概ね前後方向8に延びている。直線部34の後端は、湾曲部33と連続している。直線部34の前端は、内部空間23と連続している。つまり、直線部34は、湾曲部33と連続しており前方へ延びて内部空間23に至っている。換言すると、直線部34は、内部空間23から後方へ延びている。直線部34は、記録部24が配置されている位置では所定間隔を隔てて互いに対向する記録部24とプラテン42とによって形成されている。第1ガイド部材18及び第2ガイド部材19は、
図2における紙面と直交する方向である左右方向9に延設されている。
【0035】
給送トレイ20により支持された用紙12は、給送ローラ25によって湾曲部33を下から上へUターンするように搬送されて搬送ローラ対59に到達する。搬送ローラ対59により挟持された用紙12は、画像記録面を記録部24に向けて直線部34を前方に搬送される。記録部24の直下に到達した用紙12は、記録部24により画像記録面に画像を記録される。画像が記録された用紙12は、直線部34を前方に搬送されて排出トレイ21の上面31に排出される。以上のように、用紙12は、
図2に一点鎖線の矢印により示される搬送向き15に沿って搬送される。
【0036】
[ベース部材90]
図3に示されるベース部材90は、プリンタ部11の下部を構成する部材であり、PBTやABSなどの樹脂材料によって一体成型されている。
【0037】
図3に示されるように、ベース部材90は、プリンタ部11の右部を構成する右部91と、プリンタ部11の左部を構成する左部92と、右部91及び左部92を繋いでいる連結部93とを備えている。
【0038】
ベース部材90の底面は、複合機10が机上などに載置される際の載置面となる。
【0039】
右部91は、筐体14に装着された給送トレイ20より右方に位置している。左部92は、筐体14に装着された給送トレイ20より左方に位置している。つまり、給送トレイ20は、右部91及び左部92の間に装着される。
【0040】
図3及び
図12に示されるように、右部91及び左部92は、それぞれ第1凸部94と第2凸部95とを備える。右部91が備える第1凸部94及び第2凸部95は、右部91の左面から左方へ突出している。左部92が備える第1凸部94及び第2凸部95は、左部92の右面から右方へ突出している。第2凸部95は、第1凸部94より後方に位置する。第1凸部94及び第2凸部95は、前後方向8に間隔を空けて設けられている。
【0041】
第1凸部94の下面94A及び第2凸部95の下面95Aは、給送トレイ20の側壁30の上面97、及び排出トレイ21の上面31に上方から当接可能である。下面94Aは、傾斜面94Bを有する。傾斜面94Bは、後方へ向かうにしたがって下方へ向けて傾斜している。下面95Aは、傾斜面95Bを有する。傾斜面95Bは、後方へ向かうにしたがって下方へ向けて傾斜している。傾斜面94B、95Bは、筐体14へ挿入される給送トレイ20を下方へガイドする。
【0042】
図12に示されるように、右部91及び左部92は、第2凸部95の後方に第3凸部70を備える。第3凸部70は、第2凸部95と連続している。第3凸部70の下端は、第2凸部95の下端より上方に位置する。第3凸部70の後下端部70Aは、レバー75と当接してレバー75が矢印151の向きに回動することを規制する。
【0043】
図11に示されるように、連結部93は、プラテン42の下方に、下方へ凹む凹部118を有している。凹部118の底は、面119によって区画されている。面119は、前後方向8において面119から上方へ突出する壁120、121に挟まれている。壁120は、壁121より前方に位置する。壁120、121は、左右方向9に延びている。壁120は、上面に傾斜面122を有している。傾斜面122は、後方へ向かうにしたがって上方へ向かって傾斜している。
【0044】
[サイドフレーム55]
図5に示されるように、サイドフレーム55は、左右方向9に間隔を空けて一対に設けられている。各サイドフレーム55は、金属材料によって一体成型されている。各サイドフレーム55は、上下方向7及び前後方向8に拡がる側板55Aと、側板55Aの下端から左右方向9の内側(右側のサイドフレーム55では左方、左側のサイドフレーム55では右方)へ延びる底板55Bとを備える。底板55Bは、スライド部材74を支持する。
【0045】
各サイドフレーム55は、突起36及び突起37を備えている。突起36及び突起37は、側板55Aの上端から左右方向9の外側(右側のサイドフレーム55では右方、左側のサイドフレーム55では左方)へ延びている。突起36は、突起37より前方に位置している。
【0046】
突起36は、切り欠き51を有している。
図10(B)に示されるように、ベース部材90が突起36の下方に位置しており、ベース部材90に形成されたネジ穴(不図示)が切り欠き51の下方に位置している。ネジ52が上方から切り欠き51を貫通してネジ穴に締結される。これにより、サイドフレーム55は、ベース部材90に固着されている。
【0047】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、直線部34の上方に設けられており、キャリッジ40と記録ヘッド38とを備えている。記録部24の下方且つ記録部24と対向する位置に、プラテン42が設けられている。プラテン42は、直線部34を搬送される用紙12を支持する部材である。プラテン42については、後に詳細に説明される。
【0048】
キャリッジ40は、前後方向8に間隔を空けて配置された2つのガイドレール56によって左右方向9へ往復移動可能に支持されている。2つのガイドレール56は、金属材料によって一体成型されており、一対のサイドフレーム55の側板55A(
図3参照)によって支持されている。
【0049】
記録ヘッド38は、キャリッジ40に搭載されている。記録ヘッド38には、インクカートリッジ100(
図1参照)からインクが供給される。記録ヘッド38の下面には、複数のノズル39が形成されている。記録ヘッド38の下面に形成された複数のノズル39は、左右方向9に間隔を空けて並んだ複数のノズル列で構成されている。各ノズル列は、搬送向き15(前後方向8)に沿って間隔を空けて並んだ所定数(複数)のノズル39で構成されている。つまり、記録ヘッド38の下面に形成されたノズル39の数は、ノズル列の数に所定数を乗算した数である。なお、
図2には、1つのノズル列が模式的に記されている。
【0050】
キャリッジ40が左右方向9に移動しているときに、記録ヘッド38は、ノズル39からインク滴をプラテン42に向けて吐出する。これにより、プラテン42に支持された状態の用紙12に画像が記録される。
【0051】
キャリッジ40は、
図5に示される対向領域154と退避領域155、156とに移動可能である。
【0052】
対向領域154は、記録ヘッド38が用紙12へ画像記録するときにキャリッジ40が移動する領域であり、プラテン42と上下方向7に対向する領域である。つまり、対向領域154は、搬送路65の直線部34とプラテン42との上方に位置する。対向領域154は、2つのスライド部材74の間の領域である。
【0053】
退避領域155、156は、左右方向9におけるスライド部材74より外側の領域である。退避領域155は、右側のスライド部材74より右方の領域であり、退避領域156は、左側のスライド部材74より左方の領域である。
【0054】
退避領域155に、メンテナンス機構が配置される。メンテナンス機構は、例えば、上下動可能であって記録ヘッド38のノズル39を覆うキャップや、チューブなどを介してキャップと連結された廃液貯留部などを備える。記録ヘッド38のメンテナンスは、例えばインクの空吐出である。メンテナンスが実行されるときに、キャリッジ40は退避領域155に移動する。キャップが上方に移動してノズル39を覆う。ノズル39からインクが吐出される。吐出されたインクは、チューブを介して廃液貯留部へ流通する。なお、メンテナンス機構は、退避領域156に配置されていてもよい。
【0055】
[搬送ローラ対59及び排出ローラ対44]
図2に示されるように、搬送路65の直線部34における記録ヘッド38及びプラテン42の支持面より搬送向き15の上流(記録ヘッド38より後方)に、搬送ローラ対59が配置されている。
【0056】
搬送ローラ対59は、直線部34の下方に配置された搬送ローラ60と、直線部34の上方に搬送ローラ60と対向して配置されており、搬送ローラ60に従動するピンチローラ61とを備えている。
【0057】
図5に示されるように、搬送ローラ60は、左右方向9に延びる円柱状の部材である。搬送ローラ60は、一対のサイドフレーム55の側板55Aによって軸受71を介して回転可能に支持されている。本実施形態では、軸受71が、側板55Aに形成された切り欠きに嵌められており、搬送ローラ60が軸受71に挿通されている。
【0058】
図2に示されるピンチローラ61は、
図5及び
図11に示されるローラホルダ85によって回転可能に支持されている。
図5に示されるように、ローラホルダ85の上方に、コイルバネ57が設けられている。コイルバネ57の下端がローラホルダ85に接続されており、コイルバネ57の上端が
図3に示されるガイドレール56の下面に接続されている。これにより、ローラホルダ85は、コイルバネ57を介してガイドレール56に支持されている。ローラホルダ85は、コイルバネ57によって下方へ付勢されている。これにより、ローラホルダ85に支持されているピンチローラ61は、搬送ローラ60に付勢されている。ローラホルダ85は、その後部に上方へ延びた突部88を備えている。突部88の先端は、ガイドレール56に掛けられて支持されている(
図3及び
図11参照)。これにより、ローラホルダ85の姿勢が安定する。ローラホルダ85は、左右方向9にローラホルダ85を貫通する貫通孔86を有している。貫通孔86には、シャフト87が挿通されている。
【0059】
搬送ローラ対59は、ニップ状態と離間状態とに状態変化可能である。シャフト87に外部から力が付与されていない場合、ピンチローラ61がコイルバネ57に付勢されることによって搬送ローラ60に当接する。このときの搬送ローラ対59は、ニップ状態である。シャフト87がスライド部材74の突起106にガイドされて上方へ移動すると、ピンチローラ61はコイルバネ57の付勢力に抗して搬送ローラ60から離間する(
図19参照)。このときの搬送ローラ対59は、離間状態である。
【0060】
図2に示されるように、直線部34における記録ヘッド38及びプラテン42の支持面より搬送向き15の下流(記録ヘッド38より前方)に、排出ローラ対44が配置されている。
【0061】
排出ローラ対44は、直線部34の下方に配置された排出ローラ62(下ローラの一例)と、直線部34の上方に排出ローラ62と対向して配置されており、排出ローラ62に従動する拍車63とを備えている。排出ローラ62及び拍車63は、ローラの一例である。
【0062】
図5に示されるように、排出ローラ62は、左右方向9に延びる軸64(シャフトの一例)と、軸64の外周を覆うローラ部58とを備えている。ローラ部58は、左右方向9に間隔を空けて複数設けられている。排出ローラ62の軸64は、一対のサイドフレーム55の側板55Aによって軸受72を介して回転可能に支持されている。本実施形態では、軸受72が、側板55Aに形成された切り欠きに嵌められており、軸64が軸受72に挿通されている。
【0063】
図2に示される拍車63は、左右方向9に間隔を空けて複数設けられている。各拍車63は、左右方向9においてローラ部58と対向する位置に設けられている。拍車63は、図示しない弾性部材(例えばコイルバネ)によってローラ部58に付勢されている。
【0064】
搬送ローラ60及び排出ローラ62は、搬送用モータ73(
図5参照)から駆動力が伝達されて回転する。搬送ローラ対59に用紙12が挟持されている状態(ニップ状態)で搬送ローラ60が回転すると、用紙12は、搬送ローラ対59によって搬送向き15に搬送される。また、排出ローラ対44に用紙12が挟持されている状態で排出ローラ62が回転すると、用紙12は、排出ローラ対44によって搬送向き15に搬送される。
【0065】
[当接部材41]
図2に示されるように、当接部材41は、搬送路65における記録部24のノズル39よりも搬送向き15の上流に位置している。
【0066】
図5に示されるように、当接部材41は、複数の延出部81と、1つの本体部82とを備えている。本体部82は、左右方向9に延びている。本体部82は、下方から嵌合によってガイドレール56(
図3参照)に取り付けられている。複数の延出部81は、左右方向9に間隔を空けて本体部82から前方且つ下方へ延出している。
【0067】
本実施形態において、当接部材41は、ポリアセタール(POM)などの樹脂を主成分とした一体成型品である。なお、当接部材41は、一体成型品でなくてもよい。例えば、当接部材41は、本体部82を備えておらずに複数の延出部81で構成されており、各延出部81がガイドレール56に取り付けられていてもよい。
【0068】
図2に示されるように、各延出部81は、搬送向き15においてノズル39近傍にまで延びている。各延出部81の先端は、搬送ローラ対59における用紙12の挟持位置(搬送ローラ60及びピンチローラ61が接している位置)より下方に位置している。
【0069】
[プラテン42]
図2に示されるように、プラテン42は、記録部24の下方且つ記録部24と対向する位置に位置している。プラテン42は、直線部34を搬送ローラ対59により搬送される用紙12を支持する部材である。
【0070】
図6に示されるように、プラテン42は、概ね板状の部材である。プラテン42は、後部分161と、中央部分162と、前部分163とで構成されている。後部分161は、プラテン42の後部を構成している。中央部分162は、後部分161の前端と連続しており、プラテン42の前後方向8の中央部を構成している。前部分163は、中央部分162の前端と連続しており、プラテン42の前部を構成している。
【0071】
中央部分162は、ノズル列を構成するノズル39のうち搬送向き15の最上流のノズル39A(
図2参照)と搬送向き15の最下流のノズル39B(
図2参照)との間に位置する。
【0072】
後部分161は、中央部分162より後方(搬送向き15の上流)に位置している。後部分161の少なくとも一部は、ノズル39Aよりも前方(搬送向き15の下流)に位置する。前部分163は、中央部分162より前方に位置している。前部分163の少なくとも一部は、ノズル39Bよりも後方に位置する。
【0073】
プラテン42の上面42Aに、複数のリブ43と、複数のリブ45とが形成されている。
【0074】
複数のリブ43は、後部分161から中央部分162の後部に亘って形成されている。各リブ43は、搬送向き15(前後方向8)に沿って延びている。各リブ43は、左右方向9に間隔を空けて設けられている。
【0075】
図7に示されるように、リブ43の上端は、当接部材41の延出部81の先端部81Aよりも上方に位置している。先端部81Aは、直線部34における搬送ローラ対59とノズル39との間において、搬送される用紙12の上面12Aと当接する。また、リブ43は、直線部34における搬送ローラ対59とノズル39との間において、搬送される用紙12の下面12Bと当接する。用紙12は、上方から先端部81Aに当接され且つ下方からリブ43に当接されることによって、左右方向9に連続する波形状にされる。
【0076】
図6に示されるように、複数のリブ45は、前部分163に形成されている。各リブ45は、左右方向9に間隔を空けて設けられている。各リブ45は、上部分45A(第1部分の一例)と側部分45B(第2部分の一例)とで構成されている。上部分45Aは、前部分163の上面42Aを搬送向き15(前向き)に沿って、前部分163の上面42Aの前端まで延びている。側部分45Bは、上部分45Aの搬送向き15の下流端(上部分45Aの前端)と連続している。側部分45Bは、前部分163の前側面42Bを上下方向7に沿って下方へ延びている。リブ45の上面(詳細にはリブ45の上部分45Aの上面)は、搬送される用紙12の下面12Bと当接する。リブ43、45の上面が、プラテン42における用紙12を支持する支持面である。つまり、本実施形態において、用紙12の支持面は複数ある。リブ43の上面の後端部43Aが、支持面の第1向きの端部に相当する。リブ45の上面の前端部45Cが、支持面の第2向きの端部に相当する。
【0077】
図11に示されるように、プラテン42が後述する印刷位置のときに、側部分45Bの下端は、排出ローラ62の軸64の下端よりも上方に位置している。
【0078】
図6に示されるように、プラテン42は、前側面42Bの左右両端部から前方へ突出した突部49を有している。
【0079】
プラテン42は、後部分161の左右両端部から後方へ突出した突部46を有している。突部46の上面46Aは、円弧状に湾曲しつつ下方へ凹んでいる。つまり、上面46Aによって凹部130が形成されている。
【0080】
突部46の上面46Aによって形成された凹部130は、軸受71(
図3参照)が嵌められたサイドフレーム55の側板55Aの切り欠きと左右方向9に並んでいる。詳細には、プラテン42の右端部から突出した突部46は、右側のサイドフレーム55の側板55Aの左方に並んでおり、プラテン42の左端部から突出した突部46は、左側のサイドフレーム55の側板55Aの右方に並んでいる。つまり、突部46は、左右方向9において一対のサイドフレーム55の側板55Aの内側に位置している。軸受71は、左右方向9の外側部分をサイドフレーム55の側板55Aの切り欠きに嵌められており、左右方向9の内側部分を突部46の上面46Aによって形成された凹部に嵌められている。つまり、上面46Aは、搬送ローラ60の軸の周方向に沿って軸受71と当接している。なお、上面46Aは、軸受71ではなく、搬送ローラ60の軸や、サイドフレーム55の側板55Aと、搬送ローラ60の軸の周方向に沿って当接していてもよい。
【0081】
これにより、プラテン42は、軸受71周りに回動可能である。つまり、プラテン42は、搬送ローラ60の軸周りに回動可能である。プラテン42は、
図11及び
図13に示される印刷位置と、
図20及び
図22に示される開放位置との間で回動可能である。
【0082】
印刷位置は、記録部24が用紙12へ画像記録するときのプラテン42の位置である。
図2に示されるように、プラテン42が印刷位置のとき、プラテン42の上面42Aは、概ね前後方向8及び左右方向9に拡がっており、記録ヘッド38と対向している。
【0083】
開放位置は、記録部24とプラテン42の間に詰まった用紙12を筐体14の外部に取り出すときのプラテン42の位置である。
図20及び
図22に示されるように、プラテン42が開放位置のとき、プラテン42の前端部が印刷位置のときよりも下方に位置しており、プラテン42における用紙12の支持面が印刷位置のときよりも下方に位置している。これにより、
図20に示されるように、プラテン42の前端部と排出ローラ対44との間に隙間32が生じる。これにより、直線部34のうち記録部24とプラテン42の間の空間が隙間32を通じて内部空間23と連通する。
【0084】
図6に示されるように、突部46の下方に、当接片47が設けられている。当接片47は、コイルバネ48を介して突部46に取り付けられている。コイルバネ48の一端は突部46の下面に接続されており、コイルバネ48の他端は当接片47に接続されている。
【0085】
図13に示されるように、当接片47は、下方からスライド部材74の支持面102に当接されて支持されている。また、
図11に示されるように、突部49は、下方からスライド部材74の凸部104に支持されている。これにより、印刷位置のプラテン42は、スライド部材74に支持されている。
【0086】
図6に示されるように、プラテン42は、中央部分162の右側面及び左側面から左右方向9へ突出した突起50を有している。
図19に示されるように、突起50がスライド部材74の傾斜面103に当接してガイドされることによって、プラテン42が回動される。
【0087】
図6に示されるように、突起50は、後部分161や前部分163ではなく中央部分162に設けられている。つまり、突起50は、前後方向8においてプラテン42の中央部に設けられている。本実施形態において、プラテン42の前端から突起50までの前後方向8に沿った長さL3は、プラテン42の前端から後端までの前後方向8に沿った長さL4の長さの1/4以上である。
【0088】
プラテン42の中央部分162は、右側面及び左側面の上端部から左右方向9突出した凸部164を有している。凸部164の上面は、プラテン42の上面42Aの一部を構成している。突起50は、凸部164の下方に位置している。つまり、凸部164は、突起50の上方を覆っている。すなわち、プラテン42の凸部164の上面42Aは、突起50より上方に位置しており、突起50の上方を覆っている。
【0089】
中央部分162の左右方向9の寸法は、前部分163の左右方向9の寸法よりも凸部164の分だけ長い。
【0090】
図8に示されるように、プラテン42は、鉄などの金属で構成された板部材83を備えている。本実施形態において、板部材83は、屈曲しており、孔84、89を有している。プラテン42は、下面に前方へ突出した突起116、117を有している。突起116が孔84に挿入され、突起117が孔89に挿入されることによって、板部材83はプラテン42に取り付けられている。板部材83は、プラテン42の前後方向8における中央より前側に位置している。換言すると、板部材83は、プラテン42の搬送向き15の上流端よりもプラテン42の搬送向き15の下流端に近い位置に取り付けられている。
【0091】
図20に示されるように、プラテン42が開放位置のとき、プラテン42の前端部の一部は、ベース部材90の凹部118に入り込んでいる。このとき、プラテン42は、ベース部材90の面119に支持されている。本実施形態では、プラテン42に取り付けられた板部材83が上方から面119に当接することによって、板部材83が面119に支持されている。これにより、プラテン42はベース部材90に支持されている。
【0092】
なお、本実施形態では、板部材83は、その左端から右端に亘って、つまりその左右方向9の全体に亘って面119に支持されているが、板部材83は、少なくともその左右方向9における中央部が面119に支持されていればよい。また、プラテン42における板部材83以外の部分が面119によって支持されていてもよい。
【0093】
図20に示されるように、プラテン42が開放位置のとき、壁120の傾斜面122を含む仮想面129は、プラテン42より上方位置する。つまり、プラテン42が開放位置のとき、壁120の傾斜面122を含む仮想面129は、プラテン42を上方から覆っている。
【0094】
プラテン42は、その位置にかかわらず、開口13の上端13A(
図11参照)より下方に位置しており、開口13の下端13B(
図11参照)より上方に位置している。
【0095】
[連動機構]
連動機構は、給送トレイ20の筐体14からの抜去(給送トレイ20の前方への移動)に連動してプラテン42を印刷位置から開放位置に回動させ、給送トレイ20の筐体14への挿入(給送トレイ20の後方への移動)に連動してプラテン42を開放位置から印刷位置に回動させる機構である。
図5、
図12、及び
図13に示されるように、連動機構は、スライド部材74と、レバー75と、コイルバネ115とを備える。
【0096】
[スライド部材74]
図5に示されるように、スライド部材74は、一対のサイドフレーム55の底板55Bによって、前後方向8にスライド可能に支持されている。つまり、スライド部材74は、2つ設けられており、左右方向9における側板55Aの内側に位置している。すなわち、スライド部材74は、右側のサイドフレーム55の左方と、左側のサイドフレーム55の右方とに設けられている。スライド部材74は、一対のサイドフレーム55の側板55Aに隣接している。
【0097】
スライド部材74は、
図13に示される後位置と、
図22に示される前位置との間でスライドする。
【0098】
後述するように、スライド部材74は、給送トレイ20の筐体14からの抜去に連動して、後位置から前位置へスライドし、給送トレイ20の筐体14への挿入に連動して、前位置から後位置へスライドする。また、スライド部材74の後位置から前位置へのスライドに連動して、プラテン42が印刷位置から開放位置へ回動し、スライド部材74の前位置から後位置へのスライドに連動して、プラテン42が開放位置から印刷位置へ回動する。
【0099】
図5及び
図13に示されるように、スライド部材74は、凸部101と、支持面102と、傾斜面103と、水平面123と、凸部104と、凸部105と、凸部124とを備えている。
【0100】
図13に示されるように、凸部101は、スライド部材74の後端部から上方へ突出している。凸部101の上端部に、前方へ突出した突起106が設けられている。突起106の上面は、傾斜面107と水平面108とで構成されている。傾斜面107は、突起106の先端側に位置しており、前方(突起106の先端)へ向かうにしたがって下方へ向かって傾斜している。水平面108は、突起106の基端側に位置しており、傾斜面107の後端と連続している。水平面108は、前後方向8及び左右方向9に拡がる面である。
【0101】
傾斜面107は、先端側傾斜面107Aと基端側傾斜面107Bとを備えている。先端側傾斜面107Aは、基端側傾斜面107Bより前方に位置しており、基端側傾斜面107Bの前端と連続している。つまり、先端側傾斜面107Aは、基端側傾斜面107Bより前方且つ下方に位置する。先端側傾斜面107Aの水平面(前後方向8及び左右方向9に拡がる面)に対する鈍角の傾斜角度θ1は、基端側傾斜面107Bの水平面に対する鈍角の傾斜角度θ2よりも小さい。つまり、先端側傾斜面107Aは、基端側傾斜面107Bより水平面に対して急峻に傾斜している。なお、本実施形態において、プラテン42の上面42Aや支持面102は、水平面と平行な面である。
【0102】
スライド部材74が
図13に示される後位置のとき、突起106は、シャフト87の後方に位置する。スライド部材74の後位置から前位置へのスライド過程において、傾斜面107はシャフト87と当接してシャフト87をガイドする。スライド部材74が
図22に示される前位置のとき、水平面108はシャフト87を支持している。スライド部材74が前位置のとき、突起106の上面(傾斜面107及び水平面108)は、搬送ローラ60の軸受71(
図5参照)の真上に位置している。
【0103】
突起106は、左右方向9において、退避領域と重複している。つまり、突起106は、左右方向9において、移動するキャリッジ40が位置可能な空間と重複している。また、突起106の上端は、キャリッジ40の下端より上方に位置している。つまり、突起106は、上下方向7において当該位置可能な空間と重複している。一方、突起106は、スライド部材74のスライド位置にかかわらず、キャリッジ40より後方に位置している。そのため、突起106は、前後方向8において当該位置可能な空間と重複していない。以上より、突起106は、左右方向9及び上下方向7において当該位置可能な空間と重複しているが、前後方向8において当該位置可能な空間から後方へオフセットした位置にある。よって、突起106は、スライド部材74の位置にかかわらず、移動するキャリッジ40が位置可能な空間とは異なる位置にある。
【0104】
図13に示されるように、支持面102は、凸部101の前方に位置している。支持面102は、前後方向8及び左右方向9に拡がる面である。支持面102は、スライド部材74の位置にかかわらず、プラテン42の当接片47を下方から支持している。
【0105】
図5及び
図13に示されるように、傾斜面103は、支持面102の前方に位置している。傾斜面103は、前方へ向かうにしたがって上方へ向かって傾斜している。
【0106】
傾斜面103は、下部傾斜面103Aと上部傾斜面103Bとを備えている。上部傾斜面103Bは、下部傾斜面103Aより前方に位置しており、下部傾斜面103Aの前端と連続している。つまり、上部傾斜面103Bは、下部傾斜面103Aより前方且つ上方に位置する。上部傾斜面103Bの水平面(前後方向8及び左右方向9に拡がる面)に対する鈍角の傾斜角度θ3は、下部傾斜面103Aの水平面に対する鈍角の傾斜角度θ4よりも小さい。つまり、上部傾斜面103Bは、下部傾斜面103Aより水平面に対して急峻に傾斜している。なお、本実施形態において、プラテン42の上面42Aや支持面102は、水平面と平行な面である。
【0107】
スライド部材74が
図13に示される後位置のとき、傾斜面103は、プラテン42の突起50より後方に位置している。
図19に示されるように、スライド部材74の後位置から前位置へのスライド過程において、傾斜面103は突起50に当接して突起50をガイドする。これにより、プラテン42が印刷位置(
図11参照)から開放位置(
図20参照)へ回動する。
【0108】
図5及び
図13に示されるように、水平面123は、傾斜面103の上部傾斜面103Bの前端から前方へ延びている。スライド部材74が
図13に示される後位置のとき、水平面123は、プラテン42の突起50の下方に位置しており、突起50から離間している。
図16に示されるように、スライド部材74の後位置から前位置へのスライド過程において、水平面123は突起50と当接して突起50を傾斜面103へ向けてガイドする。
【0109】
図5及び
図13に示されるように、凸部104は、水平面123の前方に位置している。凸部104は、排出ローラ62の下方に位置している。つまり、凸部104は、スライド部材74の上面から排出ローラ62へ向けて上方へ突出している。
【0110】
凸部104は、左右方向9に貫通した貫通孔109によって肉抜きされている。これにより、凸部104は、貫通孔109を挟んで先端部111と基端部110とに分かれている。
【0111】
先端部111は、貫通孔109より上方且つ後方に位置している。先端部111は、凸部104の後上端部から前上端部を経て前下端部へ延設された薄板状に構成されている。これにより、先端部111は、延設した方向と交差する方向へ撓むことが可能となっており、板バネとして機能する。
【0112】
図13に示されるように、先端部111の上面は、傾斜面111Aと水平面111Bとを有している。傾斜面111Aは、凸部104の後端から前方へ延びるにしたがって上方へ延びている。換言すると、傾斜面111Aは、前方へ延びるに従って排出ローラ62へ近づいている。水平面111Bは、傾斜面111Aの前端と連続しており、傾斜面111Aの前端から前方へ延びている。
【0113】
基端部110は、貫通孔109より下方且つ前方に位置している。基端部110は、その上面(貫通孔109の内面のうち貫通孔109の下側を区画する面)に、上方へ突出した突起112を備えている。突起112は、先端部111の水平面111Bの下方に位置している。これにより、貫通孔109における突起112が設けられている箇所は、貫通孔109の他の箇所よりも上下の隙間が小さくなっている。これにより、先端部111の撓み量は、突起112によって小さくされている。
【0114】
図5に示されるように、凸部105は、凸部104の前方であってスライド部材74の前端部に位置している。凸部105は、スライド部材74の前端部から左右方向9の外側へ突出している。つまり、2つのスライド部材74のうち右側に位置するスライド部材74の凸部105は、右方へ突出しており、2つのスライド部材74のうち左側に位置するスライド部材74の凸部105は、左方へ突出している。
【0115】
凸部105は、その先端部に、上方へ突出した突起112を備えている。
図9に示されるように、凸部105は、ベース部材90に形成された開口113を貫通している。これにより、凸部105の基端部と先端部(突起112)とは、左右方向9において互いにベース部材90の壁114の反対側に位置している。突起112は、開口113より上方まで延びており壁114と左右に隣接している。これにより、スライド部材74は、凸部105によってベース部材90と係合している。なお、
図9には、ベース部材90の左部92が示されているが、図示されていないベース部材90の右部91も、左部92と同様にスライド部材74と係合されている。
【0116】
図5に示されるように、凸部105の基端部は、凸部105の先端部よりも前後方向8に長い。具体的には、凸部105の基端部は、凸部105の先端部よりも後方まで延びている。凸部105の基端部の後面105Aに、後述するレバー75が当接される。
【0117】
図5に示されるように、凸部124は、凸部104の下方に設けられており、下方へ突出している。凸部124に、筐体14へ挿入される給送トレイ20の突部125が当接する。これにより、スライド部材74は、後方へスライドする。
【0118】
[レバー75]
図5に示されるように、レバー75は、一対のサイドフレーム55の側板55Aによって軸76周りに回動可能に支持されている。つまり、レバー75は、2つ設けられている。各レバー75は、左右方向9における側板55Aの外側に位置している。つまり、レバー75は、右側のサイドフレーム55の右方と、左側のサイドフレーム55の左方とに設けられている。
【0119】
レバー75は、ベース部材90によっても軸76周りに回動可能に支持されている。つまり、レバー75は、ベース部材90及びサイドフレーム55の双方によって支持されている。軸76は、レバー75の上部から左右方向9の外側及び内側の双方に突出している。
図10(A)に示されるように、軸76のうち、レバー75から左右方向9の外側に突出した軸76Aは、ベース部材90に形成された穴77に挿入されている。軸76のうち、レバー75から左右方向9の内側に突出した軸76Bは、サイドフレーム55に形成された孔78に挿入されている。穴77の直径は、孔78の直径より大きい。
【0120】
レバー75は、
図12に示される基準位置と、
図21に示される前回動位置と、
図24に示される後回動位置とに回動可能である。レバー75は、前回動位置と後回動位置との間を回動可能である。レバー75は、基準位置から矢印151の向きに回動することによって前回動位置に位置する。レバー75は、基準位置から矢印152の向き(矢印151と逆向き)に回動することによって後回動位置に位置する。
【0121】
図12に示されるように、レバー75が基準位置のとき、レバー75の先端部79は、軸76より下方に位置している。先端部79は、レバー75の先端79A(基準位置のときのレバー75の下端)を含む。
【0122】
図21に示されるように、レバー75が前回動位置のときの先端79Aは、レバー75が基準位置(
図12参照)のときより前方且つ上方に位置している。前回動位置のレバー75は、後方からベース部材90の第3凸部70の後下端部70Aに当接している。これにより、前回動位置のレバー75は、矢印151の向きに回動することを、第3凸部70の後下端部70Aによって規制されている。換言すると、前回動位置のレバー75は、基準位置から離れる向きへ回動することを、第3凸部70の後下端部70Aによって規制されている。
【0123】
図24に示されるように、レバー75が後回動位置のときの先端79Aは、レバー75が基準位置(
図12参照)のときより後方且つ上方に位置している。
【0124】
図12に示されるように、レバー75の上端部に、コイルバネ115の下端が接続されている。コイルバネ115の上端はサイドフレーム55の突起37に接続されている(
図10(B)参照)。レバー75が基準位置に位置するとき、コイルバネ115は自然長である。レバー75が基準位置から前回動位置または後回動位置へ向けて回動すると、コイルバネ115は伸長または収縮する。これにより、コイルバネ115の弾性力によって、レバー75は基準位置へ向けて付勢される。
【0125】
レバー75は、左右方向9において、給送トレイ20の側壁30と同位置且つ側壁30の上方に設けられている。
図12に示されるように、レバー75が基準位置に位置するとき、レバー75の先端部79は、給送トレイ20の側壁30に形成された切り欠き96に入り込んでいる。
【0126】
レバー75が基準位置に位置するとき、レバー75の先端部79(レバー75のうち切り欠き96に入り込んでいる部分)は、軸76よりも後方に位置している。先端部79は、後面79B及び前面79Cを有する。後面79Bは、筐体14からの抜去の過程で前方へ移動される給送トレイ20の後面96A及び傾斜面96Bに当接される(
図15及び
図18参照)。前面79Cは、筐体14に挿入される給送トレイ20の側壁30の傾斜面99A(
図4及び
図12参照)に当接される。
【0127】
図12に示されるように、レバー75は、凸部80を有している。凸部80は、軸76から先端79Aへの向き及び左右方向9に拡がる仮想面153から矢印151の向きに突出している。矢印151は、レバー75がスライド部材74との当接位置(凸部105の後面105Aの位置)へ向けて回動する向きである。凸部80の突出端面80Aは、湾曲している。
【0128】
図12に示されるように、後回動位置のレバー75(
図12に破線で示されている。)は、筐体14に装着された位置(
図12に示される位置)の給送トレイ20の切り欠き96の後面96Aより前方に位置する。
【0129】
図24に示されるように、前回動位置のレバー75(
図24に破線で示されている。)は、所定位置(
図24に示される位置)の給送トレイ20の切り欠き96の前面96Cより後方に位置する。所定位置は、給送トレイ20が筐体14に挿入される過程において、仮にレバー75が前回動位置に位置している場合に、スライド部材74(詳細には凸部105の後面105A)が前回動位置のレバー75に当接するときの給送トレイ20の位置である。
【0130】
レバー75が給送トレイ20の側壁30の上面97に当接した状態(例えば、
図27に示される状態)において、レバー75の鉛直方向に対する前方且つ上方への回動角度θ(単位:度)(
図27参照)は、下記の(式1)の関係を満たしている。(式1)において、μは、レバー75の先端79Aと給送トレイ20の上面97との間の摩擦係数である(
図27参照)。
(数1)
θ>arctanμ・・・(式1)
【0131】
(式1)は、以下のようにして導出される。
図27に示されるように、レバー75の軸76周りのモーメントのつり合いは、下記の(式2)で表される。
(数2)
W×Lw×sinθ-N×L1×sinθ+μ×N×L1×cosθ+L2×S=0・・・(式2)
【0132】
(式2)において、W(単位:N)は、レバー75の自重である。Lw(単位:mm)は、レバー75の軸76からレバー75の重心までの距離である。N(単位:N)は、給送トレイ20の上面97からレバー75の先端79Aに作用する垂直抗力である。L1(単位:mm)は、レバー75の軸76からレバー75の先端79Aまでの距離である。L2(単位:mm)は、レバー75の軸76からレバー75及びコイルバネ115の接続位置までの距離である。S(単位:N)は、コイルバネ115に作用する力である。
【0133】
(式2)を変形させると、下記の(式3)のようになる。
(数3)
N=(W×Lw×sinθ+L2×S)/(L1×(sinθ-μcosθ))・・・(式3)
【0134】
(式3)より、sinθ-μcosθ=0となると、Nが無限大となる。すると、
図27に示される状態から給送トレイ20を前方へ移動させようとした場合に、給送トレイ20の前方への移動が、レバー75によって阻害される。これを防止するためには、sinθ-μcosθ>0であればよい。つまり、(式1)を満たせばよい。なお、レバー75の鉛直方向に対する後方且つ上方への回動角度が満たす関係についても、上記と同様にして求めることができる。
【0135】
[給送トレイ20の挿抜過程における各部材の動作]
以下、給送トレイ20が筐体14に対して挿抜される過程における各部材の動作及び状態が説明される。
【0136】
最初に、給送トレイ20が筐体14から抜去される過程における各部材の動作及び状態が説明される。
【0137】
図11~
図13に示されるように、給送トレイ20が筐体14に装着されているとき、各部材は以下に詳述する状態である。
【0138】
図12に示されるように、レバー75は基準位置に位置している。レバー75の凸部80は、後方からスライド部材74の凸部105の後面105Aに当接している。なお、このとき、レバー75は、スライド部材74の凸部105の後面105Aから離間していてもよい。
【0139】
図13に示されるように、スライド部材74は、後位置に位置している。突起106は、シャフト87より後方に位置しており、シャフト87から離間している。このとき、ピンチローラ61は、コイルバネ57に付勢されて搬送ローラ60に当接している(
図2及び
図5参照)。つまり、搬送ローラ対59は、ニップ状態である。
【0140】
図12に示されるように、給送トレイ20の切り欠き96の後面96Aは、基準位置のレバー75より後方に位置している。給送トレイ20の切り欠き96の後面96Aは、
図12に破線で示される後回動位置のレバー75より後方に位置している。給送トレイ20の切り欠き96の前面96Cは、基準位置のレバー75より前方に位置している。レバー75の先端部79は、側壁30の上面97より下方に位置しており、切り欠き96に入り込んでいる。
【0141】
ベース部材90の第1凸部94は、排出トレイ21の前部上面31Aと上下方向7に対向している。ベース部材90の第2凸部95は、給送トレイ20の側壁30の上面97の水平面97Aと上下方向7に対向している。よって、
図11~
図13に示される状態において給送トレイ20がユーザによって上方へ持ち上げられた場合、前部上面31Aが下方から第1凸部94の下面94Aに当接すること、または、水平面97Aが下方から第2凸部95の下面95Aに当接することによって、給送トレイ20の持ち上げが規制される。
【0142】
図11及び
図13に示されるように、プラテン42は印刷位置に位置する。プラテン42は、以下に詳述するようにして、上下方向7に位置決めされている。
【0143】
図13に示されるように、プラテン42の後端部に設けられている当接片47はスライド部材74の支持面102に支持されている。支持面102の上方に、突部46が位置している(
図6参照)。突部46の上面46Aによって形成された凹部に、搬送ローラ60の軸受71(
図5参照)が嵌められている。このとき、突部46は、コイルバネ48によって上方へ付勢されて、搬送ローラ60の軸受71に押し付けられている。つまり、プラテン42は、搬送ローラ60へ付勢されている。これにより、プラテン42の後端部は、軸受71が取り付けられたサイドフレーム55によって上下方向7に位置決めされている。
【0144】
プラテン42の前端部に設けられている突部49は、スライド部材74の凸部104の先端部111に支持されている。このとき、突部49は、板バネとして機能している先端部111によって上方へ付勢されて、排出ローラ62に押し付けられている。つまり、突部49は、凸部104と排出ローラ62とによって上下に挟まれた状態である。これにより、プラテン42の前端部は、排出ローラ62が軸受72を介して支持されているサイドフレーム55によって上下方向7に位置決めされている。以上のように、プラテン42は、その後端部及び前端部がサイドフレーム55に位置決めされることによって、上下方向7に位置決めされている。
【0145】
なお、スライド部材74が
図13に示される後位置から
図22に示される前位置に移動しても、当接片47はスライド部材74に支持された状態を維持している。そのため、スライド部材74の位置にかかわらず、突部46は、コイルバネ48によって上方へ付勢されて、軸受71に押し付けられている。これにより、プラテン42は、スライド部材74の位置にかかわらず、軸受71周り(搬送ローラ60の軸周り)に回動可能である。
【0146】
図13に示されるように、プラテン42の突起50は、スライド部材74から離間している。つまり、突起50は、スライド部材74に支持されていない。
【0147】
給送トレイ20の筐体14からの抜去が開始されると、給送トレイ20は、
図11~
図13に示される位置から
図14~
図16に示される位置へと前方へ移動する。このとき、各部材は以下に詳述するように動作し、また以下に詳述するような状態である。
【0148】
図15に示されるように、給送トレイ20の切り欠き96の後面96Aが、後方からレバー75の先端部79の後面79Bに当接して、レバー75を前方へ押す。これにより、レバー75は、給送トレイ20に押されて、コイルバネ115の付勢力に抗して、基準位置から矢印151の向きへ、つまり基準位置から前回動位置側へ向けて回動する。回動するレバー75の凸部80は、スライド部材74の凸部105の後面105Aを前方へ押す。これにより、スライド部材74は、後位置から前方へ、つまり後位置から前位置へ向けてスライドする。
【0149】
ベース部材90の第1凸部94は、排出トレイ21の前部上面31Aと上下方向7に対向している。ベース部材90の第2凸部95の前部は、給送トレイ20の側壁30の上面97の水平面97Aと上下方向7に対向している。ベース部材90の第2凸部95の後部は、給送トレイ20の切り欠き96と上下方向7に対向している。よって、給送トレイ20の前方への移動中に、給送トレイ20がユーザによって上方へ持ち上げられた場合、前部上面31Aが下方から第1凸部94の下面94Aに当接すること、または、水平面97Aが下方から第2凸部95の下面95Aに当接することによって、給送トレイ20の持ち上げが規制される。
【0150】
図14及び
図16に示されるように、プラテン42は、印刷位置から下方へ回動している。つまり、プラテン42は、印刷位置から開放位置へ向けて回動している。以下に詳述する。
【0151】
突部46が軸受71に押し付けられている状態が維持されているため、プラテン42は、搬送ローラ60の軸周りに回動可能な状態を維持している。
【0152】
一方、スライド部材74が前方へスライドされることにより、スライド部材74の凸部104は、突部49から離間する。これにより、突部49は凸部104に支持されなくなる。その結果、プラテン42は、その先端部が下方へ移動するように搬送ローラ60の軸周りに回動し、プラテン42の突部49は軸受72から離間する。その後、
図16に示されるように、プラテン42が回動すると、突起50が下方へ移動して上方からスライド部材74の水平面123に当接して水平面123によってガイドされる。以後、プラテン42は、スライド部材74の前方へのスライドに伴って、突起50がスライド部材74の水平面123及び傾斜面103にガイドされることにより、開放位置へ向けて回動する。
【0153】
なお、スライド部材74の凸部104が突部49から離間したことにより、プラテン42の前端部は上下方向7に位置決めされなくなっている。
【0154】
図14~
図16に示される状態では、突起106は、依然としてシャフト87より後方に位置しており、シャフト87から離間しているため、搬送ローラ対59はニップ状態のままである。
【0155】
給送トレイ20が、
図14~
図16に示される位置から
図17~
図19に示される位置へと前方へ移動すると、各部材は以下に詳述するように動作し、また以下に詳述するような状態である。
【0156】
図18に示されるように、レバー75は、給送トレイ20に押されて、
図15に示される位置よりも矢印151の向きへ、つまり前回動位置側へ回動する。
図19に示されるように、スライド部材74は、回動するレバー75に押されて
図16に示される位置よりも前方へ、つまり前位置側へスライドする。
【0157】
スライド部材74が
図14~
図16に示される位置から
図17~
図19に示される位置へと前方へスライドする過程において、
図19に示されるように、突起106が後方からシャフト87に当接して、突起106の傾斜面107がシャフト87を上方へガイドする。これにより、シャフト87は、コイルバネ57(
図16参照)の付勢力に抗して上方へ移動する。上方へ移動するシャフト87は、ローラホルダ85の貫通孔86を区画する面を上方へ押す。これにより、ローラホルダ85及びピンチローラ61は上方へ移動し、ピンチローラ61は搬送ローラ60から離間する。その結果、搬送ローラ対59は、ニップ状態から離間状態へ状態変化する。
【0158】
傾斜面107によるシャフト87のガイドは、スライド部材74の水平面123及び傾斜面103による突起50のガイドが開始された後に開始される。また、搬送ローラ対59のニップ状態から離間状態への状態変化が完了した時点において、プラテン42は、未だ開放位置へ到達していない。つまり、プラテン42の印刷位置から開放位置への回動が完了するのは、搬送ローラ対59のニップ状態から離間状態への状態変化が完了した後である。
【0159】
シャフト87は、傾斜面107にガイドされる過程において、最初に先端側傾斜面107Aにガイドされ、次いで基端側傾斜面107Bにガイドされる。基端側傾斜面107Bにガイドされているときのシャフト87は、先端側傾斜面107Aにガイドされているときのシャフト87より上方に位置する。つまり、先端側傾斜面107Aがシャフト87に当接しているときのピンチローラ61は、基端側傾斜面107Bがシャフト87に当接しているときのピンチローラ61よりも搬送ローラ60の近くに位置している。よって、シャフト87が基端側傾斜面107Bにガイドされているときのコイルバネ57は、シャフト87が先端側傾斜面107Aにガイドされているときのコイルバネ57よりも伸びており、大きな弾性力がシャフト87のガイドに対する抵抗力として作用している。ここで、基端側傾斜面107Bは、先端側傾斜面107Aより水平面に対して緩やかに傾斜している。つまり、大きな弾性力が作用するとき、シャフト87は緩やかな基端側傾斜面107Bによってガイドされるため、シャフト87にかかる負荷を小さくできる。一方、大きな弾性力が作用しないとき、シャフト87は、急峻な先端側傾斜面107Aにガイドされるため、迅速に上方へ移動可能である。
【0160】
スライド部材74が
図17~
図19に示される位置のとき、シャフト87は、突起106の傾斜面107を通過して、突起106の水平面108に支持されている。
【0161】
排出ローラ対44は、搬送ローラ対59とは異なり、排出ローラ62と拍車63とが離間しない。つまり、スライド部材74やプラテン42の位置にかかわらず、排出ローラ62と拍車63とは、互いに当接して用紙12を挟持可能なニップ状態を維持している。
【0162】
図18に示されるように、ベース部材90の第1凸部94は、排出トレイ21の前部上面31Aと上下方向7に対向している。ベース部材90の第2凸部95は、給送トレイ20の切り欠き96と上下方向7に対向している。よって、給送トレイ20の前方への移動中に、給送トレイ20がユーザによって上方へ持ち上げられた場合、前部上面31Aが下方から第1凸部94の下面94Aに当接することによって、給送トレイ20の持ち上げが規制される。
【0163】
スライド部材74が
図14~
図16に示される位置から
図17~
図19に示される位置へと前方へスライドする過程において、プラテン42は、
図19に示されるように、突起50がスライド部材74の傾斜面103にガイドされることによって、その前端部が更に下方に位置するように回動する、つまり更に開放位置へ向けて回動する。
【0164】
突起50は、傾斜面103にガイドされる過程において、最初に上部傾斜面103Bにガイドされ、次いで下部傾斜面103Aにガイドされる。下部傾斜面103Aにガイドされているときの突起50は、上部傾斜面103Bにガイドされているときの突起50より下方に位置する。よって、突起50が下部傾斜面103Aにガイドされているときのコイルバネ48は、突起50が上部傾斜面103Bにガイドされているときのコイルバネ48よりも縮んでおり、大きな弾性力が突起50のガイドに対する抵抗力として作用している。ここで、下部傾斜面103Aは、上部傾斜面103Bより水平面に対して緩やかに傾斜している。つまり、大きな弾性力が作用するとき、突起50は緩やかな下部傾斜面130Aによってガイドされるため、突起50にかかる負荷を小さくできる。一方、大きな弾性力が作用しないとき、突起50は、急峻な上部傾斜面103Bにガイドされるため、プラテン42は、迅速に開放位置へ向けて回動可能である。
【0165】
給送トレイ20が、
図17~
図19に示される位置から
図20~
図22に示される位置へと前方へ移動すると、各部材は以下に詳述するように動作し、また以下に詳述するような状態である。
【0166】
図21に示されるように、レバー75は、給送トレイ20に押されて、
図18に示される位置よりも矢印151の向きへ移動して前回動位置に位置している。このとき、レバー75は、切り欠き96の外部に位置している。レバー75の先端79Aは、給送トレイ20の側壁30の上面97の水平面97Aに支持されている。レバー75の先端79Aが切り欠き96の後面96Aの傾斜面96Bにガイドされることによって、レバー75は円滑に切り欠き96の外部へ移動することができる。前回動位置のレバー75は、ベース部材90の第3凸部70の後下端部70Aに当接している。これにより、前回動位置のレバー75の矢印151の向きへの回動が規制されている。
【0167】
図22に示されるように、スライド部材74は、回動するレバー75に押されて
図17~
図19に示される位置よりも前方へスライドして前位置に位置している。
【0168】
搬送ローラ対59は離間状態である。
【0169】
図21に示されるように、ベース部材90の第1凸部94の前部は、排出トレイ21の前部上面31Aと上下方向7に対向している。ベース部材90の第1凸部94の後部は、排出トレイ21の後部上面31Bと上下方向7に対向している。ベース部材90の第2凸部95は、給送トレイ20の切り欠き96と上下方向7に対向している。よって、給送トレイ20の前方への移動中に、給送トレイ20がユーザによって上方へ持ち上げられた場合、前部上面31Aが下方から第1凸部94の下面94Aに当接することによって、給送トレイ20の持ち上げが規制される。
【0170】
なお、給送トレイ20が
図21に示される位置から更に前方へ移動すると、切り欠き96の後端である後面96Aが第2凸部95の下面95Aの後端と前後方向8において同位置となる。このとき、排出トレイ21の前部上面31Aの後端は、依然として、第1凸部94の下面94Aの前端より後方に位置している。つまり、切り欠き96の後端である後面96Aが第2凸部95の下面95Aの後端より後方に位置するとき、排出トレイ21の前部上面31Aの後端は、第1凸部94の下面94Aの前端より後方に位置している。すなわち、第2凸部95が上下方向7において切り欠き96と対向している状態では、第1凸部94は上下方向7において排出トレイ21の前部上面31Aと対向している。これにより、給送トレイ20がユーザによって上方へ持ち上げられた場合、前部上面31Aが下方から第1凸部94の下面94Aに当接することによって、第2凸部95が切り欠き96へ深く入り込むことが抑制される。
【0171】
スライド部材74が
図17~
図19に示される位置から
図20~
図22に示される位置へと前方へスライドする過程において、プラテン42は、
図20及び
図22に示されるように、突起50がスライド部材74の傾斜面103にガイドされることによって、その前端部が更に下方に位置するように回動し、開放位置に位置している。
【0172】
図20に示されるように、開放位置のプラテン42は、ベース部材90の壁120より後方(搬送向き15の上流)に位置している。プラテン42の前端部の下部は、ベース部材90の凹部118に入り込んでいる。プラテン42は、ベース部材90の面119に支持されている。本実施形態では、プラテン42に取り付けられた板部材83が上方から面119に当接することによって、板部材83が面119に支持されている。これにより、プラテン42はベース部材90に支持されている。
【0173】
開放位置のプラテン42は、ベース部材90の壁120の傾斜面122を含む仮想面129(傾斜面122と同様に後方へ向かうにしたがって上方へ向かって傾斜した面)より上方に位置している。換言すると、仮想面129は、開放位置のプラテン42を上方から覆っている。
【0174】
その後、図示されていないが、給送トレイ20は、更に前方へ移動されて、筐体14から抜去される。このとき、給送トレイ20の前方への移動中に、給送トレイ20がユーザによって上方へ持ち上げられた場合、排出トレイ21の傾斜面31C及び後部上面31Bや、給送トレイ20の側壁30の上面97の水平面97Aが下方から第1凸部94の下面94Aに当接することによって、給送トレイ20の持ち上げが規制される。給送トレイ20が更に前方へ移動されることによって、レバー75が給送トレイ20に支持されなくなると、レバー75は、コイルバネ115に付勢されて基準位置へ回動する。
【0175】
次に、給送トレイ20が筐体14へ挿入される過程における各部材の動作及び状態が説明される。なお、給送トレイ20が筐体14へ挿入される過程における各部材の動作(以下、「挿入時の動作」と記される。)は、給送トレイ20が筐体14から抜去される過程における各部材の動作(以下、「抜去時の動作」と記される。)と概ね逆の動作である。そのため、以下の説明では、挿入時の動作が抜去時の動作の逆の動作である場合、その動作の説明は簡略又は省略され、挿入時の動作が抜去時の動作の逆の動作と異なっている場合、その動作は詳細に説明される。
【0176】
給送トレイ20が筐体14に対して後方へ移動されることによって筐体14へ挿入される過程において、給送トレイ20の側壁30の後端部が基準位置のレバー75に近づくと、レバー75が給送トレイ20の側壁30の後端部の凹部99(
図12参照)に入り込む。給送トレイ20が更に後方へ移動すると、給送トレイ20の傾斜面99A(
図12参照)が、前方から基準位置のレバー75の先端部79の前面79Cに当接する。レバー75の先端部79の前面79Cは、給送トレイ20の傾斜面99Aによって後方へ押される。これにより、レバー75は、基準位置から矢印152の向きへ、つまり基準位置から後回動位置側へ向けて回動する。その後、給送トレイ20が後方へ移動されるにしたがって、レバー75は、傾斜面99Aを通過して、その後は上面97によってガイドされる。このとき、レバー75は、レバー75が当接している上面97の高さに応じて、矢印151または矢印152の向きに回動しつつガイドされる。
【0177】
給送トレイ20の傾斜面99Aがレバー75に当接してから、給送トレイ20が更に後方へ移動されて
図23~
図25に示される位置まで挿入されると、
図24に示されるように、給送トレイ20の突部125が、前方からスライド部材74の凸部124に当接する。このとき、給送トレイ20の切り欠き96の前面96Cは、
図24に破線で示される前回動位置のレバー75より前方に位置する。なお、実際には、このとき、レバー75は基準位置に位置しており、レバー75が異物に引っ掛かるなどの不測の事態が生じない限り、レバー75が前回動位置に位置していることはない。
【0178】
給送トレイ20が更に後方へ移動されると、突部125は、凸部124を後方へ押す。これにより、スライド部材74は、前位置から後方へ、つまり前位置から後位置へ向けてスライドする。
【0179】
スライド部材74が後方へスライドされると、下部傾斜面103Aに支持された状態の突起50(
図22参照)が下部傾斜面103Aをガイドされ(
図19参照)、その後、上部傾斜面103Bを介して水平面123へガイドされる(
図16参照)。これにより、プラテン42が開放位置から印刷位置へ向けて回動する。
【0180】
突起50が上部傾斜面103Bによってガイドされているときに、つまりスライド部材74が
図17~
図19に示される位置から
図14~
図16に示される位置への後方へスライドする過程において、突起106がシャフト87から離間する。これにより、シャフト87は、コイルバネ57に付勢されて下方へ移動する。これにより、ローラホルダ85及びピンチローラ61も自重によって下方へ移動し、ピンチローラ61は搬送ローラ60に当接する。その結果、搬送ローラ対59は、離間状態からニップ状態へ状態変化する。
【0181】
搬送ローラ対59がニップ状態へ状態変化したとき、スライド部材74の凸部104は、依然としてプラテン42の突部49から離間しており、突部49を支持していない。
【0182】
搬送ローラ対59がニップ状態へ状態変化してから、スライド部材74が更に後方へスライドされて所定位置に到達すると、スライド部材74の凸部104がプラテン42の突部49に当接する。所定位置は、前位置と後位置との間の位置である。突部49は、凸部104の先端部111の傾斜面111Aを介して水平面111Bへガイドされて、最終的に先端部111の水平面111Bに支持される。このとき、突部49は、板バネとして機能している先端部111によって上方へ付勢されて持ち上げられ、排出ローラ62に押し付けられる。つまり、突部49は、凸部104と排出ローラ62とによって上下に挟まれた状態となる。これにより、プラテン42の前端部は、排出ローラ62が軸受72を介して支持されているサイドフレーム55によって上下方向7に位置決めされる。その結果、プラテン42は、スライド部材74の位置にかかわらず位置決めされている後端部に加えて、先端部も位置決めされる。このときのプラテン42(
図11~
図13に示される位置)は、印刷位置である。
【0183】
突部49が先端部111によって持ち上げられると、突起50も上方へ移動する。これにより、突起50は、スライド部材74の水平面123から離間する。つまり、プラテン42が印刷位置のとき、その後端部及び前端部がサイドフレーム55によって上下に位置決めされていると共に、突起50がスライド部材74から離間している。
【0184】
以上より、傾斜面103は、前位置と所定位置の間においてプラテン42の突起50に当接してプラテン42を開放位置から印刷位置へ向けてガイドする。また、凸部104は、所定位置と後位置の間においてプラテン42の突部49に当接することで突起50を傾斜面103から離間させつつ、プラテン42を印刷位置までガイドする。そして、凸部104は、スライド部材74が後位置のときに、突部49を排出ローラ62へ付勢する。
【0185】
[実施形態の効果]
プラテン42が開放位置に回動された状態において開口13から内部空間23が視認されたときに、プラテン42の搬送向き15の端部の手前に壁120がある。そのため、プラテン42が開放位置に回動されたときに、プラテン42の搬送向き15の端部にユーザの手が触れる可能性を低くすることができる。
【0186】
本実施形態によれば、用紙12を取り出そうとするユーザの手を、壁120の上面に沿って搬送向き15の上流に向かうにしたがって上方に向かうように誘導することができる。これにより、プラテン42にユーザの手が触れる可能性を低くすることができる。
【0187】
プラテン42にリブ45が設けられていることにより、搬送される用紙12がプラテン42と接触する面積が減るため、用紙12とプラテン42との間の摩擦が小さくなり、用紙12の円滑な搬送が可能となる。
【0188】
リブ45が側部分45Bを備えていることにより、リブ45の上部分45A上を搬送される用紙12が排出ローラ対44へ誘い込まれやすくなる。プラテン42が印刷位置のとき、側部分45Bの下端が軸64の下端より上方に位置するため、側部分45Bと排出ローラ62との隙間に異物が巻き込まれる可能性を低くすることができる。
【0189】
排出ローラ対44を構成する排出ローラ62及び拍車63を離間させるための機構が不要である。
【0190】
[変形例]
上記実施形態においては、レバー75はコイルバネ115によって基準位置に付勢されていたが、自重により基準位置に付勢されてもよい。
【0191】
上記実施形態では、レバー75の先端部79は、軸76より下方に位置していたが、レバー75の先端部79は、軸76より上方に位置していてもよい。この場合、レバー75が前回動位置のときの先端79Aは、レバー75が基準位置のときより前方且つ下方に位置しており、レバー75が後回動位置のときの先端79Aは、レバー75が基準位置のときより後方且つ下方に位置している。
【0192】
レバー75は、2つ設けられている給送トレイ20の側壁30やスライド部材74に対応して2つ設けられている。そして、通常、2つのレバー75の基準位置から前回動位置への回動量は同位置であり、2つのレバー75の基準位置から後回動位置への回動量は同一である。しかし、2つのレバー75の前記の回動量は異なっていてもよい。例えば、2つの側壁30や2つのスライド部材74の構成が左右で異なっている場合に、2つのレバー75の回動量が当該構成に応じて調整された結果、2つのレバー75の回動量が異なるようになってもよい。
【0193】
上記実施形態では、前回動位置のレバー75は、ベース部材90の第3凸部70の後下端部70Aに当接することによって、矢印151の向きへの回動を規制されていた(
図21参照)。しかし、ベース部材90の第3凸部70が設けられていないことによって、または、第3凸部70の位置が上記実施形態と異なることによって、前回動位置のレバー75が更に矢印151の向きに回動可能に構成されていてもよい。
【0194】
この場合、第1凸部94の下面94Aまたは第2凸部95の下面95Aの少なくとも一方と、排出トレイ21の前部上面31Aまたは給送トレイ20の側壁30の水平面97Aの少なくとも一方とが上下方向7に対向している場合、対向している両者間の上下方向7の間隔は、限界回動位置のレバー75と給送トレイ20との間の上下方向7の間隔より小さく構成されていることが望ましい。
【0195】
ここで、限界回動位置は、レバー75が基準位置から矢印151の向きへの最大量回動したときの位置として規定された位置である。例えば、限界回動位置は、仮にレバー75が限界回動位置よりも矢印151の向きへ回動した場合に、レバー75やコイルバネ115が破損するおそれがある位置である。また、例えば、限界回動位置は、レバー75が前回動位置よりも矢印151の向きへ回動した所定位置で当該回動を規制する部材と当接した場合の当該所定位置である。
【0196】
プラテン42は、搬送ローラ60以外の軸周りに回動してもよい。例えば、プラテン42は、ピンチローラ61の軸周りに回動してもよい。また、例えば、
図28に示されるように、プラテン42は、排出ローラ62の軸周りに回動してもよい。この場合、プラテン42が開放位置のとき、
図28に破線で示されるように、プラテン42の上面(用紙12の支持面)の後端部67が印刷位置のときよりも下方に位置している。
【0197】
プラテン42は、回動以外、例えば、
図29に示されるように、上下方向7に沿ったスライドによって印刷位置と開放位置とに移動してもよい。この場合、プラテン42が開放位置のとき、
図29に破線で示されるように、プラテン42が印刷位置のときよりも下方に位置している。つまり、プラテン42の上面の前端部66及び後端部67が印刷位置のときよりも下方に位置している。
【0198】
上記実施形態では、搬送ローラ60が直線部34の下方に配置され、ピンチローラ61が直線部34の上方に配置されていた。しかし、上記実施形態とは逆に、搬送ローラ60が直線部34の下方に配置され、ピンチローラ61が直線部34の上方に配置されていてもよい。この場合、スライド部材74は、前方への移動に連動してシャフト87を下方へガイドしてピンチローラ61を下方へ移動させるように構成される。また、この場合、プラテン42はピンチローラ61の軸周りに回動する。
【0199】
図6及び
図8に示されるプラテン42の突起50は、左右方向9に延びる軸周りに回転可能であってもよい。つまり、突起50は、プラテン42の中央部分162に回転可能に支持されたコロであってもよい。
【0200】
プラテン42に緩衝材が取り付けられていてもよい。緩衝材は、例えば、スポンジなどの多孔材料である。例えば、上記実施形態において金属で構成された板部材83が、金属の代わりに多孔材料で構成されることによって、板部材83は、緩衝材として機能する。もちろん、プラテン42は、金属で構成された板部材83とは別に、緩衝材を備えていてもよい。この場合、プラテン42が開放位置のとき、板部材83ではなく緩衝材が上方から面119に当接することによって、開放位置のプラテン42はベース部材90に支持される。
【0201】
上記実施形態では、給送トレイ20の筐体14からの抜去時に、給送トレイ20に当接されて回動したレバー75がスライド部材74に当接することでスライド部材74が後位置から前位置にスライドされ、給送トレイ20の筐体14への挿入時に、給送トレイ20がスライド部材74に当接することでレバー75を介することなくスライド部材74が前位置から後位置にスライドしていた。
【0202】
しかし、上記とは逆に、給送トレイ20の筐体14への挿入時に、給送トレイ20に当接された回動したレバー75がスライド部材74に当接することでスライド部材74が前位置から後位置にスライドされ、給送トレイ20の筐体14からの抜去時に、給送トレイ20がスライド部材74に当接することでレバー75を介することなくスライド部材74が後位置から前位置にスライドしてもよい。この場合、レバー75が基準位置に位置するとき、レバー75の先端部79(レバー75のうち切り欠き96に入り込んでいる部分)は、軸76よりも前方に位置していること(上記実施形態では、軸76よりの後方に位置していた。)が好ましい。
【0203】
また、給送トレイ20の筐体14に対する挿入時及び抜去時の双方において、給送トレイ20に当接された回動したレバー75がスライド部材74に当接することでスライド部材74がスライドしてもよい。また、給送トレイ20の筐体14に対する挿入時及び抜去時の双方において、給送トレイ20がスライド部材74に当接することでレバー75を介することなくスライド部材74がスライドしてもよい。
【0204】
なお、給送トレイ20の筐体14への挿入時に、レバー75がスライド部材74に当接することでスライド部材74が前位置から後位置にスライドされる場合、スライド部材74は、例えば、
図15に破線示されるように、レバー75に前方から当接される位置に、左右方向9へ突出した突部142を備えている。
【0205】
上記実施形態では、スライド部材74が前後方向8にスライドすることによって、プラテン42が印刷位置及び開放位置に移動した。しかし、プラテン42は、スライド部材74以外の部材の移動に連動して、印刷位置及び開放位置に移動してもよい。
【0206】
例えば、
図26に示されるように、給送トレイ20の側壁140の上面141が、印刷位置のプラテン42を支持していてもよい。側壁140は、上記実施形態の給送トレイ20の側壁30に対応するものである。側壁140の上面141の後端部には、傾斜面141Aが形成されている。給送トレイ20が筐体14から抜去される際に前方へ移動することによって、傾斜面141Aがプラテン42の先端部を下方へガイドすることにより、プラテン42が、
図26に実線で示される印刷位置から、
図26に破線で示される開放位置(プラテン42の上面(用紙の支持面)の前端部66が印刷位置のときよりも下方にある位置)へ回動する。また、スライド部材74が筐体14へ挿入される際に後方へ移動する過程において、傾斜面141Aプラテン42の先端部を上方へガイドすることにより、プラテン42が開放位置から印刷位置へ回動する。この場合、給送トレイ20が回動機構の一例である。
【0207】
また、例えば、排出トレイ21の上面が印刷位置のプラテン42を支持しており、排出トレイ21の移動に連動して、プラテン42が印刷位置及び開放位置に回動してもよい。なお、排出トレイ21は、上記実施形態と同様に給送トレイ20と一体に移動してもよいし、給送トレイ20とは別に移動してもよい。この場合、排出トレイ21が回動機構の一例である。
【0208】
フレーム(サイドフレーム55やガイドレール56)の材質は、金属に限らず、ポリアセタール(POM)などの樹脂を主成分とした樹脂製であってもよい。
【0209】
プリンタ部11は、当接部材41を備えていなくてもよい。
【0210】
上記実施形態において、搬送路65は、湾曲部33と直線部34とで構成されていたが、搬送路65の構成はこれに限らない。例えば、搬送路65は、筐体14の後面に形成された開口から前方へ延びて内部空間23へ至る概ね直線状の経路であってもよい。
【0211】
上記実施形態のプリンタ部11は、記録部24がキャリッジ40を備えた所謂シリアルヘッド方式であったが、記録部24がキャリッジ40を備えておらず、記録ヘッド38が搬送路65の左端から右端に亘って設けられている所謂ラインヘッド方式であってもよい。
【0212】
上記実施形態では、プリンタ部11は、インクジェット方式で用紙12に画像を記録するものであったが、インクジェット方式以外、例えば電子写真方式で用紙12に画像を記録するものであってもよい。
【符号の説明】
【0213】
10・・・複合機
11・・・プリンタ部(画像記録装置)
12・・・用紙(シート)
13・・・開口
14・・・筐体
15・・・搬送向き
23・・・内部空間
24・・・記録部
32・・・隙間
42・・・プラテン
44・・・排出ローラ対(ローラ対)
65・・・搬送路
74・・・スライド部材(回動機構)
90・・・ベース部材
120・・・壁