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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】加熱システム、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20220101AFI20230719BHJP
   F24D 3/18 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
F24D3/00 L
F24D3/18
F24D3/00 P
F24D3/00 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019211724
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021081169
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】小阪 正朋
(72)【発明者】
【氏名】岡田 有二
(72)【発明者】
【氏名】松本 航平
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169108(JP,A)
【文献】国際公開第2018/142473(WO,A1)
【文献】特開2004-226028(JP,A)
【文献】特開平10-122577(JP,A)
【文献】特開2008-116148(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3364116(EP,A1)
【文献】特開2015-083905(JP,A)
【文献】特開2017-096620(JP,A)
【文献】特開2011-033267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/00 - 3/18
F24H 1/00 - 15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒であるCO2が顕熱変化又は凝縮と蒸発とを繰り返して循環する冷媒回路を有するとともに、入口から導入された被加熱液体を加熱して出口から吐出する熱交換部と、
前記被加熱液体が循環し、前記熱交換部の入口と出口とに接続されているとともに、該被加熱液体との熱交換によって該被加熱液体を冷却する暖房負荷に接続されている循環流路と、
前記暖房負荷の入口側と出口側との間で前記循環流路を接続する戻り流路と、
前記循環流路における前記暖房負荷の出口側であって、前記戻り流路と前記暖房負荷との間に設けられ、前記被加熱液体を圧送するとともに、吐出流量を変化させることが可能な循環ポンプと、
前記循環流路に設けられ、前記熱交換部に流入する前記被加熱液体の流量を調整する流量調整部と、
前記循環ポンプ、及び前記流量調整部を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記暖房負荷の入口側における前記被加熱液体の温度と出口側の温度との差分に基づいて、前記循環ポンプの吐出流量を調整するとともに、該吐出流量の変化によらず、前記熱交換部に流入する前記被加熱液体の流量が予め定められた下限値以上となるように前記流量調整部を動作させる第一制御部を有する加熱システム。
【請求項2】
前記第一制御部は、前記循環ポンプの吐出流量の変化によらず、前記熱交換部に流入する前記被加熱液体の流量が予め定められた上限値以下となるように前記流量調整部を動作させる請求項1に記載の加熱システム。
【請求項3】
前記流量調整部は、前記循環流路における前記戻り流路よりも前記熱交換部の入口側に設けられ、開度を連続的に変化させることが可能な弁装置であり、
前記第一制御部は、該弁装置の開度を変化させる請求項1又は2に記載の加熱システム。
【請求項4】
前記循環流路における前記戻り流路よりも前記熱交換部の入口側に設けられ、前記被加熱液体の流量を計測する流量計測部をさらに有し、
前記流量調整部は、前記熱交換部の出口側における前記戻り流路と前記循環流路との接続部に設けられた三方弁であり、
前記第一制御部は、前記流量計測部の計測結果に基づいて該三方弁の開通状態を変化させる請求項1又は2に記載の加熱システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記暖房負荷の入口側における前記被加熱液体の温度が、予め定められた入口目標温度になるように、前記熱交換部の出力を変化させる第二制御部をさらに有する請求項1から4のいずれか一項に記載の加熱システム。
【請求項6】
冷媒であるCO2が顕熱変化または凝縮と蒸発とを繰り返して循環する冷媒回路を有するとともに、入口から導入された被加熱液体を加熱して出口から吐出する熱交換部と、
前記被加熱液体が循環し、前記熱交換部の入口と出口とに接続されているとともに、該被加熱液体との熱交換によって該被加熱液体を冷却する暖房負荷に接続されている循環流路と、
前記暖房負荷の入口側と出口側との間で前記循環流路を接続する戻り流路と、
前記循環流路における前記暖房負荷の出口側であって、前記戻り流路と前記暖房負荷との間に設けられ、前記被加熱液体を圧送するとともに、吐出流量を変化させることが可能な循環ポンプと、
前記循環流路に設けられ、前記熱交換部に流入する前記被加熱液体の流量を調整する流量調整部と、
を備える加熱システムの制御方法であって、
前記暖房負荷の入口側における前記被加熱液体の温度と出口側の温度との差分を算出する差分算出ステップと、
前記差分に基づいて、前記循環ポンプの吐出流量を調整するポンプ調整ステップと、
前記吐出流量の変化によらず、前記熱交換部に流入する前記被加熱液体の流量が予め定められた下限値以上となるように前記流量調整部を動作させる流量調整ステップと、
を含む加熱システムの制御方法。
【請求項7】
前記流量調整ステップでは、前記吐出流量の変化によらず、前記熱交換部に流入する前記被加熱液体の流量が予め定められた上限値以下となるように前記流量調整部を動作させる請求項6に記載の加熱システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱システム、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば床暖房のような暖房装置を動作させるための技術として、下記特許文献1に記載された装置が知られている。特許文献1に記載された加熱装置は、暖房負荷としての床暖房パネルに湯を供給する給湯器を有している。給湯器は、タンクと、ヒートポンプとを有している。給湯器は、常に一定の温度の湯を供給するように構成されている。具体的には、タンクの上部の温度を検出し、ヒートポンプの圧縮機及びポンプを制御することでタンク内の温度を所定の値に維持する。さらに、三方弁を制御することで、戻り流路を通じてヒートポンプに戻る比較的冷たい湯と、タンクから流れ出る比較的暖かい湯との混合比を変化させる。これにより、目標温度となる湯が暖房負荷に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-169108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された加熱装置では、タンクに湯を貯留し続ける必要があることから、当該タンクを通じて外部に湯の熱が逃げやすい。さらに、タンクからは常に一定の温度の湯が供給される。言い換えれば、暖房負荷が小さい場合であっても(即ち、湯の温度が高くなくてよい場合であっても)、一定の温度の湯を供給する。このため、効率の良い運転点でヒートポンプの圧縮機を運転することができない。したがって、加熱装置としての効率が限定的となる虞がある。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、より一層効率が向上した加熱システム、及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る加熱システムは、冷媒であるCO2が凝縮と蒸発を繰り返して循環する冷媒回路を有するとともに、入口から導入された被加熱液体を加熱して出口から吐出する熱交換部と、前記被加熱液体が循環し、前記熱交換部の入口と出口とに接続されているとともに、該被加熱液体との熱交換によって該被加熱液体を冷却する暖房負荷に接続されている循環流路と、前記暖房負荷の入口側と出口側との間で前記循環流路を接続する戻り流路と、前記循環流路における前記暖房負荷の出口側であって、前記戻り流路と前記暖房負荷との間に設けられ、前記被加熱液体を圧送するとともに、吐出流量を変化させることが可能な循環ポンプと、前記循環流路に設けられ、前記熱交換部に流入する前記被加熱液体の流量を調整する流量調整部と、前記循環ポンプ、及び前記流量調整部を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記暖房負荷の入口側における前記被加熱液体の温度と出口側の温度との差分に基づいて、前記循環ポンプの吐出流量を調整するとともに、該吐出流量の変化によらず、前記熱交換部に流入する前記被加熱液体の流量が予め定められた下限値以上となるように前記流量調整部を動作させる第一制御部を有する。
【0007】
本開示に係る加熱システムの制御方法は、冷媒であるCO2が顕熱変化または凝縮と蒸発を繰り返して循環する冷媒回路を有するとともに、入口から導入された被加熱液体を加熱して出口から吐出する熱交換部と、前記被加熱液体が循環し、前記熱交換部の入口と出口とに接続されているとともに、該被加熱液体との熱交換によって該被加熱液体を冷却する暖房負荷に接続されている循環流路と、前記暖房負荷の入口側と出口側との間で前記循環流路を接続する戻り流路と、前記循環流路における前記暖房負荷の出口側であって、前記戻り流路と前記暖房負荷との間に設けられ、前記被加熱液体を圧送するとともに、吐出流量を変化させることが可能な循環ポンプと、前記循環流路に設けられ、前記熱交換部に流入する前記被加熱液体の流量を調整する流量調整部と、を備える加熱システムの制御方法であって、前記暖房負荷の入口側における前記被加熱液体の温度と出口側の温度との差分を算出する差分算出ステップと、前記差分に基づいて、前記循環ポンプの吐出流量を調整するポンプ調整ステップと、前記吐出流量の変化によらず、前記熱交換部に流入する前記被加熱液体の流量が予め定められた下限値以上となるように前記流量調整部を動作させる流量調整ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より一層効率が向上した加熱システム、及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る加熱システムの構成を示す系統図である。
図2】本開示の実施形態に係る制御装置のハードウェア構成図である。
図3】本開示の実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
図4】本開示の実施形態に係る第一制御部の動作を示すフローチャートである。
図5】本開示の実施形態に係る第二制御部の動作を示すフローチャートである。
図6】本開示の変形例に係る加熱システムの構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(加熱システムの構成)
以下、本開示の実施形態に係る加熱システム100について、図1から図5を参照して説明する。本実施形態に係る加熱システム100は、例えば暖房負荷2としての床暖房パネルに湯を供給する装置である。図1に示すように、加熱システム100は、熱交換部1と、循環流路3と、戻り流路4と、循環ポンプ5と、流量調整部6と、第一温度検出部71と、第二温度検出部72と、第三温度検出部73と、制御装置90と、を備えている。
【0011】
(熱交換部の構成)
熱交換部1は、被加熱液体としての水等を加熱する。より具体的には、熱交換部1は、冷媒であるCO2を、顕熱変化又は凝縮と蒸発とを繰り返しながら循環させ、被加熱液体とCO2との間で熱交換をさせる。これにより、熱交換部1の出口1bからは加熱された被加熱液体が吐出する。なお、詳しくは図示しないが、熱交換部1は、内部に圧縮機、膨張弁、凝縮器、及び蒸発器等を有するヒートポンプである。
【0012】
(循環流路の構成)
熱交換部1の出口1b、及び入口1aには、循環流路3が接続されている。循環流路3は、熱交換部1の出口1bから当該熱交換部1の外部を通って入口1aに至る管路である。循環流路3には上述の被加熱液体が流通する。循環流路3の中途には、暖房負荷2が接続されている。循環流路3を通じて暖房負荷2の入口2aに供給された高温の被加熱液体は、暖房負荷2で室内空気と熱交換することで冷却され、出口2bから循環流路3に排出される。
【0013】
(戻り流路の構成)
循環流路3における暖房負荷2の入口2aと出口2bとの間には、戻り流路4が設けられている。つまり、この戻り流路4は、循環流路3を流通する被加熱液体の一部を取り出して、熱交換部1を迂回させるように構成されている。
【0014】
(循環ポンプの構成)
循環流路3における暖房負荷2の出口2b側であって、戻り流路4と暖房負荷2との間には、循環ポンプ5が設けられている。循環ポンプ5は、循環流路3中の被加熱液体を、暖房負荷2の出口2b側から熱交換部1の入口1a側に向かって圧送する。また、この循環ポンプ5は、外部からの指令に基づいて吐出流量を連続的に変化させることが可能とされており、具体的には入力される電圧に基づいて回転数を変化させることが可能なインバータポンプが循環ポンプ5として好適に用いられる。詳しくは後述するが、循環ポンプ5の吐出流量は、制御装置90からの指令によって制御される。
【0015】
(弁装置の構成)
さらに、循環流路3上であって、戻り流路4の入口4aと熱交換部1の入口1aとの間には、流量調整部6としての弁装置V1が設けられている。この弁装置V1は、外部からの指令に基づいて開度を連続的に変化させることで、当該弁装置V1を通過する流体(被加熱液体)の流量を調整することが可能とされている。
【0016】
(第一温度検出部の構成)
弁装置V1と熱交換部1の入口1aとの間には、第一温度検出部71が設けられている。第一温度検出部71は、循環流路3中を流通する被加熱液体の温度を検出して、電気信号として制御装置90に送出する。第一温度検出部71としては、公知の温度センサ等が好適に用いられる。
【0017】
(第二温度検出部の構成)
戻り流路4の出口4bと暖房負荷2の入口2aとの間には、第二温度検出部72が設けられている。第二温度検出部72は、第一温度検出部71と同様に、循環流路3中を流通する被加熱液体の温度を検出して、電気信号として制御装置90に送出する。第二温度検出部72としては、公知の温度センサ等が好適に用いられる。
【0018】
(第三温度検出部の構成)
循環ポンプ5と暖房負荷2の出口2bとの間には、第三温度検出部73が設けられている。第三温度検出部73は、第一温度検出部71及び第二温度検出部72と同様に、循環流路3中を流通する被加熱液体の温度を検出して、電気信号として制御装置90に送出する。第三温度検出部73としては、公知の温度センサ等が好適に用いられる。
【0019】
(制御装置の構成)
次いで、図2図3を参照して制御装置90の構成について説明する。図2に示すように、制御装置90は、CPU91(Central Processing Unit)、ROM92(Read Only Memory)、RAM93(Random Access Memory)、HDD94(Hard Disk Drive)、信号送受信モジュール95(I/O:Input/Output)を備えるコンピュータである。信号送受信モジュール95は、上述の第一温度検出部71、第二温度検出部72、及び第三温度検出部73が検出した温度の値を電気信号として受信する。また、信号送受信モジュール95は、上述の熱交換部1、循環ポンプ5、及び弁装置V1に、これら装置を制御する電信号を送信する。なお、信号送受信モジュール95は、例えばチャージアンプ等を介して増幅された信号を送受信してもよい。
【0020】
図4に示すように、制御装置90のCPU91は予め自装置で記憶するプログラムを実行することにより、第一制御部81、第二制御部82、記憶部83、判定部84、を有する。第一制御部81は、暖房負荷2の入口2a側と出口2b側における被加熱液体の温度の差分に基づいて、循環ポンプ5の吐出流量を調整する。さらに、第一制御部81は、この吐出流量の変化によらず、熱交換部1に流入する被加熱液体の流量が予め定められた下限値以上、かつ上限値以下の一定値となるように弁装置V1の開度を調整する。記憶部83は、これら下限値、及び上限値を予め記憶している。
【0021】
第二制御部82は、熱交換部1の出力を制御する。詳しくは図示しないが、熱交換部1は被加熱液体を圧縮する圧縮機を有している。熱交換部1から吐出される被加熱液体の温度は、この圧縮機の回転数に比例している。つまり、第二制御部82によって圧縮機の回転数を変化させることで、熱交換部1から吐出される被加熱液体の温度(より具体的には暖房負荷2の入口2a側で第二温度検出部72によって検出される温度)が予め定められた目標温度(入口目標温度Tp)を目指して調整される。記憶部83は、この入口目標温度Tpを予め記憶するか、外部からの入力に基づいて保持している。
【0022】
(制御装置の動作)
次いで、制御装置90による制御の一例(加熱システム100の制御方法)について、図4図5を参照して説明する。
【0023】
(第一制御部の動作)
図4に示すように、第一制御部81による循環ポンプ5及び弁装置V1の制御方法は、運転状態判定ステップS11と、差分算出ステップS12と、判定ステップS13と、ポンプ調整ステップS14A,S14Bと、流量調整ステップS15A,S15Bと、を含む。
【0024】
運転状態判定ステップS11では、判定部84によって、当該第一制御部81による制御のもとで加熱システム100が運転されているか否かが判定される。運転状態判定ステップS11でYesと判定された場合、後続の差分算出ステップS12を実行する。差分算出ステップS12では、上述の暖房負荷2の入口2a側と出口2b側との間における被加熱液体の温度の差分(ΔT=T1-T2)が算出される。具体的には、第二温度検出部72と第三温度検出部73による検出値同士の差分ΔTが算出される。
【0025】
判定ステップS13では、判定部84によって、上記の差分ΔTが、予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。差分ΔTが閾値以上である状態(ステップS13:Yes)とは、暖房負荷2における熱落差が大きくなる方向に変化していることを意味する。したがって、この状態では、暖房負荷2に供給される被加熱液体の熱量を上げる必要がある。そこで、後続のポンプ調整ステップ14Aを実行することで、循環ポンプ5の吐出流量を増加させる。さらに、流量調整ステップS15Aを実行することで、弁装置V1の開度を小さくする。これにより、まず暖房負荷2の入口2a側に供給される被加熱液体の流量が増大し、暖房負荷2の出力が上昇する。
【0026】
ここで、上記の流量調整ステップS15Aを実行しない場合(つまり、弁装置V1の開度を変化させない場合)について考える。このような制御を行った場合、循環ポンプ5の吐出流量の増加に伴って、熱交換部1に流入する被加熱液体の流量も増加する。熱交換部1を構成する各種の装置や配管には、予め定められた耐圧能力や耐腐食性能が存在する。したがって、熱交換部1に流入する被加熱液体の流量を際限なく上昇させた場合、これら装置や配管に潰食や損壊を生じる虞がある。そこで、上述の流量調整ステップS15Aを実行することで弁装置V1の開度を小さくする。これにより、戻り流路4側に向かう流量が相対的に大きくなる一方で、熱交換部1に向かう流量を一定の値(上限値)未満に維持することができる。なお、この「上限値」は、熱交換部1の性能や仕様に応じて適宜決定される。
【0027】
反対に、差分ΔTが閾値未満である状態(ステップS13:No)とは、暖房負荷2における熱落差が小さくなる方向に変化していることを意味する。したがって、この状態では、暖房負荷2に供給される被加熱液体の熱量を下げる必要がある。そこで、後続のポンプ調整ステップS14Bを実行することで、循環ポンプ5の吐出流量を減少させる。さらに、流量調整ステップS15Bを実行することで、弁装置V1の開度を大きくする。これにより、まず暖房負荷2の入口2a側に供給される被加熱液体の流量が減少し、暖房負荷2の出力が低下する。
【0028】
ここで、上記の流量調整ステップS15Bを実行しない場合(つまり、弁装置V1の開度を変化させない場合)について考える。このような制御を行った場合、循環ポンプ5の吐出流量の減少に伴って、熱交換部1に流入する被加熱液体の流量も減少する。小さな流量の被加熱液体をさらなる高温状態まで加熱し続ける必要が生じる。これにより、熱交換部1の効率的な運転が妨げられてしまう(最適な運転点を逸脱してしまう)可能性がある。そこで、上述の流量調整ステップS15Bを実行することで弁装置V1の開度を大きくする。これにより、戻り流路4側に向かう流量が相対的に小さくなる一方で、熱交換部1に向かう流量を一定の値(下限値)以上に維持することができる。なお、この「下限値」は、熱交換部1の性能や仕様に応じて適宜決定される。
【0029】
(第二制御部の動作)
次に、図5を参照して、第二制御部82の動作について説明する。第二制御部82による熱交換部1の制御方法は、運転状態判定ステップS21と、入口温度取得ステップS22と、温度判定ステップS23と、出力調整ステップS24A,S24Bと、を含む。
【0030】
運転状態判定ステップS21では、判定部84によって、当該第二制御部82による制御のもとで加熱システム100が運転されているか否かが判定される。運転状態判定ステップS21でYesと判定された場合、後続の入口温度取得ステップS22を実行する。入口温度取得ステップS22では、上述の第一温度検出部71の検出結果に基づいて、まず熱交換部1の入口1a側における被加熱液体の温度T0を取得する。次いで、この温度T0に、上述の温度の差分ΔT(=T1-T2:暖房負荷2の入口2a側と出口2b側の温度の差分)を加算する。これにより、温度予測値Ts=T0+ΔTが得られる。
【0031】
次いで、温度判定ステップS23では、判定部84によって、この温度予測値Tsと、予め定められている入口目標温度Tpとの大小が判定される。温度判定ステップS23で、Ts≦Tpと判定された場合(ステップS23:Yes)、後続の出力調整ステップS24Aを実行することにより、熱交換部1の出力を増加させる。具体的には、熱交換部1の圧縮機の回転数を上昇させる。一方で、温度判定ステップS23で、Ts>Tpと判定された場合(ステップS23:No)、後続の出力調整ステップS24Bを実行することにより、熱交換部1の出力を低下させる。具体的には、熱交換部1の圧縮機の回転数を低下させる。このような制御を行うことにより、暖房負荷2の入口2aにおける被加熱液体の温度を、入口目標温度Tpに近づくように調整される。
【0032】
(作用効果)
以上、説明したように、上記構成によれば、制御装置90の第一制御部81は、暖房負荷2の入口2a側における被加熱液体の温度と出口2b側の温度との差分に基づいて、循環ポンプ5の吐出流量を調整する。例えば、温度の差分が小さくなる方向に変化した場合(つまり、暖房負荷2で必要とされる熱量が小さくなる方向に変化した場合)には、第一制御部81は循環ポンプ5の吐出流量を低下する方向に変化させる。さらに、この時、流量調整部としての弁装置V1は、循環ポンプ5の吐出流量の変化によらず、熱交換部1に流入する被加熱液体の流量が予め定められた下限値以上となるようにその開度が調整される。これにより、暖房負荷2の入口2a側と出口2b側との温度の差分が大きくなり、これを一定の値に維持することができる。さらに、このように暖房負荷2で必要とされる熱量が小さくなった場合であっても、熱交換部1には下限値以上の流量が供給される。その結果、熱交換部1を最適な運転点で動作させることができる。一方で、暖房負荷2で必要とされる熱量が小さくなったことに伴って熱交換部1に流入する流量も際限なく低下させた場合には、小さな流量の被加熱液体をさらなる高温状態まで加熱し続ける必要が生じる。これにより、熱交換部1の効率的な運転が妨げられてしまう可能性がある。しかしながら、上記構成によれば、このような可能性を低減し、熱交換部1を無理なく安定的に運転することができる。
【0033】
上記構成によれば、第一制御部81は、熱交換部1に流入する被加熱液体の流量が予め定められた上限値以下となるように流量調整部6としての弁装置V1を動作させる。ここで、熱交換部1の各種配管や機器では、一定程度の流量を超えると潰食を生じる可能性がある。しかしながら、上記構成によれば、流量に上限値が設けられていることから、このような可能性を低減することができる。
【0034】
上記構成によれば、流量調整部6として弁装置V1を用いるとともに、その開度を第一制御部81によって変化させることのみによって、容易かつ安価に、熱交換部1に流入する被加熱液体の流量が予め定められた下限値以上とすることができる。
【0035】
上記構成によれば、第二制御部82によって、暖房負荷2の入口2aにおける被加熱液体の温度が入口目標温度になるように熱交換部1の出力が変化する。これにより、入口目標温度が変化した場合であっても、即時に高い応答性のもとで被加熱液体の温度を追従させることができる。
【0036】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、図6に示すように、上記実施形態で説明した弁装置V1に代えて、流量調整部6として三方弁V2を用いることも可能である。具体的には、この三方弁V2は、戻り流路4の出口4bに設けられる。また、この構成では、戻り流路4の入口4aと熱交換部1の入口1aとの間には、被加熱液体の流量を計測する流量計測部80が設けられる。制御装置90(第一制御部81)は、流量計測部80の計測した流量の値に基づいて、三方弁V2の開度を変化させることで、戻り流路4に流入する流量と熱交換部1に流入する流量との比率を調整する。これにより、上記実施形態で説明したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
<付記>
各実施形態に記載の加熱システム、及びその制御方法は、例えば以下のように把握される。
【0038】
(1)第1の態様に係る加熱システム100は、冷媒であるCO2が凝縮と蒸発を繰り返して循環する冷媒回路を有するとともに、入口1aから導入された被加熱液体を加熱して出口1bから吐出する熱交換部1と、前記被加熱液体が循環し、前記熱交換部1の入口1aと出口1bとに接続されているとともに、該被加熱液体との熱交換によって該被加熱液体を冷却する暖房負荷2に接続されている循環流路3と、前記暖房負荷2の入口2a側と出口2b側との間で前記循環流路3を接続する戻り流路4と、前記循環流路3における前記暖房負荷2の出口2b側であって、前記戻り流路4と前記暖房負荷2との間に設けられ、前記被加熱液体を圧送するとともに、吐出流量を変化させることが可能な循環ポンプ5と、前記循環流路3に設けられ、前記熱交換部1に流入する前記被加熱液体の流量を調整する流量調整部6と、前記循環ポンプ5、及び前記流量調整部6を制御する制御装置90と、を備え、前記制御装置90は、前記暖房負荷2の入口2a側における前記被加熱液体の温度と出口2b側の温度との差分に基づいて、前記循環ポンプ5の吐出流量を調整するとともに、該吐出流量の変化によらず、前記熱交換部1に流入する前記被加熱液体の流量が予め定められた下限値以上となるように前記流量調整部6を動作させる第一制御部81を有する。
【0039】
上記構成によれば、制御装置90の第一制御部81は、暖房負荷2の入口2a側における被加熱液体の温度と出口2b側の温度との差分に基づいて、循環ポンプ5の吐出流量を調整する。例えば、温度の差分が小さくなる方向に変化した場合(つまり、暖房負荷2で必要とされる熱量が小さくなる方向に変化した場合)には、第一制御部81は循環ポンプ5の吐出流量を低下する方向に変化させる。さらに、この時、流量調整部6は、循環ポンプ5の吐出流量の変化によらず、熱交換部1に流入する被加熱液体の流量が予め定められた下限値以上となるように動作する。これにより、暖房負荷2の入口2a側と出口2b側との温度の差分が大きくなり、これを一定の値に維持することができる。さらに、このように暖房負荷2で必要とされる熱量が小さくなった場合であっても、熱交換部1には下限値以上の流量が供給される。その結果、熱交換部1を最適な運転点で動作させることができる。一方で、暖房負荷2で必要とされる熱量が小さくなったことに伴って熱交換部1に流入する流量も際限なく低下させた場合には、小さな流量の被加熱液体をさらなる高温状態まで加熱し続ける必要が生じる。これにより、熱交換部1の効率的な運転が妨げられてしまう可能性がある。しかしながら、上記構成によれば、このような可能性を低減し、熱交換部1を無理なく安定的に運転することができる。
【0040】
(2)第2の態様に係る加熱システム100では、前記第一制御部81は、前記循環ポンプ5の吐出流量の変化によらず、前記熱交換部1に流入する前記被加熱液体の流量が予め定められた上限値以下となるように前記流量調整部6を動作させる。
【0041】
上記構成によれば、第一制御部81は、熱交換部1に流入する被加熱液体の流量が予め定められた上限値以下となるように流量調整部6を動作させる。ここで、熱交換部1の各種配管や機器では、一定程度の流量を超えると潰食を生じる可能性がある。しかしながら、上記構成によれば、流量に上限値が設けられていることから、このような可能性を低減することができる。
【0042】
(3)第3の態様に係る加熱システム100では、前記流量調整部6は、前記循環流路3における前記戻り流路4よりも前記熱交換部1の入口1a側に設けられ、開度を連続的に変化させることが可能な弁装置V1であり、前記第一制御部81は、該弁装置V1の開度を変化させる。
【0043】
上記構成によれば、流量調整部6として弁装置V1を用いるとともに、その開度を第一制御部81によって変化させることのみによって、容易かつ安価に、熱交換部1に流入する被加熱液体の流量が予め定められた下限値以上とすることができる。
【0044】
(4)第4の態様に係る加熱システム100は、前記循環流路3における前記戻り流路4よりも前記熱交換部1の入口1a側に設けられ、前記被加熱液体の流量を計測する流量計測部80をさらに有し、前記流量調整部6は、前記熱交換部1の出口1b側における前記戻り流路4と前記循環流路3との接続部に設けられた三方弁V2であり、前記第一制御部81は、前記流量計測部の計測結果に基づいて該三方弁V2の開通状態を変化させる。
【0045】
上記構成によれば、流量調整部6として三方弁V2を用いるとともに、流量計測部80の計測結果に基づいてその開通状態を第一制御部81によって変化させることのみによって、容易かつ安価に、熱交換部1に流入する被加熱液体の流量が予め定められた下限値以上とすることができる。
【0046】
(5)第5の態様に係る加熱システム100では、前記制御装置90は、前記暖房負荷2の入口2a側における前記被加熱液体の温度が、予め定められた入口目標温度になるように、前記熱交換部1の出力を変化させる第二制御部82をさらに有する。
【0047】
上記構成によれば、第二制御部82によって、暖房負荷2の入口2aにおける被加熱液体の温度が入口目標温度になるように熱交換部1の出力が変化する。これにより、入口目標温度が変化した場合であっても、即時に高い応答性のもとで被加熱液体の温度を追従させることができる。
【0048】
(6)第6の態様に係る加熱システムの制御方法は、冷媒であるCO2が凝縮と蒸発を繰り返して循環する冷媒回路を有するとともに、入口1aから導入された被加熱液体を加熱して出口1bから吐出する熱交換部1と、前記被加熱液体が循環し、前記熱交換部1の入口1aと出口1bとに接続されているとともに、該被加熱液体との熱交換によって該被加熱液体を冷却する暖房負荷2に接続されている循環流路3と、前記暖房負荷2の入口2a側と出口2b側との間で前記循環流路3を接続する戻り流路4と、前記循環流路3における前記暖房負荷2の出口2b側であって、前記戻り流路4と前記暖房負荷2との間に設けられ、前記被加熱液体を圧送するとともに、吐出流量を変化させることが可能な循環ポンプ5と、前記循環流路3に設けられ、前記熱交換部1に流入する前記被加熱液体の流量を調整する流量調整部6と、を備える加熱システム100の制御方法であって、前記暖房負荷2の入口2a側における前記被加熱液体の温度と出口2b側の温度との差分を算出する差分算出ステップS12と、前記差分に基づいて、前記循環ポンプ5の吐出流量を調整するポンプ調整ステップS14A,S14Bと、前記吐出流量の変化によらず、前記熱交換部に流入する前記被加熱液体の流量が予め定められた下限値以上となるように前記流量調整部6を動作させる流量調整ステップS15A,S15Bと、を含む。
【0049】
上記方法によれば、まず差分算出ステップS12によって、暖房負荷2の入口2a側における被加熱液体の温度と出口2b側の温度との差分が求められる。ポンプ調整ステップS14A,S14Bでは、この差分に基づいて、循環ポンプ5の吐出流量を調整する。例えば、温度の差分が小さくなる方向に変化した場合(つまり、暖房負荷2で必要とされる熱量が小さくなる方向に変化した場合)には、循環ポンプ5の吐出流量を低下する方向に変化させる。さらに、流量調整ステップS15A,S15Bでは、流量調整部6は、循環ポンプ5の吐出流量の変化によらず、熱交換部1に流入する被加熱液体の流量が予め定められた下限値以上となるように動作する。これにより、暖房負荷2の入口2a側と出口2b側との温度の差分が大きくなり、これを一定の値に維持することができる。さらに、このように暖房負荷2で必要とされる熱量が小さくなった場合であっても、熱交換部1には下限値以上の流量が供給される。その結果、熱交換部1を最適な運転点で動作させることができる。一方で、暖房負荷2で必要とされる熱量が小さくなったことに伴って熱交換部1に流入する流量も際限なく低下させた場合には、小さな流量の被加熱液体をさらなる高温状態まで加熱し続ける必要が生じる。これにより、熱交換部1の効率的な運転が妨げられてしまう可能性がある。しかしながら、上記方法によれば、このような可能性を低減し、熱交換部1を無理なく安定的に運転することができる。
【0050】
(7)第7の態様に係る加熱システム100の制御方法において、前記流量調整ステップS15A,S15Bでは、前記吐出流量の変化によらず、前記熱交換部1に流入する前記被加熱液体の流量が予め定められた上限値以下となるように前記流量調整部6を動作させる。
【0051】
上記方法によれば、流量調整ステップS15A,S15Bでは、熱交換部1に流入する被加熱液体の流量が予め定められた上限値以下となるように流量調整部6を動作させる。ここで、熱交換部1の各種配管や機器では、一定程度の流量を超えると潰食を生じる可能性がある。しかしながら、上記方法によれば、流量に上限値が設けられていることから、このような可能性を低減することができる。
【符号の説明】
【0052】
100 加熱システム
1 熱交換部
1a 入口
1b 出口
2 暖房負荷
2a 入口
2b 出口
3 循環流路
4 戻り流路
4a 入口
4b 出口
5 循環ポンプ
6 流量調整部
71 第一温度検出部
72 第二温度検出部
73 第三温度検出部
80 流量計測部
81 第一制御部
82 第二制御部
83 記憶部
84 判定部
90 制御装置
91 CPU
92 ROM
93 RAM
94 HDD
95 信号送受信モジュール
V1 弁装置
V2 三方弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6