(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】耐共振パネル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20230720BHJP
G10K 11/168 20060101ALI20230720BHJP
B64C 1/40 20060101ALI20230720BHJP
E04B 1/99 20060101ALN20230720BHJP
【FI】
G10K11/16 120
G10K11/16 160
G10K11/168
B64C1/40
E04B1/99 E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018222342
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-11-22
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】アダム アール.ウェストン
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア エム.モンゴメリー
(72)【発明者】
【氏名】チア-ミン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ピー.マックナイト
(72)【発明者】
【氏名】アダム イー.ソレンセン
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0158307(US,A1)
【文献】特開2009-198901(JP,A)
【文献】特開2014-101078(JP,A)
【文献】特開昭55-021015(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0027807(US,A1)
【文献】実開平02-115797(JP,U)
【文献】米国特許第04778028(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0326536(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16-11/168
B64C 1/40
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースパネルコア材と2つのベースパネル表面シートとを含むベースパネルであって、前記2つのベースパネル表面シートが、前記ベースパネルコア材の両側に其々隣接しているベースパネルと、
前記ベースパネルの全領域より小さい前記ベースパネルの所定領域内に、前記ベースパネルに沿って配置された少なくとも1つのスティフナと、を含み、
前記少なくとも1つのスティフナは、スティフナコア材と、2つのスティフナ表面シートとを含み、前記スティフナ表面シートは、前記スティフナコア材の両側に其々隣接して
おり且つ無機繊維を含む、耐共振パネル。
【請求項2】
前記少なくとも1つのスティフナは、低い質量密度で、前記ベースパネルの前記所定領域に剛性を加えることにより、前記ベースパネルに耐共振性をもたらすように構成されている、請求項1に記載の耐共振パネル。
【請求項3】
前記少なくとも1つのスティフナは、
前記2つのベースパネル表面シートのうちの1つの上、又は
前記2つのベースパネル表面シートの間に前記ベースパネルコア材に隣接して、配置されている、請求項1又は2に記載の耐共振パネル。
【請求項4】
前記少なくとも1つのスティフナは、前記ベースパネルの総表面積の25%未満に設けられており、前記少なくとも1つのスティフナの質量は、前記耐共振パネルの総質量の20%未満である、請求項1~3のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【請求項5】
前記少なくとも1つのスティフナは、前記ベースパネルに沿って前記ベースパネルの各所定領域内に其々配置された2つ以上のスティフナを含む、請求項1~4のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【請求項6】
前記耐共振パネルは、前記耐共振パネルにおける300Hz~1000Hzの周波数のノイズ伝播を低減するように構成されている、請求項1~5のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【請求項7】
前記少なくとも1つのスティフナの1つ以上の側縁に沿って配置された外縁型のスティフナをさらに含む、請求項1~6のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【請求項8】
前記少なくとも1つのスティフナは、前記少なくとも1つのスティフナ内にくり抜き部を画定する内壁を含む、請求項1~7のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【請求項9】
少なくとも1つの慣性部材をさらに含み、前記少なくとも1つの慣性部材は、前記耐共振パネルの前記所定領域に質量増加をもたらすように構成されており、前記少なくとも1つの慣性部材は、前記少なくとも1つのスティフナの質量密度の10倍の質量密度を有する、請求項1~8のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【請求項10】
強化部材をさらに含み、前記強化部材は、前記ベースパネルの前記所定領域の外縁に沿って配置されるとともに、前記ベースパネルの前記所定領域に音響境界を規定する、請求項1~9のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【請求項11】
固定部材をさらに含み、前記固定部材は、前記耐共振パネルを構造体に固定するとともに前記ベースパネルの前記所定領域に音響境界を規定するように構成されている、請求項1~10のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【請求項12】
構造体と、
前記構造体に隣接して配置された、請求項1~11のいずれか1つに記載の前記耐共振パネルと、を含むシステム。
【請求項13】
ベースパネルコア材と2つのベースパネル表面シートとを含むベースパネルであって、前記2つのベースパネル表面シートが前記ベースパネルコア材の両側に其々隣接して
おり且つ無機繊維を含む、ベースパネルを有する耐共振パネルを製造する方法であって、
少なくとも1つのスティフナを、前記ベースパネルに沿って、前記ベースパネルの所定領域内に取り付けることを含み、前記少なくとも1つのスティフナは、スティフナコア材と、2つのスティフナ表面シートとを含み、前記2つのスティフナ表面シートは、前記スティフナコア材の両側に其々隣接しており、前記少なくとも1つのスティフナは、前記ベースパネルに耐共振性をもたらすように構成されている、方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのスティフナを前記ベースパネルに取り付けることは、複合材レイアップ、ホットプレス、真空成形、真空バギング、真空補助樹脂トランスファー成形のうちの少なくとも1つ、又は、ねじ、接着剤、接着フィルム、もしくはリベットを含む固着手段のうちの少なくとも1つを取り入れることによって、前記少なくとも1つのスティフナを前記ベースパネルに取り付けることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのスティフナを前記ベースパネルに取り付ける前に、前記少なくとも1つのスティフナの内部をくり抜くことにより、前記少なくとも1つのスティフナにくり抜き部を形成することをさらに含む、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、遮音材に関し、より具体的には、パネルを用いて遮音性をもたらす方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の遮音技術は、吸音材、ダンパー、ブロッカーなどの受動的なノイズ制御手法を用いている。これらのコンポーネントは、サイズや重量が大きすぎる場合が多く、このことによって、当該手法は、ノイズ制御に関して非効率、あるいは、低周波ノイズ制御には非効果的なものとなっている。能動的なノイズ制御によれば、ノイズ制御の手法として別の選択肢が与えられる。しかしながら、能動的なノイズ制御は、配線や電力を必要とする。このため、能動的なノイズ制御は、複雑であったり、コストがかさんだり、自動車、船舶、航空機などの大きな表面積が存在する用途でのノイズ制御(例えば「大面積単位のノイズ制御」)での実施が困難であったりする。
【発明の概要】
【0003】
本開示では、遮音パネルが提供される。当該遮音パネルは、ベースパネルコア材と2つのベースパネル表面シートとを含むベースパネルを含む耐共振パネルでありうる。前記2つのベースパネル表面シートは、前記ベースパネルコア材の両側に其々隣接している。耐共振パネルは、前記ベースパネルの全領域より小さい前記ベースパネルの所定領域内に、前記ベースパネルに沿って配置された少なくとも1つのスティフナをさらに含む。前記スティフナは、スティフナコア材と、2つのスティフナ表面シートとを含む。前記2つのスティフナ表面シートは、前記スティフナコア材の両側に其々隣接しており、前記スティフナは、前記ベースパネルに耐共振性をもたらすように構成されている。前記スティフナは、低い質量密度で、前記ベースパネルの前記所定領域に剛性を加えることにより、前記ベースパネルに耐共振性をもたらすように構成されうる。前記スティフナは、前記2つのベースパネル表面シートのうちの1つに配置されうる。前記スティフナは、前記2つのベースパネル表面シートの間に、前記ベースパネルコア材に隣接して配置されうる。いくつかの実施形態において、前記スティフナは、前記ベースパネルの総表面積の25%未満に設けられ、前記スティフナの質量は、前記耐共振パネルの総質量の約20%未満である。
【0004】
いくつかの実施形態において、前記耐共振パネルは、前記ベースパネルに沿って前記ベースパネルの各所定領域内に其々配置された2つ以上のスティフナを含みうる。
【0005】
前記スティフナコア材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)発泡体、アラミドハニカム構造、又はこれらの組み合わせを含みうる。前記スティフナ表面シートは、炭素繊維、ガラス繊維、又はこれらの組み合わせを含みうる。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記耐共振パネルは、前記耐共振パネルにおける約300Hz~約1000Hzの周波数のノイズ伝播を低減しうる。
【0007】
いくつかの実施形態において、外縁型のスティフナが、前記スティフナの1つ以上の側縁に沿って配置されうる。いくつかの実施形態において、前記スティフナは、前記少なくとも1つのスティフナ内にくり抜き部を画定する内壁を含みうる。いくつかの実施形態において、前記スティフナは、少なくとも1つの慣性部材を含み、前記慣性部材は、サンドイッチ型パネルの前記所定領域に質量増加をもたらすように構成されている。前記慣性部材は、前記スティフナの質量密度の約10倍の質量密度を有しうる。前記慣性部材は、固体アルミニウム、ゴム、タングステン、セラミック、又はこれらの組み合わせを含みうる。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記耐共振パネルは、強化部材を含みうる。前記強化部材は、前記ベースパネルの前記所定領域の外縁に沿って配置されるとともに、前記ベースパネルの前記所定領域に音響境界を規定する。いくつかの実施形態において、前記耐共振パネルは、固定部材を含みうる。前記固定部材は、前記耐共振パネルを構造体に固定するとともに前記ベースパネルの前記所定領域に音響境界を規定するように構成されうる。
【0009】
本明細書で提示される実施形態は、耐共振パネルを製造する方法にも関連しうる。例えば、前記方法は、少なくとも1つのスティフナをベースパネルに取り付けることを含み、前記ベースパネルは、ベースパネルコア材と2つのベースパネル表面シートとを含む。前記2つのベースパネル表面シートは、前記ベースパネルコア材の両側に其々隣接しうる。スティフナは、前記ベースパネルに沿って、前記ベースパネルの所定領域内に配置されうる。スティフナは、スティフナコア材と、2つのスティフナ表面シートとを含みうる。前記2つのスティフナ表面シートは、前記スティフナコア材の両側に其々隣接しうる。前記スティフナは、前記ベースパネルに耐共振性をもたらすように構成されうる。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記スティフナを前記ベースパネルに取り付けることは、複合材レイアップ、ホットプレス、真空成形、真空バギング、真空補助樹脂トランスファー成形(VARTM)、又はこれらの組み合わせを含みうる。いくつかの実施形態において、前記スティフナを前記ベースパネルに取り付けることは、ねじ、接着剤、接着フィルム、リベット、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを取り入れることによって、前記スティフナを前記ベースパネルに取り付けることを含む。いくつかの実施形態において、当該方法は、前記少なくとも1つのスティフナを前記ベースパネルに取り付ける前に、前記少なくとも1つのスティフナの内部をくり抜くことにより、前記少なくとも1つのスティフナにくり抜き部を形成することをさらに含みうる。
【0011】
本明細書で提示される実施形態は、スティフナを形成する方法にも関連しうる。例えば、当該方法は、ベースパネルの所定領域にスティフナを取り付けることによってベースパネルに耐共振性をもたらすように構成されたスティフナを形成することを含みうる。当該方法は、2つのスティフナ表面シートをスティフナコア材上に配置し、次いで、スティフナ表面シート及びスティフナコア材を、ベースパネルの所定領域内においてベースパネルに取り付けることを含みうる。
【0012】
いくつかの実施形態において、外側セクション及び内側セクションを画定するとともに密閉キャビンを形成しうる構造体(例えば胴体外板)を含むシステムが提供されうる。当該構造体は、耐共振パネルに隣接し、耐共振パネルと協働することにより、向上した遮音効果をもたらしうる。いくつかの実施形態において、耐共振パネルは、航空機に用いることができ、当該航空機が、耐共振パネルを含むシステムである。
【0013】
上記の概要は、単に、いくつかの実施形態を要約することによって、本開示のいくつかの態様の基本的な理解を与えるために提示したものである。従って、上述の実施形態は単なる例であり、本開示の範囲又は精神を狭めるものと解釈すべきではない。本開示の範囲は、ここで要約したものに加えて、可能性のある多くの実施形態を包含するものであり、そのうちのいくつかを以下にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
一般的な文言による開示例の説明は以上のとおりである。次に、添付の図面について言及するが、これらの図面は、必ずしも正確な縮尺にしたがったものではない。
【0015】
【
図1A-1B】本明細書に記載のいくつかの例示的な実施形態による、耐共振パネルの例示的なスティフナを示す図である。
【
図2A-2G】本明細書に記載のいくつかの例示的な実施形態による、耐共振パネルのスティフナの例示的な形状を示す図である。
【
図3】本明細書に記載のいくつかの例示的な実施形態による、サンドイッチ型スティフナを強化する外縁型スティフナを示す図である。
【
図4A-4C】本明細書に記載のいくつかの例示的な実施形態による、ベースパネルにスティフナを接合する例示的な方法を示す図である。
【
図5A-5B】本明細書に記載のいくつかの例示的な実施形態による、ベースパネルにスティフナを取り付ける例示的な方法を示す図である。
【
図6A-6D】本明細書に記載のいくつかの例示的な実施形態による、例示的な耐共振パネルの土台を構成する例示的なベースパネルを示す図である。
【
図7】本明細書に記載のいくつかの例示的な実施形態による、耐共振パネルに対する例示的な慣性部材の追加を示す図である。
【
図8】本明細書に記載のいくつかの例示的な実施形態による、例示的な強化部材を示す図である。
【
図9A-9B】本明細書に記載のいくつかの例示的な実施形態による、耐共振パネルに対する例示的な強化部材の追加を示す図である。
【
図10A-10B】本明細書に記載のいくつかの例示的な実施形態による、耐共振パネルに対する例示的な固定部材の追加を示す図である。
【
図11A-11B】本明細書に記載のいくつかの例示的な実施形態による、例示的な耐共振パネルに見られる複層効果を示す図である。
【
図12】本明細書に記載のいくつかの実施形態による、遮音性をもたらす例示的な方法のフローチャートである。
【
図13】本明細書に記載のいくつかの実施形態による、耐共振パネルを形成するための例示的な方法のフローチャートである。
【
図14】本明細書に記載のいくつかの例示的な実施形態による、航空機における耐共振パネルが使用されうる例示的な部分、ならびに、航空機の側壁パネルに対する例示的な耐共振処置を示す図である。
【
図15】本明細書に記載のいくつかの例示的な実施形態による、例示的な耐共振パネルの挿入損失を示す図である。
【
図16】本明細書に記載のいくつかの例示的な実施形態による、耐共振パネルに対して例示的な慣性部材を追加した場合を示す図である。
【
図17】本明細書に記載のいくつかの例示的な実施形態による、例示的な耐共振パネルに見られる複層効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
概して、本明細書で提示される本開示の実施形態は、遮音性、特に、低周波数のノイズ制御を実現するための方法及びシステムを含む。より具体的には、反共振の手法を用いることによって、遮音性がもたらされる。本開示のいくつかの実施形態を、添付図面を参照して以下により詳しく説明する。なお、図面には、開示の実施形態のうちのいくつかが示されているが全てが示されているわけではない。実際、これら開示は多くの異なる態様で実施することができ、本明細書に記載した実施形態に限定して解釈されるべきではない。むしろ、これらの態様は、適用されうる所定の法的要件を本開示が満たすように、提示されている。なお、同様の要素は、図面全体にわたって同様の数字で示している。
【0017】
本明細書において、「耐共振性(anti-resonant performance)」とは、構造体の正味の振動変位を低減することによる音響透過損失(sound transmission loss)のことをいう。本明細書に記載のいくつかの実施形態において、このような構造体の正味の振動変位の低減は、一般的に、入射する音波をコンポーネントで反射することによって得られる。このような反射は、開示の要素によって実現することができる。例えば、本明細書で説明するように、本明細書に記載のスティフナ(stiffener-member)をベースパネルに加えることにより、パネルに耐共振性がもたらされ、当該パネルを耐共振パネルとすることができる。
【0018】
「質量密度(mass density)」という用語は、体積あたりの物質の量のことをいう。
【0019】
また、「くり抜き部(hollowed portion)」という用語は、各コンポーネントの所定領域内の穴または材料の欠落部のことをいい、くり抜き部では、コンポーネント内で連続するはずの材料が、欠落している。くり抜き部は、コンポーネントの内部をくり抜くことによって形成することができ、コンポーネントの内壁によって画定されうる。本明細書において、「所定領域(defined area)」とは、概して、耐共振パネルにおける耐共振範囲又は部分のことをいう。すなわち、耐共振パネルは、複数の所定領域又は部分に区分されうる。スティフナは、これらの所定領域のすべて又は一部を覆いうる。慣性部材などの追加のコンポーネントを、所定領域に追加することができ、また、強化部材及び/又は固定部材を、所定領域に追加することもでき、具体的には、これらを、所定領域を規定している外縁に沿って設けることができる。
【0020】
本明細書において、「音響境界(acoustic boundary)」とは、概して物理的なコンポーネントによって付与される、画定された音響伝達路を形成する境界線のことをいい、このような伝達路では、(速度、経路、伝達効率などに関して)隣接する空間とは異なる態様で、音波が進む。本開示では、様々なコンポーネントを耐共振パネルに組み込むことによって音響境界を形成することができ、これにより、パネルに入射したノイズの伝播を、より良好に制御することが可能となる。音響境界は、所定領域の外縁に揃えて設けることができる。
【0021】
本開示で提供されるのは、特にノイズを反射及び/又は遮断することによってノイズ制御を実現するためのシステム、装置、パネル、及び方法である。例えば反共振性を付与するスティフナを含む遮音パネルによって、遮音性をもたらすことができ、このようなパネルを耐共振パネルと称しうる。このようにして得られる耐共振パネルは、パネルを通過する外部音響エネルギーを低減することができ、これにより遮音性を向上させることができる。耐共振パネルは、ベースパネルと、ベースパネルに沿って分散配置されたスティフナとを含む。耐共振パネルは、局所的位相ずれ振動モードとの反共振周波数を実現することにより、パネルを通って任意の密閉構造体内に入る音波放射を、受動的に消失させることを可能にする。従来の航空機キャビン、自動車、船舶などの密閉構造体では、その複雑な形状、大きな寸法、ならびに、窓などの既存の装着部品のために、ノイズ制御のための構造的な振動管理が、非常に困難なものとなりうる。これに対し、ベースパネルをスティフナと組み合わせた耐共振設計は、このような密閉構造体における大面積単位のノイズ制御を可能にするものである。耐共振パネルの軽量且つ曲げ剛性の高い性質によって、反共振によるノイズ制御または耐共振性をもたらすことができる。耐共振パネルは、広い周波数範囲にわたって、特に、数百~千ヘルツ(Hz)の低周波数範囲において、良好な音響透過損失を達成することができ、同じ周波数範囲における従来の質量追加やダンピングによる手法と比べて、効率が良い。装着されている窓や近傍のフレームなどの既存のコンポーネントを利用して、耐共振パネルに慣性部材を組み込むことにより、耐共振設計をさらに調整することができる。
【0022】
また、耐共振パネルは、航空機の胴体外板などの近傍の構造体と相互作用することによって、複層(double-leaf)の遮音性を実現することもできる。耐共振パネルは、航空機のキャビンなどの構造体や、ノイズ制御が関心事である他の密閉構造体において、目標とするノイズ制御を実現する、軽量且つコンパクトで、実用的且つ経済的な手段をもたらすことができる。特異な輪郭のパネルが必要とされるエリアでは、これまで音響的制御が困難であったため、当該耐共振パネルは、特に、そのようなエリアで有益でありうる。当該耐共振パネルは、個々のスティフナがベースパネルに沿って所定領域に分散配置されたものであり、耐共振パネルの耐共振性を達成するとともに、所望の形状に適合することが可能である。いくつかの実施形態において、耐共振パネルは、航空機のキャビンなどの構造体に、軽量のノイズ遮断隔壁を付与し、特に、形状適合性があり且つ非対称の形状を有する、寸法の大きい既存のパネル(例えば、船舶、ビークル、又は航空機のトリムパネル)を改善し(例えば大面積単位のノイズ制御)、例えばキャビンの窓などの、構造体における他のコンポーネントと協働して、ノイズの伝播を制御することができる。
【0023】
耐共振パネルは、単純なパネルから複雑なパネルまで、任意のパネルと交換することができる。当該耐共振パネルは、既存の遮音パネルと比べて、より単純な製造方法により製造コストを削減するとともに、剛性の制御を可能にし、概して既存の遮音パネルに比べて質量の少ないパネルを実現することができる。具体的には、以前の技術は、吸音材、ダンパー、又はブロッカーなどの、受動的なノイズ制御手法を用いている。これらのコンポーネントは、特に低周波数のノイズ制御には、サイズや重量が大きすぎる場合が多い。能動的なノイズ制御によれば、ノイズ制御の手法として別の選択肢が与えられうる。しかしながら、能動的なノイズ制御は、一般的に配線及び電力要件を必要とするため、このような選択肢は、複雑でコストがかさみ、大面積単位のノイズ制御に実施するのは困難なものとなっている。
【0024】
実際のところ、特に密閉キャビン(例えば自動車、航空機、船舶、列車などのキャビン)の内部における軽量の音響減衰手段が、長い間必要とされている。ビークルのトリムパネルに使用される現行技術のノイズ制御は、ヘルムホルツ式の吸収、拘束層減衰(constrained layer damping)、質量負荷(mass-loading)、吸音用繊維バット(fibrous-type batting)、又はこれらの組み合わせなどの以前からのノイズ制御手段を、慣例的に採用している。一般的に言えば、1000Hzを超えるノイズには、このような手法で対処することができる。しかしながら、例えば1000Hzより低い低周波範囲については、軽量のノイズ制御手段が必要とされている。
【0025】
軽量設計が求められるビークルに用いられるトリムパネルは、通常、サンドイッチ型に設計されており、これによれば、密閉キャビンの内壁を構成する境界壁を、比較的耐久性の高いものにしつつ、比較的軽量な構造を実現できる。このようなパネルや、軽量で比較的剛性が高く比較的大型のパネルは、音波放射を生じさせる。また、これらのトリムパネルがビークルの内面の大部分を構成しているため、トリムパネルが、ビークル内部の音響特性に最も影響を与えるものとなっている。これらのトリムパネルが、特に1000Hzより低いノイズ周波数範囲を支配する全体的な振動モードを生成する可能性があり、トリムパネルに質量負荷を加えることなくこれを緩和することは困難であり、仮に質量負荷を加えると、質量面での大きな不利益ならびにこれに伴う燃料効率の低下が生じる。
【0026】
本開示で提供されるのは、軽量、小型、高いノイズ低減性、及び環境ロバスト性(environmental robustness)といった利点を有する、受動的なノイズ制御技術である。当該耐共振パネルは、高いノイズ低減性を有する、形状適合性に優れた遮音パネルを実現し、これにより、快適なトラベルのための軽量のノイズ制御手段が提供されうる。例えば、当該耐共振パネルは、航空機キャビン内のトリムパネルとして、様々な飛行機モデルの隔壁、バルクヘッド、側壁、及び、床として用いることができ、これによって、チャンバ内及びチャンバ間のノイズ伝播を低減することができる。加えて、耐共振パネルは、例えば、ノイズを発するコンポーネント(例えば、モータ、ポンプ、コンプレッサ、トランスミッション、変圧器、ダクトなど)を含む、家電製品、グラインダ、ブレンダ、電子レンジ、排水ポンプなどの様々な製品に、例えばハウジング又は隔壁として用いることができる。耐共振パネルは、本開示の目的から逸脱することなく、ノイズ制御が望まれる任意の用途など、様々な用途に好適に用いることができる。
【0027】
耐共振パネルは、音の反射メカニズムを用い、反共振を利用することによって、調整した帯域幅の音響エネルギーをパネルから反射させる。本開示のメカニズムは、未改変のパネルに比べると、質量の面でわずかな犠牲を伴いうるが、この犠牲は、質量則による予測に基づいて同様の透過損失性を実現するために採用されうる他の手段よりは、はるかに少ない。この耐共振パネルの透過損失性は、全体的なパネルの振動モードを修正することによって、対象とする低周波範囲において、質量則により予測されるパネルの音響減衰の限界を超えうる。いくつかの実施形態において、全体的なパネルの振動モードを改変するために、1つ以上の慣性部材、固定部材、強化部材などの他のコンポーネントが追加されうる。
【0028】
耐共振パネルは、質量を大幅に増やすことなく、低周波範囲(例えば約300Hz~約1000Hz)において、特に効果を発揮することができる。耐共振帯域は、本明細書で開示するように、未改変状態のベースパネルで問題となるノイズ周波数の対象範囲に合致するよう、調整することができる。また、現行のトリムパネル設計は、ほとんどの旅客機及びビークルにおいて建築的なデザイン及び特徴が所望されるため、もともと形状が複雑である。この複雑さによって、耐共振設計を施すことが困難になる可能性がある。本開示で提供される、耐共振性を有するパネルは、多様な範囲のパネル材料、形状、サイズ、及び配向を採用することにより、様々な用途に使用できるよう、パネルの汎用性を高めたものである。このノイズ制御メカニズムは、温度、湿度、及び圧力の変化に比較的影響されにくいという付加的な利点も有しており、このことによって、当該パネルは、航空機、列車、自動車など、環境条件の変動を日常的に経験するビークルに適したものとなっている。
【0029】
当該耐共振パネルは、特に非対称形状及び大きな寸法を有する複雑形状のパネルに関して、反共振制御を実施することによって、既存の調整可能なサンドイッチ構造の音響境界を、改善することができる。また、耐共振パネルは、近傍のパネルと相互作用することにより、広帯域幅に関して複層防音効果(double-pane soundproofing)をもたらすことができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、事前に認可された材料を耐共振パネルに用いることによって、ノイズ管理のための、大面積単位にわたるノイズ制御又は音響遮断構造を作製することができる。
【0031】
例示的な実施形態を概略的に説明したが、様々な例の動作を実行する様々な構造の設計は、以下に説明する。
【0032】
本開示で提供されるのは、遮音性をもたらすための反共振による防音機能を有する耐共振パネルである。いくつかの実施形態において、当該技術は、例えば、本質的に受動的であり、電子機器や駆動動作に依存して防音機能を実現するものではない。当該耐共振パネルは、例えば軽量且つ剛性の高いサンドイッチ型ベースパネルを含み、様々なサイズ、厚み、及び、例えば事前に認可された航空機材料などの様々な材料で製造することができ、また、様々な方法で取り付けることができる。耐共振パネルは、ベースパネルとともに、スティフナも含む。理論に縛られることを意図しないが、スティフナは、ベースパネルの特定の領域(「所定領域」)に局所的な剛性をもたらし、これにより、得られるパネルの耐共振性が実現される。
【0033】
耐共振パネルは、低周波音を遮断することができるとともに、航空機などのビークルでの使用が既に認可された既存の複合材料を利用することができる。耐共振パネルの機械的特性により、遮音のための高い防音性能がもたらされる。耐共振パネルは、軽量且つ強度の高いパネルが所望される任意の用途、例えば、低燃料ビークルなど、に使用することができる。
【0034】
図1Aは、スティフナ108の例示的な形状を示している。
図1Bは、スティフナ108の追加の例示的な形状を示している。スティフナ108は、
図1Bに示すようなくり抜き部124を含みうる。これにより、最終設計後のスティフナ108の剛性及び表面密度を変化させ、ひいては、スティフナ108の剛性対質量比を変化させることができる。スティフナ108は、スティフナ108内にくり抜き部124を画定する内壁122を含みうる。くり抜き部124は、スティフナ108(例えばスティフナ108のスティフナコア材114及びスティフナ表面シート116、117(
図2A~
図2Gに図示)の各々)を垂直に貫通しうる。このようなスティフナ108のくり抜きによって、スティフナ108の剛性を大幅に低下させることなく、スティフナ108の質量を減らすことができる。すなわち、剛性部材108は、耐共振パネル100に有意な質量を加えない一方で、耐共振パネル100のダイナミック特性を調節するのに十分な剛性を維持する。スティフナ108によるこのような調節のバリエーションを利用することにより、所望の耐共振性を得ることができる。
【0035】
図2A~
図2Gは、ベースパネル102上のスティフナ108の様々な例示的な構造を示している。反共振効果をもたらすために、1つ以上のスティフナ108をベースパネル102に用いることができる。スティフナ108は、全体的な振動モードを制御し、耐共振設計を可能にするものである。スティフナ108は、耐共振パネル100の耐共振性を実現するために必要とされる、任意の形状、数、配向、又は位置を包含しうる。例えば、いくつかの実施形態において、スティフナ108は、耐共振パネル100の総質量の約10%~約30%、例えば耐共振パネル100の総質量の約15%~約25%、例えば耐共振パネル100の総質量の約20%以下とすることができる。
【0036】
また、スティフナ108は、耐共振パネル100の総表面積の40%未満(例えば、スティフナ108が載置される耐共振パネル100の面の総表面積の40%未満)、例えば、耐共振パネル100の総表面積の35%未満(例えば、スティフナ108が載置される耐共振パネル100の面の総表面積の35%未満)、例えば、耐共振パネル100の総表面積の30%未満(例えば、スティフナ108が載置される耐共振パネル100の面の総表面積の30%未満)、耐共振パネル100の総表面積の25%未満(例えば、スティフナ108が載置される耐共振パネル100の面の総表面積の25%未満)、例えば、耐共振パネル100の総表面積の20%未満(例えば、スティフナ108が載置される耐共振パネル100の面の総表面積の20%未満)、を覆うものであってもよい。いくつかの実施形態において、例えば、スティフナ108は、ベースパネル102の総表面積の25%未満に設けられ、スティフナ108の質量は、耐共振パネル100の総質量の約20%以下である。このように、ベースパネル102の総表面積における設置範囲が少なく(例えば耐共振パネル100の総表面積の40%未満である)、且つ、耐共振パネル100の総質量に追加する質量が少ない(例えば耐共振パネル100の総質量の30%未満である)ことによって、スティフナ108は、ベースパネル102の質量に大きな影響を与えることなくベースパネル102の剛性を増すとともに、スティフナ108の個々の性質によって耐共振性を制御することができる。スティフナ108の密度及び厚みは、所望される耐共振性に応じて、変更することができる。スティフナ108は、概して、質量密度が低く、剛性が高いものとされる。
【0037】
図2A~
図2Gに提示した様々な構造は、耐共振パネル100の剛性及び質量密度特性を変化させることができるいくつかの構造例である。本開示のスティフナ108は、
図2A~
図2Gに示したものに限定されるものではなく、本開示の目的及び範囲から逸脱することなく、様々な材料を様々な構造で含むことができる。例えば、スティフナ108は、以下の材料及び/又はその他の材料と、所望の軽さと剛性とを併せ持つ性質をもたらすとともにベースパネル102に音響境界132を付与する設計との組み合わせとすることができる。例えば、スティフナ表面シート116、117は、炭素繊維、ガラス繊維、又はこれらの組み合わせなどの、軽量で頑丈な素材とすることができる。スティフナコア材114は、発泡体(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)発泡体)を含んでもよく、ハニカム構造(例えばアラミドハニカム構造)であってもよく、多孔質構造あるいはこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態において、スティフナコア材114は、PET発泡体、アラミドハニカム構造、又はこれらの組み合わせを含みうる。
【0038】
スティフナ表面シート116、117は、炭素繊維、ガラス繊維、これらの組み合わせ、又は他の類似の材料を含みうる。いくつかの実施形態において、スティフナ表面シート116、117は、炭素繊維、ガラス繊維、繊維複合体、又はこれらの組み合わせを含みうる。質量を大幅に増やすことなく剛性を付与するために、金属(例えばアルミニウム)の支柱、トラス、又は多孔質構造体を用いてもよい。2つの異なるスティフナコア材114を、
図2A~
図2Gに示している。スティフナ108は、ベースパネル102に沿う個別の局所的な部分であるので、その材料は、ベースパネル102の作製に通常用いられる材料よりも、高い弾性率を有していてもよい。また、スティフナは、ベースパネル102全体の長さ/幅にわたるものではなく、ベースパネル102に沿って設けられる、概して比較的小さい、局所的な個別の部分であるため、大きな面積で使用すると可燃性が懸念事項となるような材料も、スティフナ108に用いることができる。
【0039】
図2A~
図2Gに示すように、複数のスティフナ表面シート116及び/又は117を用いて、スティフナ108を形成することができる。これに加えて/代えて、複数のスティフナコア材114を用いて、スティフナ108を形成することができる。いくつかの実施形態において、複数のスティフナ108は、ベースパネル102上に設けられうる。例えば、
図2Eの耐共振パネル100は、ベースパネル102上の所定領域110a、110bに其々設けられた、第1スティフナ108a及び第2スティフナ108bを含む。
図2Eでは、第1スティフナ108aと第2スティフナ108bとが同じ構成を有するものとして示されているが、第1スティフナ108a及び第2スティフナ108bの構成は、同じものであっても、異なるものであってもよく、また、3つ以上のスティフナ108を、ベースパネル102に組み込んでもよい。これらの要素の数及び組み合わせのバリエーションを利用して、所望の耐共振性を達成することができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、耐共振パネル100は、2つのベースパネル表面シート106、107のうちの1つの上に配置されたスティフナ108を含みうる。いくつかの実施形態において、耐共振パネル100は、2つのベースパネル表面シート106、107の間に、ベースパネルコア材104に隣接して配置されたスティフナ108を含みうる。
図2A~
図2Eは、ベースパネル表面シート106、107に装着されたスティフナ108を示している。一方、
図2F及び
図2Gは、ベースパネル102の内部に装着されるとともに、ベースパネル表面シート106、107によって覆われたスティフナ108を示している。具体的には、
図2F及び
図2Gにおいて、スティフナ108は、ベースパネルコア材104の一部を置換している。
図2Gに示すように、第1スティフナ表面シート116を、接着剤(固着手段146)を用いて、ベースパネル表面シート106の外側に装着することができる。このようにスティフナ表面シート116を載置することによって、スティフナ108が配置された所定領域110の曲げ剛性を、さらに高めることができる。
【0041】
ベースパネル102の内部に装着される場合は、スティフナ108は、スティフナコア材114と1つ以上のスティフナ表面シート116、117とを含んでもよいし、あるいは、1つ以上のスティフナ表面シート116、117を含まずに、スティフナコア材114のみを含んでもよい。スティフナ表面シート116、117は、ベースパネル102の内部に(例えば1つ以上のベースパネル表面シート106、107(
図6A~
図6D参照)の下に)装着したり、ベースパネル102の外側に(例えば1つ以上のベースパネル表面シート106、107の上に)装着したりすることができる。
【0042】
スティフナ108は、ベースパネル102の特定の領域(例えば所定領域110)内に特定の構成でスティフナ108を組み込むことにより、所望のレベルの耐共振性をもたらすように、設計することができる。すなわち、スティフナ108の材料、サイズ、形状、及び構造は、所望の反共振挙動を実現するように改変することができる。いくつかの実施形態において、耐共振パネル100は、ベースパネル102に沿って、ベースパネル102の其々の所定領域110(例えば
図2Eに示す第1及び第2所定領域110a、110b)に配置された2つ以上のスティフナ108(例えば、
図2Eに示す第1及び第2スティフナ108a及び108b)を含みうる。
【0043】
理論に縛られることを意図しないが、スティフナ108は、ベースパネル102に効率的な音響境界を付与し、これによって、耐共振パネル100の全体的な振動モード(すなわち、第1主モード、第2主モード、及びこれらの間の反共振モードなど、ベースパネル102全体の振動モード)を変化させることができる。いくつかの実施形態において、スティフナ108は、サンドイッチ型構造(例えば、スティフナコア材114の両側でコア材114を覆う2つのスティフナ表面シート116、117を含む構造)を有し、このような構造により、サンドイッチ型のスティフナ108における軽量であるが曲げ剛性の高い性質を実現しうる。高い剛性対質量比を有するスティフナ108の他の様々な構造が、本明細書で説明される。このような高い剛性対質量比は、耐共振性を可能にするとともに、ビークルに用いた際には、高い燃料効率も実現しうる。いくつかの実施形態において、耐共振パネル100は、耐共振パネル100における約300Hz~約1000Hzの周波数のノイズ伝播を低減するように構成されうる。例えば、耐共振パネル100は、ベースパネル102(例えば、
図2A~
図2G、
図4A~
図4C、
図5A~
図5B、及び、
図6A~
図6Dのベースパネル102)に設けられたスティフナ108(例えば、
図1A~
図1B、
図2A~
図2G、
図4A~
図4C及び
図5A~
図5Bのスティフナ108)を含み、当該スティフナが、通常ベースパネルだけでは低減又は制御が難しい、耐共振パネル100における低周波(例えば約300Hz~約1000Hz)のノイズ伝播を低減しうる。
【0044】
いくつかの実施形態において、1つ以上のスティフナ108を、1つ以上のベースパネル102に、具体的には1つ以上のベースパネル表面シート106、107に加えることにより、ベースパネル102の剛性対質量比を変化させることができる。耐共振パネル100は、ベースパネルコア材104及び2つのベースパネル表面シート106、107を含むベースパネル102であって、2つのベースパネル表面シート106、107が、ベースパネルコア材104の両側に其々隣接しているベースパネルと、ベースパネル102の所定領域110内に、ベースパネル102に沿って配置された少なくとも1つのスティフナ108と、を含み、所定領域110は、ベースパネル102の全領域112より小さい。スティフナ108は、スティフナコア材114と、2つのスティフナ表面シート116、117とを含み、2つのスティフナ表面シート116、117は、スティフナコア材114の両側に隣接しており、スティフナ108は、ベースパネル102に耐共振性をもたらすように構成されている。スティフナ108は、低い質量密度で、ベースパネル102の所定領域110に剛性を加えることにより、ベースパネル102に耐共振性をもたらすように構成されている
【0045】
例えば、
図2A~
図2G、
図3、及び、
図4A~
図4Cに示すように、スティフナ108は、少なくとも1つのスティフナ表面シート116、117及びスティフナコア材114を含むサンドイッチ型のスティフナとして構成されるとともに、本明細書に記載の材料によって形成されることによって、剛性をもたらすことができる。いくつかの実施形態において、例えば、スティフナ108は、
図1Bに示すようにくり抜き部124を含むことによって、低い質量密度で剛性を加えることができ、
図5A~5B又は
図4A~
図4Cに示すように、ベースパネルに配置されうる。1つ以上のスティフナ108は、1つ以上のベースパネル表面シート106、107の外面上に配置される。いくつかの実施形態において、1つ以上のスティフナ108を、ベースパネルコア材104の内部に加えた後に、ベースパネル表面シート106、107によって覆ってもよい。1つ以上のスティフナ108は、ベースパネルコア材104に装着してもよいし、これに加えて又は代えて、ベースパネル102の所定領域110内でベースパネルコア材104を置換してもよい。1つ以上のスティフナ108を、ベースパネル102の所定領域110に加えることにより、ベースパネル102に沿う特定の箇所におけるベースパネル102の剛性対質量比を変化させることができる。様々なスティフナ表面シート116、117、接着フィルム又は接着剤(まとめて「固着手段」146と称する)、及び、スティフナコア材114を用いて、スティフナ108を形成し、スティフナ108及び得られる耐共振パネル100における所望の剛性及び特定の質量特性を達成することができる。
【0046】
図1A~
図1B及び
図2A~
図2Gに示した構造は、耐共振性のためのスティフナ108として効果的に用いることができる実施形態の例である。これらの例ならびにスティフナ108の他の構造の組み合わせを、ベースパネル102と共に用いることによって、耐共振性が向上した耐共振パネル100を提供することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、
図3に示すように、スティフナ108は、軽量であるとともに、耐共振パネル100の剛性をさらに高める外縁型のスティフナ118を含みうる。耐共振パネル100は、スティフナ108の1つ以上の側縁120に沿って配置された外縁型のスティフナ118を含みうる。例えば、いくつかの実施形態において、外縁型スティフナ118は、サンドイッチ型のスティフナ108(例えば
図3参照)などのスティフナ108を補強するために追加してもよいし、単独でスティフナ108として用いてもよい。外縁型のスティフナ118は、サンドイッチ型のスティフナ108の外縁に沿って配置されることで特に効果を発揮して、耐共振パネル100の耐共振性をさらに向上させる。例えば、
図3は、サンドイッチ型のスティフナ108を強化する軽量の外縁型スティフナ118を示しており、サンドイッチ型のスティフナは、サンドイッチ型のベースパネル102に係合している。
【0048】
図3に示すように、外縁型スティフナ118は、例えば、Z字形の断面を有する(例えば、2つの平行な水平部分が垂直部分によって連結されており、これら2つの平行な水平部分は、水平部分の対向する端部において其々が垂直部分に連結されて、Z字形の断面を形成している)とともに、サンドイッチ型のスティフナ108の1つ以上の側部又は側縁120に沿って延びている。例えば、
図3に示した実施形態では、外縁型スティフナ118は、サンドイッチ型スティフナ108の3つの側縁120に沿ってサンドイッチ型スティフナ108の外縁をたどるように延びている。ただし、外縁型スティフナ118は、サンドイッチ型スティフナ108の側縁のうちの1つ、2つ、又はすべてをたどるものであってもよい。耐共振パネル100の剛性は、外縁型スティフナ118が、
図3に示すように、周囲を囲む3つ以上の側縁120を繋ぐように延びる場合に、特に高まる。外縁型スティフナ118は、I字形の断面(例えば、2つの平行な水平部分が垂直部分によって連結されており、これらの2つの平行な水平部分は、垂直部分の上端及び下端で中央揃えされて、I字形の断面を形成している)、L字形の断面(例えば、1つの水平部分が1つの垂直部分の下端に連結されてL字形の断面を形成している)、Z字形の断面、T字形の断面(例えば、1つの水平部分が1つの垂直部分の上端に連結されてT字形の断面を形成している)などを有していてもよいし、サンドイッチ型ベースパネル102に軽量のスティフナ108を設けることができる任意の他の適当な構造を有していてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態において、スティフナ108の材料は、航空宇宙産業又は自動車産業用に既に適合化された、事前に認可された材料であってもよい。いくつかの実施形態において、ベースパネル102を構成する材料と同じ材料をスティフナ108に用いる一方で、構造、サイズ、及び厚みを異ならせることで、所望の耐共振性を達成してもよい。
【0050】
耐共振パネル100の耐共振性は、ベースパネル102に対するスティフナ108の接合強度を最大化することにより、さらに向上させることができる。ベースパネル102に対するスティフナ108の接合は、特に、スティフナ108の外縁又は側縁120に沿って、できるだけ完全なものにするのがよい。
図4A~
図4Cは、スティフナ108をベースパネル102に接合するための例示的な方法を示している。
図4Aは、ベースパネル102の形状にフィットするようにモールド内で形成された、剛性が高く且つ形状適合性に優れたスティフナ108を示している。本明細書において、「形状適合性(conformal)」とは、隣接するコンポーネントに密にフィットするような形状を、アイテムが有することをいう。例えば、形状適合性を有するスティフナ108という場合、スティフナ108(例えばスティフナ表面シート116、117のうちの一方)の表面が、ベースパネル102に密に隣接するとともに、ベースパネル102の曲率にならうことをいう。スティフナ108の外形をたどって切り取ることにより、耐共振パネル100用のスティフナ108が形成される。
【0051】
複雑なスティフナ108の場合に特に有益な方法として、スティフナ108は、スティフナパネル原材150として、前もって製造することができる。このパネル原材150から、所望の耐共振性をもたらすための予め決められた特定の部分を切り出して(スティフナ切り出し部152)、スティフナ108として既存のベースパネル102に重ねる。この方法は、スティフナ108を必要とする特定の所定領域110が、
図4Aに示すように複雑形状あるいは高度に輪郭付けされている場合に、特に有用である。この手法では、スティフナ108をベースパネル102に高い接合強度で接合させることができ、これにより、得られる耐共振パネル100の有効剛性を増すことができる。
【0052】
他の方法で、スティフナ108をベースパネル102に接合させることもできる。
図4Bは、ベースパネル102上にスティフナ108を形成するための例示的なプロセスを示している。具体的には、
図4Bは、レイアッププロセスによってスティフナ108を形成する例示的な方法を示している。ここで、スティフナ108を構成する要素(本実施形態では、スティフナ表面シート116、117、固着手段146、及び、スティフナコア材114)は、平らであるものの、可撓性を有しており、これにより、これらの構成要素を、レイアッププロセス中に、ベースパネル102(ベースパネル表面シート106、107及びベースパネルコア材104を含む)の表面形状に沿う形状とすることができる。次に、スティフナ108とベースパネル102とを接合させて、耐共振パネル100を形成する。この際、配置が完了した状態で、オートクレーブを用いて、より高い接合圧力を達成してもよいし、アタッチメント上にサンドバッグを装着して接合を補助してもよい。
図4Bに示した方法は、他の方法よりも費用効果が高く、効率的である。
【0053】
図4Cは、スティフナ108をベースパネル102に接合するための別の例示的な方法を示している。具体的には、
図4Cに示した実施形態では、例えば、スティフナパネル原材150からスティフナ108を切り出すこと(
図4A参照)、予めカットされたスティフナの構成要素を用いてスティフナをビルドアップすること(例えば
図4B)、あるいはこれらの組み合わせによって、スティフナ108が作製される。スティフナ108は、スティフナコア材114及びスティフナ表面シート116、117を含んでいる。ベースパネルコア材104の一部をくり抜いて、スティフナ108を挿入することができる。次に、ベースパネル表面シート106、107を、ベースパネルコア材104及びスティフナ108に装着して、耐共振パネル100を形成する。このような実施形態では、スティフナ108をベースパネル102に組み込むことにより、スティフナ108の剛性がベースパネル102に付与されるとともに、面一あるいは一様な表面を有する耐共振パネル100を提供することができる。いくつかの実施形態において、ベースパネルコア材104の一部を切り取らずに、スティフナ108をベースパネルコア材104に接着し、次いで、スティフナ108及びベースパネルコア材104の両方にベースパネル表面シート106、107を装着することにより、スティフナ108をベースパネル102に組み込んでもよい。これらの方法の変形例を、本開示の目的から逸脱することなく用いることができ、また、利用可能な材料や資源に応じて他の方法を用いることにより、同様の成果を達成することもできる。
【0054】
スティフナ108の設計が指定されると、そのスティフナ108を、いくつかの手段でベースパネル102に取り付けることができる。その例を、
図5A及び
図5Bに示している。具体的には、
図5A及び5Bは、スティフナ108をベースパネル102に装着する例示的なプロセスを示している。
図5Aでは、スティフナ108は、事前に製造されており、機械式の留め具(例えば固着手段146)を用いてベースパネル102に装着される。
図5Aは、これにより得られる耐共振パネル100の断面も示している。
図5Bでは、スティフナ108は、事前に製造されており、接着フィルム(例えば固着手段146)を用いて装着されるとともに、ベースパネル102に対してオートクレーブでレイアップされている。
図5Bは、これにより得られる耐共振パネル100の断面も示しており、スティフナ108がベースパネル102に直接取り付けられた状態を示している。ホットプレス、真空バギング(vacuum bagging)、サンドバギング(sand-bagging)等、又はこれらの組み合わせなど、様々な接合技術を用いることができ、ねじ、接着剤、接着フィルム、リベット及びこれらの組み合わせなどの様々な要素を用いることもできる。例えば、一実施形態において、硬質の発泡接着剤を用いることにより、2つの界面の間(例えばスティフナ108(例えば1つ以上のスティフナ表面シート)とベースパネル102との間)で、空隙が確実に埋まるように接着させてもよい。コンポーネントを固着する際には、本開示の目的及び範囲から逸脱することなく、様々な方法を用いることができる。例えば、いくつかの実施形態において、
図4A~
図4C及び
図5A~
図5Bの製造及び接着方法のうちの1つ以上を組み合わせることが、望ましい場合もありうる。
【0055】
図6A~
図6Dは、例示的なベースパネル102、具体的にはサンドイッチ型ベースパネル102を示しており、これらは、本明細書で説明するように、耐共振パネル100に用いられうるものである。
図6A~
図6Dに示したベースパネル102の各々は、ベースパネル表面シート106、107及びベースパネルコア材104を含むことにより、サンドイッチ型のベースパネル102を構成している。
図6A~
図6Dに示した実施形態は、ベースパネルコア材104の両側に、同じベースパネル表面シート106、107を用いているが、耐共振パネル100内でベースパネル表面シート106、107を異ならせてもよい。(すなわち、ベースパネル表面シート106、107の種類(すなわち材料)が、ベースパネルコア材104の両側で異なっていてもよいし、ベースパネルコア材104の同じ側内で異なっていてもよい。)また、
図6A~
図6Dに示した実施形態は、ベースパネル102の長さ及び幅にわたって、同じベースパネルコア材104を用いているが、耐共振パネル100内でベースパネルコア材104を異ならせてもよい。
【0056】
図6Aの平らなサンドイッチ型ベースパネル102は、炭素繊維のベースパネル表面シート106、107がアラミドハニカムベースパネルコア材104を覆っているものである。
図6Bの輪郭付けされたサンドイッチ型ベースパネル102は、
図6Aのものと同じ材料であるとともに、より大きな厚みのベースパネルコア材104及び湾曲形状を有するもの(ベースパネル表面シート106、107及びベースパネルコア材104)である。
図6Cの平らなサンドイッチ型複合ベースパネル102は、ガラス繊維のベースパネル表面シート106、107がアラミドハニカムベースパネルコア材104を覆うとともに、面内輪郭切り欠き部有するものである。
図6Dのサンドイッチ型ベースパネル102は、薄いアルミニウムのベースパネル表面シート106、107がPET発泡体ベースパネルコア材104を包囲する構成である。
図6Dにおけるベースパネル102の厚み、具体的にはベースパネルコア材104の厚みは、ベースパネル102に沿って変化しており、これによりベースパネル102には起伏部160が形成されている。このような輪郭付けされたベースパネル102は、所望の形状及び構造を実現するための様々な曲率及び角度を含みうる。例えば、ベースパネル102の様々な部分でベースパネル102を輪郭付けることにより、耐共振パネル100を使用する壁の所望位置に特別に適合させたり、耐共振パネル100に求められる遮音性を実現したりすることができる。
【0057】
本開示のベースパネル102は、
図6A~
図6Dに示したものに限定されるものではなく、本開示の目的及び範囲から逸脱することなく、様々な要素を様々な構成で含むことができる。例えば、耐共振パネル100のベースパネル102は、これらの要素及び/又は他の要素と、耐共振性を有する軽量且つ高剛性のパネルを実現する設計との組み合わせとすることができる。
【0058】
パネルサイズが大きくなるにつれて、有効な音響境界が拡大するため、反共振による遮音性が、可聴周波数における低周波領域、例えば300Hz~1000Hzに対して、脆弱になる。このような挙動は、通常、異なる周波数においてパネルに重ね合わせされる特徴的な幾何学パターンを有する、望ましくない振動音響モードが形成されることによって、支配される。このようなモードは、音響測定及びモデリングで用いられる様々なツールによって求められるように、パネル上の特定の位置をスティフナ108を用いて改変することによって、緩和することできる。より高い性能を得るために、耐共振パネル100に追加のコンポーネントを設けてもよい。例えば、慣性部材126(例えば
図7参照)、強化部材128(例えば
図8A及び8B参照)、固定部材134(
図9A及び9B参照)、及び、これらの組み合わせを、効果的なパネル位置に加えることによって、耐共振パネル100の耐共振性をさらに向上させることができる。このような処置によって、耐共振パネル100の耐共振性を調整することもできる。いくつかの実施形態において、追加のコンポーネントによって、透過損失の帯域を広げたり、帯域をより高い周波数にシフトさせたり、あるいはこれらの組み合わせを行うことができる。追加の利点として、区分化された耐共振パネル100において所定の音響境界132に沿って慣性部材126及び/又は固定部材134を設けることは、耐共振性のQ値(quality factor)を高めるのに効果的であり、これにより、遮音性能をさらに向上させることができる。
【0059】
慣性部材126は、概して、耐共振パネル100の特定の部分に比較的少量の質量を付与するために耐共振パネル100に追加される、個別の高密度のコンポーネントである。耐共振パネル100は、少なくとも1つの慣性部材126を含みうる。慣性部材126は、耐共振パネル100の所定領域110に質量増加をもたらすように構成される。例えば、
図7に示すように、1つ以上の慣性部材126が、耐共振パネル100に追加されうる。このような例において、慣性部材126は、材料を含むとともに、慣性部材126が配置されたその特定の位置における耐共振パネル100の質量密度を増大させる形状を有する。すなわち、慣性部材126は、小さい径で、高い質量密度を付与する。(例えば、慣性部材126は、概して、スティフナ108の径よりも小さい径を有するが、スティフナ108の質量密度よりも高い質量密度を有する。)いくつかの実施形態において、慣性部材126は、例えば、スティフナ108の質量密度の約5倍、10倍、又はそれ以上の質量密度を有する一方で、概して、非常に小さいため、耐共振パネル100に剛性を付与しない。(例えば、慣性部材126は、スティフナ108の径より小さい径を有する一方で、スティフナ108が付与することができるような剛性を付与しない。)慣性部材126は、スティフナ108の質量密度の約10倍の質量密度を有しうる。このような質量密度によれば、小さい径にわたって大きな質量増加が付与されることにより、耐共振パネル100の総質量を大幅に増すことなく、当該位置における質量を効果的に増やすことができる。一方、スティフナ108は、パネルの質量を大幅に増すことなく、パネルの剛性を高めることができる。
【0060】
例えば、慣性部材126の密度は、約0.5kg/m
3~約30kg/m
3、例えば、約1kg/m
3~約20kg/m
3である。慣性部材126によって、特定の位置に質量が集中し、これによって、局所的なモードが対象とする周波数範囲から外れるか、あるいは、局所的な振動が抑制される(例えば
図15)。いくつかの実施形態において、慣性部材126の導入によって質量が増すことに伴い、得られる透過損失が減少する。従って、慣性部材126の追加においては、質量の増大と、所望の周波数範囲における所望の透過損失とで釣り合いを取る。質点(point-masses)としての慣性部材126の追加は、最少の質量犠牲で反共振性を維持するのに有効である。慣性部材126は、固体アルミニウム、ゴム、タングステン、セラミック、又はこれらの組み合わせを含みうる。これらの材料は、パネルの質量を大幅に増すことなく、比較的高い質量密度を付与するからである。
【0061】
本開示による慣性部材126は、比較的少量の質量を付与することにより耐共振パネル100の音響特性を調整するのに有用な、任意の適当な形状及び材料を有しうる。慣性部材126は、機械式の留め具、接着剤、本明細書に記載のその他の方法等、あるいはこれらの組み合わせなどの固着手段(例えば固着手段146)によって、固定することができる。慣性部材126は、任意の形状で実施することができるが、慣性部材126は、形状とは無関係に、質点として有効なものでなければならない。
【0062】
図7は、耐共振パネル100に対する例示的な慣性部材126の導入を示している。
図7は、慣性部材126とスティフナ108(1つのスティフナ表面シート116及びスティフナコア材114を図示)の両方が、サンドイッチ型ベースパネル102(ベースパネル表面シート106、107及びベースパネルコア材104を含む)上に設けられて、耐共振パネル100を形成している状態を示している。
【0063】
耐共振性を維持するための別の方法は、強化部材128を用いて、耐共振パネル100の一部を強化することである(
図9A及び
図9B参照)。耐共振パネル100は、強化部材128を含みうる。強化部材128は、ベースパネル102の所定領域110の外縁130に沿って配置され、ベースパネル102の所定領域110に音響境界132を規定する。強化部材128は、耐共振パネル100に沿う特定の位置に隔壁を付与することにより、耐共振パネル100を音響的に分割し、これにより音響境界132を形成する。強化部材128は、このような分割によって、耐共振パネル100の全体的な音響性能の制御を改善するのに役立つ。強化部材128は、任意の配向で載置することができ、また、任意の数の強化部材128を、耐共振性の向上に適した位置に用いることができる。強化部材128は、特に非平面状又は輪郭付けされた耐共振パネル100において、耐共振パネル100の音響境界132を規定するのに役立つ。
【0064】
図8は、様々な耐共振パネル100の強化に用いることができる例示的な強化部材128の断面形状を示している。中実構造型で且つサンドイッチ型の強化部材128が図示されている。強化部材128の断面形状は、当業界で一般的に使用されているいくつかの種類の断面形状(I字形、L字形、Z字形、T字形など)を実施することができ、剛性対質量比を最大化する新たな断面形状、又はより複雑な断面形状とすることもできる。強化部材128の長さ及びサイズは、特定の耐共振性を達成するように設計することができる。
【0065】
強化部材128は、任意の種類の材料によって形成することができ、複合材料であってもよく、サンドイッチ型構造を有していてもよく、また、高い曲げ剛性(例えばスティフナ108に匹敵するもの)を有する軽量のコンポーネントを実現するのに好適なこれらの組み合わせであってもよい。強化部材128の固着手段146は、スティフナ108の固着に用いられる前述のものであってもよいし、強化部材128の取り付け面積上での質量密度の犠牲を最少としつつ、振動運動を抑制するのに好適な他の手段であってもよい。強化部材128は、例えばベースパネル102の構造内の材料などの事前に認可された複合材料など、様々な材料を含みうる。強化部材128は、耐共振パネル100の区画化を高めて、より高効率の耐共振パネル100を実現する音響境界132を形成するのであれば、外縁型スティフナ118に類似の外縁型構造に構成してもよい。強化部材128は、概して、長状の(長さが幅より大きい)部材である。
【0066】
図9Aは、耐共振パネル100の反共振制御をさらに向上させるとともに透過損失を高めることができる、例示的な強化部材128を示している。より具体的には、
図9Aは、強化部材128を含むシステム200の側面図を示しており、当該強化部材は、航空機のキャビンパネル202として用いられた耐共振パネル100を水平方向に補強するために用いられている。
図9Bは、航空機のキャビンパネル202として用いられた耐共振パネル100の一部を強化するための垂直方向のサンドイッチ型強化部材128を含むシステム200を示している。様々な形状の強化部材128を用いて、耐共振パネルの耐共振性を向上させることができる。
【0067】
耐共振パネル100を胴体外板137(例えば
図14参照)又は窓224(例えば
図9A及び
図9B参照)などの構造体136に規則的に取り付けることによって、音響境界132をさらに規定し、耐共振性を向上させることができる(
図10A及び
図10B参照)。
【0068】
図10A及び
図10Bを参照すると、固定部材134を用いることにより、耐共振パネル100を、胴体外板137又は窓224などの構造体136の他のコンポーネントに固定することができる。耐共振パネル100は、固定部材134を含みうる。固定部材134は、耐共振パネル100を胴体外板137や窓224などの構造体136に固定するとともに、ベースパネル102の所定領域110の音響境界132を規定するように構成されている。固定部材134は、構造体136(例えば胴体外板137又は窓224などの質量の大きい構造体)の既存の部品を利用することによって、より安定した振動音響境界132を耐共振パネル100に付与しうる。固定部材134は、振動の遮断及び制御を助け、耐共振パネル100の耐共振性を向上させることができる。
【0069】
耐共振パネル100を航空機(例えば
図13の航空機145)に用いる実施形態では、胴体外板137上のいくつかの箇所を、固定部材134を耐共振パネル100に取り付ける固定ポイントとすることにより、耐共振性をさらに向上させることができる。胴体外板137の各所における好都合の固定箇所、例えば、窓224、ストリンガー、周囲フレーム部分、又はその付近の類似箇所を利用することができる。固定部材134を耐共振パネル100に取り付ける固定箇所の選択肢に、付近のコンポーネント、ならびに、胴体外板137に固定されたコンポーネントを含めることができ、これによれば、有効な固定状態を実現するのに必要な留め具や部品による質量増加を、低減することができる。
【0070】
図10Aは、耐共振パネル100及び隣接する胴体外板137を含む例示的なシステム200の側面図であり、
図10Bは、耐共振パネル100及び隣接する胴体外板137を含む例示的なシステム200の背面図である。例示的な固定部材134が図示されている。固定部材134は、耐共振パネル100の特定部分に取り付けられることにより、耐共振性に好適な音響境界132を形成する。固定部材134は、固定部材134が取り付けられた耐共振パネル100の部分を隣接する胴体外板137に固定することができる、ブラケット、アンカーボルト、他の留め具、又はこれらの組み合わせを含みうる。また、固定部材134に沿って減衰作用を付与することにより、取り付け位置又は部分において、胴体外板137から耐共振パネル100に誘発される振動を、低減することができる。
【0071】
航空機(例えば
図14の航空機145参照)において、航空機トリムパネル154が、ビークルのキャビンの側壁を形成する一方で、トリムパネル154の背後に位置する胴体外板137は、ビークル本体の外装としての役割を果たしている。これら2つのコンポーネント(トリムパネル154と胴体外板137)の間の間隙を、音響的に活用することができ、この間隙内において、広帯域にわたって全体的な音響減衰量を増大させることができる。このような構造を、複層構造(double-pane architecture)と称することができる。トリムパネル154を、ベースパネル102及び1つ以上のスティフナ108を有する1つ以上の耐共振パネル100と置き換えることができる。これにより、耐共振パネル100が、航空機145の密閉キャビン155の少なくとも一部を画定する内側壁パネルとして作用する。
【0072】
この複層音響効果は、
図11A及び
図11Bに示すように、通常2つの低周波共振モードを有しており、そこから周波数が上がるにつれて音響減衰量が急激に増大する。正しく組み合わせれば、耐共振パネル100の反共振性と複層効果とが協働で作用することにより、耐共振パネル100における全体的な音響透過損失が、密閉構造(例えば
図14の密閉キャビン155)内に及ぶ。
図11A及び
図11Bは、互いに同相で共振する2つの構造体(
図11A)、及び、位相ずれしている2つの構造体(
図11B)(例えば胴体外板137及び耐共振パネル100)によって引き起こされる例示的な複層効果を示している。
【0073】
次に、
図12を参照すると、いくつかの実施形態において、ベースパネルコア材104及び2つのベースパネル表面シート106、107を有するベースパネル102を含む耐共振パネル100を製造する方法1100が提供される。2つのベースパネル表面シート106、107は、ベースパネルコア材104の両側に隣接している。方法1100は、少なくとも1つのスティフナ108をベースパネル102に取り付けること(工程1110)を含む。上述のように、スティフナ108は、ベースパネル102に沿って、ベースパネル102の所定領域110内に配置される。ベースパネル102は、ベースパネルコア材104、及び、2つのベースパネル表面シート106、10を含んでいる。スティフナ108は、スティフナコア材114、及び、2つのスティフナ表面シート116、117を含んでいる。スティフナ108は、ベースパネル102に耐共振性をもたらすように構成されている。いくつかの実施形態において、スティフナ108をベースパネル102に取り付けることは、複合材レイアップ、ホットプレス、真空成形、真空バギング、真空補助樹脂トランスファー成形(vacuum assisted resin transfer molding:VARTM)、又はこれらの組み合わせ(工程1112)を含みうる。いくつかの実施形態において、スティフナ108をベースパネル102に取り付けることは、ねじ、接着剤、接着フィルム、リベット、又はこれらの組み合わせを含む固着手段146のうちの少なくとも1つを取り入れること(工程1114)により、スティフナ108をベースパネル102に取り付けることを含みうる。
【0074】
図12は、本明細書に記載のいくつかの実施形態による、構造体(例えば胴体外板137)に遮音性をもたらす例示的な方法1100を示している。具体的には、少なくとも1つのスティフナ108をベースパネル102に取り付けること(工程1110)を含む方法1100が示されている。(
図2A~
図2G、
図4A~
図4C、
図5A及び
図5B、ならびにこれら各図面に関する本明細書に記載の説明を参照。)方法1100は、ベースパネルコア材104及び2つのベースパネル表面シート106、107を含むベースパネル102を用意すること(工程1108)(
図6A~
図6D参照)も含みうる。上述のように、スティフナ108をベースパネル102に取り付けることは、複合材レイアップ、ホットプレス、真空成形、真空バギング、VARTM、及びこれらの組み合わせ(工程1112)を含みうる。スティフナ108をベースパネル102に取り付けることは、工程1114に示すように、ねじ、接着剤、接着フィルム、リベット、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの固着手段146を取り入れることにより、スティフナ108をベースパネル102に取り付けることを含みうる。本明細書に開示の様々な実施形態を、遮音性をもたらすための方法に組み込むことができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、方法1100は、少なくとも1つのスティフナ108をベースパネル102に取り付ける前に、スティフナ108の内部148をくり抜くことにより、スティフナ108にくり抜き部124を形成すること(工程1109)を含みうる。
【0076】
図13は、本明細書に記載のいくつかの実施形態による、耐共振パネル100を形成するための例示的な方法1200のフローチャートである。具体的には、方法1200は、少なくとも1つのスティフナ表面シート116及び/又は117をスティフナコア材114上に配置すること(工程1210)、及び、スティフナ108をベースパネル102の所定領域110に取り付けること(工程1220)によって、ベースパネル102に耐共振性をもたらすように構成されたスティフナ108を形成することを含む。本明細書に開示の様々な実施形態を、遮音性をもたらすための方法に組み込むことができる。
【0077】
図9A及び
図9B、
図10A及び
図10B、ならびに
図11A及び
図11Bを再び参照すると、いくつかの実施形態において、構造体136(例えば胴体外板137)と、当該構造体(例えば胴体外板137)に隣接する少なくとも1つの耐共振パネル100とを含むシステム200が提供されうる。構造体136(例えば胴体外板137)は、外側セクション138a及び内側セクション138bを画定しており、密閉キャビン155を形成しうる。構造体136(例えば胴体外板137)は、耐共振パネル100に隣接しており、耐共振パネル100と協働することにより、向上した遮音効果をもたらしうる(例えば、
図10A及び
図10Bについて説明した固定部材134及び/又は
図11A及び
図11Bについて説明した複層効果を参照)。いくつかの実施形態において、耐共振パネル100は、航空機(例えば航空機145)に用いられ、この場合、当該航空機が、耐共振パネル100を有するシステム200である。
【0078】
図14は、航空機145における耐共振パネル100が用いられうる例示的な部分を示しており、耐共振パネル100が航空機145の胴体外板137に組み付けられて、密閉キャビン155を形成する一例を提示している。耐共振パネル100は、トリムパネル154が設けられている位置で、トリムパネルに追加して、あるいはトリムパネルに代えて、航空機145に加えることができる。例えば、スティフナ108がベースパネル102に組み付けられ、これにより、耐共振パネル100の広帯域の遮音性が実現される。
図14は、スティフナ108の一使用例を提示しているが、スティフナ108は、密閉キャビン155全体における様々な位置に加えることができる。
図14に示すように、スティフナ108をベースパネル102に組み付けることにより、ベースパネル102単独の場合と比べて、向上した防音効果がもたらされる。音波109は、耐共振パネル100で反射される。耐共振パネル100は、このようにして、特に低周波において、より高いノイズ遮断効果を密閉キャビン155にもたらす。
【0079】
いくつかの実施形態において、密閉キャビン155に遮音性がもたらされうる。密閉キャビン155に対する遮音性は、少なくとも1つの耐共振パネル100を密閉キャビン102に隣接して配置することによってもたらされうる。当該少なくとも1つの耐共振パネル100は、ベースパネル102と、ベースパネル102に取り付けられた少なくとも1つのスティフナ108とを含み、少なくとも1つのスティフナ108は、ベースパネル102に耐共振性をもたらすことにより、密閉キャビン155内へのノイズ伝播を低減する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの耐共振パネル100を密閉キャビン155に隣接して配置することは、耐共振パネル100を、前述したように密閉キャビン155に隣接して配置することを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの耐共振パネル100は、密閉キャビン155に連結されうる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの耐共振パネル100は、固定部材134を用いて密閉キャビン155に連結されうる。
【0080】
効果的な耐共振性の一例が、
図15に描かれている。具体的には、
図15は、有限要素解析法(finite element analysis:FEA)を用いた例示的な予測、及び、実験測定結果を示している。
図15に示した成果は、単に代表的なものであり、遮断されうる音に関連している。
図15に示した成果は、本開示を限定することを意図するものではない。
図15は、耐共振パネル100の挿入損失(実線)を、対応するFEA予測(ダイアモンド形で示す)とともに示している。破線の曲線は、同じ質量密度の等方性プレートを用いた、質量則による、対応する予測である。
図15に示すように、耐共振パネル100は、特に比較的低周波において、ノイズ遮断性が向上し、同等の質量密度のものよりも、はるかに高いノイズ遮断性をもたらす。
図15に示すように、本実施形態において、図示のノイズ減少を達成するのに必要な質量は、耐共振パネル100に用いられるものの約16倍である。他の程度の改善も、可能である。
【0081】
図16は、例示的な実施形態における、より広帯域の耐共振性を実現するために、例示的な慣性部材126を耐共振パネル100に加えた場合の成果を示している。
図16に示すように、いくつかの実施形態において、慣性部材126を加えること(正方形で示す)によって、慣性部材126を用いない実施形態(三角形で示す)と比べて、より広帯域での耐共振性がもたらされる。いくつかの実施形態において、慣性部材126を追加することにより、慣性部材126を用いない実施形態にみられる耐共振性の低下を、抑制することができる。慣性部材126によって、概して、耐共振パネル100の音響性能を調整することができ、より広帯域の耐共振性を実現することができる。慣性部材126によって、新たな音響境界132の点、線、又は部分を画定することができ、より良好に区画化された耐共振パネル100を作製することができる。慣性部材126は、共振周波数を、目的の周波数範囲から遠ざけることに役立ちうる。
【0082】
図17は、反共振と複層効果とがどのように組み合わさって、非常に大きい音響周波数バンドギャップを減衰するかを示している。具体的には、
図17は、未加工のトリムパネル(破線曲線)(ベースパネル102及び固定部材134を含む)と、耐共振トリムパネル(三角形のマーク)(ベースパネル102、固定部材134、及びスティフナ108を含む)との、複層効果による予測される透過損失の比較の一例を示している。例えば、本実施形態に見られるように、低周波での透過損失性が向上するとともに、透過損失の低下をより高い周波数にシフトさせることにより、低周波領域における遮音性を改善することができる。
【0083】
また、本開示は、以下の付記による実施形態を含む。
【0084】
付記A1. ベースパネルコア材と2つのベースパネル表面シートとを含むベースパネルであって、前記2つのベースパネル表面シートが、前記ベースパネルコア材の両側に其々隣接しているベースパネルと、前記ベースパネルの全領域より小さい前記ベースパネルの所定領域内に、前記ベースパネルに沿って配置された少なくとも1つのスティフナと、を含み、前記少なくとも1つのスティフナは、スティフナコア材と、2つのスティフナ表面シートとを含み、前記スティフナ表面シートは、前記スティフナコア材の両側に其々隣接している、耐共振パネル。
【0085】
付記A2. 前記少なくとも1つのスティフナは、低い質量密度で、前記ベースパネルの前記所定領域に剛性を加えることにより、前記ベースパネルに耐共振性をもたらすように構成されている、付記A1に記載の耐共振パネル。
【0086】
付記A3. 前記少なくとも1つのスティフナは、前記2つのベースパネル表面シートのうちの1つに配置されている、付記A1又はA2に記載の耐共振パネル。
【0087】
付記A4. 前記少なくとも1つのスティフナは、前記2つのベースパネル表面シートの間に、前記ベースパネルコア材に隣接して配置されている、付記A1又はA2に記載の耐共振パネル。
【0088】
付記A5. 前記少なくとも1つのスティフナは、前記ベースパネルの総表面積の25%未満に設けられており、前記少なくとも1つのスティフナの質量は、前記耐共振パネルの総質量の約20%未満である、付記A1~A4のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【0089】
付記A6. 前記少なくとも1つのスティフナは、前記ベースパネルに沿って前記ベースパネルの各所定領域内に其々配置された2つ以上のスティフナを含む、付記A1~A5のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【0090】
付記A7. 前記スティフナコア材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)発泡体、アラミドハニカム構造、又はこれらの組み合わせを含む、付記A1~A6のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【0091】
付記A8. 前記スティフナ表面シートは、炭素繊維、ガラス繊維、繊維複合体、又はこれらの組み合わせを含む、付記A1~A7のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【0092】
付記A9. 前記耐共振パネルは、前記耐共振パネルにおける約300Hz~約1000Hzの周波数のノイズ伝播を低減するように構成されている、付記A1~A8のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【0093】
付記A10. 前記少なくとも1つのスティフナの1つ以上の側縁に沿って配置された外縁型のスティフナをさらに含む、付記A1~A9のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【0094】
付記A11. 前記少なくとも1つのスティフナは、前記少なくとも1つのスティフナ内にくり抜き部を画定する内壁を含む、付記A1~A10のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【0095】
付記A12. 少なくとも1つの慣性部材をさらに含み、前記少なくとも1つの慣性部材は、前記耐共振パネルの前記所定領域に質量増加をもたらすように構成されている、付記A1~A11のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【0096】
付記A13. 前記少なくとも1つの慣性部材は、前記少なくとも1つのスティフナの質量密度の約10倍の質量密度を有する、付記A12に記載の耐共振パネル。
【0097】
付記A14. 前記少なくとも1つの慣性部材は、固体アルミニウム、ゴム、タングステン、セラミック、又はこれらの組み合わせを含む、付記A12又はA13に記載の耐共振パネル。
【0098】
付記A15. 強化部材をさらに含み、前記強化部材は、前記ベースパネルの前記所定領域の外縁に沿って配置されるとともに、前記ベースパネルの前記所定領域に音響境界を規定する、付記A1~A14のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【0099】
付記A16. 固定部材をさらに含み、前記固定部材は、前記耐共振パネルを構造体に固定するとともに前記ベースパネルの前記所定領域に音響境界を規定するように構成されている、付記A1~A15のいずれか1つに記載の耐共振パネル。
【0100】
付記A17. 構造体と、前記構造体に隣接して配置された、付記A1~A16のいずれか1つに記載の前記耐共振パネルと、を含むシステム。
【0101】
付記A18. 前記構造体は、航空機の胴体の外板を含む、付記A17に記載のシステム。
【0102】
付記A19. 付記A1~A16のいずれか1つに記載の前記耐共振パネルを含む航空機。
【0103】
付記A20. 前記耐共振パネルは、固定部材を含み、前記航空機の胴体外板に沿った位置が、前記固定部材の固定ポイントである、付記A19に記載の航空機。
【0104】
付記A21. 前記位置は、窓、ストリンガー、及び/又は、周囲フレーム部分にある、付記A20に記載の航空機。
【0105】
付記A22. 前記固定部材は、前記耐共振パネルを前記胴体外板に連結する、付記A20又はA21に記載の航空機。
【0106】
付記A23. 前記耐共振パネルは、密閉キャビンの少なくとも一部を画定する前記航空機の内側壁である、付記A19~A22のいずれか1つに記載の航空機。
【0107】
付記B1.構造体と、前記構造体に隣接して配置されることにより前記構造体にノイズ制御をもたらす少なくとも1つの耐共振パネルと、を含むシステムであって、前記少なくとも1つの耐共振パネルは、ベースパネルコア材と2つのベースパネル表面シートとを含むベースパネルであって、前記2つのベースパネル表面シートが前記ベースパネルコア材の両側に其々隣接しているベースパネルと、前記ベースパネルの全領域より小さい前記ベースパネルの所定領域内に、前記ベースパネルに沿って配置された少なくとも1つのスティフナと、を含み、前記少なくとも1つのスティフナは、スティフナコア材と、2つのスティフナ表面シートとを含み、前記スティフナ表面シートは、前記スティフナコア材の両側に其々隣接している、システム。
【0108】
付記B2. 前記少なくとも1つの耐共振パネルは、前記少なくとも1つの耐共振パネルを前記構造体に固定する固定部材をさらに含む、付記B1に記載のシステム。
【0109】
付記B3. 前記固定部材は、前記ベースパネルの前記所定領域に音響境界を規定する、付記B2に記載のシステム。
【0110】
付記C1. ベースパネルコア材と2つのベースパネル表面シートとを含むベースパネルであって、前記2つのベースパネル表面シートが前記ベースパネルコア材の両側に其々隣接しているベースパネルを有する耐共振パネルを製造する方法であって、少なくとも1つのスティフナを、前記ベースパネルに沿って、前記ベースパネルの所定領域内に取り付けることを含み、前記少なくとも1つのスティフナは、スティフナコア材と、2つのスティフナ表面シートとを含み、前記2つのスティフナ表面シートは、前記スティフナコア材の両側に其々隣接しており、前記少なくとも1つのスティフナは、前記ベースパネルに耐共振性をもたらすように構成されている、方法。
【0111】
付記C2. 前記少なくとも1つのスティフナを前記ベースパネルに取り付けることは、複合材レイアップ、ホットプレス、真空成形、真空バギング、真空補助樹脂トランスファー成形(VARTM)、又はこれらの組み合わせを含む、付記C1に記載の方法。
【0112】
付記C3. 前記少なくとも1つのスティフナを前記ベースパネルに取り付けることは、ねじ、接着剤、接着フィルム、リベット、又はこれらの組み合わせを含む固着手段のうちの少なくとも1つを取り入れることによって、前記少なくとも1つのスティフナを前記ベースパネルに取り付けることを含む、付記C1又はC2に記載の方法。
【0113】
付記C4. 前記少なくとも1つのスティフナを前記ベースパネルに取り付ける前に、前記少なくとも1つのスティフナの内部をくり抜くことにより、前記少なくとも1つのスティフナにくり抜き部を形成することをさらに含む、付記C1~C3のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
付記D1. 密閉キャビンに遮音性をもたらす方法であって、少なくとも1つの耐共振パネルを、前記密閉キャビンに隣接して配置することを含み、前記少なくとも1つの耐共振パネルは、ベースパネルと、前記ベースパネルに取り付けられた少なくとも1つのスティフナとを含み、前記少なくとも1つのスティフナは、前記ベースパネルに耐共振性をもたらすことにより、前記密閉キャビン内へのノイズ伝播を低減する、方法。
【0115】
付記D2. 少なくとも1つの耐共振パネルを前記構造体に隣接して配置することは、付記A1~A16のいずれか1つに記載の前記耐共振パネルを前記密閉キャビンに隣接して配置することを含む、付記D1に記載の方法。
【0116】
付記D3. 前記少なくとも1つの耐共振パネルを前記密閉キャビンに連結することをさらに含む、付記D1又はD2に記載の方法。
【0117】
付記D4. 前記少なくとも1つの耐共振パネルを前記密閉キャビンに連結することは、固定部材を用いて、前記少なくとも1つの耐共振パネルを前記密閉キャビンに連結することを含む、付記D3に記載の方法。
【0118】
「例示的な」という用語を本明細書で用いている場合は、「例、事例、又は実例としての役割を果たす」ことを意味する。本明細書において「例示的」として説明した任意の実施態様は、必ずしも他の実施形態よりも好ましい又は有利なものではない。
【0119】
本明細書及び添付の特許請求の範囲での使用において、不定あるいは特定の対象を示す単数形の文言は、文脈によって明示的に排除されない限り、複数形の文言も含むことを意図している。例えば、「スティフナ」という場合、文脈によって明示的に排除されない限り、複数のスティフナを含む。
【0120】
本明細書及び添付の特許請求の範囲での使用において、「~に/~の上に」という場合、あるコンポーネントが別のコンポーネントに直接配置されている実施形態と、コンポーネント間に1つ以上の介在する層又は要素が配置されている実施形態との両方を含む。
【0121】
本開示に関連する当業者が上述の記載及び関連図面の教示による利点を念頭におけば、本明細書に記載された開示について多くの変形及び他の態様が予測可能であろう。図面は、本明細書に記載の装置及びシステムのいくつかのコンポーネントのみを示しており、他の様々なコンポーネントを供給管理システムと組み合わせて使用することができる。従って、本開示は、開示される特定の実施形態に限定されるべきではなく、その変形及び他の実施形態も、添付の請求の範囲に含まれると理解されたい。さらに、上述の方法における工程は、必ずしも添付図面に示した順序で行われなくともよく、場合によっては、図示の工程の1つ以上を実質的に同時に行ってもよいし、また、追加の工程を含んでもよい。また、本明細書では特定の用語を用いているが、これらの用語は、一般的且つ説明的な意味で用いており、限定を目的としたものではない。