(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】作業計画装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20230720BHJP
G06Q 10/0633 20230101ALI20230720BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20230720BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q10/0633
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2019002134
(22)【出願日】2019-01-09
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 麿介
(72)【発明者】
【氏名】芝尾 裕規
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-235236(JP,A)
【文献】特開2007-233762(JP,A)
【文献】特開平8-174389(JP,A)
【文献】特開平9-225784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 10/0633
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも作業対象の取り付けおよび取り外しを含む複数の作業工程と、前記
複数の作業工程
に対する予め設定された相対的な順番の条件である順番条件
と、前記作業対象を対象に取り付けるか、取り外すかの着脱情報の入力を
、前記作業対象ごとに受け付ける工程受付部と、
前記作業工程ごとに、
当該作業工程を実行する前提となる、前記作業対象の
対象への取付の状況を示す取付状況
を条件
とする取付条件の入力を
、前記作業対象ごとに受け付ける条件受付部と、
前記取付条件を考慮せずに
各作業対象の前記順番条件を満たす範囲で
複数の前記作業対象の前記作業工程の順番を入れ替えた複数の作業計画を作成し、前記複数の作業計画のうち前記取付状況が前記取付条件を満たさない前記作業工程がある作業計画を破棄し、前記順番条件を満たし、かつ、前記取付状況が前記取付条件を満たすように、前記作業工程の順番が決定された作業計画を決定する順番決定部と、
を備える作業計画装置。
【請求項2】
前記作業工程には、前記作業工程を行う際に必要となる準備を示す必要準備の種別が設定可能であり、
前記順番決定部は、同じ種別の前記必要準備が設定された複数の前記作業工程の間に設けられる前記作業工程の数を、前記必要準備が設定されていないときよりも少なくする請求項1に記載の作業計画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業計画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造工場などにおける作業計画の立案に関し、自動化のための技術が開発されている。例えば、特許文献1には、複数の計画案を自動的に立案し、納期遅れの発生率や装置稼働率などの評価項目から評価値を導出するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、どのロットを優先するか、どのラインに投入するかといった大雑把な計画の立案しかできない。例えば、複数の部品のうち、どの部品の取り付けを先に行うかといったように、細分化された作業工程を組み合わせて作業計画を立案、修正することができなかった。そのため、管理者は、手作業での作業計画の立案、修正を余儀なくされていた。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、作業計画の負担を軽減することが可能な作業計画装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の作業計画装置は、少なくとも作業対象の取り付けおよび取り外しを含む複数の作業工程と、複数の作業工程に対する予め設定された相対的な順番の条件である順番条件と、作業対象を対象に取り付けるか、取り外すかの着脱情報の入力を、作業対象ごとに受け付ける工程受付部と、作業工程ごとに、当該作業工程を実行する前提となる、作業対象の対象への取付の状況を示す取付状況を条件とする取付条件の入力を、作業対象ごとに受け付ける条件受付部と、取付条件を考慮せずに各作業対象の順番条件を満たす範囲で複数の作業対象の作業工程の順番を入れ替えた複数の作業計画を作成し、複数の作業計画のうち取付状況が取付条件を満たさない作業工程がある作業計画を破棄し、順番条件を満たし、かつ、取付状況が取付条件を満たすように、作業工程の順番が決定された作業計画を決定する順番決定部と、を備える。
【0007】
作業工程には、作業工程を行う際に必要となる準備を示す必要準備の種別が設定可能であり、順番決定部は、同じ種別の必要準備が設定された複数の作業工程の間に設けられる作業工程の数を、必要準備が設定されていないときよりも少なくしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業計画の負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】作業計画装置の概略を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
図1は、作業計画装置10の概略を示す機能ブロック図である。作業計画装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーションなどのコンピュータで構成される。
図1に示すように、作業計画装置10は、記憶部11と、操作部12と、表示部13と、制御部20とを含んで構成される。
【0012】
記憶部11は、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成される。操作部12は、例えば、キーボードや表示部13に重畳されるタッチパネルで構成される。操作部12は、管理者の操作入力を受け付ける。表示部13は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成される。
【0013】
制御部20は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路により、作業計画装置10全体を管理および制御する。また、制御部20は、工程受付部21、条件受付部22、順番決定部23としても機能する。
【0014】
工程受付部21は、操作部12を介した操作入力(以下、単に操作入力という)により、複数の作業工程に関する情報を受け付ける。複数の作業工程には、少なくとも作業対象の取り付けおよび取り外しが含まれる。
【0015】
図2は、作業対象の一例を示す図である。
図2では、例えば、航空機の部品A、B、Cを作業対象とする。作業工程として、例えば、部品Aに対する部品B、Cの取り付けおよび取り外しが含まれる。
図2からもわかるように、部品A、B囲まれた空間内に部品Cが配される。そのため、部品Aに部品Bを取り付けた状態では、部品Cを部品Aに取り付けたり、部品Aと部品Cを対象とする作業を実行したりすることができない。
【0016】
また、工程受付部21は、操作入力により順番条件の入力を受け付ける。順番条件について
図3を用いて説明する。
【0017】
図3は、順番条件の一例を示す図である。順番条件は、複数の作業工程を対象とした相対的な順番(相対順)の条件である。ここでは、
図3に示すように、作業工程に相対順が設定される。
【0018】
図3に示す作業工程は、部品Aと部品Bを対象とする作業、および、部品Aと部品Cを対象とする作業に共通である。すなわち、部品B、Cそれぞれについて、
図3に示す7つの作業工程があり、合わせて14個の作業工程となる。その他に、部品Aを不図示の冶具にセット(固定、取り付け)する作業工程がある。本実施形態で例示する作業工程は、全部で15個となる。
【0019】
図4は、作業計画の一例を示す図である。
図4に示すように、作業工程には、それぞれ、工程番号、工数、作業部位、取付状況、取付条件、必要準備が関連付けられる。ただし、必要準備については何も設定されていないものとする。必要準備については後に詳述する。
【0020】
工程番号は、工程の実行順に付される正数である。作業工程は、作業工程の概略内容である。工数は、例えば、延べ工数(時間)である。作業部位は、対象とする部品である。
【0021】
取付状況は、部品A、B、Cの対象への取り付けの状況を示す情報である。例えば、部品Aに「+」と付されている場合、部品Aの対象(ここでは冶具)への取り付けが行われることを示す。部品Bに「-」と付されている場合、部品Bの対象(ここでは部品A)からの取り外しが行われることを示す。部品Cに「〇」と付されている場合、部品Cが対象(ここでは部品A)に既に取り付けられていることを示す。
【0022】
取付条件は、作業工程を実行する前提となる取付状況である。例えば、取付条件として、部品Aに「〇」が付されている場合、部品Aの対象への取り付けが事前になされていることが条件となる。取付条件として、部品Bに「×」が付されている場合、部品Bが対象に取り付けられていない(まだ取り付けていないか、取り付けた後に事前に取り外されている)ことが条件となる。
【0023】
上記の取付状況のうち、「+」「-」は、作業工程に設定される情報である。すなわち、作業工程によっては、部品A、B、Cのいずれかを対象に取り付けるか、取り外すかの情報(以下、着脱情報という)が設定される。工程受付部21は、操作入力により、着脱情報の入力を受け付ける。
【0024】
一方、上記の取付状況のうち、「〇」は、直前までの作業工程の着脱情報から特定されるものである。後述の順番決定部23によって特定される。
【0025】
条件受付部22は、操作入力により、作業工程ごとに上記の取付条件の入力を受け付ける。
【0026】
例えば、
図4に示す作業計画が立案されていなかったとする。このとき、工程受付部21、条件受付部22により、上記の各情報が入力されたとする。順番決定部23は、
図2に示す順番条件を満たす範囲で、作業工程の順番を任意に入れ替える。こうして、順番決定部23は、仮の作業計画を複数立案する。
【0027】
順番決定部23は、1つの仮の作業計画のそれぞれの作業工程について、直前までの作業工程の着脱情報「+」「-」から、取付状況の「〇」、すなわち、部品A、B、Cが対象に取り付けられているか否かを特定する。
【0028】
そして、順番決定部23は、それぞれの作業工程について、取付状況が取付条件を満たすか否かを判定する。順番決定部23は、取付状況が取付条件を満たさない作業工程があると、当該仮の作業計画を破棄する。順番決定部23は、同様の処理を残りの仮の作業計画についても行う。順番決定部23は、仮の作業計画のうち、順番条件を満たし、かつ、取付状況が取付条件を満たすものを作業計画として決定する。
【0029】
例えば、順番条件により、工程番号2~8は、間に他の作業工程が挟まれてもよいが、互いの相対順は変更できない。同様に、工程番号9~15は、間に他の作業工程が挟まれてもよいが、互いの相対順は変更できない。また、取付条件として、部品A「〇」となっている工程番号2~4、7~11、13~15があることから、Aを冶具へセットする作業工程は、必ず工程番号1となる。
【0030】
順番条件を満たし、かつ、取付状況が取付条件を満たす作業計画が複数ある場合、順番決定部23は、任意の1の作業計画を選択してもよいし、表示部13に表示させて操作入力により1の作業計画を選択してもよい。こうして、順番決定部23は、順番条件を満たし、かつ、取付状況が取付条件を満たすように、作業工程の順番を決定する。
【0031】
ここで挙げた順番決定部23の処理は一例である。順番条件を満たし、かつ、取付状況が取付条件を満たすように、作業工程の順番を決定できれば、順番決定部23は、他のロジックに従った処理を行ってもよい。
【0032】
また、作業計画に対して遅延が生じるなどの外乱要因があった場合、作業計画の修正が必要となる。この場合も、順番決定部23は、未実施の作業工程について、上記の処理を行うことで、適切な作業工程の順番を決定することが可能となる。
【0033】
上記のように、作業計画装置10では、それぞれの作業工程について、順番条件、取付条件が設定され、これらを満たすように作業計画が立案される。そのため、管理者による手作業での作業計画の立案、修正が不要となり、作業計画の負担を軽減することが可能となる。
【0034】
例えば、航空機の製造では、ライン作業と異なり、同一の部品A、B、Cに対して行う作業工程の数が多く、その順番の組み合わせのパターンが多数となる。そのため、作業計画の負担が大きい。作業計画装置10により、作業計画の負担を大幅に軽減することが可能となる。ただし、作業計画装置10が対象とする作業計画の対象が航空機の製造に限らないのは言うまでもない。
【0035】
図5は、作業計画の一例を示す図である。
図5に示す作業計画では、工程番号6、13の作業工程には、必要準備として種別「シール剤」が設定されている。
【0036】
必要準備は、作業工程を実行する際に必要となる準備を示す情報である。工程番号6、13の作業工程は、共に、シール剤を作業場に置いておくという準備が必要となる。必要準備としては、1つに限らず、複数の種別が設定されてもよい。このように、作業工程には、必要準備の種別が設定可能である。
【0037】
条件受付部22は、操作入力により、必要準備の種別の入力も受け付ける。順番決定部23は、同じ種別の必要準備が設定された複数の作業工程の間に設けられる作業工程の数を、必要準備が設定されていないときよりも少なくする。その結果、
図5に示す作業計画となったものとする。
【0038】
図5では、工程番号9~12が、工程番号1と工程番号2の間に移動されている。工程番号1、9~12、2~8、13~15の順に作業が行われる。ここでは、理解を容易とするため、工程番号を再付番せずに
図5に示す。ただし、工程番号は、
図5中、上から順に再付番される。
図5では、必要準備が設定されていない
図4に比べて、A-C合せ面シール、および、A-B合せ面シールの作業工程の間の作業工程の数が少ない。
【0039】
作業者は、A-C合せ面シールの作業工程の後、シール剤を作業場に置いたままにしておく。その後、工程番号7、8の作業工程の後、A-B合せ面シールの作業工程に際し、シール剤の準備作業が不要となる。こうして、シール材の準備、片付けの作業が1回ずつ、削減される。このように、必要準備の情報を用いることで、作業工数の削減が可能となる。
【0040】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0041】
また、コンピュータを作業計画装置10として機能させるプログラムや、当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、作業計画装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 作業計画装置
21 工程受付部
22 条件受付部
23 順番決定部