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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】バッテリ収納構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/242 20210101AFI20230720BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20230720BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20230720BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20230720BHJP
【FI】
H01M50/242
H01M50/249
H01M50/209
B60K1/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019085616
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020181767
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】飯田 実
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-141354(JP,A)
【文献】特開2018-133293(JP,A)
【文献】特開2007-015600(JP,A)
【文献】特開2017-069034(JP,A)
【文献】特開2012-086584(JP,A)
【文献】特開2013-026111(JP,A)
【文献】特開2016-154113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリスタックと、
前記バッテリスタックが収納されるバッテリケースと、
前記バッテリスタックを支える骨格部材と、
前記バッテリケースの側面の変形が伴う衝突が発生した際に、前記衝突が前記バッテリスタックに与える影響を軽減する衝突軽減機構と、を具備し、
前記バッテリスタックの内側端部と前記バッテリケースの内側面が離間する距離は、前記バッテリスタックの外側端部と前記骨格部材の外側端部とが離間する距離と、同等以上であることを特徴とするバッテリ収納構造。
【請求項2】
バッテリスタックと、
前記バッテリスタックが収納されるバッテリケースと、
前記バッテリスタックを支える骨格部材と、
前記バッテリケースの側面の変形が伴う衝突が発生した際に、前記衝突が前記バッテリスタックに与える影響を軽減する衝突軽減機構と、を具備し、
前記バッテリスタックの外側端部は、前記骨格部材の外側端部よりも外側に配置されることを特徴とするバッテリ収納構造。
【請求項3】
前記衝突軽減機構は、前記衝突が発生した際に、前記バッテリスタックを前記骨格部材に対して移動可能に設置する構造であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバッテリ収納構造。
【請求項4】
前記バッテリケースは、車両内側を向く内側面と、車両外側を向く外側面と、を有し、
前記衝突軽減機構は、車両外側に向かって膨出された前記外側面であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のバッテリ収納構造。
【請求項5】
前記バッテリケースは、車両内側を向く内側面と、車両外側を向く外側面と、を有し、
前記衝突軽減機構は、上方に向かって外側に傾斜する前記外側面であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のバッテリ収納構造。
【請求項6】
前記バッテリケースを支持するフレームを更に具備し、
前記外側面の少なくとも一部は、前記フレームの下方に配置されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のバッテリ収納構造。
【請求項7】
前記バッテリケースの前記外側面は、車両後方側に配置されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のバッテリ収納構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ収納構造に関し、特に、衝突事故発生時にバッテリスタックを衝撃から保護することができるバッテリ収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車には、車両に駆動力を与えるモータを回転させるために、モータに電力を供給する大容量の車両用電池が搭載されている。この車両用電池は、十分な連続走行距離を確保する為に、重量が大きく更に占有容積が大きい。従って、この車両用電池は、例えばシートの下方やリアフロアの下方等に配置されている。
【0003】
車両に大型のバッテリを収納させる構成として様々なものが提案されている。例えば、特許文献1では、車両に配置される電池パックが、ロアケースおよびアッパーケースから構成されている。また、ロアケースはボデーEA材を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-121916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された構成では、衝突時に衝撃を吸収するためのボデーEA材を電池パックに備えていたため、電池パックが大きくなり車載性が悪化し、重量増となったり、電池を多く搭載できないという課題があった。
【0006】
また、車両のフロアの下方部分にバッテリパックを配置した場合、上記した構造では、バッテリパックを充分に保護することが出来ないこともある。具体的には、車体フレームが形成されていない車体中心部位に、ポールなどの被衝突物が変形侵入した場合、バッテリパックの近傍に単にEA材を配置するのみの対策では、バッテリパックを充分に保護することは困難であった。
【0007】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、衝突事故が発生した際にその衝撃からバッテリスタックを保護することができるバッテリ収納構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のバッテリ収納構造は、バッテリスタックと、前記バッテリスタックが収納されるバッテリケースと、前記バッテリスタックを支える骨格部材と、前記バッテリケースの側面の変形が伴う衝突が発生した際に、前記衝突が前記バッテリスタックに与える影響を軽減する衝突軽減機構と、を具備し、前記バッテリスタックの内側端部と前記バッテリケースの内側面が離間する距離は、前記バッテリスタックの外側端部と前記骨格部材の外側端部とが離間する距離と、同等以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明のバッテリ収納構造は、バッテリスタックと、前記バッテリスタックが収納されるバッテリケースと、前記バッテリスタックを支える骨格部材と、前記バッテリケースの側面の変形が伴う衝突が発生した際に、前記衝突が前記バッテリスタックに与える影響を軽減する衝突軽減機構と、を具備し、前記バッテリスタックの外側端部は、前記骨格部材の外側端部よりも外側に配置されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のバッテリ収納構造では、前記衝突軽減機構は、衝突事故が発生した際に、前記バッテリスタックを前記骨格部材に対して移動可能に設置する構造であることであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のバッテリ収納構造では、前記バッテリケースは、車両内側を向く内側面と、車両外側を向く外側面と、を有し、前記衝突軽減機構は、車両外側に向かって膨出された前記外側面であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のバッテリ収納構造では、前記バッテリケースは、車両内側を向く内側面と、車両外側を向く外側面と、を有し、前記衝突軽減機構は、上方に向かって外側に傾斜する前記外側面であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のバッテリ収納構造では、前記バッテリケースを支持するフレームを更に具備し、前記外側面の少なくとも一部は、前記フレームの下方に配置されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のバッテリ収納構造では、前記バッテリケースの前記外側面は、車両後方側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバッテリ収納構造は、バッテリスタックと、前記バッテリスタックが収納されるバッテリケースと、前記バッテリスタックを支える骨格部材と、前記バッテリケースの側面の変形が伴う衝突が発生した際に、前記衝突が前記バッテリスタックに与える影響を軽減する衝突軽減機構と、を具備し、前記バッテリスタックの内側端部と前記バッテリケースの内側面が離間する距離は、前記バッテリスタックの外側端部と前記骨格部材の外側端部とが離間する距離と、同等以上であることを特徴とする。これにより、本発明のバッテリ収納構造によれば、バッテリケースの内部に於いて、バッテリスタックの内側に、衝突時にバッテリスタックが待避するスペースを十分に確保できる。
【0017】
本発明のバッテリ収納構造は、バッテリスタックと、前記バッテリスタックが収納されるバッテリケースと、前記バッテリスタックを支える骨格部材と、前記バッテリケースの側面の変形が伴う衝突が発生した際に、前記衝突が前記バッテリスタックに与える影響を軽減する衝突軽減機構と、を具備し、前記バッテリスタックの外側端部は、前記骨格部材の外側端部よりも外側に配置されることを特徴とする。これにより、本発明のバッテリ収納構造によれば、比較的大きなサイズのバッテリスタックをバッテリケースに収納することができる。
【0018】
また、本発明のバッテリ収納構造では、前記衝突軽減機構は、衝突事故が発生した際に、前記バッテリスタックを前記骨格部材に対して移動可能に設置する構造であることであることを特徴とする。これにより、本発明のバッテリ収納構造によれば、衝突事故により衝撃がバッテリスタックに作用した際に、その衝撃によりバッテリスタックが車両内側に向かって移動するので、その衝撃がダイレクトにバッテリスタックに作用することを抑止することができる。
【0019】
また、本発明のバッテリ収納構造では、前記バッテリケースは、車両内側を向く内側面と、車両外側を向く外側面と、を有し、前記衝突軽減機構は、車両外側に向かって膨出された前記外側面であることを特徴とする。これにより、本発明のバッテリ収納構造によれば、外側面が膨出構造であることで、衝突事故発生時に、外側面がバッテリスタックに過度に接触することを抑止できる。
【0020】
また、本発明のバッテリ収納構造では、前記バッテリケースは、車両内側を向く内側面と、車両外側を向く外側面と、を有し、前記衝突軽減機構は、上方に向かって外側に傾斜する前記外側面であることを特徴とする。これにより、本発明のバッテリ収納構造によれば、外側面が傾斜面であることで、衝突事故発生時に、外側面が過度にバッテリスタックに接触することを抑止できる。
【0021】
また、本発明のバッテリ収納構造では、前記バッテリケースを支持するフレームを更に具備し、前記外側面の少なくとも一部は、前記フレームの下方に配置されることを特徴とする。これにより、本発明のバッテリ収納構造によれば、フレームの下方の領域を、バッテリケースの外側面を配置するための領域として用いることができる。
【0023】
また、本発明のバッテリ収納構造では、前記バッテリケースの前記外側面は、車両後方側に配置されることを特徴とする。これにより、本発明のバッテリ収納構造によれば、車両の後方から他車が衝突する後突から、バッテリスタックを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態に係るバッテリ収納構造を備えた車両を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係るバッテリ収納構造を示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係るバッテリ収納構造のバッテリケースを示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係るバッテリ収納構造を示す図であり、(A)はバッテリ収納構造を示す斜視図であり、(B)はバッテリ収納構造の断面図であり、(C)は衝突事故が発生した後のバッテリ収納構造の断面図である。
図5】本発明の他の形態に係るバッテリ収納構造を示す図であり、(A)はバッテリ収納構造の断面図であり、(B)は衝突事故が発生した後のバッテリ収納構造の断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係るバッテリ収納構造に於いて、バッテリスタックを支持する構成を示す斜視図である。
図7】本発明の実施の形態に係るバッテリ収納構造に於いて、バッテリスタックを支持する他の構成を示す斜視図である。
図8】本発明の実施の形態に係るバッテリ収納構造に於いて、バッテリスタックを支持する更なる他の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に図面を参照して、本形態に係るバッテリ収納構造20、および、バッテリ収納構造20を備えた車両10を説明する。以下の説明では、同一の部材には原則的に同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、以下の説明では車両外側の一例が後方であり、車両内側の一例が前方である。
【0026】
図1は、バッテリ収納構造20を備えた車両10を後側上方から見た斜視図である。ここでは、車両10の車体11の後端を覆うリアゲートを省いて図示している。車両10としては、EV(Electric Vehicle)、HEV(Hybrid Electric Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等を採用できる。そして、これらの車両10にも、高い蓄電機能を有した複数のバッテリスタック21が搭載されている。
【0027】
車体11の車室内後方には後方シート12が配設され、その後方に収納スペース14が形成されており、収納スペース14にバッテリ収納構造20が配設されている。バッテリ収納構造20はカバーにより覆われている。
【0028】
図2を参照して、バッテリ収納構造20を説明する。バッテリ収納構造20は、バッテリスタック21と、バッテリケース18と、バッテリケース18の内部でバッテリスタック21を支持する骨格部材22(図3参照)と、衝突事故が発生した際にバッテリスタック21が受ける影響を軽減する衝突軽減機構と、を有する。衝突軽減機構としては、図4(B)に示す側面25等である。
【0029】
バッテリケース18は、周囲からフレーム30により支えられている。フレーム30は、フレーム31、フレーム32、フレーム33およびフレーム34から成る。フレーム31はバッテリケース18を前方から支え、フレーム32はバッテリケース18を後方から支え、フレーム33はバッテリケース18を右方から支え、フレーム34はバッテリケース18を左方から支えている。
【0030】
図3を参照して、バッテリケース18は、側面24、側面25、側面26および側面27を有する。側面24は前方に配置された側面であり、側面25は後方に配置された側面であり、側面26は右方に配置された側面であり、側面27は左方に配置された側面である。ここで、車両10の構成を考慮した場合、側面24が車両内側(車両前方)を向く内側面であり、側面25が車両外側(車両後方)を剥く外側面である。
【0031】
バッテリケース18の底面には、骨格部材22が形成されている。骨格部材22は鋼板をプレスすることで成形された剛性の高い部材であり、前後方向に沿って長手方向を有する。骨格部材22は、バッテリケース18の底面に、略等間隔に配置されている。骨格部材22をバッテリケース18に配置することで、バッテリケース18の前後方向に於ける剛性を高め、衝突時に於いて、バッテリケース18の内部に収納されるバッテリスタック21(図2参照)を保護することができる。
【0032】
図4を参照して、衝突時に於いてバッテリスタック21を保護する衝突軽減機構を説明する。図4(A)はバッテリ収納構造20を示す斜視図であり、図4(B)は図4(A)の切断面線A-Aにおける断面図であり、図4(C)は衝突事故発生後に於ける状態を示す断面図である。
【0033】
図4(A)および図4(B)を参照して、ここでは、衝突軽減機構として、側面25を後方に向かって膨出されている。また、膨出している部分の側面25は、フレーム32の前端よりも後方に配置されている。更に、膨出している部分の側面25は、フレーム32の後面に至るまで、または、フレーム32の後面よりも後方側に突出するように膨出させても良い。更に、側面25は、上方に向かって後方側に傾斜する傾斜面としても良い。
【0034】
図4(C)を参照して、車両後方からの衝撃がバッテリ収納構造20に作用した場合、例えば、車両10の後端部がポール状の物体に衝突する所謂ポール衝突が発生した場合、ポールに押されたフレーム32が、前方に向かって湾曲して移動する。更に、側面25は、下端を起点として前方に向かって倒れ込む。この結果、側面25の下端とフレーム32の後端部は、点線で示すように前後方向に於いて略同位置に配置される。また、ポール衝突による衝撃が大きい場合は、ポールがバッテリケース18の下面およびフレーム32を、同位置で前方に向かって押し出す。
【0035】
この時、側面25は膨出形状を呈しているので、側面25がバッテリスタック21に過度に接触することが抑制されている。また、衝突に伴い側面25がバッテリスタック21に接触したとしも、側面25がバッテリスタック21に与える衝撃を小さくすることができる。よって、ポール後突等が車両10に発生した際に、バッテリスタック21に作用する衝撃を緩和することができる。
【0036】
更に、図4(B)を参照して、バッテリスタック21の後端は、骨格部材22の後端よりも後方に配置されている。換言すると、バッテリスタック21は、骨格部材22よりも後方に向かってせり出している。係る構成とすることで、バッテリスタック21のサイズを大型化し、車両10の連続走行距離を延長することができる。
【0037】
また、バッテリケース18の内部に於いて、バッテリスタック21の後方には衝突領域16が形成され、バッテリスタック21の前方には待避領域17が形成されている。衝突領域16は、後突に備えて、バッテリ収納構造20の後端を側面25から離している領域である。本実施形態では、上記したように、側面25を後方に向かって膨出させることで、衝突領域16の幅を大きくしている。一方、待避領域17は、後突が生じた際に、バッテリスタック21が待避するための領域であり、バッテリスタック21の前端と側面24との間に形成されている。
【0038】
ここで、バッテリスタック21の前端と側面24とが離間する距離L10と、バッテリスタック21の後端が骨格部材22の後端から後方に突出する長さL11とを比較した場合、距離L10はL11と同等以上とされている。このようにすることで、待避領域17が充分に大きく確保されることから、図4(C)に示すような後突事故が発生した際に、バッテリスタック21を待避領域17に確実に待避させることができ、バッテリスタック21に作用する衝撃を緩和することができる。
【0039】
ここで、骨格部材22の後端と側面25との間には間隙が形成されており、骨格部材22の前端は側面24まで伸びている。骨格部材22の前端が側面24まで伸びることで、後突事故が発生した際に、待避領域17が圧壊されることを防止し、バッテリスタック21が待避する領域を確保することができる。更に、骨格部材22の後端と側面25との間に間隙が形成されることで、後突事故が発生した際に、バッテリ収納構造20の前端側の変形を許容し、これにより衝撃を緩和し、バッテリスタック21を保護することができる。
【0040】
図5を参照して、他の形態に係るバッテリ収納構造20を説明する。図5に示すバッテリ収納構造20の構成は図4を参照して説明したものと基本的には同様であり、側面25の形状が主に異なる。図5(A)は、衝突事故が発生する前のバッテリ収納構造20を示す断面図であり、図5(B)は衝突事故が発生した後のバッテリ収納構造20を示す断面図である。
【0041】
図5(A)を参照して、側面25は、上方に向かって後方に傾斜する傾斜面として形成されている。また、側面25の少なくとも上方部分は、フレーム32の前端よりも後方に配置されている。更には、側面25の少なくとも上方部分は、フレーム32の後端よりも後方側に向かって突出しても良い。係る形状の側面25が、上記した衝突軽減機構である。ここでも、待避領域17の幅L10は、バッテリスタック21が骨格部材22から後方に突出する長さL11と、同等以上とされている。
【0042】
図5(B)を参照して、ポール衝突が発生することで、車両後方からの衝撃がバッテリ収納構造20に作用した場合、ポールに押されたフレーム32が前方に向かって移動する。更に、側面25は、下端を起点として前方に向かって倒れ込む。この結果、側面25の下端とフレーム32の後端部は、点線で示すように前後方向に於いて略同位置に配置される。ここでも、ポール衝突による衝撃が大きい場合は、ポールがバッテリケース18の下面およびフレーム32を、同位置で前方に向かって押し出す。
【0043】
側面25は上記したように傾斜しているので、側面25がバッテリスタック21に過度に接触することが抑制されている。また、衝突に伴い側面25がバッテリスタック21に接触したとしも、側面25がバッテリスタック21に与える衝撃を小さくすることができる。よって、ポール後突が車両10に発生した際に、バッテリスタック21に作用する衝撃を緩和することができる。また、衝突時の衝撃により、バッテリ収納構造20の内部に於いて、バッテリスタック21は側面24の側に移動している。これにより、バッテリスタック21に作用する衝撃が緩和される。
【0044】
図6から図8を参照して、バッテリスタック21と上記した骨格部材22とを連結する支持構造を説明する。図6図7、および図8は、衝突軽減機構の一例であるバッテリスタック21の支持構成を示す斜視図である。
【0045】
図6を参照して、バッテリスタック21は、前後方向に沿って積層されたバッテリセル36と、バッテリセル36の前端および後端に配置されたエンドプレート37と、エンドプレート37同士の間に架設されたバインドバ38と、から構成されている。
【0046】
バッテリスタック21の下面には取付板39が設置されている。取付板39は、バッテリスタック21の前端側および後端側に設置される。前方側に配置される取付板39は、左右方向に向かって突出しており、前端側のエンドプレート37の前面よりも後方に配置されている。係る構成により、衝突発生時に取付板39がバッテリスタック21の移動を阻害することがない。係る事項は、図7および図8に示すバッテリスタック21に関しても同様である。
【0047】
取付板39には、スリット40が形成される。スリット40は、バッテリスタック21の前方への移動を許容するために、後方に向かって開口するように形成されている。スリット40に設置されるボルトナットから成る締結部材41により、取付板39は、上記した骨格部材22に接続される。
【0048】
衝突事故が発生した際には、締結部材41は、スリット40に沿って取付板39から外れる。これにより、バッテリスタック21は、図4(C)に示したように、前方に向かって移動可能となる。
【0049】
図7に示すバッテリスタック21では、図6に示したスリット40に替えて、取付板39に脆弱部42が形成されている。脆弱部42は、締結部材41が締結される箇所の近傍で、取付板39に切込を形成する等して脆弱化した部分である。取付板39は、脆弱部42よりも外側で、締結部材41により骨格部材22に締結されている。衝突事故が発生した際には、脆弱部42が形成された部分の取付板39が変形または破断する。これにより、バッテリスタック21は、図4(C)に示したように、前方に向かって移動可能となる。
【0050】
図8に示すバッテリスタック21では、図6に示したスリット40に替えて、支持部43を有している。即ち、取付板39は、ハット状の断面形状を呈する板状部材である支持部43を介して、上記した骨格部材22に取り付けられる。取付板39は、締結部材41により支持部43に締結されている。衝突事故が発生した際には、支持部43が変形することで、バッテリスタック21の前後方向に於ける移動を許容する。これにより、バッテリスタック21は、図4(C)に示したように、前方に向かって移動可能となる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、上記した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
【0052】
例えば、上記した本実施形態では、バッテリ収納構造20を車両10の後端側に配設した場合を説明したが、バッテリ収納構造20を車両10の前端側に配設することもできる。この場合は、本実施形態に係るバッテリ収納構造20を採用することで、車両10に前方から衝撃が作用する前突事故が発生した際に、その衝撃からバッテリスタック21を保護することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 車両
11 車体
12 後方シート
14 収納スペース
16 衝突領域
17 待避領域
18 バッテリケース
20 バッテリ収納構造
21 バッテリスタック
22 骨格部材
24 側面
25 側面
26 側面
27 側面
30 フレーム
31 フレーム
32 フレーム
33 フレーム
34 フレーム
36 バッテリセル
37 エンドプレート
38 バインドバ
39 取付板
40 スリット
41 締結部材
42 脆弱部
43 支持部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8