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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】車両用バッテリパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/633 20140101AFI20230720BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20230720BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20230720BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230720BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230720BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230720BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20230720BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20230720BHJP
   H01M 10/6566 20140101ALI20230720BHJP
   H01M 50/358 20210101ALI20230720BHJP
【FI】
H01M10/633
B60K1/04
B60K11/06
H01M10/48 301
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/6563
H01M10/6566
H01M50/358
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019174072
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021051910
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】池田 駿介
(72)【発明者】
【氏名】木村 真一
(72)【発明者】
【氏名】柄沢 幸雄
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-235171(JP,A)
【文献】特開2006-182264(JP,A)
【文献】特開2012-228946(JP,A)
【文献】特開2009-303364(JP,A)
【文献】特開2014-107178(JP,A)
【文献】特開2014-031111(JP,A)
【文献】国際公開第2010/032313(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K1/00-6/12
B60K7/00-16/00
H01M10/42-10/667
H01M50/30-50/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車において内部にバッテリを配置した車両用バッテリパックであって、
前記バッテリを冷却する冷却風が車内から車外へ向けて流通するバッテリ用冷却風路と、
前記バッテリが異常時に排出する煙を流通させる排煙風路と、
前記バッテリ用冷却風路と前記排煙風路とが合流する合流位置に於いて、前記煙が発生していないときには前記排煙風路を閉塞し、前記煙が発生したときには前記バッテリ用冷却風路と前記排煙風路とを連通させる排煙流通規制部と、
前記煙の温度を検知する温度センサと、
前記冷却風を送風する送風ファンと、
前記送風ファンを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記温度センサで前記煙を検知したとき、前記送風ファンの風量を増大することを特徴とする車両用バッテリパック。
【請求項2】
車室空調装置の内気循環および外気導入を切り替える内外切替ダンパと、を更に具備し、
前記制御装置は、前記煙を検知したとき、前記内外切替ダンパを前記外気導入とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリパック。
【請求項3】
前記排煙流通規制部は、前記煙に接することで溶融するフィルムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用バッテリパック。
【請求項4】
前記バッテリ用冷却風路の端部に配置されるエアベントは、車両のフロア面よりも上方に配置されることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の車両用バッテリパック。
【請求項5】
前記温度センサは、前記バッテリの温度を検知するセンサであることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の車両用バッテリパック。
【請求項6】
前記バッテリに接続され、電力を変換する電力変換回路が組み込まれた電力変換装置と、
前記電力変換装置を冷却する空気が流通する電力変換装置用冷却風路と、を更に具備し、
前記煙が発生したときには、前記電力変換装置用冷却風路を経由して、前記煙を排気することを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の車両用バッテリパック。
【請求項7】
前記温度センサは、前記電力変換装置の温度を検知する電力変換装置用温度センサであることを特徴とする請求項6に記載の車両用バッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリパックに関し、特に、異常時にバッテリから発生した煙を外部に導く風路が形成される車両用バッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の車両として、ハイブリッド自動車や電気自動車が登場してきており、これらの車両には大型の充電式バッテリが搭載されている。車両に搭載される充電式バッテリは、例えば略板状に形成されたバッテリセルと呼称される単体のリチウムイオンバッテリを複数個組み合わせたモジュールから構成される。
【0003】
リチウムイオンバッテリ等でバッテリセルを構成した場合、内部短絡等の異常が起こった際にバッテリセルに形成された排気弁からガスがバッテリセルの外部に噴出される。このようなバッテリセルの内部短絡の対策として、バッテリセルから発生したガスを、ダクトを経由して外部に排出させている。
【0004】
特許文献1には、空気の流路を冷却風およびガスの両方に適用することで、空気の流路を単純化する二次電池パックが記載されている。
【0005】
特許文献2には、異常時に於いてガスが流れるガス導出路を冷却風通路に接続し、異常時に於ける二次電池のガスを冷却風路によってスムーズに外部に排出する電池モジュールが記載されている。
【0006】
特許文献3では、バッテリから排出されるガスを排出するガス排出路を形成する電動車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-258426号公報
【文献】特開2015-153464号公報
【文献】特許4582205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1および特許文献2では、バッテリに異常が発生した際に発生するガスが排出される経路と、冷却風が流通する風路を共通化することで、風路の構成の簡素化は達しているが、ガス発生時の安全性の観点からは改善の余地があった。即ち、事故発生時等にバッテリセルから発生するガスは有害性が高いため、単に冷却風路に流すのみでは、乗員の安全性を十分に確保するのは簡単ではなかった。
【0009】
また、特許文献3に記載された発明では、ガス排出路やセルの近傍に多くのセンサを配設する必要があり、ガスを排出させるための機構に多額のコストが発生してしまう恐れがあった。
【0010】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、バッテリセルの短絡等に伴いガスが発生した際に、簡素な風路構成でガスを安全且つ効果的に外部に放出することができる車両用バッテリパックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に記載された車両用バッテリパックは、電動車において内部にバッテリを配置した車両用バッテリパックであって、前記バッテリを冷却する冷却風が車内から車外へ向けて流通するバッテリ用冷却風路と、前記バッテリが異常時に排出する煙を流通させる排煙風路と、前記バッテリ用冷却風路と前記排煙風路とが合流する合流位置に於いて、前記煙が発生していないときには前記排煙風路を閉塞し、前記煙が発生したときには前記バッテリ用冷却風路と前記排煙風路とを連通させる排煙流通規制部と、前記煙の温度を検知する温度センサと、前記冷却風を送風する送風ファンと、前記送風ファンを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記温度センサで前記煙を検知したとき、前記送風ファンの風量を増大することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に記載された車両用バッテリパックでは、車室空調装置の内気循環および外気導入を切り替える内外切替ダンパと、を更に具備し、前記制御装置は、前記煙を検知したとき、前記内外切替ダンパを前記外気導入とすることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3に記載された車両用バッテリパックでは、前記排煙流通規制部は、前記煙に接することで溶融するフィルムであることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4に記載された車両用バッテリパックでは、前記バッテリ用冷却風路の端部に配置されるエアベントは、車両のフロア面よりも上方に配置されることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5に記載された車両用バッテリパックでは、前記温度センサは、前記バッテリの温度を検知するセンサであることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項6に記載された車両用バッテリパックでは、前記バッテリに接続され、電力を変換する電力変換回路が組み込まれた電力変換装置と、前記電力変換装置を冷却する空気が流通する電力変換装置用冷却風路と、を更に具備し、前記煙が発生したときには、前記電力変換装置用冷却風路を経由して、前記煙を排気することを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項7に記載された車両用バッテリパックでは、前記温度センサは、前記電力変換装置の温度を検知する電力変換装置用温度センサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に記載された車両用バッテリパックによれば、排煙流通規制部をバッテリ冷却風路と排煙風路との間に介装することで、バッテリに異常が生じることで排煙が発生した際に、バッテリ用冷却風路を介して排煙を外部に放出することができる。よって、煙を放出させるための経路としてバッテリ用冷却風路を利用できるので、車両用バッテリパックの構成を簡素化できる。更に、温度センサが排煙を検知したときに送風ファンの風量を増大することで、良好に煙を車外に放出することができ、有害な排煙が搭乗者に悪影響を与えることを防止できる。
【0019】
本発明の請求項2に記載された車両用バッテリパックによれば、排煙を検知したときに外気導入とすることで、有害な煙が車室内に滞留してしまうことを抑止できる。
【0020】
本発明の請求項3に記載された車両用バッテリパックによれば、フィルムを排煙流通規制部として採用することで、排煙流通規制部の構成を簡略化することができる。
【0021】
本発明の請求項4に記載された車両用バッテリパックによれば、エアベントを、車両のフロア面よりも上方に配置することで、車外からの水がバッテリ用冷却風路に浸入することを防止できる。
【0022】
本発明の請求項5に記載された車両用バッテリパックによれば、バッテリの温度を検出するセンサで排煙を検知できるので、排煙を検知するための専用のセンサを不要にし、コストの増加を抑制できる。
【0023】
本発明の請求項6に記載された車両用バッテリパックによれば、送風力が大きい電力変換装置用冷却風路を経由して煙を送風することで、有害な煙をより確実に車外に放出することができる。
【0024】
本発明の請求項7に記載された車両用バッテリパックによれば、電力変換装置の温度を検出するセンサで排煙を検知できるので、排煙を検知するための専用のセンサを不要にし、コストの増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係る車両用バッテリパックを示す図であり、(A)は車両用バッテリパックが配置された車両後部を示す斜視図であり、(B)はバッテリを示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る車両用バッテリパックを示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係る車両用バッテリパックを示す図であり、(A)は車両用バッテリパックの風路構成を示す斜視図であり、(B)はバッテリスタックの構成を示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係る車両用バッテリパックを示す図であり、(A)は車両用バッテリパックの風路構成を示す模式図であり、(B)はエアベントを示す側面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る車両用バッテリパックの接続構成を示すブロック図である。
図6】本発明の実施の形態に係る車両用バッテリパックを示す図であり、バッテリスタックから排煙が発生していない通常時における各風路の状況を示す模式図である。
図7】本発明の実施の形態に係る車両用バッテリパックを示す図であり、バッテリスタックから排煙が発生する異常時における各風路の状況を示す模式図である。
図8】本発明の他の形態に係る車両用バッテリパックを示す図であり、(A)は電力変換装置およびバッテリスタックを冷却する各風路の構成を示す模式図であり、(B)は電力変換装置用冷却風路を経由して煙を排出する状況を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る車両用バッテリパック10を図面に基づき詳細に説明する。本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、以下の説明では前後上下左右の各方向を用いるが、左右とは車両の前方を向いた場合の左右である。
【0027】
図1は、車両用バッテリパック10を示す斜視図である。図1(A)は車両用バッテリパック10が配置される車両後部を示す斜視図であり、図1(B)はバッテリ11を示す斜視図である。ここで、車両用バッテリパック10は、車両用電池モジュール、車両用電池パックまたは車両用バッテリモジュールとも称される。
【0028】
図1(A)を参照して、車両用バッテリパック10は、電動車である車両のモータや電装部品に、電力を供給する。車両用バッテリパック10が搭載される車両としては、例えば、EV(Electric Vehicle)、HEV(Hybrid Electric Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等を採用できる。
【0029】
ここでは、車体後端側にバッテリケース123が配置され、バッテリケース123の内部にバッテリ11が配設される。図1(A)ではバッテリ11の具体的形状は図示していない。バッテリ11の上方には、バッテリ用冷却風路14が配置されている。バッテリ用冷却風路14は、バッテリ11を冷却するための空気を流通させるための風路である。ここでは、車外や室内からの冷気が、前方左側からバッテリ用冷却風路14に導入され、バッテリ11を冷却することで昇温した空気が後側右方から車外に放出される。バッテリ用冷却風路14を流通する空気で、バッテリ11を冷却することで、バッテリ11の温度を所定の温度帯域とし、バッテリ11の放電特性および充電特性を一定以上に確保できる。
【0030】
図1(B)を参照して、バッテリ11は、左右方向に並べられた複数のバッテリスタック12から構成されている。個々のバッテリスタック12には、ここでは図示しないが、前後方向に積層配置された多数のバッテリセルを有している。バッテリスタック12は、リチウムイオンバッテリまたはニッケル水素バッテリから成る二次電池である。バッテリスタック12を構成する各バッテリセルには、ガスを外部に逃がすための図示しない安全弁が形成されている。
【0031】
図2および図3を参照して、車両用バッテリパック10の構成を詳述する。図2は、車両用バッテリパック10を示す斜視図である。図3(A)は各風路の構成を示す斜視図であり、図3(B)はバッテリスタック12の構成を示す斜視図である。
【0032】
図2を参照して、車両用バッテリパック10では、バッテリケース123の内部にバッテリ11が収納されている。後述する各風路も、バッテリケース123に内蔵されている。また、車両用バッテリパック10の左方側面に、空気を取り入れる冷却風取入口15が形成されている。更に、車両用バッテリパック10の後方側面に冷却風排出口16が形成されている。
【0033】
車両用バッテリパック10が搭載される車両が運転される際には、バッテリケース123に内蔵されたバッテリ11が充放電を行うことで発熱し、冷却風取入口15から導入される冷気によりバッテリ11が冷却され、バッテリ11を冷却することで昇温した空気は、冷却風排出口16から車外に放出される。後述するように、本実施形態では、バッテリ11を冷却する冷却風路と、異常時にバッテリ11から発生する煙が通過する排煙風路とで、少なくとも一部が共用されているので、風路全体の構成を簡略化することができる。
【0034】
図3(A)は、上記したバッテリケース123の内部構成を示す斜視図である。ここでは、前後方向に沿って長手方向を有するバッテリスタック12が、左右方向に並べて配設されている。
【0035】
バッテリスタック12の上面には、バッテリ用冷却風路14および電力変換装置用冷却風路23が配設されている。また、バッテリスタック12の左方側には送風路28が配置されている。送風路28は、左端側が図2に示した冷却風取入口15と接続しており、右方側が二股形状を呈している。送風路28の後方側端部は電力変換装置用冷却風路23に接続している。送風路28の前方側端部はバッテリ用冷却風路14に接続している。電力変換装置用冷却風路23は電力変換装置22を冷却する為の風路である。上記したように、車両用バッテリパック10の後面には、冷却風排出口16が形成されているが、冷却風排出口16は排煙風路17の出口も兼ねている。
【0036】
バッテリ11を冷却する際には、送風路28から導入された空気は、バッテリ用冷却風路14および電力変換装置用冷却風路23に流れる。電力変換装置用冷却風路23に流れた空気は、電力変換装置22を冷却した後に、冷却風排出口16から排出される。また、バッテリ用冷却風路14に供給された空気は、バッテリ11を冷却した後に、冷却風排出口16から排出される。
【0037】
図3(B)を参照して、バッテリスタック12の上面には排煙風路17が配設されている。排煙風路17は、各バッテリスタック12の上方において、前後方向に沿って配置された管路である。ここでは図示しないが、排煙風路17は各バッテリセルの排気バルブと連通している。図4を参照して後述するように、車両用バッテリパック10の内部では、上記したバッテリ用冷却風路14と排煙風路17が、排煙流通規制部18を介して連通している。
【0038】
図4(A)は、車両用バッテリパック10の内部に於ける風路構成を詳述する模式図である。図4(B)は、エアベント31の構成を示す側面図である。
【0039】
図4(A)を参照して、車両用バッテリパック10は、バッテリスタック12と、バッテリ用冷却風路14と、排煙風路17と、を主に有する。
【0040】
バッテリスタック12は、バッテリスタック121とバッテリスタック122が、ここでは示されている。
【0041】
バッテリ用冷却風路14は、バッテリスタック12を冷却する空気が流通する経路である。バッテリ用冷却風路14は、バッテリ用冷却風路141ないし風路端部147を有する。バッテリ用冷却風路141ないしバッテリ用冷却風路146は空気を送風するための導管であり、風路端部147はバッテリ用冷却風路146の下流側端部である。
【0042】
バッテリ用冷却風路141には冷却風取入口15から空気が取り入れられる。バッテリ用冷却風路141の下流側は、バッテリ用冷却風路142およびバッテリ用冷却風路144と繋がっている。
【0043】
バッテリ用冷却風路142とバッテリ用冷却風路143とは、バッテリスタック121を挟むように配置される。バッテリ用冷却風路142とバッテリ用冷却風路143とは、バッテリスタック121と熱交換する空気が流通する図示しない導管により接続されている。バッテリ用冷却風路143の下流側端部はバッテリ用冷却風路146に接続している。
【0044】
バッテリ用冷却風路144とバッテリ用冷却風路145とは、バッテリスタック122を挟むように配置される。バッテリ用冷却風路144とバッテリ用冷却風路145とは、バッテリスタック122と熱交換する空気が流通する図示しない導管により接続されている。バッテリ用冷却風路145の下流側端部はバッテリ用冷却風路146に接続している。
【0045】
バッテリ用冷却風路146の上流側の部分は、バッテリ用冷却風路143およびバッテリ用冷却風路145に接続しており、下流側端部には風路端部147が形成されている。また、バッテリ用冷却風路146にはバッテリ用送風ファン20が介装されている。バッテリ用送風ファン20が運転されることで、バッテリ用冷却風路14の上流端部に形成された冷却風取入口15から、バッテリ用冷却風路14の下流端部に形成された風路端部147に向かって空気が流れる。
【0046】
風路端部147は、車体ボディ26の内側近傍に配置されている。また、風路端部147の近傍にはエアベント31が配置されている。
【0047】
排煙風路17は、非常時に於いてバッテリスタック12から排出される煙を外部に導くための管路であり、ここでは排煙風路171と排煙風路172が示されている。
【0048】
排煙風路171は、バッテリスタック121の各バッテリセルに形成された安全弁に接続されている。排煙風路171の下流側端部は、排煙流通規制部181を介してバッテリ用冷却風路146に接続されている。排煙流通規制部181としては、例えば、排煙風路171とバッテリ用冷却風路146の接続箇所を塞ぐように配設され、且つ、異常時にバッテリスタック121から発生する煙の熱により溶融するフィルム状部材を採用することができる。これにより、バッテリスタック121から煙が発生していない通常時に於いては、排煙流通規制部181としてのフィルムにより、バッテリ用冷却風路146と排煙風路171とを区画することができる。一方、異常時に於いてバッテリスタック121から排煙が発生したら、その煙の熱により排煙流通規制部181としてのフィルムが溶融し、排煙風路171とバッテリ用冷却風路146とが連通する。これにより、バッテリスタック121から発生した煙は、排煙風路171およびバッテリ用冷却風路146を経由して車外に放出される。
【0049】
排煙風路172は、排煙風路171と同様に、バッテリスタック122の各バッテリセルに形成された安全弁に接続されている。排煙風路172の下流側端部は、排煙流通規制部182を介してバッテリ用冷却風路146に接続されている。排煙流通規制部182としては、排煙流通規制部181と同様にフィルムを採用することができる。これにより、通常時に於いては、排煙流通規制部182としてのフィルムにより、排煙風路172とバッテリ用冷却風路146とを区画することができる。一方、異常時に於いてバッテリスタック121から排煙が発生したら、排煙流通規制部182としてのフィルムが溶融し、排煙風路172とバッテリ用冷却風路146とが連通する。これにより、バッテリスタック122から発生した煙は、排煙風路172およびバッテリ用冷却風路146を経由して車外に放出される。
【0050】
温度センサ19は、バッテリスタック12の温度センサであり、ここでは温度センサ191と温度センサ192が示されている。
【0051】
温度センサ191は、排煙風路171の内部または近傍に配置されている。温度センサ191は、バッテリスタック12を構成する各バッテリセルの異常を検出するためにその温度を計測するセンサである。本実施形態では、本来はバッテリスタック121の状態を検知するための温度センサ191で、排煙風路171に煙が流入しているか否かを判断している。このようにすることで、排煙風路171の内部温度を検知するための専用のセンサが不要になり、コスト上昇を抑えることができる。
【0052】
温度センサ192は、排煙風路172の内部または近傍に配置されている。温度センサ192は、温度センサ191と同様に、バッテリスタック122を構成するバッテリセルの温度を検知し、更に、排煙風路172の内部温度も検知することができる。
【0053】
内外切替ダンパ32は、車室内の内気循環または外気導入を切り替えるための切替手段であり、乗員による操作または後述する制御装置21の指示に基づいて、内気循環または外気導入を切り替える。
【0054】
図4(B)を参照して、エアベント31の構成を詳述する。エアベント31では、バッテリ用冷却風路145の端部に形成されるバッテリ用冷却風路146の近傍に、ベント板27が配置される。ベント板27を配置することで、バッテリ用冷却風路145への異物の混入を防止できる。ベント板27は、上端が回動可能に接続されている。上記したバッテリ用送風ファン20が運転されることで、バッテリ用冷却風路145のバッテリ用冷却風路146から空気が放出されると、その空気の風圧によりベント板27は回動して点線の位置とされる。
【0055】
また、エアベント31は、ここでは図示しないトリム部品と車体ボディ26との間に配置される。よって、乗員が存在する車内空間を経由せずに、煙を車外に放出することができる。
【0056】
更に、エアベント31は、ここでは一点鎖線で示す車体のフロア面よりも上方に配置される。このようにすることで、荒天時等に於いて、車外からバッテリ用冷却風路145に水が浸入することを防止できる。
【0057】
更にまた、ベント板27とバッテリ用冷却風路146との間に間隙を形成している。このようにすることで、水がバッテリ用冷却風路145に浸入することを防止し、更に、バッテリ用冷却風路146から外部にガスを排出することができる。
【0058】
図5のブロック図を参照して車両用バッテリパック10の接続構成を説明する。
【0059】
制御装置21は、例えばCPUから構成され、各種センサからの入力を受けて所定の演算処理を行い、その処理結果に基づいて各種構成機器の動作を制御する。制御装置21は、各種定数やプログラムが記憶されている。制御装置21の入力側端子は、温度センサ19および温度センサ25に接続されており、制御装置21の出力側端子はバッテリ用送風ファン20および内外切替ダンパ32に接続されている。
【0060】
図6を参照して、バッテリスタック12が発煙していない通常時に於ける車両用バッテリパック10の制御を説明する。通常制御に於いては、車両用バッテリパック10の状況等に基づいて、制御装置21は、バッテリ用送風ファン20の送風量を制御する。バッテリ用送風ファン20が送風すると、バッテリ用冷却風路14の内部を空気が流通し、これによりバッテリスタック12が冷却される。これにより、バッテリスタック12は、放電および充電を行うに際して効果的な温度帯域に冷却される。
【0061】
具体的には、バッテリ用送風ファン20が送風することで、冷却風取入口15からバッテリ用冷却風路141に取り入れられた空気は、バッテリ用冷却風路142に導入され、バッテリスタック121を構成する各バッテリセルと熱交換した後に、バッテリ用冷却風路143に導入される。同様に、バッテリ用冷却風路144に送風された空気は、バッテリスタック122を構成する各バッテリセルと熱交換した後に、バッテリ用冷却風路145に導入される。バッテリ用冷却風路143およびバッテリ用冷却風路145を経由した空気は、バッテリ用冷却風路146に流入した後に、風路端部147から外部に放出される。
【0062】
ここでは、排煙流通規制部181は閉鎖状態であるため、排煙風路171とバッテリ用冷却風路146とは連通していない。同様に、排煙流通規制部182も閉鎖状態であるため、排煙風路172とバッテリ用冷却風路146とは連通していない。このようにすることで、バッテリ用冷却風路14を流通する空気が、排煙風路171および排煙風路172に流入することを防止し、バッテリスタック12を冷却する冷却性の低下を抑制できる。
【0063】
また、内外切替ダンパ32は、乗員の操作等に基づいて、内気循環状態でも良いし、外気導入状態でも良い。
【0064】
図7の模式図を参照して、内部短絡が発生するなどしてバッテリスタック12が異常状態になった場合を説明する。即ち、バッテリスタック121から発煙した煙が排煙風路171に流入すると、その煙の熱によりフィルムである排煙流通規制部181が溶融し、排煙風路171とバッテリ用冷却風路146が連通し、バッテリ用冷却風路146に煙が流れる。本実施形態では、制御装置21は、温度センサ191を用いて、排煙風路171に流れ込んだ煙の温度が一定以上であることを検知することで、バッテリスタック121からの発煙の有無を判断する。即ち、制御装置21は、バッテリスタック121から発生した有害な煙が、排煙風路171に流入していると判断する。バッテリスタック121から発生する煙の温度は、例えば100℃程度の高温であるため、その有無は温度センサ19による計測で容易に判断できる。
【0065】
同様に、バッテリスタック122から発煙した煙が排煙風路172に流入すると、その煙の熱によりフィルムである排煙流通規制部182が溶融し、排煙風路172とバッテリ用冷却風路146が連通し、バッテリ用冷却風路146に煙が流れる。制御装置21は、温度センサ192で計測する排煙風路172の温度が、一定以上に達したら、異常時にバッテリスタック122から発生した煙が排煙風路172に流れ込んだと判断する。
【0066】
制御装置21は、温度センサ191または温度センサ192により計測した温度が一定以上であることで、衝突事故発生などによりバッテリスタック12が発煙したと判断したら、バッテリ用送風ファン20の送風量を大きくする。
【0067】
具体的には、制御装置21は、バッテリ用送風ファン20の送風量を、バッテリスタック12を冷却する際よりも大きくする。更に、制御装置21は、バッテリ用送風ファン20の送風量を、最大送風量とすることもできる。これにより、バッテリスタック121から発生した煙は、排煙風路171およびバッテリ用冷却風路146を介して車外に放出される。この時、バッテリ用送風ファン20の送風量が大きくされることで、図4(B)に示したベント板27を確実に押し上げることができる。同様に、バッテリスタック122から発生した煙は、排煙風路172およびバッテリ用冷却風路146を介して車外に放出される。
【0068】
このとき、制御装置21は、内外切替ダンパ32を内気循環状態から外気導入状態に変更するようにしても良い。外気導入状態とすることで、バッテリスタック121から発生するガスが車室内に滞留することを防止することができる。更に、制御装置21は、車室内の冷房または暖房を行う空調ファンを稼働させ、これにより車室内に煙が滞留することを防止することができる。
【0069】
上記したバッテリスタック12の排煙行程は、バッテリスタック12の温度が低下するまで続行される。具体的には、制御装置21は、温度センサ19で計測したバッテリスタック12の温度が一定以下になるまで、バッテリ用送風ファン20の風量を大きくする。
【0070】
温度センサ19で計測したバッテリスタック12の温度が一定以下になったら、バッテリスタック12からの排煙が無くなりつつある。よって、煙をより安全に車外に放出するために、制御装置21は、更に一定時間が経過するまで、バッテリ用送風ファン20の風量を大きくする。この一定時間は、バッテリスタック12の種類や容量に応じて異なる。
【0071】
上記した一定時間が経過したら、バッテリ用送風ファン20を停止する。車両用バッテリパック10を、このように動作させることで、バッテリスタック12から発煙が発生したとしても、有害な煙を確実に車外に放出させ、車室内の乗員の安全性を確保することができる。
【0072】
図8の模式図を参照して、車両用バッテリパック10の他の構成を説明する。ここでは、車両用バッテリパック10は、バッテリスタック12からの排煙を、電力変換装置用冷却風路23を利用して排出する。図8(A)は、バッテリスタック12が発煙していない通常時に於ける車両用バッテリパック10の風路構成を示す模式図である。図8(B)はバッテリスタック12が発煙している異常時に於ける風路構成を示す模式図である。ここで、図8(A)および図8(B)では、各風路に於ける風向を点線の矢印で示している。
【0073】
図8(A)を参照して、車両用バッテリパック10では、バッテリスタック12を冷却した空気が流通するバッテリ用冷却風路14と、電力変換装置22を冷却した空気が流通する電力変換装置用冷却風路23が形成されている。また、バッテリ用冷却風路14と電力変換装置用冷却風路23とが合流する風路にバッテリ用送風ファン20が配置されており、バッテリ用送風ファン20で送風された空気が車外に放出される。ここでは、電力変換装置用冷却風路23の断面積を、バッテリ用冷却風路14の断面積よりも大きくすることで、バッテリ用送風ファン20を運転した際に、電力変換装置用冷却風路23を流れる空気の流量を、バッテリ用冷却風路14を流れる空気の流量よりも大きくしている。
【0074】
電力変換装置22には、バッテリスタック12が充放電する電力を変換するコンバータやインバータなどの電力変換回路が組み込まれている。電力変換装置22は、電力変換装置用冷却風路23に臨ませた放熱部33を経由して、電力変換装置用冷却風路23を流通する空気と熱交換する。
【0075】
バッテリスタック12の排煙部30と電力変換装置用冷却風路23とは接続風路29で接続されている。接続風路29と電力変換装置用冷却風路23との接続箇所は、電力変換装置22が放熱する箇所の近傍とされている。また、接続風路29と電力変換装置用冷却風路23との接続箇所には、図4(A)に示した排煙流通規制部181を配置することもできる。
【0076】
電力変換装置22の近傍には、温度センサ25が配置されている。温度センサ25は電力変換装置22の温度を検知するためのセンサである。温度センサ25は、接続風路29を経由して電力変換装置用冷却風路23に侵入する煙を検知するセンサとしても機能している。
【0077】
図8(B)を参照して、異常時に於いてバッテリスタック12の排煙部30から発煙が生じたら、煙は接続風路29を経由して、電力変換装置用冷却風路23に至る。電力変換装置用冷却風路23に100℃程度の煙が流入することで、温度センサ25が検知した温度が一定以上になれば、バッテリ用送風ファン20の風量を大きくする。例えば、バッテリ用送風ファン20の風量を、最大風量とする。このようにすることで、断面積が大きい電力変換装置用冷却風路23を利用して、有害な煙を外部に放出することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、上記した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
【0079】
例えば、排煙流通規制部181として、上記した実施形態では高熱で溶融するフィルムを例示したが、制御装置21からの指示に基づいて開閉する機械式ダンパを採用することができる。
【0080】
上記では、バッテリスタック12の温度を検知する温度センサ191を用いて、バッテリスタック121の発煙を検知したが、バッテリスタック121の発煙を検知する専用の温度センサを排煙風路171に配設することもできる。この専用温度センサは、図4を参照して、バッテリ用冷却風路146の内部であってバッテリ用送風ファン20の上流側近傍に配置することができる。
【0081】
上記では、バッテリスタック12の発煙を温度で検知したが、これに加えてバッテリスタック12の電圧の変動を検知することで、バッテリスタック12の異常に伴う発煙を正確に検知することもできる。
【符号の説明】
【0082】
10 車両用バッテリパック
11 バッテリ
12 バッテリスタック
121 バッテリスタック
122 バッテリスタック
123 バッテリケース
14 バッテリ用冷却風路
141 バッテリ用冷却風路
142 バッテリ用冷却風路
143 バッテリ用冷却風路
144 バッテリ用冷却風路
145 バッテリ用冷却風路
146 バッテリ用冷却風路
147 風路端部
15 冷却風取入口
16 冷却風排出口
17 排煙風路
171 排煙風路
172 排煙風路
18 排煙流通規制部
181 排煙流通規制部
182 排煙流通規制部
19 温度センサ
191 温度センサ
192 温度センサ
20 バッテリ用送風ファン
21 制御装置
22 電力変換装置
23 電力変換装置用冷却風路
25 温度センサ
26 車体ボディ
27 ベント板
28 送風路
29 接続風路
30 排煙部
31 エアベント
32 内外切替ダンパ
33 放熱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8