(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】発光素子、発光デバイス
(51)【国際特許分類】
H10K 50/155 20230101AFI20230720BHJP
H10K 50/115 20230101ALI20230720BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
H10K50/155
H10K50/115
H05B33/14 Z
(21)【出願番号】P 2021570546
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2020001122
(87)【国際公開番号】W WO2021144892
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】上田 吉裕
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-173780(JP,A)
【文献】特開2009-277791(JP,A)
【文献】国際公開第2009/125519(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0051849(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107104193(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110212063(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111834420(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00 - 50/18
H05B 33/14
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に配置され、量子ドットを含む発光層と、
前記発光層と前記アノードとの間に配置された正孔輸送層と、を備え、
前記正孔輸送層は、
n+型半導体層と、
前記n+型半導体層に隣接し、前記n+型半導体層に対して前記発光層の側に配置されたp+型半導体層と、を含む発光素子。
【請求項2】
前記n+型半導体層は、第1のII-VI族半導体と、13族元素および17族元素から選択される第1のドーパントと、を含む、請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第1のII-VI族半導体は、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、CdTe、ZnTe、ZnCdSe、ZnCdS、ZnCdTe、ZnSeS、CdSeS、ZnTeS、ZnTeSe、CdTeS、CdTeSeから構成される群から選択される、少なくとも1種以上を含む、請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第1のドーパントは、Al、In、Ga、Cl、Br、Iから選択される少なくとも1種以上を含む、請求項2または3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記n+型半導体層は、第1のII-VI族半導体を含み、
前記第1のII-VI族半導体は、ストイキオメトリーの状態に対して、II族元素が過剰である、請求項1~4のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項6】
前記第1のII-VI族半導体は、
Cdと、VI族元素と、を含み、
前記VI族元素に対して、Cdの含有比率が大きい、請求項5に記載の発光素子。
【請求項7】
前記第1のII-VI族半導体は、CdS、CdSe、CdTe、ZnCdSe、ZnCdS、ZnCdTe、CdSeS、CdTeS、CdTeSeから構成される群から選択される、少なくとも1種以上を含む、請求項6に記載の発光素子。
【請求項8】
前記n+型半導体層と前記p+型半導体層とは、同じ元素の組合せからなる同じ金属酸化物半導体を含み、
前記n+型半導体層に含まれる前記金属酸化物半導体は、ストイキオメトリーの状態に対して、酸素原子が不足であり、
前記p+型半導体層に含まれる前記金属酸化物半導体は、ストイキオメトリーの状態に対して、酸素原子が過剰である、請求項1に記載の発光素子。
【請求項9】
前記p+型半導体層は、第2のII-VI族半導体と、1族元素および11族元素、15族元素から選択される第2のドーパントと、を含む、請求項1~8の何れか1項に記載の発光素子。
【請求項10】
前記p+型半導体層は、
第2のII-VI族半導体と、
1族元素および11族元素、15族元素から選択される第2のドーパントと、を含み、
前記第1のII-VI族半導体と前記第2のII-VI族半導体とは、互いに同じ元素の組み合わせからなる半導体である、請求項2~7の何れか1項に記載の発光素子。
【請求項11】
前記第2のII-VI族半導体は、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、CdTe、ZnTe、ZnCdSe、ZnCdS、ZnCdTe、ZnSeS、CdSeS、ZnTeS、ZnTeSe、CdTeS、CdTeSeから構成される群から選択される、少なくとも1種以上を含む、請求項9または10に記載の発光素子。
【請求項12】
前記第2のドーパントは、N、P、Cu、Ag、Li、Naから選択される1種以上を含む、請求項9~11の何れか1項に記載の発光素子。
【請求項13】
前記正孔輸送層は、前記p+型半導体層に隣接し、前記p+型半導体層に対して前記発光層の側に配置されたi型半導体層を含み、
前記i型半導体層は、前記第2のII-VI族半導体と同じ元素の組み合わせからなる第3のII-VI族半導体を含む、請求項9~12の何れか1項に記載の発光素子。
【請求項14】
前記正孔輸送層は、前記p+型半導体層に隣接し、前記p+型半導体層に対して前記発光層の側に配置されたp型半導体層を含み、
前記p型半導体層は、前記第2のII-VI族半導体と同じ元素の組み合わせからなる第3のII-VI族半導体と、1族元素および11族元素、15族元素から選択される第3のドーパントと、を含み、
前記p型半導体層における前記第3のII-VI族半導体に対する前記第3のドーパントの濃度は、前記p+型半導体層における前記第2のII-VI族半導体に対する前記第2のドーパントの濃度よりも低い、請求項9~12のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項15】
前記i型半導体層の厚みは、前記p+型半導体層の厚みよりも薄い、請求項13に記載の発光素子。
【請求項16】
前記p型半導体層の厚みは、前記p+型半導体層の厚みよりも薄い、請求項14に記載の発光素子。
【請求項17】
前記量子ドットは、コアと、前記コアを覆うシェルとを含み、
前記シェルは、前記第2のII-VI族半導体と同じ元素の組み合わせからなる第4のII-VI族半導体を含む、請求項9~16の何れか1項に記載の発光素子。
【請求項18】
前記n+型半導体層における、前記第1のドーパントの添加量は、1.00E+17[cm
-3]~1.00E+23[cm
-3]である、請求項2~4の何れか1項に記載の発光素子。
【請求項19】
前記p+型半導体層における、前記第2のドーパントの添加量は、1.00E+17[cm
-3]~1.00E+23[cm
-3]である、請求項9~17の何れか1項に記載の発光素子。
【請求項20】
前記量子ドットは、コアと、前記コアを覆うシェルとを含み、
前記シェルは、II-VI族半導体から選択される第4のII-VI族半導体を含み、
前記第1のII-VI族半導体が含むII族元素は、前記第4のII-VI族半導体が含むII族元素より下位の周期に含まれる、請求項2~7の何れか1項に記載の発光素子。
【請求項21】
前記第3のドーパントは、前記第2のドーパントと同じ元素を含む、請求項14または16に記載の発光素子。
【請求項22】
請求項1~21の何れか1項に記載の発光素子を備える発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光層に量子ドットを含む発光素子、および当該発光素子を備えた発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性有機物は、金属および半導体などの導電性無機物と比較して、キャリア移動度が極めて低い。また、導電性有機物と導電性無機物との接合界面では、通電により電気化学反応が進行する。このため、正孔輸送層に導電性無機物を使用することが求められている。
【0003】
特許文献1には、正孔輸送層にp型GaN量子ドットを使用する構成が開示されている。
【0004】
特許文献2には、正孔輸送層にp型NiO薄膜を使用する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国公開特許公報「特開2005-268384(2005年9月29日公開)」
【文献】日本国公開特許公報「特開2012-23388(2012年2月2日公開)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に開示の構成では、アノードから発光層への間でイオン化ポテンシャルが、すなわち最高被占軌道(HOMO)の準位が、整合していない。このような準位不整合は、発光層への正孔注入を阻害するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、発光層への正孔注入効率を向上することができる発光素子、および当該発光素子を備えた発光デバイスを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る発光素子は、アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置され、量子ドットを含む発光層と、前記発光層と前記アノードとの間に配置された正孔輸送層と、を備え、前記正孔輸送層は、n+型半導体層と、前記n+型半導体層に隣接し、前記n+型半導体層に対して前記発光層の側に配置されたp+型半導体層と、を含む構成である。
【発明の効果】
【0009】
上記構成により、発光層への正孔注入効率を向上することができる発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態1に係る発光デバイスの概略断面図である。
【
図2】本開示の実施形態1に係る発光素子における各層を積層していない場合におけるフェルミ準位、またはバンドギャップの例を示すエネルギーバンド図である。
【
図3】本開示の実施形態1に係る発光素子における各層を積層した場合におけるフェルミ準位、またはバンドギャップの例を示すエネルギーバンド図である。
【
図4】比較形態に係る発光素子のエネルギーバンド図である。
【
図5】(a)本開示の実施形態1に係る発光素子に駆動電圧を印加した場合における各層のエネルギーバンド図、および(b)空乏層近傍の拡大したエネルギーバンド図である。
【
図6】本開示の実施形態1に係る発光デバイスの一変形例の概略断面図である。
【
図7】本開示の実施形態1に係る発光デバイスの別の一変形例の概略断面図である。
【
図8】本開示の実施形態2に係る発光デバイスの概略断面図である。
【
図9】本開示の実施形態1に係る発光素子のエネルギーバンド図を、正孔輸送層と発光層との接合界面付近でのイオン化ポテンシャル付近のみを抜き出して示す拡大図である。
【
図10】本開示の実施形態2に係る発光素子のエネルギーバンド図を、正孔輸送層と発光層との接合界面付近でのイオン化ポテンシャル付近のみを抜き出して示す拡大図である。
【
図11】本開示の実施形態2に係る発光デバイスの一変形例の概略断面図である。
【
図12】本開示の実施形態2に係る発光デバイスの別の一変形例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
本明細書においては、元素の族をローマ数字にて指定している場合には、旧CAS方式の命名法に基づいた族の指定を行っているものとする。また、元素の族をアラビア数字にて指定している場合には、現行のIUPAC方式の元素の命名法に基づいた族の指定を行っているものとする。本明細書においては、数値範囲を「~」で繋いで指定している場合には、以上未満の数値範囲の指定を行っているものとする。
【0012】
(発光デバイスの構成)
図1は、本実施形態に係る発光デバイス1の概略断面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る発光デバイス1は、発光素子2とアレイ基板3とを備える。発光デバイス1は、図示しないTFT(Thin Film Transistor)が形成されたアレイ基板3上に、発光素子2の各層が積層された構造を備える。なお、本明細書においては、発光デバイス1の発光素子2からアレイ基板3への方向を「下方向」、
発光デバイス1のアレイ基板3から発光素子2への方向を「上方向」として記載する。
【0014】
発光素子2は、アノード4上に、正孔輸送層6と、発光層8と、電子輸送層10と、カソード12とを、下層からこの順に備える。アレイ基板3の上層に形成された発光素子2のアノード4は、アレイ基板3のTFTと電気的に接続されている。他の実施形態に係る発光素子においては、アレイ基板の上層にカソードを備え、カソード上に、電子輸送層と、発光層と、正孔輸送層と、アノードとを、この順に備える発光素子であってもよい。
【0015】
アノード4およびカソード12は導電性材料を含み、それぞれ、正孔輸送層6および電子輸送層10と電気的に接続されている。
【0016】
アノード4とカソード12との何れか一方は、透明電極である。透明電極としては、例えば、ITO、IZO、ZnO、AZO、またはBZO等が用いられ、スパッタ法等によって成膜されてもよい。また、アノード4またはカソード12の何れか一方は金属材料を含んでいてもよく、金属材料としては、可視光の反射率の高いAl、Cu、Au、またはAg等が好ましい。
【0017】
発光層8は、複数の量子ドット(半導体ナノ粒子)16を含む層である。発光層8は、数層の発光層が積層したものであってもよい。ここで、発光層8における量子ドット16は、
図1に示すように、規則正しく配置されている必要はなく、量子ドット16は無秩序に発光層8に含まれていてもよい。発光層8は、ヘキサンまたはトルエン等の溶媒に量子ドット16を分散させた分散液から、スピンコート法、またはインクジェット法等によって製膜することができる。分散液にはチオール、アミン等分散材料を混合してもよい。発光層8の膜厚は、5~50nmが好ましい。
【0018】
量子ドット16は、価電子帯準位と伝導帯準位とを有し、価電子帯準位の正孔と伝導帯準位の電子との再結合によって発光する発光材料である。量子ドット16からの発光は、量子閉じ込め効果により狭いスペクトルを有するため、比較的深い色度の発光を得ることが可能である。
【0019】
本実施形態において、量子ドット16は、コア18と、当該コア18の外殻であるシェル20とを有する、コア/シェル構造を備えている。コア18は、シェル20のバンドギャップの範囲内にバンドギャップが含まれる半導体材料粒子である。コア18は、II-IV族型半導体材料、あるいは、III-V族型半導体材料を含んでいてもよい。シェル20は、II-IV族型半導体材料を含んでいる。
【0020】
量子ドット16は、例えば、コアにCdSe、シェルにZnSを備えていてもよい。この他、量子ドット16は、当該分野において利用される材料から適宜選択されてもよく、例えば、CdSe/CdS、InP/ZnS、ZnSe/ZnSまたはCIGS/ZnS等をコア/シェル構造として有していてもよい。
【0021】
量子ドット16の粒径は3~15nm程度である。量子ドット16からの発光の波長は、コア18の粒径によって制御することができる。このため、コア18の粒径を制御することにより、発光デバイス1が発する光の波長を制御できる。なお、発光層8は、さらに、量子ドット16のシェル20と配位結合するリガンドを備えていてもよい。
【0022】
電子輸送層10は、カソード12からの電子を発光層8へと輸送する層である。電子輸送層10は、正孔の輸送を阻害する機能を有していてもよい。電子輸送層10は、例えば、ZnO、TiO2、Ta2O3、またはSrTiO3等を含んでいてもよく、スパッタ法によって製膜されてもよい。電子輸送層10の膜厚は、従来公知の膜厚を採用でき、10~100nmが好ましい。
【0023】
正孔輸送層6は、アノード4からの正孔を発光層8へと輸送する層である。本実施形態において、正孔輸送層6は、n+型半導体層24と、p+型半導体層26と、p型半導体層28とを、下層からこの順に備える。他の実施形態に係る発光素子においては、アレイ基板の上層にカソードを備え、発光層上の正孔輸送層が、p型半導体層と、p+型半導体層と、n+型半導体層とを、下層からこの順に備える発光素子であってもよい。n+型半導体層24とp+型半導体層26とは、互いに接合しており、p+型半導体層26とp型半導体層28とは互いに接合している。
【0024】
本明細書において、「p型」半導体は、ポジティブ(positive)型の半導体のうち、電気伝導度が金属よりも低いオーダーの半導体を意味する。「p+型」半導体は、ポジティブ型の半導体のうち、電気伝導度が金属と同じオーダーの半導体を意味する。同様に、「n型」半導体は、ネガティブ(negative)型の半導体のうち、電気伝導度が金属よりも低いオーダーの半導体を意味し、「n+型」半導体は、ネガティブ型の半導体のうち、電気伝導度が金属と同じオーダーの半導体を意味する。また、「i型」半導体は、真性(intrinsic)半導体を意味する。
【0025】
n+型半導体層24は、母材として、第1のII-VI族半導体を含む。第1のII-VI族半導体は、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、CdTe、ZnTe、ZnCdSe、ZnCdS、ZnCdTe、ZnSeS、CdSeS、ZnTeS、ZnTeSe、CdTeS、CdTeSeから構成される群から選択される、少なくとも1種以上を含み得る。
【0026】
n+型半導体層24はさらに、13族元素および17族元素から選択される第1のドーパントを含み、これによってn+型半導体層24の伝導型とキャリア濃度とが制御されてもよい。第1のドーパントは、Al、In、Gaなどの13族元素およびCl、Br、Iなどの15族元素から選択される少なくとも1種以上を含み得る。第1のドーパントの添加量は、1.00E+17[cm-3]~1.00E+23[cm-3]であることが好ましく、1.00E+18[cm-3]~1.00E+19[cm-3]であることがより好ましい。
【0027】
あるいは、n+型半導体層24における第1のII-VI族半導体は、ストイキオメトリー(化学量論組成,stoichiometry)の状態に対して、II族元素が過剰であり、これによってn+型半導体層24の伝導型とキャリア濃度とが制御されてもよい。一例として、第1のII-VI族半導体は、CdとVI族元素とを含み、ストイキオメトリーの状態よりも前記VI族元素に対して、Cdの含有比率が大きい。このような第1のII-VI族半導体は、CdS、CdSe、CdTe、ZnCdSe、ZnCdS、ZnCdTe、CdSeS、CdTeS、CdTeSeから構成される群から選択される、少なくとも1種以上を含み得る。II族元素の濃度とVI族元素の濃度との差は、1.00E+17[cm-3]~1.00E+23[cm-3]であることが好ましく、1.00E+18[cm-3]~1.00E+19[cm-3]であることがより好ましい。
【0028】
あるいは、n+型半導体層24が第1のドーパントを含むと共に、n+型半導体層24の第1のII-VI族半導体でII族元素が過剰であり、これらによって、n+型半導体層24の伝導型とキャリア濃度とが制御されてもよい。
【0029】
n+型半導体層24の厚みは、トンネル効果が起きない程度であると共に、量子井戸を成し得る程度である。n+型半導体層24の厚みは、5nm~50nmであることが好ましく、5nm~10nmであることがより好ましい。
【0030】
n+型半導体層24は、例えば、予めn型不純物をドープした材料をターゲットとしたスパッタ法により、アノード4上またはp+型半導体層26上に成膜することにより形成される。また、n+型半導体層24は、例えば、ナノ粒子化したn型半導体材料を塗布することにより形成してもよい。なお、n+型半導体層24は、上述のスパッタ法を、n型不純物をドープしつつ実行することにより形成してもよい。これらに限らず、任意の方法でn+型半導体層24を形成してもよい。
【0031】
p+型半導体層26は、母材として、第2のII-VI族半導体を含む。第2のII-VI族半導体は、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、CdTe、ZnTe、ZnCdSe、ZnCdS、ZnCdTe、ZnSeS、CdSeS、ZnTeS、ZnTeSe、CdTeS、CdTeSeから構成される群から選択される、少なくとも1種以上を含み得る。p+型半導体層26の第2のII-VI族半導体は、n+型半導体層24の第1のII-VI族半導体と同じ元素の組合せから成る半導体であることが好ましい。例えば、n+型半導体層24の第1のII-VI族半導体がZnSである場合、p+型半導体層26の第2のII-VI族半導体もZnSである。また、n+型半導体層24の第1のII-VI族半導体がZnCdSである場合、p+型半導体層26の第2のII-VI族半導体もZnCdSである。
【0032】
p+型半導体層26はさらに、1族元素および11族元素、15族元素から選択される第2のドーパントを含み、これによってp+型半導体層26の伝導型とキャリア濃度とが制御されてもよい。第2のドーパントは、NおよびPなどの15族元素、CuおよびAgなどの電子配置が4s1の遷移金属、ならびにLiおよびNaなどのアルカリ金属から選択される1種以上を含み得る。第2のドーパントの添加量は、1.00E+17[cm-3]~1.00E+23[cm-3]であることが好ましく、1.00E+18[cm-3]~1.00E+19[cm-3]であることがより好ましい。第2のドーパントの添加量は、第1のドーパントの添加量と同程度であることが好ましい。
【0033】
p+型半導体層26の厚みは、トンネル効果が起きない程度であり、5nm~50nmであることが好ましく、4.5nm~10nmであることがより好ましい。加えて、p+型半導体層26の厚みは、n+型半導体層24の厚みと同程度であることが好ましい。具体的には、n+型半導体層24の厚みの80%~125%であることが好ましく、90%~100%であることがより好ましい。
【0034】
p+型半導体層26は、例えば、予めp型不純物をドープした材料をターゲットとしたスパッタ法により、n+型半導体層24上またはp型半導体層28上に成膜することにより形成される。また、p+型半導体層26は、例えば、ナノ粒子化したp型半導体材料を塗布することにより形成してもよい。なお、p+型半導体層26は、上述のスパッタ法を、p型不純物をドープしつつ実行することにより形成してもよい。これらに限らず、任意の方法でp+型半導体層26を形成してもよい。また、他の実施形態に係る発光素子において、p型半導体層28が省略され、p+型半導体層26は、n+型半導体層24上または発光層8上に製膜して形成されてもよい。
【0035】
p+型半導体層26とn+型半導体層24との間に、パッシベーション膜などの電子またはホールがトンネル可能な薄い絶縁層が形成されてもよい。また、他の実施形態に係る発光素子において、p+型半導体層26とp型半導体層28または発光層8との間に、パッシベーション膜などの電子またはホールがトンネル可能な薄い絶縁層が形成されてもよい。本明細書において、「隣接」は、直接接合している構成と、トンネル可能な薄層を介して接合している構成と、の両方を包含する。
【0036】
p型半導体層28は、母材として、第3のII-VI族半導体を含む。第3のII-VI族半導体は、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、CdTe、ZnTe、ZnCdSe、ZnCdS、ZnCdTe、ZnSeS、CdSeS、ZnTeS、ZnTeSe、CdTeS、CdTeSeから構成される群から選択される、少なくとも1種以上を含み得る。p型半導体層28の第3のII-VI族半導体は、p+型半導体層26の第2のII-VI族半導体と同じ元素の組合せから成る半導体であることが好ましい。
【0037】
p型半導体層28はさらに、1族元素および11族元素、15族元素から選択される第3のドーパントを含み、これによってp型半導体層28の伝導型とキャリア濃度とが制御されてもよい。第3のドーパントは、NおよびPなどの15族元素、CuおよびAgなどの電子配置が4s1の遷移金属、ならびにLiおよびNaなどのアルカリ金属から選択される1種以上を含み得る。第3のドーパントは、第2のドーパントと同じ元素を含むことが好ましい。p型半導体層28における第3のII-VI族半導体に対する前記第3のドーパントの濃度は、p+型半導体層26における第2のII-VI族半導体に対する第2のドーパントの濃度よりも低い。その結果、p型半導体層28のキャリア濃度は、p+型半導体層26のキャリア濃度よりも低い。第3のドーパントの添加量は、1.00E+18[cm-3]~1.00E+20[cm-3]であることが好ましく、1.00E+18[cm-3]~1.00E+19[cm-3]であることがより好ましい。
【0038】
p型半導体層28の厚みは、n+型半導体層24およびp+型半導体層26の厚みよりも薄いとともに、トンネル効果が起きない程度であることが好ましい。具体的には、5nm~20nmであることが好ましく、5nm~8nmであることがより好ましい。なお、正孔輸送層6全体の厚みは、電気抵抗の増大を抑制するために、100nm以下であることが好ましく、75nm以下であることがより好ましい。
【0039】
p型半導体層28も、p+型半導体層26と同様に様々な方法により形成され得る。p型半導体層28を形成する方法は、p+型半導体層26を形成する方法と同じでも異なってもよい。
【0040】
ここで、シェル20が含むII-IV族型半導体材料を第4のII-IV族型半導体とする。この場合、第1~3のII-IV族型半導体は、第4のII-IV族型半導体と同じ元素の組合せから成っても、第4のII-IV族型半導体に含まれるII族元素よりも、周期表において下位の周期に属するII族元素を有してもよい。p+型半導体層26の第2のII-IV族型半導体は、第4のII-IV族型半導体と同じ元素の組み合わせから成ることが好ましい。一方、n+型半導体層24の第1のII-IV族型半導体は、第4のII-IV族型半導体に含まれるII族元素よりも、周期表において下位の周期に属するII族元素を有することが好ましい。例えば、シェル20がZnを含む場合、n+型半導体層24は、Znよりも下位のCdを含むことが好ましい。
【0041】
前述したように、(i)p+型半導体層26の第2のII-VI族半導体は、n+型半導体層24の第1のII-VI族半導体と同じ元素の組合せから成ることが好ましく、(ii)p型半導体層28の第3のII-VI族半導体は、p+型半導体層26の第2のII-VI族半導体と同じ元素の組合せから成ることが好ましい。したがって、第1~4のII-IV族型半導体は、次の3つの組合せの何れかであることが好ましい。1つ目の組合せにおいて、第1~3のII-IV族型半導体が、第4のII-VI族半導体と同じ元素の組合せから成る。2つ目の組合せにおいて、第1~3のII-IV族型半導体が、互いと同じ元素の組合せから成ると共に、第4のII-IV族型半導体に含まれるII族元素よりも、周期表において下位の周期に属するII族元素を有する。3つ目の組合せにおいて、第1のII-IV族型半導体が、第4のII-IV族型半導体に含まれるII族元素よりも、周期表において下位の周期に属するII族元素を有すると共に、第2~3のII-IV族型半導体が、第4のII-VI族半導体と同じ元素の組合せから成る。
【0042】
(発光素子のエネルギーバンド)
次に、本実施形態に係る発光素子2の各層におけるエネルギーバンドについて、
図2を参照して説明する。
【0043】
図2は、本実施形態に係る発光素子2の各層を積層しない場合におけるフェルミ準位、またはバンドギャップの例を示すエネルギーバンド図である。
【0044】
なお、本明細書のエネルギーバンド図においては、各層の、真空準位を基準としたエネルギー準位を示している。また、本明細書のエネルギーバンド図においては、付した部材番号と対応する部材のフェルミ準位、またはバンドギャップを示す。アノード4およびカソード12についてはフェルミ準位を、正孔輸送層6、発光層8、および電子輸送層10については、電子親和力からイオン化ポテンシャルまでのバンドギャップをそれぞれ示す。ここで、正孔輸送層6については、n+型半導体層24とp+型半導体層26とp型半導体層28とに分けて、それぞれのバンドギャップを示すと共に、それぞれのフェルミ準位24f,26f,28fを示す。また、発光層8については、コア18とシェル20とに分けて、それぞれのバンドギャップを示す。
【0045】
本実施形態において、例えば、正孔輸送層6のn+型半導体層24とp+型半導体層26とp型半導体層28とが母材として同じくZnSを含む場合、正孔輸送層6の各層24,26,28のイオン化ポテンシャルは5.2eVであり、電子親和力は3.2eVである。また、本実施形態において、例えば、電子輸送層10がZnOを含む場合、電子輸送層10のイオン化ポテンシャルは7.0eVであり、電子輸送層10の電子親和力は3.8eVである。また、本実施形態において、例えば、シェル20がZnSを含む場合、シェル20におけるイオン化ポテンシャルは5.2eVであり、電子親和力は3.2eVである。
【0046】
ここで、本実施形態における、各層の材料の組み合わせの例を、表1の実施例1から実施例10に示す。なお、表1における「イオン化ポテンシャル」、および「電子親和力」の欄は、それぞれの準位を、全て真空準位を基準とし、eVを単位として示す。また、表1においては、各層を積層しない状態における数値を記載している。
【0047】
【表1】
表1において、「正孔輸送層」の「母材」の欄の「材料」、「イオン化ポテンシャル」、および「電子親和力」の欄は、各実施例における正孔輸送層6のn+型半導体層24とp+型半導体層26とp型半導体層28とが母材として含む材料と、その材料のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力とをそれぞれ示す。「正孔輸送層」の「ドーパント」の「n+型半導体層」の欄の「材料」および「濃度」の欄は、各実施例におけるn+型半導体層24の第1のドーパントの材料、および当該n+型半導体層24の母材にドープされた第1のドーパントの濃度をそれぞれ示す。同様に、「正孔輸送層」の「ドーパント」の「p+型半導体層」の欄の「材料」および「濃度」の欄は、各実施例におけるp+型半導体層26の第2のドーパントの材料、および当該p+型半導体層26の母材にドープされた第2のドーパントの濃度をそれぞれ示す。同様に、「正孔輸送層」の「ドーパント」の「p型半導体層」の欄の「材料」および「濃度」の欄も同様に、各実施例におけるp型半導体層28の第3のドーパントの材料、および当該p型半導体層28の母材にドープされた第3のドーパントの濃度をそれぞれ示す。「量子ドット」の「シェル」の欄の「材料」、「イオン化ポテンシャル」、および「電子親和力」の欄は、各実施例における量子ドット16のコア18を覆うシェル20の材料と、その材料のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力とをそれぞれ示す。
【0048】
なお、表1に示す実施例1~10において、n+型半導体層24とp+型半導体層26とp型半導体層28とが母材として含む材料が、シェル20の材料と同一であるが、本発明の範囲はこれに限らない。n+型半導体層24とp+型半導体層26とp型半導体層28とが母材として含む材料は、シェル20の材料と異なっても良く、互いに異なってもよい。
【0049】
図3は、本実施形態に係る発光素子2の各層を積層した場合におけるフェルミ準位、またはバンドギャップの例を示すエネルギーバンド図である。
【0050】
本実施形態においては、各層を積層した発光素子2において、アノード4、発光層8、電子輸送層10、およびカソード12のフェルミ準位、またはバンドギャップは、単体の状態の各準位またはバンドギャップからほとんど変化しない。しかしながら、各層を積層した発光素子2における正孔輸送層6では、隣接によってフェルミ準位とバンドギャップとが変化する。正孔輸送層6では、n+型半導体層24とp+型半導体層26とが互いとpn接合して隣接し、p+型半導体層26とp型半導体層28とが互いと隣接する。これらの隣接によって、
図3に示すように、n+型半導体層24とp+型半導体層26とp型半導体層28とのそれぞれの電子親和力とイオン化ポテンシャルとが変化する。同時に、空乏層30が、n+型半導体層24とp+型半導体層26とに跨って生じ、空乏層32が、p+型半導体層26とp型半導体層28とに跨って生じる。
【0051】
具体的には、上述の隣接により、n+型半導体層24からp+型半導体層26へ電子が大量に拡散し、p+型半導体層26からn+型半導体層24へ正孔が大量に拡散する。また、p型半導体層28からp+型半導体層26へ電子が拡散し、p+型半導体層26からp型半導体層28へ正孔が拡散する。これらの拡散は、n+型半導体層24とp+型半導体層26とp型半導体層28とのフェルミ準位24f,26f,28fが互いに一致する熱平衡状態に達するまで、続く。
【0052】
n+型半導体層24単体のキャリア密度も、p+型半導体層26単体のキャリア密度も、非常に大きい。このため、n+型半導体層24とp+型半導体層26との隣接は、n+型半導体層24とp+型半導体層26とのそれぞれの電子親和力とイオン化ポテンシャルとの両方を、大きく変化させる。
【0053】
具体的には、n+型半導体層24の電子親和力とイオン化ポテンシャルとは、n+型半導体層24とp+型半導体層26との界面からn+型半導体層24とアノード4との界面に向って、大きく変化している。同様に、p+型半導体層26の電子親和力とイオン化ポテンシャルとは、n+型半導体層24とp+型半導体層26との界面からp+型半導体層26とp型半導体層28との界面に向って、大きく変化する。
【0054】
p型半導体層28単体のキャリア密度は、p+型半導体層26単体のキャリア密度と比較して非常に小さい。このため、p+型半導体層26とp型半導体層28との隣接は、p+型半導体層26とp型半導体層28のそれぞれの電子親和力とイオン化ポテンシャルとを変化させ、p+型半導体層26の方をp型半導体層28よりも大きく変化させる。
【0055】
具体的には、p+型半導体層26の電子親和力とイオン化ポテンシャルとは、p+型半導体層26とp型半導体層28との界面からn+型半導体層24とp+型半導体層26との界面に向って、大きく変化している。対して、p型半導体層28の電子親和力とイオン化ポテンシャルとは、p+型半導体層26とp型半導体層28との界面付近においてのみ、小さく変化する。
【0056】
表2は、本実施形態に係る発光素子2におけるn+型半導体層24およびp+型半導体層26の、上述の拡散によるフェルミ準位24f,26fの準位変化量と、熱平衡状態におけるイオン化ポテンシャルおよび電子親和力とを示す表である。なお、表2における数値の単位は何れもeVであり、表2における各実施例は、表1の各実施例に対応する。
【0057】
【表2】
表2に示すように、何れの実施例においても、積層前と比較して、積層後における、
n+型半導体層24のイオン化ポテンシャルと電子親和力とは、p+型半導体層26のイオン化ポテンシャルと電子親和力とよりも大きい。
【0058】
(発光素子の効果)
本実施形態に係る発光素子2の効果について、
図4に示す比較形態に係る発光素子102のエネルギーバンド図と、
図3,
図5に示す本実施形態に係る発光素子2のエネルギーバンド図とを比較して説明する。
【0059】
図4に示す比較形態に係る発光素子102は、本実施形態に係る正孔輸送層6の代わりに、比較形態に係る正孔輸送層106を備える点においてのみ、
図3に示す本実施形態に係る発光素子2と構成が異なる。比較形態に係る正孔輸送層106は、金属酸化物半導体(ストイキオメトリーの状態にあるNiO)を含むp型半導体層の単層であり、イオン化ポテンシャルは5.6eVであり、電子親和力は2.1eVである。したがって、比較形態に係る発光素子102の各層の準位は、正孔輸送層106を除いて、本実施形態に係る発光素子2の各層を積層する前の、単体の準位とそれぞれ同一であると見なせる。
【0060】
比較形態に係る発光素子のアノード4とカソード12との間に電位差が生じると、アノード4側から正孔輸送層106へ正孔が、カソード12側から電子輸送層10へ電子が注入される。その後、正孔輸送層106に注入された正孔と電子輸送層10に注入された電子とは、発光層8の量子ドット16のシェル20を介して、コア18まで到達する。コア18において、正孔と電子とが再結合することにより、励起子が生成される。
【0061】
ここで、正孔輸送層106の電子親和力は、シェル20の電子親和力よりも大きい場合、
図4の矢印E1に示すように、さらにシェル20を介して正孔輸送層106に輸送される電子がブロックされる。これにより、発光層8にとどまる電子の濃度が高くなり、発光効率が改善する。
【0062】
しかしながら、比較形態においては、アノード4のフェルミ準位と、正孔輸送層106のイオン化ポテンシャルとの差が比較的大きい。このため、
図4において、矢印H1にて示す、アノード4から正孔輸送層106への正孔注入の障壁が比較的大きくなる。
【0063】
さらに、比較形態においては、正孔輸送層106のイオン化ポテンシャルが、シェル20のイオン化ポテンシャルよりも大きい。このために、正孔輸送層106における正孔の濃度が比較的低くなっている。このため、比較形態に係る発光素子においては、
図4において、矢印H2にて示す、正孔輸送層106からシェル20への正孔注入効率が改善されていない。
【0064】
したがって、比較形態に係る発光素子102においては、上述した正孔注入の障壁のために、発光層8への正孔の注入効率が低減する。ゆえに、発光層8におけるキャリアバランスが悪くなり、発光層8における非発光過程が増大するために、発光素子102全体の外部量子効率が悪化する。
【0065】
正孔注入の効率を改善するのみであれば、正孔輸送層106の材料に、バンドギャップのより小さい材料を採用すればよい。しかしながら、正孔輸送層106のバンドギャップを単純に小さくするのみでは、発光層8からアノード4への電子輸送を、正孔輸送層106がブロックしにくくなるため、発光素子102の外部量子効率の改善につながらない場合がある。
【0066】
さらに、正孔輸送層106のバンドギャップを単純に小さくするのみでは、正孔注入の効率の限定的な改善しか見込めない。なぜならば、アノード4から発光層8までの正孔輸送効率の改善余地は、アノード4と発光層8とのイオン化エネルギーの差によって制約されているからである。アノード4から発光層8までの正孔輸送効率は、アノード4から発光層8までの各層間のイオン化ポテンシャルの差が大きいほど、その差の総和が大きいほど、低い。アノード4と発光層8とが非常に異なるイオン化エネルギーを有する。
【0067】
本実施形態に係る発光素子2では、アノード4から発光層8までの正孔輸送を行わない。代わりに、本実施形態に係る発光素子2では
図2に示すように、正孔輸送層6のp+型半導体層26からアノード4までの電子輸送と、正孔輸送層6のp+型半導体層26から発光層8までの正孔輸送と、を組合せて行う。これについて、以下に詳述する。
【0068】
図5は、左側に(a)本実施形態に係る発光素子2に駆動電圧を印加した場合における各層のエネルギーバンド図を示し、右側に(b)空乏層30および空乏層32近傍のエネルギーバンド図を拡大して示す。本実施形態に係る発光素子2においても、比較形態に係る発光素子102と同様に、正孔と電子との輸送が生じ、発光層8における励起子の生成が発生する。ただし、正孔輸送層6からシェル20への正孔注入は、正孔輸送層6において生じる共鳴トンネル効果によって、生じる。発光素子2の駆動電圧は、アノード4に正電圧を印加し、カソード12に負電圧を印加する。このような駆動電圧は、n+型半導体層24とp+型半導体層26との隣接に対して、逆方向バイアスであり、p+型半導体層26とp型半導体層28との隣接に対して、順方向バイアスである。
【0069】
本実施形態においては、
図3に示すように、n+型半導体層24とp+型半導体層26とのpn接合により、n+型半導体層24の電子親和力が低減し、p+型半導体層26の電子親和力が増大している。
図5の(a)に示すように、駆動電圧を印加している間、n+型半導体層24の電子親和力がさらに低減し、n+型半導体層24の電子親和力とp+型半導体層26の電子親和力との差が非常に大きい。このため、
図5の(a)の矢印E3にて示すp+型半導体層26からn+型半導体層24への電子輸送の効率が、電子親和力の準位不整合により低減される。加えて、p+型半導体層26およびp型半導体層28のキャリアは正孔なので、
図5の(a)の矢印E4にて示すシェル20からp型半導体層28およびp+型半導体層26を通る電子輸送は、界面の障壁を超えなければならないため困難である。したがって、発光層8からアノード4への電子輸送をブロックする機能を、正孔輸送層6が保持する。
【0070】
本実施形態においては、
図3に示すように、n+型半導体層24とp+型半導体層26のpn接合により、n+型半導体層24の電子親和力が低減し、p+型半導体層26のイオン化ポテンシャルが増大している。この結果、積層前と比較して、積層後におけるn+型半導体層24の電子親和力とp+型半導体層26のイオン化ポテンシャルとの間の準位差が縮小している。
図5の(a)に示すように、駆動電圧を印加している間、n+型半導体層24の電子親和力がさらに低減する。この結果、n+型半導体層24の電子親和力とp+型半導体層26のイオン化ポテンシャルとの間の準位差が逆転し、n+型半導体層24の伝導帯準位とp+型半導体層26の価電子帯準位とが交錯する。空乏層30はトンネル効果が起きる程度に薄い。この交錯とこのトンネル効果によって、
図5の(a)および(b)に矢印E5にて示す電子の引き抜きが発生しやすい。
図5の(a)および(b)の矢印E5は、p+型半導体層26の価電子帯準位にある電子が、空乏層30をトンネルして、n+型半導体層24の伝導帯準位に引き抜かれる引き抜きを示す。この引き抜きの結果、p+型半導体層26に正孔が生じる。
【0071】
本実施形態においては、
図5の(a)および(b)に示すように、p+型半導体層26とp型半導体層28とを跨ぐ空乏層32は、駆動電圧を印加している間も解消されない。この結果、
図5の(a)および(b)に矢印H3にて示す、p+型半導体層26からp型半導体層28への正孔注入が、それのみでは困難である。
【0072】
一方で、空乏層30,32はトンネル効果が起きる程度に薄く、かつ、前述のように、n+型半導体層24の厚みは量子井戸を成し得る程度である。これらによって、n+型半導体層24とp型半導体層28との間で、共鳴トンネル効果が生じ得る。さらに、駆動電圧を印加している間、p+型半導体層26の価電子帯準位と同様にp型半導体層28の価電子帯準位も、n+型半導体層24の伝導帯準位と交錯している。したがって、共鳴トンネル効果によって、
図5の(a)および(b)に矢印E6にて示す、p型半導体層28の価電子帯準位からn+型半導体層24の伝導帯準位への電子の引き抜きが、容易に発生する。この引き抜きの結果、p型半導体層28に正孔が生じる。
【0073】
また、p型半導体層28のイオン化ポテンシャルとシェル20のイオン化ポテンシャルとが、実質的に同一である。このため、
図5の(a)に矢印H4にて示す、p型半導体層28からシェル20への正孔注入も容易である。
【0074】
本実施形態においては、
図5の(a)に矢印E7にて示すように、n+型半導体層24からアノード4へ電子が輸送される。この輸送は、n+型半導体から金属への電子の輸送なので容易である。
【0075】
以上のように、
図5の(a)に矢印E7にて示す電子輸送と、
図5の(a)および(b)に矢印E6にて示す電子の引き抜きと、
図5の(a)に矢印H4にて示す正孔注入と、の効率は、何れも非常に高い。したがって、正孔輸送層6のp+型半導体層26からアノード4までの電子輸送効率も、正孔輸送層6のp+型半導体層26から発光層8までの正孔輸送効率も、非常に高い。また、発光層8からアノード4への電子輸送をブロックする機能を、正孔輸送層6が保持する。
【0076】
したがって、本実施形態に係る発光素子2においては、発光層8への正孔の注入効率が改善し、発光層8におけるキャリアバランスが改善し、発光層8における発光過程が増大する。このため、発光素子2全体の外部量子効率が改善する。さらに、アノード4と発光層8とのイオン化エネルギーの差による制約を受けないため、本実施形態に係る発光素子2は、発展性が高い。
【0077】
本実施形態においては、何れの実施例においても、正孔輸送層6のn+型半導体層24とp+型半導体層26とp型半導体層28とが母材として含む材料は、シェル20の材料と同一の材料である。しかしながら、n+型半導体層24の材料は、シェル20の材料に含まれるII族元素よりも、周期表において下位の周期に属するII族元素を有する、II-IV族型半導体材料であることが好ましい。当該構成によれば、n+型半導体層24であるII-IV族型半導体は、シェル20の材料よりイオン半径が大きい元素を含む。したがって、n+型半導体層24においては、価電子軌道の結合が相対的に弱く、価電子帯頂上のエネルギー、すなわちイオン化ポテンシャルが小さくなる。この結果、n+型半導体層24の伝導帯準位にp+型半導体層26の価電子帯準位とp型半導体層28の価電子帯準位とが、より交錯し、
図5の(a)および(b)の矢印E5,E6にて示す電子の引き抜きが、より発生しやすくなる。
【0078】
(変形例)
本実施形態に係る発光デバイス1は、様々な変更および改善などが可能である。
【0079】
n+型半導体層24は、第1のII-VI族半導体の代わりに、第1の金属酸化物半導体を含んでもよい。第1の金属酸化物半導体は、IIA族、VIB族、およびVIIIB族の内の何れかの元素の酸化物を含み得る。すなわち、第1の金属酸化物半導体は、6族、8~10族、および12族の内の何れかの元素の酸化物を含み得る。例えば、第1の金属酸化物半導体は、MgO、Cr2O3、または、NiOなどが挙げられる。
【0080】
第1の金属酸化物半導体は、ストイキオメトリーの状態に対して、酸素原子が不足であり、これによって、n+型半導体層24の伝導型とキャリア濃度とが制御される。酸素の欠損量は、金属元素に対して、1.00E+17[cm-3]~1.00E+23[cm-3]であることが好ましく、1.00E+18[cm-3]~1.00E+19[cm-3]であることがより好ましい。
【0081】
p+型半導体層26は、第2のII-VI族半導体の代わりに、第2の金属酸化物半導体を含んでもよい。第2の金属酸化物半導体は、IIA族、VIB族、およびVIIIB族の内の何れかの元素の酸化物を含み得る。すなわち、第2の金属酸化物半導体は、6族、8~10族、および12族の内の何れかの元素の酸化物を含み得る。例えば、第2の金属酸化物半導体は、MgO、Cr2O3、または、NiOなどが挙げられる。また、第2の金属酸化物半導体は、第1の金属酸化物半導体が含む金属酸化物半導体と同じ元素の組合せからなる同じ金属酸化物半導体を含んでもよい。
【0082】
第2の金属酸化物半導体は、ストイキオメトリーの状態に対して、酸素原子が過剰であり、これによって、p+型半導体層26の伝導型とキャリア濃度とが制御される。酸素の過剰量は、金属元素に対して、1.00E+17[cm-3]~1.00E+23[cm-3]であることが好ましく、1.00E+18[cm-3]~1.00E+19[cm-3]であることがより好ましい。
【0083】
図6および
図7は各々、本実施形態に係る発光デバイス1の一変形例の概略断面図である。本実施形態に係る発光素子2は、
図6に示すように、p型半導体層28を備えなくてもよい。あるいは、本実施形態に係る発光素子2は、
図7に示すように、p型半導体層28の代わりに、第3のII-VI族半導体を含むi型半導体層38を備えてもよい。しかしながら、発光素子2は、p型半導体層28を備える方が好ましい。その理由は、p+型半導体層26がシェル20に接触する構成よりも、p型半導体層28がシェル20に接触する構成の方が、正孔輸送層6とシェル20との接合界面付近におけるイオン化エネルギーの差が小さいからである。もう一つの理由は、i型半導体層38よりもp型半導体層28の方が電気抵抗が小さい、すなわち、i型半導体層38よりもp型半導体層28の方が正孔輸送効率が高いからである。
【0084】
〔実施形態2〕
図8は、本実施形態に係る発光デバイス1の概略断面図である。本実施形態に係る発光デバイス1は、前実施形態に係る発光デバイス1と比較して、正孔輸送層6と発光層8との間に、不導体層22を備えた点を除いて、同一の構成を有する。
【0085】
不導体層22は、キャリアをほとんど有さず、電気伝導性が著しく乏しい物体を指す不導体を含む。不導体は、一般に、絶縁体または誘電体とも呼称される。具体的には、例えば、不導体層22は、Al2O3、SiN、SiO2、SiON、およびCr2O3から構成された群の内、少なくとも1種を含む。不導体層22は、正孔輸送層6と発光層8との双方と接触している。
【0086】
本実施形態に係る発光素子2においても、前実施形態に係る発光素子2と同様に、正孔と電子との輸送が生じ、発光層8における励起子の生成が発生する。ただし、正孔輸送層6からシェル20への正孔注入は、不導体層22において生じるトンネル効果によって、正孔が不導体層22をトンネルすることにより生じる。
【0087】
本実施形態に係る発光素子2の効果について、
図9に示す前実施形態に係る発光素子2のエネルギーバンド図と、
図10に示す本実施形態に係る発光素子2のエネルギーバンド図とを比較して説明する。
図9および
図10は、それぞれ、前実施形態および本実施形態に係る発光素子2のエネルギーバンド図を、正孔輸送層6のp型半導体層28からシェル20までの、イオン化ポテンシャル付近のみを抜き出して図示した拡大図である。
【0088】
前実施形態においては、正孔輸送層6と発光層8とが直接接している。ここで、正孔輸送層6と発光層8と接触は、半導体同士の接触である。また、本実施形態に係る発光素子2においては、一般的な無機半導体発光素子のように、エピタキシャル成長を用いて積層構造を作製しない。したがって、本実施形態においては、発光素子2の各層の表面および界面における準位の発生を避けることが困難である。このため、正孔輸送層6とシェル20との界面においては、界面準位が形成される。
【0089】
したがって、正孔輸送層6とシェル20との界面においては、
図9に示すように、キャリアトラップCTが形成される。キャリアトラップCTに、アノード4から輸送されてきた正孔がトラップされると、発光層8に輸送される正孔の濃度が低減し、発光層8におけるキャリアバランスが悪化する場合がある。
【0090】
一方、実施形態においては、
図10に示すように、正孔輸送層6と発光層8との間に、不導体層22が形成されている。正孔輸送層6と不導体層22との接触、および不導体層22と発光層8との接触は、いずれも半導体と不導体との接触となる。
【0091】
このため、本実施形態においては、正孔輸送層6と不導体層22との界面、および不導体層22と発光層8と界面において、界面準位を不活性化し、ひいては、キャリアトラップCTが生じることを低減できる。したがって、アノード4から輸送されてきた正孔が、キャリアトラップCTにトラップされることが低減されるため、発光層8におけるキャリアバランスがさらに改善する。
【0092】
本実施形態において、不導体層22をより確実に成膜し、不導体層22におけるキャリアトラップを低減する観点から、不導体層22の膜厚は1nm以上であることが好ましい。また、本実施形態において、不導体層22における正孔のトンネル効果が十分に得られるように、不導体層22の膜厚は5nm以下であることが好ましい。
【0093】
(変形例)
図11および
図12は各々、本実施形態に係る発光デバイス1の一変形例の概略断面図である。
【0094】
本実施形態に係る発光デバイス1は、前述の実施形態1に係る発光デバイス1と同様に、様々な変更および改善などが可能である。例えば、本実施形態に係る発光素子2は、
図11に示すように、不導体層22を備えつつ、p型半導体層28を備えなくてもよい。あるいは、本実施形態に係る発光素子2は、
図12に示すように、不導体層22を備えつつ、p型半導体層28の代わりに、第3のII-VI族半導体を含むi型半導体層38を備えてもよい。
【0095】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る発光素子は、アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置され、量子ドットを含む発光層と、前記発光層と前記アノードとの間に配置された正孔輸送層と、を備え、前記正孔輸送層は、n+型半導体層と、前記n+型半導体層に隣接し、前記n+型半導体層に対して前記発光層の側に配置されたp+型半導体層と、を含む構成である。
【0096】
本発明の態様2に係る発光素子は、上記態様1に係る発光素子であって、前記n+型半導体層は、第1のII-VI族半導体と、13族元素および17族元素から選択される第1のドーパントと、を含む構成であってよい。
【0097】
本発明の態様3に係る発光素子は、上記態様2に係る発光素子であって、前記第1のII-VI族半導体は、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、CdTe、ZnTe、ZnCdSe、ZnCdS、ZnCdTe、ZnSeS、CdSeS、ZnTeS、ZnTeSe、CdTeS、CdTeSeから構成される群から選択される、少なくとも1種以上を含む、構成であってよい。
【0098】
本発明の態様4に係る発光素子は、上記態様2または3に係る発光素子であって、前記第1のドーパントは、Al、In、Ga、Cl、Br、Iから選択される少なくとも1種以上を含む構成であってよい。
【0099】
本発明の態様5に係る発光素子は、上記態様1~4のいずれか1態様に係る発光素子であって、前記n+型半導体層は、第1のII-VI族半導体を含み、前記第1のII-VI族半導体は、ストイキオメトリーの状態に対して、II族元素が過剰である構成であってよい。
【0100】
本発明の態様6に係る発光素子は、上記態様5に係る発光素子であって、前記第1のII-VI族半導体は、Cdと、VI族元素と、を含み、前記VI族元素に対して、Cdの含有比率が大きい構成であってよい。
【0101】
本発明の態様7に係る発光素子は、上記態様6に係る発光素子であって、前記第1のII-VI族半導体は、CdS、CdSe、CdTe、ZnCdSe、ZnCdS、ZnCdTe、CdSeS、CdTeS、CdTeSeから構成される群から選択される、少なくとも1種以上を含む構成であってよい。
【0102】
本発明の態様8に係る発光素子は、上記態様1に係る発光素子であって、前記n+型半導体層と前記p+型半導体層とは、同じ元素の組合せからなる同じ金属酸化物半導体を含み、前記n+型半導体層に含まれる前記金属酸化物半導体は、ストイキオメトリーの状態に対して、酸素原子が不足であり、前記p+型半導体層に含まれる前記金属酸化物半導体は、ストイキオメトリーの状態に対して、酸素原子が過剰である構成であってよい。
【0103】
本発明の態様9に係る発光素子は、上記態様1~8の何れか1態様に係る発光素子であって、前記p+型半導体層は、第2のII-VI族半導体と、1族元素および11族元素、15族元素から選択される第2のドーパントと、を含む構成であってよい。
【0104】
本発明の態様10に係る発光素子は、上記態様2~7の何れか1態様に係る発光素子であって、前記p+型半導体層は、第2のII-VI族半導体と、1族元素および11族元素、15族元素から選択される第2のドーパントと、を含み、前記第1のII-VI族半導体と前記第2のII-VI族半導体とは、互いに同じ元素の組み合わせからなる半導体である構成であってよい。
【0105】
本発明の態様11に係る発光素子は、上記態様9または10に係る発光素子であって、
前記第2のII-VI族半導体は、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、CdTe、ZnTe、ZnCdSe、ZnCdS、ZnCdTe、ZnSeS、CdSeS、ZnTeS、ZnTeSe、CdTeS、CdTeSeから構成される群から選択される、少なくとも1種以上を含む構成であってよい。
【0106】
本発明の態様12に係る発光素子は、上記態様9~11の何れか1態様に係る発光素子であって、前記第2のドーパントは、N、P、Cu、Ag、Li、Naから選択される1種以上を含む構成であってよい。
【0107】
本発明の態様13に係る発光素子は、上記態様9~12の何れか1態様に係る発光素子であって、前記正孔輸送層は、前記p+型半導体層に隣接し、前記p+型半導体層に対して前記発光層の側に配置されたi型半導体層を含み、前記i型半導体層は、前記第2のII-VI族半導体と同じ元素の組み合わせからなる第3のII-VI族半導体を含む構成であってよい。
【0108】
本発明の態様14に係る発光素子は、上記態様9~12のいずれか1態様に係る発光素子であって、前記正孔輸送層は、前記p+型半導体層に隣接し、前記p+型半導体層に対して前記発光層の側に配置されたp型半導体層を含み、前記p型半導体層は、前記p型半導体層は、前記第2のII-VI族半導体と同じ元素の組み合わせからなる第3のII-VI族半導体と、1族元素および11族元素、15族元素から選択される第3のドーパントと、を含み、前記p型半導体層における前記第3のII-VI族半導体に対する前記第3のドーパントの濃度は、前記p+型半導体層における前記第2のII-VI族半導体に対する前記第2のドーパントの濃度よりも低い構成であってよい。
【0109】
本発明の態様15に係る発光素子は、上記態様13に係る発光素子であって、前記i型半導体層の厚みは、前記p+型半導体層の厚みよりも薄い構成であってよい。
【0110】
本発明の態様16に係る発光素子は、上記態様14に係る発光素子であって、前記p型半導体層の厚みは、前記p+型半導体層の厚みよりも薄い構成であってよい。
【0111】
本発明の態様17に係る発光素子は、上記態様9~16の何れか1態様に係る発光素子であって、前記量子ドットは、コアと、前記コアを覆うシェルとを含み、前記シェルは、前記第2のII-VI族半導体と同じ元素の組み合わせからなる第4のII-VI族半導体を含む構成であってよい。
【0112】
本発明の態様18に係る発光素子は、上記態様2~4の何れか1態様に係る発光素子であって、 前記n+型半導体層における、前記第1のドーパントの添加量は、1.00E+17[cm-3]~1.00E+23[cm-3]である構成であってよい。
【0113】
本発明の態様19に係る発光素子は、上記態様9~17の何れか1態様に係る発光素子であって、前記p+型半導体層における、前記第2のドーパントの添加量は、1.00E+17[cm-3]~1.00E+23[cm-3]である構成であってよい。
【0114】
本発明の態様20に係る発光素子は、上記態様2~7の何れか1態様に係る発光素子であって、前記量子ドットは、コアと、前記コアを覆うシェルとを含み、前記シェルは、II-VI族半導体から選択される第4のII-VI族半導体を含み、前記第1のII-VI族半導体が含むII族元素は、前記第4のII-VI族半導体が含むII族元素より下位の周期に含まれる構成であってよい。
【0115】
本発明の態様21に係る発光素子は、上記態様14または16に係る発光素子であって、前記第3のドーパントは、前記第2のドーパントと同じ元素を含む構成であってよい。
【0116】
本発明の態様22に係る発光デバイスは、上記態様1~21の何れか1態様に係る発光素子を備える構成である。
【0117】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0118】
1 発光デバイス
2、102 発光素子
4 アノード
6、106 正孔輸送層
8 発光層
10 電子輸送層
12 カソード
16 量子ドット
18 コア
20 シェル
22 不導体層
24 n+型半導体層
26 p+型半導体層
28 p型半導体層
38 i型半導体層