(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】金属空気電池
(51)【国際特許分類】
H01M 12/06 20060101AFI20230720BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20230720BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20230720BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20230720BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20230720BHJP
H01M 50/105 20210101ALN20230720BHJP
【FI】
H01M12/06 F
H01M12/06 B
H01M12/08 K
H01M4/64 A
H01M4/80 Z
H01M4/86 M
H01M4/86 H
H01M50/105
(21)【出願番号】P 2022504966
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2020039443
(87)【国際公開番号】W WO2021176765
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2020035455
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】北川 知
(72)【発明者】
【氏名】吉田 章人
(72)【発明者】
【氏名】水畑 宏隆
(72)【発明者】
【氏名】佐多 俊輔
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-120339(JP,A)
【文献】特開2013-97985(JP,A)
【文献】特開2019-139840(JP,A)
【文献】特開昭61-200672(JP,A)
【文献】特開平11-185835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M12/00-16/00
H01M50/10-50/198
H01M 4/64- 4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体の上に形成されており、酸素還元能を有する触媒層とを有する正極と、
前記正極に対向して配置された負極と、
前記正極及び前記負極を含む積層部を収容しており、前記正極に臨む開口が形成された外装体と、
前記外装体内に配された電解質と、
前記開口を被っており、前記外装体に接合された接合部を有し、酸素を透過させる撥水膜と、
を備え、
前記触媒層は、前記接合部と前記集電体との間に位置する部分を有する、
金属空気電池。
【請求項2】
前記触媒層の厚みが、前記集電体の厚みよりも大きい、
請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項3】
前記触媒層は、前記接合部の前記集電体側の表面の全体を被っている、
請求項1または2に記載の金属空気電池。
【請求項4】
前記集電体は、金属多孔質体により構成されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項5】
前記撥水膜は、多孔質フィルムにより構成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項6】
前記触媒層は、複数の触媒粒子を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項7】
前記触媒層は、前記複数の触媒粒子の間に配された樹脂をさらに含む、
請求項6に記載の金属空気電池。
【請求項8】
前記集電体は、前記触媒層よりも外側に位置している外側部分を有する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項9】
前記集電体の外側部分に電気的に接続されており、前記外装体の外部に引き出されたリードをさらに備える、
請求項1~8のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項10】
前記正極と前記負極との間に配されたセパレータをさらに備える、
請求項1~9のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項11】
前記セパレータは、前記外装体と接合されており、
平面視において、前記セパレータと前記外装体とが接合された部分と、前記撥水膜と前記外装体との接合部との間の距離を100としたきに、前記撥水膜と前記外装体との接合部と前記触媒層の端部との間の距離が20以上である、
請求項10に記載の金属空気電池。
【請求項12】
平面視において、前記撥水膜と前記外装体との接合部と前記集電体の端部との間の距離が20以上である、
請求項11に記載の金属空気電池。
【請求項13】
前記集電体の厚みは、50μm以上500μm以下である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項14】
前記触媒層の厚みは、200μm以上1000μm以下である、
請求項1~13のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項15】
前記撥水膜の厚みは、10μm以上300μm以下である、
請求項1~14のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属空気電池に関する。本出願は、2020年3月3日に日本に出願された特願2020-35455号に優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、金属空気電池の一例が記載されている。特許文献1に記載の金属空気電池は、正極と、負極と、正極と負極との間に配されたセパレータと、電解液と、正極、負極、セパレータ及び電解液を収容する外装体とを有する金属空気電池が記載されている。外装体の正極側の表面には、空気孔が形成されている、外装体と正極との間には、撥水膜が配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属空気電池には、外装体に収容されている電解液の漏洩を抑制したいという要望がある。
【0005】
本開示の主な目的は、電解液の漏洩が抑制された金属空気電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る金属空気電池は、集電体と、集電体の上に形成されており、酸素還元能を有する触媒層とを有する正極と、正極に対向して配置された負極と、正極及び負極を含む積層体を収容しており、正極に臨む開口が形成された外装体と、外装体内に配された電解質と、開口を被っており、外装体に接合された接合部を有し、酸素を透過させる撥水膜とを備え、触媒層は、接合部と集電体との間に位置する部分を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る金属空気電池の模式的平面図である。
【
図2】
図1の線II-IIにおける模式的断面図である。
【
図3】
図1の線III-IIIにおける模式的断面図である。
【
図4】
図1の線IV-IVにおける模式的断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る金属空気電池の一部分を拡大した模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る金属空気電池の模式的平面図である。
図2は、
図1の線II-IIにおける模式的断面図である。
図3は、
図1のIII-IIIにおける模式的断面図である。
図4は、
図1のIV-IVにおける模式的断面図である。
図5は、第1実施形態に係る金属空気電池の一部分を拡大した模式的断面図である。
【0010】
図1~
図5に示す本実施形態に係る金属空気電池1は、一次電池である。本実施形態では、一次電池である金属空気電池の例について説明する。但し、本発明において、金属空
気電池は、一次電池に限定されない。金属空気電池は、たとえば、二次電池であってもよい。
【0011】
図2~
図4に示すように、金属空気電池1は、第1正極10と、第2正極20と、負極30とを備えている。
【0012】
(第1正極10及び第2正極20)
第1正極10は、正極集電体11と、触媒層12とを有する。
【0013】
正極集電体11は、可撓性のシート状部材により構成されている。正極集電体11は、適宜の導電部材により構成することができる。正極集電体11は、例えば、Niなどの金属により形成されていてもよい。正極集電体11は、例えば、金属多孔質体などの多孔質体により構成されていることが好ましい。正極集電体11を多孔質体により構成することにより、触媒層12との接触面積を増やすことができる。これにより、第1正極10の集電効率を上げることができる。
【0014】
正極集電体11の厚みは、特に限定されないが、例えば、50μm以上500μm以下であることが好ましく、100μm以上300μm以下であることがより好ましい。正極集電体11が薄すぎると、正極集電体11の比抵抗が大きくなったり、正極集電体11の機械的強度が低くなったりする場合がある。正極集電体11が厚すぎると、金属空気電池1のエネルギー密度が低くなる場合がある。
【0015】
正極集電体11の上には、触媒層12が形成されている。触媒層12は、酸素還元能を有する。具体的には、触媒層12は、酸素還元能を有する酸素還元触媒を含む。酸素還元触媒としては、例えば、炭素材料や、酸化マンガンなどの金属酸化物、白金(Pt)などの貴金属等が挙げられる。炭素材料としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン等が挙げられる。
【0016】
触媒層12は、例えば、酸素還元触媒を含む複数の触媒粒子12aを含んでいてもよい(
図5を参照)。複数の触媒粒子12aの平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、10nm以上1μm以下であることが好ましく、20nm以上100nm以下であることがより好ましい。
【0017】
触媒層12は、触媒粒子12aの間に配された樹脂等をさらに含んでいてもよい。この場合、樹脂が結着剤として機能し、複数の触媒粒子12a相互間の結着性を向上することができる。好ましく用いられる樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素含有樹脂が挙げられる。
【0018】
触媒層12は、可撓性を有することが好ましい。
【0019】
触媒層12の厚みは、特に限定されないが、例えば、200μm以上1000μm以下であることが好ましく、400μm以上800μm以下であることがより好ましい。
【0020】
第2正極20は、第1正極10と間隔をおいて対向している。第2正極20は、正極集電体21と、触媒層22とを有する。
【0021】
正極集電体21は、正極集電体11と実質的に同様の構成を有する。従って、正極集電体11の説明を正極集電体21に援用するものとする。
【0022】
触媒層22は、触媒層12と実質的に同様の構成を有する。従って、触媒層12の説明を触媒層22に援用するものとする。
【0023】
(負極30)
負極30は、第1正極10と、第2正極20とにそれぞれ第1セパレータ片41と第2セパレータ片42を介して積層されている。負極30は、第1正極10と第2正極20との間に配置されている。負極30の一方面が第1正極10と対向しており、負極30の他方面が第2正極20と対向している。
【0024】
負極30は、負極集電体31と、負極活物質層32、33とを有する。
【0025】
負極集電体31は、可撓性を有するシート状部材により構成されている。負極集電体31は、適宜の導電材料により構成することができる。負極集電体31は、例えば、Cuなどの金属により構成されていてもよい。
【0026】
負極集電体31の両側には、負極活物質層32、33が設けられている。具体的には、負極集電体31の一方面の上に負極活物質層32が設けられており、負極集電体31の他方面の上に負極活物質層33が設けられている。
【0027】
負極活物質層32、33は、それぞれ、負極活物質を含む。
【0028】
負極活物質としては、例えば、カドミウム、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛、スズ、アルミニウム、鉄等の金属やそれらの金属の少なくとも一種を含む合金、上記金属の酸化物等が挙げられる。なかでも、金属空気電池1が亜鉛空気電池の場合、亜鉛や亜鉛合金、酸化亜鉛等が負極活物質として好ましく用いられる。金属空気電池1がマグネシウム空気電池の場合、マグネシウムやマグネシウム合金、酸化マグネシウム等が負極活物質として好ましく用いられる。金属空気電池1がリチウム空気電池の場合、リチウムやリチウム合金、リチウム含有複合酸化物等が負極活物質として好ましく用いられる。
【0029】
負極活物質層32、33のそれぞれは、例えば、負極活物質を含む複数の負極活物質粒子を有していてもよい。複数の負極活物質粒子は、相互に接合されていてもよいし、相互に接合されていなくてもよい。例えば、負極活物質層32、33のそれぞれは、電解液と、複数の負極活物質粒子とを含むスラリーにより構成されていてもよい。
【0030】
(セパレータ40)
第1正極10と負極30との間、及び第2正極20と負極30との間のそれぞれには、セパレータ40が配されている。このセパレータ40により正極10、20と負極30とが電気的に分離されている。
【0031】
セパレータ40の厚さは、特に限定されないが、0.05mm以上0.4mm以下であることが好ましい。セパレータ40の厚さが0.05mm未満であれば、負極の体積変化に伴いセパレータ40が破断するおそれがある。一方、セパレータ40の厚さ0.4mmを超えると、内部抵抗の増加の結果、電池出力が低下するおそれがある。
【0032】
セパレータ40は、第1セパレータ片41と、第2セパレータ片42とを含む。第1セパレータ片41は、第1正極10と負極30との間に位置している。本実施形態では、第1セパレータ片41の周縁部は、外装体50に接合されている。第1セパレータ片41と外装体50との接合方法は、特に限定されない。第1セパレータ片41と外装体50とは、例えば、熱溶着法や超音波溶着法等の溶着法等により溶着されていてもよい。
【0033】
一方、第2セパレータ片42は、第2正極20と負極30との間に位置している。第2セパレータ片42の周縁部は、外装体50に接合されている。第2セパレータ片42と外装体50との接合方法は、特に限定されない。第2セパレータ片42と外装体50とは、例えば、熱溶着法や超音波溶着法等の溶着法等により溶着されていてもよい。
【0034】
以上のように、本実施形態では、第1セパレータ片41と、第2セパレータ片42とのそれぞれの周縁部が全周にわたって外装体50に接合されている。このため、外装体50内の内部空間50aは、第1セパレータ片41及び第2セパレータ片42によって、第1内部空間50a1と、第2内部空間50a2と、第3内部空間50a3とに隔離されている。第1内部空間50a1には、第1正極10が配されている。第2内部空間50a2には、負極30が配されている。第3内部空間50a3には、第2正極20が配されている。
【0035】
第1セパレータ片41及び第2セパレータ片42のそれぞれは、絶縁性を有するシートにより構成されている。第1セパレータ片41及び第2セパレータ片42のそれぞれは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン等の樹脂を含む多孔質シートや、イオン交換膜等により構成することができる。
【0036】
第1セパレータ片41及び第2セパレータ片42は、可撓性を有することが好ましい。
【0037】
第1正極10の少なくとも一部と、第2正極20の少なくとも一部と、負極30の少なくとも一部と、セパレータ40の少なくとも一部とは、積層されている。以下、第1正極10の少なくとも一部と第2正極20の少なくとも一部と負極30の少なくとも一部と、セパレータ40の少なくとも一部との積層体を積層体2とする。
【0038】
(外装体50)
外装体50は、積層体2を収容している。具体的には、外装体50の内部空間50a内に積層体2が配されている。
【0039】
外装体50は、第1可撓性フィルム51と、第2可撓性フィルム52を備えている。第1可撓性フィルム51の周縁部と第2可撓性フィルム52の周縁部とが接合(例えば、ラミネート等)されることにより、内部空間50aを有する外装体50が形成されている。
【0040】
外装体50は、例えば、樹脂フィルムにより構成されることが好ましく、熱可塑性樹脂フィルムにより構成されることがより好ましい。好ましく用いられる熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系の樹脂フィルム等が挙げられる。また、外装体50は、少なくともひとつの樹脂層と、少なくともひとつの金属層とにより構成されていてもよい。具体的には、外装体50は、金属層と、金属層の両側に位置する樹脂層とにより構成されていてもよい。
【0041】
外装体50の厚みは、特に限定されないが、30μm以上、300μm以下であることが好ましく、50μm以上、200μm以下であることがより好ましく、80μm以上、150μm以下であることがさらに好ましい。
【0042】
外装体50の強度をより向上する観点から、第1可撓性フィルム51及び第2可撓性フィルム52は、中実フィルムにより構成されていることが好ましい。
【0043】
ここで、「中実フィルム」とは、内部に気孔を実質的に含まないフィルムのことを意味する。中実フィルムは、1atmにおいて、24時間あたりの酸素透過度が300cm3/m2以下であるフィルムであることが好ましい。
【0044】
外装体50には、開口53、54が形成されている。開口53、54は、それぞれ、正極10、20に臨んでいる。
【0045】
開口53は、外装体50を構成している第1可撓性フィルム51に形成されている。開口53は、第1正極10及び第2正極20のうちの第1可撓性フィルム51側に位置している第1正極10に臨んでいる。詳細には、開口53は、第1正極10のうち、積層体2を構成している部分のうちの周縁部を除いた部分に臨んでいる。すなわち、開口53は、積層体2の周縁部を除いた部分に臨んでいる。具体的には、開口53は、積層体2の主面の80面積%以上の領域に臨んでいることが好ましく、90面積%以上の領域に臨んでいることがより好ましい。開口53は、撥水膜70の周縁部を除いた部分を露出させている。このような大きな開口53を形成することにより、開口53から第1正極10に対する空気(酸素)の高い供給効率を実現することができる。
【0046】
開口54は、外装体50を構成している第2可撓性フィルム52に形成されている。開口54は、第1正極10及び第2正極20のうちの第2可撓性フィルム52側に位置している第2正極20に臨んでいる。詳細には、開口54は、第2正極20のうち、積層体2を構成している部分のうちの周縁部を除いた部分に臨んでいる。すなわち、開口54は、積層体2の周縁部を除いた部分に臨んでいる。具体的には、開口54は、積層体2の主面の80面積%以上の領域に臨んでいることが好ましく、90面積%以上の領域に臨んでいることがより好ましい。開口54は、撥水膜80の周縁部を除いた部分を露出させている。このような大きな開口54を形成することにより、開口54から第2正極20に対する空気(酸素)の高い供給効率を実現することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、積層体2の周縁部を除いた部分の全体に臨むそれぞれひとつの開口53、54が形成されている例について説明する。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、第1可撓性フィルム及び第2可撓性フィルムのそれぞれには、正極に臨む複数の開口が相互に間隔をおいて設けられていてもよい。具体的には、例えば、複数の矩形状や円形状等の開口がマトリクス状に形成されていてもよい。
【0048】
開口53、54のそれぞれの形状は、特に限定されない。開口53、54の形状は、例えば、矩形等の多角形、円形、楕円形、長円形等であってもよい。開口53、54の平面視形状は、積層体2の平面視形状と略相似の関係にあることが好ましい。例えば、積層体2の平面視形状が実質的に矩形である場合は、開口53、54は、矩形状であることが好ましい。
【0049】
(電解質60)
外装体50の内部空間50a内には、電解質60が配されている。具体的には、内部空間50a内には、電解質60が充填されている。電解質60は、少なくとも水を含んでいることが好ましい。電解質60は、例えば、電解液であってもよいし、ゲル電解質であってもよいが、電解質60としては電解液がより好ましく用いられる。
【0050】
以下、本実施形態では、電解質60が電解液により構成されている例について説明する。
【0051】
電解液により構成されている電解質60は、溶媒と溶質とを含む。電解質60は、水溶液であることが好ましいため、溶媒は、例えば、水を含むことが好ましい。溶媒は、例えば、水により構成されていてもよいし、水と、例えばアルコール等との混合物により構成されていてもよい。金属空気電池1が亜鉛空気電池の場合、電解質60はアルカリ性水溶液であることが好ましく、好ましく用いられる溶質としては、アルカリ金属またはアルカ
リ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等)などが挙げられる。また、金属空気電池1が亜鉛空気電池の場合、電解質60は亜鉛イオンを含んでよい。金属空気電池1がマグネシウム空気電池の場合、電解質60は、塩化ナトリウム水溶液など中性水溶液であることが好ましい。金属空気電池1がリチウム空気電池の場合、電解質60はリチウムイオン電池の電解質に用いられる非水系電解質であってもよい。
【0052】
(撥水膜70、80)
撥水膜70、80は、開口53、54を被っている。詳細には、撥水膜70は、開口53を被っている。撥水膜80は、開口54を被っている。撥水膜70は、開口53が形成された第1可撓性フィルム51と第1正極10との間に位置している。撥水膜80は、開口54が形成された第2可撓性フィルム52と第2正極20との間に位置している。
【0053】
撥水膜70、80は、開口53、54よりも大面積に設けられている。撥水膜70、80は、外装体50の内側(内部空間50a内)に配されている。撥水膜70、80の周縁部の少なくとも一部は、外装体50に接合されている。撥水膜70、80の周縁部のうち、外装体50に接合された部分は、接合部70a、80aを構成している。
【0054】
詳細には、撥水膜70は、開口53よりも大面積に設けられている。撥水膜70は、開口53が形成された第1可撓性フィルム51と積層体2との間に配されている。撥水膜70の周縁部の少なくとも一部は、外装体50(具体的には、第1可撓性フィルム51)に接合されている接合部70aを構成している。接合部70aは、開口53を包囲するように額縁状に形成されている。
【0055】
撥水膜80は、開口54よりも大面積に設けられている。撥水膜80は、開口54が形成された第2可撓性フィルム52と積層体2との間に配されている。撥水膜80の周縁部の少なくとも一部は、外装体50(具体的には、第2可撓性フィルム52)に接合されている接合部80aを構成している。
図1に示すように、接合部80aは、開口54を包囲するように額縁状に形成されている。
【0056】
撥水膜70、80は、酸素を透過させ、電解質を実質的に透過させない。具体的には、本実施形態では、撥水膜70、80のそれぞれは、多孔質体により構成されている。より具体的には、撥水膜70、80のそれぞれは、多孔質フィルムにより構成されている。撥水膜70、80は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有する。このため、酸素等の気体は、貫通孔を経由して撥水膜70、80を透過することができる。なお、撥水膜70、80の気孔率は、特に限定されないが、例えば、20体積%以上95体積%以下であることが好ましく、60体積%以上90体積%以下がより好ましい。
【0057】
撥水膜70、80の表面(具体的には、外表面及び内表面の両方)は、撥水性を有する。ここで、撥水性とは、電解質(詳細には、電解質に含まれる溶媒)をはじく性質のことである。このように、撥水膜70、80の表面が撥水性を有するため、電解質が撥水膜70、80に形成されている貫通孔内に侵入することが抑制されている。従って、撥水膜70、80は、電解質を実質的に透過させない。
【0058】
撥水膜70、80の材質は、特に限定されない。撥水膜70、80は、適宜の樹脂等により構成することができる。撥水膜70、80は、例えば、PTFEなどのフッ素含有樹脂により構成されていることが好ましい。
【0059】
なお、撥水膜70、80とは異なり、外装体50は、本実施形態では、中実フィルムにより構成されているため、電解質60のみならず、酸素等の気体も実質的に透過させない。
【0060】
撥水膜70、80の厚みは、特に限定されないが、具体的には、10μm以上300μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましく、30μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。
【0061】
このように、本実施形態では、外装体50が中実である一方、撥水膜70、80は、多孔質であるため、撥水膜70、80は、外装体50よりも低い機械的耐久性を有する。すなわち、撥水膜70、80は、外装体50よりも破れやすい。
【0062】
(リード91、92、93)
第1正極10、第2正極20及び負極30は、外装体50の内部空間50a内に配されている。第1正極10、第2正極20及び負極30のそれぞれには、リード91、92、93が接続されている。これらリード91、92、93によって第1正極10、第2正極20及び負極30のそれぞれが外装体50の外部に引き出されている。なお、リード91、92、93は、それぞれ、例えば、金属箔等により構成することができる。
【0063】
具体的には、第1正極10の正極集電体11には、第1正極リード91の内部空間50aに位置する部分が接続されている。第1正極リード91は、正極集電体11から外装体50の外部にまで引き出されている。正極集電体11と第1正極リード91との接続方法は、電気的に接続されていれば特に限定されない。正極集電体11と第1正極リード91とは、例えば、溶接されていてもよく、正極集電体11の一部が延伸し第1正極リード91の一部を構成してもよい。正極集電体11と第1正極リード91とが溶接で接続されている場合、一般的に、正極集電体11と第1正極リード91との接合部94は、正極集電体11、あるいは第1正極リード91の厚みよりも厚い。
【0064】
第2正極20の正極集電体21には、第2正極リード92の内部空間50aに位置する部分が接続されている。第2正極リード92は、正極集電体21から外装体50の外部にまで引き出されている。正極集電体21と第2正極リード92との接続方法は、電気的に接続されていれば特に限定されない。正極集電体21と第2正極リード92とは、例えば、溶接されていてもよく、正極集電体21の一部が延伸し第2正極リード92の一部を構成してもよい。正極集電体21と第2正極リード92とが溶接で接続されている場合、一般的に、正極集電体21と第2正極リード92との接合部95は、正極集電体21、あるいは第2正極リード92の厚みよりも厚い。
【0065】
第1正極リード91と、第2正極リード92とは、外装体50の外部において相互に接続されてよい。
【0066】
負極30の負極集電体31には、負極リード93の内部空間50aに位置する部分が接続されている。負極リード93は、負極集電体31から外装体50の外部にまで引き出されている。負極集電体31と負極リード93との接続方法は、電気的に接続されていれば特に限定されない。負極集電体31と負極リード93とは、例えば、溶接されていてもよく、負極集電体31の一部が延伸し負極リード93の一部を構成してもよい。負極集電体31と負極リード93とが溶接で接続されている場合、一般的に、負極集電体31と負極リード93との接合部96は、負極集電体31、あるいは負極リード93の厚みよりも厚い。
【0067】
(金属空気電池1の放電反応)
次に、金属空気電池1が亜鉛空気電池である場合を例に挙げて、金属空気電池1における放電反応について説明する。
【0068】
亜鉛空気電池である金属空気電池1を放電させる際には、第1正極10及び第2正極20と、負極30とのそれぞれにおいて、下記式に示す反応が進行する。
【0069】
放電時の正極における反応:O2+2H2O+4e-→4OH-
放電時の負極における反応:Zn+4OH-→Zn(OH)2-
4+2e-→ZnO+H2O+2OH-+2e-
上記正極10、20の反応は、触媒層12、22において、触媒層12、22に含まれる触媒の作用によって進行する。放電時においては、上記式に示すように、触媒は、酸素の還元に寄与する。
【0070】
上記のように、触媒層12、22では、放電反応に酸素が必要である。このため、触媒層12、22に酸素を供給する必要がある。触媒層12、22への酸素供給効率が低い場合は、触媒層12、22における放電反応の効率が低下する。この観点からは、触媒層12、22は、平面視において、開口53、54が設けられた領域のみに配されていることが好ましい。従って、触媒層は、通常、酸素を透過しない外装体50が設けられた領域には配されない。
【0071】
ところが、本発明者らは、鋭意研究の結果、触媒層を開口が設けられた領域にのみ設けると、電解質が漏洩するおそれがあることを見いだし、本実施形態に係る金属空気電池1に想到した。
【0072】
本実施形態では、触媒層12が、接合部70aと正極集電体11との間に位置する部分を有する。このため、例えば、金属空気電池1に応力が加わり、正極集電体11が変形した場合等であっても、触媒層12が正極集電体11と接合部70aとの間に位置しているため、正極集電体11が接合部70aや、撥水膜70の接合部70aよりも内側に位置する部分に直接接触することが抑制されている。よって、金属空気電池1では、撥水膜70が破損することが抑制されている。同様に、触媒層22が、接合部80aと正極集電体21との間に位置する部分を有するため、撥水膜80が破損することも抑制されているこのため、電解質60が漏洩することを抑制することができる。
【0073】
正極集電体11、21と触媒層12、22との接触に起因する電解質60の漏洩をより効果的に抑制する観点からは、触媒層12の厚みが、正極集電体11の厚みよりも大きいことが好ましい。触媒層22の厚みが、正極集電体22の厚みよりも大きいことが好ましい。触媒層12、22の厚みを正極集電体11、21よりも厚くすることにより、正極集電体11、12が触媒層12、22に食い込んでも、正極集電体11、12が撥水膜70、80に接触して撥水膜70、80が破損することをより効果的に抑制することができる。電解質60の漏洩をさらに効果的に抑制する観点からは、触媒層12、22の厚みは、正極集電体11、21の厚みの2倍以上であることがより好ましい。但し、触媒層12、22が厚すぎると、触媒層12、22の中に酸素供給効率が低い部分が生じ、エネルギー密度が低下する可能性がある。従って、触媒層12、22の厚みは、正極集電体11、21の厚みの7倍以下であることが好ましい。具体的には、正極集電体11、21の厚みは、50μm以上500μm以下であることが好ましく、100μm以上300μm以下であることがより好ましい。触媒層12、22の厚みは、200μm以上1000μm以下であることが好ましく、400μm以上800μm以下であることがより好ましい。
【0074】
電解質60の漏洩を抑制できるという効果は、触媒層12、22が接合部70a、80aと正極集電体11、21との間の少なくとも一部に位置していれば奏される。但し、金属空気電池1からの電解質60の漏洩をさらに効果的に抑制する観点から、触媒層12、22は、接合部70a、80aの正極集電体11、12側の実質的に全体を被っていることが好ましく、全体を被っていることがさらに好ましい。
【0075】
同様に、平面視において、セパレータ40と外装体50とが接合された部分と、撥水膜70、80と外装体50との接合部70a、80aとの間の距離を100としたときに、撥水膜70、80と外装体50との接合部70a、80aと触媒層12、22の外側端部との間の距離が20以上であることが好ましい。
【0076】
また、電解質60の漏洩を抑制する観点からは、金属空気電池1の変形に伴って接合部70a、80aに大きな応力が付加することを抑制することが好ましい。この観点からは、正極集電体11、21が接合部70a、80aよりも外側に至っていることが好ましい。平面視において、セパレータ40と外装体50とが接合された部分と、撥水膜70、80と外装体50との接合部70a、80aとの間の距離を100としたときに、撥水膜70、80と外装体50との接合部70a、80aと、正極集電体11、21の外側端部との間の距離が20以上であることが好ましい。
【0077】
但し、正極集電体11、21が長すぎると、セパレータ40と外装体50とが接合された部分に正極集電体11、21が接触し、当該部分を損傷する虞がある。そのような場合には、例えば、負極活物質粒子が正極10、20側に流出してしまい、金属空気電池1の内部で短絡が発生することに起因して、電池温度が上昇したり、電池特性が低下したりする場合がある。従って、平面視において、セパレータ40と外装体50とが接合された部分と、撥水膜70、80と外装体50との接合部70a、80aとの間の距離を100としたときに、セパレータ40と外装体50とが接合された部分と、正極集電体11、21の端部との間の平面視における距離は、10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましい。
【0078】
上述のように、本実施形態では、触媒層12、22は、緩衝効果を担っている。従って、触媒層12、22は、高い緩衝作用を有することが好ましい。この観点から、触媒層12、22は、複数の触媒粒子12a、22aを含むことが好ましい。この場合、触媒粒子12a、22aの平均粒子径は、正極集電体11、21の厚みの1/50000倍以上1/50倍以下であることが好ましく、1/15000倍以上1/500倍以下であることがより好ましい。
【0079】
また、触媒層12、22の緩衝作用を向上させる観点から、触媒層12、22は、樹脂を含んでいることが好ましい。なお、触媒層12、22における樹脂の含有率は、30重量%以下であることが好ましい。樹脂の含有率が高すぎると、エネルギー密度が低くなる場合があるためである。
【0080】
撥水膜70、80の破損に伴う金属空気電池1からの電解質60の漏洩をさらに効果的に抑制する観点から、正極集電体11、21のそれぞれが、接合部70a、80aよりも外側に位置している外側部分11a、21aを有することが好ましい。この場合、外側部分11a、21aにリード91、92を電気的に接続することができる。よって、厚くなりがちな接合部94、95と、大きな厚みを有する積層体2とが積層方向に重なることを抑制することができる。従って、撥水膜70、80に大きな応力が加わることを抑制することができる。その結果、撥水膜70、80の損傷を抑制することができる。
【0081】
触媒層12、22を、接合部70a、80aと正極集電体11、21との間に設けることは、どのような金属空気電池1にも好適であるが、例えば、正極集電体11、21が金属多孔質体である場合には、正極集電体11、21が接合部70a、80aや撥水膜70、80を傷つけやすいため、より好適である。また、撥水膜70、80が損傷しやすい多孔質膜により構成されている場合や、撥水膜70、80の厚みが、20μm以上200μm以下と薄い場合等に特に好適である。
【0082】
(変形例)
上記実施形態では、一次電池である金属空気電池1について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。金属空気電池は、例えば、二次電池であってもよい。金属空気二次電池においては、触媒層12及び触媒層22のそれぞれは、酸素還元能を有する触媒だけでなく、酸素発生能を有する触媒を含んでいてもよい。触媒層12及び触媒層22のそれぞれは、酸素還元能と酸素発生能との両方を有するBi-functional触媒を含んでいてもよい。酸素発生能を有する酸素発生触媒及びBi-functional触媒は、当該分野で一般的に用いられる材料であれば特に限定されない。その場合、正極を充電極としても利用することができ、放電極としても利用することができる。
【0083】
例えば、金属空気二次電池は、放電極としての正極と、充電極としての正極とを備えた3極式の金属空気二次電池でもよい。3極式の金属空気二次電池は、具体的には、第2正極20の代わりに、充電極として、酸素発生能を有するNi電極が用いられてもよい。また、3極式の金属空気二次電池の場合、第1の正極リード91と第2の正極リード92は接合しない。
【0084】
(実施例1~5)
下記の要領で上記実施形態に係る金属空気電池1と実質的に同様の構成を有する金属空気電池を作製した。
【0085】
まず、外装体を構成するための部材として、110mm×110mmの正方形状の樹脂フィルムを用意した。樹脂フィルムは、厚みが15μmのナイロン(登録商標)フィルムと、厚みが100μmのポリエチレン(PE)フィルムとの積層体である。
【0086】
次に、樹脂フィルムの中央部に、60mm×60mmの開口を形成した。
【0087】
次に、開口が形成された樹脂フィルムの開口を被うように70mm×70mmの大きさの、厚みが200μmのポリテトラフルオロエチレンフィルムからなる撥水膜を配置し、樹脂フィルムに熱溶着した。溶着幅は、2mmとした。
【0088】
次に、撥水膜の上に、70mm×70mmの触媒層を積層した。触媒層は、酸素還元触媒としてのMnO2、酸素還触媒兼導電助剤としてのアセチレンブラック、及びバインダーとしてのポリテトラフルオロエチレンを含む多孔質体(厚み:500μm)である。
【0089】
この触媒層の上に、リードが接続された77mm×70mmの正極集電体を積層した。正極集電体は、厚さ100μmのNiエキスパンド箔である。
【0090】
次に、これらをプレス圧着により接着した。
【0091】
次に、正極集電体の上に、第1セパレータ片を積層し、第1セパレータ片の周縁部を樹脂フィルムに熱溶着した。第1セパレータ片は、92mm×80mm、厚さ200μmのポリオレフィン不織布である。
【0092】
次に、第1セパレータ片の上に、77mm×70mmの負極集電体を積層した。負極集電体は、厚さ200μmのCuエキスパンド箔である。負極集電体は、50mm×10mm、厚さ100μmのNi箔からなるリードを有する。
【0093】
上記手順により第1の積層体を作製した。
【0094】
次に、上述の手順と同様にして、第2樹脂フィルム、第2撥水膜、触媒層、正極集電体及び第2セパレータ片を積層し、熱溶着した第2の積層体を作製した。
【0095】
次に、第1の積層体と、第2の積層体とを、第1のセパレータ片と第2のセパレータ片が負極集電体を挟んで対向するように積層し、1対の樹脂フィルムの1辺を除く3つの辺を溶着幅が2mmとなるように相互に溶着した。
【0096】
次に、1対の樹脂フィルムの溶着されていない1辺から、電解液及び負極活物質を、第1セパレータ片と第2セパレータ片との間に挿入した。電解液は、7MのKOH水溶液である。負極活物質粒子は、亜鉛粉である。電解液及び負極活物質を挿入した後、第1樹脂フィルムと第2樹脂フィルムとの残りの1辺を溶着した。具体的には、第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムが重なった部分を4mmの溶着幅となるように溶着した。
【0097】
上記要領により、下記の表1に示す条件で金属空気電池を作製した。
【0098】
(比較例1)
表1に示す条件としたこと以外は、実施例1~5と同様にして金属空気電池を作製した。
【0099】
【表1】
上記表1に示すL1、L2、L3は、以下の通りである。
【0100】
L1:平面視における、撥水膜と外装体との接合部と外装体とセパレータとの間の距離を100としたときの、撥水膜と外装体との接合部から、触媒層の外側端部までの距離
L2:平面視における、撥水膜と外装体との接合部と外装体とセパレータとの間の距離を100としたときの、撥水膜と外装体との接合部から、正極集電体の外側端部までの距離
L3:平面視における、撥水膜と外装体との接合部と外装体とセパレータとの間の距離を100としたときの、正極集電体の外側端部から、外装体とセパレータとが接合されている部分までの距離
但し、L1、L2に関しては、外側に向かう方向を+とする。
【0101】
(評価)
実施例1~5及び比較例1で作製したサンプルのそれぞれに関し、(1)落下試験、(2)放電試験を行った。結果を表1に示す。
【0102】
(1)落下試験
実施例1~5及び比較例1で作製したサンプルのそれぞれを高さ1mからコンクリート上に落下させた。その後、サンプルからの液漏れ(電解液漏れ)の有無を目視観察した。表1の「落下試験後の液漏れの有無」の欄に結果を示す。表1において、「発生」は、液漏れが発生したことを示す。「なし」は、液漏れが発生しなかったことを示す。
【0103】
また、落下させた各サンプルに関し、25℃で静置したときのサンプルの上昇温度を測定した。結果を表1の「落下試験後の上昇温度」の欄に示す。比較例1及び実施例1~4のそれぞれでは、上昇温度が5℃未満であった。それに対して、実施例5では、43℃上昇した。
【0104】
(2)放電試験
上記落下試験を行ったサンプルに対して、25℃で3Aの一定電流で放電することにより放電試験を行った。その後、各サンプルからの液漏れの有無を目視観察した。結果を表1の「放電試験後の液漏れ試験結果」に示す。表1における「×」、「△」、「○」は、下記の意味である。
【0105】
×:放電開始後5時間以内に液漏れが発生した。
【0106】
△:放電開始後5時間以内に液漏れが発生しなかったが、2日後に電解液がドライアップしていた。
【0107】
○:放電開始後5時間以内に液漏れが発生せず、2日後にも電解液のドライアップは確認されなかった。
【0108】
表1に示す結果から理解されるように、触媒層が、外装体と撥水膜との接合部と、正極集電体との間に位置する部分がない例(比較例1)においては、落下試験後に液漏れが発生することが分かる。一方、触媒層が、外装体と撥水膜との接合部と、正極集電体との間に位置する部分がある例(実施例1~5)においては、落下試験後に液漏れが確認されなかった。
【0109】
平面視における、撥水膜と外装体との接合部と外装体とセパレータとの間の距離を100としたときの、撥水膜と外装体との接合部から、正極集電体の外側端部までの距離(L2)が20未満である例では、液漏れが発生したり、ドライアップが発生したりしたのに対して、20以上である例では、液漏れもドライアップも確認されなかった。
【0110】
また、平面視における、撥水膜と外装体との接合部と外装体とセパレータとの間の距離を100としたときの、正極集電体の外側端部から、外装体とセパレータとが接合されている部分までの距離(L3)が20未満である例では、落下試験後に大きく温度が上昇したのに対して、20以上である例では、落下試験後に温度が大きく上昇しなかった。