(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】ラミネート積層体のための感圧接着剤に通気経路を形成する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230721BHJP
C09J 7/10 20180101ALI20230721BHJP
B32B 38/18 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B32B27/00 M
C09J7/10
B32B38/18 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017250605
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-12-24
(32)【優先日】2017-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ドレクスラー, ジェーソン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ワイルド, ジョン クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ワン, シアオシー
【審査官】原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/095094(WO,A1)
【文献】中国実用新案第205314378(CN,U)
【文献】実開昭55-087342(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0250828(US,A1)
【文献】実開平02-010933(JP,U)
【文献】特開2013-213118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
C09J 7/10
B32B 38/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体透過性不織布層(210)及び感圧接着層(212)、(904)、(1004)、(1104)を含み、前記感圧接着層の表面は、前記気体透過性不織布層の表面に面している、ラミネート積層体(200)、(900)、(1000)、(1100)を形成する方法であって、
閉じ込められた気体(306)が前記感圧接着層(212)、(904)、(1004)、(1104)を通過することを可能にする複数の通気経路(304)が前記感圧接着層に形成されるように、前記ラミネート積層体を処理することを含み、
前記感圧接着層(212)、(904)、(1004)、(1104)に前記複数の通気経路(304)が形成されるように前記ラミネート積層体(200)、(900)、(1000)、(1100)を処理することは、前記感圧接着層を局所的に紫外線に曝露することを含む、方法。
【請求項2】
前記複数の通気経路(304)は、前記感圧接着層(212)、(904)、(1004)、(1104)の局所的なひずみによって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
局所的なひずみによって形成された前記複数の通気経路(304)のサイズは少なくとも50ナノメートルであり、前記感圧接着層(212)、(904)、(1004)、(1104)の固有の透過率は少なくとも1x10
-13cm
2である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ラミネート積層体(200)、(900)、(1000)、(1100)を処理することは、前記ラミネート積層体に圧力及び熱を加えることを含む、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記圧力及び熱によって、前記感圧接着層(212)、(904)、(1004)、(1104)が前記気体透過性不織布層(210)に接合される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ラミネート積層体(200)、(900)、(1000)、(1100)に前記圧力及び熱を加えることは、前記ラミネート積層体をホットプレスプラテンの間に挟み込んで前記感圧接着層(212)、(904)、(1004)、(1104)の延性を低下させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記圧力及び熱を加えることは、前記ラミネート積層体(200)、(900)、(1000)、(1100)を加熱ニップローラーのローラー間に配置して前記感圧接着層(212)、(904)、(1004)、(1104)の延性を低下させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記圧力及び熱を加えることは、前記ラミネート積層体(200)、(900)、(1000)、(1100)を真空バッグと加熱プラテンとの間に配置して前記感圧接着層(212)、(904)、(1004)、(1104)の延性を低下させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記ラミネート積層体(200)、(900)、(1000)、(1100)の前記感圧接着層(212)、(904)、(1004)、(1104)を形成するために使用される感圧接着樹脂に添加物を混合することを更に含む、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記感圧接着層(212)、(904)、(1004)、(1104)をスクリム(1102)上にパターン状に堆積して、前記感圧接着層に前記複数の通気経路(304)を形成することを更に含む、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、概して装飾ラミネートに関し、特に、ラミネート積層体のための感圧接着剤に通気経路を形成する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
輸送手段(例えば、大量輸送手段、トラクタートレーラー、自家用車など)、ビル、及び/又は他の構造物(例えば、広告用掲示板)は、公衆が視覚可能な表面を含む。これらの表面は、美観、情報提供、及び/又は広告の目的で装飾画像を含んでいることが多い。例えば、航空機及び/又は他の大量輸送手段(例えば、バス、電車、船舶など)の一部の内部表面は、大量輸送提供機関(例えば、航空会社)を特定する装飾画像、及び/又は、別の団体、商品、若しくはサービスを広告する装飾画像を含んでいる。いくつかの例では、装飾画像は、輸送手段、ビル、及び/又は他の構造物の表面に結合された装飾ラミネートにより形成されている。
【0003】
航空宇宙産業、自動車産業、及び鉄道輸送産業などの多くの産業が、装飾ラミネート及びラミネートシステムの製造方法における従来の限界を打破するための模索を続けている。したがって、改善された装飾ラミネート、改善されたラミネートシステム、並びに装飾ラミネート及びラミネートシステムの改善された製造方法が必要である。
【発明の概要】
【0004】
例示的な方法は、気体透過性不織布層及び感圧接着層を含むラミネート積層体を形成することであって、感圧接着層の表面は、気体透過性不織布層の表面に面している、形成すること、及び、閉じ込められた気体が感圧接着層を通過することを可能にする複数の通気経路が感圧接着層に形成されるように、ラミネート積層体を処理すること、を含む。
【0005】
例示的な装置は、装飾ラミネートのためのラミネート積層体を含み、ラミネート積層体は感圧接着層を含み、感圧接着層は、気体が、閉じ込められた気体のポケットを生成することなく感圧接着層を通過し気体透過性不織布層に入り込むことを可能にする固有の透過率を有する。
【0006】
別の例示的な方法は、感圧接着層を介して装飾ラミネートを表面に貼り付けること、感圧接着層と表面との間に気体を閉じ込めること、及び、気体が感圧接着層を通過することを可能にする複数の通気経路を感圧接着層に形成すること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】
図2に示す装飾ラミネートの例示的な感圧接着層の断面図である。
【
図4】
図3に示す例示的な感圧接着層の平面図である。
【
図5】A及びBは、ホットプレスプラテンを用いて例示的なラミネート積層体を形成する例示的なプロセスを示す。
【
図6】加熱ニップローラーを用いて例示的なラミネート積層体を形成する例示的なプロセスを示す。
【
図7】真空バッグ及びホットプレスプラテンを用いて例示的なラミネート積層体を形成する例示的なプロセスを示す。
【
図8】紫外線を用いて感圧接着層を含む例示的なラミネート積層体を硬化又は処理する例示的なプロセスを示す。
【
図9】感圧接着樹脂に繊維を添加することにより感圧接着樹脂に変更を加える例示的な手法を示す。
【
図10】感圧接着樹脂に粒子を添加することにより感圧接着樹脂に変更を加える例示的な手法を示す。
【
図11】スクリムに堆積されて感圧接着層を形成する例示的な感圧接着樹脂を示す。
【
図12】本明細書に記載する例示的なラミネート積層体を用いて実行されうる例示的な方法を示す。
【
図13】本明細書に記載する例示的なラミネート積層体を用いて実行されうる例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面は原寸に比例しない。代わりに、複数の層及び部位を明確にするため、図中の各層の厚さは拡大されている場合がある。図面及び添付の記載の全体を通して、同一の部分又は類似の部分は、可能な限り同じ参照番号で示している。
【0009】
公共の空間にある表面(例えば、広告用掲示板、ビルの壁、輸送手段のパネルなど)は、美観、情報提供、及び/又は広告の目的で装飾画像を含んでいることが多い。一部の既知の航空機及び/又は他の大量輸送手段(例えば、バス、電車、船舶など)は、美観、情報提供、及び/又は、広告の目的でその表面に装飾画像(例えば、装飾パターン、単語、ロゴなど)を含んでいる。例えば、大量輸送手段の内部表面は、大量輸送提供機関(例えば、航空会社)を特定する装飾画像、及び/又は別の組織、商品、若しくはサービスを広告する装飾画像を含みうる。いくつかの実施例では、装飾画像は輸送手段の内部表面に結合された装飾ラミネートにより形成される。
【0010】
多くの既知の装飾ラミネートは、複数の層を含む。例えば、いくつかの既知の装飾ラミネートは、トップシート層、エンボス樹脂層、バリア/不透明層、及び不織布透過性層を含み、これらは全体としてラミネート積層体を形成する。いくつかの実施例では、ラミネート積層体はまた、例えば航空機の表面にラミネート積層体を接着するための接着層も含む。表面にラミネート積層体の貼り付け中、接着層の下に気体(例えば、空気)が閉じ込められ、装飾ラミネートに気泡及び/又は欠陥を生じうる。気泡及び/又は欠陥は、装飾ラミネート上の画像及び/又は文字を歪めうる。接着層と表面との間に気体が閉じ込められるのを防止するいくつかの方法は、製造中に接着層にチャネルを形成するか、又は接着剤に多孔質の添加物を含めることを含む。しかしながら、チャネルは、接着剤を表面に貼り付けるときに消失する場合があり、多孔質の添加物は、接着剤の接合強度を低下させる、及び/又は表面に跡を残す場合がある。
【0011】
本明細書に記載する装飾ラミネートのための例示的なラミネート積層体は感圧接着層を含み、感圧接着層は、この層を通る気体の所定の通過率(例えば、透過率)を可能にする固有の透過率を有する。本明細書で使用する場合、「固有の透過率」という用語は、概して、多孔質媒体が流体を透過又は通過させることのできる相対的容易性のことを指す。より具体的には、「固有の透過率」という用語は、多孔質媒体を通過する流体(例えば、気体、空気)の性質及び多孔質媒体の寸法に影響を受けない、多孔質媒体の流体透過特性を指す。本明細書に記載する実施例では、感圧接着層は、閉じ込められた気体を通過(例えば、透過)させる一方で、接着剤の連続性及び接合強度を維持する。感圧接着層は、閉じ込められた気体が感圧接着層のみならずラミネート積層体の他の層も通過することを可能にする透過性装飾ラミネート積層体と共に使用されうる。本明細書で実施例に関連してより詳細に記載するように、感圧接着層は、少なくとも50ナノメートルから約1ミリメートルのサイズ(例えば、直径)を有する通気経路を含み、表面へと貼り付ける処理済み感圧接着層に、少なくとも1x10-13cm2から約1x10-6cm2の固有の透過率をもたらす。
【0012】
感圧接着層は、気体が感圧接着層を通過(例えば、透過)することを可能にする複数の通気経路を含みうる。通気経路は、感圧接着層への力学的ひずみによりこの層に生じる、相互に連結された空隙(すなわち、空隙の核生成により結合された別個の空隙)によって形成される。より具体的には、空隙は、感圧接着層が結合されるラミネート積層体の製造中に感圧接着層の特性が変化した結果として、及び/又は表面へのラミネート積層体の貼り付け中に感圧接着層が受けるひずみによって(例えば、接着層と、接着層が結合される表面との間に気体が閉じ込められた結果として)、感圧接着層に形成される。いずれの場合においても、空隙の少なくともいくつかが相互に連結されて、気体が感圧接着層の厚みを通過することを可能にする通路又は経路を生成するように、感圧接着層に形成された空隙は十分に多数であり、且つ接着層の本体に分布する。したがって、これらの通路又は経路は、例えば、感圧接着層と、感圧接着層が結合される表面との間に閉じ込められた任意の気体が感圧接着層を通過することを可能にする通気経路として機能しうる。このように、閉じ込められた任意の気体が、感圧接着層、及び感圧接着層に結合された任意のラミネート積層体の残りの透過性層を容易に通過することができ、これによりラミネート積層体における気泡の形成が防止される。
【0013】
更に詳細に後述するように、空隙、及び、したがって通気経路は、感圧接着層の厚みを通り、且つ感圧接着層の幅及び長さの少なくとも一部にわたって(例えば、感圧接着層の体積又は本体を通る3次元で)ランダムに延在するように、形成されうる。したがって、通気経路は、感圧接着層の厚みを通って比較的ランダムに延在する蛇行経路でありうる。いくつかの実施例では、空隙、及び、したがって通気経路は、感圧接着層内の応力の局所的な増大をもたらした、閉じ込められた気体の場所に比較的限られた、感圧接着層のある体積においてのみ形成されうる。他の実施例では、空隙、及び、したがって通気経路は、実質的に感圧接着層の体積全体にわたって形成されてもよい。更に他の実施例では、空隙はランダム性の低い態様で(例えば、パターンにしたがって)形成され、通気経路が設けられてもよい。
【0014】
本明細書に記載する例示的なラミネート積層体を、ラミネート積層体の処理中、及び/又は製造中に圧力及び熱の組み合わせにさらして、感圧接着層を気体透過性不織布層に接合してもよい。圧力及び熱の組み合わせによって、感圧接着層は、使用中(例えば、パネルへの貼り付け中)、例えば表面と感圧接着層との間に閉じ込められた気体により感圧接着層がひずみを受けたときに感圧接着層に通気経路が形成されるように、硬化される。閉じ込められた気体は接着剤に局所的にひずみをもたらし、通気経路を形成する。
【0015】
熱及び圧力を用いて感圧接着層を硬化させる代わりに、又はこの硬化に加えて、感圧接着層は、感圧接着層がひずみを受けたときに通気経路の形成を可能にする添加物を含んでいてもよい。例えば、ラミネート積層体の感圧接着層を形成するために使用される感圧接着樹脂に繊維が添加されうる。繊維は、連続繊維、チョップド繊維、織物繊維、及び/又は不織布繊維を含むことができ、空隙、したがって通気経路の生成を可能にする、及び/又は容易にする。代替的には、例えば、セラミック又は粘土粒子、ガラス粒子、カーボンナノチューブ粒子などの粒子が感圧接着樹脂に添加されうる。他の実施例では、他の不燃性粒子が使用されてよい。閉じ込められた気体によって感圧接着層がひずみを受けると、感圧接着剤は繊維又は粒子から引き離され、気体が通過することのできる通気経路を生成する。
【0016】
いくつかの実施例では、ホットプレスプラテンを用いてラミネート積層体に熱及び圧力が加えられる。例えば、ラミネート積層体は、対向するホットプレスプラテンの間で押圧されうる。代替的には、ラミネート積層体は、ホットプレスプラテンと、非加熱プラテンなどの別の物体との間で押圧されうる。いくつかの実施例では、熱及び圧力は、1つのホットプレスプラテン、並びに、ホットプレスプラテン及びラミネート積層体の上に収められる真空バッグを用いて加えられる。他の実施例では、熱及び圧力は、一連の(例えば、2つ以上の)加熱ローラーの間でラミネート積層体を圧縮する加熱ニップローラーを用いてラミネート積層体に加えられる。感圧接着層のクリーン特性及び粘着特性を維持するために、ラミネート積層体の処理又は硬化の前に、除去可能なライナーを感圧接着層の表面に貼り付けてもよい。
【0017】
いくつかの実施例では、感圧接着層は、局所的に紫外線に曝露されうる。熱及び圧力を用いた感圧接着層の硬化と同様に、閉じ込められた気体によって感圧接着層がひずみを受けたときに、気体が感圧接着層を通過することを可能にする通気経路が生成されるように、紫外線によって感圧接着層が変形される。いくつかの実施例では、紫外線への局所的な曝露は、感圧接着層全体にわたりランダムに分布しうる。
【0018】
いくつかの実施例では、感圧接着層は、感圧接着樹脂をスクリム上にプリント又は堆積することにより形成されうる。感圧接着層と、接着剤が結合される表面との間に閉じ込められうる任意の気体が感圧接着層を通過することを可能にする通路が感圧接着層に形成されるように、感圧接着樹脂はスクリム上にランダムに堆積されうるか、又はパターン状に堆積されうる。
【0019】
本明細書で使用する場合、「結合する」、「結合された」、及び「結合している」という用語は、直接的又は間接的に、1つの物体を別の物体に(例えば、1つの層を別の層に)取り付けることを意味する。例えば、第1の物体の表面が、第2の物体の表面に対して、両者の間にいかなる他の物体も介在しない状態で接している場合、第1の物体は第2の物体に直接的に取り付けられており、したがって結合されている。第1の物体が第2の物体に直接接触していないが、代わりに第1の物体と第2の物体の間に位置する中間物体(例えば層)を介して第2の物体に取り付けられている場合、第1の物体は第2の物体に間接的に固定されており、したがって結合されている。本明細書で使用する場合、「貼り付ける」、「貼り付けられた」、及び「貼り付け」という用語も、直接的又は間接的に、1つの物体を別の物体に(例えば、1つの層を別の層に)取り付けることを意味する。
【0020】
図面を参照すると、
図1には、トップシート102、エンボス樹脂104、バリア及び/又は不透明層106、不織布透過性層108、並びに接着層110を含む、既知の例示的な装飾ラミネート積層体100が示されている。接着層110は、ラミネート積層体100をパネル表面112に結合させるよう作用する。既知の装飾ラミネート積層体100の例示的な接着層110では、気体が容易に接着層110を通過することができず、したがって、接着層110とパネル表面112との間に閉じ込められた気体の気泡が形成される。
【0021】
図2は、本明細書に記載する例示的なラミネート積層体200を示す。例示的なラミネート積層体200は、透明なキャップ及び/又はトップシート層202、インク層204、エンボス樹脂層206、バリア層208、気体透過性不織布層210、感圧接着層212、及び除去可能なライナー214を含む。感圧接着層212は、感圧接着層212の表面と、当該表面が面する気体透過性不織布層210の表面との間に境界面216が生成されるように、気体透過性不織布層210に塗布される。
【0022】
いくつかの実施例では、インク層204、エンボス樹脂層206、及びバリア層208は、ラミネート積層体200から除外してもよい。いくつかの実施例では、トップシート層202及び/又はインク層204は、装飾的構造物として透過性素地と組み合わせてもよい。他の実施例では、例示的なラミネート積層体200に追加の層を含めてもよい。例示的な透明キャップ及び/又はトップシート層202は、透明な熱可塑性ポリマーを含みうる。例示的なインク層204は、インク組成物(例えば、トナー)を含みうる。例示的なエンボス樹脂層206は、低放熱樹脂及び/又は熱硬化性樹脂などのエンボス加工可能なポリマー材料を含みうる。例示的なバリア層208は、熱可塑性フィルムを含みうる。例示的な気体透過性不織布層210は、Reemay(登録商標)などのポリエステル、又はNomex(登録商標)などのフェルトを含むことができ、且つ/又は気体透過性不織布層210は、相互に連結された空隙を含むことができる。例示的な感圧接着層212はアクリル系接着剤を含みうる。代替的には、感圧接着層212は、ブチルゴム、エチレン酢酸ビニル(EVA)、天然ゴム、ニトリル、シリコーンゴム、ビニルエーテル、及びスチレンブロック共重合体(SBC)などの弾性材を含みうる。
【0023】
図3は、表面302(例えば、航空機のパネル)に貼り付けられた例示的な感圧接着層212を示す。簡潔に記述するため、
図2に示す例示的なラミネート積層体200の他の層は
図3に示していない。感圧接着層212を表面302に貼り付ける前に、(例えば、作業者、修理業者などによって)除去可能なライナー214(
図2)が取り除かれる。
図3に示すように、例示的な感圧接着層212は、感圧接着層212に形成される通気経路304を含む。閉じ込められた気体306(例えば、空気)によって感圧接着層212にひずみが生じたときに、通気経路304が形成されうる。通気経路304、及び結果として得られる固有の透過率によって、閉じ込められた気体306は、閉じ込められた気体のポケットを生成することなく感圧接着層212を通過して気体透過性不織布層210(
図2)へと入り込むことができる。
【0024】
また、
図3に示すように、通気経路304は、気体306が通過することのできる複数の異なる経路が形成されるように、相互に連結された空隙により形成される。通気経路304のサイズはそれぞれ異なっていてもよい。しかしながら、気体306が感圧接着層212を通過することを可能にする通気経路304は、少なくとも50ナノメートルの幅を有する。いくつかの実施例では、通気経路304は、感圧接着層212全体にランダムに形成される。代替的には、通気経路304は、パターン状に形成される。通気経路304は、感圧接着層212の全体に形成されうるか、又は(例えば、閉じ込められた気体306により生じる局所的なひずみによって)感圧接着層212内部の特定の位置のみに形成されうる。
【0025】
図4は、本明細書に記載するラミネート積層体200と共に使用される例示的な感圧接着層212の平面図を示す。
図4に示すように、感圧接着層212の通気経路304は、感圧接着層212の幅及び長さにわたって分布しうる。したがって、通気経路304は、感圧接着層212の体積の一部にわたって、又は感圧接着層212の全体的な体積にわたって、3次元で分布しうる。
【0026】
図5A及び5Bは、ホットプレスプラテン502を用いて例示的なラミネート積層体200を形成するために使用されうる例示的なプロセスを示す。
図5Aは、2つのホットプレスプラテン502の間で押圧される前の例示的なラミネート積層体200を示し、
図5Bは、2つのホットプレスプラテン502の間で押圧されているラミネート積層体200を示す。2つのホットプレスプラテン502の間でラミネート積層体200を押圧することにより、感圧接着層212の表面を当該表面に面する気体透過性不織布層210の表面へと押進させ(例えば、感圧接着層212を気体透過性不織布層210に接合し)、これにより、気体透過性不織布層210と感圧接着層212との間の境界面216には相互に連結された凹凸が形成される。この凹凸により、感圧接着層212の厚さは不均一になる。通気経路304は、感圧接着層212の、厚さが相対的に薄い位置に形成されやすい。
【0027】
加えて、ラミネート積層体200を2つのホットプレスプラテン502の間で押圧することにより、ラミネート積層体の感圧接着層212の特性が変更される。例えば、熱及び圧力の組み合わせは、感圧接着層212がひずみを受けたときに(すなわち、表面への貼り付け時に感圧接着層212の下に閉じ込められた気体により局所的にひずみを受けたときに)通気経路304が形成されるように、感圧接着層212の延性を低下させる。通気経路304は、感圧接着層212内部の、感圧接着層212が結合される接合面と感圧接着層212との間に気体306が閉じ込められた位置に形成される。感圧接着層212をそのように処理しても、ラミネート積層体200が貼り付けられる表面(例えば、航空機の表面)に対する感圧接着層212の接合性能には影響しない。
【0028】
また、気体透過性不織布層210も、気体306が気体透過性不織布層210を透過することを可能とし、ラミネート積層体200の下での気泡の形成が防止される。感圧接着層212及び気体透過性不織布層210の組み合わせにより、ラミネート積層体200のインク層204にプリントされる画像又は文字を歪めうる気泡がラミネート積層体200の下に形成されることが防止される。
【0029】
図6は、加熱ニップローラーを使用して例示的なラミネート積層体200を形成する例示的なプロセスを示す。例示的な加熱ニップローラーは、ラミネート積層体200の両側に配置された加熱ローラー602を含む。ラミネート積層体200は、加熱ローラー602がラミネート積層体200の複数の層を一緒に押圧するように、方向604に向かって加熱ニップローラーに投入される。加熱ローラー602は、
図5A及び5Bと併せて記載したように、熱及び圧力の組み合わせを用いてラミネート積層体200の感圧接着層212の特性を変更する。
【0030】
図7は、真空バッグ702及びホットプレスプラテン502を用いて例示的なラミネート積層体200を形成する例示的なプロセスを表す。例示的なホットプレスプラテン502は、真空バッグ702により圧力がもたらされているときに熱を供給し、熱及び圧力の組み合わせを用いてラミネート積層体200が処理される。真空バッグ702及びホットプレスプラテン502により、
図5A及び5Bと併せて記載したように、熱及び圧力の組み合わせを用いてラミネート積層体200の感圧接着層212の特性が変更される。
【0031】
図8は、紫外線源804からの紫外線802を用いて、感圧接着層212を含む例示的なラミネート積層体200を硬化又は処理するための例示的なプロセスを表す。感圧接着層212は、局所的に紫外線802に曝露される。感圧接着層212は、ランダムに選択されうる、又は規定のパターンの一部でありうる特定の位置で紫外線802に曝露されうる。
図5A及び5Bに示す実施例と併せて記載した圧力及び熱の組み合わせと同様に、紫外線802により、例示的な感圧接着層212の特性は曝露された位置で変更される。
【0032】
図9は、例示的なラミネート積層体900と共に使用される感圧接着樹脂に変更を加える例示的な手法を表し、この手法は、感圧接着樹脂に繊維902(例えば、添加物)を添加することを含む。
図9に示す実施例では、感圧接着樹脂をラミネート積層体900に塗布する前に、繊維902がこの樹脂に添加され、感圧接着層904が形成されうる。代替的には、感圧接着樹脂をラミネート積層体900に塗布した後、且つ感圧接着層904が硬化する前に繊維902が感圧接着層904に添加される。繊維902は、任意の不燃性不織布繊維、連続繊維、チョップド繊維、織物繊維、又は不織布繊維を含みうる。
【0033】
ラミネート積層体900を接合表面(例えば、航空機のパネル)に貼り付けるときに、感圧接着層904と接合表面との間に閉じ込められた任意の気体によって感圧接着層904に局所的なひずみが生じ、これにより繊維902に隣接する空隙が形成される。この空隙は相互に連結され、気体306が感圧接着層904を通過することを可能にする通気経路304を形成する。
【0034】
図10は、例示的なラミネート積層体1000と共に使用される感圧接着樹脂に変更を加える例示的な手法を表し、この手法は、粒子1002(例えば、添加物)を感圧接着樹脂に添加することを含む。
図9と併せて記載した繊維902と同様に、感圧接着層1004が形成される前又は後に粒子1002が感圧接着樹脂に添加されうる。粒子1002は、ガラス、セラミック、金属、任意の他の不燃性の粒子、又はそれらの任意の組み合わせを含みうる。いくつかの実施例では、繊維902と粒子1002との組み合わせが使用されてよい。粒子1002は、上述の繊維902が感圧接着層904に通気経路304の形成をもたらす手法と同様に、感圧接着層1004に通気経路304を形成をもたらす。いくつかの実施例では、繊維902及び/又は粒子1002を感圧接着層904、1004に添加することに加えて、ラミネート積層体900、1000を、
図5A~7と併せて記載したように圧力及び熱を用いて、又は
図8と併せて記載したように紫外線802を用いて処理してもよい。
【0035】
図11は、感圧接着樹脂がスクリム1102に堆積又はプリントされて感圧接着層1104を形成する、例示的なラミネート積層体1100を表す。感圧接着樹脂が不織布繊維スクリム1102に堆積(又はプリント)され、感圧接着層1104と不織布繊維スクリム1102との間の境界面1106に凹凸が形成される。いくつかの実施例では、感圧接着樹脂は不織布繊維スクリム1102にランダムに堆積される。他の実施例では、感圧接着樹脂は不織布繊維スクリム1102に規定のパターン状に堆積される。凹凸により、境界面1106上、及び感圧接着層212内には相互に連結された経路を形成することができ、気体306は通気経路304を通過することが可能となる。凹凸により、感圧接着層212のいくつかの領域の厚さは、感圧接着層212の他の領域と比較して相対的に薄くなる。感圧接着層212の厚さが相対的に薄い領域では、閉じ込められた気体306によるひずみを受けたときに通気経路304が形成されやすい。いくつかの実施例では、感圧接着層1104を不織布繊維スクリム1102に堆積することに加えて、
図2A~7と併せて上記した実施例を用いてラミネート積層体1100を処理してもよい。
【0036】
図12は、ラミネート積層体200、900、1000、及び1100を形成する例示的な方法1200を表すフローチャートを示す。
図12に示すフローチャートに言及して例示的な方法1200を記載するが、例示的なラミネート積層体200、900、1000、及び1100を形成する他の方法が代替的に使用されてもよい。例えば、ブロックの実行順序を変更してもよく、且つ/又は、記載したブロックの一部を変更するか、除外するか、又は組み合わせてもよい。方法1200は、感圧接着層904及び1004を形成するために使用されうる感圧接着樹脂に添加物(例えば、繊維902、粒子1002)が混合されたときに開始する(ブロック1202)。いくつかの実施例では、このステップは除外してもよく、添加物902及び1002は感圧接着層212及び1104に添加されない。いくつかの実施例では、感圧接着樹脂がスクリム1102に堆積されて感圧接着層1104を形成する(ブロック1204)。感圧接着樹脂は、通気経路304がパターン状に又はランダムに形成されるように、スクリム1102にプリントされてもよい。感圧接着層1104がスクリム1102に形成された後、感圧接着層1104を含むラミネート積層体1100が形成される。(ブロック1206)。代替的には、感圧接着樹脂がスクリム1102に堆積されず、例示的な感圧接着層212、904、及び1004を用いて例示的なラミネート積層体200、900、及び1000が形成される(ブロック1206)。いくつかの実施例では、ラミネート積層体200、900、1000、及び1100は、インク層204、エンボス樹脂層206、及びバリア層208を含む追加の層を含みうる。例示的なラミネート積層体200、900、1000、及び1100は、熱及び圧力の組み合わせ、又は紫外線802を用いて処理される(ブロック1208)。例えば、熱及び圧力は、ホットプレスプラテン502、加熱ローラー602、又は、真空バッグ702及びホットプレスプラテン502を用いて加えられうる。熱及び圧力の組み合わせを用いてラミネート積層体200、900、1000、及び1100を処理することにより、感圧接着層212がひずみを受けたときに通気経路304が形成されるように、感圧接着層212の特性は変更される。ブロック1202で添加物902、1002が添加される、又はブロック1204で感圧接着樹脂がスクリム1102にプリントされるいくつかの実施例では、感圧接着層904、1004、及び1104は、ブロック1208で熱及び圧力の組み合わせを用いて処理されなくてもよい。
【0037】
図13は、ラミネート積層体200、900、1000、及び1100を表面302(例えば、航空機の表面)に貼り付ける例示的な方法1100を表すフローチャートを示す。いくつかの実施例では、修理業者が、ラミネート積層体200、900、1000、及び1100を表面302に貼り付ける前に既存のラミネートを表面302から取り除く。方法1300は、除去可能なライナー214がラミネート積層体200、900、1000、及び1100から取り除かれたときに開始する(ブロック1302)。次いで、感圧接着層212、904、1004、及び1104を用いて装飾ラミネートが表面302に貼り付けられる(ブロック1304)。感圧接着層212、904、1004、及び1104と表面302との間に気体306が閉じ込められうる(ブロック1306)。感圧接着層212、904、1004、及び1104は、気体306が閉じ込められた場所で局所的にひずみを受け、感圧接着層212、904、1004、及び1104に通気経路304が形成される(ブロック1308)。閉じ込められた気体306は、感圧接着層212、904、1004、及び1104に形成された通気経路304を介して感圧接着層212、904、1004、及び1104を通過する(ブロック1310)。
【0038】
更に、本開示は以下の条項による実施例を含む。
【0039】
条項1 気体透過性不織布層及び感圧接着層を含むラミネート積層体を形成することであって、感圧接着層の表面は、気体透過性不織布層の表面に面している、形成すること、及び、閉じ込められた気体が感圧接着層を通過することを可能にする複数の通気経路が感圧接着層に形成されるように、ラミネート積層体を処理することを含む、方法。
【0040】
条項2 複数の通気経路は、感圧接着層の局所的なひずみによって形成される、条項1に記載の方法。
【0041】
条項3 局所的なひずみによって形成された複数の通気経路のサイズは少なくとも50ナノメートルであり、感圧接着層の固有の透過率は少なくとも1x10-13cm2である、条項2に記載の方法。
【0042】
条項4 ラミネート積層体を処理することは、ラミネート積層体に圧力及び熱を加えることを含む、条項1から3の何れか一項に記載の方法。
【0043】
条項5 圧力及び熱によって、感圧接着層が気体透過性不織布層に接合される、条項4に記載の方法。
【0044】
条項6 ラミネート積層体に圧力及び熱を加えることは、ホットプレスプラテンの間にラミネート積層体を挟み込んで感圧接着層の延性を低下させることを含む、条項4に記載の方法。
【0045】
条項7 圧力及び熱を加えることは、ラミネート積層体を加熱ニップローラーのローラー間に配置して感圧接着層の延性を低下させることを含む、条項4に記載の方法。
【0046】
条項8 圧力及び熱を加えることは、真空バッグと加熱プラテンとの間にラミネート積層体を配置して感圧接着層の延性を低下させることを含む、条項4に記載の方法。
【0047】
条項9 ラミネート積層体の感圧接着層を形成するために使用される感圧接着樹脂に添加物を混合することを更に含む、条項1から8の何れか一項に記載の方法。
【0048】
条項10 感圧接着層に複数の通気経路が形成されるようにラミネート積層体を処理することは、感圧接着層を局所的に紫外線に曝露することを含む、条項1から9の何れか一項に記載の方法。
【0049】
条項11 感圧接着層をスクリム上にパターン状に堆積して、感圧接着層に複数の通気経路を形成することを更に含む、条項1から10の何れか一項に記載の方法。
【0050】
条項12 装飾ラミネートのためのラミネート積層体を含む装置であって、ラミネート積層体は感圧接着層を含み、感圧接着層は、気体が、閉じ込められた気体のポケットを生成することなく感圧接着層を通過し気体透過性不織布層に入り込むことを可能にする固有の透過率を有する、装置。
【0051】
条項13 感圧接着層は、感圧接着層に複数の通気経路を生成し、固有の透過率をもたらすための繊維を含む、条項12に記載の装置。
【0052】
条項14 感圧接着層は、感圧接着層に複数の通気経路を生成し、固有の透過率をもたらすための粒子を含む、条項12に記載の装置。
【0053】
条項15 感圧接着層は、固有の透過率をもたらすように、少なくとも50ナノメートルのサイズを有する複数の通気経路を設けるものである、条項12から14の何れか一項に記載の装置。
【0054】
条項16 固有の透過率が少なくとも1x10-13cm2である、条項12から15の何れか一項に記載の装置。
【0055】
条項17 任意選択的に、透明なキャップ及び/又はトップシート層202、インク層204、エンボス樹脂層206、並びにバリア層208の少なくとも1つを更に含む、条項12から16の何れか一項に記載の装置。
【0056】
条項18 感圧接着層を介して装飾ラミネートを表面に貼り付けること、感圧接着層と表面との間に気体を閉じ込めること、及び、気体が感圧接着層を通過することを可能にする複数の通気経路を感圧接着層に形成すること、を含む方法。
【0057】
条項19 装飾ラミネートを表面に貼り付けることができるように、感圧接着層から除去可能なライナーを取り除くことを更に含む、条項18に記載の方法。
【0058】
条項20 気体が感圧接着層を通過することを可能にするため、複数の通気経路は少なくとも50ナノメートルの幅を有する、条項18又は19に記載の方法。
【0059】
条項21 閉じ込められた気体によって生じた局所的なひずみにより、複数の通気経路が感圧接着層に形成される、条項18から20の何れか一項に記載の方法。
【0060】
上述の内容から、開示した方法、装置、及び製造品により、気体が装飾ラミネートのラミネート積層体の感圧接着層を通過することが可能となり、装飾ラミネートの画像又は文字を歪めうる気泡の形成が防止されることが理解されるであろう。
【0061】
本明細書では特定の例示的な装置及び方法を記載してきたが、本特許出願の範囲はこれらに限定されるものではない。むしろ、本特許出願は、補正された特許請求の範囲に文言通り又は均等論の原則の下に適正に含まれる全ての方法、装置及び製品を包含する。