(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂系のためのナノ補強フィラー材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230721BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20230721BHJP
C08K 9/02 20060101ALI20230721BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230721BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20230721BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20230721BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20230721BHJP
【FI】
C08L101/00
B64C1/00 B
C08K9/02
C08L63/00 C
C08J3/20 Z CER
B82Y30/00
B82Y40/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018024001
(22)【出願日】2018-02-14
【審査請求日】2021-01-25
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】オム・プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】メガ・サフ
(72)【発明者】
【氏名】アショク・ライチュール
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-245022(JP,A)
【文献】国際公開第2011/074125(WO,A1)
【文献】特開2015-040211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 59/00-59/72
C08J 3/00-3/28
B64C 1/00
B82Y 30/00
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合構造(28)のためのエポキシ樹脂系(62)のためのナノ補強フィラー材料(150)の製造方法(200)であって、
(202)脱イオン(DI)水(102)に懸濁させたそれぞれ球形状(84)を有する複数のポリマーナノ粒子(80)を含むポリマー懸濁液(100)を生成するステップと、
(204)超音波処理されたポリマー懸濁液(100a)を得るために前記ポリマー懸濁液(100)を超音波処理するステップと、
(206)脱イオン(DI)水(102)に懸濁させた複数の酸化グラフェン(GO)シート(90)を含む酸化グラフェン(GO)懸濁液(106)を生成するステップと、
(208)超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液(106a)を得るために前記酸化グラフェン(GO)懸濁液(106)を超音波処理するステップと、
(210)超音波処理された混合物(130)を得るために前記超音波処理されたポリマー懸濁液(100a)及び前記超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液(106a)を一緒に混合容器(124)内で混合するステップと、
(212)前記超音波処理された混合物(130)を有効温度(136)の不活性雰囲気(132)中で加熱し、静電的相互作用反応(142)により、個々のポリマーナノ粒子(80a)を個々の酸化グラフェン(GO)シート(90a)で均一に被覆するために静電プロセス(140)を利用して、それぞれポリマーコア部(154)及び酸化グラフェン(GO)シェル部(156)を含む複数のポリマー-GOコア-シェルナノ粒子(152)を含む前記ナノ補強フィラー材料(150)を得るステップと、
(214)前記ナノ補強フィラー材料(150)を洗浄するステップと、
(216)前記ナノ補強フィラー材料(150)を乾燥するステップと、
を含み、
前記ポリマー懸濁液(100)を生成するステップ(202)が、40nm(40ナノメートル)~150nm(150ナノメートル)の範囲内の粒径(88)を有する前記複数のポリマーナノ粒子(80)のそれぞれを含む前記ポリマー懸濁液(100)を生成するステップを含
み、
前記酸化グラフェン(GO)懸濁液(106)を生成するステップ(206)において脱イオン(DI)水(102)に懸濁させた前記複数の酸化グラフェン(GO)シートが、グラファイトの酸化剥離により生成され、次いで脱イオン(DI)水(102)に懸濁されたものであり、
前記ナノ補強フィラー材料(150)が、航空機(12)内のエポキシ複合構造(28a)を含む前記複合構造(28)のための前記エポキシ樹脂系(62)中で使用されるものである、
方法(200)。
【請求項2】
前記ポリマー懸濁液(100)を生成するステップ(202)が、ポリスチレン(78a)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ブチルアクリレート)(PBA)、ポリ(ブチルアクリレート)-ポリ(メチルメタクリレート)(PBA-PMMA)、ブチルメチルアクリレート(BMA)、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルコポリマー、ポリクロロプレン(ネオプレン)、ニトリルゴム、アクリルゴム、フルオロエラストマー(FKM)、ポリイソプレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)及びスチレン-ブタジエンからなる群から選択されるポリマー(78)を含む前記複数のポリマーナノ粒子のそれぞれを含む前記ポリマー懸濁液(100)を生成するステップを含む、請求項1に記載の方法(200)。
【請求項3】
前記超音波処理されたポリマー懸濁液(100a)及び前記超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液(106a)を混合するステップ(210)が、5.58:1.12(w/w)~6.09:0.91(w/w)の前記複数のポリマーナノ粒子(80)対前記複数の酸化グラフェン(GO)シート(90)の比で前記超音波処理されたポリマー懸濁液(100a)及び前記超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液(106a)を混合するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法(200)。
【請求項4】
前記超音波処理された混合物(130)を加熱するステップ(212)が、70℃(摂氏70度)~100℃(摂氏100度)の範囲内の前記有効温度(136)で加熱するステップを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項5】
前記超音波処理された混合物(130)を加熱するステップ(212)が、1atm(1気圧)~12atm(12気圧)の範囲内の気圧(135)を含む有効圧力(134)で加熱するステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項6】
前記超音波処理された混合物(130)を加熱するステップ(212)が、3h(3時間)~6h(6時間)の範囲内の有効時間(138)加熱するステップを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、複合構造のための補強材料又は強靱化材料に関し、とりわけ、航空機複合構造及び他の複合構造などの複合構造のためのエポキシ樹脂系のためのナノ補強フィラー材料に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、その高い重量比強度、耐食性及び他の有利な特性のために、航空機、宇宙船、回転翼航空機、船舶、自動車、トラック及び他のビークルの製造における使用を含め、多種多様な構造及び構成部品において使用される。特に、航空機の構成において、胴体、翼、尾部、外板パネル及び他の航空機の構成部品を形成するために、ますます多くの複合構造及び構成部品が使用されている。
【0003】
エポキシ樹脂は一般に、その高温性能、耐薬品性及び良好な接着特性のために、繊維補強複合材料のマトリックスとして使用される。このようなエポキシ樹脂には、硬化後は永続的に硬くなる構造的な熱硬化性ポリマーであるエポキシポリマーが含まれる。しかし、エポキシポリマーは、亀裂伝播に対して弱くなる恐れがある三次元架橋構造を有する。したがって、破壊靭性を改善するだけでなく、他の機械的特性及び他の物理特性も改善するために、補強又は強靱化フィラー材料をエポキシ樹脂に加える必要がある場合がある。
【0004】
エポキシ樹脂のための既知の補強又は強靱化フィラー材料が存在する。例えば、このような既知の補強又は強靱化フィラー材料には、カルボキシル末端ブタジエン-アクリロニトリル(CTBN)ゴム及びコア-シェルガラスビーズ-ポリマーマイクロスフェアが含まれ得る。しかし、このような既知の補強又は強靱化フィラー材料は、破壊靭性を改善し得るが、強度及び熱的特性などの他の物理特性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0005】
さらに、エポキシ樹脂のための既知の補強又は強靱化フィラー材料には、無機シリカナノ粒子などのナノ補強フィラー材料が含まれる。しかし、このような無機シリカナノ粒子は、重量が大きい望ましくない複合材になり得る高い密度を有する。重量が大きくなると、燃料の使用量が増えてコスト高につながるため、重量が大きい複合構造は、航空機、宇宙船及び他のビークルには望ましくない可能性がある。したがって、重量がより小さい構造の製造を可能にする複合材料が有利であり、望ましい。
【0006】
さらに、エポキシ樹脂のための既知のナノ補強フィラー材料には、グラファイトの酸化剥離によって得られる酸化グラフェン(GO)ナノシート、すなわち、GOシートなどのグラフェン及び修飾グラフェン補強フィラー材料が含まれる。酸化グラフェン(GO)シートは、多くのヒドロキシル基、エポキシ基及びカルボキシル基を有し、これらは、その表面及び縁部でエポキシ樹脂との化学的親和性があり、良好な官能基化、加工及び水溶性をGOシートに与える。他の物理特性を損なわずに機械的特性を向上させるために、0.1~3重量%(重量パーセント)の極めて低い添加レベルで酸化グラフェン(GO)シートの調査が行われた。しかし、粒子の凝集など、様々な問題が存在し得る。さらに、このようなGOシートの形状及びサイズがどのように制御され得るのかについては十分理解されておらず、これは複合材の得られる特性に影響し得る。
【0007】
さらに、このような既知の酸化グラフェン(GO)シート(ナノシート)は、合成後に乾燥プロセスを経ると、望ましくないことに再び自己積層する恐れがある。個々のGOシートの再積層を防止又は回避するために、溶媒の使用が必要になることもある。しかし、何らかの残留溶媒が存在すると、GOシートとエポキシ樹脂マトリックスの間の架橋反応を妨害する可能性があり、エポキシ樹脂マトリックスの機械的特性に悪影響を及ぼす恐れがある。何らかの残留溶媒の存在を防止又は回避するために、溶媒除去が必要になることもある。このような溶媒除去には、溶媒を除去するための真空オーブン又は別の溶媒除去装置の使用が必要になることもある。このような溶媒除去は非常に時間がかかる(すなわち、23h(23時間)以上)ことがあり、非常に費用がかかることがある。GO被覆無機シリカナノ粒子の合成には無溶媒添加が利用されてきたが、ポリマーナノ粒子などのGO被覆有機ナノ粒子の合成に無溶媒添加が必要とされている。
【0008】
さらに、エポキシ樹脂のための既知のナノ補強フィラー材料には、ポリマーナノ粒子などのナノ粒子と共に使用される既知の酸化グラフェン(GO)シート(ナノシート)が含まれる。しかし、このような既知のGO被覆ポリマーナノ粒子には、350nm(ナノメートル)~数ミクロンのサイズの範囲のポリマーナノ粒子が含まれ、これには、大きいサイズのGOシートの使用が必要になることもある。大きいポリマーナノ粒子は、GOシートとエポキシ樹脂マトリックスの間の相互作用又は界面の表面積を小さくする可能性がある。
【0009】
さらに、大きいサイズのGOシートは単一のGOシートで多くの粒子を覆い、粒子構造を凝集させる可能性がある。単一のGOシート内の被覆された凝集粒子は、樹脂マトリックスとのエポキシの硬化反応を妨害する可能性があり、これは、不満足なナノ補強フィラー材料の機械的特性につながる恐れがある。
【0010】
したがって、当技術分野において、エポキシ樹脂マトリックスとの相互作用を向上させ、無溶媒であり、合成時間又は生産時間を短縮し、複合構造の重量を小さくし、既知のナノ補強フィラー材料及び方法に比べて利益を提供する、複合構造のためのエポキシ樹脂系と共に使用される改善されたナノ補強フィラー材料及びその製造方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この改善されたナノ補強フィラー材料及びその製造方法の必要が満たされる。以下の詳細な説明で述べる通り、改善されたナノ補強フィラー材料及びその製造方法の実施形態は、既知の材料及び方法に比べて著しい利益を提供し得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の実施形態において、複合構造のためのエポキシ樹脂系のためのナノ補強フィラー材料の製造方法が提供される。方法は、脱イオン(DI)水に懸濁させた複数のポリマーナノ粒子を含むポリマー懸濁液を生成するステップを含む。方法はさらに、超音波処理されたポリマー懸濁液を得るためにポリマー懸濁液を超音波処理するステップを含む。
【0013】
方法はさらに、脱イオン(DI)水に懸濁させた複数の酸化グラフェン(GO)シートを含む酸化グラフェン(GO)懸濁液を生成するステップを含む。方法はさらに、超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液を得るために酸化グラフェン(GO)懸濁液を超音波処理するステップを含む。
【0014】
方法はさらに、超音波処理された混合物を得るために超音波処理されたポリマー懸濁液及び超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液を一緒に混合容器内で混合するステップを含む。方法はさらに、超音波処理された混合物を有効温度の不活性雰囲気中で加熱し、静電的相互作用反応により、個々のポリマーナノ粒子を個々の酸化グラフェン(GO)シートで均一に被覆するために静電プロセスを利用して、ポリマー-GOコア-シェルナノ粒子を含むナノ補強フィラー材料を得るステップを含む。
【0015】
方法はさらに、ナノ補強フィラー材料を洗浄するステップと、ナノ補強フィラー材料を乾燥するステップとを含む。方法はさらに、エポキシ樹脂系に強靱化ナノ補強を施すために複合構造のためのエポキシ樹脂系中でナノ補強フィラー材料を使用するステップを含む。
【0016】
本開示の別の実施形態において、複合構造のためのエポキシ樹脂系のためのナノ補強フィラー材料の製造方法が提供される。方法は、脱イオン(DI)水に懸濁させた複数のポリスチレン(PS)ナノ粒子を含むポリスチレン(PS)懸濁液を生成するステップを含む。複数のポリスチレン(PS)ナノ粒子のそれぞれは、約40nm(40ナノメートル)~約150nm(150ナノメートル)の範囲内の粒径を有する。方法はさらに、超音波処理されたポリスチレン(PS)懸濁液を得るためにポリスチレン(PS)懸濁液を超音波処理するステップを含む。
【0017】
方法はさらに、脱イオン(DI)水に懸濁させた複数の酸化グラフェン(GO)シートを含む酸化グラフェン(GO)懸濁液を生成するステップを含む。方法はさらに、超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液を得るために酸化グラフェン(GO)懸濁液を超音波処理するステップを含む。
【0018】
方法はさらに、超音波処理された混合物を得るために超音波処理されたポリスチレン(PS)懸濁液及び超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液を一緒に混合容器内で混合するステップを含む。方法はさらに、超音波処理された混合物を約70℃(摂氏70度)~約100℃(摂氏100度)の範囲内の有効温度の不活性雰囲気中で加熱し、静電的相互作用反応により、個々のポリスチレン(PS)ナノ粒子を個々の酸化グラフェン(GO)シートで均一に被覆するために静電プロセスを利用して、ポリスチレン-GOコア-シェルナノ粒子を含むナノ補強フィラー材料を得るステップを含む。
【0019】
方法はさらに、ナノ補強フィラー材料を洗浄するステップと、ナノ補強フィラー材料を乾燥するステップとを含む。方法はさらに、エポキシ樹脂系に強靱化ナノ補強を施すために複合構造のためのエポキシ樹脂系中でナノ補強フィラー材料を使用するステップを含む。
【0020】
本開示の別の実施形態において、複合構造のためのエポキシ樹脂系のためのナノ補強フィラー材料が提供される。ナノ補強フィラー材料は、複数のポリマー-酸化グラフェン(GO)コア-シェルナノ粒子を含む。各ポリマー-酸化グラフェン(GO)コア-シェルナノ粒子は、ポリマーコア部及び酸化グラフェン(GO)シェル部を含む。
【0021】
複数のポリマー-酸化グラフェン(GO)コア-シェルナノ粒子は、超音波処理されたポリマー懸濁液を得るために脱イオン(DI)水に懸濁させ、次いで、超音波処理プロセスにより超音波処理することにより調製された複数のポリマーナノ粒子を含む。各ポリマーナノ粒子は、約40nm(40ナノメートル)~約150nm(150ナノメートル)の範囲内の粒径を有し、それぞれ球形状(84)を有する。
【0022】
複数のポリマー-酸化グラフェン(GO)コア-シェルナノ粒子はさらに、超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液を得るために脱イオン(DI)水(102)に懸濁させ、次いで、超音波処理プロセスにより超音波処理することによる複数の酸化グラフェン(GO)シートを含む。超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液は、超音波処理されたポリマー懸濁液とは別に調製される。各GOシートは、約50nm(50ナノメートル)~約350nm(350ナノメートル)の範囲内のシートサイズを有し、それぞれ平面形状を有する。
【0023】
超音波処理されたポリマー懸濁液及び超音波処理されたGO懸濁液が混ぜ合わせられて超音波処理された混合物が得られる。超音波処理された混合物は、不活性雰囲気中で加熱され、静電プロセスを経て、静電的相互作用反応により、個々のポリマーナノ粒子を個々の酸化グラフェン(GO)シートで均一に被覆し、ナノ補強フィラー材料を得る。ナノ補強フィラー材料はさらに洗浄され、乾燥され、且つ複合構造のためのエポキシ樹脂系中で使用される。
【0024】
述べた形態、機能及び利点は、本開示の様々な実施形態において独立して実現することができて、又は、さらに別の実施形態において組み合わせてもよく、さらにその詳細は、以下の説明及び図面を参照することによって分かる。
【0025】
本開示は、好ましい例示的な実施形態を示すが必ずしも原寸に比例して描かれていない添付図面と併せて、以下のより詳細な説明を参照してよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の補強フィラー材料の実施形態で補強された1つ又は複数の複合構造を組み込むことができる航空ビークルの斜視図の例示である。
【
図2】航空機の製造及び保守点検方法のフロー図である。
【
図4】本開示のナノ補強フィラー材料の実施形態の生成を示す概略図である。
【
図5】本開示のナノ補強フィラー材料及び生産システムの実施形態を示す機能ボックス図の例示である。
【
図6A】本開示の方法の例示的な実施形態のフロー図の例示である。
【
図6B】本開示の方法の別の例示的な実施形態のフロー図の例示である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここで、一部であってすべてではない開示されている実施形態を示す添付図面を参照して開示されている実施形態を以下でさらに詳しく説明する。実際、いくつかの異なる実施形態が記載され得るが、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全になり、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように記載される。
【0028】
ここで図を参照すると、
図1は、本開示のナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)の実施形態で補強された、エポキシ複合構造28aの形態などの1つ又は複数の複合構造28を組み込むことができる、航空機12の形態などの航空ビークル10の斜視図の例示である。
図1にさらに示す通り、航空機12の形態などの航空ビークル10は、胴体14、機首16、翼18、エンジン20、並びに水平安定板24及び垂直安定板26を含む尾翼22を含む。
【0029】
図1に示す航空ビークル10は一般に民間旅客航空機を表すが、開示されている実施形態の教示は、他の旅客航空機、貨物航空機、軍用航空機、回転翼航空機及び他のタイプの航空機又は航空ビークル、並びに航空宇宙ビークル、人工衛星、宇宙発射ビークル、ロケット及び他の航空宇宙ビークルに適用されてもよい。また、本開示に従って、ナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)の1つ又は複数の実施形態で補強された複合構造は、ボート及び他の船舶、列車、自動車、トラック、バスなどの他の輸送ビークル、又は他の適した輸送ビークルにおいて利用されてもよいと理解することができる。
【0030】
ここで
図2及び
図3を参照すると、
図2は航空機の製造及び保守点検方法30のフロー図であり、
図3は航空機46のブロック図の例示である。本開示の実施形態は、
図2に示す航空機の製造及び保守点検方法30、並びに
図3に示す航空機46の文脈において記述され得る。先行生産の間、例示的な航空機の製造及び保守点検方法30(
図2参照)は、航空機46(
図3参照)の仕様及び設計32(
図2参照)並びに材料調達34(
図2参照)を含んでもよい。製造の間、航空機46(
図3参照)の構成要素及び部分組立品の製造36(
図2参照)並びにシステム統合38(
図2参照)が行われる。その後、航空機46(
図3参照)は、就航中42(
図2参照)にするために、認証及び搬送40(
図2参照)を経てもよい。顧客による就航中42(
図2参照)、航空機46(
図3参照)は、定期的な整備及び保守点検44(
図2参照)(変更、再構成、改修及び他の適した保守点検を含んでもよい。)が予定されてもよい。
【0031】
航空機の製造及び保守点検方法30(
図2参照)のプロセスのそれぞれは、システムインテグレーター、第三者及び/又はオペレーター(例えば、顧客)によって実施又は実行されてもよい。本説明において、システムインテグレーターは、限定することなしに、任意の数の航空機メーカー及び主要システム下請業者を含んでもよく、第三者は、限定することなしに、任意の数の販売業者、下請業者及び供給業者を含んでもよく、オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事実体、サービス組織及び他の適したオペレーターを含んでもよい。
【0032】
図3に示す通り、例示的な航空機の製造及び保守点検方法30によって生産される航空機46は、複数のシステム50及び内部52を備えた機体48を含んでもよい。
図3にさらに示す通り、システム50の例は、推進システム54、電気システム56、油圧システム58及び環境システム60のうちの1つ又は複数を含んでもよい。任意の数の他のシステムが含まれてもよい。航空宇宙の例が示されているが、本開示の原理は、自動車産業などの他の産業に適用されてもよい。
【0033】
本明細書において具体化される方法及びシステムは、航空機の製造及び保守点検方法30(
図2参照)の1つ又は複数の任意の段階の間に用いられてもよい。例えば、構成要素及び部分組立品の製造36(
図2参照)に対応する構成要素又は部分組立品は、航空機46(
図3参照)が就航中42(
図2参照)に生産される構成要素又は部分組立品と同様の方法で生産又は製造されてもよい。また、1つ又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又はその組み合わせは、例えば、航空機46(
図3参照)の組立を大幅に早めたり、コストを低減したりすることによって、構成要素及び部分組立品の製造36(
図2参照)並びにシステム統合38(
図2参照)の間に利用されてもよい。同様に、1つ又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、あるいはその組み合わせは、航空機46(
図3参照)が就航中42(
図2参照)、例えば、限定することなしに、整備及び保守点検44(
図2参照)に利用されてもよい。
【0034】
ここで
図4及び
図5を参照すると、
図4は、本開示のナノ補強フィラー材料150の実施形態の生成を示す概略図である。
図5は、本開示のナノ補強フィラー材料150、150a及び生産システム76の実施形態を示す機能ボックス図の例示である。ナノ補強フィラー材料150を
図4及び
図5と共に説明する。
【0035】
図4は複数のポリマーナノ粒子80を示す。複数のポリマーナノ粒子80(
図4、
図5参照)のそれぞれは、正電荷82(
図4、
図5参照)、球形状84(
図4、
図5参照)、例えば、マイクロスフェア形状、及び表面86(
図5参照)、例えば、曲面を有する。
【0036】
複数のポリマーナノ粒子80(
図4、
図5参照)のそれぞれはポリマー78(
図5参照)を含む。ポリマー78は、ナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)のポリマーコア部154(
図5参照)を形成する。
【0037】
ポリマー78(
図5参照)は、ポリスチレン(PS)78a(
図5参照)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ブチルアクリレート)(PBA)、ポリ(ブチルアクリレート)(PBA)-ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)(PBA-PMMA)、ブチルメチルアクリレート(BMA)、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルコポリマー、ポリクロロプレン(ネオプレン)、ニトリルゴム、アクリルゴム、フルオロエラストマー(FKM)、ポリイソプレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、スチレン-ブタジエン又は別の適したポリマーからなる群から選択される。ポリマー78(
図5参照)は好ましくは、表面官能基化あり、又はなしのアリルポリマーである。好ましくは、ポリマー78はポリスチレン(PS)78a(
図5参照)である。本明細書に開示されているナノ補強フィラー材料150a(
図5参照)中で使用されるポリスチレンナノ粒子81(
図5参照)は、ペンシルベニア州ウォリントンのPolysciences,Inc.から入手することができる。
【0038】
好ましくは、各ポリマーナノ粒子80(
図4、
図5参照)は、約30nm(30ナノメートル)~約180nm(180ナノメートル)の範囲内の粒径88(
図5参照)を有する。より好ましくは、各ポリマーナノ粒子80(
図4、
図5参照)は、約40nm(40ナノメートル)~約150nm(150ナノメートル)の範囲内の粒径88(
図5参照)を有する。最も好ましくは、各ポリマーナノ粒子80は、約80nm(80ナノメートル)~約100nm(100ナノメートル)の範囲内の粒径88を有する。
【0039】
図4はさらに、ポリマー懸濁液100を生成するために第1の容器104内の脱イオン(DI)水102に懸濁させた複数のポリマーナノ粒子80を示す。生産システム76(
図5参照)はDI水102(
図5参照)を含む。好ましくは、ポリマー懸濁液100(
図5参照)はポリスチレン懸濁液101(
図5参照)である。ポリマー懸濁液100(
図5参照)を生成又は調製するステップの一例において、ポリスチレン(PS)ナノ粒子81(
図5参照)は、12mg/ml(12ミリグラム/ミリリットル)の濃度を有しており、200ml(200ミリリットル)のDI水102(
図5参照)中に周囲温度又は室温で懸濁させた。
【0040】
図4はさらに、バスソニケーターなどの超音波処理装置110(
図5も参照)を用いる浴超音波処理プロセスなどの超音波処理プロセス112(
図5も参照)を経てDI水102に懸濁させた複数のポリマーナノ粒子80を含むポリマー懸濁液100を示す。本明細書において用いられるとき、「超音波処理プロセス」は、液体中のナノ粒子を均一に分散させ、ナノ粒子のあらゆる凝集塊を崩壊させる目的で、脱イオン(DI)水などの液体中でナノ粒子などの粒子の懸濁液を撹拌するために、且つ/又は特定の化学反応を進めるためのエネルギーを供給するために、超音波又は他の超音波手段によって音響エネルギーなどのエネルギーを加えるためのプロセスを意味する。
【0041】
図4に示す通り、超音波処理装置110は、第1の容器104内のポリマー懸濁液100中に部分的に沈められたソニケーターなどの超音波処理プローブ部114を含む。超音波処理プローブ部114は、超音波処理される超音波処理ゾーン又は領域の直上又は近傍の強度が高度に局在する。しかし、超音波処理装置110は、ソニケーターとして働く超音波処理プローブ部に加えて、他の適したタイプの装置を使用してもよく、又は超音波処理装置は、バスソニケーターを備えた超音波処理浴の形態であってもよい。
図4にさらに示す通り、超音波処理プローブ部114は、超音波処理装置110の超音波処理コントローラー部116に接続される。
図4にさらに示す通り、ポリマー懸濁液100が入った第1の容器104は、超音波処理装置110の超音波処理プラットホーム118上に配置される。超音波処理プローブ部114は、超音波処理プロセス112の間、ポリマー懸濁液100中に音響エネルギー120を放射する。ポリマー懸濁液100は超音波処理プロセス112(
図4、
図5参照)を経て、超音波処理されたポリマー懸濁液100a(
図4、
図5参照)が得られる。超音波処理されたポリマー懸濁液100a(
図5参照)は、十分に分散したポリマー粒子懸濁液である。ポリマー懸濁液100がポリスチレン懸濁液101(
図5参照)を含み、ポリスチレン懸濁液101が超音波処理プロセス112(
図4、
図5参照)を経るとき、超音波処理されたポリスチレン懸濁液101a(
図5参照)が得られる。超音波処理されたポリスチレン懸濁液101a(
図5参照)は、十分に分散したポリスチレン粒子懸濁液である。好ましくは、ポリマー懸濁液100は、約15分~約60分の範囲内の時間、より好ましくは15分の時間、周囲温度又は室温で超音波処理プロセス112を経る。超音波処理プロセス112は、ポリマーナノ粒子80の凝集塊(すなわち、互いに密着した複数のナノ粒子)の形成の防止に役立ち、形成したポリマーナノ粒子80の凝集塊の除去に役立つ。しかし、60分を超えてポリマー懸濁液100の超音波処理プロセス112を実施することは、超音波に過剰に暴露されることによってポリマーナノ粒子80のモルホロジーが変形する恐れがあるため、回避したい場合がある。
【0042】
図4はさらに、GOナノシートとも呼ばれる複数の酸化グラフェン(GO)シート90を示す。複数のGOシート90(
図4、
図5参照)のそれぞれは、負電荷92(
図4、
図5参照)、平面形状94(
図5参照)、例えば、平面のシート形状、及び滑らかな表面96(
図5参照)を有する。GOシート90のそれぞれは、ナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)の酸化グラフェン(GO)シェル部156(
図5参照)を形成する。
【0043】
複数のGOシート90(
図4、
図5参照)のそれぞれは、強酸の存在下のグラファイトの酸化剥離又は酸化により生成されるグラフェンの酸化形態である酸化グラフェン(GO)を含む。GOは、様々な酸素含有官能基(例えば、ヒドロキシル、エポキシ、カルボキシル、ケトン)を含み、これらは、その表面及び縁部でエポキシ樹脂との化学的親和性がある。GOは好ましくは、エポキシ樹脂マトリックスなどの有機マトリックスに取り込むために小分子又はポリマーで官能化される。化学的又は熱的方法によるGOの還元は、当初のグラフェン骨格の部分的な回復を可能にする。GOシートは、0.1~3重量%(重量パーセント)の極めて低い添加レベルで、他の物理特性を損なわずに機械的特性を向上させる。
【0044】
図4はさらに、酸化グラフェン(GO)懸濁液106を生成するために第2の容器108内の脱イオン(DI)水102に懸濁させた複数の酸化グラフェン(GO)シート90を示す。GO懸濁液106(
図4、
図5参照)を生成又は調製するステップの一例において、GOシート90(
図5参照)は、1mg/ml(1ミリグラム/ミリリットル)の濃度を有しており、200ml(200ミリリットル)のDI水102(
図5参照)中に周囲温度又は室温で懸濁させた。GO懸濁液106の安定性は非常に高く、使用前まで3カ月以上懸濁し得る。
【0045】
図4はさらに、バスソニケーターなどの超音波処理装置110(
図5も参照)を用いる浴超音波処理プロセスなどの超音波処理プロセス112(
図5も参照)を経てDI水102に懸濁させた複数のGOシート90を含むGO懸濁液106を示す。
図4に示す通り、超音波処理装置110は、第2の容器108内のGO懸濁液106中に部分的に沈められたソニケーターなどの超音波処理プローブ部114を含む。しかし、超音波処理装置110は、ソニケーターとして働く超音波処理プローブ部に加えて、他の適したタイプの装置を使用してもよい。
図4にさらに示す通り、超音波処理プローブ部114は、超音波処理装置110の超音波処理コントローラー部116に接続される。
図4にさらに示す通り、GO懸濁液106が入った第2の容器108は、超音波処理装置110の超音波処理プラットホーム118上に配置される。超音波処理プローブ部114は、超音波処理プロセス112の間、GO懸濁液106中に音響エネルギー120を放射する。GO懸濁液106は超音波処理プロセス112(
図4、
図5参照)を経て、超音波処理されたGO懸濁液106a(
図4、
図5参照)が得られる。
【0046】
好ましくは、GO懸濁液106(
図5参照)は、ポリスチレン(PS)ナノ粒子81などのポリマーナノ粒子80をコーティングするための所望のナノサイズのGOシート90を得るために、有効時間の超音波処理プロセス112(
図5参照)を経る。GO懸濁液106を生成するために使用されるとき、超音波処理プロセス112の前に、GOシート90は当初、約500nm(500ナノメートル)~約5ミクロンの範囲内のシートサイズ98(
図5参照)を有する。GO懸濁液106は、GOシート90の横寸法など、GOシート90のシートサイズ98(
図5参照)を小さくするために、有効時間の超音波処理プロセス112を経る。有効時間の超音波処理プロセス112を経た後、GOシート90(
図4、
図5参照)は、好ましくは約50nm(50ナノメートル)~約350nm(350ナノメートル)の範囲内、より好ましくは約150nm(150ナノメートル)~約300nm(300ナノメートル)の範囲内、最も好ましくは約200nm(200ナノメートル)~約300nm(300ナノメートル)の範囲内のシートサイズ98(
図5参照)を有する。
【0047】
本明細書において用いられるとき、GOシートの「シートサイズ」は、GOシートの横寸法を含む、GOシートの平均シート直径又は特徴的な長さスケールを意味する。個々又は単一のGOシート90a(
図5参照)のシートサイズ98(
図5参照)は、それぞれの個々のポリマーナノ粒子80a(
図5参照)の表面86(
図5参照)を完全且つ十分に被覆するのに十分である必要があり、各ポリマーナノ粒子80は、約30nm(30ナノメートル)~約180nm(180ナノメートル)の範囲内の粒径88(
図5参照)を有する。各GOシート90は好ましくは、約1nm(1ナノメートル)~約5nm(5ナノメートル)の範囲内の厚さを有する。
【0048】
好ましくは、GO懸濁液106は、約1h(1時間)~約6h(6時間)の範囲内の時間、周囲温度又は室温で超音波処理プロセス112を経る。好ましくは、GO懸濁液106の超音波処理プロセス112の間、室温は、GOシート90の熱安定性の閾値未満、例えば、50℃(摂氏50度)未満に保たれる。一例では、GOシート90の横寸法を小さくするために、GO懸濁液106が、初めに、バスソニケーターの形態の超音波処理装置110(
図4、
図5参照)を室温で2h(2時間)使用する超音波処理プロセス112(
図4、
図5参照)で超音波処理され、次いで、その後、超音波処理装置110及び超音波処理プローブ部114(
図4参照)を室温で3h(3時間)使用する超音波処理プロセス112で超音波処理された。
【0049】
超音波処理されたGO懸濁液106a(
図4、
図5参照)は、別の時間で、且つ/又は別の超音波処理装置110(
図4参照)を使用して、超音波処理されたポリマー懸濁液100aとは別に調製される。好ましくは、超音波処理プロセス112(
図4、
図5参照)は、個々のポリスチレン(PS)ナノ粒子81a(
図5参照)など、個々のポリマーナノ粒子80a(
図5参照)を効果的且つ均一に被覆又はコーティングする所望の許容されるサイズまで個々のGOシート90a(
図5参照)の横サイズを小さくする。GOシート90がGO懸濁液106(
図4、
図5参照)の形態であるとき、超音波処理プロセス112は、GOシート90の横サイズを小さくする好ましい方法である。
【0050】
超音波処理プロセス112の代替として、GOシート90(
図5参照)は、ボールミル粉砕プロセス122(
図5参照)を経てもよい。例えば、ナノサイズのプレートレットまでのグラファイトのボールミル粉砕プロセス122は、超音波処理プロセス112なしでナノサイズのGOシート90を与え得る。本明細書において用いられるとき、「ボールミル粉砕プロセス」は、静電プロセスなどのプロセスにおける使用材料を粉砕且つブレンドするボールミル粉砕機の使用を意味する。ボールミルは、材料の粉砕又は混合に使用される円筒形の装置であり、粉砕される材料及び粉砕媒体が部分的に入れられて、水平軸周りに回転する。セラミック球、フリントボール及びステンレス鋼球を含む様々な材料が媒体として使用される。内部のカスケード効果によって、微粉末になる材料が減少する。
【0051】
図4にさらに示す通り、超音波処理されたポリマー懸濁液100a(
図5参照)及び超音波処理されたGO懸濁液106a(
図5参照)が、DI水102が入った混合容器124内などで混ぜ合わせられ、ホットプレート126a又は別の適した加熱装置126などの加熱装置126で加熱されると、物理的混合物などの超音波処理された混合物130が得られる。超音波処理された混合物130(
図4、
図5参照)は、不活性雰囲気132(
図5参照)中で加熱され、静電プロセス140(
図4、
図5参照)又は静電現象を経て、静電的相互作用反応142により、個々のポリマーナノ粒子80a(
図4、
図5参照)が個々の酸化グラフェン(GO)シート90a(
図4、
図5参照)で均一に被覆され、ナノ補強フィラー材料150が得られる。本明細書において用いられるとき、静電プロセス又は静電現象は、電荷が互いに及ぼす力を意味し、他の表面との接触による物体表面の電荷の蓄積を伴う。
【0052】
静電プロセス140(
図4、
図5参照)は、例えば、ポリスチレン(PS)ナノ粒子81aなどの正電荷を帯びたポリマーナノ粒子80(
図4、
図5参照)と、負電荷を帯びたGOシート90(
図4、
図5参照)との間の静電的相互作用反応142(
図5参照)を起こし、ポリマー-GOコア-シェルナノ粒子152(
図4、
図5参照)を含むナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)が得られる。反対の電荷を帯びたポリマーナノ粒子80とGOシート90との間の静電的相互作用反応142(
図5参照)は、自己集合化ポリマー-GOコア-シェルナノ粒子152b(
図5参照)を生じる。複数の酸化グラフェン(GO)シート90のそれぞれのシートサイズ98(
図5参照)は好ましくは、複数のポリマーナノ粒子80のそれぞれの粒径88と調和して、個々の酸化グラフェン(GO)シート90aによる個々のポリマーナノ粒子80aの均一で完全な被覆又はコーティングを容易にする。
【0053】
好ましくは、超音波処理された混合物130(
図4、
図5参照)は、約70℃(摂氏70度)~約100℃(摂氏100度)の範囲内の有効温度136(
図5参照)の不活性雰囲気132(
図5参照)中で加熱され、約1atm(1気圧)~約12atm(12気圧)の範囲内の気圧135(
図5参照)を含む有効圧力134(
図5参照)で、より好ましくは1atm(1気圧)の気圧135(
図5参照)で加熱され、且つ約3h(3時間)~約6h(6時間)の範囲内の有効時間138(
図5参照)加熱される。好ましくは、超音波処理された混合物130(
図4、
図5参照)の加熱は、約400rpm(400回転/分)の混合速度133(
図5参照)で実施される。GOシート90で被覆又はコーティングされたポリマーナノ粒子80を生じる自己集合化ポリマー-GOコア-シェルナノ粒子152b(
図5参照)の自己集合は、好ましくは、約3h(3時間)~約6h(6時間)かかる。
【0054】
好ましくは、超音波処理された混合物130(
図4、
図5参照)は、約5.58:1.12(w/w)~約6.09:0.91(w/w)の範囲内の複数のポリマーナノ粒子80(
図4、
図5参照)対複数の酸化グラフェン(GO)シート90(
図4、
図5参照)の比を有する。より好ましくは、超音波処理された混合物130(
図4、
図5参照)は、約6:1(w/w)の複数のポリマーナノ粒子80(
図4、
図5参照)対複数の酸化グラフェン(GO)シート90(
図4、
図5参照)の比を有する。
【0055】
さらに、好ましくは、複数のポリスチレンナノ粒子81対GOシート90の比は6:1であり、各GOシート90の滑らかな表面96(
図5参照)がポリスチレン(PS)ナノ粒子81のものよりも多いように最適化された比である。したがって、1重量部のGOシート90当たり約6重量部のポリスチレン(PS)ナノ粒子81が必要である。したがって、85.7重量%のPSナノ粒子81に対して14.3重量%(重量パーセント)のGOシート90が必要である。したがって、上限及び下限を対象に含むために、比は、13重量%のGOシート90から16%のGOシートまで変化し得る。これにより、PSナノ粒子対GOシートは、1.12~5.58から0.91~6.09の範囲になる。この限界値を超える比は、コーティングされないPSナノ粒子81が生じる恐れがあり、又は超音波処理された混合物130(
図5参照)中でGOシート90を失う恐れがある。
【0056】
図4にさらに示す通り、ナノ補強フィラー材料150はさらに洗浄され、乾燥され、且つ使用され、又はエポキシ複合構造28aなどの複合構造28のためのエポキシ樹脂系62(
図5参照)に取り込まれる。ナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)の乾燥は好ましくは、熱風乾燥器又は他の乾燥装置内で、45℃(摂氏45度)又は別の適した温度で約6~12時間行われる。
【0057】
図4にさらに示す通り、ナノ補強フィラー材料150は、ポリマーコア部154及び酸化グラフェン(GO)シェル部156をそれぞれ含むポリマー-GOコア-シェルナノ粒子152を含む。各GOシェル部156(
図4、
図5参照)は、滑らかな表面96(
図5参照)を有し、ポリマーコア部154(
図4、
図5参照)を完全且つ十分に被覆又はコーティングする。
【0058】
ナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)は好ましくは、エポキシ複合構造(
図4、
図5参照)などの複合構造28(
図4、
図5参照)のためのエポキシ樹脂系62(
図5参照)中で使用するためのものである。
図5に示す通り、エポキシ樹脂系62は、三次元(3D)架橋構造68を有するエポキシポリマー63を含む。
図5にさらに示す通り、エポキシ樹脂系62は、エポキシ樹脂66の形態などのマトリックス樹脂64を含む。エポキシ樹脂(
図5参照)は、ナノ補強フィラー材料150(
図5参照)で補強されるとき、補強されたエポキシ樹脂66a(
図5参照)を含んでもよい。エポキシ樹脂系62(
図5参照)は、エポキシ硬化温度70、破壊靭性72a、強度72b及び他の適した機械的特性などの機械的特性72、並びに熱安定性74a及び他の適した熱的特性などの熱的特性74を有する。
【0059】
ナノ補強フィラー材料150(
図5参照)及びナノ補強フィラー材料150a(
図5参照)は、複合構造28のためのエポキシ樹脂系62(
図5参照)中で、好ましくは航空機12(
図1、
図5参照)などの航空ビークル10(
図1、
図5参照)において使用される。ナノ補強フィラー材料150(
図5参照)及びナノ補強フィラー材料150a(
図5参照)は、GOシート90と、エポキシ樹脂系62(
図5参照)のエポキシ樹脂66(
図5参照)との間に、向上した界面領域158(
図5参照)を有する。ナノ補強フィラー材料150(
図5参照)及びナノ補強フィラー材料150a(
図5参照)はさらに、GOシート90による複数のポリマーナノ粒子80の均一な被覆160及び密な被覆又はコーティングを有し、GOシート90は、滑らかな被覆表面162(
図5参照)を有する。
【0060】
ナノ補強フィラー材料150(
図5参照)及びナノ補強フィラー材料150a(
図5参照)は、DI水102(
図4、
図5参照)懸濁液と、GOシート90(
図5参照)の低減したひだ164(
図5参照)、GOシート90(
図5参照)の低減した再積層166(
図5参照)、短縮した生産時間168(
図5参照)、低減した欠陥構造レベル170(
図5参照)、ナノ補強フィラー材料150(
図5参照)及びナノ補強フィラー材料150a(
図5参照)による強靱化ナノ補強172を実現する超音波処理プロセス112並びに静電プロセス140と、無溶媒プロセス144(
図5参照)とによって調製される。
【0061】
ここで
図6Aを参照すると、別の実施形態では、複合構造28(
図4、
図5参照)のためのエポキシ樹脂系62(
図4参照)のためのナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)の製造方法200が提供される。
図6Aは、本開示の方法200の例示的な実施形態のフロー図の例示である。
【0062】
図6Aに示す通り、方法200は、脱イオン(DI)水102(
図4、
図5参照)に懸濁させた複数のポリマーナノ粒子80(
図4、
図5参照)を含むポリマー懸濁液100(
図4、
図5参照)を生成又は調製するステップ202を含む。生成ステップ202はさらに、複数のポリマーナノ粒子80のそれぞれを含むポリマー懸濁液100を生成するステップを含む。好ましくは、各ポリマーナノ粒子80(
図4、
図5参照)は、約30nm(30ナノメートル)~約180nm(180ナノメートル)の範囲内の粒径88(
図5参照)を有する。より好ましくは、各ポリマーナノ粒子80(
図4、
図5参照)は、約40nm(40ナノメートル)~約150nm(150ナノメートル)の範囲内の粒径88(
図5参照)を有する。最も好ましくは、各ポリマーナノ粒子80は、約80nm(80ナノメートル)~約100nm(100ナノメートル)の範囲内の粒径88を有する。
【0063】
生成ステップ202はさらに、ポリスチレン78a(
図5参照)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ブチルアクリレート)(PBA)、ポリ(ブチルアクリレート)(PBA)-ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)(PBA-PMMA)、ブチルメチルアクリレート(BMA)、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルコポリマー、ポリクロロプレン(ネオプレン)、ニトリルゴム、アクリルゴム、フルオロエラストマー(FKM)、ポリイソプレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、スチレン-ブタジエン又は別の適したポリマーからなる群から選択されるポリマー78(
図5参照)を含む複数のポリマーナノ粒子のそれぞれを含むポリマー懸濁液100(
図4、
図5参照)を生成するステップを含む。
【0064】
図6Aに示す通り、方法200はさらに、超音波処理されたポリマー懸濁液100a(
図4、
図5参照)を得るためにポリマー懸濁液100(
図4、
図5参照)を超音波処理するステップ204を含む。超音波処理されたポリマー懸濁液100a(
図5参照)は、十分に分散したポリマー粒子懸濁液である。超音波処理プロセス112(
図4、
図5参照)及び超音波処理装置110(
図4、
図5参照)は、
図4及び
図5を参照して上で詳細に説明されている。
【0065】
図6Aに示す通り、方法200はさらに、脱イオン(DI)水102(
図4、
図5参照)に懸濁させた複数の酸化グラフェン(GO)シート90(
図4、
図5参照)を含む酸化グラフェン(GO)懸濁液106(
図4、
図5参照)を生成又は調製するステップ206を含む。生成ステップ206はさらに、複数の酸化グラフェン(GO)シート90のそれぞれを含む酸化グラフェン(GO)懸濁液106を生成するステップを含む。GO懸濁液106は、DI水102に懸濁させた複数のGOシート90を含み、バスソニケーターなどの超音波処理装置110(
図5も参照)を使用する浴超音波処理プロセスなどの超音波処理プロセス112(
図5も参照)を利用して、複数のGOシート90をDI水102中で懸濁させたり、又は混合したりしてもよい。
【0066】
図6Aに示す通り、方法200はさらに、超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液106a(
図4、
図5参照)を得るために酸化グラフェン(GO)懸濁液106(
図4、
図5参照)を超音波処理するステップ208を含む。超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液106aは好ましくは、小さくなったGOシート90の横寸法又はサイズを有する。プロセスパラメータ(超音波処理のエネルギー及び時間)に基づいて、GOシート90のシートサイズ98(
図5参照)を所望の通り調整したり、又は適応させたりしてもよい。超音波処理プロセス112(
図4、
図5参照)及び超音波処理装置110(
図4、
図5参照)は、
図4及び
図5を参照して上で詳細に説明されている。
【0067】
好ましくは、GO懸濁液106(
図5参照)は、ポリスチレン(PS)ナノ粒子81などのポリマーナノ粒子80をコーティングするための所望のナノサイズのGOシート90を得るために、有効時間の超音波処理プロセス112(
図5参照)を経る。GO懸濁液106を生成するために使用されるとき、超音波処理プロセス112の前に、GOシート90は当初、約500nm(500ナノメートル)~約5ミクロンの範囲内のシートサイズ98(
図5参照)を有する。GO懸濁液106は、GOシート90の横寸法など、GOシート90のシートサイズ98(
図5参照)を小さくするために、有効時間の超音波処理プロセス112を経る。有効時間の超音波処理プロセス112を経た後、GOシート90(
図4、
図5参照)は、好ましくは約50nm(50ナノメートル)~約350nm(350ナノメートル)の範囲内、より好ましくは約150nm(150ナノメートル)~約300nm(300ナノメートル)の範囲内、最も好ましくは約200nm(200ナノメートル)~約300nm(300ナノメートル)の範囲内のシートサイズ98(
図5参照)を有する。
【0068】
個々又は単一のGOシート90a(
図5参照)のシートサイズ98(
図5参照)は、それぞれの個々のポリマーナノ粒子80a(
図5参照)の表面86(
図5参照)を完全且つ十分に被覆するのに十分である必要があり、各ポリマーナノ粒子80は、約30nm(30ナノメートル)~約180nm(180ナノメートル)の範囲内の粒径88(
図5参照)を有する。各GOシート90は好ましくは、約1nm(1ナノメートル)~約5nm(5ナノメートル)の範囲内の厚さを有する。
【0069】
好ましくは、GO懸濁液106は、約1h(1時間)~約6h(6時間)の範囲内の時間、周囲温度又は室温で超音波処理プロセス112を経る。好ましくは、GO懸濁液106の超音波処理プロセス112の間、室温は、GOシート90の熱安定性の閾値未満、例えば、50℃(摂氏50度)未満に保たれる。一例では、GOシート90の横寸法を小さくするために、GO懸濁液106が、初めに、バスソニケーターの形態の超音波処理装置110(
図4、
図5参照)を室温で2h(2時間)使用する超音波処理プロセス112(
図4、
図5参照)で超音波処理され、次いで、その後、超音波処理装置110及び超音波処理プローブ部114(
図4参照)を室温で3h(3時間)使用する超音波処理プロセス112で超音波処理された。
【0070】
図6Aに示す通り、方法200はさらに、物理的混合物などの超音波処理された混合物130(
図4、
図5参照)を得るために超音波処理されたポリマー懸濁液100a(
図4、
図5参照)及び超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液106a(
図4、
図5参照)を一緒に混合容器124(
図4参照)内で混合するステップ210を含む。超音波処理されたポリマー懸濁液100a及び超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液106aを混合する混合ステップ210は、約5.58:1.12(w/w)(重量による、ポリマーナノ粒子対GOシート)~約6.09:0.91(w/w)(重量による、ポリマーナノ粒子80対GOシート90)の範囲内の複数のポリマーナノ粒子80対複数の酸化グラフェン(GO)シート90の比で超音波処理されたポリマー懸濁液100a及び超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液106aを混合するステップを含む。好ましくは、比は6:1(w/w)(重量による、ポリマーナノ粒子80対GOシート90)である。
【0071】
図6Aに示す通り、方法200はさらに、超音波処理された混合物130(
図4、
図5参照)を有効温度136(
図5参照)の不活性雰囲気132(
図5参照)中で加熱し、静電的相互作用反応142(
図5参照)により、個々のポリマーナノ粒子80a(
図5参照)を個々の酸化グラフェン(GO)シート90a(
図5参照)で均一に被覆するために静電プロセス140(
図4、
図5参照)又は静電現象を利用して、ポリマー-GOコア-シェルナノ粒子152(
図4、
図5参照)を含むナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)を得るステップ212を含む。
【0072】
加熱ステップ212はさらに、超音波処理された混合物130を、約70℃(摂氏70度)~約100℃(摂氏100度)の範囲内の有効温度136で加熱するステップを含む。加熱ステップ212はさらに、超音波処理された混合物130を、約1atm(1気圧)~約12atm(12気圧)の範囲内の気圧135(
図5参照)を含む有効圧力134(
図5参照)で、より好ましくは1atm(1気圧)の気圧135(
図5参照)で加熱するステップを含む。加熱ステップ212はさらに、超音波処理された混合物130を、約3h(3時間)~約6h(6時間)の範囲内の有効時間138加熱するステップを含む。好ましくは、超音波処理された混合物130(
図4、
図5参照)の加熱は、約400rpm(400回転/分)の混合速度133(
図5参照)で実施される。
【0073】
図6Aに示す通り、方法200はさらに、ナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)を洗浄するステップ214を含む。
図6Aに示す通り、方法200はさらに、ナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)を乾燥するステップ216を含む。ナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)の乾燥は好ましくは、熱風乾燥器又は他の乾燥装置内で、45℃(摂氏45度)又は別の適した温度で約6~12時間行われる。
【0074】
図6Aに示す通り、方法200はさらに、複合構造28(
図4、
図5参照)のためのエポキシ樹脂系62(
図5参照)においてナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)を使用するか、又は取り込むステップ218を含む。ナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)は、エポキシ樹脂系62(
図5参照)に強靱化ナノ補強172(
図5参照)を施す。
【0075】
使用ステップ218はさらに、航空機12内のエポキシ複合構造28aを含む複合構造28のためのエポキシ樹脂系62においてナノ補強フィラー材料150を使用するか、又は取り込むステップを含む。
【0076】
ここで
図6Bを参照すると、別の実施形態では、複数のポリスチレン(PS)ナノ粒子81を使用する、複合構造28のためのエポキシ樹脂系62のためのナノ補強フィラー材料150の製造方法250が提供される。
図6Bは、本開示の方法250の別の例示的な実施形態のフロー図の例示である。
【0077】
図6Bに示す通り、方法250は、脱イオン(DI)水102に懸濁させた複数のポリスチレン(PS)ナノ粒子81を含むポリスチレン(PS)懸濁液101を生成又は調製するステップ252を含む。好ましくは、各PSナノ粒子81(
図5参照)は、約30nm(30ナノメートル)~約180nm(180ナノメートル)の範囲内の粒径88(
図5参照)を有する。より好ましくは、各PSナノ粒子81(
図5参照)は、約40nm(40ナノメートル)~約150nm(150ナノメートル)の範囲内の粒径88(
図5参照)を有する。最も好ましくは、各PSナノ粒子80は、約80nm(80ナノメートル)~約100nm(100ナノメートル)の範囲内の粒径88を有する。方法250のPS懸濁液101を生成するステップ252はさらに、12mg/ml(12ミリグラム/ミリリットル)の濃度を有するPS懸濁液101を生成するステップ252を含む。PSナノ粒子81は乳化重合により合成されてもよい。PSナノ粒子81種の重合及び合成には5h(5時間)~12h(12時間)かかり得る。
【0078】
図6Bに示す通り、方法250はさらに、超音波処理されたポリスチレン懸濁液101aを得るためにポリスチレン懸濁液101を超音波処理するステップ254を含む。超音波処理プロセス112(
図4、
図5参照)及び超音波処理装置110(
図4、
図5参照)は、
図4及び
図5を参照して上で詳細に説明されている。
【0079】
図6Bに示す通り、方法250はさらに、脱イオン(DI)水102に懸濁させた複数の酸化グラフェン(GO)シート90を含む酸化グラフェン(GO)懸濁液106を生成又は調製するステップ256を含む。方法250のGO懸濁液106を生成するステップ256はさらに、複数の酸化グラフェン(GO)シート90のそれぞれを含むGO懸濁液106を生成するステップを含む。方法250のGO懸濁液106を生成するステップ256はさらに、1mg/ml(1ミリグラム/ミリリットル)の濃度を有するGO懸濁液106を生成するステップを含む。GO懸濁液106は、DI水102に懸濁させた複数のGOシート90を含み、バスソニケーターなどの超音波処理装置110(
図5も参照)を使用する浴超音波処理プロセスなどの超音波処理プロセス112(
図5も参照)を利用して、複数のGOシート90をDI水102中で懸濁させたり、又は混合したりしてもよい。
【0080】
図6Bに示す通り、方法250はさらに、超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液106aを得るために酸化グラフェン(GO)懸濁液106を超音波処理するステップ258を含む。超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液106aは好ましくは、小さくなったGOシート90の横寸法又はサイズを有する。プロセスパラメータ(超音波処理のエネルギー及び時間)に基づいて、GOシート90のシートサイズ98(
図5参照)を所望の通り調整したり、又は適応させたりしてもよい。超音波処理プロセス112(
図4、
図5参照)及び超音波処理装置110(
図4、
図5参照)は、
図4及び
図5を参照して上で詳細に説明されている。
【0081】
好ましくは、GO懸濁液106(
図5参照)は、ポリスチレン(PS)ナノ粒子81などのポリマーナノ粒子80をコーティングするための所望のナノサイズのGOシート90を得るために、有効時間の超音波処理プロセス112(
図5参照)を経る。GO懸濁液106を生成するために使用されるとき、超音波処理プロセス112の前に、GOシート90は当初、約500nm(500ナノメートル)~約5ミクロンの範囲内のシートサイズ98(
図5参照)を有する。GO懸濁液106は、GOシート90の横寸法など、GOシート90のシートサイズ98(
図5参照)を小さくするために、有効時間の超音波処理プロセス112を経る。有効時間の超音波処理プロセス112を経た後、GOシート90(
図4、
図5参照)は、好ましくは約50nm(50ナノメートル)~約350nm(350ナノメートル)の範囲内、より好ましくは約150nm(150ナノメートル)~約300nm(300ナノメートル)の範囲内、最も好ましくは約200nm(200ナノメートル)~約300nm(300ナノメートル)の範囲内のシートサイズ98(
図5参照)を有する。
【0082】
個々又は単一のGOシート90a(
図5参照)のシートサイズ98(
図5参照)は、それぞれの個々のポリマーナノ粒子80a(
図5参照)の表面86(
図5参照)を完全且つ十分に被覆するのに十分である必要があり、各ポリマーナノ粒子80は、約30nm(30ナノメートル)~約180nm(180ナノメートル)の範囲内の粒径88(
図5参照)を有する。各GOシート90は好ましくは、約1nm(1ナノメートル)~約5nm(5ナノメートル)の範囲内の厚さを有する。
【0083】
好ましくは、GO懸濁液106は、約1h(1時間)~約6h(6時間)の範囲内の時間、周囲温度又は室温で超音波処理プロセス112を経る。好ましくは、GO懸濁液106の超音波処理プロセス112の間、室温は、GOシート90の熱安定性の閾値未満、例えば、50℃(摂氏50度)未満に保たれる。一例では、GOシート90の横寸法を小さくするために、GO懸濁液106が、初めに、バスソニケーターの形態の超音波処理装置110(
図4、
図5参照)を室温で2h(2時間)使用する超音波処理プロセス112(
図4、
図5参照)で超音波処理され、次いで、その後、超音波処理装置110及び超音波処理プローブ部114(
図4参照)を室温で3h(3時間)使用する超音波処理プロセス112で超音波処理された。
【0084】
図6Bに示す通り、方法250はさらに、超音波処理された混合物130aを得るために超音波処理されたPS懸濁液101a及び超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液106aを一緒に混合容器124内で混合するステップ260を含む。超音波処理プロセス112(
図4、
図5参照)及び超音波処理装置110(
図4、
図5参照)は、
図4及び
図5を参照して上で詳細に説明されている。
【0085】
請求項10に記載の方法250の超音波処理されたPS懸濁液101a及び超音波処理されたGO懸濁液106aを混合するステップ260はさらに、約5.58:1.12(w/w)(重量による、ポリスチレン(PS)ナノ粒子対GOシート)~約6.09:0.91(w/w)(重量による、ポリスチレン(PS)ナノ粒子対GOシート)の範囲内の複数のPSナノ粒子80対複数のGOシート90の比で超音波処理されたPS懸濁液101a及び超音波処理されたGO懸濁液106aを混合するステップを含む。好ましくは、複数のPSナノ粒子80対複数のGOシート90の比は6:1(w/w)である。
【0086】
図6Bに示す通り、方法250はさらに、超音波処理された混合物130aを約70℃(摂氏70度)~約100℃(摂氏100度)の範囲内の有効温度136の不活性雰囲気132中で加熱し、静電的相互作用反応142により、個々のポリスチレンナノ粒子81aを個々の酸化グラフェン(GO)シート90aで均一に被覆するために静電プロセス140を利用して、ポリスチレン-GOコア-シェルナノ粒子152aを含むナノ補強フィラー材料150aを得るステップ262を含む。
【0087】
方法250の超音波処理された混合物130aを加熱するステップ262はさらに、約1atm(1気圧)~約12atm(12気圧)の範囲内の気圧135(
図5参照)を含む有効圧力134(
図5参照)で、より好ましくは1atm(1気圧)の気圧135(
図5参照)で加熱するステップを含む。方法250の超音波処理された混合物130aを加熱するステップ262はさらに、約3h(3時間)~約6h(6時間)の範囲内の有効時間138加熱するステップを含む。好ましくは、超音波処理された混合物130(
図4、
図5参照)の加熱は、約400rpm(400回転/分)の混合速度133(
図5参照)で実施される。
【0088】
図6Bに示す通り、方法250はさらに、ナノ補強フィラー材料150aを洗浄するステップ264を含む。
図6Bに示す通り、方法250はさらに、ナノ補強フィラー材料150aを乾燥するステップ266を含む。ナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)の乾燥は好ましくは、熱風乾燥器又は他の乾燥装置内で、45℃(摂氏45度)又は別の適した温度で行われる。
【0089】
図6Bに示す通り、方法250は、複合構造28のためのエポキシ樹脂系62においてナノ補強フィラー材料150aを使用するか、又は取り込むステップ268を含む。ナノ補強フィラー材料150aは、エポキシ樹脂系62に強靱化ナノ補強172を施す。
【0090】
実施例
1つの例示的な実施形態において、静電的相互作用反応142(
図5参照)(すなわち、静電力)の結果、ポリスチレン(PS)-GOコア-シェルナノ粒子152a(
図5参照)の形態のポリマー-酸化グラフェン(GO)コア-シェルナノ粒子152(
図4、
図5参照)を調製して得た。
【0091】
ポリスチレン(PS)ナノ粒子81(
図5参照)を、乳化重合プロセス、すなわち、脱イオン(DI)水102(
図4、
図5参照)中のPSナノ粒子の分散により合成した。ビーカーの形態の第1の容器104(
図4参照)内の200ml(200ミリリットル)のDI水102に室温で懸濁させた12mg/ml(12ミリグラム/ミリリットル)の濃度を有するPSナノ粒子81を使用してポリスチレン(PS)懸濁液101(
図5参照)を生成した。PSナノ粒子81は、130nm(ナノメートル)の粒径88(
図5参照)を有していた。
【0092】
PS懸濁液101(
図5参照)を次いで超音波処理し、超音波処理されたポリスチレン(PS)懸濁液101a(
図5参照)を得た。超音波処理装置110(
図4、
図5参照)を室温で15分間使用する超音波処理プロセス112(
図4、
図5参照)で、PS懸濁液101を第1の容器104(
図4参照)内で超音波処理した。
【0093】
改良したHummerの方法、すなわち、グラファイト、硝酸ナトリウム及び硫酸の溶液に過マンガン酸カリウムを添加して酸化グラファイトを生成するために使用され、酸化グラフェンを生成するよう改良された化学プロセスにより酸化グラフェン(GO)シート90(
図4、
図5参照)を合成した。合成されたGOシートを、別のビーカーなど、第2の容器108(
図4参照)内の200ml(200ミリリットル)の脱イオン(DI)水102(
図4、
図5参照)中に1mg/ml(10ミリグラム/ミリリットル)の濃度、室温で懸濁させ、酸化グラフェン(GO)懸濁液106(
図5参照)を得た。
【0094】
GO懸濁液106(
図4、
図5参照)を次いで超音波処理し、超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液106a(
図4、
図5参照)を得た。合成されたGOシートの横寸法を500nm(500ナノメートル)~5ミクロンの初期のサイズから200nm(200ナノメートル)~300nm(300ナノメートル)に小さくするために、初めに、バスソニケーターの形態の超音波処理装置110(
図4、
図5参照)を室温で2h(2時間)使用する超音波処理プロセス112(
図4、
図5参照)でGO懸濁液106を超音波処理し、次いで、その後、超音波処理装置110及び超音波処理プローブ部114(
図4参照)を室温で3h(3時間)使用する超音波処理プロセス112で超音波処理した。超音波処理されたGO懸濁液106a及び超音波処理されたPS懸濁液101aを別々のビーカー内で別々に調製した。
【0095】
超音波処理されたPS懸濁液101a(
図5参照)及び超音波処理されたGO懸濁液106a(
図5参照)を、次いで、DI水102(
図5参照)が入った混合容器124(
図4参照)、例えば、別のビーカー内で400rpm(400回転/分)の混合速度で混ぜ合わせ、超音波処理された混合物130(
図4、
図5参照)を生成した。超音波処理された混合物130は、重量で1部のGOシート対6部のPSナノ粒子の1:6の比を有していた。超音波処理された混合物130(
図4、
図5参照)を混合し、不活性雰囲気中、ホットプレートの形態の加熱装置126で70℃(摂氏70度)、1atm(1気圧)の気圧で6h(6時間)加熱し、ポリスチレン(PS)-GOコア-シェルナノ粒子152a(
図5参照)を含むナノ補強フィラー材料150a(
図5参照)の形態の最終生成物を得た。PS-GOコア-シェルナノ粒子152a(
図5参照)を含むナノ補強フィラー材料150a(
図5参照)の形態の最終生成物を脱イオン(DI)水で洗った。PS-GOコア-シェルナノ粒子152a(
図5参照)を含むナノ補強フィラー材料150a(
図5参照)の形態の最終生成物を、次いで、45℃(摂氏45度)の熱風乾燥器内で一晩乾燥させた。
【0096】
キャラクタリゼーション。PS-GOコア-シェルナノ粒子152a(
図5参照)の構造及びモルホロジーを、米国オレゴン州ヒルズボロのFEIから入手したFEI Sirion XL30 FEG(電界放出電子源)走査電子顕微鏡(SEM)を使用して調査した。超音波処理プロセス、例えば、浴超音波処理を利用して、PS-GOコア-シェルナノ粒子152a(
図5参照)をDI水中で30分間分散させ、PS-GOコア-シェルナノ粒子懸濁液を得た。清浄にしたばかりのケイ素基板にPS-GOコア-シェルナノ粒子懸濁液をドロップキャスティングした。電荷の蓄積を避けるため、PS-GOコア-シェルナノ粒子懸濁液サンプルを10nm(10ナノメートル)厚のAu(金)層でコーティングした。
【0097】
結果。FEI Sirion XL30 FEG走査電子顕微鏡(SEM)により、個々の酸化グラフェン(GO)シート90a(
図5参照)で被覆された、離散した被覆された個々のポリスチレン(PS)ナノ粒子81a(
図5参照)としてPS-GOコア-シェルナノ粒子152a(
図5参照)が観察された。PS-GOコア-シェルナノ粒子152a(
図5参照)、すなわち、GO被覆PSナノ粒子の平均サイズは130nm(130ナノメートル)であり、動的光散乱(DLS)法(これは、懸濁液中のナノ粒子のサイズ分布プロファイルを決定する。)により測定した。FEI Sirion XL30 FEG-SEM顕微鏡写真により、PS-GOコア-シェルナノ粒子152a(
図5参照)、すなわち、GO被覆PSナノ粒子のサイズが、DLSにより得られたものと同じサイズであることを確認した。
【0098】
この実施例を要約すると、反対の電荷を帯びたGOシート(負電荷)及びPSナノ粒子(正電荷)の静電的相互作用反応を利用して、PS-GOコア-シェルナノ粒子152a(
図5参照)、すなわち、GO被覆PSナノ粒子を合成し、自己集合化PS-GOコア-シェルナノ粒子を得た。PS-GOコア-シェルナノ粒子152a(
図5参照)、すなわち、GO被覆PSナノ粒子は離散且つ分離しており、凝集したGO被覆PSナノ粒子がなかったが、その理由は、使用されるGOシートのシートサイズが小さく、それによって単一の大きいGOシート内の複数のPSナノ粒子の被覆が回避及び排除されたからである。
【0099】
開示されているナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)、ナノ補強フィラー材料150a(
図4、
図5参照)、方法200(
図6A参照)及び方法250(
図6B参照)の実施形態により、酸化グラフェン(GO)シート90(
図4、
図5参照)によって滑らかに十分且つ完全に被覆又はコーティングされた、GOシート90のひだ又はしわが全くない、あるいは低減したひだ164(
図5参照)を伴う滑らかな被覆表面162(
図5参照)を有する、ポリスチレン(PS)ナノ粒子81(
図5参照)などのポリマーナノ粒子80(
図4、
図5参照)に基づく新規の有機性強靱化ナノ補強172(
図5参照)が実現する。GOシート90のひだ及び凝集がないため、GOシート90の潜在能力を最大限に利用することができる。低減したひだ164(
図5参照)及び減少した凝集は、エポキシ樹脂系62(
図5参照)のエポキシ樹脂66(
図5参照)とのより効率的な機械的相互作用をもたらし、緩く配置されたさらに大きなGOシートによって生じ得る異方性を低下させる。ナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)及びナノ補強フィラー材料150a(
図4、
図5参照)は、既知のGOシートと比べて、エポキシ樹脂系62(
図5参照)の機械的特性72(
図5参照)を向上させ、酸化グラフェン(GO)シート90とエポキシ樹脂系62(
図5参照)の間の界面において低減した欠陥構造レベル170(
図5参照)及び向上した界面領域158(
図5参照)を実現する。エポキシ樹脂系62(
図5参照)のエポキシ樹脂66との相互作用のためのGOシート90のこのような向上した界面領域158及び表面積は、低減した製造コスト、短縮した生産時間168(
図5参照)につながり得、より良い機械的特性72(
図5参照)につながる。さらに、GOシート90(
図5参照)の滑らかな被覆表面162(
図5参照)は、エポキシ樹脂系62(
図5参照)マトリックスとの相互作用を向上させることができて、ナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)及びナノ補強フィラー材料150a(
図4、
図5参照)の球状のモルホロジーは、より良い相互作用のための増大した表面積を生み出す。
【0100】
さらに、ポリマー-GOコア-シェルナノ粒子152(
図5参照)を含むナノ補強フィラー材料150(
図5参照)は再積層を示さず、又は、GOシート90の低減した再積層166(
図5参照)を有する。GOシート90(
図5参照)の滑らかな被覆表面162(
図5参照)は、ナノ補強フィラー材料150の乾燥時、GOシート90生成後又は合成後の低減した再積層166(
図5参照)を実現し、これは、既知の平面形態のグラフェンシートはPSナノ粒子などのポリマーナノ粒子表面に強く固定されるため、既知の平面形態のグラフェンシートの場合は避けらない。そして、GOシート90の低減した再積層166(
図5参照)は、複合構造28(
図1、
図4、
図5参照)におけるGOシート90(
図4、
図5参照)のより効率的な使用を可能にする。
【0101】
さらに、開示されているナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)、ナノ補強フィラー材料150a(
図4、
図5参照)、方法200(
図6A参照)及び方法250(
図6B参照)の実施形態により、ポリマーナノ粒子80生成又は合成のすべての段階の溶媒、あるいは複合構造28(
図4、
図5参照)におけるGOシート90(
図4、
図5参照)の分散のための溶媒が不要になり、無溶媒プロセス144(
図5参照)が実現する。これは有用であるが、その理由は、溶媒を使用すると、エポキシ樹脂系62(
図5参照)及び複合構造28(
図5参照)の機械的特性を悪化させる原因になり得る残留溶媒につながる恐れがあるからである。溶媒除去プロセスを排除すると、エネルギーを消費する溶媒除去のための真空オーブンの長時間の使用が不要になるため、ナノ補強フィラー材料150の生産コストが低減される。さらに、方法200(
図6A参照)及び方法250(
図6B参照)により、溶媒が不要になるため、ナノ補強フィラー材料150を添加した後にエポキシ樹脂66をコンディショニングする時間のかかるステップが排除され、ナノ補強フィラー材料150及びナノコンポジットの生産プロセスの時間効率が高くなる。ナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)は別の表面官能基化を必要としない。
【0102】
さらに、開示されているナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)、ナノ補強フィラー材料150a(
図4、
図5参照)、方法200(
図6A参照)及び方法250(
図6B参照)の実施形態により、主として溶媒除去ステップの排除により、例えば、24h(24時間)から7h(7時間)に短縮した生産時間168(
図5参照)又は大幅に短縮した複合材生産プロセスの期間が実現する。溶媒除去は時間と費用のかかるプロセスであり、開示されているナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)、ナノ補強フィラー材料150a(
図4、
図5参照)、方法200(
図6A参照)及び方法250(
図6B参照)によって回避される。
【0103】
さらに、開示されているナノ補強フィラー材料150(
図4、
図5参照)、ナノ補強フィラー材料150a(
図4、
図5参照)、方法200(
図6A参照)及び方法250(
図6B参照)の実施形態により、GO被覆ポリマーナノ粒子凝集塊の数が少ない、個々のGOシート90a(
図5参照)によって被覆又はコーティングされた離散した個々のポリマーナノ粒子80a(
図5参照)が実現する。使用されるGOシート90のサイズは、PSナノ粒子81などのポリマーナノ粒子80のサイズと調和して、個々のポリマーナノ粒子80a(
図5参照)の被覆又はコーティングを容易にする。既知のナノ粒子と比べてさらに小さいポリマーナノ粒子80のサイズ(40nm~150nm)は、低レベルの欠陥構造及びエポキシ樹脂66(
図5参照)との向上した化学結合を実現し、同じ添加レベルで機械的特性72(
図5参照)が改善される。
【0104】
さらに、本開示は、以下に列挙した段落に従った例を含む:
A1.複合構造のためのエポキシ樹脂系のためのナノ補強フィラー材料の製造方法であって、脱イオン(DI)水に懸濁させた複数のポリマーナノ粒子を含むポリマー懸濁液を生成するステップと、超音波処理されたポリマー懸濁液を得るためにポリマー懸濁液を超音波処理するステップと、脱イオン(DI)水に懸濁させた複数の酸化グラフェン(GO)シートを含む酸化グラフェン(GO)懸濁液を生成するステップと、超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液を得るために酸化グラフェン(GO)懸濁液を超音波処理するステップと、超音波処理された混合物を得るために超音波処理されたポリマー懸濁液及び超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液を一緒に混合容器内で混合するステップと、超音波処理された混合物を有効温度の不活性雰囲気中で加熱し、静電的相互作用反応により、個々のポリマーナノ粒子を個々の酸化グラフェン(GO)シートで均一に被覆するために静電プロセスを利用して、ポリマー-GOコア-シェルナノ粒子を含むナノ補強フィラー材料を得るステップと、ナノ補強フィラー材料を洗浄するステップと、ナノ補強フィラー材料を乾燥するステップと、エポキシ樹脂系に強靱化ナノ補強を施すために複合構造のためのエポキシ樹脂系中でナノ補強フィラー材料を使用するステップとを含む方法。
【0105】
A2.ポリマー懸濁液を生成するステップが、約40nm(40ナノメートル)~約150nm(150ナノメートル)の範囲内の粒径を有する複数のポリマーナノ粒子のそれぞれを含むポリマー懸濁液を生成するステップを含む、A1.に記載の方法。
【0106】
A3.ポリマー懸濁液を生成するステップが、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ブチルアクリレート)(PBA)、ポリ(ブチルアクリレート)-ポリ(メチルメタクリレート)(PBA-PMMA)、ブチルメチルアクリレート(BMA)、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルコポリマー、ポリクロロプレン(ネオプレン)、ニトリルゴム、アクリルゴム、フルオロエラストマー(FKM)、ポリイソプレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)及びスチレン-ブタジエンからなる群から選択されるポリマーを含む複数のポリマーナノ粒子のそれぞれを含むポリマー懸濁液を生成するステップを含む、A1.に記載の方法。
【0107】
A4.酸化グラフェン(GO)懸濁液を生成するステップが、約50nm(50ナノメートル)~約350nm(350ナノメートル)の範囲内のシートサイズを有する複数の酸化グラフェン(GO)シートのそれぞれを含む酸化グラフェン(GO)懸濁液を生成するステップを含む、A1.に記載の方法。
【0108】
A5.超音波処理されたポリマー懸濁液及び超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液を混合するステップが、6:1(w/w)の複数のポリマーナノ粒子対複数の酸化グラフェン(GO)シートの比で超音波処理されたポリマー懸濁液及び超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液を混合するステップを含む、A1.に記載の方法。
【0109】
A6.超音波処理された混合物を加熱するステップが、約70℃(摂氏70度)~約100℃(摂氏100度)の範囲内の有効温度で加熱するステップを含む、A1.に記載の方法。
【0110】
A7.超音波処理された混合物を加熱するステップが、約1atm(1気圧)~約12atm(12気圧)の範囲内の気圧を含む有効圧力で加熱するステップを含む、A1.に記載の方法。
【0111】
A8.超音波処理された混合物を加熱するステップが、約3h(3時間)~約6h(6時間)の範囲内の有効時間加熱するステップを含む、A1.に記載の方法。
【0112】
A9.ナノ補強フィラー材料を使用するステップが、航空機内のエポキシ複合構造を含む複合構造のためのエポキシ樹脂系中でナノ補強フィラー材料を使用するステップを含む、A1.に記載の方法。
【0113】
B1.複合構造のためのエポキシ樹脂系のためのナノ補強フィラー材料の製造方法であって、それぞれが約40nm(40ナノメートル)~150nm(150ナノメートル)の範囲内の粒径を有する、脱イオン(DI)水に懸濁させた複数のポリスチレン(PS)ナノ粒子を含むポリスチレン(PS)懸濁液を生成するステップと、超音波処理されたポリスチレン(PS)懸濁液を得るためにポリスチレン(PS)懸濁液を超音波処理するステップと、脱イオン(DI)水に懸濁させた複数の酸化グラフェン(GO)シートを含む酸化グラフェン(GO)懸濁液を生成するステップと、超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液を得るために酸化グラフェン(GO)懸濁液を超音波処理するステップと、超音波処理された混合物を得るために超音波処理されたポリスチレン懸濁液及び超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液を一緒に混合容器内で混合するステップと、超音波処理された混合物を約70℃(摂氏70度)~約100℃(摂氏100度)の範囲内の有効温度の不活性雰囲気中で加熱し、静電的相互作用反応により、個々のポリスチレン(PS)ナノ粒子を個々の酸化グラフェン(GO)シートで均一に被覆するために静電プロセスを利用して、ポリスチレン-GOコア-シェルナノ粒子を含むナノ補強フィラー材料を得るステップと、ナノ補強フィラー材料を洗浄するステップと、ナノ補強フィラー材料を乾燥するステップと、エポキシ樹脂系に強靱化ナノ補強を施すために複合構造のためのエポキシ樹脂系中でナノ補強フィラー材料を使用するステップとを含む方法。
【0114】
B2.酸化グラフェン(GO)懸濁液を生成するステップが、約50nm(50ナノメートル)~約350nm(350ナノメートル)の範囲内のシートサイズを有する複数の酸化グラフェン(GO)シートのそれぞれを含む酸化グラフェン(GO)懸濁液を生成するステップを含む、B1.に記載の方法。
【0115】
B3.ポリスチレン懸濁液を生成するステップが、12mg/ml(12ミリグラム/ミリリットル)の濃度を有するポリスチレン懸濁液を生成するステップを含み、さらに酸化グラフェン(GO)懸濁液を生成するステップが、1mg/ml(1ミリグラム/ミリリットル)の濃度を有する酸化グラフェン(GO)懸濁液を生成するステップを含む、B1.に記載の方法。
【0116】
B4.超音波処理されたポリスチレン(PS)懸濁液及び超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液を混合するステップが、6:1(w/w)の複数のポリスチレン(PS)ナノ粒子対複数の酸化グラフェン(GO)シートの比で超音波処理されたポリスチレン(PS)懸濁液及び超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液を混合するステップを含む、B1.に記載の方法。
【0117】
B5.超音波処理された混合物を加熱するステップが、約1atm(1気圧)~約12atm(12気圧)の範囲内の気圧を含む有効圧力で加熱するステップを含む、B1.に記載の方法。
【0118】
B6.超音波処理された混合物を加熱するステップが、約3h(3時間)~約6h(6時間)の範囲内の有効時間加熱するステップを含む、B1.に記載の方法。
【0119】
C1.複合構造のためのエポキシ樹脂系のためのナノ補強フィラー材料であって、超音波処理されたポリマー懸濁液を得るために脱イオン(DI)水に懸濁させ、次いで、超音波処理プロセスにより超音波処理することにより調製された、それぞれ約40nm(40ナノメートル)~約150nm(150ナノメートル)の範囲内の粒径を有し、それぞれ球形状を有する複数のポリマーナノ粒子と、超音波処理されたポリマー懸濁液とは別に調製された超音波処理された酸化グラフェン(GO)懸濁液を得るために脱イオン(DI)水に懸濁させ、次いで、超音波処理プロセスにより超音波処理することにより調製された、それぞれ約50nm(50ナノメートル)~約350nm(350ナノメートル)の範囲内のシートサイズを有し、それぞれ平面形状を有する複数の酸化グラフェン(GO)シートとを含む、それぞれポリマーコア部及び酸化グラフェン(GO)シェル部を含む複数のポリマー-酸化グラフェン(GO)コア-シェルナノ粒子を含み、超音波処理されたポリマー懸濁液及び超音波処理されたGO懸濁液が混ぜ合わせられて超音波処理された混合物が得られ、超音波処理された混合物が不活性雰囲気中で加熱され、静電プロセスを経て、静電的相互作用反応により、個々のポリマーナノ粒子が個々の酸化グラフェン(GO)シートで均一に被覆され、ナノ補強フィラー材料が得られ、さらにナノ補強フィラー材料が洗浄され、乾燥され、且つ複合構造のためのエポキシ樹脂系中で使用されるナノ補強フィラー材料。
【0120】
C2.複数のポリマーナノ粒子のそれぞれが、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ブチルアクリレート)(PBA)、ポリ(ブチルアクリレート)-ポリ(メチルメタクリレート)(PBA-PMMA)、ブチルメチルアクリレート(BMA)、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルコポリマー、ポリクロロプレン(ネオプレン)、ニトリルゴム、アクリルゴム、フルオロエラストマー(FKM)、ポリイソプレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)及びスチレン-ブタジエンからなる群から選択されるポリマーを含む、C1.に記載のナノ補強フィラー材料。
【0121】
C3.超音波処理された混合物が、6:1(w/w)の複数のポリマーナノ粒子対複数の酸化グラフェン(GO)シートの比を有する、C1.に記載のナノ補強フィラー材料。
【0122】
C4.複数の酸化グラフェン(GO)シートのそれぞれのシートサイズが、複数のポリマーナノ粒子のそれぞれの粒径と調和して、個々の酸化グラフェン(GO)シートによって個々のポリマーナノ粒子を均一に被覆するのを容易にする、C1.に記載のナノ補強フィラー材料。
【0123】
C5.超音波処理された混合物が、約70℃(摂氏70度)~約100℃(摂氏100度)の範囲内の有効温度で加熱され、約1atm(1気圧)~約12atm(12気圧)の範囲内の気圧を含む有効圧力で加熱され、且つ約3h(3時間)~約6h(6時間)の範囲内の有効時間加熱される、C1.に記載のナノ補強フィラー材料。
【0124】
前述の説明及び関連する図面に提示されている教示の利益を有する本開示の多くの修正及びその他の実施形態が、本開示に関連する当業者には想起されるであろう。本明細書に記載の実施形態は例示するためのものであって、限定するためのものでも、網羅するためのものでもない。本明細書では特定の用語が用いられているが、それらは一般的な意味及び記述的な意味でのみ使用されており、限定するために使用されているのではない。
【符号の説明】
【0125】
10 航空ビークル
12 航空機
14 胴体
16 機首
18 翼
20 エンジン
22 尾翼
24 水平安定板
26 垂直安定板
28 複合構造
28a エポキシ複合構造
30 航空機の製造及び保守点検方法
32 仕様及び設計
34 材料調達
36 構成要素及び部分組立品の製造
38 システム統合
40 認証及び搬送
42 就航中
44 整備及び保守点検
46 航空機
48 機体
50 システム
52 内部
54 推進システム
56 電気システム
58 油圧システム
60 環境システム
62 エポキシ樹脂系
63 エポキシポリマー
64 マトリックス樹脂
66 エポキシ樹脂
66a 補強されたエポキシ樹脂
68 三次元架橋構造
70 エポキシ硬化温度
72 機械的特性
72a 破壊靭性
72b 強度
74 熱的特性
74a 熱安定性
76 生産システム
78 ポリマー
78a ポリスチレン
80 ポリマーナノ粒子
80a 個々のポリマーナノ粒子
81 ポリスチレンナノ粒子
81a 個々のポリスチレンナノ粒子
82 正電荷
84 球形状
86 表面
88 粒径
90 酸化グラフェンシート
90a 個々の酸化グラフェンシート
92 負電荷
94 平面形状
96 滑らかな表面
98 シートサイズ
100 ポリマー懸濁液
100a 超音波処理されたポリマー懸濁液
101 ポリスチレン懸濁液
101a 超音波処理されたポリスチレン懸濁液
102 脱イオン水
104 第1の容器
106 酸化グラフェン懸濁液
106a 超音波処理された酸化グラフェン懸濁液
108 第2の容器
110 超音波処理装置
112 超音波処理プロセス
114 超音波処理プローブ部
116 超音波処理コントローラー部
118 超音波処理プラットホーム
120 音響エネルギー
122 ボールミル粉砕プロセス
124 混合容器
126 加熱装置
126a ホットプレート
130 超音波処理された混合物
130a 超音波処理された混合物
131 比
132 不活性雰囲気
133 混合速度
134 有効圧力
135 気圧
136 有効温度
138 有効時間
140 静電プロセス
142 静電的相互作用反応
144 無溶媒プロセス
150 ナノ補強フィラー材料
150a ナノ補強フィラー材料
152 ポリマー-酸化グラフェンコア-シェルナノ粒子
152a ポリスチレン-酸化グラフェンコア-シェルナノ粒子
152b 自己集合化ポリマー-酸化グラフェンコア-シェルナノ粒子
154 ポリマーコア部
154a ポリスチレンコア部
156 酸化グラフェンシェル部
158 向上した界面領域
160 均一な被覆
162 滑らかな被覆表面
164 低減したひだ
166 低減した再積層
168 短縮した生産時間
170 低減した欠陥構造レベル
172 強靱化ナノ補強
200 方法
250 方法