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特許7317145複合負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】複合負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20230721BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230721BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20230721BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20230721BHJP
   C01B 33/113 20060101ALI20230721BHJP
   C01B 33/02 20060101ALI20230721BHJP
   C01B 33/32 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/48
H01M4/58
C01B33/113 A
C01B33/02 Z
C01B33/32
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021569999
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 CN2020117889
(87)【国際公開番号】W WO2021057923
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】201910918320.8
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(73)【特許権者】
【識別番号】521078089
【氏名又は名称】ディンユアン ニュー エナジー テクノロジー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パン,チュンレイ
(72)【発明者】
【氏名】コン,イミン
(72)【発明者】
【氏名】リアン,テンギュ
(72)【発明者】
【氏名】レン,ジャングオ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,シュエキン
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107579239(CN,A)
【文献】特開2018-048070(JP,A)
【文献】特開2004-327190(JP,A)
【文献】特開2017-123220(JP,A)
【文献】特開2019-119669(JP,A)
【文献】特開2007-012450(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110034284(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107317006(CN,A)
【文献】特開2017-004895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/38
H01M 4/36
H01M 4/48
H01M 4/58
C01B 33/113
C01B 33/02
C01B 33/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合負極材料であって、
シリコン含有顆粒と、前記シリコン含有顆粒の少なくとも一部の表面を被覆する炭素被覆層とを含み、
ラマンスペクトルにおいて、前記複合負極材料は、450cm-1~550cm-1にケイ素特徴的なピークAをもち、1300cm-1~1400cm-1に炭素特徴的なピークBをもち、1530cm-1~1630cm-1に炭素特徴的なピークCをもち、2500cm-1~2750cm-1にグラフェン構造特徴的なピークDをもち、
ラマンスペクトルにおいて、前記ケイ素の特徴的なピークAのピーク強度I と前記グラフェン構造の特徴的なピークDのピーク強度I との比I /I は、1以上且つ30未満であり、且つ、前記グラフェン構造の特徴的なピークDのピーク強度I と前記炭素の特徴的なピークBのピーク強度I との比I /I は、0.1以上且つ1未満である
ことを特徴とする複合負極材料。
【請求項2】
a.前記シリコン含有顆粒が、Si、SiO及びケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含み、ただし、0<x<2を満たすこと、
b.前記シリコン含有顆粒の平均粒径が0.1μm~20μmであること、
c.前記シリコン含有顆粒の比表面積が150cm/g超であること、
d.前記炭素被覆層が無機炭素材料層であること、
e.前記炭素被覆層の厚さが10nm~300nmであること、
f.前記複合負極材料において、前記炭素被覆層の質量分率が1%~65%であること、
のa~fの条件の少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の複合負極材料。
【請求項3】
保護雰囲気下で、炭素含有ガスが含まれる反応ガスを導入してシリコン含有顆粒と00℃~1450℃の反応温度下で反応させ、前記シリコン含有顆粒の少なくとも一部の表面に炭素被覆層を形成させて、複合負極材料を得るステップを含み、
前記反応ガスには、補助ガスがさらに含まれ、前記補助ガスは、水素ガスを含み、
前記炭素含有ガスと前記補助ガスとのモル比は(2~10):1である
ことを特徴とする複合負極材料の調製方法。
【請求項4】
a.前記シリコン含有顆粒が、Si、SiO及びケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含み、ただし、0<x<2を満たすこと、
b.前記シリコン含有顆粒の平均粒径が0.1μm~20μmであること、
c.前記シリコン含有顆粒の比表面積が150cm/g超であること、
d.前記炭素被覆層が無機炭素材料層であること、
e.前記炭素被覆層の厚さが10nm~300nmであること、
f.前記複合負極材料において、前記炭素被覆層の質量分率が1%~65%であること、
のa~fの条件の少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項に記載の調製方法。
【請求項5】
ラマンスペクトルにおいて、前記複合負極材料は、450cm-1~550cm-1にケイ素特徴的なピークAをもち、1300cm-1~1400cm-1に炭素特徴的なピークBをもち、1530cm-1~1630cm-1に炭素特徴的なピークCをもち、2500cm-1~2750cm-1にグラフェン構造特徴的なピークDをもち、
前記ケイ素特徴的なピークAのピーク強度Iと前記グラフェン構造特徴的なピークDのピーク強度Iとの比I/Iは、0.1超且つ30未満であり、且つ、前記グラフェン構造特徴的なピークDのピーク強度Iと前記炭素特徴的なピークBのピーク強度Iとの比I/Iは、0超且つ1未満である
ことを特徴とする請求項又はに記載の調製方法。
【請求項6】
a.前記保護雰囲気が、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスのうちの少なくとも1種を含むこと、
b.前記炭素含有ガスが、メタン、アセチレン、エチレン、プロピン、プロピレン、トルエン蒸気、ベンゼン蒸気、アセトン蒸気及びホルムアルデヒド蒸気のうちの少なくとも1種を含むこと、
のa~bの条件の少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項7】
a.前記反応の方式が化学気相成長であること、
b.前記反応の方式が化学気相成長であり、前記化学気相成長の反応温度が00℃~1150℃であること、
c.前記反応の方式が化学気相成長であり、前記化学気相成長の保温時間が3h~16hであること、
d.前記反応の方式が化学気相成長であり、前記化学気相成長の反応気圧が1.0atm~10.0atmであること
のa~dの条件の少なくとも1つを満たす
ことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項8】
保護雰囲気下で、シリコン含有顆粒を00℃~1450℃まで加熱するステップと、
炭素含有ガスが含まれる反応ガスを導入して化学気相成長を行い、シリコン含有顆粒の少なくとも一部の表面に炭素被覆層を形成させて、複合負極材料を得るステップと
を含むことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項9】
保護雰囲気下で、シリコン含有顆粒を00℃~1150℃まで加熱するステップと、
炭素含有ガスと水素とを(2~10):1のモル比で前記シリコン含有顆粒に導入して化学気相成長反応を行い、反応気圧を1.0atm~10.0atmにコントロールし、3h~16h保温し、前記シリコン含有顆粒の少なくとも一部の表面に炭素被覆層を形成させて、前記複合負極材料を得るステップとを含む
ことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の複合負極材料又は請求項のいずれか1項に記載の調製方法で調製できた複合負極材料を含む
ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年9月26日に中国専利局に提出された、出願番号が2019109183208であり、名称が「複合負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その全ての内容が、参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、電池材料の技術分野に属し、負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池に関し、特に複合負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、主に正極と負極との間でのリチウムイオンの移動により作動する二次電池(充電電池)である。充放電過程において、Liが2つの電極の間で往復に挿入したり脱離したりする。充電時に、Liが正極から脱離し、電解質を通って負極に挿入し、負極がリチウムリッチの状態になり、放電時に、逆になる。
【0004】
リチウムイオン電池の負極は、負極活物質の炭素材料又は非炭素材料、接着剤及び添加剤を混合して調製したペースト状材料を銅箔の両側に均一に塗布して、乾燥、ロール圧延によってできたものである。リチウムイオン電池をうまく製造できるかは、リチウムイオンを可逆的に挿脱可能な負極材料を調製できるかによることである。一般的に、優れる負極材料の選択は、比エネルギーが高く、リチウム電極に対する電極電位が低く、充放電反応の可逆性に優れ、電解液及び接着剤との適合性が高く、比表面積が小さく(<10m/g)、真密度が高く(>2.0g/cm)、リチウム挿入過程においてサイズ及び機械的安定性が優れ、資源が豊富で、安価で、空気に安定で、毒性及び副作用がないという原則に準ずるべきである。現在、実際にリチウムイオン電池に用いられた負極材料は、通常、グラファイト、ソフトカーボン(例えば、コークスなど)及びハードカーボンなどのような炭素材料である。模索中の負極材料として、窒化物、PAS、スズ系酸化物、スズ合金、ナノ負極材料及び他の金属間化合物などが挙げられる。
【0005】
近年、高性能リチウムイオン電池に対する要求が日々高まり、電子製品や電気自動車などを始めとした製品の市場が拡大し続け、高性能リチウムイオン電池の負極材料に対する要求もますます高まる。
【0006】
1種のリチウムイオン電池複合負極材料のコーティング膜の改質方法の案において、複合負極材料は、負極材料及びその表面を被覆した金属膜、金属酸化膜を含む。被覆した金属膜又は金属酸化膜は、マグネトロンスパッタリング成膜法によって成膜されるものである。
【0007】
もう1種の改質シリコン系負極材料、その調製方法及び応用の案において、改質シリコン系負極材料は、リチウムイオンが挿入されたシリコン系負極基材を含む。その調製方法は、リチウム含有芳香族炭化水素化合物溶液を調製するステップと、シリコン系負極基材に対してリチウム挿入処理を行うステップとを含む。
【0008】
さらにもう1種のリチウムイオン電池の亜酸化ケイ素複合負極材料、調製方法及びその用途の案において、前記亜酸化ケイ素複合材料は、亜酸化ケイ素粉末及び亜酸化ケイ素粉末の表面に均一且つ緻密的に塗布された導電炭素層からなるものである。
【0009】
しかしながら、上記の案のいずれも、負極材料のサイクル性能及びレート性能は、向上の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これを鑑みて、本出願は、複合負極材料、その調製方法及びリチウムイオン電池を提供することを目的とする。本出願に係る複合負極材料は、サイクル容量維持率が高く、レート性能が優れ、高温エージング損失が小さいなどの利点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本出願は、下記の技術案を用いる。
第1局面において、本出願は、複合負極材料を提供する。前記複合負極材料は、シリコン含有顆粒と、前記シリコン含有顆粒の少なくとも一部の表面を被覆する炭素被覆層とを含み、
ラマンスペクトルにおいて、前記複合負極材料は、450cm-1~550cm-1にケイ素特徴的なピークAをもち、1300cm-1~1400cm-1に炭素特徴的なピークBをもち、1530cm-1~1630cm-1に炭素特徴的なピークCをもち、2500cm-1~2750cm-1にグラフェン構造特徴的なピークDをもつ。
【0012】
本出願に係る複合負極材料は、ラマンスペクトルにおいてグラフェン構造特徴的なピークDを有することから、その炭素被覆層に少量のグラフェン構造を有することがわかる。グラフェン構造が含まれる炭素被覆層によれば、製品の導電率及びレート性能を向上させることができ、均一に成長した上記のグラフェン構造が、製品の顆粒の表面と電解液との固液界面[0]の安定性をさらに向上させ、均一なSEI膜を形成し、製品の高温保存性能を向上させ、高温エージング損失を低減させることができる。
【0013】
選択可能な実施形態として、ラマンスペクトルにおいて、前記ケイ素特徴的なピークAのピーク強度Iと前記グラフェン構造特徴的なピークDのピーク強度Iとの比I/Iは、0.1超且つ30未満であり、且つ、前記グラフェン構造特徴的なピークDのピーク強度Iと前記炭素特徴的なピークBのピーク強度Iとの比は、0超且つ1未満である。
【0014】
選択可能な実施形態として、前記複合負極材料は、
a.前記シリコン含有顆粒が、Si、SiO及びケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含み、ただし、0<x<2を満たすこと、
b.前記シリコン含有顆粒の平均粒径が0.1μm~20μmであること、
c.前記シリコン含有顆粒の比表面積が150cm/g超であること、
d.前記炭素被覆層が無機炭素材料層であること、
e.前記炭素被覆層の厚さが10nm~300nmであること、
f.前記複合負極材料において、前記炭素被覆層の質量分率が1%~65%であること、
のa~fの条件の少なくとも1つを満たす。
【0015】
第2局面において、本出願は、複合負極材料の調製方法を提供する。前記方法は、
保護雰囲気下で、炭素含有ガスが含まれる反応ガスを導入してシリコン含有顆粒と700℃~1450℃の反応温度下で反応させ、前記シリコン含有顆粒の少なくとも一部の表面に炭素被覆層を形成させて、複合負極材料を得るステップを含む。
【0016】
本出願に係る複合負極材料の調製方法は、シリコン含有顆粒の材料を所定温度まで加熱した後、炭素含有ガスを導入し、炭素含有ガスをシリコン含有顆粒表面で反応させ、グラフェン構造が含まれる炭素被覆層をシリコン含有顆粒の少なくとも一部の表面にその場で成長させる。グラフェン構造が含まれる炭素被覆層によれば、製品の導電率及びレート性能を向上させることができる。直接グラフェンを用いて被覆を行う方法ではないので、調製の難易度を大幅に低下させることができる。全調製過程は、操作が簡単で、工程が短く、プロセスが成熟で、生産難易度が低く、コストコントロール可能で、大規模の工業化生産での応用に寄与できる。
【0017】
選択可能な実施形態として、前記方法は、
a.前記シリコン含有顆粒が、Si、SiO及びケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含み、ただし、0<x<2を満たすこと、
b.前記シリコン含有顆粒の平均粒径が0.1μm~20μmであること、
c.前記シリコン含有顆粒の比表面積が150cm/g超であること、
d.前記炭素被覆層が無機炭素材料層であること、
e.前記炭素被覆層の厚さが10nm~300nmであること、
f.前記複合負極材料において、前記炭素被覆層の質量分率が1%~65%であること、
のa~fの条件の少なくとも1つを満たす。
【0018】
選択可能な実施形態として、ラマンスペクトルにおいて、前記複合負極材料は、450cm-1~550cm-1にケイ素特徴的なピークAをもち、1300cm-1~1400cm-1に炭素特徴的なピークBをもち、1530cm-1~1630cm-1に炭素特徴的なピークCをもち、2500cm-1~2750cm-1にグラフェン構造特徴的なピークDをもち、前記ケイ素特徴的なピークAのピーク強度Iと前記グラフェン構造特徴的なピークDのピーク強度Iとの比I/Iは、0.1超且つ30未満であり、且つ、前記グラフェン構造特徴的なピークDのピーク強度Iと前記炭素特徴的なピークBのピーク強度Iとの比I/Iは、0超且つ1未満である。
【0019】
選択可能な実施形態として、前記方法は、
a.前記保護雰囲気が、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスのうちの少なくとも1種を含むこと、
b.前記炭素含有ガスが、メタン、アセチレン、エチレン、プロピン、プロピレン、トルエン蒸気、ベンゼン蒸気、アセトン蒸気及びホルムアルデヒド蒸気のうちの少なくとも1種を含むこと、
のa~bの条件の少なくとも1つを満たす。
【0020】
選択可能な実施形態として、前記反応ガスには、補助ガスがさらに含まれ、前記補助ガスは、水素ガスを含む。
【0021】
選択可能な実施形態として、前記炭素含有ガスと前記補助ガスとのモル比は(2~10):1である。
【0022】
選択可能な実施形態として、前記方法は、
a.前記反応の方式が化学気相成長であること、
b.前記反応の方式が化学気相成長であり、前記化学気相成長の反応温度が700℃~1150℃であること、
c.前記反応の方式が化学気相成長であり、前記化学気相成長の保温時間が3h~16hであること、
d.前記反応の方式が化学気相成長であり、前記化学気相成長の反応気圧が1.0atm~10.0atmであること、
のa~dの条件の少なくとも1つを満たす。
【0023】
選択可能な実施形態として、前記方法は、
保護雰囲気下で、シリコン含有顆粒を700℃~1450℃まで加熱するステップと、
炭素含有ガスが含まれる反応ガスを導入して化学気相成長を行い、シリコン含有顆粒の少なくとも一部の表面に炭素被覆層を形成させて、複合負極材料を得るステップとを含む。
【0024】
選択可能な実施形態として、前記方法は、
保護雰囲気下で、シリコン含有顆粒を700℃~1150℃まで加熱するステップと、
炭素含有ガスと水素とを(2~10):1のモル比で前記シリコン含有顆粒に導入して化学気相成長反応を行い、反応気圧を1.0atm~10.0atmにコントロールし、3h~16h保温し、前記シリコン含有顆粒の少なくとも一部の表面に炭素被覆層を形成させて、前記複合負極材料を得るステップとを含む。
【0025】
第3局面において、本出願は、上記の第1局面による複合負極材料又は上記の第2局面による調製方法で調製できた複合負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0026】
従来技術に比べて、本出願は下記の有益効果を有する。
(1)本出願に係る複合負極材料は、独特なラマンスペクトルを有し、該ラマンスペクトルにおいてグラフェン構造特徴的なピークDをもつことから、その炭素被覆層に少量のグラフェン構造を有することがわかる。グラフェン構造が含まれる炭素被覆層によれば、製品の導電率及びレート性能を向上させることができ、均一に成長した上記のグラフェン構造が、製品の顆粒の表面と電解液との固液界面の安定性をさらに向上させ、均一なSEI膜を形成し、製品の高温保存性能を向上させることができる。該複合負極材料は、サイクル容量維持率が高く、レート性能が優れ、高温エージング損失が小さいなどの利点を有する。
(2)本出願に係る調製方法は、シリコン含有顆粒の材料を所定の温度まで加熱した後、炭素含有ガスを導入し、炭素含有ガスをシリコン含有顆粒表面で化学気相成長させ、炭素被覆層をその場で成長させ、そして、炭素被覆層に少量のグラフェンが含まれ、直接グラフェンを用いて被覆を行う方法ではないので、調製の難易度を大幅に低下させることができる。全調製過程は、操作が簡単で、工程が短く、プロセスが成熟で、生産難易度が低く、コストがコントロール可能で、大規模の工業化生産での応用に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本出願に係る複合負極材料の調製方法のプロセスのフローチャートである。
図2】実施例1で調製した複合負極材料のラマンスペクトルである。
図3】実施例1で調製した複合負極材料のサイクル性能曲線である。
図4】実施例2で調製した複合負極材料のラマンスペクトルである。
図5】実施例2で調製した複合負極材料のサイクル性能曲線である。
図6】比較例1で調製した複合負極材料のラマンスペクトルである。
図7】比較例1で調製した複合負極材料のサイクル性能曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本出願をよりよく説明し、本出願の技術案を簡単にするため、以下、本出願をさらに詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本出願の簡単な例にすぎず、本出願の保護範囲を表したり限定したりするものではなく、本出願の保護範囲は、特許請求の範囲に準ずる。
【0029】
下記は、本出願の代表的な実施例であり、本出願を限定するものではない。
【0030】
第1局面において、本出願の実施例は、シリコン含有顆粒及び前記シリコン含有顆粒の少なくとも一部の表面を被覆する炭素被覆層を含む複合負極材料を提供する。ラマンスペクトルにおいて、前記複合負極材料は、450~550cm-1にケイ素特徴的なピークAをもち、1300~1400cm-1に炭素特徴的なピークBをもち、1530~1630cm-1に炭素特徴的なピークCをもち、2500~2750cm-1にグラフェン構造特徴的なピークDをもつ。
【0031】
本出願に係る複合負極材料のラマンスペクトルにおいて、特徴的なピークAがケイ素の特徴的なピーク(ケイ素特徴的なピークA)であり、特徴的なピークB及び特徴的なピークCが炭素の特徴的なピーク(炭素特徴的なピークB及び炭素特徴的なピークC)であり、特徴的なピークDがグラフェン構造の特徴的なピーク(グラフェン構造特徴的なピークD)である。上記のグラフェン構造を含む炭素被覆層は、シリコン含有顆粒の少なくとも一部の表面にその場で成長する。グラフェン構造を含む炭素被覆層によれば、製品の導電率及びレート性能を向上させることができ、均一に成長した上記のグラフェン構造が、製品の顆粒の表面と電解液との固液界面の安定性をさらに向上させ、均一なSEI膜を形成し、製品の高温保存性能を向上させ、高温エージング損失を低減させることができる。
【0032】
本出願に係る、このような独特なラマンスペクトル特徴をもつ複合負極材料は、サイクル容量維持率が高く、レート性能が優れ、高温エージング損失が小さいなどの利点を有する。
【0033】
下記は、本出願の選択可能な技術案であり、本出願に係る技術案を限定するものではなく、下記の好ましい技術案によれば、本出願の技術的目的及び有益効果をよりよく達成、実現することができる。
【0034】
本出願の選択可能な技術案として、ラマンスペクトルにおいて、前記ケイ素特徴的なピークAのピーク強度Iと前記グラフェン構造特徴的なピークDのピーク強度Iとの比I/Iは、0.1超且つ30未満であり、例えば、I/Iは、0.2、0.5、1、5、10、15、20、25又は29などである。且つ、前記グラフェン構造特徴的なピークDのピーク強度Iと前記炭素特徴的なピークBのピーク強度Iとの比I/Iは、0超且つ1未満であり、例えば、I/Iは、0.1、0.2、0.32、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8又は0.9などである。
【0035】
本出願では、特徴的なピークAはケイ素特徴的なピークであり、特徴的なピークDはグラフェン構造特徴的なピークであり、したがって、I/Iがグラフェン構造の成長の均一性を示すことができ、この値が小さいほど、グラフェン構造の成長がより均一になる。ただし、この値が0.1未満となる場合、炭素被覆層の厚さが過剰に厚いことになり、リチウムイオンの輸送が影響され、性能の劣化を招くため、本出願において、I/Iを、0.1<I/I<30を満たすようにコントロールすることにより、製品のグラフェン構造の均一な成長及び炭素被覆層の適切な厚さが実現され、優れた製品性能が得られた。特徴的なピークB及び特徴的なピークCが炭素材料の特徴的なピークであり、特徴的なピークDがグラフェン構造の特徴的なピークであり、特徴的なピークBが炭素材料における無定形又はシートエッジの欠損構造を示すものであるため、I/Iは、製品におけるグラフェン構造と欠損構造との割合を表すことができる。I/I<1となる場合、本出願の複合負極材料がその場で成長することによって得たものであることを示し、炭素被覆層に大量の微細なグラフェン構造が含まれ、直接グラフェンシートを用いてシリコン含有顆粒に対して被覆を行ったものではないので、調製の難易度が大幅に低下し、生産性が高く、コストコントロール可能である利点を有する。
【0036】
本出願の選択可能な技術案として、前記炭素被覆層は無機炭素材料層である。
なお、炭素被覆層がシリコン含有顆粒の表面に被覆され、本出願でいう表面が顆粒の平坦な表面だけでなく、炭素被覆層が顆粒表面の裂け目、孔などの構造内に埋められることもでき、ここで特に限定されない。
【0037】
いくつの実施例では、前記複合負極材料において、炭素被覆層の質量分率は、1%~65%であり、例えば1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%又は65%などであってもよいが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。本出願において、炭素被覆層の質量分率が1%未満となる場合、被覆量が不足になって、該製品の性能を十分に発揮できなくなり、炭素被覆層の質量分率が65%超となる場合、炭素被覆量が過剰になって、容量が影響されるとともに、リチウムイオンの輸送も妨げられ、負極材料の総合的な性能が低下してしまう。
【0038】
いくつの実施例では、前記複合負極材料において、前記炭素被覆層の厚さは、10nm~300nmであり、例えば、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、150nm、200nm、250nm又は300nmなどであってもよいが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。炭素被覆層が厚すぎると、リチウムイオンの輸送効率が低下し、材料の高いレートの充放電に不利になり、負極材料の総合的な性能が低下してしまい、炭素被覆層が薄すぎると、負極材料の導電性の向上に不利になるとともに材料の体積膨張に対する抑制性能が劣り、サイクル性能の劣化を招いてしまう。
【0039】
本出願の選択可能な技術案として、前記シリコン含有顆粒は、Si、SiO及びケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含み、ただし、0<x<2を満たす。本出願では、前記シリコン含有顆粒は、特定の空間構造、粒度、形態、ドーピング、ケイ素/炭素複合などが特に限定されず、異なるシリコン含有顆粒でも、調製の具体的なパラメーターを微調整すれば、本出願に係る複合負極材料を得ることが可能である。
【0040】
いくつの実施例では、前記シリコン含有顆粒の平均粒径は、0.1μm~20μmであり、例えば、0.1μm、0.5μm、1μm、3μm、5μm、10μm、13μm、15μm、18μm、20μmなどであってもよい。シリコン含有顆粒の平均粒径を上記範囲内にコントロールすれば、負極材料のサイクル性能の向上に寄与できる。
【0041】
いくつの実施例では、前記シリコン含有顆粒の比表面積は、150cm/g超であり、例えば、150cm/g、180cm/g、200cm/g、250cm/g、300cm/g、400cm/g又は500cm/gなどであってもよい。前記シリコン含有顆粒の比表面積が上記範囲内の値となれば、該負極材料で作製されたリチウム電池の初回効率の向上、負極材料のサイクル性能の向上に寄与できる。
【0042】
いくつの実施例では、前記SiOは、xが0<x<2を満たし、例えば、xが0.1、0.2、0.5、0.8、1、1.2、1.5、1.7又は1.9などである。
【0043】
第2局面において、本出願は、複合負極材料の調製方法を提供する。前記方法は、下記のステップを含む。
【0044】
保護雰囲気下で、炭素含有ガスが含まれる反応ガスを導入してシリコン含有顆粒と700℃~1450℃の反応温度下で反応させ、前記シリコン含有顆粒の少なくとも一部の表面に炭素被覆層を形成させて、前記複合負極材料を得る。
【0045】
本出願に係る方法は、炭素含有ガスとシリコン含有顆粒とを700℃~1450℃下で反応させ、炭素がシリコン含有顆粒の少なくとも一部の表面にその場で成長して、炭素被覆層を形成する。該炭素被覆層は、グラフェン構造を有し、製品の導電率及びレート性能を向上させることができ、均一に成長するグラフェン構造であれば製品の顆粒の表面と電解液との固液界面の安定性をさらに向上させ、均一なSEI膜を形成し、製品の高温保存性能を向上させ、高温エージング損失を低減させることができる。
【0046】
本出願の選択可能な技術案として、前記シリコン含有顆粒は、Si、SiO及びケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含み、ただし、0<x<2を満たす。本出願では、前記シリコン含有顆粒は、特定の空間構造、粒度、形態、ドーピング、ケイ素/炭素複合などが特に限定されず、異なるシリコン含有顆粒でも、調整の具体的なパラメーターを微調整すれば、本出願に係る複合負極材料を得ることが可能である。
【0047】
いくつの実施例では、前記シリコン含有顆粒の平均粒径は、0.1μm~20μmであり、例えば、0.1μm、0.5μm、1μm、3μm、5μm、10μm、13μm、15μm、18μm、20μmなどであってもよい。シリコン含有顆粒の平均粒径を上記範囲内にコントロールすれば、負極材料のサイクル性能の向上に寄与できる。
【0048】
いくつの実施例では、前記シリコン含有顆粒の比表面積は、150cm/g超であり、例えば、150cm/g、180cm/g、200cm/g、250cm/g、300cm/g、400cm/g又は500cm/gなどであってもよい。前記シリコン含有顆粒の比表面積が上記範囲内の値となれば、該負極材料で作製されたリチウム電池の初回効率の向上、負極材料のサイクル性能の向上に寄与できる。
【0049】
いくつの実施例では、前記SiOは、xが0<x<2を満たし、例えば、xが0.1、0.2、0.5、0.8、1、1.2、1.5、1.7又は1.9などである。
【0050】
本出願に係る調製方法において、反応ガスとシリコン含有顆粒材料との反応は化学気相成長反応であり、本出願に係る調製方法は、簡単な化学気相成長により本出願に係る複合負極材料を調製することができる。
【0051】
調製できた前記複合負極材料は、ラマンスペクトルにおいて、450~550cm-1にケイ素特徴的なピークAをもち、1300~1400cm-1に炭素特徴的なピークBをもち、1530~1630cm-1に炭素特徴的なピークCをもち、2500~2750cm-1にグラフェン構造特徴的なピークDをもつ。好ましくは、前記ケイ素特徴的なピークAのピーク強度Iと前記グラフェン構造特徴的なピークDのピーク強度Iとの比I/Iは0.1超且つ30未満であり、且つ、前記グラフェン構造特徴的なピークDのピーク強度Iと前記炭素特徴的なピークBのピーク強度Iとの比I/Iは0超且つ1未満である。
【0052】
本出願の選択可能な技術案として、前記保護雰囲気は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【0053】
いくつの実施例では、前記炭素含有ガスは、メタン、アセチレン、エチレン、プロピン、プロピレン、トルエン蒸気、ベンゼン蒸気、アセトン蒸気及びホルムアルデヒド蒸気のうちの少なくとも1種を含む。
【0054】
いくつの実施例では、前記反応ガスには、補助ガスがさらに含まれる。
【0055】
いくつの実施例では、前記補助ガスは、水素ガスを含む。水素ガスは、一部の炭素含有ガス(例えば、アセチレン)の反応速度をコントロール可能であり、大流量下でグラフェン構造を生成することをより容易にし、生産効率を向上させることができる。
【0056】
いくつの実施例では、前記炭素含有ガスと補助ガスとのモル比は、(2~10):1であり、例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1又は10:1などであるが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。
【0057】
本出願の選択可能な技術案として、前記反応ガスの導入速度は、0.1~6.0L/minであり、例えば、0.1L/min、0.3L/min、0.5L/min、1.0L/min、2.0L/min、3.0L/min、4.0L/min、5.0L/min又は6.0L/minなどであるが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。本出願において、反応ガスの導入速度が速すぎると、グラフェン構造を生成できなくなり、反応ガスの導入速度が遅すぎると、成長効率が低すぎて、生産性及び実用的価値が影響される。ただし、該好ましい条件は、容積が5Lである小型の試験炉で試験を行って得たものであるため、容積が大きく異なる他の反応器に適用できない可能性がある。このため、本出願は、反応ガスの導入速度を上記の好ましい範囲に限定せず、調製条件に応じて反応ガスの導入速度を相応に調整することができる。
【0058】
本出願の選択可能な技術案として、前記反応の方式は化学気相成長である。前記化学気相成長の反応温度は、700℃~1450℃であり、例えば、700℃、800℃、900℃、1000℃、1050℃、1100℃、1150℃、1200℃、1250℃、1300℃、1350℃、1400℃又は1450℃などであるが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。反応温度が700℃未満の場合、グラフェン構造を含む炭素被覆層のその場成長が影響され、製品のラマン測定でグラフェン構造特徴的なピークDを確認できなくなってしまう。
【0059】
いくつの実施例では、前記化学気相成長の反応温度は、700℃~1150℃であり、例えば、700℃、800℃、900℃、1000℃、1050℃又は1150℃などであるが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。本出願において、反応温度が高すぎると、炭素被覆層とシリコン含有コアとが反応して電気化学的に不活性な炭化ケイ素を生成し、製品の電気化学的性能の劣化を招いてしまい、反応温度が低すぎると、グラフェン構造を生成できなくなってしまう。
【0060】
いくつの実施例では、前記化学気相成長の保温時間は、3h~16hであり、例えば、3h、4h、5h、6h、7h、8h、9h、10h、11h、12h、13h、14h、15h又は16hなどであるが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。
【0061】
いくつの実施例では、前記化学気相成長の反応気圧は、1.0atm~10.0atmであり、例えば、1.0atm、2.0atm、4.0atm、6.0atm、7.0atm、8.0atm、9.0atm又は10.0atmなどであるが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。本出願において、反応気圧が高すぎると、反応速度が遅すぎて、生産性及び実用性が影響されるとともに、安全上のリスクがあり、反応気圧が低すぎると、反応雰囲気である不活性雰囲気を確保できなくなってしまい、圧力が1atm未満になる場合、空気が、逆に高温の可燃性ガスのある反応室に吸い込まれ、重大な安全性問題を起こす恐れがある。
【0062】
本出願において、製品の性能をさらに向上させるとともに、グラフェン構造を表す特徴的なピークDの現れを確保するように、用いられる上記の反応ガスの流速、反応温度、反応気圧及び保温時間の操作条件を互いに組み合わせることができる。
【0063】
いくつの実施例では、図1に示すように、前記方法は下記のステップS100~S200を含む。
S100は、保護雰囲気下で、シリコン含有顆粒を700℃~1450℃まで加熱する。
S200は、炭素含有ガスが含まれる反応ガスを導入して化学気相成長を行い、シリコン含有顆粒の少なくとも一部の表面に炭素被覆層を形成させて、複合負極材料を得る。
本出願の好ましい技術案として、前記反応は、化学気相成長(CVD)装置で行う。
【0064】
いくつの実施例では、前記化学気相成長装置は、回転式化学気相成長(CVD)反応炉、プラズマ強化化学気相成長(CVD)反応炉、化学気相成長(CVD)管状炉又は流動床のうちの任意の1種又は少なくとも2種の組合せを含む。
【0065】
本出願の選択可能な技術案として、前記炭素被覆層は無機炭素材料層である。なお、炭素被覆層がシリコン含有顆粒の表面に被覆され、本出願でいう表面が顆粒の平坦な表面だけでなく、炭素被覆層が顆粒表面の裂け目、孔などの構造内に埋められることもでき、ここで限定しない。
【0066】
いくつの実施例では、前記複合負極材料において、炭素被覆層の質量分率は、1%~65%であり、例えば、1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%又は65%などであるが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。本出願において、炭素被覆層の質量分率が1%未満となる場合、被覆量が不足になって、該製品の性能を十分に発揮できなくなり、炭素被覆層の質量分率が65%超となる場合、炭素被覆量が過剰になって、容量が影響されるとともに、リチウムイオンの輸送も妨げられ、負極材料の総合的な性能が低下してしまう。
【0067】
いくつの実施例では、前記複合負極材料において、前記炭素被覆層の厚さは、10nm~300nmであり、例えば、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、150nm、200nm、250nm又は300nmなどであってもよいが、ここでリストした数値に限定されず、該数値範囲内の他の数値であってもよい。炭素被覆層が厚すぎると、リチウムイオンの輸送効率が低下し、材料の高いレートの充放電に不利になり、負極材料の総合的な性能が低下してしまい、炭素被覆層が薄すぎると、負極材料の導電性の向上に不利になるとともに材料の体積膨張に対する抑制性能が劣り、サイクル性能の劣化を招いてしまう。
【0068】
いくつの実施例では、前記調製方法は、化学気相成長反応の後、自然冷却することをさらに含む。
【0069】
本出願に係る調製方法の更なる選択可能な技術案として、前記方法は、
保護雰囲気下で、シリコン含有顆粒を700℃~1150℃まで加熱するステップと、
炭素含有ガスと水素とを(2~10):1のモル比で前記シリコン含有顆粒に導入して化学気相成長反応を行い、反応気圧を1.0atm~10.0atmにコントロールし、3h~16h保温し、前記シリコン含有顆粒の少なくとも一部の表面に炭素被覆層を形成させて、前記複合負極材料を得るステップとを含む。
【0070】
第3局面において、本出願は、上記の第1局面に記載の複合負極材料又は上記の第2局面に記載の調製方法で調製できた複合負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0071】
以下、複数の実施例を用いて本発明の実施例をさらに説明する。ただし、本発明の実施例は下記の具体的な実施例に限定されず、保護範囲内において適切に変更して実施してもよい。
【0072】
実施例1
本実施例は下記の方法で複合負極材料を調製した。
1.5kgのSiO粉末を取って5Lの実験用間欠式回転CVD炉内に入れ、炉内に窒素ガスを導入して雰囲気の置換を行い、排出されるガスの酸素含有量が200ppm未満になった後、窒素ガスを継続に導入しながら昇温させ、900℃まで昇温させた後、窒素ガスをキャリアガスとして0.8L/minでメタンを導入し、反応気圧を1.2atmに維持し、連続に6h反応した後、メタンガスを止めて、自然降温させて、前記複合負極材料を得た。
【0073】
前記負極材料を排出した後、分散してふるいにかけ、ラマン分光測定(日本HORIBAのXPLORA型レーザー共焦点ラマン分光装置を用い、波長532nmのレーザーを使用し、測定範囲を100cm-1~2800cm-1にし、その他の実施例及び比較例もこの型番のラマン分光装置を用いて測定を行い、測定条件も実施例1と同じである)及び炭素含有量測定(ドイツブルカーのG4 ICARUS HF赤外線硫黄炭素分析装置用いて測定を行い、その他の実施例及び比較例もこの型番の測定装置を用いて炭素含有量を測定する)を行った。
【0074】
本実施例で調製した負極材料は、SiOコアと、SiOコアの表面に被覆される無機炭素材料被覆層とを含み、炭素被覆層の質量分率が2.53%であった。本実施例で調製した負極材料のラマンスペクトルにおいて、ケイ素特徴的なピークAが504cm-1に現れ、炭素特徴的なピークBが1352cm-1に現れ、炭素特徴的なピークCが1601cm-1に現れ、グラフェン構造特徴的なピークDが2695cm-1に現れた。ピーク強度は、I=90.2であり、I=109.0であり、I=54.5であり、I/Iは1.65であり、I/Iは0.50であった。
【0075】
本実施例で調製した複合負極材料の性能に対する測定結果は表1に示される。
図2は、本実施例で調製した複合負極材料のラマンスペクトルである。該図面から、製品は、グラフェン構造の特徴的なピークが現れたことが確認できた。
図3は、本実施例で調製した複合負極材料のサイクル性能曲線である。該図面から、製品は、優れたサイクル性能を有するとともに、レート性能(1C/0.1C)も優れる。
【0076】
実施例2
本実施例は下記の方法で複合負極材料を調製した。
150gの多孔質シリコン粉末(比表面積>150cm/g)を取って5Lの実験用間欠式回転CVD炉内に入れ、炉内に窒素ガスを導入して雰囲気の置換を行い、排出されるガスの酸素含有量が200ppm未満になった後、窒素ガスを継続に導入しながら昇温させ、935℃まで昇温させた後、窒素ガスをキャリアガスとして1.0L/minでメタンを導入し、反応気圧を2.0atmに維持し、連続に10h反応した後、メタンガスを止めて、自然降温させて、前記複合負極材料を得た。
【0077】
前記負極材料を排出した後、分散してふるいにかけ、測定を行った。
本実施例で調製した負極材料は、多孔質シリコンコアと、多孔質シリコンコアの表面に被覆される無機炭素材料被覆層とを含み、炭素被覆層の質量分率が41.2%であった。本実施例で調製した負極材料のラマンスペクトルにおいて、ケイ素特徴的なピークAが501cm-1に現れ、炭素特徴的なピークBが1348cm-1に現れ、炭素特徴的なピークCが1591cm-1に現れ、グラフェン構造特徴的なピークDが2682cm-1に現れた。ピーク強度について、I/Iは4.35であり、I/Iは0.34であった。
本実施例で調製した複合負極材料の性能に対する測定結果は表1に示される。
【0078】
図4は、本実施例で調製した複合負極材料のラマンスペクトルである。該図面から、製品は、グラフェン構造の特徴的なピークが現れたことが確認できた。
図5は、本実施例で調製した複合負極材料のサイクル性能曲線である、該図面から、製品は、優れたサイクル性能を有するとともに、レート性能(1C/0.1C)も優れる。
【0079】
実施例3
1.5kgのSiO粉末を取って5Lの実験用間欠式回転CVD炉内に入れ、炉内に窒素ガスを導入して雰囲気の置換を行い、排出されるガスの酸素含有量が200ppm未満になった後、窒素ガスを継続に導入しながら昇温させ、700℃まで昇温させた後、窒素ガスをキャリアガスとして1.8L/minでアセチレンと水素との混合ガス(アセチレンと水素とのモル比が2:1である)を導入し、反応気圧を1.0atmに維持し、連続に16h反応した後、混合ガスを止めて、自然降温させて、前記複合負極材料を得た。
【0080】
本実施例で調製した負極材料は、SiOコアと、SiOコアの表面に被覆される無機炭素材料被覆層とを含み、炭素被覆層の質量分率が4.3%であった。本実施例で調製した負極材料のラマンスペクトルにおいて、ケイ素特徴的なピークAが503cm-1に現れ、炭素特徴的なピークBが1351cm-1に現れ、炭素特徴的なピークCが1597cm-1に現れ、グラフェン構造特徴的なピークDが2691cm-1に現れた。ピーク強度について、I/Iは6.73であり、I/Iは0.34であった。
本実施例で調製した複合負極材料の性能に対する測定結果は表1に示される。
【0081】
実施例4
2kgのSi-O-C-Li複合物を取って5Lの実験用間欠式回転CVD炉内に入れ、炉内にアルゴンガスを導入して雰囲気の置換を行い、排出されるガスにおける酸素含有量が200ppm未満になった後、窒素ガスを継続に導入しながら昇温させ、1150℃まで昇温させた後、アルゴンガスをキャリアガスとして0.8L/minでアセチレンと水素との混合ガス(アセチレンと水素とのモル比が4:1である)を導入し、反応気圧を10.0atmに維持し、連続に3h反応した後、混合ガスを止めて、自然降温させて、前記複合負極材料を得た。
【0082】
本実施例で調製した複合負極材料は、亜酸化ケイ素/ケイ素/メタケイ酸リチウムコアと、亜酸化ケイ素/ケイ素/メタケイ酸リチウムコアの表面に被覆される無機炭素材料被覆層とを含み、炭素被覆層の質量分率が2.5%であった。本実施例で調製した負極材料のラマンスペクトルにおいて、ケイ素特徴的なピークAが501cm-1に現れ、炭素特徴的なピークBが1347cm-1に現れ、炭素特徴的なピークCが1598cm-1に現れ、グラフェン構造特徴的なピークDが2692cm-1に現れた。ピーク強度について、I/Iは8.59であり、I/Iは0.24であった。
本実施例で調製した複合負極材料の性能に対する測定結果は表1に示される。
【0083】
実施例5
本実施例では、アセチレンと水素とのモル比が10:1にされた以外、その他の操作条件及び原材料の種類が実施例3と同じであった。
【0084】
本実施例で調製した負極材料は、SiOコアと、SiOコアの表面に被覆される無機炭素材料被覆層とを含み、炭素被覆層の質量分率が4.1%であった。本実施例で調製した負極材料のラマンスペクトルにおいて、ケイ素特徴的なピークAが501cm-1に現れ、炭素特徴的なピークBが1347cm-1に現れ、炭素特徴的なピークCが1592cm-1に現れ、グラフェン構造特徴的なピークDが2685cm-1に現れた。ピーク強度について、I/Iは6.68であり、I/Iは0.30であった。
本実施例で調製した複合負極材料の性能に対する測定結果は表1に示される。
【0085】
実施例6
本実施例では、反応気圧が13atmにされた以外、その他の原材料及び操作条件が実施例1と同じであった。
【0086】
本実施例で調製した負極材料は、SiOコアと、SiOコアの表面に被覆される無機炭素材料被覆層を含み、炭素被覆層の質量分率が0.7%であった。本実施例で調製した負極材料のラマンスペクトルにおいて、ケイ素特徴的なピークAが505cm-1に現れ、炭素特徴的なピークBが1352cm-1に現れ、炭素特徴的なピークCが1597cm-1に現れ、グラフェン構造特徴的なピークDが2701cm-1に現れた。ピーク強度について、I/Iは19.2であり、I/Iは0.61であった。
本実施例で調製した複合負極材料の性能に対する測定結果は表1に示される。
【0087】
実施例7
本実施例では、反応温度が1450℃にされた以外、その他の原材料及び操作条件が実施例1と同じであった。
【0088】
本実施例で調製した負極材料は、SiOコアと、SiOコアの表面に被覆される無機炭素材料被覆層とを含み、炭素被覆層の質量分率が4.3%であった。本実施例で調製した負極材料のラマンスペクトルにおいて、ケイ素特徴的なピークAが502cm-1に現れ、炭素特徴的なピークBが1342cm-1に現れ、炭素特徴的なピークCが1601cm-1に現れ、グラフェン構造特徴的なピークDが2694cm-1に現れた。ピーク強度について、I/Iは5.4であり、I/Iは0.24であった。
本実施例で調製した複合負極材料の性能に対する測定結果は表1に示される。
【0089】
実施例8
本実施例では、水素の導入がなくアセチレンのみを導入し、反応ガスの導入速度が0.1L/minにされ、連続に24h反応した以外、その他の原材料及び操作条件が実施例3と同じであった。
【0090】
本実施例で調製した負極材料は、SiOコアと、SiOコアの表面に被覆された無機炭素材料被覆層とを含み、炭素被覆層の質量分率が6.4%であった。本実施例に調製した負極材料のラマンスペクトルにおいて、ケイ素特徴的なピークAが503cm-1に現れ、炭素特徴的なピークBが1341cm-1に現れ、炭素特徴的なピークCが1602cm-1に現れ、グラフェン構造特徴的なピークDが2696cm-1に現れた。ピーク強度について、I/Iは4.5であり、I/Iが0.16であった。
本実施例で調製した複合負極材料の性能に対する測定結果は表1に示される。
【0091】
比較例1
本比較例は下記の方法で負極材料を調製した。
1.5kgのSiO粉末を取って実験用間欠式回転CVD炉内に入れ、炉内に窒素ガスを導入して雰囲気の置換を行い、排出されるガスの酸素含有量が200ppm未満になった後、窒素ガスを継続に導入しながら昇温させ、680℃まで昇温させた後、窒素ガスをキャリアガスとして1.5L/minでアセチレンを導入し、反応気圧を1.4atmに維持し、継続に5h反応した後、アセチレンガスを止めて、自然降温させて、負極材料を得た。
【0092】
前記負極材料を排出した後、分散してふるいにかけ、測定を行った。
該負極材料の炭素被覆層の質量分率は4.21%(即ち、炭素含有量)であり、ラマン測定結果から、グラフェン構造特徴的なピークDが確認されなかった。
本比較例で調製した負極材料の性能に対する測定結果は表1に示される。
【0093】
図6は、本比較例で調製した複合負極材料のラマンスペクトルである。該図面から、製品にグラフェン構造を有していないことがわかった。
図7は、本比較例で調製した複合負極材料のサイクル性能曲線である。該図面から、製品のサイクル性能及びレート性能がいずれも劣った。
【0094】
比較例2
本比較例では、反応温度が500℃にされた以外、その他の原材料及び操作条件が実施例1と同じであった。
【0095】
本比較例による負極材料は、ラマン測定の結果から、グラフェン構造特徴的なピークDが確認されなかった。
本比較例で調製した負極材料の性能に対する測定結果は表1に示される。
【0096】
性能テスト方法
各実施例及び比較例で調製した負極材料と市販のグラファイト負極とを10:90の割合で混合して負極活物質として使用し、使用するグラファイトが深せん市貝特瑞新能源材料股ふん有限公司が生産した合成グラファイトS360シリーズのものであり、電極片のコーティング層において活物質と、導電剤(Super P)と、接着剤(CMC+SBR)との質量比が92:4:4であり、対極がリチウム片であり、さらに1mol/LのLiPF/EC+DMC+EMC(v/v=1:1:1)電解液、Celgard2400のセパレータを利用してボタン電池を組み立てた。このような電池を用いてサイクル性能テストを行った。
【0097】
各実施例及び比較例で調製した負極材料を負極活物質として使用し、電極片のコーティング層において活物質と、導電剤(Super P)と、接着剤(CMC+SBR)との質量比が92:4:4であり、対極がリチウム片であり、さらに1mol/LのLiPF/EC+DMC+EMC(v/v=1:1:1)電解液、Celgard2400のセパレータを利用してボタン電池を組み立てた。このような電池を用いて初回充放電テストを行った。
各実施例及び比較例で調製した負極材料と市販のグラファイト負極とを10:90の割合で混合して負極活物質として使用し、使用するグラファイトが深せん市貝特瑞新能源材料股ふん有限公司が生産した合成グラファイトS360シリーズのものであり、負極電極片のコーティング層において負極活物質と、導電剤(Super P)と、接着剤(CMC+SBR)との質量比が95.8:1.0:3.2であり、正極電極片のコーティング層において正極活物質(NCA三元系材料、深せん市貝特瑞新能源材料股ふん有限公司が生産、製品名称:N8-S)と、導電剤(Super P)と、接着剤(PVDF)との質量比が97.3:1.0:1.7であり、使用するセパレータがCelgard2400のセパレータであり、さらに1mol/LのLiPF/EC+DMC+EMC(v/v=1:1:1)電解液を利用して18650型の電池を組み立てて、高温エージング損失テストを行った。
LAND電池評価システムを利用して上記の電池に対して電気化学的測定を行った。
【0098】
常温条件で、ボタン電池は、0.1C、0.2C、0.5Cのそれぞれで1サイクルの充放電を行い、その後、1Cで47サイクルの充放電を行った。50サイクルの容量を1サイクルの容量で割って、製品の50サイクルの容量維持率を得、0.1Cでの容量を1Cでの容量で割た値を用いて製品のレート性能を評価した。
【0099】
18650の電池は、化成処理された後、0.3Cで2.5~4.2Vの電圧範囲内に充放電を行って可逆容量を記録し、その後さらに0.3Cで4.2Vまで充電し、完全充電された状態で60℃の温度下で3日間静置した。3日後、0.3Cで2.5Vまで放電して、静置後の放出できた容量と記録した可逆容量との差を算出し、算出した差を、記録した可逆容量で割った値が製品のエージング損失となった。
【0100】
上記の性能テストの結果は表1に示される。
【表1】
【0101】
上記実施例及び比較例から分かるように、本出願の実施例1~5で調製した複合負極材料は独特なラマンスペクトルピークをもち、特徴的なピークDがグラフェン構造特徴的なピークであり、且つI/I及びI/Iが優れ、上記の実施例による複合負極材料は、サイクル容量維持率が高く、レート性能が優れ、高温エージング損失が小さいなどの利点を有する。
【0102】
実施例6の反応気圧が高すぎたため、反応速度が低すぎて、炭素含有量が低くなってしまった。一方、実施例1の反応気圧が1.2atmであり、実施例1による複合負極材料で調製できた電池は、容量維持率、サイクル維持率及びエージング損失などの性能がいずれも実施例6によるものより優れ、したがって、反応気圧を1.0atm~10.0atmの範囲にコントロールすることが適切で、製品の性能を保証できるとともに、生産安全上のリスクを低減することができる。
【0103】
実施例7の反応温度が高すぎて閾値まで達したため、少量の炭素被覆層がシリコン含有顆粒と反応して、少量の電気化学的不活性な炭化ケイ素を生成してしまった。一方、実施例1の反応温度が900℃であり、反応が穏和であった。実施例1による複合負極材料で製造した電池は、初回可逆比容量、容量維持率、サイクル維持率及びエージング損失などの各性能がいずれも実施例7より優れ、したがって、反応温度を700℃~1150℃の範囲にコントロールすることが適切で、製品の電気化学的容量及びレート性能を保証できる。
【0104】
実施例8では、補助ガスである水素ガスを使用しなかった。実施例3と比べて、実施例8において、グラフェン構造を生成するには、比較的に低いアセチレン流量にしなければならないので、実施例8では反応時間が長くなり、生産効率が低下した。したがって、補助ガスの加入は、アセチレンガスの反応速度をコントロールでき、グラフェン構造の生成効率を向上させることができるとわかった。
【0105】
比較例1では、実施例1におけるメタンの代わりにアセチレンを使用したとともに反応温度が低すぎて、グラフェン構造を生成できなかった。
比較例2では、反応温度が低すぎて、グラフェン構造を生成できなかった。
【0106】
比較例1、2による負極材料は、グラフェン構造を有していないため、複合負極材料と電解液との固液界面の安定性を維持することが困難であり、初回可逆比容量について実施例1~8によるものと近いが、電池が長期間でサイクルした後、容量維持率及びサイクル維持率が低下し、電池のエージング損失が悪化してしまう。グラフェン構造を含む炭素被覆層によれば、複合負極材料の顆粒の表面と電解液との固液界面の安定性を向上させ、均一なSEI膜を形成することができるため、グラフェン構造を含む複合負極材料で製造した電池の初回可逆比容量、容量維持率、サイクル維持率及びエージング損失などの各性能を改善することができる。なお、本出願は上記の実施例を用いて本出願の詳細な方法を説明したが、本出願が上記の詳細な方法に限定されない。つまり、本出願の実施が必ずしも上記の詳細な方法に依存するとは限らない。当業者による、本出願に対する任意の改良、本出願に係る製品の各原材料に対する均等置換及び補助成分の添加、具体的な形態の選択なども、本出願の保護範囲及び開示範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7