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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】多相系のための高度な流体接続設計
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 A
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022020996
(22)【出願日】2022-02-15
(65)【公開番号】P2022062243
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】17/182,564
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516357421
【氏名又は名称】バイドゥ ユーエスエイ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Baidu USA LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】ガオ、 ティアンユイ
【審査官】白石 圭吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0270260(US,A1)
【文献】特表2009-532871(JP,A)
【文献】特開2019-012470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
G06F 1/16 - 1/18
H05K 7/20
H01L 23/34 - 23/46
F16L 27/00 - 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ラックのためのコネクタモジュールであって、
取り付け部材を有するフレームであって、前記取り付け部材は前記フレームを前記電子ラックに取り付けるように構成されるフレームと、
流体コネクタを収容するように前記フレーム内に形成される複数の通路と、
前記通路内に摺動可能に取り付けられる複数の流体コネクタと、
流体コネクタ同士間の空間的配向を一定に維持するように少なくとも2つの流体コネクタに取り付けられるインターコネクタと、
を備える電子ラックのためのコネクタモジュール。
【請求項2】
前記流体コネクタのそれぞれは、前記流体コネクタを前記通路内の固定位置に固定するロック機構をさらに備える、
請求項1に記載のコネクタモジュール。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記通路内での前記流体コネクタの自由な滑りを防止するように移動抵抗を付与するための、前記通路内での前記流体コネクタの締まり嵌めを含む、請求項に記載のコネクタモジュール。
【請求項4】
前記ロック機構は、前記流体コネクタから延びて前記通路内の歯と噛み合うアームを含む、
請求項に記載のコネクタモジュール。
【請求項5】
前記フレームは、所定の位置に位置決めされ、前記流体コネクタを前記所定の位置に係止するように構成される複数のロケータをさらに備える、
請求項1に記載のコネクタモジュール。
【請求項6】
前記インターコネクタは、一定の空間的配向を維持するために前記流体コネクタのそれぞれを他の流体コネクタに相互接続するように構成されるインターコネクタキットである
請求項1に記載のコネクタモジュール。
【請求項7】
データセンターの電子ラックであって、
冷却液供給源から第1の冷却液を受けるためのラック給液ラインと、第1の暖かい液体を前記冷却液供給源に戻すためのラック液体戻りラインとを有するラックマニホールドと、
それぞれが1つまたは複数の情報技術コンポーネントに関連付けられた1つまたは複数の流体冷却装置を含むように積み重ねて配置された複数のサーバシャーシと、
前記電子ラックに取り付けられ、それぞれが前記流体冷却装置と前記冷却液供給源とを流体接続する複数のコネクタモジュールと、を備え、
前記コネクタモジュールのそれぞれは、
取り付け部材を有するフレームであって、前記取り付け部材は前記フレームを前記電子ラックに取り付けるように構成されるフレームと、
流体コネクタを収容するように前記フレーム内に形成される複数の通路と、
前記通路内に摺動可能に取り付けられる複数の流体コネクタと、
複数のインターコネクタと、を備え
各インターコネクタは、流体コネクタ同士間の空間的配向を一定に維持するように、少なくとも2つの流体コネクタに取り付けられている、
データセンターの電子ラック。
【請求項8】
前記流体冷却装置は、冷却板および凝縮器から選択される、
請求項に記載の電子ラック。
【請求項9】
前記流体冷却装置の少なくとも1つは、
第1のコネクタモジュールに取り付けられたコネクタに接続されるライザー気体ラインと、
第2のコネクタモジュールに取り付けられたコネクタに接続される液体戻りラインと、を備え、
前記第1のコネクタモジュールは、前記第2のコネクタモジュールよりも垂直方向において高く取り付けられている、
請求項に記載の電子ラック。
【請求項10】
前記流体冷却装置の少なくとも1つは、高温液体ラインおよび低温液体ラインを含み、
前記高温液体ラインは、第1の通路に取り付けられた第1のコネクタに接続され、
前記低温液体ラインは、
第2の通路に取り付けられた第2のコネクタに接続され、前記第1のコネクタは、
前記第2のコネクタと垂直方向における同じ高さに取り付けられている、
請求項に記載の電子ラック。
【請求項11】
前記複数の流体コネクタは、複数の対になる入口コネクタとリターンコネクタとを含み、
前記対になる入口コネクタとリターンコネクタのサブセットは、垂直方向における同じ高さに取り付けられ、前記対になる入口コネクタとリターンコネクタの残りの部分は、前記入口コネクタを前記リターンコネクタよりも高い垂直方向の高さに取り付けるように構成される、請求項に記載の電子ラック。
【請求項12】
前記流体コネクタのそれぞれは、前記流体コネクタを前記通路内の固定位置に固定するロック機構をさらに備える、
請求項に記載の電子ラック。
【請求項13】
前記ロック機構は、
前記通路内での前記流体コネクタの自由な滑りを防止するように移動抵抗を付与するための、前記通路内での前記流体コネクタの締まり嵌め、または、前記流体コネクタから延びて前記通路内の歯と噛み合うアームを含む、
請求項12に記載の電子ラック。
【請求項14】
前記フレームは、所定の位置に位置決めされ、前記流体コネクタを前記所定の位置に係止するように構成される複数のロケータをさらに備える、
請求項に記載の電子ラック。
【請求項15】
複数のサーバシャーシの電子ラックに冷却流体を供給するための冷却システムの設置方法であって、
それぞれ少なくとも2つの通路が設けられた複数のコネクタモジュールを前記電子ラックに取り付けるステップであって、それぞれのコネクタモジュールは、流体コネクタ同士間の空間的配向を一定に維持するように少なくとも2つの流体コネクタに取り付けられるインターコネクタを備える、ステップと、
前記通路のそれぞれに少なくとも1つの流体コネクタを取り付けることにより、複数の流体コネクタを前記コネクタモジュールに取り付けるステップと、
前記サーバシャーシのそれぞれに対して、入口コネクタと出口コネクタの空間的配向を確認し、前記複数の流体コネクタのうちの2つの流体コネクタを、前記入口コネクタと前記出口コネクタの前記空間的配向に合わせるように摺動させ、前記インターコネクタを、少なくとも2つの流体コネクタに取り付けることにより、前記空間的配向に前記2つの流体コネクタを固定し、その後、前記2つの流体コネクタを前記入口コネクタと前記出口コネクタとに接合することにより、前記サーバシャーシを前記電子ラックに取り付けるステップと、を含む方法。
【請求項16】
前記2つの流体コネクタを固定するステップは、前記2つの流体コネクタを選択された所定の専用位置に位置決めすることを含み、
前記選択された所定の専用位置は、前記通路に適用された事前配置ロケータによって識別される、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
複数の冷却装置を有するマルチデバイスシャーシを、複数対の流体コネクタと接合するように取り付ける、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
流体コネクタ対のそれぞれに対して、ライザーコネクタをリターンコネクタよりも高い高さに固定する、
請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の実施形態は、主にデータセンターおよび電子機器の冷却に関する。より詳細には、本出願の実施形態は、多相系に特に有利なモジュール化流体接続およびハードウェア設計に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却は、コンピュータシステムとデータセンターの設計における重要な要素である。サーバ内に搭載される高性能プロセッサなどの高性能電子部品の数は、着実に増加しており、それによってサーバ正常動作時に発生して放散される熱の量が増加している。データセンター内で使用されるサーバが動作する時に環境が時間の経過に伴って温度の上昇が許容される場合に、データセンター内におけるサーバの信頼性が低下する場合がある。適切な熱環境を保持することは、データセンターにおけるサーバの正常な動作、並びにサーバの性能および寿命にとって重要である。特にこれらの高性能サーバを冷却する場合には、より効果的で効率的な冷却のための解決策が求められている。
【0003】
異なるコンピューティング、ストレージ、および他の機能ベースのシステムとして理解することができるサーバおよび異なるタイプのIT機器は、電気通信、電力、冷却流体などを輸送するために後部に設置される複数のコネクタを含む。このようなコネクタはブラインドメイトコネクタであってもよく、オス-メス接続は、さまざまなコネクタを接続または切断するためにユーザがユニットの背面に手を伸ばす必要がないように、嵌合コネクタの自己調整によって自動に行われる。このようなブラインド嵌合接続を実現するためには、コネクタを固定方向に配置して、嵌合接続をする必要がある。しかしながら、高度な多相冷却システムを組み込むと、異なるシステムが異なる流体コネクタ構成を必要とすることがあり、流体冷却接続の設計が悪化する。
【0004】
異なる冷却素子の相互運用性は、実際の使用における異なるラック構成、流体システム、およびラックレベルの流体ポートの可用性に対応するために重要である。
【発明の概要】
【0005】
本出願の一態様は、電子ラックのためのコネクタモジュールであって、取り付け部材を有するフレームであって、取り付け部材はフレームを電子ラックに取り付けるように構成されるフレームと、フレーム内に流体コネクタを収容するように形成される複数の通路と、通路に摺動可能に装着される複数の流体コネクタと、を備える電子ラックのためのコネクタモジュールを提供する。
【0006】
本出願の他の態様は、データセンターの電子ラックであって、冷却液供給源から第1の冷却液を受けるためのラック給液ラインと、第1の暖かい液体を冷却液供給源に戻すためのラック液体戻りラインとを有するラックマニホールドと、それぞれが1つまたは複数の情報技術コンポーネントに関連付けられた1つまたは複数の流体冷却装置を含むように積層配置された複数のサーバシャーシと、電子ラックに取り付けられ、流体冷却装置と冷却液供給源とを流体接続する複数のコネクタモジュールと、を備え、コネクタモジュールのそれぞれは、取り付け部材を有するフレームであって、取り付け部材はフレームを電子ラックに取り付けるように構成されるフレームと、フレーム内に流体コネクタを収容するように形成される複数の通路と、通路に摺動可能に装着される複数の流体コネクタと、を備えるデータセンターの電子ラックを提供する。
【0007】
本出願の他の態様は、複数のサーバシャーシの電子ラックに冷却流体を供給する方法であって、
それぞれ少なくとも2つの通路が設けられた複数のコネクタモジュールを前記電子ラックに取り付けるステップと、通路のそれぞれに少なくとも1つの流体コネクタを取り付けることにより、複数の流体コネクタをコネクタモジュールに取り付けるステップと、サーバシャーシのそれぞれに対して、入口コネクタと出口コネクタの空間的配向を確認し、複数の流体コネクタのうちの2つの流体コネクタを、入口コネクタと出口コネクタの空間的配向に合わせるように摺動させ、空間的配向に2つの流体コネクタを固定し、その後、2つの流体コネクタを入口コネクタと出口コネクタとに係合させることにより、サーバシャーシを電子ラックに取り付けるステップと、を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本出願の実施形態は、図面において限定的ではなく例示的な形態で示され、図面において同様の符号が同様の素子を示す。
図1】一実施形態に係るデータセンター施設の一例を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る電子ラックの一例を示すブロック図である。
図3】一実施形態に係る冷却板構成の一例を示すブロック図である。
図4A】一実施形態に係るコネクタモジュールを示す全体的な概略図であり、
図4B】その側面図である。
図5A】一実施形態に係るコネクタモジュール500を示す全体的な概略図である。
図5B】インターコネクタなしの他の実施形態を示す全体的な概略図である。
図6A】一実施形態に係るコネクタモジュール600を示す全体的な概略図である。
図6B】モジュールの全体的な側面図である。
図6C図6Aに示すコネクタの1つを示す側面図である。
図7A】コネクタモジュールのためのサーバレベル統合の実施形態を示す。
図7B】コネクタモジュールのためのサーバレベル統合の実施形態を示す。
図7C】コネクタモジュールのためのサーバレベル統合の実施形態を示す。
図8】ラックレベルのコネクタモジュールの実施形態を示す。
図9】閉ループのサーモサイフォン冷却を実現するのに特に適した実施形態を示す。
図10】異種コンピュータラックの一部に用いられるコネクタモジュールの一実施形態を示す全体的な概略図である。
図11】一実施形態に係るプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明される詳細を参照しながら本出願の様々な実施形態および態様を説明し、添付図面には様々な実施形態を示す。以下の説明および図面は、本出願を説明するためのものであり、本出願を限定するものではない。本出願の様々な実施形態を全面的に理解するために、多くの特定の詳細を説明する。しかしながら、特定の例において、本出願の実施形態の簡明な議論を提供するために、周知のまたは従来の詳細は記載されていない。
【0010】
明細書において、「一実施形態」又は「実施形態」とは、当該実施形態を参照しながら説明された特定の特徴、構造又は特性が本出願の少なくとも一実施形態に含まれてもよいと意味する。明細書の様々な箇所に記載されている「一実施形態において」とは、必ずしも同一の実施形態を指すものではない。
【0011】
開示された実施形態は、コンピューティングシステムのコネクタのための柔軟なインターフェースを提供し、特に多相流体冷却を使用することができるシステムのブラインド嵌合流体コネクタに適する。このようなシステムでは、流体の流れは、重力および/または流体の圧力に依存してもよく、その結果、コネクタの位置は、ハウジング内の各FRUの供給および戻りラインごとに異なってもよい。開示された実施形態は、流体のためのブラインドメイトコネクタの位置を容易に再配置することができるインターフェースを導入する。
【0012】
開示された実施形態では、インターフェースは、コンピューティングエンクロージャ(computing enclosure)に取り付け可能で、複数の通路またはトラックを有するフレームを含む。各通路は、1つまたは複数のコネクタを摺動可能に収容することができ、その結果、コネクタは、通路内で通路内の異なる位置に摺動することができる。各コネクタを所定の位置に摺動させるように通路毎に所定の位置を設けてもよい。各対のコネクタは、それらの間に固定された空間的配向を維持するために、それらが一緒に移動するように相互接続されてもよい。したがって、1つのコネクタを移動させると、一対のコネクタも強制的に移動して、空間的配向を維持することになる。
【0013】
一態様では、電子ラックのためのコネクタモジュールは、電子ラックにフレームを取り付けるための取り付け部材を有するフレームと、流体コネクタを収容するためにフレームに形成された複数の通路と、通路に摺動可能に取り付けられた複数の流体コネクタとを備える。コネクタモジュールは、少なくとも2つの流体コネクタに取り付けられて、2つの流体コネクタ間に一定の空間的配向を維持するインターコネクタをさらに備える。流体コネクタのそれぞれは、流体コネクタを通路内の固定位置に固定するロック機構(locking mechanism)をさらに備える。ロック機構は、通路内での流体コネクタの締まり嵌めを含み、通路内での流体コネクタの移動抵抗を付与して、流体コネクタの自由な滑りを防止する。ロック機構は、流体コネクタから延びて通路内の歯と噛み合うアームを含む。フレームは、所定の位置に位置決めされて流体コネクタを所定の位置に係止するように構成される複数のロケータ(locator)をさらに備える。流体コネクタのそれぞれは、流体コネクタのそれぞれを別の流体コネクタに相互接続して、固定された空間的配向を維持するように構成されるインターコネクタキット(interconnect kit)を備える。
【0014】
別の態様によれば、電子ラックは、冷却液供給源から第1の冷却液を受けるためのラック給液ラインと、第1の暖かい液体を冷却液供給源に戻すためのラック液体戻りラインとを有するラックマニホールドと、それぞれが1つまたは複数の情報技術(IT)コンポーネントに関連付けられた1つまたは複数の流体冷却装置を含む積層配置された複数のサーバシャーシと、電子ラックに取り付けられ、流体冷却装置と冷却液供給源とを流体接続する複数のコネクタモジュールと、を備える。各コネクタモジュールは、上述したコンポーネントを備えている。
【0015】
別の態様によれば、複数のサーバシャーシの電子ラックに冷却流体を供給するための方法は、それぞれ少なくとも2つの通路が設けられた複数のコネクタモジュールを電子ラックに取り付けるステップと、通路のそれぞれに少なくとも1つの流体コネクタを取り付けることにより、複数の流体コネクタをコネクタモジュールに取り付けるステップと、サーバシャーシのそれぞれに対して、入口コネクタと出口コネクタの空間的配向を確認し、複数のコネクタのうちの2つのコネクタを、入口コネクタと出口コネクタの空間的配向に合わせるように摺動させ、2つのコネクタを空間的配向に固定し、その後、2つのコネクタを入口コネクタと出口コネクタとに係合させることにより、サーバシャーシを電子ラックに取り付けるステップと、を含む。
【0016】
2つのコネクタを固定することは、選択された所定の専用位置に2つのコネクタを位置決めすることを含み、前記選択された所定の専用位置は、通路に適用された事前配置ロケータによって識別される。当該方法は、複数の冷却装置を有するマルチデバイスシャーシを複数対の流体コネクタに係合させることによってマルチデバイスシャーシを取り付けることをさらに含む。当該方法は、さらに、各対の流体コネクタに対して、リターンコネクタ(return connector)よりも高い高さにライザーコネクタ(riser connector)を固定することを含む。
【0017】
以下は、開示された実施形態の適用に関する背景情報を提供することから始まり、その後、特定の実施形態の開示を継続する。このコンテキストでは、実施形態は、単にコネクタを指す場合があり、このような参照は、流体の漏れなしに嵌合および離脱可能なコネクタを含む、ブラインドメイトコネクタ(blind mate fluid connector)を含むことが意図される。このようなコネクタは、嵌合コネクタが切断されたときに閉じて流体の漏れを防止するバルブを備えていてもよい。
【0018】
図1は、一実施形態に係るデータセンターまたはデータセンターユニットの一例を示すブロック図である。該例では、図1は、データセンターの少なくとも一部の平面図を示している。図1を参照すると、一実施形態によれば、データセンターシステム100は、1つまたは複数の電子ラック列101~102の情報技術(IT)コンポーネント、装置またはツールを備え、例えば、ネットワーク(例えば、インターネット)を介して様々なクライアントにデータサービスを提供するコンピュータサーバまたはコンピューティングノードが挙げられる。一実施形態において、各列は、電子ラック110A~110Nなどの電子ラックアレイを含む。しかし、より多くのまたはより少ない電子ラック列を実現することも可能である。通常、列101~102は、フロントエンドが互いに向き合い、バックエンドが互いに背中合わせるように平行に整列され、管理者がその中を歩くことができるように間に通路103を形成する。しかし、他の構成または配置を適用することも可能である。例えば、2列の電子ラックは、それらの間に通路を形成することなく、それらのフロントエンドが背中合わせに配置していてもよい。電子ラックのバックエンドは、ルーム冷却液マニホールドに接続されていてもよい。
【0019】
一実施形態において、電子ラック(例えば、電子ラック110A~110N)のそれぞれは、その中で動作する、積み重ねて配置された複数のITコンポーネントを収容するためのハウジングを含む。電子ラックは、冷却液マニホールド、複数のサーバスロット(例えば、同一または類似フォームファクタで構成された標準的な棚(shelf)またはシャーシ(chasis))、およびサーバスロットへの挿入およびサーバスロットからの取り外しが可能な複数のサーバシャーシ(サーバブレードまたはサーバ棚とも呼ばれる)を含むことができる。各サーバシャーシは、1つまたは複数のプロセッサ、メモリ、および/または永続性記憶装置(例えば、ハードディスク)を有するコンピューティングノードを表し、コンピューティングノードは、その中で動作する1つまたは複数のサーバを含んでもよい。プロセッサの少なくとも1つは、冷却液を受けるために液体冷却板(冷却板モジュールとも呼ばれる)に取り付けられる。また、サーバシャーシには、内部に収容されたコンピューティングノードを空冷するための1つまたは複数のオプション的な冷却ファンが関連付けられている。なお、冷却システム120は、データセンターシステム100の複数のデータセンターシステムに接続されてもよい。
【0020】
一実施形態において、冷却システム120は、建物/収容容器の外部にある冷却塔または乾燥冷却塔に接続される外部液体ループを含む。冷却システム120は、蒸発冷却、自由空気、高い熱質量の拒絶、および排熱回収の設計を含むことができるが、これらに限定されない。冷却システム120は、冷却液を供給する冷却液供給源を含んでもよく、または冷却液供給源に接続されてもよい。
【0021】
一実施形態において、各サーバシャーシは、冷却液マニホールドにモジュール式に接続され、その結果、サーバシャーシは、冷却液マニホールドおよび電子ラックにおける残りのサーバシャーシの動作に影響を与えることなく、電子ラックから取り外すことができる。他の一実施形態において、各サーバシャーシは、プロセッサに冷却液を分配するために可撓性ホースに接続されたサーバ給液口コネクタおよびサーバ排液口コネクタを有するクイックレリーズカップリングアセンブリを介して冷却液マニホールドに接続される。サーバ給液口コネクタは、ラック給液口コネクタを介して電子ラックのバックエンドに取り付けられた冷却液マニホールドから冷却液を受ける。サーバ排液口コネクタは、ラック排液口コネクタを介して、プロセッサから交換された熱のより暖かいまたはより熱い液体を冷却液マニホールドに排出し、その後、電子ラック内の冷却液分配ユニット(CDU)に戻す。
【0022】
一実施形態において、各電子ラックのバックエンドに設置された冷却液マニホールドは、冷却システム120からの冷却液を受けるために、給液ライン132(ルーム供給マニホールドとも呼ばれる)に接続される。冷却液は、冷却板モジュールに取り付けられた液分配ループを介して分配され、プロセッサからの熱を除去するために、プロセッサが冷却板モジュールに取り付けられる。冷却板は、液体分配管が取り付けられているか埋め込まれているヒートシンクと同様に構成されている。プロセッサから交換された熱を運ぶ、より暖かいかまたはより熱い液体は、ライン131(ルーム戻りマニホールドとも呼ばれる)を介して冷却システム120に輸送される。
【0023】
給液ライン/液体戻りライン131~132は、データセンターまたはルーム給液ライン/液体戻りライン(例えば、グローバル給液/戻りライン)と呼ばれ、全ての電子ラック列101~102に冷却液を供給する。給液ライン132および液体戻りライン131は、各電子ラック内のCDUの熱交換器に接続されて、メインループを形成する。熱交換器の二次ループは、電子ラック内のサーバシャーシのそれぞれに接続され、プロセッサの冷却板に冷却液を供給する。
【0024】
一実施形態において、データセンターシステム100は、コンピューティングノード(例えば、サーバ)の動作に伴ってコンピューティングノードによって生成された熱を交換するために、電子ラックのサーバシャーシの空気空間を通させる空気流を生成し、空気流の温度を低下させるために空気流により交換された熱を外部環境または冷却システム(例えば、空気から液体熱交換器)に排出するように構成されるオプション的な空気流輸送システムをさらに含む。例えば、空気供給システム135は、通路103から電子ラック110A~110Nを循環して通し交換による熱を奪う冷却/冷気流(cool/cold air)を発生させる。
【0025】
冷気流は、電子ラックのフロントエンドから電子ラックに入り、暖/熱気流は、電子ラックのバックエンドから電子ラック外に排出される。交換による熱を有する暖/熱空気は、ルーム/建物から排出するか、又は空気から液体熱交換器へのような独立した冷却システムを用いて冷却される。このように、冷却システム、プロセッサで発生した熱の一部を対応する冷却板を介して冷却液で除去し、プロセッサ(または他の電子機器または処理装置)で発生した熱の残り部分を空気流で冷却して除去する複合型液体-空気冷却システムである。また、液冷は、液相または気相で流体が流れる多相系であってもよい。
【0026】
図2は一実施形態に係る電子ラックを示すブロック図である。電子ラック200は、図1に示すようなあらゆる電子ラック(例えば、電子ラック110A~110N)であってもよい。図2を参照すると、一実施形態による電子ラック200は、CDU201、ラック管理ユニット(RMU)202、および1つまたは複数のサーバシャーシ203A~203E(まとめてサーバシャーシ203と呼ばれる)を含むが、これらに限定されない。サーバシャーシ203は、それぞれ電子ラック200のフロントエンド204またはバックエンド205からサーバスロット(例えば、標準棚)のアレイに挿入することができる。なお、ここで、5つのサーバシャーシ203A~203Eのみが示されているが、電子ラック200内のサーバシャーシの数は、これよりも多くても少なくてもよい。なお、CDU201、RMU202、および/またはサーバシャーシ203の特定の位置は、説明のみを目的として示され、CDU201、RMU202、および/またはサーバシャーシ203の他の配置または構成を実現してもよい。一実施形態において、冷却ファンがフロントエンドからバックエンドまでの空気流を発生させることができるのであれば、電子ラック200は、環境に対して開放されていてもよいし、ラック容器に部分的に収容されていてもよい。
【0027】
また、サーバシャーシ203の少なくとも一部には、オプションとしてファンモジュール(図示せず)がサーバシャーシに関連付けられている。ファンモジュールのそれぞれは、1つまたは複数の冷却ファンを含む。ファンモジュールは、フロントエンド204から流れ、サーバシャーシ203の空気空間を通過し、電子ラック200のバックエンド205に離れる空気流を発生させるために、サーバシャーシ203のバックエンドまたは電子ラックに取り付けられてもよい。
【0028】
一実施形態において、CDU201は、主に、熱交換器211と、液体ポンプ212と、ポンプコントローラ(図示せず)と、液体リザーバ、電源、モニタリングセンサなどの他のコンポーネントとを含む。熱交換器211は、液体から液体への、または多相の熱交換器であってもよい。熱交換器211は、入口ポートと出口ポートとを有する第1ループを備えている。入口ポートと出口ポートは、外部の給液/戻りライン131~132に接続されて一次ループを形成する第1対の液体コネクタを有する。外部の給液/液体戻りライン131~132に接続されるコネクタは、電子ラック200のバックエンド205に設けられていてもよい。給液/液体戻りライン131~132(ルーム給液ライン/液体戻りラインとも呼ばれる)は上述したように冷却システム120に接続されてもよい。
【0029】
さらに、熱交換器211は、二次ループを形成するために液体マニホールド225(ラックマニホールドとも呼ばれる)に連結された第2対の液体コネクタを有する2つのポートを有する第2のループをさらに備え、液体マニホールド225は、供給マニホールド(ラック給液ラインまたはラック供給マニホールドとも呼ばれる)および戻りマニホールド(ラック液体戻りラインまたはラック戻りマニホールドとも呼ばれる)を含むことができ、供給マニホールドは、冷却液をサーバシャーシ203に供給し、戻りマニホールドは、より暖かい液体をCDU201に戻す。なお、CDU201は、市販またはカスタマイズされた任意のタイプのCDUであってもよい。したがって、CDU201の詳細については、ここで説明しない。
【0030】
各サーバシャーシ203は、1つまたは複数のITコンポーネント(例えば、中央処理装置またはCPU、汎用/グラフィックス処理装置(GPU)、メモリ、および/または記憶装置)を含んでもよい。各ITコンポーネントは、データ処理タスクを実行することができ、ITコンポーネントは、記憶装置にインストールされ、メモリにロードされ、データ処理タスクを実行するために1つまたは複数のプロセッサによって実行されるソフトウェアを含んでもよい。サーバシャーシ203は、1つまたは複数のコンピューティングサーバ(CPUサーバおよびGPUサーバなどのコンピューティングノードとも呼ばれる)に接続されたホストサーバ(ホストノードとも呼ばれる)を含んでもよい。(1つまたは複数のCPUを有する)ホストサーバは、通常、ネットワーク(例えば、インターネット)を介してクライアントと接続し、特定のサービス(ストレージサービス(例えば、バックアップおよび/または復元などのクラウドベースのストレージサービス)、アプリケーションを実行して特定の動作(例えば、サービスソフトウェアまたはSaaSプラットフォームの一部としての画像処理、深層データ学習アルゴリズム、またはモデリングなど)を実行する)要求を受信する。この要求に応答して、ホストサーバは、ホストサーバによって管理されている(1つまたは複数のGPUを有する)コンピューティングノードまたはコンピューティングサーバのうちの1つまたは複数にタスクを割り当てる。コンピューティングサーバが実際のタスクを実行すると、動作中に熱が発生することができる。
【0031】
電子ラック200は、さらに、サーバシャーシ203およびCDU201に供給される電力を供給および管理するように構成されたオプション的なRMU202を含んでもよい。RMU202は、電源ユニットの電力消費を管理するために、電源ユニット(図示せず)に接続してもよい。電源ユニットは、電子ラック200の残りのコンポーネントに電力を供給するために必要な回路(例えば、交流(AC)から直流(DC)へ、またはDCからDCへのパワーコンバータ、バッテリー、変圧器またはレギュレータなど)を含んでもよい。
【0032】
一実施形態において、RMU202は、最適化モジュール221およびラック管理コントローラ(RMC)222を含む。RMC222は、電子ラック200内の様々なコンポーネント(例えば、サーバシャーシ203、CDU201およびファンモジュール)の動作状態を監視するためのモニタを含んでもよい。具体的には、モニタは、様々なセンサから電子ラック200の動作環境を示す動作データを受信する。例えば、モニタは、プロセッサ、冷却液および空気流の温度を示す動作データを受信し、これらは様々な温度センサによってキャプチャして収集されてもよい。モニタは、ファンモジュールおよび液体ポンプ212によって生成されたファン電力およびポンプ電力を表すデータを受信してもよく、それらのデータは、それぞれの速度に比例してもよい。これらの動作データは、リアルタイム動作データと呼ばれる。なお、モニタは、RMU202内の独立したモジュールとして実装されてもよい。
【0033】
最適化モジュール221は、液体ポンプ212およびファンモジュールの総消費電力が最小となるとともに、液体ポンプ212およびファンモジュールの冷却ファンに関連付けられる動作データがそれぞれの設計仕様の範囲内にあるように、動作データに基づいて、所定の最適化関数または最適化モデルを用いて最適化を行い、ファンモジュールのための最適ファン速度および液体ポンプ212のための最適ポンプ速度のセットを導出する。RMC222は、最適ポンプ速度および最適ファン速度が確定されると、最適ポンプ速度およびファン速度に基づいて、液体ポンプ212およびファンモジュールの冷却ファンを構成する。
【0034】
一例として、最適ポンプ速度に基づいて、RMC222は、CDU201のポンプコントローラと通信して、液体ポンプ212の速度を制御し、これにより、液体マニホールド225に供給されてサーバシャーシ203の少なくとも一部に分配された冷却液の流量を制御する。同様に、最適ファン速度に基づいて、RMC222は、各ファンモジュールと通信して、ファンモジュールの各冷却ファンの速度を制御し、さらにファンモジュールの空気流の流量を制御する。なお、各ファンモジュールは、その特定の最適ファン速度に基づいて個別に制御されてもよく、異なるファンモジュールおよび/または同じファンモジュール内の異なる冷却ファンは、異なる最適ファン速度を有してもよい。
【0035】
なお、図2に示すラックの構成は、説明のためにのみ示して記述したものであり、他の構成または配置を適用してもよい。CDU201は、例えば、オプション的なユニットであってもよい。サーバシャーシ203の冷却板はラックマニホールドに接続されてもよく、ラックマニホールドはCDUを用いずに給液/戻りライン131~132に直接接続してもよい。図示していないが、電源ユニットは電子ラック200の内部に設けられてもよい。電源ユニットは、サーバシャーシ203に代えて、電源シャーシをあらゆる標準棚に挿入可能な、サーバシャーシと同一または類似の標準シャーシとして構成されてもよい。また、電源シャーシは、主電力が使用できない場合に、バッテリー電力をサーバシャーシ203に供給するためのバッテリーバックアップユニット(BBU)を備えてもよい。BBUは、1つまたは複数のバッテリーパッケージを含んでもよく、各バッテリーパッケージは、1つまたは複数のバッテリーセルと、バッテリーセルを充放電するために必要な充放電回路とを含む。
【0036】
図3は一実施形態に係るプロセッサ冷却板構成を示すブロック図である。プロセッサ/冷却板アセンブリ300は、図2に示すサーバシャーシ203の任意のプロセッサ/冷却板構造を表してもよい。図3を参照して、プロセッサ301は、データ処理システムまたはサーバの他の電子部品または回路に結合されたプリント回路基板(PCB)またはマザーボード302に取り付けられたプロセッサソケットに挿入される。プロセッサ301は、それに取り付けられた冷却板303をさらに含み、冷却板303は、例えばブラインドメイトコネクタを介して給液ライン132および/または液体戻りライン131に接続されたラックマニホールドに連結される。プロセッサ301で発生した熱の一部は、冷却板303を介して冷却液によって除去される。残りの熱は、下方または上方の空気空間に入って、冷却ファン304による空気流で除去され得る。
【0037】
ラック流体分配システムには、平行または千鳥などの異なる統合位置を含む、異なる位置に位置決めされ、および/または、異なる間隔および向きで位置決めされた、異なるタイプのコネクタを配置してもよい。これにより、特に多相冷却配置を考慮した場合、ラック上での液冷サーバの実現が困難になる可能性がある。したがって、開示された実施形態は、異なるラック流体分配ハードウェア設計に異なるサーバシステムを適合させるために使用され得るアダプタ設計を導入する。様々な実施形態は、ブラインドメイトコネクタの各構成を、コンピューティングシステムの異なる接続要件のために使用できるようにする。
【0038】
開示された実施形態の有益な特徴は、コネクタが異なる位置に移動可能であるため、ラック側に多くのコネクタを統合する必要がないことである。また、サーバ側の流体コネクタを移動させて異なる流体接続設計を行うことができるため、必要なコネクタの数が少なくて済み、コストを低減することができる。
【0039】
また、異なるタイプのサーバは、熱管理のために異なる流体システムを必要とする場合がある。開示されたコネクタアダプタの実施形態は、これらの異なるニーズに対応するのに役立つ。同様に、ラックの構成は、IT機器およびシステムによって異なっていてもよい。ラックレベルの割り当ては、異なる方法で設計することができ、および/またはラックレベルの流体ポートは、特に、サーバがすでにラックに設置されていて、いくつかのポートを占有している場合に、異なる利用可能性を有してもよい。各サーバは、その設計及び実現のために異なる冷却モジュールを有してもよい。そのため、流体の流れ方向が異なっていてもよく、流体の流れ方向の違い(例えば、サーモサイフォンの使用)によって性能が異なっていてもよい。開示された実施形態は、異なる冷却モジュール設計およびラック液体システムに基づいて、流体入口および流体出口の位置を容易に変更することができる。
【0040】
以下、多相冷却システムまたは異種ラックに特に有利な流体コネクタモジュールの実施形態を開示する。コネクタモジュールは、コネクタの位置調整を可能にする内部通路またはトラックを有する複数のブラインド嵌合流体コネクタのためのインターフェースとして使用することができる。ユニット全体は、サーバシャーシ上の統合ユニットであってもよいし、またはサーバシャーシからの着脱が容易な独立したユニットであってもよい。ブラインド嵌合のための実施形態では、コネクタは互いに接続され、内部通路もコネクタの位置を調整するために摺動可能である。柔軟な設計により、異なるラックレベルの設計仕様との整合性が確保される。一実施形態では、コネクタモジュールは、コネクタ用とコネクタの内部接続(intra-connection)用の2種類の通路を有していてもよい。通路およびコネクタの位置の変化は、単相流体でも二相流体でも、異なる冷却流体の動作要求を組み合わせるために用いることができる。
【0041】
通路内で流体コネクタを摺動させる能力は、様々な用途でさらなる利点を実現する。例えば、ラックポートは、既存のラック上の他のシステムによって占有される可能性があり、したがって、当該解決策は、利用可能な異なるラックポートを利用するためのより多くの可能性を可能にし、他のシステム接続を調整して新しいシステムのインストールを可能にすることもできる。また、内部通路の変更により、サーバシャーシからの、コネクタとサブループの複数のセットを統合できる。
【0042】
図4Aは、一実施形態に係るコネクタモジュール400を示す全体的な概略図であり、図4Bはその側面図である。コネクタモジュール400は、取り付け点410を有するハウジングまたはフレーム405を形成し、取り付け点410はハウジング405をサーバに取り付けるためのものである。本実施形態では、コネクタモジュールの中央に取り付け点410を設け、必要に応じてモジュールの回転方向(湾曲した矢印で示すような)を異ならせている。
【0043】
コネクタ422および424は、ハウジング405に摺動可能に取り付けられている。本実施形態では、コネクタ422、424が対となっており、1つの液冷素子に対して、当該一対のコネクタのうちの一方が入口コネクタとして機能し、他方がリターンコネクタとして機能する。コネクタ422および424のそれぞれは、ハウジング405内のその位置を変化させるために、通路またはトラック430内で摺動可能である。一例では、通路430は、力を加えることによってコネクタが摺動可能であるが、一旦所定の位置に配置されるとその位置に留まるように、コネクタと締まり嵌めるように形成される。この意味で、締まり嵌めとは、重力によってコネクタが滑らず、高さを変えるために余分な力を加える必要があることを意味する。この実施形態では、コネクタを所定の位置に固定するために機械的なロック機構は不要であるが、必要に応じて他の実施形態ではロック機構を用いてもよい。
【0044】
さらに、対応するコネクタ(例えば、サーバシャーシのコネクタ)へのブラインド嵌合を容易にするために、対になるコネクタ422および424の相対的な配向は、インターコネクタ440を使用することによって維持される。インターコネクタ440は、対になるコネクタ422および424が、標準的なラック構成に適合する相対的な配向に保持されることを保証する。当該特徴により、ブラインド嵌合を容易に実現することができる。
【0045】
開示された実施形態では、対になるコネクタのインターコネクタはまた、2つのコネクタのロックを容易にすることに役立ち、それによって、例えば重力による動きなど、あらゆる意図しない動きを防止する。一実施形態では、ブラインド嵌合プロセス中に、ラックレベルの流体分配上の対応するコネクタと嵌合するときに、コネクタ424および422に異なる方向の力を加えることができる。インターコネクタは、さらなる保護の役割も果たす。
図4Bは、図4Aの実施形態の側面図を示し、通路430に沿って異なる位置に位置決めすることができるコネクタ422を示す。また、2次通路435内を摺動可能に2次通路435内に配置され、対になるコネクタに接続されるインターコネクタ440が示されている。このように、コネクタ422が移動すると、それに伴ってコネクタ424は、対になるコネクタの間の距離が一定に保たれるように移動する。
【0046】
一実施形態では、2つの通路を1つに結合することができ、2つの専用通路は付加の構造強化を提供することができる。
【0047】
図5Aは、一実施形態に係るコネクタモジュール500を示す全体的な概略図であり、図5Bは、インターコネクタなしの他の実施形態を示す全体的な概略図である。図5Aは、複数対のコネクタが通路530内に取り付けられた実施形態を示す。当該例示では、コネクタ522aおよび524aは対になり、コネクタ522bおよび524bは対になる。インターコネクタ540は、通路530内に配置された位置にかかわらず、2つのコネクタ間の距離が一定に保たれるように、各対のコネクタ同士間および2つのコネクタ対の間に配置される。したがって、当該実施形態では、コネクタは通路530内を移動可能であるが、1つの入口コネクタと他の入口コネクタとの間の距離が一定であり、1つのリターンコネクタと他のリターンコネクタとの間の距離が一定であり、1つの入口コネクタとそれと対をなすリターンコネクタとの間の距離が一定であり、これらは全てラック構成によって決められる。
一方、図5Bは、コネクタが通路内を移動可能なトラック内に固定されているため、コネクタ間にインターコネクタが設けられていない実施形態を示している。コネクタが可動トラックに固定され、トラックの移動に伴ってコネクタ間の距離が同じに保たれることで、図5Aと同様の機能を実現できる。すなわち、可動トラックは、コネクタを異なる位置に移動させるとともに、コネクタ間のインターコネクタとしても機能する。トラックは、通路530内を移動可能である。
【0048】
図6Aは、一実施形態に係るコネクタモジュール600を示す全体的な概略図であり、図6Bは、図6Aの実施形態の側面図を示す全体的な概略図である。図6Cは、図6Aおよび図6Bに示すコネクタの一方の側面図を示す。図6Aに示すように、コネクタ622および624は、通路630内を摺動可能である。当該実施形態では、コネクタ622および624のそれぞれは、噛合アーム628を含む。噛合アーム628は、通路630に形成された2つのセクション633、636の間の空間631を接合するように構成される。図示では、コネクタ624は、その挿入配向にある状態を示している。コネクタ624は、通路630に挿入されると、90度回転して噛合アーム628を空間631に挿入することで、セクション633と636との間に噛み合って通路630内に装着されるようになる。噛み合い配向はコネクタ622によって示されている。
【0049】
オプション的な特徴によれば、空間631内に歯付きトラック626が設けられており、コネクタ622によって示された接合位置にコネクタが回転すると、噛合アーム628が歯付きトラックと噛み合ってコネクタをその位置に固定する。逆に、コネクタがコネクタ624に示すように回転すると、コネクタは通路630内を自由に摺動し、通路630に沿って任意の位置に位置決めされる。また、図6Bに示すように、コネクタの相対位置を保持するようにコネクタを相互接続したい場合には、インターコネクタキット642を各コネクタに装着させてもよい。
【0050】
図7A図7Cはコネクタモジュールのためのサーバレベルの統合の実施形態を示す。図示のように、冷却要件に応じて、複数のモジュール700をシャーシに取り付けて、様々な流体接続を実現することができる。各コネクタの高さを変更する機能は、流体の流れの設計が重力またはサーモサイフォンによって補助される場合に特に有利になる。重力またはサーモサイフォンに対して、高さの違いによって動力を生じることができる。例えば、図7Aにおいて、冷却素子703は相変化冷却を採用することができ、ここで、「ホット」ライン702は蒸気をコネクタ722に供給し、戻りライン704はコネクタ724から冷却された液体を供給する。流体の循環に役立つために、コネクタ722は、自然のサーモサイフォンの流れに対応して、コネクタ724よりも垂直方向において高く配置されている。
【0051】
図7Bの例示では、2つのマイクロチップ753および755がPCB760上に取り付けられている。マイクロチップ755は冷却装置705により冷却され、マイクロチップ753は冷却装置703により冷却される。冷却装置703および705は、同一または異なる種類の冷却装置であってもよく、単相または多相の冷却サイクルで動作してもよい。したがって、ライン702、704、702’および704’は、異なる仕様に対応するために、異なるブラインドメイトコネクタを必要とすることがある。したがって、モジュール700のそれぞれは、異なるタイプのブラインドメイトコネクタを収容するように設計され、通路は、これらのコネクタを、シャーシの設計によって要求される任意の配向に配置することを可能にする。
【0052】
図7Cに示す実施形態は、コネクタ対が垂直方向における同じ高さに固定されている点を除いて、図7Bに示す実施形態と同様である。例えば、コネクタ722および724は垂直方向における同じ高さにあり、コネクタ722’および724’は垂直方向における同じ高さにある。このような構成は、流体に作用する動力がポンプのような機械的な力を含む場合に、より有用である。
【0053】
なお、図7A図7Cに示す実施形態は、異なるラックのポート利用可能性のためのコネクタモジュールの有利な使用も示している。すなわち、採用される冷却の種類にかかわらず、サーバをラックに設置する場合には、以前の機器が既に設置されているか、またはラックの特定の設計により、異なるラックポートの構成が利用可能となる場合がある。したがって、コネクタモジュールは、ラック上で利用可能な特定のポートに合わせてカスタマイズすることができる。
【0054】
図8は、ラックレベルのコネクタモジュール800の実施形態を示す。コネクタモジュール800は、他の実施形態に示されるのと同様の方法で、ラックマニホールド864との冷却流体接続を提供する。コネクタ822および824は、通路830内を摺動して、通路830に沿って任意の位置に配置することができる。あるいは、ロケータ870は、コネクタを、ラックマニホールドの設計に応じて異なるポート配置に適合する所定の専用位置に固定することを可能にするように構成される。すなわち、ロケータ870は、異なるラックマニホールドの設計および基準に適合する高さに配置される。ロケータ870は、フレーム上のマークを含んでもよく、あるいは、通路内の予め選択された位置にコネクタを位置決めするための機械的ストッパを含んでもよい。
【0055】
図8はまた、コネクタモジュールを異なるタイプのラックでどのように使用することができるかを示す。例えば、モジュール800の幅が、ラックマニホールド864のサイズに応じて設定することができる。同様に、ロケータは、ラック上の異なるポート配置のピッチに応じて設定することができる。さらに、前述の実施形態のように、モジュール800全体を取り付け点810の周りに回転させて、異なるポート配置に適合させることができる。
【0056】
図9は、閉ループのサーモサイフォン冷却を実現するのに特に適した実施形態を示す。図9において、コネクタモジュール900は、二相冷却システムで使用され、当該システムにおいて冷却装置903(例えば、マイクロチップ953に装着された蒸発器)を熱交換器908(例えば、凝縮器)に接続するように位置決めされる。流体の流れは、サーモサイフォンを介して達成することができ、ライン902は、気体流体を気体コネクタ922に供給するライザーとして機能し、気体コネクタ922は液体コネクタ924よりも高い垂直位置または高さに位置決めされる。気体は、凝縮器908内で凝縮すると、気体コネクタ922よりも低い高さにある液体コネクタ924に接続された液体戻りライン904を介して戻される。コネクタモジュール900を使用することによって、気体コネクタ922は、熱および高圧気体を上昇させることができるように、最適な位置に上昇することができ、一方、液体コネクタ924は、液体流れの最適化のための重力補助を提供するために、より低く位置決めされることができる。このようにして、コネクタモジュール900は、冷却システム内の流体の流れを向上させつつ、冷却システムのラインのブラインド嵌合接続を可能にする。
【0057】
なお、図9の符号は、ロケータ970を形成するための簡単な例を示している。この非限定的な例示では、ロケータは、単純なボールおよび戻り止め機構(detent mechanism)として形成されている。ボール972は、バネ974によってモジュール900の壁に押し付けられている。ボールが平らな壁に当接して摺動すると、摩擦力が小さくなるが、コネクタは容易に移動できる。逆に、いずれかのロケータ位置970に設けられた戻り止め部材976にボールが進入すると、機械的な停止が発生する。このような機械的な停止は、使用者がコネクタを移動させることによって容易に克服することができるが、特に重力によってコネクタ自体が自由に摺動することが防止される。
【0058】
図10は、異種コンピュータラックに採用されるコネクタモジュールの実施形態を示す全体的な概略図である。標準的なコンピュータラックは、通常、ラックスペース仕様のピッチに基づいて設計されている。このような測定単位は、一般に、ラックフレームの大きさおよびフレーム内に装着された機器の大きさを定義するものであり、Uなどのラックユニットおよび/または形状要素で表される。例えば、典型的なフルサイズのラックケージは、高さ42Uとすることができ、ラック内に設置される各特定機器のサイズは、通常、1U、2U、3U、または4Uであってもよい。
【0059】
異種ラックには、その中に取り付けられている異なるUサイズの機器が搭載される。図10の実施形態は、どのようにしてコネクタモジュールを使用して、ラック内の異なるユニットに異なる接続構成を提供することができるかを示す。なお、全てのコネクタモジュール111は同じ設計を有するが、それぞれ異なる要件に対応する異なる接続構成を実現することができる。
【0060】
図10では、各ラックは4Uのセクションに分割されているが、各セクション内の機器は、例えば、1つの空間内に2つの2Uユニット、1つの1Uユニット、1つの3Uユニットなど、異なるサイズであってもよい。コネクタが各コネクタモジュール111の通路内を摺動することができるので、各コネクタの4U空間内での高さが、その空間内に装着された機器を収容するように選択してもよい。例えば、底部空間では、コネクタ122は3Uの高さに位置決めされ、コネクタ124は1Uの高さに位置決めされる。これは、例えば図9に示す実施形態に対応する。逆に、第2の4U空間では、コネクタ122および124は、いずれも3U空間で水平に整列し、第3の4U空間では、それらは1U高さで水平に整列し、トップ空間では、それらは4U高さで整列するように位置決めされる。
【0061】
図11は一実施形態に係るプロセスを示すフローチャートである。このプロセスは、本明細書に記載のコネクタモジュールのいずれかを用いた流体接続を提供する。ブロック1100では、複数のモジュールを電子ラックに実装することができる。各モジュールは、少なくとも2つの通路を有する。ブロック1105では、複数の流体コネクタがコネクタモジュールに取り付けられ、少なくとも1つのコネクタが各通路に取り付けられる。そして、電子ラックに実装される各シャーシについて、ブロック1110において、シャーシを検査して、流体入口コネクタおよび流体出口コネクタの空間的配向を識別する。次に、ブロック1115では、少なくとも2つの通路内のコネクタを、シャーシの入口コネクタおよび出口コネクタの空間的配向に位置合わせするように摺動させる。ブロック1120では、シャーシは、コネクタモジュールの流体コネクタに、入口コネクタと出口コネクタとを係合させることにより実装される。この場合、コネクタは、ブラインドメイトタイプであることが望ましく、したがって、図11は、フレームとのブラインド嵌合接続のためのブロック1123を含む。ブロック1125において、より多くのシャーシを設置すると判定された場合、処理はブロック1110に戻る。そうでなければ、処理プロセスは終了する。
【0062】
本明細書において、本出願の実施形態は、既にその具体的な例示的な実施例を参照しながら記載された。当然のことながら、添付の特許請求の範囲に記載された本出願のより広い精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができる。したがって、明細書および図面は、例示的なものであり、限定的なものではないと考えられるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11