(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】プレス型
(51)【国際特許分類】
B21D 19/08 20060101AFI20230724BHJP
B21D 5/01 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B21D19/08 B
B21D5/01 E
(21)【出願番号】P 2019238896
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】早川 直希
(72)【発明者】
【氏名】岩田 龍祐
(72)【発明者】
【氏名】高見 明徳
(72)【発明者】
【氏名】本松 和也
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 徹太
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-177715(JP,U)
【文献】実開平1-49323(JP,U)
【文献】実開昭59-73018(JP,U)
【文献】実開平1-33313(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/205391(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 19/08
B21D 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前工程で1次成形され且つ周縁部が切断された板材に対して2次成形を施すことで該板材の端部を断面略コ字状に折り曲げ加工するプレス型において、
下型に設けられ、該下型と共に移動すると共に、該下型の動きとは別個に上型に対して離接する方向に移動可能に構成され、前記板材の下面を支持する下側押え部と、
前記上型に設けられ、該上型と共に移動すると共に、該上型の動きとは別個に前記下型に対して離接する方向に移動可能に構成され、前記板材の上面を支持することで前記下側押え部と共に前記板材を挟持可能な上側押え部と、
前記上型に設けられた上刃であって、該上型の下動に伴い、前記上側押え部及び下側押え部からはみ出した板材の端部を該下側押え部とで挟み込んで下方向きに略L字状に折り曲げる上刃と、
前記下型に設けられた下刃であって、前記上型の下動に伴い、前記上刃及び下側押え部からはみ出した前記板材の端部を上方向きに折り曲げる下刃と、を具備し、
前記下刃の上端面は前記板材の端部の周縁部のみに非接触となる非接触構造を有することを特徴とするプレス型。
【請求項2】
前記非接触構造は、前記下刃の上端面の前記板材側の端部の面取りを行うことで形成したことを特徴とする請求項1に記載のプレス型。
【請求項3】
前記非接触構造は、前記下刃の上端面の前記板材側よりも該板材から遠い側を高さの低い逃がし形状として形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス型。
【請求項4】
前記板材は、車両のルーフ用パネルであり、前記断面略コ字状の折り曲げ加工は、車両前後方向に沿って該ルーフ用パネルの車両両側端部になされるものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のプレス型。
【請求項5】
前記板材がアルミニウム製であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のプレス型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス型、特に、前工程で1次成形され且つ周縁部が切断された板材に対して2次成形を施すことで該板材の端部を断面略コ字状に折り曲げ加工するプレス型に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用パネルを始めとし、金属製板材の成形にプレス型が広く用いられている。プレス型による板材の成形は様々であり、同様に、その成形工程も各種あるが、車両用パネルのように高い意匠性が要求される場合には、ドローと呼ばれる1次成形後にトリムと呼ばれる切断工程で板材の周縁部を切断し、その後、リストライクと呼ばれる2次成形を施すことが多い。この2次成形で、板材の端部に断面略コ字状の折り曲げ加工をプレス型で行う場合も、多種多様な加工方法、加工工程が存在するが、例えば、下記特許文献1に記載されるようにダイとポンチの組合せで板材を窪ませる手法が最も簡易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記切断工程で板材の周縁部にばりが生じることがあり、板材の材料によっては、上記板材端部の断面略コ字状の折り曲げ工程で、そのばりが取れてしまう場合がある。この取れてしまったばりは、異物としてプレス型に付着し、その付着した異物でプレス成形品に傷が生じるなどの問題となる。しかしながら、上記ダイとポンチの組合せによる板材の折り曲げ加工手法では、ばりが取れてしまわないようにするのが困難であり、ばりが取れないように金型側を工夫すると略コ字状の折り曲げ加工断面形状精度が低下するというトレードオフがある。こうした問題は、例えば、プレス成形対象となる車両のルーフ用パネルの板材を、鋼製からアルミニウム製に変更したことで顕著になることがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、板材端部の略コ字状の折り曲げ加工断面形状精度を確保しながら、切断工程で生じた板材周縁部のばりが取れてしまわないプレス型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のプレス型は、
前工程で1次成形され且つ周縁部が切断された板材に対して2次成形を施すことで該板材の端部を断面略コ字状に折り曲げ加工するプレス型において、
下型に設けられ、該下型と共に移動すると共に、該下型の動きとは別個に上型に対して離接する方向に移動可能に構成され、前記板材の下面を支持する下側押え部と、前記上型に設けられ、該上型と共に移動すると共に、該上型の動きとは別個に前記下型に対して離接する方向に移動可能に構成され、前記板材の上面を支持することで前記下側押え部と共に前記板材を挟持可能な上側押え部と、前記上型に設けられた上刃であって、該上型の下動に伴い、前記上側押え部及び下側押え部からはみ出した板材の端部を該下側押え部とで挟み込んで下方向きに略L字状に折り曲げる上刃と、前記下型に設けられた下刃であって、前記上型の下動に伴い、前記上刃及び下側押え部からはみ出した前記板材の端部を上方向きに折り曲げる下刃と、を具備し、前記下刃の上端面は前記板材の端部の周縁部のみに非接触となる非接触構造を有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、板材の端部を断面略コ字状に折り曲げ加工する際、まず、上側押え部と下側押え部で板材が挟持された状態で、上型の下動により、上側押え部及び下側押え部からはみ出した板材の端部が上刃と下側押え部とで挟み込まれるようにして下方向きに略L字状に折り曲げ加工される。次いで、上型の更なる下動により上型と共に上側押え部及び下側押え部と一緒に板材が下動され、上記上刃及び下側押え部からはみ出した板材の端部が下刃によって上方に折り曲げ加工され、これにより板材の端部が断面略コ字状に折り曲げ加工される。この1つのプレス型で行われる2段階の折り曲げ加工で略コ字状の折り曲げ加工断面形状精度を確保することができると共に、下刃は板材の周縁部に非接触であるので、板材の周縁部にばりがあったとしても、そのばりが取れてしまうことがない。
【0008】
また、本発明の他の構成は、前記非接触構造は、前記下刃の上端面の前記板材側の端部の面取りを行うことで形成したことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、下刃の上端面の板材側の端部に面取りを施すだけで、下刃の寸度を確保しながら板材の周縁部に非接触とすることができ、上記コ字状の折り曲げ加工断面形状精度の確保と共にばりが取れない構成を容易に取得することができる。
【0010】
本発明の更なる構成は、前記非接触構造は、前記下刃の上端面の前記板材側よりも該板材から遠い側を高さの低い逃がし形状として形成したことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、上記板材の端部の周縁部は上刃及び下側押え部からはみ出しているので、下刃の上端面の板材から遠い側を低く逃がすだけで、下刃の寸度を確保しながら板材の周縁部と非接触とすることができ、上記コ字状の折り曲げ加工断面形状精度の確保と共にばりが取れない構成を容易に取得することができる。
【0012】
本発明の更なる構成は、前記板材は、車両のルーフ用パネルであり、前記断面略コ字状の折り曲げ加工は、車両前後方向に沿って該ルーフ用パネルの車両両側端部になされるものであることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、車両のルーフ用パネルの車両両側端部に、瑕疵がなく、断面形状精度に優れた略コ字状の折り曲げ加工を施すことができる。
【0014】
本発明の更なる構成は、前記板材がアルミニウム製であることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、アルミニウム製の板材に対し、瑕疵がなく、断面形状精度に優れた略コ字状の折り曲げ加工を施すことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、切断工程で板材周縁部にばりが生じても、それが取れてしまうことがなく、板材端部に断面形状精度に優れた略コ字状の折り曲げ加工を施すことができることから、種々の材料の板材に対して良好な折り曲げ加工を施すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のプレス型が適用されたプレス装置の一実施の形態を示す概略構成図である。
【
図3】
図1のプレス装置によるプレス成形の詳細説明図である。
【
図4】
図1のプレス装置によるプレス成形の詳細説明図である。
【
図6】
図1のプレス装置によるプレス成形の詳細説明図である。
【
図7】
図6のプレス成形品の周縁部の詳細図である。
【
図8】従来のプレス型によるプレス成形の詳細説明図である。
【
図9】従来のプレス型によるプレス成形の詳細説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明のプレス型の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この実施の形態のプレス型が適用されたプレス装置の概略構成図である。同図では、平坦な板材Pが装置に挟持されているが、この実施の形態でプレス成形される実際の板材Pは、例えば
図3に示すように、前工程で1次成形が施されている。また、理解を容易にするために、同図は、極めて簡素化され且つ誇張されているが、実際の装置やプレス型は、周知のように、非常に精密である。
【0019】
この実施の形態でプレス成形の対象となる板材Pは、車両のルーフ用パネルであり、この実施の形態では、アルミニウム製の板材Pをプレス成形することが前提である。前述のように、板材Pは、前工程で1次成形が施されており、次いで接断工程で周縁部Sが切断されている。このプレス装置は、ルーフ用パネルの車両両側端部に車両前後方向に長手な一連の窪みをプレス形成するためのものであり、窪みは、例えば
図6に示すように、略コ字状の折り曲げ加工断面形状となる。
【0020】
図1の下半部が下型1、上半部が上型2であり、下型1は固定型であり、上型2は、図示しない駆動源によって下型1に対して離接される可動型である。下型1の中央部上面には凹陥部が設けられ、この凹陥部内に下側押え部3が挿入されている。この下側押え部3は、板材Pの下面を支持するものであり、図示しない駆動源によって上型2に対して離接可能に構成されている。同様に、上型2の中央部下面にも凹陥部が設けられ、この凹陥部内に上側押え部4が挿入されている。この上側押え部4は、板材Pの上面を支持するものであり、図示しない駆動源によって下型1に対して離接可能に構成されている。したがって、板材Pは、上面を上側押え部4によって支持され、且つ下面を下側押え部3によって支持されることで、双方の押え部3、4によって挟持される。
【0021】
上型2の下面の上記上側押え部4の直近両側方には、上記上側押え部4及び下側押え部3からはみ出した板材Pの端部Tを略L字状(図の左側では反転した略L字状)に下方に折り曲げ加工するための上刃5が形成されている。この上刃5は、図の紙面垂直方向に連続して設けられている。また、上記上型2が下動された際に略L字状に折り曲げ加工された板材Pの端部T及び上刃5を収納するための収納凹部7が上記下側押え部3の図示両側端部に形成されている。すなわち、上側押え部4及び下側押え部3からはみ出した板材Pの端部Tは、上型2の下動に伴い、上刃5と下側押え部3の収納凹部7とで挟み込まれるようにして略L字状に下方向きに折り曲げ加工される。
【0022】
一方、下型1の上面の上記下側押え部3の直近両側方には、上記上刃5及び下側押え部3の収納凹部7からはみ出した板材Pの端部Tを上方に折り曲げ加工するための下刃6が形成されている。この下刃6は、上記上刃5と同様に、図の紙面垂直方向に連続して設けられている。また、上刃5の上端面の下側押え部3側には、上刃5によって折り曲げ加工された板材Pの端部Tを収納する板材受部8が凹陥形成されている。また、
図1では明示していないが、例えば
図3に示すように、板材受部8が形成されている部分の下刃6の上端角隅部には、いわゆるR面取り9が施されており、このR面取り9が板材Pの端部Tに接触して折り曲げ加工が行われ、且つ、折り曲げ加工後には、R面取り9の部分が板材Pから離間することで板材Pの周縁部Sが下刃6に接触しないように(非接触に)構成されている。更に、
図3に示すように、この下刃6の上端面は、板材P側の部分よりも板材Pから遠い部分が低くなる逃がし形状としてあり、これによっても下刃6と板材Pの周縁部Sとの接触が回避(非接触)される。
【0023】
次に、上記
図1のプレス装置によるプレス成形、具体的には折り曲げ加工について説明する。前述のように、
図1は、上側押え部4と下側押え部3で板材Pの上下面を挟んで保持(セット)した状態であり、実際の板材Pには、前工程で1次成形(ドロー)と周縁部切断(トリミング)が施されている。この状態では、下側押え部3の収納凹部7は下型1の下刃6より上方に位置している。この状態から、上側押え部4及び下側押え部3は動かさずに上型2だけを下動させると、
図2に示すように、上側押え部4及び下側押え部3からはみ出した板材Pの端部Tを上型2の上刃5が押下し、板材Pが上刃5と下側押え部3の収納凹部7で挟み込まれるようにして略L字状に下方に折り曲げ加工される。この加工の詳細を
図3、
図4に示す。車両のルーフ用パネルとして用いられる板材Pは、前工程の1次成形で、例えば
図1の左右方向中央部が上方に盛り上がるように膨出され、
図3に示すように、その両側端部Tはやや下方に折り曲げられている。この板材Pの(はみ出した)両側端部Tに上刃5の左右方向内側角隅部が当接し、
図4に示すように、やがて上刃5全体が板材Pの端部Tに当接して上刃5と下側押え部3の収納凹部7で板材Pが挟み込まれて略L(反転L)字状に下方に折り曲げ加工される。この際、板材Pの周縁部Sは上刃5と下側押え部3の収納凹部7からはみ出しているが、下刃6のどこにも接触していない。
【0024】
図2の状態から、更に上型2を下動させると、それに伴って上側押え部4及び下側押え部3と一緒に板材Pが押し下げられ、やがて上刃5及び下側押え部3の収納凹部7からはみ出した板材Pの端部Tが下刃6に当接する。上型2が下降端まで下動されると、
図5に示すように、上刃5及び下側押え部3の収納凹部7からはみ出した板材Pの端部Tが上方に折り曲げ加工され、板材Pの端部Tは全体として略コ字状に折り曲げ加工される。
図6は、
図5の状態における板材端部Tの詳細図、
図7は、板材P(プレス成形品)の周縁部Sの詳細図である。上方に折り曲げ加工された板材Pの端部Tは、上記下型1の板材受部8内に収納されているが、上記R面取り9が施された下刃6の板材P側上端角隅部は板材Pの周縁部Sに接触していない。また、
図4、
図6から推察されるように、下刃6による折り曲げ加工中も、下刃6の上端面が板材Pから遠い側下がりの逃がし形状となっていることから、その下刃6の上端面が板材Pの周縁部Sに接触することはない。その結果、下刃6の板材受部8の深さ(下刃6の高さ)を十分な寸度とすることができることから、特に、上方に折り曲げ加工された板材Pの端部Tにおける形状精度を確保することができる。すなわち、板材端部Tに形成される略コ字状の折り曲げ加工断面形状精度を確保することが可能となる。
【0025】
この実施の形態のアルミニウム製の板材Pでは、前工程の周縁部切断で、例えば
図4の板材端部Tの周縁部Sの下側部分に小さなばりが生じ、このばりにプレス型が接触するとばりが取れてしまう。プレス成形品としては、ばりの取れてしまった状態が望ましいが、この取れてしまったばりが異物としてプレス型に付着すると、それ以後のプレス成形でプレス成形品に傷が生じてしまうなどの問題となる。これに対し、この実施の形態のプレス装置のプレス型では、上記のように、板材Pの周縁部Sにプレス型が接触することはないので、切断工程でばりが生じていたとしても、そのばりが取れてしまうことはない。なお、製品の性質上、上記ばりがプレス成形品の周縁部Sに残存しても問題ない。
【0026】
このルーフ用パネルは、従前、同様の形状で、鋼製であった。
図8、
図9は、鋼製板材P’をプレス成形する従来のプレス型の詳細図であり、
図10は、
図9における鋼製板材周縁部S’の更なる詳細図である。同図から明らかなように、従来のプレス型は、下型1’のダイと上型2’のポンチの組合せで、鋼製板材端部T’を略コ字状に窪ませるものであった。このとき、
図10に明示するように、鋼製板材P’の周縁部S’が下型1’と接触する。鋼製板材P’の場合には、切断工程で周縁部S’にばりが生じ、2次成形で板材周縁部S’が下型1’に接触してもばりは取れなかった。しかし、アルミニウム製板材Pの場合には、切断工程で生じた周縁部Sのばりが下型1’に接触すると取れてしまう。また、ばりが取れない場合であっても、ばりが接触することによって下型1’に傷がつき、その傷によって、それ以降のプレス成形品に擦り傷などが生じるおそれもある。そこで、アルミニウム製板材Pの周縁部Sに下型1’が接触しないようにポンチの当接部分を低くすると、端部Tを十分に上方に立ち上げることができず、形状精度が低下する。
【0027】
これに対し、1回の2次成形工程で2段階の折り曲げ加工を行うことにより略コ字状断面形状を成形する、この実施の形態のプレス型では、下刃6は板材Pの周縁部Sと非接触であるので、切断工程で板材Pの周縁部Sにばりが生じたとしても、そのばりが取れてしまうことがない。したがって、下刃6の高さ、正確には下刃6の板材受部8の深さを十分な寸度とすることができるので、板材端部Tに形成される略コ字状の折り曲げ加工断面形状精度を確保することができる。
【0028】
このように、上記実施の形態のプレス型では、板材Pの端部Tを断面略コ字状に折り曲げ加工する際、まず、上側押え部4と下側押え部3で板材Pが挟持された状態で、上型2の下動により、上側押え部4及び下側押え部3からはみ出した板材Pの端部Tが上型2の上刃5と下側押え部3とで挟み込まれるようにして下方向きに略L字状に折り曲げ加工され、次いで、上型2の更なる下動により上型2と共に上側押え部4及び下側押え部3と一緒に板材Pが下動され、上記上刃5及び下側押え部3からはみ出した板材Pの端部Tが下型1の下刃6によって上方に折り曲げ加工され、これにより板材Pの端部Tが断面略コ字状に折り曲げ加工される。この1つのプレス型で行われる2段階の折り曲げ加工で略コ字状の折り曲げ加工断面形状精度を確保することができると共に、下刃6は板材Pの周縁部Sに非接触であるので、板材Pの周縁部Sにばりがあったとしても、そのばりが取れてしまうことがない。
【0029】
また、下刃6の上端面の板材P側の端部に面取りを施すだけで、下刃6の寸度を確保しながら板材Pの周縁部Sに非接触とすることができ、上記コ字状の折り曲げ加工断面形状精度の確保と共にばりが取れない構成を容易に取得することができる。
【0030】
また、上記板材Pの端部Tの周縁部Sは上刃5及び下側押え部3からはみ出しているので、下刃6の上端面の板材Pから遠い側を低く逃がすだけで、下刃6の寸度を確保しながら板材Pの周縁部Sと非接触とすることができ、上記コ字状の折り曲げ加工断面形状精度の確保と共にばりが取れない構成を容易に取得することができる。
【0031】
また、車両のルーフ用パネルの車両両側端部Tに、瑕疵がなく、断面形状精度に優れた略コ字状の折り曲げ加工を施すことができる。
【0032】
また、アルミニウム製の板材Pに対し、瑕疵がなく、断面形状精度に優れた略コ字状の折り曲げ加工を施すことができる。
【0033】
以上、実施の形態に係るプレス型について説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、上側押え部4や下側押え部3が個別の駆動源で駆動される構成としたが、例えば、カム機構などの遅延機構により上型2及び上側押え部4の下動より遅れて下側押え部3が下動する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 下型
2 上型
3 下側押え部
4 上側押え部
5 上刃
6 下刃
9 R面取り
P 板材
T (板材の)端部
S (板材の)周縁部