(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-21
(45)【発行日】2023-07-31
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60L 1/00 20060101AFI20230724BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230724BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20230724BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230724BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20230724BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20230724BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20230724BHJP
B60W 10/00 20060101ALI20230724BHJP
B60W 20/15 20160101ALI20230724BHJP
B60K 6/22 20071001ALI20230724BHJP
H01G 11/18 20130101ALI20230724BHJP
H01G 2/08 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B60L1/00 L
H02J7/00 P ZHV
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
B60L58/12
B60L58/26
B60L3/00 H
B60W10/00 900
B60W20/15
B60K6/22
H01G11/18
H01G2/08 A
(21)【出願番号】P 2020006175
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 和
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-073746(JP,A)
【文献】特開2011-091946(JP,A)
【文献】特開2019-154203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/48
B60L 58/12
B60L 58/26
B60L 3/00
B60W 10/00
B60W 20/15
B60K 6/22
H01G 11/18
H01G 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
前記車両の起動と停止とを切り替えるスイッチと、
蓄電装置と、
前記車両の外部に設置された充電設備から供給される電力により前記蓄電装置を充電する充電器と、
前記充電器を含む電気機器を冷却するように構成された冷却装置と、
前記冷却装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記車両が起動しており、
前記充電器は前記蓄電装置を充電するために動作していないものの前記冷却装置が
前記充電器以外の前記電気機器を冷却するために動作している場合に、前記車両と前記充電設備との間の距離が基準距離以下であり、かつ、前記蓄電装置のSOCが基準値以下であるときには、
前記充電設備から供給される電力による前記蓄電装置の充電開始に先立ち、前記スイッチが前記車両を停止するためのユーザ操作を受け付けても前記冷却装置の動作を継続させる、車両。
【請求項2】
前記冷却装置は、前記充電器を冷却するための冷却水を流す駆動ポンプを含み、
前記制御装置は、前記車両が起動しており、前記冷却装置が動作している場合に、前記車両と前記充電設備との間の距離が前記基準距離以下であり、かつ、前記蓄電装置のSOCが前記基準値以下であるときには、前記スイッチが前記ユーザ操作を受け付けても前記冷却装置の動作を継続させる、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記駆動ポンプに電力を供給する補機バッテリをさらに備え、
前記制御装置は、前記車両が起動しており、前記冷却装置が動作している場合に、前記車両と前記充電設備との間の距離が前記基準距離以下であり、かつ、前記蓄電装置のSOCが前記基準値以下であるとき、前記スイッチが前記ユーザ操作を受け付けると、前記車両の停止に先立ち前記補機バッテリを充電する、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記冷却装置は、前記充電器に加えて、前記電気機器としての前記蓄電装置を冷却するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
車両であって、
前記車両の起動と停止とを切り替えるスイッチと、
蓄電装置と、
前記車両の外部に設置された充電設備から供給される電力により前記蓄電装置を充電する充電器と、
前記充電器を冷却するための冷却水を流す駆動ポンプを含み、前記充電器を含む電気機器を冷却するように構成された冷却装置と、
前記冷却装置を制御する制御装置と
、
前記駆動ポンプに電力を供給する補機バッテリとを備え、
前記制御装置は、前記車両が起動しており、前記冷却装置が動作している場合に、前記車両と前記充電設備との間の距離が基準距離以下であり、かつ、前記蓄電装置のSOCが基準値以下であるときには、前記スイッチが前記車両を停止するためのユーザ操作を受け付けても前記冷却装置の動作を継続させ
、前記スイッチが前記ユーザ操作を受け付けると、前記車両の停止に先立ち前記補機バッテリを充電する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に関し、より特定的には、車両外部から供給される電力により車載の蓄電装置の充電が可能に構成された車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラグインハイブリッド車または電気自動車など、車両外部から供給される電力により車載の蓄電装置の充電が可能に構成された車両の普及が進んでいる。以下、このような充電を「外部充電」とも称する。外部充電が可能な車両には、車両外部からの供給電力により蓄電装置を充電する充電器が搭載されている。また、充電器を冷却するための冷却装置をさらに設けられた構成も知られている。
【0003】
たとえば特開2017-135929号公報(特許文献1)は、車載の充電器の冷却装置を開示する。この冷却装置は、充電器を冷却する冷却ファンと、充電器の温度を検出する充電器温度センサと、冷却ファンの動作を制御するECUとを備える。ECUは、車両の停車時であって充電器によるバッテリの充電前に、充電器温度センサにより検出された充電器の温度に基づいて冷却ファンを駆動して充電器を予め冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、前回、充電器を予め冷却してから所定時間が経過していない場合には、冷却装置(特許文献1では冷却ファン)を動作させないことが記載されている(特許文献1の
図2に記載のステップS6参照)。そのため、前回、充電器を冷却してから所定時間が経過する前に外部充電を行う場合、冷却装置を動作させる。冷却装置の動作/停止の回数が過度に多いと、冷却装置の寿命を縮めてしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、かかる課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、車載の充電器を冷却する冷却装置の寿命を延ばすことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示のある局面に従う車両は、車両の起動と停止とを切り替えるスイッチと、蓄電装置と、車両の外部に設置された充電設備から供給される電力により蓄電装置を充電する充電器と、充電器を含む電気機器を冷却するように構成された冷却装置と、冷却装置を制御する制御装置とを備える。制御装置は、車両が起動しており、冷却装置が動作している場合に、車両と充電設備との間の距離が基準距離以下であり、かつ、蓄電装置のSOCが基準値以下であるときには、スイッチが車両を停止するためのユーザ操作を受け付けても冷却装置の動作を継続させる。
【0008】
(2)冷却装置は、充電器を冷却するための冷却水を流す駆動ポンプを含む。制御装置は、車両が起動しており、冷却装置が動作している場合に、車両と充電設備との間の距離が基準距離以下であり、かつ、蓄電装置のSOCが基準値以下であるときには、スイッチがユーザ操作を受け付けても冷却装置の動作を継続させる。
【0009】
車両の速度が所定速度を下回った場合、つまり、車両が停車した場合または停車間近である場合に、車両から基準距離内に充電設備が存在し、かつ、蓄電装置のSOCが基準値以下であれば、車両の外部充電が実施される可能性が高い。したがって、そのような状況下では、制御装置は、既に動作中である冷却装置(駆動ポンプなど)に、その動作状態を維持させる。そうすることで、その後の車両の電気システムの停止(ReadyOFF~に伴う冷却装置の動作停止と、外部充電開始に伴う冷却装置の動作再開とが不要になる。したがって、上記(1),(2)の構成によれば、冷却装置の動作/停止の切り替え回数を削減し、冷却装置の寿命を延ばすことができる。
【0010】
(3)車両は、駆動ポンプに電力を供給する補機バッテリをさらに備える。制御装置は、車両が起動しており、冷却装置が動作している場合に、車両と充電設備との間の距離が基準距離以下であり、かつ、蓄電装置のSOCが基準値以下であるとき、スイッチがユーザ操作を受け付けると、車両の停止に先立ち補機バッテリを充電する。
【0011】
電気システムの停止中に、補機バッテリに蓄えられた電力が駆動ポンプの動作に消費されて枯渇してしまう可能性がある。したがって、上記(3)の構成においては、電気システムの停止に先立ち補機バッテリが充電される。これにより、補機バッテリの電力枯渇を防止できる。
【0012】
(4)冷却装置は、充電器に加えて、電気機器としての蓄電装置を冷却するように構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、冷却装置の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態における充電システムの全体構成を示す図である。
【
図2】本実施の形態に係る車両の構成を概略的に示す図である。
【
図3】比較例におけるウォータ-ポンプ制御を説明するためのタイムチャートである。
【
図4】本実施の形態におけるウォータ-ポンプ制御を説明するためのタイムチャートである。
【
図5】本実施の形態における急速充電に関する制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0016】
[実施の形態]
<充電システムの全体構成>
図1は、本実施の形態における充電システムの全体構成を示す図である。
図1を参照して、充電システム9は、車両1と、充電設備2と、充電設備2から延びる充電ケーブル3と、遠隔地に設けられたサーバ4とを含む。
【0017】
車両1は、車両1と充電設備2とが充電ケーブル3により電気的に接続された状態において、充電設備2から供給される電力により車載のバッテリ10(
図2参照)を充電する「外部充電」が可能に構成されている。本実施の形態において、車両1は電気自動車である。ただし、車両1は、外部充電が可能に構成されていればよく、プラグインハイブリッド車または燃料電池車であってもよい。
【0018】
充電設備2は、たとえば公共の充電スタンド(充電スポットまたは充電ステーションとも呼ばれる)に設置されている。充電設備2は、商用電源から供給される交流電源(たとえば3相200Vの電源)を直流電力に変換し、その直流電力を車両1に供給する。
【0019】
本実施の形態において、充電設備2は、「急速充電」に準拠した充電器である。しかし、充電設備2が対応する充電規格は、急速充電の充電規格に限定されない。充電設備2は、より充電電力が小さく、かつ、交流電力を供給する、いわゆる「普通充電」に準拠した充電設備であってもよい。
【0020】
サーバ4は、車両1を含む多数の車両の外部充電に用いられる各種情報を管理する。車両1とサーバ4とは、双方向の通信が可能に構成されている。これにより、サーバ4は、車両1との間で必要な情報を授受することができる。具体的には、サーバ4は、充電設備2の位置情報を車両1に提供することが可能に構成されている。
【0021】
<車両構成>
図2は、本実施の形態に係る車両1の構成を概略的に示す図である。
図1および
図2を参照して、車両1は、バッテリ10と、監視ユニット11と、補機バッテリ12と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)20と、パワーコントロールユニット(PCU:Power Control Unit)31と、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)32と、動力伝達ギア33と、駆動輪34と、充電リレー40と、DC/DCコンバータ50と、冷却装置60と、電圧センサ71と、電流センサ72と、電力線PL,GLと、インレット73と、車載ネットワーク80と、ナビゲーションシステム81と、通信モジュール82と、スタートスイッチ90と、ECU(Electronic Control Unit)100とを備える。
【0022】
バッテリ10は、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池などの二次電池を含む。バッテリ10は、車両1の走行駆動力を生成するための電力をPCU31へ供給する。また、バッテリ10は、モータジェネレータ32の回生制動により発電された電力により充電されたり、充電設備2からの供給電力により充電されたりする。なお、バッテリ10に代えて、電気二重層キャパシタ等のキャパシタを採用してもよい。バッテリ10は、本開示に係る「蓄電装置」に相当する。
【0023】
監視ユニット11は、バッテリ10の状態を監視する。監視ユニット11は、いずれも図示しないが、電圧センサと、電流センサと、温度センサとを含む。電圧センサは、バッテリ10の電圧VBを検出する。電流センサは、バッテリ10に入出力される電流IBを検出する。温度センサは、バッテリ10の温度(以下、「電池温度」とも記載する)TBを検出する。各センサは、その検出結果をECU100に出力する。ECU100は、各センサによる検出結果に基づいて、バッテリ10のSOC(State Of Charge)を算出できる。
【0024】
補機バッテリ12は、車両1に搭載された様々な補機類に電力を供給する。補機バッテリ12から電力供給を受ける補機類には、冷却装置60のウォーターポンプ61(後述)が含まれる。補機バッテリ12は、バッテリ10からの電力を用いて充電することが可能である。
【0025】
SMR20は、バッテリ10とPCU31との間に電気的に接続されている。SMR20は、ECU100からの制御指令に応じて閉成/開放される。
【0026】
PCU31は、ECU100からの制御指令に従って、バッテリ10とモータジェネレータ32との間で電力変換を行う。PCU31は、バッテリ10から電力を受けてモータジェネレータ32を駆動するインバータと、そのインバータに供給される直流電圧のレベルを調整するコンバータ(いずれも図示せず)と等を含む。
【0027】
モータジェネレータ32は、交流電動機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータ(図示せず)を備える永久磁石型同期電動機である。モータジェネレータ32は、PCU31に含まれるインバータによって駆動され、駆動軸(図示せず)を回転させる。モータジェネレータ32が出力するトルクが動力伝達ギア33を介して駆動輪34に伝達され、それにより車両1が走行する。また、モータジェネレータ32は、車両1の制動時には駆動輪の回転力を受けて発電する。モータジェネレータ32によって発電された電力は、PCU31を通じてバッテリ10に充電される。
【0028】
充電リレー40は、バッテリ10とDC/DCコンバータ50との間に電気的に接続されている。充電リレー40は、SMR20と同様に、ECU100からの制御指令に応じて閉成/開放される。充電リレー40が閉成され、かつ、SMR20が閉成されると、バッテリ10とDC/DCコンバータ50との間での電力伝送が可能な状態となる。
【0029】
DC/DCコンバータ50は、充電リレー40とインレット73との間に電気的に接続されている。DC/DCコンバータ50は、ECU100からの制御指令に従って、充電設備2から供給される電力をバッテリ10を充電するための電力に変換する。なお、DC/DCコンバータ50は、バッテリ10からの電力を車両外部へ出力するための電力に変換可能に構成されていてもよい。
【0030】
冷却装置60は、ECU100からの制御指令に基づいてDC/DCコンバータ50を冷却する。本実施の形態において、冷却装置60は、DC/DCコンバータ50に加えてバッテリ10を冷却することも可能に構成されている。冷却装置60は、液冷式の冷却装置であり、DC/DCコンバータ50に設置された冷却管(図示せず)に冷却水を流通させるウォーターポンプ61を含む。ただし、冷却装置60の方式は液冷式に限定されず、空冷式であってもよい。この場合には、冷却装置60は、冷却ファンの動作によってDC/DCコンバータ50を冷却する。
【0031】
電圧センサ71は、電力線PLと電力線GLとの間に電気的に接続されている。電圧センサ71は、充電設備2からDC/DCコンバータ50への供給電力の電圧を検出し、その検出結果をECU100に出力する。
【0032】
電流センサ72は、電力線PLに電気的に接続されている。電流センサ72は、充電設備2からDC/DCコンバータ50に流れる電流を検出し、その検出結果をECU100に出力する。
【0033】
インレット73は、充電ケーブル3のコネクタ301を機械的に接続可能に構成されている。車両1の急速充電時には、充電設備2からの電力が充電ケーブル3内の電力線302を通じて車両1に供給され、電力線PL,GLを通じてDC/DCコンバータ50へと伝送される。
【0034】
車載ネットワーク80は、CAN(Controller Area Network)などの有線のネットワークであり、ECU100とナビゲーションシステム81と通信モジュール82とを互いに接続する。なお、車両1と充電設備2とが充電ケーブル3により接続された状態において、ECU100は、車載ネットワーク80および充電ケーブル3内の通信線303を介して充電設備2の制御装置200とも双方向通信が可能である。
【0035】
ナビゲーションシステム81は、人工衛星からの電波に基づいて車両1の現在地を特定するGPS(global Pointing System)受信機(図示せず)を含む。ナビゲーションシステム81は、GPS受信機により車両1の現在地の位置情報を取得し、取得された位置情報を用いて車両1の各種ナビゲーション処理を実行する。
【0036】
通信モジュール82は、サーバ4との双方向のデータ通信が可能なように構成されている。
【0037】
スタートスイッチ90は、車両1の電気システムを起動(ReadyON)/停止(ReadyOFF)するユーザ操作を受け付ける。なお、スタートスイッチ90は、本開示に係る「スイッチ」に相当する。本開示に係る「スイッチ」は、エンジンが搭載された車両(ハイブリッド車またはプラグインハイブリッド車)においてはイグニッションスイッチとも呼ばれる。
【0038】
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ101と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリ102と、各種信号を入出力するための入出力ポート(図示せず)とを含む。ECU100は、車両1が所望の状態となるように車両1内の各機器(SMR20、PCU31、充電リレー40、DC/DCコンバータ50および冷却装置60など)を制御する。なお、ECU100は、本開示に係る「制御装置」に相当する。
【0039】
<充電器の冷却>
以上のように構成された車両1では、DC/DCコンバータ50の冷却開始/冷却終了に伴い、ウォーターポンプ61の動作/停止が切り替えられる。ウォーターポンプ61の動作/停止の回数が過度に多いと、ウォーターポンプ61の寿命を縮めてしまう可能性がある。そこで、本実施の形態においては、以下に説明する特定の条件が成立した場合には、ウォーターポンプ61の動作を継続することによってウォーターポンプ61の動作/停止の回数をできるだけ削減する構成を採用する。以下では、本実施の形態における外部充電制御の理解を容易にするため、まず、比較例における外部充電制御について説明する。
【0040】
<比較例における制御タイムチャート>
図3は、比較例におけるウォータ-ポンプ制御を説明するためのタイムチャートである。
図3および後述する
図4において、横軸は経過時間を表す。縦軸は、上から順に、車両1の速度(車速V)、バッテリ10の温度(電池温度TB)、および、ウォーターポンプ61の吐出量(相対値)を表す。
【0041】
図3を参照して、初期時刻(0分)において、車両1のシフトポジションはDレンジ(走行レンジ)であり、車両1は走行中であるとする。また、冷却装置60は動作中であり、ウォーターポンプ61は動作されている。この例では、時間の経過とともに車速Vが次第に低下する。また、車速Vが低下するに従って電池温度TBも低下していく。
【0042】
約13分が経過した時点で車両1が停止する。車両1の停車位置は、充電設備2から基準距離以内(充電設備2から、たとえば数メートルの範囲内)である。そして、車両1のシフトポジションがDレンジからPレンジ(駐車レンジ)に切り替えられる。この時点でバッテリ10のSOCは、予め定められた基準値(たとえば30%)以下であり、バッテリ10の充電が望ましい状態であるとする。
【0043】
約15分が経過した時点で、スタートスイッチ90を押す操作に伴い、車両1の電気システムが停止される。言い換えると、車両1がReadyOFF状態になる。そうすると、ウォーターポンプ61が停止される。
【0044】
さらに、約18分が経過した時点で車両1の急速充電が開始される。そうすると、ウォーターポンプ61が再度駆動される。急速充電の開始後には電池温度TBが次第に上昇していく。
【0045】
このように、比較例では、車両1のReadyOFF操作とウォーターポンプ61の動作状態とが連動している。そのため、車両1がReadyOFF状態になると、それに伴ってウォーターポンプ61の動作が停止する。そして、その後の急速充電の開始に伴ってウォーターポンプ61の動作が再開される。
【0046】
<本実施の形態における制御タイムチャート>
図4は、本実施の形態におけるウォータ-ポンプ制御を説明するためのタイムチャートである。
図4を参照して、この実施の形態においても比較例(
図3参照)と同様に、初期時刻において、車両1のシフトポジションはDレンジであり、車両1は走行中である。また、冷却装置60は動作中であり、ウォーターポンプ61は動作している。また、車速Vの低下とともに電池温度TBが低下する。約13分が経過した時点で、バッテリ10のSOCが基準値を下回った状態で、車両1が充電設備2の近くに停車する。車両1のシフトポジションがDレンジからPレンジに切り替えられる。
【0047】
約15分が経過した時点で、車両1がReadyOFF状態になる。そうすると、比較例ではウォーターポンプ61が停止されるのに対して、本実施の形態においてはウォーターポンプ61は停止されずに、動作中の状態が維持される。
【0048】
その後、車両1の急速充電が開始される(約18分)。このとき、ウォーターポンプ61は動作中のままである。急速充電の開始後には比較例と同様に、電池温度TBは時間の経過とともに上昇していく。
【0049】
車両1の停車位置が充電設備2から基準距離内であり、かつ、バッテリ10のSOCが基準値以下である場合には、車両1がReadyOFF状態になった後に急速充電が実施される可能性が高い。したがって、本実施の形態においては、上記の条件が成立している場合には、車両1がReadyOFFされても、その後の急速充電に備えてウォーターポンプ61を動作させ続ける。これにより、急速充電開始に伴ってウォーターポンプ61を停止状態から動作状態に切り替えなくてもよくなるので、ウォーターポンプ61の動作/停止の回数が削減される。その結果、ウォーターポンプ61の寿命を延ばすことができる。
【0050】
<急速充電フロー>
図5は、本実施の形態における急速充電に関する制御を示すフローチャートである。
図5を参照して、このフローチャートは、車両1がReadyON状態である場合にメインルーチン(図示せず)から所定の周期毎に呼び出されて実行される。このフローチャートに含まれる各ステップは、ECU100によるソフトウェア処理により実行されるが、ECU100内に作製されたハードウェア(電気回路)処理により実行されてもよい。なお、以下ではステップを「S」と略す。
【0051】
S1において、ECU100は、車両1が停車している、または、停車しそうであるかどうかを判定する。具体的には、車両1のシフトレンジがPレンジである場合、または、車速Vが所定速度(たとえば時速5km)以下である場合に、車両1が停車している、または停車しそうであると判定できる。車両1が依然として走行中である場合(S1においてNO)には、ECU100は処理をメインルーチンに戻す。
【0052】
車両1が停車している場合または停車しそうである場合(S1においてYES)、ECU100は、ウォーターポンプ61が動作中であるかどうかを判定する(S2)。前述のように、冷却装置60は、DC/DCコンバータ50に加えてバッテリ10も冷却するように構成されている。したがって、バッテリ10の冷却要求がある場合に、ウォーターポンプ61がバッテリ10を冷却するために動作中であると判定できる。ウォーターポンプ61が動作中でない場合(S2においてNO)には、ECU100は処理をメインルーチンに戻す。
【0053】
ウォーターポンプ61が動作中である場合(S2においてYES)、ECU100は、車両1の現在地から基準距離以内に充電設備2が設けられているかどうかを判定する(S3)。この基準距離としては、急速充電規格により定められた充電ケーブル3の最大長(一例として7.5m)を設定することができる。なお、車両1の位置情報はナビゲーションシステム81を用いて取得できる。また、充電設備2の位置情報は、ナビゲーションシステム81に予め格納された地図データを用いて取得してもよいし、通信モジュール82を介したサーバ4との通信により取得してもよい。なお、GPSによる測地精度は将来的には数cm程度まで向上する見込みである。
【0054】
車両1から基準距離以内に充電設備2が設けられている場合(S3においてYES)、ECU100は、バッテリ10のSOCが基準値(たとえば30%)以下であるかどうかを判定する(S4)。この基準値は、残存容量が減少していてバッテリ10を充電することが望ましい値であり、車両1に求められるEV走行距離などに応じて事前に定めることができる。
【0055】
バッテリ10のSOCが基準値以下である場合(S4においてYES)、ECU100は、車両1の急速充電を実施すると判定する(S5)。そして、ECU100は、車両1に搭載された補機バッテリ12を充電する(S6)。前述のように、ウォーターポンプ61は補機バッテリ12からの電力供給により動作する。よって、補機バッテリ12を予め充電しておくことにより、補機バッテリ12に蓄えられた電力がウォーターポンプ61の動作中に枯渇することを防止できる。
【0056】
S7においてユーザによる車両1のReadyOFF操作(スタートスイッチ90の押下操作)を受け付けても、ECU100は、ウォーターポンプ61の動作を継続する(S8)。その後、車両1の急速充電が実施される(S9)。なお、車両1の急速充電時には、SMR20および充電リレー40が閉成される。
【0057】
これに対し、車両1から基準距離以内に充電設備2が設けられていない場合(S3においてNO)またはバッテリ10のSOCが基準値よりも高い場合(S4においてNO)には、ECU100は、急速充電を実施しないと判定する(S10)。この場合には、ECU100は、ユーザによる車両1のReadyOFF操作を受け付けると(S11)、ウォーターポンプ61を停止させる(S12)。
【0058】
以上のように、車両1が停車した場合(または停車間近である場合)に、車両1の十分近くに充電設備2が存在し、かつ、バッテリ10のSOCが低下していれば、車両1の急速充電が実施される可能性が高い。したがって、本実施の形態においては、上記のような状況下では、既に動作中であるウォーターポンプ61に、その状態を維持させる。そうすることで、その後の車両1のReadyOFFに伴うウォーターポンプ61の動作停止と、急速充電の開始に伴うウォーターポンプ61の動作再開とが不要になる。これにより、ウォーターポンプの動作/停止の切り替え回数を削減できる。よって、本実施の形態によれば、ウォーターポンプ61の寿命を延ばすことができる。
【0059】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 車両、2 充電設備、3 充電ケーブル、4 サーバ、9 充電システム、10 バッテリ、11 監視ユニット、12 補機バッテリ、20 SMR、31 PCU、32 モータジェネレータ、33 動力伝達ギア、34 駆動輪、40 充電リレー、50 コンバータ、60 冷却装置、61 ウォーターポンプ、71 電圧センサ、72 電流センサ、73 インレット、80 車載ネットワーク、81 ナビゲーションシステム、82 通信モジュール、90 スタートスイッチ、100 ECU、101 プロセッサ、102 メモリ、200 制御回路、301 コネクタ、302 電力線、GL,PL 電力線。