IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-吸収性物品 図1
  • 特許-吸収性物品 図2
  • 特許-吸収性物品 図3
  • 特許-吸収性物品 図4
  • 特許-吸収性物品 図5
  • 特許-吸収性物品 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/535 20060101AFI20230725BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20230725BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A61F13/535 200
A61F13/534 110
A61F13/535 100
A61F13/53 300
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019123807
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021007679
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 悠太郎
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-057652(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114209(WO,A1)
【文献】特開2011-177310(JP,A)
【文献】特開2017-029352(JP,A)
【文献】特開平11-216161(JP,A)
【文献】特開2016-047480(JP,A)
【文献】特開2003-070842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着時において装着者の腹部側に位置する前身頃領域、股下に位置する股下領域、及び背部側に位置する後身頃領域を備えた吸収性物品であって、
装着時の肌対向面側に配置された液透過性のトップシートと、
前記肌対向面の反対側に配置された液不透過性のバックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に配置され、上面視において瓢箪型を有する吸収体と、
前記吸収体の前記トップシート側に尿道口対応領域を含んで前記吸収体の長手方向に延在し且つ前記吸収体の幅方向中央部に形成された溝と、
を備え、
前記溝は、前記吸収体の前記瓢箪型の幅狭領域中央部から前記前身頃領域側に165mm以上215mm以下延在しており、
前記尿道口対応領域は、前記溝の前記前身頃領域側の先端部から100mm以上160mm以下の範囲に存在し、
前記尿道口対応領域における前記溝は、幅が15mm以上40mm以下、深さが6mm以上10mm以下であり、
前記尿道口対応領域よりも前記前身頃領域側には、前記溝は延在しておらず、
前記尿道口対応領域よりも前記後身頃領域側には、前記溝は延在しており、
前記尿道口対応領域よりも前記後身頃領域側における前記溝は、幅が10mm以上35mm以下であり、深さが5mm以上9mm以下であり、
前記吸収体は、パルプを含み、
前記吸収体において、前記尿道口対応領域の周辺部における前記パルプの坪量は400g/m以上560g/m以下であり、前記周辺部以外の領域における前記パルプの坪量は350g/m以上530g/m以下であ
前記溝の幅方向の外側に配置され、高吸収性重合体の粒子を複数含むSAP層を更に備え、
前記SAP層は、前記溝に近い領域ほどSAP量が多い、
吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体は、前記尿道口対応領域よりも前記後身頃領域側における前記溝と重なる領
域においてパルプを含む層を有する、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体は、前記尿道口対応領域における前記溝と重なる領域においてパルプを含む層を有する、
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記SAP層におけるSAPの坪量は、100g/m以上200g/m以下であ
請求項1から3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は、前記トップシート側に配置された上層吸収体と、前記バックシート側に配置された下層吸収体とを、有し、
前記溝は、前記上層吸収体を厚さ方向に貫通して形成されており、
前記SAP層は、前記上層吸収体と前記下層吸収体との間に配置されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記溝の隣接する領域には、高吸収性重合体の粒子を複数含むSAP層が形成されていない、
請求項1からのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、吸収性パッド(尿パッド)、生理用品等の吸収性物品が知られている。吸収性物品は、パルプや高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)により形成され、尿や体液等の液体を吸収する吸収体を備えている。特許文献1には、上層吸収体及び下層吸収体を備え、上層吸収体に開口部(溝)が形成された吸収性物品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/114209号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品では、尿の拡散性を高めるために吸収体に溝が形成される場合がある。しかしながら、溝によって尿が装着者の腹部側に拡散されすぎてしまうと、吸収性物品の腹部側から尿が漏出してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、尿の漏出を抑制し得る吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る吸収性物品は、吸収体の瓢箪型の幅狭領域中央部から前身頃領域側に165mm以上215mm以下延在する溝を備えている。
【0007】
詳細には、本発明に係る吸収性物品は、装着時において装着者の腹部側に位置する前身頃領域、股下に位置する股下領域、及び背部側に位置する後身頃領域を備えた吸収性物品であって、装着時の肌対向面側に配置された液透過性のトップシートと、前記肌対向面の反対側に配置された液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置され、上面視において瓢箪型を有する吸収体と、前記吸収体の前記トップシート側に尿道口対応領域を含んで前記吸収体の長手方向に延在し且つ前記吸収体の幅方向中央部に形成された溝と、を備え、前記溝は、前記吸収体の前記瓢箪型の幅狭領域中央部から前記前身頃領域側に165mm以上215mm以下延在しており、前記尿道口対応領域は、前記溝の前記前身頃領域側の先端部から100mm以上160mm以下の範囲に存在し、前記尿道口対応領域における前記溝は、幅が15mm以上40mm以下、深さが6mm以上10mm以下であり、前記尿道口対応領域よりも前記前身頃領域側には、前記溝は延在しておらず、前記尿道口対応領域よりも前記後身頃領域側には、前記溝は延在しており、前記尿道口対応領域よりも前記後身頃領域側における前記溝は、幅が10mm以上35mm以下であり、深さが5mm以上9mm以下であり、前記吸収体は、パルプを含み、前記吸収体において、前記尿道口対応領域の周辺部における前記パルプの坪量は400g/m以上560g/m以下であり、前記周辺部以外の領域における前記パルプの坪量は350g/m以上530g/m以下である。
【0008】
上記の吸収性物品では、前記吸収体は、前記尿道口対応領域よりも前記後身頃領域側における前記溝と重なる領域においてパルプを含む層を有していてもよい。
【0009】
上記の吸収性物品では、前記吸収体は、前記尿道口対応領域における前記溝と重なる領域においてパルプを含む層を有していてもよい。
【0010】
上記の吸収性物品は、前記溝の幅方向の外側に配置され、高吸収性重合体の粒子を複数含むSAP層を更に備えていてもよい。
【0011】
上記の吸収性物品では、前記SAP層は、前記溝に近い領域ほどSAP量が多くてもよい。
【0012】
上記の吸収性物品では、前記SAP層におけるSAPの坪量は、100g/m以上200g/m以下であり、前記SAP層における尿の保持量は、130g以上350g以下であってもよい。
【0013】
上記の吸収性物品では、前記吸収体は、前記トップシート側に配置された上層吸収体と、前記バックシート側に配置された下層吸収体とを、有し、前記溝は、前記上層吸収体を厚さ方向に貫通して形成されており、前記SAP層は、前記上層吸収体と前記下層吸収体との間に配置されていてもよい。
【0014】
上記の吸収性物品では、前記溝の隣接する領域には、高吸収性重合体の粒子を複数含むSAP層が形成されていなくてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上記の吸収性物品であれば、尿の漏出を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、吸収性パッドの平面図である。
図2図2は、吸収性パッドの断面図である。
図3図3は、吸収性パッドの側臥位吸収量試験結果を示す表である。
図4図4は、吸収性パッドの座位吸収量試験結果を示す表である。
図5図5は、吸収性パッドの側臥位吸収量試験結果を示す表である。
図6図6は、吸収性パッドの座位吸収量試験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る吸収性パッド1(本願でいう「吸収性物品」の一例である)を肌対向面側から見た平面図である。吸収性パッド1は、尿等の液体を吸収して保持するために用いられ、単独でも使用することができるし、使い捨ておむつの内側に重ねて使用することもできる。吸収性パッド1は、装着時において装着者の腹部側に位置する前身頃領域3、股下に位置する股下領域5、及び背部側に位置する後身頃領域7を備えている。吸収性パッド1は、長手方向に見て、前身頃領域3、股下領域5及び後身頃領域7に区分される。なお、長手方向に直交する方向が吸収性パッド1の幅方向(短手方向)となる。吸収性パッド1は、上面視(平面視)において、股下領域5に最も狭い横幅を有しており、股下領域5がくびれた瓢箪形状を有している。
【0019】
なお、以下では、吸収性パッド1を長手方向に見た場合に、相対的に前身頃領域3側を「前」や「前側」や「前方」や「腹部側」と称し、相対的に後身頃領域7側を「後」や「後側」や「後方」や「背部側」と称し、後側から前側に向かって相対的に左側を「左」や「左側」や「左方」と称し、後側から前側に向かって相対的に右側を「右」や「右側」や
「右方」と称する。なお、吸収性パッド1の前後方向は長手方向となり、吸収性パッド1の左右方向は幅方向となる。また、前後左右方向に直交する方向が吸収性パッド1の厚さ方向(高さ方向)となる。
【0020】
図1に示すように、吸収性パッド1は、装着時(装着状態)における肌対向面側に配置されたトップシート11を備えている。トップシート11は、吸収性パッド1の装着時において装着者の肌に接する部分(肌対向面)であり、尿等の液体を透過する液透過性の材料で形成されている。トップシート11には、具体的には、織布、不織布、多孔性フィルム等が用いられる。なお、不織布には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理したものを用いてもよいし、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等を用いてもよい。
【0021】
また、吸収性パッド1は、装着時における肌対向面の反対側に配置されたバックシート13を備えている。バックシート13は、肌対向面と反対の肌非対向面(外表面)となる部分であり、尿等の液体を透過しない液不透過性の材料で形成されている。バックシート13には、具体的には、ポリエチレン樹脂で形成された液不透過性のフィルムが用いられる。なお、バックシート13には、液不透過性を維持しつつ装着状態での蒸れを防ぐための通気性を得るために、0.1~4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0022】
トップシート11とバックシート13とは、夫々の周縁部が互いに接合されている。また、吸収性パッド1は、トップシート11とバックシート13との間に配置され、尿などの液体を吸収する吸収体14を備えている。吸収体14は、トップシート11側に配置された上層吸収体15と、バックシート13側に配置された下層吸収体17とを有している。上層吸収体15は、上面視において、吸収性パッド1と概ね同じ瓢箪形状を有している。下層吸収体17は、トップシート11側から見て上層吸収体15の下方に配置されており、上面視において、吸収性パッド1の長手方向が長辺となる長方形状を有している。また、上面視において、上層吸収体15は、下層吸収体17よりも大きく形成されている。吸収性パッド1は、尿等の液体が排泄されたときに相対的に大きく、トップシート11側に配置された上層吸収体15により尿を迅速に吸収することができる。なお、吸収体14の長手方向は、上層吸収体15及び下層吸収体17の長手方向であって、吸収性パッド1の長手方向と一致している。また、吸収体14の幅方向は、上層吸収体15及び下層吸収体17の幅方向であって、吸収性パッド1の幅方向と一致している。
【0023】
上層吸収体15及び下層吸収体17には、針葉樹等の繊維材料を解砕して得られるフラッフパルプや、高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)、親水性シート等やこれらを組み合わせたものが用いられる。また、SAPは、自重の10~100倍程度の液体を吸収する。SAPには、例えば、液体吸収前の状態において0.1~0.5mm程度の直径を有する粒状のものが用いられる。
【0024】
また、吸収性パッド1は、上層吸収体15を厚さ方向に貫通して形成された溝21を備えている。溝21は、吸収体14のトップシート側(上層吸収体15)に尿道口対応領域37(図1中、右上がりハッチングで示す領域)を含んで吸収体14の長手方向に延び且つ吸収体14の幅方向中央部に形成されている。なお、尿道口対応領域37の詳細については後述する。
【0025】
また、溝21は、吸収体14の瓢箪型の幅狭領域中央部から前身頃領域3側及び後身頃領域7側に延在している。ここで、吸収体14の瓢箪型の幅狭領域中央部とは、上層吸収体15の股下領域5内において、最も幅が狭い領域である幅狭領域5a内での長手方向中
央部のことである。図1中、幅狭領域中央部は二点鎖線で表す仮想直線cで示されている。なお、上面視において吸収体14の最も幅が狭い部分が略一直線状に規定される場合には、この部分を幅狭領域中央部とする。幅狭領域中央部は、吸収性パッド1を通常の使用態様で装着した場合、装着者が起立したときに吸収体14内で最も下方に位置する。
【0026】
溝21は、幅狭領域中央部から前身頃領域3側に長さyを有している。本実施形態において、長さyは、165mm以上215mm以下である。このように、溝21は、吸収体14の瓢箪型の幅狭領域中央部から前身頃領域3側に165mm以上215mm以下延在している。また、溝21は、吸収体14の瓢箪型の幅狭領域中央部から後身頃領域7側にも延在している。本実施形態では、図1に示すように、溝21は後身頃領域7の前部まで延在している。例えば、溝21は幅狭領域中央部から後身頃領域7側に87.5mm以上延在していのが好ましい。
【0027】
ここで、尿道口対応領域37は、溝21の前身頃領域3側の先端部から100mm以上160mm以下の範囲に存在する。なお、溝21の前身頃領域3側の先端部と、尿道口対応領域37の前身頃領域3側の先端部とは一致する。尿道口対応領域37は、装着者の尿道口がトップシート11に当接する領域と重なる領域であり、排尿位置である。溝21は、装着者が排泄した尿が流入し易いように、尿道口対応領域37を含んで形成されている。尿道口対応領域37は、装着者の尿道口の位置の個人差や、男女差や、装着者毎に生じる吸収性パッド1の微小な位置ずれ等を考慮して規定される。本実施形態では、成人男性15人及び成人女性15人の尿道口と吸収性パッドとの当接位置の統計を取って尿道口対応領域37を規定した。
【0028】
また、尿道口対応領域において溝の幅が狭すぎると、溝から尿が溢れてしまい、溝によって尿を吸収体の全体に拡散することができなくなり、吸収性物品の横から尿が漏れる横漏れが生じてしまう。このため、本実施形態では、排尿位置である尿道口対応領域37における溝21の必要な幅を設定する。溝21の幅は、一般的に介護が必要な成人の1回の排尿量及び排尿速度に基づいて設定される。なお、当該排尿量は150mlであり、当該排尿速度は、10ml/秒である。尿道口当接領域37における溝21は第一義的に尿を受け止めるための空間であり、本実施形態ではこの空間において必要とされる条件から尿道口当接領域37における溝21の幅xを設定した。本実施形態では、尿道口対応領域37における溝21の幅xは、15mm以上40mm以下に設定されている。尿道口対応領域37における溝21は、尿を受け止める空間として機能し、排出された尿を溝21に流して吸収体14の全体に拡散させることができる。
【0029】
また、尿道口対応領域37における溝21の深さも尿を受け止める空間において必要とされる条件から設定される。本実施形態では、尿道口対応領域37における溝21は、深さが6mm以上10mm以下に設定されている。
【0030】
また、尿道口対応領域37よりも前身頃領域3側には溝21は、延在していない。吸収性物品において、前身頃領域側に尿が拡散され過ぎてしまうと、前身頃領域における溝から尿が溢れだし、前身頃領域内の吸収体がこの尿を吸収しきれずに横漏れが生じてしまう虞がある。本実施形態では、溝21の前身頃領域3側の先端部と、尿道口対応領域37の前身頃領域3側の先端部とを一致させ、尿道口対応領域37よりも前身頃領域3側に溝21を形成しないようにする。これにより、本実施形態に係る吸収性パッド1は、尿を溝21の先端部から後身頃領域7側に拡散することで、尿の横漏れを抑制できる。
【0031】
また、本実施形態において、吸収体14(上層吸収体15及び下層吸収体17)は、上記の通りパルプを含んでいる。排尿直後において、溝21から吸収体14に尿が移動するため、排尿直後の横漏れ抑制には吸収体14も機能している。このため、本実施形態では
、排尿直後の尿の保持はパルプが担っているとして、パルプによる性能(溝21から尿を
吸い取る能力や吸い取った尿を保持する能力等)に基づいてパルプの坪量で規定した。例
えば、尿道口当接領域37の周辺部の吸収体14においては、排尿終了後の5秒間で尿をパルプに吸収する必要があるため、吸収体14(上層吸収体15及び下層吸収体17を含
む)において、尿道口対応領域37の周辺部におけるパルプの坪量は400g/m以上
560g/m以下とした。ここで、周辺部は、尿道口対応領域の前後左右に30mmの範囲である。この範囲は、装着者が排尿したときに1秒以内程度で尿が拡散する範囲である。また、尿道口対応領域37の周辺部以外では、股下領域5内では吸収体14を薄くすると装着者に吸収性パッド1を当てやすくなり、装着者の臀部に対応する領域の吸収体14を厚くするとクッション性がよくなる等の効果が得られる。例えば、吸収性パッド1が介護用に用いられる場合、被介護者に吸収性パッド1を当てやすくなると、被介護者に吸収性パッド1を装着させるのが容易となる。これは、吸収性パッド1の股下領域5内の装着者の股間に対応する部分の吸収体14を薄くすることで、装着者の股間に当該部分を合わせやすくなるからである。なお、吸収性物品を厚くしすぎると、吸収性物品を展開させ難くなり、立体ギャザーを装着者の体に沿わせるのが難しくなる。さらに、吸収性物品を厚くしすぎると、薄い場合よりも装着者の股間で受ける抵抗が大きくなるので、装着させるときに手間がかかってしまう。これらを考慮して、本実施形態では、尿道口対応領域37周辺部以外の領域の吸収体14(上層吸収体15及び下層吸収体17を含む)において、パルプの坪量は350g/m以上530g/m以下とした。
【0032】
また、尿道口対応領域37よりも後身頃領域7側における溝21は、幅が10mm以上35mm以下であり、深さが5mm以上9mm以下である。なお、尿道口対応領域37よりも後身頃領域7側における溝21は、尿道口対応領域37における溝21よりも、幅が狭くてもよいし、深さが浅くてもよい。
【0033】
本実施形態に係る吸収性パッド1は、尿を溝21内に流して尿道口対応領域37よりも後身頃領域7側に拡散する。これにより、本実施形態に係る吸収性パッド1は、尿道口対応領域37よりも後身頃領域7側の吸収体14で吸収し、尿道口対応領域37よりも前身頃領域3側に尿が流れてしまうのを防ぐことで、尿が腹部側から漏出するのを抑制できる。
【0034】
また、吸収性パッド1は、上層吸収体15と下層吸収体17との間に配置されたSAP層23L、23Rを有している。SAP層23L、23Rは、高吸収性重合体(SAP)の粒子が複数集まって形成されている。SAP層23L、23Rは、SAPの粒子を複数含み、上層吸収体15と下層吸収体17との間に導かれた液体を吸収して保持することができる。図1に示すように、溝21の左方にはSAP層23Lが配置され、溝21の右方にはSAP層23Rが配置されている。このように、SAP層23L、23Rは、溝21の長手方向に沿うように溝21の両側に配置されている。また、上面視において、SAP層23L、23Rは、長方形状に形成されている。なお、SAP層23L、23Rは、上面視において、長方形状ではなく、その他の多角形状や楕円形状に形成されていてもよい。
【0035】
SAP層23L、23RにおけるSAPの坪量は、100g/m以上200g/m以下である。また、SAP層23L、23Rにおける尿の各保持量は、130g以上350g以下である。これにより、本実施形態に係る吸収性パッド1は、SAP層23L、23R及び吸収体14の全体で約600mlの尿を保持することができる。
【0036】
SAP層23Lは、溝21の左側端部よりw1mm外側から上層吸収体15の左側端部よりw2mm内側までに配置されている。同様に、SAP層23Rは、溝21の右側端部よりw1mm外側から上層吸収体15の右側端部よりw2mm内側までに配置されている
。このように、SAP層23L、23Rは、溝21の両端部よりw1mm外側から上層吸収体15の幅方向の端部よりw2mm内側までに配置されている。w1mmは、例えば、10mmであり、w2mmは、例えば、10mmである。SAP層23L、23Rは、溝21の幅方向の外側に配置される。本実施形態に係る吸収性パッド1は、溝21の幅方向の外側に配置されたSAP層23L、23Rを備えることよって、溝21と隣接しない領域(間隔をw1mm設ける)で尿を保持することができ、吸収体14に装着者からの荷重等の圧力が掛かって溝内に尿が逆戻りするのを防ぎ、以て、尿が漏出するのを抑制できる。また、この効果をより得るために、吸収性パッド1において、SAP層23L、23Rは、溝21に近い領域ほどSAP量が多くてもよい。
【0037】
また、上記の通り、SAP層23L、23Rを溝21の両端部よりw1(10mm)外側に配置する。言い換えると、溝21の隣接する領域には、高吸収性重合体の粒子を複数含むSAP層が形成されていない。SAPの粒子が溝内にこぼれてしまうと、このSAPの粒子が尿を吸収して膨らんで溝を塞いでしまう虞がある。本実施形態に係る吸収性パッド1は、SAPの粒子が溝21内にこぼれるのを防ぐために、幅w1を10mm以上としている。
【0038】
また、SAP層23L、23Rは、溝21よりも長く、SAP層23L、23Rの長手方向における長さ内に溝21の長手方向における長さが含まれている。また、吸収性パッド1が大人用の尿取りパッドである場合、SAP層23L、23Rの各幅は43mm~45mmであり、SAP層23L、23Rの各長さは470mm~555mmである。
【0039】
このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、上層吸収体15、下層吸収体17、溝21、SAP層23L、23Rを備えている。上層吸収体15、下層吸収体17、溝21及びSAP層23L、23Rの長手方向は一致している。また、溝21とSAP層23L、23Rとは、互いに略平行に配置されている。
【0040】
また、吸収性パッド1は、肌対向面側から見て下層吸収体17の左右端部に沿って立体ギャザー(不図示)が配置されている。立体ギャザーは、トップシート11に接合されており、液体の横漏れを抑制する。
【0041】
図2は、図1に示す吸収性パッド1をA-A線で切断した断面図である。なお、図2において、吸収性パッド1の各構成要素を分かりやすくするために、各構成要素間に隙間を設けて図示しているが、実際には各構成要素間には隙間は略形成されない。
【0042】
図2に示すように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、吸収体14の全体を包むコアラップシート30(図1において不図示)を備えている。コアラップシート30は、上層吸収体15側に配置された上層シート31と、下層吸収体17側に配置された下層シート33と、を有している。上層シート31は、トップシート11と上層吸収体15との間に配置されており、下層シート33は、バックシート13と下層吸収体17との間に配置されている。また、下層シート33は、上層吸収体15及び下層吸収体17の側面部を被覆する部分を有し、トップシート11と上層吸収体15との間まで引き回されており、トップシート11と上層吸収体15との間において上層シート31に接合されている。このように、上層シート31と下層シート33は互いに接合されて一体的となっており、上層吸収体15及び下層吸収体17の全体を包んでいる。上層シート31、下層シート33には、例えば、ティッシュペーパーのような薄葉紙や不織布等が用いられる。なお、上層シート31と下層シート33は、一体的に形成されていてもよいし、上層吸収体15や下層吸収体17の側面や、バックシート13と下層吸収体17との間で接合されていてもよい。本実施形態に係る吸収性パッド1は、吸収体14の全体をコアラップシート30で包むことにより、尿等の液体を吸収体14の表面全体に拡散して吸収体14全体で吸収すること
ができる。
【0043】
SAP層23L、23Rは、下層吸収体17上にSAPの粒子を散布することにより形成される。また、SAP層23L、23Rは、上層吸収体15と下層吸収体17との間に挟持されている。このため、装着者の動作により吸収性パッド1が動いた場合であってもSAP層23L、23Rに含まれるSAPの粒子が溝21の下方に移動したり、下層吸収体17外に落ちたりするのを防ぐことができる。
【0044】
また、SAP層23L、23Rを上層吸収体15と下層吸収体17との間に配置することによって、毛細管現象により下層吸収体17のパルプが一旦吸収した尿をSAP層23L、23Rに移動させることができる。これにより、吸収性パッド1は、より尿の保持力が高いSAP層23L、23Rで尿を保持することで、尿の漏出を抑制できる。
【0045】
このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、肌対向面側から厚さ方向に見て、トップシート11、上層シート31、下層シート33の一部、上層吸収体15、SAP層23L、23R、下層吸収体17、下層シート33の一部、バックシート13の順に積層された構造を有している。また、トップシート11及びバックシート13の各周縁部が互いに接合されることにより、上層シート31、下層シート33、上層吸収体15、SAP層23L、23R及び下層吸収体17がトップシート11及びバックシート13により周囲が囲まれて封止されている。
【0046】
また、溝21の下方には下層吸収体17が配置されている。このため、吸収体14は、尿道口対応領域37よりも後身頃領域7側における溝21と重なる領域においてパルプを含む層として下層吸収体17を有する。このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、上層吸収体15にのみ溝21を形成する構造を備えることで、尿を下層吸収体17に素早く到達させて下層吸収体17に吸収させ、尿の漏出を抑制できる。
【0047】
また、吸収体14は、尿道口対応領域37における溝21と重なる領域においてパルプを含む層として下層吸収体17を有する。言い換えると、尿道口対応領域37以外では下層吸収体17にも溝を形成してもよい。吸収性パッド1は、尿道口対応領域37よりも後身頃領域7側に上層吸収体15及び下層吸収体17を厚さ方向に貫通する溝を備えることで、尿を後身頃領域に迅速に移動させて、尿が腹部側から漏出するのを抑制できる。
【0048】
ところで、上記特許文献1に記載された吸収性パッドにおいては、上層吸収体及び下層吸収体を厚さ方向に貫通する貫通型の溝が形成されている。しかしながら、当該吸収性パッドにおいては、尿道口に対応する部位や、尿道口に対応する部位から腹部側及び背部側における当該溝の容積が規定されていない。このため、当該吸収性パッドでは、尿等の液体が当該溝を通って腹部側の吸収体における吸収量を超える量の液体が腹部側に流れてしまい、腹部側から液体が漏出してしまう虞がある。一方、本実施形態に係る吸収性パッド1は、尿道口対応領域37よりも前身頃領域3側には溝21を形成しないことで尿道口対応領域37よりも前身頃領域3側に尿が流れてしまうのを防ぎつつ、尿道口対応領域37よりも後身頃領域7側に溝21を延在させることで尿道口対応領域37よりも後身頃領域7側に尿を流して吸収体14やSAP層23L、23Rで尿を保持することで、尿が漏出するのを抑制できる。
【0049】
また、一般的に吸収性パッドは、介護が必要な装着者(被介護者)に広く用いられている。装着者の褥瘡対策として、装着者を横向き態勢である側臥位に固定する場合がある。装着者が側臥位の姿勢で吸収性パッドに排尿した場合、尿等の液体が吸収体に形成された溝を通って腹部側の吸収体における吸収量を超える量の液体が腹部側に流れてしまい、腹部側から液体が漏出してしまうという問題が生じている。特に、吸収性パッドの腹部側は
、装着者の体とベッドとに挟まれておらず、装着者の体とベッドに挟まれている吸収性パッドの背部側と比較して、体と吸収性パッドとの間に隙間が生じやすく、結果として、尿が漏出しやすい。このため、介護用の吸収性パッドにおいては、側臥位状態での液体の漏出を抑制することが求められている。
【0050】
本実施形態では、ダミー人形を用いた側臥位吸収量試験により、吸収性パッドにおける液体の漏出抑制を評価した。側臥位吸収量試験における準備物は、ダミー人形、送液ポンプ、チューブ、チューブジョイント、200ml用ポリカップ、電子天秤、ストップウォッチ、人工尿、定規、分度器、重り、位置ずれ防止用のゴムシート、吸収性パッド、吸収性パッド固定用のアウターパンツ、高さ調整用の治具である。人工尿は、蒸留水1000mLに対して、尿素20g、塩化ナトリウム8g、硫酸マグネシウム7水和物0.8g、塩化カルシウム2水和物0.3gを溶解させて調製した。なお、本実施形態では、女性のダミー人形を用いて側臥位吸収量試験を行った。
【0051】
また、側臥位吸収量試験で用いるダミー人形の寸法は、お腹まわりを760mm、お尻まわりを850mm、足のつけ根まわりを460mm、股のつけ根まわりを390mm、太ももまわりを350mm、おへそから股を通って背中までの長さを650mmとした。
【0052】
まず、送液ポンプにチューブを取りつけ、チューブジョイントを介してダミー人形と当該チューブを接続する。送液ポンプの回転数を調整して、人工尿が10ml/秒で排出されるように設定する。この際、正確な試験結果を得るために、チューブやチューブジョイント内に液体が残留していないことを確認しておく。また、準備段階において、吸収性パッドの重さを電子天秤で計測しておく。
【0053】
次いで、吸収性パッドにおける尿道口当接位置に油性ペン等で印を記入する。尿道口当接位置の詳細は上述の通りである。
【0054】
次いで、ダミー人形の尿道口と吸収性パッドの尿道口当接位置とを位置合わせをして、ダミー人形に吸収性パッドを装着し、吸収性パッドの上からアウターパンツをダミー人形に履かせて吸収性パッドをダミー人形に固定する。
【0055】
次いで、ダミー人形を平面に設置した後、ダミー人形を平面から30度傾けた状態で固定する。この際、例えば、ダミー人形を壁等に立て掛けて30度傾けた状態に調整する。
【0056】
次いで、高さ調整用の治具を用いて、ダミー人形において最も横幅の広い箇所(臀部に相当)の高さを上記平面から232mmに合わせ、ダミー人形の上部の高さを上記平面から210mmに合わせる。なお、これらの高さは準備した定規で計測されて調整される。
【0057】
次いで、位置ずれ防止用のゴムシートと当該ゴムシート上に重りを設置して、ダミー人形の側部(脇腹に相当)に重りの側面を当接させて、試験中にダミー人形の位置や角度ずれがない様にダミー人形を固定する。この際、分度器で、ダミー人形と上記平面との角度が30度に調整されているかを確認する。これで、側臥位吸収量試験の準備は完了である。
【0058】
次いで、人工尿150mlをポリカップ内に準備し、送液ポンプを用いて10m/秒の速度でダミー人形の尿道口から吸収性パッドに注入する。なお。一般的に介護が必要な成人の1回の排尿量は150mlであって、排尿速度は、10ml/秒である。本実施形態では、この排尿量及び排尿速度を再現して側臥位吸収量試験を行う。本試験では、1回での人工尿の注入量は150mlであり、人工尿を複数回に分けて注入する。1回の注入にかかる時間は、15秒であり、ストップウォッチで計測する。吸収性パッドから人工尿が
漏出した時点で試験終了とし、試験終了後の吸収性パッドの重さから準備段階での吸収性パッドの重さを減算して、人工尿の吸収量(g)が測定される。
【0059】
図3は、側臥位吸収量試験の結果を示す表である。図3に示すように、吸収体幅狭領域中央部から溝の前身頃領域側の先端部までの長さを160mmから225mmまで5mm毎に設定した吸収性パッドを14枚作成し、試験を行った。図3の表は、右から「吸収体幅狭領域中央部から溝の先端部までの長さ(mm)」、「吸収量(g)」、「漏れ抑制」の項目を表している。なお、「吸収量」の項目は、吸収性パッドが吸収した人工尿の吸収量を示し、「漏れ抑制」の項目において、漏れが抑制できた場合には「〇」の記号が表記され、漏れが抑制できなかった場合(漏れが生じた場合)には「×」の記号が表記されている。
【0060】
図3に示すように、吸収体幅狭領域中央部から溝の先端部までの長さが165mm以上215mm以下である吸収性パッドは漏れが抑制でき、吸収体幅狭領域中央部から溝の先端部までの長さが160mm以下220mm以上である吸収性パッドは漏れが抑制できなかった。この結果から、吸収性パッドにおいて、吸収体幅狭領域中央部から溝の先端部までの長さが160mmより長く、220mmより短いとよく、より好ましくは、吸収体幅狭領域中央部から溝の先端部までの長さが165mm以上215mm以下である。
【0061】
本実施形態に係る吸収性パッド1は、尿道口に対応する部位から背部側の方が、尿道口に対応する部位から腹部側よりも容積が大きい溝21を備えている。また、吸収体幅狭領域中央部から溝の先端部までの長さが165mm以上215mm以下である。本実施形態に係る吸収性パッド1によれば、装着者が側臥位の姿勢で排尿しても尿漏れを抑制できる。
【0062】
また、一般的に、吸収性パッドは、装着者が座位の姿勢の状態でも用いられている。このため、吸収性パッドにおいては、座位状態での液体の漏出を抑制することが求められている。本実施形態では、ダミー人形を用いた座位吸収量試験により、吸収性パッドにおける液体の漏出抑制を評価した。座位吸収量試験における準備物は、座位姿勢の座位ダミー人形、送液ポンプ、チューブ、チューブジョイント、200ml用ポリカップ、電子天秤、ストップウォッチ、人工尿、マットレス(厚さ:5cm、硬さ:95N)、防水シーツ、吸収性パッド、吸収性パッド固定用のアウターパンツである。人工尿は、側臥位吸収量試験で用いたものと同様のものを準備した。なお、本実施形態では、女性の座位ダミー人形を用いて座位吸収量試験を行った。
【0063】
また、座位吸収量試験で用いるダミー人形の寸法は、お腹まわりを820mm、お尻まわりを940mm、足のつけ根まわりを540mm、股のつけ根まわりを495mm、太ももまわりを485mm、おへそから股を通って背中までの長さを665mmとした。
【0064】
まず、送液ポンプにチューブをセットし、チューブジョイントを介してダミー人形と当該チューブを接続する。送液ポンプの回転数を調整して、人工尿が10ml/秒で排出されるように設定する。この際、正確な試験結果を得るために、チューブやチューブジョイント内に液体が残留していないことを確認しておく。また、準備段階において、吸収性パッドの重さを電子天秤で計測しておく。
【0065】
次いで、吸収性パッドにおける尿道口当接位置に油性ペン等で印を記入する。尿道口当接位置の詳細は上述の通りである。
【0066】
次いで、座位ダミー人形の尿道口と吸収性パッドの尿道口当接位置とを位置合わせをして、座位ダミー人形に吸収性パッドを装着し、吸収性パッドの上からアウターパンツを座
位ダミー人形に履かせて吸収性パッドを座位ダミー人形に固定する。
【0067】
次いで、平面上にマットレスを敷き、当該マットレスの上に防水シーツを敷いてその上に座位ダミー人形を座位の姿勢で設置する。これで、座位吸収量試験の準備は完了である。
【0068】
次いで、人工尿150mlをポリカップ内に準備し、送液ポンプを用いて10m/秒の速度でダミー人形の尿道口から吸収性パッドに注入する。本試験では、1回での人工尿の注入量は150mlであり、人工尿を複数回に分けて注入する。1回の注入にかかる時間は、15秒であり、ストップウォッチで計測する。吸収性パッドから人工尿が漏出した時点で試験終了とし、試験終了後の吸収性パッドの重さから準備段階での吸収性パッドの重さを減算して、人工尿の吸収量(g)が測定される。
【0069】
図4は、座位吸収量試験の結果を示す表である。図4に示すように、吸収体幅狭領域中央部から溝の前身頃領域側の先端部までの長さを160mmから225mmまで5mm毎に設定した吸収性パッドを14枚作成し、試験を行った。図4の表は、右から「吸収体幅狭領域中央部から溝の先端部までの長さ(mm)」、「吸収量(g)」、「漏れ抑制」の項目を表している。なお、「吸収量」の項目は、吸収性パッドが吸収した人工尿の吸収量を示し、「漏れ抑制」の項目において、漏れが抑制できた場合には「〇」の記号が表記され、漏れが抑制できなかった場合(漏れが生じた場合)には「×」の記号が表記されている。
【0070】
図3に示すように、吸収体幅狭領域中央部から溝の先端部までの長さが165mm以上215mm以下である吸収性パッドは漏れが抑制でき、吸収体幅狭領域中央部から溝の先端部までの長さが160mm以下220mm以上である吸収性パッドは漏れが抑制できなかった。この結果から、吸収性パッドにおいて、吸収体幅狭領域中央部から溝の先端部までの長さが160mmより長く、220mmより短いと漏れを抑制でき、より好ましくは、吸収体幅狭領域中央部から溝の先端部までの長さが165mm以上215mm以下である。
【0071】
本実施形態に係る吸収性パッド1は、尿道口に対応する部位から背部側の方が、尿道口に対応する部位から腹部側よりも容積が大きい溝21を備えている。また、吸収体幅狭領域中央部から溝の先端部までの長さが165mm以上215mm以下である。本実施形態に係る吸収性パッド1によれば、装着者が座位の姿勢で排尿しても尿漏れを抑制できる。
【0072】
次に、尿道口対応領域よりも前側(前身頃領域側)に溝が延在している比較例に係る吸収性パッドと、尿道口対応領域よりも前側(前身頃領域側)に溝が延在していない本実施形態に係る吸収性パッド1を作製し、上記と同じ方法で側臥位吸収量試験及び座位吸収量試験を行った。図5は、側臥位吸収量試験の結果を示し、図6は、在位吸収量試験の結果を示している。図5及び図6の表は、右から「尿道口対応領域よりも前側に溝が延在しているか否か」、「吸収量(g)」、「漏れ抑制」の項目を表している。なお、「吸収量」の項目は、吸収性パッドが吸収した人工尿の吸収量を示し、「漏れ抑制」の項目において、漏れが抑制できた場合には「〇」の記号が表記され、漏れが抑制できなかった場合(漏れが生じた場合)には「×」の記号が表記されている。
【0073】
図5図6に示すように、尿道口対応領域よりも前側に溝が延在している比較例に係る吸収性パッドは、漏れを抑制できず、尿道口対応領域よりも前側に溝が延在していない本実施形態に係る吸収性パッドは、漏れを抑制できた。
【0074】
このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、尿道口対応領域37よりも前側に溝
21が延在していないことで、尿を溝21内に流して尿道口対応領域37よりも後身頃領域7側に拡散し、尿が腹部側から漏出するのを抑制できる。
【0075】
なお、上記実施形態及び実施例では、吸収性パッド1が例示されていたが、その他の形態の吸収性物品においても上記構成を適用可能である。上記構成を適用可能な吸収性物品としては、例えば、パンツ型の使い捨ておむつ、テープ型の使い捨ておむつ、尿パッド、軽失禁パッドといったギャザー付きの各種形態の吸収性物品や、ギャザーの無いフラットな吸収性物品を挙げることができる。
【符号の説明】
【0076】
1・・吸収性パッド:3・・前身頃領域:5・・股下領域:7・・後身頃領域:11・・トップシート:13・・バックシート:14・・吸収体:15・・上層吸収体:17・・下層吸収体:21・・溝:23L・・SAP層:23R・・SAP層:30・・コアラップシート:31・・上層シート:33・・下層シート:37・・尿道口対応領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6