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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】車両の制動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/00 20060101AFI20230725BHJP
   B60T 8/26 20060101ALI20230725BHJP
   B60W 40/11 20120101ALI20230725BHJP
【FI】
B60T8/00 Z
B60T8/26 Z
B60W40/11
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020009719
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021115930
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 勇作
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-193075(JP,A)
【文献】特開2017-109696(JP,A)
【文献】特開2017-109664(JP,A)
【文献】特開2017-177736(JP,A)
【文献】特開2005-28934(JP,A)
【文献】特開平3-213454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/18 - 8/30
B60W 10/00
10/02
10/04 - 10/06
10/08
10/10
10/101 - 10/18
10/184 - 10/26
10/28
10/30
30/00 - 60/00
B60T 7/12 - 8/1769
8/32 - 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪に付与する制動力及び後輪に付与する制動力を調整する制動装置を備えるとともに、前記前輪及び前記後輪のうち、車両進行方向における前側に位置する第1車輪に制動力を付与すると、車体における前記車両進行方向の前部を上方に変位させる力であるアンチダイブ力が発生し、前記車両進行方向における後ろ側に位置する第2車輪に制動力を付与すると、前記車体における前記車両進行方向の後部を下方に変位させる力であるアンチリフト力が発生する車両に適用され、
前記車体と前記第2車輪との間に介装されるサスペンションに当該車体から入力される荷重を入力荷重とし、前記車両に制動力が付与されていないときの前記入力荷重を基準入力荷重とした場合、前記車両への制動力の付与による前記入力荷重の前記基準入力荷重からの減少量である荷重減少量を、前記車両に付与する制動力である車両制動力の減少量が多いほど多くなるように導出する荷重減少量導出部と、
前記アンチリフト力を、前記第2車輪に付与する制動力である第2制動力が大きいほど大きくなるように導出するアンチ力導出部と、
制動力の付与によって前記車両が減速している状況下で前記車両制動力が減少しているときに、前記荷重減少量と前記アンチリフト力との差が差判定値以下で収まるように前記第2制動力を調整し、且つ、前記車両制動力が当該車両制動力の要求値となるように前記第1車輪に付与する制動力である第1制動力を調整する姿勢制動処理を実施する制動制御部と、を備える
車両の制動制御装置。
【請求項2】
前記制動制御部は、制動力の付与によって前記車両が減速している状況下で前記車両制動力が減少している場合、
前記差が前記差判定値よりも大きいときには、前記第2制動力の減少を制限し、且つ、前記車両制動力が前記要求値となるように前記第1制動力を調整する準備処理を実施し、
前記差が前記差判定値以下であるときには、前記姿勢制動処理を実施する
請求項1に記載の車両の制動制御装置。
【請求項3】
前記差判定値として「0」が設定されている
請求項1又は請求項2に記載の車両の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
停車時における車両の前後加速度の変化量が大きいと、停車時における車両のピッチ角の変化速度が高くなり、車両の乗員に不快感を与えてしまうおそれがある。そこで、特許文献1に記載の制動制御装置では、制動力の付与によって停車させる場合、停車前に車両の制動力を減少させるようにしている。これにより、停車時における前後加速度の変化量を小さくすることができる分、停車時における姿勢の変化速度が低くなり、乗員が不快を感じにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-193075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、上記のように停車前に制動力が減少されるような場合において、停車時における車両の姿勢の変化速度をより低くすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための車両の制動制御装置は、前輪に付与する制動力及び後輪に付与する制動力を調整する制動装置を備えるとともに、前記前輪及び前記後輪のうち、車両進行方向における前側に位置する第1車輪に制動力を付与すると、車体における前記車両進行方向の前部を上方に変位させる力であるアンチダイブ力が発生し、前記車両進行方向における後ろ側に位置する第2車輪に制動力を付与すると、前記車体における前記車両進行方向の後部を下方に変位させる力であるアンチリフト力が発生する車両に適用される。この制動制御装置は、前記車体と前記第2車輪との間に介装されるサスペンションに当該車体から入力される荷重を入力荷重とし、前記車両に制動力が付与されていないときの前記入力荷重を基準入力荷重とした場合、前記車両への制動力の付与による前記入力荷重の前記基準入力荷重からの減少量である荷重減少量を、前記車両に付与する制動力である車両制動力の減少量が多いほど多くなるように導出する荷重減少量導出部と、前記アンチリフト力を、前記第2車輪に付与する制動力である第2制動力が大きいほど大きくなるように導出するアンチ力導出部と、制動力の付与によって前記車両が減速している状況下で前記車両制動力が減少しているときに、前記荷重減少量と前記アンチリフト力との差が差判定値以下で収まるように前記第2制動力を調整し、且つ、前記車両制動力が当該車両制動力の要求値となるように前記第1車輪に付与する制動力である第1制動力を調整する姿勢制動処理を実施する制動制御部と、を備える。
【0006】
車両制動時では、第2車輪と車体との間に介装されるサスペンションのストローク量は、上記荷重減少量とアンチリフト力との差に応じた量となる。ここでいう「ストローク量」とは、停車時や定速走行時のように車両が加速も減速もしていない状態でのサスペンションのストローク位置を基準とするストロークの変化量である。
【0007】
ここで、制動力の変化に伴ってサスペンションのストローク量が変化すると、ストローク量の変化に起因して車体の上下動が発生する。また、第1車輪と車体との間に介在するサスペンションのストローク量の変化量と、第2車輪と車体との間に介在するサスペンションのストローク量の変化量との差によって、車体のピッチ角の変化が発生する。
【0008】
そのため、サスペンションのストローク量が多い状態で停車した場合、サスペンションの復元力が大きいため、停車時における車体の姿勢の変化速度が高くなりやすい。言い換えると、停車時におけるサスペンションのストローク量を小さくすることにより、停車時における車体の姿勢の変化速度を小さくできる。
【0009】
上記構成によれば、制動力の付与によって車両が減速している状況下で車両制動力が減少しているときには、姿勢制動処理が実施される。姿勢制動処理が実施されると、上記荷重減少量とアンチリフト力との差が差判定値以下で収まるように第2制動力が調整される。これにより、当該差が差判定値よりも大きい状態で停車する場合と比較し、停車時における、第2車輪と車体との間に介装されるサスペンションのストローク量を小さくできる。その結果、停車時における車体の姿勢の変化が抑制される。したがって、上記構成によれば、停車時における車体の姿勢の変化速度を低くすることができる。
【0010】
なお、姿勢制動処理では、車両制動力がその要求値となるように第1車輪に付与する第1制動力が調整される。そのため、姿勢制動処理の実施に起因し、車両の前後加速度が、その目標値からずれてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の車両の制動制御装置の機能構成と、同制動制御装置を備える車両の概略構成とを示す図。
図2】前方に走行する車両に制動力が付与された様子を模式的に示す作用図。
図3】前輪側抑制力と後輪側抑制力とを説明するための模式図。
図4】車両の重心高を導出する際に実行される処理ルーチンを説明するフローチャート。
図5】前輪制動力及び後輪制動力を調整する際に実行される処理ルーチンを説明するフローチャート。
図6】(a)~(h)は、車両制動時におけるタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、車両の制動制御装置の一実施形態を図1図6に従って説明する。
図1には、本実施形態の制動制御装置50を備える車両の概略構成が図示されている。図1に示すように、車両の前輪11及び後輪12には、制動機構13の作動によって制動力がそれぞれ付与される。各制動機構13は、ホイールシリンダ131内の液圧であるWC圧が高いほど、車輪11,12と一体回転する回転体132に摩擦材133を押し付ける力が大きくなるように構成されている。そのため、各制動機構13は、WC圧が高いほど大きな制動力を車輪11,12に付与することができる。以降の記載にあっては、前輪11に付与する制動力のことを「前輪制動力BPf」といい、後輪12に付与する制動力のことを「後輪制動力BPr」ということもある。
【0013】
なお、制動機構13としては、例えばディスクブレーキを挙げることができる。この場合、ディスクロータが「回転体132」に該当し、パッドが「摩擦材133」に該当する。また、制動機構13は、ドラムブレーキであってもよい。この場合、ドラムが「回転体132」に該当し、シューが「摩擦材133」に該当する。
【0014】
車両の制動装置20は、液圧発生装置21と、液圧発生装置21からブレーキ液が供給される制動アクチュエータ22とを備えている。液圧発生装置21内では、車両の運転者による制動操作部材23の操作量である制動操作量に応じた液圧が発生する。制動操作部材23としては、例えば、ブレーキペダルを挙げることができる。制動アクチュエータ22は、各ホイールシリンダ131に接続されている。そのため、制動操作部材23が操作されると、その操作量に応じた量のブレーキ液が各ホイールシリンダ131に供給される。すなわち、各車輪11,12に制動力が付与される。また、制動アクチュエータ22の作動は、制動制御装置50によって制御することができる。制動制御装置50によって制動アクチュエータ22を制御することにより、前輪制動力BPf及び後輪制動力BPrを個別に制御することができる。
【0015】
図1及び図2に示すように、車両10の車体14と前輪11との間には、前輪11用のサスペンション15fが介装されている。車体14と後輪12との間には、後輪12用のサスペンション15rが介装されている。各サスペンション15f,15rは、スプリング151を有している。
【0016】
次に、図2を参照し、車両制動時における車両10のピッチング運動について説明する。図2では、前輪11側のばね上荷重SWf及び後輪12側のばね上荷重SWrが白抜きの矢印で表されている。ばね上荷重とは、車両重量及びピッチングモーメントPMによって車体14からサスペンションに入力される垂直方向の荷重のことである。ここでいう垂直方向とは、車両10の走行する路面100と直交する方向である。
【0017】
図2に示すように前方に走行する車両10への制動力BPTLの付与によって車両10が減速すると、図2に実線の矢印で示すようなピッチングモーメントPMが車両10に発生し、ノーズダイブ側に車体14がピッチング運動する。ノーズダイブとは、車体14の車両進行方向の前部を下方に変位させるとともに車体14の車両進行方向の後部を上方に変位させる車両の挙動のことである。一方、車体14の車両進行方向の前部を上方に変位させるとともに車体14の車両進行方向の後部を下方に変位させる車両10の挙動のことを、「ノーズリフト」という。車両10が前方に走行する場合にノーズダイブ側に車体14がピッチング運動すると、車体14の前部が下方に変位するため、車両10のピッチ角APが大きくなる。一方、車両10が後方に走行する場合にノーズダイブ側に車体14がピッチング運動すると、車体14の前部が上方に変位するため、車両10のピッチ角APが小さくなる。
【0018】
図2には、車両10が前方に走行する様子が図示されている。このように車両10が前方に走行する場合、前輪11及び後輪12のうち、前輪11が、車両進行方向における前側に位置する車輪である第1車輪に該当し、後輪12が、車両進行方向における後ろ側に位置する車輪である第2車輪に該当する。また、前輪制動力BPfが「第1制動力」に該当し、後輪制動力BPrが「第2制動力」に該当する。
【0019】
車両10が前方に走行するに際して制動力BPTLの付与によって減速度が発生すると、第1車輪側のばね上荷重SW1である前輪11側のばね上荷重SWfが大きくなるため、前輪11用のサスペンション15fのスプリング151が収縮し、車体14がノーズダイブ側にピッチング運動する。その結果、図2に実線の矢印で示すように、スプリング151の復元力である前輪スプリング復元力FSfが車体14に付与される。また、車両10が前方に走行するに際して制動力BPTLの付与によって減速度が発生すると、第2車輪側のばね上荷重SW2である後輪12側のばね上荷重SWrが小さくなるため、後輪12用のサスペンション15fのスプリング151が伸長し、車体14がノーズダイブ側にピッチング運動する。その結果、図2に実線の矢印で示すように、スプリング151の復元力である後輪スプリング復元力FSrが車体14に付与される。
【0020】
また、車両10には、図2に黒塗りの矢印で示すように、アンチダイブ力FADとアンチリフト力FALとが発生し得る。アンチダイブ力FADは、前輪11及び後輪12のうちの第1車輪に制動力を付与することによって発生する力であって、車体14の車両進行方向の前部を上方に変位させる力である。アンチリフト力FALは、前輪11及び後輪12のうちの第2車輪に制動力を付与することによって発生する力であって、車体14の車両進行方向の後部を下方に変位させる力である。図2に示すように車両10が前方に走行する場合、前輪11に制動力が付与されると、アンチダイブ力FADが発生し、後輪12に制動力が付与されると、アンチリフト力FALが発生する。なお、アンチダイブ力FADは、第1車輪に付与する制動力が大きいほど大きくなり、アンチリフト力FALは、第2車輪に付与する制動力が大きいほど大きくなる。
【0021】
アンチリフト力FAL及びアンチダイブ力FADのうち、前輪11への制動力の付与によって発生する力を「前輪側抑制力FAf」とし、後輪12への制動力の付与によって発生する力を「後輪側抑制力FAr」とする。この場合、前輪側抑制力FAf及び後輪側抑制力FArは、以下の関係式(式1)及び(式2)を用いて導出できる。車両10が前方に走行する場合、前輪側抑制力FAfがアンチダイブ力FADに該当し、後輪側抑制力FArがアンチリフト力FALに該当する。
【0022】
【数1】
関係式(式1)及び(式2)における角度θf,θrは、図3に示す角度である。制動力BPfが前輪11に作用する点を制動作用点Pf1とし、前輪11用のサスペンション15fの回転中心を中心点Pf2とした場合、制動作用点Pf1と中心点Pf2とを繋ぐ直線Lfと路面100とのなす角度が、角度θfに該当する。制動力BPrが後輪12に作用する点を制動作用点Pr1とし、後輪12用のサスペンション15rの回転中心を中心点Pr2とした場合、制動作用点Pr1と中心点Pr2とを繋ぐ直線Lrと路面100とのなす角度が、角度θrに該当する。なお、角度θf,θrは、車両10の諸元から決まる角度である。
【0023】
また、車両10への制動力BPTLの付与によって車両10が減速している場合、前輪11及び後輪12のうち、第1車輪側のばね上荷重SW1が増大する一方、第2車輪側のばね上荷重SW2が減少する。車両10が前方に走行する場合、前輪11側のばね上荷重SWfがばね上荷重SW1に該当し、後輪12側のばね上荷重SWrがばね上荷重SW2に該当する。ばね上荷重SW1が増大すると、第1車輪用のサスペンションのスプリングを収縮させる力であるダイブ力FDが大きくなる。また、ばね上荷重SW2が減少すると、第2車輪用のサスペンションのスプリングを伸長させる力であるリフト力FLが大きくなる。そして、ダイブ力FD及びリフト力FLは、以下の関係式(式3)及び(式4)を用いて導出できる。関係式(式3)及び(式4)において、「L」は車両10のホイールベース長であり、「H」は車両10の重心高である。また、「BPTL」は、車両10に付与する制動力のことであり、各車輪11,12に付与する制動力の総和である。関係式(式3)及び(式4)によれば、車両制動力BPTLが大きいほど、ダイブ力FD及びリフト力FLが大きくなる。
【0024】
【数2】
車両10に制動力BPTLが付与されている場合、第1車輪用のサスペンションのスプリングの収縮量、すなわちストローク量は、ダイブ力FDとアンチダイブ力FADとの差が大きいほど多くなる。また、第2車輪用のサスペンションのスプリングの伸長量、すなわちストローク量は、リフト力FLとアンチリフト力FALとの差が大きいほど多くなる。
【0025】
次に、図1を参照し、車両の制御構成について説明する。
制動制御装置50には、各種のセンサからの検出信号が入力される。センサとしては、ストロークセンサ101、車輪速度センサ102及び加速度センサ103を挙げることができる。ストロークセンサ101は、制動操作部材23の操作量である制動操作量Xを検出し、検出結果に応じた信号を検出信号として出力する。車輪速度センサ102は、車輪11,12の速度である車輪速度VWを検出し、検出結果に応じた信号を検出信号として出力する。制動制御装置50では、各車輪11,12のうちの少なくとも1つの車輪の車輪速度VWを基に、車両10の速度である車体速度VSが導出される。加速度センサ103は、車両10の前後方向の加速度である前後加速度Gxを検出し、検出結果に応じた信号を検出信号として出力する。
【0026】
制動制御装置50は、以下(a)~(c)の何れかの構成であればよい。
(a)制動制御装置50は、コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備えている。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含んでいる。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含んでいる。
(b)制動制御装置50は、各種処理を実行する一つ以上の専用のハードウェア回路を備えている。専用のハードウェア回路としては、例えば、特定用途向け集積回路、すなわちASIC又はFPGAを挙げることができる。ASICとは「Application Specific Integrated Circuit」の略記であり、FPGAとは「Field Programmable Gate Array」の略記である。
(c)制動制御装置50は、各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうち残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備えている。
【0027】
制動制御装置50は、機能部として、制動制御部51、重心高導出部52、荷重減少量導出部53及びアンチ力導出部54を有している。
制動制御部51は、制動装置20の制動アクチュエータ22を作動させることによって、前輪制動力BPf及び後輪制動力BPrを制御する。制動アクチュエータ22を作動させる際の具体的な処理内容については後述する。
【0028】
重心高導出部52は、車両10の重心高Hを導出する。重心高Hを導出する際の具体的な処理内容については後述する。
荷重減少量導出部53は、第2車輪側のばね上荷重SW2の減少量ΔSWを導出する。ここでいう減少量ΔSWとは、車両10に制動力BPTLが付与されていないときのばね上荷重SW2を基準入力荷重として、車両10への制動力BPTLの付与によるばね上荷重SW2の基準入力荷重からの減少量である。車両10が前方に走行する場合、荷重減少量導出部53は、後輪12用のばね上荷重SWrを、車体14から第2車輪に入力される「入力荷重」とし、ばね上荷重SWrの減少量ΔSWを導出する。ばね上荷重SWrは、後輪12用のサスペンション15rのスプリングを収縮させる力である。そして、ばね上荷重SWrが減少した場合、その減少量ΔSWが多いほどサスペンション15rのスプリングの伸長量が多くなる。つまり、ばね上荷重SWrの減少量ΔSWは、サスペンション15rのスプリングを伸長させる力、すなわちリフト力FLであるといえる。そのため、本実施形態では、荷重減少量導出部53は、上記リフト力FLを減少量ΔSWとして導出する。リフト力FLは、上記関係式(式4)を用いることによって導出できる。車両10が前方に走行する場合、荷重減少量導出部53は、後輪12側のばね上荷重SWrの減少量ΔSWとしてリフト力FLを導出する。車両10が後方に走行する場合、荷重減少量導出部53は、前輪11側のばね上荷重SWfの減少量ΔSWとしてリフト力FLを導出する。
【0029】
アンチ力導出部54は、アンチダイブ力FADを導出する。すなわち、アンチ力導出部54は、車両10が前方に走行する場合、上記関係式(式2)を用い、後輪側抑制力FArをアンチダイブ力FADとして導出する。一方、アンチ力導出部54は、車両10が後方に走行する場合、上記関係式(式1)を用い、前輪側抑制力FAfをアンチダイブ力FADとして導出する。
【0030】
次に、図4を参照し、重心高導出部52が実行する処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、所定の制御サイクル毎に繰り返し実行される。
本処理ルーチンにおいて、ステップS11では、軸重AXLが推定できているか否かの判定が行われる。軸重AXLは、車両10のサスペンション15f,15rに加わる重量であって、ばね上の質量のことをいう。そのため、車両10の積載量を取得できれば、軸重AXLを推定することができる。例えば、車両10の搭乗人数と平均体重との積を基に、軸重AXLを推定することができる。車両10に着座センサが搭載されている場合、重心高導出部52は、着座センサの検出信号を基に搭乗人数を把握することができる。また、車内カメラが車両10に搭載されている場合、重心高導出部52は、車内カメラによって撮像された画像を解析することにより、搭乗人数を取得することができる。
【0031】
軸重AXLが推定できているとの判定がなされない場合(S11:NO)、処理が次のステップS12に移行される。ステップS12において、基準重心高HBが重心高Hとして導出される。基準重心高HBとは、車両10の諸元によって定まるものであり、基準となる車両状態の重心高Hである。基準となる車両状態は、例えば、車両の前席に2名が乗車しており、燃料が満載であり、荷物の積載がない場合の車両状態である。そして、本処理ルーチンが一旦終了される。
【0032】
一方、軸重AXLが推定できているとの判定がなされている場合(S11:YES)、処理が次のステップS13に移行される。ステップS13において、軸重AXLの推定結果を基に、重心高Hが導出される。例えば、軸重AXLが重いほど大きい値が重心高Hとして導出される。重心高Hが導出されると、本処理ルーチンが一旦終了される。
【0033】
次に、図5を参照し、制動制御部51が実行する処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、車両制動時に所定の制御サイクル毎に繰り返し実行される。
本処理ルーチンにおいて、ステップS21では、制御フラグFLGにオフがセットされているか否かの判定が行われる。制御フラグFLGは、後述する準備処理又は姿勢制動処理が実施されているときにはオンがセットされる一方、準備処理及び姿勢制動処理が何れも実施されていないときにはオフがセットされるフラグである。制御フラグFLGにオフがセットされている場合(S21:YES)、処理が次のステップS22に移行される。ステップS22において、車両制動力BPTLが減少しているか否かの判定が行われる。運転者による制動操作によって車両10に制動力BPTLが付与されている場合、制動操作量Xが減少しているときは、車両制動力BPTLが減少していると判定される。一方、制動操作量Xが増大していたり、制動操作量Xが保持されていたりするときには、制動操作量Xが減少していないため、車両制動力BPTLが減少していると判定されない。また、自動制動が行われている場合、自動運転用の制御装置から制動制御装置50に入力される車両制動力BPTLの要求値が減少しているときは、車両制動力BPTLが減少していると判定される。一方、要求値が増大していたり、要求値が保持されていたりするときには、車両制動力BPTLが減少していると判定されない。
【0034】
車両制動力BPTLが減少しているとの判定がなされていない場合(S22:NO)、本処理ルーチンが一旦終了される。一方、車両制動力BPTLが減少しているとの判定がなされている場合(S22:YES)、処理が次のステップS23に移行される。ステップS23において、制御フラグFLGにオンがセットされる。そして、処理がステップS26に移行される。
【0035】
その一方で、ステップS21において、制御フラグFLGにオンがセットされている場合(NO)、処理が次のステップS24に移行される。ステップS24において、準備処理や姿勢制動処理の終了条件が成立しているか否かの判定が行われる。制動制御部51は、車両10への制動力BPTLの付与によって停車すること、及び、車両10への制動力BPTLの付与が解除されることの少なくとも一方が成立したときに、終了条件が成立したと判定する。そして、終了条件が成立したとの判定がなされる場合(S24:YES)、処理が次のステップS25に移行される。ステップS25において、制御フラグFLGにオフがセットされる。その後、本処理ルーチンが一旦終了される。一方、ステップS24において、終了条件が成立しているとの判定がなされていない場合(NO)、処理が次のステップS26に移行される。
【0036】
ステップS26において、第2車輪側のばね上荷重SW2の減少量ΔSWであるリフト力FLからアンチリフト力FALを引いた値である力差ΔFが差判定値ΔFThよりも大きいか否かの判定が行われる。リフト力FLとアンチリフト力FALとが等しいと見なせる値が差判定値ΔFThとして設定されている。本実施形態では、差判定値ΔFThとして「0」が設定されている。車両10が前方に走行している場合、後輪側抑制力FArがアンチリフト力FALに該当する。力差ΔFが差判定値ΔFThよりも大きいとの判定がなされている場合(S26:YES)、処理が次のステップS27に移行される。
【0037】
ステップS27において、準備処理が実施される。準備処理では、第2制動力の減少を制限し、且つ、車両制動力BPTLが車両制動力BPTLの要求値となるように第1制動力を調整するように、制動アクチュエータ22が作動される。本実施形態で実施される準備処理では、第2制動力が保持される。そして、このように第2制動力を保持しても、車両制動力BPTLがその要求値と等しい状態が維持されるように、第1制動力が減少される。そのため、第1制動力の減少速度は、準備処理が実施されない場合と比較して大きくなる。なお、車両10が前方に走行する場合、後輪12が第2車輪に相当し、前輪11が第1車輪に相当する。そのため、準備処理の実施によって、後輪制動力BPrが保持されつつ、前輪制動力BPfが、準備処理の非実施時よりも大きな減少速度で減少される。そして、本処理ルーチンが一旦終了される。
【0038】
その一方で、ステップS26において、力差ΔFが差判定値ΔFThよりも大きいとの判定がなされていない場合(NO)、処理が次のステップS28に移行される。ステップS28において、姿勢制動処理が実施される。姿勢制動処理では、力差ΔFが差判定値ΔFTh以下で収まるように第2制動力を調整し、且つ、車両制動力BPTLが車両制動力BPTLの要求値となるように第1制動力を調整するべく、制動アクチュエータ22が作動される。姿勢制動処理では、準備処理とは異なり、第2制動力も減少される。そのため、実施する処理が準備処理から姿勢制動処理に移行すると、第1制動力の減少速度が小さくなる。なお、車両10が前方に走行する場合、後輪12が第2車輪に相当し、前輪11が第1車輪に相当する。また、本実施形態では、差判定値ΔFThとして「0」が設定されている。そのため、姿勢制動処理の実施によって、後輪12用のばね上荷重SWrの減少量ΔSWが後輪側抑制力FArと等しい状態が維持されるように後輪制動力BPrが減少される。そして、本処理ルーチンが一旦終了される。
【0039】
次に、図6を参照し、本実施形態の作用及び効果について説明する。図6には、前方に走行する車両10に制動力BPTLが付与されて停車する場合が図示されている。
図6(a)~(h)に示すように車両10に制動力BPTLが付与されている場合、車両10が減速するため、車体14のピッチング運動によってピッチ角APが大きくなる。なお、第1車輪である前輪11側のばね上荷重SWfは、車両10が減速していない場合よりも大きくなる。一方、第2車輪である後輪12側のばね上荷重SWrは、車両10が減速していない場合よりも小さくなる。
【0040】
車両10が減速しているときに車体速度VSが小さくなると、図6に示す例では、タイミングt11から車両制動力BPTLの減少が開始される。すると、車両制動力BPTLの減少に従って車両10の前後加速度DVSの絶対値が小さくなる。前後加速度DVSは、車体速度VSを時間微分した値である。このように前後加速度DVSが大きくなると、第2車輪である後輪12側のばね上荷重SWrが増大する。すなわち、車両制動力BPTLが小さくなるにつれ、ばね上荷重SWrの減少量ΔSWが減少される。
【0041】
タイミングt11では、ばね上荷重SWrの減少量ΔSWであるリフト力FLとアンチリフト力FALとの力差ΔFが、差判定値ΔFThよりも大きい。そのため、準備処理が実施される。準備処理では、後輪制動力BPrが保持される。また、車両制動力BPTLがその要求値と等しい状態が維持されるように前輪制動力BPfが減少される。その結果、車両制動力BPTLのうち、前輪制動力BPfが占める比率である前輪制動力配分比率αは、徐々に小さくなる。すると、力差ΔFが徐々に小さくなる。
【0042】
そして、タイミングt12で力差ΔFが差判定値ΔFThに達すると、準備処理が終了されて姿勢制動処理が開始される。姿勢制動処理では、力差ΔFが差判定値ΔFTh以下に収まるように、すなわちリフト力FLがアンチリフト力FALと等しい状態が維持されるように、後輪制動力BPrが減少される。また、車両制動力BPTLがその要求値と等しい状態が維持されるように前輪制動力BPfが減少される。その結果、前輪制動力配分比率αの減少速度は、準備処理の実施中よりも小さくなる。
【0043】
そして、タイミングt13では、力差ΔFが差判定値ΔFTh以下である状態で車両10が停止する。すると、前輪制動力BPf及び後輪制動力BPrの減少が停止される。また、前輪制動力配分比率αが保持される。
【0044】
ここで、車両制動力BPTLが減少されても、前輪制動力配分比率αを変えない比較例1について考える。図6(c)では、本実施形態におけるストローク量Zの推移を実線で示し、比較例1におけるストローク量Zの推移を破線で示す。図6(d)では、本実施形態におけるアンチリフト力FALの推移を実線で示し、比較例1におけるアンチリフト力FALの推移を破線で示す。図6(e)では、本実施形態における前輪制動力配分比率αの推移を実線で示し、比較例1における前輪制動力配分比率αの推移を破線で示す。図6(f)~(h)では、本実施形態における制動力BPTL,BPf、BPrの推移を実線で示し、比較例1における制動力BPTL,BPf、BPrの推移を破線で示す。
【0045】
比較例1では、力差ΔFを加味することなく、後輪制動力BPrが減少されるため、停車するタイミングt13では、力差ΔFが差判定値ΔFThよりも大きい。そのため、停車すると、後輪12用のサスペンション15rのスプリング151が縮む。この際のストローク量Zの変化速度が大きいため、ストローク量Zが「0」に収束するまでスプリング151が伸縮を繰り返す。
【0046】
これに対し、本実施形態では、停車するタイミングt13では、力差ΔFが差判定値ΔFTh以下である。そのため、停車すると、ストローク量Zが「0」に向けて緩やかに変化する。その結果、スプリング151の伸縮の繰り返しの発生が抑制される。その結果、停車時における車体14の姿勢の変化速度を小さくすることができ、ひいては車両10の乗員の快適性を向上できる。
【0047】
また、比較例1のように前輪制動力配分比率αを変えないで車両制動力BPTLを減少させる場合では、停車直前での前後加速度DVSをより小さくする手法の一例として、停車直前での車両制動力BPTLをより小さくすることを挙げることができる。この場合、停車に伴うピッチ角APの変化速度を小さくできるものの、車両10の制動距離が伸びてしまうおそれがある。
【0048】
この点、本実施形態では、停車直前の車両制動力BPTLをさらに小さくしなくても、停車時における車体14の姿勢の変化速度を小さくすることができる。すなわち、制動距離が延びることを抑制できる分、乗員の快適性の低下を抑制できる。
【0049】
なお、本実施形態で実施される準備処理及び姿勢制動処理では、車両制動力BPTLがその要求値となるように前輪制動力BPfが調整される。そのため、準備処理及び姿勢制動処理の実施に起因し、車両10の前後加速度DVSがその目標値からずれてしまうことを抑制できる。
【0050】
また、車両制動力BPTLが減少されるに際し、停車するまでの間、後輪制動力BPrを保持しつつ前輪制動力BPfを減少させる比較例2と、停車するまでの間、前輪制動力BPfを保持しつつ後輪制動力BPrを減少させる比較例3とについて考える。
【0051】
比較例2では、車両10の前後加速度Gxの減少によって後輪12側のばね上荷重SWrが増大しても、後輪制動力BPrが減少されないためにアンチリフト力FALが保持される。そのため、アンチリフト力FALがリフト力FLよりも大きい状態で車両10が停止する。また、後輪制動力BPrが減少されない分、前輪制動力BPfを大幅に減少させることになるため、アンチダイブ力FADが大幅に減少された状態で車両10が停止する。これにより、アンチダイブ力FADがダイブ力FDよりも小さい状態で車両10が停止する。その結果、停車時における車両10のピッチ角APの減少速度が大きくなる。そして、ピッチ角APの減少速度が大きいため、ピッチ角APが増減を繰り返した後、ピッチ角APの変動が停止されることになる。
【0052】
比較例3では、車両10の前後加速度Gxの減少によって前輪11側のばね上荷重SWfが減少しても、前輪制動力BPfが減少されないためにアンチダイブ力FADが保持される。そのため、アンチダイブ力FADがダイブ力FDよりも大きい状態で車両10が停止する。また、前輪制動力BPfが減少されない分、後輪制動力BPrを大幅に減少させることになるため、アンチリフト力FALが大幅に減少された状態で車両10が停止する。これにより、アンチリフト力FALがリフト力FLよりも小さい状態で車両10が停止する。その結果、停車時に、車体14が上方に変位することになる。停車時において、リフト力FLとアンチリフト力FALとの差である力差ΔF、及び、アンチダイブ力FADとダイブ力FDとの差が何れも大きいと、車体14の上下動を繰り返した後、車体14の上下動が停止されることになる。
【0053】
これらに対し、本実施形態では、力差ΔFを差判定値ΔFTh以下にした状態で車両10を停止させることができる。そのため、本実施形態によれば、比較例2及び比較例3の場合と比較し、停車時における車両10の姿勢の変化を抑制でき、ひいては車両10の乗員の快適性を向上できる。
【0054】
なお、車両10が後方に走行する場合に車両制動力BPTLが減少された場合、前輪側抑制力FAfがアンチリフト力FALとして導出され、第2車輪である前輪11側のばね上荷重SWfの減少量ΔSWが、リフト力FLとして導出される。そして、リフト力FLとアンチリフト力FALとの差である力差ΔFが差判定値ΔFThよりも大きい間では、準備処理の実施によって、前輪制動力BPfが保持され、且つ、後輪制動力BPrが減少される。そして、力差ΔFが差判定値ΔFTh以下になると、準備処理が終了されて姿勢制動処理が開始される。すると、前輪制動力BPf及び後輪制動力BPrがそれぞれ減少される。そして、車両10が停止されたり、車両制動が解除されたりすると、姿勢制動処理が終了される。
【0055】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・リフト力FLとアンチリフト力FALとの差がほとんどないと判断できるような値であれば、「0」よりも大きい値を差判定値ΔFThとして設定してもよい。
【0056】
・準備処理では、リフト力FLとアンチリフト力FALとの差である力差ΔFを小さくできるように第2制動力の減少を制限できるのであれば、第2制動力を保持しなくてもよい。すなわち、準備処理中でも第2制動力を減少させてもよい。ただし、準備処理中での第2制動力の減少速度は、図6(h)に破線で示した比較例1における第2制動力の減少速度よりも小さい。
【0057】
また、準備処理では、第1制動力が「0」にならない範囲で第2制動力を増大させることにより、力差ΔFを減少させるようにしてもよい。これにより、力差ΔFが差判定値ΔFTh以下になる状態を、上記実施形態の場合よりも早期に実現できる。すなわち、準備処理から姿勢制動処理への移行を早期に行うことができる。
【0058】
・車両制動力BPTLの減少に伴って、第1制動力及び第2制動力の双方が減少される過程で力差ΔFが差判定値ΔFTh以下になる場合にあっては、準備処理を実施しなくてもよい。この場合、車両制動力BPTLの減少に伴って、第1制動力及び第2制動力の双方が減少される過程で力差ΔFが差判定値ΔFTh以下になったときに、姿勢制動処理を開始するとよい。
【0059】
・重心高Hの導出に際し、リフト力FLとアンチリフト力FALとの差と、ダイブ力FDとアンチダイブ力FADとの差とを利用してもよい。
・重心高Hは、基準重心高HBで固定してもよい。
【0060】
・上記実施形態では、制動機構13を作動させる摩擦制動力を前輪11及び後輪12に付与する場合について説明している。しかし、前輪11及び後輪12に回生制動力を付与する場合においても上記制動制御装置50を適用できる。
【0061】
・車輪11,12に摩擦制動力を付与できるのであれば、制動機構13は、上記実施形態で説明した構成とは異なる機能であってもよい。例えば、制動機構13は、ホイールシリンダ131を備えないで、電気モータの駆動量に応じた力で摩擦材133を回転体132に押し付ける機構のものであってもよい。こうした制動機構13としては、例えば、「特開2017-100507号公報」を挙げることができる。
【符号の説明】
【0062】
10…車両
11…前輪
12…後輪
14…車体
15f,15r…サスペンション
20…制動装置
50…制動制御装置
51…制動制御部
53…荷重減少量導出部
54…アンチ力導出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6