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  • 特許-粘着剤組成物、粘着シート及び積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着シート及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/14 20060101AFI20230725BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230725BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20230725BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230725BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20230725BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J11/08
C09J4/02
C09J11/06
C09J7/30
B32B27/00 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023022094
(22)【出願日】2023-02-16
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2022023577
(32)【優先日】2022-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】上野 裕美
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 康代
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0040123(US,A1)
【文献】特開2020-029548(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0316294(US,A1)
【文献】特開2013-104006(JP,A)
【文献】特開2020-55925(JP,A)
【文献】国際公開第2019/123892(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/101783(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリル重合体と、ポリカルボジイミドとを含む粘着剤組成物から形成される粘着シートであって、
前記(メタ)アクリル重合体は水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位を有し、
前記(メタ)アクリル重合体における、前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、前記(メタ)アクリル重合体の全質量に対して20質量%以上であり、
前記(メタ)アクリル重合体における、カルボン酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は0.1質量%以下であり、
前記粘着シート中においてポリカルボジイミドは架橋構造を形成せずに存在する、粘着シート
【請求項2】
前記ポリカルボジイミドの重量平均分子量は1000以上である、請求項1に記載の粘着シート
【請求項3】
前記粘着剤組成物がガラス転移温度が20℃以上の樹脂をさらに含む、請求項1に記載の粘着シート
【請求項4】
前記粘着剤組成物が多官能モノマーをさらに含む、請求項1に記載の粘着シート
【請求項5】
前記粘着剤組成物が架橋剤をさらに含む、請求項1に記載の粘着シート
【請求項6】
前記粘着剤組成物が光重合開始剤をさらに含む、請求項1に記載の粘着シート
【請求項7】
被着体貼合用であり、
前記被着体は、カルボニル基を有する樹脂を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記被着体はポリカーボネート及びポリメタクリル酸メチルから選択される少なくとも1種を含む、請求項に記載の粘着シート。
【請求項9】
請求項項1~6のいずれか1項に記載の粘着シートと、被着体とを含み、
前記被着体はポリカーボネート及びポリメタクリル酸メチルから選択される少なくとも1種を含む、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着シート及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられている。これらの表示装置や入力装置においては、光学部材を貼り合せる用途に透明な粘着シートが使用されており、表示装置と入力装置の貼合にも透明な粘着シートが使用されている。
【0003】
粘着シートの耐久性を高めるためには、粘着シートに含まれる粘着剤の凝集力を高めることが有効である。このため、粘着剤に各種架橋剤を添加することでアクリルポリマーを架橋し、粘着剤の凝集力を高めることが検討されている。例えば、特許文献1には、アクリル系樹脂(A)及びカルボジイミド化合物(B)を含有してなる粘着剤組成物が開示されている。ここでは、アクリル系樹脂(A)は、全重合成分中にカルボキシ基含有モノマーを0重量%を超え0.2重量%未満含有しており、アクリル系樹脂(A)中のカルボキシ基量(Xmmol)とカルボジイミド化合物(B)中のカルボジイミド基量(Ymmol)がY/X≧1の関係性を満たしている。特許文献1では、アクリル系樹脂(A)が有するカルボキシ基とカルボジイミド化合物(B)間の架橋により粘着シートの耐久性を高めることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-143211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学部材に貼合される粘着シートには、高い透明性と密着性が求められる。近年は、粘着シートを貼合した光学部材が高温や高湿環境といった過酷環境下で使用される場合もあり、このような条件下においても高い透明性と密着性を発揮することが求められている。しかしながら、特許文献1で得られる粘着シートは湿熱環境下で白化する場合があり、また、被着体との密着性にも改善の余地があった。
【0006】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、湿熱環境下においても被着体に対して優れた密着性を示し、かつ白化が抑制された粘着シートを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0008】
[1] ガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリル重合体と、ポリカルボジイミドとを含み、
(メタ)アクリル重合体は水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位を有し、
(メタ)アクリル重合体における、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体の全質量に対して20質量%以上であり、
(メタ)アクリル重合体における、カルボン酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は0.1質量%以下である、粘着剤組成物。
[2] ポリカルボジイミドの重量平均分子量は1000以上である、[1]に記載の粘着剤組成物。
[3] ガラス転移温度が20℃以上の樹脂をさらに含む、[1]又は[2]に記載の粘着剤組成物。
[4] 多官能モノマーをさらに含む、[1]~[3]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[5] 架橋剤をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[6] 光重合開始剤をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の粘着剤組成物から形成される粘着シート。
[8] 被着体貼合用であり、
被着体は、カルボニル基を有する樹脂を含む、[7]に記載の粘着シート。
[9] 被着体はポリカーボネート及びポリメタクリル酸メチルから選択される少なくとも1種を含む、[8]に記載の粘着シート。
[10] [7]~[9]のいずれかに記載の粘着シートと、被着体とを含み、
被着体はポリカーボネート及びポリメタクリル酸メチルから選択される少なくとも1種を含む、積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、湿熱環境下においても被着体に対して優れた密着性を示し、かつ白化が抑制された粘着シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、剥離シートを有する粘着シートの断面を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
なお、本明細書において、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表す。また、本明細書において、“単量体”と“モノマー”は同義であり、“重合体”と“ポリマー”は同義である。
【0013】
(粘着剤組成物)
本発明は、ガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリル重合体と、ポリカルボジイミドとを含む粘着剤組成物に関する。ここで、(メタ)アクリル重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位を有し、(メタ)アクリル重合体における、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体の全質量に対して20質量%以上である。また、(メタ)アクリル重合体における、カルボン酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は0.1質量%以下である。
【0014】
上記構成により、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着シートは、湿熱環境下においても被着体に対して優れた密着性を有する。また、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着シートは、湿熱環境下においても優れた耐白化性を発揮する。このように、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着シートは高透明であり、光透過性に優れるため、特に光学用途貼合用に好ましく用いられる。また、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着シートは被着体に対して優れた密着性を発揮するものでもある。このような特性は湿熱環境下に長時間置かれた場合であっても発揮される。
【0015】
本明細書において、粘着シートの密着性を評価する際には、湿熱定荷重試験を行い、分銅が落下するまでの時間が所定値以上であれば密着性に優れていると判定する。具体的には、粘着シートの一方の面にポリエステルフィルムを、他方の面に被着体を貼合した積層体を温度85℃、相対湿度85%の恒温恒湿機内に30分間静置した後、100gの分銅をポリステルフィルム端部に引っ掛け、粘着剤層が被着体面から剥離し、分銅が落下するまでの時間を測定する。例えば、分銅が落下するまでの時間は15分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましい。
【0016】
本明細書において、粘着シートの耐白化性を評価する際には、まず、粘着シートをガラス板と被着体に貼合した後、オートクレーブにて温度30℃、圧力0.5MPaの環境下で30分間処理し、大気圧、室温環境下にて1日静置する。次いで、積層体を、温度85℃、相対湿度85%に調整された恒温恒湿機内部に設置する。その後、7日経過後に村上色彩技術研究所のHM-150にて積層体のヘイズ値を測定する。例えば、ヘイズ値は3未満であることが好ましく、1.5未満であることがより好ましい。
【0017】
<(メタ)アクリル重合体>
粘着剤組成物は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位を有し、かつガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリル重合体を含有する。(メタ)アクリル重合体における、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリルポリマーの全質量に対して20質量%以上であり、(メタ)アクリル重合体における、カルボン酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は0.1質量%以下である。
【0018】
水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種は好ましく用いられる。
【0019】
(メタ)アクリル重合体における、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体の全質量に対して20質量%以上であればよく、25質量%以上であることが好ましい。また、(メタ)アクリル重合体における、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体の全質量に対して、50質量%以下であることが好ましい。水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量を上記範囲内とすることにより、高温及び高湿環境下における粘着シートの耐白化性と密着性をより効果的に高めることができる。
【0020】
(メタ)アクリル重合体における、カルボン酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は0.1質量%以下であり、0.01質量%以下であることが好ましい。このことは、(メタ)アクリル重合体が実質的にカルボン酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位を有さないことを意味する。すなわち、本発明の粘着剤組成物中に含まれる(メタ)アクリル重合体は、カルボン酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位を有しておらず、得られる粘着剤組成物は酸フリーの粘着剤組成物である。
【0021】
(メタ)アクリル重合体のガラス転移温度は0℃以下であればよく、-10℃以下であることが好ましく、-20℃以下であることがより好ましく、-30℃以下であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル重合体のガラス転移温度の下限値は特に限定されるものではないが、例えば、-80℃以上であることが好ましい。
なお、(メタ)アクリル重合体のガラス転移温度は以下のFOX式により算出することができる。
1/Tgp=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
Tgpはアクリル重合体のガラス転移温度であり、Wnは各モノマーの重量分率であり、Tgnは各モノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度である。
【0022】
(メタ)アクリル重合体の重量平均分子量は、10000より大きいことが好ましく、10万以上であることがより好ましく、20万以上であることがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル重合体の重量平均分子量は、200万以下であることが好ましく、150万以下であることがより好ましく、100万以下であることがさらに好ましい。なお、(メタ)アクリル重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、分子量が既知である標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を用いて換算して求めた値である。(メタ)アクリル重合体としては、市販のものを用いてもよく、公知の方法により合成したものを用いてもよい。
【0023】
(メタ)アクリル重合体は、環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位をさらに有していてもよい。環構造を有する(メタ)アクリルモノマーは、脂環もしくは芳香族環を有する(メタ)アクリルモノマーであることが好ましい。脂環としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。なお、脂環はスピロ構造を有するものであってもよい。芳香族環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピリジン、フラン、ベンゾフラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、オキサゾールが挙げられる。中でも、環構造は、脂環であることが好ましく、シクロヘキサン、ジシクロペンタン、イソボルニル及びベンゼンから選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。なお、上述した環構造はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルキル基、アルケニル基、アシル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、脂環基、シアノ基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基等から選択される置換可能な置換基を挙げることができる。
【0024】
環構造を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、O-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。(メタ)アクリル重合体における、環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体の全質量に対して1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル重合体における、環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、30質量%以下であることが好ましい。環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの耐白化性と密着性をより効果的に高めることができる。
【0025】
(メタ)アクリル重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の他に、アルキル(メタ)アクリレート単位を含有していてもよい。アルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体の全質量に対して、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。また、アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体の全質量に対して、95質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることが好ましい。アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの耐白化性と密着性をより効果的に高めることができる。
【0026】
(メタ)アクリル重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の他に、架橋性官能基を有する(メタ)アクリルモノマー単位を有していてもよい。架橋性官能基を有する(メタ)アクリルモノマーが有する架橋性官能基としては、アミド基、アミノ基、チオール基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基を挙げることができる。(メタ)アクリル重合体における架橋性官能基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル重合体における架橋性官能基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量を上記範囲にすることにより、粘着シートと被着体の密着性をより効果的に高めることができる。
【0027】
(メタ)アクリル重合体は、必要に応じて、他の単量体単位を有してもよい。他の単量体は、上述したモノマー成分と共重合可能なものであればよく、例えば(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、エチルビニルエーテル等が挙げられる。(メタ)アクリル重合体における他の単量体単位の含有量は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
粘着剤組成物には、(メタ)アクリル重合体を含むアクリルシロップAが含まれていてもよい。ここで、アクリルシロップAには、少なくとも(メタ)アクリル重合体と、(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーが含まれる。このため、粘着剤組成物には、(メタ)アクリル重合体に加えて、(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーが含まれていてもよい。なお、アクリルシロップAが(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーを含有する場合、これらのモノマーは粘着シートを製造する工程において重合し、(メタ)アクリル重合体を形成する。
【0029】
<ポリカルボジイミド>
粘着剤組成物は、ポリカルボジイミドを含有する。ポリカルボジイミドは、1分子中にカルボジイミド基(-N=C=N-)を2つ以上有する化合物である。ポリカルボジイミド1分子中に含まれるカルボジイミド基の数は、2個以上であることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。
【0030】
本発明において、(メタ)アクリル重合体は実質的にカルボン酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位を含まないため、ポリカルボジイミドは架橋剤として機能するものではない。すなわち、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着シート中においてポリカルボジイミドは架橋構造を形成せずに存在する。これにより、粘着シートはより優れた密着性を発揮することができる。
【0031】
ポリカルボジイミドの重量平均分子量は1000以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましく、2000以上であることがさらに好ましい。また、カルボジイミド当量は100以上であることが好ましく、200以上であることがさらに好ましい。カルボジイミド当量は2000以下であることが好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。カルボジイミド当量とはカルボジイミド基1molあたりの化学式量をいう。
【0032】
ポリカルボジイミドとしては、例えば、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ビフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(1,3-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1-メチル-3,5-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、p-フェニレン-ビス(2,6-キシリルカルボジイミド)等が挙げられる。ポリカルボジイミドとしては、上記を単独使用してもよく、または2種類以上併用してもよい。
【0033】
ポリカルボジイミドは、例えば、モノイソシアネート、ジイソシアネートなどのイソシアネート化合物を、カルボジイミド化触媒(ホスホレン類など)の存在下でカルボジイミド化反応させることにより得ることができる。
【0034】
また、ポリカルボジイミドは、市販品として入手することもできる。市販品としては、例えば、カルボジライトV-02(日清紡ケミカル製)、カルボジライトV-02B(日清紡ケミカル製)、カルボジライトV-02-L2(日清紡ケミカル製)、カルボジライトV-03(日清紡ケミカル製)、カルボジライトV-04(日清紡ケミカル製)、カルボジライトV-05(日清紡ケミカル製)、スタバックゾールP(ランクセス社製)、Elastostab H01(BASF製)などが挙げられる。
【0035】
粘着剤組成物中におけるポリカルボジイミドの含有量は、(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。また、粘着剤組成物中におけるポリカルボジイミドの含有量は、(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。なお、粘着剤組成物から構成された粘着シートにおいては、(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーは、(メタ)アクリル重合体を構成しているため、ポリカルボジイミドの含有量は、(メタ)アクリル重合体100質量部に対して上記範囲であることが好ましい。ポリカルボジイミドの含有量を上記範囲内とすることにより、粘着剤組成物から形成された粘着シートはより優れた密着性を発揮することができる。
【0036】
<粘着付与樹脂>
粘着剤組成物は、ガラス転移温度が20℃以上の樹脂(上記ポリカルボジイミドを除く)をさらに含んでもよい。本発明において、ガラス転移温度が20℃以上の樹脂は、粘着付与樹脂(粘着付与剤)として機能する。粘着剤組成物が、(メタ)アクリル重合体に加えて、粘着付与樹脂を含有することにより、粘着剤組成物中の各成分の相溶性が高まり、粘着剤組成物から形成される粘着シートはより優れた耐白化性と密着性を発揮する。
【0037】
ガラス転移温度が20℃以上の樹脂(粘着付与樹脂)のガラス転移温度は、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。また、粘着付与樹脂のガラス転移温度は、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。粘着付与樹脂のガラス転移温度を上記範囲内とすることにより、被着体に対する粘着シートの密着性を高めることができる。
【0038】
粘着付与樹脂の重量平均分子量は、3000以上であることが好ましく、3200以上であることがより好ましく、3500以上であることがさらに好ましい。また、粘着付与樹脂の重量平均分子量は、10000以下であればよく、9000以下であることがより好ましく、8000以下であることがさらに好ましい。粘着付与樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、分子量が既知である標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を用いて換算して求めた値である。このような樹脂としては、市販のものを用いてもよく、公知の方法により合成したものを用いてもよい。
【0039】
粘着付与樹脂は、官能基を実質的に有さないものであることが好ましい。この場合、粘着付与樹脂は、上述した(メタ)アクリル重合体と架橋構造を形成しない。
【0040】
粘着付与樹脂は、脂環を有するモノマー単位を含んでいてもよい。粘着付与樹脂が脂環を有するモノマー単位を含む場合、脂環を構成する炭素数は6以上であることが好ましい。炭素数が6以上の脂環としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタン等が挙げられる。
【0041】
脂環を有するモノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができる。
【0042】
粘着付与樹脂が、脂環を有するモノマー単位を含む場合、脂環を有するモノマー単位の含有量は、粘着付与樹脂の全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、脂環を有するモノマー単位の含有量は、粘着付与樹脂の全質量に対して、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることが好ましい。脂環を有するモノマー単位の含有量を上記範囲内とすることにより、(メタ)アクリル重合体と粘着付与樹脂との相溶性を高め、粘着シートと被着体の密着性をより効果的に高めることができる。
【0043】
粘着付与樹脂は、さらにアルキル(メタ)アクリレート単位を含有していてもよい。アルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、粘着付与樹脂は、メチル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量は、粘着付与樹脂の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量は、粘着付与樹脂の全質量に対して、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることが好ましい。アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量を上記範囲内とすることにより、(メタ)アクリル重合体と粘着付与樹脂との相溶性を高め、粘着シートと被着体の密着性をより効果的に高めることができる。
【0044】
粘着付与樹脂は、必要に応じて、他の単量体単位を有してもよい。他の単量体は、上述したモノマー成分と共重合可能なものであればよく、例えば(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、エチルビニルエーテル等が挙げられる。粘着付与樹脂における他の単量体単位の含有量は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
粘着剤組成物中における粘着付与樹脂の含有量は、(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、1.2質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることがさらに好ましい。また、粘着剤組成物中における粘着付与樹脂の含有量は、(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることがさらに好ましい。なお、粘着剤組成物から構成された粘着シートにおいては、(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーは、(メタ)アクリル重合体を構成しているため、粘着付与樹脂の含有量は、(メタ)アクリル重合体100質量部に対して上記範囲であることが好ましい。粘着付与樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、被着体に対する粘着シートの密着性を高めることができ、さらに、粘着シートの耐白化性をより効果的に高めることができる。
【0046】
<多官能モノマー>
粘着剤組成物は、分子内に反応性二重結合を2つ以上有する多官能モノマーをさらに含むものであってもよい。多官能モノマーは反応性二重結合を2つ以上有するものであり、中でも、多官能モノマーは反応性二重結合を2つ以上5つ未満有するものであることが好ましく、2つ以上4つ未満有するものであることがより好ましい。
【0047】
多官能モノマーとしては、例えば、二官能モノマーとして、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレンジアクリレート、アルキルジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカノールジアクリレート、フルオレンジアクリレートを挙げることができる。また、3官能以上のモノマーとして、アルコキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、アルコキシ化グリセリントリアクリレート、カプロラクトン変性イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、アルコキシ化ペンタエリルリトールアクリレート、(アルコキシ化)ペンタエリスリトールアクリレート、(アルコキシ化)ジトリメチロールプロパンアクリレート、(アルコキシ化)ジペンタエリスリトールアクリレート、(エトキシ化)ポリグリセリンアクリレート等を挙げることができる。
【0048】
多官能モノマーとして、市販品を使用できる。市販品の例としては、新中村化学工業社製、二官能モノマーA-200(ポリエチレングリコール#200ジアクリレート)、三官能モノマーA-TMPT((アルコキシ化)トチメチロールプロパンアクリレート)、東亞合成社製二官能モノマーM240(ポリエチレングリコールジアクリレート)、4官能モノマーM-408(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)等が挙げられる。
【0049】
多官能モノマーは、粘着シート中においては、上述した(メタ)アクリル重合体と架橋構造を構成している。なお、粘着剤組成物中における多官能モノマーの含有量は(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましい。また、粘着剤組成物中における多官能モノマーの含有量は(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。多官能モノマーの含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの硬度を高めることができ、粘着シートの耐久性や加工性、密着性を高めることができる。
【0050】
<架橋剤>
粘着剤組成物は、架橋剤をさらに含むものであってもよい。架橋剤は、(メタ)アクリル重合体が有する架橋性官能基との反応性を考慮して適宜選択できる。例えばイソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などの公知の架橋剤の中から選択できる。中でも、架橋剤は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物及び金属キレート化合物から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましい。
【0051】
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ブロックイソシアネート等が挙げられる。市販品の例としては、トリレンジイソシアネート化合物(東ソー(株)製、コロネートL)、キシリレンジイソシアネート化合物(三井化学(株)製、タケネートD-110N)、旭化成(株)製WM44-L70G等が挙げられる。エポキシ化合物としては、例えば、TETRAD-C(三菱ガス化学社製)、TETRAD-X三菱ガス化学社製)等が挙げられる。金属キレート化合物としては、例えば、アルミキレートA(川研ファインケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0052】
架橋剤は、粘着シート中においては、上述した(メタ)アクリル重合体と架橋構造を構成している。なお、粘着剤組成物中における架橋剤の含有量は(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましい。また、粘着剤組成物中における架橋剤の含有量は(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。架橋剤の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの硬度を高めることができ、粘着シートの耐久性や加工性、密着性を高めることができる。
【0053】
<光重合開始剤>
粘着剤組成物は、光重合開始剤をさらに含むものであってもよい。光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により多官能モノマーの重合を開始させるものである。ここで、「活性エネルギー線」とは電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
【0054】
光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-ヘニルプロパノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチル-1-プロパノン等のアセトフェノン系光重合開始剤、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイドや、2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、ベンゾイルギ酸メチルや4メチルベンゾフェノン等の分子内水素引き抜き型光重合開始剤の他、オキシムエステル系光重合開始剤やカチオン系光重合開始剤などの油溶性重合開始剤を挙げることができる。中でも、光重合開始剤は、アセトフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0055】
このようなアセトフェノン系光重合開始剤の市販品としてはEsacureOne(オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニルプロパノン]、IGM RESINS B.V.製光開始剤)、Omnirad651(2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン、IGM RESINS B.V.社製)、Omnirad184(1-ヒドロキシシクロヘキシルーフェニルケトン、IGM RESINS B.V.社製)、Omnirad1173(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、IGM RESINS B.V.社製)等が挙げられる。また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の市販品としてはOmnirad 819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド IGM RESINS B.V.社製)やOmnirad TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルージフェニルフォスフィンオキサイド IGM RESINS B.V.社製)等が挙げられる。
【0056】
粘着剤組成物中の光重合開始剤の含有量は(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましい。また、粘着剤組成物中における光重合開始剤の含有量は(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。光重合開始剤の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの硬度を高めることができ、粘着シートの耐久性や加工性、密着性を高めることができる。
【0057】
<シランカップリング剤>
粘着剤組成物は、シランカップリング剤をさらに含むものであってもよい。粘着剤組成物がシランカップリング剤を含有することで、粘着剤組成物から形成される粘着シートと被着体の密着性をより高めることがでる。
【0058】
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプト基を含有するメルカプト系シランカップリング剤や、エポキシ基を有するエポキシ系シランカップリング剤、ビニル基を有するビニル系シランカップリング剤、イソシアヌレート系シランカップリング剤等が挙げられる。
【0059】
粘着剤組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。また、粘着剤組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。シランカップリング剤の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの密着性をより効果的に高めることができる。
【0060】
<溶剤>
粘着剤組成物には、溶剤が含まれていてもよい。この場合、溶剤は、粘着剤組成物の塗工適性の向上のために用いられる。溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0061】
<他の成分>
粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、粘着剤用の添加剤として公知の成分を挙げることができる。例えば可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等の中から必要に応じて選択できる。また、着色を目的に染料や顔料を添加してもよい。
【0062】
可塑剤としては、例えば無官能基アクリル重合体を用いてもよい。無官能基アクリル重合体としては、アクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位のみからなる重合体や、アクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位と官能基を有しない非アクリル単量体単位とからなる重合体を挙げることができる。無官能基アクリル重合体は架橋しないため、粘着性に影響を与えずに被着体に貼合したときの段差追従性を高めることができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これら酸化防止剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
金属腐食防止剤としては、粘着剤の相溶性や効果の高さから、ベンゾトリアゾール系樹脂を好ましい例として挙げることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。
【0063】
(粘着シート)
本発明は、上述した粘着剤組成物を硬化させてなる粘着シートに関するものでもある。本発明の粘着シートは、上述した粘着剤組成物を熱乾燥させてなるものであってもよく、光硬化させてなるものであってもよい。中でも、粘着シートは、上述した粘着剤組成物を光硬化させてなるものであることが好ましく、本発明の粘着シートを形成する際には、粘着剤組成物に活性エネルギー線を照射して、硬化反応を行うことが好ましい。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
【0064】
本発明の粘着シートは、粘着剤層のみから構成される粘着シートや、両面粘着シートであることが好ましい。両面粘着シートとしては、粘着剤層からなる単層の粘着シート、粘着剤層を複数積層した多層の粘着シート、粘着剤層と粘着剤層の間に他の粘着剤層を積層した多層の粘着シートが挙げられる。なお、本発明の粘着シートは、粘着剤層と粘着剤層の間に支持体を積層した多層の粘着シートであってもよい。両面粘着シートが支持体を有する場合、支持体として透明な支持体を用いたものが好ましい。支持体としては、透明基材と同様に光学分野に用いられる一般的なフィルムを用いることができる。このような両面粘着シートは、粘着シート全体としての透明性にも優れることから、光学部材同士の接着に好適に用いることができる。
【0065】
本発明は、粘着シートの両表面に剥離シートを備える剥離シート付き粘着シートに関するものであってもよい。本発明の粘着シートの両表面に剥離シートが備えられている場合、図1に示されるように剥離シート付き粘着シート10は、粘着剤層11の両表面に剥離シート12a及び12bを有することが好ましい。
【0066】
剥離シートとしては、剥離シート用基材とこの剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シート、あるいは、極性基材としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
剥離性積層シートにおける剥離シート用基材には、紙類、高分子フィルムが使用される。剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。
シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-4527、SD-7220等や、信越化学工業(株)製のKS-3600、KS-774、X62-2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤中にSiO単位と(CHSiO1/2単位あるいはCH=CH(CH)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-843、SD-7292、SHR-1404等や、信越化学工業(株)製のKS-3800、X92-183等が挙げられる。
剥離性積層シートとして、市販品を用いてもよい。例えば、帝人デュポンフィルム(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである重セパレータフィルムA71や、帝人デュポンフィルム(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである軽セパレータフィルムA38STを挙げることができる。
【0067】
剥離シート付き粘着シートは、粘着シートの両表面に剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを有することが好ましい。すなわち、剥離シートは、剥離しやすくするために、剥離シート12aと剥離シート12bとの剥離性を異なるものとすることが好ましい。一方からの剥離性と他方からの剥離性とが異なると、剥離性が高い方の剥離シートだけを先に剥離することが容易となる。その場合、貼合方法や貼合順序に応じて剥離シート12aと剥離シート12bの剥離性を調整すればよい。
【0068】
粘着シートの厚みは、用途に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、5~1000μmであることが好ましく、8~500μmであることがより好ましく、10~300μmであることが特に好ましい。粘着シートの厚みを上記範囲内とすることにより、粘着性能を維持しつつ粘着剤のはみ出しやべたつきを抑制することができるため加工性を高めることができる。さらに、粘着剤層の厚さを上記範囲内とすることにより、両面粘着シートの製造が容易となる。
【0069】
<粘着シートの製造方法>
本発明の粘着シートの製造方法は、剥離シート上に粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成する工程と、該塗膜を加熱する工程、もしくは、該塗膜に活性エネルギー線を照射する工程を含むことが好ましい。なお、粘着剤組成物に溶剤が含まれる場合は加熱乾燥工程を含むことが好ましい。加熱乾燥工程では溶剤を除去することで粘着剤層が形成される。
【0070】
粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0071】
塗膜を加熱する工程では、塗膜を加熱条件下に置き、乾燥を行うことが好ましい。加熱工程における温度は、70℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、85℃以上であることがさらに好ましい。また、加熱工程における温度は、150℃以下であることが好ましい。加熱工程における処理時間は、10秒以上であることが好ましく、1分以上であることがより好ましく、2分以上であることがさらに好ましい。また、加熱工程における処理時間は、1時間以下であることが好ましい。
【0072】
塗膜に活性エネルギー線を照射する工程では、積算光量が100~10000mJ/cmとなるように活性エネルギー線を照射することが好ましく、500~5000mJ/cmとなるように活性エネルギー線を照射することがより好ましい。塗膜に活性エネルギー線を照射する工程では、活性エネルギー線を2段階で照射してもよい。例えば、1段階目に比べて2段階目の照射強度を高めることもできる。このような2段階照射を行うことにより、得られる粘着シートに含まれるポリマーの分子量を調整し、セパレーター等の熱収縮等を抑制することができる。
【0073】
<粘着シートの用途>
本発明の粘着シートは、被着体貼合用であり、被着体は光学部材であることが好ましい。光学部材としては、タッチパネルや画像表示装置等の光学製品における各構成部材を挙げることができる。タッチパネルの構成部材としては、例えば透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルム、ハードコートフィルム、耐指紋性フィルムなどが挙げられる。画像表示装置の構成部材としては、例えば液晶表示装置に用いられる反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。また、本発明の粘着シートは、液晶モジュールとタッチパネルモジュールなどのモジュール同士の貼合に用いられてもよい。
【0074】
これらの光学部材に用いられる材料としては、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリイミド、セルロースアシレートなどが挙げられる。中でも、被着体は、カルボニル基を有する樹脂を含むものであることが好ましく、ポリカーボネート及びPMMAから選択される少なくとも1種を含むものであることが特に好ましい。すなわち、本発明の粘着シートは、ポリカーボネートもしくはPMMA板貼合用の粘着シートであることが好ましい。
また、これらの光学部材と粘着シートの密着性を向上させるため、光学部材表面をコロナ処理もしくはプラズマ処理してもよい。
【0075】
(積層体)
本発明は、上述した粘着シートと、被着体を含む積層体に関するものであってもよい。ここで被着体は、光学部材であることが好まく、被着体は、カルボニル基を有する樹脂を含むものであることが好ましく、ポリカーボネート及びPMMAから選択される少なくとも1種を含むものであることが特に好ましい。本発明の積層体は、上述した粘着シートと、ポリカーボネート板もしくはPMMA板とを含む積層体であることが好ましい。本発明の粘着シートは、特にポリカーボネート板に対して、優れた密着性を発揮することができる。
【実施例
【0076】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0077】
(実施例1)
<アクリル重合体Aの製造方法>
攪拌機、窒素導入管、冷却管、温度計を備えた2Lフラスコにアクリル酸ブチル325g、アクリル酸4ヒドロキシルブチル150g、アクリル酸ジシクロペンタニル25g、酢酸エチル750gを仕込み、窒素流量300ml/minで60分間窒素置換した後、窒素流量を100ml/minまで下げ、ウォーターバスにて70℃まで昇温し加熱した。AIBN 0.1gを投入し、発熱を制御しながら1時間反応させ、その後AIBNを0.5g追加投入し、6時間反応させた後、50℃まで冷却した。以上のようにして、固形分濃度40質量%、重量平均分子量が50万程度のアクリル重合体Aを得た。
【0078】
<粘着シートの製造>
アクリル重合体A100gにポリカルボジイミド(日清紡ケミカル製、カルボジライトV-02B)0.5g、架橋剤(東ソー製、コロネートL)0.5gを添加し、攪拌脱泡を行い、粘着剤組成物を得た。粘着剤組成物を、シリコーン離型剤が塗布された厚み100μmポリエステルフィルム上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが88μmになるよう塗工し、90℃の乾燥機にて3分間乾燥させた。その後、同じように得られた粘着剤層を積層し、室温にて7日間静置することで175μm厚みの粘着シートを得た。
【0079】
(実施例2)
<アクリル重合体Bの製造方法>
攪拌機、窒素導入管、冷却管、温度計を備えた2Lフラスコにアクリル酸2エチルヘキシル620g、アクリル酸4ヒドロキシルブチル290g、メタクリル酸シクロヘキシル90g、n-ドデシルメルカプタン0.2gを投入し、窒素流量300ml/minで60分間窒素置換した後、窒素流量を100ml/minまで下げ、ウォーターバスにて65℃まで昇温し加熱した。AIBN 0.15gを投入し、発熱を制御しながら30分間反応させ、50℃まで冷却した。前述のモノマー比率となるように追加モノマーをフラスコに投入し、固形分濃度が20%となるよう調整した。以上のようにして、固形分濃度20質量%、重量平均分子量が80万程度のアクリル重合体Bを含むシロップBを得た。
【0080】
<粘着付与樹脂aの製造方法>
攪拌機、窒素導入管、冷却管、温度計を備えた2Lフラスコにメタクリル酸メチル250g、メタクリル酸イソボルニル250g、n-ドデシルメルカプタン20g、酢酸エチル500g、メチルエチルケトン200gを投入し、窒素流量300ml/minで60分間窒素置換した後、窒素流量を100ml/minまで下げ、ウォーターバスにて70℃まで昇温し加熱を停止した。AIBN 2gを投入し、発熱を制御しながら3時間反応させ、その後AIBNを3g追加投入し、4時間反応させた後、30℃まで冷却した。以上のようにして、重量平均分子量が6,000、ガラス転移温度95℃の粘着付与樹脂aを得た。
【0081】
<粘着シートの製造>
粘着付与樹脂aについては、100℃で5時間乾燥させ、溶媒を除去した。シロップB 100gに、溶媒除去した粘着付与樹脂a 7g、ポリカルボジイミド(日清紡ケミカル製、カルボジライトV-03)0.3g、多官能モノマー(新中村化学工業社製、NKエステルA-200)0.4g、光重合開始剤(IGM Resins B.V製、Esacure One)0.3gを添加し、攪拌脱泡を行い、粘着剤組成物を得た。粘着剤組成物を、シリコーン離型剤が塗布された厚み100μmポリエステルフィルムの上に厚みが175μmになるように塗工し、シリコーン離型剤が塗布された厚み75μmポリエステルフィルムでラミネートした後、ケミカルランプを照度5mW/cm、積算照度900mJ/cmとなるように照射し、さらに高圧水銀ランプを照度200mW/cm、積算照度2000mJ/cmとなるように照射することで、粘着シートを得た。
【0082】
(実施例3)
<アクリル重合体Cの製造方法>
攪拌機、窒素導入管、冷却管、温度計を備えた2Lフラスコにアクリル酸ブチル650g、アクリル酸4ヒドロキシルブチル270g、アクリル酸ジシクロペンタニル80g、n-ドデシルメルカプタン0.2gを投入し、窒素流量300ml/minで60分間窒素置換した後、窒素流量を100ml/minまで下げ、ウォーターバスにて60℃まで昇温し加熱した。AIBN 0.15gを投入し、発熱を制御しながら30分間反応させ、50℃まで冷却した。前述のモノマー比率となるように追加モノマーをフラスコに投入し、加熱残分が20%となるよう調整した。以上のようにして、固形分濃度20質量%、重量平均分子量が80万程度のアクリル重合体Cを含むシロップCを得た。
【0083】
<粘着付与樹脂bの製造方法>
攪拌機、窒素導入管、冷却管、温度計を備えた2Lフラスコにメタクリル酸メチル250g、メタクリル酸ジシクロペンタニル250g、n-ドデシルメルカプタン25g、酢酸エチル500g、メチルエチルケトン200gを投入し、窒素流量300ml/minで60分間窒素置換した後、窒素流量を100ml/minまで下げ、ウォーターバスにて70℃まで昇温し加熱を停止した。AIBN 2gを投入し、発熱を制御しながら3時間反応させ、その後AIBNを3g追加投入し、4時間反応させた後、30℃まで冷却した。以上のようにして、重量平均分子量が5,000、ガラス転移温度90℃の粘着付与樹脂bを得た。
【0084】
<粘着シートの製造>
粘着付与樹脂bについては、100℃で5時間乾燥させ、溶媒を除去した。シロップC 100gに、溶媒除去した粘着付与樹脂b 5g、ポリカルボジイミド(日清紡ケミカル製、カルボジライトV-05)0.2g、多官能モノマー(新中村化学工業社製、NKエステルA-200)0.3g、光重合開始剤(IGM Resins B.V製、Esacure One)0.3gを添加し、攪拌脱泡を行い、粘着剤組成物を得た。該粘着剤組成物を用いた以外は実施例2と同様の方法で粘着シートを得た。
【0085】
(比較例1)
<アクリル重合体Dの製造方法>
攪拌機、窒素導入管、冷却管、温度計を備えた2Lフラスコにアクリル酸ブチル350g、アクリル酸4ヒドロキシルブチル150g、酢酸エチル750gを仕込み、窒素流量300ml/minで60分間窒素置換した後、窒素流量を100ml/minまで下げ、ウォーターバスにて70℃まで昇温し加熱した。AIBN 0.1gを投入し、発熱を制御しながら1時間反応させ、その後AIBNを0.5g追加投入し、6時間反応させた後、50℃まで冷却した。以上のようにして、固形分濃度40質量%、重量平均分子量が50万程度のアクリル重合体Dを得た。
【0086】
<粘着付与樹脂aの製造方法>
実施例2と同様の方法で粘着付与樹脂aを得た。
【0087】
<粘着シートの製造>
粘着付与樹脂aについては、100℃で5時間乾燥させ、溶媒を除去した。アクリル重合体D 100gに、溶媒除去した粘着付与樹脂a 3g、架橋剤(東ソー製、コロネートL)0.5gを添加し、攪拌脱泡を行い、粘着剤組成物を得た。該粘着剤組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法で粘着シートを得た。
【0088】
(比較例2)
<アクリル重合体Bの製造方法>
実施例2と同様の方法でアクリル重合体Bを含むシロップBを得た。
【0089】
<粘着付与樹脂aの製造方法>
実施例2と同様の方法で粘着付与樹脂aを得た。
【0090】
<粘着シートの製造>
粘着付与樹脂aについては、100℃で5時間乾燥させ、溶媒を除去した。シロップB 100gに、溶媒除去した粘着付与樹脂a 7g、カルボジイミド化合物(ラインケミー製、スタバックゾールI(N,N’-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド))0.5g、多官能モノマー(新中村化学工業社製、NKエステルA-200)0.4g、光重合開始剤(IGM Resins B.V製、Esacure One)0.3gを添加し、攪拌脱泡を行い、粘着剤組成物を得た。該粘着剤組成物を用いた以外は実施例2と同様の方法で粘着シートを得た。
【0091】
(比較例3)
<アクリル重合体Eの製造方法>
攪拌機、窒素導入管、冷却管、温度計を備えた2Lフラスコにアクリル酸ブチル900g、アクリル酸4ヒドロキシルブチル100g、n-ドデシルメルカプタン0.2gを投入し、窒素流量300ml/minで60分間窒素置換した後、窒素流量を100ml/minまで下げ、ウォーターバスにて60℃まで昇温し加熱した。AIBN 0.15gを投入し、発熱を制御しながら30分間反応させ、50℃まで冷却した。前述のモノマー比率となるように追加モノマーをフラスコに投入し、加熱残分が20%となるよう調整した。以上のようにして、固形分濃度20質量%、重量平均分子量が80万程度のアクリル重合体Eを含むシロップEを得た。
【0092】
<粘着付与樹脂bの製造方法>
実施例3と同様の方法で粘着付与樹脂bを得た。
【0093】
<粘着シートの製造>
粘着付与樹脂bについては、100℃で5時間乾燥させ、溶媒を除去した。シロップE 100gに、溶媒除去した粘着付与樹脂b 7g、ポリカルボジイミド(日清紡ケミカル製、カルボジライトV-02B)0.25g、多官能モノマー(新中村化学工業社製、NKエステルA-200)0.5g、光重合開始剤(IGM Resins B.V製、Esacure One)0.3gを添加し、攪拌脱泡を行い、粘着剤組成物を得た。該粘着剤組成物を用いた以外は実施例2と同様の方法で粘着シートを得た。
【0094】
(測定及び評価)
((メタ)アクリル重合体のガラス転移温度の算出)
アクリル重合体のガラス転移温度は次のFOX式により求めた。
1/Tgp=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
Tgpはアクリル重合体のガラス転移温度であり、Wnは各モノマーの重量分率であり、Tgnは各モノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度である。
【0095】
(粘着付与樹脂のガラス転移温度の測定)
粘着付与樹脂のガラス転移温度の測定にはセイコーインスツル製DSC6200を用いた。リファレンスはアルミナ10mgとし、直径5mmのサンプル用アルミパンに粘着付与樹脂の溶媒除去品を10mg程度入れ、窒素流量50ml/minの環境下にて昇温速度10℃/minで0℃~150℃まで昇温させた。その際に、比熱が変化する変曲点を粘着付与樹脂のガラス転移温度として読み取った。
【0096】
(湿熱定荷重)
実施例及び比較例で得られた粘着シートを、厚さ100μmの易接着処理されたポリエステルフィルム(東洋紡製、A4300)に貼合し、貼合部が幅25mm、長さ50mmとなるようカットした。次いで、これを1mm厚のポリカーボネートシート(帝人製、パンライト1151)もしくは1mm厚のポリメタクリル酸メチル積層シート(クラレ製、MT3LTR)にそれぞれ貼り付けた後、2kgのローラーで2往復し圧着した。その後、オートクレーブにて温度30℃、圧力0.5MPaの環境下で30分間処理し、大気圧、室温環境下にて1日静置し、評価用積層体とした。
評価用積層体を、温度85℃、相対湿度85%の恒温恒湿機内に30分間静置した後、ポリエステルフィルム面側が下になるように台に設置した。次いで、100gの分銅をポリステルフィルム端部に引っ掛け、粘着剤層がポリカーボネートシートもしくはポリメタクリル酸メチル積層シート面から剥離し、分銅が落下するまでの時間を測定し、被着体に対する密着性を以下の基準で評価した。
A:分銅は30分経過しても落下しない
B:分銅は15分経過しても落下しないが、30分経過前に落下する
C:分銅が15分経過前に落下する
【0097】
(耐白化性(透明性))
実施例及び比較例で得られた粘着シートの各面に、ガラス板(マツナミ製、幅52mm、長さ76mm、厚み1mm)とPMMA-PC積層シート(クラレ製、MT3LTR 幅55mm長さ80mm厚み1mm)をそれぞれ張り合わせた後、オートクレーブにて温度30℃、圧力0.5MPaの環境下で30分間処理し、大気圧、室温環境下にて1日静置し、評価用積層体とした。
評価用積層体を、温度85℃、相対湿度85%の恒温恒湿機内に7日間静置した後、室温に1時間静置し、村上色彩技術研究所のHM-150で評価用積層体のヘイズ値を測定し、以下の基準で評価した。
A:ヘイズ値が1.5未満である
B:ヘイズ値が1.5以上3未満である
C:ヘイズ値が3以上である
【0098】
【表1】
【0099】
BA:アクリル酸ブチル
2EHA:アクリル酸2エチルヘキシル
4HBA:アクリル酸4ヒドロキシルブチル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
DCPA:アクリル酸ジシクロペンタニル
MMA:メタクリル酸メチル
IBXMA:メタクリル酸イソボルニル
DCPMA:メタクリル酸ジシクロペンタニル
【0100】
比較例に比べて実施例では、被着体に対する密着性が改善されていた。特に、実施例では、ポリカーボネート板に対する密着性が良好であった。また、実施例では透明性に優れた(耐白化性に優れた)粘着シートが得られた。
【要約】
【課題】本発明は、湿熱環境下においても被着体に対して優れた密着性を示し、かつ白化が抑制された粘着シートを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、ガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリル重合体と、ポリカルボジイミドとを含み、(メタ)アクリル重合体は水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位を有し、(メタ)アクリル重合体における、前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、前記(メタ)アクリル重合体の全質量に対して20質量%以上であり、(メタ)アクリル重合体における、カルボン酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は0.1質量%以下である、粘着剤組成物に関する。
【選択図】なし
図1