(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】複合伸縮シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/51 20060101AFI20230725BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20230725BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A61F13/51
A61F13/15 340
A61F13/15 352
A61F13/15 355A
A61F13/15 357
A61F13/15 391
A61F13/49 312Z
(21)【出願番号】P 2018231081
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀行
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 正和
【審査官】岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/038578(WO,A1)
【文献】特開2005-080859(JP,A)
【文献】特開2009-297096(JP,A)
【文献】特開2012-126140(JP,A)
【文献】特開2016-055481(JP,A)
【文献】特開2015-091304(JP,A)
【文献】特開平05-228177(JP,A)
【文献】特開平07-213554(JP,A)
【文献】特開2016-077900(JP,A)
【文献】米国特許第06291039(US,B1)
【文献】特開2013-128515(JP,A)
【文献】特開2017-113188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/51
A61F 13/15
A61F 13/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1繊維シートと繊維シート又は樹脂フィルムからなる第2シートとの間に一方向に延びる弾性部材を挟持した凹凸形状
を有し、該第1繊維シート及び該第2シートは、それぞれ、頂部及び底部を有する凹凸形状に形成されており、
前記第1繊維シートは、シートの構成繊維どうしの交点を固定する繊維固定部間の距離が相対的に短い第1領域と、該繊維固定部間の距離が相対的に長い第2領域とを有し、
前記第1領域は前記頂部及び前記底部に位置し、且つ前記第2領域は該頂部と該底部との間に位置し、
前記第1領域は、前記複合伸縮シートの伸縮方向と直交する直交方向に延在しており、
前記第1繊維シート及び前記第2シートは、両シートの前記底部どうしが重なる位置に形成された接合部で接合されており、
前記接合部は、前記弾性部材の前記直交方向の両側に、前記伸縮方向に沿って間隔を置いて複数配されており、
前記弾性部材は、前記第1繊維シートと前記第2シートとの間に配され、該弾性部材の伸縮方向の両端部に配された前記直交方向に延びる接合領域のみで該第1繊維シート及び該第2シートに固定されているか、又は前記接合部間に挟まれることにより固定されている、複合伸縮シートの製造方法であって、
周面に凸部を有する第1凸ロールと該第1凸ロールの該凸部に噛み合う凹部を有する第1賦形ロールとの間に、ロール回転方向に沿って伸長された第1弾性部材と前記第1繊維シートとを、該第1弾性部材が該第1繊維シートにおける該第1賦形ロールとの対向面側に配された状態で通して、該第1繊維シートを少なくともロール回転方向に沿って延伸させて、該第1繊維シートを凹凸賦形する第1工程と、
前記第1工程と並行して、周面に凸部を有する第2凸ロールと該第2凸ロールの該凸部に噛み合う凹部を有する第2賦形ロールとの間に、ロール回転方向に沿って伸長された第2弾性部材と前記第2シートとを、該第2弾性部材が該第2シートにおける該第2賦形ロールとの対向面側に配された状態で通して、該第2シートを少なくともロール回転方向に沿って延伸させて、該第2シートを凹凸賦形する第2工程と、
それぞれ凹凸賦形された前記第1繊維シートと前記第2シートとを、前記弾性部材の配置面どうしが対向するように重ね合わせ、重ね合わされた該第1繊維シート及び該第2シートを、前記第1凸ロール及び前記第2凸ロールの前記凸部どうしの突き合わせによって接合する第3工程を有し、
前記第1凸ロールの前記凸部は、歯たけが相対的に高い高歯たけ部と、歯たけが相対的に低い低歯たけ部とを軸方向に沿って交互に有し、該第1凸ロールは、該低歯たけ部の位置に、ロールの周方向に延びる条溝を有しており、
前記第2凸ロールの前記凸部は、歯たけが相対的に高い高歯たけ部と、歯たけが相対的に低い低歯たけ部とを軸方向に沿って交互に有し、該第2凸ロールは、該低歯たけ部の位置に、ロールの周方向に延びる条溝を有しており、
前記第1工程及び前記第2工程においては、延伸によって凹凸賦形された該繊維シートを
前記弾性部材の張力によって前記第1凸ロール及び前記第2凸ロールの周面に押え付けながら
前記第3工程に搬送させ、
前記第3工程においては、前記第1凸ロールの前記凸部と前記第2凸ロールの前記凸部とを突き合せ、
前記第2凸ロールの前記高歯たけ部と前記第1凸ロールの前記条溝とによってロール回転方向に沿って形成された空隙部に、伸長状態の前記第1弾性部材を通すとともに、該第2凸ロールの該高歯たけ部と、該第1凸ロールの該条溝の両側に位置する前記高歯たけ部によって、前記第1シートと前記第2シートとを接合し、
且つ、
前記第1凸ロールの前記高歯たけ部と前記第2凸ロールの前記条溝とによってロール回転方向に沿って形成された空隙部に、伸長状態の前記第2弾性部材を通すとともに、該第1凸ロールの該高歯たけ部と、該第2凸ロールの該条溝の両側に位置する前記高歯たけ部とによって、前記第1シートと前記第2シートとを接合する、複合伸縮シートの製造方法。
【請求項2】
前記凹凸賦形に際しては、
前記第1繊維シートの構成繊維どうしの交点を固定する
前記繊維固定部間の距離が相対的に長い
前記第2領域を、前記弾性部材の伸縮方向に直交する直交方向に連続して延びるように形成する、請求項
1に記載の複合伸縮シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合伸縮シートを有する吸収性物品及びその複合伸縮シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品の構成素材として、2枚の不織布間に、糸状の弾性部材を伸長状態で挟持固定した複合伸縮シートを用いる場合がある。
【0003】
複合伸縮シートとして、本出願人は、先に、特許文献1に記載のパンツ型着用物品の外装体、特許文献2に記載の複合伸縮シート等を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-004115号公報
【文献】特開2016-055481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、伸縮性が良くフィット性に優れ、しかもクッション性に優れる複合伸縮シートへのニーズがある。
【0006】
特許文献1に記載の外装体は、2枚の不織布を接合した複合体を歯溝加工を施すことによって延伸させるときに、該複合体中の弾性部材の切断が起こり、外装体の凹凸形状に乱れが生じる場合が考えられ、クッション性の観点から改良の余地があった。特許文献2に記載の複合伸縮シートは、伸縮性が良くフィット性に優れているものの、ホットメルトが全面に塗布されておりホットメルトの接着力により厚みが減少される傾向にあるため特許文献2には、クッション性を向上させることについて検討されていない。
【0007】
したがって本発明の課題は、伸縮性が良くフィット性に優れ、しかもクッション性に優れる複合伸縮シートを有する吸収性物品、及びその複合伸縮シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1繊維シートと繊維シート又は樹脂フィルムからなる第2シートとの間に一方向に延びる弾性部材を挟持した複合伸縮シートを有する吸収性物品であって、
前記複合伸縮シートにおいて、前記第1繊維シート及び前記第2シートは、それぞれ、頂部及び底部を有する凹凸形状に形成されており、
前記第1繊維シートは、シートの構成繊維どうしの交点を固定する繊維固定部間の距離が相対的に短い第1領域と、該繊維固定部間の距離が相対的に長い第2領域とを有し、
前記第1領域は前記頂部及び前記底部に位置し、且つ前記第2領域は該頂部と該底部との間に位置し、
前記第1領域は、前記複合伸縮シートの伸縮方向と直交する直交方向に延在しており、
前記第1繊維シート及び前記第2シートは、両シートの前記底部どうしが重なる位置に形成された接合部で接合されており、
前記接合部は、前記弾性部材の前記直交方向の両側に、該伸縮方向に沿って間隔を置いて複数配されており、
前記弾性部材は、前記第1シートと前記第2シートとの間に配され、該弾性部材の伸縮方向の両端部において固定されているか、又は前記接合部間に挟まれることにより固定されているかの少なくとも一方で固定されている、吸収性物品を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、第1繊維シートと繊維シート又は樹脂フィルムからなる第2シートとの間に一方向に延びる弾性部材を挟持した凹凸形状の複合伸縮シートの製造方法であって、
周面に凸部を有する第1凸ロールと該第1凸ロールの該凸部に噛み合う凹部を有する第1賦形ロールとの間に、ロール回転方向に沿って伸長された第1弾性部材と前記第1繊維シートとを、該第1弾性部材が該第1繊維シートにおける該第1賦形ロールとの対向面側に配された状態で通して、該第1繊維シートを少なくともロール回転方向に沿って延伸させて、該第1繊維シートを凹凸賦形する第1工程と、
前記第1工程と並行して、周面に凸部を有する第2凸ロールと該第2凸ロールの該凸部に噛み合う凹部を有する第2賦形ロールとの間に、ロール回転方向に沿って伸長された第2弾性部材と前記第2シートとを、該第2弾性部材が該第2シートにおける該第2賦形ロールとの対向面側に配された状態で通して、該第2シートを少なくともロール回転方向に沿って延伸させて、該第2シートを凹凸賦形する第2工程と、
それぞれ凹凸賦形された前記第1繊維シートと前記第2シートとを、前記弾性部材の配置面どうしが対向するように重ね合わせ、重ね合わされた該第1繊維シート及び該第2シートを、前記第1凸ロール及び前記第2凸ロールの前記凸部どうしの突き合わせによって接合する第3工程を有し、
前記第1工程及び前記第2工程においては、延伸によって凹凸賦形された該繊維シートを該弾性部材の張力によって前記第1凸ロール及び前記第2凸ロールの周面に押え付けながら搬送させ、
前記第3工程においては、前記第1凸ロール及び前記第2凸ロールの前記凸部どうしの突き合せによってロール回転方向に沿って形成される空隙部に伸長状態の前記第1弾性部材及び前記第2弾性部材を通して、重ね合わされた前記第1繊維シートと前記第2シートとを、該第1弾性部材又は該第2弾性部材における該弾性部材の伸縮方向と直交する直交方向の両側で接合する、複合伸縮シートの製造方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、第1繊維シートと繊維シート又は樹脂フィルムからなる第2シートとの間に一方向に延びる弾性部材を挟持した凹凸形状の複合伸縮シートの製造方法であって、
周面に凸部を有する凸ロールと該凸ロールの該凸部の頂部に当接する接合ロールとの間に、前記第1繊維シートと、前記第2シートと、それらのシートの間に配され且つロール回転方向に沿って伸長された前記弾性部材とを通して、該第1繊維シートと該第2シートとを、該弾性部材の伸縮方向に直交する直交方向において、該弾性部材の両側で接合して、接合部が形成された積層シートを形成する第1工程と、
前記積層シートを、前記凸ロールと前記接合ロールよりも該凸ロールの回転方向下流側に配され且つ前記凸部に噛み合う凹部を有する賦形ロールとの噛み合い部に導入して凹凸賦形する第2工程とを有し、
前記第2工程においては、前記凸ロール及び前記賦形ロールの噛み合いによってロール回転方向に沿って形成される空隙部に伸長状態の前記弾性部材を通すとともに、前記接合部が前記凸ロールの前記凸部の頂部及び前記賦形ロールの前記凹部の底部に位置するように位置合わせした状態下に、前記積層シートにおけるロール回転方向に隣り合う前記接合部どうしの間を延伸させる、複合伸縮シートの製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、第1繊維シートと繊維シート又は樹脂フィルムからなる第2シートとの間に一方向に延びる弾性部材を挟持した凹凸形状の複合伸縮シートの製造方法であって、
周面に凸部を有する凸ロールと、該凸部に噛み合う凹部を有する賦形ロールとの噛み合い部に、前記第1繊維シートと、前記第2シートと、それらのシートの間に配され且つロール回転方向に沿って伸長された前記弾性部材とを導入して、該第1繊維シートと該第2シートとを、該弾性部材の伸縮方向に直交する直交方向において、該弾性部材の両側で接合して接合部を形成すると同時に、ロール回転方向に隣り合う該接合部どうしの間を延伸させて凹凸賦形し、
前記凹凸賦形に際しては、前記凸ロール及び前記賦形ロールの噛み合いによってロール回転方向に沿って形成される空隙部に伸長状態の該弾性部材を通す、複合伸縮シートの製造方法を提供するものである。
【0012】
また、第1繊維シートと繊維シート又は樹脂フィルムからなる第2シートとの間に一方向に延びる弾性部材を挟持した凹凸形状の複合伸縮シートの製造方法であって、
周面に凸部を有する第1凸ロールと該第1凸ロールの該凸部に噛み合う凹部を有する第1賦形ロールとの間に、前記第1繊維シートを通して、該第1繊維シートを少なくともロール回転方向に沿って延伸させて、該第1繊維シートを凹凸賦形し、凹凸賦形された該第1繊維シートを該第1凸ロールの周面から内部に向かう吸引によりロール周面上に保持しながら搬送する第1工程と、
前記第1工程と並行して、周面に凸部を有する第2凸ロールと該第2凸ロールの該凸部に噛み合う凹部を有する第2賦形ロールとの間に、前記第2シートを通して、該第2シートを少なくともロール回転方向に沿って延伸させて、該第2シートを凹凸賦形し、凹凸賦形された該第2シートを該第2凸ロールの周面から内部に向かう吸引によりロール周面上に保持しながら搬送する第2工程と、
それぞれ凹凸賦形された前記第1繊維シート及び前記第2シートと、それらのシートにおける前記凸ロールとの非対向面どうしの間に配され且つロール回転方向に沿って伸長された前記弾性部材とを重ね合わせた積層シートを、前記第1凸ロール及び前記第2凸ロールの前記凸部どうしの突き合わせによって接合する第3工程を有し、
前記第3工程においては、前記第1凸ロール及び前記第2凸ロールの前記凸部どうしの突き合わせによってロール回転方向に沿って形成される空隙部に伸長状態の前記弾性部材を通す、複合伸縮シートの製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、第1繊維シートと繊維シート又は樹脂フィルムからなる第2シートとの間に一方向に延びる弾性部材を挟持した凹凸形状の複合伸縮シートの製造方法であって、
周面に凸部を有する凸ロールと該凸ロールの該凸部に噛み合う凹部を有する第1賦形ロールとの間に、ロール回転方向に沿って伸長された第1弾性部材と前記第1繊維シートとを、該第1弾性部材が該第1繊維シートにおける該第1賦形ロールとの対向面側に配された状態で通して、該第1繊維シートを少なくともロール回転方向に沿って延伸させる、該第1繊維シートを凹凸賦形する第1工程と、
前記第1工程と並行して、周面に互いに噛み合う凸部及び凹部を有する第2賦形ロールと第3賦形ロールとの間に、ロール回転方向に沿って伸長された第2弾性部材と前記第2シートとを、該第2弾性部材が該第2シートにおける該第2賦形ロールとの対向面側に配された状態で通して、該第2シートを少なくともロール回転方向に沿って延伸させる、該第2シートを凹凸賦形する第2工程と、
それぞれ凹凸賦形された前記第1繊維シートと前記第2シートとを、各シートにおける凹凸の位相が一致するように且つ前記弾性部材の配置面どうしが対向するように重ね合わせ、それによって形成された積層シートを、前記凸ロールの前記凸部と前記第3賦形ロールの前記凹部との噛み合わせによって再度凹凸賦形し、凹凸賦形された該積層シートを該凸ロールの周面から内部に向かう吸引によりロール周面上に保持しながら搬送する第3工程と、
凹凸賦形された前記積層シートを、前記凸ロールと前記第3賦形ロールよりも該凸ロールの回転方向下流側に配され且つ前記凸部の頂部に当接する接合ロールとの間に通して、前記第1繊維シートと前記第2シートとを、該弾性部材の伸縮方向に直交する直交方向において、該弾性部材の両側で接合する第4工程を有し、
前記第1工程においては、前記凸ロール及び前記第1賦形ロールの噛み合いによって第1繊維シートを延伸させるとともに、延伸によって凹凸賦形された該第1繊維シートを該第1弾性部材の張力によって凸ロールの周面に押え付けながら搬送させ、
前記第2工程においては、前記賦形ロールどうしの噛み合いによって前記第2シートを延伸させるとともに、延伸によって凹凸賦形された該第2シートを該第2弾性部材の張力によって前記第3賦形ロールの周面に押え付けながら搬送させ、
前記第3工程においては、前記凸ロール及び前記第3賦形ロールの前記凸部どうしの突き合せによってロール回転方向に沿って形成される空隙部に伸長状態の前記第1弾性部材及び前記第2弾性部材を通して、前記第1繊維シートと前記第2シートとを重ね合わせ、
前記第4工程においては、前記凸ロール及び前記接合ロールの当接によってロール回転方向に沿って形成される空隙部に伸長状態の前記第1弾性部材と前記第2弾性部材とを少なくとも通す、複合伸縮シートの製造方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、第1繊維シートと繊維シート又は樹脂フィルムからなる第2シートとの間に一方向に延びる弾性部材を挟持した凹凸形状の複合伸縮シートの製造方法であって、
周面に凸部を有する凸ロールと、該凸部に噛み合う凹部を有する賦形ロールとの噛み合い部に、前記第1繊維シートと、前記第2シートと、それらのシートの間に配され且つロール回転方向に沿って伸長された前記弾性部材とを導入して各繊維シートを延伸させ、凹凸賦形された両シートを、該凸ロールの周面から内部に向かう吸引により該凸ロールのロール周面上に保持しながら搬送する第1工程と、
前記凸ロールと前記賦形ロールよりも該凸ロールの回転方向下流側に配され且つ該凸部の頂部に当接する接合ロールとの間に、凹凸賦形された両シートを通過させ、前記第1繊維シートと前記第2シートとを、該弾性部材の伸縮方向に直交する直交方向において、該弾性部材の両側で接合する第2工程とを有し、
前記第2工程においては、前記凸ロール及び前記接合ロールの当接によってロール回転方向に沿って形成される空隙部に伸長状態の前記弾性部材を通す、複合伸縮シートの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の吸収性物品によれば、伸縮性が良く、良好なフィット性を呈するとともに良好なクッション性を呈する。また、本発明によれば、吸収性物品に用いる複合伸縮シートを効率的に製造し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の吸収性物品の有する複合伸縮シートの好ましい一実施形態であり、
図1(a)はその斜視図であり、
図1(b)は
図1(a)のb-b線断面図であり、
図1(c)は
図1(a)のc-c線断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の吸収性物品の有する複合伸縮シートの別の実施形態であり、
図3(a)はその斜視図であり、
図3(b)は
図3(a)のb-b線断面図であり、
図3(c)は
図3(a)のc-c線断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の吸収性物品の有する複合伸縮シートの更に別の実施形態であり、
図4(a)はその斜視図であり、
図4(b)は
図4(a)のb-b線断面図であり、
図4(c)は
図4(a)のc-c線断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の吸収性物品の有する複合伸縮シートのまた別の実施形態であり、
図5(a)はその平面図であり、
図5(b)は
図5(a)のb-b線断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の吸収性物品の有する複合伸縮シートの製造装置の好ましい一実施形態であり、
図6(a)はその斜視図であり、
図6(b)はその側面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す製造装置を用いてシートを延伸する状態を示す模式図である。
【
図8】
図8は、
図6に示す製造装置を用いてシートを延伸する別の状態を示す模式図である。
【
図9】
図9は、
図6に示す製造装置の備える第1凸ロール及び第2凸ロールであり、
図9(a)はそれら
を突き合せた部分を正面から視た模式図であり、
図9(b)はそれら
を突き合せた部分を側面から視た模式図である。
【
図10】
図10は、本発明の吸収性物品の有する複合伸縮シートの製造装置の別の実施形態であり、
図10(a)はその斜視図であり、
図10(b)はその側面図である。
【
図11】
図11は、
図10に示す製造装置の備える第1凸ロール及び第2凸ロールであり、
図11(a)はそれら
を突き合せた部分を正面から視た模式図であり、
図11(b)はそれら
を突き合せた部分を側面から視た模式図である。
【
図12】
図12は、本発明の吸収性物品の有する複合伸縮シートの製造装置の更に別の実施形態であり、
図12(a)はその斜視図であり、
図12(b)はその側面図である。
【
図13】
図13は、
図12に示す製造装置の備える凸ロール及び接合ロールであり、
図13(a)はそれらの当接部分を正面から視た模式図であり、
図13(b)はそれらの当接部分を側面から視た模式図である。
【
図14】
図14は、本発明の吸収性物品の有する複合伸縮シートの製造装置のまた別の実施形態であり、
図14(a)はその斜視図であり、
図14(b)はその側面図である。
【
図15】
図15は、本発明の吸収性物品の有する複合伸縮シートの製造装置の別の実施形態であり、
図15(a)はその斜視図であり、
図15(b)はその側面図である。
【
図16】
図16は、本発明の吸収性物品の有する複合伸縮シートの製造装置のまた別の実施形態であり、
図16(a)はその斜視図であり、
図16(b)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の吸収性物品は一般に、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる方向に相当する長手方向とこれに直交する幅方向とを有する縦長の形状をしている。吸収性物品は、着用者の股間部に配される股下部並びにその前後に延在する腹側部及び背側部を有する。股下部は、吸収性物品の着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部を有しており、該排泄部対向部は通常、吸収性物品の長手方向の中央部又はその近傍に位置している。
【0018】
吸収性物品は一般に、着用者の肌対向面側に位置する表面シートと、非肌対向面側に位置する裏面シートと、両シート間に介在配置された吸収体とを備える。肌対向面とは、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌に近い側であり、非肌対向面は、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌から遠い側である。
【0019】
表面シート及び裏面シートとしては、それぞれ、この種の吸収性物品に従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シートとしては、各種の不織布や開孔フィルム等を用いることができる。裏面シートとしては、例えば液難透過性のフィルムやスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド積層不織布などが挙げられる。液難透過性のフィルムに、複数の微細孔を設け、該フィルムに水蒸気透過性を付与してもよい。吸収性物品の肌触り等を一層良好にする目的で、裏面シートの外面に不織布等の風合いの良好なシートを積層してもよい。
【0020】
吸収体は吸収性コアを備えている。吸収性コアは例えばパルプを始めとするセルロース等の親水性繊維の積繊体、該親水性繊維と吸収性ポリマーとの混合積繊体、吸収性ポリマーの堆積体、2枚の吸収性シート間に吸収性ポリマーが担持された積層構造体などから構成される。吸収性コアは、少なくともその肌対向面が液透過性のコアラップシートで覆われていてもよく、あるいは肌対向面及び非肌対向面を含む表面の全域がコアラップシートで覆われていてもよい。コアラップシートとしては、例えば親水性繊維からなる薄葉紙や、液透過性を有する不織布などを用いることができる。
【0021】
上述の表面シート、裏面シート及び吸収体に加え、吸収性物品の具体的な用途に応じ、肌対向面側の長手方向に沿う両側部に、長手方向に沿って延びる防漏カフが配される場合がある。防漏カフは一般に、基端部と自由端とを備えている。防漏カフは、吸収性物品の肌対向面側に基端部を有し、肌対向面側から起立している。防漏カフは、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性の素材から構成されている。防漏カフの自由端又はその近傍には、糸ゴム等からなる弾性部材を伸長状態で配してもよい。吸収性物品の着用状態においてこの弾性部材が収縮することによって、防漏カフが着用者の身体に向けて起立するようになり、表面シート上に排泄された液が、表面シート上を伝い吸収性物品の幅方向外方へ漏れ出すことが効果的に阻止される。
【0022】
以上の構成を有する吸収性物品としては、例えば展開型の使い捨ておむつ、パンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等が挙げられるが、これらに限られない。
【0023】
図1及び
図2には、本発明の吸収性物品に好適に用いられる複合伸縮シートの第1実施形態が示されている。複合伸縮シートは、上述した使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の構成素材として、例えば表面シート、裏面シート、吸収体を形成するシート、防漏カフを形成するシート、或いはおむつの外面を形成する外装体として用いることができる。
図1及び
図2には、本実施形態に係る複合伸縮シート10Aが弛緩した状態、すなわち複合伸縮シート10Aに外力が加わっていない自然状態が示されている。複合伸縮シート10Aは、弾性部材13の延びる方向と同じ方向の伸縮方向Xと、これと直交する直交方向Yとを有している。また複合伸縮シート10Aは、第1シート11及び第2シート12の2枚のシートを具備している。2枚のシート11,12は同一の材質のものでもよく、あるいは異なる材質のものでもよい。
【0024】
更に複合伸縮シート10Aは、両シート11,12間に挟持固定された弾性部材13を具備している。弾性部材13はシート状(非開孔フィルム、開孔フィルムや繊維集合体)、帯状、糸状の形状を有していてもよく、好ましくは複数本の糸状又は帯状の形状をしている。各弾性部材13は、伸縮方向Xに沿って延びており、且つ直交方向Yに間隔を置いて配されている。直交方向Yにおいて隣り合う弾性部材13間の距離は同じでもよく、又は異なっていてもよい。本実施形態では、直交方向Yにおいて隣り合う弾性部材13間の距離は同じとなっている。また、弾性部材13の太さもそれぞれ異なっていてもよいし、シート11,12に接合される際のそれぞれの伸長率(自然長に対する伸長歪み)が異なっていてもよい。
【0025】
複合伸縮シート10Aは、弾性部材13の延びる方向に沿って伸縮可能になっている。即ち、弾性部材13の延びる方向と複合伸縮シート10の伸縮方向とは一致している。一方、直交方向Yに関しては、複合伸縮シート10Aは実質的に非伸縮である。複合伸縮シート10Aの伸縮性は、弾性部材13の伸縮性に起因して発現する。特に伸縮方向Xが機械の流れ方向であることが、糸状又は帯状の弾性部材13を組み込む際に容易であるため好ましい。
【0026】
図1(a)及び(b)に示すとおり、一方の面及び他方の面がそれぞれ凹凸形状となっている。詳述すると、第1シート11及び第2シート12は、それぞれ、凹凸形状に賦形されている。第1シート11は、直交方向Yに延びる筋状の第1凸部1aと、同じく直交方向Yに延びる筋状の第1凹部1bとを複数有している。第1凸部1aは弾性部材13から離れる方向に突出している。第1凸部1a及び第1凹部1bは、伸縮方向Xに沿って交互に配置されている。伸縮方向Xに沿ってみたとき、第1凸部1aは等ピッチで形成されている。同様に第1凹部1bも等ピッチで形成されている。第1凸部1aのピッチと、第1凹部1bのピッチとは同じになっている。第1凸部1aのピッチとは、伸縮方向Xにおいて隣り合う第1凸部1aの頂部間の距離である。第1凹部1bのピッチとは、伸縮方向Xにおいて隣り合う第1凹部1bの底部間の距離である。
【0027】
図1(a)及び(b)に示すとおり、第2シート12は、第1シート11と同様に、直交方向Yに延びる筋状の第2凸部2aと、同じく直交方向Yに延びる筋状の第2凹部2bとを複数有している。第2凸部2aは弾性部材13から離れる方向に突出している。第2凸部2a及び第2凹部2bは、伸縮方向Xに沿って交互に配置されている。伸縮方向Xに沿ってみたとき、第2凸部2aは、等ピッチで形成されており、第1凸部1aのピッチと同じピッチで形成されている。同様に第2凹部2bも等ピッチで形成されており、第1凹部1bのピッチと同じピッチで形成されている。
【0028】
複合伸縮シート10Aにおいては、
図1(b)に示すように、一方の面を形成する第1シート11の第1凸部1aの位置に、他方の面を形成する第2シート12の第2凸部2aが位置している。更に、第1シート11の第1凹部1bの位置に、第2シート12の第2凹部2bが位置している。第1シート11と第2シート12とは、第1凹部1bの底部と第2凹部2bの底部とが重なる位置に形成された接合部14で接合されて、凹凸形状の複合伸縮シート10Aとなっている。これによって、複合伸縮シート10Aは、良好な通気性を呈するようになるとともに、圧縮変形し易くなり良好なクッション性を呈するようになる。
【0029】
図1(c)に示すとおり、複合伸縮シート10Aをその直交方向Yに沿って見たとき、第1シート11においては、第1凸部1aは、直交方向Yに隣り合う1個の弾性部材13を越えて隣り合う弾性部材13xが配された位置において頂部の高さが相対的に低い第1小凸部1tと、第1小凸部1tに隣接し且つ頂部の高さが相対的に高い第1大凸部1kとからなる。第1小凸部1tと第1大凸部1kは後述する加工によって形成される。複合伸縮シート10Aにおいては、その直交方向Yの略全域にわたって、第1小凸部1tと第1大凸部1kとが交互に配され、且つ連続しており、第1凸部1aが直交方向Yに沿って直線状に延びている。第1大凸部1kでは、その頂部の伸縮方向X側の両角部において、構成繊維が屈曲しており、凸の形状が潰れ難くなっている。
【0030】
図1(c)に示すように、複合伸縮シート10Aを直交方向Yに沿ってみたとき、第1大凸部1kは直交方向Yに沿う長さW1が相対的に長く、第1小凸部1tは直交方向Yに沿う長さW2が相対的に短くなっている。各第1大凸部1kの長さW1は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。同様に、直交方向Yに沿って見たとき、各第1小凸部1tの長さW2は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0031】
図1(c)に示すように、第2シート12においては、第2凸部2aは、弾性部材13xと直交方向Yに隣り合う別の弾性部材13zが配された位置において頂部の高さが相対的に低い第2小凸部2tと、第2小凸部2tに隣接し且つ頂部の高さが相対的に高い第2大凸部2kとからなる。複合伸縮シート10Aにおいては、その直交方向Yの略全域にわたって、第2小凸部2tと第2大凸部2kとが交互に配され、且つ連続しており、第2凸部2aが直交方向Yに沿って直線状に延びている。複合伸縮シート10Aでは、直交方向Yに沿ってみたとき、第2大凸部2kの直交方向Yに沿う長さは第1大凸部1kの長さW1と同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。同様に第2小凸部2tの直交方向Yに沿う長さは第1小凸部1tの長さW2と同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0032】
更に、
図1(c)に示すとおり、第1シート11においては、第1凹部1bは、前記弾性部材13xが配された位置において底部の深さが相対的に浅い第1小凹部1sと、第1小凹部1sに隣接し且つ底部の深さが相対的に深い第1大凹部1dとからなる。第1大凹部1dは第1小凹部1sを除いた部分となる。複合伸縮シート10Aにおいては、その直交方向Yの略全域にわたって、第1小凹部1sと第1大凹部1dとが交互に配され、且つ連続しており、第1凹部1bが直交方向Yに沿って直線状に延びている。第1シート11においては、直交方向Yに沿って見たとき、第1大凸部1kと第1大凹部1dとの位置が一致しており、第1小凸部1tと第1小凹部1sとの位置が一致している。すなわち、直交方向Yに沿ってみたとき、第1大凹部1dの直交方向Yに沿う長さは第1大凸部1kの長さW1と同じであり、第1小凹部1sの直交方向Yに沿う長さは第1小凸部1tの長さW2と同じである。
【0033】
図1(c)に示すとおり、第2シート12においては、第2凹部2bは、前記別の弾性部材13zが配された位置において底部の深さが相対的に浅い第2小凹部2sと、第2小凹部2sに隣接し且つ底部の深さが相対的に深い第2大凹部2dとからなる。複合伸縮シート10Aにおいては、その直交方向Yの略全域にわたって、第2小凹部2sと第2大凹部2dとが交互に配され、且つ連続しており、第2凹部2bが直交方向Yに沿って直線状に延びている。第2シート12においては、直交方向Yに沿って見たとき、第2大凸部2kと第2大凹部2dとの位置が一致しており、第2小凸部2tと第2小凹部2sとの位置が一致している。すなわち、直交方向Yに沿ってみたとき、第2大凹部2dの直交方向Yに沿う長さは第1大凸部1kの長さW1と同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。同様に第2小凹部2sの直交方向Yに沿う長さは第1小凸部1tの長さW2と同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0034】
以上のように、第1凸部1a及び第2凸部2aが直交方向Yに沿って直線状に配置され、且つ第1凹部1b及び第2凹部2bも直交方向Yに沿って直線状に配置されている。その結果、複合伸縮シート10Aにおいては、
図1(b)に示すように、凹凸形状の第1シート11と凹凸形状の第2シート12とで囲まれた空間15が、直交方向Yに沿って直線状に延び、且つ伸縮方向Xに一定の間隔を置いて規則的に配された状態となる。これによって、複合伸縮シート10Aは、空間15を通じて良好な通気性を呈するようになるとともに、圧縮変形し易くなり良好なクッション性を呈するようになる。
【0035】
図1(c)に示すように、接合部14は、弾性部材13を挟んで直交方向Yに隣り合う第1凹部1bの底部と第2凹部2bの底部とが重なる位置に形成されている。接合部14は、
図1(c)及び
図2に示すように、各弾性部材13の直交方向Yの両側に配され、且つ、
図1(b)及び
図2に示すように、各弾性部材13の伸縮方向Xに沿って一定の間隔を置いて規則的に配されている。このように接合部14が各弾性部材13の両側に配されているので、複合伸縮シート10Aの伸縮時に弾性部材13どうしが接触し難く、複合伸縮シート10Aの伸縮性が向上すると共に、複合伸縮シート10Aの見栄えが良好になる。
【0036】
複合伸縮シート10Aでは、
図1(c)及び
図2に示すように、弾性部材13の両側に配された接合部14,14の間隔が、弾性部材13の直径よりも広いため、弾性部材13が、接合部14,14によって挟持固定されていない。弾性部材13は、
図2に示すように、伸縮方向Xの両端部3aに配された接合領域19のみにおいて、第1シート11及び第2シート12に固定されている。そのため、複合伸縮シート10Aの伸縮性が向上する。接合領域19は、弾性部材13の両端部3aに位置しており、直交方向Yに直線状に延びている。弾性部材13の伸縮方向Xの両端部のみが第1シート11及び第2シート12に固定されているとは、接合領域19にて弾性部材13の端部が接合領域19内にある場合のみならず、
図2で示される接合領域19を伸縮方向Xのシート外側に越えて弾性部材13の端部が位置する場合も含む意味である。
【0037】
以上の構成を有する複合伸縮シート10Aは、第1シート11側においては、その直交方向Yの全域にわたって延びる第1凸部1a及び第1凹部1bが、伸縮方向Xに沿って交互に規則的に配置された状態になっている。一方、第2シート12側においては、その直交方向Yの全域にわたって延びる第2凸部2a及び第2凹部2bが、伸縮方向Xに沿って交互に規則的に配置された状態になっている。そして、複合伸縮シート10Aを、その長手方向に沿って伸縮させると、その伸縮の程度に応じて第1凸部1a及び第2凸部2aの高さ、並びに第1凹部1b及び第2凹部2bの深さが可逆的に増減する。これによって、複合伸縮シート10Aは、外観の印象が高まるとともに、良好な風合いを呈するようになる。
【0038】
複合伸縮シート10Aを構成する部材である第1シート11及び第2シート12は、
図1(b)に示すように、シートの構成繊維どうしの交点を固定する繊維固定部間の距離が相対的に短い第1領域16と、該繊維固定部間の距離が相対的に長い第2領域17とを有している。「繊維固定部間の距離が相対的に短い」部分は、「繊維固定部間の距離が相対的に長い」部分に比べて、延伸加工の延伸倍率が相対的に低い部分であるか、又は延伸加工が施されていない部分である。「繊維固定部」とは繊維同士の結合点であり、スパンボンド不織布やヒートロール不織布に見られるようなエンボス融着部、エアスルー不織布に見られるような鞘部同士の融着点、メルトブローン不織布に見られるような繊維同士の融着点、レジンボンド不織布みみられる繊維間接着剤による結合点などを意味する。スパンレース不織布やニードルパンチ不織布の場合は繊維の絡みあい部分に相当する。「繊維固定部間の距離が相対的に短い」部分であるか、「繊維固定部間の距離が相対的に長い」部分であるかは、測定対象サンプルの表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)又はマイクロスコープを用いて観察する。第1シート11及び第2シート12となる前の元の不織布が、スパンボンド不織布である場合には20カ所以上、エアスルー不織布又はエアレイド不織布、レジンボンド不織布である場合には40カ所以上、構成繊維の融着点間の伸縮方向Xの距離を測定し、繊維固定部間の距離が短い第1領域16と、繊維固定部間の距離が長い第2領域17とを区別する。スパンレース不織布やニードルパンチ不織布の場合は光透過量の少ない部分が繊維密度が高く繊維固定部間の距離が短いことから、この部分を第1領域16とし、光透過量の多い部分を第2領域17とする。第1領域16及び第2領域17のうち、第2領域17においては繊維固定部間の距離が相対的に長いので、複合伸縮シート10Aの伸縮時に、良好な肌触りを呈するようになるとともに、弾性部材13の伸縮時に変形し易くなり良好な伸縮性を呈するようになる。具現化の仕方を以下に述べる。
【0039】
第1領域16は、
図1(b)に示すように、第1シート11における第1凸部1aの頂部及び第1凹部1bの底部に位置し、且つ第2シート12における第2凸部2aの頂部及び第2凹部2bの底部に位置している。第1凸部1a及び第2凸部2aにおける第1領域16位置は接合部14間のシート長さの略中央に位置し前後していてもよい。したがって、第1領域16は、第1シート11及び第2シート12それぞれにおいて、直交方向Yに延在している。直交方向Yに延在しているとは、直交方向Yに連続して延びていることのみならず、直交方向Yに間欠的に配されて延びていることも含む意味である。
図1(c)に示すように、第1領域16は、第1シート11においては、第1凸部1aを構成する第1大凸部1k及び第1小凸部1tそれぞれの頂部に位置するとともに、第1凹部1bを構成する第1大凹部1d及び第1小凹部1sそれぞれの底部にも位置している。第2シート12においては、第1領域16は、第2凸部2aを構成する第2大凸部2k及び第2小凸部2tそれぞれの頂部に位置するとともに、第2凹部2bを構成する第2大凹部2d及び第2小凹部2sそれぞれの底部にも位置している。したがって、第1領域16は、第1シート11及び第2シート12それぞれにおいて、直交方向Yに連続して延びている。第1領域16が直交方向Yに延在していることによって、複合伸縮シート10Aにおいては、直交方向Yに沿って延びる空間15が維持され易くなる。その結果、複合伸縮シート10Aは、空間15を通じて良好な通気性を呈するようになるとともに、圧縮変形し易くなり良好なクッション性を呈するようになる。また、第1領域16が、第1凹部1bの底部と第2凹部2bの底部とを接合する接合部14の位置にしている為、接合部14の接合強度が向上すると共に、直交方向Yに沿って延びる空間15が維持され易い。
【0040】
一方、第2領域17は、
図1(b)に示すように、第1シート11における第1凸部1aの頂部と第1凹部1bの底部との間に位置している。これとともに第2領域17は、第2シート12における第2凸部2aの頂部と第2凹部2bの底部との間に位置している。したがって、第2領域17も、第1シート11及び第2シート12それぞれにおいて、直交方向Yに延在している。第2領域17は、第1シート11においては、第1凸部1aを構成する第1大凸部1kの頂部と第1凹部1bを構成する第1大凹部1dの底部との間に位置し、第1凸部1aを構成する第1小凸部1tの頂部と第1凹部1bを構成する第1小凹部1sの底部との間に位置している。そして、第2領域17は、第2シート12においては、第2凸部2aを構成する第2大凸部2kの頂部と第2凹部2bを構成する第2大凹部2dの底部との間に位置し、第2凸部2aを構成する第2小凸部2tの頂部と第2凹部2bを構成する第2小凹部2sの底部との間に位置している。したがって、第2領域17は、第1シート11及び第2シート12それぞれにおいて、直交方向Yに連続して延びている。そのため、複合伸縮シート10Aは、高い伸縮性を呈するようになるとともに、良好なクッション性を呈するようになる。
【0041】
次に、本発明の吸収性物品において用いられる複合伸縮シートの第2及び第3実施形態について、
図3及び
図4を参照しながら説明する。第2及び第3実施形態に係る複合伸縮シート10B,10Cについては、第1実施形態に係る複合伸縮シート10Aと異なる構成部分について説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない点については、複合伸縮シート10Aと同様であり、複合伸縮シート10Aの説明が適宜適用される。
【0042】
図3(c)に示すように、本実施形態に係る複合伸縮シート10Bをその直交方向Yに沿って見たとき、凹凸形状の第1シート11は、弾性部材13が配されている部分における第1凸部1aの頂部が水平に直交方向Yに直線状に延びている。
【0043】
図3(c)に示すとおり、複合伸縮シート10Bをその直交方向Yに沿って見たとき、第1シート11においては、第1凹部1bの底部が直交方向Yに直線状に延びている。
【0044】
一方、第2シート12においては、
図3(c)に示すように、第2凸部2aは、弾性部材13が配された位置において頂部の高さが相対的に低い第2小凸部2tと、第2小凸部2tに隣接し且つ頂部の高さが相対的に高い第2大凸部2kとからなる。したがって複合伸縮シート10Bにおいては、その直交方向Yの略全域にわたって、第2小凸部2tと第2大凸部2kとが交互に配され、且つ連続しており、第2凸部2aが直交方向Yに直線状に延びている。
【0045】
図3(c)に示すとおり、複合伸縮シート10Bをその直交方向Yに沿って見たとき、第2凹部2bは、弾性部材13が配された位置において底部の深さが相対的に浅い第2小凹部2sと、第2小凹部2sに隣接し且つ底部の深さが相対的に深い第2大凹部2dとからなる。したがって複合伸縮シート10Bにおいては、その直交方向Yの略全域にわたって、第2小凹部2sと第2大凹部2dとが交互に配され、且つ連続しており、第2凹部2bが直交方向Yに直線状に延びている。
【0046】
本実施形態に係る複合伸縮シート10Bにおいては、先に述べた実施形態に係る複合伸縮シート10Aと同様に、
図3(b)に示すように、繊維固定部間の距離が相対的に短い第1領域16は、第1シート11における第1凸部1aの頂部及び第1凹部1bの底部に位置し、且つ第2シート12における第2凸部2aの頂部及び第2凹部2bの底部に位置している。また、繊維固定部間の距離が相対的に長い第2領域17は、第1シート11における第1凸部1aの頂部と第1凹部1bの底部との間に位置し、且つ第2シート12における第2凸部2aの頂部と第2凹部2bの底部との間に位置している。このように繊維固定部間の距離が相対的に長い第2領域17が第1シート11及び第2シート12それぞれにおいて、直交方向Yに連続して延びているため、複合伸縮シート10Bは、高い伸縮性を呈するようになるとともに、良好なクッション性を呈するようになる。
【0047】
図4(a)及び
図4(b)に示す第3実施形態に係る複合伸縮シート10Cは、一方の面及び他方の面がそれぞれ凹凸形状となっているが、典型的にはその表裏の形状が一致した形状になっている。詳述すると、一方の面を形成する凹凸形状の第1シート11と、他方の面を形成する凹凸形状の第2シート12の凹凸の位相が一致するように、第1シート11の第1凸部1aの位置に、第2シート12の第2凸部2aが位置している。更に、第1シート11の第1凹部1bの位置に、第2シート12の第2凹部2bが位置している。本実施形態では、第1凸部1a及び第2凸部2aが同じ方向に隆起している。複合伸縮シート10Cは、第1シート11の底部になりえる第1凸部1aの頂部と、第2シート12の底部になりえる第2凸部2aの頂部とが重なる位置に、接合部14を有している。複合伸縮シート10Cは、一方の面及び他方の面の凹凸形状が一致した形状となっていることで、どちらの面を用いても同様の良好なクッション性を呈するようになる。
【0048】
図4(c)に示すとおり、複合伸縮シート10Cをその直交方向Yに沿って見たとき、第1シート11においては、第1凸部1aは、弾性部材13が配された位置において頂部の高さが相対的に高い第1大凸部1kと、第1大凸部1kに隣接し且つ頂部の高さが相対的に低い第1小凸部1tとからなる。複合伸縮シート10Cにおいては、その直交方向Yの略全域にわたって、第1小凸部1tと第1大凸部1kとが交互に配され、且つ連続しており、第1凸部1aが直交方向Yに直線状に延びている。
【0049】
第2シート12においては、
図4(c)に示すとおり、第2凸部2aは、弾性部材13が配された位置において頂部の高さが相対的に低い第2小凸部2tと、第2小凸部2tに隣接し且つ頂部の高さが相対的に高い第2大凸部2kとからなる。したがって複合伸縮シート10Cにおいては、その直交方向Yの略全域にわたって、第2小凸部2tと第2大凸部2kとが交互に配され、且つ連続しており、第2凸部2aが直交方向Yに直線状に延びている。複合伸縮シート10Cでは、直交方向Yに沿ってみたとき、第2大凸部2kの直交方向Yに沿う長さは第1小凸部1tの長さと略同じである。
【0050】
更に、
図4(c)に示すとおり、第1シート11においては、第1凹部1bは、弾性部材13が配された位置において底部の深さが相対的に浅い第1小凹部1sと、第1小凹部1sに隣接し且つ底部の深さが相対的に深い第1大凹部1dとからなる。したがって複合伸縮シート10Cにおいては、その直交方向Yの略全域にわたって、第1小凹部1sと第1大凹部1dとが交互に配され、且つ連続しており、第1凹部1bが直交方向Yに直線状に延びている。第1シート11においては、直交方向Yに沿って見たとき、第1大凹部1dと第1小凸部1tとの位置が一致している。すなわち、直交方向Yに沿ってみたとき、第1大凹部1dの直交方向Yに沿う長さは第1小凸部1tの長さと略同じである。
【0051】
そして、
図4(c)に示すとおり、第2シート12においては、第2凹部2bは、弾性部材13が配された位置において底部の深さが相対的に浅い第2小凹部2sと、第2小凹部2sに隣接し且つ底部の深さが相対的に深い第2大凹部2dとからなる。したがって複合伸縮シート10Cにおいては、その直交方向Yの略全域にわたって、第2小凹部2sと第2大凹部2dとが交互に配され、且つ連続しており、第2凹部2bが直交方向Yに直線状に延びている。第2シート12においては、直交方向Yに沿って見たとき、第2大凸部2kと第2大凹部2dとの位置が一致し、第1大凹部1dと第1小凸部1tとの位置が一致している。すなわち、直交方向Yに沿ってみたとき、第2大凸部2kの直交方向Yに沿う長さは、第2大凹部2dの直交方向Yに沿う長さと略同じであり、第1大凹部1d及び第1小凸部1tの直交方向Yに沿う長さとも略同じである。
【0052】
複合伸縮シート10Cを構成する部材である第1シート11及び第2シート12は、
図4(b)に示すように、繊維固定部間の距離が相対的に短い第1領域16と、繊維固定部間の距離が相対的に長い第2領域17とを有している。第1領域16は、第1シート11における第1凸部1aの頂部及び第1凹部1bの底部に位置し、且つ第2シート12における第2凸部2aの頂部及び第2凹部2bの底部に位置している。
図4(c)に示すように、第1領域16は、第1シート11においては、第1凸部1aを構成する第1大凸部1k及び第1小凸部1tそれぞれの頂部に位置しているとともに、第1凹部1bを構成する第1大凹部1d及び第1小凹部1sそれぞれの底部にも位置している。第2シート12においては、第1領域16は、第2凸部2aを構成する第2大凸部2k及び第2小凸部2tそれぞれの頂部に位置しているとともに、第2凹部2bを構成する第2大凹部2d及び第2小凹部2sそれぞれの底部にも位置している。したがって、第1領域16は、第1シート11及び第2シート12それぞれにおいて、直交方向Yに沿って連続して延びている。
【0053】
一方、第2領域17は、
図4(b)に示すように、第1シート11における第1凸部1aの頂部と第1凹部1bの底部との間に位置し、且つ第2シート12における第2凸部2aの頂部と第2凹部2bの底部との間に位置している。第2領域17は、第1シート11においては、第1凸部1aを構成する第1大凸部1kの頂部と第1凹部1bを構成する第1大凹部1dの底部との間に位置しているとともに、第1凸部1aを構成する第1小凸部1tの頂部と第1凹部1bを構成する第1小凹部1sの底部との間にも位置している。第2シート12においては、第2領域17は、第2凸部2aを構成する第2大凸部2kの頂部と第2凹部2bを構成する第2大凹部2dの底部との間に位置しているとともに、第2凸部2aを構成する第2小凸部2tの頂部と第2凹部2bを構成する第2小凹部2sの底部との間にも位置している。したがって、第2領域17は、第1シート11及び第2シート12それぞれにおいて、直交方向Yに沿って連続して延びている。そのため、複合伸縮シート10Cは、高い伸縮性を呈するようになるとともに、良好なクッション性を呈するようになる。
【0054】
上述した第1~第3実施形態に係る複合伸縮シート10A~10Cにおいては、弾性部材13が、伸縮方向Xの両端部3aに配された直交方向Yに延びる接合領域19のみで固定されている。また弾性部材13の両端部3aを接合領域19で固定すると共に、
図5(a)に示すように、弾性部材13の両側に配された接合部14,14の間隔を狭くし、弾性部材13が、伸縮方向Xに沿って間隔を置いて複数箇所の接合部14,14で第1シート11及び第2シート12に挟持固定されていてもよい。
図5(b)に示すように、弾性部材13が伸長した状態から収縮したときの該弾性部材13の周長よりも、接合部14,14どうしで挟まれた部分における第1シート11及び第2シート12で該弾性部材13の周りを囲む長さが短くなるように、接合部14,14どうしの間隔を狭くすれば、接合部14,14どうしの挟圧により、弾性部材13と第1シート11及び第2シート12との摩擦力が高められ、弾性部材13が固定され易くなる観点から好ましい。また、挟圧と同時に、弾性部材13と第1シート11及び/または第2シート12とが、接合時の加熱により、その界面で融着していることが、弾性部材13がシートからより抜けにくくなるため好ましい。
【0055】
以上の各実施形態のうち、第1及び第2実施形態に係る複合伸縮シート10A,10Bは、弛緩状態(フリーテンション)において、第1凸部1aの高さh1(
図1(b)参照)が1mm以上であることが好ましく、更に好ましくは3mm以上である。また、15mm以下であることが好ましく、更に好ましくは8mm以下である。第2凸部2aの高さh2(
図1(b)参照)は1mm以上であることが好ましく、更に好ましくは3mm以上である。また、15mm以下であることが好ましく、更に好ましくは8mm以下である。これらは次の方法によって形成することが可能となる。(1)後述するロール間の噛み合わせ量を調整する方法(噛み合わせ量が多くなると凸部の高さの高いものとなるが、噛み合わせ量が高すぎるとシートの弾性が低下して凸部の高さが減少する。)、(2)後述するロール間へシートを送り込む速度と凸ロールの周速との速度差を調整する方法(シートを送り込む速度が速いほど、延伸倍率が低下し、シートの弾性が高くなる。また、シートの延伸後の戻り量が小さくなるため、接合部14間のシート長さが長くなる。その結果、凸部の高さの高いものとなる。)、(3)弾性部材13の挿入張力を調整する方法(挿入張力が高いほど、収縮量が増し、高さが高くなる。)によって達成することができる。このようにすることで、適度な力で潰れ易く、反発力もあるものとなり、クッション性に優れるとともに前記空間15を形成しやすくなる。これらによって延伸倍率や伸び止まり伸度も調整される。
【0056】
第3実施形態に係る複合伸縮シート10Cの弛緩状態においては、凹凸の高さh3(
図4(b)参照)は1mm以上であることが好ましく、更に好ましくは4mm以上である。また、15mm以下であることが好ましく、更に好ましくは10mm以下である。
【0057】
高さh1~高さh3は、次のようにして測定することができる。複合伸縮シート10を平板の上に弛緩状態にて置き、その上から荷重0.5cN/cm
2となるように平板を載せる。弾性部材13のない部分の断面をマイクロスコープで側面より観察(
図3(b)と同方向)し、高さh1~高さh3をそれぞれ測定する。異なるサンプル5点を用いて測定し、その平均値とする。おむつや生理ナプキン等の吸収性物品より複合伸縮シートを採取する場合は、接着部分をコールドスプレーなどを用いて剥がす。
【0058】
複合伸縮シートにおける伸縮方向Xに隣り合う接合部14間に多数の凹凸を設けて良好なクッション性を呈するようにする観点から、複合伸縮シート10A,10B,10Cにおいて、弛緩状態の複合伸縮シートを
図1(b)に示すように断面視して、複合伸縮シートの伸縮方向Xにおいて、第1領域16の繰り返しピッチを2倍した値P1に対する隣り合う接合部14どうしのピッチP2の比であるP2/P1の値が、2以上であることが好ましく、更に好ましくは4以上であり、40以下であることが好ましく、更に好ましくは10以下である。後述する伸び止まり伸度状態において、値P1は0.5mm以上20mm以下が好ましく、ピッチP2は1.5mm以上50mm以下が好ましい。後述する方法によってP2/P1の値を整数倍とすることで、見た目にもきれいな凹凸が形成される。
図1~4では典型的な例として(P2/P1)が1の場合について述べたが、(P2/P1)が2以上の場合、接合部14の間に多くの第1領域16と第2領域17を含む。第1領域16と第2領域17の境界に延伸力または熱により屈曲点を形成する場合には、接合間に多くの屈曲点を有する。このため、圧縮時に圧縮変形量が大きく、小さな圧縮抵抗を有するものとなり、ソフトなクッション性を有するものとなる。また、実施形態3においては、
図4(b)のように第1シートが第2シートに添った形状とならず、第1シートと第2シート間に空間15を形成しうる。値P1及びピッチP2は、次のようにして測定する。
【0059】
<第1領域16の繰り返しピッチを2倍した値P1の測定方法>
自然状態の複合伸縮シートから、弾性部材13と伸縮方向Xに11個分の接合部14を含んだ測定対象サンプルを矩形状に切り出す。測定対象サンプルにテンションが加わらない状態において、11個の第1領域16のうちの伸縮方向X両端に位置する第1領域16に、油性のマジックインキ等を用いて印を付ける。第1領域16は凸部または凹部(
図1(b)の16)として観察される。後述する伸び止まり伸度になるように測定対象サンプルを伸長させる。そして、10個分の第1領域16間の伸縮方向Xの長さを測定する。測定した値を10で除して得られる値を第1領域16の繰り返しピッチ間隔とする。測定は異なる部位で3回測定し、その平均値を2倍した値を値P1とする。
【0060】
<伸縮方向Xに隣り合う接合部14のピッチP2の測定方法>
自然状態の複合伸縮シートから、弾性部材13と伸縮方向Xに11個分の接合部14を含んだ測定対象サンプルを矩形状に切り出す。測定対象サンプルに張力が加わらない状態において、11個の接合部14のうちの伸縮方向X両端に位置する接合部14に、油性のマジックインキ等を用いて印を付ける。次いで、後述する伸び止まり伸度になるように張力を加えて測定対象サンプルを伸長させる。そして10個分の接合部14間の伸縮方向Xの長さを測定する。測定した値を10で除して得られる値を、伸縮方向Xに隣り合う接合部14間隔とする。測定は異なる部位で3回測定し、その平均値をピッチP2とする。
【0061】
第1ないし第3実施形態に係る複合伸縮シート10A~10Cにおいて、表面側と裏面側とで異なる肌触りを呈するようにする観点から、第1シート11における第1領域16の繰り返しピッチを2倍した値P11と、第2シート12における第1領域16の繰り返しピッチを2倍した値P12とが異なっていることが好ましい。P12>P11の場合、(P12/P11)の比が2倍以上20倍以下、さらには3倍以上10倍以下であることが好ましい。P12<P11の場合は(P11/P12)の比を用いる。このようにすることで接合部14間において片面側の第1領域16の繰り返しピッチを細かくすることができ、繰り返しピッチが小さいと肌触りのやわらかいものとなる。値P11、値P12は前述した値P1の測定方法と同様にして測定する。
【0062】
第1及び第2実施形態に係る複合伸縮シート10A,10Bにおいては、例えば第1シート11の凹凸形状の凸部の高さと第2シート12の凹凸形状の凸部の高さを変更して、表面側と裏面側とで異なる肌触りを呈するようにする観点から、複合伸縮シート10A,10Bにおいて、第1シート11に形成された一の接合部14の中心位置から該接合部の伸縮方向Xに隣り合う別の接合部14の中心位置までの第1シート11に沿う長さL1と、第2シート12に形成された一の接合部14の中心位置から該接合部の伸縮方向Xに隣り合う別の接合部14の中心位置までの第2シート12に沿う長さL2とが異なることが好ましい。上記沿う長さが長い面側は自由度が増すことでソフトな風合いとなり、沿う長さが短い面側は延伸量が少ないため強度の高いものが得られる。長さL1と長さL2との差は、絶対値で表して、2mm以上であることが好ましく、更に好ましくは3mm以上であり、15mm以下であることが好ましく、更に好ましくは8mm以下である。該絶対値は、たとえば沿う長さL1がL2よりも短い場合、L1は上述したピッチP2の測定方法と同様の方法によって、測定することができる。L2は第1シート11の凸状ループ部(15)を直交方向Yに沿って切断し、このサンプルを用いて伸び止まり伸度を測定したのち、この値を用いて、ピッチP2の測定方法と同様の方法によって測定することができる。
【0063】
第1シート11の凹凸形状の賦形性が良好であり、見栄えが良くなる観点から、第1ないし第3実施形態に係る複合伸縮シート10A~10Cにおいて、第1シート11となる前の元のシート11aにおける伸縮方向Xの最大伸度が、50%以上であることが好ましく、更に好ましくは140%以上であり、700%以下であることが好ましく、更に好ましくは500%以下である。該最大伸度は、次のようにして測定することができる。
【0064】
<最大伸度の測定方法>
第1シート11または第2シート12を用い、伸縮方向Xへ200mm、直交方向Yへ50mmの大きさで矩形の試験片を切り出す。引張り試験機(株式会社島津製作所製オートグラフAG-1kNIS)に試験片を装着する。チャック間距離は150mmとする。試験片を試験片の伸縮方向Xへ300mm/分の速度で伸長させ、そのときの荷重を測定する。最大強度点における伸度を最大伸度とする。サンプル数はn5として、その平均値から最大伸度を求める。
【0065】
使用時の伸度範囲が広くなり、体型の違いによる適用範囲が増す点や激しい動きに追従しやすくする観点から、第1ないし第3実施形態に係る複合伸縮シート10A~10Cにおいて、伸縮方向Xの伸び止まり伸度が、100%以上であることが好ましく、更に好ましくは300%以上であり、600%以下であることが好ましく、更に好ましくは500%以下である。高い伸び止まり伸度を得るには、第1領域16が、第1シート11及び第2シート12それぞれにおいて、直交方向Yに全幅に渡って連続することが好ましい。該伸び止まり伸度は、次のようにして測定することができる。
【0066】
<伸び止まり伸度の測定方法>
複合伸縮シート10A~10Cを用い、伸縮方向Xへ150mm、それと直交する直交方向Yへ50mmの大きさで矩形の試験片を切り出す。引張り試験機(株式会社島津製作所製オートグラフAG-1kNIS)に弛緩状態の試験片を装着する。チャック間距離は100mmとする。試験片を試験片の伸縮方向Xへ300mm/分の速度で伸長させ、そのときの荷重を測定する。荷重が500cN/50mmとなったときの試験片のチャック間距離をBとし、元の試験片のチャック間距離をAとしたとき、{(B-A)/A}×100を伸び止まり伸度(%)とする。荷重が500cN/50mmになる前にサンプルが破断する場合は、最大強度点における伸度に0.8倍した値を伸び止まり伸度とする。サンプル数はn5として、その平均値から伸び止まり伸度を求める。
【0067】
第1シート11及び第2シート12の凹凸形状の賦形性が良好であり、見栄えが良くなる観点から、
図2に示す平面視において、第1ないし第3実施形態に係る複合伸縮シート10A~10Cは、接合部14の伸縮方向Xの長さL3が、接合部14の直交方向Yの長さL4よりも短いことが好ましい。長さL3に対する長さL4の比(L4/L3)は、2以上であることが好ましく、更に好ましくは3以上であり、20以下であることが好ましく、更に好ましくは1以下である。長さL3の値は0.3mm以上2mm以下、長さL4の値は1mm以上5mm以下であることが好ましい。接合部14の伸縮方向Xの長さL3は、接合部14における伸縮方向Xの最大長さであり、接合部14の直交方向Yの長さL4は、接合部14における直交方向Yの最大長さである。このようにすることで接合部14によって収縮するのを阻害する量が減るため伸縮時の永久歪みが小さくなり、かつ、第1シート11及び第2シート12間の剥離強度の高いものが得られる点で好ましい。該長さは、マイクロスコープにて測定することができる。
また、接合部14は弾性部材13が糸状である場合、直交方向Yにおいて弾性部材13間に直交方向Yへ間欠的に1個以上5個以下の接合部14を設けることが好ましい。それぞれの接合部14の外周長さを足した値が大きくなるようにした方が第1シート11と第2シート12間の接合強度を高めることができる。
【0068】
吸収性物品の通気性を向上させる観点から、第1ないし第3実施形態に係る複合伸縮シート10A~10Cにおいて、接合部14と重なる位置に、或いは伸縮方向Xに隣り合う接合部14間に、複合伸縮シートを貫通する開孔が形成されていることが好ましい。
【0069】
第1ないし第3実施形態に係る複合伸縮シート10A,10B,10Cを伸縮方向Xに伸長し易くする観点から、伸長状態の弾性部材13において、弾性部材13の径が伸縮方向Xに沿って周期的に変化していることが好ましい。このように周期的に径が変化している弾性部材13は、凸ロールによる熱の影響によって弾性部材13が収縮しにくくなる部分ができることによってその部分が相対的に細くなったり、後述する狭圧部分によって相対的に細くなったりすることにより形成される。
【0070】
本発明の吸収性物品において用いられる複合伸縮シートは、上述の各実施形態のものに何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、上述の各実施形態に係る複合伸縮シート10A~10Cにおける各構成要件は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜組み合わせて実施できる。
【0071】
複合伸縮シート10A~10Cを構成する第1及び第2シート11,12のうちの少なくとも第1シート11には、例えば不織布を始めとする各種の繊維シートを用いることができる。前記の不織布としては、例えばスパンボンド不織布、サーマルボンド不織布(ポイント・ボンド不織布、ヒートエンボス不織布、エアスルー不織布等)、メルトブローン不織布、エアレイド不織布、レジンボンド不織布などの公知の不織布を特に制限なく用いることができる。特にポリエチレンやポリプロピレンを主体としたスパンボンド不織布が接合強度とクッション性の両立がしやすい点で好ましい。各シート11,12は、その坪量がそれぞれ独立に10g/m2以上であることが好ましく、更に好ましくは12g/m2以上、一層好ましくは15g/m2以上である。また、100g/m2以下であることが好ましく、更に好ましくは50g/m2以下、一層好ましくは30g/m2以下である。
【0072】
第2シート12としては、上述した繊維シート以外に、合成樹脂製の樹脂フィルムを用いることもできる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等の高分子材料からなるフィルムや、透湿性フィルム等が挙げられる。好ましくは炭酸カルシウムを配合したポリエチレン透湿フィルムやポリエーテルポリウレタン透湿フィルムが透湿バックシートとして好ましい。
第1及び第2シート11,12の少なくとも一方に、最大伸度が50%以上、好ましくは100%以上、より好ましくは140%以上のシートを用いると、加工時に破断されにくく、強度の高いものが得られる点で好ましい。これには未延伸のフィルムを用いたり、不織布の場合には樹脂成分としてポリエチレンを主体とした部分に高密度ポリエチレン(HDPE)や線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を主体としてオレフィン系エラストマー(プロピレン、ブテン、オクテン等を1種以上共重合したエチレン系のα-オレフィンエラストマー)を10~30質量%ブレンドさせることが好ましい。ポリプロピレンを主体とした部分にはアイソタクチックホモポリプロピレンを主体としてエチレン、ブテン、オクテン等を1種以上共重合したプロピレン系エラストマーや低立体規則性のポリプロピレンを10~30質量%ブレンドさせることが好ましい。これらはそれぞれ単独で用いても良いし複合繊維として用いることもできる。
【0073】
各シート11,12が不織布である場合、該不織布を構成する繊維は、各種の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンやポリプロピレンやポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレンやポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、アクリル等のアクリロニトリル系樹脂、メタクリル樹脂、ビニリデン系樹脂、天然繊維のコットン、パルプ、ポリ乳酸などの生分解性プラスチック等から構成することができる。あるいは、これらの樹脂の2種以上のブレンド物から繊維を構成したり、これらの樹脂を2種以上組み合わせた複合繊維(芯鞘型繊維やサイド・バイ・サイド型繊維、偏芯したクリンプを有する芯鞘繊維、分割繊維)を用いたりすることもできる。また、繊維に繊維着色剤、静電気防止特性剤、潤滑剤、滑剤、親水剤など少量の添加物を付与した繊維を用いることもできる。
【0074】
両シート11,12間に固定される弾性部材13は、伸縮方向に50%伸長させたときに、伸度が25%以上戻るものを広く包含し、例えば弾性樹脂から構成することができる。弾性樹脂としては、この種の伸縮シートに用いられてきたものと同様のものを用いることができる。例えばスチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ネオプレンゴム等の合成ゴム、天然ゴム、EVAゴム、SIS(スチレン-イソプレン-スチレン)ゴム、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)ゴム、SEPS(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン)ゴム、伸縮性ポリオレフィン(前記エチレン系エラストマー、前記プロピレン系エラストマーなど)、ポリウレタン等が挙げられる。形状としては、フィルム状、ネット状等のシート形状のものや、断面が短形、正方形、円形、多角形状等の糸状なしい紐状(平ゴム)のもの、又はマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を用いることができる。
【0075】
糸状の弾性部材13の繊度は、10dtex以上とすることが好ましく、更に好ましくは150dtex以上、一層好ましくは300dtex以上である。また、1600dtex以下とすることが好ましく、更に好ましくは1300dtex以下、一層好ましくは1000dtex以下である。
【0076】
シート状の弾性部材13としては、例えば特開2008-179128号公報に記載の伸縮シート、特開2004-244791号公報に記載の伸縮性不織布、公表平5-508359号公報に記載の弾性ラミネート、特表2003-524534号に記載の弾性ラミネート等を用いることができる。
【0077】
次に、第1実施形態に係る複合伸縮シート10Aの好適な製造方法を、
図6ないし
図9を参照しながら説明する。本製造方法は、(1)凹凸賦形された第1シート11を製造する第1工程と、(2)第1工程と並行して、凹凸賦形された第2シート12を製造する第2工程と、(3)第1シート11及び第2シート12を接合して複合伸縮シート10Aを製造する第3工程とに大別される。
図6には、これらの工程を行うための製造装置20が示されている。
【0078】
図6に示すように、製造装置20は、互いに噛み合う第1凸ロール21及び第1賦形ロール25を備え、さらに互いに噛み合う第2凸ロール22及び第2賦形ロール26を備えている。これらのロールは、回転軸に駆動手段(不図示)からの駆動力が伝達されることによって、矢印で示す方向に回転するようになっている。第1凸ロール21と第2凸ロール22とは、第1賦形ロール25との噛み合い部分及び第2賦形ロール26との噛み合い部分よりも回転方向下流側で、当接するようになっている。それぞれのロールとして、ギア等を介してそれぞれのロール軸に位相を調整しながら駆動力を伝達できるものを用いることが好ましい。これにより、シート部材や弾性部材13に必要以上に圧力がかからないため、圧縮されずにシートが硬くなったり、弾性部材13が切断されたりしない。また、それぞれのロールに前記噛合いによって直接駆動力を伝達する方法は容易であるが、前記圧縮により弾性部材13が切断されやすくなるため、後述する空隙部K1を設けることが好ましい。
【0079】
図6に示すように、第1凸ロール21は、凹凸ロールであり、その周面に軸方向ADに直線状に延びる凸部21a及び凹部21bを有している。凸部21aは、軸方向ADに沿って、歯たけが相対的に高い高歯たけ部21eと、歯たけが相対的に低い低歯たけ部21cとを交互に有している。高歯たけ部21e及び低歯たけ部21cは、第1凸ロール21の周方向に沿って規則的に配置されている。周方向において隣り合う高歯たけ部21eの間は溝部となっており凹部21bを形成している。同様に、周方向において隣り合う低歯たけ部21cの間も溝部となっており凹部21bを形成している。
図6に示すように、高歯たけ部21eは、軸方向ADに沿った長さが、低歯たけ部21cの軸方向ADに沿った長さよりも長くなっている。高歯たけ部21eの該長さは、第1工程において製造される第1シート11の第1大凸部1kの長さW1と略同じになっている。低歯たけ部21cの該長さは、第1工程において製造される第1シート11の第1小凸部1tの長さW2と略同じになっている。
【0080】
第1凸ロール21は、
図6に示すように、高歯たけ部21eの歯たけが、低歯たけ部21cの歯たけよりも高いことに起因して、低歯たけ部21cの位置に、ロールの周方向の全域に延びる条溝21dを有するものとなる。第1凸ロール21は、軸方向ADに沿って条溝21dを一定の間隔を置いて配している。条溝21dの軸方向ADに沿った長さは、低歯たけ部21cの軸方向ADに沿った長さと略同じになっている。軸方向ADにおいて隣り合う条溝21dのピッチは、第1工程において製造される第1シート11における隣り合う弾性部材13のピッチと同じになっている。条溝21dのピッチは異なっていてもよい。条溝21dのピッチは0.5mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、また、30mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。また、すべての条溝21dに弾性部材13が位置せずに、弾性部材13がない条溝21dがあってもよい。弾性部材13の伸長後の戻り強度は各条溝21dで全て同じでなくてもよく、直交方向Yに部分的に戻り強度の高いものを用いることができる。弾性部材13の戻り強度を高いものとするには、繊度の高い弾性部材や高目付の弾性部材を用いたり、製造装置20に供給する際の挿入倍率を高したり、分子量の高いポリウレタンやハードセグメント成分がソフトセグメント成分よりも多いポリウレタンを用いることで可能である。このようにすることでフィット性に優れ、着用時のズレ落ちやレックギャザーにおける身体とレックギャザー間で生じる隙間を防ぐことができる。第1シート11の凹凸形状の賦形性を良好とする観点から、条溝21dの溝深さ(第1凸ロール21の高歯たけ部21eの頂部高さ-第1凸ロール21の低歯たけ部21cの頂部高さ)は、第1凸ロール21と第1賦形ロール25との噛み合い深さよりも小さくなっていることが好ましい。条溝21dの該深さは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0081】
第1賦形ロール25は、
図6に示すように、凹凸ロールであるが、第1凸ロール21と異なり、ロールの周方向の全域に延びる条溝を有していない。第1賦形ロール25は、後述する第1凸ロール21における第2凸ロール22と突き合う位置よりも上流側に配されている。第1賦形ロール25は、第1凸ロール21の軸方向ADの全長にわたって延びている。第1賦形ロール25は、その周面に軸方向ADに直線状に延びる凸部25a及び凹部25bを有している。凸部25aには低歯たけ部21cのような歯たけの低い部分を設けてもよいが、ないことが高伸長になる点で好ましい。凹部25bは第1凸ロール21の凸部21aに噛み合い、凸部25aは第1凸ロール21の凹部21bに噛み合うようになっている。前記噛み合い深さは第1凸ロール21の高歯たけ部21eと第1賦形ロール25の凸部25aとを付き合わせた状態から、噛合い状態にした時の第1凸ロール21と第1賦形ロール25の軸中心間の距離の変位量として規定される。噛み合い深さによっても前記沿う長さL1及びL2を変えることができる。また、第1賦形ロール25よりも第1凸ロール21の直径を大きくする、又は第1凸ロール21の凸部25aの軸方向ADに対する直角断面形状おいて長方形または逆台形形状(先端の方が歯の厚みが厚い)にすることで凹部21bの溝部に入り込んだシート11aが抜けにくくなる点で好ましい。
【0082】
図6に示すように、第2凸ロール22は、第1凸ロール21と略同じ構成の凹凸ロールであり、その周面に軸方向ADに直線状に延びる凸部22a及び凹部22bを有している。第2凸ロール22の凸部22aは、第1凸ロール21の凸部21aに突き合うように配されている。凸部22aは、軸方向ADに沿って、高歯たけ部22eと低歯たけ部22cとを交互に有している。周方向において隣り合う高歯たけ部22eの間は溝部となっており凹部22bを形成している。同様に、周方向において隣り合う低歯たけ部21cの間も溝部となっており凹部21bを形成している。高歯たけ部22eの軸方向ADに沿った長さは、第2工程において製造される第2シート12の第2大凸部2kの長さW1と略同じになっている。低歯たけ部22cの軸方向ADに沿った長さは、第2工程において製造される第2シート12の第2小凸部2tの長さW2と略同じになっている。
【0083】
第2凸ロール22は、
図6に示すように、低歯たけ部22cの位置に対応して、ロールの周方向の全域に延びる条溝22dを有している。軸方向ADにおいて隣り合う条溝22dのピッチは、第2工程において製造される第2シート12における隣り合う弾性部材13のピッチと同じになっている。該ピッチは異なっていてもよい。また、すべての条溝22dに弾性部材13が位置せずに、弾性部材13がない条溝22dがあってもよい。第2凸ロール22において、条溝22dの位置は、第1凸ロール21の条溝21dの位置と一致しておらず、第1凸ロール21のおける軸方向ADに隣り合う条溝21d間に対応するように、条溝22dが配されている。第2シート12の凹凸形状の賦形性を良好とする観点から、条溝22dの溝深さ(第2凸ロール22の高歯たけ部22eの頂部高さ-第2凸ロール22の低歯たけ部22cの頂部高さ)は、第2凸ロール22と第2賦形ロール26との噛み合い深さよりも小さくなっていることが好ましい。前記噛み合い深さは第2凸ロール22の高歯たけ部22eと賦形ロール26の凸部26aとを付き合わせた状態から、噛合い状態にした時の第2凸ロール22と賦形ロール26の軸中心間距離の変位量として規定される。
【0084】
第2賦形ロール26は、
図6に示すように、第1賦形ロール25と同様に、ロールの周方向の全域に延びる条溝を有していない。第2賦形ロール26は、第2凸ロール22における第1凸ロール21と突き合う位置よりも上流側に配されている。第2賦形ロール26は、第2凸ロール22の軸方向ADの全長にわたって延びている。第2賦形ロール26は、その周面に軸方向ADに直線状に延びる凸部26a及び凹部26bを有している。凹部26bは第2凸ロール22の凸部22aに噛み合い、凸部26aは第2凸ロール22の凹部22bに噛み合うようになっている。製造装置20では、凸部26aの歯たけは、第2凸ロール22の高歯たけ部22eの歯たけと同じになっている。第1賦形ロール25と低歯たけ部21c、又は第2賦形ロール26と低歯たけ部22c部におけるシートの延伸倍率は、1倍でもよいが、好ましくは1.3倍以上、より好ましくは1.8倍以上であることが、高い伸び止まり伸度と適度なクッション性を有する点で好ましい。十分な最大強度を得るため、前記延伸倍率は6倍以下であることが好ましい。高歯たけ部22eにおける延伸倍率は好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上であることが、適度なクッション性を有する点で好ましい。同様に十分な最大強度を得るため、前記延伸倍率は6倍以下であることが好ましい。延伸倍率は特開2016-151076号公報に記載の方法により求めることができる。また、凸部26aにおけるロール回転方向の下流側角部の角度が、高歯たけ部22eにおけるロール回転方向の下流側角部の角度よりも大きいことが、凹凸賦形された第2シート12を第2賦形ロール26の周面上に維持する観点から好ましい。
【0085】
製造装置20を用い、
図6に示すように、第1シート11の帯状シート11aをその原反ロール(図示せず)から繰り出して、帯状シート11aを第1凸ロール21と第1賦形ロール25との間に供給する。供給する速度または張力を制御することによって第1シート11の延伸量を制御することができる。供給する際には、帯状シート11aを第1凸ロール21側から供給し、第1凸ロール21の周面に沿わせながら供給することが、賦形性の観点から好ましい。帯状シート11aを供給すると共に、一方向に引き揃えられた複数本の第1弾性部材13aを、第1凸ロール21と第1賦形ロール25との間に供給する。第1凸ロール21と第1賦形ロール25との間には、第1弾性部材13aが帯状シート11aにおける第1賦形ロール25との対向面側に配された状態で通される。
【0086】
第1凸ロール21の凸部21a及び凹部21bと、第1賦形ロール25の凸部25a及び凹部25bとの噛み合い部分では、帯状シート11aを少なくともロール回転方向に沿って延伸させることで、凹凸賦形された第1シート11を製造する第1工程を行う。
【0087】
第1工程では、
図7に示すように、第1凸ロール21の高歯たけ部21eと第1賦形ロール25の凹部25bとが噛み合わされ、第1凸ロール21の凹部21bと第1賦形ロール25の凸部25aとが噛み合わされるようになる。高歯たけ部21e及び凸部25aはいずれも歯たけが高いものなので、第1凸部1aを構成する第1大凸部1kと第1凹部1bを構成する第1大凹部1dとが形成される。高歯たけ部21e及び凸部25aの歯が噛み合った状態では、帯状シート11aの延伸の程度が大きく、帯状シート11aにおける主たる延伸部位が、高歯たけ部21eの先端面と、凸部25aの先端面との間の領域となる。第1シート11においては、第1大凸部1kの頂部と第1大凹部1dの底部との間に、第1シート11を構成する繊維どうしを固定する繊維固定部間の距離が相対的に長い第2領域17が形成される。また、高歯たけ部21eの先端面及び凸部25aの先端面は延伸されにくく、第1大凸部1kの頂部及び第1大凹部1dの底部にそれぞれ、繊維固定部間の距離が相対的に短い第1領域16が形成される。
【0088】
第1工程では、
図8に示すように、各第1弾性部材13aは、第1凸ロール21の周方向に延びる条溝21dに対応する位置に供給され、第1凸ロール21の回転方向に沿って伸長される。条溝21d内には、第1凸ロール21の低歯たけ部21cの歯が位置しているが、低歯たけ部21cの歯たけは、高歯たけ部21e及び凸部25aの歯たけよりも低いものである。その為、各第1弾性部材13aは、低歯たけ部21cによっても延伸されるが、該延伸に起因して切断されにくい。このように第1弾性部材13aは、弾性部材13aが巻かれたロールの巻き状態から装置20へ供給される際にドロー伸長される延伸と、低歯たけ部21cによる延伸の2段階の延伸を経ているため、伸長方向に延びやすくなる。帯状シート11aは、第1弾性部材13aが切断されにくい状態で延伸され、第1凸部1aを構成する第1小凸部1tと第1凹部1bを構成する第1小凹部1sとが形成される。帯状シート11aにおける第1弾性部材13aが配された部分では、第1凸ロール21の低歯たけ部21cと第1賦形ロール25の凸部25aとが噛み合わされるようになるが、これらの歯が噛み合ったとしても、帯状シート11aの延伸の程度は小さい。第1シート11においては、第1小凸部1tの頂部と第1小凹部1sの底部との間に第2領域17が形成される。また、低歯たけ部21cの先端面及び凸部25aの先端面は延伸されにくく、第1小凸部1tの頂部及び第1小凹部1sの底部にそれぞれ第1領域16が形成される。
【0089】
第1シート11においては、繊維固定部間の距離が長い第2領域17が、第1大凸部1kの頂部と第1大凹部1dの底部との間に形成されるとともに、第1小凸部1tの頂部と第1小凹部1sの底部との間に形成される。第1大凸部1kと第1小凸部1tとはロール軸方向に交互に配されており、且つ第1大凹部1dと第1小凹部1sともロール軸方向に交互に配されているので、第2領域17が第1弾性部材13aの延びる方向と直交する方向であるロール軸方向に延びるように形成される。
同様に、第1シート11においては、繊維固定部間の距離が短い第1領域16が、第1大凸部1kの頂部及び第1大凹部1dの底部にそれぞれ形成されるとともに、第1小凸部1tの頂部及び第1小凹部1sの底部にそれぞれ形成される。第1大凸部1kと第1小凸部1tとはロール軸方向に交互に配されており、且つ第1大凹部1dと第1小凹部1sとはロール軸方向に交互に配されているので、第1領域16が第1弾性部材13aの延びる方向と直交する方向であるロール軸方向に延びるように形成される。
【0090】
第1工程では、
図6に示すように、第1凸ロール21の回転方向に伸長した各第1弾性部材13aの張力によって、凹凸賦形された第1シート11を、第1凸ロール21の周面に押え付けながら次工程の第3工程に搬送する。シート11を弾性部材13aにより凸ロール21上に抑え付けることでシート11がロール21から浮くことが防止でき、接合部にてシートにシワなどが入ることを防ぐことができる。このため弾性部材13は複数本で複数ヶ所にてシート11を抑え付けることが好ましい。
【0091】
凹凸賦形された第1シート11の製造とは別に、
図6に示すように、第2シート12の帯状シート12aをその原反ロール(図示せず)から繰り出して、帯状シート12aを第2凸ロール22と第2賦形ロール26との間に供給する。供給する際には、帯状シート12aを第2凸ロール22側から供給し、第2凸ロール22の周面に沿わせながら供給することが、賦形性の観点から好ましい。帯状シート12aを供給すると共に、一方向に引き揃えられた複数本の第2弾性部材13bを、第2凸ロール22と第2賦形ロール26との間に供給する。第2凸ロール22と第2賦形ロール26との間には、第2弾性部材13bが帯状シート12aにおける第2賦形ロール26との対向面側に配された状態で通される。
【0092】
第1工程と並行して、第2凸ロール22の凸部22a及び凹部22bと、第2賦形ロール26の凸部26a及び凹部26bとの噛み合い部分では、帯状シート12aを少なくともロール回転方向に沿って延伸させることで、凹凸賦形された第2シート12を製造する第2工程を行う。
【0093】
第2工程では、第2凸ロール22の高歯たけ部22eと第2賦形ロール26の凹部26bとが噛み合わされ、第2凸ロール22の凹部22bと第2賦形ロール26の凸部26aとが噛み合わされるようになる。高歯たけ部22e及び凸部26aはいずれも歯たけが高いものなので、第2凸部2aを構成する第2大凸部2kと第2凹部2bを構成する第2大凹部2dとが形成される。高歯たけ部22e及び凸部26aの歯が噛み合った状態では、帯状シート12aの延伸の程度が大きく、帯状シート12aにおける主たる延伸部位が、高歯たけ部22eの先端面と、凸部26aの先端面との間の領域となる。第2シート12においては、第2大凸部2kの頂部と第2大凹部2dの底部との間に、第2シート12を構成する繊維どうしを固定する繊維固定部間の距離が相対的に長い第2領域17が形成される。また、高歯たけ部22eの先端面及び凸部26aの先端面は延伸されにくく、第2大凸部2kの頂部及び第2大凹部2dの底部にそれぞれ、繊維固定部間の距離が相対的に短い第1領域16が形成される。
【0094】
第2工程では、各第2弾性部材13bは、第2凸ロール22の周方向に延びる条溝22dに対応する位置に供給され、第2凸ロール22の回転方向に沿って伸長される。条溝22d内には、第2凸ロール22の低歯たけ部22cの歯が位置しているが、低歯たけ部22cの歯たけは、高歯たけ部22e及び凸部26aの歯たけよりも低いものである。その為、各第2弾性部材13bは、低歯たけ部22cによっても延伸されるが、該延伸に起因して切断されにくい。このように第2弾性部材13bは、弾性部材13bが巻かれたロールの巻き状態から装置20へ供給される際にドロー伸長される延伸と、低歯たけ部22cによる延伸の2段階の延伸を経ているため、伸長方向に延びやすくなる。帯状シート12aは、第2弾性部材13bが切断されにくい状態で延伸され、第2凸部2aを構成する第2小凸部2tと第2凹部2bを構成する第2小凹部2sとが形成される。帯状シート12aにおける第2弾性部材13bが配された部分では、第2凸ロール22の低歯たけ部22cと第2賦形ロール26の凸部26aとが噛み合わされるようになるが、これらの歯が噛み合ったとしても、帯状シート12aの延伸の程度は小さい。第2シート12においては、第2小凸部2tの頂部と第2小凹部2sの底部との間に第2領域17が形成される。また、低歯たけ部22cの先端面及び凸部26aの先端面は延伸されにくく、第2小凸部2tの頂部及び第2小凹部2sの底部にそれぞれ第1領域16が形成される。伸び止まり伸度は、前記低歯たけ部21cと第1賦形ロール25の凸部25a、または、低歯たけ部22cと第2賦形ロール26の凸部26aによるそれぞれの噛合い量とシートの挿入張力とに元ずく延伸倍率によって、該延伸倍率の低い方によって調整される。
【0095】
第2シート12においては、繊維固定部間の距離が長い第2領域17が、第2大凸部2kの頂部と第2大凹部2dの底部との間に形成されるとともに、第2小凸部2tの頂部と第2小凹部2sの底部との間に形成される。第2大凸部2kと第2小凸部2tとはロール軸方向に交互に配されており、且つ第2大凹部2dと第2小凹部2sともロール軸方向に交互に配されているので、第2領域17が第2弾性部材13bの延びる方向と直交する方向であるロール軸方向に延びるように形成される。
【0096】
第2工程では、
図6に示すように、第2凸ロール22の回転方向に伸長した各第2弾性部材13bの張力によって、凹凸賦形された第2シート12を、第2凸ロール22の周面に押え付けながら次工程の第3工程に搬送する。シート12を弾性部材13bにより凸ロール22上に抑え付けることでシート12がロール22から浮くことが防止でき、接合部にてシートにシワなどが入ることを防ぐことができる。このため弾性部材13は複数本で複数ヶ所にてシート12を抑え付けることが好ましい。
【0097】
第3工程では、
図6に示すように、別々に製造された凹凸賦形の第1シート11と凹凸賦形の第2シート12とを、弾性部材13a,13bの配置面どうしが対向するように重ね合わせる。そして、
図9に示すように、重ね合わされた第1シート11及び第2シート12を、第1凸ロール21の凸部21aを構成する高歯たけ部21eと、第2凸ロール22の凸部22aを構成する高歯たけ部22eとの突き合わせによって接合する。第1凸ロール21へ第2凸ロール22を加圧する。熱融着にって接合する場合は第1凸ロール21または第2凸ロール22の少なくとも一方は加熱しておく。より高い接合部14の接合強度を得る点ためには、両方のロール21,22を加熱しておくことが好ましい。加熱する温度は構成樹脂の最も融点の低い樹脂に対して、その融点よりも10℃低い温度以上であることが好ましい。これにより、接合部14の接合強度を維持しながら、前記ロールにシート11及びシート12が貼り付くのを防止できる。前記第1賦形ロール25及び第2賦形ロール26においても、高速時のシートの裂けを防止する観点とシートを予熱して延伸時における接合部14と界面での繊維の切断を防ぎ、接合強度を高める観点から、加熱しておくことが好ましい。加熱する温度は構成樹脂の最も融点の低い樹脂に対して、その結晶化温度よりも低い温度であることが、接合部14が硬くならないため好ましい。
【0098】
詳述すると、
図9(a)に示すように、第3工程では、軸方向ADにおいて、第1凸ロール21の条溝21dの位置と第2凸ロール22の条溝22dの位置とが一致していないため、条溝21dに供給された第1弾性部材13aと、条溝22dに供給された第2弾性部材13bとが、ロール軸方向において重ならないようになっている。第1凸ロール21の凸部21aと第2凸ロール22の凸部22aを突き合せたときに、第1凸ロール21の条溝21dに供給された第1弾性部材13aが、第2凸ロール22の高歯たけ部22eと第1凸ロール21の条溝21dとによってロール回転方向に沿って形成される空隙部K1に通されるようになる。そして、第2凸ロール22の条溝22dに供給された第2弾性部材13bが、第1凸ロール21の高歯たけ部21eと第2凸ロール22の条溝22dとによってロール回転方向に沿って形成される空隙部K1に通されるようになる。したがって、第1弾性部材13a及び第2弾性部材13bは、第1凸ロール21の凸部21aと第2凸ロール22の凸部22aとの突き合わせによって切断されることはない。
【0099】
第3工程では、
図9に示すように、第2凸ロール22の高歯たけ部22eと、第1凸ロール21の条溝21dの両側に位置する高歯たけ部21e,21eとによって、重ね合わされた第1シート11と第2シート12との間に配された第1弾性部材13aにおけるロール軸方向ADの両側に接合部14を形成して、第1シート11及び第2シート12を接合する。それと同時に、第1凸ロール21の高歯たけ部21eと、第2凸ロール22の条溝22dの両側に位置する高歯たけ部22e,22eとによって、重ね合わされた第1シート11と第2シート12との間に配された第2弾性部材13bにおけるロール軸方向ADの両側に接合部14を形成して、第1シート11及び第2シート12を接合する。このようにして、目的とする複合伸縮シート10Aが効率的に製造される。複合伸縮シート10Aは、製造時の機械方向であるMD方向に伸縮性を有するものである。
【0100】
前記第1領域16の繰り返しピッチを2倍した値P1に対する隣り合う接合部14どうしのピッチP2の比であるP2/P1の値を2以上にするには、第1凸ロール21の高歯たけ部21eの高さを回転方向に対して数個おきに他の高歯たけ部21eよりも高い高歯たけ部21e(軸中心から凸部頂部までの距離が長いことを意味する)を設ける。これにより、高い高歯たけ部21eと第2凸ロール22の高歯たけ部22eとの間で接合することができる。第2凸ロール22の高歯たけ部22eを同様に行ってもよい。
第1シート11の第1領域16の繰り返しピッチを2倍した値P11と、第2シート12における第1領域16の繰り返しピッチを2倍した値P21の比(P12/P11)または(P11/P12)を変えるには第1凸ロール21の凸部21aのMD方向のピッチP1’と第2凸ロール22の凸部22aのMD方向のピッチP2’を変え、(P1’/P2’)または(P2’/P1’)の比を整数倍とする。ピッチP1’、P2’は凸部のピッチであり、噛合い時の凸部と凸部の噛合い中心直径(P.C.D)におけるロール上のピッチ長さを意味する。
【0101】
複合伸縮シート10Aにおいて、弾性部材13の両端部3aを固定する接合領域19を形成するには、後工程に、例えば周面にロール軸方向に延びる凸部を備える一対の凸部ロールを配置し、該凸部ロールの凸部どうしの当接部分に導入することによって形成できる。或いは、弾性部材13の両端部3aを接着剤により両シート11,12間に固定して接合領域19を形成してもよい。
【0102】
第1弾性部材13a及び第2弾性部材13bの両端部3aのみを接合領域19で固定する代わりに、第1弾性部材13a及び第2弾性部材13bそれぞれを、MD方向に沿って間隔を置いて配された接合部14,14間に挟むことにより第1シート11及び第2シート12に固定するようにしてもよく、第1弾性部材13a及び第2弾性部材13bの両端部3aを接合領域19で固定すると共に、第1弾性部材13a及び第2弾性部材13bそれぞれを接合部14,14間に挟むことにより第1シート11及び第2シート12に固定するようにしてもよい。第1弾性部材13a及び第2弾性部材13bそれぞれを接合部14,14間に挟むことにより固定する場合、第1凸ロール21の条溝21dの両側に位置する高歯たけ部21e,21eどうしの間隔を短くし、第2凸ロール22の条溝22dの両側に位置する高歯たけ部22e,22eどうしの間隔を短くする。そして弾性部材13a,13bの両側の接合部14,14を該弾性部材13a,13bに隣接させて形成し、且つ、該伸縮方向に沿って複数形成するようにすればよい。これにより弾性部材13が接合部14,14によって挟圧されることで弾性部材13が複合伸縮シート10Aから抜けないようにすることができる。挟圧とは弾性部材13a,13bが伸長後にその長さが戻る際に半径方向に断面積が膨張し、この膨張する力とそれに反発して接合部14間のシートによる弾性部材13をとり囲む力がつり合い、弾性部材13とシートの間に高い摩擦力が生じる。これにより弾性部材13がシートに固定される。さらに、挟圧と同時に融着することが、弾性部材13が第1シート11または第2シート12からより抜けにくくなるため好ましい。
【0103】
第1凸ロール21または第2凸ロール22において、これらロール間の突合せによる接合に追加して、該ロールの一方に複合伸縮シート10Aを巻き掛けた状態で補助凹凸ロールを設けることが好ましい(後述する
図15(a)のロール55の位置に相当)。補助凹凸ロールとしては、たとえば第1凸ロール21の下流側にて追加の接合を行う場合、弾性部材13の位置する部分に条溝を有する第2凸ロール22のような形状のものや、回転方向に沿って延びる凸部を弾性部材13の位置する部分以外の位置に軸方向ADに一定の間隔を置いて有しているもの等が挙げられる。第1凸ロール21と補助凹凸ロールの凸部同士が付き合わされることで、第1シート11と第2シート12を接合する。下流にて接合される位置は上流の接合位置に一致していても異なっていてもよいが、少なくとも一部が重なるようにすることが好ましい。これにより、上流の接合部の温度が下がらないうちに強力接合できる。また、補助凹凸ロールは複合伸縮シート10Aが補助凹凸ロールに巻き掛けられていないため、第1凸ロール21の温度よりも高くすることができる。さらに別の方法として低歯たけ部21cの位置に一致して(弾性部材13の位置に一致して)、回転方向に沿って延びる凸部を軸方向ADに一定の間隔を置いて有している補助凹凸ロール(
図15(a)のロール55に示されるような形状のもの)を加熱しながら、弾性部材13を切断しない程度に複合伸縮シート10Aを介して押し込むことでも可能である。第1凸ロール21にはすべての弾性部材13の位置に低歯たけ部21cを設けておく。このとき前記条溝部の軸方向断面をロール外側に向かって台形状に開く形状とし、これに噛合うように補助凹凸ロールの凸部の軸方向断面を台形状に先端部が細くなるようにすることが好ましい。これにより補助凹凸ロールの凸部側面において、第1シート11と第2シート12が接合される。
【0104】
また、ロールの軸方向ADに隣り合う凸部側面同士の接合部間を狭くすることで、弾性部材13が接合部14,14間で挟圧され弾性部材13を第1シート11と第2シート12の間に固定することができる。さらには低歯たけ部21cの頂部と補助凹凸ロールの凸部頂部で形成される空間断面積を前記台形形状を調整(補助凹凸ロール凸部の台形頂辺の長さを短くすると空間断面積が小さくなる。また、台形の頂辺部の角度を小さくすると空間断面積が小さくなる)することが好ましい。これにより、補助凹凸ロールの凸部が第1凸ロール21の条溝部に押し込まれたときに、弾性部材13は切断されにくく且つ圧縮変形する程度に押込まれる。そして、補助凹凸ロールの凸部頂部において第1シート11または第2シート12と弾性部材13とが融着され、弾性部材13がより抜けにくくなる。
【0105】
複合伸縮シート10Aを製造する製造装置20においては、第1凸ロール21及び第1賦形ロール25、並びに第2凸ロール22及び第2賦形ロール26の代わりに、特開2008-289659号公報の
図6に記載の第1のロール5及び第2のロール6を用いてもよく、国際公開第2010/119535号パンフレットの
図6に記載の第1エンボスロール11及び第2エンボスロール12を用いてもよい。特開2008-289659号公報の第1のロール5及び第2のロール6において、第1のロール5はその周面に円柱状の凸部51を有し、第2のロール6はその周面に凸部51の位置に対応する凹部61を有しており、第1のロール5及び第2のロール6は、凸部51が凹部61の内面囲に接触せずに遊挿されるようになっている。また、凸部51を凹部61に遊挿させたときに、軸方向に隣り合う凸部51間に、弾性部材を通す空隙部が形成されるようになる。また、国際公開第2010/119535号パンフレットの第1エンボスロール11及び第2エンボスロール12において、第1エンボスロール11は、平滑な表面14より外方に突出する凸部15と該表面14より窪む凹部16とを有し、第2エンボスロール12は平滑な表面17より外方に突出する凸部18と該表面17より窪む凹部19とを有しており、第1エンボスロール11及び第2エンボスロール12は、第1エンボスロール11の凹部16に第2エンボスロール12の凸部18が噛み合い、第2エンボスロール12の凹部19に第1エンボスロール11の凸部15が噛み合うようになっている。また、噛み合わせたときに、軸方向に隣り合う凸部15と凸部18との間に、弾性部材を通す空隙部が形成されるようになる。
【0106】
弾性部材13を製造装置20に供給する際には軸方向ADにあらかじめ位置決めしておくことが前記条溝に弾性部材13を通す上で好ましい。弾性部材13を位置決めするにはV字状の溝を各条有したロールを用い、1本以上の溝付ロールを用いてS字状に弾性部材13を巻き掛け、段階的に溝の角度を狭く(溝の先端角を小さくする)していく。これにより弾性部材13の位置が軸方向ADに振れないため好ましい。
【0107】
次に、第2実施形態に係る複合伸縮シート10Bの好適な製造方法を、
図10ないし
図11を参照しながら説明する。複合伸縮シート10Bの製造方法については、第1実施形態に係る複合伸縮シート10Aの製造方法と異なる構成部分について説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない点については、複合伸縮シート10Aの製造方法と同様であり、複合伸縮シート10Aの製造方法の説明が適宜適用される。
【0108】
複合伸縮シート10Bの製造方法は、(1)凹凸賦形された第1シート11を製造する第1工程と、(2)第1工程と並行して、凹凸賦形された第2シート12を製造する第2工程と、(3)第1シート11及び第2シート12を接合して複合伸縮シート10Aを製造する第3工程とに大別される。
図10には、これらの工程を行うための製造装置20Aが示されている。
【0109】
図10に示すように、製造装置20Aは、互いに噛み合う第1凸ロール21A及び第1賦形ロール25を備え、さらに互いに噛み合う第2凸ロール22A及び第2賦形ロール26を備えている。これらのロールは、回転軸に駆動手段(不図示)からの駆動力が伝達されることによって、矢印で示す方向に回転するようになっている。第1凸ロール21Aと第2凸ロール22Aとは、第1賦形ロール25との噛み合い部分及び第2賦形ロール26との噛み合い部分よりも回転方向下流側で、当接するようになっている。
【0110】
第1賦形ロール25及び第2賦形ロール26は、その構成が、それぞれ、製造装置20の第1賦形ロール25及び第2賦形ロール26の構成と同じとなっている。第1凸ロール21A及び第2凸ロール22Aは、その構成が、それぞれ、製造装置20の第1凸ロール21及び第2凸ロール22Aの構成と略同じとなっている。第1凸ロール21Aは、
図11に示すように、製造装置20の第1凸ロール21に比べて、凸部21aの低歯たけ部21cの数が多く、低歯たけ部21cの位置に対応する条溝21dを多く有している。第2凸ロール22Aは、製造装置20の第2凸ロール22と異なり、ロールの周方向の全域に延びる条溝を有しておらず、その周面に軸方向ADに直線状に延びる凸部22a及び凹部22bを有している。
【0111】
第1凸ロール21Aは、凹部21bの底部に吸引孔(不図示)を備えている。吸引孔(不図示)は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(不図示)に通じており、
図10に示すように、第1凸ロール21Aと第2凸ロール22Aとの当接部分から第1凸ロール21Aの下方の位置までの間の吸引部21fで、第1凸ロール21Aの周面から内部に向かって吸引が行われる様に制御されている。
【0112】
第2凸ロール22Aは、凹部22bの底部に吸引孔(不図示)を備えている。吸引孔(不図示)は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(不図示)に通じており、
図10に示すように、第2凸ロール22Aと第2賦形ロール26との噛み合い部分から、第1凸ロール21Aとの当接部分までの間の吸引部22fで、第2凸ロール22Aの周面から内部に向かって吸引が行われる様に制御されている。
【0113】
製造装置20Aを用い、
図10に示すように、第2シート12となる前の元の帯状シート12aをその原反ロール(図示せず)から繰り出して、帯状シート12aを第1凸ロール21Aと第1賦形ロール25との間に供給する。第1凸ロール21Aの凸部21a及び凹部21bと、第1賦形ロール25の凸部25a及び凹部25bとの噛み合い部分で、帯状シート12aを少なくともロール回転方向に沿って延伸させることで、凹凸賦形された第2シート12を製造する第1工程を行う。
【0114】
第1工程では、第1凸ロール21Aの高歯たけ部21eと第1賦形ロール25の凹部25bとが噛み合わされ、第1凸ロール21Aの凹部21bと第1賦形ロール25の凸部25aとが噛み合わされるようになる。高歯たけ部21e及び凸部25aはいずれも歯たけが高いものなので、第1凸部1aを構成する第1大凸部1kと第1凹部1bを構成する第1大凹部1dとが形成される。第2シート12においては、第1大凸部1kの頂部と第1大凹部1dの底部との間に、繊維固定部間の距離が相対的に長い第2領域17が形成される。また、第1大凸部1kの頂部及び第1大凹部1dの底部にそれぞれ、繊維固定部間の距離が相対的に短い第1領域16が形成される。
【0115】
第1工程では、第1凸ロール21Aの条溝21d内には、低歯たけ部21cの歯が位置しているが、帯状シート12aの延伸の程度は小さい。第2シート12においては、第1小凸部1tの頂部と第1小凹部1sの底部との間に第2領域17が形成される。また、低歯たけ部21cの先端面及び凸部25aの先端面は延伸されにくく、第1小凸部1tの頂部及び第1小凹部1sの底部にそれぞれ第1領域16が形成される。
【0116】
第1工程では、凹凸形状の第2シート12は、第1凸ロール21Aの吸引部21fで吸引孔(不図示)を介して、ロールの周面から内部に向かって吸引され、第1凸ロール21Aのロール周面上に保持される。凹凸形状の第2シート12は、第1凸ロール21Aの凹凸形状に沿った形状に維持された状態で、次工程の第3工程まで搬送される。
【0117】
第2シート12の製造とは別に、
図10に示すように、第1シート11となる前の元の帯状シート11aをその原反ロール(図示せず)から繰り出して、帯状シート11aを第2凸ロール22Aと第2賦形ロール26との間に供給する。第1工程と並行して、第2凸ロール22Aの凸部22a及び凹部22bと、第2賦形ロール26の凸部26a及び凹部26bとの噛み合い部分で、帯状シート11aを少なくともロール回転方向に沿って延伸させることで、凹凸賦形された第1シート11を製造する第2工程を行う。
【0118】
第2工程では、第2凸ロール22Aの凸部22aと第2賦形ロール26の凹部26bとが噛み合わされ、第2凸ロール22Aの凹部22bと第2賦形ロール26の凸部26aとが噛み合わされて、第2凸部2a及び第2凹部2bを有する第1シート11が製造されるようになる。第1シート11においては、第2凸部2aの頂部と第2凹部2bの底部との間に、繊維固定部間の距離が相対的に長い第2領域17が形成される。また、第2凸部2aの頂部及び第2凹部2bの底部にそれぞれ、繊維固定部間の距離が相対的に短い第1領域16が形成される。
【0119】
第2工程では、凹凸形状の第1シート11は、第2凸ロール22Aの吸引部22fで吸引孔(不図示)を介して、ロールの周面から内部に向かって吸引され、第2凸ロール22Aのロール周面上に保持される。凹凸形状の第1シート11は、第2凸ロール22Aの凹凸形状に沿った形状に維持された状態で、次工程の第3工程まで搬送される。
【0120】
第3工程では、
図10に示すように、別々に製造された凹凸賦形の第1シート11と、凹凸賦形の第2シート12とを、それらのシートの間に一方向に引き揃えられた複数本の弾性部材13を配した状態で重ね合わせる。弾性部材13は、第1シート11における第1凸ロール21Aとの非対向面と、第2シート12における第2凸ロール22Aとの非対向面との間に供給され、且つ第1凸ロール21Aの周方向に延びる条溝21dに対応する位置に供給され、第1凸ロール21Aの回転方向に沿って伸長される。
図11(a)に示すように、第1凸ロール21の凸部21aと第2凸ロール22の凸部22aを突き合せたときに、第1凸ロール21の条溝21dに供給された弾性部材13は、第2凸ロール22の凸部22aと第1凸ロール21の条溝21dとによってロール回転方向に沿って形成される空隙部K1に通されるようになる。条溝21d内には、第1凸ロール21Aの低歯たけ部21cの歯が位置しているが、低歯たけ部21cの歯たけは、高歯たけ部21eの歯たけよりも低いものである。その為、延伸力に起因して弾性部材13が切断されにくい。
【0121】
第3工程では、
図11(b)に示すように、第2凸ロール22の凸部22aと、第1凸ロール21の条溝21dの両側に位置する高歯たけ部21e,21eとによって、重ね合わされた第1シート11と第2シート12との間に配された弾性部材13の両側に接合部14を形成して、第1シート11及び第2シート12を接合する。このようにして、目的とする複合伸縮シート10Bが製造される。
【0122】
次に、第3実施形態に係る複合伸縮シート10Cの好適な製造方法を、
図12ないし
図13を参照しながら説明する。複合伸縮シート10Cの製造方法については、第1実施形態に係る複合伸縮シート10Aの製造方法と異なる構成部分について説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない点については、複合伸縮シート10Aの製造方法と同様であり、複合伸縮シート10Aの製造方法の説明が適宜適用される。
【0123】
複合伸縮シート10Cの製造方法は、(1)第1シート11の帯状シート11aと第2シート12の帯状シート12aとを、それらの間に弾性部材13を配した状態で接合しなる積層シート10Jを製造する第1工程と、(2)積層シート10Jを凹凸賦形して複合伸縮シート10Cを製造する第2工程とに大別される。
図12には、これらの工程を行うための製造装置30が示されている。
【0124】
図12に示すように、製造装置30は、凸ロール31と、凸ロール31の周面に配された接合ロール32と、凸ロール31の周面に配され且つ接合ロール32よりも回転方向下流側に配された賦形ロール35とを備えている。これらのロールは、回転軸に駆動手段(不図示)からの駆動力が伝達されることによって、矢印で示す方向に回転するようになっている。尚、接合ロール32の代わりに、特開2018-099793号公報の
図3に記載の超音波ホーン45を用いることが接合強度の高いものが得られる点で好ましい。また、凸ロール31及び賦形ロール35の代わりに、特開2008-289659号公報の
図6に記載の第1のロール5及び第2のロール6や、国際公開第2014/038578号パンフレットの
図6に記載の第1エンボスロール11及び第2エンボスロール12を用いてもよい。
【0125】
凸ロール31は、その構成が、製造装置20の第1凸ロール21の構成と略同じとなっている。凸ロール31は、凹凸ロールであり、その周面に軸方向ADに直線状に延びる凸部31a及び凹部31bを有している。凸部31aは、軸方向ADに沿って、高歯たけ部31eと低歯たけ部31cとを交互に有している。
図13に示すように、高歯たけ部31eは、軸方向ADに沿った長さが、低歯たけ部31cの軸方向ADに沿った長さよりも長くなっている。高歯たけ部31eの該長さは、製造される複合伸縮シート10Cにおける接合部14の直交方向Yの長さと一致している。凸ロール31には、低歯たけ部31cに対応する位置に条溝31dが形成され、条溝31dがロールの周方向の全域に延びている。軸方向ADにおいて隣り合う条溝31dのピッチは、製造される複合伸縮シート10Cにおける隣り合う弾性部材13のピッチと同じになっている。
【0126】
接合ロール32は、
図12に示すように、フラットロールであり、凸ロール31の軸方向ADの全長にわたって延びている。
【0127】
賦形ロール35は、その構成が、製造装置20の第1賦形ロール25の構成と略同じとなっている。
図12に示すように、賦形ロール35は、凹凸ロールであるが、ロールの周方向の全域に延びる条溝を有していない。賦形ロール35は、凸ロール31の軸方向ADの全長にわたって延びている。賦形ロール35は、凸部35a及び凹部35bを有している。凸部35aの歯たけは、凸ロール31の高歯たけ部31eの歯たけと同じになっている。凹部35bは凸ロール31の凸部31aに噛み合い、凸部35aは凸ロール31の凹部31bに噛み合うようになっている。
【0128】
製造装置30を用い、
図12に示すように、第1シート11の帯状シート11aと、第2シート12の帯状シート12aとを、それらの原反ロール(図示せず)から繰り出す。それと共に、帯状シート11aと帯状シート12aとの間に、一方向に引き揃えられた複数本の第1弾性部材13aを配した状態で、凸ロール31と接合ロール32との間の当接部分に供給する。供給する際には、帯状シート11a,12aを凸ロール31側から供給し、凸ロール31の周面に沿わせながら供給することが、接合強度を向上させる観点から好ましい。各弾性部材13は、凸ロール31の周方向に延びる条溝31dに対応する位置に供給され、凸ロール31の回転方向に沿って伸長される。条溝31dに供給された弾性部材13は、凸ロール31の凸部31aを構成する高歯たけ部31eの頂部と接合ロール32とが当接したとしても、切断されることはない。尚、接着剤塗布部70を配置し、帯状シート11aと帯状シート12aとの間に第1弾性部材13aを配する前に、接着剤を第1弾性部材13aにMD方向に間隔を置いて塗工してもよい。
【0129】
そして、
図12及び
図13に示すように、接合ロール32の表面と、凸ロール31の条溝31dの両側に位置する高歯たけ部31e,31eとによって、弾性部材13におけるロール軸方向ADの両側に接合部14を形成して、帯状シート11a及び帯状シート12aを接合し、積層シート10Jを製造する第1工程を行う。接合部14は、積層シート10Jにおいて、各弾性部材13の両側に配され、凸ロール31の回転方向に沿って一定の間隔を置いて規則的に形成される。
【0130】
次いで、
図12に示すように、接合部14の形成された積層シート10Jを、凸ロール31と賦形ロール35との噛み合い部に導入して凹凸賦形の複合伸縮シート10Cを製造する第2工程を行う。第2工程においては、賦形ロール35の凹部35bに凸ロール31の凸部31aを噛み合わせ、賦形ロール35の凸部35aを凸ロール31の凹部31bに噛み合わせたときに、凸ロール31の条溝31dに供給された弾性部材13が、賦形ロール35の凸部35aと凸ロール31の条溝31dとによってロール回転方向に沿って形成される空隙部に通されるようになる。
【0131】
第2工程では、前記空隙部に伸長状態の弾性部材13を通すとともに、接合部14が凸ロール31の凸部31aを構成する高歯たけ部31eの頂部及び賦形ロール35の凹部35bの底部に位置するように位置合わせした状態下に、積層シート10Jにおけるロール回転方向に隣り合う接合部14間を延伸させる。第2工程では、凸ロール31の高歯たけ部31eと賦形ロール35の凹部35bとが噛み合わされ、凸ロール31の凹部31bと賦形ロール35の凸部35aとが噛み合わされるようになる。高歯たけ部31e及び凸部35aの歯が噛み合った状態では、積層シート10Jの延伸の程度が大きく、積層シート10Jにおける主たる延伸部位が、高歯たけ部31eの先端面と、凸部35aの先端面との間の領域となる。製造される複合伸縮シート10Cの第1シート11及び第2シート12においては、頂部と底部との間に、繊維固定部間の距離が長い第2領域17が形成される。また、高歯たけ部31eの先端面及び凸部35aの先端面は延伸されにくく、複合伸縮シート10Cの第1シート11及び第2シート12においては、頂部及び底部にそれぞれ、繊維固定部間の距離が短い第1領域16が形成される。
【0132】
第2工程では、条溝31d内には、凸ロール31の低歯たけ部31cの歯が位置しているが、低歯たけ部31cの歯たけは、高歯たけ部31e及び凸部35aの歯たけよりも低いものである。その為、延伸力に起因して弾性部材13が切断されにくい。低歯たけ部31cと凸部35aとが噛み合わされるようになるが、これらの歯が噛み合ったとしても、積層シート10Jの延伸の程度は小さい。製造される複合伸縮シート10Cの第1シート11及び第2シート12には、弾性部材13が配された部分においても、頂部と底部との間に第2領域17が形成される。また、低歯たけ部31cの先端面及び凸部35aの先端面は延伸されにくく、複合伸縮シート10Cの第1シート11及び第2シート12においては、弾性部材13が配された部分においても、頂部及び底部にそれぞれ第1領域16が形成される。
【0133】
第1シート11及び第2シート12においては、繊維固定部間の距離が長い第2領域17が、弾性部材13が配された部分の頂部と底部との間に形成されるとともに、弾性部材13が配された部分の軸方向ADに隣り合う部分の頂部と底部との間に形成され、第2領域17がロール軸方向ADに延びるように形成される。同様に、第1シート11及び第2シート12においては、繊維固定部間の距離が短い第1領域16が、弾性部材13が配された部分の頂部と底部にそれぞれ形成されるとともに、弾性部材13が配された部分の軸方向ADに隣り合う部分の頂部と底部とにそれぞれ形成され、第1領域16がロール軸方向ADに延びるように形成される。このようにして、目的とする複合伸縮シート10Cが製造される。
【0134】
第3実施形態に係る複合伸縮シート10Cは、
図14に示す製造装置40を用いて製造することも可能である。製造装置40は、凸ロール41と、賦形ロール45とを備えている。これらのロールは、回転軸に駆動手段(不図示)からの駆動力が伝達されることによって、矢印で示す方向に回転するようになっている。
【0135】
凸ロール41は、その構成が、製造装置30の凸ロール31の構成と略同じとなっている。凸ロール41は、
図14に示すように、凹凸ロールであり、その周面に軸方向ADに直線状に延びる凸部41a及び凹部41bを有している。凸部41aは、軸方向ADに沿って、高歯たけ部41eと低歯たけ部45cとを交互に有している。高歯たけ部41eは、軸方向ADに沿った長さが、低歯たけ部45cの軸方向ADに沿った長さよりも長くなっている。高歯たけ部41eの該長さは、製造される複合伸縮シート10Cにおける接合部14の直交方向Yの長さと一致している。凸ロール41には、低歯たけ部45cに対応する位置に条溝41dが形成され、条溝41dがロールの周方向の全域に延びている。軸方向ADにおいて隣り合う条溝41dのピッチは、製造される複合伸縮シート10Cにおける隣り合う弾性部材13のピッチと同じになっている。
【0136】
賦形ロール45は、その構成が、凸ロール41の構成と略同じとなっている。賦形ロール45は、
図14に示すように、凹凸ロールであり、凸ロール41の条溝41dの位置に対応して、ロールの周方向の全域に延びる条溝45dを有している。賦形ロール45は、凸ロール41の軸方向ADの全長にわたって延びている。賦形ロール45は、その周面に軸方向ADに直線状に延びる凸部45a及び凹部45bを有している。凸部45aは、軸方向ADに沿って、高歯たけ部45eと低歯たけ部45cとを交互に有している。
図14に示すように、高歯たけ部45eは、軸方向ADに沿った長さが、凸ロール41の高歯たけ部41eの軸方向ADに沿った長さと一致している。凸部45aの低歯たけ部45cは、軸方向ADに沿った長さが、凸ロール41の低歯たけ部41cの軸方向ADに沿った長さと一致しており、条溝45dの幅と凸ロール41の条溝41dの幅とが一致している。賦形ロール45の高歯たけ部45eの歯たけは、凸ロール41の高歯たけ部41eの歯たけよりも短くなっている。その為、賦形ロール45と凸ロール41とを噛み合わせたときに、賦形ロール45の凹部45bの底部に、凸ロール41の高歯たけ部41eの頂部が当接するようになっている。
【0137】
製造装置40を用い、
図14に示すように、第1シート11の帯状シート11aと、第2シート12の帯状シート12aとを、それらの原反ロール(図示せず)から繰り出す。それと共に、帯状シート11aと帯状シート12aとの間に、一方向に引き揃えられた複数本の弾性部材13を配した状態で、凸ロール41と賦形ロール45との噛み合い部分に供給する。各弾性部材13は、凸ロール41の条溝41d及び賦形ロール45の条溝45dに対応する位置に供給され、凸ロール41の回転方向に沿って伸長される。条溝41d及び条溝45dに供給された弾性部材13は、凸ロール41と賦形ロール45とを噛み合わせたときに、条溝41dと条溝45dとによってロール回転方向に沿って形成される空隙部に通されるようになる。
【0138】
そして、賦形ロール45の凹部45bの底部と、凸ロール41の条溝41dの両側に位置する高歯たけ部41e,41eとによって、弾性部材13におけるロール軸方向の両側に接合部14を形成して、帯状シート11a及び帯状シート12aを接合する。接合部14は、各弾性部材13の両側に配され、凸ロール31の回転方向に沿って一定の間隔を置いて規則的に形成される。
【0139】
接合部14を形成すると同時に、ロール回転方向に隣り合う接合部14間を延伸させる。詳述すると、凸ロール41の高歯たけ部41eと賦形ロール45の凹部45bとが噛み合わされ、凸ロール41の凹部41bと賦形ロール45の凸部45aとが噛み合わされて、第1凸部1a及び第1凹部1bを有する第1シート11と、第2凸部2a及び第2凹部2bを有する第2シート12が製造されるようになる。高歯たけ部41e及び高歯たけ部45eの歯が噛み合った状態では、帯状シート11a,12aの延伸の程度が大きく、帯状シート11a,12aにおける主たる延伸部位が、高歯たけ部41eの先端面と、高歯たけ部45eの先端面との間の領域となる。製造される複合伸縮シート10Cの第1シート11及び第2シート12においては、頂部と底部との間に、繊維固定部間の距離が長い第2領域17が形成される。また、高歯たけ部41eの先端面及び高歯たけ部45eの先端面は延伸されにくく、複合伸縮シート10Cの第1シート11及び第2シート12においては、頂部及び底部にそれぞれ、繊維固定部間の距離が短い第1領域16が形成される。
【0140】
条溝41d内には、凸ロール41の低歯たけ部41cの歯が位置しているが、該低歯たけ部41cの歯たけは、高歯たけ部41e及び賦形ロール45の高歯たけ部45eの歯たけよりも低いものである。同様に、条溝45d内には、賦形ロール45の低歯たけ部45cの歯が位置しているが、該低歯たけ部45cの歯たけは、高歯たけ部45eの歯たけよりも低いものである。その為、延伸力に起因して弾性部材13が切断されにくい。凸ロール41の低歯たけ部41cと賦形ロール45の低歯たけ部45cとが噛み合わされるようになるが、これらの歯が噛み合ったとしても、延伸の程度は小さい。製造される複合伸縮シート10Cの第1シート11及び第2シート12には、弾性部材13が配された部分においても、頂部と底部との間に第2領域17が形成される。また、低歯たけ部41c,45cの先端面は延伸されにくく、複合伸縮シート10Cの第1シート11及び第2シート12においては、弾性部材13が配された部分においても、頂部及び底部にそれぞれ第1領域16が形成される。このようにして、第2領域17及び第1領域16が、ロール軸方向ADに延びる、目的とする複合伸縮シート10Cを製造することができる。
【0141】
製造装置40を用いる複合伸縮シート10Cの製造方法では、凸ロール41と賦形ロール45との噛み合い部分よりも回転方向下流側に、凸ロール41の周面に当接するフラットロール等の別の補助ロールや、特開2018-099793号公報の
図3に記載の超音波ホーン45を設けるようにしてもよい。このような補助ロール等を設けることにより、複合伸縮シート10Cにおける接合部14の接合強度を調整することができる。
【0142】
尚、複合伸縮シート10Cの接合部14と重なる位置に、或いは伸縮方向Xに隣り合う接合部14間に、複合伸縮シート10Cを貫通する開孔を形成するときには、前記補助ロールの周面に突起を配置すればよい。該突起は、凸ロール41の凸部41aの位置に対応させ、又は回転方向に隣り合う凸部41a間の位置に対応させて配置することが好ましい。
【0143】
第3実施形態に係る複合伸縮シート10Cは、
図15に示す製造装置50を用いて製造することも可能である。製造装置50は、凸ロール51、第1~第3賦形ロール52~54、及び接合ロール55を備えている。これらのロールは、回転軸に駆動手段(不図示)からの駆動力が伝達されることによって、矢印で示す方向に回転するようになっている。凸ロール51と第1賦形ロール52とは噛み合い、第2賦形ロール53と第3賦形ロール54とは噛み合うようになっている。凸ロール51と第3賦形ロール54とは、凸ロール51における第1賦形ロール52との噛み合い部分よりも回転方向下流側で、噛み合うようになっている。凸ロール51と接合ロール55とは、凸ロール51における第3賦形ロール54との噛み合い部分よりも回転方向下流側で、当接するようになっている。
【0144】
尚、凸ロール51及び第1賦形ロール52、並びに第2賦形ロール53及び第3賦形ロール54の代わりに、特開2008-289659号公報の
図6に記載の第1のロール5及び第2のロール6や、国際公開第2014/038578号パンフレットの
図6に記載の第1エンボスロール11及び第2エンボスロール12を用いてもよい。また、接合ロール55の代わりに、特開2018-099793号公報の
図3に記載の超音波ホーン45を用いてもよい。
【0145】
凸ロール51は、その構成が、製造装置20の第1凸ロール21の構成と略同じとなっている。凸ロール51は、
図15に示すように、凹凸ロールであり、その周面に軸方向ADに直線状に延びる凸部51a及び凹部51bを有している。凸部51aは、軸方向ADに沿って、高歯たけ部51eと低歯たけ部51cとを交互に有している。高歯たけ部51eは、軸方向ADに沿った長さが、低歯たけ部51cの軸方向ADに沿った長さよりも長くなっている。高歯たけ部51eの該長さは、製造される複合伸縮シート10Cにおける接合部14の直交方向Yの長さと略一致している。凸ロール51には、低歯たけ部51cに対応する位置に条溝51dが形成され、条溝51dがロールの周方向の全域に延びている。軸方向ADにおいて隣り合う条溝51dのピッチは、製造される複合伸縮シート10Cにおける隣り合う弾性部材13のピッチと同じになっている。
【0146】
凸ロール51は、凹部51bの底部に吸引孔(不図示)を備えている。吸引孔(不図示)は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(不図示)に通じており、
図15に示すように、凸ロール21と第3賦形ロール54との噛み合い部分から、凸ロール21と接合ロール55との当接部分までの間の吸引部51fで、凸ロール51の周面から内部に向かって吸引が行われる様に制御されている。
【0147】
第1賦形ロール52は、その構成が、凸ロール51の構成と略同じとなっている。第1賦形ロール52は、
図15に示すように、凹凸ロールであり、凸ロール51の軸方向ADに隣り合う1個の条溝51dを越えて隣り合う条溝51dごとの位置に対応して、ロールの周方向の全域に延びる条溝52dを有している。第1賦形ロール52は、凸ロール51の軸方向ADの全長にわたって延びている。第1賦形ロール52は、その周面に軸方向ADに直線状に延びる凸部52a及び凹部52bを有している。凸部52aは、軸方向ADに沿って、高歯たけ部52eと低歯たけ部52cとを交互に有している。高歯たけ部52eは、軸方向ADに沿った長さが、凸ロール51の高歯たけ部51eの軸方向ADに沿った長さよりも長くなっている。凸部52aの低歯たけ部52cは、軸方向ADに沿った長さが、凸ロール51の低歯たけ部51cの軸方向ADに沿った長さと一致しており、条溝52dの幅と凸ロール51の条溝51dの幅とが一致している。第1賦形ロール52の高歯たけ部52eの歯たけは、凸ロール51の高歯たけ部51eの歯たけと同じになっている。凹部52bは凸ロール51の凸部51aに噛み合い、凸部52aは凸ロール51の凹部51bに噛み合うようになっている。
【0148】
第2賦形ロール53は、その構成が、第1賦形ロール52の構成と略同じとなっている。第2賦形ロール53は、
図15に示すように、凹凸ロールであり、凸ロール51における第1賦形ロール52の条溝52dが対応する条溝51dの軸方向ADに隣り合う別の条溝51dの位置に対応して、ロールの周方向の全域に延びる条溝53dを有している。第2賦形ロール53は、その周面に軸方向ADに直線状に延びる凸部53a及び凹部53bを有している。凸部53aは、軸方向ADに沿って、高歯たけ部53eと低歯たけ部53cとを交互に有している。条溝53dの幅と凸ロール51の条溝51dの幅とが一致している。第2賦形ロール53の高歯たけ部53eの歯たけは、凸ロール51の高歯たけ部51eの歯たけと同じになっている。
【0149】
第3賦形ロール54は、その構成が、凸ロール51の構成と略同じとなっている。第3賦形ロール54は、
図15に示すように、凹凸ロールであるが、ロールの周方向の全域に延びる条溝を有していない。第3賦形ロール54は、凸ロール51の軸方向ADの全長にわたって延びている。第3賦形ロール54は、凸部54a及び凹部54bを有している。凸部54aの歯たけは、凸ロール51の高歯たけ部51eの歯たけと略同じになっている。凹部54bは凸ロール51の凸部51a及び第2賦形ロール53の凸部53aに噛み合い、凸部54aは凸ロール51の凹部51b及び第2賦形ロール53の凹部53bに噛み合うようになっている。
【0150】
接合ロール55は、
図15に示すように、凸ロール51の軸方向ADの全長にわたって延びている。接合ロール55は、回転方向に沿って延びる凸部55aを軸方向ADに一定の間隔を置いて有している。凸部55aは、凸ロール51の高歯たけ部51eに対応する位置に配されている。凸部55aの軸方向ADに沿った長さが、製造される複合伸縮シート10Cにおける接合部14の直交方向Yの長さと略一致している。接合ロール55の凸部55aの頂部と、凸ロール51の凸部51aの頂部とは、当接するようになっている。
【0151】
製造装置50を用いる複合伸縮シート10Cの製造方法は、(1)凹凸賦形された第1シート11を製造する第1工程と、(2)第1工程と並行して、凹凸賦形された第2シート12を製造する第2工程と、(3)第1シート11と第2シート12とを重ね合わせた積層シート10Jをロール周面上に保持しながら搬送する第3工程と、(3)積層シート10Jを接合して複合伸縮シート10Cを製造する第4工程とに大別される。
【0152】
第1工程では、
図15に示すように、第1シート11の帯状シート11aをその原反ロール(図示せず)から繰り出して、帯状シート11aを凸ロール51と第1賦形ロール52との間に供給する。供給する際には、帯状シート11aを凸ロール51側から供給し、凸ロール51の周面に沿わせながら供給することが、賦形性の観点から好ましい。それと共に、一方向に引き揃えられた複数本の第1弾性部材13aを、凸ロール51と第1賦形ロール52との間に供給する。凸ロール51と第1賦形ロール52との間には、第1弾性部材13aが帯状シート11aにおける第1賦形ロール52との対向面側に配された状態で通される。
【0153】
第1工程では、凸ロール51の高歯たけ部51eと第1賦形ロール52の凹部52bとが噛み合わされ、凸ロール51の凹部51bと第1賦形ロール52の高歯たけ部52eとが噛み合わされて、第1凸部1a及び第1凹部1bを有する第1シート11が製造されるようになる。高歯たけ部51e,52eはいずれも歯たけが高いものなので、凸ロール51と第1賦形ロール52との噛み合い部分では、帯状シート11aの延伸の程度が大きく、帯状シート11aにおける主たる延伸部位が、高歯たけ部51eの先端面と、高歯たけ部52eの先端面との間の領域となる。第1シート11においては、頂部と底部との間に、繊維固定部間の距離が長い第2領域17が形成される。また、高歯たけ部51eの先端面及び高歯たけ部52eの先端面は延伸されにくく、頂部及び底部にそれぞれ、繊維固定部間の距離が短い第1領域16が形成される。
【0154】
第1工程では、各第1弾性部材13aは、
図15(a)に示すように、凸ロール51の周方向に延びる条溝51d及び第1賦形ロール52の条溝52dに対応する位置に供給され、凸ロール51の回転方向に沿って伸長される。条溝51d内には、凸ロール51の低歯たけ部51cの歯が位置しているが、該低歯たけ部51cの歯たけは、高歯たけ部51e及び第1賦形ロール52の高歯たけ部52eの歯たけよりも低いものである。同様に、条溝52d内には、第1賦形ロール52の低歯たけ部52cの歯が位置しているが、該低歯たけ部52cの歯たけは、高歯たけ部52eの歯たけよりも低いものである。その為、延伸力に起因して第1弾性部材13aが切断されにくい。凸ロール51の低歯たけ部51cと第1賦形ロール52の
凹部52bとが噛み合わされるようになるが、これらの歯が噛み合ったとしても、延伸の程度は小さい。製造される第1シート11には、第1弾性部材13aが配された部分においても、頂部と底部との間に第2領域17が形成される。また、低歯たけ部(不図示)の先端面は延伸されにくく、第1シート11においては、弾性部材13が配された部分においても、頂部及び底部にそれぞれ第1領域16が形成される。このように、第2領域17及び第1領域16が、第1弾性部材13aの延びる方向と直交するロール軸方向ADに延びるように形成される。
【0155】
第1工程では、凸ロール51の凸部51aと第1賦形ロール52の
凹部52bを
噛み合わせたときに、条溝51d及び条溝
52dに供給された第1弾性部材13aは、条溝51dと条溝52dとによってロール回転方向に沿って形成される空隙部に通されるようになる。そして、
図15に示すように、凸ロール51の回転方向に伸長した各第1弾性部材13aの張力によって、凹凸賦形された第1シート11を、凸ロール51の周面に押え付けながら次工程の第3工程に搬送する。シート11を弾性部材13aにより凸ロール51上に抑え付けることでシート11がロール51から浮くことが防止でき、接合部にてシートにシワなどが入ることを防ぐことができる。
【0156】
第2工程では、
図15に示すように、第2シート12の帯状シート12aをその原反ロール(図示せず)から繰り出して、帯状シート12aを第2賦形ロール53と第3賦形ロール54との間に供給する。供給する際には、帯状シート12aを第3賦形ロール54側から供給し、第3賦形ロール54の周面に沿わせながら供給することが、賦形性の観点から好ましい。それと共に、一方向に引き揃えられた複数本の第2弾性部材13bを、第2賦形ロール53と第3賦形ロール54との間に供給する。第2賦形ロール53と第3賦形ロール54との間には、第2弾性部材13bが帯状シート12aにおける第2賦形ロール53との対向面側に配された状態で通される。
【0157】
第2工程では、
図15に示すように、第2賦形ロール53の高歯たけ部53eと第3賦形ロール54の凹部54bとが噛み合わされ、第2賦形ロール53の凹部53bと第3賦形ロール54の凸部54aとが噛み合わされて、第2凸部2a及び第2凹部2bを有する第2シート12が製造されるようになる。高歯たけ部53eと凸部54aとはいずれも歯たけが高いものなので、第2賦形ロール53と第3賦形ロール54との噛み合い部分では、帯状シート12aの延伸の程度が大きく、帯状シート12aにおける主たる延伸部位が、高歯たけ部53eの先端面と、凸部54aの先端面との間の領域となる。第2シート12においては、頂部と底部との間に、繊維固定部間の距離が長い第2領域17が形成される。また、高歯たけ部53eの先端面及び凸部54aの先端面は延伸されにくく、頂部及び底部にそれぞれ、繊維固定部間の距離が短い第1領域16が形成される。
【0158】
第2工程では、
図15に示すように、各第2弾性部材13bは、第2賦形ロール53の周方向に延びる条溝53dに対応する位置に供給され、第3賦形ロール54の回転方向に沿って伸長される。条溝53d内には、第2賦形ロール53の低歯たけ部53cの歯が位置しているが、該低歯たけ部53cの歯たけは、高歯たけ部53eの歯たけよりも低いものである。その為、延伸力に起因して第2弾性部材13bが切断されにくい。第2賦形ロール53の
凹部53bと第3賦形ロール54の凸部54aとが噛み合わされるようになるが、これらの歯が噛み合ったとしても、延伸の程度は小さい。製造される第2シート12には、第2弾性部材13bが配された部分においても、頂部と底部との間に第2領域17が形成される。また、低歯たけ部53cの先端面は延伸されにくく、第2シート12においては、弾性部材13が配された部分においても、頂部及び底部にそれぞれ第1領域16が形成される。このように、第2領域17及び第1領域16が、第2弾性部材13bの延びる方向と直交するロール軸方向ADに延びるように形成される。
【0159】
第2工程では、第2賦形ロール53の凸部53aと第3賦形ロール54の
凹部54bを
噛み合わせたときに、条溝53dに供給された第2弾性部材13bは、第2賦形ロール53の条溝53dと第3賦形ロール54の凸部54aとによってロール回転方向に沿って形成される空隙部に通されるようになる。そして、
図15に示すように、凸ロール51の回転方向に伸長した各第2弾性部材13bの張力によって、凹凸賦形された第2シート12を、第3賦形ロール54の周面に押え付けながら次工程の第3工程に搬送する。シート12を弾性部材13bにより第3賦形ロール54上に抑え付けることでシート12が第3賦形ロール54から浮くことが防止でき、接合部にてシートにシワなどが入ることを防ぐことができる。
【0160】
第3工程では、
図15に示すように、凹凸賦形された第1シート11と凹凸賦形された第2シート12とを、各シート11,12における凹凸の位相が一致するように重ね合わせるとともに、弾性部材13a,13bの配置面どうしが対向するように重ね合わせて積層シート10Jを形成する。積層シート10Jでは、第1シート11の第1凸部1aの位置に第2シート12の第2凹部2bの位置が合わせられており、第1シート11の第1凹部1bの位置に第2シート12の第2凸部2aの位置が合わせられている。
【0161】
第3工程では、
図15に示すように、第1賦形ロール52の条溝52dの位置と第2賦形ロール53の条溝53dの位置とが一致していないため、条溝52dに供給された第1弾性部材13aと、条溝53dに供給された第2弾性部材13bとが、ロール軸方向において重ならないようになっている。
【0162】
第3工程では、条溝51dに供給された第1弾性部材13a及び第2弾性部材13bとは、凸ロール51と第3賦形ロール54とを噛み合わせたときに、条溝51dと第3賦形ロール54の凸部54aとによってロール回転方向に沿って形成される空隙部に通されるようになる。
【0163】
積層シート10Jは、第1シート11と第2シート12とを重ね合わせた時点で凹凸形状のものとなっているが、第3工程では、
図15に示すように、凸ロール51の凸部51aと第3賦形ロール54の凹部54bとの噛み合わせによって再度、同じ凹凸形状に凹凸賦形される。再賦形された積層シート10Jは、凸ロール51の吸引部51fで吸引孔(不図示)を介して、ロールの周面から内部に向かって吸引され、凸ロール51のロール周面上に保持される。そして積層シート10Jは、凸ロール51の凹凸形状に沿った形状に維持された状態で、次工程の第4工程まで搬送される。
【0164】
第4工程では、条溝51dに供給された第1弾性部材13a及び第2弾性部材13bとは、凸ロール51の凸部51aと接合ロール55の凸部55aとを当接させたときに、条溝51dと接合ロール55の凸部55aとによってロール回転方向に沿って形成される空隙部に通されるようになる。
【0165】
第4工程では、
図15に示すように、凸ロール51の条溝51dの両側に位置する高歯たけ部51e,51eと、各高歯たけ部51eに対応する接合ロール55の凸部55aとによって、積層シート10Jに配された各弾性部材13a,13bの両側に接合部14を形成して、第1シート11及び第2シート12を接合する。このようにして、目的とする複合伸縮シート10Cが製造される。
【0166】
第3実施形態に係る複合伸縮シート10Cは、
図16に示す製造装置60を用いて製造することも可能である。製造装置60は、凸ロール61、賦形ロール62及び接合ロール63を備えている。これらのロールは、回転軸に駆動手段(不図示)からの駆動力が伝達されることによって、矢印で示す方向に回転するようになっている。凸ロール61と賦形ロール62とは噛み合うようになっている。凸ロール61と接合ロール63とは、凸ロール61における賦形ロール62との噛み合い部分よりも回転方向下流側で、当接するようになっている。
【0167】
尚、凸ロール61及び賦形ロール62の代わりに、特開2008-289659号公報の
図6に記載の第1のロール5及び第2のロール6や、国際公開第2014/038578号パンフレットの
図6に記載の第1エンボスロール11及び第2エンボスロール12を用いてもよい。
【0168】
賦形ロール62は、その構成が、製造装置20の第1凸ロール21の構成と略同じとなっている。賦形ロール62は、
図16に示すように、凹凸ロールであり、その周面に軸方向ADに直線状に延びる凸部62a及び凹部62bを有している。凸部62aは、軸方向ADに沿って、高歯たけ部62eと低歯たけ部61cとを交互に有している。高歯たけ部62eは、軸方向ADに沿った長さが、低歯たけ部61cの軸方向ADに沿った長さよりも長くなっている。高歯たけ部62eの該長さは、製造される複合伸縮シート10Cにおける接合部14の直交方向Yの長さと略一致している。賦形ロール62には、低歯たけ部61cに対応する位置に条溝62dが形成され、条溝62dがロールの周方向の全域に延びている。軸方向ADにおいて隣り合う条溝62dのピッチは、製造される複合伸縮シート10Cにおける隣り合う弾性部材13のピッチと同じになっている。
【0169】
凸ロール61は、
図16に示すように、凹凸ロールであるが、ロールの周方向の全域に延びる条溝を有していない。凸ロール61は、賦形ロール62の軸方向ADの全長にわたって延びている。凸ロール61は、凸部61a及び凹部61bを有している。凸部61aの歯たけは、賦形ロール62の高歯たけ部62eの歯たけと略同じになっている。凹部61bは賦形ロール62の凸部62aに噛み合い、凸部61aは賦形ロール62の凹部62bに噛み合うようになっている。
【0170】
凸ロール61は、凹部61bの底部に吸引孔(不図示)を備えている。吸引孔(不図示)は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(不図示)に通じており、
図16に示すように、凸ロール61と賦形ロール62との噛み合い部分から、凸ロール61と接合ロール63との当接部分までの間の吸引部61fで、凸ロール61の周面から内部に向かって吸引が行われる様に制御されている。
【0171】
接合ロール63は、
図16に示すように、凸ロール61の軸方向ADの全長にわたって延びている。接合ロール63は、回転方向に沿って延びる凸部63aを軸方向ADに一定の間隔を置いて有している。該間隔に弾性部材13が通るようになる。凸部63aの軸方向ADに沿った長さが、製造される複合伸縮シート10Cにおける接合部14の直交方向Yの長さと略一致している。接合ロール63の凸部63aの頂部と、凸ロール61の凸部61aの頂部とは、当接するようになっている。
【0172】
製造装置60を用いる複合伸縮シート10Cの製造方法は、(1)凹凸賦形された第1シート11及び第2シート12を製造する第1工程と、(2)第1シート11と第2シート12と接合して複合伸縮シート10Cを製造する第2工程とに大別される。
【0173】
第1工程では、
図16に示すように、第1シート11の帯状シート11aと、第2シート12の帯状シート12aとを、それらの原反ロール(図示せず)から繰り出す。それと共に、帯状シート11aと帯状シート12aとの間に、一方向に引き揃えられた複数本の弾性部材13を配した状態で、凸ロール61と賦形ロール62との噛み合い部分に供給する。各弾性部材13は、賦形ロール62の条溝62dに対応する位置に供給され、凸ロール61の回転方向に沿って伸長される。条溝62dに供給された弾性部材13は、凸ロール61と賦形ロール62とを噛み合わせたときに、条溝62dと凸ロール61の凸部61aとによってロール回転方向に沿って形成される空隙部に通されるようになる。
【0174】
第1工程では、
図16に示すように、凸ロール61の凸部61aと賦形ロール62の凹部62bとが噛み合わされ、凸ロール61の凹部62bと賦形ロール62の高歯たけ部62eとが噛み合わされて、第1凸部1a及び第1凹部1bを有する第1シート11と、第2凸部2a及びと第2凹部2bを有する第2シート12が製造されるようになる。凸部61a及び高歯たけ部62eの歯が噛み合った状態では、帯状シート11a,12aの延伸の程度が大きく、帯状シート11a,12aにおける主たる延伸部位が、凸部61aの先端面と、高歯たけ部62eの先端面との間の領域となる。製造される第1シート11及び第2シート12においては、頂部と底部との間に、繊維固定部間の距離が長い第2領域17が形成される。また、凸部61aの先端面及び高歯たけ部62eの先端面は延伸されにくく、第1シート11及び第2シート12においては、頂部及び底部にそれぞれ、繊維固定部間の距離が短い第1領域16が形成される。
【0175】
図16に示すように、条溝62d内には、賦形ロール62の低歯たけ部62cの歯が位置しているが、該低歯たけ部62cの歯たけは、高歯たけ部62e及び凸ロール61の凸部61aの歯たけよりも低いものである。その為、延伸力に起因して弾性部材13が切断されにくい。賦形ロール62の低歯たけ部62cと凸ロール61の凸部61aとが噛み合わされるようになるが、これらの歯が噛み合ったとしても、延伸の程度は小さい。製造される第1シート11及び第2シート12には、弾性部材13が配された部分においても、頂部と底部との間に第2領域17が形成される。また、低歯たけ部62cの先端面は延伸されにくく、第1シート11及び第2シート12においては、弾性部材13が配された部分においても、頂部及び底部にそれぞれ第1領域16が形成される。
【0176】
図16に示すように、第1工程では、凹凸形状の第1シート11及び第2シート12は、凸ロール61の吸引部61fで吸引孔(不図示)を介して、ロールの周面から内部に向かって吸引され、凸ロール61のロール周面上に保持される。凹凸形状の第1シート11及び第2シート12は、凸ロール61の凹凸形状に沿った形状に維持された状態で、次工程の第2工程まで搬送される。
【0177】
第2工程では、接合ロール63の周方向に延びる凸ロール61と、凸ロール61の凸部61aとによって、ロール回転方向に沿って形成される空隙部に弾性部材13を通しながら、弾性部材13の両側に接合部14を形成して、第1シート11及び第2シート12を接合する。このようにして、目的とする複合伸縮シート10Cが製造される。
【0178】
製造装置60を用いる複合伸縮シート10Cの製造方法では、凸ロール61と接合ロール63との当接部分よりも回転方向下流側に、凸ロール61の周面に当接するフラットロール等の別の補助ロールや、特開2018-099793号公報の
図3に記載の超音波ホーン45を設けるようにしてもよい。このような補助ロール等を設けることにより、複合伸縮シート10Cにおける接合部14の接合強度を調整することができる。
【0179】
以上のように製造された複合伸縮シート10A,10B,10Cは、特に吸収性物品における防漏カフとなるサイドシートを構成するシート、吸収性物品の外面を形成する外装体を構成するシートとして好適に用いられる。サイドシートを構成するシートとして用いられる場合、製造された複合伸縮シート10A~10Cは、その後、例えば従来の、いわゆる縦流れ方式の生理用ナプキンの製造装置に搬送される。そして、液透過性の表面シートの連続体、液難透過性の裏面シートの連続体、及び両シートの連続体間に、搬送方向に複数個の液保持性の吸収体とを備えた吸収性本体の連続体に、その搬送方向の両側部それぞれに沿って、製造された複合伸縮シート10A~10Cをサイドシートの連続体としてを配し、その連続体を切断して、生理用ナプキンを製造することができる。生理用ナプキンを製造するときには、複合伸縮シートにおける繊維固定部間の距離の長い第2領域17に、生理用ナプキンを構成する別の部材が接合されていないことが好ましい。
【0180】
また、例えばパンツ型使い捨ておむつの外装体を構成するシートとして用いられる場合、製造された複合伸縮シート10A~10Cは、その後、従来の、いわゆる横流れ方式のパンツ型使い捨ておむつの製造装置に搬送される。製造された複合伸縮シート10A,10B,10Cを2枚用意し、2枚の複合伸縮シート10A~10Cを、搬送方向と直交する方向に間隔を空けて、一対の外装体の連続体として供給する。そして、別工程で製造された液保持性の吸収体を含む吸収性本体を搬送方向に間欠的に供給して、各吸収性本体を一対の複合伸縮シート10A~10Cに架け渡すように配置して接着剤等で固定する。その後、吸収性本体を搬送方向と直交する方向に二つ折りし、一対の複合伸縮シート10A~10Cを重ね合わせておむつ連続体を得る。その後、おむつ連続体を、搬送方向に隣り合う吸収性本体どうしの間で、搬送方向と直交する方向に接合すると同時に切断して、パンツ型使い捨ておむつを製造することができる。パンツ型使い捨ておむつ等の使い捨ておむつを製造するときには、複合伸縮シートにおける繊維固定部間の距離の長い第2領域17に、おむつを構成する別の部材が接合されていないことが好ましい。
【0181】
本発明の吸収性物品において用いられる複合伸縮シートの製造方法は、上述の第1~第3実施形態に係る複合伸縮シート10A~10Cの製造方法に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、上述の第1~第3実施形態に係る複合伸縮シート10A~10Cの製造方法における各構成要件は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜組み合わせて実施できる。
【0182】
上述の製造方法において、第1シート11と第2シート12との接合部14は、第1シート11と第2シート12とを圧着又は融着して形成されているが、その代わりに、接着剤により形成されていてもよい。また、圧着又は融着による接合部14に加えて、接着剤による別の接合部を形成してもよい。
【0183】
接着剤を用いる場合、例えば製造装置20を用いる製造方法においては、第1凸ロール21及び第1賦形ロール25の噛み合い部と、第1凸ロール21及び第2凸ロール22の当接部分との間に接着剤塗布部を配置し、接着剤を凹凸賦形された第1シート11又は第1弾性部材13aに、MD方向に間隔を置いて塗工することが好ましい。同様に、第2凸ロール22及び第2賦形ロール26の噛み合い部と、第1凸ロール21及び第2凸ロール22の当接部分との間に接着剤塗布部を配置し、接着剤を凹凸賦形された第2シート12又は第2弾性部材13bに、MD方向に間隔を置いてコームガン等を用いて間欠的に塗工することが好ましい。これによって第1凸ロール21、第1賦形ロール25、第2凸ロール22、第2賦形ロール26の接着剤による汚れ付着を防止できる。第1弾性部材13a及び第2弾性部材13bに直接接着剤を塗工すると弾性部材の抜けを防止することができるとともに最小限の接着材量で済むため軟らかい複合伸縮シートが得られる。また、凹凸賦形された第1シート11及び第2シート12に接着剤を塗工すると、製造される複合伸縮シートにおける接着剤塗工部の硬化を防止できる。同様な観点から、第1シート11及び第2シート12に接着剤を塗工するときには、軸方向ADへ間欠的(ストライプ状)に凸ロール21,22の条溝21d,22dに対応する位置に、MD方向へ間欠的に塗工することが好ましい。
【0184】
弾性部材13を両シート11,12に固定するために接着剤を用いる場合、接着剤としては、スチレン系(SIS、SBS、SEBS)、又はポリオレフィン系のホットメルト接着剤等が挙げられる。特に感圧型のSIS系ホットメルト接着剤が弾性部材の抜けや染み出しの観点から好ましい。
【0185】
上述の製造方法は、連続してMD方向に延びる弾性部材13を備える複合伸縮シート10A~10Cを製造しているが、複合伸縮シート10A~10CのMD方向の一部分において弾性部材13が細かく分断されていてもよい。使い捨てパンツおむつの外層に複合伸縮シートを用いる際はおむつの備える吸収体上の弾性部材13を分断することが好ましい。弾性部材13を細かく分断する場合、例えば、製造装置20を用いる製造方法においては、第1凸ロール21の周方向に条溝21dの無い部分を設け、第2凸ロール22の周方向に条溝22dの無い部分を設けるようにすればよい。第1凸ロール21の条溝21dの無い部分と第2凸ロール22の条溝22dの無い部分とは、対応した位置に形成されていることが好ましい。
【実施例】
【0186】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0187】
〔実施例1〕
図6に示す製造装置20を用いて複合伸縮シートを製造した。第1シート及び第2シートとしては表1に示すアイソタクチックホモポリプロピレン(融点165℃)を84質量%とし低立体規則性のポリプロピレン(融点78℃)を15質量%、脂肪酸アミドを1質量%含むスパンボンド不織布を用い、弾性部材としては表1に示すポリウレタンからなる糸ゴムを用いた。糸ゴムの本装置への供給挿入倍率は2.6倍(糸ゴム原反に巻かれた状態を1倍として2.6倍に伸長)とした。製造条件としては、第1シートにおける高歯たけ部21eでの延伸倍率を2.6倍、接合用の高さの高い高歯たけ部21eでの延伸倍率を2.7倍、低歯たけ部21cでの延伸倍率を2.2倍に調整し、第2シートにおける高歯たけ部22eでの延伸倍率を2.6倍、低歯たけ部22cでの延伸倍率を2.2倍に調整した。凸ロール21,22の凸部21a,22a及び凹部21b,22bのMD方向のピッチは2mmであった。高歯たけ部22eにおいて高さの高い部分を回転方向に対して5個おきに設け、接合部14を10mmピッチ(凸ロール21上長さにて)で形成した。弾性部材の凸ロール21,22への巻きかけ角度は90度であった。凸ロール21,22の凸部高歯たけ部21e、低歯たけ部21c、高歯たけ部22e、低歯たけ部22c、賦形ロール25,26の凸部25a,26aの先端の曲率半径Rは0.3mmであった。凸ロール21、凸ロール22は110℃の表面温度に加熱し弱いヒートシール接合をした。凸ロール25凸ロール26は加熱を行わずに成り行きとした。凸ロール21のロール上の下流にて凸ロール22の形状と同形状の補助凹凸ロールを用いて表面温度165℃に加熱して加圧し、凸部同士の突合せにより追加ヒートシール接合した。また、凸ロール21,22及び賦形ロール25,26の噛み合い部と、第1凸ロール21及び第2凸ロール22の当接部分との間にそれぞれコームガン式の接着剤塗布部を配置し、接着剤を弾性部材に、凸ロール21上の長さにてMD方向に100mm長の未塗布部を設け、間隔を置いてMD方向に30mm長の接合領域19に相当する塗布部を設け、塗布部の接着剤坪量は6g/m
2となるように塗工した。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、伸び止まり伸度が314%であり、直交方向Yの弾性部材のピッチが5mmであり、伸縮方向Xの接合部の伸び止まり伸度時ピッチP2が25.3mmであり、直交方向Yの接合部のピッチが5mmであった。尚、接合部を直交方向Yに隣り合う弾性部材の間に配置した。
【0188】
〔実施例2〕
製造条件を表1に示す値にした以外は実施例1と同様にして複合伸縮シートを製造した。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、弾性部材のピッチ、及び接合部のピッチが表1に示す結果であった。
【0189】
〔実施例3〕
図6に示す製造装置20を用いて、凸ロール21と賦形ロール25との噛合い量を凸ロール22と賦形ロール26との噛合い量よりも大きくすることによって、製造条件を表1に示す値にした。該条件以外は実施例1と同様にして複合伸縮シートを製造した。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、弾性部材のピッチ、及び接合部のピッチが表1に示す結果であった。
【0190】
〔実施例4〕
図6に示す製造装置20を用いて、凸ロール21,22の凸部21a,22a及び凹部21b,22bのMD方向のピッチは7mmであった。低歯たけ部21c、22cでの延伸倍率を1.0倍とした。伸縮の強度を調整するため弾性部材は50mm幅あたり10本になるように、1つの条溝に2本の弾性部材を通した箇所が4か所に対して、1本の弾性部材を通した箇所が2か所の割合となるように設けた。接合部14をMD方向に7mmピッチ(凸ロール21上長さにて)で形成した。製造条件を表1に示す値にした。該条件以外は実施例1と同様にして複合伸縮シートを製造した。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、弾性部材のピッチ、及び接合部のピッチが表1に示す結果であった。
【0191】
〔実施例5〕
図12に示す製造装置30を用いて複合伸縮シートを製造した。製造条件としては、高歯たけ部31eでの延伸倍率を2.3倍、低歯たけ部31cでの延伸倍率を2.2倍に調整した。凸ロール31の凸部31a及び凹部31bのピッチは2mmであった。賦形ロール35の凸部35a、31cの先端の曲率半径Rは0.3mmであった。凸ロール31、フラット接合ロール32はそれぞれ110℃、160℃の表面温度に加熱した。賦形ロール35の表面温度は60℃とした。また、接着剤を弾性部材に塗工せず、各弾性部材の両側に配される接合部どうしの間隔を狭くして弾性部材を挟圧固定した。これらの条件以外は実施例1と同様にして複合伸縮シートを製造した。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、弾性部材のピッチ、及び接合部のピッチが表1に示す結果であった。
【0192】
〔実施例6〕
各弾性部材の両側に配される接合部どうしの間隔を広くして弾性部材が挟圧されないようにし、凸ロール31及びフラット接合ロール32の当接部分の前にコームガン式の接着剤塗布部を配置し、接着剤を弾性部材に、凸ロール31上の長さにてMD方向に100mm長の未塗布部を設け、間隔を置いてMD方向に30mm長の塗布部を設け、塗布部の接着剤坪量は6g/m2となるように塗工した以外は、実施例5と同様にして複合伸縮シートを製造した。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、弾性部材のピッチ、及び接合部のピッチが表1に示す結果であった。
【0193】
〔実施例7〕
図10に示す製造装置20Aを用いて複合伸縮シートを製造した。製造条件を表1に示す値にした以外は実施例1と同様にして複合伸縮シートを製造した。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、弾性部材のピッチ、及び接合部のピッチが表1に示す結果であった。
【0194】
〔比較例1〕
実施例1と同じ、第1シート、第2シート及び弾性部材を用いた。第1シートの全面に接着剤を塗工(ベタ塗工)し、第1シートにおける接着剤の塗工面と第2シートとの間に弾性部材を配置し、固定して比較例1の複合伸縮シートを製造した。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、弾性部材のピッチが表1に示す結果であった。
【0195】
〔比較例2〕
特開2008-142341号公報の
図13に記載の製造装置を用いて複合伸縮シートを製造した。第1シート、第2シート及び弾性部材としては、実施例1と同じ、第1シート、第2シート及び弾性部材を用いた。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、弾性部材のピッチ、及び接合部のピッチが表1に示す結果であった。
【0196】
〔比較例3〕
図14に示す製造装置20の備える第1凸ロール21の代わりに、低歯たけ部41cを有さない凹凸ロールを用い、比較例1の複合伸縮シートを更に延伸加工して複合伸縮シートを製造した。製造条件としては、第1賦形ロールの高歯たけ部での延伸倍率を2.2倍、低歯たけ部での延伸倍率を2.0倍に調整した。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、弾性部材のピッチが表1に示す結果であった。
【0197】
〔比較例4〕
特開2008-142341号公報の
図13に記載の製造装置に追加して、
図12(a)に示されるような低歯たけ部を有さない一対の凹凸ロールを用い、比較例2の複合伸縮シートを更に延伸加工して複合伸縮シートを製造した。尚、第1シート及び第2シートとしては、アイソタクチックホモポリプロピレンからなる表1に示すものを用いた。製造条件としては、高歯たけ部での延伸板率を2.2倍に調整した。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、弾性部材のピッチ、及び接合部のピッチが表1に示す結果であった。50m/分以上の加工速度では弾性部材の破断が見られた。
【0198】
〔評価〕
実施例1ないし7の複合伸縮シート、比較例1ないし4の複合伸縮シートについて、圧縮特性及び伸縮特性を下記方法により測定し、以下の基準で官能評価した。尚、測定箇所は接着剤が間欠的に塗布されたサンプルについては接着剤のない領域とした。
【0199】
<圧縮特性の測定>
圧縮特性は、KES圧縮試験機(カトーテック株式会社製KES FB-3)を用い、通常モードで50g/cm2までの圧縮特性評価を行い、圧縮のレジリエンスRC値を読み取った。サンプルは弛緩状態から1.4倍に伸長した状態でサンプルの両端を把持した。測定箇所は把持していない中央部とした。測定値としては、3点を測定しその平均値を圧縮回復性とした。このKES圧縮試験機は、圧縮部位が面積2cm2の円形平面を持つ板であり、圧縮速度は0.1mm/s、圧縮最大圧力は50g/cm2で、圧縮最大圧力に到達した時点で圧縮方向を反転させ回復過程に移行するものである。上記RC値は、圧縮時のエネルギーWCに対する回復時のエネルギーWC’の割合(WC’/WC)を%表示したものであり、RC値が大きいほど、圧縮に対する回復性が良く、弾力性があるとされる。圧縮時のエネルギーWCは、不織布の試験体に掛かる初期圧力0.5g/cm2がかかる厚みT0から最大圧力50g/cm2がかかる厚みTmまでの圧力の変位長さ積分値として求められる。回復されるエネルギーWC’は厚みTmから厚みT0までの圧力の変位長さ積分値として求められる。WCは圧縮時の硬さに相当する。また、WC’が高いものは反発性の高いものとなる。
【0200】
<伸縮特性の測定>
伸縮サイクル特性は伸び止まり伸度と同様に測定し、伸び止まり伸度まで300mm/分の速度で伸長させ、500cN/50mmになった時点で直ちに300mm/分の速度で伸度0%までチャック間を戻したときの荷重を測定した。500cN/50mmに達する前に破断する場合は、最大強度点の伸度に0.8倍した値を伸び止まり伸度として測定した。弛緩状態の複合伸縮シートの長さを基準とした測定を行う場合は、弛緩状態でチャック間にサンプルをセットした。加工前の元のシート11、シート12の長さを基準とする場合は、加工前にチャック間100mmと同じ長さになるように元のシートにマークしておき、加工後の複合伸縮シートのマーク間をチャックした。これにより、元のシートの長さに対する伸度が求められる。使用時の伸長範囲を想定して、戻り時の荷重が200cN/50mm時の伸度と戻り時の荷重が40cN/50mm時の伸度を測定した。また、荷重が2cN/50mm未満になったときの伸度を残留歪みとして測定した。弾性部材のみについても、弾性部材の量を複合伸縮シートと同じにして、測定した。
〔(サンプルの戻り時の200cN/50mm時長さ-戻り時の40cN/50mm時長さ)/(弾性部材の戻り時の200cN/50mm時長さ-戻り時の40cN/50mm時長さ)〕×100(%)を求めた。この値が高いものほど装着時の伸長適用範囲において、シート11,12に阻害されずに適用範囲が広いものとなる。
【0201】
<官能評価>
・クッション性の官能評価試験(N=5)
複合伸縮シートを用いて、クッション感の官能評価を行った。具体的には、弛緩した状態から1.4倍に伸長した状態にてテーブル上に置いた実施例及び比較例の試料について、5人のモニター(成人男女)に表面を手のひらで抑える、ひとさし指、中指の2本の指先で抑えることによりクッション感の官能評価を行った。次の5段階評価基準を用いた。該評価基準に基づいて5人のモニターが官能評価し、その点数を平均し四捨五入して実施例及び比較例のそれぞれ評価結果とした。5点:クッション感がよい、4点:どちらかと言えばクッション感がよい、3点:どちらともいえない、2点:どちらかと言えばクッション感が悪い、1点:クッション感が悪い。
・外観の官能評価試験(N=5)
複合伸縮シートを用いて、外観の官能評価を行った。具体的には、弛緩した状態から1.4倍に伸長した状態にてテーブル上に置いた実施例及び比較例の試料について、5人のモニター(成人男女)によって目視による外観の官能評価を行った。次の5段階評価基準を用いた。該評価基準に基づいて5人のモニターが官能評価し、その点数を平均し四捨五入して実施例及び比較例のそれぞれ評価結果とした。5点:外観がよい、4点:どちらかと言えば外観がよい、3点:どちらともいえない、2点:どちらかと言えば外観が悪い、1点:外観が悪い。
・肌触りの官能評価試験(N=5)
複合伸縮シートを用いて、肌触りの官能評価を行った。具体的には、弛緩した状態から1.4倍に伸長した状態にてテーブル上に置いた実施例及び比較例の試料について、5人のモニター(成人男女)に表面を手のひらで撫でる、ひとさし指、中指の2本の指先で撫でることにより肌触りの官能評価を行った。次の5段階評価基準を用いた。該評価基準に基づいて5人のモニターが官能評価し、その点数を平均し四捨五入して実施例及び比較例のそれぞれ評価結果とした。5点:肌触りがよい、4点:どちらかと言えば肌触りがよい、3点:どちらともいえない、2点:どちらかと言えば肌触りが悪い、1点:肌触りが悪い。
【0202】
【0203】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例の複合伸縮シートは、比較例の複合伸縮シートに比べて、伸縮特性が高く、官能評価が良好であることが判る。
【符号の説明】
【0204】
10A,10B,10C 複合伸縮シート
11 第1シート
1a 第1凸部
1b 第1凹部
12 第2シート
2a 第2凸部
2b 第2凹部
13 弾性部材
14 接合部
16 繊維固定部間の距離が相対的に短い第1領域
17 繊維固定部間の距離が相対的に長い第2領域
20,20A,30,40,50,60 製造装置
21,21A 第1凸ロール
22,22A 第2凸ロール
25,52 第1賦形ロール
26,53 第2賦形ロール
54 第3賦形ロール
31,41,51,61 凸ロール
32,63 接合ロール
35,45,62 賦形ロール