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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】車載用バッテリ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/50 20210101AFI20230725BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20230725BHJP
   H01M 50/51 20210101ALI20230725BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20230725BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20230725BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20230725BHJP
【FI】
H01M50/50 101
H01M50/505
H01M50/51
H01M50/209
H01M50/249
B60K1/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019113132
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020205198
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】村上 司
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-519677(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0039445(KR,A)
【文献】特開2018-181780(JP,A)
【文献】特開2018-110082(JP,A)
【文献】特開2017-063033(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139350(WO,A1)
【文献】特表2014-524126(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0039448(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0039449(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50
H01M 50/20
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された複数の電池モジュールが複数のバスバを介して直列接続され、前記車両の電気負荷に電力を供給する車載用バッテリであって、
前記複数のバスバは、少なくとも第1のバスバと、前記第1のバスバよりも延在方向に長い第2のバスバと、を有し、
前記第2のバスバは、前記第1のバスバと、前記第1のバスバと連結すると共に前記第1のバスバよりも断面積の大きい調整用バスバと、を有し、
前記調整用バスバは、前記第1のバスバよりも比重の小さい金属材料から形成されていることを特徴とする車載用バッテリ。
【請求項2】
前記第1のバスバは、少なくとも前記電池モジュールの端子または前記電池モジュールと前記電気負荷との間に配設されるジャンクションボックスの端子に対して連結され、
前記調整用バスバは、前記第1のバスバ間に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の車載用バッテリ。
【請求項3】
車両に搭載された複数の電池モジュールの少なくとも2個以上が並列接続された複数の並列用電池モジュール群が直列接続され、前記車両の電気負荷に電力を供給する車載用バッテリであって、
前記並列用電池モジュール群では、各前記電池モジュールにそれぞれ接続される複数のバスバを有し、
前記複数のバスバが、少なくとも第1のバスバと、前記第1のバスバよりも延在方向に長い第2のバスバと、を有し、
前記第2のバスバの金属材料は、前記第1のバスバの金属材料よりも電気抵抗率を低く調整することで、前記第1のバスバと前記第2のバスバとの抵抗値が略一致していることを特徴とする車載用バッテリ。
【請求項4】
前記第2のバスバの断面積は、前記第1のバスバの断面積よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の車載用バッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用バッテリに関し、特に、車載用バッテリの各電池モジュール間を接続するバスバの抵抗値を調整することで、その出力特性を安定化させる車載用バッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電池パック100として、図5に示す構造が知られている。図5(A)は、従来の電池パック100が搭載された車両101を説明する概略図である。図5(B)は、従来の電池パック100を説明する斜視図である。
【0003】
図5(A)に示す如く、車両101は、駆動輪102,103を駆動させるための駆動モータ(図示せず)を備えた電気自動車である。駆動モータは、インバータ装置(図示せず)を介して電池パック100と電気的に接続している。そして、電池パック100は、車両101のフロントシート104の下方からリアシート105の下方へ延在して配設されている。電池パック100の前部は、電池パック100内に配設される電池モジュール107(図5(B)参照)の高さに対応して形成されている。一方、電池パック100の後部は、2個の電池モジュール107が積層した高さに対応して形成されている。
【0004】
図5(B)に示す如く、電池パック100の筐体部106内には、複数の電池モジュール107が配設され、複数の電池モジュール107同士は、バスバ(図示せず)にて直列に接続されている。そして、電池パック100は、例えば、350Vの電力供給源であり、複数の電池モジュール107を搭載することで、車両101の走行可能な距離を長くしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-55973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5(B)に示す如く、電池パック100では、各電池モジュール107は、車両101の前後方向にその長手方向が沿うように配置され、車両101内の限られたスペースに効率的に整列して配置されている。更には、電池パック100の後部では、電池モジュール107が積層して配置されることで、電池パック100の大容量化が実現されている。
【0007】
しかしながら、車両101では、電池パック100の搭載スペースに制限があり、その一部の電池モジュール107を積層する等、そのレイアウトを工夫する必要がある。そして、各電池モジュール107を接続するバスバの長さは、電池モジュール107のレイアウトにより統一することが出来ず、特に、延在方向に長いバスバでは、その抵抗値も大きくなると共に、電圧降下も大きくなってしまう。
【0008】
その結果、各電池モジュール107がバスバにて直列接続される電池パック100では、バスバ全体の抵抗値が増大し、電池パック100全体の電圧降下が増大する。そして、電池パック100を監視するBCU(Battery Control Unit)では、上記電圧降下による電池パック100の大きな出力低下を検出し、各電池モジュール107は正常であるが、電池パック100を停止する恐れがある、という課題がある。
【0009】
また、各電池モジュール107同士をバスバにて並列接続し、並列用電池モジュール群を構成した場合には、上記バスバの長さの相違による抵抗値のばらつきにより、並列用電池モジュール群を構成する各電池モジュール107を流れる電流量が異なってしまう。その結果、並列用電池モジュール群内において、各電池モジュール107の劣化のスピードがばらつくことで、並列用電池モジュール群からの出力特性が悪化してしまう。そして、電池パック100を監視するBCUにて、並列用電池モジュール群の上記異常を検出することで、電池パック100を停止する恐れがある、という課題がある。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、車載用バッテリの各電池モジュール間を接続するバスバの抵抗値を調整することで、その出力特性を安定化させる車載用バッテリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車載用バッテリでは、車両に搭載された複数の電池モジュールが複数のバスバを介して直列接続され、前記車両の電気負荷に電力を供給する車載用バッテリであって、前記複数のバスバは、少なくとも第1のバスバと、前記第1のバスバよりも延在方向に長い第2のバスバと、を有し、前記第2のバスバは、前記第1のバスバと、前記第1のバスバと連結すると共に前記第1のバスバよりも断面積の大きい調整用バスバと、を有し、前記調整用バスバは、前記第1のバスバよりも比重の小さい金属材料から形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記第1のバスバは、少なくとも前記電池モジュールの端子または前記電池モジュールと前記電気負荷との間に配設されるジャンクションボックスの端子に対して連結され、前記調整用バスバは、前記第1のバスバ間に配設されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の車載用バッテリでは、車両に搭載された複数の電池モジュールの少なくとも2個以上が並列接続された複数の並列用電池モジュール群が直列接続され、前記車両の電気負荷に電力を供給する車載用バッテリであって、前記並列用電池モジュール群では、各前記電池モジュールにそれぞれ接続される複数のバスバを有し、前記複数のバスバが、少なくとも第1のバスバと、前記第1のバスバよりも延在方向に長い第2のバスバと、を有し、前記第2のバスバの金属材料は、前記第1のバスバの金属材料よりも電気抵抗率を低く調整することで、前記第1のバスバと前記第2のバスバとの抵抗値が略一致していることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記第2のバスバの前記断面積は、前記第1のバスバの前記断面積よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車載用バッテリは、車両に搭載された複数の電池モジュールが複数のバスバを介して直列接続され、車両の電気負荷に電力を供給する車載用バッテリであって、複数のバスバは、少なくとも第1のバスバと、第1のバスバよりも延在方向に長い第2のバスバと、を有し、第2のバスバは、第1のバスバと、第1のバスバと連結すると共に第1のバスバよりも断面積の大きい調整用バスバと、を有し、調整用バスバは、第1のバスバよりも比重の小さい金属材料から形成されている。この構造により、調整用バスバは、その断面積を大きくすることで抵抗値が低減されると共に、その金属材料により質量が低減される。そして、調整用バスバが第2のバスバに用いられることで、車載用バッテリ全体としてのバスバの抵抗値が低減され、車載用バッテリでの電圧降下が低減し、車載用バッテリとして安定した出力を実現することができる。また、車載用バッテリ全体としての質量も低減され、車両の軽量化を実現することができる。
【0017】
また、本発明の車載用バッテリでは、第1のバスバは、少なくとも電池モジュールの端子または電池モジュールと電気負荷との間に配設されるジャンクションボックスの端子に対して連結され、調整用バスバは、第1のバスバ間に配設されている。この構造により、電池モジュールの端子及びジャンクションボックスの端子は、第1のバスバと連結し、調整用バスバの形状に合わせて特注する必要がなく、製造コストが増大することが防止される。
【0018】
また、本発明の車載用バッテリは、車両に搭載された複数の電池モジュールの少なくとも2個以上が並列接続された複数の並列用電池モジュール群が直列接続され、車両の電気負荷に電力を供給する車載用バッテリであって、並列用電池モジュール群では、各電池モジュールにそれぞれ接続される複数のバスバを有し、複数のバスバの長さが異なる場合には、少なくともバスバ毎にその金属材料またはその断面積の大きさのどちらか一方が調整され、バスバの抵抗値が略一致している。この構造により、各並列用電池モジュール群では、並列接続されている各電池モジュールに、実質、同一量の電流が流れ、一部の電池モジュールが偏って劣化することが防止される。その結果、車載用バッテリとして安定した出力を実現することができる。更に、各並列用電池モジュール群での蓄電量が増大し、車載用バッテリの稼働時間が大幅に増大し、車両の連続走行距離を伸ばすことができる。
【0019】
また、本発明の車載用バッテリでは、複数のバスバが、少なくとも第1のバスバと、第1のバスバよりも延在方向に長い第2のバスバと、を有し、第2のバスバの金属材料は、第1のバスバの金属材料よりも電気抵抗率が低くなる。この構造により、第2のバスバの抵抗値は、第1のバスバの抵抗値側に近づける様に低減されると共に、並列用電池モジュール群内での複数のバスバの抵抗値が、実質、均一化される。
【0020】
また、本発明の車載用バッテリでは、第2のバスバの断面積は、第1のバスバの断面積よりも大きくなる。この構造により、第2のバスバは、その金属材料と合わせて、その断面積の形状を大きくすることで、第2のバスバの抵抗値は、第1のバスバの抵抗値側に近づける様に低減される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態である車載用バッテリを備えた車両を説明する(A)斜視図、(B)概略図である。
図2】本発明の一実施形態である車載用バッテリを説明する回路図である。
図3】本発明の一実施形態である車載用バッテリを説明する側面図である。
図4】本発明の他の実施形態である(A)車載用バッテリを備えた車両を説明する概略図、(B)車載用バッテリを説明する回路図である。
図5】従来の(A)電池パックが搭載された車両を説明する概略図、(B)従来の電池パックを説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る車載用バッテリ10を図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0023】
図1(A)は、本実施形態の車載用バッテリ10を搭載した車両11を説明する斜視図である。図1(B)は、本実施形態の車載用バッテリ10の配設状態を説明する概略図である。図2は、本実施形態の車載用バッテリ10を説明する回路図である。図3は、本実施形態の車載用バッテリ10に用いるバスバ16を説明する側面図である。
【0024】
図1(A)に示す如く、自動車や電車等の車両11には、車両11の電気負荷21(図2参照)に電力を供給するための車載用バッテリ10(図1(B)参照)が搭載されている。そして、車両11が自動車の場合には、近年、EV(Electrical Vehicle)、HEV(Hybrid Electrical Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electrical Vehicle)等が普及している。
【0025】
図1(A)は、車載用バッテリ10を備えた車両11を下方から見た状態を示し、一点鎖線は、車両11のバッテリ配置領域15を示している。そして、車両11は、主に、車体13と、車両11の底面14近傍のバッテリ配置領域15に配設される車載用バッテリ10と、車載用バッテリ10から供給される電力により駆動する駆動モータ22(図2参照)と、駆動モータ22の駆動力にて回転するタイヤ(図示せず)と、を有している。
【0026】
図1(B)に示す如く、バッテリ配置領域15には、車載用バッテリ10を構成する14個の電池モジュール10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H,10I,10J,10K,10L,10M,10Nが行列状に配設されている。電池モジュール10A~10Nは、例えば、直方体形状であり、車両11の前後方向に沿ってその長手方向が配置されている。そして、多数の電池モジュール10A~10Nが、バッテリ配置領域15に効率良く配置されることで、車載用バッテリ10の大容量化が実現される。
【0027】
電池モジュール10A~10Nには、それぞれ複数の電池セル(図示せず)が配設されている。電池セルは、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の2次電池である。個々の電池セルは、例えば、角型平板形状であり、車両11の前後方向に沿って、その前後に小さな隙間を有した状態にて等間隔に配列されている。そして、複数の電池セルが、導電性の接続板(図示せず)を介して直列接続されている。
【0028】
バッテリ配置領域15には、14個の電池モジュール10A~10Nが1段積みにて配設されている。電池モジュール10A~10Nは、バスバ16を介して直列に接続されている。そして、車両11の最前列に配列された電池モジュール10A,10Bが、それぞれジャンクションボックス35(図3参照)の正極端子用ボルト36(図3参照)または負極端子用ボルト(図示せず)と電気的に接続している。詳細は図2を用いて後述するが、バスバ16としては、例えば、最も長いバスバ16L(図2参照)、最も短いバスバ16S(図2参照)及びそれらの中間の長さのバスバ16M(図2参照)が用いられる。
【0029】
図2は、車両11の電気負荷21に電力を供給する車載用バッテリ10の回路図を示している。そして、電気負荷21としては、例えば、車両11を駆動する駆動モータ22に電力を供給するインバータ23と、車両11の室内温度を調整する空調装置24と、車載用バッテリ10の300V以上の電圧を12Vや48Vの電圧にて駆動する車両電装品に対して変換して供給するコンバータ25と、を有している。
【0030】
ここで、図1(A)及び図1(B)に示す如く、一点鎖線にて示す車両11のバッテリ配置領域15は、例えば、リアシート(図示せず)の下方等、車両11の限られたスペースに確保されている。そのため、電池モジュール10A~10N間の離間距離を均等にすることが難しく、電池モジュール10A~10Nを電気的に接続するバスバ16の長さを統一することが難しい。
【0031】
その結果、図2に示すように、電池モジュール10A~10N間を電気的に接続するバスバ16(図1(B)参照)としては、数種類の異なる長さのものが用いられ、例えば、最も長いバスバ16L、最も短いバスバ16S及びそれらの中間の長さのバスバ16Mが用いられている。尚、バスバ16としては、上記3種類の長さからなるバスバ16L,16M,16Sからなる場合に限定するものではなく、電池モジュール10A~10Nのレイアウトに応じて種々の設計変更が可能である。
【0032】
仮に、バスバ16L,16M,16Sは、同一の金属材料から形成され、同一の断面積のプレート形状から形成される場合には、バスバ16L,16M,16Sの長さに比例して、バスバ16L,16Mの抵抗値が、バスバ16Sの抵抗値よりも大きくなる。そして、車載用バッテリ10に電流が流れた際、バスバ16L,16Mでの電圧降下が、バスバ16Sでの電圧降下よりも大きくなる。その結果、車載用バッテリ10全体としてのバスバ16の電圧降下も増大してしまう。
【0033】
そこで、本実施形態では、図3に示す如く、銅材からなるバスバ16Sと、銅材より比重の小さいアルミニウム材からなる調整用バスバ31と、を準備し、バスバ16L,16Mは、バスバ16Sと調整用バスバ31とを組み付けることで構成している。尚、以下の説明では、バスバ16Lを図示して説明するが、バスバ16Mについても同じ構造とすることができる。
【0034】
バスバ16Sは、例えば、プレート形状であり、その長手方向の両端近傍に一対の締結孔32が設けられている。一方、調整用バスバ31は、その長手方向の両端近傍に、バスバ16Sとボルト締結するための一対の締結孔34が設けられている。そして、調整用バスバ31は、例えば、プレート形状であり、その断面積がバスバ16Sの断面積よりも大きくなることで、抵抗値が小さくなるように調整されている。
【0035】
図示したように、バスバ16Lは、電池モジュール10Aとジャンクションボックス35とを電気的に接続するために用いられる。そして、バスバ16Lは、2つのバスバ16Sと、1つの調整用バスバ31とが組み付けられることで構成されている。
【0036】
具体的には、一方のバスバ16Sは、電池モジュール10Aの正極端子用ボルト33に対して締結され、他方のバスバ16Sは、ジャンクションボックス35の正極端子用ボルト36に対して締結されている。そして、調整用バスバ31は、上記2つのバスバ16S間に配設され、2つのバスバ16Sに対してそれぞれボルト締結されている。
【0037】
この構造により、電池モジュール10Aの正極端子用ボルト33及びジャンクションボックス35の正極端子用ボルト36は、厚みが増大した調整用バスバ31と直接締結させるために特注する必要がない。つまり、電池モジュール10A及びジャンクションボックス35では、バスバ16Sと締結可能な既存の端子構造を利用することができるので、製造コストの増大が防止される。
【0038】
また、調整用バスバ31の断面積を大きくすることで、バスバ16Lとしての抵抗値を小さくすることが出来る。そして、車載用バッテリ10のバスバ16L,16M,16S全体の抵抗値を小さくできるので、車載用バッテリ10全体としての電圧降下量を大幅に低減することができる。その結果、車載用バッテリ10を監視するBCU(Battery Control Unit)にて、上記バスバ16L,16M,16Sに起因する電圧降下による車載用バッテリ10の大きな出力低下を検出し、各電池モジュール10A~10Nは正常であるが、車載用バッテリ10を停止することが防止される。
【0039】
更には、調整用バスバ31がアルミニウム材から形成されることで、バスバ16L,16M,16S全体の質量が大幅に低減され、車両11の軽量化が実現され、車両11の連続走行距離を伸ばすことができる。
【0040】
次に、本発明の他の実施形態に係る車載用バッテリ40を図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、図1から図3を用いて説明した車載用バッテリ10と同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略し、上記説明を参照する。
【0041】
図4(A)は、本実施形態の車載用バッテリ40の配設状態を説明する概略図である。図4(B)は、本実施形態の車載用バッテリ40を説明する回路図である。
【0042】
図4(A)に示す如く、バッテリ配置領域15には、車載用バッテリ40を構成する14個の電池モジュール40A,40B,40C,40D,40E,40F,40G,40H,40I,40J,40K,40L,40M,40Nが行列状に配設されている。電池モジュール40A~40Nは、例えば、直方体形状であり、車両11の前後方向に沿ってその長手方向が配置されている。そして、多数の電池モジュール40A~40Nが、バッテリ配置領域15に効率良く配置されることで、車載用バッテリ40の大容量化が実現される。
【0043】
電池モジュール40A~40Nには、それぞれ複数の電池セル(図示せず)が配設されている。電池セルは、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の2次電池である。個々の電池セルは、例えば、角型平板形状であり、車両11の前後方向に沿って、その前後に小さな隙間を有した状態にて等間隔に配列されている。そして、複数の電池セルが、導電性の接続板(図示せず)を介して直列接続されている。
【0044】
電池モジュール40A~40Nは、点線にて示すように、車両11の車幅方向に隣り合う2個の電池モジュール40A~40N同士がバスバ48を介して並列接続し、7つの並列用電池モジュール群41,42,43,44,45,46,47が形成されている。そして、並列用電池モジュール群41~47同士がバスバ48を介して直列に接続し、所望の電圧値以上が出力可能な車載用バッテリ40として構成されている。尚、車両11の前方側に配列された並列用電池モジュール群41,47が、それぞれジャンクションボックス35(図3参照)の正極端子用ボルト36(図3参照)または負極端子用ボルト(図示せず)と電気的に接続している。尚、各並列用電池モジュール群41~47は、それぞれ2個の電池モジュール40A~40Nが並列接続される場合に限定されものではなく、3個以上の電池モジュール40A~40Nが並列接続される場合でも良い。
【0045】
図4(B)では、車両11の電気負荷21に電力を供給する車載用バッテリ40の回路図を示している。上述したように、車載用バッテリ40では、並列用電池モジュール群41~47が直列に接続されることで、300V以上の電圧を出力することができる。そして、車載用バッテリ40では、コンバータ25を介して300V以上の電圧を12Vや48Vの電圧にて駆動する車両電装品に対して変換して供給することができる。
【0046】
車載用バッテリ40では、電池モジュール40A~40N間を電気的に接続するバスバ48(図4(A)参照)としては、数種類の異なる長さのものが用いられている。バスバ48としては、例えば、最も長いバスバ48L、最も短いバスバ48S及びそれらの中間の長さのバスバ48Mが用いられている。尚、バスバ48としては、上記3種類の長さからなるバスバ48L,48M,48Sからなる場合に限定するものではなく、電池モジュール40A~40Nのレイアウトに応じて種々の設計変更が可能である。
【0047】
図示したように、並列用電池モジュール群41では、各電池モジュール40A,40B対してそれぞれ2本のバスバ48Sが接続され、電池モジュール40A,40Bは、並列接続されている。同様に、並列用電池モジュール群42,44,45,47においても、各電池モジュール40A~40F,40K~40Nに対してそれぞれ2本のバスバ48Sが接続され、それぞれ電池モジュール40A~40F,40K~40Nが並列接続されている。
【0048】
この構造により、並列用電池モジュール群41,42,44,45,47では、バスバ48Sでの抵抗値が、実質、同一となる。その結果、各電池モジュール40A~40F,40K~40Nには、実質、同一量の電流が流れるため、それらの劣化具合も、実質、同一となる。そして、各電池モジュール40A~40F,40K~40Nに、特段な不具合の発生がない場合には、それらの耐久年数も、実質、同一となる。
【0049】
一方、並列用電池モジュール群43では、電池モジュール40Gに対しては2本のバスバ48Mが接続され、電池モジュール40Hに対しては2本のバスバ48Sが接続されている。そのため、バスバ48M、48Sが、同一の材料から形成され、同一の断面積のプレート形状から形成される場合には、バスバ48Mの抵抗値がバスバ48Sの抵抗値よりも大きくなる。そして、並列用電池モジュール群43では、上記抵抗値の相違により、電池モジュール40Hに流れる電流量が電池モジュール40Gに流れる電流量よりも多くなる。その結果、電池モジュール40Hは、電池モジュール40Gよりも劣化が早くなり、並列用電池モジュール群43からの出力特性が、並列用電池モジュール群41,42,44,45,47からの出力特性よりも早期に悪化する。そして、車載用バッテリ40を監視するBCUにて、並列用電池モジュール群43の上記異常を検出することで、車載用バッテリ40を停止する恐れがある。
【0050】
そこで、本実施形態では、バスバ48M,48Sの金属材料や断面積等の形状を調整することで、バスバ48M,48Sの抵抗値の均一化を実現している。具体的には、銅材の電気抵抗率は、アルミニウム材の電気抵抗率の約1/3程度であるため、バスバ48Sをアルミニウム材にて形成し、バスバ48Mを銅材にて形成する。つまり、バスバ48M,48Sの金属材料を調整することで、バスバ48M,48Sの抵抗値の均一化を実現することができる。
【0051】
また、バスバ48M,48Sの長さの相違により、上記金属材料の調整のみでは抵抗値の均一化が実現し難い場合には、バスバ48Mの断面積をバスバ48Sの断面積よりも大きくすることで、バスバ48Mの抵抗値を更に小さくし、上記抵抗値の均一化を実現する場合でも良い。尚、バスバ48M,48Sの加工条件や組み付け作業性等を考慮しながら、バスバ48M,48Sの金属材料を同一とし、バスバ48M、48Sの断面積の形状のみにより、上記抵抗値の均一化を実現する場合でも良い。
【0052】
同様に、並列用電池モジュール群46においても、電池モジュール40Jに対しては2本のバスバ48Mが接続され、電池モジュール40Iに対しては2本のバスバ48Sが接続されている。そして、上述した並列用電池モジュール群43と同じ構造とすることで、上記抵抗値の均一化を実現することができる。
【0053】
この構造により、各並列用電池モジュール群41~47では、構成する各電池モジュール40A~40Nに、実質、同一量の電流を流すことができ、どちらか一方の電池モジュール40A~40Nが、偏って大幅に劣化することが防止される。その結果、並列用電池モジュール群41~47のいずれかの出力特性が悪化することが防止され、車載用バッテリ40を監視するBCUが、1個の電池モジュール40A~40Nの劣化に起因した異常により、車載用バッテリ40全体を停止することが防止される。
【0054】
また、上述したように、車載用バッテリ40では、各並列用電池モジュール群41~47が直列接続されている。その結果、各並列用電池モジュール群41~47は、個々の電池モジュール40A~40Nよりも蓄電量が増大するため、車載用バッテリ40の稼働時間が大幅に増大される。その結果、車両11の連続走行距離を伸ばすことができる。
【0055】
尚、本実施形態では、並列用電池モジュール群43,46にて、金属材料や断面積の形状によりバスバ48Mの抵抗値を小さくし、バスバ48Sの抵抗値側へと近づけることで、上記抵抗値の均一化を実現する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、バスバ48Mはアルミニウム材から形成され、バスバ48Sは銅材から形成されると共に、バスバ48Sの断面積が、バスバ48Mの断面積よりも小さくすることで、バスバ48Sの抵抗値を大きくし、バスバ48Mの抵抗値側へと近づけ上記抵抗値の均一化を実現する場合でも良い。
【0056】
また、上記抵抗値の均一化を実現するため、バスバ48M,48Sの断面積の形状を調整する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、断面積の小さい、例えば、薄いプレート形状のバスバ48M,48Sをそれぞれ複数枚準備し、所望の抵抗値に合わせて、複数のバスバ48M,48Sを積層して配設することで調整する場合でも良い。この場合には、その都度、特注形状のバスバ48M,48Sを成形する必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0057】
更には、上記並列用電池モジュール群41~47にて、バスバ48が、バスバ48Lとバスバ48Mとの組み合わせの場合やバスバ48Lとバスバ48Sの組み合わせの場合でも、上述した構造と同様な対応により上記抵抗値の均一化を実現し、上述した効果を得ることができる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 車載用バッテリ
10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H,10I,10J,10K,10L,10M,10N 電池モジュール
11 車両
15 バッテリ配置領域
16,16L,16M,16S バスバ
21 電気負荷
22 駆動モータ
23 インバータ
24 空調装置
25 コンバータ
31 調整用バスバ
35 ジャンクションボックス
40 車載用バッテリ
40A,40B,40C,40D,40E,40F,40G,40H,40I,40J,40K,40L,40M,40N 電池モジュール
41,42,43,44,45,46,47 並列用電池モジュール群
48,48L,48M,48S バスバ
図1
図2
図3
図4
図5