(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】航空機の貨物室の床構造及び航空機の貨物室の床構造を変更する方法
(51)【国際特許分類】
B64C 1/20 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
B64C1/20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019164373
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-08-12
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ディー・スプライ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エー・ウルヴィン
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0111689(US,A1)
【文献】英国特許出願公告第00858596(GB,A)
【文献】特開2004-359227(JP,A)
【文献】米国特許第07004080(US,B2)
【文献】米国特許第05090639(US,A)
【文献】米国特許第04824050(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 1/20
B64C 1/18
B64D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の航空機キールフレーム(102)と、
前記航空機キールフレーム(102)に直接取り付けられる1本以上の長手方向レール(104)であって、前記1本以上の長手方向レール(104)は、航空機の貨物室の床に構造的支持を与えるように設計される、1本以上の長手方向レール(104)と、
を備
え、
前記1本以上の長手方向レール(104)が、少なくとも1本の内側長手方向レール(104A)と、前記少なくとも1本の内側長手方向レール(104A)の第1の側に配置された第1の外側長手方向レール(104B)と、前記少なくとも1本の内側長手方向レール(104A)の第2の側に配置された第2の外側長手方向レール(104B)と、を含み、
前記少なくとも1本の内側長手方向レール(104A)の上端は、前記第1及び第2の外側長手方向レール(104B)の上端よりも、前記航空機キールフレーム(102)からさらに離間させられており、前記航空機キールフレーム(102)と前記1本以上の長手方向レール(104)との間には、介在する支持梁又はキールフレームの延長が存在しない、航空機の貨物室の床構造(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1本の内側長手方向レール(104A)、前記第1の外側長手方向レール(104B)、及び前記第2の外側長手方向レール(104B)が、前記航空機キールフレーム(102)に直接取り付けられる、請求項
1に記載の貨物室の床構造(100)。
【請求項3】
前記航空機キールフレーム(102)が、深さ可変のフレームである、請求項1
又は2に記載の貨物室の床構造(100)。
【請求項4】
前記1本以上の長手方向レール(104)と、前記航空機キールフレーム(102)又はバスタブ取付具(106)との間に配置された、断熱器(108)をさらに備える、請求項1~
3のいずれか一項に記載の貨物室の床構造(100)。
【請求項5】
前記断熱器(108)が、前記長手方向レール(104)と前記航空機キールフレーム(102)との間を分離することによって、熱保護を提供する、請求項
4に記載の貨物室の床構造(100)。
【請求項6】
前記長手方向レール(104)に直接取り付けられた、複数のローラートレイ(130)をさらに備える、請求項1~
5のいずれか一項に記載の貨物室の床構造(100)。
【請求項7】
前記航空機キールフレーム(102)に取り付けられた、サイドガイド(122)をさらに備える、請求項
6に記載の貨物室の床構造(100)。
【請求項8】
前記長手方向レール(104)に取り付けられた、ばら積み貨物室の床パネル(110)をさらに備える、請求項1~
7のいずれか一項に記載の貨物室の床構造(100)。
【請求項9】
前記航空機キールフレームに取り付けられた、ばら積み貨物拘束レセプタクル(120)をさらに備える、請求項
7に記載の貨物室の床構造(100)。
【請求項10】
前記長手方向レール(104)が
、30ポンド/インチか
ら120ポンド/インチまでの範囲の貨物の荷重に耐えるような設計及び大きさにされる、請求項1~
9のいずれか一項に記載の貨物室の床構造(100)。
【請求項11】
複数の航空機キールフレーム(102)と、
前記航空機キールフレーム(102)に直接取り付けられる1本以上の長手方向レール(104)と、
を備え、
前記1本以上の長手方向レール(104)は、ばら積み貨物室の床、及びコンテナ貨物室の床の両方に構造的支持を与えるように設計
され、
前記1本以上の長手方向レール(104)が、少なくとも1本の内側長手方向レール(104A)と、前記少なくとも1本の内側長手方向レール(104A)の第1の側に配置された第1の外側長手方向レール(104B)と、前記少なくとも1本の内側長手方向レール(104A)の第2の側に配置された第2の外側長手方向レール(104B)と、を含み、
前記少なくとも1本の内側長手方向レール(104A)の上端は、前記第1及び第2の外側長手方向レール(104B)の上端よりも、前記航空機キールフレーム(102)からさらに離間させられており、前記航空機キールフレーム(102)と前記1本以上の長手方向レール(104)との間には、介在する支持梁又はキールフレームの延長が存在しない、航空機の貨物室の床構造システム。
【請求項12】
ばら積み貨物室の床パネル(110)、ローラートレイ(130)、又はその両方から選択された部品をさらに含む、請求項
11に記載の貨物室の床構造システム。
【請求項13】
前記少なくとも1本の内側長手方向レール(104A)、前記第1の外側長手方向レール(104B)、及び前記第2の外側長手方向レール(104B)が、前記航空機キールフレーム(102)に直接取り付けられる、請求項
11に記載の貨物室の床構造システム。
【請求項14】
前記航空機キールフレームが、深さ可変のフレームである、請求項
11~
13のいずれか一項に記載の貨物室の床構造システム。
【請求項15】
航空機の貨物室の床構造(100)を変更する方法であって、前記航空機の貨物室の床構造(100)が、複数の航空機キールフレーム(102)と、前記航空機キールフレーム(102)に直接取り付けられる1本以上の長手方向レール(104)と、を備え、前記方法が、
前記航空機の貨物室の床構造(100)から第1の貨物室の床構成の部品を除去するステップと、
前記航空機の貨物室の床構造(100)に第2の貨物室の床構成の部品を取り付けるステップと、
を含
み、
前記1本以上の長手方向レール(104)が、少なくとも1本の内側長手方向レール(104A)と、前記少なくとも1本の内側長手方向レール(104A)の第1の側に配置された第1の外側長手方向レール(104B)と、前記少なくとも1本の内側長手方向レール(104A)の第2の側に配置された第2の外側長手方向レール(104B)と、を含み、
前記少なくとも1本の内側長手方向レール(104A)の上端は、前記第1及び第2の外側長手方向レール(104B)の上端よりも、前記航空機キールフレーム(102)からさらに離間させられており、前記航空機キールフレーム(102)と前記1本以上の長手方向レール(104)との間には、介在する支持梁又はキールフレームの延長が存在しない、方法。
【請求項16】
前記第1の貨物室の床構成がばら積み貨物室の床であり、前記第2の貨物室の床構成がコンテナ貨物室の床であり、
前記方法が、ローラートレイ(130)を直接前記長手方向レール(104)上に配置するステップをさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の貨物室の床構成がコンテナ貨物室の床であり、前記第2の貨物室の床構成がばら積み貨物室の床であり、
前記方法が、前記長手方向レール(104)上に直接配置されたローラートレイ(130)を除去するステップをさらに含む、請求項
15又は
16に記載の方法。
【請求項18】
前記航空機の貨物室の床構造(100)を変更する前記ステップが、構造的床支持体を変更することなく実施される、請求項
15~
17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、航空機の貨物室の床構造、及び航空機の貨物室の床構造を変更する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現場で使用されている航空機は、その所望の用途に応じて異なる貨物室の床構成で構成される。このような構成には、ばら積み貨物室の床、及びコンテナ貨物室の床の2つが含まれる。時には、航空機の貨物室の床構成を変更することが望ましい場合がある。しかしながら、ばら積み貨物室の床、及びコンテナ貨物室の床は、基礎となる支持構造が著しく異なる可能性があるため、これらの異なる貨物室の床構成を変更するためにかかるコスト及び時間が膨大になる可能性がある。
【0003】
図1Aは、従来のモノコックのばら積み貨物室の床構造を示す。ばら積み貨物室の床構造は、貨物室の床梁2と、貨物室の床梁を構造的に支持するために航空機キールフレーム6に取り付けられた支柱4とを備える。ストリンガー8は、貨物室の床梁によって支持されて、ばら積み貨物室の床パネル10に構造的支持を与える。
図1Bは、従来のモノコックのコンテナ貨物室の床構造を示す。コンテナ貨物室の床構造もまた、貨物室の床梁2と、構造的に支持するために航空機キールフレーム6に取り付けられた支柱4とを備える。ストリンガー及びばら積み貨物室の床パネルの代わりに、コンテナ貨物室の床は、貨物室の床梁2によって支持されるローラートレイ20を備える。また、サイドガイド取付具22も使用される。したがって、ばら積み貨物室の床構造とコンテナ室の床構造間の変更は、ストリンガー8などの構造部品の除去又は追加を含み得る。また、サイドガイド取付具22は、従来は容易に取り外せるようには作られていない。
【0004】
したがって、ばら積み貨物室の床構成とコンテナ貨物室の床構成とを比較的低コストで迅速に変更できる新しい構造が、当技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、航空機の貨物室の床構造に関する。貨物室の床構造は、複数の航空機キールフレームを備える。1本以上の長手方向レールが、航空機キールフレームに直接取り付けられる。1本以上の長手方向レールは、航空機の貨物室の床に構造的支持を与えるように設計される。
【0006】
本開示はさらに、航空機の貨物室の床構造システムに関する。本システムは、複数の航空機キールフレームを備える。1本以上の長手方向レールが、航空機キールフレームに直接取り付けられる。1本以上の長手方向レールは、ばら積み貨物室の床及びコンテナ貨物室の床の両方の構造的支持を与えるように設計される。
【0007】
本開示はさらに、航空機の貨物室の床構造を変更する方法に関する。航空機の貨物室の床構造は、複数の航空機キールフレームと、航空機キールフレームに直接取り付けられた、1本以上の長手方向レールとを備える。本方法は、航空機の貨物室の床構造から、第1の貨物室の床構成の部品を除去するステップを含む。次に、第2の貨物室の床構成の部品が、航空機の貨物室の床構造に取り付けられる。
【0008】
前述した概要及び以下の詳細な説明は両方とも、単に例示的且つ説明的なものであって、特許請求されているように、本教示を制限するものではないことを理解されたい。
【0009】
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付の図面は、本教示の態様を図示し、本明細書の記述とともに本教示の原理を説明するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2A】本開示における態様による、ばら積み貨物用に構成された、航空機の貨物室の床構造を示す。
【
図2B】本開示における態様による、コンテナ貨物用に構成された、航空機の貨物室の床構造を示す。
【
図3】本開示における態様による、キールフレームに取り付けられた、1本以上の長手方向レールの斜視図を示す。
【
図4】本開示における態様による、キールフレームに取り付けられた、ばら積み貨物拘束レセプタクルの拡大図を示す。
【
図5】本開示における態様による、長手方向レールに取り付けられたばら積み貨物室の床パネルを備える、ばら積み貨物室の床を示す。
【
図6】本開示における態様による、長手方向レールに取り付けられた複数のローラートレイを備える、コンテナ積み貨物室の床を示す。
【
図7】本開示における態様による、
図6のキールフレームに取り付けられた、サイドガイド取付具の拡大図を示す。
【
図8】本開示における態様による、貨物室床パネル、及びばら積み貨物拘束レセプタクルを有する、ばら積み貨物室の床構成の斜視図を示す。
【
図9】本開示における態様による、長手方向レールに取り付けられた、コンテナ貨物室床パネル及びローラートレイを示す。
【
図10】本開示における貨物室の床構造を使用して、航空機の貨物室の床構成を変更する方法のフロー図である。
【
図11A】本開示における態様による、ばら積み貨物用に構成された、航空機の貨物室の床構造を示す。
【
図11B】本開示における態様による、コンテナ貨物用に構成された、航空機の貨物室の床構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面のいくつかの細部は、構造上の精度、細部、及び縮尺を厳密に維持するのではなく、簡略化され理解しやすいように描写されていることに留意されたい。
【0012】
ここで本教示を詳細に参照し、その例は添付の図面に図示される。図面では、同一の要素を示すために、全図面を通して同一の参照符号が使用されている。以下の説明では、本明細書の一部を形成する添付図面を参照し、図面には、本教示を実施する特定の例が例示として示される。したがって以下の説明は単なる例示である。
【0013】
図2A及び
図2Bは、ばら積み貨物室の床(
図2A)、又はコンテナ積み貨物室の床(
図2B)の両方を支持できる、航空機の貨物室の床構造100を示す。航空機の貨物室の床構造100は、複数の航空機キールフレーム102を備える。1本以上の長手方向レール104が、航空機キールフレーム102に直接取り付けられる。「航空機キールフレームに直接取り付けられる」、又は「キールフレームに直接取り付けられる」という表現は、本明細書では、キールフレームと長手方向レールとの間に、介在する支持梁又はキールフレームの延長がなく、バスタブ取付具、断熱器その他類似の金物などの取付金物をキールフレームと長手方向レールとの間に配置できる、或いはその代わりに、キールフレームが長手方向レールと直接物理的に接触できることを意味するものとして定義される。航空機の貨物室の床構造100は、
図1A及び
図1Bに図示されているような、すべてのモノコックの機体フレームに取り付けられる、平坦な貨物室の床梁、及び/又は延伸フレームを排除する。貨物室の床梁同士の間にある長手方向肋間部、及び横方向せん断ウェブも排除することができる。
【0014】
キールフレーム102は、任意の適切な設計を有することができる。例として、キールフレーム102は、深さ可変の設計を有することができ、例えば、
図2A及び
図2Bに示すように、キールフレーム102の下部は、キールフレームの側部の深さD
2よりも深い、D
1の深さを有する。キールフレームの他の適切な深さ可変の設計が、
図11A及び
図11Bに示されている。深さ可変のキールフレームは、当技術分野において一般的に知られている。或いは、キールフレームは深さ可変の設計を有さず、その代わりに、キールフレームの長さに沿って同じ深さを有することができる(例えば、D
1とD
2とが同じになる)。
【0015】
キールフレーム102は、金属、複合材料などの任意の適切な材料を含むことができる。例として、キールフレーム102は、炭素繊維強化プラスチックを含むことができる。
【0016】
長手方向レール104は、ばら積み床パネル、又はコンテナ貨物システムのローラートレイのいずれかを取り付けるための表面を提供する。長手方向レール104の表面は、平坦にする、又はその他任意の適切な表面構成にすることができる。航空機の貨物室の床構造100は、任意の所望の数の長手方向レール104を備えることができ、その数は、運搬される貨物の重さ、航空機の幅などの要因に応じて異なってもよい。一般に、長手方向レールが少ないと、航空機の重量が小さくなる、ばら積み貨物室の床構成とコンテナ貨物室の床構成との間の変更が容易になる、そして配線、油圧部品その他の部品が含まれ得る、床下の空間にある航空機部品にアクセスするのが容易になるなど、1つ以上の利点が得られる。例として、長手方向レール104の本数は、1~4本、1~3本など、1~5本の範囲にすることができる。
【0017】
長手方向レール104は、貨物の荷重に耐えるように設計され、そのような大きさにされる。例えば、長手方向レール104は、30ポンド/インチ~120ポンド/インチを支持するように設計することができる。
【0018】
図3は、キールフレーム102に取り付けられた、1本以上の長手方向レール104の斜視図を示す。各長手方向レール104は、レール継手107で結合された、複数のレール小区画105のアセンブリを含む。レール継手107は、長手方向レール104が、飛行中に航空機とともに屈曲することを可能にし、これによって長手方向レール104又は航空機キールフレーム102に対する物理的損傷を回避又は低減する。各小区画105の長さは、貨物を支持するために長手方向レールの適切な強度を保持しながら、長手方向レール104に所望の柔軟性を与える任意の長さにすることができる。例えば、各小区画105の長さは、約1メートル~約3メートルなど、約0.5メートル~約6メートルの範囲にすることができる。レール継手107は、滑り継手など、レール小区画105を結合するための任意の適切な種類の継手にすることができる。
【0019】
肋間部109は、隣接するキールフレーム102同士の間にある、長手方向レール104の部分の下で使用することができる。肋間部109は、航空機の外皮(
図2A及び
図2Bにおいて符号111で示されている)に結合されて、長手方向レール104、及びキールフレーム102を支持することができる。特に、肋間部109は飛行中に、貨物構成に応じて、ばら荷拘束具及び/又はコンテナ拘束具を介して、貨物によって長手方向レール104に印加される前後荷重に対応することができる。例では、1つ、2つ、3つ以上の肋間部などの、1つ以上の肋間部109が各レール小区画105の下に配置される。例では、各レール小区画105の下に1つの肋間部109が使用されている。
【0020】
長手方向レール104は、航空機の重量を過度に増やすことなく所望の貨物重量の負荷容量を支持するように、適切な強度の任意の材料で作成することができる。適切な材料の例には、チタンを含む金属(例えば、純チタン又はチタンを含む金属合金)などの、金属や複合材などが含まれる。例えば、レールは、チタン又はチタン合金のロール形態のシートを含むことができる。
【0021】
図2Aに戻ると、実施形態では、少なくとも1本の内側長手方向レール104Aが、キールフレーム102に直接取り付けられている。2本又は3本以上など、複数の内側長手方向レールを使用することができる。少なくとも1本の内側長手方向レール104Aを、バスタブ取付具106を使用するなどの任意の適切な手段によって、キールフレーム102に取り付けることができる。本明細書で述べるバスタブ取付具は、金属又は複合材などの任意の適切な材料を含むことができる。複合材料の例は、炭素繊維強化プラスチックである。バスタブ取付具106の代わりに、他の任意の適切な既知の、又は後に開発された取付機構を使用することができる。第1の外側長手方向レール104B、及び第2の外側長手方向レール104Bは、
図2Aに図示されているように、キールフレームの内側コードに取り付けるなど、両方とも航空機キールフレームに直接取り付けることができる。第1の外側長手方向レール104Bは、内側長手方向レール104Aの一方の側に配置でき、第2の外側長手方向レールは、内側長手方向レール104Aのもう一方の側に配置することができる。外側長手方向レール104Bは、例えば、クリップ115を使用することによって、且つ/又はナット付きのボルト、リベットその他従来の機械的締め具などの他の適切な締め具を使用することによって、任意の適切な取付機構を使用して、航空機キールフレーム102に取り付けることができる。
【0022】
内側レール104Aの幅寸法は、約2インチから約8インチまでの範囲の、幅W1などの任意の適切な寸法にすることができる。外側長手方向レール104Bの幅寸法は、約4インチから約12インチまでの範囲の、幅W2などの任意の適切な寸法にすることができる。
【0023】
断熱器108は、1本以上の長手方向レール104と、熱によって損傷する可能性があるキールフレーム102及び/又はバスタブ取付具106などの、任意の複合材又はプラスチック部品との間に配置することができる。断熱器108は、長手方向レールと深さ可変のフレームとの間を分離することによって、熱保護を提供する。断熱器108は、任意の望ましい耐熱材料及び/又は耐火材料を含むことができる。知られている断熱器用の材料の例には、フェノール樹脂含浸ガラス繊維層がある。
【0024】
前述したように、航空機の貨物室の床構造100は、ばら積み貨物室の床、コンテナ積み貨物室の床、又はこれら2つの構成を同時に組み合わせた構造を支持することができる。
図2A及び
図5を参照すると、ばら積み貨物室の床構成は、長手方向レール104に取り付けられた、ばら積み貨物室の床パネル110を備えることができる。
図4により明確に示すように、ばら積み貨物拘束レセプタクル120は、バスタブ取付具106などの任意の適切な取付機構を使用して、キールフレーム102に直接取り付けることができる。或いは、ばら積み貨物拘束レセプタクルは、1本以上の長手方向レール104など、適切な支持を与えられる他の任意の望ましい構造に取り付けることができる。
図8は、貨物室の床パネル110、及びばら積み貨物拘束レセプタクル120を有する、ばら積み貨物室の床構成の別の斜視図を示す。
【0025】
図2B及び
図6を参照すると、コンテナ積み貨物室の床構成は、長手方向レール104に直接取り付けられ且つこれに支持される、複数のローラートレイ130を含む。例えば、ローラートレイ130は、物理的に長手方向レール104に直接接触させて配置でき、或いはローラートレイ130と長手方向レール104との間に、取付機構又は断熱器などを直接含むことができる。ローラートレイ130は、ナット板付きのボルトその他従来の手段を使用するなど、任意の適切な手段によって長手方向レール104に取り付けることができる。長手方向レール104にボールパネル136を取り付けることもできる。ボールパネル136は、当技術分野でよく知られているように、航空機にコンテナ貨物を積載するのが容易になるように、貨物積載ドアの近くに配置することができる。コンテナが積載される際にガイドするためのサイドガイド122は、バスタブ取付具106などの任意の適切な取付機構を使用して、キールフレーム102に直接取り付けることができる。サイドガイド122を取り付け可能な、例示的なサイドガイド取付具124が
図7に示されている。或いは、サイドガイド取付具124は、1本以上の長手方向レール104など、適切な支持を与えられる他の任意の望ましい構造に取り付けることができる。ローラートレイ、ボールパネル、及びサイドガイドは、コンテナ貨物積載の技術分野において一般的によく知られており、当業者であれば、本開示の貨物室の床構造で使用するための適切なローラートレイ、ボールパネル、及びサイドガイドを設計且つ/又は選択できるであろう。
【0026】
図6は、床パネルのない、コンテナ貨物積載構成の斜視図を示す。或いは、
図9に示すように、任意の適切な取付機構を使用して、例えば、ローラートレイ130と一体化した、又はこれに取り付けられたフランジ134によって、コンテナ貨物室床パネル132を任意で長手方向レール104に取り付けることができる。コンテナ貨物室床パネル132は、人の体重を支える通路として設計でき、或いは任意に、コンテナ貨物に加えてばら荷が運搬される際は、より重いばら荷の荷重を支持するように設計することができる。
【0027】
本開示の貨物室の床構造を使用することによって、航空機全体をコンテナ貨物又はばら荷に適合できるようにすることができる。或いは、航空機の一部がコンテナ貨物に適合し、航空機の別の部分がばら荷に適合するようにすることができる。
【0028】
本開示はさらに、航空機の貨物室の床構造を迅速に変更するシステムに関する。本システムは、本明細書で説明するように、複数の航空機キールフレーム102を含む、航空機の貨物室の床構造100を備える。本明細書で説明するように、1本以上の長手方向レール104が、航空機キールフレーム102に直接取り付けられる。1本以上の長手方向レールは、ばら積み貨物室の床及びコンテナ貨物室の床の両方の構造的支持を与えるように設計される。したがって本システムは、本明細書で前述したように、ばら積み貨物室の床パネル110、ローラートレイ130、又はその両方から選択された部品を含むことができる。
【0029】
ばら荷構成とコンテナ構成間の転換は、床アセンブリの支持構造に構造変化を加えることなく達成でき、支持構造には、長手方向レール104を支持する任意の構造が含まれる。その代わりに、ばら積み貨物室の床パネル、コンテナ室の床パネル、ローラートレイ、サイドガイド、サイドガイド取付具、及びばら積み貨物拘束レセプタクルなどの、貨物室の床又は貨物取り扱いシステムの部品のみを、比較的低コストで、且つ例えば、1~2日、又は数日のうちに、比較的迅速に取り替えることができる。
【0030】
本開示はさらに、
図10のフロー図に示すように、航空機の貨物室の床構造を変更する方法に関する。航空機の貨物室の床構造は、本明細書で前述したように、複数の航空機キールフレーム102と、航空機キールフレーム102に直接取り付けられる、1本以上の長手方向レール104とを備える。本方法は、航空機の貨物室の床構造から、第1の貨物室の床構成の部品を除去するステップを含む。次に、第2の貨物室の床構成の部品が、航空機の貨物室の床構造に取り付けられる。本明細書で説明したように第1の貨物室の床構成がばら積み貨物室の床であり、本明細書で説明したように第2の貨物室の床構成がコンテナ貨物室の床である例では、本方法は、ローラートレイを直接長手方向レール上に配置するステップをさらに含む。第1の貨物室の床構成がコンテナ貨物室の床であり、第2の貨物室の床構成がばら積み貨物室の床である例では、本方法は、長手方向レール上に直接配置されたローラートレイを除去するステップをさらに含む。このような方法で航空機の貨物室の床構成を変更するステップは、本明細書で説明する他の貨物室の床、又は貨物取り扱いシステムの床構成の部品を変更するステップもさらに含むことができ、例えば、ばら積み貨物室の床パネル、コンテナ室の床パネル、サイドガイド、サイドガイド取付具、又はばら積み貨物拘束レセプタクルを追加又は除去するステップをさらに含む。1本以上の長手方向レールは、ばら積み貨物室の床及びコンテナ貨物室の床の両方に構造的支持を与える。したがって、航空機の貨物室の床構造の変更は、本明細書で説明するように、長手方向レール104を支持する構造支持体を含む、構造的床支持体を変更することなく実施される。
【0031】
本開示の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるが、具体的な例において示されている数値は、可能な限り正確に記載されている。しかしながらいずれの数値も、そのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる、いくらかの誤差が本質的に含まれる。さらに、本明細書で開示される全範囲は、その中に含まれるあらゆる副範囲を包含するものとして理解されたい。
【0032】
本教示は1つ以上の実施形態に対して図示されているが、添付のクレームの精神及び範囲から逸脱することなく、図示されている例に対して変更及び/又は修正を行うことができる。また、本教示の特定の形態が、いくつかの実施形態のうちの1つのみに対して開示されている場合があるが、このような形態は、所与の機能又は特定の機能に対して所望され、且つこれにとって都合がよいように、他の実施形態の1つ以上の他の形態と組み合わされてもよい。さらに、「含んでいる(including)」、「含む(includes)」、「有している(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語、又はこれらの変形が詳細な説明及び特許請求の範囲のいずれかで使用される限りにおいて、このような用語は、「備える(comprising)」という用語と同様に包括的な用語であることが意図される。また、本明細書の考察及び特許請求の範囲において、「約(about)」という用語は、本明細書で説明する意図された目的に対し、値の変化によって工程又は構造に不適合が生じない限りにおいて、列挙された値がいくらか変化する場合があることを示す。最後に、「例示的な(exemplary)」という用語は、説明が理想的なものを示しているのではなく、例として使用されていることを示す。
【0033】
先に開示した変形、並びに他の形態及び機能、又はその代替物は、他の多くの異なるシステム又は用途と組み合わされてもよいことが理解されよう。現在予測できない、又は予期しないさまざまな代替、修正、変形、又は改善が、当業者によって後に行われてもよく、それらもまた以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【符号の説明】
【0034】
2 貨物室の床梁
4 支柱
6 航空機キールフレーム
8 ストリンガー
10 床パネル
20 ローラートレイ
22 サイドガイド取付具
100 航空機の貨物室の床構造
102 航空機キールフレーム
104 長手方向レール
104A 内側長手方向レール
104B 外側長手方向レール
105 レール小区画
106 バスタブ取付具
107 レール継手
108 断熱器
109 肋間部
110 貨物室の床パネル
111 外皮
115 クリップ
120 ばら積み貨物拘束レセプタクル
122 サイドガイド
124 サイドガイド取付具
130 ローラートレイ
132 コンテナ貨物室床パネル
134 フランジ
136 ボールパネル
D1 深さ
D2 深さ
W1 幅
W2 幅