(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】フリーピストン型スターリング機関
(51)【国際特許分類】
F25B 9/14 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
F25B9/14 520E
(21)【出願番号】P 2021140025
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000109325
【氏名又は名称】株式会社ツインバード
(72)【発明者】
【氏名】鴨居 潤一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 一也
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-309080(JP,A)
【文献】特開2003-247580(JP,A)
【文献】特表2013-504712(JP,A)
【文献】国際公開第2013/088631(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0256945(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダーと、このシリンダー内でその軸方向に往復動可能な往復体と、この往復体の往復動を制御する弾性体と、前記往復体を前記弾性体の可動部に接続させる接続体と、前記弾性体の固定部を前記シリンダーとの位置関係が固定された状態で支持する支持体とを有するフリーピストン型スターリング機関において、
前記往復体と接続体を含む可動質量を調整するための錘体と、前記接続体又は往復体に設けられて前記錘体が取り付けられる取付部とを有すると共に、前記シリンダー、往復体、弾性体、接続体及び支持体が組まれた状態で
、前記シリンダーと往復体の同軸度を損なうことなく前記錘体の取付が可能な位置に、前記取付部が設けられることを特徴とするフリーピストン型スターリング機関。
【請求項2】
前記弾性体が板バネであると共に、前記取付部が前記板バネの反往復体側に設けられることを特徴とする請求項1記載のフリーピストン型スターリング機関。
【請求項3】
前記取付部が前記往復体と同軸に設けられると共に、前記錘体が前記取付部に対し同軸に取り付けられることを特徴とする請求項2記載のフリーピストン型スターリング機関。
【請求項4】
前記錘体がワッシャーであり、前記取付部が雌螺子部材及びこの雌螺子部材に螺合する雄螺子部材であると共に、前記雄螺子部材と雌螺子部材の螺合によりワッシャーが挟持可能とされることを特徴とする請求項3記載のフリーピストン型スターリング機関。
【請求項5】
前記錘体が雄螺子部材であり、前記取付部が雌螺子部材であり、前記雄螺子部材が前記雌螺子部材と螺合可能であると共に、複数種の重さが異なる前記雄螺子部材の何れかが前記雌螺子部材に螺合可能とされることを特徴とする請求項3記載のフリーピストン型スターリング機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーピストン型スターリング機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフリーピストン型スターリング機関としては、シリンダーと、このシリンダー内でその軸方向に往復動可能な往復体としてのピストン及びディスプレイサーと、前記ピストン及びディスプレイサーの往復動を制御する弾性体としての板バネと、前記ピストン及びディスプレイサーをそれぞれ前記板バネの可動部である中央部に接続する接続体としてのスリーブ及び穴あきボルト、ロッド及びナットと、前記板バネの固定部である外周部を前記シリンダーとの位置関係が固定された状態で支持する支持体としての固定軸、スペーサ及びナットとを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。そして、このようなフリーピストン型スターリング機関では、板バネのバネ定数と可動質量で定まる共振周波数を、ピストン組立体とディスプレイサー組立体とで最適にすることで、ピストンとディスプレイサーの位相差を保ったままでの運転が容易になる。このように、ピストン組立体とディスプレイサー組立体の共振周波数を調整するために、特許文献1では、ワッシャーにより付加重量(本願発明の錘体に相当する)を追加するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ピストン組立体及びディスプレイサー組立体を組み立てた後、これらのピストン組立体及びディスプレイサー組立体をスターリング機関とは別の固定台に固定して微小振動を与え、それぞれの共振周波数を測定して付加重量を算出した後、一旦ピストン組立体及びディスプレイサー組立体を固定台から外して分解し、付加重量であるワッシャーをピストン組立体及びディスプレイサー組立体と一体化していた。なお、ピストン組立体へのワッシャーの追加は、ピストンを板バネに固定するための接続体としてのスリーブのボス部と穴あきボルトを螺合させる際に、前記スリーブと穴あきボルトとの間に板バネと共にワッシャーを挟持することで行われていた。同様に、ディスプレイサー組立体へのワッシャーの追加は、ディスプレイサーを板バネに固定するための接続体としてのロッドとナットを螺合させる際に、前記ロッドとナットとの間に板バネと共にワッシャーを挟持することで行われていた。即ち、特許文献1では、組立、共振周波数測定、分解、再組立という工程を取らなければならず、製造に手間がかかるばかりでなく、工程が増えることによって部品の破損のリスクが増加するという問題があった。
【0005】
本発明は以上の問題点を解決し、製造工程を削減すると共に、部品の破損のリスクを減少させることができるフリーピストン型スターリング機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載のフリーピストン型スターリング機関は、シリンダーと、このシリンダー内でその軸方向に往復動可能な往復体と、この往復体の往復動を制御する弾性体と、前記往復体を前記弾性体の可動部に接続させる接続体と、前記弾性体の固定部を前記シリンダーとの位置関係が固定された状態で支持する支持体とを有するフリーピストン型スターリング機関において、前記往復体と接続体を含む可動質量を調整するための錘体と、前記接続体又は往復体に設けられて前記錘体が取り付けられる取付部とを有すると共に、前記シリンダー、往復体、弾性体、接続体及び支持体が組まれた状態で、前記シリンダーと往復体の同軸度を損なうことなく前記錘体の取付が可能な位置に、前記取付部が設けられるものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載のフリーピストン型スターリング機関は、請求項1において、前記弾性体が板バネであると共に、前記取付部が前記板バネの反往復体側に設けられるものである。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載のフリーピストン型スターリング機関は、請求項2において、前記取付部が前記往復体と同軸に設けられると共に、前記錘体が前記取付部に対し同軸に取り付けられるものである。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載のフリーピストン型スターリング機関は、請求項3において、前記錘体がワッシャーであり、前記取付部が雌螺子部材及びこの雌螺子部材に螺合する雄螺子部材であると共に、前記雄螺子と雌螺子の螺合によりワッシャーが挟持可能とされるものである。
【0010】
更に、本発明の請求項5に記載のフリーピストン型スターリング機関は、請求項3において、前記錘体が雄螺子部材であり、前記取付部が雌螺子部材であり、前記雄螺子部材が前記雌螺子部材と螺合可能であると共に、複数種の重さが異なる前記雄螺子部材の何れかが前記雌螺子部材に螺合可能とされるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載のフリーピストン型スターリング機関は、以上のように構成することにより、シリンダー、往復体、弾性体、接続体及び支持体が組まれた状態で、前記シリンダーと往復体の同軸度を損なうことなく可動質量の調整ができるので、分解、再組立の工程を削減して容易に製造することができると共に、工程を削減することによって部品の破損リスクを減少させることができる。
【0012】
なお、前記弾性体を板バネとすると共に、前記取付部を前記板バネの反往復体側に設けたことにより、シリンダー、往復体、弾性体、接続体及び支持体が組まれた状態で可動質量の調整を容易に行うことができる。
【0013】
また、前記取付部を前記往復体と同軸に設けると共に、前記錘体を前記取付部に対し同軸に取り付けることにより、前記往復体の往復動をバランス良く行わせることができる。
【0014】
また、前記錘体をワッシャーとし、前記取付部を雌螺子部材及びこの雌螺子部材に螺合する雄螺子部材とすると共に、前記雄螺子部材と雌螺子部材の螺合によりワッシャーを挟持可能とすることにより、このワッシャーの枚数及び/又は質量を違えて可動質量を容易に調整することができる。
【0015】
更に、前記錘体を雄螺子部材とし、前記取付部を雌螺子部材とし、前記雄螺子部材を前記雌螺子部材に螺合可能とすると共に、複数種の重さが異なる前記雄螺子部材の何れかを前記雌螺子部材に螺合可能とすることにより、何れかの前記雄螺子部材を選択して螺合させることで可動質量を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のフリーピストン型スターリング機関の外観図である。
【
図3】同、ディスプレイサー組立体の概略図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態における、ピストン組立体の可動質量の調整を説明するための説明図である。
【
図5】同、ディスプレイサー組立体の可動質量の調整を説明するための説明図である。
【
図6】本発明の第二の実施形態を示すフリーピストン型スターリング機関における、ピストン組立体の可動質量の調整を説明するための説明図である。
【
図7】同、ディスプレイサー組立体の可動質量の調整を説明するための説明図である。
【
図8】本発明の第三の実施形態を示すフリーピストン型スターリング機関における、ピストン組立体の可動質量の調整を説明するための説明図である。
【
図9】同、ディスプレイサー組立体の可動質量の調整を説明するための説明図である。
【
図10】本発明の第四の実施形態を示すフリーピストン型スターリング機関における、ピストン組立体の可動質量の調整を説明するための説明図である。
【
図11】同、ディスプレイサー組立体の可動質量の調整を説明するための説明図である。
【
図12】本発明の第五の実施形態を示すフリーピストン型スターリング機関における、ピストン組立体の可動質量の調整を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第一の実施形態について、
図1乃至
図5に基づいて説明する。1は、本発明のフリーピストン型スターリング機関としてのフリーピストン型スターリング冷凍機(以下、スターリング冷凍機と略す)である。なお、本例では説明を容易にするために、前記スターリング冷凍機1としてγ型のものを例示したが、β型等、他の形式であっても良い。前記スターリング冷凍機1は、密閉されたケーシング2の内部に、第一シリンダー3と、第二シリンダー4と、前記第一シリンダー3内をその中心軸X方向に往復動可能な往復体としてのピストン5を有するピストン組立体6と、前記第二シリンダー4内をその中心軸Y方向に往復動可能な往復体としてのディスプレイサー7を有するディスプレイサー組立体8とを有する。
【0018】
前記ケーシング2は、円筒部9と胴部10とを有する。そして、前記円筒部9の先端側が吸熱部9C、基端側が排熱部9Hとなる。また、前記円筒部9内には、前記第二シリンダー4、ディスプレイサー組立体8の一部、及び図示しない吸熱側熱交換器、再生器、排熱側熱交換器が設けられる。また、前記胴部10内には、前記第一シリンダー3、ピストン組立体6、ディスプレイサー組立体8の一部、及び図示しないリニアモータの固定子が設けられる。
【0019】
前記ピストン組立体6について詳述する。このピストン組立体6は、前記ピストン5と、このピストン5の前記第一シリンダー3内における往復動を制御するための弾性体としての第一板バネ11と、前記ピストン5に駆動力を与える前記リニアモータの可動子12と、前記ピストン5及び可動子12を前記第一板バネ11に固定するための接続体13とを有して構成される。前記ピストン5は円筒状に形成される。そして、このピストン5の基端側には、図示しない雌螺子が形成される。また、前記可動子12は、円筒状で且つ非磁性の合成樹脂製の枠14と、この枠14に固定される円筒状の永久磁石15とを有して構成される。そして、前記枠14の基端側には円形の貫通孔16が形成される。この貫通孔16の内径は、前記ピストン5の外径よりも小さく形成される。前記接続体13は、接続本体17とナット18とを有して構成される。前記接続本体17は、図示しない第一雄螺子と、第二雄螺子19と、大径部20と、小径部21と、雌螺子22とを有して構成される。前記第一雄螺子は、前記貫通孔16を通って前記ピストン5の図示しない雌螺子と螺合可能に構成される。即ち、前記第一雄螺子の外径は、前記貫通孔16の内径よりも小さく形成される。一方、前記大径部20の外径は、前記貫通孔16の内径よりも大きく形成される。従って、前記貫通孔16を通して、前記接続本体17の第一雄螺子を前記ピストン5の雌螺子と螺合させることで、前記可動子12が前記ピストン5と接続本体17とで挟持される。前記第一板バネ11の中央には中央貫通孔23が形成されると共に、外周部には複数の外周部貫通孔24が形成される。前記中央貫通孔23の内径は、前記第二雄螺子19の外径よりも大きく、且つ前記ナット18の二面幅よりも小さく形成される。従って、前記第二雄螺子19は前記第一板バネ11の中央貫通孔23に通すことができる。また、前記第二雄螺子19を前記中央貫通孔23に通した状態で、前記第二雄螺子19に前記ナット18を螺合させることで、前記第一板バネ11が前記接続本体17とナット18とで挟持される。このようにして、前記ピストン組立体6が構成される。
【0020】
前記第一板バネ11は、支持体としての支持腕部25に支持される。詳述すると、前記第一板バネ11の外周部貫通孔24を通してビス26を前記支持腕部25の雌螺子27に螺合させることで、前記第一板バネ11の外周部が前記支持腕部25とビス26とで挟持される。そして、前記支持腕部25は、フランジ部28を介して前記第一シリンダー3と一体に形成される。従って、前記支持腕部25は、前記第一シリンダー3との位置関係が固定される。これは、前記支持腕部25に支持される前記第一板バネ11の外周部と前記第一シリンダー3との位置関係が固定されることを意味する。即ち、前記第一板バネ11の外周部は、動かない固定部となり、前記第一板バネ11の中央部は、前記ピストン5の往復動に伴って動く可動部となる。
【0021】
前記ピストン組立体6を構成する接続本体17の反ピストン5側には、前記第二雄螺子19と同軸状に前記雌螺子22が形成される。即ち、前記接続本体17の反ピストン5側には、外側に前記第二雄螺子19が、内側に前記雌螺子22が形成される。この雌螺子22を有する前記接続本体17の先端側が雌螺子部材である。前記雌螺子22には、雄螺子部材としてのボルト29が螺合される。そして、これら雌螺子22を有する雌螺子部材と雄螺子部材としてのボルト29によって、取付部30が構成される。即ち、前記取付部30は、前記第一板バネ11の反ピストン5側に設けられる。更に、前記雌螺子22とボルト29を螺合させることで、前記接続本体17とボルト30との間に錘体としてのワッシャー31が挟持可能とされる。
【0022】
次に、本実施形態における前記ピストン組立体6の共振周波数の調整方法について説明する。まず、予め前記第一板バネ11の外周部を図示しない測定用治具に取り付けて応力を与えることで、バネ定数kpを測定しておく。なお、前記測定用治具は、前記支持腕部25と同様の位置関係である。また、バネ定数kpの測定は、全ての前記第一板バネ11に対し行う訳ではなく、製造ロット毎に行う。一般的に、往復動する物体とこの物体に接続される弾性体からなる振動系の共振周波数fは、以下の数式で表される。
f=(1/2π)√(k/m)
この数式において、kは弾性体のバネ定数、mは可動質量である。従って、前記ピストン組立体6の目標共振周波数fptは、以下の数式で表される。
fpt=(1/2π)√(kp/mp)
目標共振周波数fpt及び前記第一板バネ11のバネ定数kpが定まっているので、前記ピストン組立体6の可動質量mpは算出することができる。ここで、可動質量mpは、前記ピストン5の質量m
5と、前記可動子12の質量m
12と、前記接続本体17の質量m
17と、前記ナット18の質量m
18と、前記ボルト29の質量m
29と、前記第一板バネ11における外周部を除く部位の質量m
11と、n枚の前記ワッシャー31の質量m
31の和である。m
5,m
12,m
17,m
18,m
29,m
31は予め測定しておく。但し、これらの質量の測定は全ての部品において行う訳ではなく、ロット毎に行われる。また、m
11は計算値である。従って、上記式は以下のように書き換えられる。
fpt=(1/2π)√(kp/(m
5+m
12+m
17+m
18+m
29+m
11+nm
31))
なお、この例では、基準となる
図4(b)に示すようにn=2であるが、nの値はkpの値により変動する。可動質量mpの大部分を占める前記ピストン5,可動子12,前記接続本体17は高精度に製造されるので、元々公差は小さい。また、前記ナット18,ボルト29,ワッシャー31は規格品であるが、質量が小さいので、質量の差異が共振周波数fpに与える影響は比較的小さい。計算上、これで前記ピストン組立体6の共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができるが、実際には、共振周波数fpが目標共振周波数fptから許容範囲以上ずれる場合がある。このように共振周波数fpが目標共振周波数fptから許容範囲以上ずれた場合、前記ワッシャー31の枚数を増減させることで対応する。可動質量mpの値を減少させる必要がある場合、例えば
図4(a)のように、前記ワッシャー31を1枚に減らす。また、可動質量mpの値を増加させる必要がある場合、例えば
図4(c)のように、前記ワッシャー31を3枚に増やす。このように、前記雌螺子22に前記ボルト29を螺合させる際に挟持する前記ワッシャー31の枚数を調整することによって可動質量mpの値を調整し、前記ピストン組立体6の共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができる。なお、前記ワッシャー31の厚さを薄くすれば、可動質量mpの調整ステップを細かくすることができる。
【0023】
なお、フリーピストン型スターリング冷凍機1においては、前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度は高精度である必要があるため、可動質量mpの調整のために前記ピストン組立体6を一度分解してしまうと、再組立の際に前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度の再調整が必要になる。しかしながら、前述したように、前記取付部30が前記第一板バネ11の反ピストン5側に設けられるので、前記ピストン組立体6を前記支持腕部25に支持させて前記ピストン5が前記第一シリンダー3内に挿入された状態であっても、前記ボルト29だけを前記ピストン組立体6から外して前記ワッシャー31の枚数を調整することで、可動質量mpの調整が可能である。即ち、前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度を損なうことなく、容易に共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができる。
【0024】
前記ディスプレイサー組立体8について詳述する。このディスプレイサー組立体8は、前記ディスプレイサー7と、このディスプレイサー7の前記第二シリンダー4内における往復動を制御するための弾性体としての第二板バネ32と、前記ディスプレイサー7を前記第二板バネ32に固定するための接続体33とを有して構成される。前記ディスプレイサー7は円筒状に形成される。また、前記接続体33は、ロッド34と第一ナット35とを有して構成される。前記ロッド34は、丸棒状のロッド本体36と、このロッド本体36の反ディスプレイサー7側に設けられる雄螺子37とを有して構成される。そして、前記ロッド本体36は、前記ディスプレイサー7と同軸に接続される。なお、前記雄螺子37の外径は、前記ロッド本体36の反ディスプレイサー7側端部の外径よりも小さい。前記第二板バネ32の中央には中央貫通孔38が形成されると共に、外周部には複数の外周部貫通孔39が形成される。前記中央貫通孔38の内径は、前記雄螺子37の外径よりも大きく、且つ前記ロッド本体36の反ディスプレイサー7側端部の外径及び前記第一ナット35の二面幅よりも小さく形成される。従って、前記雄螺子37は前記第二板バネ32の中央貫通孔38に通すことができる。また、前記雄螺子37を前記中央貫通孔38に通した状態で、前記雄螺子37に前記第一ナット35を螺合させることで、前記第二板バネ32が前記ロッド本体36とナット37とで挟持される。このようにして、前記ディスプレイサー組立体8が構成される。
【0025】
前記第二板バネ32は、支持体としての支持腕部40に支持される。詳述すると、前記第二板バネ32の外周部貫通孔39を通してビス41を前記支持腕部40の雌螺子42に螺合させることで、前記第二板バネ32の外周部が前記支持腕部40とビス41とで挟持される。そして、前記支持腕部40は、前記ケーシング2の胴部10内において、位置決めされて固定される。また、前記第二シリンダー4も、前記ケーシング2の円筒部9内において、位置決めされて固定される。従って、前記支持腕部40は、前記ケーシング2内にて、前記第二シリンダー4との位置関係が固定される。これは、前記支持腕部40に支持される前記第二板バネ32の外周部と前記第二シリンダー4との位置関係が固定されることを意味する。即ち、前記第二板バネ32の外周部は、動かない固定部となり、前記第二板バネ32の中央部は、前記ディスプレイサー7の往復動に伴って動く可動部となる。
【0026】
前記ディスプレイサー組立体8を構成する前記ロッド34の雄螺子37の先端側は、取付部43の一部を構成する雄螺子部材である。そして、前記雄螺子37には、前記取付部43の一部を構成する雌螺子部材としての第二ナット44が螺合される。即ち、前記取付部43は、前記第二板バネ32の反ディスプレイサー7側に設けられる。更に、前記雄螺子37を有する雄螺子部材と雌螺子部材としての第二ナット44を螺合させることで、前記第一ナット35と第二ナット44との間に錘体としてのワッシャー45が挟持可能とされる。
【0027】
次に、本実施形態における前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数の調整方法について説明する。まず、予め前記第二板バネ32の外周部を図示しない測定用治具に取り付けて応力を与えることで、バネ定数kdを測定しておく。なお、前記測定用治具は、前記支持腕部40と同様の位置関係である。また、バネ定数kdの測定は、全ての前記第二板バネ32に対し行う訳ではなく、製造ロット毎に行う。前記ピストン組立体6と同様に、前記ディスプレイサー組立体8の目標共振周波数fdtは、以下の数式で表される。
fdt=(1/2π)√(kd/md)
目標共振周波数fdt及び前記第二板バネ32のバネ定数kdが定まっているので、前記ディスプレイサー組立体8の可動質量mdは算出することができる。ここで、可動質量mdは、前記ディスプレイサー7の質量m
7と、前記ロッド34の質量m
34と、前記第一ナット35の質量m
35と、前記第二ナット44の質量m
44と、前記第二板バネ32における外周部を除く部位の質量m
32と、n枚の前記ワッシャー45の質量m
45の和である。m
7,m
34,m
35,m
44,m
45は予め測定しておく。但し、これらの質量の測定は全ての部品において行う訳ではなく、ロット毎に行われる。また、m
32は計算値である。従って、上記式は以下のように書き換えられる。
fdt=(1/2π)√(kd/(m
7+m
34+m
35+m
44+m
32+nm
45))
なお、この例では、基準となる
図5(b)に示すようにn=2であるが、nの値はkdの値により変動する。可動質量mdの大部分を占める前記ディスプレイサー7,ロッド34は高精度に製造されるので、元々公差は小さい。また、前記第一ナット35,第二ナット44,ワッシャー45は規格品であるが、質量が小さいので、質量の差異が共振周波数fdに与える影響は比較的小さい。計算上、これで前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを目標共振周波数fdtに近付けることができるが、実際には、共振周波数fdが目標共振周波数fdtから許容範囲以上ずれる場合がある。このように共振周波数fdが目標共振周波数fdtから許容範囲以上ずれた場合、前記ワッシャー45の枚数を増減させることで対応する。可動質量mdの値を減少させる必要がある場合、例えば
図5(a)のように、前記ワッシャー45を1枚に減らす。また、可動質量mdの値を増加させる必要がある場合、例えば
図5(c)のように、前記ワッシャー45を3枚に増やす。このように、前記雌螺子22に前記ボルト29を螺合させる際に挟持する前記ワッシャー45の枚数を調整することによって可動質量mdの値を調整し、前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを目標共振周波数fdtに近付けることができる。なお、前記ワッシャー45の厚さを薄くすれば、可動質量mdの調整ステップを細かくすることができる。
【0028】
なお、フリーピストン型スターリング冷凍機1においては、前記ディスプレイサー7と第二シリンダー4の同軸度は高精度である必要があるため、可動質量mdの調整のために前記ディスプレイサー組立体8を一度分解してしまうと、再組立の際に前記ディスプレイサー7と第二シリンダー4の同軸度の再調整が必要になる。しかしながら、前述したように、前記取付部43が前記第二板バネ32の反ディスプレイサー7側に設けられるので、前記ディスプレイサー組立体8を前記支持腕部40に支持させて前記ディスプレイサー7が前記第二シリンダー4内に挿入された状態であっても、前記第二ナット44だけを前記ディスプレイサー組立体8から外して前記ワッシャー45の枚数を調整することで、可動質量mdの調整が可能である。即ち、前記ディスプレイサー7と第二シリンダー4の同軸度を損なうことなく、容易に共振周波数fdを目標共振周波数fdtに近付けることができる。
【0029】
このように、前記ピストン組立体6に取り付けるワッシャー31の枚数、及び前記ディスプレイサー組立体8に取り付けるワッシャー45の枚数を調整することで、前記ピストン組立体6の共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができると共に、前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを目標共振周波数fdtに近付けることができる。そして、前記取付部30が前記第一板バネ11の反ピストン5側に設けられることで、前記ピストン組立体6を前記支持腕部25に支持させて前記ピストン5が前記第一シリンダー3内に挿入された状態であっても、容易に共振周波数fpの調整が可能である。同様に、前記取付部43が前記第二板バネ32の反ディスプレイサー7側に設けられることで、前記ディスプレイサー組立体8を前記支持腕部40に支持させて前記ディスプレイサー7が前記第二シリンダー4内に挿入された状態であっても、容易に共振周波数fdの調整が可能である。従って、従来のように、ピストン組立体6の共振周波数fpを測定した後でピストン組立体6を分解する必要がないので、組立と分解に伴う部品の破損(具体的には、螺子山を潰したり、部品を他の物体に衝突させたり擦ったりすること等)のリスクを減少させることができるばかりでなく、一旦調整した前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度を損なうことなく、可動質量mpの調整をすることができる。同様に、ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを測定した後でディスプレイサー組立体8を分解する必要がないので、組立と分解に伴う部品の破損のリスクを減少させることができるばかりでなく、一旦調整した前記ディスプレイサー7と第二シリンダー4の同軸度を損なうことなく、可動質量mdの調整をすることができる。また、前記取付部30,43が、それぞれ前記ピストン組立体6、ディスプレイサー組立体8と同軸に設けられるので、錘体としての前記ワッシャー31,45を前記取付部30,43に対し同軸に取り付けることができ、前記ピストン組立体6及びディスプレイサー組立体8の重量バランスを良好にして、前記ピストン5,ディスプレイサー7の往復動をバランス良く行わせることができる。更に、前記ワッシャー31,45を錘体とすることで、挟持するワッシャー31,45の枚数を調整することで容易に前記ピストン組立体6の共振周波数fp及び前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを調整することができる。
【0030】
次に、本発明の第二の実施形態について、
図1乃至
図3及び
図6,7に基づいて説明する。なお、ピストン組立体6及びディスプレイサー組立体8の構造は第一の実施形態と共通するので、それらの説明を省略し、可動質量mp,mdの調整について説明する。
【0031】
ピストン組立体6を構成する接続本体17の反ピストン5側には、第二雄螺子19と同軸状に雌螺子22が形成される。即ち、前記接続本体17の反ピストン5側には、外側に前記第二雄螺子19が、内側に前記雌螺子22が形成される。この雌螺子22を有する前記接続本体17の先端側が雌螺子部材である。前記雌螺子22には、雄螺子部材としてのボルト29が螺合される。そして、これら雌螺子22とボルト29によって、取付部30が構成される。即ち、前記取付部30は、第一板バネ11の反ピストン5側に設けられる。更に、前記雌螺子22を有する雌螺子部材と雄螺子部材としてのボルト29を螺合させることで、前記接続本体17とボルト30との間に錘体としてのワッシャー51が挟持可能とされる。なお、このワッシャー51は、直径の異なる複数種の何れか(51a,51b,51c…)である。
【0032】
次に、本実施形態における前記ピストン組立体6の共振周波数の調整方法について説明する。まず、予め前記第一板バネ11の外周部を図示しない測定用治具に取り付けて応力を与えることで、バネ定数kpを測定しておく。なお、前記測定用治具は、支持腕部25と同様の位置関係である。また、バネ定数kpの測定は、全ての前記第一板バネ11に対し行う訳ではなく、製造ロット毎に行う。一般的に、往復動する物体とこの物体に接続される弾性体からなる振動系の共振周波数fは、以下の数式で表される。
f=(1/2π)√(k/m)
この数式において、kは弾性体のバネ定数、mは可動質量である。従って、前記ピストン組立体6の目標共振周波数fptは、以下の数式で表される。
fpt=(1/2π)√(kp/mp)
目標共振周波数fpt及び前記第一板バネ11のバネ定数kpが定まっているので、前記ピストン組立体6の可動質量mpは算出することができる。ここで、可動質量mpは、前記ピストン5の質量m
5と、前記可動子12の質量m
12と、前記接続本体17の質量m
17と、前記ナット18の質量m
18と、前記ボルト29の質量m
29と、前記第一板バネ11における外周部を除く部位の質量m
11と、前記ワッシャー51の質量m
51の和である。m
5,m
12,m
17,m
18,m
29,m
51は予め測定しておく。但し、これらの質量の測定は全ての部品において行う訳ではなく、ロット毎に行われる。また、m
11は計算値である。従って、上記式は以下のように書き換えられる。
fpt=(1/2π)√(kp/(m
5+m
12+m
17+m
18+m
29+m
11+m
51))
なお、この例では、基準となる
図6(b)に示すように、前記ワッシャー51は中程度の直径のワッシャー51bであるが、ワッシャー51a,51b,51c,…の何れを選択するかはkpの値により変動する。可動質量mpの大部分を占める前記ピストン5,可動子12,前記接続本体17は高精度に製造されるので、元々公差は小さい。また、前記ナット18,ボルト29,ワッシャー51は規格品であるが、質量が小さいので、質量の差異が共振周波数fpに与える影響は比較的小さい。計算上、これで前記ピストン組立体6の共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができるが、実際には、共振周波数fpが目標共振周波数fptから許容範囲以上ずれる場合がある。このように共振周波数fpが目標共振周波数fptから許容範囲以上ずれた場合、取り付ける前記ワッシャー51の種類を変更することで対応する。可動質量mpの値を減少させる必要がある場合、例えば
図6(a)のように、前記ワッシャー51を直径の小さいもの(51a)に変更する。また、可動質量mpの値を増加させる必要がある場合、例えば
図6(c)のように、前記ワッシャー51を直径の大きいもの(51c)に変更する。このように、前記雌螺子22に前記ボルト29を螺合させる際に挟持する前記ワッシャー51の種類を選択することによって可動質量mpの値を調整し、前記ピストン組立体6の共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができる。なお、前記ワッシャー51(51a,51b,51c,…)間の直径の差を小さくすれば、可動質量mpの調整ステップを細かくすることができる。
【0033】
なお、フリーピストン型スターリング冷凍機1においては、前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度は高精度である必要があるため、可動質量mpの調整のために前記ピストン組立体6を一度分解してしまうと、再組立の際に前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度の再調整が必要になる。しかしながら、前述したように、前記取付部30が前記第一板バネ11の反ピストン5側に設けられるので、前記ピストン組立体6を前記支持腕部25に支持させて前記ピストン5が前記第一シリンダー3内に挿入された状態であっても、前記ボルト29だけを前記ピストン組立体6から外して、取り付けられる前記ワッシャー51の種類(51a,51b,51c,…)を適宜選択することで、可動質量mpの調整が可能である。即ち、前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度を損なうことなく、容易に共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができる。
【0034】
ディスプレイサー組立体8を構成するロッド34の雄螺子37の先端側は、取付部43の一部を構成する雄螺子部材である。そして、前記雄螺子37には、前記取付部43の一部を構成する雌螺子部材としての第二ナット44が螺合される。即ち、前記取付部43は、前記第二板バネ32の反ディスプレイサー7側に設けられる。更に、前記雄螺子37を有する雄螺子部材と雌螺子部材としての第二ナット44を螺合させることで、第一ナット35と第二ナット44との間に錘体としてのワッシャー52が挟持可能とされる。なお、このワッシャー52は、直径の異なる複数種の何れか(52a,52b,52c,…)である。
【0035】
次に、本実施形態における前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数の調整方法について説明する。まず、予め前記第二板バネ32の外周部を図示しない測定用治具に取り付けて応力を与えることで、バネ定数kdを測定しておく。なお、前記測定用治具は、支持腕部40と同様の位置関係である。また、バネ定数kdの測定は、全ての前記第二板バネ32に対し行う訳ではなく、製造ロット毎に行う。前記ピストン組立体6と同様に、前記ディスプレイサー組立体8の目標共振周波数fdtは、以下の数式で表される。
fdt=(1/2π)√(kd/md)
目標共振周波数fdt及び前記第二板バネ32のバネ定数kdが定まっているので、前記ディスプレイサー組立体8の可動質量mdは算出することができる。ここで、可動質量mdは、前記ディスプレイサー7の質量m
7と、前記ロッド34の質量m
34と、前記第一ナット35の質量m
35と、前記第二ナット44の質量m
44と、前記第二板バネ32における外周部を除く部位の質量m
32と、前記ワッシャー52の質量m
52の和である。m
7,m
34,m
35,m
44,m
52は予め測定しておく。但し、これらの質量の測定は全ての部品において行う訳ではなく、ロット毎に行われる。また、m
32は計算値である。従って、上記式は以下のように書き換えられる。
fdt=(1/2π)√(kd/(m
7+m
34+m
35+m
44+m
32+m
52))
なお、この例では、基準となる
図7(b)に示すように、前記ワッシャー52は中程度の直径のワッシャー52bであるが、ワッシャー52a,52b,52c,…の何れを選択するかはkdの値により変動する。可動質量mdの大部分を占める前記ディスプレイサー7及びロッド34は高精度に製造されるので、元々公差は小さい。また、前記第一ナット35,第二ナット44,ワッシャー52は規格品であるが、質量が小さいので、質量の差異が共振周波数fdに与える影響は比較的小さい。計算上、これで前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを目標共振周波数fdtに近付けることができるが、実際には、共振周波数fdが目標共振周波数fdtから許容範囲以上ずれる場合がある。このように共振周波数fdが目標共振周波数fdtから許容範囲以上ずれた場合、取り付ける前記ワッシャー52の種類を変更することで対応する。可動質量mdの値を減少させる必要がある場合、例えば
図7(a)のように、前記ワッシャー52を直径の小さいもの(52a)に変更する。また、可動質量mdの値を増加させる必要がある場合、例えば
図7(c)のように、前記ワッシャー52を直径の大きいもの(52c)に変更する。このように、前記雌螺子22に前記ボルト29を螺合させる際に挟持する前記ワッシャー52の種類を選択することによって可動質量mdの値を調整し、前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを目標共振周波数fdtに近付けることができる。なお、前記ワッシャー52(52a,52b,52c,…)間の直径の差を小さくすれば、可動質量mdの調整ステップを細かくすることができる。
【0036】
なお、フリーピストン型スターリング冷凍機1においては、前記ディスプレイサー7と第二シリンダー4の同軸度は高精度である必要があるため、可動質量mdの調整のために前記ディスプレイサー組立体8を一度分解してしまうと、再組立の際に前記ディスプレイサー7と第二シリンダー4の同軸度の再調整が必要になる。しかしながら、前述したように、前記取付部43が前記第二板バネ32の反ディスプレイサー7側に設けられるので、前記ディスプレイサー組立体8を前記支持腕部40に支持させて前記ディスプレイサー7が前記第二シリンダー4内に挿入された状態であっても、前記第二ナット44だけを前記ディスプレイサー組立体8から外して、取り付けられる前記ワッシャー52の種類(52a,52b,52c,…)を適宜選択することで、可動質量mdの調整が可能である。即ち、前記ディスプレイサー7と第二シリンダー4の同軸度を損なうことなく、容易に共振周波数fdを目標共振周波数fdtに近付けることができる。
【0037】
このように、前記ピストン組立体6に取り付けるワッシャー51の種類(51a,51b,51c,…)、及び前記ディスプレイサー組立体8に取り付けるワッシャー52の種類(52a,52b,52c,…)を選択することで、前記ピストン組立体6の共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができると共に、前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを目標共振周波数fdtに近付けることができる。そして、前記取付部30が前記第一板バネ11の反ピストン5側に設けられることで、前記ピストン組立体6を前記支持腕部25に支持させて前記ピストン5が前記第一シリンダー3内に挿入された状態であっても、容易に共振周波数fpの調整が可能である。同様に、前記取付部43が前記第二板バネ32の反ディスプレイサー7側に設けられることで、前記ディスプレイサー組立体8を前記支持腕部40に支持させて前記ディスプレイサー7が前記第二シリンダー4内に挿入された状態であっても、容易に共振周波数fdの調整が可能である。従って、従来のように、ピストン組立体6の共振周波数fpを測定した後でピストン組立体6を分解する必要がないので、組立と分解に伴う部品の破損(具体的には、螺子山を潰したり、部品を他の物体に衝突させたり擦ったりすること等)のリスクを減少させることができるばかりでなく、一旦調整した前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度を損なうことなく、可動質量mpの調整をすることができる。同様に、ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを測定した後でディスプレイサー組立体8を分解する必要がないので、組立と分解に伴う部品の破損のリスクを減少させることができるばかりでなく、一旦調整した前記ディスプレイサー7と第二シリンダー4の同軸度を損なうことなく、可動質量mdの調整をすることができる。また、前記取付部30,43が、それぞれ前記ピストン組立体6、ディスプレイサー組立体8と同軸に設けられるので、錘体としての前記ワッシャー51,52を前記取付部30,43に対し同軸に取り付けることができ、前記ピストン組立体6及びディスプレイサー組立体8の重量バランスを良好にして、前記ピストン5,ディスプレイサー7の往復動をバランス良く行わせることができる。更に、前記ワッシャー51,52を錘体とすることで、直径の異なる前記ワッシャー(51a,51b,51c,…,52a,52b,52c,…)の何れかを選択して挟持することで、容易に前記ピストン組立体6の共振周波数fp及び前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを調整することができる。
【0038】
次に、本発明の第三の実施形態について、
図1乃至
図3及び
図8,9に基づいて説明する。なお、ピストン組立体6及びディスプレイサー組立体8の構造は、第一及び第二の実施形態と共通するので、それらの説明を省略し、可動質量mp,mdの調整について説明する。
【0039】
ピストン組立体6を構成する接続本体17の反ピストン5側には、第二雄螺子19と同軸状に雌螺子22が形成される。即ち、前記接続本体17の反ピストン5側には、外側に前記第二雄螺子19が、内側に前記雌螺子22が形成される。この雌螺子22を有する前記接続本体17の先端側が雌螺子部材である。前記雌螺子22には、雄螺子部材としてのボルト29が螺合される。そして、これら雌螺子22を有する雌螺子部材と雄螺子部材としてのボルト29によって、取付部30が構成される。即ち、前記取付部30は、第一板バネ11の反ピストン5側に設けられる。更に、前記雌螺子22とボルト29を螺合させることで、前記接続本体17とボルト30との間に錘体としてのワッシャー61が挟持可能とされる。なお、このワッシャー61は、厚さの異なる複数種の何れか(61a,61b,61c…)である。
【0040】
次に、本実施形態における前記ピストン組立体6の共振周波数の調整方法について説明する。まず、予め前記第一板バネ11の外周部を図示しない測定用治具に取り付けて応力を与えることで、バネ定数kpを測定しておく。なお、前記測定用治具は、支持腕部25と同様の位置関係である。また、バネ定数kpの測定は、全ての前記第一板バネ11に対し行う訳ではなく、製造ロット毎に行う。一般的に、往復動する物体とこの物体に接続される弾性体からなる振動系の共振周波数fは、以下の数式で表される。
f=(1/2π)√(k/m)
この数式において、kは弾性体のバネ定数、mは可動質量である。従って、前記ピストン組立体6の目標共振周波数fptは、以下の数式で表される。
fpt=(1/2π)√(kp/mp)
目標共振周波数fpt及び前記第一板バネ11のバネ定数kpが定まっているので、前記ピストン組立体6の可動質量mpは算出することができる。ここで、可動質量mpは、前記ピストン5の質量m
5と、前記可動子12の質量m
12と、前記接続本体17の質量m
17と、前記ナット18の質量m
18と、前記ボルト29の質量m
29と、前記第一板バネ11における外周部を除く部位の質量m
11と、前記ワッシャー61の質量m
61の和である。m
5,m
12,m
17,m
18,m
29,m
61は予め測定しておく。但し、これらの質量の測定は全ての部品において行う訳ではなく、ロット毎に行われる。また、m
11は計算値である。従って、上記式は以下のように書き換えられる。
fpt=(1/2π)√(kp/(m
5+m
12+m
17+m
18+m
29+m
11+m
61))
なお、この例では、基準となる
図8(b)に示すように、前記ワッシャー61は中程度の厚さのワッシャー61bであるが、ワッシャー61a,61b,61c,…の何れを選択するかはkpの値により変動する。可動質量mpの大部分を占める前記ピストン5,可動子12,前記接続本体17は高精度に製造されるので、元々公差は小さい。また、前記ナット18,ボルト29,ワッシャー61は規格品であるが、質量が小さいので、質量の差異が共振周波数fpに与える影響は比較的小さい。計算上、これで前記ピストン組立体6の共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができるが、実際には、共振周波数fpが目標共振周波数fptから許容範囲以上ずれる場合がある。このように共振周波数fpが目標共振周波数fptから許容範囲以上ずれた場合、取り付ける前記ワッシャー61の種類を変更することで対応する。可動質量mpの値を減少させる必要がある場合、例えば
図8(a)のように、前記ワッシャー61を薄いもの(61a)に変更する。また、可動質量mpの値を増加させる必要がある場合、例えば
図8(c)のように、前記ワッシャー61を厚いもの(61c)に変更する。このように、前記雌螺子22に前記ボルト29を螺合させる際に挟持する前記ワッシャー61の種類を選択することによって可動質量mpの値を調整し、前記ピストン組立体6の共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができる。なお、前記ワッシャー61(61a,61b,61c,…)間の厚さの差を小さくすれば、可動質量mpの調整ステップを細かくすることができる。
【0041】
なお、フリーピストン型スターリング冷凍機1においては、前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度は高精度である必要があるため、可動質量mpの調整のために前記ピストン組立体6を一度分解してしまうと、再組立の際に前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度の再調整が必要になる。しかしながら、前述したように、前記取付部30が前記第一板バネ11の反ピストン5側に設けられるので、前記ピストン組立体6を前記支持腕部25に支持させて前記ピストン5が前記第一シリンダー3内に挿入された状態であっても、前記ボルト29だけを前記ピストン組立体6から外して、取り付けられる前記ワッシャー61の種類(61a,61b,61c,…)を適宜選択することで、可動質量mpの調整が可能である。即ち、前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度を損なうことなく、容易に共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができる。
【0042】
ディスプレイサー組立体8を構成するロッド34の雄螺子37の先端側は、取付部43の一部を構成する雄螺子部材である。そして、前記雄螺子37には、前記取付部43の一部を構成する雌螺子部材としての第二ナット44が螺合される。即ち、前記取付部43は、前記第二板バネ32の反ディスプレイサー7側に設けられる。更に、前記雄螺子37を有する雄螺子部材と雌螺子部材としての第二ナット44を螺合させることで、第一ナット35と第二ナット44との間に錘体としてのワッシャー62が挟持可能とされる。なお、このワッシャー62は、厚さの異なる複数種の何れか(62a,62b,62c,…)である。
【0043】
次に、本実施形態における前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数の調整方法について説明する。まず、予め前記第二板バネ32の外周部を図示しない測定用治具に取り付けて応力を与えることで、バネ定数kdを測定しておく。なお、前記測定用治具は、支持腕部40と同様の位置関係である。また、バネ定数kdの測定は、全ての前記第二板バネ32に対し行う訳ではなく、製造ロット毎に行う。前記ピストン組立体6と同様に、前記ディスプレイサー組立体8の目標共振周波数fdtは、以下の数式で表される。
fdt=(1/2π)√(kd/md)
目標共振周波数fdt及び前記第二板バネ32のバネ定数kdが定まっているので、前記ディスプレイサー組立体8の可動質量mdは算出することができる。ここで、可動質量mdは、前記ディスプレイサー7の質量m
7と、前記ロッド34の質量m
34と、前記第一ナット35の質量m
35と、前記第二ナット44の質量m
44と、前記第二板バネ32における外周部を除く部位の質量m
32と、前記ワッシャー62の質量m
62の和である。m
7,m
34,m
35,m
44,m
62は予め測定しておく。但し、これらの質量の測定は全ての部品において行う訳ではなく、ロット毎に行われる。また、m
32は計算値である。従って、上記式は以下のように書き換えられる。
fdt=(1/2π)√(kd/(m
7+m
34+m
35+m
44+m
32+m
62))
なお、この例では、基準となる
図9(b)に示すように、前記ワッシャー62は中程度の厚さのワッシャー62bであるが、ワッシャー62a,62b,62c,…の何れを選択するかはkdの値により変動する。可動質量mdの大部分を占める前記ディスプレイサー7及びロッド34は高精度に製造されるので、元々公差は小さい。また、前記第一ナット35,第二ナット44,ワッシャー62は規格品であるが、質量が小さいので、質量の差異が共振周波数fdに与える影響は比較的小さい。計算上、これで前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを目標共振周波数fdtに近付けることができるが、実際には、共振周波数fdが目標共振周波数fdtから許容範囲以上ずれる場合がある。このように共振周波数fdが目標共振周波数fdtから許容範囲以上ずれた場合、取り付ける前記ワッシャー62の種類を変更することで対応する。可動質量mdの値を減少させる必要がある場合、例えば
図9(a)のように、前記ワッシャー62を薄いもの(62a)に変更する。また、可動質量mdの値を増加させる必要がある場合、例えば
図9(c)のように、前記ワッシャー62を厚いもの(62c)に変更する。このように、前記雌螺子22に前記ボルト29を螺合させる際に挟持する前記ワッシャー62の種類を選択することによって可動質量mdの値を調整し、前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを目標共振周波数fdtに近付けることができる。なお、前記ワッシャー62(62a,62b,62c,…)間の直径の差を小さくすれば、可動質量mdの調整ステップを細かくすることができる。
【0044】
なお、フリーピストン型スターリング冷凍機1においては、前記ディスプレイサー7と第二シリンダー4の同軸度は高精度である必要があるため、可動質量mdの調整のために前記ディスプレイサー組立体8を一度分解してしまうと、再組立の際に前記ディスプレイサー7と第二シリンダー4の同軸度の再調整が必要になる。しかしながら、前述したように、前記取付部43が前記第二板バネ32の反ディスプレイサー7側に設けられるので、前記ディスプレイサー組立体8を前記支持腕部40に支持させて前記ディスプレイサー7が前記第二シリンダー4内に挿入された状態であっても、前記第二ナット44だけを前記ディスプレイサー組立体8から外して、取り付けられる前記ワッシャー62の種類(62a,62b,62c,…)を適宜選択することで、可動質量mdの調整が可能である。即ち、前記ディスプレイサー7と第二シリンダー4の同軸度を損なうことなく、容易に共振周波数fdを目標共振周波数fdtに近付けることができる。
【0045】
このように、前記ピストン組立体6に取り付けるワッシャー61の種類(61a,61b,61c,…)、及び前記ディスプレイサー組立体8に取り付けるワッシャー62の種類(62a,62b,62c,…)を選択することで、前記ピストン組立体6の共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができると共に、前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを目標共振周波数fdtに近付けることができる。そして、前記取付部30が前記第一板バネ11の反ピストン5側に設けられることで、前記ピストン組立体6を前記支持腕部25に支持させて前記ピストン5が前記第一シリンダー3内に挿入された状態であっても、容易に共振周波数fpの調整が可能である。同様に、前記取付部43が前記第二板バネ32の反ディスプレイサー7側に設けられることで、前記ディスプレイサー組立体8を前記支持腕部40に支持させて前記ディスプレイサー7が前記第二シリンダー4内に挿入された状態であっても、容易に共振周波数fdの調整が可能である。従って、従来のように、ピストン組立体6の共振周波数fpを測定した後でピストン組立体6を分解する必要がないので、組立と分解に伴う部品の破損(具体的には、螺子山を潰したり、部品を他の物体に衝突させたり擦ったりすること等)のリスクを減少させることができるばかりでなく、一旦調整した前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度を損なうことなく、可動質量mpの調整をすることができる。同様に、ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを測定した後でディスプレイサー組立体8を分解する必要がないので、組立と分解に伴う部品の破損のリスクを減少させることができるばかりでなく、一旦調整した前記ディスプレイサー7と第二シリンダー4の同軸度を損なうことなく、可動質量mdの調整をすることができる。また、前記取付部30,43が、それぞれ前記ピストン組立体6、ディスプレイサー組立体8と同軸に設けられるので、錘体としての前記ワッシャー61,62を前記取付部30,43に対し同軸に取り付けることができ、前記ピストン組立体6及びディスプレイサー組立体8の重量バランスを良好にして、前記ピストン5,ディスプレイサー7の往復動をバランス良く行わせることができる。更に、前記ワッシャー61,62を錘体とすることで、直径の異なる前記ワッシャー(61a,61b,61c,…,62a,62b,62c,…)の何れかを選択して挟持することで、容易に前記ピストン組立体6の共振周波数fp及び前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを調整することができる。
【0046】
次に、本発明の第四の実施形態について、
図1乃至
図3及び
図10,11に基づいて説明する。なお、ピストン組立体6及びディスプレイサー組立体8の構造は、第一乃至第三の実施形態と共通するので、それらの説明を省略し、可動質量mp,mdの調整について説明する。
【0047】
ピストン組立体6を構成する接続本体17の反ピストン5側には、第二雄螺子19と同軸状に雌螺子22が形成される。即ち、前記接続本体17の反ピストン5側には、外側に前記第二雄螺子19が、内側に前記雌螺子22が形成される。この雌螺子22を有する前記接続本体17の先端側が雌螺子部材である。前記雌螺子22には、雄螺子部材としての
ボルト29が螺合される。そして、これら雌螺子22を有する雌螺子部材と雄螺子部材としてのボルト29によって、取付部30が構成される。即ち、前記取付部30は、第一板バネ11の反ピストン5側に設けられる。更に、前記雌螺子22とボルト29を螺合させることで、前記接続本体17とボルト30との間に錘体としてのワッシャー51が挟持可能とされる。なお、このワッシャー51は、直径の異なる複数種の何れか(51a,51b,…)である。
【0048】
次に、本実施形態における前記ピストン組立体6の共振周波数の調整方法について説明する。まず、予め前記第一板バネ11の外周部を図示しない測定用治具に取り付けて応力を与えることで、バネ定数kpを測定しておく。なお、前記測定用治具は、支持腕部25と同様の位置関係である。また、バネ定数kpの測定は、全ての前記第一板バネ11に対し行う訳ではなく、製造ロット毎に行う。一般的に、往復動する物体とこの物体に接続される弾性体からなる振動系の共振周波数fは、以下の数式で表される。
f=(1/2π)√(k/m)
この数式において、kは弾性体のバネ定数、mは可動質量である。従って、前記ピストン組立体6の目標共振周波数fptは、以下の数式で表される。
fpt=(1/2π)√(kp/mp)
目標共振周波数fpt及び前記第一板バネ11のバネ定数kpが定まっているので、前記ピストン組立体6の可動質量mpは算出することができる。ここで、可動質量mpは、前記ピストン5の質量m
5と、前記可動子12の質量m
12と、前記接続本体17の質量m
17と、前記ナット18の質量m
18と、前記ボルト29の質量m
29と、前記第一板バネ11における外周部を除く部位の質量m
11と、前記ワッシャー51の質量m
51(m
51a,m
51b,…)の和である。m
5,m
12,m
17,m
18,m
29,m
51(m
51a,m
51b,…)は予め測定しておく。但し、これらの質量の測定は全ての部品において行う訳ではなく、ロット毎に行われる。また、m
11は計算値である。従って、上記式は以下のように書き換えられる。
fpt=(1/2π)√(kp/(m
5+m
12+m
17+m
18+m
29+m
11+xm
51a+ym
51b))
なお、この例では、基準となる
図10(b)に示すように、前記ワッシャー51は直径の小さいもの(51a)が2枚である(x=2,y=0)が、ワッシャー51a,51b,…の枚数及び種類は、kpの値により変動する。可動質量mpの大部分を占める前記ピストン5,可動子12,前記接続本体17は高精度に製造されるので、元々公差は小さい。また、前記ナット18,ボルト29,ワッシャー51は規格品であるが、質量が小さいので、質量の差異が共振周波数fpに与える影響は比較的小さい。計算上、これで前記ピストン組立体6の共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができるが、実際には、共振周波数fpが目標共振周波数fptから許容範囲以上ずれる場合がある。このように共振周波数fpが目標共振周波数fptから許容範囲以上ずれた場合、取り付ける前記ワッシャー51の枚数や種類を変更することで対応する。可動質量mpの値を減少させる必要がある場合、例えば
図10(a)のように、前記ワッシャー51を直径の小さいもの(51a)1枚(即ち、x=1,y=0)に変更する。また、可動質量mpの値を増加させる必要がある場合、例えば
図10(c)のように、前記ワッシャー51を直径の小さいもの(51a)1枚と直径の大きいもの(51b)1枚(即ち、x=1,y=1)に変更する。このように、前記雌螺子22に前記ボルト29を螺合させる際に挟持する前記ワッシャー51の枚数と種類を変更することによって可動質量mpの値を調整し、前記ピストン組立体6の共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができる。なお、前記ワッシャー51(51a,51b,…)間の直径や厚さの差を小さくすれば、可動質量mpの調整ステップを細かくすることができる。
【0049】
なお、フリーピストン型スターリング冷凍機1においては、前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度は高精度である必要があるため、可動質量mpの調整のために前記ピストン組立体6を一度分解してしまうと、再組立の際に前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度の再調整が必要になる。しかしながら、前述したように、前記取付部30が前記第一板バネ11の反ピストン5側に設けられるので、前記ピストン組立体6を前記支持腕部25に支持させて前記ピストン5が前記第一シリンダー3内に挿入された状態であっても、前記ボルト29だけを前記ピストン組立体6から外して、取り付けられる前記ワッシャー51の枚数や種類(51a,51b,…)を適宜変更することで、可動質量mpの調整が可能である。即ち、前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度を損なうことなく、容易に共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができる。
【0050】
ディスプレイサー組立体8を構成するロッド34の雄螺子37の先端側は、取付部43の一部を構成する雄螺子部材である。そして、前記雄螺子37には、前記取付部43の一部を構成する雌螺子部材としての第二ナット44が螺合される。即ち、前記取付部43は、前記第二板バネ32の反ディスプレイサー7側に設けられる。更に、前記雄螺子37を有する雄螺子部材と雌螺子部材としての第二ナット44を螺合させることで、第一ナット35と第二ナット44との間に錘体としてのワッシャー52が挟持可能とされる。なお、このワッシャー52は、直径の異なる複数種の何れか(52a,52b,…)である。
【0051】
次に、本実施形態における前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数の調整方法について説明する。まず、予め前記第二板バネ32の外周部を図示しない測定用治具に取り付けて応力を与えることで、バネ定数kdを測定しておく。なお、前記測定用治具は、支持腕部40と同様の位置関係である。また、バネ定数kdの測定は、全ての前記第二板バネ32に対し行う訳ではなく、製造ロット毎に行う。前記ピストン組立体6と同様に、前記ディスプレイサー組立体8の目標共振周波数fdtは、以下の数式で表される。
fdt=(1/2π)√(kd/md)
目標共振周波数fdt及び前記第二板バネ32のバネ定数kdが定まっているので、前記ディスプレイサー組立体8の可動質量mdは算出することができる。ここで、可動質量mdは、前記ディスプレイサー7の質量m
7と、前記ロッド34の質量m
34と、前記第一ナット35の質量m
35と、前記第二ナット44の質量m
44と、前記第二板バネ32における外周部を除く部位の質量m
32と、前記ワッシャー52の質量m
52(m
52a,m
52b,…)の和である。m
7,m
34,m
35,m
44,m
52(m
52a,m
52b,…)は予め測定しておく。但し、これらの質量の測定は全ての部品において行う訳ではなく、ロット毎に行われる。また、m
32は計算値である。従って、上記式は以下のように書き換えられる。
fdt=(1/2π)√(kd/(m
7+m
34+m
35+m
44+m
32+xm
52a+ym
52b))
なお、この例では、基準となる
図11(b)に示すように、前記ワッシャー52は直径の小さいもの(52a)が2枚である(x=2,y=0)が、ワッシャー52a,52b,…の枚数及び種類は、kdの値により変動する。可動質量mdの大部分を占める前記ディスプレイサー7及びロッド34は高精度に製造されるので、元々公差は小さい。また、前記第一ナット35,第二ナット44,ワッシャー52は規格品であるが、質量が小さいので、質量の差異が共振周波数fdに与える影響は比較的小さい。計算上、これで前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを目標共振周波数fdtに近付けることができるが、実際には、共振周波数fdが目標共振周波数fdtから許容範囲以上ずれる場合がある。このように共振周波数fdが目標共振周波数fdtから許容範囲以上ずれた場合、取り付ける前記ワッシャー52の枚数や種類を変更することで対応する。可動質量mdの値を減少させる必要がある場合、例えば
図11(a)のように、前記ワッシャー52を直径の小さいもの(52a)1枚(即ち、x=1,y=0)に変更する。また、可動質量mdの値を増加させる必要がある場合、例えば
図11(c)のように、前記ワッシャー52を直径の小さいもの(52a)1枚と直径の大きいもの(52b)1枚(即ち、x=1,y=1)に変更する。このように、前記雌螺子22に前記ボルト29を螺合させる際に挟持する前記ワッシャー52の枚数や種類を変更することによって可動質量mdの値を調整し、前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを目標共振周波数fdtに近付けることができる。なお、前記ワッシャー52(52a,52b,…)間の直径や厚さの差を小さくすれば、可動質量mdの調整ステップを細かくすることができる。
【0052】
なお、フリーピストン型スターリング冷凍機1においては、前記ディスプレイサー7と第二シリンダー4の同軸度は高精度である必要があるため、可動質量mdの調整のために前記ディスプレイサー組立体8を一度分解してしまうと、再組立の際に前記ディスプレイサー7と第二シリンダー4の同軸度の再調整が必要になる。しかしながら、前述したように、前記取付部43が前記第二板バネ32の反ディスプレイサー7側に設けられるので、前記ディスプレイサー組立体8を前記支持腕部40に支持させて前記ディスプレイサー7が前記第二シリンダー4内に挿入された状態であっても、前記第二ナット44だけを前記ディスプレイサー組立体8から外して、取り付けられる前記ワッシャー52の枚数や種類(52a,52b,…)を適宜選択することで、可動質量mdの調整が可能である。即ち、前記ディスプレイサー7と第二シリンダー4の同軸度を損なうことなく、容易に共振周波数fdを目標共振周波数fdtに近付けることができる。
【0053】
このように、前記ピストン組立体6に取り付けるワッシャー51の枚数や種類(51a,51b,…)、及び前記ディスプレイサー組立体8に取り付けるワッシャー52の枚数や種類(52a,52b,…)を変更することで、前記ピストン組立体6の共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができると共に、前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを目標共振周波数fdtに近付けることができる。そして、前記取付部30が前記第一板バネ11の反ピストン5側に設けられることで、前記ピストン組立体6を前記支持腕部25に支持させて前記ピストン5が前記第一シリンダー3内に挿入された状態であっても、容易に共振周波数fpの調整が可能である。同様に、前記取付部43が前記第二板バネ32の反ディスプレイサー7側に設けられることで、前記ディスプレイサー組立体8を前記支持腕部40に支持させて前記ディスプレイサー7が前記第二シリンダー4内に挿入された状態であっても、容易に共振周波数fdの調整が可能である。従って、従来のように、ピストン組立体6の共振周波数fpを測定した後でピストン組立体6を分解する必要がないので、組立と分解に伴う部品の破損(具体的には、螺子山を潰したり、部品を他の物体に衝突させたり擦ったりすること等)のリスクを減少させることができるばかりでなく、一旦調整した前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度を損なうことなく、可動質量mpの調整をすることができる。同様に、ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを測定した後でディスプレイサー組立体8を分解する必要がないので、組立と分解に伴う部品の破損のリスクを減少させることができるばかりでなく、一旦調整した前記ディスプレイサー7と第二シリンダー4の同軸度を損なうことなく、可動質量mdの調整をすることができる。また、前記取付部30,43が、それぞれ前記ピストン組立体6、ディスプレイサー組立体8と同軸に設けられるので、錘体としての前記ワッシャー51,52を前記取付部30,43に対し同軸に取り付けることができ、前記ピストン組立体6及びディスプレイサー組立体8の重量バランスを良好にして、前記ピストン5,ディスプレイサー7の往復動をバランス良く行わせることができる。更に、前記ワッシャー51,52を錘体とすることで、直径の異なる前記ワッシャー(51a,51b,…,52a,52b,…)の枚数や種類を変更して挟持することで、容易に前記ピストン組立体6の共振周波数fp及び前記ディスプレイサー組立体8の共振周波数fdを調整することができる。
【0054】
次に、本発明の第五の実施形態について、
図1乃至
図3及び
図12に基づいて説明する。なお、ピストン組立体6の構造は、第一乃至第四の実施形態と共通するので、それらの説明を省略し、可動質量mpの調整について説明する。
【0055】
ピストン組立体6を構成する接続本体17の反ピストン5側には、第二雄螺子19と同軸状に雌螺子22が形成される。即ち、前記接続本体17の反ピストン5側には、外側に前記第二雄螺子19が、内側に前記雌螺子22が形成される。この雌螺子22を有する前記接続本体17の先端側が雌螺子部材であり、この雌螺子部材によって取付部71が構成される。即ち、この取付部71は、第一板バネ11の反ピストン5側に設けられる。更に、前記雌螺子22には、雄螺子部材としてのボルト72が螺合される。そして、このボルト72が錘体とされる。なお、このボルト72は、長さの異なる複数種の何れか(72a,72b,72c…)である。
【0056】
次に、本実施形態における前記ピストン組立体6の共振周波数の調整方法について説明する。まず、予め前記第一板バネ11の外周部を図示しない測定用治具に取り付けて応力を与えることで、バネ定数kpを測定しておく。なお、前記測定用治具は、支持腕部25と同様の位置関係である。また、バネ定数kpの測定は、全ての前記第一板バネ11に対し行う訳ではなく、製造ロット毎に行う。一般的に、往復動する物体とこの物体に接続される弾性体からなる振動系の共振周波数fは、以下の数式で表される。
f=(1/2π)√(k/m)
この数式において、kは弾性体のバネ定数、mは可動質量である。従って、前記ピストン組立体6の目標共振周波数fptは、以下の数式で表される。
fpt=(1/2π)√(kp/mp)
目標共振周波数fpt及び前記第一板バネ11のバネ定数kpが定まっているので、前記ピストン組立体6の可動質量mpは算出することができる。
ここで、可動質量mpは、前記ピストン5の質量m
5と、前記可動子12の質量m
12と、前記接続本体17の質量m
17と、前記ナット18の質量m
18と、前記ボルト72の質量m
72と、前記第一板バネ11における外周部を除く部位の質量m
11の和である。m
5,m
12,m
17,m
18,m
72は予め測定しておく。但し、これらの質量の測定は全ての部品において行う訳ではなく、ロット毎に行われる。また、m
11は計算値である。従って、上記式は以下のように書き換えられる。
fpt=(1/2π)√(kp/(m
5+m
12+m
17+m
18+m
11+m
72))
なお、この例では、基準となる
図12(b)に示すように、前記ボルト72は中程度の長さのボルト72bであるが、ボルト72a,72b,72c,…の何れを選択するかはkpの値により変動する。可動質量mpの大部分を占める前記ピストン5,可動子12,前記接続本体17は高精度に製造されるので、元々公差は小さい。また、前記ナット18及びボルト72は規格品であるが、質量が小さいので、質量の差異が共振周波数fpに与える影響は比較的小さい。計算上、これで前記ピストン組立体6の共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができるが、実際には、共振周波数fpが目標共振周波数fptから許容範囲以上ずれる場合がある。このように共振周波数fpが目標共振周波数fptから許容範囲以上ずれた場合、取り付ける前記ボルト72の種類を変更することで対応する。可動質量mpの値を減少させる必要がある場合、例えば
図12(a)のように、前記ボルト72を短いもの(72a)に変更する。また、可動質量mpの値を増加させる必要がある場合、例えば
図12(c)のように、前記ボルト72を長いもの(72c)に変更する。このように、前記雌螺子22に螺合させる前記ボルト72の種類を選択することによって可動質量mpの値を調整し、前記ピストン組立体6の共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができる。なお、前記ボルト72(42a,72b,72c,…)間の長さの差を小さくすれば、可動質量mpの調整ステップを細かくすることができる。
【0057】
なお、フリーピストン型スターリング冷凍機1においては、前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度は高精度である必要があるため、可動質量mpの調整のために前記ピストン組立体6を一度分解してしまうと、再組立の際に前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度の再調整が必要になる。しかしながら、前述したように、前記取付部71が前記第一板バネ11の反ピストン5側に設けられるので、前記ピストン組立体6を前記支持腕部25に支持させて前記ピストン5が前記第一シリンダー3内に挿入された状態であっても、前記ボルト72(72a,72b,72c,…)だけを前記ピストン組立体6から外して他のボルト72(72a,72b,72c,…)に交換することで、可動質量mpの調整が可能である。即ち、前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度を損なうことなく、容易に共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができる。
【0058】
このように、前記ピストン組立体6に取り付けるボルト72の種類(72a,72b,72c,…)を選択することで、前記ピストン組立体6の共振周波数fpを目標共振周波数fptに近付けることができる。そして、前記取付部71が前記第一板バネ11の反ピストン5側に設けられることで、前記ピストン組立体6を前記支持腕部25に支持させて前記ピストン5が前記第一シリンダー3内に挿入された状態であっても、容易に共振周波数fpの調整が可能である。従って、従来のように、ピストン組立体6の共振周波数fpを測定した後でピストン組立体6を分解する必要がないので、組立と分解に伴う部品の破損(具体的には、螺子山を潰したり、部品を他の物体に衝突させたり擦ったりすること等)のリスクを減少させることができるばかりでなく、一旦調整した前記ピストン5と第一シリンダー3の同軸度を損なうことなく、可動質量mpの調整をすることができる。また、前記取付部71が前記ピストン組立体6と同軸に設けられるので、錘体としての前記ボルト72を前記取付部71に対し同軸に取り付けることができ、前記ピストン組立体6の重量バランスを良好にして、前記ピストン5の往復動をバランス良く行わせることができる。更に、前記錘体を雄螺子としてのボルト72とし、前記取付部71を雌螺子22とし、前記ボルト72を前記雌螺子22に螺合可能とすると共に、複数種の重さが異なる前記ボルト72(72a,72b,72c,…)の何れかを前記雌螺子22に螺合可能とすることにより、可動質量mpを容易に調整することができる。
【0059】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、第四の実施形態では、直径の異なるワッシャー51a,51b,…又は52a,52b,…の組み合わせにより可動質量mp,mdを調整したが、厚さの異なるワッシャー61a,61b,…又は62a,62b,…の組み合わせにより可動質量mp,mdを調整しても良い。また、直径の異なるワッシャーと厚さの異なるワッシャーとを組み合わせて可動質量mp,mdを調整しても良い。また、上記各実施形態では、大きさの異なる錘体によって質量を調整したが、材質の異なる錘体によって質量を調整しても良い。更に、上記各実施形態では、往復体と接続体とが別構造であるが、往復体と接続体とを一体に構成しても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 フリーピストン型スターリング冷凍機(フリーピストン型スターリング機関)
3 第一シリンダー
4 第二シリンダー
5 ピストン(往復体)
6 ピストン組立体
7 ディスプレイサー(往復体)
8 ディスプレイサー組立体
11 第一板バネ(弾性体)
13 接続体
17 接続本体(雌螺子部材)
22 雌螺子
25 支持腕部(支持体)
29 ボルト(雄螺子部材)
30 取付部
31 ワッシャー(錘体)
32 第二板バネ(弾性体)
33 接続体
37 雄螺子(雄螺子部材)
40 支持腕部(支持体)
43 取付部
44 第二ナット(雌螺子部材)
45 ワッシャー(錘体)
51,51a,51b,51c… ワッシャー(錘体)
52,52a,52b,52c… ワッシャー(錘体)
61,61a,61b,61c… ワッシャー(錘体)
62,62a,62b,62c… ワッシャー(錘体)
71 取付部
72,72a,72b,72c… ボルト(雄螺子部材、錘体)
f 共振周波数
fp ピストン組立体6の共振周波数
fpt ピストン組立体6の目標共振周波数
fd ディスプレイサー組立体8の共振周波数
fdt ディスプレイサー組立体8の目標共振周波数
k 弾性体のバネ定数
kp 第一板バネ11のバネ定数
kd 第二板バネ33のバネ定数
m 可動質量
mp ピストン組立体6の可動質量
md ディスプレイサー組立体8の可動質量