IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝デバイス&ストレージ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体装置 図1
  • 特許-半導体装置 図2
  • 特許-半導体装置 図3
  • 特許-半導体装置 図4
  • 特許-半導体装置 図5
  • 特許-半導体装置 図6
  • 特許-半導体装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20230726BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20230726BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20230726BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20230726BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20230726BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 653C
H01L29/78 655B
H01L29/78 655D
H01L29/78 657D
H01L29/78 655G
H01L29/78 652Q
H01L29/78 655A
H01L29/78 652D
H01L27/06 102A
H01L27/088 A
H01L29/78 301V
H01L29/78 301J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019199659
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021072407
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】下條 亮平
(72)【発明者】
【氏名】坂野 竜則
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/162811(WO,A1)
【文献】特開2016-032105(JP,A)
【文献】特開2011-238975(JP,A)
【文献】特開2018-073911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/739
H01L 21/8234
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有する半導体部と、
前記半導体部の前記第1面上に設けられた第1電極と、
前記半導体部の前記第2面上に設けられた第2電極と、
前記半導体部と前記第1電極との間に設けられた第1制御電極であって、前記半導体部の前記第1面側に設けられた第1トレンチ中に位置し、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁された第1制御電極と、
前記半導体部と前記第1電極との間に設けられた第2制御電極であって、前記半導体部の前記第1面側に設けられた第2トレンチ中に位置し、前記半導体部から第2絶縁膜により電気的に絶縁された第2制御電極と、
前記半導体部と前記第1電極との間に設けられた第3制御電極であって、前記半導体部の前記第1面側に設けられた第3トレンチ中に位置し、前記半導体部から第3絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第1および第2制御電極とは電気的に分離された第3制御電極と、
を備え、
前記半導体部は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、第2導電形の第3半導体層と、第1導電形の第4半導体層と、第2導電形の第5半導体層と、第1導電形の第6半導体層と、を含み、
前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第1電極との間に選択的に設けられ、前記第1制御電極に前記第1絶縁膜を介して向き合う部分を含み、
前記第3半導体層は、前記第1半導体層と前記第1電極との間に選択的に設けられ、前記第2半導体層の第2導電形不純物よりも高濃度の第2導電形不純物を含み、前記第2制御電極に前記第2絶縁膜を介して向き合う部分、および、前記第3制御電極に前記第3絶縁膜を介して向き合う部分を含み、
前記第4半導体層は、前記第2半導体層と前記第1電極との間に選択的に設けられ、前記第1絶縁膜に接する位置に配置され、
前記第5半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、
前記第6半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第1半導体層における第1導電形不純物の濃度よりも高濃度の第1導電形不純物を含み、
前記第5半導体層および前記第6半導体層は、前記第2電極に沿って交互に配置され、
前記第1電極は、前記第1制御電極から第4絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第2制御電極から第5絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第2半導体層、前記第3半導体層および前記第4半導体層に電気的に接続され、
前記第2電極は、前記第5半導体層および前記第6半導体層に電気的に接続された半導体装置。
【請求項2】
前記半導体部は、第2導電形の第7半導体層をさらに含み、
前記第7半導体層は、前記第2半導体層と前記第1電極との間に選択的に設けられ、前記第3半導体層の前記第2導電形不純物よりも高濃度の第2導電形不純物を含み、
前記第4半導体層および前記第7半導体層は、前記第1電極に沿って配置される請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体部は、第1導電形の第8半導体層をさらに含み、
前記第8半導体層は、前記第1半導体層と前記第5半導体層との間に設けられ、前記第1半導体層の第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含む請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体部は、第2導電形の第9半導体層をさらに含み、
前記第9半導体層は、前記第3半導体層と前記第1電極との間に選択的に設けられ、前
記第3半導体層における第2導電形不純物濃度よりも高濃度の第2導電形不純物を含む請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第3制御電極は、複数設けられ、
前記半導体部は、第2導電形の第10半導体層をさらに含み、
前記第10半導体層は、前記複数の第3制御電極のうちの隣合う2つの第3制御電極の間に位置し、前記2つの第3制御電極のそれぞれに第3絶縁膜を介して向き合う部分を含み、前記第2半導体層の前記第2導電形不純物よりも高濃度の第2導電形不純物を含む請求項1~4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体部は、第2導電形の第11半導体層をさらに含み、
前記第11半導体層は、前記第10半導体層と前記第1電極との間に選択的に設けられ、前記第10半導体層における第2導電形不純物濃度よりも高濃度の第2導電形不純物を含む請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第4半導体層は、複数設けられ、
前記複数の第4半導体層の1つは、前記第3半導体層と前記第1電極との間に選択的に設けられ、前記第2絶縁膜に接する位置に配置される請求項1~6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2制御電極は、前記第1制御電極に電気的に接続される請求項1~7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第3制御電極は、前記第1電極に電気的に接続される請求項1~8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とダイオードとを1チップ化した逆導通型IGBTが実用化されている。しかしながら、逆導通型IGBTでは、IGBTの特性に影響を与えずに、ダイオード特性を改善することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-135255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、ダイオード特性を改善できる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有する半導体部と、前記半導体部の前記第1面上に設けられた第1電極と、前記半導体部の前記第2面上に設けられた第2電極と、前記半導体部と前記第1電極との間に設けられた第1~第3制御電極と、を備える。前記第1制御電極は、前記半導体部の前記第1面側に設けられた第1トレンチ中に位置し、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁される。前記第2制御電極は、前記半導体部の前記第1面側に設けられた第2トレンチ中に位置
し、前記半導体部から第2絶縁膜により電気的に絶縁される。前記第3制御電極は、前記半導体部の前記第1面側に設けられた第3トレンチ中に位置し、前記半導体部から第3絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第1および第2制御電極とは電気的に分離される。前記半導体部は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、第2導電形の第3半導体層と、第1導電形の第4半導体層と、第2導電形の第5半導体層と、第1導電形の第6半導体層と、を含む。前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第1電極との間に選択的に設けられ、前記第1制御電極に前記第1絶縁膜を介して向き合う部分を含む。前記第3半導体層は、前記第1半導体層と前記第1電極との間に選択的に設けられ、前記第2半導体層の第2導電形不純物よりも高濃度の第2導電形不純物を含む。前記第3半導体層は、前記第2制御電極に前記第2絶縁膜を介して向き合う部分、および、前記第3制御電極に前記第3絶縁膜を介して向き合う部分を含む。前記第4半導体層は、前記第2半導体層と前記第1電極との間に選択的に設けられ、前記第1絶縁膜に接する位置に配置される。前記第5半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられる。前記第6半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第1半導体層における第1導電形不純物の濃度よりも高濃度の第1導電形不純物を含む。前記第5半導体層および前記第6半導体層は、前記第2電極に沿って交互に配置される。前記第1電極は、前記第1制御電極から第4絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第2制御電極から第5絶縁膜により電気的に絶縁される。前記第1電極は、前記第2半導体層、前記第3半導体層および前記第4半導体層に電気的に接続され、前記第2電極は、前記第5半導体層および前記第6半導体層に電気的に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
図2】実施形態に係る半導体装置を用いた電力変換回路を示す回路図である。
図3図2に示す電力変換回路の制御方法を示すタイミングチャートである。
図4】実施形態に係る半導体装置の動作を示す模式断面図である。
図5】実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
図6】実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す模式平面図である。
図7】実施形態の第2変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
さらに、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。
【0009】
図1は、実施形態に係る半導体装置1を示す模式断面図である。半導体装置1は、例えば、逆導通型IGBT(RC-IGBT)である。
【0010】
半導体装置1は、半導体部10と、第1電極20と、第2電極30と、を備える。半導体部10は、例えば、シリコンである。第1電極20は、例えば、エミッタ電極である。第1電極20は、半導体部10の第1面10A上に設けられる。第1電極20は、例えば、アルミニウム(Al)を含む金属層である。第2電極30は、例えば、コレクタ電極である。第2電極30は、半導体部10の第2面10B上に設けられる。第2面10Bは、例えば、半導体部10の裏面であり、第1面10Aの反対側に位置する。第2電極30は、例えば、チタニウム(Ti)もしくはアルミニウム(Al)を含む金属層である。
【0011】
半導体装置1は、第1制御電極40と、第2制御電極50と、第3制御電極60と、をさらに備える。第1制御電極40、第2制御電極50および第3制御電極60は、半導体部10と第1電極20との間に設けられる。第1制御電極40、第2制御電極50および第3制御電極60は、例えば、導電性のポリシリコンである。
【0012】
第1制御電極40は、半導体部10の第1面10A側に設けられたトレンチGT1の内部に配置される。第1制御電極40は、第1絶縁膜43により半導体部10から電気的に絶縁される。第1絶縁膜43は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0013】
第2制御電極50は、半導体部10の第1面10A側に設けられたトレンチGT2の内部に配置される。第2制御電極50は、第2絶縁膜53により半導体部10から電気的に絶縁される。第2絶縁膜53は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0014】
第3制御電極60は、半導体部10の第1面10A側に設けられたトレンチGT3の内部に配置される。第3制御電極60は、第3絶縁膜63により半導体部10から電気的に絶縁される。第3絶縁膜63は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0015】
半導体部10は、第1導電形(以下、n形)の第1半導体層11と、第2導電形(以下、p形)の第2半導体層13と、p形の第3半導体層14と、n形の第4半導体層15と、p形の第5半導体層21と、n形の第6半導体層23と、を含む。
【0016】
第1半導体層11は、例えば、n形ベース層である。第1半導体層11は、例えば、低濃度(1×1013~1×1015cm-3)のn形不純物を含む。
【0017】
第2半導体層13は、例えば、p形ベース層である。第2半導体層13は、第1半導体層11と第1電極20との間に選択的に設けられる。第2半導体層13は、例えば、1×1017~1×1018cm-3の濃度範囲のp形不純物を含む。第2半導体層13は、第1絶縁膜43を介して第1制御電極40に向き合う部分を含む。第2半導体層13のp形不純物濃度は、1×1017~5×1017cm-3の範囲にあることがより望ましい。
【0018】
第3半導体層14は、例えば、p形アノード層である。第3半導体層14は、第1半導体層11と第1電極20との間に選択的に設けられる。第3半導体層14は、第2半導体層13のp形不純物よりも高濃度のp形不純物を含む。第3半導体層14は、例えば、3×1017~5×1018cm-3の濃度範囲のp形不純物を含む。第3半導体層14のp形不純物濃度は、5×1017~1×1018cm-3の範囲にあることがより望ましい。第3半導体層13のp形不純物濃度は、第2半導体層13のp型不純物濃度の2倍以上、5倍以内であることが、第1半導体層11への正孔注入を制御する点で望ましい。第3半導体層14は、第2絶縁膜53を介して第2制御電極50に向き合う部分を含む。
【0019】
第4半導体層15は、例えば、n形エミッタ層である。第4半導体層15は、第2半導体層13と第1電極20との間に選択的に設けられる。第4半導体層15は、第1絶縁膜43に接する位置に配置される。第4半導体層15は、第1半導体層11のn形不純物よりも高濃度のn形不純物を含む。第1電極20は、例えば、第4半導体層15に接し、且つ電気的に接続される。
【0020】
第5半導体層21は、例えば、p形コレクタ層である。第5半導体層21は、第1半導体層11と第2電極30との間に選択的に設けられる。第5半導体層21は、例えば、第2半導体層13のp形不純物と同じ濃度レベルのp形不純物を含む。第5半導体層21は、例えば、1×1017~5×1017cm-3の濃度範囲のp形不純物を含む。
【0021】
第6半導体層23は、例えば、n形カソード層である。第6半導体層23は、第1半導体層11と第2電極30との間に選択的に設けられる。第6半導体層23は、第1半導体層11のn形不純物よりも高濃度のn形不純物を含む。
【0022】
第5半導体層21および第6半導体層23は、第2電極30上に設けられ、第2電極30に沿って交互に配置される。第2電極30は、第5半導体層21および第6半導体層23に電気的に接続される。また、第2電極30は、第6半導体層23を介して第1半導体層11に電気的に接続される。
【0023】
半導体部10は、第7半導体層17と、第8半導体層25と、第9半導体層27と、第10半導体層34と、第11半導体層37と、をさらに含む。
【0024】
第7半導体層17は、例えば、p形エミッタ層である。第7半導体層17は、第2半導体層13と第1電極20との間に選択的に設けられる。第7半導体層17は、第2半導体層13のp形不純物よりも高濃度のp形不純物を含む。また、第7半導体層17は、第3半導体層14のp形不純物よりも高濃度のp形不純物を含む。
【0025】
第7半導体層17は、第4半導体層15とともに第1電極20に沿って配置される。第1電極20は、例えば、第7半導体層17に接し、且つ電気的に接続される。第1電極20は、第7半導体層17を介して第2半導体層13に電気的に接続される。
【0026】
第8半導体層25は、例えば、n形バッファ層である。第8半導体層25は、第1半導体層11と第5半導体層21との間に設けられる。第8半導体層25は、第1半導体層11のn形不純物よりも高濃度のn形不純物を含む。
【0027】
第9半導体層27は、例えば、p形コンタクト層である。第9半導体層27は、第3半導体層14と第1電極20との間に選択的に設けられる。第9半導体層27は、第3半導体層14のp形不純物よりも高濃度のp形不純物を含む。第1電極20は、例えば、第9半導体層27に接し、且つ電気的に接続される。第1電極20は、第9半導体層27を介して第3半導体層14に電気的に接続される。
【0028】
第10半導体層34は、例えば、p形アノード層である。第10半導体層34は、第1半導体層11と第1電極20との間に選択的に設けられる。第10半導体層34は、隣り合う2つの第3制御電極60の間に位置し、第3制御電極60のそれぞれに第3絶縁膜63を介して向き合う部分を含む。第10半導体層34は、第2半導体層13のp形不純物よりも高濃度のp形不純物を含む。第10半導体層34は、例えば、第3半導体層14のp形不純物と同じ濃度レベルのp形不純物を含む。
【0029】
第11半導体層37は、例えば、p形コンタクト層である。第11半導体層37は、第10半導体層34と第1電極20との間に選択的に設けられる。第11半導体層37は、第10半導体層34のp形不純物よりも高濃度のp形不純物を含む。第1電極20は、例えば、第11半導体層37に接し、且つ電気的に接続される。第1電極20は、第11半導体層37を介して第10半導体層34に電気的に接続される。
【0030】
第1制御電極40は、第4絶縁膜45により第1電極20から電気的に絶縁される。第4絶縁膜45は、例えば、シリコン酸化膜である。第1制御電極40は、例えば、第1制御端子MTに電気的に接続される。
【0031】
第2制御電極50は、第5絶縁膜55により第1電極20から電気的に絶縁される。第5絶縁膜55は、例えば、シリコン酸化膜である。第2制御電極50は、例えば、第1制御端子MTに電気的に接続される。第2制御電極50には、第1制御電極40と同じ制御電圧が印加される。
【0032】
第3制御電極60は、例えば、第1電極20に電気的に接続される。第1電極20と第3制御電極60との間には、例えば、第6絶縁膜65が設けられる。第6絶縁膜65は、例えば、シリコン酸化膜である。第1電極20は、第6絶縁膜65を貫いて第3制御電極60に達するコンタクト部(図6参照)を介して、第3制御電極60に電気的に接続される。第3制御電極60は、第1制御電極40および第2制御電極50とは電気的に分離(絶縁)されており、独立にバイアスされる。実施形態は、この例に限定されず、例えば、第6絶縁膜65を配置しないで、第1電極20が第3制御電極60に直接つながるように構成しても良い。
【0033】
なお、第1制御電極40は、複数設けられ、第2制御電極50および第3制御電極60は、隣合う第1制御電極40の間に配置される。第2制御電極50および第3制御電極60は、IGBTモードおよびダイオードモードにおける導通損失およびスイッチング損失を低減するために適宜配置される。このため、隣合う第3制御電極60の間に第2制御電極50が介在しない配置が常に生じる訳でもない。すなわち、第10半導体層34および第11半導体層37が設けられない場合もある。
【0034】
図2(a)および(b)は、実施形態に係る半導体装置1を用いた電力変換回路100を示す回路図である。図2(a)および(b)は、4つの半導体装置1(以下、半導体装置RC1~RC4)を含む単相インバータ回路を表す回路図である。
【0035】
図2(a)および(b)に示すように、半導体装置RC1およびRC3は、高電位側のアームに並列配置され、半導体装置RC2およびRC4は、低電位側のアームに並列配置される。半導体装置RC1~RC4は、負荷Zに所定の周波数のAC電流を流すように、スイッチング制御される。負荷Zは、例えば、インダクタである。
【0036】
図2(a)および(b)は、負荷Zに流れる電流Iの波形制御の過程を示している。例えば、負荷Zに流れる電流Iの波形を正弦波に近づけるように、図2(a)および(b)に示す制御が交互に実施される。
【0037】
図2(a)示す過程では、半導体装置RC1~RC4は、IGBTモードで動作し、半導体装置RC1およびRC4はオン状態、半導体装置RC2およびRC3はオフ状態にある。負荷Zには、電源Vから電流Iが供給される。この時、電流Iは、半導体装置RC1およびRC4を介した経路を流れる。
【0038】
図2(b)に示す過程では、半導体装置RC4がターンオフされ、半導体装置RC1は、オン状態を維持する。半導体装置RC2はオフ状態を維持している。これにより、電源Vからの電流Iの供給は、停止されるが、負荷Zに保持された電気エネルギーにより、電流Iは、徐々に減少しながら流れ続ける。この時、電流Iは、半導体装置RC3およびRC1を介した経路を流れる。半導体装置RC3における、第1半導体層11と第2半導体層13との間のpn接合(図1参照)は、負荷Zに生じる起電力により順方向にバイアスされる。すなわち、半導体装置RC3は、ダイオードモードで動作し、電流Iの経路を構成する。
【0039】
続いて、半導体装置RC4は、再びターンオンされる。これにより、図2(a)に示す過程に戻り、半導体装置RC1およびRC4を介した経路により、電源Vから負荷Zに電流Iが供給される。半導体装置RC2はオフ状態に維持される。半導体装置RC3は、ダイオードモードからIGBTモードに移行し、オフ状態となる。
【0040】
この後、半導体装置RC4は、再びターンオフされ、図2(b)に示す過程に戻る。このように、半導体装置RC4のオンオフにより、図2(a)および(b)に示す過程が交互に繰り返され、電流ILの波形が制御される。
【0041】
なお、図2(a)および(b)に示す電流Iとは逆方向に流れる負荷電流を制御する場合には、半導体装置RC1はオフ状態にされ、半導体装置RC2をターンオンさせた状態で、半導体装置RC3のオンオフを繰り返す。これに対応して、半導体装置RC4は、IGBTモードおよびダイオードモードの動作を交互に繰り返す。
【0042】
図3は、電力変換回路100の制御方法を示すタイミングチャートである。図3に示す制御電圧Vgeは、半導体装置RC1~RC4のそれぞれの第1制御電極40および第2制御電極50に第1制御端子MTを介して印加される。
【0043】
図3中に示す制御電圧Vge1およびVge2は、図2(a)および(b)に示す制御過程において、半導体装置RC3およびRC4にそれぞれ印加される。制御電圧Vge1は、半導体装置RC3に印加され、制御電圧Vge2は、半導体装置RC4に印加される。
【0044】
図3に示すように、半導体装置RC4に印加される制御電圧Vge2は、時間tまで、例えば、プラス15Vに保持され、時間tにおいて、例えば、マイナス15Vに切り替えられる。その後、制御電圧Vge2は、時間tまでマイナス15Vに保持され、時間tにおいて、例えば、プラス15Vに切り替えられる。
【0045】
第1制御電極40および第2制御電極50の閾値電圧は、例えば、プラス15V以下である。したがって、半導体装置RC4は、時間tにおいてターンオフされ、時間tにおいて、ターンオンされる。
【0046】
一方、半導体装置RC3に印加される制御電圧Vge1は、時間tまで、例えば、マイナス15Vであり、時間tにおいて、例えば、プラス15Vに切り替えられる。続いて、時間tの前の時間tにおいて、制御電圧Vge1は、マイナス15Vに戻される。
【0047】
半導体装置RC3は、半導体装置RC4のオンオフに対応して、IGBTモードの動作と、ダイオードモードの動作を繰り返す(図2(a)および(b)参照)。すなわち、半導体装置RC3は、時間tと時間tとの間において、ダイオードモードで動作する。
【0048】
図4(a)および(b)は、実施形態に係る半導体装置1の動作を示す模式平面図である。図4(a)および(b)は、図2(b)に示す制御過程における半導体装置RC3の動作に対応する。すなわち、半導体装置1のダイオードモードにおけるキャリアの動きを示している。
【0049】
半導体装置1のダイオードモードでは、第1半導体層11と第2半導体層13との間、第1半導体層11と第3半導体層14との間、および、第1半導体層11と第10半導体層34との間のpn接合が順バイアスされ、第2半導体層13、第3半導体層14および第10半導体層34から第1半導体層11へ正孔が注入される。これに対応して、第6半導体層23から第1半導体層11へ電子が注入される。
【0050】
半導体装置1では、第3半導体層14および第10半導体層34は、第2半導体層13のp形不純物よりも高濃度のp形不純物を含む。このため、第3半導体層14および第10半導体層34からより多くの正孔が第1半導体層11に注入される。したがって、第3半導体層14および第10半導体層34のp形不純物濃度を第2半導体層13のp形不純物濃度と同じ濃度レベルにした場合に比べて、第1半導体層11における正孔および電子の密度が高くなり、導通損失を低減することができる。
【0051】
さらに、実施形態に係る制御方法では、マイナス15Vの制御電圧Vge1を第1制御電極40および第2制御電極50に印加する(図3参照)。
図4(a)に示すように、第1半導体層11と第1絶縁膜43との界面に正孔の蓄積層が形成される。また、第1半導体層11と第2絶縁膜53との界面にも正孔が蓄積される。このため、第2半導体層13および第3半導体層14から第1半導体層11への正孔の注入が促進され、第1半導体層11における正孔および電子の密度をさらに高くすることができる。すなわち、半導体装置1のダイオードモードにおける導通損失をより低減することが可能となる。
【0052】
さらに、半導体装置RC4をターンオンする直前において、プラス15Vの制御電圧Vge1を第1制御電極40および第2制御電極50に印加する(図3参照)。これにより、第2半導体層13と第1絶縁膜43との界面にn形反転層(図示しない)が誘起される。
【0053】
図4(b)に示すように、第1制御電極40の近傍において、n形反転層および第4半導体層15を介した、第1半導体層11から第1電極20への電子の排出経路が形成される。これにより、第1半導体層11における正孔および電子の密度を低下させることができる。さらに、第2制御電極50の近傍において、第1半導体層11と第2絶縁膜53との界面に電子の蓄積層が形成される。このため、第2制御電極50と第3制御電極60との間の正孔の注入経路が狭められ、第3半導体層14から第1半導体層11への正孔注入が抑制される。
【0054】
このように、半導体装置1では、第1半導体層11における正孔および電子の密度を上昇させることにより、導通損失を低減できる。さらに、第1制御電極40および第2制御電極50を適宜制御することにより、第1半導体層11の正孔および電子の密度を低下させ、ダイオードモードにおけるスイッチング損失を低減することができる。
【0055】
電力変換回路100では、半導体装置RC4をターンオンさせる直前に、半導体装置RC3の第1半導体層11における正孔および電子の密度を低減することができる(図3参照)。これにより、半導体装置RC4をターンオンさせた後、半導体装置RC3の第1半導体層11を空乏化させる時間を短縮することができる。
【0056】
また、半導体装置RC3の第1半導体層11における正孔および電子の密度を過度に低減すると、順方向抵抗が大きくなり、導通損失が増える。また、半導体装置RC3に過度の順方向電圧が印加され、素子の破壊に至る場合もある。このため、第1半導体層11の正孔および電子の密度は、例えば、プラス15Vの制御電圧Vge1を印加する時間te(図3参照)により適宜制御される。
【0057】
また、時間tにおいて、制御電圧Vge1をマイナス電圧に戻してから、半導体装置RC4をターンオンさせるまでの時間td(図3参照)は、例えば、半導体装置RC3と半導体装置RC4とが同時にオン状態となることを回避するために設定される。例えば、第1半導体層11の正孔と電子の密度を時間t~tの間(図3参照)に低減しても、時間tdを長くすると元に戻る可能性がある。したがって、時間tdは短いことが好ましい。時間tdは、例えば、時間teよりも短く設定される。
【0058】
図5は、実施形態の第1変形例に係る半導体装置2を示す模式断面図である。半導体装置2は、例えば、RC-IGBTであり、第1制御電極40と、第2制御電極50と、第3制御電極60と、を含む。
【0059】
図5に示すように、半導体装置2では、第1制御電極40は、第1制御端子MTに電気的に接続され、第2制御電極50は、第2制御端子STに電気的に接続される。第3制御電極60は、第1電極20に電気的に接続される。
【0060】
半導体装置2では、第2制御電極50の電位を、第1制御電極40とは独立に制御することができる。これにより、第3半導体層14から第1半導体層11への正孔注入を、独立して制御することが可能となり、第1半導体層11の正孔および電子の密度の制御性を向上させることができる。
【0061】
図6は、実施形態の第1変形例に係る半導体装置2を示す模式平面図である。図6は、第1電極20、第1制御端子MTおよび第2制御端子STの配置を示す模式図である。
【0062】
第1制御端子MTおよび第2制御端子STは、例えば、ゲートパッドである。第1制御端子MTおよび第2制御端子STは、例えば、第7絶縁膜47により半導体部10から電気的に絶縁される。第7絶縁膜47は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0063】
図6に示すように、半導体装置2は、第1制御配線GW1および第2制御配線GW2をさらに備える。第1制御配線GW1は、第1制御端子MTにつながり、例えば、X方向に延在する。第2制御配線GW2は、第2制御端子STにつながり、例えば、X方向に延在する。第1制御配線GW1および第2制御配線GW2は、例えば、第7絶縁膜47により、半導体部10から電気的に絶縁される。
【0064】
第1制御端子MTおよび第1制御配線GW1は、第1電極20、第2制御端子STおよび第2制御配線GW2から離間して配置される。第2制御端子STおよび第2制御配線GW2は、第1電極20から離間して配置される。第1電極20は、例えば、第1制御端子MTと第2制御端子STとの間、第1制御配線GW1と第2制御配線GW2との間に配置される。
【0065】
図6中に破線で示すように、第1制御電極40、第2制御電極50および第3制御電極60は、例えば、第1電極20の下方において、Y方向に延在する。第1制御電極40は、第1制御端子MTもしくは第1制御配線GW1と交差するように設けられる。第2制御電極50は、第2制御端子STもしくは第2制御配線GW2と交差するように設けられる。
【0066】
第1制御電極40は、例えば、第1コンタクト部GC1を介して、第1制御端子MTもしくは第1制御配線GW1に電気的に接続される。第1コンタクト部GC1は、第1制御電極40が第1制御端子MTもしくは第1制御配線GW1と交差する部分に設けられる。第1コンタクト部GC1は、第1制御端子MTもしくは第1制御配線GW1から絶縁膜47を貫いて延伸し、第1制御電極40に接続される。第1コンタクト部GC1は、例えば、第7絶縁膜47に設けられたコンタクトホール中に延在する第1制御端子MTもしくは第1制御配線GW1の一部である。
【0067】
第2制御電極50は、例えば、第2コンタクト部GC2を介して、第2制御端子STもしくは第2制御配線GW2に電気的に接続される。第2コンタクト部GC2は、第2制御電極50が第2制御端子STもしくは第2制御配線GW2と交差する部分に設けられる。第2コンタクト部GC2は、第2制御端子STもしくは第2制御配線GW2から絶縁膜47を貫いて延伸し、第2制御電極50に接続される。第2コンタクト部GC2は、例えば、第7絶縁膜47に設けられたコンタクトホール中に延在する第2制御端子STもしくは第2制御配線GW2の一部である。
【0068】
第3制御電極60は、例えば、第3コンタクト部GC3を介して、第1電極20に電気的に接続される。第3コンタクト部GC3は、第1電極20から第6絶縁膜65(図1参照)を貫いて延伸し、第3制御電極60に接続される。第3コンタクト部GC3は、例えば、第6絶縁膜65に設けられたコンタクトホール中に延在する第1電極20の一部である。
【0069】
図7は、実施形態の第2変形例に係る半導体装置3を示す模式断面図である。図7に示すように、半導体装置3における第4半導体層15は、第2半導体層13と第1電極20との間において、第1絶縁膜43(図1参照)に接する位置に配置されると共に、第3半導体層14と第1電極20との間において、第2絶縁膜53に接する位置にも配置される。すなわち、第2制御電極50は、第1制御電極40と同じゲート構造を有する。
【0070】
半導体装置3における第1制御電極40は、第1制御端子MTに電気的に接続され、第2制御電極50は、第2制御端子STに電気的に接続される。すなわち、第2制御電極50の電位は、第1制御電極40の電位とは独立に制御できる。したがって、第3半導体層14におけるp形不純物濃度を、第2半導体層13のp形不純物濃度よりも高くしたとしても、第2制御電極50に第1制御電極40よりも高い制御電圧を印加することにより、第3半導体層14と第2絶縁膜53との界面にn形反転層を誘起することが可能となる。
【0071】
すなわち、第1制御電極40における第1絶縁膜43と第2半導体層13との界面にn形反転層を誘起すると共に、第3半導体層13と第2絶縁膜53との界面にn形反転層を誘起することにより、n形反転層および第4半導体層15を介して、第1半導体層11から第1電極20へ効率的に電子を排出し、正孔および電子の密度を低減することができる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1、2、3…半導体装置、 10…半導体部、 10A…第1面、 10B…第2面、 11…第1半導体層、 13…第2半導体層、 14…第3半導体層、 15…第4半導体層、 17…第7半導体層、 20…第1電極、 21…第5半導体層、 23…第6半導体層、 25…第8半導体層、 27…第9半導体層、 30…第2電極、 34…第10半導体層、 37…第11半導体層、 40…第1制御電極、 43…第1絶縁膜、 45…第4絶縁膜、 47…第7絶縁膜、 50…第2制御電極、 53…第2絶縁膜、 55…第5絶縁膜、 60…第3制御電極、 63…第3絶縁膜、 65…第6絶縁膜、 100…電力変換回路、 GC1…第1コンタクト部、 GC2…第2コンタクト部、 GC3…第3コンタクト部、 GT1…第1トレンチ、 GT2…第2トレンチ、 GT3…第3トレンチ、 GW1…第1制御配線、 GW2…第2制御配線、 MT…第1制御端子、 ST…第2制御端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7