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特許7321057ポリマーセメント組成物及びポリマーセメントモルタル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】ポリマーセメント組成物及びポリマーセメントモルタル
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20230728BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20230728BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20230728BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20230728BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20230728BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20230728BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20230728BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/26 D
C04B24/02
C04B20/00 B
C04B16/06
C04B22/06 Z
E04G21/02 103B
E21D11/10 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019196687
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070594
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 昌範
(72)【発明者】
【氏名】高山 浩平
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-084092(JP,A)
【文献】特開2008-037704(JP,A)
【文献】特開2011-121795(JP,A)
【文献】特開2011-207643(JP,A)
【文献】特開2013-112583(JP,A)
【文献】特開2007-269608(JP,A)
【文献】特開2013-082597(JP,A)
【文献】特開2019-178036(JP,A)
【文献】特表2015-531737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
E04G 21/02-21/10
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合材と、再乳化型粉末樹脂と、液体収縮低減剤と、細骨材とを含み、
前記細骨材の粒度が、前記細骨材全質量に対し、粒径が5mm以上である粒子の質量割合が1質量%未満であり、粒径が1.2mm以上5mm未満である粒子の質量割合が51質量%以上85質量%以下であり、
前記細骨材の含有量が、前記結合材100質量部に対し、120質量部以上240質量部以下であり、
前記液体収縮低減剤の含有量が、前記結合材100質量部に対し0.1質量部以上7.5質量部以下であり、
表面が、液体収縮低減剤で被覆された、乾式吹付材料用ポリマーセメント組成物。
【請求項2】
さらに、繊維類を含む請求項1に記載のポリマーセメント組成物。
【請求項3】
前記結合材が膨張材を含む、請求項1又は2に記載のポリマーセメント組成物。
【請求項4】
結合材と、再乳化型粉末樹脂と、細骨材とを含む、液体収縮低減剤以外の成分を混合したプレミックス材全体に、液体収縮低減剤を噴霧することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマーセメント組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のポリマーセメント組成物と、水とを含み、
前記水の含有量が、前記ポリマーセメント組成物100質量部に対し、10質量部以上20質量部以下である、ポリマーセメントモルタル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーセメント組成物及びポリマーセメントモルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の劣化に伴い、それらの補修や改修工事が様々な方法によってなされている。中でも乾式吹付による補修は、長距離圧送性に優れ、日当たり施工量が大きく、トンネルや橋梁関係等の断面修復の大きい箇所に幅広く施工され、利用されている。また近年では作業者の高齢化も含め、作業環境に考慮した環境負荷低減の施工が要望されている。
【0003】
乾式吹付工法は湿式吹付工法に比べて単位時間当たりの施工量が多いことが大きな特長である。一方で、そのための乾式吹付材料は吹付施工時の粉塵発生量が多く、作業環境改善のための粉塵の低減が求められている。
【0004】
従来、乾式吹付けに関して、特許文献1に記載されているモルタルの吹付工法や、特許文献2に記載されている乾式吹付け用モルタル材料などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-096824号公報
【文献】特開2011-207643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のモルタルの吹付工法では、吹付時における粉塵の発生が懸念され、圧縮強度は材齢28日で30N/mm未満であるため、強度発現性に課題があった。また、特許文献2に記載の乾式吹付用モルタル材料では、セメントを非水系の液体収縮低減剤により予め被覆した粉体物を用いるとともに、配合する細骨材の粒子径や配合割合を特定範囲とし、ポリマー混和液の配合割合を特定範囲としているため、現場でポリマー混和液を使用しなければならず、ポリマー混和液の廃液処理や廃缶処理が必要となり、環境に配慮することが必要となるといった課題があった。
【0007】
したがって、本発明は、粉塵度合いを抑制した吹付性能が得られ、厚吹性、寸法変化率及び圧縮強度にも優れるポリマーセメント組成物及びポリマーセメントモルタルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、粒度分布を特定した細骨材と収縮低減剤の配合量を調整することで、上記課題を解決したポリマーセメント組成物及びポリマーセメントモルタルが得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[]で示される。
[1]結合材と、再乳化型粉末樹脂と、液体収縮低減剤と、細骨材とを含み、
前記細骨材の粒度が、前記細骨材全質量に対し、粒径が5mm以上である粒子の質量割合が1質量%未満であり、粒径が1.2mm以上5mm未満である粒子の質量割合が51質量%以上85質量%以下であり、
前記細骨材の含有量が、前記結合材100質量部に対し、120質量部以上240質量部以下であり、
前記液体収縮低減剤の含有量が、前記結合材100質量部に対し0.1質量部以上7.5質量部以下であり、
表面が、液体収縮低減剤で被覆された、乾式吹付材料用ポリマーセメント組成物。
[2]さらに、繊維類を含む、[1]に記載のポリマーセメント組成物。
[3]結合材が膨張材を含む、[1]又は[2]に記載のポリマーセメント組成物。
]結合材と、再乳化型粉末樹脂と、細骨材とを含む、液体収縮低減剤以外の成分を混合したプレミックス材全体に、液体収縮低減剤を噴霧することを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載のポリマーセメント組成物の製造方法。
][1]~[]のいずれかに記載のポリマーセメント組成物と、水とを含み、水の含有量が、ポリマーセメント組成物100質量部に対し、10質量部以上20質量部以下である、ポリマーセメントモルタル。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粉塵度合いを抑制した吹付性能が得られ、厚吹性、寸法変化率及び圧縮強度にも優れるポリマーセメント組成物及びポリマーセメントモルタルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本実施形態のポリマーセメント組成物は、結合材と、再乳化型粉末樹脂と、収縮低減剤と、細骨材とを含む。
【0013】
結合材を構成する材料としては、少なくともセメントを含み、更に膨張材又はフライアッシュ、シリカフューム等のポゾラン物質を含んでもよい。
【0014】
セメントは種々のものを使用することができ、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ又はシリカフュームを混合した各種混合セメント、石灰石粉末等の高炉徐冷スラグ微粉末を混合したフィラーセメント、各種の産業廃棄物を主原料として製造される環境調和型セメント(エコセメント)等が挙げられる。セメントは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。セメントは、吹付時のモルタルのシマリが更によくなり、初期強度発現性がより向上するという観点から、普通ポルトランドセメント又は早強ポルトランドセメントが好ましい。
【0015】
セメントの含有割合は、結合材全質量に対して65質量%以上100質量%以下であることが好ましく、75質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上98質量%以下であることが更に好ましい。
【0016】
膨張材は、コンクリート用膨張材として一般に使用されているJIS適合の膨張材(JIS A 6202:2008)であれば、何れの膨張材でもかまわない。膨張材としては、例えば、遊離生石灰を主成分とする膨張材(生石灰系膨張材)、アーウィンを主成分とする膨張材(エトリンガイト系膨張材)、遊離生石灰とエトリンガイト生成物質の複合系膨張材が挙げられる。膨張材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。膨張材はブレーン比表面積が2000~6000cm/gのものを使用することが好ましい。
【0017】
膨張材の含有割合は、結合材全質量に対して0質量%以上12質量%以下であることが好ましく、1質量%以上11質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。膨張材の含有量が上記範囲内であれば、厚吹性、圧縮強度、寸法変化率等がより一層優れたものとなる。
【0018】
ポゾラン物質としては、JIS A 6201:2015に記載されている各種フライアッシュ、JIS A 6207:2016に記載されているシリカフューム、スラグ粉末、非晶質アルミノシリケート等が挙げられる。ポゾラン物質の含有量は、適宜調整することができ、結合材全質量に対して0質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上13質量%以下であることが更に好ましい。
【0019】
再乳化型粉末樹脂は、成分的にはポリマーセメントに用いることができるポリマーであるなら特に限定されない。再乳化型粉末樹脂は、例えばJIS A 6203:2015に規定されている再乳化型粉末樹脂が挙げられ、具体的には、アクリル系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、スチレンブタジエン系共重合体、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニル系共重合体、エチレン/酢酸ビニル系共重合体、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニル/アクリル酸エステル系共重合体等が挙げられる。再乳化型粉末樹脂は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併せて用いてもよい。再乳化型粉末樹脂は、中でも、耐水性が一層優れるという観点から、アクリル系共重合体が好ましい。
【0020】
再乳化型粉末樹脂の含有量は、付着性が一層優れるという観点から、結合材100質量部に対して1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、2質量部以上12質量部以下であることがより好ましく、3質量部以上10質量部以下であることが更に好ましい。
【0021】
収縮低減剤は、例えば、ポリオキシアルキレン化合物、ポリエーテル系化合物あるいはアルキレンオキシド化合物等を用いることができる。収縮低減剤としては、具体的には、ポリオキシエチレン・アルキルアリルエーテル、ポリプロピレングリコール、低級アルコールアルキレンオキシド付加物、グリコールエーテル・アミノアルコール誘導体、ポリエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、エチレンオキシドメタノール付加物、エチレンオキシド・プロピレンオキシド重合体、フェニル・エチレンオキシド重合体、シクロアルキレン・エチレンオキシド重合体、ジメチルアミン・エチレンオキシド重合体等が挙げられる。収縮低減剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
収縮低減剤は、液体のもの及び粉体のもののいずれでも用いることができ、併用することもできる。収縮低減剤は、粉塵を更に低減できるという観点から、液体収縮低減剤が好ましい。
【0022】
収縮低減剤の含有量は、結合材100質量部に対し0.1質量部以上7.5質量部以下である。収縮低減剤の含有量が上記範囲内であれば、粉塵発生を抑制することができる。収縮低減剤は、粉塵発生をより一層低減できるという観点から、結合材100質量部に対し、0.5質量部以上7.2質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以上7質量部以下であることがより好ましい。
【0023】
細骨材は特に限定されるものではなく、例えば、川砂、珪砂、砕砂、寒水石、石灰石砂、スラグ骨材等が挙げられる。細骨材は、これらの中から、吹付時の強度発現性に一層優れるという観点から珪砂を用いることが好ましい。細骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0024】
細骨材の粒度は、細骨材全質量に対し、粒径が5mm以上である粒子の質量割合が1質量%未満であり、粒径が1.2mm以上5mm未満である粒子の質量割合が51質量%以上85質量%以下である。粒径が5mm以上である粒子の質量割合が1質量%以上では、粉塵度合の抑制やリバウンド量の抑制がし難くなる。粒径が1.2mm以上5mm未満である粒子の質量割合が51質量%未満では粉塵度合を抑制し難く、85質量%を超えると施工性や厚吹性に乏しくなる。
粉塵度合いやリバウンド量が抑制しやすく、施工性や厚吹性により一層優れるという観点から、細骨材の粒度は、細骨材全質量に対し、粒径が5mm以上である粒子の質量割合が0.5質量部以下であることが好ましく、実質的に含まれなくてもよい。また同様の観点から、粒径が1.2mm以上5mm未満である粒子の質量割合が51質量部以上80質量部以下であることが好ましく、53質量部以上75質量部以下であることがより好ましい。
【0025】
細骨材の含有量は、結合材100質量部に対し、90質量部以上240質量部以下である。細骨材の含有量が上記範囲外であると、粉塵度合いやリバウンド量が劣り、圧縮強度が低下する恐れがある。細骨材の含有量は、施工性や厚吹性、強度発現性に一層優れるという観点から、結合材100質量部に対し、95質量部以上220質量部以下であることが好ましく、120質量部以上180質量部以下であることがより好ましい。
【0026】
本発明のポリマーセメント組成物は、さらに、繊維類を含有することができ、厚吹時のひび割れを抑制することができる。
繊維類としては、例えば、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維等の有機繊維;鋼繊維;ガラス繊維等の無機繊維が挙げられる。繊維類は、分散性がより良好であるという観点から、有機繊維であることが好ましく、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維がより好ましい。繊維類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0027】
繊維類の長さは、2~15mmであることが好ましく、3~14mmであることがより好ましく、4~13mmであることが最も好ましい。繊維類の長さが上記範囲内であれば、流動性を確保しつつ、十分な厚吹性が得られやすい。
【0028】
繊維類の含有量は、結合材100質量部に対し、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.15質量部以上4質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以上3質量部以下であることが更に好ましい。繊維類の含有量が上記範囲内であれば、流動性を確保しつつ、十分な厚吹性及び強度発現性が得られやすい。
【0029】
本発明のポリマーセメント組成物は、前記成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、モルタルやコンクリートに使用される各種混和材(混和剤)を添加することができる。混和材(剤)としては、例えば、芒硝、石膏、石粉、無機質フィラー、減水剤、増粘剤、消泡剤、発泡剤が挙げられる。混和材(剤)は一種を単独で使用してもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
減水剤を添加する場合は、単位水量を減じ早期の硬化を確保しやすいという観点から、結合材100質量部に対し、2質量部以下であるのが好ましく、1質量部以下がより好ましく、実質的に含まれていなくてもよい。
【0030】
ポリマーセメント組成物をプレミックス化させる方法は特に限定されるものではないが、例えば、比較的せん断作用が小さく、パドルや羽根等による掻き落としによる分散作用や拡散作用を主として混合するリボンミキサー、パドルミキサー等で混合することができる。混合は、全ての原材料を配合し計量して混合ミキサーへ投入後混練してもよく、収縮低減剤が液体の場合は、液体収縮低減剤以外の原材料を全て配合し計量して混合ミキサーへ投入後、液体噴霧器を用いて混合しながら液体収縮低減剤を噴霧し、プレミックス材全体に分散させてもよい。吹付時の粉塵発生をより一層低減することができるという観点から、液体収縮低減剤をプレミックス材全体に噴霧する方法が好ましい。
これにより、表面が液体収縮低減剤で被覆されたポリマーセメント組成物を得ることができる。
【0031】
本発明のポリマーセメント組成物は、水と混合してポリマーセメントモルタルとして調製することができ、その水の含有量は用途に応じて適宜調整すればよい。水の含有量は、ポリマーセメント組成物100質量部に対し、10質量部以上25質量部以下であることが好ましく、12質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、13質量部以上18質量部以下であることが更に好ましい。水の含有量が上記範囲内であれば、リバウンド量を抑制しやすく、十分な圧縮強度が得られやすい。
【0032】
本発明のポリマーセメント組成物は、乾式吹付工法に用いるための乾式吹付材料として用いることができる。乾式吹付工法のシステムとしては、例えば、エアコンプレッサを介してポリマーセメント組成物を空気圧送する吹付機及び水を圧送する液ポンプを備える。液ポンプから圧送された水は、ポリマーセメント組成物の空気圧送ホ-スの途中(吹付ノズルの手前約1~2mの位置)に設置したシャワ-リングより圧入混合し、ポリマーセメントモルタルが吹付ノズルより吐出され、断面修復箇所へ施工される。
【0033】
本発明のポリマーセメント組成物及びポリマーセメントモルタルは、粉塵度合いを抑制した吹付性能が得られ、厚吹き性、寸法変化率及び圧縮強度にも優れるものとなる。そのため、本発明のポリマーセメント組成物及びポリマーセメントモルタルは、コンクリート構造体、鋼・コンクリート複合構造体等の補修・補強材料として用いることもできる。
本発明のポリマーセメント組成物及びポリマーセメントモルタルの使用方法は適宜選択することができ、例えば、乾式吹付工法、凹部にコテで充填する方法、充填後にバイブレーター等で均した後にコテで仕上げる方法、補修箇所に吹付ける方法等が選択できる。
【実施例
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
実施例で用いる材料は以下のとおりである。
セメント:早強ポルトランドセメント
液体収縮低減剤:低級アルコールのアルキレンオキシド付加物
膨張材:石灰系膨張材
再乳化粉末樹脂:アクリル共重合体樹脂
細骨材:珪砂調整品
繊維:ビニロン性繊維(繊維長5mm)
【0036】
[実験例1]
<ポリマーセメント組成物の製造>
表1に示す配合割合で収縮低減剤以外の材料を配合してヘンシェルミキサーに投入し、混合しながら液体収縮低減剤を噴霧してポリマーセメント組成物を製造した。
【0037】
【表1】
【0038】
<乾式吹付>
乾式吹付は、以下のシステムで実施した。
エアコンプレッサを介して乾式モルタル吹付機アリバ237を用い、ポリマーセメント組成物を耐圧ホースで空気圧送した。水は、一軸偏心ネジポンプで圧送し、ポリマーセメント組成物の空気圧送ホ-スの途中(吹付ノズルの手前1.5mの位置)に設置したシャワ-リングから、ポリマーセメント組成物100質量部に対して14~16質量部で圧入混合して吹付材料(ポリマーセメントモルタル)とした。これを吹付ノズルの筒先より、実験用側壁及びコア箱に吹付を行った。吹付材料を圧送するホ-スは、内径1.5インチ、長さ45mの耐圧ホース用いた。
【0039】
<各種性能評価試験>
表1の各種吹付材料について乾式吹付を行い、吹付時の粉塵度合い、リバウンド量、厚吹性、圧縮強度を測定した。各評価試験方法を以下に示す。
(粉塵度合い)
コの字型の吹付ヤードにて側壁に吹付材料の吹付けを行い、目視にて粉塵度合いを確認した。粉塵度合いの指標として、粉塵が殆ど確認されない度合いを◎、少し粉塵が舞っている度合いを○、やや舞っているがノズルマンや吹付状況が確認できる度合いを△、ノズルマンが見にくく、粉塵が多い度合いを×とした。
(リバウンド量)
JSCE-F563-2005記載の地面に対して垂直に設置した型枠に、吹付材料を1分間垂直に吹付けた際のリバウンド量を測定した。
(厚吹性)
側壁に1度吹きで吹付材料の吹付けを行い、吹付厚を測定した。吹付厚の評価指標として、吹付厚20cm以上を◎、15cm以上20cm未満を○、10cm以上15cm未満を△、10cm未満を×とした。
(圧縮強度)
コア箱に吹き付けたモルタルを材齢7日まで20℃気中下で養生し、コア抜きドリルでφ10×20cmの供試体をコア抜きした。コア抜きした供試体を材齢28日まで20℃、RH60%の試験室で気中養生を行った。材齢28日目にJIS A 1108:2018に準拠して供試体の圧縮強度を測定した。
【0040】
試験結果を表2に示す。本発明品1~7を用いた各種実施例は、何れも粉塵度合い、リバウンド量ともに少なく、15cm以上の良好な吹付性能が確認された。また、圧縮強度についても何れも45N/mm以上の良好な圧縮強度発現性が確認された。
【0041】
【表2】
【0042】
[実験例2]
本発明品1、本発明品3、参考品6の吹付材料について、ゲージプラグを施した10×10×40cm鋼製型枠に、実施例1と同様に吹付を行い、長さ変化試験による寸法変化率を測定した。評価試験方法を以下に示す。
(長さ変化試験)
ゲージプラグを施した10×10×40cm鋼製型枠に吹き付けた供試体を用いて、NEXCO断面修復用吹付モルタル:試験法432に準拠し、寸法変化率を測定した。
【0043】
試験結果を表3に示す。実施例の供試体では、NEXCO構造物施工管理要領:吹付工法による断面修復の性能照査項目の基準である寸法変化率0.05%以下であり、良好な低収縮性が確認された。
【0044】
【表3】
【0045】
[実験例3]
本発明品1の吹付材料を用いて、長距離圧送性試験を実施した。評価試験方法を以下に示す。
【0046】
実験例1で行った吹付システムで、吹付装置からの材料供給耐圧ホース長を200mに延長し、側壁面へ吹付けを行い、吹付性能を評価した。評価項目として、吹付安定性、施工性、粉塵度合いを確認した。
(吹付安定性)
10分間吹付を行い、安定した吹付モルタルが圧送できているかを圧力計及び目視にて確認を行い、安定しているものに○、材料分離やポンプの脈動により安定性に欠ける場合には×とした。
(施工性)
吹付後のモルタルにダレや、ムラ(フレッシュ性状がばらつき、軟いモルタルや固いモルタルが吐出される)の発生を確認し、発生しない場合を○、発生した場合を×とした。
(粉塵度合い)
目視にて粉塵度合いを確認した。粉塵度合いの指標として、粉塵が殆ど確認されない度合いを◎、少し粉塵が舞っている度合いを○、やや舞っているがノズルマンや吹付状況が確認できる度合いを△、ノズルマンが見にくく、粉塵が多い度合いを×とした。
【0047】
実施例では、吹付安定性、施工性及び粉塵度合いともに良好であり、乾式吹付の特長ある長距離圧送性に優れていることが確認され、空気圧送中での材料分離や閉塞等もなかった。
【0048】
【表4】