(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】ローラレバーモジュール
(51)【国際特許分類】
B02C 15/04 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
B02C15/04
(21)【出願番号】P 2020520803
(86)(22)【出願日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2019051184
(87)【国際公開番号】W WO2020098973
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591031407
【氏名又は名称】ロエシェ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クロクフ アレクサンダー
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-016483(JP,A)
【文献】特開2006-266456(JP,A)
【文献】特開2015-110962(JP,A)
【文献】特表平09-504356(JP,A)
【文献】特表2000-502945(JP,A)
【文献】特開平02-021948(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00508877(GB,A)
【文献】特開2017-209637(JP,A)
【文献】特開2014-046268(JP,A)
【文献】特開昭61-004547(JP,A)
【文献】実開昭63-051649(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00 - 7/18
15/00 - 17/24
F16C 32/00 - 32/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動する粉砕テーブル(101)及びその上で転がる粉砕ローラ(10)を備えるローラミルの粉砕ローラ(10)用のローラレバーモジュール(1)であって、
前記粉砕テーブル
(101)の側の端部に
前記粉砕ローラ(10)
が装着
されるローラレバー(3)と、
前記ローラレバー(3)が装着され、前記粉砕テーブル(101)に対して垂直方向に前記ローラレバー(3)を直線移動させる案内兼支持ユニット(20)
と、を有
する ローラレバーモジュール(1)であって、
前記案内兼支持ユニット(20)が、
前記粉砕テーブル(101)に対して垂直に延びる
円筒状の中心体(22)
と、
前記中心体(22)をくるむように
前記中心体(22)の外周に設けられ、外側に前記ローラレバー(3)が装着される外スリーブ(24)
と、
前記外スリーブ(24)
と前記中心体(22)
との間に
設けられ、前記外スリーブ(24)を前記中心体(22)に沿って前記粉砕テーブル(101)に対して垂直方向に移動させる少なくとも1個のリニアガイドベアリング
と、
前記外スリーブ(24)
と前記中心体(22)
との間に
設けられ、前記外スリーブ(24)に装着された前記ローラレバー(3)から
前記中心体(22)へとトルクを伝達する
トルク伝達ユニットを設けたこと、
を特徴とするローラレバーモジュール。
【請求項2】
請求項1に
記載のローラレバーモジュール(1)であって、
前記少なくとも1個のリニアガイドベアリングは、
潤滑剤を少なくとも一時的に受け入れる圧力ポケット(48)を内面に備える円筒形のベアリングブッシング(42)を備え、前記潤滑剤を介して前記中心体(22)を回転支持する静流体圧ベアリング(26)として形成
されていること
を特徴とするローラレバーモジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に
記載のローラレバーモジュール(1)であって、
前記トルク伝達ユニットは、前記中心体(22)の上下方向の中央部に設けられ、
少なくとも第1
リニアガイドベアリングと第2リニアガイドベアリングを
有し、
前記第1リニアガイドベアリングを
前記中心体(22)の
前記トルク伝達ユニットの上部領域内
に配置し、前記第2リニアガイドベアリングを
前記中
心体(22)の
前記トルク伝達ユニットの下部領域内に配置したことを特徴とするローラレバーモジュール。
【請求項4】
請求項1~3の
いずれか1項に
記載のローラレバーモジュール(1)であって、
前記トルク伝達ユニット
は、
前記中心体(22)の外面に設けた第1歯と、前記外スリーブ(24)の内面に設けられて前記第1歯と係合する第2歯とを含む湾曲歯カプリング(28)として形成
されていること、
を特徴とするローラレバーモジュール。
【請求項5】
請求項
1に記載のローラレバーモジュール(1)であって、
前記案内兼支持ユニット(20)は、前記中心体(22)をくるむように前記中心体(22)の外周に固定される内スリーブ(25)を備え、
前記外スリーブ(24)は、前記内スリーブ(25)をくるむように前記内スリーブ(25)の外周に設けられ、外側に前記ローラレバー(3)が装着され、
前記少なくとも1個のリニアガイドベアリングは、前記外スリーブ(24)と前記内スリーブ(25)との間に設けられ、前記外スリーブ(24)を前記内スリーブ(25)に沿って前記粉砕テーブル(101)に対して垂直方向に移動させ、
前記トルク伝達ユニットは、前記外スリーブ(24)と前記内スリーブ(25)との間に設けられ、前記外スリーブ(24)に装着された前記ローラレバー(3)から前記内スリーブ(25)へとトルクを伝達すること、
を特徴とするローラレバーモジュール。
【請求項6】
請求項5に
記載のローラレバーモジュール(1)であって、
前記トルク伝達ユニットは、
前記内スリーブ(25)の外面に設けた第1歯と、前記外スリーブ(24)の内面に設けられて前記第1歯と係合する第2歯とを含む湾曲歯カプリング(28)として形成されていること、
を特徴とするローラレバーモジュール。
【請求項7】
請求項2
に記載のローラレバーモジュール(1)であって、
円筒形の前記ベアリングブッシング(42)が、
前記中心体(22)の外径に相当する内径
を有し、径方向
に沿
って延びる潤滑剤供給ダクト(44)
と、軸方向
に沿って延びる潤滑剤返戻ダクト(46)
と、を備え、
前記潤滑剤返戻ダクト(46)が前記ベアリングブッシング(42)の
軸方向の全長に亘り延びて
いること、
を特徴とするローラレバーモジュール。
【請求項8】
請求項5又は6に記載のローラレバーモジュール(1)であって、
前記少なくとも1個のリニアガイドベアリングは、潤滑剤を少なくとも一時的に受け入れる圧力ポケット(48)を内面に備える円筒形のベアリングブッシング(42)を備え、前記潤滑剤を介して前記内スリーブ(25)を回転支持する静流体圧ベアリング(26)として形成されており、
前記ベアリングブッシング(42)が、前記内スリーブ(25)の外径に相当する内径を有し、径方向に沿って延びる潤滑剤供給ダクト(44)と、軸方向に沿って延びる潤滑剤返戻ダクト(46)と、を備え、前記潤滑剤返戻ダクト(46)が前記ベアリングブッシング(42)の軸方向の全長に亘り延びていること、
を特徴とするローラレバーモジュール。
【請求項9】
請求項1~
4及び7
のいずれか1項に
記載のローラレバーモジュール(1)であって、
前記外スリーブ(24)と
前記中心体(22)
との間の空きスペース(27
)を潤滑剤で満たしたことを特徴とするローラレバーモジュール。
【請求項10】
請求項5、6又は8に記載のローラレバーモジュール(1)であって、
前記外スリーブ(24)と前記内スリーブ(25)との間の空きスペース(27)を潤滑剤で満たしたことを特徴とするローラレバーモジュール。
【請求項11】
請求項
9又は10に記載のローラレバーモジュール(1)であって、
前記空きスペース(27)からポンピングにより潤滑油を除去する潤滑剤抜き取り機構(36)を
有すること、
を特徴とするローラレバーモジュール。
【請求項12】
請求項1~
4及び7のいずれか1項に
記載のローラレバーモジュール(1)であって、
前記外スリーブ(24)を
前記中心体(22)に対し密封止するピストンシール(34)
を備えること、
を特徴とするローラレバーモジュール。
【請求項13】
請求項5、6又は8に記載のローラレバーモジュール(1)であって、
前記外スリーブ(24)を前記内スリーブ(25)に対し密封止するピストンシール(34)を備えること、
を特徴とするローラレバーモジュール。
【請求項14】
請求項1~
13の
いずれか1項に
記載のローラレバーモジュール(1)であって、
上部に前記案内兼支持ユニット(20)が設けられるスタンド(102)と前記ローラレバー(3)
との間を接続し、前記粉砕ローラ(10)により前記粉砕テーブル(101)に印加される力を変化させる流体圧シリンダ(5)
を備えること、
を特徴とするローラレバーモジュール。
【請求項15】
前記粉砕テーブル(101)及びその上で転がる
前記粉砕ローラ(10)を有するローラミルであり、
請求項1~
14のいずれか1項に
記載のローラレバーモジュール(1)を少なくとも1個有することを特徴とするローラミル。
【請求項16】
請求項15に
記載のローラミルであって、
請求項1~14のいずれか1項に記載のローラレバーモジュール(1)が上部に2個取付けられたコンクリートの共通のスタンド(102)
を備えるローラミル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動する粉砕テーブル及びその上で転がる粉砕ローラを有するローラミルの粉砕ローラ用のローラレバーモジュールに関する。本ローラレバーモジュールはローラレバーを有し、その端部のうち粉砕テーブル側のものに粉砕ローラを装着可能なものである。更に、案内軸を有する案内兼支持ユニットを設けたものである。そのローラレバーを、粉砕テーブルから離れた方を向く側で案内兼支持ユニットに結合させ、その案内兼支持ユニットを、案内軸に沿い軸方向にそのローラレバーを動かすリニアガイドとして形成したものである。
【背景技術】
【0002】
ローラミルはあらゆる種類の素材の粉砕に用いられている。回動する粉砕テーブルを設け、固定されている可回動な粉砕ローラをその上で転がすのが普通である。それらローラを駆動する必要はなく、多くは、粉砕テーブル上に所在する粉砕対象素材の働きでそれらローラが回動状態にセットされる。粉砕対象素材は粉砕テーブル上で理想的な粉砕床を形成しないので、それら粉砕ローラに関しては、粉砕テーブルからそれらまでの距離を変えうることが必要とされる。そのために様々な構成が考えられている。この場合に本質的なことは、その構成により、適切な運動自由度がそれら粉砕ローラに許容されることである。そうした構成がローラレバーモジュールとして記載されている。
【0003】
それら粉砕ローラ自体はそれぞれシャフトに連結され、そのシャフトがローラレバー内で支持される。そのローラレバー自体はローラレバーモジュールに連結される。この構成は重要であり、それにより上述の補償運動を実行することができる。粉砕プロセスでは振動も生じるので、それらを中途遮断すること、理想的にはローラレバーモジュールの働きでそうすることや、それらをダンピングすることも必要となる。
【0004】
ローラレバーモジュールの構成が例えば特許文献1にて明示されている。この文献ではローラレバーがフォーク状の装置に締結されており、ひいては粉砕ローラの回動軸に対し垂直な軸に沿ったローラレバーの枢動が許容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第WO2017/137056号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既知システムの短所は、比較的大きな構成になりがちなことである。けれども、粉砕テクノロジではミルが益々大型化し、複数個の粉砕ローラを有するものになる傾向がある。そのため、ローラレバーモジュールをできるだけコンパクトに構成し、できるだけ多くの粉砕ローラをスペース節約的な要領で粉砕テーブルの周りに配列したい、という希望が存している。
【0007】
本発明の目的は、従って、コンパクトな構成を有するローラレバーモジュールを提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の諸特徴を有するローラレバーモジュールにより、本発明に従い達成される。
【0009】
従属形式請求項、明細書及び図面並びにそれらの説明中には、本発明の上首尾実施形態が示されている。
【0010】
本発明に係るローラレバーモジュールの場合、提示の如くそれが更に発展され、案内兼支持ユニットが案内軸沿い方向に長く延びる中心体を有し、その中心体が外スリーブによりくるまれる態となる。
【0011】
外スリーブは、案内軸沿い方向に動かせるよう中心体上に配列され及び/又は中心体に装着される。それら外スリーブ・中心体間には少なくとも1個のリニアガイドベアリング(直線案内軸受)が設けられる。更に、ローラレバーから中心体へとトルクを伝達するユニットが外スリーブ・中心体間に配置される。
【0012】
本発明は、粉砕ローラひいてはローラレバーに作用する力を様々なユニットに分散させる、という着想に根差している。ローラレバーモジュールは、基本的に、ローラ力に起因する負荷、即ち粉砕テーブル上の粉砕対象素材を粉砕ローラが加圧する際の圧力に起因するそれと、ボウル回転に発する負荷、即ちとりわけボウルの回転により伝達され粉砕対象素材を介し粉砕ローラひいてはローラレバーに至るトルクに発するそれと、を吸収するのに適していなければならない。本発明では、関連する負荷を吸収するため及び伝達させるため、2個の別体な装置が設けられる。
【0013】
粉砕ローラ自体の圧力に起因する力及び負荷は、とりわけ、少なくとも1個のリニアガイドベアリングにより吸収及び伝達される。この力は、最終的には細長い中心体にて吸収され、その目的で設けられているブラケットを介し基礎中に逃がされる。ボウル回転に発する力、とりわけトルクは、上記トルク伝達ユニットを介し中心体へと伝達される。これら二通りの力伝達ユニットの配設により、案内兼支持ユニットをとりわけコンパクト且つ狭幅な要領で実施することができる。これは、少なくとも1個のリニアガイドベアリングとトルク伝達ユニットの双方を、中心体をくるむ外スリーブと、その中心体との間に配置することによっても、支えられている。
【0014】
更に、上記少なくとも1個のリニアガイドベアリングの働きにより、ローラレバーひいてはそれに連結された粉砕ローラを、案内軸沿い方向に動かすことができる。従って、一方では、粉砕床上の不整を均すことができる。他方では、粉砕ギャップ、即ち粉砕ローラ・粉砕テーブル間の標準的な距離を、その働きで設定することもできる。これは、例えば、別の素材を粉砕したい場合に有益である。
【0015】
一般には、どの種類のベアリングもリニアガイドベアリングとして用いることができる。とはいえ、有利なのは、静流体圧ベアリング(流体静力学的ベアリング)をその目的で用いることである。静流体圧ベアリングのパワー密度は高いので、本ローラレバーモジュールをコンパクトな構成にするのに都合よい。
【0016】
原理的には、使用するリニアガイドベアリングは1個で十分である。とはいえ、望ましいのは、2個以上のガイドベアリングを設けることである。例えば、少なくとも1個の第1リニアガイドベアリング及び少なくとも1個の第2リニアガイドベアリング、好ましくは静流体圧ベアリングとして形成されたそれを設けることができる。この場合、第1リニアガイドベアリングを中心体の上部領域内、第2リニアガイドベアリングを中心体の下部領域内に配置することができる。この種の配置により、ローラレバーに発する力の、中心体への良好伝達が促進される。
【0017】
また、この配置では、トルク伝達ユニットが、少なくとも1個の第1リニアガイドベアリングと、少なくとも1個の第2リニアガイドベアリングとの間に配置されることとなる。本実施形態では、また例えば1個のリニアガイドベアリング或いは3個、4個又はより多数のガイドベアリングを有する他の諸実施形態でも、トルク伝達ユニットを中心に配置することができる。
【0018】
一般に、トルク伝達ユニットは何れの方法でも形成できる。一つの選択肢は、これを湾曲歯カプリングとして実施することである。この場合、その湾曲歯カプリングの諸部分、例えば歯を、中心体上に形成することができる。これとの関連で、中心体をくるむ内スリーブを設けることもできる。それをトルクプルーフ要領にて中心体上に配置することができる。この種の構成にて、湾曲歯カプリングの対応諸部材を、中心体に代え内スリーブの上に形成することもできる。これにより、内スリーブに損傷が生じたときにそれを交換できる一方で中心体を使い続けられる、という長所が付与される。
【0019】
湾曲歯カプリングの他の諸部分のうち、中心体上又は内スリーブ上に設けられている歯との噛み合い又は係合が可能な諸部分が、やはり外スリーブ上、この場合はとりわけ外スリーブの内側に然るべく設けられる。
【0020】
外スリーブを案内軸沿い方向に動かせるが内スリーブ及び中心体はそうでないため、内スリーブ上又は中心体上の歯又は噛み合い部分の案内軸沿い延長を、外スリーブの内側に形成された歯又は噛み合い部分のそれより、長くするのが望ましい。
【0021】
一般には、トルク伝達ユニットを相応な配置及び寸法の静流体圧ベアリングとして実施する、という選択肢もある。湾曲歯カプリングを用いる利点は、その方が小サイズの構成となるため、コンパクトな寸法のローラレバーモジュール内に容易に統合できることである。
【0022】
既述の通り、リニアガイドベアリングは静流体圧ベアリングとして形成することができる。この場合、中心体又は内スリーブの外径に相当する内径を実質的に有するベアリングブッシングを、その静流体圧ベアリングに具備させることができる。その静流体圧ベアリングを実現又は最適化するため、様々な要素をそのベアリングブッシング上に設けること、或いはその上又は内部に形成することができる。
【0023】
ひいては、そのベアリングブッシングを、径方向沿い潤滑剤供給ダクトを有するものとすることができる。同様に、そのベアリングブッシング上に軸方向沿い潤滑剤返戻ダクトを設けることができる。更に、そのベアリングブッシングの内側に圧力ポケットを形成することができる。これらの設計は、それぞれ別々に提供することも組み合わせて提供することもできる。
【0024】
好ましくは、潤滑剤供給ダクトを、ベアリングブッシング内を通り径方向に延ばし、その働きで、そのベアリングブッシングの外部から内部へと潤滑剤を供給させる。その後は、供給された潤滑剤を、軸方向に沿い配置された潤滑剤返戻ダクト内を通り、ベアリングブッシングの内側で上方又は下方へと流すことができる。ベアリングブッシングの内側に設けられた圧力ポケットを用い、潤滑剤を少なくとも一時的に受け入れることができる。潤滑剤は潤滑剤供給ダクトを介し圧力ポケット内に流れ込んでそこに留まるか、或いは、ある体積が潤滑剤返戻ダクトを介し運び去られるのと同時にそれと実質的に同じ体積が潤滑剤供給ダクトを介し供給される、という態で継続的に交換される。
【0025】
ある上首尾実施形態では、外スリーブ・中心体間空きスペースが潤滑剤で満たされる。内スリーブが設けられている場合の空きスペースの在処は外スリーブ・内スリーブ間である。1個又は複数個のリニアガイドベアリング及びトルク伝達ユニットが配置された後も諸部材で占有されないままとなっているスペースのことを、空きスペースと記すことができる。この空きスペースを設け潤滑剤で満たすことは、そこに配置されている諸部材の良好な潤滑に役立ち、ひいてはそのローラレバーモジュールの構成の寿命を支えるものである。
【0026】
本ローラレバーモジュールの上端には、潤滑剤抜き取り機構を設けることができる。とりわけ静流体圧ベアリングを用いる場合、理想的には潤滑剤の持続的供給があるので、供給された潤滑剤を再び運び出すことが必要になる。本ローラレバーモジュールの上端領域内に潤滑剤抜き取り機構を配置することは有益であり、それによって上掲の空きスペース内に十分高い潤滑剤レベルを確と発現させることができる。とはいえ、本ローラレバーモジュールの下部領域内又は側方領域内に潤滑剤抜き取り機構を設けることもできる。
【0027】
ひときわ信頼性が高い動作を本ローラレバーモジュールにて達成できるのは、空きスペース内で実質的に周囲圧が優勢な場合である。これが意味しているのは、空きスペース内に所在する潤滑剤が圧力下にないが、専ら、上部領域内に配置された潤滑剤抜き取り機構を介しポンピングされそこで抜き取られること、それが例えば、特に静流体圧ベアリング付近にそれが供給される際と同じ単位時間当たり体積で行われることである。
【0028】
本ローラレバーモジュールにおける空きスペースの封止は、例えば、その上部及び下部領域内にピストンリングシールを設けることで、達成することができる。
【0029】
好ましくは、ローラレバーであり粉砕ローラのシャフトを有するものを、外スリーブ上に実装する。この種の装着でも比較的コンパクトな構成にすることができる。
【0030】
粉砕ローラひいては粉砕対象素材上に付加的な圧力を及ぼすため、粉砕ローラレバー上に流体圧シリンダを設けることができる。これは、案内兼支持ユニットの中心体又は案内軸に対しほぼ平行な加圧又は退却方向に揃った向きにするのが望ましい。
【0031】
本発明に係る粉砕ローラレバーモジュールは、好ましくは、粉砕テーブル及びその上で転がる粉砕ローラを有するローラミルにて用いられる。ここでは粉砕ローラ毎に粉砕ローラレバーモジュールが設けられる。このローラレバーモジュールのことを、一般に、粉砕ローラレバーモジュールと呼ぶこともできる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る粉砕ローラレバーモジュールがコンパクトな構成であるため、共通のスタンド、例えばコンクリート製たりうるそれの上に、2個の粉砕ローラレバーモジュールを設けることができる。これにより、ローラミル周囲の構成を比較的コンパクトなものとすることができ、ひいては動作に必要な他の装置向けに十分なスペースを残すことができる。
【0033】
以下、同封図面を参照し、模式例的実施形態により本発明をより詳細に説明する。図面には以下のものが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明に係るローラレバーモジュールを6個有するローラミルの基本構成部材を示す図である。
【
図2】本発明に係るローラレバーモジュールを2個伴うスタンドを示す図である。
【
図3】本発明に係るローラレバーモジュールの断面図である。
【
図4】静流体圧ベアリングのベアリングブッシングの斜視図である。
【
図5】その静流体圧ベアリングのベアリングブッシングの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に、ハウジング及び選別機(分級機)を省き且つ本発明にとり非実質的な他の諸部材を省いた簡略化表現にてローラミルを示す。
【0036】
ここでは、中心に配置された粉砕テーブル101の周りに3本のスタンド102が設けられている。各ベアリングブロック30にてそれらスタンド102それぞれの上に所在しているのは、本発明に係る2個のローラレバーモジュール1、即ちローラベアリングモジュールとも呼べるそれらである。
【0037】
レイアウトを、ローラレバーモジュール毎にベアリングブロックを1個ずつ設けるものにすることもできる。その場合、決定されたベアリングブロックを、2個目のベアリングブロックと共に共通のスタンド上に設けることができ、また別のスタンド上に設けることもできる。
【0038】
ローラレバーモジュール1は、実質的にローラレバー3及び案内兼支持ユニット20で構成されている。粉砕ローラ10はローラレバー3の端部、粉砕テーブルの側に設けられている。これはトルクプルーフ要領にてシャフトに連結されており、そのシャフトがローラレバー3の内側を走っている。ここで図示した形態では、粉砕テーブル101が専らリングとして描かれている。ローラミルの非簡略図では、概ね、これが実質的に円形のディスクとなる。
【0039】
動作時には粉砕テーブル101が回転状態に設定される。その上に載置された粉砕対象素材が、遠心力の働きで粉砕ローラ10に向かい、これにより外方に運ばれる。一方では、粉砕ローラ10下に運び込まれた粉砕対象素材が、その粉砕対象素材にそれら粉砕ローラ10が圧力を及ぼすことで、砕かれる。他方では、その粉砕対象素材との接触に伴い確と、それら粉砕ローラ10が自身のシャフトを中心にして回ることとなる。
【0040】
図2に、2個のローラレバーモジュール1を伴うスタンド102の拡大表現を示す。ローラレバーモジュール1は、それぞれ、それ自身のベアリングブロック30を有している。各ローラモジュール1の案内兼支持ユニット20がそれに嵌め込まれている。
【0041】
ローラレバー3が装着されている案内兼支持ユニット20により、粉砕テーブル101に対し垂直に、粉砕ローラ10を直線運動させることができる。
【0042】
案内兼支持ユニット20の詳細構成については、後に
図3を参照して詳述する。
【0043】
スタンド102・ローラレバー3間には流体圧シリンダ5が設けられている。その働きで力、即ち粉砕ローラ10により粉砕テーブル101上の粉砕床に印加される力を、変化させることができる。流体圧シリンダ5が引っ張るとこの力は強まり、押すとその力を弱めることができる。より詳細には、ピストンロッド側での流体圧上昇が、ピストンロッドでの引っ張り力の増強につながる。ピストンロッドでの流体圧低下が、その力の弱化と共に、この図では下側にあるピストン側シリンダチャンバ内での流体圧上昇につながる。これは、加圧力が可動システムの重量を上回った場合、ローラの持ち上がりにつながる。
【0044】
図3に、本発明に係るローラレバーモジュール1のうち案内兼支持ユニット20の断面外観を示す。円筒形態の中心体22が、案内兼支持ユニット20の内側に延設されている。その中心体22の周りには内スリーブ25が設けられている。これは、好ましくもトルクプルーフ要領にて中心体22に連結されている。また、その内スリーブ25の周りには外スリーブ24が配置されている。ローラレバー3からのトルクを伝達する働きのある湾曲歯カプリング28の諸部分が、内スリーブ25の外側且つ外スリーブ24の内側に形成されている。外スリーブ24は、好ましくも、中心体22の軸方向に直線運動可能となるよう実装されている。
【0045】
図3に示すように、湾曲歯カプリングのうち大きい方の諸エリアは、中心体22上に固定的に設けられた内スリーブ25上に形成されている。小さい方の諸部分、即ち内スリーブ25上の諸エリアと係合しとりわけ噛み合う諸部分は、外スリーブ24上に設けられている。外スリーブ24が直線運動する際には、それらの部分の運動が内スリーブ25上に設けられた諸部分内となるので、力及びトルクの伝達が可能であり続けることになる。
【0046】
案内兼支持ユニット20の上部及び下部領域には、それぞれ静流体圧ベアリング28が配置されている。これは外スリーブ24・内スリーブ25間に延設されている。外スリーブ24・内スリーブ25間接触エリアには抜き取り点36が設けられており、静流体圧ベアリング28向けに導入された潤滑剤をそこで再び抜き取ることができる。
【0047】
外スリーブ24・内スリーブ25間下部接触点にはシール、例えばピストンリングシール24が設けられており、それによりスリーブ24・25間空きスペース27が封止されるため、抜き取り点36を介し潤滑剤を専ら除去することができる。同様のシールを外スリーブ24・内スリーブ25間上部接触点に、又はその接触面上にも、設けることができる。
【0048】
ローラレバー3自体は外スリーブ24に装着されている。
【0049】
静流体圧ベアリング26及び湾曲歯カプリング28により、ローラレバー3を、中心体22及び内スリーブ25の中心軸に沿い、上方及び下方に動かせるようにすることができる。
【0050】
図4及び
図5では、静流体圧ベアリング26の構成がより間近で看取されている。これは、実質的にベアリングブッシング42で構成されている。ベアリングブッシング42の内径は、実質的に内スリーブの外径に相当している。ベアリングブッシング42内には、径方向に延びる潤滑剤供給ダクト44が設けられている。軸方向に沿い形成された潤滑剤返戻ダクト46には、潤滑剤供給ダクト44を介し供給された潤滑剤を再び外に逃がせるようにする働きがある。とりわけ
図4に示すように、潤滑剤返戻ダクト46同士の間には圧力ポケット48が設けられており、理想的には、動作中にそのポケット内に潤滑剤が所在するので、静流体圧ベアリング26の担持及び案内効果を発現させることができる。
【0051】
内スリーブ25・外スリーブ24間空きスペース内に所在するのは潤滑剤であり、これは静流体圧ベアリング26の潤滑剤供給ダクト44を介し供給されたものである。この潤滑剤には、ローラレバー3の上下動を引き起こす振動に対するダンピング効果がある。これは、本発明に係るローラレバーモジュール1を有するローラミルがより静寂に稼働すること、ひいてはより効率的に動作しうることを、意味している。