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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】バリアキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/22 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
B65D51/22 120
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019175004
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021050028
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100191145
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 整博
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-052619(JP,A)
【文献】特開2013-056688(JP,A)
【文献】特開2017-121973(JP,A)
【文献】特開2001-314803(JP,A)
【文献】特開2011-011745(JP,A)
【文献】特開2015-105130(JP,A)
【文献】特開2007-284072(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074473(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着され、外蓋を回動することで、破断して外蓋に移行する移行栓体を有するキャップ本体と、該キャップ本体に螺合して着脱可能に装着される外蓋とからなり、キャップ本体の基材層中にバリア層が内層化されているバリアキャップにおいて、
キャップ本体は、容器本体に装着される装着部と、ねじ壁部と、注出筒と、注出筒の内周面に、薄肉弱化部を介して連設される移行栓体とを有し、少なくとも装着部、ねじ壁部、薄肉弱化部および移行栓体にバリア層が設けられ、基材層となるキャップ本体の基本樹脂および/またはバリア層のバリア性樹脂に、両樹脂に接着性を有する接着樹脂がブレンドされていることを特徴とするバリアキャップ。
【請求項2】
基材層の基本樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンであり、基材層の基本樹脂にポリエチレンに官能基を導入した変性ポリエチレンからなる接着樹脂が10~50重量%ブレンドされていることを特徴とする請求項1に記載のバリアキャップ。
【請求項3】
バリア層のバリア性樹脂は、エチレン含有量27~44モル%のエチレンビニルアルコール共重合体であり、バリア性樹脂にポリエチレンに官能基を導入した変性ポリエチレンからなる接着樹脂が10~30重量%ブレンドされていることを特徴とする請求項1または2に記載のバリアキャップ。
【請求項4】
バリア層の流動性は、MFR(メルトフローレート)10以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のバリアキャップ。
【請求項5】
移行栓体は、上部に立設された筒状壁と、筒状壁の外周に突設されたラチェット機構の一方の第1歯部とを有し、
外蓋は、頂壁と、頂壁の外周縁から垂設される外周壁と、頂壁の下面から垂設され、注出筒に嵌合する切断筒部と、切断筒部の内周に、ラチェット機構の他方の第2歯部とを有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のバリアキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップを回転して開栓することができるキャップに関し、とくにガスバリア性に優れたバリアキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドレッシングや調味料などを収容する食品容器には、開封時まで容器内を密封状態にしておくために、容器口部に装着されたキャップ本体に、弱化部により画成された除去壁部を形成した隔壁を設け、除去壁部に設けられたプルリングを引き上げて該除去壁部を引きちぎって注出口を開栓する抜栓キャップが広く用いられている。
【0003】
また、内容物風味を維持するため、容器外部の空気に含まれる酸素等を遮断するガスバリア性に優れた容器が提案されており、それに対応するキャップについてもガスバリア性を有するキャップが従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-56688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載のキャップは、プルリングを引き上げて除去部を引きちぎって注出口を開栓するキャップであるため、プルリングを引き上げて弱化部を破断するには比較的大きな力が必要であり、指先の力が弱い子供やお年寄りには開封が困難であった。
このため、プルリングによる開栓ではなく、キャップの螺合部の回転動作によって開栓することができるキャップも知られているが、このような回転動作によって開栓することができるキャップについては、ガスバリア性に優れたキャップはいまだ知られていない。
【0006】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、プルリングを用いずに外蓋を回動することにより開栓することができるねじキャップにおいて、ガスバリア性に優れたバリアキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、バリアキャップとして、容器本体の口部に装着され、外蓋を回動することで、破断して外蓋に移行する移行栓体を有するキャップ本体と、該キャップ本体に螺合して着脱可能に装着される外蓋とからなり、キャップ本体の基材層中にバリア層が内層化されているバリアキャップにおいて、キャップ本体は、容器本体に装着される装着部と、ねじ壁部と、注出筒と、注出筒の内周面に、薄肉弱化部を介して連設される移行栓体とを有し、少なくとも装着部、ねじ壁部、薄肉弱化部および移行栓体にバリア層が設けられ、基材層となるキャップ本体の基本樹脂および/またはバリア層のバリア性樹脂に、両樹脂に接着性を有する接着樹脂がブレンドされていることを特徴とする構成を採用する。
【0008】
バリアキャップの実施形態として、基材層の基本樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンであり、基材層の基本樹脂にポリエチレンに官能基を導入した変性ポリエチレンからなる接着樹脂が10~50重量%ブレンドされていることを特徴とする構成、バリア層のバリア性樹脂は、エチレン含有量27~44モル%のエチレンビニルアルコール共重合体であり、バリア性樹脂にポリエチレンに官能基を導入した変性ポリエチレンからなる接着樹脂が10~30重量%ブレンドされていることを特徴とする構成、また、バリア層の流動性は、MFR(メルトフローレート)10以上であることを特徴とする構成を採用する。
【0009】
バリアキャップのさらなる実施形態として、移行栓体は、上部に立設された筒状壁と、筒状壁の外周に突設されたラチェット機構の一方の第1歯部とを有し、外蓋は、頂壁と、頂壁の外周縁から垂設される外周壁と、頂壁の下面から垂設され、注出筒に嵌合する切断筒部と、切断筒部の内周に、ラチェット機構の他方の第2歯部とを有することを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバリアキャップは、回転動作で破断して外蓋に移行する移行栓体を含むキャップ本体内にガスバリア性のバリア層を有するため、回転動作で開栓されるまで、優れたバリア性を発揮することができる。
また、キャップ本体は基材層の基本樹脂および/またはバリア層のバリア性樹脂に接着樹脂がブレンドされているため、キャップ本体の基材層とバリア層とが強固に接着され、回転動作によって容易に薄肉弱化部を破断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施例のバリアキャップのキャップ本体の半断面側面図である。
図2】本実施例のバリアキャップのキャップ本体に外蓋を螺合して閉蓋した状態を示す断面側面図である。
図3図1の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明のバリアキャップについて、ラチェット機構を使用して回動動作によって開栓することができるキャップとして具体化した実施例を示した図面を参照して説明する。
【実施例
【0013】
図2において、Aは容器本体、Bは容器本体Aに装着されるキャップ本体、Cはキャップ本体Bに螺合して装着される外蓋である。
【0014】
図2に示すように、容器本体Aの口部1は、キャップ本体Bに嵌着して抜け止め保持する係止突条2を備えている。
また、図1および図2に示すように、キャップ本体Bは、外周側の外筒5、内周側の内筒6、口部1の天面側に位置する上壁7とからなり、口部1が嵌入する環状溝を形成する装着部4と、上壁7に連設して立設されたねじ壁部8と、ねじ壁部8の上端に段部9を介して連設された注出筒10とからなっている。
【0015】
注出筒10は容器本体A内に収容された内容物を注出する注出口を形成し、円筒状の基部11と、基部11の上部に拡径して外側に湾曲するリップ部12とを有する。
注出筒10の基部11の内周面には、全周にわたって形成された薄肉弱化部15を介して移行栓体16が一体に連設されている。
移行栓体16は、上部に円筒状の筒状壁17が立設され、下部は底壁14が薄肉弱化部15とともに注出口を封鎖している。
【0016】
筒状壁17は、外周にラチェット機構の一方の第1歯部を構成する係合突起18が周方向に突設され、内周上部には第1係合突部19が環状に突設されている。
係合突起18は、後述する外蓋Cのラチェット機構のもう一方の第2歯部52と係合する。
【0017】
底壁14は、筒状壁17の外周側に下面から所定の高さを有する拡径部22と、拡径部22の外周側に連設され、外側に向けて漸次肉薄になるとともに薄肉弱化部15に連設するフランジ部23とを有している。
ねじ壁部8は、注出筒10の下部に内周縁で連設した段部9の外周縁から垂設され、外周面にはねじ部(雄ねじ)24が設けられている。
ねじ部(雄ねじ)24の下方のねじ壁部8の外周には、キャップ本体Bの軸方向にわずかに隆起して延びる突条の縦リブ25が周方向複数個所に設けられている。
また、ねじ壁部8の内周面には、上部を段部9に連設し軸方向に延びる補強リブ26が突設されている。
【0018】
装着部4は、上壁7が内周縁でねじ壁部8の下部で連設し、上壁7の下部には外筒5と内筒6が垂設されている。
外筒5と内筒6の間には、容器本体Aの口部1が嵌入する嵌合溝が形成され、外筒5の内周には、係止突条2に係合して口部1を抜け止めする係止縮径部27が設けられている。
上壁7の上面には、周方向複数個所にストッパー28が設けられ、その螺脱方向には略垂直な第1当接面28aが形成され、螺着方向には第1傾斜面28bが形成されている。
本実施例では、ストッパー28の第1傾斜面28bに近接して縦リブ25がストッパー28と同数配設されている。
また、本実施例では、段部9の外周には、外蓋Cをキャップ本体Bに螺合する際にその終了を知らせるための音出し突部13が設けられている。
【0019】
本発明のキャップ本体Bは、図1および図3に示すように、キャップ本体Bの基本樹脂を含む基材層に対し、バリア性樹脂を含むバリア層Dが内層となるように共射出成形で製造され、基材層の基本樹脂に接着樹脂がブレンドされるか、バリア層Dのバリア性樹脂に接着樹脂がブレンドされるか、あるいは、基本樹脂とバリア性樹脂の両方に接着樹脂がブレンドされている。
【0020】
本実施例では、図1および図3に示すように、キャップ本体Bの装着部4(外筒5、内筒6、上壁7)、ねじ壁部8、段部9と移行栓体16の底壁14の部分に、バリア層Dが設けられている。
なお、キャップ本体Bの注出筒10や外筒5内には、バリア層Dはなくても構わない。
【0021】
また、本実施例では、薄肉弱化部15内にもバリア層Dが設けられており、一般に薄肉弱化部15の破断は、キャップ本体Bの基材層となる基本樹脂とバリア層Dのバリア性樹脂とは接着性が乏しいため、接着樹脂がブレンドされていない基材層とバリア層Dの場合には、薄肉弱化部15の基材層部分が破断しても、バリア層D部分が分離してしまい、バリア層Dの破断が不十分となり、開封できない場合があるが、本発明では、基材層の基本樹脂および/またはバリア層Dのバリア性樹脂に、両樹脂に接着性を有する接着樹脂がブレンドされているため、基材層とバリア層Dが強固に接着され、薄肉弱化部15を容易に破断することができ、開封可能となる。
【0022】
キャップ本体Bの基材層は、ポリプロピレン(PP)(ランダムPP、ブロックPP、ホモPP等)、ポリエチレン(PE)(LLDPE、LDPE、MDPE、HDPE等)などのポリオレフィン、PET等の公知の基本樹脂が用いられる。
また、バリア層Dは、それぞれバリアの目的に応じて、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)や、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド(PA)、MXナイロン(MXD6等)等の公知のガスバリア性を有するバリア性樹脂が用いられる。
中でも、酸素に対するバリア性や風味および香気に対するバリア性からみて、エチレンビニルアルコール共重合体が好ましい。
接着樹脂は、基材層の基本樹脂およびバリア層Dのバリア性樹脂の両方に接着性を有する樹脂が用いられる。
例えば、基材層の基本樹脂がポリオレフィンであり、バリア層Dのバリア性樹脂がエチレンビニルアルコール共重合体やポリアミドである場合には、ポリオレフィンに官能基を導入して接着性を付与した変性ポリオレフィンが接着樹脂として好ましい。
変性ポリオレフィンからなる接着樹脂としては、三菱ケミカル株式会社の接着樹脂モディック(登録商標)や、三井化学株式会社のアドマー(登録商標)などが挙げられる。
【0023】
そこで、キャップ本体Bの基材層の基本樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用い、バリア層Dのバリア性樹脂としてエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を用い、基材層の基本樹脂および/またはバリア層Dのバリア性樹脂に、両樹脂に接着性を有する接着樹脂として官能基が導入された変性ポリエチレンをブレンドして、上記実施例のバリア層Dが内層化されたキャップ本体Bを共射出成形で製造し、成形性の確認とともに、薄肉弱化部15の破断による開封確認とバリア性能について検証試験を行った。
なお、実験例2~4の薄肉弱化部15のバリア層Dの厚みは、0.06mmであり、実験例6および7は、それぞれ0.05mm、0.13mmであった。
基本樹脂(ポリマーA):LLDPE(プライムポリマー社製 25200J)
バリア性樹脂(ポリマーB):EVOH(クラレ社製 C109B)、エチレン含有量35モル%
接着樹脂(ポリマーC):変性ポリエチレン(三菱ケミカル株式会社製 モディックM506)
開封トルクの単位:N・cm
酸素透過量(OTR)の測定器:MOCON社製 OX-TRAN2/20
酸素透過量(OTR)の測定条件:キャップ外側23°C-55%RH、キャップ内側23°C90%RH、キャリアガスとして窒素を使用
酸素透過量の単位:cc/day・pack
【0024】
【表1】
【0025】
上記表1において、配合率は、重量%(wt%)を表し、開封確認における×は開封不可、○は開封可能を表し、バリア性における×および○はバリア性の有無をそれぞれ表している。
【0026】
上記実験例1は、バリア層のない基準となる参考例である。
上記実験例2~4は、基材層のLLDPEのみに接着樹脂をそれぞれ10重量%、20重量%、50重量%ブレンドしたもので、バリア層DにはEVOHには接着樹脂はブレンドされていないが、基材層とバリア層Dとの接着性が改良され、開封可能となった。
上記実験例5は、基材層のLLDPEに接着樹脂を60重量%ブレンドしたもので、接着樹脂が多すぎて成形不能となった。
上記実験例6は、基材層のLLDPEとバリア層DのEVOHに、接着樹脂をそれぞれ10重量%ブレンドしたもので、開封可能でバリア性能もよいものであった。
上記実験例7および8は、バリア層DのEVOHのみに接着樹脂をそれぞれ10重量%、30重量%ブレンドしたもので、基材層のLLDPEには接着樹脂はブレンドされていないが、基材層とバリア層Dとの接着性が改良され、開封可能で、バリア性もあった。
上記実験例9は、バリア層DのEVOHに接着樹脂を40重量%ブレンドしたもので、接着樹脂が多すぎてバリア性がなくなってしまった。
以上のことから、接着樹脂の配合量は、基材層にブレンドする場合は、50重量%までであり、バリア層Dの場合には30重量%までとするのが好ましいことがわかった。
また、バリア層Dを形成するためには、流動性指標のMFR(メルトフローレート)10以上にする必要があり、上記実験例ではMFR14以上であった。
【0027】
なお、接着樹脂の適量となる配合量は、基本樹脂およびバリア性樹脂および接着樹脂として、それぞれどのような樹脂を選択するかで相違し、バリア性能をどの程度のものにするかによっても相違する。
いずれにしろ、基材層の基本樹脂に接着樹脂をブレンドする場合、接着樹脂を多くすると成形性が悪くなる可能性があるため、バリア層Dとの接着性が改良されて、開封可能となる最低限のブレンド量とすべきであり、また、バリア層Dのバリア性樹脂に接着樹脂をブレンドする場合も、接着樹脂を多くするとバリア性能が落ちるため、基材層との接着性が改良されて、開封可能となる最低限のブレンド量とすべきである。
また、基材層の基本樹脂とバリア層Dのバリア性樹脂の両方に接着樹脂をブレンドする場合には、基材層とバリア層Dの接着性がより改良されるので、それぞれにブレンドする接着樹脂の量は少なくてもよい。
【0028】
外筒5は、外周面に下方が切り欠かれた縮径凹面に連設する環状の切欠き段部29が設けられ、さらにその下方には、キャップ本体Bを容器本体Aから分離して分別廃棄可能とする分別機構が設けられている。
外筒5の下部外周面の所定円弧範囲にわたって軸方向に形成されたスリット30を介して把持部31が設けられ、把持部31は、縦切断部32によって外筒5から切り離され外方に展開可能になっている。
把持部31の縦切断部32には、上部に指先を入れて引っ掛けるための引っ掛け凹部32aが形成され、縦切断部32に近接する側の把持部31内周面には手指で把持する把持凹部が設けられており、スリット30は、縦切断部32より把持部31と反対方向に延び、終端部で把持部31が外筒5と一体となる。
【0029】
外筒5の内周側に破断可能な薄肉の周方向切断部37が形成され、本実施例では、スリット30は約110°の円弧範囲にわたって形成されている。
【0030】
本実施例のキャップ本体Bに螺合できる外蓋Cとして、図2のものが例示される。
外蓋Cは、天板部に設けられた頂壁40と、頂壁40の外周縁から垂設された外周壁41とを有している。
なお、外周壁41の下端には、破断可能な弱化連結部で連結された封緘リングを設けることが可能であり、封緘リングは未使用であることを示し、最初に使用する際に取り外される。
頂壁40の内面には、中央付近に垂設された係着部45から外側へ順に、切断筒部46、ねじ筒部47が頂壁40と一体に垂設されている。
【0031】
本実施例では、切断筒部46とねじ筒部47の間に音出し部材48が垂設されており、音出し部材48は先端部に振動片が設けられ、外蓋Cがキャップ本体Bの締め込む際に、キャップ本体Bの音出し突部13に振動片が触れて音を発するため、それによって外蓋Cの締め込みの終了を知ることができる。
【0032】
係着部45には、キャップ本体Bの第1係合突部19を乗り越えて筒状壁17の内周面に緊密に嵌合する環状の第2係合突部50が先端外周に形成されている。
切断筒部46の内周には、第1歯部を構成する係合突起18に係合する第2歯部を構成する係合腕52が係合突起18と同数で設けられ、切断筒部46の先端外周には、注出筒10の内周面に当接して注出口を密閉するシール部が形成されている。
切断筒部46の長さは、シール部が注出筒10の基部11に当接し、先端部が移行栓体16の拡径部22の外周面とわずかな隙間をもって嵌入するところまで延びている。
【0033】
係合腕52は、薄肉弱化部15を破断可能な回転力を伝えることができる程度の強度と、外蓋Cの締め込み時に係合突起18を乗り越えることができる程度の可撓性を有する部材からなっている。
【0034】
ねじ筒部47には、内周にキャップ本体Bのねじ部(雄ねじ)24に螺合するねじ部(雌ねじ)58が設けられている。
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
【0035】
まず、本実施例のバリアキャップのキャップ本体Bは、キャップ本体Bの基本樹脂となる基材層に対し、バリア性樹脂のバリア層Dが内層化されるように共射出成形することによって製造することができる。
【0036】
本実施例のバリアキャップを容器本体Aに装着するには、キャップ本体Bに外蓋Cを螺合して締め込み、キャップ本体Bと外蓋Cを組み立ててから容器本体Aの口部1にキャップ本体Bの装着部4をあてがって上部から打栓する。
なお、キャップ本体Bのねじ部(雄ねじ)24に外蓋Cのねじ部(雌ねじ)58を螺合して締め込む際には、ラチェット機構によって、係合腕52は係合突起18を乗り越え、外蓋Cの回転を許容する。
また、本実施例では、外蓋Cの音出し部材48の先端部の振動片が、キャップ本体Bの音出し突部13に触れて音を発することで外蓋Cの締め込みが終了したことを知ることができる。
【0037】
次に、本実施例のバリアキャップが打栓され装着された容器を使用するには、外蓋Cを螺脱方向に回転させ、外蓋Cの回動開始時は、なめらかに回転が始まり、続いて切断筒部46の係合腕52が筒状壁17の係合突起18に当接して係合するようになると、ラチェット機構が働き、外蓋Cの回転力がラチェット機構を介して移行栓体16に加わるようになる。
【0038】
このとき、係着部45の第2係合突部50が筒状壁17の第1係合突部19を乗り越えた内周面に緊密に嵌合しているので、筒状壁17を内側から補強して外蓋Cの回転力がラチェット機構を介して移行栓体16に伝わりやすくなっているとともに、ねじの回転に伴って移行栓体16を上方に引き上げる力を発生させる。
外蓋Cの回転が進むと、移行栓体16に加わる回転力と引き上げ力により、ついには薄肉弱化部15が破断して注出口が開栓され、注出筒10から分離された移行栓体16は筒状壁17に係合する係着部45によって引き上げられて外蓋Cとともに上昇していく。
【0039】
切断筒部46のシール部が注出筒10の内周面から離れ、ねじ部(雌ねじ)58がねじ部(雄ねじ)24から螺脱して外蓋Cをキャップ本体Bから離脱すれば、外蓋Cとともに移行栓体16が除去された注出筒10の開口から容器内の内容物を注出することができる。
【0040】
容器を使用した後、再度外蓋Cをキャップ本体Bに装着する際には、移行栓体16のフランジ部23および破断した薄肉弱化部15の残片によって、注出筒10の内周面に付着した内容物が掻き落とされ、注出筒10の内周面を清潔に保つことができる。
また、切断筒部46は、シール部が注出筒10に当接して容器内を密封する。
【0041】
本実施例のバリアキャップは、容器を使用した後に廃棄する際に、簡単な操作で容器本体Aから分離し、分別して廃棄することができる。
まず、縦切断部32の引っ掛け凹部32aに手指を掛けて把持部31を手前に引っ張ると、縦切断部32が破断し、把持部31が外方に展開する。
さらに把持部31を引っ張ると、スリット30の終端部に隣接して設けられた図示しない薄肉始断部が破断し、さらに薄肉始断部の終端に連続する薄肉の径方向切断部を経由して周方向切断部37へと破断が進んでいく。
【0042】
周方向切断部37が破断したところでは、係止縮径部27の係止突条2への係合が解除されるので、破断終端部近くまで破断が進むと、係止縮径部27による口部1への拘束が解除され、把持部31を引き上げると、キャップ本体Bを容器本体Aから離脱させ分別廃棄することができる。
【0043】
本実施例のバリアキャップは、上記に示すように、ラチェット機構を介する回転動作によって薄肉弱化部を破断し、移行栓体を外蓋に移行させるものであるが、回転動作で薄肉弱化部を破断するものであればどのようなものであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のバリアキャップは、回転動作で容易に開封可能であり、キャップ本体の基材層となる基本樹脂および/またはバリア層となるバリア性樹脂に、両樹脂に接着性を有する接着樹脂がブレンドされているため、容易に開栓可能であり、高いガスバリア性を有し、有効成分の飛散を防止することができるため、飲食品や調味料の他、化粧料等などのガスバリア性の容器用として好適である。
【符号の説明】
【0045】
A 容器本体
B キャップ本体
C 外蓋
D バリア層
1 口部
2 係止突条
4 装着部
5 外筒
6 内筒
7 上壁
8 ねじ壁部
9 段部
10 注出筒
11 基部
12 リップ部
13 音出し突部
14 底壁
15 薄肉弱化部
16 移行栓体
17 筒状壁
18 係合突起(第1歯部)
19 第1係合突部
22 拡径部
23 フランジ部
24 ねじ部(雄ねじ)
25 縦リブ
26 補強リブ
27 係止縮径部
28 ストッパー
28a 第1当接面
28b 第1傾斜面
29 切欠き段部
30 スリット
31 把持部
32 縦切断部
32a 引っ掛け凹部
37 周方向切断部
40 頂壁(天板部)
41 外周壁
45 係着部
46 切断筒部
47 ねじ筒部
48 音出し部材
50 第2係合突部
52 係合腕(第2歯部)
58 ねじ部(雌ねじ)
図1
図2
図3