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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230731BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02M7/48 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019188401
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2021065029
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】関 雄太
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-188565(JP,A)
【文献】特開2018-129419(JP,A)
【文献】特開平08-204293(JP,A)
【文献】特開2010-092948(JP,A)
【文献】特開2008-016582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 3/00
H01L 23/46
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層のプリント基板と、
前記プリント基板の表層に形成され、パワー系の信号を伝送する第1配線パターンと、
前記表層以外の配線層に前記第1配線パターンとオーバーラップして形成される第2配線パターンと、
前記第1配線パターンと前記第2配線パターンを電気的に接続する複数のビアホールと、
前記第1配線パターン上にはんだ実装される放熱部品と、
を備え、
前記複数のビアホールは、前記放熱部品の周囲に配置されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記放熱部品は、チェックピンであることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記放熱部品は複数であり、前記第1配線パターンの長さ方向に、隣接配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記放熱部品は複数であり、前記第1配線パターンの長さ方向および幅方向にマトリクス状に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1配線パターンは、相対的に幅が狭い部分と広い部分を有し、
前記放熱部品は、前記幅が狭い部分に実装されることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータやコンバータなどの電力変換装置は、大電流が流れる信号線を備える。この信号線をプリント基板上の配線パターンで形成した場合、非ゼロの寄生抵抗を有することとなり、大電流が流れることにより発熱する。
【0003】
この発熱を減らすためには、配線パターンのインピーダンスを減らすこと必要があり、配線パターンの幅を太くする、厚みを大きくする、多層化するといった対策を取ることができる。しかしながら、プリント基板の面積が限られている中で、配線パターンを太くするには限度がある。また配線パターンの厚みにも製造上の制約があり、多層化もコスト上の制約を受けることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-255275号公報
【文献】特開2006-339246号公報
【文献】特開2016-74182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、かかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、コストの増加を抑制しつつ温度上昇を抑制可能な電力変換装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、電力変換装置に関する。電力変換装置は、プリント基板と、プリント基板の表層に形成され、パワー系の信号を伝送する第1配線パターンと、第1配線パターン上にはんだ実装される放熱部品と、を備える。
【0007】
この態様によると、第1配線パターン上に直接、放熱部品をはんだ実装することにより、第1配線パターンの発熱を放熱部品によって放熱することができ、温度上昇を抑制できる。
【0008】
放熱部品は、チェックピンであってもよい。チェックピンは、本来的には、回路基板上で、外部から電気的コンタクトを取るための端子であるが、空洞を有しているため表面積が大きく、高い放熱効果が期待できる。またチェックピンは、さまざまなサイズのものが市販されているため、第1配線パターンの太さなどを考慮して、適切なものを選択することができ、新規に放熱部品を設計する場合に比べてコストを抑制できる。
【0009】
放熱部品は複数であり、第1配線パターンの長さ方向に、隣接配置されてもよい。放熱部品は複数であり、第1配線パターンの長さ方向および幅方向にマトリクス状に配置されてもよい。チェックピンを並べて配置することにより放熱面積を増やすことができ、より効果的に温度上昇を抑制できる。
【0010】
プリント基板は多層基板であってもよい。電力変換装置は、表層以外の配線層に第1配線パターンとオーバーラップして形成される第2配線パターンと、第1配線パターンと第2配線パターンを電気的に接続する複数のビアホールと、を備えてもよい。複数のビアホールは、放熱部品の周囲に配置されてもよい。これにより、基板内部の熱を複数のビアホールを介して表層に伝導し、複数のビアホールが取り囲む放熱部品によって放熱することができる。これにより、基板内部の温度上昇も抑制できる。
【0011】
第1配線パターンは、相対的に幅が狭い部分と広い部分を有してもよい。放熱部品は、幅が狭い部分に実装されてもよい。幅が狭い部分は、広い部分に比べてインピーダンスが高くなり、相対的に発熱が大きくなる。そこで狭い部分に放熱部品を実装することにより、発熱が大きな部分に有効な対策を施すことができる。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電力変換装置のコストの増加を抑制しつつ、温度上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係る電力変換装置の斜視図である。
図2図2(a)、(b)は、多層基板を有する電力変換装置を示す図である。
図3】放熱部品の一例を示す図である。
図4図4(a)、(b)は、放熱部品の別の一例を示す図である。
図5】放熱部品の別のレイアウト図である。
図6】放熱部品の別のレイアウト図である。
図7】電力変換装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
図1は、実施の形態に係る電力変換装置100の斜視図である。電力変換装置100は、インバータやコンバータ、整流器、あるいはそれらの複合装置である。電力変換装置100は、プリント基板110、第1配線パターン120、複数の放熱部品130を備える。電力変換装置100は、その他、パワートランジスタやダイオード、コンデンサなどの回路部品102を備える。
【0017】
一般に、電力変換装置100は、制御系の信号を電送する信号ライン(以下、小信号ラインという)と、パワー系の信号を伝送する信号ライン(以下、大電流ラインという)を有する。第1配線パターン120は、発熱が問題となるパワー系の信号を伝送する大電流ラインであり、プリント基板110の表層112に形成される。第1配線パターン120が伝送するパワー系の信号は、直流であると交流であるとを問わない。
【0018】
放熱部品130は複数であり、図1に示すように、第1配線パターン120の長さ方向に、隣接して配置してもよい。
【0019】
複数の放熱部品130は、第1配線パターン120上にはんだ実装される。以上が電力変換装置100の基本構成である。この電力変換装置100によれば、発熱が大きい第1配線パターン120上に直接、放熱部品130をはんだ実装することにより、第1配線パターン120の発熱を、放熱部品130から放熱することができ、温度上昇を抑制できる。
【0020】
図2(a)、(b)は、多層基板を有する電力変換装置100を示す図である。プリント基板110は多層基板であり、複数の配線層を有する。大電流ラインは、インピーダンスを小さくするために、多層配線で構成することができ、プリント基板110の表層112以外の配線層114には、第1配線パターン120とオーバーラップして、第2配線パターン122が形成される。表層の第1配線パターン120は空気に接している一方、内層の第2配線パターン122は、絶縁層に挟まれているため、第2配線パターン122の方が第1配線パターン120よりも放熱性が悪い。
【0021】
図2(b)に示すように、第1配線パターン120と第2配線パターン122の間は、複数のビアホール124を介して電気的に接続される。ビアホール124は、多層基板の絶縁層に設けられたスルーホールに、銅などの金属を充填したものである。複数のビアホール124は、図2(c)に示すように放熱部品130を取り囲むように配置される。
【0022】
大電流ラインを多層化する場合、内層の第2配線パターン122に電流が流れることによって、プリント基板110の内部が発熱する。ビアホール124は、高い熱伝導率を有しているため、プリント基板110の内部の熱を、複数のビアホール124を介して表層の第2配線パターン122に伝導できる。そして表層に伝わった熱は複数のビアホール124が取り囲む放熱部品130によって放熱される。図2の構造によれば、基板内部の温度上昇も抑制できる。
【0023】
続いて放熱部品130の具体例を説明する。図3は、放熱部品の一例を示す図である。この放熱部品130はチェックピン132である。チェックピン132は、本来的には、回路基板上に実装され、プローブやクリップにより外部から電気的コンタクトを取るための端子である。チェックピン132は、空洞134を有する環状あるいは筒状の金属部品であり、プローブやクリップによって挟みやすいような形状を有する。図3に示すようにチェックピン132の厚みは全周にわたり均一であってもよい。チェックピン132は空洞134が設けられているため表面積が大きく、高い放熱効果が期待できる。またチェックピン132は、さまざまなサイズのものが市販されているため、第1配線パターン120の太さなどを考慮して、適切なものを選択することができる。チェックピン132を用いると、新規に放熱部品を設計する場合に比べてコストを抑制できる。
【0024】
チェックピン132の向きは、図3のそれに限定されない。複数のチェックピン132の空洞134が、同軸となる向きで配置してもよい。
【0025】
図4(a)、(b)は、放熱部品の別の一例を示す図である。図4(a)の放熱部品130は、ヒートシンク136であり、その表面には、放熱フィン138が形成されている。図4(a)は、小型のヒートシンク136を複数の、第1配線パターン120上に配置したものである。たとえばヒートシンク136のサイズは、10mm×10mm程度としてもよい。複数のビアホール124は、ヒートシンク136の実装領域に形成してもよい。第1配線パターン120の幅が狭い場合には、それと同程度の幅を有するヒートシンク136(放熱部品130)を、第1配線パターン120の長さ方向に隣接して並べて配置することができる。
【0026】
図4(b)に示すように、大型の1枚のヒートシンク140を、第1配線パターン120上に実装してもよい。1枚のヒートシンク140を用いると、図4(a)の場合に比べて実装コストを下げることができる。
【0027】
図5は、放熱部品130の別のレイアウト図である。図5に示すように、複数の放熱部品130を、第1配線パターン120の長さ方向および幅方向にマトリクス状に配置してもよい。第1配線パターン120の幅が広い場合には、それより狭い幅を有する放熱部品130を、第1配線パターン120の幅方向および長さ方向に、マトリクス状に配置することができる。
【0028】
図6は、放熱部品130の別のレイアウト図である。実際のプリント基板110上では、第1配線パターン120の幅が一定であることは希であり、部分的に太くなったり細くなったりする。放熱部品130は発熱が問題となる箇所に優先的に配置すべきところ、第1配線パターン120の幅dが細い部分は、太い部分に比べて抵抗値が大きくなるため、発熱量も大きくなる。そこで、第1配線パターン120が相対的に幅が狭い部分120Aと広い部分120Bを有する場合には、放熱部品130は、幅が狭い部分120Aに実装するとよい。これにより、発熱が大きい部分を効果的に放熱できる。
【0029】
続いて、電力変換装置における放熱部品130による熱対策を施すべき箇所について説明する。図7は、電力変換装置200の回路図である。電力変換装置200は、整流器202、平滑コンデンサ204、DCリンク206,208、インバータ210、ドライバ212を備える。整流器202は交流電圧VACを整流し、DCリンク206、208に接続される平滑コンデンサ204に供給する。インバータ210は、平滑コンデンサ204に発生する直流電圧VDCを交流に変換し、負荷214を駆動する。ドライバ212は、インバータ210のアームを構成するパワートランジスタのオン、オフを制御する。
【0030】
たとえば上述の第1配線パターン120は、DCリンク206や208であってもよい。あるいは第1配線パターン120は、インバータ210と負荷214を接続する交流のラインであってもよい。これらの配線は、大電流が流れて発熱量が大きくなりやすいため、優先的に熱対策を行うべき箇所といえる。
【0031】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0032】
100 電力変換装置
110 プリント基板
112 表層
114 配線層
120 第1配線パターン
122 第2配線パターン
124 ビアホール
130 放熱部品
132 チェックピン
134 空洞
136 ヒートシンク
200 電力変換装置
202 整流器
204 平滑コンデンサ
206,208 DCリンク
210 インバータ
212 ドライバ
214 負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7